魔王「私は世界征服なんてしたくない」 (27)

獣王「はっ、人間なんて俺だけで十分だぜ」

霊王「その台詞は三下が言うもの。あまり優雅とは言えませんわね」

獣王「なにおうっ!?」

竜王「やめぬか。魔王様の御前であるぞ」

海王「その通り」

獣王「………すまねぇな」

側近「四天王よ。話は済みましたか」

魔王「………」

獣王「おう」

霊王「はい」

竜王「待たせたのう」

海王「済んだ」

側近「では魔王様、人間どもを殲滅する準備は整いました」

獣王「獣王以下、魔獣軍六万四千」

霊王「霊王以下、魔翌霊軍三万五千」

竜王「竜王以下、竜兵軍二万一千」

海王「海王以下、海魔軍五万八千」

側近「合計十七万八千もの魔物魔族があなた様の一言で動くのです」

側近「さぁ! 命令を! 人間を滅ぼせと命ずるのです!」

魔王「………」

魔王「………」

魔王「………」

魔王(私は世界征服なんてしたくない)

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獣王「どうしたんだ、魔王様はよう」

霊王「黙りなさい。魔王様は今沈黙という答えを返したのよ」

獣王「は?」

霊王「魔王様が命令を出すまでもない」

霊王「人間ごとき、眼中にないということよ」

獣王「な、なんてお方なんだ。戦争、そんなことですらねぇってことか」

霊王「えぇ、その期待に応えれなければおそわくわたくしたちも………」

獣王「………っ」ゴクリ

側近「………解散!」

獣王「おう!」

霊王「任せてくださいまし!!」

竜王「ふぉっふぉ、それじゃあこの老骨、魔王様のために」

海王「………一網打尽」

魔王「………」

魔王「………」

魔王「………」

魔王(どうしよう)

