比奈「…………」ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

比奈「…………」ｳｰﾝ

比奈「…………」ｶｷｶｷ

比奈「…………」ｳ-ﾝ

比奈「…………あちっ」ｽﾞｽﾞｯ

比奈「…………」ｶｷｶｷ



紗南「……ねえ、比奈さんどうしたの？　やけに集中してるけど」

里奈「今度のお仕事、TBSらしいぽよ☆」

紗南「おお、ついに比奈さんも！」

夏美「どうやらすごいやる気みたいよ」

夏樹「へぇ……そいつは珍しいな。比奈がやる気を出す仕事って言ったら趣味関係のことしか思い浮かばないもんだけど」

春菜「元々TBSはやってみたかったそうですよ。あのお仕事、台本や企画がきっちりしてますからね」

紗南「そう言われるとそうだね。公演の次くらいにはコンセプトやスケジュールがしっかりしてるかも」

里奈「ただ、どういうテーマのトークバトルかは教えてくれないぽよ～」

紗南「そうなの？」

夏樹「神回になるから見とけとは言われた。サプライズ気質じゃないのに勿体ぶるとは、アイツよっぽど今回の仕事に自信があるらしいな」

紗南「そんなに自信満々なんだ……」

夏美「その自信の根底にあるのは自分の能力じゃなくて、実績のある企画から生まれた台本にあるというのがあの娘らしいわね」

比奈「…………んぃ～……」ﾊﾟｷﾎﾟｷ

比奈「ふぅ……トイレ行こ……」ｽｸｯ

ｶﾞﾁｬｯ､ﾊﾞﾀﾝ



夏樹「里奈」

里奈「あいあいさー☆」ﾋｭﾊﾞｯ!

里奈「台本取ってきた！」

夏美「グッジョブ！」ｸﾞｯ

春菜「ナイスです！」ｸﾞｯ

紗南「いいのかな……」

夏美「あら、じゃあ紗南ちゃんは読まない？」

紗南「……よ、読む！」

夏美「よろしい」

里奈「どれどれ、他の出演者は……さくらちゃん、めーちゃん、みゆみゆかー」ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

