・ペルソナ5のSSです。
・ステータスが魔性の男を凌駕してる主人公の行き当たりばったりの馬鹿SSです。
・主人公の名前は「来栖暁」です。
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あれは夏の日だった。
記憶はおぼろげで、覚えていることは断片的なものばかり。
エアコンで温度調節されているのにも関わらず、肌にしっとりとした膜が貼り付く様に蒸した部屋。
充満するのは甘く濁った、腐りかけの果実のような匂い。
両手、両足を拘束する冷たい手錠の感触。
下半身を覆うものが何もない、落ち着かないスースーとした感覚。
そして、圧し掛かる熱く、甘ったるい肉の重み。
??『ふふふ…震えてるの?大丈夫、怖くないわ。すぐに気持ち良くなるから』
??『はっはっはっ…いい、すごく、い、いい』
??『あ、あああん!スゴイ、そう、上手だわ!!』
??『いっぱい出したのね…でも、まだまだ、足りないわ。いけるでしょ?』
??『学校?気にしなくてもいいわ、私が教えてあげるから。それよりも、もっとよ』
聞こえる音は、
エアコンから吹き付ける風
冷蔵庫のコンプレッサー
そして、ねっとりと蜂蜜のように甘く絡み付く声だけだった。
終わりは呆気なくやって来た。
若い刑事『発見しました!!多少衰弱はしてるようですが外傷は見られません』
ベテラン刑事『何と…惨い…おい、君、しっかりしろ!大丈夫だ、もう大丈夫だからな』
??『触るなぁぁぁーーー!!!私のカレよ!!私のモノに触るんじゃない!!!』
若い刑事『おい、動くな!!』
ベテラン刑事『早く連れて行け!!すまない。もう怖がることは無い。さぁ、家に帰ろう』
病院に運ばれ、点滴を打たれながら聞かされた日付に驚いた。
既に夏休みの半分近くが過ぎていたのだ。
高校受験を控えた中三の夏休みの半分を無為に消費した俺は、必死の思いで勉強に励んだ。
受験の為というよりも、あの日々の記憶を払拭するために。
* * *
高校最初の定期試験を中々の手ごたえで終えた解放感にテンションが上がっているのを実感する。
夜のコンビニはいけないことをしているようで、ワクワクしてしまうし、早売りで置いてあったマンガをつい立ち読みしていた。
おかげですっかりと遅くなってしまった。何だかんだと単行本になったら読まずにはいられないのはファンの悲しい習性だろう。
一歩のパンチドランカー疑惑はただの尺稼ぎじゃないって、信じてますジョージ先生。
心配性の母さんから帰宅の催促のメッセージが二十件も届いていた。いや、多すぎるだろ。
酔っ払った男「私が舵取りをしなければ誰がこの国を導くというのだ」ヒック
若い女「ちょっと、しっかりしてくださいよ。マジめんどくせぇなこのハゲ」
酔っ払った男「今ハゲっていった?」
若い女「言ってませんよヒゲハゲ」
酔っ払った男「今絶対言ったよね?」
うわ、酔っ払いのおじさんと、部下?恋人?っぽい女の人が車から降りてくるところだった。
関わらないようにしよう。
そう思っていたら、女の人と目があった。
若い女「……あら、いい男」ゴクリ
あ、ヤバい。
若い女「ねぇ、君。ちょっとこのハゲ片すの手伝ってくれないかしら?」
いや、さっきの車呼び戻せばいいのでは…
若い女「お茶くらい出すわよ?あ、もしよかったらお風呂入って行く?あ、このハゲなら気にしないで、適当にしとくから」
何でお風呂が出てきたの?
何で部屋に上げる気なの?
その人、どこに片すつもりだったの?
若い女「じゃあ、このハゲはどうでもいいから、部屋に上がっていきなさい。それならいいでしょ?」
何がじゃあなのかわかりません。あと、そちらのおじさん涙目ですよ。
若い女「もう、じれったいわね。早くこっち来なさいよ!!!」グイグイッ
ハゲ「おい、嫌がっているぞ!」
ちょ、離して…強!?力強!?
若い女「ねーねー、いいでしょう?お姉さんに任せて。君のジョイスティックでフライトしましょう」ハァハァハァ
ハゲ「こら、離してやれ!!」
いや、止めて、服に手を掛けないでください。
若い女「あああ~イイ匂い。若い男の子なのに、汗臭くは無いのね。少し甘い匂い、何かしらこれ。イイ男は匂いもイイのね」スーハースーハー
ハゲ「いかん!!それはいかん。少年、早く逃げろ!!」グイグイ
逃げられるものなら、とっくに。
若い女「チッ…うるさいわね。今いいところなのよ!!ほら、怖がらなくていいのよ。すぐに済むから。こうやってね!!」ビリビリビリ
ハゲ「おおいいいい!!!」
いやー!!助けて!!お父さん、お母さん!!
若い女「イイ声で鳴くじゃないの。それにイイ身体」ジュルリ
ハゲ「いい加減にしないか!!」
若い女「何ですか先生。他人の恋路を邪魔しないでください。これだからハゲは」
ハゲ「ハゲ関係ないよね、ハゲは。それに、未成年者への乱暴など、この獅童正義の目の黒い内は断じて見過ごすことなど…」
若い女「せい!!」ドゴッ
獅童「ぐふっ…」バタリ
おじさぁぁぁぁーーーん!!!
その後、おじさん(獅童さんというらしい)が最後に携帯を操作したため引き返してきた車に乗っていたおじさんの部下と警察によって女の人は取り押さえられた。
おじさんは怪我をしていたけれども、痴話喧嘩を止めようとして怪我をしたのはスキャンダルになるからと内密にされた。
女の人を訴えるかとおじさんは言ってくれたけど、幸い服を剥ぎ取られただけだったからその申し出は断ることにした。
獅童『もし、君が男という立場で、女性に逆レイプ紛いのことをされたことを恥じと思うのだったら、それはお門違いの話だぞ。君は純然たる被害者であり、守られるべき未成年なのだからな』
ありがとうございます。でも、あの人謝りに来てくれましたし。
あの日はきっと酔った勢いもあったんでしょうし、出来る事なら人生にキズなんて付かない方がいいでしょう。
服も弁償してもらいましたしね。
そう笑うと、おじさんは苦虫を噛み潰したような顔をした。
獅童『まったく…彼女にもそんな風に笑いかけたのかね?』
はい。泣いて反省してましたし、女の人がいつまでも泣くもんじゃないでしょう。
獅童『……わかった、私からはこれ以上何も言うまい。だが、もとはと言えば泥酔した私と彼女の問題に君を巻き込んでしまったのだ、せめて君の転校、引っ越しに掛かる費用は出させてくれないか』
別にいいのにとも思ったけれど、おじさんが余りにも申し訳なさそうに見てくるから、頷かざるをえなかった。
* * *
そう、俺は今年の春から別の高校に通うことになった。
大事にならずに済んだと思っていた事件だったけど、騒ぎを見ていた人達から噂はあっという間に流れていった。
母さんはノイローゼ気味になり、このままではいけないと判断した父さんが俺に転校を促した。
母『元々あの子は私だけのものだったのに、それを外部に出してたのが間違いだったのよ。一生出られないように閉じ込めて私だけの…』
父『母さんのことは気にするな。父さんが何とかする。だから暁、お前は早く出るんだ!それと例の女がこの辺りを嗅ぎまわっている。ほとぼりがさめるまで絶対に帰ってくるんじゃないぞ!!』
そして、地元から流れた噂は高校にも届いていた。
ただでさえ、若干ボッチだった学校は針の筵と化し、俺の居場所は本格的に無くなった。
生徒A『おい、聞いたか。来栖の奴、今度は政治家の女を寝取ったってよ』
生徒B『いや、俺が知ってるのは違うぜ。自分の愛人を使って政治家に美人局をやらせたんだろ』
生徒C『いや、来栖が政治家の愛人だったんだろ。それで嫉妬に狂った妻と修羅場になったとか』
生徒D『確かに、来栖が着替えてるの見るとよ、こう下半身がムズムズするんだよな』ハァハァ
新しい場所に向かう電車の中で、俺は込み上げる涙を拭った。
泣いてばかりじゃ駄目だ。
折角新天地へ行くのだ、気持ちを切り替えなければいけない。
そして、今度こそ作ろう。
友達を。
男友達を。
頭が良くなくてもいい、少し変人でもいい、ただ、信頼出来て、気軽に馬鹿話が出来る、そんな男友達を作ろう。
正反対の家の方角なのに、「偶然だね。ちょっとそこのカラオケで休憩して行かない?」と言って、
カラオケが出来る宿泊所に連れ込もうとするような女友達じゃない。
学校帰りに牛丼屋やハンバーガーショップに立ち寄って、駄弁っていられるような、そんな男友達を作ろう。
眼鏡を取って涙を拭うと、俺は気合を入れ直した。
俺は、新しいスタートを切るんだ!!
* * *
四軒茶屋の駅に着くまでに、三回痴漢にあった。
駅のトイレでまた泣いた。
投下を終えます。
魅力だけ5段階どころか10段階くらい行ってる主人公を書きたかった、ただそれだけです。
かけたら、続き書いてみたいです。
投下を開始します。
クラスで男子同士が童貞を遂に捨てたとか、とうとう夏休みの間は捨てられなかったといった話をしていた。
俺はそれに聞き耳を立てていた。
だって、そんな話をする友達がいなかったから。
でも、仮にそんな話が出来たとして、じゃあ自分の体験談を話すかと聞かれたら、話せない。
俺が覚えている限りで言えば、俺が童貞を捨てた、いや捨てさせられたのは多分9歳の頃。
小学校四年の時のことだ。
学校帰り、道の端で蹲っている女の人を見つけた。
常日頃から、親に「困っている人には手を差し伸べてあげなさい」「女性には優しくしてあげなさい」と言われていた俺は迷うことなく近づいた。
暁(9歳)「あのぅ…大丈夫ですか?どこか痛いんですか?僕、救急車呼んできます」
女「優しいのね、ボク。大丈夫よ。ああ、でも、ちょっとお姉さんのお腹さすってくれるかな?」
暁(9歳)「おなか?さするの?それだけで大丈夫なんですか?」
女「うん、それでいいの。それがいいの」
暁(9歳)「じゃあ…いたいのいたいの…とんでけー!」サスサス
女「……」ハァハァ
暁(9歳)「いたいのいたいの、とんでけー!!とんでけー!!」エーイッ
女「……」ハァハァ
暁(9歳)「?お姉さん、大丈夫です?苦しそうですよ?」キョトン
女「…も………らん…」ハァハァ
暁(9歳)「おねぇ~さん?」コテン
女「もぉぉぉ、辛抱たまらん!!!」クワッ
そこからのことはあまり覚えていない。
お姉さんに茂みに連れ込まれて、服に手を掛けられて。
殴ったり、ナイフで切られたり、暴力は振るわれなかったけれども、とにかく当時の俺は驚きと未知の行為への恐怖で動けなかった。
幼馴染のみっちゃんが人を呼んでくれたから、誘拐には至らなかったのがせめてもの救いだろうか。
幼心に子煩悩だった母は、お姉さんをマウントポジションにしてヒョードルばりのパウンドを浴びせかけていた。
自分のされた事より、寧ろそちらの方が怖かったくらいだ。
けれども、事件の余韻が過ぎ去り、落ち着いてみると俺の中に彼女への憐みが浮かんだ。
よりにもよって、こんな子供に手を出さずにはいられなかった彼女の心を思うと憎むことが出来なかった。
俺を襲ったお姉さんは二十代そこそこで、間違いなく美人と言える人だった。
男に不自由するようにはとても思えないと、子供ながらに思った。
それが、なぜ俺みたいな子供をわざわざ襲ったのか。
答えは簡単だ。
無力な子供にストレスのはけ口を求めた。
そして、そうしなければならなかった程、同年代や年上の男を嫌悪し、或いは嫌っていたということではないだろうか。
だとすれば、彼女もまた悲しい被害者の一人なのかもしれない。
もし、俺を襲うことで、彼女が自分の心と向き合う切欠になったのだったら、俺の貞操の一つや二つ安いものなのかもしれない。
クラスの男子曰く「男の童貞は捨ててナンボ。一度も侵入に成功した事の無い兵士なんて何の価値も無い」らしい。
だったら、俺の童貞一つで、あの女の人が自分を見つめ返すことが出来るのだったら、それでいいのだ。
そう思うことが出来るようになった俺は、少し大人になったのかもしれない。
* * *
惣治郎「今日からお前の面倒を見る佐倉惣治郎だ」
今日からお世話になる喫茶店のマスターの俺を見る目は、警戒心に満ちていた。
いや、何でそんな警戒心を漲らせてるんですか?