側近「どうしたんですか魔王様」

魔王「世界征服、しないといけないのか」

側近「あ、魔王様仮面とっていいですよ」

魔王「………」モゾモゾ

魔王「ぷはぁっ」

魔王「世界征服したくない」プクー

側近「またわがままですか魔王様」

魔王「世界征服とか興味ないですし」

側近「あなた様は魔王なのですからもっとしっかりなさってください。したくなくてもやらなければならない。それが上に立つものの責務であります」

魔王「なりたくてなったわけじゃないもん」

側近「だとしてもです」

魔王「理不尽」プクー

魔王「そもそもなんで戦争してるのかがわからない」

側近「それは人間が魔物を殺害するからです」

魔王「人間を殺す魔物もいるじゃない」

側近「そうですがその理屈ではもう両者の争いは終わりませんよ。こちらが武器を収めたところで、相手は私たちの首元を刃を向けることをやめないでしょう」

魔王「じゃあどうすればいいの。私は世界なんていらない」

魔王「自分の六畳一間でゆったりできれば十分」

魔王「そもそも世界広すぎて怖い。なんでこんなに世界は広いの。なんでこんなに世界は青いの?」

魔王「世界なんて端から端まで徒歩5時間ぐらいでいいじゃない」

魔王「それくらいがちょうどいい。うん、それくらいがいい」

側近「なに言ってるんですか魔王様。ほらあなたがしっかりしないと犠牲になる魔物が現れますよ?」

魔王「や」プイッ

側近「そんなお子様みたいな………」

魔王「じゃあ側近が魔王になってよ。変身の仮面あるから大丈夫でしょ?」

側近「魔王様ほど強くないので」

魔王「私だって強くない。女の子だから強くない」

側近「くしゃみの衝撃で床にひびが入る人がそれ言いますか?」

魔王「欠陥住宅」

側近「とにかくあなたが魔王ということは揺らぎないんですから諦めてください」

魔王「民主主義に目覚めるべき。立ちあがれ国民」

側近「民主主義なんて本の中にしかでてきませんよ。人間も魔物も独裁です」

魔王「ねぇ、側近」

側近「なんでしょうか」

魔王「やっぱりやらないとだめ?」

魔王「私は普通暮らして、普通に生きて、普通に死に「ダメです」

側近「あなたが普通に暮らし、生き、そして死ぬ。それを押し通すということは他のモノが普通に暮らせなくなり、普通に生きれなくなり、普通には死ねないということ」

側近「この国で最も恐れられ、崇められ、そうして世を太平する。それがあなた様の人生です」

側近「あなた様にしかできないことなのです」

魔王「側近………でもわた「魔王! 覚悟!!」

魔王「………誰?」

側近「勇者がいる、といった報告は聞いてませんが」

魔王「不法侵入者。警備は何を」

勇者?「やい魔王!! キサマには天誅あるのみ!! お命覚悟」

側近「この程度、魔王様の手を煩わせるほどでもありません、私が」

勇者?「魔王覚悟ー!!」ガキンッ

側近「? あぁ、そうか今魔王様は」

魔王「へくちっ」ゴォオォオ

勇者?「うわぁあああっ」キランッ

側近「お見事です。魔王様」

魔王「?」

側近「やはり魔王様はいつものお姿でないと魔王と思われないみたいですね」

魔王「じゃあ仮面いらないんじゃない?」

側近「だからいるんです」

魔王「むぅ」

側近「しかしさきほどのは勇者ではないようですよ」

魔王「誰?」

側近「あれは魔族の子供ですね。だからここまで入り込めたんでしょう」

側近「子供一人通してしまう警備には後で警告をしておかなければなりませんが」

魔王「かわいそう」

側近「警備とはそういうものです。皆、己がすべきこととその責任を持つのですよ」

側近「おそらくさきほどのは城下町の子供でしょう。飢えや病気で苦しむものもいますから」

側近「魔王様を恨むこともありましょう」

魔王「私が原因じゃない」

側近「責任はあなた様に」

コンコン

側近「魔王様、仮面を」

魔王「あれ、蒸れる」

側近「いいですから」ガポッ

魔王「あう」

側近「誰ですか」ガチャ

竜王「わしじゃよ」

魔王「じっちゃん」ガポッ

側近「仮面、とらない」

竜王「ほっほっほ。魔王就任めでたいのう」

魔王「じっちゃん、お小遣い欲しい」

竜王「ほっほっほ」チャリン

魔王「やった」

側近(魔王が部下にお小遣いを要求とは………魔族らしい、のでしょうか)

