少女「……へくちっ」 炎龍『あぁん風邪か!? 暖めてやるよ!』 (37)


辺りは大型の魔物が暴れ回ったのであろう痕跡が残されていた
食料は乱暴に食い散らかされ、建物や床には爪痕がくっきりと残されている

小さな集落だった
人口は20人ほどの、数世帯が身を寄せあって暮らし、毎日のんびり過ごす小さな集落
牛や鶏を世話し、自然と生きる
そんな暮らしが私は好きだった

だがそんな好きだった集落は魔物の襲撃を受け、私が狩りにいっている間に集落は壊滅していたのだ


家は潰され、可愛がっていた家畜は腹を食われて死んでいた
そして、よく知る人々もひとり残らず悲惨な姿になっており、直視はできない

こんな時、抱く感情は怒りでも悲しみでも寂しさでも信じられないという気持ちでもなく、無だった



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ただ呆けることしか出来ない
私はペタンと地面に座り込んでしまう

何が起きたんだろう
魔物が来たのだ

なんでみんな死んでるんだろう
魔物が殺したのだ

私はどうするべきだろう
まだいるかもしれない魔物から逃げるべきだろう


取り留めもない思考
逃げるべきなのはわかっているが、体と頭が切り離されているかのように足が動かない


女「どうしよう……」

少女「……?」

女「え……?」


女は目を見開いた
そこには知らない年端もいかない女の子が立っていたからだ

何故こんなところにいるのか
惨状の極みとも言えるようなこの場所でなぜ平然と立っているのか


少女「……だいじょうぶ?」

女「ははっ……なにがなんだか」

少女「……つらい?」

女「うーん……分かんないや。 怖くて仕方ないはずなのに、目の前のことが信じられないの」

少女「……泣いてる」

女「え……?」


気付かない内に目に涙がたまり、頬を濡らしていた

目の前の少女は私に近づき、その涙を舌で舐めとる


女「……っ!!?」

少女「……泣かないで」

女「な、なんなのあなた……!?」

少女「……?」ンー

少女「……少女」


女「少女ちゃん、ここは危ないわすぐに逃げないと」

少女「……なんで?」

女「大きな魔物がここを襲ったの。 いつ戻ってきてもおかしくないわ」

少女「……それがどうしたの」

女「どうしたのって…… 殺されちゃうわよ!?」

少女「……?」


やっと立ち上がった女は少女に必死の説明をする
しかし少女は自体の深刻さを分かっていないのか全く逃げようとはせずボーッとした状態で話を聞いていた

すると地鳴りがする
ガタガタとなるそれは徐々に大きくなり、女達の腹の奥まで振動が伝わってきた

それはただの地鳴りではないことに気がついた女は血の気が引いていく
これは大型の魔物が多数、こちらに向かってきていることに気がついてしまったからである


しかし既にそれは遅い
目の前には牛頭の大型の人形巨人の群れがいた

四足歩行でゾロゾロと樋爪を鳴らして接近してきていた魔物は既に目の前だ

獲物を見つけた魔物たちは前足をあげ、二足歩行となる
それは彼らの狩りの仕方であり、ギラりと光る長い爪で獲物を八つ裂きにするものだった


女「あっ、あぁ……」

少女「……だいじょうぶ?」

女「も、もうだめだ…… 私ここで死ぬんだ……」

少女「……?」

少女「……どうして?」

女「あなたも、私もあいつらに喰われるのよ…… 逃げられっこないわ」

少女「……じゃあ戦って勝てばいい」

女「なに、言ってるの……?」


女の疑問の言葉が聞こえるや否や、ミノタウロスは恐ろしい速さで少女に接近した

大きな体躯からは考えられないほどの速さ
長い爪が振り下ろされようとした瞬間、女は目を瞑る

目の前の惨状を見たくない一心だった

ばしゃっと肉がひしゃげるような不快な音がし、全身に鳥肌が立つ

少女が殺されたことになんの疑問も持たなかった
むしろ次に殺されるのは自分なんだとそんな恐怖で心は支配される

だが待てども待てども自分に死の爪が振り下ろされることは無かった
恐る恐る目を開けるとそこには、五体満足な状態で立つ少女の姿と、全長20メートルはあろうかという巨大な赤い龍の姿だった



