【モバマス】巴「楽しい楽しい村上組」 (96)


※翻訳希望の方はおっしゃってください。

では、始まります。

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【楽しい楽しい村上組】

巴「ふぅ…、ようやっと放課後じゃのう」

サブ「おーい! お嬢ー! 迎えに来やしたよー!」

巴「おうサブ、今日も早いのう」

サブ「ええ! オヤジにお嬢の面倒を頼まれてやすからね! さ! 帰りましょう!」

巴「……ん? 歩きなんか?」


サブ「うっす!」

巴「てっきりいつも通り車じゃと思いよったが」

サブ「今車検に出しとるんすよ」

巴「しゃけん……? ま、たまには歩いて帰るか」

サブ「あ! なんならおんぶでもいっすよ!」

巴「歩きでええ」

サブ「肩車!」

巴「いらんわ!」


サブ「お嬢! ランドセル持ちますよ!」

巴「んや、別にこれくらい自分でさげるわ」

サブ「まあまあ、そう言わんこうに寄越して下さいよ!」

巴「むぅ……。なら、ほれ。そがぁに持ちたいんなら持ちゃあええ」

サブ「おー…。これがランドセル……! わや懐かしいもんですわ!」

巴「お前にもガキの頃があったんじゃのう」

サブ「俺が背負うてみてもええですか!」

巴「止めえ。壊れる」

サブ「大丈夫っすよ! ほら! 俺肩の関節とかめちゃくちゃ柔らかいんで!」

巴「それに、大の大人が赤いランドセルしょっとるのなんか気色わるいじゃろ」

サブ「そっすね」


サブ「お嬢は今日なんの授業やったんすか?」

巴「国語と算数と体育と理科」

サブ「体育! 体育はなにしよるんすか!」

巴「何って、跳び箱じゃが」

サブ「あー懐かしい! 俺は今でも10段飛べるんすよ!」

巴「10段……! すごいのう! 実ぁ言うとうちゃぁ6段がうまいしこいかんのよ」

サブ「なんなら家に帰ってから練習しやしょう! 俺が跳び箱の代わりになりやすけん!」

巴「なら、早う帰ろうかのう」

サブ「うっす! ……あ、おーい! タクシー!」

巴「金あるんなら先に呼べぇや!」


ーー 村上邸 ーー


幹部「オヤジ、こないだ金借りに来たんがあとひと月待ってくれぇいいよんじゃが。……王手」パチン

巴父「むむ…。ま、待った……」

幹部「男に待ったは無い言いよったんは親父でしょう」

巴父「情けは別じゃ。……3日待ったれ」

幹部「分かりやした。……じゅうびょーう↑」

巴父「気色悪い声だすなや! むむ……」

巴「親父、帰ったで」

巴父「あっ…! おお! 巴! お帰り! 今日は学校どじゃったか?」

巴「いつも通りじゃ。ちぃとサブ借りるけん」

巴父「おう、好きに使え!」

幹部「にじゅうびょーう↑」

巴父「接待っちゅうもんを知らんのか、お前は!」


サブ「クッション代わりに布団敷いて……、と。 さあお嬢! どんと来てくんさいや!」

巴「待て、もうちょい低ぅしてくれぇ。台が無いんじゃけん」

サブ「こんくらいのもんすか? 飛び越えるにゃあ腕で身体を押し上げるように! しっかり足を広げて!」

巴「わかっとるんじゃができんのよ」

サブ「さ、物は試し! ささ!」

巴「うし、行くで……」

巴「とうっ」

サブ「ほっ!」

ボスン

巴「ふふ。流石にこれくらいは越えられんにゃあの」

サブ「じゃあ次は10センチくらい高くしますけんね!」

巴「おう、どんどん行くで」


サブ「さあ! お嬢!」

巴「け、結構高いの…。よーし……」

巴「たぁっ! あ、だ、ダメじゃ!」ゲシッ!