魔王「じっちゃん」

竜王「なんかの?」

魔王「じっちゃんが魔王になればよかったのに」

竜王「ほっほっほ、無理じゃ」

側近「そうです。竜王様からも言ってあげてください」

魔王「なんで? じっちゃん強い」

竜王「魔王ちゃんの方が強いと思うがのぉ」

竜王「それにワシには王になるに必要な素質がないんじゃよ」

魔王「私、魔王になる素質なんてない」

竜王「いいや、魔王ちゃんはしっかり持っとるよ」

魔王「?」

竜王「いずれわかるさ。ほっほっほ」

魔王「………?」

側近「ところで竜王様、なにか魔王様に御用で?」

竜王「おぉ、そうじゃそうじゃ。伝えたいことがあったのよ」

側近「なにか?」

竜王「勇者、生まれたぞよ」

側近「もう、ですか」

竜王「今までの歴史を思い出すと遅すぎたぐらいじゃがのう」

側近「女神の加護は?」

魔王「なにそれ」

側近「なんで知らないのですか魔王様。勇者は人間たちの中でも特に強く女神の加護を受けているものの事です」

側近「鍛えれば鍛えただけ強くなり。常人を大きく超え老年の達人にすら迫るという力をもち」

側近「心の臓を貫かれても一日もたてば復活するのが勇者です」

魔王「なにそれ卑怯」

側近「その勇者の進行を止めるのが我ら魔王軍の使命。そしてあなた様の人生なのです」

魔王「どうしよう」

側近「勇者の侵攻を撃退しながら人間界を手中に収めるしかないでしょう。女神の信仰が薄れれば勇者の加護も消えましょう」

側近「竜王様。勇者が魔王城に到着するまであとどれくらい猶予がありますか」

竜王「一年は余裕があるぞい」

側近「そうですか。では魔王様には」

魔王「えー」

側近「内政の仕事を。まずは城下町に蔓延る問題から解決していきましょう」

魔王「え?」

側近「いかがしました?」

魔王「勇者倒すとかではないの?」

側近「一年余裕がありますから」

魔王「弱いうちに叩き続ければ」

側近「なりません」

魔王「なんで?」

側近「勇者に勇者の道理があるように、魔王には魔王の道理があるのです。勇者と魔王は魔王城で戦うものと神代から決められている決まり事なのでございます」

魔王「………………………………なんで?」

魔王(まぁ、戦いよりは好きかな。ゲームでしたことあるし)

魔王「わかった」

側近「ようやく魔王としての責務を果たす気になってくださったので」

魔王「なにをすればいい?」

側近「では早速仮面をつけて向かいましょう」

魔王「うむ」

カリカリカリ

カリカリカリ

側近「魔王様、ここの文字、間違ってます」

魔王「あぁ」

カリカリカリ

カリカリカリ

側近「魔王様。こちらにハンコを」

魔王「あぁ」

ポン

側近「これが城下町の住民の意見要望をまとめたものですので目を通しておいてください」

側近「次回の会議で話し合いますのでご自身の意見も含めてお考えになってくださいね」

魔王「あぁ」

魔王「………」

魔王「………」

魔王「………」

魔王(思ってたのと違う)

魔王「側近よ」

側近「はっ。いかがされましたか魔王様」

魔王「城下町はこんなにも不平不満であふれているのか」

側近「力が強いものほど上に立つのが魔族ですから。力が弱いものほど虐げられましょう」

側近「今こうやって意見要望を聞いてはいますがその前はかなりひどいものでした」

側近「魔族の中で上下ができ、上のものは下のものを奴隷扱い。上流魔族専用の居住区などもうまれる始末」

側近「今でも完全に消え去ってはいないため今日のような魔族もいることでしょう」

魔王「知らなかったな」

側近「覇道にはこのような歴史不要かと思いまして」

魔王「側近」

側近「なんでしょう」

魔王「城下町に視察に参るぞ」

側近「は? なぜです魔王様」

魔王「義憤にて魔王、城下町平定する」

側近「魔王様が城下町で暴れれば下級魔族巻き込まれること必至ですよ」

魔王「ではどうすればいい」

側近「そのためにこうして書類を書いているのです。ほら、手を進めてください」

魔王「………うむ」

側近「魔王様は流されやすいのですから、もう少し自分というものをもってですね」クドクド

魔王(………私は世界なんて知らない)

魔王(私はこんな世界なんていらないのに)

魔王「といっても言うことを聞かないのが私。言うこと聞かないのって魔族っぽいし、きっと側近も許してくれるはず」コソコソ

魔王「………にしても城下町とはこんな感じだったのか。私は軟禁状態だからな。城からみた城下町は知っていても経験したことはない」

魔王「騒がしい。城とは大違いだ」

魔王「それに………」

魔王(そうか、これが世界か)

魔王「価値があるものではないな」

売り子「ちょいとそこのお嬢さん」

魔王「お嬢さん? 私のことか?」

売り子「ちょいとうちの店寄ってきなよ、美味しいもの、美味しいお酒いっぱいだよ」

魔王(あぁ、仮面をつけてないから私だとわからないのか。変装いらずで楽)

魔王「酒は好きじゃない。というかじっちゃんから禁止されてる」

売り子「じゃあ食べ物だ。おいしいものなんでもあるよ~」

魔王(金はあるが………まぁ、庶民の生活を見るのが目的だし、いっか)

魔王「分かった。では案内してもらえるか?」

売り子「はい、一名様ご案内~♪」ニシシ

魔王「ずいぶん歩くな」

売り子「うちはちょっと人気のないところに店を構えてるんだよ」

売り子「ここさ、ここ」

魔王「寂れた店」

魔王(看板もなにもない。これじゃあ客が来ないわけだ)

