天秤(オリジナル百合) (98)

勢いで暗い姉妹百合書く
台本型式


①過去


パパ「妹、誕生日に行きたい所は決めたかい?」

妹「ううん、まだ」

ママ「どこがいいかな? 海は?」

妹「ママは黙ってて」

姉「妹、そんな言い方は」

妹「なに? ママも、お姉ちゃんも、一緒にいくつもりなの?」

ママ「……妹ちゃんは、誰といくつもりだったのかな?」

妹「私とパパとでよ」

ママ「お姉ちゃんと私は?」

妹「来なくていいよ」

姉「……」

姉(パパはどう思ってるんだろう)

パパ「……」

姉(何も言わない)

ママ「妹ちゃん、そんなこと言わないで」

妹「二人こそ、家来のくせに図々しいわ」

ママ「ッ……」

パパ「妹、言葉遣いが汚いぞ」

妹「……ごめんなさい、パパ」

姉「ママ……」

ママ「ごめんね、お姉ちゃん。なんでもないの、気にしないでいいの」

妹「パパが二人を引き取ったから、こんないい生活ができてるのよ。感謝してよ」

パパ「妹」

妹「だって、私の誕生日のプレゼントにあやかろうだなんて……」

姉「別にそういうわけじゃない」

妹「口答えするの?」

ママ「ごめんね、妹ちゃん。お姉ちゃん、もうお部屋に戻りましょう」

姉「だって、おかしい。どうして、いつも妹の言うことばかり聞くの?」

妹「パパ、お姉ちゃんが、また生意気なこと言ってるわ」

ママ「お姉ちゃん、良い子だから」

姉「どうして? パパのお兄さんの娘だからって、何が偉いの?」

ママ「だめよ。やめて、ね」

妹「偉いわよ! それに、パパの方があんたより、私より何倍も偉いのよ」

姉「パパ……。パパは偉いの? パパの娘の妹は、もっと偉いの?」

ママ「お姉ちゃんッ」

パパ「……」

姉「……」

パパ「人の命は平等じゃないよ」

②前のパパ

3ヶ月前

プルル――

姉「はい」

パパ『はあッ……はあッ……パパだよ』

姉「パパ!」

パパ『良い子にしてたか……はあッ』

姉「うん、してたよ」

パパ『ママはッ……近くにいないのか?』

姉「うん、お買い物」

パパ『そうか、ふぅッ……なあ、テレビついてるか?』

姉「ついてるよ?」

パパ『何をやってる?』

姉「ニュースだよ。速報で、火事が起きたって」

パパ『チャンネルを変えてくれッ』

姉「うん?」

ピっ

パパ『いいかい。すぐにアニメのチャンネルに変えるんだ』

ピっ

姉「変えたよ」

パパ『よし、良い子だッ……ゲホッ』

姉「パパ、どうしたの? 風邪ひいたの?」

パパ『ああ、なんでもないよ』

『ゴトンッ』

姉「何の音?」

パパ『ああッ、ごほッごほッ……椅子を倒してしまって』

姉「パパ、おっちょこちょい」

パパ『そうだなッ、あははッ……こほッ』

姉「パパ、今日はいつ帰るの? 今夜はすき焼きだって、ママちょっとふんぱつ? するって」

パパ『ごほッ、そうか……そうだな』

姉「パパが帰って来ないとお肉は入れないって言ってたよ」

パパ『そりゃ……良くない。パパはけっこう欲張りだから、さっさと食べておかないと、全部食べちゃうよ』

姉「えー、ひどーい」

パパ『二人で等分にして食べておいていいから』

姉「とうぶん?」

パパ『分けっこして食べてってこと……ごほッごほごほッ』

姉「パパ?」

ガサガサッ

パパ『何をしてる?』

姉「パパ、嘘つかないで。風邪ひいてるんでしょ。薬持って行ってあげるから」

パパ『……ッ』

ガチャンッ

姉「パパ? ね、どこにいるの? あ、ママ帰ってきた」

パパ『ママか? 本当にママか……ごほッ』

姉「うん」

ママ「あら、パパ?」

パパ『本当だ、ママの声だッ……嬉しいなあ。上手く引っかかってくれたのか』

姉「ねえ、ママ、今日のパパ変なの」

ママ「あら」

プツッ――

姉「パパ?」

ツツッ――

パパ『……は……どうじゃない……んだ』

ツツッ――

姉「パパ?」

『バチバチッ――バギィッ』

ザザザ――

ママ「どうしたの? 切れた?」

姉「うん」

ママ「いつ帰ってくるって?」

姉「えっと、あ、聞いてない」

ママ「また、電話するって?」

姉「ううん、分からない」

ママ「うーん、じゃあゆっくり準備しておこうか」

姉「はーい」

③今のパパ


姉(パパが死んだ)

ママ「うッ……ひッ」

姉(ママは、あれから泣いてることが多くなった)

ママ「……うッ」

ギュウッ――

姉「ママ、苦しい」

ママ「ごめんねッ……」

姉(あの日、パパは火事に巻き込まれて死んだ)

ママ「今日は、お客様がいらっしゃるから……ちゃんとしておかないとね」

姉(私達二人は、パパのお兄さんに当たる人の所へ行くことになった。そして、今日はその人が迎えに来る日)

ママ「ちょっと、お化粧直してくるわね」

姉「うん」

姉(ママは再婚するらしい)

姉(向こうにも私より小さい娘さんがいて、その子はこれから私の妹になるらしい)

姉(このアパートとも今日で最後)

姉(今日から、私は新しいお家へ住む)

姉(新しい家族と一緒に)

姉(名前も顔も知らない、新しいパパと新しい妹)

姉(ママが言うには、妹はパパに少し似ているみたい)

姉(選ぶ権利なんてなく。ただ、私は言われた通りに、玄関で待っている)

ピンポーン!

姉「来た」

ママ「はーい」

ガチャ

眠いのでここまで

ママ「いらっしゃ……」

妹「小さい部屋……。ホントにここで二人も住んでるの?」

パパ「ああ、そうだよ」

姉「……」

姉(なに、この子)

ママ「狭くてごめんね」

妹「あなたが、ママ?」

ママ「ええ」

妹「せいぜい、パパの顔に泥を塗らないようにね」

クルッ

姉「ちょっと」

グイッ

妹「なによ」

姉「いきなり、何言ってるの」

ママ「やめなさい」

妹「離しなさいよ」

ドンッ――

姉「うあッ」

ヨロッ――ドタタッ

ゴンッ

姉「いたぁッ!」

ママ「お姉ちゃん!」

妹「人殺しの子どもの癖に、馴れ馴れしくしないで」

姉「何言って……」

妹「頭が悪いんだね。年上の癖に。ちゃんと学校には行ってたの? ねえ、パパ」

パパ「ああ、行っていたよ」

妹「ふーん、まあ、どうでもいいけど」

パパ「さて、スケジュールが詰まっているから、早く車に乗りなさい」

妹「今日はお休みじゃないの?」

パパ「急患を断っているだけで、パパにはやることがたくさんあるんだよ」

妹「外科部長だもんね。ふふふ」

ママ「お姉ちゃん、ほら、立てる?」

姉「う……ん」

ママ「荷物持って」

姉(私たち、今からどこに行くの? ママ。ねえ、新しい家族? 本当に?)

