王子「姫! 必ずまた会える! 絶対また会おう!」姫「はいっ!」 (139)

ある王国──

山道を走る馬車。

ガラガラガラガラ……

王子「本当にごめんよ、姫……」

王子「君との結婚式を控え、城に来てもらったとたんこんなことになってしまって」

王子「君にはなんの罪もないというのに……」

姫「いいのです、王子」

姫「私はあなたと一緒なら、それで幸せなんですもの」

王子「先代王の暴政で崩れた国を、父上は必死に立て直そうとした」

王子「でも結局、クーデターは起こってしまった」

王子「父は失意で自害したが、クーデターのリーダーはボクたちの命までは取らず」

王子「辺境への追放でとどめてくれた」

王子「ボクたちは感謝すべきなんだろう……あのリーダーに」

姫「えぇ……あの方はお城の人たちの命をむやみに奪うことをせず」

姫「ほとんど無血でクーデターをなしとげました……」

姫「そのことは……私も感謝しております」

王子「じいや、彼らが用意してくれた辺境の土地には、あとどのぐらいでつく?」

執事「あと二時間ほど……といったところですな」

王子「すまない……じいや」

執事「私も老い先短い身、最後まで王国のために奉公させて下さい」

執事「到着次第、私の孫も手紙で呼び寄せます」

執事「きっと王子の力になることでしょう」

メイド「そうですわね、是非」

姫「勇者様…お慕えしています…///」

勇者「ひ…姫…///」


王子「なぁ、あの勇者とか言うの殺しといて」

執事「了解致しました」






展開は燃えた

王子「メイドさんにも、苦労をかけるね」

王子「君にもご家族がいるのに……」

メイド「いえ、家のことなどはよいのです。頼りになる妹もおりますし」

メイド「それに、王子と姫には私も大変よくしていただきました」

メイド「最後まで、お供させていただきますわ」

王子「……ありがとう」

王子「姫……せいいっぱい幸せになろう! 畑を耕して、家族を作って、さ」

姫「はいっ!」

ガタンッ!

突如、馬車が止まった。

姫「きゃあっ!」ガクッ

メイド「きゃっ!」ガクン

王子「どうした、じいや!?」バッ

執事「皆さん、お逃げ下さい!」

執事「山賊の集団が馬車の前に立ちふさがって──」

ザシュッ!

執事「か、はっ……」ドサッ

王子「じいやっ!」

メイド「お二人とも、こちらへ!」バッ

山賊「おっと、逃がさねぇぞぉ~?」シュッ

ドスッ……!

メイド「あ、う……」ドサッ

山賊「さて、残るは王子と姫の二人だけか」

王子「よくも、じいやとメイドさんを……!」

王子「お前たち、なぜボクたちの素性を知っている!?」

山賊「へへへ……だって、事前に教えてもらってたからな」

山賊「お前たちのことも、今日お前たちがここを通るってことも……」

王子「だれに教わった!?」

山賊「王国を滅ぼしたクーデター一派の……副リーダーだよ」

王子「副リーダー……!」

王子(たしか、王家や王家に仕えてた者の徹底的な粛清を唱えていた輩だ……)

王子(結局、リーダーによってそれは実行されなかったが……)

山賊「なんでも負け犬は無様にくたばるべきだから、だそうだ」

王子「こんなところでやられるか……!」

王子「じいやとメイドのためにも、姫のためにも、こんなところで死ねるかぁっ!」ダッ

山賊「へっ、小僧が!」

ドゴッ!

王子「ぐあぁ……っ!」ドサッ

山賊「よしてめぇら、俺はコイツにトドメを刺す! 姫はさらっちまえ!」

手下「へいっ!」ガシッ

姫「いやっ、はなしてぇっ! 王子、王子っ!」

手下「こっち来いや! たっぷり可愛がってやるからよ!」グイッ

姫「王子! 王子ぃっ!」

王子「姫……姫ぇっ!」

姫「王子……私たちまた会えますわよね……!」

王子「姫! 必ずまた会える! 絶対また会おう!」

姫「はいっ!」

山賊「会えるわけねえだろうが!」ブンッ

ガスッ!

王子「ぐ……っ! 姫……!」

─────
───

五年後、クーデター一派のリーダーが大統領となり、王国は共和国となっていた。

自治都市──

青年「…………」ザッザッ…

浮浪者「ウイ~……ヒック……」

青年「そこの人」

浮浪者「あ、オイラかい?」

青年「この街で一番危険な人間に会いたい」

浮浪者「危険……危険ねぇ」

浮浪者「ここは危険な奴ばっかだが、あえていうなら殺し屋か──」

浮浪者「あるいは毒婦ってとこじゃなあ」

浮浪者「ま、一番危険っていったらなんといっても市長じゃがな!」

浮浪者「ギャハハハハッ!」

青年「……ありがとう」ザッ

チンピラ「オイ兄ちゃん、いい身なりしてんじゃねえかよ」

青年「ボクになにか用か」

チンピラ「ちょっと金をよ、恵んでくれねえか」

青年「悪いが、ボクも余裕はない。他を当たってくれ」スッ…

チンピラ「んだとコラァ! スカしやがってよォ!」ブオンッ

ヒュッ!