売り子「ぐっ、お客さんはっきりいいますねぇ」

魔王「ここ、下りればいいの?」

売り子「ではごゆっくりお楽しみに~」ニシシ

カツカツカツ

魔王(地下。不便。暗い。店作る場所間違ってる)

魔王「ここか」

ギィィィ

サキュバス「あ、お客さんきた~」

魔王「サキュバスか」

サキュ「あ、お客さん知ってる系の人? まぁいっか~」

魔王(何がいいんだろう)

サキュ「まぁまぁこっち座って~」

魔王「………臭う」

サキュ「あ、お香焚いてるからかなぁ。良い匂いでしょ」

サキュ「あはっ」

魔王(………何が面白いんだろう)

サキュ「む~ お客さんも笑って笑って」

魔王「面白いことがない」

サキュ「もうっ。まぁいいけど~」

サキュ「はい、メニューだよ♪」

魔王(高いな。これがふつうなのかな。庶民金もってるな)

魔王「じゃあこれとこれ」

サキュ「はいは~い♪」

サキュ「あ、お客さんこっちみてみて~」

魔王「?」

サキュ「やっぱりお客さん顔整ってるね。サキュバスになれるんじゃない? なんちて♪」

魔王(なんとサキュバスはなれるものだったのか。なろうとは思わないが)

魔王(でも魔王よりサキュバスのほうが………いいわけないか)

サキュ「むぅ。お客さんもスマイルスマイル。笑顔が幸せの秘訣だよ」

魔王「幸せじゃないと笑顔にならない」

サキュ「じゃああたしが幸せにしてあ・げ・る」サワサワ

魔王「!?」ビクッ

サキュ「なんてうっそでーす。サキュバスジョーク☆ 笑ってよ♪」

魔王「趣味が悪い」

サキュ「うふふ、お嬢ちゃんには早かったかな?」

サキュ「あ、お料理きたよー。食べよ食べよ」

魔王(なんで店員も食べるんだろ)

魔王(じっちゃんにこんど聞こ)

魔王「………」

魔王(あんまり美味しくない)

サキュ「そういえばお客さんはどこから来たの? ここらへんじゃ見ない顔だけど」

魔王「まお―――マオー村」

サキュ「聞いたことないなー。どこそれー」キャハハ

魔王「遠いところ。村長が堅物だから出てきた」

サキュ「おっけーおっけー☆ 城下町はどんな人でもうけいれちゃうよん♪」

魔王「良い場所なのか?」

サキュ「少なくとも私にとっては良い場所☆ ほら食べて食べて?」

魔王「良い場所…か」ポリポリ

魔王(あの子供にとっては良い場所ではないようだけど)

サキュ「いっぱい食べたね~。お腹いっぱいになったら眠くなるよね」

魔王「……全然」

サキュ「え!?」

魔王「どうした」

サキュ「なんでもないよ~☆ 眠くならない人なんているんだってびっくりしたんだ♪」

魔王「ふつう」

サキュ「わたし眠くなっちゃうな~ こうやって」ゴロン

魔王「服、はだけてる」

魔王(側近なら怒ってるな)

サキュ「えへへ♪ どうセクシー?」

魔王「そういう趣味はない」

サキュ「えぇ!?」

魔王「これは普通ではないはず」

サキュ「そ、そうだよね~♪」

サキュ「あ、私手相みれるんだ☆ 手を見せて☆」ズイッ

魔王(近い)

サキュ「あ、綺麗な手。それに綺麗な」

サキュ「眼」ポワワン

魔王(変な感じ。あぁ、なるほどこれ)

サキュ「どう?」

魔王「離れてほしい」

サキュ「な、なんで!?」

サキュ「なんで効かないの!?」

魔王「私には効かない。そういう体質だから」

魔王「なるほど、やっぱりここにきてよかった」

魔王「やっぱり碌なものではないってことが分かった」

サキュ「なにものよあんたっ」

魔王「うるさいなー」ドンッ

サキュ「きゅぺっ」

魔王「この臭い。どこからだろう。嫌な感じ」

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