まるで傷害罪で前歴付いた少年を見るような目で。
惣治郎「お前の親父とはちょっとした知り合いだけどな…聞いてるぜ、お前の女関係は。
やれ、修羅場だ、乱交パーティーだ、九股だと、随分と女を泣かせてきたらしいな。
お前の親父は息子は悪くないって言ってるが、親の欲目ってのがあるからな」
誤解ですよ!!
惣治郎「お前の部屋はこの店の屋根裏部屋だ。広さは文句ないだろ。掃除は適当にやれ。
俺の家には上げないからな。特に理由はねぇが、絶対に上げねぇからな」
わかりましたと、物分り良くとりあえず頷く。
本当はすごくショックだった。
ちょっとぶっきらぼうなマスターとの二人暮らし。
そして芽生える悪ガキ同士の結託感にも似た信頼関係。
みたいな。
的な。
スパイクとジェットみたいなね。
俺天パでジークンドー出来るし丁度良いじゃんみたいな。
このレトロな感じのお店の雰囲気と、ダンディーなマスターを見て、妄想しだんだもん。
夢にまで見た男同士の粋でいなせな渋い会話。
なのに初日屋根裏ルートか。
お家じゃないんだ。
マスターがしきりに家に上げたがらないのは、やっぱり都会で荒んだ心をそっと慰める男の趣味的な?
孤独だけど、心安らぐひと時の空間、的な?
男はいくつになっても少年心を忘れないって本に書いてあった。
男には秘密基地が必要なんたって本に書いてあった。
かっこいい…
俺もそんな空間参加したかったな…
いや、諦めるのはまだ早い。
マスターに信頼されれば、お家に上げてもらえるかも。
仲良くなって、親子みたいになったら、休日にはキャンプなんて言ったりして。
ああ、それでキャンプファイアーを挟んで、ゆっくりコーヒーでも飲みながら男同士気兼ね無く夜明けまで語り合う、的な。
キャンプかぁ…
中学二年の時の野外学習。
肝試しのペア決めの時、女子が大ゲンカしたんだよね。
結局決まらなくて、先生が俺のコンビになって。
それで二人で歩いてたら、先生が道を間違えて、使われてない廃病院に着いちゃってさ。
先生『来栖君…先生ね、ずっと来栖君が入学した時から目を付け…じゃなかった、気になってて。
君が何か悩みを抱えてるって、気付いてたの。だから、悩みを吐き出して、先生の膣内(なか)に!!』
あの時は友達のみっちゃんが人を呼んでくれたっけ…
そういや、元気にしてるかな、みっちゃん。
小学校の頃から、唯一の俺の男友達。
中二の冬に転校した時は泣いたなぁ。
泣き過ぎて、見るに見かねたみっちゃんのお母さんが俺ごと引っ越し先に連れて行こうとしたっけ。
みっちゃんのお母さんは時々子供みたいな悪ふざけをそんな感じにするけど、いいお母さんだったな。
遊びに行くとケーキ出してくれるし、夕食まで食べさせてくれた。
みっちゃん家、お金持ちだったんだよね。いつも出てくる霜降りのステーキ美味しかったなぁ。
* * *
翌日は学校に行った。
おじさんが手配してくれた学校だ。
担任の川上先生は、美人だけど、何だか人生に疲れた感じがした。
川上「私が君の担任。参ったなぁ…何で私ばっかりこんな問題児を…」
此処にも悪い噂が…これがレッテルか…わかっていたけど。
川上「いい?ウチの学校は生徒同士の不純異性交遊には厳しいの。後は言わなくてもわかるわよね?」ギロッ
おっと、さっそくおいでなすったな、レッテルと偏見から来る牽制球。
しかし、悪球打ちなら予習済みだ。
イカしたジョークで職員室を笑いのズンドコに叩き落としてやるよ!!
暁「だったら、生徒じゃなかったらいいんですね?」ニコッ
例えば他校の生徒とかな!!
何てな!!
「そういう問題じゃないっての!」と小粋なツッコミ、川上先生、オナシャーッス!!
川上「ちょ、何言ってるのよ!!も、もう…キョウシトダナンテ…」モジモジ
ん?
んんん?
んっんっんんーーー?
違うぞ~?
期待してたリアクションと何か違うゾウ?
惣治郎「お前…やっぱり…」
そ、惣治郎さんが警戒すべき外敵を見つけたような顔をしていらっしゃる!!
誤解ですよぉぉぉぉぉ。
や~まだ、話が違うやないか!!
川上先生も、何でそこで慌てるんですか?
結局、入学手続きの間、川上先生は顔を赤くしたまま、チラチラとこちらを見るばかりで、ラテンの香りが強い女の先生が代わりに説明をしてくれた。
惣治郎「頼むから…ルブランで愁嘆場を演じてくれるなよ?ウチの包丁は人を刺す為にある訳じゃないんだからな…」ハァ
帰りの車の空気は重苦しかった。
男同士のキャンプでの語り合いまで、あとどれくらいだろうか、なんて窓の外を眺めながら考えた。
短くて申し訳ないが、本日はここまでです。
次回はアン殿とか出したいと思います。それでは。
今から投下します。
今日は登校初日。目指せ、男友達。
朝からカレーですか。美味しいけど、美味しいですけれど!!
そんな記念すべき初日にいきなりの雨。
嫌だなぁ。髪の毛がくるんくるんになっちゃうんだよな。ストパーかけようかな…
雨宿りをしてると、隣に外人さんがいてびっくりした。
外人さん?ハーフかな?秀尽の制服着てるっていうことは、もしかして同級生かも。
やっぱりコミュニケーション能力も積極的なのだろうか。
こう、すぐにフレンドリーになって、「へい、ブラザー!」みたいな。
良いなぁ。親友を「兄弟」と呼べる関係。グッとハグしてみたり、ハイタッチしてみたり、拳を合わせてみたり。
黒子と青峰みたいに。ああ、俺も「アキ」とか愛称で呼んでもらいたいなぁ。
このハーフさん美人だし、きっと友達いっぱいるんだろうな。
男友達もいっぱいいるんだろうな。紹介してくれないかな。
金髪の少女「?」
あ、じっと見てるのバレた。
どうしよう、不快がらせちゃったかな。とりあえず笑っておこうかな。
金髪の少女「…フフッ」
良かった。「ヘイ!ジャップ!!何を見てるのYO!!」とか言われたらどうしようかとヒヤヒヤもんだったZE。
と、そんなことを思っていたら一台の自動車が止まった。
モジャモジャ「おう、乗って行くか?」
モジャモジャヘアに少し親近感。
金髪の少女「えっと…」チラッ
お、これはもしかして彼氏さんかな。照れてるのかな。ジッと見てたら悪いかな。
いや、もしかして、俺も一緒に送ってもらうようお願いするか迷っているのかもしれない。
ふふふ、この来栖暁、恋人同士のひと時を邪魔する程野暮じゃない。
ハーフさんはこっちをチラチラ見てるから、どうぞと手で促すと諦めたように自動車に乗って行った。
金髪の少年「クソッ!!あの変態野郎…」
我ながら気が利いているなと満足していると金髪の人が毒づいていた。
あ、この人も秀尽の制服着てる。
金髪の少年「んだよ?お前見ねぇツラだな」
転校してきたと説明すると、金髪少年改め坂本竜司君は学校まで一緒に行こうぜなんて言ってくれた。
一緒に登校!
友達(候補)と一緒に登校!!
初日からのハッピーイベントに浮かれていると、スマホのアプリに気付く。
そういえば昨日勝手に入ってたっけ。
痴漢されたショックですっかり忘れてた。
竜司「ん?変なアプリだな」
坂本君が覗き込んでくる。
ああ、こういうのクラスで見た!!
スマホの動画を男子が集まって見ながらワイワイ話してるの!!
まさか、俺がそれをやれるなんて。
深夜にやたら息が荒い電話が掛かってきたり、
胸元を強調した自撮り写真が送らてきたり、
そんなことばかりで携帯解約しようか悩んでたけど、解約しなくて本当に良かった~~!!
感動に打ち震えながら歩いていると、お城に着いた。
お城に着いた。
学校…改装したんだ。
竜司「違ぇーーよ!!」
坂本君のノリツッコミが響く。
ノリツッコミ…
まるで友達同士の軽口みたいじゃないか。
竜司「ねぇ、何お前うっとりしてるの?兵士に囲まれちゃってるよ!?」
いつの間にか兵士に囲まれていた。仮装?
竜司「違ぇーーよ!!」
坂本君のノリツッコミが心地よく響く。
ノリツッコミ…
夢にまでみたノリツッコミ…
竜司「だから、うっとりしないでお願いだから!!今拘束されちゃってるからね?」
* * *
牢屋に閉じ込められた俺と坂本君の前に、王冠を被った変態が現れた。
さっきのモジャモジャだ。
坂本君が怒っている。
モジャモジャは凄く嫌な奴のようだ。
モジャモジャで嫌な奴で変態なんだ。
でもスゴイ。
ブーメランって…スゴイ…
モジャモジャ「ほっほう?坂本と違って、そっちのガキは俺への敬意がなってるじゃあないか」
竜司「お前!何が凄いんだよ。こんな変態屑野郎なんか」
だって、スゴイ勇気だろ。
そんな、そんなお粗末なサイズなのに…そんな小さいのにブーメランって凄い勇気だ。
モジャモジャ「は?」
竜司「ぷっ」
コンプレックスを敢えて堂々と曝け出す勇気、スゴイ。
友達がいない俺も、寧ろ友達がいないことをネタにして友達を作っていくべきなのかもしれない。
どうだろう?
竜司「ぷっ…く、あっははははははは、お、おま、お前、最高…っぷはははははははは」
モジャモジャ「こ、このガキがぁぁ!!!」
竜司「ぐあ!?」バキッ
何故か爆笑していた坂本君が殴られた。
友達(候補)を助けようにも兵士に取り押さえられる。
モジャモジャは坂本君を散々足蹴にすると、ニタニタと笑いながら兵士に指示を出す。
モジャモジャ「坂本~?お前はそうやって地べたに這いつくばってるのがお似合いなんだよ。二度と逆らえないようにしてやろうか」
竜司「や、止めろ!止めろぉぉーー!!」
暁「坂本君!!ぐっ」ガッ
モジャモジャ「お前はそこで見てろ」
暁「坂本君!!」
ドクン
『どうした・・・見ているだけか?』
誰だ?