チンピラの顔に、剣が突きつけられる。

チンピラ「は、はや……っ!」

青年「用は済んだか? じゃあボクは行くぞ」ザッザッ…

チンピラ(何者だ、アイツ……)

チンピラ(って、あっちには殺し屋のアジトがあったような……)

殺し屋のアジト──

奴隷少女「た、助けて……」ガタガタ…

殺し屋「今日はいい拾いモンをしたなァ……奴隷のクソガキか」

殺し屋「ナイフの切れ味試すにゃ、もってこいだ」ニタァ…

ドンドンッ

殺し屋「あ? 誰だァ!?」

青年「お前がこの街で一番腕が立つといわれる、殺し屋か」ザッ

殺し屋「だったらなんだ? 依頼か? それともその剣で俺に挑みにきたか?」

青年「ボクに……人の殺し方を教えてくれ」

殺し屋「はァ!?」

殺し屋「テメェ……なにもんだ?」

青年「悪いが、いえない」

殺し屋「ふうん……で、なんで人の殺し方を教わりたいんだ?」

青年「……復讐」

殺し屋「なるほど、復讐ねェ……ふうん」

殺し屋「ちなみに殺したいのは誰だ?」

青年「この自治都市を治めている……市長だ」

殺し屋「ふっ……ハハハハハッ! ハーッハッハッハッハッハッ!」

青年「…………」

殺し屋「自殺志願者かよ、テメェ!?」

殺し屋「ここの市長が何者か、テメェ知ってんのか!?」

殺し屋「ヤツは元々、この国を共和国に変えたクーデター一派の副リーダーだった」

殺し屋「だが、そのあまりに悪辣な性格を現大統領であるリーダーにとがめられ」

殺し屋「国政にヤツの居場所はなくなり、結局この都市の市長に収まった」

殺し屋「だが、ヤツは相変わらず強引な手口で兵隊を集め」

殺し屋「この自治都市を完全に私物化しちまった」

殺し屋「この都市のルールは、市長に逆らわないこと、これだけだ」

殺し屋「市長にさえ逆らわなきゃ好き放題できる」

殺し屋「俺が、堂々と殺し屋をやれてるのもヤツのおかげ」

殺し屋「この無法地帯っぷりに憧れ、流れてくるアウトローも後を絶たねえ」

殺し屋「もうこの都市は、共和国政府でもうかつに手を出せねえ……ヤツの国さ」

殺し屋「もちろんヤツの屋敷は、大勢の兵隊で警備されている」

殺し屋「たとえ俺でも、ヤツを殺すのは不可能だ」

殺し屋「まったく、無知ってのはどうしようもねえやな」

青年「そんなことは分かってる」

青年「だけどボクは……やらなきゃならないんだ!」

殺し屋「ふうん……殺る気満々ってとこか」

殺し屋「聞くが……」

殺し屋「テメェ……人を殺したことあんのか?」

青年「……ない」

殺し屋「ふっ……フハハハハハハハハハハッ!」

殺し屋「ハーッハッハッハッハッ!」

殺し屋「バカにしてんのか、テメェ!」ブンッ

ガゴッ!

青年「ぐはっ!」

殺し屋「人を殺したこともねェヘタレが……俺に殺し方を教えて欲しい、だァ?」

殺し屋「あの市長を殺したい、だァ?」

殺し屋「笑わせんじゃねえよ!」

ガッ! ゴッ! バキッ! ドゴッ! ガッ!

青年「ぐふっ……! ムチャなのは分かってる……でもボクはやるんだ!」

殺し屋「うっ……!」

殺し屋「……よし、いいだろう」

殺し屋「だったら……あそこに縛りつけてある奴隷のガキ」

殺し屋「あれを殺せ」

奴隷少女「ひっ……!」

殺し屋「俺はナイフ使いでな、ホントはアレで試し斬りするつもりだったんだが」

殺し屋「お前にくれてやるよ」

殺し屋「あのガキ殺したら、俺が市長殺しを全力でバックアップしてやる」

殺し屋「さ、やれ」

青年「断る」

殺し屋「!?」

奴隷少女「え……」

青年「ボクは市長以外……だれも殺すつもりはない!」

殺し屋「…………」ピクピクッ

殺し屋「あまり俺をナメるんじゃねえぞ、テメェ!」

殺し屋「アマチュアですらねえ、ド素人がッ!」シュバァッ

ガキィンッ!

青年「ぐう……っ!」ドサァッ

青年(な、なんて一撃だ……! なんの躊躇もなく無駄もなく急所を狙いに来た!)

殺し屋「今の反応……剣をかじってはいるようだが、しょせん俺の前じゃママゴトだ」

殺し屋「立て、この甘ちゃん野郎が……」

青年「ボクが甘いのは分かってるさ……」

青年「でもボクは復讐と同時に……どうしても探し出さねばならない人がいる」

青年「その人に会うまで……ボクはプライドを捨てるわけにはいかない!」

殺し屋「ケッ……殺し屋に教えを乞おうってのにプライドたぁ、めでてえ野郎だ」

青年「…………」

殺し屋「ふん、ムカつく目をしやがる」

殺し屋「いいだろう、そっちのガキと……殺しのテク……くれてやるよ」

青年「!」

殺し屋「ただし、地獄を見ることにゃなるがな」

殺し屋「いつまでテメェがその目をできるか……楽しみだ」

殺し屋「ハーッハッハッハッハッハ!」

青年「…………」ゴクッ…

アジト内の小部屋──

殺し屋に乱暴に放り込まれる二人。

ドサァッ!

