先輩「この会社、ブラックだな」後輩「今更ですよそれ」 (90)

後輩「まだ仕事終わらないんですか」

先輩「なんでだろうな」

後輩「なんででしょうね」





先輩「もう帰っていい?」

後輩「止めませんけど、明日が大変ですよ?」

先輩「…やるかぁ」

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*


後輩「コーヒーでもどうぞ」スッ

先輩「さんきゅー。ゴク……苦っ」

後輩「すみません、そっち私のでした」

先輩「おっぱい揉むぞコラ」

後輩「セクハラで訴えますよ」

先輩「……早くそっち渡せ」

後輩「どうぞ」スッ

先輩「ったく、何度このやり取りを……けほ…苦っ」

後輩「すみません、そっちもブラックです」

先輩「先に言え」

後輩「言おうと思ってたんですけどね~。お砂糖どうぞ」スッ

先輩「ん。……あぁ。美味い」フゥ

後輩「先輩ブラック飲めないんですね」

先輩「何度も飲めないって言ってるのに、お前はブラックを差し出してくるよな」

後輩「いい加減気づきましょうよ」

後輩「この会社の様に、先輩にはブラックがお似合いってことですよ」

先輩「誰が上手いこと言えと」


後輩「……はぁ」

先輩「……ふぅ」






先輩「今日も徹夜でバグ潰しか……」ズーン

後輩「私なんて、明後日までにこの量のモデリング終わらせなきゃなんですよ……」スッ

後輩「夢見てゲーム会社入ったらこの有様です」

先輩「世知辛ぇ……」


*


先輩「そういや、何で後輩は俺しかいないこんな場所で作業してるんだ?」

先輩「キャラデザって隣じゃなかったっけ――――あっ」ハッ

先輩「後輩、俺はお前の味方だからな……」ポン

後輩「ハブられた訳じゃないです」

先輩「まさか俺のこと…!?」ドキッ

後輩「好きでも無いです。あといちいち反応がキモいですよ」

後輩「隣、狭くて三人分のスペースしか無いんです」

後輩「なので一番下の私が…って感じですね」

先輩「もうボッチじゃなくなったんだな」

後輩「お陰様で、ね」

後輩「それより先輩こそ、何故こちらに?」

先輩「ハブられた。おめーの席ねぇからって…」

後輩「ですよね」

先輩「ですよねってなんだよ」

後輩「なるべくしてこうなったと言いますか」

先輩「良いもん。あんまり人が居ない場所の方が集中して出来るし!」

後輩「集中力乱れまくってませんか?」

先輩「そんなエロい体してる後輩が悪い」

後輩「……ヘンタイ」

先輩「これからも俺のストレス発散の為にセクハラされてくれ」

後輩「最低ですね。彼女とかいないんでしょうねきっと」

先輩「失礼な」

後輩「いるんですか?」

先輩「…いないけど」

後輩「ですよね」

先輩「なにこの後輩、腹立つわ~」

後輩「これからも私のストレス発散の為にイジられてくださいね」ニコッ

先輩「……ヘンタイ」

後輩「私の真似しないでください」


*


先輩「終わんねぇ…バグ潰したと思ったら違う所がって無限ループしてる」

後輩「大変そうですねぇ~」

先輩「こいつ他人事みたいに…」

後輩「他人事ですからね」

先輩「言っとくけどな、俺らがこうやってしないとゲームにならないんだぜ?」

後輩「そうですよ。だからちゃんとお願いします」

後輩「苦労と愛を込めて作り上げたものが、クソゲー呼ばわりされるのは嫌ですから」

先輩「妙案を思いついた!」

後輩「早くバグ潰してくださいよ」

先輩「まぁ待て、焦ってもバグは潰れんぞ?」

後輩「先輩が手を止めなければ潰れます」

先輩「このバグさ、仕様として入れたら良いんじゃないか…?」ゴクリ

後輩「良い訳ないじゃないですか」

先輩「『えっ?これ明らかに不具合のバグだよね?』…いいえ、仕様です」キリッ

先輩「ほら!乗り切れる!」

後輩「ちなみにどんな感じなんです?」

先輩「ボス戦前にパーティ変更しようとするとフリーズするバグ」

後輩「致命的で、クソゲー待ったなしですねそれ」

先輩「だよねぇ~…はぁ……」


*


先輩「おっぱいにはさ、無限の可能性を感じるんだ」

後輩「急にどうしました?」

先輩「俺は後輩のおっぱいに夢と希望が詰まってると思う」

後輩「そうなんですか」

先輩「俺にも夢と希望を分けてくれないか?」

後輩「どうやって?」

先輩「揉んで」

後輩「触りたいだけですよね?」

先輩「そうとも言う」

後輩「そうとしか言わないですよ」

先輩「この煉獄の闇に染まりかけている俺に希望の光を……」

後輩 (時間は、深夜1時過ぎ…)チラ

後輩「深夜は変なテンションになるのは構いませんが、私に絡んでこないでくれますか」

後輩「それでは、私はそろそろ寝ますので。お静かにお願いしますね」ゴソゴソ

先輩「休憩室で寝ろよ」

後輩「この為にわざわざ寝袋を買ったんで遠慮しておきます」

後輩「それに、他人が入ってくるかもしれない、という緊張で落ち着かないんですよ」

先輩「俺は?」

後輩「先輩は別に」スルスルッ…

先輩「あぁ、そ…。てか、何度も言うが下着姿のまま寝るなよ。俺居るんだぞ」

後輩「私を襲ったりしますか?」

先輩「襲わねーよ」

後輩「なら良いじゃないですか」

後輩「寝る時は下着のみと決めているんです」モゾモゾ

先輩「じゃあ襲っちゃおうかな~」

先輩「男の前で下着姿になるってことは、いいんだろ?」

後輩「ではどうぞ」

先輩「えっ」

後輩「どうしたんですか。ほら、はやく」

先輩「いや、そのぅ……」

後輩「……いくじなし」ボソ




後輩「ふあ…ぁ……。おやすみなさい」zzZ

先輩「……おやすみ」


*


後輩「ひゃっ」ビクッ

先輩「朝だぞ。コーヒーの冷たさはどうだ」

後輩「首に当てないでくださいよ…。あとせめてホットでお願いします」

後輩「う"ぅ"…急に起こされたから頭痛い……」

後輩「アラームかけてるので、別に起こさなくても…」

先輩「それを起こすのが楽しいんじゃないか」

後輩「趣味悪っ。このクズをはやくどうにかしないと……」

先輩「寝起きの性格が悪すぎるな」

先輩「あーそれと、これ」スッ

後輩「なんです…?」

先輩「お前んとこのヘッドから渡された」

後輩「リーダーですか。ん~…げっ。一昨日渡したの全部やり直し……」

先輩「安心しろ。俺も増えてるから」

後輩「不安しか感じませんね…」


*


後輩 (はぁ…昨日は疲れた)