『我が身大事に見殺しか?このままでは本当に死ぬぞ?』
嫌だ!坂本君が、せっかく友達になれそうなのに!!
『そうだ。あれは間違っていたのか?差し伸べた手は間違っていたのか?』
その言葉にハッとする。
蹲っていたいた女の人を助けようとして声を掛けた。 ―― 茂みに引きずり込まれた。
産気づいた妊婦さんを病院に連れて行こうとした。 ―― お腹にクッション巻いてた妊婦のフリをしていて、車に押し込められた。
『あ…うん。ゴメンね。嫌なこと思い出させて』
でも、間違ってはいなかった。
だって、病気で蹲っている女の人はいなかった。
だって、産気づいて苦しんでる妊婦さんはいなかった。
そのことを喜ぶべきなんだって、今では思っているから!!
例え、茂みに引きずり込まれても、車に押し込められても、後を付けられても、苦しんでいる人を見捨てて良い理由にはならない!!
『んんーーーそこは後悔してもいいかもしれないけど、まぁ、とにかく覚悟、聞き届けたり』
『契約だ。我は汝、汝は我…己が信じた正義のため、あまねく冒涜を省みぬ者よ!』
俺の正義…そうだ、俺は目指した。
友達と集まってスマブラをやって、カラオケにも行って、みんなでビッグバンチャレンジもしたい!!
それに、今年こそ、夏休みに男友達とキャンプに行くんだ!!!
『あ…そうだね…まぁ、とにかく、たとえ地獄に繋がれようと全てを己で見定める、強き意思の力を!』
暁「アルセーヌ!!」メギドラオン
燃え上がれ、俺の友情パワー!!!
モジャモジャ「ヒィィィィィ!!!」
* * *
竜司「何かお前スゲェな…けど、サンキュー。助かったぜ!!」
ペルソナ『アルセーヌ』でドリフの爆発オチのように城を吹き飛ばし、坂本君を助けた。
学校は終わっており、俺と坂本君は仲良く叱られた。
例の変態教師は何故か気分が悪くなったとかで、早退したそうだ。
帰り際に坂本君に「また明日な!」と言われた。
坂本君が見えなくなるまで手を振った。
しまった、録音しておけばよかった。
あと、学校の帰りにグッタリした黒猫を見つけた。
火でも付けられたのか、あちこちがチリチリに焦げていたのが可哀相だったので拾って帰った。
誰かは知らないけど、酷いことをするもんだ。
今日、雨宿りをしてると、男の子に会った。
大きな眼鏡と長い前髪の野暮ったい子。
でもカッコ悪い子じゃない。
私をじっと見つめて、もしかして惚れちゃったかな?
野暮ったいけど、目がキラキラしてて睫も長くて、フワフワの髪の毛が何だかノーフォーク・テリアみたいで可愛いかも。
男の子が笑った。
やだ、笑うとホント可愛い。
秀尽の制服着てるけど、見ない顔だ。
もしかして転校生?
掲示板にあった転校生の悪口を思い出す。
『地元では相当な女たらし。余りにも(性的に)強く、余りにも多くの(女)人を(性的に)斬って来た為に着いた志士名は ―― 人斬り抜刀斉』
でも、目の前の子はそんな風には見えない。
それとも猫被ってるのかな。
そんなことを思ってると、あの鴨志田のクソ野郎が来た。
ちょっと、馴れ馴れしく声かけないでよキモッ!!!
この子に誤解されたらどうするのよ?
違うからね?
こんな臭くてキモいモジャモジャチン毛野郎とは何の関係も無いからね?
ビッチとか思わないでね?
ビッチどころかヴァージンなんだよ?
ファーストキスだってまだなんだからね?
誤解しないでね?
そう思ってると、男の子はニコッと笑って先に行ってと手で促す。
鴨志田が苛立っているのを察したのだろう。
あ~あ、同じ天パならこの子と一緒に学校に行きたいのに。
でも、こいつの機嫌を損ねたら志帆に何をするかわからないからぁ…
学校に着くと、今日登校するはずの転校生は休みだそうだ。
回りからヒソヒソ声が聞こえる。
生徒A『きっと女の所に入り浸って学校なんて忘れてんだぜwww』
生徒B『マジかよ、抜刀際パネェwww』
生徒C『高巻といい、ヤリマンとヤリチンが揃うのかよwww』
想像だけでよくもまぁ、そこまで言えるものだ。
童貞の嫉妬ってホント見苦しい。
その後、鴨志田は授業中に突然体調を崩して早退したらしい。
原因はわからないけどいい気味だと思った。
以上で投下を終えます。
ゲーム本編の流れは大雑把には追いますが、基本適当です。
今から投下します。
カロリーヌ「ふん、来たか囚人」
こんばんは、カロちゃん、ジュスちゃん。
カロリーヌ「かろっ、だから、カロちゃんなどと気安く呼ぶな!!」
可愛いのに…ずっと妹欲しかったんだ…でも、嫌なら良いよ…
カロリーヌ「そ、そんな悲しそうな顔をすることはないだろ!!オイ、ジュスティーヌからも何とか言え!!」
ジュスティーヌ「私はかまいませんよ。侮蔑や嫌悪から来る呼び名ではありませんし」
ジュスちゃん…
カロリーヌ「汚いぞお前!!う…わ、私も構わん!!囚人ごときの戯れ言にムキになっていては看守は務まらんからな」
うん!ありがとうカロちゃん。
嬉しい。
嬉しい。
また仲良しの友達ができた。
友達が増えたよ、やったねアルちゃん!!
アルセーヌ『ダメ。汝、それダメなやつや』
カロちゃん「ふ、ふん、だらしなく笑いおって」
ジュスちゃん「全く、自分の立場がわかっていないようですね、囚人」パシャッ
カロちゃん「何写メってる!?」
ジュスちゃん「後で送ってあげますから、進めて進めて」
カロちゃん「今から貴様に合体を教えてやろう」
ジュスちゃん「これはペルソナとペルソナを掛け合わせて、強力な新しいペルソナを生み出すもの。これからの貴方の戦いに必要不可欠なものです」
合体?
それは分離できるの?
カロちゃん「ハッ、できるわけなかろう。合体とは融合。そして新たな存在に生まれ変わるのだ」
ジュスちゃん「当然、元になったペルソナは消滅しますね」
!?
嫌だ!!それはアルセーヌとお別れじゃないか。
せっかく出来たセカンドフレンドなのに。(一人目は竜司)
アルセーヌ『泣かないで汝。我はいつまでも見守ってるから。がんばって、汝!』
あるぜぇぇぇぬぅぅぅーー!!
カロちゃん「えぇぇー……マジ泣き…」
ジュスちゃん「……あーあ…カロリーヌ泣かした。仕方の無い囚人ですね。今回は特別に私が適当に浚ってきたシャドウを使って良いですから。私が許可しますから泣かないでください囚人」
カロちゃん「てめぇ!!」
こうして、新たなペルソナを生み出した。
ペルソナ…友達が増えた。
100体ペルソナを手に入れれば友達100人が出来たという…
ジュスちゃん「ストック数は最大でも10そこそこですから」
しょんぼり…
***
危機感はあった。
予感のようなものも。
まだ、肩や背中、太股を触られる程度だけれども、その内私は犯されてしまうんじゃないか。
あいつが私や他の女子部員を見る目のおぞましさ。
でも、私には拒めない。だって、せっかくレギュラーになれたのに。
それに私なんかのために我慢してくれている親友のためにも。
そう、私の大事な親友、高巻杏も鴨志田に狙われている。
というより、鴨志田の一番の目的は多分杏だろう。
私はそのための踏み台。
怪我を負わされるのはまだ我慢できる、でも、犯されるなんて…踏み台として犯されるなんて絶対嫌だ。
でも、我慢するしかない。
ずっと塞いだ気持ちのままでいると、私は一人の男の子と偶然出会った。
見たことのない男の子に、転校生が杏のクラスに来たことを思い出した。
最近転校してきた子、女の子をとっかえひっかえしてい姿に付いたあだ名が『人斬り抜刀斉』って学校の掲示板に書かれていた。
女の子を食い物にするなんて、まるで鴨志田みたいだなと噂を聞いた時に思った。
けれど、実際に会ったその人は、全然そんな鴨志田のような下卑た人間じゃなかった。
ドブ川みたいな目をした鴨志田と正反対の澄んだ瞳。
ふわふわの髪の毛は、同じ天然パーマなのに鴨志田とは全然違う。
……あと、純粋に顔がカッコいい…
暁「あれ?その怪我は?」
その男の子、来栖暁君は私の顔の怪我に触れた。
クラスメートも部員も、教師でさえも触れようとしなかった怪我に。
学校中の誰もが関わるまいとしていた事に簡単に触れてきた。
知らなかったというのもあるのだろう。
でも、そのときの私に、彼の優しさは反則だった。
何でもないよ、そう言って断る私の手を取ると、来栖君は私を保健室へ連れて行った。
暁「おでこ、血が出てる…ちょっとしみるかもしれないけど」
そう言って、来栖君は優しく手当をしてくれた。
熱を持ってる打撲に湿布も貼ってくれて、爪が剥がれかけているのに気づくと包帯を巻いてくれた。
暁「我慢なんてしちゃ駄目だ」
志帆「え?」
暁「泣くほど痛いんだろ?」
気付けば涙が出ていた。
言葉にされて、泣いていると自覚するともう堪えきれなかった。
目の前にいる来栖君の胸にすがりついて、私は声を上げて泣いていた。
来栖君は泣き止むまでずっと私のそばに居てくれた。
何もいわず、ただ背中を撫でてくれた。
志帆「…ごめん、シャツ汚しちゃったね」
暁「気にしないで」
志帆「そんなわけにはいかないよ。洗って返すからね!!」
半ば強引にシャツを受け取ると、来栖君は「鈴井さんは律儀だね」って苦笑していた。
自分でもこんなに強引になるとは思わなかった。
それから、来栖君は杏と坂本君を保健室に呼んだ。
私にはよくわからないけど、杏が来栖君達と一緒に鴨志田のことをどうにかしようと動いているのを知った。
それから、自分の気持ちを素直に吐き出していると、ぽつりと来栖君が口にした。
暁「親友や自分を傷つけてまで此処でバレーがやりたいの?」
その言葉に私と杏は何も言えなかった。
いつの間にか私たちは「鴨志田に逆らっちゃダメ」「今は我慢しないといけない」という歪んだ意識が出来上がっていたらしい。
一度、そのことに気付くと、こんな事を言ったら怒られるかもしれないけれど、何だかバカみたいに思えてきた。
何であんな気持ち悪い人に好きにされて我慢してまでバレーをやらないといけないんだろ。
何で親友をそれに付き合わせないといけないんだろう。
そこまでしないといけないくらい、バレーって私のすべてだったっけ。
暁「鈴井さんがどれだけバレーを大事にしてるかわからない俺の言葉だから、適当に聞き流してくれてもいいけど、
もっと大事なものってあるだろう。バレー部のレギュラーじゃないからって、バレーができないわけじゃない。