青年「ぐっ……!」

奴隷少女「きゃっ!」

殺し屋「テメェとガキにゃ、この部屋をやる」

殺し屋「好きに過ごせばいいが、あんまデカイ音立てんなよ」

青年「どういう意味だ?」

殺し屋「ガキとお楽しみする時は、なるべく静かにやれってこった」

青年「だれがするか! ……ゲスが!」

殺し屋「ふん」

バタンッ!

青年「…………」

奴隷少女「…………」

奴隷少女「ねえ、お兄さん、一緒に逃げよ?」

青年「!」

奴隷少女「アイツは……とんでもないヤツよ」

奴隷少女「ここ数年で一気に街一番の殺し屋にのし上がって」

奴隷少女「仕事以外でも平気で殺しをする……イカれた殺人鬼よ!」

奴隷少女「あんな奴と一緒にいたら……お兄さんも殺されちゃうわ!」

青年「あの殺し屋が、危険なヤツだってことは分かる……分かってる……」

青年「だけどあれぐらい危険な奴の力を借りるぐらいしなきゃ──」

青年「それ以上に危険な市長を殺すなんて、夢のまた夢だ」

青年「だから……ボクは逃げない」

青年「でも、君にはこの街は危険すぎる」

青年「ボクも少しは金を持ってるから……これ持って逃げな」ジャラッ…

青年「今の共和国は、この都市以外はすこぶる平和なはずさ」

青年「大統領がうまくやってるからね」

奴隷少女「イヤ!」

青年「へ?」

奴隷少女「あの殺人鬼からお兄さんはあたしを助けてくれたわ!」

奴隷少女「なんの恩も返さずに逃げるなんてイヤ!」

青年「おいおい、なにをいってるんだ」

奴隷少女「お兄さんにプライドがあるように、あたしにもプライドがあるの!」

青年「…………」

青年「分かったよ。それじゃ、ひとつよろしく」スッ…

奴隷少女「うんっ」ガシッ

握手を交わす二人。

翌日──

殺し屋「起きろっ!」

ドカッ!

青年「がっ……!」

殺し屋「おうおう寝不足か? 寝心地悪かったか、この石床は。ハハッ」

青年「ぐっ……!」

奴隷少女「ひどい! 自分だけベッドに寝てるくせに!」

殺し屋「当たり前だ。ここは宿屋じゃねえんだ!」

殺し屋「むしろテメェらは幸運だぜ~?」

殺し屋「このアジトはこの街で二番目か三番目くらいに安全だ」

殺し屋「なんたってこの俺がいるんだからな! だれも近寄ってきやしねえ」

青年「一番安全なのは市長の屋敷ってことか」

殺し屋「そういうこった。ダントツの一番ってやつだ」

笑いながら殺しについて語る殺し屋。

殺し屋「ま、殺しなんつうもんは結局アレだ」

殺し屋「誰もいない暗いところで、後ろからグサリ」シュッ

殺し屋「俺の今までの仕事は、ほとんどコレよ」

殺し屋「もちろん一撃で仕留めなきゃ、色々面倒なことになる」

殺し屋「反撃されたり、助けを呼ばれたりな」

殺し屋「だから、背面から急所を正確に射抜く必要がある」

青年「…………」

殺し屋「よって、殺しで重要なのは次の三つになる」

殺し屋「一つ目はターゲットの下調べ!」

殺し屋「二つ目は気配を完全に殺すこと!」

殺し屋「三つ目は急所を正確に射抜く技術!」

殺し屋「どうだ? 殺しってのも結構奥が深いだろ?」

青年「……アンタはこれらを誰に教わったんだ?」

殺し屋「ハッハッハ、独学に決まってんだろ、ボケが!」

殺し屋「それじゃ特訓開始だ」

殺し屋「この人型の板切れを、ナイフの一刺しで貫けるようになれ」

青年「それだけか……?」

殺し屋「ああ、それだけだ」

殺し屋「ただし、条件が一つ」

殺し屋「構えから刺す瞬間まで、絶対に音を立てないこと」

青年「音を……!」

殺し屋「音を立てたら罰として、石を投げつける」

殺し屋「貫けなくても投げつける」

殺し屋「んじゃ、始めっ!」

青年「はっ!」シュッ

ガッ……!

殺し屋「バカが、かけ声なんか上げんな! 剣術の試合じゃねえんだぞ!」

殺し屋「板も貫けてねえしな!」ビュンッ

ガンッ!

青年「ぐっ……!」

青年(この板、かなり頑丈だ……! 相当力を込めないと──)

青年(でも力を込めると──どうしてもなにかしら音が出てしまう)グッ

殺し屋「オラ、ナイフ握る時、音鳴ってんぞ! ボケが!」ビュンッ

ガスッ!

殺し屋「力じゃなく、流れと勢いで刺すんだよ!」ビュンッ

ゴッ!

夜になった。

奴隷少女「大丈夫? お兄さん……」ペタペタ…

青年「ありがとう……手当てしてくれて」

青年「これくらい、なんてことないよ」

奴隷少女「でもこのままじゃ、目的を果たす前にアイツに殺されちゃうわよ!」

青年「たしかに……そうかもしれない」

青年「でも今のボクが少しでも早く力を手に入れるには」

青年「こういう嫌でも必死になれる……命がけの環境の方がいいしね」

奴隷少女「でも……」

青年「大丈夫、ボクだって復讐も人探しもできないまま、殺されるつもりはないよ」

翌日──

殺し屋「午後は仕事があるからな。それまでは見てやる」

青年「仕事……殺しか?」

殺し屋「殺し屋の仕事が他にあんのか?」ニッ

青年「…………」

殺し屋「オラ、とっとと始めろやっ! グズがっ!」

青年「…………」シュッ

ガッ!