サブ「ごふっ!? 脇腹に……!」

巴「す、すまんのう……。大丈夫か?」

サブ「まだお嬢もちっさいけん大丈夫すけど、これをアニキにやられたらほんま……」

巴「さすっちゃろうか……?」

サブ「で、でも! お嬢の跳び箱の練習を止める訳にゃあいけん! ささ、お嬢! もう1回!」

巴「お、お前が言うんならうちもやるで! もう1回頼むわ!」

サブ「ええ! じゃ! また……」


ーーーーーーーーー…………


幹部「にじゅうびょーう↑」

巴父「ご、五目並べでも勝てんとは……」

幹部「私ァオセロやダイヤモンドゲームでも構わんですよ、オヤジ」

ドスン…

巴父「花札…、はお前滅法強いけん……。ババ抜きなら儂でも勝てるじゃろうか……」

ドスン…

幹部「人生ゲームでもええですよ」

ドスン…

巴父「……さっきからドスンバタン騒がしゅうないか?」

幹部「お嬢の部屋からすね。さっきサブが布団持って入りよったが……」

巴父「…………」

巴父「おい、ハジキ用意せぇ」

幹部「直ちに」

ーーーーーーーーー………


サブ「痛えよう…! ケツ痛えよう……!」

巴「かぁいそうに……。蹴っちゃる事ないじゃろう」

幹部「跳び箱の練習しようるだけじゃったんに、オヤジが早とちりするけん」

巴父「い、いやのう…。巴も年頃じゃけん……」

巴「いらん心配よ」

巴父「も、元はと言やぁお前がややこしい言い方するけぇじゃろうが!」

幹部「布団持って入った言うただけやないですか」

巴「ところで……」

巴「布団持って入るんの何がいけんかったんじゃ?」

巴父「……かぁいいのう、巴は! まだ巴はいらん事知らんでええ! 清純な儂の巴であってくれえのう!」

巴「…………?」


【村上組とカメラ】


ーー 放課後 ーー

巴「んー…、はあ……。サブのおかげで跳び箱飛べたで。助かったのう」

幹部「お嬢、お勤めご苦労様です」

巴「ん? 今日はサブじゃのうてお前が迎えなんか」

幹部「ええ、あいつは今日車取りに行っとるんで」

巴「はー。しゃけん、言う奴じゃの」

幹部「詳しいですね、お嬢。 ところで……」

巴「ん?」

幹部「はい、チーズ」

巴「…………」

幹部「はい、チーズ」

巴「…………」

幹部「……チーズ」

巴「まず先に説明せえ」


幹部「まず私がお嬢の写真を撮ります」

巴「うん」

幹部「それがクラウドを通じてオヤジの元のフォトフレームに自動で送られます」

巴「え? くら…? ふれーむ……?」

幹部「オヤジが喜びます」

巴「待て、うちにも分かるように言ってくれぇや」

幹部「おれ しゃしん とる。 オヤジ よろこぶ」

巴「間のややこしい所がまるっきり抜けとるぞ!」

幹部「とりあえず一枚撮らせてください。そしたらおいおい説明するんで」

巴「なんか納得いかんが……、まあええじゃろう」


幹部「では、お嬢。笑うてください」

巴「…………」

巴「に、にー……」ピクピク

幹部「ピースを頼みます」

巴「へ、へへ……」プルプル

幹部「片足あげてください」

巴「ふっ…! うー……」クラクラ

幹部「…………」

幹部「……なんか違うな」

巴「ふざけるな!」



幹部「お嬢。ランドセルを手に提げとらんこうに、しょってください」

巴「んー……。よっこいせ」

幹部「で、肩紐に手を添えてください」

巴「こうか?」

幹部「そしたら、私の人差し指の先を見てください」

巴「これがなんなんじゃ」

幹部「……よし」

幹部「撮れたやした。ほら、上目遣いのお嬢」

巴「ほう……」


幹部「そして、もうオヤジの元に送っとるんで」

巴「ん? 待て、親父もその写真を見よるんか?」

幹部「ええ」

巴「親父はケータイ持っとらんはずじゃが」

幹部「そこで、いわゆる機械のアルバムにさっきの写真を送って、オヤジが見る訳です」

巴「……なんじゃ、上手いしこ出来とるんじゃのう」

幹部「ネットワーク社会ですよ。お嬢」

巴「まあ、ええけえ帰ろうや」

幹部「そうですね」


幹部「お嬢は……、最近はどうです?」

巴「どうっても、どうもせんが」

幹部「そうですか……」

巴「…………」

幹部「…………」

巴(相変わらずこいつはわからんのう)

幹部「おっと、赤信号」

幹部「……さて」

巴「へ? また撮るんか?」

幹部「ええ、なるたけ沢山」

巴「ま、まあええが」


幹部「はい、チーズ」

巴「…………」

幹部「うむ」

巴「よう撮れたか」

幹部「ええ、お嬢を見よると昔を思い出します」

巴「なんでじゃ?」

幹部「フッ……。いえ、お嬢はいい姐御になれますよ」

巴「ふうむ……?」

幹部「おっと、もう一枚」

巴「前見ぃ。そろそろ信号変わるで」

幹部「はい」

ーーーーーーーーー…………


幹部「ふぅ。お嬢、つきやした」

巴「おう。ありがとう。よっこいしょ……」

幹部「…………」

巴「車から降りるところも撮るんか……」

幹部「せっかくなんで」


下っ端1「お嬢とアニキが帰って来たで!」

下っ端2「おい! 並べ並べ!」

下っ端3「前みたいにキチッと並ばにゃあアニキに蹴飛ばされるで!」


幹部「おいお前ら、帰ったで」

下っ端「「「お嬢! アニキ! お疲れさ……」」」

巴「あ、猫じゃ。猫じゃ猫じゃ」

下っ端4「……え?」

巴「おうおう! この猫よう人に慣れとるのう! 触らせてくれるで」

幹部「野良の癖に珍しいですわぁや」

下っ端1「……ふぅ」

幹部「誰が気ぃ緩めていい言ったや」

下っ端1「ヒィッ!? す、すんません!」


巴「やあらかい腹しとるのう、猫はええもんじゃわ」

幹部「ふむ……」

巴「のう、うちん方も錦鯉以外に飼わんのか?」

幹部「あの池やらなんやらに700万はかかっとるんで。ようオヤジもぽーっと眺めようるでしょう」

巴「ううむ…。ように金がかかっとるんじゃのう……」

幹部「ですが、お嬢が猫でも欲しい言やぁオヤジは用意しますでしょうに」

巴「甘やかされるのは嫌いよ」

幹部「フッ……。でしょうね」

サブ「ああ、お嬢とアニキ帰えっとったんすか」

巴「おうサブ、ただいま。お前のおかげで跳び箱飛べたで」

サブ「おっ! そいつぁよかった!」



幹部「おいサブ、来い」

サブ「へ? なんすかアニキ?」

幹部「オヤジがお嬢の写真撮れ言いよんじゃがお前もやれや。お嬢もお前にゃあ懐いとるけんええ写真撮れるじゃろう」

サブ「写真? 任せてくださいよ! 俺ぁこう見えても高校ん頃写真コンクールで銀賞とっとりますけん!」

幹部「そうか」

巴「おーい。なにくっちゃべりよんなら。はよ入ろうやぁ」

幹部「すいません、お嬢。あと猫触ったけん手ェ洗ってくださいよ」

巴「わぁっとる」

サブ「お嬢! こっち見てくださいや!」

巴「ああ? どしたんじゃ?」

サブ「おべー……」

巴「ぶふっ! あは! あーっはっはっは! な、なんじゃら! その顔! ふはっ! あはははは!!」

サブ「よし! お嬢の笑顔いただきですわあ!」

巴「ひ、卑怯ぞ! サブぅ! ふふ! はははは!!」


幹部「すごいな……」

サブ「どや、お嬢! 次は…、ぬぼー……」

巴「ふはっ!? な、なんじゃその『ぬ』と『ね』の区別がつきそうにない面は! あはははは!」

サブ「ふぅ! こんだけ撮りゃあええでしょう! お嬢、あざっす!」

巴「あははは! はは…! ふぅー……! 構わんでよ、うちもおもろい思いが出来たけんな」

サブ「さ、早う家に入りましょうか!」

巴「おう! お前も行くで」

幹部「ええ」


ーーーーーーーー…………


巴父「あーはあぁぁぁぁ……! 巴が、巴がこがあに笑うとる写真なんぞ今まで1枚もないぞ! よう撮ったのう、お前!」

サブ「これが俺の実力っすよ!」

巴父「んで、お前の撮った写真もこれはこれでええのう。巴が色気のあるように見えるわ」

幹部「姐さんに似たんでしょう」

巴父「……ああ、そうじゃのう」

巴父「しかし、こう見ようると儂も写真を撮ってみとうなったのう」

幹部「ならば、オヤジもお嬢の写真を撮ってみりゃあええでしょう。親にしか見せん顔っちゅうんがあるやもしれんけぇ」

巴父「よし! 儂もやってみるかのう! サブ、儂の部屋からカメラ取って来い」

サブ「うっす!」


ーーーーーーー…………


巴「…………」

巴父「ほーれ、巴ー? 写真撮るけん笑うてくれえやー?」

巴「…………」

巴父「のう? たまには親父らしい事させえや? な?」

巴「…………」

巴父「じゃけん巴、まずこっち向こうでー?」

巴「……親父」

巴父「お! なんじゃ、巴!」

巴「宿題の邪魔じゃけん、あっち行ってや」

巴父「すまん……」


ーーーーーーー………


< お嬢ー! 晩飯できたっすよー!