チラッ

ママ「……うん?」ニコッ

姉「……」

姉(笑ってる。ママ、どうして笑ってるの?)

ママ「車に乗って」

姉「大きな車……」

姉(私とママと、この人達は違うの?)

姉(人殺しって何?)

姉(言葉になってくれない)

姉(聞きたいのに……)

姉(聞いちゃいけないことなんだ)

妹「ねえ、パパ。誕生日のプレゼントどうしよう」

パパ「まだ、随分先のことなのに、気が早いな」

妹「パパこそ、どこでも連れて行ってあげるって言うから、悩んでるのに」

パパ「まだ、時間はあるから、ゆっくり決めるといい。お姉ちゃんともね」

妹「……ああ」チラッ

姉「……」ビクッ

妹「ええ……」

④妹

数年後、中学生の時――

妹「でね、これがパリに行った時の写真なの」

生徒「うわあ、羨ましいなあ」

妹「どこにでも連れて行ってくれるのよ」

生徒「ねえねえ、この小さく映ってるのは?」

妹「え? どれ?」

生徒「これ」

妹「ああ、それ、あそこに立ってる人よ」

生徒「え?」クルッ

姉「……妹、帰るよ」

妹「私の家来よ」

姉「……」

生徒「え、お姉さんじゃないの?」

妹「ううん、私の言うことなんでも聞いてくれるのよ。ねえ、ちょっと、ワンって言ってよ」

姉「ワン」

生徒「ぷッ……!? ホント!?」

妹「私の友だちの言うことだって聞くわよ。ねえ、試しに命令してみたら」

生徒「え、いや、それは」

妹「いいから、やってみてよ」

姉「……」

生徒「え、いやあ、あの」

妹「いいのよ、別に。お姉ちゃんだって、喜んでやるんだから、ねえ?」

姉「……」ニコ

生徒「じゃ、じゃあ……3回まわって、ワン」

姉「……」

クル―
クル―
クル―

姉「ワン」

今日はここまで

生徒「うわ、ホントにやった」ゾクッ

妹「ほーら、こんなことしたって」

ペシッ
ペシッ

姉「……」

妹「噛みつかないの」

生徒「よくしつけられた犬みたい」

妹「そんな感じね」

生徒「でも、お姉さんなんでしょ? いいの?」チラ

姉「……」

妹「お姉さん……ねえ? お姉ちゃんは、自分のことなんだと思ってるの?」

姉「妹の家来だよ」

妹「だってさ。ほら、もっと命令してみてよ」

生徒「う、うん……」

姉「……どうぞ」ニコッ

生徒「……」ゴクッ

妹「ほら、早く」

生徒「四つん這いになって、椅子になってよ」

姉「分かった」

ペタ――
ペタ――

生徒(こんな綺麗なお姉さんに命令するのって、凄い罪悪感あるのに……なんか快感)

姉「座ったら」

生徒「あ、はい」

スッ――トサ

姉「……」ググッ

妹「お姉ちゃん、私も乗っていい?」

姉「うん。いいよ」

妹「わーい」

トサッ

姉「……」ググッ

妹「それで、動いてみて」


姉「う……ん」ググッ

ズリ――

妹「おそーい」

姉「……」プルプルッ

妹「遅い、遅い」

パンッ

姉「ッぁ」ビク

ガクッ――ドシャ!

妹・生徒「「きゃ!?」」

ドサッ――

姉「ぅ……」

妹「何やってるの……フフッ。潰れたカエルみたい」

姉「ごほッ」

生徒「あの、大丈夫ですか?」

姉「大丈夫」

妹「心配しなくていいのに。ねえ?」

姉「そうだね」

生徒「でも、肘擦りむいてるけど……」

妹「え、どれ?」

ガシッ

姉「ぁ……ッ」

妹「ふーん」

生徒(……わ、私なんか今さら酷いことした気分に……なんでこんな命令したんだろ)

生徒「ね、やっぱりそういうのって良くないんじゃ」

妹「え? なに?」クルッ

生徒「だから、その」

妹「良いか悪いかなんて、どうしてあなたが分かるの?」

生徒「え?」

妹「どうして、あなたが決めるの? 決められる立場? 違うわよね」

生徒「何言って」

妹「分をわきまえてよ。がっかりだわ。お姉ちゃん、帰るわよ」

姉「帰ろうか……」

パンパンッ

生徒「……」

妹「鞄持って」

姉「いいよ」

妹「ちょっとお手洗い寄って」

姉「うん」

妹「生徒ちゃん、また、明日」

フリフリ

生徒「また……」

フリ

お手洗い――


ジャー

妹「お姉ちゃん、肘ちょっと冷やしたら?」

姉「そうだね」

バシャッ

姉「きゃ?!」

妹「ひっかかった! アハハッ」

姉「……」

ポタタタッ

妹「あーあ、風邪ひくわよ」

姉「タオルとか、持ってない?」

妹「なんで貸さないといけないの」

姉「そうだね」

ジャー
ゴシッ

妹「そうそう、制服で拭けばいいのよ。でも、そうね」

ガシッ――バシャバシャ

妹「どうせなら肘までしっかり濡らしたら」

姉「ッい」ズキズキ

キュ――

妹「肘、突き出して」

姉「…‥」

ポタポタッ

姉「こお?」

妹「赤くなってる」

姉「たいしたことないよ」

妹「舐めてあげる」

チュ――ペロ

姉「い、妹……いたいよ」ビクン

妹「チュパ――」

姉「ッぁ」

ギュ

妹「ペットが怪我したら処置するのも飼い主の役目」

チュルル――

妹「……鉄の味ね」

⑤日曜日

ズキッ

姉「……」

姉(肘を動かすだけで痛い。骨が折れてるわけじゃないと思うけど)

姉「っしょ」

トタトタ

ママ「お姉ちゃん、おはよう」

姉「おはよう」

ママ「妹ちゃん起こしてきてくれる?」

姉「分かった。お父さんは?」

ママ「パパ、昨日の深夜まで手術してたから、寝かせてあげて」

姉「うん」

トタタタ――

今日はここまで

妹の部屋

ガチャ

姉「妹、起きて」

妹「……スー」

姉「いつまで寝てるの」

妹「ン……」

姉「目覚ましが、転がってる」

ヒョイ

姉「1時間前にセットしてたんだね」

コト

妹「スー……」

姉「……」

ギシッ

スッ

姉(もし、この細い首を思いっきり握りしめたら、妹はどうなるだろうか)

姉(痛みと苦しみで飛び起きて、目を見開いて、声も出せずにもがくのかな)

姉「妹、起きてよ。起きないと……」

姉(なんて、無防備なんだろうか)

姉(寝ている間に、手首と足首を縛って、腹や顔を殴りつけることもできる)

姉「起きないと……」

姉(たぶん、しようと思えば容易にできる。でも、この子の泣き叫ぶ姿はイメージできない)

姉(イメージできない……当たり前か)

姉(だって、彼女は私より偉いのだから、そんなことしちゃいけない)

妹「ねえ」

姉「あ」ビクッ

妹「いつまで、人の顔ジロジロ見てるの?」

姉「ごめん、起こそうと思って」

姉(起こそうと思って? そう思って?)