夏美「あら、芽衣子もいるのね」

春菜「今回のテーマはどんな感じなんですか？」

里奈「えっとねー……カッコイイ系、ゴシックコスチューム……クールでスタイリッシュな応援で盛り上げる……？」

夏美「カッコイイ？」

春菜「スタイリッシュ？」

紗南「……面白いくらいに今まで無かったイメージだね」

夏樹「比奈はクール属性でもかわいい系だからな」

里奈「おおっ、結構メイクもしっかりする系！」

春菜「眼鏡はかけてますか？　かけたままですか？」

里奈「かけない系」

春菜「そうですか……くっ、やはりサイバーグラスのお仕事をもっと増やさねば……！」

紗南「それ春菜さんの匙加減でどうにもならないでしょ……」

春菜「きっとそんなことはありません！」ｸﾜｯ

夏樹「これほど根拠の無い自信はないと思うよ」

里奈「ふむふむ……何やら比奈っちにしては強気なセリフが多そうぽよ」

夏樹「強気？」

里奈「共に栄冠を手にしようとかー、敗色濃厚な逆境を喜んでたりとかー」

紗南「なんかちょっと飛鳥みたいだね」

春菜「いや、１行切り取っただけかも知れませんよ」

夏美「どっかの幹事長みたいな事言わないの」

里奈「締切前の逆境を喜んでるの見たことないもんね♪」

夏樹「やめてやれ」

夏美「そろそろ台本戻しておきましょうか」

夏樹「里奈」

里奈「いえすまむ☆」ﾊﾞﾊﾞｯ



ｶﾞﾁｬｯ､ﾊﾞﾀﾝ

比奈「うーむ……」ｽﾄﾝ



夏樹「……思ったよりギリギリだったな」ﾋｿﾋｿ

春菜「……危なかったです」ﾋｿﾋｿ

紗南「……あー、頭の上にビックリマーク出るところだった」ﾋｿﾋｿ

里奈「……ねーねーなつみん」ﾁｮﾝﾁｮﾝ

夏美「うん？　どうしたの？」

里奈「あのね……」ﾋｿﾋｿ

夏美「……ふむふむ」

里奈「そんでもって……」ﾋｿﾋｿ

夏美「……ほうほう」

里奈「こうしたいぽよ☆」

夏美「なるほどなるほど……でも、やるとなると結構な手間よ？　潜入するのも楽じゃないだろうし……」

里奈「そこはウチらが誇る最強の事務員と、第１５部署所属の博士の力を借りるしかないっしょ！」


……アイドル部署統括室……

ちひろ「へっくしょい！」

部長「ウイルスを持ち込んだな？　私の半径５メートルに近づくな」

ちひろ「違っ、誰かが噂してるんですー！」


……第１５部署……


？？？「っくしゅん！」

？？？「ふわぁ……かぜぇ……？　ういるすぅ……？」

？？？「ううむ、ウイルスには気を付けているつもりなんだがな……こずえも気を付けるんだぞ」

……数日後、ブーブーエス楽屋……


美優「それじゃあ衣装合わせしましょうか」

さくら「こんなカッコイイ衣装初めてでぇす！」ｷｬｯｷｬｯ

芽衣子「普段フリフリしたのばっかりだもんね♪」ｷｬｯｷｬｯ

比奈「うーむ、この衣装にこの本……魔術の先生みたいになれそうっスね……ありすちゃんと期間限定ユニットも有り得る……」

美優「こうやってみんなで統一した黒い衣装だと、チームって感じがして楽しいですね」

芽衣子「トークバトルのいいところだね！」

比奈（統一感の欠片ないTBSありましたけどね）

ｶﾞﾁｬｯ

メイクA「しっつれいしまー」

メイクB「」ﾍﾞｼｯ

メイクA「あいたっ」

比奈「？」

メイクA「し、失礼します……そろそろメイクの時間ですので……」

さくら「もうそんな時間ですかぁ？」

芽衣子「じゃあパパッと着替えちゃおうか！」

スタッフ「それでは着替え次第席についてくださいね」

比奈「それじゃあよろしくお願いしまス」ｽﾄﾝ

メイクA「おっけ～い☆」

比奈「え？」

メイクA「げっ……お……と！　とっけ～い！　時計外さなきゃ！　重い腕じゃメイク出来ないからね～」ｶﾁｬｶﾁｬ

比奈「……はぁ」

比奈（……なんか騒がしいメイクさんっスね……どことなく喋り方も聞き覚えが……）

メイクA「はーい、目を閉じてくださいね～♪」

比奈（……でも、明らかに声違いまスし……似てるだけ……？　うーん、マスクしてるしメガネかけてるからよくわからないっスね……）

メイクA「下地いきま～す♪」ｽﾁｬｯ

メイクB「……大丈夫かしら」

芽衣子「……あれ？」

メイクB「」ﾋﾞｯｸｩ!!

芽衣子「ん～？」

メイクB「ど、どうかなさいましたか？」

芽衣子「……こんな所で何してるの？　なつ」

メイクB「せいっ」ｶﾞﾊﾞｯ!!

芽衣子「むぐぅ！？」

メイクB「あらぁ？　ちょっと衣装ズレてますねぇ？　鏡で合わせましょ！　ね？」ｸﾞｲｯ

芽衣子「むー！！　むー！？」ｽﾞﾙｽﾞﾙ



美優「あの、見た事のないメイクさんがいるんですが……」

スタッフ「ええ、今日限りのメイクが２人ほど」

美優「今日限り……！？」

比奈（なんかやけに想像しいっスね……）ﾁﾗｯ

メイクA「は、はーい！　目は閉じてぽ、くださいねー！」

比奈「あ、はいっス」

比奈（ぽ……？）

メイクA「ふんふ～ん♪」ｻｯｻｯ

比奈（鼻歌交じり……）

メイクA「……うーむ、もう少し濃くしてもいいかな」

比奈（えっ）

スタッフ「いいんじゃないでしょうか、テーマがテーマですし」

メイクA「ぢゃあ気合入れていこ！」ｽﾁｬｯ

比奈（まじスか）

……１０分後……


メイクA「はーい、ぢゃあ確認よろしくお願いしまーす☆」

比奈「……ん」ﾊﾟﾁｯ

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira134998.jpg

比奈「…………えっ、誰これは」

メイクA「鏡に映った自分だよ～」

比奈「…………私、こんな顔できたんだ……」

メイクA「今回のテーマがテーマ、どうやら冷ややかなイメージも入れたかったみたいだし、ちょーっとアダルティなメイクにしてあるぽよ！　アイシャドウも普段のメイクぢゃ絶対にしないような盛り方してみた！　リップも初めての色かもね☆」