少女「……炎龍いけー」

炎龍「グルルル……」


ミノタウロスは突如現れたドラゴンにたじろぐ
だが同朋を殺されたことで魔物達は怒りたち、怒声をあげながら襲いかかってくる


炎龍と呼ばれた龍は少女の前に立ち、多数の魔物を迎え撃った

ミノタウロスとは比べ物にならないほど強靭な爪でミノタウロスを真っ二つにし、胴体ほどの長さがありそうな尻尾を振るえば、鍛え抜かれ盛り上がったミノタウロスの胸板を凹ませ内蔵をグチャグチャにした

ドラゴンの一挙一動が必殺の一撃
そして極めつけはドラゴンの代名詞とも言える火炎の息だった

ゴオッという音を立てながら放たれた火炎はあっという間にミノタウロスたちを焼き尽くす
少し離れた女でさえ思わず声が出るほどの熱量からも威力はただ事ではないものだと予感させるのに十分だった

こうして集落一つ壊滅させた大型魔物の群れはいとも容易くドラゴンによって討伐された


少女「……ありがとう炎龍」

炎龍『おう、怪我はしてねえか少女』

少女「……うん、平気」


もはや伝説となって誰もが知るドラゴンに、女は度肝を抜かれていた
神話の中でしか語られない伝説の生物
知性が高く人の言葉を喋り、生物の生態系の頂点に君臨する最強の生物が目の前にいるのだ