妹「許可なく部屋に入ったらどうなるか、覚えてる?」クスッ

姉(そうだ、前にも同じようなことが)

妹「立って」

姉「……」

ギシッ――スタッ

妹「そこの壁に両手をつきなさい」

姉「妹、お母さんがまだ下に」

妹「あの女が気付くわけないじゃない。私にびびってこの部屋に近づくことすらしないのに」

姉「妹……」

妹「うるさい。スカート脱ぎなさいよ」

姉「やめた方が良いよ」

妹「誰に向かって口答えしてるのよ」

姉(どうして……)

姉(どうしてこの子はいつもこんなに人の上に立とうとするんだろう)

妹「家だからって、立場は変わらないんだから」

姉(人目を気にし過ぎてる気がする)

妹「脱がないなら、手伝ってあげる」

ズリッ

姉「やめッ」

『二人とも、朝ごはん食べないのー?』

妹「……」ピタッ

姉「やめて……部屋に勝手に入ってごめんなさい。謝るわ」

妹「そうよ、そうやって最初から言えばいいの」

フイッ

妹「着替えるから脱がせて」

姉「うん」

プチプチプチ――スルスル

妹「パパは起きてるの?」

姉「ううん、深夜の急患対応で寝るの遅かったみたいだから、まだ寝てるよ」

妹「そお」

姉「お父さん、最近ちょっと忙しそうね」

妹「パパは天才だもん。どこにいても引っ張りだこになる」

スルスル――

妹「袖、通して」

スッ

妹「私ともお姉ちゃんともお母さんとも違う、違う人間よ」フフッ

姉「そうだね」ニコ

妹「なに笑ってるのよ、気持ち悪い」

トタトタ

妹「先に降りるから」

トン、トン、トン――

姉「……」

姉(妹は)

姉(会った時から、今現在も)

姉(私には理解できない人間だった)

姉(同じ立場ではない、というのはこういうことなのかもしれない)

姉(分かり合えない)

姉(比べようのないものを、必死に比べようとしている)

姉(妹には何が見えてるんだろう)

姉(私には見えないもの? それとも、私が見たくないもの?)

トン、トン、トン――

『お姉ちゃん、ご飯冷めるわよ』

姉「うん、今行く」

トン、トン――

――――
―――

ママ「お姉ちゃん、お仕事行ってくるから、お庭のお掃除お願いね」

姉「わかった」

ママ「パパには、起きたらパンを焼いてあげてね。いい?」

姉「大丈夫。いつも通りにすればいいだけだよね」

ママ「ええ」

妹「ママ」

ママ「……」ピク

姉「……」チラ

妹「ねえ」

寝ます

ママ「どうかした?」

妹「私、何かすることある?」

ママ「ううん、大丈夫よ。ありがとうね」ニコ

妹「わかったわ」ニコ

姉「お母さん、遅れるよ」

ママ「あら、いけない」

パタパタ――

姉「珍しいね」

妹「何が」

姉「自分から手伝おうとするなんて」

妹「それくらい、私だってするわ」

姉「庭の掃除、一緒にする?」

妹「それは、お姉ちゃんの役目でしょ」

姉(だよね)

姉(何か心変わりがあったのかと思ったけど、ただの気まぐれか)

家の庭


姉「落ち葉がすごい」

ザッザッ

姉「お金持ちの人の庭って、どうしてこんなに広いんだろう」

ザッザッ


『お姉ちゃん!』


姉「え」

トタタタ――

少女「お姉ちゃん、どこー?」

姉(迷子かな)

少女「……お姉ちゃん? 正太郎ー?」キョロキョロ

姉「どうしたの?」ヒョイッ

少女「わッ」ビク

姉「ご、ごめんね。驚かせたね。どうしたの?」

少女「犬の散歩してたら、犬が逃げちゃって……。お姉ちゃんともはぐれちゃっ……グス」

姉「そっか。一緒に探してあげるよ」

少女「いいの!?」

姉「うん」

姉(妹が家にいるし、大丈夫だよね)

道端

少女「あっちの方に逃げたの」

トテテテッ

姉「あ、待って。危ないから手を繋いでいこう?」

少女「うん」

ギュッ

姉(素直で可愛いなあ)

姉(妹って感じ)

少女「正太郎ー!」

姉「お姉ちゃんー!」

少女「帰るよー!」

姉「餌とかあるの?」

少女「うん、ある」

ゴソゴソ

少女「これ。骨っこガム」

姉「……」

姉(美味しくなさそう)

橋の上

犬「ワン! ワン!」

少女「正太郎だ!」

犬「ハッハッ」

少女「お姉ちゃんは?」キョロキョロ

犬「ワン! ワン! ワン!」

少女「なんで川に向かって、吠えてるの?」

犬「ワン! ワン!」

姉(下に何かいるのかな)ヒョイ

少女「え、何かいるの?」ヒョイ

姉「あれ、人間……?」

少女「お姉ちゃん!?」

ダダダッ

姉「あ、待って!!」

犬「ハッハッハッ」

タッタッタッ

河川敷


姉「まって、人形かもしれない」

少女「違うよ。お姉ちゃんだった。絶対、お姉ちゃんだった!」

ガサッガサッ

姉「草やぶの中に入ったら、危ない。私が見てくるから、ここで待ってて」

ガサッガサッ

犬「ワン! ワン!」

少女「やだッ、お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

姉(こんなに取り乱して。よっぽど大切なんだね。そうだよね。普通は、そうなんだ。普通の反応なんだ)

ガサッガサッ

少女「お……お姉ちゃん!」

少女の姉「……」グタ

姉「意識がない……」

姉(どうしようどうしようどうしよう)

少女「あ……あッ」ビクビクッ

姉(少女ちゃん……落ち着いて、落ち着いて、私が助けないと)

姉「少女ちゃん、橋の上に行って大人の人を呼んできてッ。救急車を呼んでもらわないと」

少女「……ッ」ガタガタッ

姉「少女ちゃん!」

少女「は、はいッ」

姉「落ち着いて、ね?」

少女「で、でもぉッ」ポロポロ

姉「怖いよね? 私も怖いよ。でも、お姉ちゃんを救えるのは君だけだよ。ね、上に行って大人の人を呼んで来て。お願い」

少女「あ……う」ポロポロ

犬「ワン!」

少女「正太郎……」

犬「ワン! ワン!」

ダダダッ

少女「正太郎! 待って、私も行く!」

タタタタッ

姉(お父さんの持ってる本に書いてた。小さい子どもの方が、冷たい水の方が助かりやすくて脳を守ってくれるって……)

少女の姉「……うッ」パチッ

姉(意識が……)

少女の姉「……」スッ

姉(あれ、戻ったと思ったのに……)

少女の姉「……」

トロッ

姉(……耳から血が出てる)

姉(頭を打ったんだ……中で出血してるかもしれない)

姉(血を拭きとった方が良いの? ううん、ダメ……)