殺し屋「ナイフを構えた瞬間、微妙に音が出てる!」ビュンッ

青年「…………」サッ

殺し屋「あ……テメェ……!」

殺し屋「テメェ、なによけてんだよ!」

青年「石をよけるなとは一言もいわれてないぞ」

殺し屋「なんだと……」

青年「それにこれも、敵の攻撃をよけるいい訓練だと思ったんだが」

青年「ちがうのか?」

殺し屋「……チィッ!」

午後──

板に向かってナイフを突き続ける青年。

青年(ふう……石をよけるようになって、怪我も少なくなった)ガッ

青年(アイツは今頃どこかでターゲットを殺しているんだろうか……)ガッ

青年(散歩にでも行くかのように、殺しに出かける……恐ろしい奴だ)ガッ

青年(本当はあんな奴の力なんか借りたくないけど……)ガッ

青年(あの冷酷な目と腕はまちがいなく本物だ)ガッ

青年(どんな手だって使ってみせる)ガッ

青年(市長を殺し、必ずどこかで生きている、あの人に会うまでは……!)ガッ

二週間後──

青年(ナイフを握り……)

青年(突くっ!)

トンッ……

青年(石が飛んでくる!)ババッ

青年(飛んで……来ない?)

殺し屋「フン……今のはブッ刺す瞬間まで音はなかった……」

殺し屋「第一段階クリアーってとこか」

青年「……ありがとう」

殺し屋「バカかテメェ、こんなもんは序章だ。地獄はまだまだこれからだ!」

特訓は続いた。

殺し屋「空気だ! 空気みてェになるんだよ!」

殺し屋「なれてねえじゃねえか、ボケがァ!」ブンッ

ドゴッ!

青年「ごふっ!」



殺し屋「暗がりの中でも、自在に動けるようになれ!」

殺し屋「俺の投げる石を、障害物にぶつからないようによけてみろ!」ビュンッ

ガッ! ゴスッ! ガツッ!

青年「う……ぐ……っ!」



奴隷少女「お兄さん……!」

青年「ハハ、平気、平気……」ヨタヨタ…

さらに二週間後──

殺し屋「ククク、だいぶアザが増えて男前になってきたなァ?」

青年「なんの……これしき」

殺し屋「フン、よくもまあ……よほどの根性持ちか、もしくはマゾか」

殺し屋「今日俺は仕事で遠出しなきゃならねえから、休暇をやるよ」

青年「!」

殺し屋「ここで寝るなり、あのガキと観光するなり、好きにするがいいさ」

青年「こんな無法地帯を、観光なんかできないだろ……」

殺し屋「ここの奴らは、強い奴強そうな奴には手を出さねえ。意外と計算高えんだ」

殺し屋「今のテメェなら、手ェ出す奴はそうそういねえだろうよ」

殺し屋「殺しこそ未体験とはいえ、だいぶいいツラになってきたぜェ?」

殺し屋「それに、テメェで殺そうっていうヤロウの本拠地くらいは見とけ」

殺し屋「じゃあな」バタンッ

青年「…………」

青年「……どうする?」

奴隷少女「観光しようよ!」

青年「そうだな。ボクもこの都市のことはほとんど知らないし──」

青年「アイツのいうとおり、市長の屋敷はぜひ見ておきたい」

奴隷少女「だったらあたしが案内してあげる!」

青年「頼むよ」

自治都市──

青年と奴隷少女に、近づこうとする者はだれもいない。

青年(本当だ……)

青年(こんな幼い女の子を連れてるのに、チンピラどもは近づいてきもしない)

青年(この都市に来た当初は、即からまれたっていうのに……)

青年(アイツのいうとおりだった)

青年(この都市には強そうな奴には近づくなって、不文律があるってことか)

青年(なにしろ自分より強い奴にからんで、殺されたらそれまでだからな……)

青年(そして……ボクもそれだけ顔つきや雰囲気が変わったってことか)

奴隷少女「ねえねえ、どうする? まずどこに行く?」

青年「じゃあ……まずは市長の屋敷に連れてってくれるかな」

奴隷少女「オッケー!」

市長の屋敷──

青年(スラム街のど真ん中にそびえ立つ大豪邸……異様な光景だ……)

青年(ここに、市長がいる……副リーダーがいる……!)ギリッ…

青年(チンピラみたいな見張りから、正規兵さながらの衛兵も備え、警備は万全)

青年(本当に市長は、この自治都市の“王”なんだな)

奴隷少女「見て分かると思うけど、ここの警備はほぼ完璧よ」

奴隷少女「都市の荒くれ者や、自分の部下だった旧クーデター軍に」

奴隷少女「ああやって屋敷を守らせてるんだもの」

奴隷少女「市長もめったなことじゃ、屋敷から出てこないしね」

青年「だろうな……」

青年「──ん、でも“ほぼ”ってのはどういう意味だ?」

奴隷少女「あっちに別邸があるじゃない? あっちは警備が薄いのよ」

青年「ああ、あの小さい家か。なんなんだ、あれは」

奴隷少女「たまぁ~に、市長はあそこで一晩を過ごすのよ」

奴隷少女「自分が選んだ女と、二人きりでね」

青年「!」

青年(警備が薄いってのはそういう……市長にもさすがに恥じらいはあるのか)

青年「でも、なんで君はそんなことを知ってるんだ?」

奴隷少女「あたし、もう少しで市長の相手をさせられそうになったの」

青年「!? ──君はまだ子供じゃないか!」

奴隷少女「あの市長、見境がないみたいだから……」

奴隷少女「でも、スキを見て逃げ出したのよ」

奴隷少女「捕まってたのが別邸じゃなかったら、アウトだったわ」

奴隷少女「ま、結局その後、あの殺し屋に捕まっちゃったワケだけどさ」

青年「そういうことだったのか……」

青年「!」ハッ

青年(──となると、その時こそが市長を殺す最大の好機!)