女「ど、ドラゴン……? 本物……?」

少女「……うん」

女「ど、どうしてこんなところに伝説のドラゴンが? 絶滅したっていう話じゃ……」

少女「……絶滅してない。 生きてる」

炎龍『おい少女、なんだこいつは? 食っていいのか?』

女「ひっ!?」

少女「……炎龍はお茶目」

女「は……?」

炎龍『冗談だよそんなにビビるな人間。 だいたいお前みたいな貧相な体のどこに食うところがあるんだ』

女「え、あ、冗談?」

少女「……ドラゴンジョーク」

炎龍『半分本気だけどな』

氷龍『またそうやって炎龍は。 いけませんよ』

水龍『……歳食ってるだけのガキだから仕方ない』

炎龍『んだと水龍ゴルァ』

雷竜『ちょっとストップストップ! あんたらがここでやり合ったら少女とそこの子死んじゃうでしょー?』

少女「……おこりんぼ炎龍」

炎龍『水龍の野郎が喧嘩売ってきたんだろ』

水龍『事実を言われて腹を立てるところがガキなんだ』

炎龍『おめぇ死にてえようだな? ケリつけようぜ』

水龍『……誰がお前みたいなガキ相手にやるか』

雷竜『やーめーろっつうの!!』

氷龍『もーダメですよ本当に』

女「あ、あわわわわわ」


突如として目の前に出現した4体のドラゴンに女は圧倒される
慌てふためいているところに、ギラリと光る八つの瞳がこちらを向き、恐ろしさのあまり気を失ってしまった


雷竜『ねぇ少女ー? 本当に人間界で暮らすの?』

少女「……うん」

炎龍『悪いことは言わねえからやめとけってー、危険がいっぱいだぞ』

少女「……みんなが守ってくれる」

氷龍『もちろん力にはなりますが……万が一ということもあるんですよ?』

水龍『少女は小さすぎる』

炎龍『ちいせぇ人間の中でももっとちいせえからな』

少女「……うーん」

雷竜『子供のうちに経験するのもありかもしれないけど、大人になってからでもよかったんじゃないかなーって私は思うなぁ』

少女「……や! 人間界にいくの!」

炎龍『かぁー! もうダメだこうなった少女はオリハルコンの意志だ』

氷龍『ふふ、そういえば岩龍さん元気ですかね』

水龍『オリハルコン精製に勤しんでる』

炎龍『要はあいつの糞だろ』

雷竜『ちょっとやめてよ汚いなぁあはは』

水龍『笑ってるお前も同類だ』

少女「……そういえば出発前に岩龍からオリハルコン渡されてた」

氷龍『あれ、そうだったんですか?』

少女「……はい、これ」

炎龍『おーこりゃ立派な糞だな』

水龍『便秘なんだろ。 鉱物しか食わないから』

雷竜『好物が鉱物ーなんちゃって』

氷龍『最低ですね皆さん……』

少女「ふふ」


少女「……これを売れば人間界のお金をたくさん貰えるって言ってた」

炎龍『あぁ!? やめとけやめとけ!』

少女「……どうして」

氷龍『オリハルコンは人間たちの間では伝説の素材です』

雷竜『しかもそんな大きなもの売ったらね…… 変な意味で目立っちゃうよ』

炎龍『命が狙われかねねえ。 大人しくそれは仕舞っておくことだな』

少女「……そうなの? じゃあこれ重たいから捨てたい」

雷竜『じゃあ今度私が岩龍のとこに返しておくから、預かるよ』

少女「……ありがとー」ヨシヨシ

雷竜『ふふ、かわいいねぇ少女』

水龍『食いたいほどな』

炎龍『やめろや』

少女「……でも、じゃあお金どうしよう」

水龍『それなら炎龍の鱗を売ればいいだろう』

炎龍『はァ!?』

氷龍『いいかもですよ! 龍の鱗も希少品ですが、ある程度出回っててかなりの高値で取引されてますし』

少女「……そういう鱗ってどうやって人間は手に入れてるの?」

雷竜『私らがピューっと飛んで遊んでる時に落っこちるのよ』

少女「……なるほど、鳥の羽感覚」


水龍『というわけだ、鱗を取るぞ炎龍』

氷龍『ちょっと痛いけど我慢してね』

炎龍『ばかっ!! おいやめろ!!』


ブチッ!!


炎龍『グルルルアアアア!!』

少女「……ひっ!」

水龍『うるさいバカ』

炎龍『いてえな!! 背中とかもっと痛くないとこあっただろ! なんで脇腹なんだ!!』

氷龍『ちょっと炎龍太ったんじゃないですか?』

炎龍『あぁ? そりゃマグマの中から出て少女のお守りしてたからだろ』

雷竜『あー代謝落ちるからねー分かる分かる』

少女「……分かるの?」

水龍『言い訳などドラゴンの風上にもおけないな』

炎龍『てめぇこそ水でプカプカ浮いてるだけのくせに、なに調子こいてんだ、あぁん!?』

氷龍『また始まりましたね』

雷竜『もー、こいつらから少女を守る私たちの身にもなってよねほんと』

以上また今度


少女「……ここが街」

炎龍『おいおいマジで大丈夫かよ』

氷龍『大丈夫ですよ、私が縮小化の魔法でついてますし』

雷龍『私らも街の外から見守ってればいいし』

水龍『いざとなれば人間どもを葬りされば良い』

少女「……それはなるべくだめ」

炎龍『ったくよぉ、本当に知らねえぞー?』

雷龍『もーみんな心配性だなぁ』

少女「……いってきます」

少女「……氷龍、お願いね」

氷龍『なにかあったらちゃんと助けますから安心してくださいね』

少女「うん」

雷龍『じゃ、下りるよ少女』

少女「……うん!」


ドゴォォッ!!


門番兵「な、なんだ!?」

雷竜「グルルル……」

少女「……よっと」

門番兵「ど、どどどどドラゴン!!?」

少女「……雷竜、乗せてくれてありがと」

雷龍『気をつけてねー』

門番兵「な、なんでドラゴンがこんなところに! おい、応援を呼べ!!」

水龍『ちっ、おいうるさいぞそこのニンゲン』

門番兵「ひっ!? ドラゴンが2体!?」

炎龍『てめぇはよぉ? 黙ってドア開けときゃいいんだよヲイ』ギロリ

門番兵「さ、3体……だと……」

雷龍『私らの可愛い子が世話になるからさぁ? ちょっとそこは融通聞かせてくれるー?』

少女「……よろしくおねがいします」ペコリ

門番兵「……なんだこれは…… 災厄の日が来たというのか……」


少女「……ここが門番兵さんがいってた商人商会?」

氷龍『そうみたいですよ。 大きな建物ですねー』

少女「……おー」

氷龍『ニンゲンたちも少し見ないうちに文明的になって……』

少女「……いこ」

氷龍『ただ所詮はニンゲン、群れるしか能がないところは変わりませんが』

少女「……こんにちはー」

少女「……おぉ、中はもっと人がすごい」

氷龍『あっちで商いをしているみたいですよ。 そこで炎龍の鱗も売れるでしょう』

少女「……わかった」


商人「いらっしゃい」

少女「……これ売りたい」

商人「おいおいこりゃぁ! 龍の鱗じゃねえか!」

少女「……うん」

商人「こいつぁーたまげた! 俺も何十年と商売やってるがこんなに綺麗で立派なのは初めて見たよ!」

少女「……炎龍の脇腹」

商人「お嬢ちゃんこんな逸品をどこで手に入れたんだい」

少女「……くれた」

商人「誰が?」

少女「……炎龍が。 ちょっと痛そうだった」

商人「へ、へー……」

商人(このガキ、ただの馬鹿か? こりゃーいいカモだ)