バレー部以外にも友達と公園でやったり。それにバレー以外にも楽しいことっていっぱいあると思うんだ。
たとえばそう、友達!!友達とカラオケ行ったり、ゲーセンに行ったり、家で集まってゲームしたり、映画に行ったり。
それに、キャンプに行ったり。友達とキャンプ。友達とキャンプファイアーで恋バナとかしたり。
そうだよ、友達がいるんだろ?親友が。中学の頃からの親友なんだって高巻さんから聞いてる。羨ましい…
そんな親友がいるんだから、寧ろ親友と過ごすことが大事なんじゃないかな。
親友との絆こそが大事だと思うんだ!だって親友なんだよ!心友なんだよ!!」クワッ
竜司「落ち着け落ち着け」
ビックリするぐらい雄弁になる来栖君にビックリする。
こんなクールに見えるのに、その言葉には強い力が込められていた。
触れるだけでヤケドしてしまいそうな熱い想いの秘められた言葉は私の心に真っ直ぐ刺さった。
私と杏を思ってのその言葉に、私を雁字搦めにしていた鎖が千切れたのがわかる。
***
ワガハイはモルガナである。
猫ではない、ニンゲンだ。
ニンゲンなんだけど、何かの手違いで猫的なアレになっているだけだ。
うっかりモジャモジャ野郎に捕まっていたワガハイは、脱獄のチャンスをじっと伺っていたが、
正体不明の、まるで最上級万能属性魔法が炸裂したような爆発で結果的に脱獄に成功した。
体中チリチリになって、「あ、これもう死ぬな…」と思ったワガハイだったが、運良く心優しい奴に拾われて今に至る。
モナ「今日は何作ってたんだ?」
暁「明太チーズ卵焼き。消費期限やばそうなの使って良いって言ってもらえたし」
モナ「お前、ホント器用だよな」
キーピックの作り方教えて、一時間後には永久キーピック×3が生まれたときは、
「ワガハイに教えること無くね?」ってなりそうになったもん。
暁「来たるべきキャンプの時に、頼りになる奴アピールをしたいからね」
その場合株が上がるのは男友達より女性陣だと思うけどなワガハイ。
ワガハイを拾ってくれたコイツ、来栖暁は一言で言えば「持ってる奴」だ。
ほっとけないと居候の身でありながらワガハイを拾って、ゴシュジンを必死に説得して暮らせるように取りなしてくれる慈母神並の優しさ。
器用さは言うまでもなく、見ての通り男子高校生とは思えない程料理なんてお手の物。
身長は平均を十分満たしてるし、見た目は街で見かける野郎共と比較すれば飛び抜けてるのがわかる。
度胸は文句なし、シャドウを前にしても物怖じしない。
何か格闘をやってたのか身のこなしも文句ない。
そして何よりペルソナを持っている。
それもシャドウからはぎ取った仮面をペルソナにして、複数使いこなすことも出来るというイレギュラー。
まぁ、はぎ取るって言っても男シャドウだけで、女シャドウに至っては「寧ろ仲魔にしてよ!戦闘も私生活もサポートするから」と、
それ作品違ぇから!!という有様だ。
そんなコイツであるが、順風満帆な学園生活を送っているわけじゃない。
生徒A「おい、抜刀斉だぜ…」
生徒B「眠そうな顔して、きっと朝帰りに違いないぜ」
女生徒「でもかっこいいなぁ…」
生徒A・B「……」
生徒C「チッ」
ニンゲンの嫉妬ってのは醜いんだな。
コイツが女を連れ込んで無いのなんてワガハイには十分過ぎる程わかってる。寝不足の理由も…
竜司「よぉーっす!」
朝っぱらからうるせぇのなんの。
けど、バカみてぇにデカいバカの声は、ヒソヒソ鬱陶しい陰口よりずっとマシだ。
竜司「おはようさん暁。それにモルガナ」
モナ「朝からうっせぇーし。てか、ワガハイは隠れてるんだから話しかけんな!!」
竜司「朝から細けぇな。なぁ、暁」
このうるせぇバカはリュウジ。一応こんなんでもペルソナが使える。
暁「おはよう、りゅ、りゅりゅりゅ、竜司」
竜司「何だよ、噛み噛みじゃねぇか…」
暁「大丈夫だ。問題無い。りゅ、リュウジ。竜司」
竜司「お、おう」
寝不足の理由、それはコレだ。
発端は昨日、瓦礫の撤去作業中でオタカラも埋もれちまったカモシダパレスの探索後のことだ。
***
竜司「なぁ」
暁「どうした、坂本君」
竜司「その坂本君ての止めないか?」
暁「も、もしかして、馴れ馴れしかった!?すまない、俺はまた距離感を見誤ってしまっていたのか…
しかし、どう呼べば…スカル?いや、それじゃ学校では呼べないし…ハッ
学校では話しかけるなということか。知ってる、ジョーカーこれ知ってる。中学の時あった。
何故か初対面の女子の告白を断った翌日に、それまで話しかけてくれてた水戸君が突然、
『裏切り者の寝取り野郎。俺に二度と話しかけるな』って言ってきたアレだ。
でも、こっち来てから話した女子なんて高巻さんと鈴井さんくらいだし…
どっちも坂本君は特に恋愛感情無いって事前に聴取済みで…まさか、川上先生!?
確かに、あの先生すごく親身になって、昨日も前の学校での噂の事を心配してわざわざ屋根裏部屋まで来てくれたし…
あれだけ面倒見の良い大人の女性であれば、坂本君のラブコープMAX止む無しか。
だったら、俺が後方支援に徹すれば。そうだ、やれる、やれるぞジョーカー。
恋の応援、なんて友達的な」ブツブツブツブツ
竜司「待って、待って、待って。誤解の上に誤解を二度塗り三度塗りするのストップだから」
暁「今日から俺のコードネームはキューピッドで」
竜司「どんな怪盗だよ。恋心を盗むのかってやかましい!!」
暁「ノリツッコミ…」ジーン
竜司「だからうっとりするの止めて。あと俺のキューピッドになることまで確定しないで、ちょっと落ち着け!」
驚きのネガティブさにワガハイもリュウジもどん引き。
怪盗モードの大胆不敵さ剛胆さなのに、弱点属性「ボッチ」って何だよ。
竜司「俺が言ってるのは、坂本君なんて呼び方水臭ぇだろって話だ」
暁「え?」
竜司「知り合ってまだ短いけどよ、命を賭けて一緒に戦ってるんだぜ俺達。
もうただの知り合いとかダチってレベルじゃねーだろ。なんつーか、その、まぁ、親友?っていうか…
ああー、とにかく、俺は今日からお前を暁って呼ぶから、お前は竜司って呼べ。良いな」
暁「名前…呼び…親友…」グスッ
竜司「な、泣くなよ!!」
モナ(不憫過ぎるだろ…)ホロリ
そっからのジョーカーは凄まじかった。
テンションがおかしいことになって、瓦礫作業中のシャドウ後と瓦礫を灰にしていった。
もうオタカラむき出し。まだモヤモヤ状態だから盗めないけど。
そして家に帰ってからのコイツは凄かった。
暁「あ、り、りりりり、りゅ、りゅ、りゅー、りゅ、りれ、りゅうう、うう、りゅうじ、りゅうじ。
うん…竜司。名前呼び…えへへへへへ」ニヘラ
そんな調子で明け方まで名前呼びの練習をしていた。
***
暁「竜司」にへら
竜司「大げさな奴だな。名前呼びくらいで」
うるさくてバカな奴だけど、こいつが居て良かった。
ワガハイを救ってくれた、こんな良い奴が、暁が学校で陰口に耐えながら一人ぼっちでいるなんて、悔しすぎる。
そして鞄の中でほっこりしているワガハイの前に天使が現れた。
杏「おっはよ!暁、坂本!」
志帆「おはよう、来栖君」
ゥアァァァン殿ぉぉぉ!!
三人目のペルソナ使いにして、美しき雌豹、そしてワガハイの守るべき姫君アン殿である。
そして、友人のスズイも一緒だ。
杏「モルガナもおはよう」
くぅ、今日も美しいぜ!!
暁「おはよう、高巻さん、鈴井さん」
杏「杏で良いってば」
暁「そんな事言っても、俺とあんまり仲良くしてると、高巻さんと鈴井さんまで変な目で見られるよ」
生徒D「うぉ、ビッチーズじゃん。抜刀斉とマザゴンと話してるよ」
生徒E「あれじゃね?抜刀斉の寝不足の理由ってアイツ等じゃね」
生徒F「マジかよ。鴨志田から乗り換えたんか。つーか、鈴井さん良いよな。
鴨志田とか抜刀斉にヤらせてくれるなら、俺にもヤらせてくんねぇかな」
生徒G「俺は高巻が良いな。ハーフってワキガなのかな」
生徒E「抜刀斉なら知ってんじゃね」
生徒D「ワキガはキツいな」
生徒G「バカ、それが寧ろいいんだろ。ご褒美だろ」
竜司「おい、言いてぇことあるなら、こっち来て話したらどうなんだよ、あぁぁ!?」
生徒D「やべ!行くぞ」
竜司「チッ…クソどもが」
全くだぜ。ワガハイがニンゲンの肉体を持っていたら、すぐに飛びかかって三枚卸にしていたところだ。
暁「大丈夫?」
杏「……別に、ぜんぜん気にしてないから。勝手な妄想で勝手に盛り上がれるなんてバッカみたい。暁もそんな心配そうな顔しなくてもいいからね」
暁「高巻さん、気にしちゃダメだよ?世の中には8×4があるし、手術で簡単に取れるしいし。それに、保険適用される病院もあるって聞くから」
杏「そっち!?てかワキガじゃねーし!!」
暁「?」コテン
杏「いや?じゃないから。そんな可愛く小首傾げられてもごまかされないからね。だから鴨志田の女とかビッチとか」
暁「違うんでしょ?だって、高巻さんも鈴井さんも、そういう変な嘘吐かないだろ?」
杏「え、うん、そうだけど…」
志帆「ぷっ、あははははっ、もう、来栖君たら」
杏「志帆?」
志帆「うん。私たち、そもそも男の子とおつきあいしたことも無いもんね。
杏は中学の時からずっと彼氏が欲しい彼氏が欲しいって言ってたけど」
杏「それ言わなくていいから!!」
竜司「へへっ、やっぱ大した奴だぜ暁は」
ホントだな。流石はワガハイが見込んだ男だ。
杏「何ニヤついてるのよ坂本」
志帆「いたんだね坂本君」
竜司「ひどくね!?見たかよ暁、この扱いの差。この俺へのぞんざいさ」
暁「安心しろりゅ、竜司。俺は親友だから」えへへ
竜司「へへへ、だな」
見てるこっちが照れくさくなるな、おい。
ってアン殿が頬を膨らませてる。
膨れ面もまた、可憐だぜ…
杏「……シッ」ビシッ
鞭!?
竜司「あ痛った!!む、鞭!?」
杏「ベルトよ」ビシッ
竜司「痛い!!凄く骨の髄に染み込む痛さ!!」
杏「何抜け駆けして名前で呼ばれてるのよこのマザゴン!!ブヒィとお鳴き!!」ビシッ
竜司「ブヒィ!!ってやらせるなよ、あいった!!」
アン殿の鞭捌き…すてきだ。
何度も鞭で打たれる竜司にワガハイちょっぴりジェラシー。
暁「遠慮のないスキンシップ…これが昔馴染みの性別を超えた友情…」
志帆「ふふふ、仲良しだもんね。二人とも」
暁「鈴井さんもでしょ?」
志帆「うん」
暁「……ちょっと失礼」
志帆「ふぇ!?」
そういっておもむろに鈴井の前髪をかき上げる…ってオイ!顔!顔近いから!
