あやかし事務所のアイドルさん 番外編② (18)
※注意事項※
このSSはアイドルマスターシンデレラガールズの二次創作です。
続き物ですので、過去作(下記)を先に読んでいただければ幸いです。
登場するアイドルの多くが妖怪という設定になっております。
それでも構わない、人外アイドルばっちこい!という方のみご覧下さい。
プロローグ(【モバマスSS】あやかし事務所のアイドルさん【文香(?)】 - SSまとめ速報
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続(【モバマスSS】続・あやかし事務所のアイドルさん - SSまとめ速報
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続々(【モバマスSS】続々・あやかし事務所のアイドルさん - SSまとめ速報
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続続々(【モバマスSS】続続々・あやかし事務所のアイドルさん - SSまとめ速報
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番外編①(あやかし事務所のアイドルさん 番外編① - SSまとめ速報
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1489848689
事務所のアイドルたちの種族おさらい。
文香:不明(記憶を食べるチカラがある)
肇:狼女 紗枝:妖狐 芳乃:座敷童
みく:妖狸 志希:猫又 アナスタシア:雪女
奏:吸血鬼 夕美:アルラウネ
むかしむかし、ある所に妖怪だらけの奇妙なアイドル事務所がありました。
少女たちはアイドル業に励みながらも日々を楽しくにぎやかに生きています。
今回は彼女たちの日常風景を少し覗いてみましょう。
あやかし事務所のアイドルさん 番外編②:アイドル四方山話
・エピソード1:猫に寄りそう乙女の作法
とある休日、朝食を食べ終えた文香が寮のリビングで読書を始めようとしていると、同じくオフのみくから声をかけられました。
「おはよう文香チャン、もし暇だったらみくと一緒に猫カフェ巡りに行かないかにゃ?」
「おはようございます、みくさん。猫カフェですか……行ったことはないのですが、どのような場所なのでしょう?」
「みくがよく行くのはカフェコーナーと猫チャンと触れ合えるコーナーが別にあるタイプの猫カフェだにゃ。人懐っこい子が多いし、文香チャンなら猫チャンたちに囲まれて本を読むっていうのもきっと絵になると思うにゃ。あー、でもでも、折角行くなら読書するだけじゃなくて猫チャンたちのことも構ってあげてほしいにゃあ」
「みくさんは本当に猫がお好きなのですね」
「大好きにゃ!猫チャンは天使な小悪魔にゃ…」
うっとりと猫の魅力を語るみくの姿を見て、文香の脳裏にふと疑問が浮かびました。
「みくさんの猫アイドルという路線は猫が好きだから、という理由なのですか?」
「それも勿論あるにゃ。まあ、それだけじゃないけど…」
「他にも理由があるのでしたら、よろしければ聞かせて頂けませんか?」
文香の目は新しい本を見つけた時のようにキラキラしています。
「おおっと予想外の食いつきにゃ…実は文香チャンって志希チャンに負けないくらい好奇心強いよね。うーん、まあ別に隠してることでもないし、教えてあげるにゃ」
「まず一つ目の理由にみくが小さい頃に読んだ絵本の影響があるかにゃ。烏山岩燕さんっていう妖怪向けの絵本を描く作家さんがいるんだけど、その人の作品に猫又が主役のシリーズがあって、それがすごくお気に入りだったのにゃ」
「自由気ままに旅をして、その道中で困っている人を助けてあげたり、横暴な人を懲らしめたりしながら、また旅に戻っていく。風来坊っていうのかにゃ、いなせなナイスガイのとっても面白い話だったのにゃ」
「もちろん普通の猫チャンも大好きで、猫チャンを見つけると追いかけては時間を忘れて遊んじゃってお母さんに怒られたりもしてたにゃあ」
「何十年も前、みくがまだ小さい頃四国の方に住んでいたんだけど、猫チャンを追いかけて気付いたら全然知らないお寺にいてね。その頃は変化も下手だったから人に見つかるわけにもいかなくて、お寺の裏側で猫チャンを抱えて泣いていたのにゃ」
「そんな時に現れたのが猫又のお姉さんだったの! 『迷子の子猫ちゃんに呼ばれてきてみたら、子狸ちゃんまで居るとは思わなかったにゃー』なんて言いながらみくをお家まで連れて行ってくれてね、それはもうかっこよかったにゃ。そんな訳でみくは猫又に憧れるようになったのにゃ」
「数年前に両親を説得して猫チャンアイドルを目指して…最初は無所属でやってたんだけど、色々あってPチャンに拾ってもらって今に至る、って感じかにゃ」
「なるほど、人に歴史ありですね」
「ただ、志希チャンと会ってからは猫又への憧れをぶち壊されそうにもなってるんだけどにゃ…」
「なんといいますか、自由な方ですからね……」