姉(でも、一刻も早く手術してもらった方がいい気がする……一番近い、お父さんの病院に運んであげないと)

―――
――――

お父さんの病院


ガラガラ――

救急隊員「え!? 受け入れ出来ない?!」

看護士「ええ、申し訳ないんですが別の病院に」

少女「お姉ちゃん……」ポロポロッ

救急隊員「さっきは、大丈夫って言ったじゃないですか!?」

医師「今、外科部長のお子さんが運び込まれたんだ。小児の脳外科は経験者が少ないんだよ」

姉(……え、妹が)

少女「……ダメなの? お姉ちゃん、ここダメなの?」

姉「少女ちゃん……」

救急隊員「だからって、順番的には……この子の方が早かったんでしょ?」

医師「だから……もう、手が回らないんだ。ここで待機するより早く別の病院に回してあげろ」

少女「……」ガクガクッ

姉「お願い、助けてあげて!」

ガシッ

医師「な、なんだ」

姉「この子、今すぐ助けてあげないと……危ない気がするんです! お願いです! お願い!」

姉(なんでこんなこと言えるのか分からない。でも、そんな気がする。凄く危険な気がする)

看護士「ダメよッ、我がまま言わないで」

姉(我がまま? これは、我がままなの?」

少女「お姉ちゃん……ッひ」

救急隊員「埒が明かない! 君達、急いで乗りなさい。別の病院へ行く!」

ガラガラ――

救急隊員「急げ!」

バンッ

ピーポー
ピーポー




救急車内

姉(お父さん……)

姉(そうなんだね)

姉(……人の命は)

姉「……平等じゃない」

救急隊員「脈圧低下! 危険な状態です!」

救急隊員「くそッ、持ちこたえてくれ!」

姉「……」

少女「……」ボロボロ

姉「……少女ちゃん」

ギュウ

少女「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん……」ブツブツ



お父さんの病院――


妹「……すー」

ママ「お母さんちょっとトイレ行ってくるね」

姉「うん」

妹「……すー」

姉(妹は、階段から落ちて頭部を強く打ったそうだ)

姉(症状のことは詳しく知らないけど、あの時本当に妹を先に診る必要があったのかな)

姉(分からない。私には、あの少女のお姉ちゃんの方が重症に思えた)

姉(私はお医者様じゃないから……きっと違ったのかもしれない)

姉(あの後、あの子達がどうなったのか知らない)

姉「妹、無事で良かった」

サラッ

妹「ん……」

姉(なんだろう。お腹の中、気持ち悪い感じ)


ガチャッ

担当医師「こんばんわ」

姉「あ、こんばんわ」

担当医師「何か変わったことは?」

姉「ありません」

担当医師「良かった。外科部長の奥様はどこに行かれたんだい?」

姉「ちょっとお手洗いに行きました」

担当医師「そうか。後でまた来ると伝えてもらっていいかな?」

姉「はい」

バタン

姉(……どんな状態だったのか、やっぱり聞こう)

カタンッ
タタタタ――

ガチャッ

姉「あれ、いない?」

タタタ――

姉「あの部屋かな」

『どうだった?』

姉「……ここかな?」

『ああ、よく眠ってるよ』

『外科部長の娘、ひいては当院の医院長のお孫さんだからな。くれぐれも失礼のないようにしろよ』

『分かってるって。大事なお客様だ』

『ところで、医院長から預かってきてるぞ、ほら』

『おお、悪いね。今しがたまで胸くそ悪い気分だったんだ』

『冗談。お前がそんな玉か』

『ホントさ。先に運ばれた女の子を断ってまで診たんだから』

『で、今の気持ちは?』

『最高だよ』

『だろうな』

姉「……グッ」

クルッ

姉「……」

テクテクテク

姉「……」

テクテクテク

姉「……」

ドンッ

妹「いたッ。ちょっと、前向いて歩いたら?」

姉「……ごめん。妹、もう歩いて平気なの?」

妹「別になんともないけど」

姉「そっか、良かった」ニコ

妹「病室にリンゴがあったから、剥いてよ」

姉「……元気だね」

妹「お腹空いたわ」

姉「担当のお医者さんがもうすぐ来てくれるから、それまでちょっと待って」

妹「はいはい」

テクテクテク

姉「……」

――――
―――

担当医師「うん、経過も良好ですね」

妹「もう、お腹空いてしょうがないんだけど」

ママ「まあ」クスクス

担当医師「食事の方もしてもらって構いません。脳のことなので、2、3日は入院して様子を見ましょうか」

妹「暇だわ……」

ママ「何か、遊べるもの持ってきてあげるわね」

妹「うん、それよりリンゴ」

姉「ああ、そうだね。ちょっと剥いてくる」

カタンッ

姉「お母さん、包丁どこ?」

ママ「あ、袋の中に包んでるわ」

担当医師「お優しいお姉さんですね。さすが、外科部長のお子さん」

ママ「気の利く良い子です」ニコ

姉「……」

シュルシュルシュル――

姉(あの子の、耳から流れてた血が目に焼き付いてる……)

姉(このリンゴの皮みたいに……)

姉(私達姉妹の関係は平等ではないかもしれないけど)

姉(それは、私達だけの問題……じゃない?)

姉(命を救うことも、家族を守ることも、どちらも正しいはずなのに)

姉(どうしてこんな気持ちになるの……)

シュルシュル――ポトッ

⑥花




姉(妹がいない我が家は、静かだ)

ママ「お母さん、妹ちゃんの所にお見舞い行ってくるからちょっと早く出るわね」

パパ「よろしく頼んだよ」

ママ「ええ」

姉(妹がいないと、お母さんもお父さんも普通に見える)

パパ「お姉ちゃん」

姉「な、なに」

パパ「昨日、病院で何かあったのかい?」

姉「なんで?」

パパ「いや、そんな気がしただけだ」

姉(昨日の事、お父さんが命令したことなのかな)

姉(でも、そんなこと聞けない)

姉「何もないよ」

パパ「そうか」

学校

生徒「あれ、今日は妹いないんですか」

姉「ちょっと入院してるんだ」

生徒「え、うそ!」

姉「たいしたことないよ」

生徒「えー、酷いお姉さん。もっと心配してあげてくださいよ」

姉(妹の怪我、軽傷だった。ちょっとかじった私程度でも分かるくらいには)

姉「うん、そうだね」

生徒「お姉さん、き、今日命令は」

姉「え」

生徒「私も、していいんですよね……?」ゴク

姉「……え、ええ」

昼休み

体育倉庫――

姉「ここで、何をするの?」

生徒「ごめんなさいッ」

トンッ

姉「……きゃッ」

ガラガラ
ガチャ

姉「え、生徒さん? 開けて! ねえ!」

『先生、これで私のカンニング許してくれるんですよね!?』

数学教師「ああ、いいよ」

姉「だ、誰」

数学教師「誰とは酷い。担任じゃないか」

姉「どうして、先生が」

数学教師「君はいつも妹さんと一緒にいるから、話しかけるチャンスがなかなかなかったけど、漸くゆっくり話せる」



姉「何か」ビク

数学教師「なあ、そんなに怯えるな。僕よりも、君の妹の方がよほど不気味だろう」

姉(どうして、知ってるの)