スズイの顔、リンゴみたいに真っ赤になってるぞ!!
志帆「く、くくく来栖くん!?」
暁「…うん、大分薄くなったね、傷」
志帆「あ…」
暁「あれから大丈夫?」
志帆「うん。色々理由を付けて休んでる」
***
コイツとスズイは結構仲が良い。
アキラは転校早々に「人斬り抜刀斉」と呼ばれて男共に嫉妬混じりに嫌われ、
女生徒達には女の敵と認識され、「三分喋るとはらむ」と一部を除いて敬遠されていた。
そんな中、コイツはスズイと知り合った。きっかけは顔に痣を作ったスズイをほっとけないと声をかけたことだ。
ワガハイは正直、スズイみたいな大人しそうな子はコイツの噂に怯えるんじゃねーかなって思ったが、
この少女は自然体でコイツと話していた。噂なんて気にもしないように。
それにはコイツも驚いたらしい。噂を気にしないのか聞いたコイツに、スズイは笑ってこう言った。
志帆「だって、私は今初めて貴方のこと知ったんだもの」
暁「鈴井さん…」
志帆「それに、私の怪我を見て見ぬ振りする人達の言葉なんかよりも、今、こうして私の怪我を心配してくれることの方がホントだと思う」
暁「…ありがとう」
***
暁「バレー部はどうなの?」
鈴井「うん…相変わらずかな。でもね、最近はもうレギュラーじゃなくても良いやって思ってる。怪我しても我慢して、それで杏に心配かけてまで拘らないといけないものなのかって」
昼休み、ワガハイとアキラ、アン殿にリュウジ、それにスズイの五人で、すっかり秘密基地になった屋上に集まっていた。
スズイは今日もバレー部を休んでる。すっかり吹っ切れたらしい。
風は気持ちいいし、周囲を気にする必要もない。
何よりここならワガハイも鞄に隠れる必要がないからな。
杏「私も、志帆がそう言うなら鴨志田の奴に従う必要無いしね」
竜司「そうしろ、そうしろ。あんなクソ野郎の言うとおりにして苦しむなんてクソみたいなこと、クソくだらねぇからよ」
リュウジお前クソクソうるせぇな。
だが、ワガハイも同感だ。悲しい顔はアン殿には似合わねぇ。
相棒を見ると、嬉しそうに微笑んでいた。お、スズイがチラッと見てるな。ほほぉ~う。
にゃふふふふ~~、これはもしかしたらもしかするかもしれねーな。
アキラはまだ気づいてないっぽいが、そこらはワガハイがサポートしてやればいい。
ワガハイとアン殿、アキラとスズイでダブルデートなんてこともあるかもしれねー。
杏「あんたは我慢しなさ過ぎだけどね、マザゴン」
竜司「うるせぇ!つか、その呼び名は止めろ!!」
カモシダの野郎と因縁があるのはアン殿とスズイだけじゃねぇ。
リュウジもまた、カモシダの奴のせいで、学校内ですっかり悪評が広がっちまった。
陸上部で反抗的なコイツの態度に腹を立てたカモシダはリュウジの母親を呼び出した。
竜司「どうせ、オフクロをいびるつもりだったんだろうぜ、あのクソ野郎。これだから片親はとか」
ニンゲンの世界では、父親だけどか母親だけの家庭を「カタオヤ」と言って時々バカにされるらしい。
女手一つで息子をバカだけど真っ直ぐに育てるリュウジの母上は立派な方だと思うのだが。
そういうバカなこと言う奴も少なくないらしい。
そこで事件は起きた。カモシダの奴がリュウジの母上殿に言い寄った。
母上が心配で聞き耳立てていたリュウジはブチ切れて、カモシダをボッコボコにしたらしい。
まともにやり合えば金メダリストのカモシダの方が強いんだろうが、不意打ちだったところに、見事にリュウジのパンチが決まったらしい。
リュウジの暴力行為を明らかにすれば、生徒の母親に強引に迫ったこともバレるから、大事にはならなかったらしいが、暴力行為は広がった。
母親がカモシダに惚れるんじゃないかと心配のあまり教師を殴ったマザコン野郎。
それがリュウジに貼られた「レッテル」だ。
マザコンのドラゴン(竜)、略して ―― マザゴン。
その話を聞いてワガハイは憤慨した。
アキラは「マザゴンって何かマスコットみたいな愛称だな…」と少し羨ましそうだった。何でだよ!?
杏「でも、最近の鴨志田ちょっとおかしくない?何か前よりも露骨っていうか開き直ってるっていうか…」
竜司「ヤロウ、学校が庇ってくれるのがわかってて、メッキも剥がれてきたから逆に堂々とし始めてるな。三島の奴、まだ学校来ねぇし?」
暁「…三島?」
志帆「男バレの子。ちょうど来栖君と入れ替わりで学校休んでてね。学校帰りにうっかり階段から落ちたっていうけど…」
スズイが口ごもる。
志帆「…何してくるか、わからなくて…何か、怖いな」
暁「怖いなら逃げちゃえばいいよ。我慢する事なんて無い」
志帆「来栖君?」
暁「逃げちゃいけないことも勿論ある。受験とか、将来の夢とか、恋愛や家族、それに友達作りとか、友達作りとか、後は友達作りとか」
友達作り強調するなぁ…
暁「でも、鈴井さんが今目の前にしてる理不尽は、逃げても良いことだと思う。それは君をすり減らしていくだけで、君の糧になることじゃない」
志帆「で、でも…」
暁「我慢なんてしちゃダメだよ。もっと、自分の気持ちに正直になって、嫌なら嫌だって、怖いなら怖いって、その気持ちに従えばいい。
みんながそれで君を非難しても俺は君の味方だから」
杏「当然、私もね!」
竜司「俺も」
ワガハイもだ!!
志帆「ありがとう…」
暁「それに、女の子が顔を傷つけられてまで我慢しなきゃいけないことなんて何も無いよ」
志帆「来栖君…あ、ありがとう」ポッ
杏「むぅ…」
竜司「へへへ、あの二人いい感じじゃね?」
杏「セイッ」ビシッ
竜司「痛ったぁぁ!?」
鞭が肉を打つ鋭い音とリュウジの悲鳴。ワガハイ、ちょっぴりジェラシー!!
竜司「痛てて…けど、早く決着付けた方がいいかもな」ボソッ
杏「うん」
言われるまでもねぇ!!
だが、ワガハイ達の決意は一歩遅かった。
その日、放課後一緒に帰る約束をしていたはずのスズイは一向に姿を現さなかった。
スズイからアン殿への連絡は「少し遅れるね」とだけ。妙な胸騒ぎに、最初に動いたのはアキラ…いや、ジョーカーだった。
男子バレー部の一人を捕まえると、スズイの居場所を聞き出した。いや、聞き出したなんて穏やかなもんじゃなかったな。
暁「おい」
男バレ部員「何だ、抜刀斉かよ。鈴井ならいないぜ」ニヤニヤ
暁「…」グイッ
男バレ部員「うぐっ…な、なにを…」
暁「…」ギリギリ
男バレ部員「く、くるし…わ、悪い。謝るから…」
暁「どこだ?」ギリギリ
男バレ部員「え?」
暁「鈴井さんはどこだ?知ってるなら言え。知らないなら、知ってる奴をすぐ連れてこい」ギリギリ
男バレ部員「か、鴨志田のとこだよ…」ゲホッゴホッ
暁「チッ…竜司、高巻さん、まずい。鴨志田のところに急ごう!!」
ああいうのを締め上げて吐かせるって言うんだろな。
竜司は面食らっていた、アン殿はちょっと潤んだ目で見てた…
……って、アン殿ぉぉぉぉぉぉ!?なにその目は!?
男バレ部員「…めちゃくちゃ怖ぇぇ…抜刀斉…」ブルッ
***
ワガハイ達がたどり着いた時、すべては終わっていた。
部屋を開けた瞬間に漂う異様な臭い。
乱れた服はべっとりと汚れ、呆然とした瞳のスズイ。
そして、下半身を露出させたカモシダ。
杏「志帆…」
アン殿が掠れた声を上げる。
無理もない、親友の変わり果てた姿に動揺しない方がおかしい。
それはアキラやリュウジも同様だった。
スズイはゆっくりと此方を見ると、柔らかく微笑んだ。
志帆「あ、ごめんね杏。遅くなっちゃったね。すぐに用意するから」
杏「志帆、なにがあったの?」
志帆「鴨志田に呼ばれたの。そうしたら…そうしたら突然…圧し掛かって来て、それで…私…」
杏「それ以上言わなくて良いよ、志帆。それより着替えよ?」
志帆「うん…」
そう言って、スズイは汚れた服を脱いだ。
べっとりと、血で汚れた服を。
鴨志田は、床に仰向けに倒れた鴨志田は意識が無く、露出された下半身は血塗れで…
その…いや、まさかな、違うよな…違うよね…
竜司「な、なななな、なぁ…これって、これって…」
ば、ばっか、リュウジ。これは隠れてるだけだって、小さいだけで…
杏「……ちょん切っちゃった?」
志帆「うん」にこっ
竜司・モルガナ「「あいたたたたたたたーーーー!!!!」」
暁「どひゃー」
ひゅんって、ひゅんってなった!!
アン殿は「あちゃーっ切っちゃったか~~」と呑気に言ってるけど。
持ってないからわからないんだ、この背筋を這い上がっていく寒気が!!そんな無邪気に残酷なアン殿も素敵だけれども!素敵だけれども!!
志帆「ジャージも軍手も鋏も、全部鴨志田の使ったからとりあえず大丈夫だよ」
杏「切ったのどうしたの?」
志帆「ゴミ袋に入れといたよ」
杏「やっぱり可燃ゴミなのかな」
冷静!!
杏「こうなったら、今すぐパレスに行って鴨志田の心を何とかしないとね」
暁「予告状作ったのに無駄になっちゃったね」
そっち!?
杏「もう、そんな顔しないの」ナデナデ
いいな!!ワガハイもなでなでして欲しい!!
って違うし!!
竜司「ってか、予告状いらねぇの?」
暁「予告状は警戒心を刺激させて、より認知の核を具体化させるんだろ?
鴨志田の意識下だと多分、今凄いことになってると思うよ」
竜司「あぁ…確かに、男として最大の警戒心っつーか、危機感っつーか…」
杏「ちょん切っちゃったらもう警戒もへったくれもないよね」
志帆「守るもの無いもんね」
竜司「あっけらかんと言わないで!!こっちまで痛くなるから!!痛くなるから!!」
暁「オタカラは既に奪われた…そういうことかな」
竜司「そうだけれども、そうだけれども!」
うまいこと言ったった!ってドヤ顔してる場合じゃねーぞ相棒!!