「にゃっはっはー、呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」
噂をすれば、というやつでしょうか。ソファーの後ろから髪を爆発させた志希がひょっこり現れました。
「わっ、志希チャンいたの!?」
「んー今起きたとこー。で、なになに、呼ばれた気がしたんだけど」
「みくさんから猫アイドルを目指すきっかけについて教えて頂いた際に、志希さんの話題が出まして」
「ふんふんにゃるほど。そういえばみくちゃんが猫キャラな理由って聞いたことなかったなー。あたしにも教えてよ」
「教えてあげるのはいいけど、みくはネコチャンなの! キャラ言うにゃ!」
みくが改めて絵本のことや迷子になった時のことを説明していますが、文香に話したのと同じ内容なので省略します。
「かくかくしかじかって訳にゃ」
「なるほどね~、ってあれ、んー…その迷子になった話って正確には28年前じゃない?」
「小さかった時のことだからはっきりとは覚えてないにゃ」
「うーん、なら迷子になったお寺は覚えてないかな、屋島寺だと思うんだけど」
「あ、それは正解にゃ。あとでお母さんに教えてもらって…え、なんで分かるの?」
「志希さん、まさか……」
「あの時の子狸ってみくちゃんだったんだ、大きくなったね~」
「…なんやて?」
「今の話の猫又 イズ あたし」
「う、嘘にゃっ!! あの時のお姉さんは綺麗な黒髪だったもん!」
「お遍路さんを巡っていたから髪は黒くしてたよ? その時の納経帳も部屋を探せばあると思うけど」
明かされた衝撃の事実にみくは崩れ落ちかけましたが、なんとか踏みとどまりました。
「ま、まだにゃ、もしそうだったとしてもみくの心には風の猫三郎が…」
「ああ、やっぱり絵本って猫三郎シリーズのことだったんだ。うーん、これ以上みくちゃんにショックを与えるのは申し訳ない気もするにゃ~」
志希の様子から文香はこの後の展開をなんとなく察してしまいました。
「あの、志希さん、少し手心をですね……」
「でもごめんね、楽しそうだから教えちゃう! 岩燕ちゃんの猫三郎シリーズってあたしの体験談が元ネタなんだよ!」
「にゃん…だと…?」
「岩燕ちゃんとは昔馴染みなんだよねー。絵本のネタに困ってた時に相談されて、あたしがやんちゃしてた頃の話をしたらそれが採用されたの。いや~、世間って狭いネ!」
「 」
「み、みくさん、どうか気を確かに」
「み…みくのアイデンティティがクライシス、にゃ…がくり」
「いつもながらみくちゃんは良いリアクションをしてくれるね~、大変に気分が良い!」
全力の戦いを終えたボクサーのように真っ白に燃え尽きてしまったみくでしたが、数時間後に再起動しました。
「きっかけはどうあれ、みくはやっぱり猫チャンが好きにゃ。この気持ちは本物だから…みくは自分を曲げないよ」
そう話すみくは悟りを開いたような笑みを浮かべていたそうです。
・エピソード2:Moonside Radio 第255回(一部抜粋)
「リスナーの皆、こんばんは。【Moonside Radio】へようこそ、パーソナリティの奏よ。今回の素敵なゲストは先週に引き続き…」
「みくにゃ!」
「えっ、あっ、ふ、文香にゃ」
「あら、猫アイドルが増えたわね」
「仲間が増えるのは嬉しいけど、何故だか危機感を覚えるにゃあ」
「す、すみません……んんっ、文香です。今週もよろしくおねがいします」
「あー、文香チャン、せっかく編集点を作ってくれたところ申し訳ないんだけど、このラジオは基本的に噛んだりした方で放送されちゃうのにゃ」
「えっ?」
そう言われた文香が収録ブースの外に視線を送ると、ガラス越しに親指を立てているスタッフの姿が見えました。
「はい、そんなわけで今回は私、みくちゃん、ふみにゃんの三人でお送りするわ」
「ふみニャン顔真っ赤だにゃ」
「うぅ……」
「ふふっ、なんてね。気を取り直して最初のコーナー行きましょうか」
「一つ目のコーナーは【ふつおた】よ。それじゃあこのハガキを…はい、文香よろしく」
「で、では読ませて頂きます…『奏さん、みくさん、こんばんは。そして文香さんはじめまして。255回という記念すべき回に三人が揃われたことを大変喜ばしく思います』」
「255ってなにか曰くのある数字だったかにゃ?」
「特に思い当たらないわね。文香、続きをお願い」
「ええと……『255。そう、皆さんのバストサイズの合計です』」
「これはまた斜め下に突き抜けたわね…そうなの?」
「255を3で割ると…85。みくは85だからジャストだにゃ」
「私は86。ということは」
「は、84です……」
「ダウトね」
「ダウトにゃ」
「えっ?」
「文香チャンが84は嘘でしょ」
「寮のお風呂とかで見た限り、ねぇ…」
「あ、あの、女性同士とはいえそのように見つめられるのは……」
「ちなみに今文香がしている胸を腕で隠して身を捩る仕草、ポイント高いわよ。ラジオだからリスナーに伝わらないのが残念ね」
「あぅ……」
