梨沙「パパのお友達が漁師やってるんだけど、カニがいっぱいとれたからアタシの家に送ってきてくれたの」
梨沙「でもほんとにたくさん送ってきたから、パパが事務所におすそ分けしなさいって」
梨沙「てことで、食べる? カニ」
心「スネ夫君かよ☆」
飛鳥「唐突な喩えだ」
梨沙「へへ、悪いわね飛鳥。このカニ三人分なのよ……ってなに言わせんのよ!」
心「さすが梨沙ちゃん、ナイスノリツッコミ!」
飛鳥「そもそも三人分ならなんの問題もないんだが」
梨沙「じゃあ今日の夜に飛鳥の部屋集合ね! カニ食べましょ!」
心「調理担当は任せて♪」
飛鳥「そして当然のようにまたボクの部屋か」
心「へへ、悪いね飛鳥ちゃん。キミの部屋三人用なんだ☆」
飛鳥「過去現在未来いずれにおいても一人用だよ」
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心「にしてもカニかあ♪ 久しぶりに食べる高級食材だあ♪」
飛鳥「ひとくちにカニと言っても、値打ちはピンキリだと思うけど」
心「でも梨沙ちゃんのパパさんの友達が送ってきたやつなんでしょ? たぶん高級よ高級☆」
飛鳥「ほぼ赤の他人なのに信頼しているのが不思議だ……」
梨沙「カニで思い出したんだけど、アタシ殻むくの苦手なのよねー」
心「へえ、そうなんだ」
梨沙「一気にむけずに、なんかぐちゃっとなっちゃうし、手もべちょべちょになるし。難しいわ」
飛鳥「ボクも似たようなものだ。食べる機会が少ないということもあって、なかなかコツがつかめない」
心「はぁとは殻むき得意だぞ☆ ちょちょいのチョイよ♪」
飛鳥「手先の器用さが要求される類のことは大抵できるんだね、心さんは」
心「まあ、はぁとは海と一緒に育ったみたいなところあるからねえ♪」
梨沙「長野県に海ないでしょーが」
心「バレたか♪ よく知ってたな♪」
梨沙「バカにしないでよね! この前社会の授業で習ったもん!」
飛鳥「カニの殻むきといえば、確かこの事務所にそれを得意とするアイドルが――」
美由紀「おはようございまーす!」
飛鳥「っと。噂をすれば影、というヤツだね」
心「美由紀ちゃん、おはスウィーティー☆」
美由紀「おはすいーてぃー☆」
心・美由紀「いえーい!」
梨沙「朝からテンション高いわね」
心「いやあ、はぁとのおはスウィーティーにちゃんとノリよく返してくれる子は貴重だわ♪」
美由紀「えへへ」
心「美由紀ちゃん14歳だよね? 確か近くに同じ14歳の子がいたような……」
飛鳥「やらない」
心「ちぇー」プクー
梨沙「飛鳥の言ってた、カニの殻むきが得意なアイドルって、美由紀のこと?」
美由紀「うん! 得意だよ。でもどうしてそんなこと」
心「あ、そうだ。なんなら美由紀ちゃんも来る? 今夜のカニパーティー」
美由紀「カニパーティー! なんだかすごく魅力的な響き!」
美由紀「でもいいの? 人数増えちゃったらみんなの食べる量がへっちゃうよ?」
梨沙「いいのよ、どうせいっぱいあるんだし」
飛鳥「3人も4人もさして変わらない。どのみちボクの部屋的にはキャパシティオーバーだ」
心「そのかわり、そこのふたりに殻のむき方のレクチャーしてあげて♪」
美由紀「そのくらいお安いご用だよ! よーし、みゆきお姉ちゃんにおまかせあれ!」
梨沙「あんまりお姉ちゃんって感じしないわね」
美由紀「がーん!」
飛鳥「ボクは別に独学でも」
美由紀「がーーん!」
心「ホントかわいくないなあ、この妹ども☆」
美由紀「………」
美由紀「みゆきがお姉ちゃんじゃ、だめ………?」
梨沙「うっ」
飛鳥「………っ」
梨沙「しょうがないわね! 今回は妹になってあげるから、ちゃんと教えなさいよ!」
飛鳥「………」コクリ
美由紀「やった!」
心「でもピュアな子に弱いんだよねえ、この妹ども☆」
その日の夜
美由紀「ここをこうして……こう! はい、むけました~♪」
飛鳥「……速い」
梨沙「もっかい! もっかい見せて!」
美由紀「じゃあもう一回やってみせるから、よく見ててね!」
心「おー♪ 結構いいお姉ちゃんしてるじゃん、美由紀ちゃん♪」
P「案外、先生役とか向いているのかもしれないですね」
心「かもねえ」
心「ところでプロデューサー、さらっとカニパーティーについてきたね♪」
P「いや、だって……俺もカニ食べたいですし」
心「素直でよろしい♪ ご褒美に殻むいてあげよっか?」
P「自分でできますよ。いくつだと思ってるんですか」
心「でもはぁとより遅いじゃん」
P「心さんが速すぎるんですよ。なんですかそのスピード」
心「佐藤家の食卓は早い者勝ちがルールだから、さっさとむかないとどんどんカニ取られちゃうんだよね♪」
P「スウィーティーのかけらも感じられませんね……」
心「プロデューサーも早いとこ慣れとかないと大変だぞー?」
P「……どうして俺が佐藤家の食卓のスピードに慣れる必要が」
心「………」
心「察しろバーカ」
飛鳥「………」
梨沙「………」
飛鳥梨沙「できた!」
美由紀「うんうん、ふたりとも上手になったね!」
梨沙「美由紀の教え方、わかりやすかったわ」
飛鳥「あぁ。キミのおかげで、一歩先へ進めたよ」
心「一皮むけたってやつだな♪ 殻むきだけに♪」
飛鳥「少しうまい」
梨沙「う~ん、カニおいしい♪」ニコニコ
美由紀「いっぱいむいたぶん、いっぱい食べようねー」
P「しかし、やっぱり一人用の部屋に5人入ると狭いな」
飛鳥「まあ、当然の結果だね」
P「でもうれしそうだな、飛鳥」
飛鳥「あぁ。独りの時間ももちろん大切にしたいところだが……こういう騒がしい時間も、貴重なものだ」
飛鳥「どちらも大事にしていきたい、ということかにゃ」
P「今噛まなかったか?」
飛鳥「噛んでない」
P「『かな』と『かに』が混ざったみたいな語尾に」
飛鳥「混ざってない」
心「混ざってないかにゃー☆」
飛鳥「………」ポカポカ
心「あたた、叩かない叩かない♪」
P「ははは」
梨沙「もぐもぐ♪」
美由紀「もぐもぐ♪」
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
美由紀ちゃん誕生日おめでとう
シリーズ前作:佐藤心「飛鳥ちゃんって絶対授業真面目に受けてないでしょー♪」
その他過去作
栗原ネネ「まってちがう」
渋谷凛「お内裏様と」 佐城雪美「お雛様……」
などもよろしくお願いします
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