数学教師「驚いた顔をしてるが、この学校の教職員、PTAは周知の事実だよ」

姉「どういうことですか」

数学教師「君の妹の異常性と、そしてそれを擁護する両親。そして、我関せずの学校側」

姉「つまり、私と妹の関係を知っていてみんな放置しているってことなんですか」

数学教師「そうだ。頭の柔らかい子は好きだよ。おかしいと思っただろ? どいつもこいつも助けてくれないクソ野郎だと思わなかったか? 君の祖父はこの学校の大きなスポンサーなんだよ。理事長でさえ逆らえない。だから、君らのしている事を誰も咎めやしないのさ」

姉「どうして、そんなことになったんですか」

数学教師「知りたいか?」

姉「はい」

数学教師「では、取引をしよう。情報というのはタダではないよ」

姉「あの、私お金は持ってなくて」

数学教師「お金なんていらない。写真を一枚欲しい」

姉「写真ですか?」

数学教師「そうだ。君の写真だ」

姉「私の?」

チャキ

姉「ナイフ!?」ビク

数学教師「刺しやしない。ちょっと首筋に当てるだけさ」

姉「あ、う」

ピト

数学教師「動くと傷をつくることになるぞ。じっとしてろ」

パシャッ

姉「ッ……」

数学教師「よし、契約成立だ」

チャキンッ――スポ

姉(……なんでこんな写真を)

数学教師「さて、じゃあ僕の知っていることを話そう」

――――
―――

放課後

河川敷――

テクテクテク

姉「……」

『―――ある患者の死が発端だった。その患者は手術中に亡くなった。担当したのは、君のお父さんだった。その時のオペにミスはなかったが医療器具に問題があったと病院側の見解が発表された。医療器具に致命的な欠陥があり、手術の際に器具の点検を怠ったとして責任者が処罰された。その責任者は、実刑は免れたけれど、その後どこの病院にも受け入れられなかったんだ。一人息子を持ちながら、彼は辛い状況に追い込まれてしまった。行き場を失った彼は、自分を守るためにある結論を導き出した。もしかしたら、オペにミスがあったのではと。そして、それを病院側が隠蔽しようとして、器具に何らかの細工を施したんじゃないかとね。なら、話は違ってくる。彼は憎悪に身を焦がした。憎しみの矛先は、どこに向かったと思う? なんということか、君の妹だよ』

『君の妹は、7日間監禁された。そして最後の日に、炎の中で殺されかけた』

『けれど、妹は助かった。救ったのは、誰だったと思う? 君の本当のお父さんだ。彼は実はオペ室にいた人物の一人だったんだよ。そして、彼だけは知っていたんだ。真実を。何が本当だったのかを。でも、今は誰も分からない。だって、君のお父さんは君の妹を助けるために炎の中に飛び込んだんだから』

『なあ、そう考えると、君を苦しめているのは何なのか見えてこないかい?』

『え? どうしてそんなことまで知っているかって?』

『……僕はね、その責任者だった男の一人息子だからだよ』

ジャリッ

犬「ワン!」

姉「わッ」ビク

姉「あ、ここ……この間の」

犬「ワン!」

姉「あの時の正太郎?」

ザアアッ

ヒラッ

姉「花びら?」チラ

姉「……川沿いに、花束が」

姉「……」

姉(あ……そうか。あの子、亡くなったんだ)

「お姉ちゃん」

姉「え」

少女「お姉ちゃん」

姉「……あの」

少女「あの病院、お姉ちゃんのお父さんの病院なんだって?」

姉「う、ん」

少女「酷いよ」

姉「少女ちゃん……」

少女「酷いよ、どうして助けてくれなかったの!?」

ドンッ――グラッ

姉「きゃ?!」

ゴロゴロゴロッ――ドシャッ

姉「ッい」

少女「返して! お姉ちゃんを返して!!」

バシッバシッバシッ

姉「やめッ」

姉「私の、私のせいじゃない! 私は悪くない!」

少女「ひッ……うえッ……うわああああ―――」ポロポロ

姉(はッ、そんなことをこの子に言ったってしょうがないのに)

少女「うわああああ――」ポロポロ

姉「ご、ごめんね」

スッ――バシッ

少女「人殺し!」

犬「ワン! ワン!」

少女「人殺し!」

タタタタッ

姉「ま、待って」

姉(人殺し? 私が? どうして?)

姉(おかしいじゃない)

姉(人殺しは、私じゃない)

姉(私はちゃんと言った。先に手術してくださいって)

姉(人殺しは、誰?)

姉(……考えたくない)

姉(ちょっと、疲れた……)

⑦天秤とは

秤(はかり)の一種。
中央を支えた梃子(てこ)の両端に皿をつるし、一方に測る物を、
他方に分銅(ふんどう)を載せ、梃子が水平になるかどうかを見て重さを決める。 

⑧悪夢の7日間

パチ

妹「……」

妹(白い天井)

妹「どこだっけここ」

ムクッ

妹「病院か」

ズキッ

妹「頭が痛い」

ズキズキズキッ

妹「いた……」

今日はここまで
なかなか百合にならない……

むしろ百合なのかこれ...
そして登場人物にクズが多い

良いね

>>58
クズがもがくssです

>>59
ありがと

チカッ

妹(何か、今、光った)

妹(私の頭の中の……記憶?)

『……偉い』

妹(男の人の声が聞こえる)

『君の……偉い』

妹「やだ、止めて」ビクッ

『ここで大人しくしているんだ』

妹(痛いッ、両手、痛いッ、縛らないでッ)

ギシッ

妹(止めて!)

『一緒に、ビデオを見ようか。あまり、面白くはないんだ』

妹(いや、いや、いや! 見たくない! 私、そんなの見たくない!)

『目を開けて、開けるんだ、開けなさい!』

バシッ

妹(痛いッ、ぶたないで! ごめんなさい! ごめんなさい!)

『俺の、俺の息子は、学校でいじめに合うようになった。息子はもっと傷ついた。なのに、お前らは、呑気に家族で買い物か……笑わせるな』

妹(ごめんなさい! ごめんなさい!)

『1週間の猶予をやった。真実が明るみにされれば、お前を帰してやるよ』

妹(ひッ……うあああ――)

ピッ

『手術の映像を見たことがあるか?』

妹(……ッ)ブンブン

『俺は以前、発展途上国の病院に勤務していたことがあってな、その時の手術の映像をたくさん持っているんだ』

妹(いや、見たくない……やだやだやだ)

『中には、麻酔をかけることができない人や、手術中に断末魔を上げて死んでしまった人の映像もあるんだよ。なあ、ちょうど良い暇つぶしだろ』

妹(やだやだやだやだ――)

『医療ミスで死んだ奴の気持ちを、そのミスを被せられた人間の気持ちを……なあ、知ってるか。結局、どっちだ、どっちが庇っているんだ? 兄貴か弟か? なあ? 知らないのか? そうそう、弟の方にも娘がいたな…………なんだ、漏らしたのか? 汚いガキだ』

妹(ひッあ……ぅッぁ)

ポタポタッ

『風呂なんてないぞ。そのうち、乾くだろう』

妹(ったずげ……でぇ)

『じゃあ、鑑賞会1日目と行こうか』

ガっシャーン!!