巴「んー! 今行くけんー!」

巴父「あ!? と、巴!」

巴「なんじゃ、まだ構えよったんか」

巴父「ほれ! 笑顔せぇ! 笑顔!」

巴「そがぁな事より、飯が冷えるけん早よ行こうや」

巴父「うぐっ…。そ、そうじゃのう……」


サブ「はい、お嬢の分」

巴「ちぃと盛る量多ないか?」

サブ「お嬢くらいの歳の子はこれ位食わにゃあやれんすよ! 女の子じゃってある程度は食わにゃあ!」

巴「そ、そうかいね」

サブ「はい、こりゃあオヤジの……」

巴父「…………!」

サブ「オヤジ、飯ん時くらいカメラ置いてくださいや」

巴父「え? あ、ああ。そうじゃのう」

巴「行儀悪いで」

巴父「す、すまん……」

巴父(くそっ! 一向にシャッターチャンスが来ん!)


ーーーーーーーーー…………


巴「ふぅー、ごちそうさま。サブの作る飯は美味いのう」

サブ「お粗末さんっす! もう風呂の湯入れとんで腹が落ち着いたらどうぞ!」

巴「おう、気が効くのう」

サブ「さて、洗いもんっと……」

巴父「くうぅ…! 撮る隙が見当たらん……」

サブ「そんな無理に撮らんでもええじゃないすか」

幹部「ただいま戻りやした」

巴父「おい! 儂まだいっこも巴を撮っとらんのんじゃが!?」

幹部「知らんすよ、そんな。おい、俺の飯は?」

サブ「晩飯食いに寄る言ってんないけえ作っとらんすよ」

幹部「器用に3人前作ったのう」


幹部「んで、お嬢はどこじゃ。ケーキ買うて来たんじゃ」

サブ「風呂じゃあ思いますよ」

幹部「そうか、じゃあこっちのジュースも冷やしよくか」

サブ「んじゃ冷蔵庫に入れて来ますわ」

幹部「……んで、親父は何を悩みよるんすか」

巴父「巴を撮ろう思うて夕方から待ちよんじゃがぜんぜんなんよ……」

幹部「ふむ、お嬢は今は風呂か……」

巴父「…………」

幹部「いましかない」

巴父「いましかない」


ーーーーーーー…………


巴「さて、脱ぐか。……ん? ありゃ、無い」

巴「サブー! 後でうちの部屋からパンツ持って来とってくれぇやー!」

< はーい! どれでもええすかー!

巴「おーう!」

< じゃああがる前には持ってっときますけんー!

巴「さて……」シュル…

ガチャッ

巴「お? 持ってくるの早うないか?」

幹部「…………」

巴「……あ?」

幹部「どうぞ、続けてください」

巴「出て行け」


巴「まったく…、着替えまで撮られたらやれんでよ……」

巴「さて、ゆっくりつかろう……」

巴「お、ええ湯加減。サブの奴、ええ仕事するのう……」

パシャッ

巴「ん? 気のせいか。シャンプーシャンプー……」

パシャッ

巴「……あっこの窓開いとるのう」

巴「桶に湯ぅためて……」

巴「ふんっ!」

バシャァ!

< あー!? 儂のカメラがー!?

巴「なにしよんなら……」


ーーーーーーー………


巴「正座せぇ」

巴父「…………」

幹部「…………」

巴「写真撮るんもなんぼかならうちもそう文句は言わん。けどやれ着替えじゃ風呂じゃあ撮るたぁおかしいじゃろうがや」

巴父「うむ……」

幹部「おっしゃる通りです」

サブ「パンツはこれでよかったかな……。って、なにしよるんです? お嬢はバスタオル1枚で」

巴「説教じゃ」

サブ「おもろい事しようるんすね! せっかくじゃけん1枚撮っとこ! はい、チーズ!」

巴「ふっ……」ピース

巴父「…………」ピース

幹部「…………」ピース


『○月×日 村上邸 風呂上がりの1枚』

ここで一旦ストップとします。

なんか下っ端のモブの名前と言えば「サブ」と「ヤス」なイメージがあるのはじぶんだけでしょうか?