青年「あの別邸内の構造……覚えてるかい?」

奴隷少女「うん、覚えてるよ。忘れられない思い出だもん」

青年「あとでアジトに戻ったら、見取り図を書いてくれないか?」

奴隷少女「もちろん、いいよ!」

青年「ありがとう……君みたいな子供まで利用するなんて、ボクはホントダメだな」

奴隷少女「男が小さいこと気にしない、気にしない!」

奴隷少女「じゃあ次はどうする? 風俗街でもいこっか!」

青年「えぇ……っ!?」

奴隷少女「だってあと他に、この都市で観光できるようなとこなんてないしね」

風俗街──

青年「この辺りも……他と雰囲気がちがうな。華やかだ」

青年(派手な身なりの女性や、黒服の男があちこちに立っている……)

奴隷少女「ここが、毒婦が支配する風俗街よ」

青年「毒婦……!」

青年「たしか、殺し屋と同じぐらいこの都市で名をはせてるという……」

奴隷少女「たしかに危険な女だけど、すっごくキレイよ」

奴隷少女「その美貌で何人もの男を地獄に落としてきたみたい」

奴隷少女「で、今は風俗街の女王ってわけ」

奴隷少女「よそから女をさらって、ここで働かせてるってウワサもあるわ」

青年「……とんでもない女だな」

「あら……だれがとんでもないんだい?」

青年&奴隷少女「!?」ギョッ

毒婦「この風俗街でアタシをとんでもない呼ばわりするなんてねぇ」

毒婦「さてはお前さん、新米だね?」

青年「ああ……そうだ。この都市には一ヶ月前に来たばかりだ」

青年(コイツが……毒婦! 意外に年は若そうだ)

青年(たしかに……とても美しい! ──が、それ以上に禍々しい!)

青年(殺し屋と同類……この自治都市で地位を築くため、何人も殺してきたって顔だ!)

毒婦「おや、そっちのガキは前アタシが拾って市長にくれてやったガキじゃないか」

毒婦「生きて屋敷を出られたんだねえ、運がいいじゃないか」

毒婦「なにせ、あの市長のド変態っぷりったらないからねぇ」

奴隷少女「…………!」

青年(この子を市長宅に送り込んだのも、コイツだったのか……まさに悪魔だ)

青年(──ん、毒婦の隣にいるのは……?)

金髪娘「…………」

青年(あ、あの子は──)バッ

金髪娘「え……?」

すかさず黒服たちが近づいてくる。

毒婦「おおっと、惚れたかい? だけど、大事な商品に手は触れさせないよ?」

青年「商品だと……?」

毒婦「あの娘はね、来月市長への献上品にするのさ」

青年「献上品……どういうことだ!?」

毒婦「市長はね、処女じゃなきゃダメっていうド変態でねぇ」クスクス…

毒婦「だからアタシももうストライクゾーンから外れてんのさ」

毒婦「アタシなら市長を思う存分、満足させてやれるってのにねえ」

毒婦「ま、だからコイツにはみっちりテクを仕込んで」

毒婦「ちょうど三十日後の夜、市長に献上するのさ」

青年「な……!」

青年「そ、そんなことさせるか! 人をなんだと思ってる!」バッ

奴隷少女「ダメよ、お兄さん!」ガシッ

奴隷少女「この街で毒婦に逆らったら、生きていけないわ!」

奴隷少女「あなたには目的があるじゃない!」

青年「くっ……」

金髪娘「…………」

毒婦「ホホホ、身分の差ってやつが分かったかい?」

毒婦「さあ、アタシの機嫌がいいうちに、とっとと帰るんだね」

毒婦「アタシの機嫌が悪けりゃ陰口叩いてた時点で、二人とも八つ裂きだったよ」

青年「……分かった。帰ろう」

奴隷少女「うん……」

奴隷少女(お兄さん、あの金髪の女の人、知ってるのかな?)

殺し屋のアジト──

殺し屋「どうだった? 休暇は満喫できたか?」

青年「ああ、あの子に自治都市を案内してもらった」

青年「市長の屋敷を下見して、風俗街で毒婦に会ったよ」

殺し屋「毒婦か……ウワサ通りいい女だったか?」

青年「アンタは会ったことないのか?」

殺し屋「俺は女に興味ねえんでな。風俗街なんざ近づいたこともねえ」

青年「……たしかに美しかった。だがそれ以上に血の臭いがする女だった」

青年「ヤツもアンタと同類だ!」

殺し屋「ハハ、ずいぶんえらそうに吠えるようになったな」

青年「でも、重要な情報も手に入れた」

殺し屋「ほう?」

青年「ボクが市長暗殺を決行するのは……一ヶ月後だ」

青年は毒婦の“献上品”について話した。

殺し屋「──なるほど、たしかにそりゃまたとないチャンスだ」

殺し屋「逃したら、次はいつになるか分からねえ」

殺し屋「あのガキが見取り図を用意できるってんなら、勝算も十分見えてくる」

殺し屋「いいだろう……」

殺し屋「だったらテメェはなんとしてもこの一ヶ月で」

殺し屋「市長を殺せる技量を身につけろ!」

青年「もちろんだ!」

青年(空気のような存在感で、音を立てず、影のように動き──)

青年(一刺しで殺る!)