妹「イヤアアアアァ?!」

ガタンッ!
ダンッ!

妹「ハア……ァッ……ハァッ」

『情けない。お前の親父はもっと偉そうにしていたぞ。ああ、でも気味が良い。気味が良いな』

妹「きえ……て」

ブンッ――ボス!

『ハハ八ハハハハハッ』

妹「……ァ」フッ

ドサッ

コンコン

姉「妹?」

ガチャ

妹「……」

姉「寝てるの? でも、何か、音がしたような……わ」

カチャン

姉「花瓶が割れてる……」

カチャカチャ

姉「危ないなあ……」

姉(風で倒れたのかな?)

妹「何しに来たの」

姉「わ、びっくりした」

妹「……お姉ちゃん、なんで泣いてるの」

姉「え」

サワ

妹「なに、いじめられたの?」

姉「そういう訳じゃ」

フキッ

姉「それより、花瓶割れてたよ? 気づかなかった?」

妹「知らないわ」

姉「それは、凄いね」

カチャカチャ

姉「……いたッ」

妹「……」ビクッ

姉「血が」

妹「切ったの? ドンくさいわね」

姉「あはは……そうだね」チラ

姉(あれ、妹いつもより呼吸が早くなってるような気がする……。それに、瞳孔が開いてる)

姉「妹」

妹「ちょっと早く、血止めてよ」

姉「え、そんな大した量じゃ」

妹「そんなに、出てるじゃない!」

姉「落ち着いて。何をそんなに興奮してるの」

姉(妹には何か違うものが見えてるの?)

妹「見せないで。見たくない。見たくない」

姉「妹、どうかしたの?」

今日は寝ます
ここまで

妹「はあッ……はッ」

姉「妹、ねえ」

妹「ふ、ふふふッ……」

姉(今度は、笑いだした?)

妹「頭が、痛い……あは」

姉「ナースコールを」

カタッ――ガシ

妹「いい、しなくていい」

姉「でも」

姉(手に、凄い汗かいてる……震えてる?)

妹「……はあッ……はあッ」

妹「4日目……生肉を食べ続けた子ども寄生虫除去手術……」ブツブツ

姉「は?」

妹「6日目……」

姉「だ、大丈夫?」

ギュウゥッ

姉(いたッ……)

妹「7日目は」ギリッ

姉「……ッ」ビク

姉(何の事を……)

妹「熱い……熱いよ」ガタガタッ

姉「ね、私を見て、妹」

妹「やだ、怖いッ……熱い」

姉「大丈夫だよ、怖くないよ」ニコ

妹「あ」チラ

姉「?」

妹「……私のパパは偉い。偉いの。でも、私は? 私は……」

姉(混乱し過ぎてる)

ビー

姉「今、ナースコール押したからね」

妹「……ねえ、おじさん」

姉「うん……?」

妹「どうして、パパはすぐにお金を払ってくれなかったの……」ボソ

姉「……」ビク

妹「どうして……」フッ

ドサッ―――

翌日



パパ「妹がそんなことを?」

姉「うん」

パパ「そうか」

姉「ねえ、お父さん、どういうことなの」

パパ「知らなくていい」

姉「……」

パパ「知らなくていい事ばかりだよ」

姉「でも、知りたいの」

パパ「……お前は、弟によく似ているな。知らなくてもいいことに首を突っ込む。見ていて痛々しさすら覚える。そういう性分なんだろうがね」

姉「お願い」

パパ「学校が終わったら、病院に来なさい」

学校

カツカツ――

生徒「あ」ビク

姉「……」

生徒「……」ペコ

姉「あなた」

生徒「な、なんですか」

姉「妹がいない時は、一人なんだね」

生徒「そ、それが何か」

姉「分からない? 妹に飼われてただけだよ。ああ、でも、他に飼ってくれる人がいないんだね。可哀想に」

生徒「な」

姉「医者の娘に近づいたら、餌をくれると思ってる? カンニングなんてしても、医大には入れないよ」

生徒「あんた!!??」

バシッ

姉「手癖が本当に悪い。先生に許されたくらいで、あなたの罪なんて消えないから。一生」

生徒「言ってなよ! どうせ、この学校でなかったことにすればいいだけなんだから。バレなきゃいいんだよ!」

姉「そんな嘘で、何が釣り合うの?」

生徒「あんたこそ、妹に媚び売って気持ち悪いんだよ」

姉「そうじゃないと生きていけないもの。私は、あの家に飼ってもらわないと死んでしまう」

生徒「私だって……」ポロ

姉(あ、泣いちゃった)

生徒「……うッ」ポロポロ

国語教師「こらー! そこ、何やってる!」

生徒「せ、先生! この人いきなり、私を殴ってきて……妹が休んだのは私のせいだって」

姉「え?」

国語教師(はあ? めんどくさいこと起こすなよ)

国語教師「そうか、そうか。それは辛かったな。あー、とにかく、姉は一緒に来なさい」

生徒「……」ニヤ

姉(嘘泣きまで、できるんだ)

国語準備室

国語教師「で、殴ったのか?」

姉「いいえ」

国語教師「じゃあ、あいつの嘘か」

姉「はい」

国語教師「まあ、だとは思ったが」

姉「え」

国語教師「カンニングしたことがあるって聞いたことがあるからな、そのくらいの嘘平気でつくやつだろう。災難だったな」

姉「じゃあ、どうしてすぐにあの場で」

国語教師「妹と仲が良いだろう。妹に言って、二人で癇癪を起されちゃたまらない。最終的に、学校側の監督不行き届きってことにされるだけだ。で、現場に居合わせた俺の責任になる」

姉(腐ってる……)

国語教師「だったら、お前が口を噤んでくれるのが一番いいってことだ。平和的に」

姉「義理の娘よりも妹の方がこの学校にとって大事ですか」

国語教師「そんなこと聞いて何になる」

姉「どちらが偉いのかはっきりさせて欲しいんです」

国語教師「……」

姉「先生……」

国語教師「分かり切ったことを聞くな」

昼休み

保健室

コンコン

姉「あの、すみません」

シーン

姉「誰もいないのかな」

姉「……ベッドも、誰もいない」

トサッ

姉「お腹痛い……ちょっと寝てもいいかな」

ゴソゴソ

姉「いつも、こんなに痛くないのに……」

姉「妹がいないと平和だと……思ったのに。いない方が、もっとしんどいなんて」

姉(変な話……ほんと)

姉(均衡? みたいなのがあったんだ、きっと)

姉(妹がいることで、この学校の悪が普通になるんだ)

姉(だから、今まで分からなかった)

姉(痛い……)

ボヤア――


『パパ? ね、どこにいるの? あ、ママ帰ってきた』

『ママか? 本当にママか……ごほッ』

『うん』

『あら、パパ?』

『本当だ、ママの声だッ……嬉しいなあ。上手く引っかかってくれたのか』

『ねえ、ママ、今日のパパ変なの』

『あら』

プツッ――

姉「パパ?」

ツツッ――

パパ『……は……どうじゃない……んだ』

姉(……はッ)パチッ

姉「うっかり、眠っちゃってた……」

姉(何か、夢を見ていた気がする)

「おい」

姉「え」

数学教師「……授業サボって何やってるんだ」

姉「授業?」チラ

姉(あ、寝すぎた)

姉「あの、お腹が痛くて、寝てたら……」

数学教師「なんだ、お前もか」

姉「お前も?」

数学教師「俺も、たまに節々が痛くなるんだよ」

グシャッ

姉「だ、大丈夫ですか」

ムクッ

姉(抑えてるのは首の後ろ?)