暁「でも、時間は無い。今すぐいこう。それと、此処まで来たら鈴井さんも一緒に連れて行った方がいい」
杏「うん。大丈夫、志帆は私が守るから!」
志帆「私のことは良いから、杏は自分をまず大事にして」
杏「志帆…」
志帆「私は来栖君に守ってもらうから」
杏「志帆!?」
***
竜司「女子超元気良いな…」
暁「同性同士の友情、親友同士の絆…良い!!」
竜司「お前もある意味平常運転ね!!」
***
鴨志田に呼び出された。
用件はわかっている。
不安に震える手で大切な『絆の証』を握りしめる。
勇気をください、来栖君。
おそれず、前に進む勇気。
下らない我慢なんてしない。
何が大切なのかをしっかりと忘れないこと。
握りしめた『絆の証』を取り出すと、心を奮い立たせる『儀式』をする。
『絆の証』
来栖君との『絆の証』
あの日、私が来栖君から受け取った『絆の証』 ―― 来栖君のシャツ。
すぅーーはぁーー
すぅぅーーーはぁぁーーー
すぅぅぅーーーーはぁぁぁーーーー
三十分程来栖君のシャツで深呼吸をすると、私の心に勇気が溢れてくる。
下半身からもイケナイものが少し溢れてくる。
よしっ!!
鴨志田「鈴井ぃぃ~~最近部活に来ないじゃないか?ああん?レギュラー外されても…え?いい?好きにしろ?三島でも掘ってろ?
ちょ、ちょっと待てよ、チッ…これだから何でもすぐに投げ出す若いガキは…いいさ、そろそろ味見したいって思ってたから…なぁ!!」
圧し掛かられた鴨志田の股間に膝が入った。とっさの事に結果的に勢い良く決まった(後で聞いたらカウンターというそうだ)
鴨志田「おごぉぉぉ!!げはっ、かはっ、つ、潰れ…ま、まて、もういっこも?もういっこもつぶす…ま、待て、俺がわる、ぎゃあああ…むぐっ」
念の為、もう片方もつぶしておいた。きちんと、踵を使って。
でも、まだ逆襲されたら怖い。
私は非力な女の子。
鴨志田はオリンピック金メダリスト。
力じゃ太刀打ちできない。
もし襲いかかられてしまったら、今度こそ犯されるかもしれない。
それは嫌だ。
私の純潔はもう来栖君に捧げると決めたのだから。
うん、そうだ。
我慢なんてしなくていいんだよね、来栖君。
私、がんばるね。
返り血で汚れないように鴨志田のジャージを着て、それから指紋が残らないように…あった、軍手。
それからカッターか鋏が…あったあった、良かった~
ああ、ごめんね来栖君。
初めて触る男の人のアレが鴨志田だなんて、手の処女を散らせてしまうふしだらな志帆を許してね。
でも直じゃないからね。
鴨志田のはあっさり切れた。
ポークビッツってあんな感じで簡単に切れたよねそういえば。
***
「親友」竜司と、「相棒」モルガナ、「女友達」高巻さん、そして鈴井さんまで加わってのパレス攻略。
友達五人で放課後にお出かけだなんて…俺はこんなに幸せでいいのだろうか。
オタカラは既に具現化されていた。オタカラを守るのはブーメラン姿の王様。
前回はあったブーメラン越しの慎ましやかな膨らみが、今はもう…
シャドウカモシダ「これだけは奪わせん、奪わせんぞ!!もう俺にはこれしか残ってない、残ってないのだ!!」
竜司「何か必死だな…」
確かに、もう一つ、いや二つの大切な金は無くなっちゃったもんな。
なんちって。なんちゃって!!
竜司「上手いけど、止めろ!男として悲しくなるから止めろ。止めなさい」
暁「ジョカぺろ☆」テヘペロ
怒られちった。親友に怒られちった。
親友に怒られるなんて、生まれて初めてだ。
杏(可愛い…)キュンッ
志帆(可愛い!!)キュンッ
シャドウカモシダ「ちくしょう…おい、鈴井!!テメェ誰が目をかけてヤってたと思ってんだ!!高巻のオマケの分際でよぉぉぉ!!」
志帆「…」ピクッ
シャドウカモシダ「このカモシダ様に従って当然。いや、股を開くのだって当たり前の義務だろうが!!」
志帆「…」ビキビキ
シャドウカモシダ「それとも何だ。そっちの転校生にとっくに食われちまったのか?何だよ、中古になったのかよ。
どうせ高巻はヤりまくってるだろうから、処女を楽しむために取っておいて、高巻と一緒に楽しもうと思ってたのによぉぉ!!」
カモシダの聞くに耐えない罵詈雑言に怒りがこみ上げてくる。
竜司も杏もモルガナも同じようだ。
それぞれ武器を握る手が震えている。
そんな中、鈴井さんは俯いていた。
鈴井さん…
志帆「……けんじゃ……ぞ」
シャドウカモシダ「あん?何だって?」
志帆「……っざけんじゃねぇぇぇぞ!!チンカスヤロウがぁ!!」ブチッ
シャドウカモシダ「ひぃぃぃぃぃ!!」
志帆「黙って聞いてりゃつけあがりやがって、陰毛頭が。何が一緒に食ってやるだ、テメェのお粗末なモン見てからほざけよ、身の程知らずのチンカスまみれのポークビッツが!!テメェはコンニャク相手に腰振ってんのがお似合いなんだよ!!!」
杏「やばいwwマジウケるんだけどwwwポークビッツって…ぷっくくくくく、やば、ダッサ、それで股開けって言ってたの?それじゃ膜破れないんじゃないwwwww」プークスクス
シャドウカモシダ「ひっく、えう、あうっ、ひぐっ、ぐすっ…」グスッ
暁「泣いちゃった」
竜司「泣いちゃった!」
モナ「泣いちゃった!」
???「我慢するのはもう止めたのね。そうそう、我慢なんてダメダメ。ヤりたいことやったもん勝ちだって、青春なら。
さ、そろそろ始めようか。100%勇気出して、やりきっちゃおう。
私の名はサロメ。一緒に欲望の宴を踊り遊びましょう」
鈴井さんにペルソナが目覚めるなんて。
サロメ…確か、結婚式の出し物で踊ったテンションでヨハネの首をくれって言って周りをドン引きさせた人だっけ。
鈴井さんの凄まじいテンションに、竜司とモルガナもドン引きだ。
その後、カモシダは高巻さんと鈴井さんの友情タッグにボッコボコにされた。
カルメンの炎とサロメの投擲(ヨハネの首)の合体技。
火球が千本ノックのようにカモシダをしこたま打ちのめした。
竜司「す、すげぇな…」
ねぇねぇ、竜司竜司。
竜司「ん?」
あの二人のタッグ名「ザ・ガトリングガンズ」とかどうかな。
竜司「すげぇどうでもいいなおい!」
その後、消し炭寸前のカモシダのシャドウに高巻さんが改心させていた。
杏「そうよね?」
志帆「そうだよね?」
カモシダ「ぼ、僕が…自分で…切り落としました…」
杏「何を?」
志帆「何を切り落としたの?」
カモシダ「お、お粗末なポークビッツを…切り落としたんです」ポロポロ
男性陣「……」ガタガタ
杏「さ、オタカラ取って帰ろっか」
志帆「安心したら私お腹空いてきちゃった」
杏「今日はパーッと焼き肉行っちゃう?」
志帆「あはは、そうだね。久しぶりにね」
男性陣「……」ガタガタ
***
焼き肉食べ放題に行った。
友達との学校帰りのご飯。
ずっと憧れだったのに、食事はあまり喉を通らなかった。
俺も竜司もずっとサラダと雑炊を食べていた。
高巻さんと鈴井さんはもりもり食べてた。
ウインナーを注文すると、二人して大笑いしていた。
女の子って凄い。
竜司は震えていた。
鞄の中のモルガナも震えていた。
帰りがけに二人に手を捕まれた。
杏「今度から、私たちのことも名前で呼ぶこと」ニコッ
鈴井「よろしくね、暁君♪」ニコリ
暁「ヨロシク、アン、シホ」
まぁ、頷くよね。
本日の投下は以上で終わります。こんな感じにちょっとずつ本編と差異を付けていきたいと思います。
杏「いい?あんたきちんと今までの罪を償いなさい。あんたが食い物にしてきた生徒達、ほかにもいるんでしょ?」
カモシダ「はい…」
やっぱりか…
竜司「やっぱりか。何て野郎だ」
モナ「まさに屑だな…」
俺たちがもっと早く、俺がもっと早く此処に来て、この力に早く目覚めていれば…
竜司「そんなこと言ってたらキリがねぇよ。これ以上被害が広がらなかったことを喜ぼうぜ」
モナ「そうだぜ。守れたものに目を向けようぜ」
竜司…モナ…
杏「それから、あんたのポークビッツは自分の罪を悔いたあんたが自分の手で切り落とした、そうよね?」
カモシダ「!?」
男性陣「!?」
投下します。
全校集会で鴨志田が今までの悪事を暴露した挙句自首をした。といっても、そこまで重い罪には問われないだろう。
部員への体罰や性的な嫌がらせがあったものの、今のところ大事にはなっていないからだ。
体罰で入院している生徒がいるらしいが、ストレスにより階段から足を踏み外したのが直接の原因らしい。
女性とへの性的な嫌がらせも、身体を触ったりしていた程度で、性的な暴行にまで及んでいなかったらしい。
というのも、高巻…じゃなかった、杏に執着していたけっか、そういった嫌がらせは志帆集中していたからだ。
杏は関係を迫り続けられ、志帆に至ってはあと一歩というところまで襲われている。
二人が訴えようと思えば、鴨志田の罪は俄然重みを増すだろうが、二人にはそんな気は無いらしい。
曰く、「気が済んだ」らしい。竜司に言わせれば「そりゃそうだろ」とのこと。俺もそう思う。
幾らなんでもポークビッツ切断は…と思ったが、泣きながら鴨志田はわざわざ全校生徒の前で自分のポークビッツを自分で切断したことまで暴露した。
女生徒は嘲笑と軽蔑を向けた。男子からは鴨志田を詰る声は終ぞ出なかった。
男子生徒は一様に「痛たたたたたた…」と股間を押さえていた。
もう何て言うか、何十年もの実刑判決以上の罰を食らったんじゃないかなぁというのが男子達の見解だろう。
竜司は晴れて陸上部に復帰するかと思いきや、しなかった。
竜司『暴力事件を起こしたのは事実だし、あいつ等の夏を奪ったのも事実だ。今更どの面下げて戻れるんだよ』
変なところで律儀な奴だ。これが所謂「漢気」というものだろうか。カッコいい。こんな男前な奴と友達になれて本当に良かった。
友達。
男友達。
アドレスのさ行に男友達の名前が初めて載った。授業の度にアドレス帳を開いてしまう。
そんな男前な友人に恥じぬ男でありたいと思った俺に出来ることは何かを考えた。
ふと、そこで思い出すのはあのあだ名だ。
『ビッチーズ』
一度流れた噂は中々消えない。
相変わらず杏、志帆への心無い噂は続いている。
謝って来た女生徒達もいたらしいけど、杏と志帆と話をしていると、遠巻きにこちらを見てくる女子達の視線はやはり冷たい。
杏『どうしたの?そんな悲しそうな顔して。え、私達が女子と全然仲直り出来てないのが悲しい?ふふふ、暁は優しいんだね』
志帆『気にしなくて良いんだよ。ただのやっかみだから』
杏も志帆も強い子だ。辛くないはずなんて無いのに、全然をそれを表に出さない。寧ろ堂々としているくらいだ。
優しいんだね、なんて俺に気を遣わせまいとする杏の方が優しい。
やっかみというのは、きっと噂にも負けずに堂々としてる凛とした志帆への妬みなんだろう。
人は自分に無いもの、欲しくても手に入らないものを持った人間に対して、どうしようもなく嫉妬する生き物だ。
俺だってそうだ。お調子者でクラスの人気者だった出川君。
女装喫茶の時にクラスどころか学校中の笑いを誘った彼に俺は転がり悶えたい程嫉妬した。
『ちょ、お前マジねーよwwwモンスターかよwww』とか言われながら他のクラスどころか、上の学年の仲の良い男友達までが出川君とじゃれ合っている光景の眩しいこと。
俺だって女装したのに!!