「文香チャンの羞恥心が限界みたいなので胸の話はここまでにゃ。続きは会員さん限定の後夜祭(デレパでいう二次会)で話す…かもしれないにゃ!」
「みくちゃんのステマはもはや芸の域ね、惚れ惚れしちゃうわ」
ちなみに254回・255回の放送後にチャンネル会員は数百名ほど増えたそうな。
エピソード3:オオカミさんとナイショの時間
「急にすまない、最近仕事が忙しくて溜まっていてな…」
「いえ、私もプロデューサーさんにしてもらうのは嫌いではありませんから…んっ…」
プロデューサーの無骨な手が壊れ物を扱うかのように優しく肇に触れます。
「力加減は大丈夫か?」
「ええ、ちょうどいいです…ふふっ、それにしても上手になりましたね。一度目はあんなに痛かったのに」
「あー、あの時はなぁ…しかしそんなに痛かったのか?」
「それはもう。プロデューサーさんには分からない痛みだと思いますけれど」
「すまんすまん。反省して勉強した成果を見せるから機嫌を直してくれ」
「あっ、そこ、いいです…はふぅ…」
後ろに座っているプロデューサーには見えませんが、肇の表情は早くも蕩け始めています。
「肇はここも好きだったよな、確か」
「あっ、やんっ、急にそんな…」
楽器を奏でるようにプロデューサーの手が躍るたび、肇の口からは悩まし気な吐息が漏れ出します。
10分ほど撫でまわされた後には、肇はふにゃふにゃになってしまいました。
「よし、そろそろ下に移ろうか。うつぶせになってくれるか?」
「いいですけど…この格好、けっこう恥ずかしいんですよ?」
「まあそう言うな。新しい道具も用意してある、絶対後悔はさせないから」
「むぅ、仕方ありませんね」
不承不承といった様子でうつぶせになる肇ですが、尻尾は正直なようでぶんぶんと大きく振られています。
『体は正直だな』なんて言いたくなりますが、前に似たようなことを言って思いっきり噛みつかれたことのあるプロデューサーは見ないふりをすることにしました。
「それじゃあ触るぞ」
「はい、どうぞ…ひゃうっ!」
「っとすまん、これでも強かったか」
「い、いえ、こちらこそすみません。触られるのは久しぶりなもので、敏感になっているみたいです」
「それならもっとソフトに…このくらいでどうだ」
「はい、そのくらいなら…っ! ふ…ぅっ!」
思わず声を上げてしまいそうになり、前もって用意しておいたタオルに嚙みつくことでなんとかそれを防ぎます。
さっきまでのふわふわするような気持ちよさに対し、今の気持ちよさはぞわりと鳥肌が立ってしまうような暴力的な快感です。
表情を見られることのないうつぶせの姿勢でよかった。
肇がそう思いながら声を出さぬよう耐え忍んでいるのを知ってか知らずか、プロデューサーはさらに責め立ててきます。
「よし、加減を思い出してきた。そろそろ道具も使うか」
そう言われた肇はぎくりと固まってしまいます。
既に堪えられるかどうかギリギリなくらい気持ちいいというのに、道具まで使われるわけにはいきません。
「ちょ、ちょっと待っ…んゆ~!?」
肇に触れることに夢中になっているプロデューサーに制止の言葉は届かず、無情にも道具が振るわれます。
「ぁっ! ま、まっ…ひぃん! ぅ、んん~~~!!」
止めようにも声を出すこともままならず、肇は襲い来る快感に耐えるようタオルを噛みしめることしか出来ません。
地獄のような天国のような時間はプロデューサーが満足するまで続くのでした。
「反省しましたか?」
「はい、すみませんでした…」
我に返ったプロデューサーは真っ赤な頬をぷくーと膨らませた涙目の肇に正座させられています。
「前も言ったと思いますけれど、尻尾は敏感なんですから…ストレスが溜まっていて癒しが欲しかったのは分かりますけれど、やりすぎはダメです」
「重ね重ね申し訳ない…」
「まったくもう…まあ、確かに気持ち良かったです。新しいブラシのおかげか尻尾もツヤツヤにしてもらえましたし、お説教はこのくらいにしましょうか」
「ああ、次は気を付けるよ。さて、肇に耳と尻尾をもふらせてもらって気分転換も出来たし、もう一仕事頑張るとするか」
「ふふっ、プロデューサーさんが癒されたのでしたら良かったです」
プロデューサーと肇が事務所の仮眠室から出ると、顔を真っ赤にした文香が本を開いて座っていました。
本の上下がさかさまになっているのは慌てて本を開いたためでしょうか、文香は本で顔を隠してぽつりと呟きました。
「……ふ、ふしだらなのはいけないと、思います……」
文香の誤解を解くのには小一時間ほどかかりましたとさ。
今回は以上になります。読んで頂きありがとうございました。
前日譚を書くつもりがとあるにゃんこ肇SSを読んだら自分ももふもふしたくなった、後悔はしていない。
そんなわけで次回こそ肇さんの前日譚になる予定です。
また今作とは関係ありませんが、3月20日までマリンメッセ福岡にて陶磁器フェアが開催されております。
備前焼の窯元さんも複数参加されていますので、お近くの方はぜひ足を運んでみてください。備前焼はいいぞ…
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