【村上組と恋手紙】


ーー 放課後 ーー



巴「んー…、はあっ……! 今日も学校終いじゃのう、体育のない日は暇で堪らんわ」

巴「さて、家に帰ろうかのう。靴、っと……」

巴「お? なんじゃら、この手紙」

巴「……? お、もうサブ来とるの。早よ行かんと」

巴「ポケットに入れて……、うし」

巴「おーい、サブよーい」


サブ「お嬢! 今日もお疲れさんす!」

幹部「お嬢、ご苦労さんです」

巴父「おう巴! お疲れ! ほれ、はよう儂の隣ぃ座れ!」

巴「……なんじゃら、3人揃うてから。どこ行きよったんじゃ?」

幹部「オヤジが老眼新調したい言うけえついて行きよったんですよ」

サブ「オヤジももう歳ですけんねぇ」

巴父「お前は黙って運転しとりゃあええんじゃ」ゴンッ

サブ「痛っ!? うっす、じゃあ帰りますか……」


巴父「巴よ、今日は学校どじゃったか? なんか楽しい事あったか?」

巴「んー、いつも通りよ。そうじゃ親父、これ担任から保護者へ言うて貰うたプリント」

巴父「んー? おい、老眼よこせ」

幹部「どうぞ」

巴父「ふふん、どうじゃ、巴。イカしとるじゃろ?」

巴「ようわぁらん」

巴父「ほうか…。んで、学校からのお知らせ……? んー……、お! ほう!」

サブ「どしたんです?」

巴父「授業参観じゃとなあ! こりゃあ行かんにゃあいけんじゃろうて!」

巴「土曜に学校なんぞたいぎゅうてやれんでよ」

幹部「お嬢、昔は土曜も学校じゃったんすよ」

サブ「半ドンなんか通じんのんでしょうねえ、今頃……」


巴父「……じゃが、儂らは家が家じゃけんのう……」

巴「…………」

巴父「……巴は来てほしゅうないか?」

巴「べつに、親が来るんを嫌がるほどうちももうガキじゃないけん」

巴「じゃが、同級生らが親と笑うて授業しようるんのを見るんは、ちぃと寂しいかもしれんのう……」

巴父「巴……! よし! サブ! 今度ええ床屋連れてけや! ばりばりダンディなちょいワルオヤジになっちゃるけん!」

幹部「どの口がちょいワルじゃあ言いようるんですか」

サブ「既に道を極めとるっすよ」

巴父「うっさいわ!!」

巴「いらん事せんでええけぇ来るんなら普通に来てくれや」


巴父「ふ、ふふっ……! 楽しみじゃのう、参観日!」

サブ「子供よりワクワクしよるけん、オヤジはまだまだ長生きしますわ」

巴父「もちろんじゃ!」

巴父「……おえっ。車ん中で字ぃ読みよったら吐き気してきたわ……」

巴「頼むけん吐かんといてや」

巴父「おう……。ん? 巴、ポケットに入れとるのはなんじゃ?」

巴「お? ああ、これか。忘れよった。さっきうちの下駄箱にはいっとったんじゃ」

巴父「……中見てもええか?」

巴「おう、好きにしぃ」


巴父「いきなりごめん。ぼくは、君の事が……」

巴父「…………」

巴父「サブ! 学校へ引き返せ!」

サブ「了解!」

巴「止めろ!」

巴父「ふざけよって……! 誰が儂の可愛い巴をこんなクソガキに渡さにゃあならんのんなら!」

巴父「巴! こやつはどんなガキなんなんじゃ!?」

巴「知らんて。話したことなんぞないわ」

巴父「ならば……、おい! ハジキはあるか!」

幹部「持っとります」

巴「止めろ!!」


巴父「くうぅ……! 認めん! 認めんぞ巴! 儂は儂の見込んだ男しか巴のそばに近づけちゃらん!」

巴「うち結婚できるんじゃろうか」

幹部「まあ、その頃にゃあオヤジももうただの年寄りにでもなっとりましょう」

サブ「俺ぁ認められとる、っちゅう事でええんすね! オヤジ!」

巴父「お前なんぞ巴が懐いとらんかったらすぐにでも鉄砲玉にしちゃるんじゃがの」

サブ「それマジっすか……」

巴「安心せえ。うちサブん事好きじゃけえ」

サブ「っしゃ! お嬢、あざっす!」

巴父「おい、ハジキよこせ」

幹部「私がこめかみ撃ち抜いちゃりますよ」

サブ「ひいっ」

巴「やめろ」


ーーーーーーーー………


ーー 村上邸 ーー


サブ「どぞ、茶っす」

巴父「うむ…。さて……」

幹部「…………」

巴「…………」

巴父「この『らぶれたぁ』。いったいどう落とし前つけちゃるもんかよ。のう?」

巴「別に、うちは興味ないけぇ、っつえばええんじゃないん」

巴父「んや、それじゃあ巴の後付けますような変態になるやもしれん!」

巴「なんちゅう心配しよるんね……」

幹部「じゃがオヤジ、こりゃあ見方によっちゃあチャンスじゃあ思います」

巴父「なんでじゃ」

幹部「友達もおらんし自ら作ろうともせんお嬢にゃあ、相手が坊主でも、1人でも友達ができるんなら悪いこたァないでしょう」

巴「ぼ、ボロクソ言うの…、お前……」


巴父「ま、まあ、確かにそういう事も言えんこたぁないが……」

巴父「おい、サブ。お前はどうじゃ」

サブ「別に、お嬢もその子に興味ないんでしょう?」

巴「おう」

サブ「じゃったら普通に断って、まあいい機会じゃけん仲良くしようやあ、つって適当にはぐらかしゃあええんじゃないんす?」

巴父「……まあ、妥当なところよのう」

巴父「じゃが、友達が1人もおらん巴の弱みに付け込んでくるような輩じゃあ心配で! 儂はのう!」

巴「……ぐすっ」

サブ「あぁ…、よしよし……」

幹部「じゃあとりあえず、明日にでも断りを入れて、それでなんかあるようなら授業参観の日にケジメをつけるっちゅう事で」

巴父「うむ。巴、やってくれるか?」

巴「知らん……」

サブ(いじけた……)