カツラを被って、メイクまでして、バッチリ笑いを誘う気満々だったのに!!
俺がクラスに入った瞬間にしんと静まり返ったあの静寂。
心優しい女子だけが『綺麗…凄く、綺麗だよ…』『お姉様って呼んでも良いですか?』とお世辞に褒めてくれたけど。
いらない!
そんなお世辞いらない!
俺は笑いが欲しかったんだ!
うぇいうぇい言いたかったんだ!
そんな、嫉妬と劣等感に塗れた俺にとって、杏と志帆は本当に眩しくて素敵な子達だ。
日本人には無い美しさを鼻にかけず無邪気で気さくな杏。
鴨志田のアレを切り落とすちょっぴりお転婆だけれども、噂なんて気にせずに話かけてくれた心優しい志帆。
この綺麗で、可愛くて、真っ直で強い、素敵な女の子達の為に何かやれることがあるんじゃないだろうか。
竜司に恥じぬ漢気溢れる漢と言えるんじゃないだろうか。
そこで、俺は竜司と杏とそして志帆の噂を消す為に奔走した。
噂とは何か。それは曖昧な情報に憶測が加味されたものだ。
つまり、まず元となっている情報を支配すること。
しかし、真実を流すだけではダメだ。
噂が噂となるのは「そっちの方が面白い」と心のどこかで思われているからだ。
だから、より面白い噂を上乗せするのが良い。
より、無責任で、面白くて、出来るだけ人を傷つけず、そして新鮮なネタを。
さっそく新聞部の女の子に俺は接触を試みた。
最初は戸惑っていたけれど、何度も何度も、根気強く根気強く接触を試みた。
新聞部の少女『ど、どうしてそんなに私に近づくんですか…私みたいな冴えない子に』
暁『冴えないかどうかなんて関係ない!!』
新聞部の少女『え…』
暁『(新聞部である)君じゃなきゃダメなんだ!!頼む、力を貸してくれないか』
新聞部の少女『来栖君…』
ようやく話を聞いてもらえるようになったので、今度はご飯に誘う。
買収みたいで気が引けるけれども、タダで頼もうと思う程俺は彼女と親しくも無いし、図々しくもない。
暁『ねぇ、今日時間あるかな。大事な話があるんだ。出来れば二人きりで話がしたい』
新聞部の少女『二人きり!?』
それに、此処から話すことは、紛れも無い情報操作だ。出来るだけ誰にも聞かれないようにしなければ。
多少強引でも、何とか場を設けないといけない。
暁『頼む、君の時間を少しだけ俺にくれ』ギュッ
新聞部の少女『ほぇ!?』
暁『話を聞いてから君の(協力するかどうかの)答えを聞かせて欲しい』
新聞部の少女『は、はひ…』プシューッ
やっふぅぅぅぅーーーー!!!
やってやったぜ、竜司!!
あと少しの辛抱だ、杏!!
待っててくれよ、志帆!!
心の中でタップダンス踏んじゃう。
フハハハハハハ!!哀れな少女よ、今から俺の役に立ってもらうぞ。
内心のテンションを隠しながら、俺は彼女とレストランに行く。そして、本題を切り出した。
そして、杏と志帆はお互いを庇う為に、鴨志田のセクハラに耐えていたけれども、決して身体を許してはいないということ。
何故なら二人には好きな男がいて、一途にその男子を想っているとても一途な女子であるのだから。
そこで肝になるのが、なぜ事に及ばなかったのかという点。
此処で重要になってくるのが『人斬り抜刀斉』だ。
女癖が悪くて、何股も掛け、ハメ撮り、寝取り、乱交プレイから女衒まで何でもござれのクズ野郎。
そんな噂を持って転校してきた『来栖暁』の出番だ。
そう、新鮮なネタといえば、転校して来たばかりの俺のことだろう。
鴨志田は昔、俺に女を目の前で寝取られた挙句ポークビッツを寝取った女と一緒に笑いものにされた。
その時のコンプレックスで若い女への復讐心に憑りつかれ、力で屈服させようとした。
けれども、いざという時になるとトラウマが蘇り使い物にならなくなる。
だから、触ることはしても、それ以上の行為に進むことが出来なかった。
そして、十代の若い女ではない竜司のお母さんを見て、鬱屈していた性欲が一気に爆発した。
竜司はお母さんの悲鳴を聞いて、我を忘れて殴りかかった。
女手一つで育ててくれた大切な母親が、屈強な体育教師にいきり立ったモノを押し付けられているのを目にして、怒りを覚えなきゃ息子じゃない。
新聞部の少女『何で…それじゃあ、全部来栖君が悪いことになっちゃうよ?』
そうなるね。もう『それも、私だ。全部私だ』って感じに。
新聞部の少女『そんな事して、坂本君や高巻さん達にも嫌われるかもしれないよ?』
暁『良いよ』
ウッソでぇぇぇぇーーーす!!!
良くないけどね!!
全然良くないけどね!!
うわぁぁぁぁーーーん!!
ぼっちに逆戻りは嫌だよぉぉぉぉぉーーーー!!
もっと放課後遊びに行きたいよぉぉぉぉぉーーーー!!
まだキャンプにも行ってないんだよぉぉぉぉぉーーーー!!
ハロウィンパーティーもしてないし、みんなで学園祭も回ってないし、クリスマスパーティーでプレゼント交換とかもしてないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!!
初詣にも行ってないし、みんなでスマブラもやってないし、マリカーだってやってない。CPU対戦の日々はもうウンザリなんだよぉぉぉぉぉぉ……
でも、せっかく出来た友達だから、だから、我慢する。
暁『竜司にも、杏にも、それに志帆にも笑っていてほしいんだ。俺は、もう十分たくさんのものを貰ったから』フッ
短い間だったけど、俺は満ち足りた時間を過ごせた。
皆でお弁当を囲んで、他愛も無い話で笑い合うことも出来た。
放課後にみんなで遊びに行ったりもした。
竜司は家に泊りに来たこともあった。
ずっとやりたかったことを、この半月でやれた。
みっちゃんが引っ越してから、ぼっちだった俺の数年間よりもずっと満ち足りた時間を過ごせた。
だから、もう良い。
いや、嫌だけどね。本当はすごく嫌だけどね。
これから、ずっと家帰ってモルガナのお腹に顔埋めて、モフモフしながら泣き続ける日々を送るんだろうけど!!
でもね、我慢。
友達の為に何か出来るなんて、初めてなんだから、我慢だ俺。
モルガナ『アキラ…』ニャウン
鞄の中に潜んでいたモルガナが悲しそうな声を上げる。
そっと、艶やかな毛並みを撫でてやる。
ごめんなモナ。
折角できた仲間だったのに。
俺一人じゃ心許ないかもしれないけど、人間になる方法探しは手伝うから。
もう、寧ろぼっち生活に戻ったら時間はたっぷり出来るから調べものとか色々捗るかもね~~~!!
なんてな、あははははははははは!!!……ははははは…はは…は…ハァ……
ダメだ、竜司とか杏に嫌われるとこ想像したら泣きそうになってきた。
新聞部の子は何も言わなくなった。
きっと面倒臭いことを引き受けたなと、後悔してるんだろう。
だけど、彼女には何としても協力をしてほしい。無理を承知で頼み込む。
暁『ゴメン、こんなこといきなり頼んで。でも、俺には君しか頼れる人(知ってる新聞部員)がいないから…』フッ
新聞部の少女『止めてよ…ズルい…そんな風に笑うなんて』キュンッ
その後、やけに静かになってしまった彼女の機嫌を取るべく、長い時間を一緒に過ごした。
そんな努力の結果なのか、一週間もしない内に『ビッチーズ』も、そして竜司の『マザゴン』のあだ名も消えていた。
ただ、覚悟していた俺への悪評は広がらなかった。
新聞部の少女『新宿にね、とてつもない巨漢のオカマがいるって噂があるの。カモシダは昔そこのオカマに掘られて、酷いトラウマを負ったの。
だから、そのトラウマを吹っ切ろうとして女の子に手を出そうとしてた…それが事実だから』
呼び出した新聞部の子はそう言って悪戯っ子のように笑った。ヘタクソなウインク付きで。
嬉しさの余り、俺は力一杯彼女を抱きしめて、何度も何度も「ありがとう」を繰り返した。
新聞部の少女『や、あ、み、耳元は、ダメ、ダメだから来栖君…』クラクラ
年頃の女の子に不躾に抱き付いてしまった無礼に気づいたのは数分後だった。
それを見ていたらしい、杏と志帆に屋上に呼び出された。
三十分お説教を食らった後、事の顛末を正直に話したら更に三十分お説教を食らった。
その後、竜司に「お前は最っ高のダチ公だぜ!!」と言って拳を合わせてきた。
嬉しくて涙が出た。
* * *
ちなみに、新聞部の女の子とアドレスを交換した。
えへへへへ、女子だけど、友達がまた増えた。
たまに新聞部の部室でお茶を飲ませてくれる気さくな友達であり、そして色々学校生活の噂を教えてくれたり、ちょっとした頼れる情報屋でもある。
* * *
杏「ねぇ、あの子…何か暁と近くない?」
志帆「ちゃっかり暁君の信頼を得ちゃってるね」
杏「暁ったら…私達は別に気にしてなんて無いのにね」
志帆「暁君の噂気にして話しかけなかったクセに、仲良くしてると嫉妬してくるゲロ虫なんてどうでもいいのにね」フフッ
杏「し、志帆…?」
志帆「ん?どうしたの杏?」
以上で投下を終えます。次回があれば、そろそろあの狐の登場ですね。それでは。
余談ですが、怪盗モードの志帆はフィレモン(ペルソナ2罪仕様)ぽいマスクしてます。
格好はパンサーの色違いにポンチョ着てる感じをイメージしてます。
今から投下します。
今日は皆でビュッフェ。
友達とビュッフェ。
竜司とモルガナと杏と志帆。
友達とビュッフェだなんて、そんな幸福いいのだろうか。
ビュッフェかぁ…去年だったかな、クラスの男子に誘ってもらえてウキウキしながら言われたホテルに行ったら何故かホテルの一室に案内されて、誘ってくれた男子が誰もいなくて、てか女子しかいなくて、それから…いや、止めておこう、終わったことだ…
杏「ん~~ケーキ美味しい!!」
竜司「肉、肉、肉!くぅ~~たまんねぇ~!暁、お前何食べてるんだ…ってオムレツとパスタって女子かよ!!もっと肉食えよ肉!!」
俺のたらこスパゲッティが…ローストビーフスパゲッティに…
ところで、パスタよりスパゲッティの方が食欲をそそる響きだから、俺は頑なにスパゲッティを使おうと思ってるんだけど、どうだろう。
志帆「そういう子供っぽい拘りって可愛いから良いと思うよ」
竜司「……ちなみに、俺が語ったらどう思う?」
杏「うるせぇラーメンでも食ってろってなるわね」
竜司「ひでぇ!?」
ラーメンも美味しいよな。
竜司「お、いけるクチか?だったら今度お薦めの店連れてってやるよ」
男友達とラーメン屋…夢にまで見た男友達とのラーメン屋…でも、俺猫舌だからできればつけ麺が良いな。
モルガナ「アキラ、アキラ、ワガハイ寿司食べたい」コソコソ
いいよ、マグロでいい?あーん。
モルガナ「うみゃ~い!!」
あはは、可愛いなモルガナは。
志帆「暁君、私もあ~ん」
杏「ちょ、志帆!?」
志帆「えへへへ、なんてね」
志帆、ホラ、口開けて。あ~ん。
志帆「えっ!?あの、冗だ…」
あ~ん
志帆「あ、あ~ん…」
美味しい?