トッ……

殺し屋「ほう……」



殺し屋(石!)ビュンッ

青年「…………」サッ

殺し屋「フン……だいぶ夜目がきくようになってきたな」

青年「ああ、たしかに暗いが、もうほとんど昼間との差を感じない……」

ある日──

殺し屋「聞くが……」

殺し屋「テメェのこの執念はなんだ?」

殺し屋「市長に恨みがある以上、テメェが旧王国の関係者だってことは分かる」

殺し屋「だれか王族にでも仕えてたか?」

青年「そうだとしたら……?」

殺し屋「フッ、ウソつくんじゃねえよ」

青年「!」ドキッ

青年(さすがに鋭い……!)

殺し屋「まぁ、どうでもいい……下らねえことを聞いた」

青年「……だったらボクもアンタに聞いときたいことがある」

なんで僕に暗殺術を教えてくれたんだ

青年「今や、市長と毒婦に並ぶ、この自治都市三大悪党のアンタだが──」

青年「なんというか……生まれながらの極悪人、という気がしない」

青年「こうして俺を特訓してくれてるし……」

青年「もしかしたら、元々は──」

殺し屋「…………」

バンッ!

青年「!」ビクッ

殺し屋「それ以上、しゃべるんじゃねえよ」

殺し屋「でなきゃ、マジでテメェ殺す……!」

青年「……悪かった」

特訓はさらに激しくなった。

殺し屋「あんな音立てたら、すぐ市長の私兵が飛んでくんぞっ!」シュッ

ドゴォッ!

青年「ぐふっ! ゲホッ、ゲホッ!」

殺し屋「オラ、もう一回だ!」

青年「ああ!」ムクッ

殺し屋「……ちっ、しぶといヤロウだ」



奴隷少女「今日はいつもよりボコボコだけど、大丈夫?」ペタッ…

奴隷少女「まったくあの殺し屋は最低だわ」

青年「ああ、アイツは最低だ」

青年「だけどボク、なんとなくアイツのことが理解できてきたような気もするんだ」

奴隷少女「?」

青年「それじゃおやすみ……」

>>77
一人称が俺になってるよ
あーあ、ミスったー

そして──

トッ…… トッ…… トッ……

殺し屋「暗がりの中、俺の石を避けつつ、板を三枚音もなく貫くか……」

殺し屋「合格だ」

殺し屋「いよいよ決行日が近いが、どうにか間に合ったようだな」

殺し屋「とはいえテメェは人を殺したこともねえド素人……」

殺し屋「本番でどうなるかは保証できねえがな」

青年「大丈夫、必ず市長の命だけは奪ってみせる……絶対に」

殺し屋「…………」

殺し屋「テメェは市長を殺したら、その後どうする気だ」

青年「この都市を出て、ある人を探し出す……」

青年「そして、市長を殺したことを報告する……それだけだ」

青年「ボクはそのために生きてきた」

殺し屋「ふうん……」

殺し屋「ま、好きにしな」

殺し屋「俺とテメェは、決行日までの仲だ。その日、俺とテメェの縁も切れる」

青年「ああ」

青年「アンタのことは大嫌いだが、少なくとも恩義は感じている」

青年「……ありがとう」

殺し屋「……チッ」

奴隷少女「いよいよ明日ね、お兄さん」

奴隷少女「市長なんかどうでもいいから、生きて帰ってきてね」

青年「たとえ君の見取り図と、殺し屋に教わった殺しの技術があるとはいえ」

青年「正直……生還できる自信はない」

青年「これがボクの全財産だ」ジャラッ…

青年「もしボクが帰ってこなければ……これを持ってこの都市を脱出するんだ」

青年「今の大統領は善政を敷いている。きっと幸せになれるはずだ」

奴隷少女「ホントはイヤだっていいたいけど……」

奴隷少女「お兄さん困らせたくないし、受け取る!」ジャラッ…

青年「ありがとう、本当に君は強い子だ」

青年「君がいなきゃ、ボクもこの生活に耐えられなかっただろう」

青年「ありがとう」

奴隷少女「お兄さんこそ……ありがと、う……」グスッ

青年は執事の孫

奴隷少女「すぅ……すぅ……」

青年(君の強さなら、きっとこの時代を生きていける)

青年(たとえ一人きりでも……)

青年(そして、毒婦と一緒にいたあの金髪の女性……)

青年(明日、市長への“献上品”にされる女性……)

青年(彼女の正体はまちがいなく──)

青年(できれば……いや、命にかえても彼女は助けてみせる!)