ーー 翌日の放課後 ーー


巴「………」

巴父「と、巴! 無事か!? 件のガキになんかされとらんか!?」

巴「いや、あの手紙間違いじゃったんと。入れるんを一段間違えたけんてから」

巴父「ほっ…! よかったわ! これで安心じゃの!」

サブ「ま、そんなこったろうとは思いよったんですが……」

幹部「ま、これでお嬢も友達がおらんままですね」

巴「サブ! あやつを刺しちゃれ!」

幹部「あ? 来いや。ドス奪ってから刺しかえしちゃるで」

サブ「ええぇー……」



先生「…………」

先生「通報していいですか……?」

校長「ダメです」

ちょっと休憩です。

上位報酬友紀とかキツイっす……。
月初めにお嬢に60k貢いだじゃないですか、ちひろさん……。


【村上組と雪】


巴「すぅ…、んん……」

巴「さむっ……」

巴「んー…。ん? あさ、か……」

巴「ふあぁ、っと…。ほんまに寒いのう……」

巴「どれ…。ありゃ、雪積もっとるじゃなぁか。昨晩から止まんのう思いよったが積もるたぁのう……」

巴「まあ、昼になったら陽が射して溶けるじゃろ…。ふあぁ……、もうひと眠りするかいね」

コンコン

サブ「お嬢! 雪! 雪積もっとりますよ!」

巴「そうじゃのう……」

サブ「ほら! 行きやしょう! 雪だるまでも作りましょうや!」

巴「布団捲るな! 寒いんじゃ!」


サブ「ちぇー……。朝飯作ったら起こしにくるんで、そん時にゃあ起きてくださいよ」

巴「わぁっとる。ふぅ…、行ったか……」

巴「さて、二度寝……」

巴「…………」

巴「……すぅ」

巴父「おう巴! 起きぃ! 雪じゃぞ! 雪!!」

巴「……知っとる」

巴父「ほれ、何を寝よんな! 子供は雪ではしゃぐもんじゃと相場が決まっておるんじゃけん、な!」

巴「うちはええよ……」

巴父「むぅ……」


巴父「ちょいと失礼して」

巴「しゃむいけん、布団めくるなっちゅうに……」

巴父「ほれ! 雪玉作って来たで!」

巴「ひゃんっ!? おまっ! 寝巻きん中入れなぁや!」

巴父「ほれほれ、はよう起きて脱がにゃあ水浸しになるぞ!」

巴「くっ! こんの……」

巴「馬鹿親父がぁっ!」ヒュンッ

巴父「痛ッ!? ほぼ氷になっとらぁや!?」


巴父「ひぃっ。敵わん、退散じゃ」

巴「はあっ! はあっ! はぁー……」

巴「はぁ…。寝よう……」

幹部「お嬢、雪が積もっとりますよ」

巴「…………」

巴「……知っとる」

幹部「そうでしたか」

巴「んで、お前がその手に持っとるのはなんじゃ」

幹部「雪玉です」

巴「どうするつもりじゃ」

幹部「お嬢がまだ寝とるようなら服に突っ込んでやろうかと」

巴「残念じゃが、今しがた親父にやられたばっかじゃ。他を当たりぃ」

幹部「ふむ、何処へ入れられたんです?」

巴「どこって、上にじゃが」

幹部「ならば私は下に。ちょいと失礼して……」

巴「ひっ……!? さ、サブーー! サブーーー!!!」


ーーーー……


巴「あ、あいつがっ、うちのパンツ降ろそうとしてから……」

サブ「アニキ…、まさか……」

幹部「……冗談じゃ」

巴「うち知っとるで…、ああいうの、『ろりこん』っちゅうんじゃろ……」

サブ「いくらお嬢が姐さん似じゃけえって…。うわぁ……」

幹部「待て」

巴「う、うちはもう恐ぁてお前と関わりとうない……」

サブ「アニキ、こんな子供にトラウマ刻み込んでどがあするんすか……」

幹部「悪ふざけが過ぎたか……」


巴父「何を騒ぎよるんじゃ? さっきから」

巴「お、親父! こいつがうちの……」

幹部「ふんっ!」ヒュンッ!

巴「ぶはっ! きゅう……」ガクッ…

サブ「お、お嬢!? お嬢ーーー!?」

幹部「雪合戦です」

巴父「よし、表出ぇや。儂が相手しちゃろう」

幹部「その懐のハジキは使うちゃならんですよ、オヤジ」


ーーーーーー………


巴「んん……」

サブ「ああ、お嬢! 目を覚ましやしたか…。よかった……」

巴「あれ、うち寝よったんかいね……」

サブ「そ、そうっすよ……?」

巴「そうか…。たしかいっぺん起きて、二度寝する言いよった気がする……」

サブ「そうですそうです!」

巴「……なんか、変な夢見やった気がするが気のせいかね? なんか服脱がされる夢を見たような……」

サブ「お、お嬢も思春期っすねえ! ま、そんな夢は忘れて、朝飯食いやしょう! 今日はお嬢の好きな魚のみりん干しとよぉ漬かった沢庵と熱い茶も用意しとりますよ!」

巴「お! ええのう! さあ、まずは飯じゃ飯じゃ!」

サブ(ほっ……)


巴「ん、親父。おはよう」

巴父「おう、おはよう巴」

サブ「さあさ、しっかり食うてつかぁさいね」

幹部「…………」

巴「ん、お前おったんか? どしたんじゃ、鼻にちり紙詰めて。鼻血か?」

幹部「まあ、多少」

巴父「おっほん!」

幹部「お嬢……」

巴「ん?」

幹部「この私の無礼をお許しください」

巴「は? お前うちになんかしたんか?」

幹部「…………」

巴父「…………」

サブ「ほ、ほら! はよ飯食いましょうや! 冷えちゃいますけんね! うん!」


ーーーーーーーー…………


巴父「ッはーー!! 巴! 雪じゃ!」

巴「なして雪なんぞでそがぁにはしゃぐんね」

巴父「そりゃあお前、雪じゃけんよ」

巴「ふっ、わぁらんのう」

巴父「それ、巴。雪合戦じゃっ」ポイッ

巴「おっと」

巴父「おお、ようかわしたのう。ほれ、ほれっ!」ポイッ ポイッ

巴「…………」パシャッ パシャッ

巴父「な、なして避けんのじゃ」

巴「たいぎい」

巴父「えっと子供らしゅうないのう……」


巴父「じゃあ、ほれ! 雪だるま作ろうぞ! 巴は頭を作れ! 儂が体作っちゃるけんな!」

巴「んー……」

巴「ま、それくらいはやっちゃるか。よいしょっと……」

巴父「ほっ! ほっ! あー! えらいもたいわ! こりゃ明日は筋肉痛じゃのう!」

巴「腰いわさんとってくれぇよ」

巴父「なに、儂とてそこまで老いちゃおらんて」

巴「んしょ、んしょ……」

巴父(休日に娘とこうして雪遊び…! ああ、念願叶ってまあ! のう!)

巴父(アホどもは取り立てに行っとるし、父娘水入らずなんざ久しぶりじゃ!)

巴「これくらい…。いや、親父が随分 でこうしとる けんもっと大きくせにゃあ不恰好か。うんしょ……」

巴父(おお…! あの巴が子供らしゅう雪に夢中で……! ああ……!)


巴父「ともえぇーーー!」

巴「おおっ!? な、なんじゃ急に」

巴父「久々に高い高いしちゃろう! ほれ!」

巴「な、なしたんね。ほんま……」

巴父「ほれ、高いたかーー……!」

バキッ!

巴父「はうっ!?」

巴「……せんのか?」

巴父「が、あ……」

巴父「こ、腰…! いわした……!」

巴「はぁ……」

巴「あがろうで。湿布貼っちゃるけん」

巴父「すまんのぅ……」



ーーーーーーーー………


サブ「……んで、ずっと横んなっとったんです?」

巴父「そうよ……」

巴「まったく、無理に力いっぱいやるけんよ」

サブ「まあ、医者呼ぶまでもなさそうですしおとなしゅうしよってくださいや」

巴父「おう……」

巴父(くぅ…! 父親として不甲斐ない所を見せてしもうたのう……!)

サブ「んじゃ、昼飯の準備しますけん。何がええです?」

巴「あ、うちおじやがええ。あと漬けもんとなんか練りもん」

サブ「渋いっすね。待ちよってください」


巴父「はぁ……」

巴「何ため息つきよんね」

巴父「んー…、儂も歳食うたのうって……」

巴「まあ、のう」

巴「……せっかく親父が抱きあげてくれる思ったのにこのザマじゃけんなぁ」

巴父「と、ともえ?」

巴「……腰治ったら、ゆっくりでええけん抱いてぇな?」

巴父「はあぁ……っ! ともえぇ……!」

巴父「えっ!? あがっ!? いだだだだっ! こ、腰がぁ……!」

巴「……何しよんね」


【村上組とOLさん】



サブ「ふう、買い物お終いっすね」

巴「冬は食いもんよう買っとかにゃあならんよのう」

サブ「ええ、荷物が多いすわ」

巴「そんな1人で持たんこう、うちにちぃと寄越せや」

サブ「そんな! お嬢に持たせるわけいかんですよ!」

巴「むう……! なら、お前の鞄ひったくっちゃるけん!」

サブ「ああ、お、お嬢!?」

巴「家に着くまで返さんけんね。……ふふっ」

サブ「ほんま、お嬢は優しいすわ……!」


サブ「さて、タクシー!」

運転手「おう、サブに巴ちゃん。オヤジさんのおつかいか?」

巴「おう」

サブ「家まで頼んますわ」

運転手「了解。荷物トランクに入れるか?」

女性「はぁ…! はぁっ……! 間にあっ……、えっ!? さ、最後の一台……」

サブ「ん?」

女性「どうしよう…! 今からタクシー呼んでも間に合わない……! そもそも、この雪の中来てくれるタクシーも限られるし…、どうしよう……!」

サブ「あ、あのー…。お姉さん、大丈夫っすか?」

女性「あっ! いや、すいません……! ちょっと焦ってまして……」

サブ「急ぎでしたら俺ら降りますよ? いいっすよね、お嬢?」

巴「うちゃあ構わんぞ」

女性(お嬢、って……。も、もしかして、そっちの筋の人!?)