数学教師「なんだ。不思議そうな目で見て」

姉「いや、首の後ろ痛いんですか?」

数学教師「これは、まあたまに。なんだ?」

姉「いえ……」

訂正 数学教師の人称ミス

数学教師「俺も」→「僕も」、「お前」→「君」

失礼しました

数学教師「むち打ちだよ。昔、ある男に思いっきり殴られてな、それからだね」

姉「そうなんですか……」

姉「お父さんの病院、あ、行きたくなんかないですよね」

数学教師「ああ、そのうち行くよ」

姉「そうなんですか」

数学教師「ああ」ニコ

姉「……?」ゾク

数学教師「僕の事より、妹はどうだい?」

姉「怪我は大丈夫ですけど、この間は錯乱して……変な事を言ってました」

数学教師「なんて?」

姉「1日目、2日目……何か手術を受けたのか、見たのか……気持ち悪いことを呟いてて。昔の事を思い出したんでしょうか」

数学教師「子どもの寄生虫?」

姉「あ、はい」

姉(あれ、なんで?)

数学教師「僕も見たよ」

姉「……え」

数学教師「7日日間……も見なかったけどね。30分程で吐き気がして、失神した」

姉「つまり、妹に先生のお父さんがしていたこと……?」

数学教師「ああ、そして僕にして、未完成に終わったこと。君の妹は、凄いよ。7日間それに耐えたのだから。あれに耐えて、廃人にならなかったんだから。強い子だ。でも、僕はダメだ。もたなかった」

姉(この人も、この人のお父さんも……おかしい)

姉「……妹がおかしくなったのも、そのせい?」

数学教師「同情してるのかい?」

姉「あ、えっと……」

数学教師「きっと、彼女の心はその時何か変化した」

姉「先生も、先生もそうなんですか?」

数学教師「……」

姉「あの、もしかして、その首のむち打ち、お父さんに殴られたんじゃないんですか?」

数学教師「いいや、僕は違う。父がボクにくれたのは愛だよ。僕は目に見えないものだった愛という感情を、体に受けることができたんだ。僕の体によって、愛は顕現したんだ。素敵な事だ? そうじゃないか? それに、彼は僕の本当の父親ではなかった。家も離れ離れだった……なのに、わざわざやってきて僕を気にかけてくれたんだ」

姉「妹が受けたことは……」

数学教師「父の愛にも等しいよ。なにせ、父はあの病院を憎んだだけで、君達姉妹を憎んでいたわけではない。だから、最高のおもてなしをしたまでだったんだ。君の妹が羨ましい……でも、それはあるいは君だったのかもしれないね」

姉「え?」

数学教師「そうだろ? どうして、兄の娘である必要があった。弟の娘でも良かったはずだ」

姉「私……だったら」

数学教師「なあ、そう考えると、君は不幸だったのか幸せだったのか? どっちだろう? 答えなくてもいい。分かっているだろう」

姉「……私は」

キーンコーンカーンコーン

数学教師「さあ、授業に行かなくちゃね」

カタンッ
カツカツカツ――

姉「……」

夕方

病院

姉「あの」

受け付け「ああ、お嬢さん、待ってましたよ。こちらへどうぞ」

姉「あ、はい」

受け付け「このネームプレートを首下げて、エレベーターで8階に上がってください」

姉「……はい」

スッ

受け付け「どうぞ」ニコ

姉「ありがとうございます」

ウイイン――

姉「……」

姉「私、何を聞こうとしてるんだろう」

姉「聞かなくてもいいこと」

姉「そうかもしれない」

チンッ
ガコン――

姉「え」

妹「どうして、ここにいるの」

姉「妹こそ」

妹「ヒマだったから、パパに会いに来たのよ」

姉「そうなんだ」

妹「あんた……なんでもない、じゃ」

姉「うん」

姉(あれ、もっと何か言われると思ったのに)

コンコン

『どうぞ』

姉「お父さん……?」

パパ「ああ、よく来た。そこに座りなさい」

姉「……はい」

テクテク――ストン

姉「今、妹とすれ違ったよ」

パパ「もう良くなったから。明日には退院できるよ」

姉「ねえ、妹はPTSDなんでしょ?」

パパ「授業で習ったのか?」

姉「違う。自分で調べた」

パパ「どこまで?」

姉「色々だよ」

パパ「そうか……じゃあ、あとは何が知りたいんだ」

姉「どうして、私のお父さんは死んだの?」

パパ「……お前のお父さんは、弟は、罪を償っただけだ」

姉「罪?」

パパ「もう知ってるかな? 私と弟の医療チームが行った手術の顛末のこと」

姉「……」コク

パパ「あの時、誰のミスもなかったんだ。スタッフも、器具も、病院側には落ち度はなかった。だが、どうしたって世間は何かに責任を負わせたがる。私の父が下したのは、病院としてのけじめをつけるために、そして、後継者を守るために、器具点検の責任者を生贄にした。父はそういう人間だった」

パパ「だが、誤算もあった。責任者に、多額の金を積んだ。にも関わらず、追い立てられた状況に気付き彼は事を起こした。そう、君の誘拐を企てた」

姉「え、私?」

パパ「そうだ。本来なら、君が誘拐されていたんだ。だが、それにいち早く気づいたお前の父によって、未然に防ぐことができた。だが、対象がすぐに変わっただけだった」

姉「妹……」

パパ「ああ、代わりに私の娘が誘拐された。身代金を要求されたが、すでに多額の金を彼には支払っていた。私の父は、言った。もう、出す金はないと」

姉「まさか……それで、1週間も何もしなかったの?」

パパ「そうだ」

姉「酷い……」

パパ「金を出す気がないと分かれば、解放すると父は判断した。警察にも届け出を出さなかった」

姉「その間に、妹は凄く辛い目にあったんだよッ?」

パパ「みたいだな」

姉「そんな、他人事みたいに言わないでよ……」

パパ「どうして?」

姉「どうして? どうしてって……」

パパ「妹はどうせ、もう使い物にならない」

姉「やめてよ……そんなこと言わないで」

パパ「今さらになって、君の方がよほど優秀だと気づかされた」

カタンッ
カツカツカツ――

パパ「心も強く、美しい。隠れて、私の書斎の本を見ているね? 知的好奇心も医者向きだ」

ポンッ

姉「さ、わらないで」

パパ「今だけでいい。あの子が学校を卒業したら、精神病棟に入れる予定だ。次は、君が表舞台に立つ番だ」

姉「妹は、確かにおかしいけど……そんな必要は」

パパ「あの事件が起きた時から、彼女には集団行動を学んでもらう以外に期待はしていないよ。病棟でスタッフの手を煩わせないようにね」

姉「……」ゾク

⑨妹

病院の中庭

姉「……」

姉(狂ってる……)