比奈「ほえー……」

メイクA「いやー、比奈っちがキリッとした表情するの珍しいぽよ！」

比奈「…………あの」

メイクA「ん？　どったの？」

比奈「……バレバレっスよ、里奈ちゃん」

メイクA「ぽよっ！？」ｷﾞｸｯ

比奈「どう声を変えてるかは知りないっスけど、流石にドッキリ仕掛けるの下手くそっスよ」

メイクA「ん゛ん゛っ！！　な、何のことでしょうか？」

比奈「さっきまでただのリナリナ語だったのに今更敬語で取り繕われても」

比奈「とりあえずそのマスクとメガネはボッシュートっス！」ﾊﾞｯ!

メイクA「あっ！」

比奈「お、声戻ったっスね…………で、何してんスかな、里奈ちゃん」

メイクA→里奈「い、いやぁ……ドッキリ大成功？」

比奈「大失敗っスよ」

里奈「そんなことないもん！　メイクバッチシだったっしょ？」

比奈「……まあ、メイクに関しては流石としか……」

里奈「普段からメイクさんに頼ってないアイドル系だから！」ﾌﾝｽ

メイクB「あら、もうバレちゃったの？」

里奈「惜しかったぽよ」

比奈「惜しいとは」

メイクB「出だしから不安だったものねぇ……」

芽衣子「……ねえ夏美、いい加減そのメガネとマスクとってよ。声変わってて気持ち悪い……」

メイクB「あら、ごめんなさい」

メイクB→夏美「このマスク型変声機、使ってみると楽しくって♪」

比奈「マスク型変声機！？　コ〇ンじゃないんスよ！？　どこでそんなものを……」

里奈「第１５部署の博士に頼んだぽよ☆」

比奈「第１５……晶葉ちゃんっスか……またとんでもないものを作ってきましたね……」

夏美「因みにこの変装用メガネだけど」

比奈「説明不要っス。容易に想像つくんで」

比奈「それで？　２人はどうしてこんな……ドッキリと呼んでいいのかわからないサプライズ未満な何かを？」

里奈「そんなにこけ下ろさなくても良くない！？」

比奈「テレビで流せるか怪しいレベルのグダグダ感ありましたし」

里奈「そんなぁ……」ｼｮﾎﾞｰﾝ

夏美「比奈ちゃん、トークバトルの内容隠してたでしょ？　里奈ちゃんってばそれが面白くなかったみたいでね、逆にビックリさせてやりたかったんですって」

比奈「……そ、そんな理由でブーブーエスまで忍び込んで……」

夏美「あら、きっちりパスだして通ってきたわよ？　ほら、これ裏方としての通行証」ﾊﾞｰﾝ

比奈「え」

里奈「ちひろさんに頼んだらなんとかしてくれたぽよ！」

スタッフ「ちひろさんの頼みですから」

比奈「あの人どんなツテ持ってんスかね！？」

夏美「さて！　メイクもしたし、ネタバラシも終わったし、私たちはそろそろ帰りま」

芽衣子「ちょーっと待った！　私を窒息寸前まで追い詰めたことに対する謝罪を要求するよ！」

夏美「と、咄嗟の行為だったのよ……さっきから謝ってるじゃない……」

芽衣子「謝罪と言っても私が求めてるのはそうじゃなくて、もっと誠意を見せて欲しいなって！　言葉だけじゃなくて！」

夏美「……じゃあ、今度岐阜にでも行きましょうか。鰻丼食べて、モネの池でも見に。関市内はレンタカー借りて運転してあげるから」

芽衣子「そう来なくっちゃ！　TBS終わったら予定立てないとねっ！」ｳｷｳｷ

比奈「誠意が旅行提案なんスか？」

夏美「大概のことはこれで許してくれるわ」

比奈「ええ……」

美優「あの……盛り上がってるところ申し訳ないんですけど、そろそろ……」