後輩 (やっぱりここで寝るより、家の布団の方が疲れは取れるなぁ…)スタスタ

後輩「おはよ~ございま~す」

後輩「…って、先輩まだ来てないじゃん」チラ

後輩「来てないというより、居るけど席を離れてるだけかぁ……ん?」

後輩「スマホにメッセージが。10分前……」


  先輩
【社員証をデスクに忘れたから助けて\(^o^)/】


後輩「……」ススッ


 後輩
【m9(^Д^)<プギャー】


後輩「よし、おっけー。仕事しよっ」


*


先輩「おいこら!なんで持ってきてくれないの!?」

先輩「入るのにすんごい手間かかったわ!」

後輩「メッセージに気がつきませんでした」

先輩「気づいてたじゃん!思いっきりプギャーって返してたじゃん!」

後輩「もしや…もう一つの私の人格が勝手に…?」

先輩「えっ、そんな」

後輩「う"っ……ククッ。ようやく抑え込めたか……」ニヤリ

先輩「お、お前は一体!?」

「あんたら何してんの…?」

後輩「ひゃあぁぁぁーっっ!///」ガタッ


*


「様子見に来たら、私はお邪魔だったかね?」

先輩「お邪魔でしたよ、不良ちゃん」

後輩「お疲れ様です……///。金髪さん」

金髪「私は不良だから染めてるワケじゃ無いって、何度言ったら…」

金髪「それで。後輩は進捗どう?」

後輩「先輩から先程アドバイスを頂いたので、もう少しで完成します。その後に見せに行こうかなと」

金髪「ほ~。こいつがアドバイスねぇ」

先輩「なんだよ」

金髪「いんや~なーんにもっ」ニヤニヤ

金髪「邪魔して悪かったね。じゃ、後輩。完成したら持ってきてね」スタスタ

後輩「はい」




後輩「……前から思っていたんですが、先輩と金髪さんはどういうご関係なんです…?」

先輩「同僚。それ以上でも以下でもない」

後輩「金髪さんって私達のリーダーなんですけど、その方と同僚って……」

後輩「もしかして、先輩って結構上の人なんですか…?」

先輩「かもしれない。お前の先輩だからな」

後輩「こうもオーラが違うものなんですね……」

先輩「上の人と知って、尚この言い分。失礼なやつだな」

後輩「先輩は先輩って感じがしませんよね」



先輩「……おい。俺は緊張させないように、ワザと砕けた態度でお前と接している」

先輩「だからってあんまり調子に乗るなよ。本来なら―――

後輩「……ぐす」ポロ

先輩「ちょ、えぇ!?」

後輩「…ヒック……しゅみませんでした……」ポロ

先輩「え、あっ……えと…ごめんウソウソ!」

後輩「本当ですか…?」グス

先輩「本当本当!冗談だって!」

後輩「……な"ん"で嘘つくんですかっ」

後輩「ちょっと……ぐす…。信じちゃったじゃないですか…!」

先輩「ごめん昼飯奢るからゆるちて!」><

後輩「……ぷんぷんですよまったく。ステーキでも食べに行きましょうか。一番高いやつ」

先輩「今月ピンチだから控えめに頼む……」

後輩「またギリギリの生活してるんですか?」

先輩「そう言う後輩は、今月も余裕そうだな」

後輩「むしろ余裕を持って生活するのが普通なんですよ」

先輩「結婚してくれない?」

後輩「……はい?」

先輩「管理とかキッチリしてそうだし、色々と全部任せたいわ」

後輩「そんな都合の良い様に扱われるなら、私じゃなくてもいいんじゃないですか」

先輩「……俺と結婚してくれる候補が後輩しかいない」

後輩「いや私もしませんよ」

今日は終わります

一応先輩は男性、後輩は女性です


*


後輩「コーヒーどうぞ」コト

先輩「さんきゅ。……苦っ」

先輩「またかよ、変えてくれ」

後輩「仕方が無いですねぇ」

金髪「ちゃ~す…って、あんたらまたやってんの」

先輩「金髪からも言ってやってくれ。カナリの頻度でされるんだ」

金髪「ふ~ん?」

金髪「そのブラックコーヒー、後輩が飲むの?」

後輩「ええ。勿体無いですし、私はブラック好きなので」

金髪「へぇ…」ジー

後輩「な、なんですか」

金髪 (確信犯かどうかわかんないなぁ)


*


先輩「コーヒーと言えばさ、この前ウインナーコーヒーを飲んだんだよ」

先輩「いやー、まさか予想以上に美味しくてビックらこいた」

金髪「アレは豪華なコーヒーって感じだよね」

後輩「豪華…なんですかね?」

先輩「後輩ってウインナーコーヒーは好きか?」

後輩「えっ…とぉ……」



後輩 (ウインナー…コーヒー??)

後輩 (ウインナーって、あの?)

後輩「き、金髪さんは飲めるんですか?」

金髪「私も割と好きだよ」

後輩 (変人な先輩だけならともかく、金髪さんまで好きとなると、やはりそういう飲み方を…?)

後輩「そう…なんですか。私はあんまり、ですかね」アセアセ

先輩「そうか。まあブラック飲むくらいだし甘いのはって感じか」

後輩「甘いと言うより、脂っこいのでは?」

金髪「えっ」

先輩「えっ」

後輩「えっ」

先輩 (脂……あぁ、生クリームのことか。確かに脂肪分が多いな)

先輩「そうだな、脂が多いから女性はちょっと飲み辛いよな」

後輩「ちょっとどころか、固形物と一緒なんてめちゃくちゃ飲み辛いですよ」

先輩「こ、固形物…?」

金髪「……」

先輩 (固形物……見方によっては生クリームも固形物になるのか)

先輩「飲み辛くはあるかもな。俺も混ぜるかそのまま食べるか迷ったわ」

後輩「混ぜるとは…全体的に?」

先輩「そうなるだろう」

後輩「美味しいのですかね、それ」

先輩「あ、後輩はそのまま食べるタイプ?」

後輩「そのまましか食べれなくないですか?」

先輩「そうかな。混ぜても美味しそうだけど」

後輩「まぁ……混ぜても構いませんが、どっちにしろ変わらないですよね」

先輩「あ~、確かに(味は)変わらないだろうな」

後輩「ですよね。(形状は)変わりませんよね」

金髪 (生クリーム混ぜたら味は変わるでしょ。アホか)

金髪「……ねぇ、後輩」

後輩「はい」

金髪「後輩は焼いたのと茹でたの、どっち派?」

後輩「迷いますが、私はボイル派ですかね」

金髪 (あぁ……)