姉(この病院も、あの男も……)

姉(妹……)

姉(妹が今まで私にしてきたこと、許せないことばかりだ……)

姉(なのに、今、私は……あの子を思いっきり抱きしめてあげたいと思ってる)

姉(汚い言葉をかけられるかもしれない。殴られたり、蹴られたりするかもしれない)

姉(あの子が私の居場所を奪ったんじゃないんだ)

姉(あの子には、もうそんなもの用意されてない)

姉(私は、あの子が立つはずだった場所に立っている……)

ママ「あら、お姉ちゃん」

姉「お母さん……」

ママ「妹ちゃん、元気だった?」

姉「うん」

ママ「これから、退院の手続きに行くの。来る?」

姉「行く……あのね」

ママ「なあに?」

姉「どうして、ママは再婚したの?」

ママ「いきなりどうしたの」

姉「前から、聞こうと思ってたの……」

ママ「あなたのためよ」

姉「……」

ママ「あなたのため。それだけよ」ニコ

姉「あり……がとう」


私は、前に図鑑で見たカッコウという鳥を思い出した。
あなたのためよ、と言われて他人の巣に託されたその子は、いったい何を思うのだろうか。
施しを受けながらも、誰かを犠牲にしていると知る日が来たら?
その時、ヒナは果たして幸せ?

妹の病室

コンコン

姉「妹? 入るよ」

シーン

姉「……あれ」

姉「どこにもいない」

姉「トイレかな」

キョロ

姉「……なにこれ」

カサッ

『みんな死ね』

グシャッ

姉「……あ」ドクンッ

ガタタッ

ママ「お姉ちゃん? 妹ちゃんは?」

姉「はッ……」ドクドクッ

ママ「どうしたの?」

姉「……ッ」

タッ

ママ「お姉ちゃん!?」

姉(もしかして、お父さんとの話聞いちゃったんじゃ……)

タタタタッ

ドンッ

数学教師「あれ」

姉「いたッ」

ヨロッ

数学教師「そんなに慌ててどうした」

姉「せ、先生どうして病院に……あ、ううん、そんなことより、妹見ませんでしたか?」

数学教師「妹? さあ?」

姉「ベッドの上にこれが」

カサッ

『みんな死ね』

数学教師「……これは」

姉「さっき、あの」

姉(なんて説明すれば)

数学教師「理由は後で聞こう。それより、妹さんを探した方がいいんだろう?」

姉「は、はい」

数学教師「誰か見たかもしれない」

タタタタッ

姉「はッ……はッ」

『僕の携帯の番号を教えておくよ。何かあったらかけておいで』

看護士「こら、廊下では走らない! さっきも言ったでしょ!」

姉「え」

ピタッ

看護士「あれ、お姉さんの方だったのね」

姉「妹を見かけたんですか?」

看護士「上に駆け上がっていくのは見たけれど」

姉「……ありがとうございます」

タタタッ

看護士「あ、こら」

姉「……妹」

タタタッ

姉「妹ッ」

タタタッ

姉「どこ?」

タタタッ

患者「ごほッ」

姉「あ、はあッ……あのッ」

患者「?」

姉「私と同年代くらいの女の子見かけませんでしたか」

患者「さあ?」

姉「……はあッ」

患者「でも、なんか同じように廊下を走る音は聞こえたかな」

姉「どっちの方からですか?」

患者「たぶん、あっちの屋上に繋がってる方の」

姉「……ッ」

タタタタッ

屋上

ガチャッ

姉「はあッ……ごほッ……」

看護士「あら、こんにちは」

姉「あの、妹見ませんでしたか」

看護士「さっきまで、そこのベンチに座ってたわよ」

姉「……はあッ」

看護士「鬼ごっこはお外でやってね」

姉「すみ……ません」

キョロ

姉(どこ)

姉「……」

テクテク――

姉「妹?」

ガタンッ

妹「お姉ちゃん、どうしたのよ」

姉「……あ」

妹「来ないで」

姉「妹、柵の外は危ないから、こっちに来て」

妹「いやよ」

姉「お願い」

テクテク――

妹「お願い? お願いするのは私の方よ? 返してよ、私の居場所を!」

姉「やっぱり、聞いてたんだね」

妹「許さない、許さない、許さないから!」

姉「妹……」

妹「許さない……」

カツッ

ママ「妹ちゃん?!」

妹「マ、ママ」

姉(気が逸れた)

タタタッ――ガシッ

妹「は、離して!」

姉「ダメだよッ」

ママ「お姉ちゃん、危ないから離れなさい!」

姉「え」

ママ「何されるか分からないんだから! もう、その子は狂ってるの。好きなようにさせてあげて」

姉(お母さん、何を言ってるの?)

妹「……あはッ」

姉(それは、つまり、妹に死ねと言ってるの?)

妹「やっぱりね、そうだ……あんたたちの考えてること、漸く分かったわ」

姉「妹……」

ギュッ

妹「離しなさいよ」

ママ「お姉ちゃん、こっちにおいで!」

姉「この子は……私が、守る」

ガタンッ

ママ「どうして、柵の外に!?」

妹「な、なによ。一緒に死ぬつもり?!」

姉「死ぬのは怖いから嫌だな」

妹「じゃあ」

ギュウ

妹「あ……」

姉「お母さん、しばらく二人きりにして。出ないと一緒に飛び降りる」

ママ「何言ってるの!?」

姉「本気だよ」

ジャリッ

ママ「……!?」

―――
――

外階段

カツンカツンカツン

妹「……」

姉「……」

妹「どこに行くの」

姉「……」

妹「……ねえ」

姉「分からない」

妹「なによそれ」

姉「でも、私、あなたのこともっと好きになりたいの」

妹「どうしてよ」

姉「お姉ちゃんだからかな? ううん……妹だから?」

カツン

数学教師「あら、見つかったのか」

姉「うん」

妹「先生が、なんで病院に……」

姉「ねえ、先生。そのうち病院に来るって言ってたよね?」

数学教師「ああ」

姉「私の写真使うつもりだったんでしょう?」

数学教師「察しの良い子どもも好きだよ」

姉「私達、当分家に帰らないから。好きに使って」

数学教師「へえ」

妹「ちょっと、何勝手に」

姉「一緒に行こう?」ニコ

妹「……ッ私は、狂ってるの」

姉「知ってる」

妹「偉くなんかないの」

姉「知ってるよ」

妹「生きてなんていけない……」

姉「生きて。私が、あなたを守るから」

ぎゅう

妹「うッ……ああああああ――」ポロポロ

姉「その写真で身代金でもなんでもいくらでも要求して」

数学教師「ああ、そうするよ。君はどこへ行くんだ?」

姉「……」ニコ

妹「うッ……ひッ」ズビ

姉「おいで、妹」

妹「……ッ」コク

数学教師「……」


カンカンカンカン―――





終わり

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