商人(普通なら金貨1000枚はくだらないが……こいつになら100枚程度で騙せそうだ)

商人「お嬢ちゃん、そうだなー
龍の鱗は相場が難しいんだ」

少女「……そうば?」

商人「そう、なかなか出回るものじゃないから欲しがる奴がこれくらいの値段で買うって言うもんなんだわ」

商人「だから正直値段がつけにくいんだが…… 金貨100枚でどうだ?」

少女「……それってどれくらいのお金?」

商人「どれくらいって…… 普通に暮らしたら10分の1も使い切れないだろうよ」

商人「かなりいい暮らしが一生出来るくらいの額だぜ?」

少女「……うーん、そんなにいらない」

商人「は……?」

少女「……そんなに貰っても勿体ない」

商人(くはは! おいおいマジかよ! こいつ値段交渉どころか、自分から値段下げに来たぞ!?)

商人(筋金入りのマジの馬鹿だな!!)


氷龍『気に入りませんね』

商人「は……?」

氷龍『気に入らないって言ってるんですよ哀れなヒトよ』

商人「な、なんだ?」

氷龍『あなた、嘘をついていますね』ヒョコッ

少女「……氷龍」

商人「な……こいつはまさか……」

氷龍『私の目は誤魔化せませんよ?』

商人「こ、こいつ……! ドラゴンの子供か!?」

氷龍『あなた、フェアではない額でこの子に商談を持ちかけましたね?』

少女「……そうなの?」

商人「ぐっ……」

氷龍『あなたは知っていますか? ドラゴンには嘘がつけないということを』

氷龍『あなたの浅はかな考えが手に取るように読めますよ』

商人「な、なに……?」

氷龍『気に入らないんですよ。 なんならこの建物を氷漬けにしてあげてもいいんですけどね』

商人「わ、分かった! まさか伝説のドラゴンをお目にかかれるとは思わなかった!」

商人「失礼なことをした! 本当にすまない嬢ちゃん。 どうかそのドラゴンも怒りを沈めてくれ」

商人「この鱗は本当は金貨1000枚はくだらない代物だ、その値段でどうだ?」

少女「……うーん私にそんなお金は必要ない」

氷龍『ダメですよ少女。 ニンゲン同士対等な関係でいなくてはなりません』

氷龍『つけ上がらせてはならないのです』

少女「……うーん」


少女「……じゃあそれで売る」

少女「……だけどお願いを聞いてほしい」

商人「お願い……?」

少女「……私は人間界が良く分からない。 だから困ったことがあったら助けて欲しい」

少女「……ダメなら定期的にドラゴンたちの鱗とか脱皮した皮をもってくる」

商人「それは本当か!?」

少女「……うん」

商人「願ったりもない話だ! ドラゴンの素材が定期的に手に入るならこの商会はぼろ儲け確実だ!! 国相手に交渉ができるぞ!」

氷龍『……はぁこの子は全く……私たちをなんだと思って』

少女「……えへへ」

商人「よし、今から我々は君を最高の形でバックアップする! なんでも言ってくれよ!」

少女「……うん!」


少女「……これからどうしよう」

氷龍『ニンゲンはなにをして日々過ごしているのでしょうね』

氷龍『昔は皆家畜を世話して畑を耕していましたが』

少女「……都会は不思議」


グーーー


少女「……お腹空いた」

氷龍『狩りにでもいきますか?』

少女「うーん……」

少女「……あ、あっちからいい匂いする」



少女「……おいしそー」

「ここの名物だよ、良かったらどうだいお嬢ちゃん」

少女「……食べたい」

少女「……お金、これ」

「はぁ!? こりゃ純金貨じゃないか!!」

「こんなのお釣り用意できないよ!」

少女「……どうしよう、私これしかない」

「あんた一体どんなお嬢さんなんだい……」

少女「うー……でも食べたい」

女「はい、それ一つください」

「毎度どうも」

女「はい、どうぞ」

少女「……昨日の人」

女「うん、たまたま見かけたから」

女「昨日は助けてくれて本当にありがとう」

少女「……ううん、炎龍が助けてくれた」