先輩「ウインナーコーヒーにボイル…?一体どんな製法なんだ……」

金髪「後輩、ちょっとコーヒーのおかわり淹れに行こうか」グイッ

後輩「…? 構いませんが…」

先輩「ついでに俺のもお願い」


――


金髪「ここまで来ればいいかな…」

金髪「後輩。ウインナーコーヒーってどんなのか教えて」

後輩「どんなのと聞かれましても。ウインナーをそのまんまスプーン代わりに、コーヒーに突っ込んだやつですよね?」

後輩「まさかお二人が珍妙な飲み方をされるとは思いませんでしたが…」

金髪「……後輩ちゃん、ウインナーコーヒーってのはね、上にホイップクリームを乗せたコーヒーの事なんだ」ポン

後輩「へ…?ホイップクリーム?」

金髪「うん。正確にはウィンナーコーヒーって言うんだけど…」

後輩「ウィンナー…コーヒー……」

金髪「……」






後輩「っっ…///」ボンッ

金髪「黙っといてあげるから、アイツの話には適当に合わしときな」

後輩「…ひゃい」ウツムキ



――



先輩「随分と遅かったな。何かあったか?」

金髪「ガールズトークしてただけよ」

後輩「…そうでしゅね……///」

先輩「とうした、耳真っ赤だぞ」

後輩「……うぅ///」カァァ


*


後輩「先輩、今日飲みに行きましょうよ」

先輩「やだ」

後輩「何故ですか。こんなにも可愛い後輩が誘っているというのに」

先輩「お前は外で酒飲んじゃダメなタイプだよ」

後輩「私、お酒は強いですよ?」

先輩「強いだろうな。でもそれは飽くまで一般人と比べて、だ」

先輩「絶対に酔わない、なんてことは無いだろ?」

後輩「うーん、酔った記憶は無いんですけどねぇ」

先輩「違う。酔った‘‘時’’の記憶が無いだけだ」

先輩「酔うまでは確かに、結構かかるみたいだから強いと言える」

先輩「でもな、一定のラインを超えて酒を摂取したお前はヤバイ。主に絡みがな」

先輩「例えば4日前、飲みに行った時のこと最後まで思い出せるか?」

後輩「……はて? 先輩どうしましょう。途中からの記憶が喪失しています…」

先輩「それぐらいやべぇってことだよ」

後輩「ならもう、私と飲んでくれないのですか…?」シュン

先輩「今まで渋々付き合ってきたが、もう嫌だ」

先輩「酔ったお前を担いで送るのは疲れる」

後輩「……私の初めてをあげたのに」

先輩「言い方!」

後輩「純粋無垢な私に、手とり足取り教えたくせに」

先輩「お酒のことをな!」

先輩「お前が初めて酒を飲む席に付き合っただけだよ!」

後輩「むぅ。飲みに行ける時なんてあんまり無いのに……」プクー

先輩「ついこの前行ったばかりだけどな」

後輩「いいです。もう一人で行きます」

先輩「おういけいけ」

後輩「傷心した私はふらふらと居酒屋へ行くんです…」

先輩「ん…?」

後輩「泣きながらちびちびと飲んでいると、見知らぬ二人の男性が私を挟んで座ってきます」

先輩「あの……」

後輩「『可愛いね、一人?良かったら一緒に飲まない?』」

後輩「『もっと飲みなよ』『ほら、このお酒美味しいよ』」

後輩「『おーい。…ったく。ようやく酔ったか。おい』『あぁ、そうだな』」

後輩「そして…酔えば意識を失う私は、なすがままホテルに連れて行かれ―――

先輩「俺も行くから!リアルな妄想はやめてくれ…」

後輩「最初からそうしてください」

先輩「っ、こいつ…!」

先輩「なら聞くが。酔った場合、俺ならいいの?やっちゃうかもしれないぞ?」

後輩「良いですよ。期待してますね」

先輩「期待すんなよ」

後輩「…冗談です。手を出す気があるならとっくに出してますよね」クスクス

後輩「これでも一応、先輩のことは信頼してますから」ニコッ

先輩「そ、そうか」

後輩「はい」








後輩「……///」モジモジ

先輩「言ったあとに照れんなよ」


*


金髪「ちょい~す」スタスタ

後輩「おはようございます」

金髪「あいついる?」

後輩「今日はまだ来てません」

金髪「あの馬鹿、遅刻しやがって…」



後輩「……金髪さんと先輩って、どういうご関係なんですか…?」

金髪「おやおや。気になる?」ニヤニヤ

後輩「はい。金髪さんは私達の班のリーダー…」

後輩「というより、ゲームのキャラ関連のことほぼ仕切るくらいの人と先輩の関係が気になります」

金髪「そうねぇ。あいつね、私より二ヶ月くらい後にここ来たのよ」

後輩「では金髪さんは先輩の先輩…?」

金髪「一応ね」

金髪「あいつさ、最初はあんな感じじゃなかったんだよ」

金髪「もっと静かというか。ざっぱに言うとクール系…的な」

金髪「で。ある時、用事があったからあいつの所に行ったわけよ」

金髪「なんやかんやあって、マウス三つ使ってお手玉勝負することになったんだけど」

後輩「なんやかんやの部分が凄まじく興味を惹かれますね」

金髪「二人で同時に始めるもんだから、お互い上しか見てないじゃん?」

金髪「案の定ごっつんこ。私があいつの上に乗って倒れちゃったの」

金髪「そしたら何て言ったと思う?」

後輩「怪我をしてないかどうかとか…ですかね」

金髪「『クッション小さいけど、怪我してないか?』だよ」

後輩「クッション?」

金髪「後輩には大きいのが二つ付いてる」

後輩「む、胸ですか…///」

金髪「思わず腹パンして四の地固めしてやったわよ」

後輩「それは仕方が無いですね」

金髪「そこからかな、話し始めたのは」

金髪「その後、ちょっぴり私の仕事押し付けてやったり…」

後輩「先輩らしいっていうか…」






先輩「ちゃ~す。お、二人ともおはようさん」

後輩「おはようございます」

金髪「おはよ。後で遅刻届ね」

先輩「……」ジー

金髪「なによ」

先輩「やっぱり何度比べても酷い差だなぁ」トオイメ


後輩「…?」バイーン

金髪「……」ペターン


先輩「これが格差社会か…」

金髪「ふん!」ドスッ

レスありがとうございます

今日は終わります


*


後輩「しぇんぱい…仕事が終わりません……」カチカチ