女性(ど、どうしよう…! 遅れるわけには行かないけど、これにかこつけて、後々何かされるんじゃ……!?)


女性「い、いえ! その、後で来るタクシーに……!」

巴「急ぎなんじゃろ? 荷物降ろす時間も惜しいし、一緒に乗りゃええじゃん」

サブ「ああ、そうっすね! 俺助手席乗るんでお姉さん後ろ乗ってくださいや!」

女性「いや! その、えと……!」

運転手「じゃったら巴ちゃん家は後回しでお姉さんが先でええね? ほら、乗って乗って」

女性(あ、ああぁ…! ああぁぁぁぁ……!?)

サブ「ほら、急いで急いで!」

女性「あ、あの! あの……!」

巴「…………」

サブ「うし、出発!」

女性「た……」

女性(助けてえ……!)


運転手「お姉さんどこまで? 会社勤めなんじゃろ?」

女性「は、はい…。○○社までお願いします……」

サブ「ん、そこって本社が東京にあるええ所ですよね! OLさんなんです?」

女性「ま、まあ…、いちおう……」

サブ「かーっ! OL! いい響きっすねぇ! ええ! 俺もオフィスラブとかしてみてえなぁーー!」

運転手「わっはっは! お前みたいな中卒がどこに勤めるつもりや!」

サブ「うるせえ! この辺のボタン適当に押すぞ!」

運転手「止めろ!」

巴「…………」

女性「…………」

女性(い、居心地が悪い……)


巴「のう」

女性「えっ?」

巴「姉さんはどこの生まれなんじゃ?」

女性「えと、いちおう、ここが地元だけれど……。どうして?」

巴「んや、方言喋らんのう思うて」

女性「うん…。直したの。仕事じゃこういう言葉使いじゃないといけないから……」

巴「……うちもいつかこがぁな喋り方はやめんにゃいけんのんかね」

女性「どうかしら……。でも、そっちの方が可愛いと思うわ?」

巴「ふっ。嬉しいのう」

サブ「今時お嬢ほど方言使う子もぶち珍しいけん、貴重っすよ」

女性「お嬢、ちゃん…? えっと……」

巴「うち? 巴、巴じゃ」

女性「そう、巴ちゃん……」

巴「姉さんは?」

女性「私はね……」


留美「留美。留美よ?」

巴「ほう。留美さん、でええか?」

サブ「俺サブちゃん!」

運転手「ワシは運ちゃん! これでも昔は黒塗りの車で巴ちゃんのオヤジさんをよう乗せたもんよ!」

留美「」

巴「ええい、留美さんが引きようるじゃなぁか! だぁっとれ!」

運転手「はい……」

巴「すまんのう。うちんとこの馬鹿が騒いでから……」

留美「え、ええ…。あは、あはは……」

留美(巴ちゃんには悪いけど……)

留美(降りたい……!)


巴「んー…。くあぁ……!」

留美「あら…、眠たいの?」

巴「ちぃと早起きしたけん…。朝から服ん中雪突っ込まれたり親父が雪だるま作りよってから腰いわしたり散々じゃったんよ……」

留美(親父、って…。組長の事よね……?)

サブ「まだ時間かかるけん寝よってええっすよ」

留美「なら、私にもたれかかってもいいわよ? はい、どうぞ」

巴「なら遠慮せんこうに……」

巴「ん…。ええ塩梅じゃ……」

留美「巴ちゃんは今いくつなの?」

巴「この前5年生になったんよ……」

留美「じゃあ11歳、くらいね…。ふふっ……」ナデナデ

巴「ふぁ……」

留美「あ、その…、ごめんなさい……」


サブ「家に帰りゃあ男しかおらんですけんねぇ。お姉さんに甘えるんなら今っすよ」

巴「そう、じゃのう……。ええか…? 留美さん……」

留美「わ、私でよければ……」

巴「んー…。ありがとう……」

巴「ふあぁ…、んん……」

留美(手、握ってあげた方がいいのかしら……)

巴「うー……」

留美「ふふっ……」

サブ「おお、わや可愛いですわ。お嬢」

運転手「ほんま、あのオヤジの遺伝子からこんな可愛い子が産まれるたぁ想像もつかんでよ」

サブ「前見ぃや!?」


巴「……おかあ、さん……」

留美「ふぇっ…!? あ、その、私は……! も、もう、巴ちゃんったら……」

サブ「…………」

運転手「…………」

留美「えっ……」

留美(な、なんで急に静まり返るの……?)

留美「えと……」

留美「…………」ナデナデ

巴「んっ、すぅ…、くぅ……」

留美「あら、寝ちゃった……」

サブ「……おっと、お嬢の寝顔を撮っときましょうかねえ。お姉さん、ピースピース!」

留美「え!? え、えっと……」

留美「に、にー……?」///

サブ「……よし、っと! いやあ、美人が2人も写りゃあこんなタクシーでもいい絵になるわ!」

運転手「助手席側を電柱に突っ込むぞ」


留美(……でも)

巴「くぅ…、すぅ……」

留美(娘…、にしては大きすぎるけど、将来私もいつかこんな子を……)ナデナデ

巴「んぅ……」

留美「うふふっ……」

留美(いや、まず相手を探すところからね……)

留美(でも、毎日仕事仕事で見つける暇なんてあるのかしら……)

留美「…………」チラッ

サブ「んで、アニキがお嬢に雪玉投げつけて気絶させてからオヤジ激怒っすわ」

運転手「そりゃ怒るじゃろうて」

留美(……中卒は、うん……)

留美(ま、まだ私も24だし、そんなに深く考える必要もないわね。うん)