女「じゃあ炎龍さんにもお礼言わなきゃね」


女「なにしてたの?」

少女「……街の散策」

少女「……人間界でどうやって生活していくのか考えてた」

女「うーんそうなんだ」

女「お家とかないんだよね?」

少女「……うん」

女「うーん……難しいね」

女「そうだなー……じゃあ私と来てみる?」

少女「……?」

女「私の過ごし方みれば少しは分かるかもしれないよ」

少女「……じゃあそうする」


女「じゃーん!」

少女「……ここは?」

女「ここは、冒険者ギルド会館!」

少女「……?」

女「冒険者っていうのはいわゆる何でも屋さんなんだ」

女「街の人のお仕事のお手伝いから猫ちゃん探し、それから魔物との戦闘までなんでもござれ」

少女「……へー」

女「他にもこのギルド会館には無料の宿泊所もあるからお金がなくても寝泊まりできるわ」

少女「……おー」

女「ちょっと荒くれ者が多いけど、食いぶち探すのに丁度いい仕事よ」

少女「……ふーん」

女「じゃ、入ってみよっか!」

少女「……うん」


ドタドタドタ!!


女「なんだか騒がしいなぁ」

少女「……?」

女「ねぇ、今日どうしたの? 騒がしいようだけど」

「それがよ、街の正門にドラゴンが現れたんだよ!!」

「まだ暴れたりはしてねえが軍も出動してギルドと連携して警戒しろって言われててな!」

女「あー……」

少女「……炎龍があそこで待ってる」

女「……全くもう何やってるのよ」

「敵対行動を取る場合には討伐しろとのことだ!」

女「なんだか、すごい大事になってるよ!?」

少女「……炎龍怒ったらニンゲン焼いちゃうかもしれない」

女「え゛」

少女「……止めよう」

女「なんか知らない内に爆弾抱えちゃってるよ、私ー!」


「警告する! 攻撃行動を取った場合、我々は速やかに反撃を行う!」

「伝説のドラゴンよ、何故ここに来たのか!」

炎龍「グルルル……」

炎龍『うっせーな少し黙れニンゲン。少女の声が聞こえなくなんだろ』

「少女とはなんだ!」

炎龍『黙れと言ったのが聞こえなかったか?』ボォッ

「こいつ、口に火を蓄えたぞ!」

「くそっ! やるのか!!」

炎龍『囀るな。 本当に小煩い奴らだ』


バサッ! バサッ!


雷龍『なーにやってんの?』

炎龍『おーす雷龍。 ここで寝てたらなんかニンゲンに絡まれた』

雷龍『そりゃあんたが目立つからでしょ』

「なぁっ!! ドラゴンが2体に!!」

水龍『お前は脳が足りないのだ。 そんなところにいたら騒ぎを起こすのは分かっていただろう』

水龍『いや、分からなかったか? 救いようのない馬鹿だな』

炎龍『てめぇこそ、出てきたら騒ぎになるの分かってんだろ? あァ!?』

雷龍『あーもう本当にあんたらいつもうるさい! 雷落とすよ!』

炎龍『おめーがドッカンドッカン一番うるせえんだよ!! 雨雲も呼んできやがって!!』

水龍『雨で鎮火して、死ねばいいのにな』

炎龍『てめぇこの野郎…… 蒸発させんぞ』

水龍『水蒸気爆発で死ね』

「も、もうダメだ…… この国はおしまいだ……」


少女「……通してっ!」

「なんだお前達は!?」

「おい、危ないぞ君!」

少女「……なにしてるの?」

炎龍『おう、おかえり少女』

水龍『このバカが目立つ所で昼寝してたからニンゲンが寄ってきた』

炎龍『うっせえ!』

少女「……炎龍ねむいの?」

炎龍『あん? まぁ少し』

少女「じゃあ寝よっか」

女「えぇー…… 今そういう状況ですか?」

雷龍『まぁドラゴンは自由奔放なんですよ』

氷龍『時にヒトを助け、時に裁き、時に共に過ごすのです』

水龍『調子に乗ったやつは食うがな』

女「ひぃっ」

「4体に増えたぞ……」

「おい! 君はいったい何者なんだ! このドラゴンたちはなんだ!」

少女「……?」

少女「私は少女」

少女「このドラゴンたちは私の保護者兼、ペット」

炎龍『おい? 誰がペットだ』ドン!