先輩「洗濯バサミをカチカチさせて遊んでる間に、少しは減るんじゃないか」

後輩「この洗濯バサミは、自由を選択して生きているというのに。それに比べて私は…」

先輩「選択肢が不自由すぎるだろ」

後輩「私はいつまで仕事に挟まれて、生きなければならないのでしょうか」

先輩「死ぬまで」

後輩「なら、いっそここで死ねば解放されるのでしょうかね…」

先輩「それは困る。俺は後輩が必要だ」

後輩「えっ」

後輩「そ、そうですか。ふ~ん…///」

先輩「お前がいなくなると、他の奴に仕事が回って結果的に俺の仕事も増えそうだからな」

後輩「LANケーブルで首締めますよ」


*


先輩「悪い後輩。今日の昼は一緒に食えないかもしれない」

後輩「何かあるんですか?」

後輩「あ…。べ、別に一緒に食べれなくて寂しい訳じゃ全然無いですよ…?」

先輩「めんどくせぇ会議に来いと言われてしまった」

後輩「そうなんですか…お疲れ様です」

先輩「ということで、友人でも誘って食ってくれ」

先輩「っと、じゃそろそろ行くわ」スタスタ

後輩「いってら~です」フリフリ


――

――


後輩「お疲れ様です。って、お二人は?」

「片方は外。もう片方はご飯買いに行ったよー」

後輩「そうなんですね…」

後輩「あの、もしよろしければこれからご一緒に……」モジモジ

「んー、お昼?」

後輩「はい」

「ごめんね、今日やらなきゃいけないのが結構多くてさ。昼は簡単にここで済まそうと思ってるの」

後輩「そうですか…。失礼しました…」シュン

「お誘いありがとね、また今度誘ってよ」

後輩「は~い…」トテトテ…






「うぅ…ホントごめん…今日じゃなければ……」ズーン

「はぁ……可愛い後輩ちゃんの落ち込んだ顔は見てられないわね…」

「でも珍しいこともあるものね。いつもは先輩と食べてるのに」


*


後輩「……」モグモグ

後輩「一人で食べるのは久しぶり…」

後輩「…どうしましょう。何故か疎外感と虚しさがこみ上げてきます」

後輩「……」

後輩 (人が多く居るここで食べるべきではなかったですね…)

後輩 (そう言えば。一人で食べていると、ここに入りたての頃を思い出しますねぇ)


―――
――



後輩 (まずい。ほぼ誰とも話すことなくお昼になってしまいました)

後輩 (皆さん仕事で忙しそうですし、新人の私が話しかけていいものか…)

後輩 (というより、話しかけるなオーラを感じて躊躇ったのですが)

後輩 (迷った挙句、食事スペースで絶賛ぼっち飯を堪能……)モグモグ

後輩 (……)キョロキョロ

後輩 (ここに居る人は皆、楽しそうに友人と話している)

後輩 (対して私は一人寂しく角っこでお弁当をつつく…)

後輩 (まさか就職してまで、ぼっち飯を味わうことになろうとは)

後輩 (本当にここでやっていけるのでしょうか…)




『ここ座るぞ』ドサ

後輩『え、あ…。どうぞ』

後輩 (男性……面倒ですね)

後輩 (というか、普通座っても良いか確認をする筈なんですが…)ジー

『ん?なに?』

後輩『いえ…』

『うーん…?君、見かけないこだな』

後輩『えと…今日からお世話になります。後輩と言います』ペコ

『あぁ、新しいこか。そういや今日からとか言ってたな…』

『僕……いや。俺は多分、君の先輩になるだろう』

『だからまぁ、先輩とでも呼んでくれ』

後輩『わかりました』

先輩『君はどこ?俺はプログラム班』

後輩『私はキャラクターデザインの…』

先輩『うわぁ、あそこかよ。金髪にはもう会った?』

後輩『はい。今は仕事に必要な知識を教えて頂いています』

先輩『そっか。そしてお昼はぼっち飯と』

後輩『ぼ、ぼっちじゃないです…!』ガタッ

後輩 (なんなのですか!この失礼な人は!)

先輩『誰とも馴染めずぼっち飯。辛いなぁ』

後輩『わ、私は好きで一人で食べてるだけですので!』

先輩『しょんぼりした顔でお弁当をつついてたくせに?』

後輩『あわわわ…///』カァァ

先輩『君んとこの、話しかけ辛い人が多いだろ?』

後輩『…何故それを知っているんですか』

先輩『おいおい、俺は君の先輩だぞ。それくらい知ってる』

先輩『話しかけるなってオーラを感じて、誰とも話せず今に至る。だな』

後輩『ちっ…違いますしぃ!』ツーン

先輩『俺がここに座った時、『面倒だな』って思ったろ』

後輩『ぁぅ…』

先輩『言葉にしなくても、なんとなーく相手には伝わるもんなんだよ』

先輩『君もちゃんと相手と接すれば、わかるようになる』

後輩『そういうもの、なんですかね…』

先輩『なら1つ。良いこと教えてあげよう』

先輩『君の所の班は、シャイな人が多い』


―――


後輩 (なんて言っていましたが、果たしてそうなのでしょうか…)

後輩 (自己紹介の時、『何でも聞いてね』と仰ってくれましたが)

後輩 (いざ聞くと『社交辞令も知らないの?』とか思われるのが怖い…)ジー

『……』チラ

(なに、なになに!?後輩さんが凄く見つめてくる……///)

後輩『ふぅ……。あのぅ』

『…っ』ビクッ

『な、なに…?』

後輩『参考書のここがわからなくて…』スッ

『う、うん…。どこ、かな』ピト

後輩『あっ…///』

『ご、ごめん!手、当たっちゃって……///』バッ

後輩『い、いえ…』

『えと……』モジモジ



金髪『思春期の男女かっつの』

金髪『ていうか、お互い女なのに何で照れてんのよ』

『うぅ…』

後輩『なんとなく雰囲気が…』

金髪『そういや後輩。お昼に誰かと会った?』

後輩『あっ、男性の先輩に会いましたよ』

金髪『そっか。良かった』

金髪『それで、何か用があったんじゃないの?』

後輩『そ、そうでした。ここなんですけど…』スッ

『うん…。あぁ、ここはね…』


――
―――


*


後輩 (みたいなやり取りがあったのが懐かしい…)

後輩 (……)

後輩 (先輩は会議か~)

後輩 (先輩がいないと、こうも暇なんだなぁ…)