やがて、青年も眠りについた。

決行日──

殺し屋「さて、夜も更けた……行くぞ」

青年「!」

青年「アンタも手伝ってくれるのか?」

殺し屋「ああ……」

青年「だが、万一バレたらアンタも市長を敵に回すことになる。やめた方がいい」

青年「せっかくこの都市で築いた地位を無駄にする気か?」

殺し屋「フン、相変わらず甘いヤロウだ」

殺し屋「んなことは気にすんな」

青年「…………?」

青年は執事の孫
金髪娘は姫
殺し屋は王子

市長の屋敷──

奴隷少女の見取り図を思い出しながら、侵入経路を確認する二人。

殺し屋「あれが別邸へ通じる門か……」

青年「窓にぼんやり明かり……市長はまちがいなくいる」

殺し屋「門番は三人、手薄だな。よほどテメェのあえぎを聞かれたくねえのか」

殺し屋「下らねぇ性欲と恥じらいで身を滅ぼすことになるたぁな」

青年「三人か……」ゴクッ

殺し屋「ちょっと待ってろ」ス…

シュッ…… スッ…… トッ……

ドサッ! ドザッ! ドザァッ……!

青年(一呼吸で三人を殺した!)

青年(ボクは技量だけなら、殺し屋に追いついたとばかり思っていた……)

青年(でもそれは、とんだ思い上がりだったってことか……!)

殺し屋「さてと……ここまでだ」

青年「ああ……ここからはボクが──」

殺し屋「いや、テメェはここまでだ。後は俺がやる」

青年「!」

青年「どういうことだ!? 突然なにをいってるんだ!」

殺し屋「こないだ、ようやく思い出せた……面影があった。懐かしい顔だ」

殺し屋「テメェはおそらく、孫か」

青年「なにをいっている!?」

殺し屋「…………」チャラッ

青年「そ、それは! 王家の勲章! なぜ、それをアンタが持っている!?」

殺し屋「決まってんだろ」

殺し屋「俺がテメェが将来仕えるはずだった王子を、ぶっ殺してやったんだからなァ!」

青年「!」

想定の範囲内だな

殺し屋「おおかたテメェのジジイにいわれてたんだろ?」

殺し屋「自分が死んだら、王子を助けろとかなんとかよぉ」

殺し屋「で、市長を討って、王子を探し出したかったワケだ」

殺し屋「だが、残念だったな。王子はもうこの世にいねぇよ」

殺し屋「他ならぬ俺のせいで、奴は死んだ」

青年「お前が実行犯だったのか! よくも……よくも王子を!」ダッ

ボグッ!

青年「あ、ぐ……っ」ガクッ

ドサッ……!

殺し屋「いくら痛めつけても、どこまでもまっすぐなヤツだったな」

殺し屋「……いい孫を持ったな、じいや」

殺し屋「さて──最期の仕事だ」ザッ

別邸内──

殺し屋(ん……部屋から声が)



「どういうことだ!?」

「ワシは処女しか抱かんといってあるはずだぞ!」

「なぜ元締めであるオマエがここに来た!?」



殺し屋(部屋の中で揉めている……)

殺し屋(行為の最中の方が殺りやすかったんだが……今さらコソコソする必要もない)

殺し屋(かまわず入るか)

殺し屋「失礼」

ギィィ……

毒女は姫
金髪少女はメイドの妹

王子と姫はお互い汚れた姿で再開して別れるのだった

殺し屋が市長の寝室に入ると──

市長「誰だ!?」

毒婦「おや、誰だい? ノックもせず穏やかじゃない──」

殺し屋「(そういや市長と会ったことはなかったな)俺は──」

毒婦「!」

殺し屋「!」

市長「オイ誰だ、キサマは!? 答えんかッ!」

殺し屋「…………」

殺し屋「……や」

殺し屋「やっと……会えたね……姫」

毒婦「ええ……」

ほら当たったあああああああああ
もっと斜め上の展開にしろよおおおとお

>>107
IDたどれば分かる、こいつ他人の足を引っ張るのが好きなやつだ
>>1は目をつけられてかわいそうだったよ

>>109
酷い・・・

市長「キサマは……誰だ!? オイ、二人とも聞いているのか!?」

殺し屋「よく分かったね、ボクのことが」

毒婦「分かりますとも。どんなに変わられても、分かりますとも」

殺し屋「あれから色々あった……」

殺し屋「山賊を殺し、君を探しつつ大勢殺し、いつしかボクは殺し屋になっていた」

殺し屋「罪のある人もない人も、数えきれないほどこの手で殺した……」

毒婦「私もです」

毒婦「男どもの慰みものにされ、もはやそれが日常になった頃──」

毒婦「私の上に乗る男の頭を、鋭い石で刺したらあっさりと息絶えました」

毒婦「そうして覚えた手口で幾人もの男性を殺し、お金を蓄えて」

毒婦「気づいたら自分の体と金で、この都市の風俗マーケットを支配していました」

殺し屋「……ボクは君以外の女性になどまったく興味はなかったから」

殺し屋「風俗街など寄る気にもなれなかったが、どうやら失敗だったな」

殺し屋「そしたらもっと早く再会できたのに……」

毒婦「フフ……そうですね」

これ最後2人とも自殺するんじゃないかな
殺してしまった人達への償いをかねて
父さん・・・じいや・・・今そっちにいくね・・・
みたいな

市長「キサマら!」ギュッ…

殺し屋「……ん」

市長「このヒモを引っ張れば、鐘が鳴る! そうなればすぐ兵が大勢駆けつける!」

市長「そうなりたくなくば、とっとと消え失せろ! この場は見逃してやる……!」

殺し屋「いや、見逃してくれなくていいんだ」スタスタ…

市長「お、おいよせ! 来るな!」

殺し屋「これを引っ張ればいいのか」グッ…

ガラァン……! ゴロォン……!