少女「……てへ」


「あの子のペットだと……?」

「ドラゴン使いということか……? ドラゴンなど使役出来るのか?」

少女「この炎龍はソドムとゴモラを焼いた伝説の龍」

少女「水龍はノアに語りかけて、人間の世界をリセットさせた伝説の龍」

少女「氷龍は北と南に氷の大地を作り、生態系のバランスが迫り上がる海で崩れないように守った伝説の龍」

少女「雷龍は……静電気がすごい龍」

雷龍『ちょっと! 私だけひどいよ少女!』

少女「……冬場は痛いから蓄電しないで?」

炎龍『ぐははは!! 雷龍だけ何もないでやんの』

水龍『無駄に歳をとっただけの無能か』

氷龍『そんな言い方ないじゃないですか!』

雷龍『もう龍界に帰る…… みんな嫌い』

少女「……っ! だめ、雷龍!」ギュッ

少女「……私雷龍すき。 いなくなっちゃやだ」

少女「置いてかないで? ごめんなさい雷龍」スリスリ

雷龍『うん…… 分かったよ』ペロ

少女「うひゃぁ!」

少女「べちょべちょ、ビリビリした!」

炎龍『ドラゴンに舐められる度にお前は毎回死にかけるな』

水龍『お前は火傷させるからな』

炎龍『おめぇは池を作るだろ』


「あ、あー少女とやらに聞く!」

少女「……うん?」

「その4体のドラゴンは君のペットということなのだな?」

少女「……うん」

水龍『ペットではないがな』

「我々に敵意はないのだな?」

少女「……ない。 ドラゴンは無益な殺生は好まない」

炎龍『腹減ったらニンゲン食うけどな』

氷龍『少女になにかした場合にはこの街を滅ぼしますが』

「くっ…… ではこのドラゴンは君に危害を加えなければ安全なのだな?」

少女「……うん。 私がこの街で暮らす間、何かあれば協力する」

「おぉ、それは心強い」

水龍『勝手に決めるな少女』

雷龍『まぁまぁいいじゃん! 暇つぶしにはなるって!』

炎龍『興奮すんな雷龍。 放電してんぞ』

少女「……というわけで宜しくお願いします」ペコリ


少女「……ごちそうさまでした」

女「……ごちそうさま」

少女「……おいしかった」

女「う、うん、そうなんだけどね」

少女「……?」

女「集中できないっ!! 露骨に私達目立ってるよ!!」

少女「……うん?」

女「みんな少女のことみてるよ!?」

少女「……顔になんかついてる?」

女「強いて言うならドラゴン?」

少女「……???」


少女「……ご飯終わった」

炎龍『うぃーっす』

氷龍『おかえりなさい少女』

女「…………」ピクピク

水龍『誰も少女に近づけないように威嚇しておいた』

雷龍『ていうかそんなことしなくてもふつー近付けないよね』

女「そりゃバカでかいドラゴンが、4体もいればね……」

炎龍『ったくよぉ、ニンゲン共ジロジロ見やがってよぉ。 見世物じゃねえんだぞ』

水龍『お前は見世物みたいなもんただ』

炎龍『あぁ? どういうことだゴルァ』

水龍『そういうことだアホゴン』

炎龍『ぶっ殺す!!』


女「見世物を超えた何かですけどね……」


炎龍『死んどけよ水龍』ゴォッ!!

水龍『お前のマッチの火攻撃など効くか』バシャバシャ

氷龍『やめなさい!!』パキパキ

雷龍『あーやばいかも』

女「やばい!? ドラゴンが言うやばいって想像がつかないんですけど!!」

少女「……みんな、めっ!」

炎龍『ちっ、てめぇ覚えとけよ』

水龍『お前みたいなチンケなやつのことをいちいち覚えてられるか』

氷龍『いい加減にしなさい!』

雷龍『ふーやばかったね』

女「……ちなみにどんくらいやばかったの?」

少女「……地図が大きく変わることになるくらい」

女「…………」




また明日

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