比奈「え……あっ！？　もうすぐリハの時間！」

里奈「リナの時間？」

比奈「リハの時間！！　リ、ハ、ア、サ、ル！！」

さくら「ごめんねぇ、なかなか言い出すタイミングなくってぇ」

比奈「いや、こちらこそ騒ぎすぎて申し訳なかったっス！　すぐ準備しまスから……」

里奈「あ、比奈っちちょっと待って」

比奈「な、なんスか！？　急がないと……」

ｽﾁｬｯ

里奈「もうちょっとチーク塗っておくね。いくらクールビューティーなメイクでも、比奈っちにはもうちょっと可愛さがほしいぽよ」ｽｯｽｯ

比奈「……あ、う……」

里奈「よーし、できた！　……あれ、チーク塗りすぎたかな……ちょっと赤すぎ系？」

比奈「いや、その！」

夏美「はいはい、チークは適量だから大丈夫よ。さあ里奈ちゃん、私たちはお暇するわよ」

里奈「本当に大丈夫ぽよ？」

夏美「大丈夫よね、スタッフさん？」

スタッフ「ええ、バッチリです」ﾌﾌｯ

夏美「ね？」

里奈「うーん、そう言ってもらえるならオッケーかな！　じゃあ比奈っち、ガンバー！」ﾌﾘﾌﾘ

夏美「……本番は照れないようにね」ﾋｿﾋｿ

比奈「わ、わかってまスよ！！」

ｶﾞﾁｬｯ､ﾊﾞﾀﾝ

比奈「はぁ……疲れたっス……」

芽衣子「でもいいメイクだよ？　キマってるね！」

さくら「今回のTBSのテーマにピッタリですよぉ！」

美優「ふふふ……私たちも張り切らないといけませんね」

芽衣子「そうだね！　アダルティなカッコよさ見せつけちゃうよ！」

さくら「さくらの新たな一面、ダークな感じで勝負でぇす！」

比奈「……ふぅ……よーし、望むところっスよ！　オタク女子の華麗なゴス演技見せてやるっス！」

ﾔｲﾉﾔｲﾉ

美優（こんなに騒がしいとクールな感じじゃないけれど……大丈夫よね？）

……数日後……


比奈「おはようござ」

紗南「確保！」ｶﾞｼｯ

春菜「イエッサー！」ｶﾞｼｯ

比奈「えっ、ちょ」

紗南「大人しくしてね、さもないとバクスタするよ！」

比奈「酷い脅し」

春菜「大人しくしないと比奈ちゃんのメガネを私のチョイスした宴会専用面白メガネに変更しますよ！」

比奈「嫌すぎる」

里奈「あ、おはよ比奈っち☆」

比奈「おはようございまス……どうしたんスか、そんなに沢山の化粧品」

里奈「いやー、TBSのクール比奈っちはリナリナメイクだって言ったら「生で見たい」って言うからさ～♪」ｳｷｳｷ

比奈「…………えっ、今から私メイクされるんスか？」

紗南「そうだよ！　クロエ六変化並にね！」

比奈「それセルフメイク！！」

春菜「リケジョやりましょうリケジョ！」

比奈「詳しいっスね！？」

紗南「大人しくしてね！　目にマスカラ刺さると危ないから！」

春菜「メイク用メガネかけます？」

里奈「今度はもっとアイシャドウきつくするぽよ！　リナリナとお揃いで～☆」

比奈「うわあああああああああああああ！！」

ｷﾞｬｰｷﾞｬｰ


夏美「向こうは元気ねぇ……」

芽衣子「やっぱり鰻と言えばしげ吉かな、それとも辻屋？」ﾜｸﾜｸ

惠「しげ吉は相当並ぶわ。モネの池に行くことを考えて選択しましょ？」

椿「モネの池……どのカメラとレンズの組み合わせが綺麗に写るかな……」

夏美「……こっちも元気だったわね、ふふふ」

芽衣子「ほらほら！　夏美も案出して！」

夏美「……そうねぇ……モネの池まで行っちゃうなら郡上八幡の――――」