市長「え!? 自分で鳴らし──なぜだ!?」

殺し屋「姫、二人で決着をつけよう。さ、このナイフを一緒に持って」

毒婦「ええ」グッ…

殺し屋「正面から敵を刺すなんて……いつぶりかな」

市長「よ、よせ! や、やめろ! ワシはこの都市の王──」



市長「うぎゃあああああっ……!!!」

どんなオチだろう
金髪少女と奴隷少女と青年は絡めてくるのかな
ただのミスリードとか言わせないよ

殺し屋「この物音……本邸から兵が駆けつけてきてるみたいだね」

毒婦「そうですね」

殺し屋「この自治都市……三大巨悪の最期だ」

殺し屋「悔いはないかい?」

毒婦「ありません」

殺し屋「ボクもさ」

殺し屋「ボクは大勢の人を殺し、堕ちるところまで堕ちた」

殺し屋「他人どころか、王子としての誇りを持っていた自分さえも殺してしまった」

殺し屋「それでかまわないと思っていた。仕方ないことだと思っていた」

殺し屋「もうこのまま、他人の命を吸い続けて生きていこうと……」

殺し屋「でもある男と出会って……かつての自分を思い出せた」

殺し屋「最後の最後、誇りを取り戻すことができた」

殺し屋「そして、彼に代わってこの手で市長を滅すれば──」

殺し屋「ボクはもう用済みだ」

殺し屋「あとは地獄に落ちて、この体に染みついた血の償いをするだけだ」

毒婦「ええ……共に落ちましょう」

殺し屋「きっとボクたちは道はちがえど、同じような歩き方をして」

殺し屋「今日この時、ここにたどり着いたんだろうね」

毒婦「ええ、きっとそうですわ」



王子「姫……ずっと会いたかった……ずっと愛していた……!」

姫「はい、私もです……王子」

今のところ>>112が当たってるな

金髪少女「お待ちください!」
2人「!?」

って感じで生きる展開か?
これはありきたりか・・・
やっぱ死ぬのかな

屋敷の外──

ワァァ……! ウォォ……!

青年「う……」ムクッ

青年「な、なんだ……騒がしいな──」

青年「!」ハッ

青年「殺し屋は!? あの女の子は!? どうなったんだ!?」

青年「…………」

青年(あ、あそこにいるのは──!?)

金髪娘「うぅ……」

青年「薬かなにかで眠らされている……? オイ、起きるんだ!」ユサユサ

金髪娘「あ、あなたは──」

青年「話は後だ! すぐここから逃げよう!」グイッ

金髪娘「は、はいっ!」

翌日──

ザワザワ……

「市長が殺されたってよ! やったのは殺し屋と毒婦だ!」

「殺し屋と毒婦も、抱き合ったまま私兵に串刺しにされたらしい!」

「アイツらそんな仲だったのか!」

「自治都市三大悪党が、一夜にして滅びたってわけか……」

「この機を逃す大統領じゃねえ。この街も、もう終わりだな」

ドヨドヨ……



青年「殺し屋も……毒婦も……そして市長も死んだみたいだ……」

金髪娘「ええ……」

青年「ボクは君を知っている……いや、君に似た人を知っている」

青年「ボクと君の姉は恋仲だった。君の姉は……旧王国のメイドだろう?」

金髪娘「はい……」

金髪娘「私は姉の死の真相が、この都市の市長によるものだったことを知り」

金髪娘「仇討ちのためにここにやってきました」

金髪娘「そこで毒婦に出会って……」

金髪娘「性行為の最中に相手を殺す方法を教えてもらっていたんです」

金髪娘「でも昨夜私を屋敷内に送る直前、突如毒婦は私を眠らせて……」

青年(彼女もまた、ボクと同じような道をたどってきたんだな)

青年(殺し屋と毒婦……二人はいったいなにを考えていたんだろうか)

青年(ボクらへの同情心か、あるいは市長に取って代わろうとでもしたのか)

青年(今となってはもう知るすべはない……)

青年(ただ一つ分かることは)

青年(ボクの祖父、ボクの恋人、ボクが仕えるはずだった方の仇は──)

青年(皆死んだということだけだ……)

またまた予想が当たってしまった
てか予想できるような展開にするなよ・・・

青年「もうまもなく、この都市は共和国軍が攻め込んでくるだろう」

青年「そうなる前に、一緒に逃げよう」

金髪娘「そうですね」

青年「あと……殺し屋のアジトに一度寄らせてくれ」

青年「連れていってあげたい女の子がいるから」

金髪娘「あの時一緒にいた女の子ですね?」

金髪娘「ぜひ連れていきましょう」



そして半年後──

とある町──

少女「お兄さん、お姉さん、学校に行ってきまぁ~す!」タタタッ

金髪娘「行ってらっしゃい」

金髪娘「今日でちょうど、あれから半年……早いものですね」

青年(人々の悪夢を具現化したようなあの自治都市も)

青年(あれからまもなく大統領の命を受けた共和国軍によって、崩壊した……)

青年(だけどボクからすれば崩壊させたのは共和国ではなく、まちがいなくあの二人だ)

青年「なぁ、最近ボクはこう思うんだ」

青年「もしかしたら、殺し屋と毒婦は実は姫と王子で」

青年「国が滅びるという過酷な状況下で一度は闇に落ちたけれども──」

青年「最後に誇りを取り戻して、二人で悪を滅ぼしたんじゃないかって……」



                                 ─ END ─

えー・・・
なにその落ち・・・

まぁ乙・・・

作者のあとがきとかあるでしょ?
早く書いてよ

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