運転手「あー、お姉さん? もうそろそろ着くじゃろう」

留美「えっ? あ、見慣れた景色が……」

サブ「どうっす? お仕事間に合いそうです?」

留美「はい、全然余裕です。すみません、こんな、わざわざ……」

サブ「なんかあっちゃあお互い様ですよ!」

運転手「そうそう。はい、着きましたよ」

留美「ありがとうございます。えーと…、3420円……」

運転手「あー、えぇえぇ! サブが払うけんええよ!」

サブ「そうそう! オヤジ宛に領収書切ってもらうけん!」

留美「でも、乗せて貰って、そこまで甘える訳には……!」


巴「んー…。何騒ぎよんね……」

留美「あ、起こしちゃった…。ご、ごめんね……?」

巴「着いたん…? ならはよ降りんにゃ……」

留美「あっ、巴ちゃん待って! ここは巴ちゃんの家じゃないわ!」

巴「んんー……」

サブ「まだ半分寝とるっすね」

留美「はい、段差に気をつけて乗ってね」

巴「うー……」

バタン

留美「あっ! 閉められた!?」

サブ「じゃあお姉さん! お仕事頑張ってつかぁさいねー! それじゃ! ほら、お嬢もバイバイって!」

巴「んー…。じゃあのー……」

留美「ば、ばいばい……」

留美「…………」

留美「結局、代金払えなかったわね……」

留美「……あぁっ! そういえば時間!? あ、あと10分しかないわ! 急がないと!」

留美「今度しっかりお礼しないと…! 出来れば巴ちゃんと2人だけが一番気が楽なんだけど……」


ーーーーーーー………



巴「…………」

サブ「さ、お嬢、もうちぃと寝とってええですけんね」

巴「馬鹿たれ。最初から起きとるわいね」

サブ「えっ? 起きょったんです?」

巴「ああ。金払う払わんでから埒があかんけん、こうすりゃええかのう思うてから」

サブ「おお、なんちゅう演技力」

運転手「こりゃあ将来悪いオンナになるのう」

巴「ふふん、ガキじゃけできるやり口よのう」

巴「……まだ、ガキじゃけん」

サブ「さ、お嬢! 帰ったら晩飯作りやしょう! クリームシチュー、お好きでしょう?」

巴「おう。サブの作る飯は美味いけんなんでも好きよ」

サブ「ぶち嬉しい事言ってくれますねぇ! お嬢!」

運転手「ウチの息子は美味いもなんも言わんけん、ほんま憎たらしいよのう」


巴「……また、会えりゃあええがのう」


【村上組と風邪】


医者「はーい、巴ちゃーん? あーんしぃよー?」

巴「あー……」

医者「んー……、だいぶ赤ぅなっとるねぇ」

巴父「今朝も熱が37度7分もあったんじゃ……」

医者「んまぁ、時期が時期じゃしただの風邪じゃろう。大方冷えでもしたんかね」

巴「おやじがふくんなかに…、ゆきつっこんできた……」

巴父「た、戯れじゃったのに…、そんなにいかんかったんか……?」

医者「原因それじゃろうかねぇ。ま、ともかく栄養あるもん食ぅてから温うして寝ときゃあ治る治る」

巴父「薬は? ポンと治るもんくれんのか?」

医者「裸で外にでも連れ出さんかぎり、このまんまにしときゃええんじゃって。若いんじゃけすぐ治るっちゃ」

巴父「ほ、ほうか……」


医者「そもそも薬がいるようならウチん方まで連れて行くわいね」

巴「うち…、かゆがたべたい……」

巴父「粥かっ!? 待っとれ! すぐサブに作らすけんな! サブー! サブーーーッ!!!」

医者「あ、そうじゃ。この前業者が持って来とった塗り薬があってね。ほれ」

巴父「なんじゃ、これ」

医者「胸とかに塗ったらスースーして、風邪が早う治るんと。ほれ、月一で塗る湿布届けとるじゃろう? あれの類よ」

巴父「ほう、今時こがぁなもんがあるんじゃのう」

医者「んま、こがぁなもんに頼らんこう治した方が丈夫な子になるっちゅうもんよ。さて、帰ろうかね」

巴父「ああ、すまんの。早うに来てもろうてから」

医者「血相変えて電話してくるけん、また誰か指落としたんか腹開いたんか思うて裁縫道具持って来たんに。結局使わず仕舞いじゃなぁか」

巴父「わぁったわぁった! お前がいつも行きよるとこ、儂の名前で好きに飲み食いしいや!」

医者「ほんま? なら今から行っちゃろ」

巴父「現金なやっちゃのう……」


医者「じゃあ、巴ちゃんゆっくり休みぃよー。なんかあったらまた呼んでくれりゃあええけん。そん時ゃちゃんと薬持って来ちゃるけんね」

巴「うー……」

巴父「おい、謝礼と送るん頼むぞ」

幹部「私が? 私がお嬢の側に立っとらんでええんですか?」

巴父「なんでお前が側におらんにゃあならんのじゃ。儂がおろうがや」

幹部「しゃあないですね……」

巴「ふぅ…、えほっ……」

巴父「大丈夫か、巴……」ナデナデ

巴「まだ、大丈夫よ……」

巴父「ほうか……」



巴父「ほれ、なんかして欲しいこたぁあるか? なんでも言えぇよ?」

巴「いまは、……ない」

巴父「ほうか……」

巴「はぁ……」

巴父「…………」

コンコンッ!

下っ端1「オヤジ! オヤジに借金しとる商店街の焼き鳥屋が夜逃げした……」

巴父「あ”ぁ”!?」

下っ端1「ひっ!? す、すいやせん!」

巴父「チッ…、今そがぁな事はどうでもええっちゅうことがわからんのか……!」

サブ「オヤジー、粥できたっすよー」

巴父「お、おお! でかしたぞ! サブ!」


巴父「おーしおし! 巴、粥が出来たぞー? 食いたいいいよったけんな? ほれ!」

巴「んん……」

サブ「よし、と」

巴父「え、あっ、おい。どこ行くんなら。巴に食わしちゃらんかい」

サブ「……親父、ちょっとこっちへ」

巴父「なんじゃら。 巴ー? ちぃと待っとれなー?」

巴「うー……」

巴父「なんなんじゃ? 巴が腹空かしとるっちゅうのに……」

サブ「ここで親父が、ふーふー、あーん……。って食べさせんでどがぁするんですか! こんな弱っとる時こそ親に甘えたくなるのがあれくらいの年頃っちゅうもんでしょう!?」

巴父「そ、そうじゃった……!」

サブ「ささっ! オヤジ! ここは父娘水入らずで、父親っちゅうもんを見せちゃってくださいや!」

巴父「おう!!」


巴父「待たせたのう、巴! ささっ、飯食わしちゃるけんなー?」

巴「あんがとぅ……」

巴父「ほれ、まずは体起こさんにゃの。よっこいせ、っと……」

巴「ふぅ…、はぅ……」

巴父「座っとくんもだるげじゃな…。儂の座椅子を……」

サブ「…………!」

巴父(扉の隙間からサブが…? ハッ! あの視線は……、そういうことかッ!)

