昼休み 3年生教室
後輩「ダメですかー? 先輩の言った通りにやったんですけど……」
先輩「私は上目遣いしてないし、舌足らずな喋りかたもしてないんだけど」
後輩「私もしてませんよ!」
先輩「なら、無意識のうちにしてたってこと? それは重症だわ」
後輩「……先輩、厳しすぎます」
先輩「自分が聞いてきたんでしょ? どうやって手を繋ごうって言えばいいか」
後輩「そうですけど……」
先輩「そもそも、どうしてそんなこと聞きたいの?」
後輩「私、同じ学校に通ってる人と付き合って、手繋いで帰ったりしてみたいなーって、中学の時から憧れてたんです。だからその練習をしようと思って」
先輩「そういう憧れを持ってて、なんで女子高に入学したのよ」
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後輩「それは、その……」
先輩「女の子が好きとか?」
後輩「はい……」
先輩「……そう」
後輩「そ、それだけですか?」
先輩「だって、女子高だし、そういう子がいてもおかしくないしね。私は偏見とかないわよ」
後輩「せんぱーい!」ギュウ
先輩「あーもう、暑いから離れて」
先輩友「おー。イチャイチャしちゃってー」
先輩「ちょっとやめてよ。この子が一方的に……」
先輩友「あー。はいはい。ほら、パン買ってきたから食べよ」
先輩「……これからはそういうの言わないでよ?」
先輩友「わかったって。あ、女ちゃんの分もあるからね」
後輩「ありがとうございますー!」
先輩「……」モグモグ
先輩友「……」モグモグ
後輩「……」モグモグ
先輩「ちょっと、クリームがついてるわよ」スッ
後輩「あ……」カァァ
先輩「まったく……。あんた、女の子なんだから、もう少し上品に食べなさいよ……」
後輩「は、はい……」
先輩友(イチャイチャしてるじゃん)
先輩友「そういや、なんの話してたの?」
先輩「くだらない話」
後輩「そんなことないですし!女子高生にとっては重要案件ですし!」
先輩友「ってことは、猥談?」
後輩「な、なんでそうなるんですか!?」
先輩友「えー。だって、女子高生の頭の中なんてエロばっかじゃん」
先輩「それはあんただけよ」
先輩友「手を繋ごうの言いかた?それは聞く人が間違ってるね」
先輩「なんでよ」
先輩友「だって、手繋いだことあるの?」
先輩「当然じゃない」
後輩「えっ!?」
先輩「なんで、あんたがびっくりするのよ。私がそういう経験してると思って聞いてきたんじゃないの?」
後輩「……ところで、誰と繋いだんですか?」
先輩「そんなのシーナに決まってるでしょ」
後輩「シーナって……」
先輩友「あんたが好きな乙女ゲーの登場人物じゃん」
先輩友「ほら、やっぱり参考にならないじゃん」
先輩「そういうあんたはどうなのよ」
先輩友「あるよー。それもつい最近」
後輩「友先輩、彼氏いるんですか!?」
先輩友「いやー。あいつが彼氏とか想像したくないな」
先輩「……その人って年下?」
先輩友「うん。2つ下」
先輩「それ弟でしょ」
先輩友「ちっ。バレたか」
先輩「あんたも人のこと言えないじゃない。弟と手繋ぐとか、どんだけブラコンなのよ」
先輩友「でも、私はリアルだもん。テキスト上のあんたよりはマシでしょ」
先輩「後輩はどっちがマシだと思う?」
後輩「えっと……」
先輩友「後輩ちゃん、正直に言っていいからね?デジタルに恋してるとか虚しくないのって」
先輩「いや、弟と手繋ぐようなブラコン女の方が引くでしょ?」
後輩「……どっちもどっち、ですかね」
先輩「……」
先輩友「……」
放課後
後輩「せんぱーい!」
先輩「……なに?」
後輩「なんか元気ないですけど、どうしたんですか?」
先輩「昼休みのダメージが予想以上に大きかったのよ……」
先輩「それで何の用?」
後輩「帰りにカフェ寄りませんか?」
先輩「昨日も行ったじゃない……」
後輩「ダメですか……?」
先輩「だって、私はゲームやってるから、あんたはいつも見てるだけになってるじゃない。退屈じゃないの?」
後輩「大丈夫です。先輩と一緒ならどこに居ても楽しいですから」
先輩「……そう」
後輩「じゃあ、行きましょうか」
先輩「ちょっと待ちなさい」
後輩「どうしたんですか?」
先輩「あんた、髪ボサボサじゃない。整えてあげるからこっちおいで」
後輩「はーい」ギュ
先輩「抱きつけとは言ってないんだけど」
後輩「あー、幸せだなぁ……」ギュ
先輩「まったく……。あんたは私の子供かっつうの」ナデナデ
後輩「えー。違いますよー」
先輩「なら、もう少し自立しなさい。私は来年の春には卒業するのよ?」
後輩「……」ギュウ
先輩「後輩?」
後輩「……先輩とお別れなんて嫌です」ギュウ
先輩「お別れって大袈裟な……」
後輩「でも、地方の大学に行くんですよね?」
先輩「……どうして知ってるの」
後輩「……友先輩から聞きました」
後輩「やっぱり、隠そうとしてたんですね」
先輩「違うの……」
後輩「じゃあ、なんで教えてくれなかったんですか?」
先輩「……言えば、私は我慢できないから」
後輩「なにをですか?」
先輩「卒業まで私と付き合ってほしいって、あんたにお願いしちゃうって思ったの……」
後輩「……」
先輩「ずっと、あなたの事が好きだった。でも、隠してきて、これからも言わないつもりでいたけど……」
先輩「大学を決めたとき、卒業したら後輩とそんなに会えなくなるのはわかってた。だから、せめてそれまでの間は後輩のこと独占したいくて……」
先輩「きっと、後輩に大学の話するときに、その気持ちを我慢できずにお願いしちゃうから言えなかったの……」
後輩「……言ってくれれば良かったのに。まぁ、私はその依頼は絶対受けませんけど」
先輩「そう、よね……」
後輩「まぁ、卒業までっていう限定がついてなきゃ良かったんですけどね」
先輩「えっ……?」
後輩「私と付き合ってください。いつまでも先輩の傍に居させてください」
先輩「いいの……?」
後輩「会いたくなったら、会いに行けばいいんです」
先輩「でも……」
後輩「愛があればなんとかなりますよ。きっと」
先輩「……後輩」ギュ
後輩「んー。どうしました?」
先輩「……大好き」ギュウ
後輩「私も大好きですよ。先輩」ナデナデ
後輩「落ち着きました?」
先輩「なんとかね……」
後輩「それは良かったです」
先輩「……なんで、あんたはそんなに冷静なのよ」
後輩「んー。母性ってやつですかね」
先輩「なにそれ?」
後輩「胸に顔を埋めて泣かれると、なんか優しい気分になるんですよ」
先輩「泣いてないわよ!」
後輩「じゃあ、なんでYシャツが濡れてるんでしょうか?」
先輩「し、知らない!」ペシッ
後輩「先輩も元気になりましたし、そろそろカフェ行きますか」
先輩「そうね……」
後輩「私、パフェ食べようかなー。でも、昨日も食べたしなぁ……。先輩、どうしたらいいと思いますかー?」
先輩「……」
後輩「先輩?」
先輩「……あ、あのさ」
後輩「なんでしょう?」
先輩「手……繋ごう……?」
END
以上です。
ありがとうございました。
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