先輩「ここ座るぞ」

後輩「ダメです」

先輩「何故に!?」

後輩「今良い感じに思い出に浸っているので」

先輩「意味わからんわ」

後輩「先輩、会議は?」

先輩「意外と早く終わってな」

先輩「しょんぼりした顔で弁当つついてたやつが居たから、一緒に食おうかなと」

後輩「しょんぼりなんてしてません」

先輩「へぇ~」ニヤニヤ

後輩「む…ぅ。それはそうと、先輩はいつもコンビニのお弁当なんですね」

先輩「一番手軽に済むからな。後輩は作ってきてるんだっけ?」

後輩「一応。昨日の残りとか冷凍食品とか混ざってますけど」

先輩「よく作れるな、俺なんて夜も惣菜とかだ」

後輩「ダメですよ?ちゃんとバランスの良い食事をしないと」

先輩「オカンかよ」

先輩「っても俺、自炊なんてできないしなー…」

先輩「白米を炊くくらいしかできん」

後輩「それ子供でもできますよ」

後輩「なら今度、なうでヤングなお弁当を先輩の為に私が作ってきてあげますよ」

先輩「お前何歳だよ…」


*

*


先輩「後輩、そろそろ上がれ。もう終電くるぞ」

後輩「先輩はどうするんですか?」

先輩「俺は帰ってたら間に合わん。泊まる」

後輩「なら私も泊まります」

先輩「後輩は泊まるほど忙しくないだろ…」

後輩「まあまあ」

先輩「お前なぁ」

後輩「とりあえず周りの電気を消してきますね」スタスタ


*


先輩「……ん~」ノビー

先輩「やばい、もう三時か…」

後輩「……zzZ」

先輩「後輩、起きろ。デスクで寝ると風引くぞ」ユサユサ

後輩「んん……お母さん、まだ朝じゃないって…」

先輩「俺はお前の母親じゃないぞ」

後輩「んー…うん…」ポケー

先輩「はよ寝ろ」

後輩「……っこ」

先輩「は?」

後輩「だっこ」

先輩「……」ペチンッ

後輩「痛っ……あれ?」ハッ

先輩「目が覚めたところ悪いが、もう寝ろ」

後輩「なら起こさないでくださいよぅ」

先輩「お前がわけわからんことを言い出すからだ」

後輩「変な先輩ですね…」ゴソゴソ

先輩「ふ…ぁ。はぁ、お前見てたら俺も眠くなってきた」

後輩「一緒に寝ましょうよ」

先輩「その言い方は若干マズイぞ」ゴソゴソ

後輩「うん…?」モゾモゾ

先輩「こいつ寝ぼけてんのかどっちなんだ…」

先輩「もういいや。寝よ」

後輩「……先輩」

先輩「寝ろ」

後輩「なんだかワクワクしません?」

先輩「しない。寝ろ」

後輩「いつもと違う所で一夜過ごすのは、何故か毎回ワクワクしますよね」

先輩「寝る」ゴロン

後輩「こっち向いてくださいよ」

先輩「向いたらお前の話に付き合わなきゃならんから嫌だ」

後輩「けち」



後輩「…少し寒いですね」ボソ

先輩「暖房つけるか?」

後輩「いえ。夜間に空調機を使うのは控えた方がいいのでは」

先輩「…そうだな」

後輩「代わりに、手を貸してください」

先輩「手…?」スッ

後輩「こうすれば…ほら、温かい」ギュッ

先輩「毛布の外に出てるんだから寒いだろ」

後輩「気持ち的にですよ、気持ち」

先輩「まだ寝ぼけてんのか…。早く寝ないと明日しんどいぞ」

後輩「は~い」


―――
――

今日はここで終わります


*


後輩「……」

先輩「だから俺はもう嫌だって」

金髪「良いじゃん、あんたが描いたキャラ結構評判良かったよ?」

先輩「どうせまたネタにされるのがオチなんだって」

金髪「まあまあ。私からすれば、ネタにされるだけマシよ」

先輩「プレイヤーには今も『世界観浮きまくり』だの『異世界生物』だのネットでネタにされてるんだぞ」

先輩「続編を作るって発表してからますますだ」

金髪「それは…仕方無くない?」

金髪「なんせ、あんたが描いたキャラが鬼畜難易度のミニゲームを担当しちゃったんだから」ニヤニヤ

後輩「……むぅ」

先輩「お前あの時わかってて俺に頼んだろ」

金髪「さーて、なんのことかな」

先輩「俺の下手くそなキャラを通す、お前もお前だわ」

金髪「デザインはなかなかパンチがあったわよ」ポン

先輩「ボツにしろってあれほど言ったのに」

金髪「それで―――

後輩「先輩!ここがわからないので教えてください」ズイッ

先輩「あん?後輩の師匠は目の前に居るだろ」

後輩「先輩が良いんです」

金髪「おやおや…」ニマニマ

先輩「俺に聞いたって答えられ無いと思うんだが…」

後輩「この際、答えられなくても構いません」

先輩「それ質問する意味あるのか」

後輩「あります」

金髪「はいはい。そろそろお昼だし、ご飯にしようよ」

金髪「あんた、お昼買いに行くんでしょ?」

先輩「そうそう。今日は来る時に買ってきてないからな」

先輩「じゃ、ちょっくら買ってきますかね。先に食ってていいぞ」スタスタ

金髪「はいよー」

後輩「……」




金髪「ねぇ後輩。あいつのこと好きなの?」

後輩「唐突ですね」

金髪「回りくどいのは面倒なのよ」

後輩「正直…わかりません」

後輩「ただ、先輩が他の女性と話をしているとモヤモヤします」

金髪「ふ~ん」

後輩「金髪さんは……やっぱり先輩のこと好きなんですか?」

金髪「好きだよ」

後輩「そう…ですか……」

金髪 (嘘だけど)

後輩「なら…仮に私も先輩のこと好きだとしたら、勝ち目が無いですね」

後輩「先輩と金髪さんは長い付き合い」

後輩「対して私は、短い付き合いですし…」

金髪「そんなの関係ないでしょ」

金髪「私が好きであろうが、今のあいつはフリーよ」

金髪「恋愛なんて所詮取ったもん勝ち」

金髪「後輩はモタモタしてて良いの?」

金髪「今までは私もあいつも、必死に仕事してたけど…」

金髪「そろそろお互い落ち着いてくる頃だし、私は告白しようかな~って」

後輩「っ…!」

金髪「私はもう少し後にするけど、後輩はどうするの?」

後輩「私は…」

金髪「あ、プライベートと仕事は別よ」

金髪「後輩があいつに告白しようが、私は怒ったりしないわよ」

金髪「ま、後悔しないようにしなさい」

金髪「それじゃ私も行くわね」スタスタ

後輩「あ、あの。お昼は…?」

金髪「他で食べる。あいつにはそう言っといて」

後輩「…わかりました」





金髪 (ちょっとキツく言い過ぎたかな)

金髪 (発破をかけてみたけど、どうだろ)

金髪 (あいつは悪いやつじゃないし、嫌いでもないけど…)

金髪 (いや~あいつが彼氏って色んな意味で想像がつかないな)

金髪 (これからも良き友人として、付き合う方が楽ね)