巴父「巴、儂の膝に乗りんさい。儂にもたれかかったら温いし楽じゃろう!」

巴「だっこ……」

巴父「よーしよし…! よっと! ほれ、遠慮せんこう、楽にしぃよ?」

巴「ぁぅ……」



巴父「よしょ。まだあっちっちこじゃけん、ちぃと冷ましちゃらにゃあね。ふー、ふー……」

巴父「ん……。こんくらいか? ほれ、巴? あーん」

巴「あーん……」

巴父「どげなか? 熱ぅなぁか?」

巴「おいしい……」

巴父「いかったいかった! 次いくか? ふー…、ふー……」

巴「あーん……」

巴父「あーん…。フフフ……」

巴「んむっ…。どしたん……?」

巴父「いんや? ただ、父親らしい事出来とるのうって」

巴「……親父は親父よ?」

巴父「嬉しい事言ってくれるのう! やっぱり儂の可愛い巴じゃ!」


ーーーーーーーー…………


巴「……ふぅ。ごちそうさま……」

巴父「おお、しっかり食ったのう。これなら早う治るな!」

巴「んー、んぅー……」スリスリ

巴父「ど、どしたんじゃ?」

巴「……この前ね、タクシーで出会うたお姉さんにこうして甘えさせて貰うたんよ……」

巴父「ああ、サブが写真撮っとったのう。……それで儂にもか?」

巴「……いけん?」

巴父「いけんこたあるかぁや! ふふっ! ぎゅうー、っとしちゃらぁ!」

巴「……えへへぇ」スリスリ

巴父「じゃが、そろそろ布団に戻らんにゃあの?」

巴「うん……」

巴父「さ、目ぇ瞑って、休みんちゃい」


巴「ふぅ…。えふっ……、すぅ……」

巴父「寝たか……」

巴父「…………」ナデナデ

巴「んぅ…、はぅ……」

巴父「……よう、似とるのう」

コンコンッ

巴父「お? サブか?」

幹部「私です」

巴父「なんじゃお前か」

幹部「どうです。お嬢の具合は」

巴父「さほど変わっとらんが、飯しっかり食ったけん心配いらんじゃろのう」

幹部「ふっ……、そいつぁよかった」

巴「んん…、サブ……?」

幹部「…………」

巴父「ふははっ! ざまぁないの!」


サブ「……そがぁに野郎が集まり寄ったらお嬢がゆっくりできんでしょう。ほら、1人はこっち。部屋ん外出ましょうや」

幹部「それもそうか……。さて、焼き鳥屋のクソ野郎を探しに行くぞ」

サブ「うっす。車出してきます」

巴父「そっちは全部任せるけんな」

巴「すぅ…。はぁ……、くぅ……」

巴父「ちぃと顔色がようなったように見えん事もないが……」

巴父「もしこのまま拗らせて、もし、また……」

巴父「ええい! ただの風邪じゃあ言われとるんじゃ! そがぁに心配せんでもええんじゃ!」

巴父「ったく…! 風邪くらいすぐ治る薬がありゃあ巴がこんな思いをする事もないんじゃが……」

巴父「……あっ。そういえば……」


ーーーーーーーーー…………


巴「ぅう…、ううん……?」

巴「かっ…。ふわあぁ……。よう寝た気がする……」

巴「いま、何時じゃ…? あら、空が真っ暗じゃあや……」

巴父「かぁぁ…、かぁぁぁ……」

巴「親父? いびきかいてから……。ん?」

巴(このタオル、まだ冷い…。そういやぁ親父に飯食わして貰うた気がするし……)

巴「看病してくれたんか。……ふふっ!」

巴「……ん? なんか、嫌に胸がスースーするのう? それになんじゃ? この塗り薬……?」

巴「……は? なんでうちボタン掛け違えとるんじゃ…? 昨晩はまだ、しっかり意識があったけんそがぁなことは……」

巴父「こぁぁぁ…! ふへ、ともえぇ……」

巴「…………」

巴「……っ!」///



巴「こ、こやっ…! 娘が寝とる間になんちゅう事を……! いっぱつしばいたらにゃあ……!」///

巴「…………!」///

巴「くうぅ…! や、止めじゃ……。看病してくれたんは確かなんじゃし、この塗り薬はてきめんじゃったんじゃし……」

巴「起こしでもしてくれりゃあ自分で塗ったんに…、ばかっ……」

巴「うぅつ…。流石にまだ完璧にゃあ治っとらんけん、もうちっと寝よくか……」

巴「っとと、その前に……」

巴「親父も毛布でも掛けとりゃにゃあ風邪引くぞ? ほれ……」

巴父「んん……」

巴「はぁ…、んじゃ……」

巴父「おやすみなさい……」

ーー 翌日 ーー


巴父「えほっ! ゴホッ! あー……」

サブ「やめてくださいよ、親父? そのまま拗らせてからポックリ逝くなんざ……」

巴父「縁起でもないこというなぁや……」

巴「……ウチは治ったんに、案の定親父にうつったのう」

幹部「まあ、同じ部屋につきっきりでおりゃあそうもなりましょうて」

巴父「ともぇー…、後生じゃー……。看病してくれぇー……」

巴「やーよ。病み上がりなんじゃけん」

巴父「そんなー……」

サブ「なんなら俺が面倒みちゃりますけん」

巴「いや、サブに風邪がうつったら困るけん、お前がみちゃれや」

幹部「私ですか?」

巴「サブ、うつらんうちにあっち行こうで」

サブ「おっとと。オヤジー、後でうどんでも持ってきちゃりますけんねー」

巴父「ごほっ、えほっ…。あー……」

幹部「…………」

巴父「ともぇー……」


ーーーー……


巴「……見物料が足りとらんけん、うちの看病は無しじゃ」

サブ「ん? なんのことっす?」

巴「知らんでえぇの。……なぁ、サブ」

巴「うどん、うちにも作らせてな?」



お付き合いありがとうございました。
これにて完結です。

モバマスSSなのにモバマスキャラ以外の方が喋っているのはご愛嬌ということで。

とりあえず書溜めの半分くらいは放出できたので、またいつかお付き合いください。

それではネタが浮かべば、またいつか。

悪魔は走れと囁いている。
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