*


先輩「ただいま…て、金髪の不良ちゃんは?」

後輩「他で食べるそうです」

先輩「なんだよ自分で誘っておいて…」

先輩「まぁいいや。食うか」ゴソゴソ

後輩「はい」




後輩「…先輩」

先輩「ん」

後輩「再来週、いえ。来週、どこか一緒に行きませんか」

先輩「来週は…日曜日しか空いてないぞ」

後輩「私もです」

先輩「どこかってどこに行くんだ?」

後輩「久々の休みなので、温泉なんてどうでしょうか」

先輩「温泉、ねぇ。俺あんまり人が居るとゆっくりできないんだよな…」

後輩「そこはご心配無く。部屋毎に専用の露天風呂がある所へ行きますので」

先輩「一泊するのか?」

後輩「先輩が大丈夫でしたら」

先輩「うーん…一泊すると、家に帰らず出勤かぁ」

後輩「……」 

先輩「ま、いいか。会社に必要なものはあるし」

先輩「じゃあ明後日な。プランは丸投げするぞ」

後輩「お任せあれ。後日連絡しますね」


*

   ― 当日 ―


後輩「おはようございます」

先輩「おはよーす。早いな、まだ待ち合わせの15分前だぞ」

後輩「先輩こそ早いじゃないですか」

先輩「そりゃ待ち合わせって男の方が早く来るもんだろ」

後輩「じゃあ定番のやりとりでもしておきますか」

後輩「すみません、待ちました?」

先輩「今来たところだっつの。というか後輩の方が先に来てただろ…」

後輩「そうでしたね」

先輩「で。朝早くからってことは、温泉に直行じゃないんだろ?」

先輩「他の所に寄ったりするのか?」

後輩「いえ、直行します」

先輩「マジかよ」

後輩「本当はどこかで遊びたかったのですが…」

後輩「色々と悩んでいると、今日になってました。すみません」ペコ

先輩「じゃ、交互にお互いの行きたい所に行くか」

先輩「そういや、あんまり後輩のプライベートを知らなかったしな」

後輩「良いですね。そうしましょうか」

*


ススー…


「部屋の奥が露天風呂になっておりますので、ご自由にご使用ください」

「それでは、何かあればご連絡ください」ペコ

先輩「わかりました。ありがとうございます」

後輩「先輩、露天風呂を見に行きましょうよっ」ワクワク

先輩「まてまて、荷物置いてからな」ドサッ


――


後輩「ここですよね?」

先輩「らしいな」

後輩「開けますよ……えいっ」ガチャリ

先輩「おぉ…風呂だ」

後輩「予めお湯は張られてるんですねえ」

先輩「……もう疲れたし入りたい」

後輩「えぇ~もう入るんですか?」

先輩「お前が坂道を歩かせるからだよ…」

後輩「お互いの行きたい所って言ったじゃないですか」

先輩「俺がひーひー言ってるの見ながらニヤニヤしやがって」

後輩「もっと体力作りしないといけませんよ?」

先輩「デスクワークしてると体力落ちるんだよ…」

先輩「お前も同じようになるからな。今に見てろ」

後輩「どうですかねぇ~?」プクク

先輩「こいつ…」



後輩「先輩、露天風呂に一緒に入りましょうか」

先輩「は?一緒に…?」

後輩「はい」

先輩「俺は後からでいいよ。先に入れ」

後輩「嫌です」

先輩「妙なところで強情だな」

先輩「じゃあ俺が先に入る。後輩は後から入れ」

後輩「嫌です」

先輩「ならどうすれば…」

後輩「一緒に入りましょうって」

先輩「お互いタオル巻くなら妥協してやる」

後輩「仕方が無いですねぇ…」ヤレヤレ

先輩「何故俺が駄々こねたみたいになってんだ…」


*


後輩「先輩、頭洗ってあげますよ」

先輩「今日のお前は本当にどうしたんだ」

後輩「まぁまぁ~」

先輩「洗わなくていい。自分の頭を洗え」

後輩「シャンプーを……はい、わしゃわしゃ~っと」ワシャワシャ

先輩「俺の話聞いてたか!?」

後輩「こらっ。じっとしててください」

先輩「なんで俺は犬みたいに怒られてんの…」

後輩「痒いところはありませんね」

先輩「断言したぞこいつ」

先輩「中央の辺りをもうちょい」

後輩「では、次は背中を洗いますかね」

先輩「スルーしやがった」

後輩「冗談ですよ。この辺りですか…?」ワシャワシャ

先輩「……ん」

後輩「そろそろ流しますね」

先輩「はいはい」


*


チャポン…


先輩「は~良いわ。うん、もう良いって感想しか出てこない」

後輩「ですねぇ…」

先輩「……」

後輩「……」







先輩「話すなら今だぞ」

後輩「な、何のことでしょうか…?」

先輩「なんかあるんだろ。今日一日、妙にテンション高かったりずっとソワソワしてたからな」

後輩「先輩の観察眼は相変わらずですね。主人公パーティで解説ポジションになれますよ」

先輩「俺はそんなに鈍感系キャラじゃないからな」

後輩「……今日は、改めてお礼を伝えたかっただけです」

先輩「お礼を言われるようなことをした覚えは無いけど…」

後輩「先輩に無くとも、私にはあります」

後輩「一人ぼっちだった私を気にかけて下さり、ありがとうございました」

先輩「やっぱりぼっちだったんだな」

後輩「そこはスルーしてください」バシャッ





後輩「それで、その…」

後輩「先輩は…金髪さんのこと、好きなんですか?」

先輩「なんであいつが出てくる」

後輩「大事なことなので」

先輩「好きかどうか、ねぇ」

先輩「なら、仮に俺が金髪のことを好きだったらどうするんだ?」

後輩「…先輩のいじわる。ホントは気付いてるくせに」バシャ

先輩「俺は鈍感系キャラじゃないからな」

後輩「……もし好きだったとしても、私の気持ちは伝えておきます」

先輩「……」

後輩「私……先輩のこと―――わぶっ」バシャ

後輩「な、なんでお湯をかけるんですか!大事なことを言おうとしてるのに…!」

先輩「…後輩、その感情は勘違いだよ」

先輩「今君が言おうとしてる言葉は、俺が受け取るものじゃない」

先輩「雛鳥が初めて見たものを親と思い込むように、後輩に優しく接したのがたまたま俺だっただけだ」

先輩「偶然昼を共にし。たまたま仕事する席が近くて、接する相手が俺しかいなかっただけ」

先輩「だから―――

後輩「聞きたくありません!」バシャッ

先輩「……」

後輩「私だってそこまで鈍感なキャラじゃないです」

後輩「先輩が言おうとしてる言葉は、私が言って欲しい言葉とは逆のものということくらい察せます」

後輩「でも…偶然でも、勘違いでもありません…!」

後輩「私知ってますよ。何故先輩があの孤立した席に来たのか」

後輩「ハブられたって言ってましたけど、プログラム班には仕事をするスペースが空いてました。丁度一人分」

後輩「先輩の友人に聞きました。自らの意思であの離れた席に行ったって」

先輩「…たまたまだよ」

後輩「私のこと、気にかけてくれたんじゃないんですか…?」

先輩「どうだろうな」

後輩「先輩は…私のこと、嫌いですか?」

先輩「嫌いじゃない」

後輩「なら…!」

先輩「俺は…お前を幸せに出来る自信がない」

後輩「私は自分で幸せになります。自惚れ無いでください」

先輩「グイグイくるなおい」

先輩「あのなぁ、一応上司だぞ…」

後輩「プライベートは関係ありません」

先輩「俺が今日の誘い乗ったの、何故かわかるか?」

後輩「…?」

先輩「今日限りで、こうやってお前と二人でどこかに行ったりするのを最後にする為だよ」

後輩「どうして…」

先輩「愛情を伝えらても、結局俺を使い回して後輩もどこかに行くかもしれない」

後輩「そんなこと…!」

先輩「無いって言い切れるのか?」

後輩「言い切れます」

先輩「言い切れるのかよ」

先輩「こほん。で、だ。それなら、いっそ先に切った方が精神的に楽だ」

先輩「お前と俺は先輩と後輩。これからも変わることは無い」ザバッ

先輩「先に上がるぞ。上せないうちに後輩も出ろよ」

後輩「……はい」


*


先輩「そろそろ寝るか」

後輩「そうしますかねっと」ドサッ

先輩「何故布団をくっつける…」

後輩「今日で最後なんでしょう?」

先輩「そうだな」

後輩「なら、最後くらい私のわがままを聞いてくださいよ」

先輩「…わかったよ」

後輩「さ。寝ましょう」モゾモゾ

先輩「おま、こっちに入ってくんな…!」

後輩「良いじゃないですかぁ」

後輩「先輩、ぎゅってしてください」

先輩「なんでだよ」

後輩「おやおや~、拒否はしないんですねぇ」

先輩「うるせぇ」

後輩「ほらほら、どうせ今日が最後なんですし~」

先輩「はぁ。……これでいいか?」ギュッ

後輩「すんすん…。先輩、いい匂いがしますね。好きです」

先輩「体を洗ったボディソープはお前と同じだろ」

後輩「先輩の匂いが好きって言ってるんですよ」

先輩「もう寝ろ…いや、寝てくれ…」

後輩「抱きしめるのサボってないで、もっと強くしてください」

先輩「あんまりしすぎると痛いだろ」

後輩「それぐらいが良いんですよ」

先輩「はいはい…」ギュゥ

後輩「えへへ…///。おやすみなさい」

先輩「おやすみ」


―――
――

今日はここで終わります
次の投下で多分終わるかと思います


あの日から数ヶ月が経ちました


私と先輩の関係はずっと変わらないまま




でもそれは、あくまで職場での話…



後輩「先輩、金髪さん。おはようございます」

金髪「おはよ~」

先輩「…おはよう」

後輩「素っ気ないですね。何かあったんですか?」

先輩「あったよ。主にお前のせいだ」

後輩「昨日の夜ハッスルし過ぎた先輩の責任では?」

先輩「昨日は何もしてねぇよ!」

後輩「なら何だと言うのですか…」

先輩「確かに俺は、好きにして良いって言った。後輩の側に居るとも言った」

後輩「ありがとうございます…///」モジモジ

先輩「照れるところじゃない」

先輩「あのな、四六時中俺にくっ着き過ぎだ」

後輩「朝のキスやハグをしたり、お弁当を食べさせあったり、一緒に出社するどこがくっ着き過ぎなのですか!」

先輩「お前バカなの…?」

後輩「先輩、もう諦めましょう?」ポン

先輩「何故俺があやされてるんだ。あと肩に手を置くな」パシッ

後輩「あっ…」

先輩「全く。ここではあまり親しくするなと―――

後輩「ごめん、なさい……」

後輩「私、先輩と毎日一緒に居られるのが嬉しくて…はしゃいでしまって…」

後輩「迷惑、ですよね…」シュン

先輩「迷惑とは言っていない」

先輩「ただ…その。あんまり人の目がある場所ではやめて欲しい」

先輩「さっきも言ったが、ここは職場だ。公私混同するのは良くない」

後輩「すみません」

先輩「……その代わり。帰ったら何でも聞いてやるから、我慢な」

後輩「先輩っ…///」


金髪「はいストップ」

金髪「あんたら、私が居るの忘れてない?」

先輩「まだ居たのか」

金髪「居たわよ!ったく、朝からイチャコラして」

金髪「にしても、まさか結婚するとはねぇ。今でも驚いてるわ」

先輩「俺は敢えて突き放したつもりだったんだが…」

先輩「こいつ、『先輩と後輩がダメなら、関係を変えたら良いんですよね』つって婚姻届を突き付けてきたからな」

先輩「俺もまさか付き合う過程をすっ飛ばして、婚姻届にサイン求められるとは思わなかった」

後輩「それを受ける先輩も先輩ですよ」

先輩「まぁ、気持ちは伝わったよ」

後輩「せんぱいっ…!」キラキラ

金髪「もうわかったから。そのキラキラした空間作るのやめて」

先輩「すまんすまん。行き遅れた不良ちゃんには少々眩しすぎたか」ニヤニヤ

金髪「はあ?私は、あ え て 相手を作って無いだけですけどー!」

先輩「からの~?」

金髪「あんた調子に乗ってんじゃないわよ」

金髪「言っとくけど、私はあんたの恋のキューピッドだったワケよ。わかってる?」

先輩「もし俺達に男の子の子供ができたら、付き合う許可を与えよう」

後輩「先輩…子供だなんてまだ早いですよぅ…///」カァァ

金髪「一体私はいつまで待てばいいのよ。あと死ね」


*


*


先輩「終電が来るな…」チラ

先輩「後輩、そろそろ俺は帰るぞ」

後輩「私も一緒に帰ります」


 ジャリ…ジャリ……ジャリ


先輩「腕組まれると歩きにくい」

後輩「良いじゃないですか。私達はもう夫婦ですよ」

先輩「……はぁ」

後輩「~♪」


 ジャリ…ジャリ……


後輩「…なんだか、外だと視線を感じて恥ずかしいですね…」

後輩「ありがとうございました。そろそろ離れますね」ススー

先輩「まぁまぁ」ガシッ

後輩「ちょ、先輩…離して下さいよ」

先輩「俺達はもう夫婦なんだろ?ならこれくらい普通だよな」

先輩「おっと。騒いでると余計に恥ずかしくなるぞ?」

後輩「あぅ…」

先輩「さ、帰ろうか。このまま家まで」

後輩「先輩は本当にいじわるですね…」カァァ


*


ガチャッ


先輩「ほら家にもう着いたぞ」

先輩「なぁ、そろそろ機嫌を直してくれよ」

後輩「ふーんだ。恥ずかしいって言ってるのに…!」

先輩「悪かったって。でも俺だってたまにはそういうことしても良いだろ?」

後輩「むぅ!」プクー

先輩「何をすればお許しを下さるのですか、お嬢様」

後輩「……ちゅーして」

先輩「えぇ…」

後輩「むぅぅ!」

先輩「わかったわかった。するって」スッ

後輩「……ん」




先輩「これでいいか?」

後輩「ダメです」

先輩「したじゃん」

後輩「もう一回キスして」

先輩「またかよ」

後輩「さっきのはお許しのキス。今度は仲直りのキスです」スッ

先輩「わかったよ…」


後輩「ん……ちゅる。…まだ、だめです」ギュッ


後輩「はむ……ん…あむ……ちゅ…」





先輩「ふぅ……これでいいか?」

後輩「仕方が無いですね。許します」

後輩「それとただいま。 おかえりなさい…です」

先輩「おかえり。 ただいま」

後輩「ふふっ。誰かが『おかえり』と言ってくれるのは嬉しいですね」

先輩「…そうだな。それは俺も同じ気持ちだ」


*


先輩「ごちそうさま」

後輩「お粗末様でした」

先輩「いやぁ…結婚して良かったことは、毎日温かい手料理が出てくることだな…」シミジミ

後輩「先輩、お弁当ばかりでしたもんね」

先輩「コンビニや弁当屋の弁当も悪くなかったけど、後輩の手料理が一番美味い」

後輩「そう言ってくれると私は嬉しいです」

後輩「あ、コーヒー飲みます?」

先輩「お願い。砂糖ちゃんと入れてくれよ」

後輩「わかってますよ」フフッ




後輩「はい、どうぞ」コト

先輩「ありがとう。…ズズ」

先輩「俺好みの甘さを、もう把握してるなこれ…」

後輩「そりゃぁもちろん」フフン

先輩「あのツンケンしてた後輩が、いつの間にかこんなに甘くなるなんてな…」

後輩「私は最初から先輩には甘かった気がするのですが…」

後輩「コーヒーと同じく、見た目だけで判断するから砂糖に気づかなかっただけですよ」

先輩「ふぅむ…。コーヒー、ねぇ」

先輩「ブラックな後輩も、砂糖やミルクが混ざれば甘くなるっつーことか」

後輩「私がブラックなら、先輩はミルクですね」

後輩「…黒色って、染まるには対の白色しか無いんですよ」

後輩「他の色だとどうしても違うものになってしまいます」

後輩「先輩の色で、私は少しずつ染められちゃいましたね…」

後輩「これからも、ずっと私を染め続けてくれますか…?」

先輩「色は混ざった時点で純粋な物にはなれないぞ」

先輩「まぁ、上手い具合に混ざりあった色は鮮やかだとは思う」

先輩「ややこしくなったが…。後輩が水を刺さない限り、俺はずっと一緒だよ」

後輩「ありがとう…先輩」ギュッ

先輩「まぁ、黒って混ぜると半分くらい色が残る所は後輩みたいだよな」

先輩「もう少しコーヒーみたく、まろやかになって欲しいもんだ」

後輩「ふふっ…今更ですよ、それ」

     ―終―

  
  番外


  休日の後輩


:朝


後輩「おはようございます。先輩」

後輩「そりゃぁ近いですよ。わざと密着していますので」



後輩「今日はお互い、お休みですね」

後輩「あっ、こら。こっち向いてください」

後輩「せっかくのお休みなのに、寝てるなんて勿体無いですよ」



後輩「休みだからこそ寝たくなるのもわかります」

後輩「でも、お互いの休みが重なる日はあまり無いですから…」




後輩「あっ……」

後輩「…ふふ。なんだか頭を撫でられると照れますね…」



後輩「起きますか?…そうだ。お水でも飲みます?」

後輩「寝起きはお水を飲むと良いらしいですよ」

後輩「もう。『飲ませて』って、だらけ過ぎですよ先輩」

後輩「ほら、枕元にペットボトルありますから」

後輩「……わかりました。お望み通り飲ませてあげますよ、口移しで」ニコ

後輩「くすっ。そんなに慌てて…冗談ですよ」


:昼


後輩「はい、コーヒーどうぞ」コト

後輩「今日はどこかに行きます?」

後輩「『家でぐーたら』って、それ前と同じじゃないですか」

後輩「仕方が無いですねぇ…」

後輩「ただし。一日中、私と居てくれるなら良いですよっ」




後輩「ありますよ、することなんていっぱい」

後輩「じゃあ…そうですね。まずは膝枕からなんてどうでしょう?」

後輩「ほら、遠慮なんてしないでください」

後輩「何言ってるんですか。私は貴方のものなんですよ?」

後輩「そうそう、素直な先輩も好きですよ」ナデナデ

後輩「…もぅ、胸ばかり見て。えっちな先輩ですね」クス


:夜


後輩「また明日から仕事ですね…」モゾモゾ

後輩「先輩…もっとこっちに寄らないと、お布団から出ちゃいますよ」

後輩「…家でぐーたらするのも悪くはないですね」ギュッ

後輩「良いじゃないですか、腕に抱き着くくらい」

後輩「それ以上のことを、もう何度もしちゃってるんですから」

後輩「家でなら恥ずかしくないんですよ~だ」




後輩「先輩……」

後輩「先輩は…私のこと、好きですか…?」

後輩「『うん』じゃなくてですね…」

後輩「わかってます、面倒な女だってことくらい」

後輩「でも不安なんです…」

後輩「先輩は優しいですから、他の女性にも分け隔てなく接するのでしょう?」

後輩「私は先輩のことを捨てないと言いました」

後輩「先輩も…私のこと捨てませんか…?」

後輩「せんぱい……ん…ちゅ」

後輩「急になんてずるいです…。…私も愛してます…///」


後輩「……前にも言いましたけど、私は可愛くないですよ。愛想も無いですし…」

後輩「…私、昔はずっと眼鏡をかけていたんです」

後輩「同棲して、先輩の前で初めて眼鏡をかける時は凄く緊張したんですよ?」

後輩「嫌われたらどうしようって」

後輩「知ってます。先輩はそんなことで人を嫌いにならないことは」

後輩「それでも、です」

後輩「就職してからコンタクトに変えたんですけど、何故だか分かります?」


後輩「むぅ。そうですよ、イメチェンですよ…何でわかったんですか」

後輩「イメチェンした挙句、結局先輩が居なければ、ぼっち確定でしたけどね…」


後輩「先輩は眼鏡とコンタクト、どっちが好きですか?」

後輩「違います。コンタクトの方が楽とかそういうのじゃなくて…」

後輩「眼鏡をかけた私と、コンタクトをつけた私。どちらが先輩の好みなのかな~って」

後輩「どっちも好きですか…。なら、これまで通り家では眼鏡、会社ではコンタクトにしましょうかね」クス


後輩「そうです。こうやって今みたく近づいてるのは、近づかないと先輩の顔がボヤけてしまうからなんです」


後輩「んっ……すみません、口が当たっちゃいました」


後輩「もう一度……ちゅ」


後輩「よくわかりましたね、わざとです」


後輩「……もっとえっちなキス…欲しいな…」




後輩「あっ、もぅ。長くなるのは当たり前じゃないですか」

後輩「先輩は乙女心をわかってませんねぇ」



後輩「せんぱい…?」

後輩「…眠たくなりましたか…?」

後輩「ふふっ…そうですか。なら、そろそろ寝ましょうね」

後輩「…はい。おやすみなさい」

     ―終―

レスして下さった方
最後まで読んで下さった方
ありがとうございました
終わります

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