志帆「とってもスイートです…」ウットリ
これエビチリなんだけど。
志帆「暁君が食べさせてくれるものなら何でも甘く感じちゃうかも」
俺変化系の念能力者だったかなぁ。
杏「うう~ずるい~~!!」
杏も、あ~ん。
杏「!さっすが暁♪あ~~ん♪…んん~~んふふふ、美味しい!!」
あ、口元クリーム付いてるよ。そっちじゃなくて、そこでもなくて。
まったく、仕方がないな。拭いてあげるよ。
杏「あ、ありがとう」
志帆「…」チッ
杏「志帆?」
志帆「どうしたの杏?」ニッコリ
このお兄さんと呼んでくれて構わんよ。
竜司「お前スゲェな…」モグモグ
竜司もあ~ん。友達を贔屓するのは良くないもんな。
竜司「俺もかよ!!」
友達同士はあ~んてやるんだって、ニコちゃんが言ってた。
竜司「ニコって…あの新聞部の子か?」
志帆「ちょっとまって、あの子にももしかして…」
うん。新聞部の部室でお昼一緒に食べてる時に。おかずのとりかえっこは友達の初級で、次のステップは食べさせっこするって言ってた。
気兼ねない友達同士の、近い距離感。狭まるパーソナルスペース。それが真の友達、真友だって。
***
ニコ『暁くんも見たことあるよね、クラスで女の子同士が食べさせ合いしてるって。あれが女子だけだと思った?チッチッチ、甘いぞ暁くん。私の掴んだ情報によると、男子もホントはそうしてるんだってさ』※嘘です。
暁『新聞部のニコちゃんの情報なら信頼できるんだろうけど…でも、俺見たことないな男子がそれやってるの。女の子だけじゃないの?』
ニコ『それはそうだよ。だってそれくらい親しい友達同士は邪魔が入らない場所で仲間同士でお昼食べてるんだから。本当に心を許した友達との心安らぐ空間でね』※大嘘です。
暁『本当に心を許した友達との…心安らぐ空間…』ウットリ
ニコ『そういう意味だと、こうして部室で二人でお弁当広げてる私達はもう親友かもね』
暁『ホントに!?』
ニコ『ホント、ホント。寧ろ真の友と書いて真友だよ』
暁『真友…ズッ友とどっちが凄いの?』
ニコ『ズッ友が唐沢だとしたら、真友は沢村かな』※本当です。
暁『スゲェ!!』
ニコ『じゃあ、暁くん、あ~ん』
***
っていうことがあってさ。ニコちゃんは頼れる情報屋だよ。お抱えの情報屋って何かハードボイルド的でカッコいいな。
竜司「怪盗らしいよな!!」
そうそう。公園のベンチで背中合わせに座って情報交換とか、バーのカウンターで裏情報聞くとかな。
志帆「……」ガリガリ
杏「志帆、爪、爪めっちゃ噛んでる」
竜司「でも部室で二人きりで昼食べてるって、お前等付き合ってるみてぇだな」ハハッ
志帆「は?」
杏「あ?」
竜司「いえ、失言っした…」
マグロ美味しいな、モルガナ。
モルガナ「サーモンもうめぇぞアキラ。食べてみ」
ほんとだ。ビュッフェって味は二の次なイメージあったけど、都会って凄い。
??「おや、来栖君じゃないか?」
ん?この声は…
獅童「こんなところで会うとは奇遇だな」
あ、おじさん、じゃなくて獅童さん。
獅童「元気にしているようだね。そちらはお友達かな」
わかります?わかります?まいったな。一目で友達ってわかっちゃうとか、まいったなぁ。いや~友達感がそんなに滲み出てたなんて、真友感が滲み出ちゃってただなんて、まいったな~
竜司「暁、知り合いか?」
ああ、地元でお世話になった獅童正義さん。
竜司「へぇ~」
志帆「っていうか、坂本君知らないの?獅童正義議員って確か時期総理候補だよ?」
竜司「う…うちは新聞取って無くてだな」
杏「ネットニュースがあるじゃん」
獅童「……うむ、男の友人もいるところを見ると、彼女達は大丈夫なのかな」
志帆「どういう意味ですか?」
獅童「いや、こちらの話だ」
杏「獅童議員がこんなところにいるなんてちょっと意外かも」
確かに、獅童さんならもっと高級レストランなイメージがある。そういうと、獅童さんは苦笑する。
獅童「家族サービスだよ。君達くらいの食べ盛りの子がいると高級レストランに行っていたら財布がもたないよ」ハハハッ
志帆「てっきり、獅童議員も甘いモノがお好きなんだと思ってました」
獅童「私はどうにも甘いモノは胸焼けがしてね。本当はもっと落ち着いたところで和食でも食べたいところなのだが…」
竜司「渋いっすね」
うん、何かダンディーだな。和食で静かに舌鼓を打つ姿が似合いそう。
竜司「だな」
獅童「そんな風におだてんでくれたまえ」ハッハッハッ
獅童さん、前に会った時より何か身体がビルドアップしてません?
獅童「流石に君は鋭いな。“あの時”己の身体が随分と鈍っていることを痛感してね。今は週5でジム通いだよ」
あの時…そうか、すっかり昔のことのように思える。
あの時、あの夜、獅童さんと一緒にいた女の人が俺を襲おうとした時、獅童さんは庇ってくれたっけ。
でも、酔っていたとはいえ、あの時獅童さんは一発のボディで沈んでしまった。
確かに女の人のボディは腰の入った良いやつだったけども、それでも一発で沈んだのは男として獅童さんの矜持を強く傷つけたであろうことは想像に難くない。
しかし、都議のハードなスケジュールでよく時間を捻出できるもんだ。
獅童「私のことなどどうでも良いさ。来栖君も学校生活を楽しんでいるようだね」
はい、こうして友達も出来ました。
それに、男友達が出来たんですよ!!
獅童「そうか、そうか、よかったな」ホッコリ
??「遅いと思ったらここにいたの父さん」
あれ?この人確か…
??「やぁ、こんにちは来栖君」
ウチの常連さん。確か…
明智「明智吾郎だよ。来栖暁君」
こんにちは、明智さん。そういえば父さんって。
獅童「紹介しよう。息子の吾郎だ」
明智「明智吾郎です。来栖君とは何度かお店で会ってるけどね」
杏「あ、前に暁が言ってた高校生探偵の常連さん」
竜司「高校生探偵ってマジかよ!!」
志帆「でも明智って…」
獅童「色々事情があってな。いずれ公式に発表するつもりなんだが…」
明智「そうだ、父さん、あっちに父さんの好きなチョコフォンデュあったよ」
獅童「ちょっと吾郎、父さんのイメージがあるからね。ちょっと、空気読もうね」
明智「あと、母さんが遅いって怒ってたよ」
獅童「戻ろう。すぐ戻ろう。それじゃあ……来栖君、また何かあったらいつでも言ってくれ。それと、君…坂本君だったかな」
竜司「え?あ、はい、そうっす」
獅童「来栖君のこと、くれぐれも頼むよ?」
竜司「は?」
獅童「特に一人の時に、無闇に女性について行かないように君からも注意してやってくれ」
竜司(お父さん?)
杏(お父さんなの…)
志帆(お父さんだ)
***
暁「…っていうことがあってさ。一緒に来ればよかったのに」パリパリ
??「私はいい。こうして暁といる方がいい」パリパリ
パソコンのモニターを眺めながら、俺達はチップスターを摘まんでいた。
うん、チップスターはやはりうすしおだ。
レッドイーグルが必殺のイーグルスラッシュを決めたところだ。
フェザーマンには単独で敵にトドメを刺すことが珍しくない。
全員参加の合体技によるトドメというのが戦隊モノの定石だが、フェザーマンはその定石をところどころ外してくる。
五人が揃わないまま話が終わったり、レッド不在のまま数話進むこともある。
全員変身しない回があったり、スゴイ時には敵の内ゲバだけでフェザーマンが殆ど登場しない回もある。
それに合体技にも色々なバリエーションがある。
その意欲的な姿勢が他の作品と一線を画し、こうしてシリーズ化される要因となっている。
ちなみに、今のイーグルスラッシュは初代フェザーマンのレッドイーグルの13話までの限定技だ。
この時のスーツアクターは業界において生けるレジェンドとされていた人なのだが、この13話撮影後、交通事故で引退をしてしまったのだ。
14話からは別のスーツアクターになったのだけれど、イーグルスラッシュのアクションを再現することが出来なかった。
苦肉の策として、14話ではイーグルスラッシュが敵に破られ、新必殺技「イーグルエンド」を編み出すことになるのだが…
??「説得力がな~イマイチ無いよな。明らかにアクションが簡略化されてるのに特訓の成果って言われてもネー」ボフッ
下から呆れたように声が聞こえる。
暁「当時は全然気にしてなかったな。ちょっとアクションに違和感はあったけど…調べてからビックリしたけどさ」
??「そういう大人の事情と擦り合せた裏側を知るのも特撮の面白さだよな」
暁「わかる。フィクションだってわかってからの楽しみ方ってあるよな」
フェザーマンシリーズは随分と長いけれど、俺は結構初代フェザーマンが好きだったりする。
今の映像技術からすればチープな特撮が妙におかしいと言うか、シリアスなギャグになっていて笑える部分がある。
その一方で、今のように全てをCG処理で済ませられない代わりに編み出された、今となっては使われない独特の技術に唸ることもある。
ZOは今でも十分鑑賞に耐え得る作品だと個人的には思う。
??「ドラスのデザインとか素晴らしいな、わかってるじゃないか!」ノシッ
“彼女”は胡坐の上で身じろぎすると、俺の身体を背もたれにしたまま、重心をより後ろに傾けてくる。
暁「座り心地悪いだろ?折角クッションあるんだからそっちに座れば」
男の胡坐の上なんて座り心地が悪いに決まっている。
俺は腕の中にすっぽり収まっている子供体温が心地よいけど。
??「いい。ここがいいの。あ……もしかして、暁はイヤ……だった?」
暁「俺は別に構わないよ。双葉の好きにすれば」ナデナデ
双葉「えへへへ…もっと撫でれ」ムフーッ
暁「……」ナデナデ
双葉「うひひひ」ムフーッ!!
***
随分懐かれたな。こうして膝の上に乗って甘えてくれるようになるなんて。
竜司とか杏とか志帆のような、或いはニコちゃんのような友達とは違う少し特別な距離感。
でも、心地よい。
きっと、妹がいたらこんな感じなんだろう。
一人っ子だったから、ずっと妹か弟が欲しかったんだよね。一緒にゲームしたり、フェザーマン見たりするような。
昔は親戚で集まってスマブラとかやっていたんだ。お正月とお盆の時だけ、俺のカービーはCPUではなく人を相手にする。
それが嬉しくて嬉しくて、年の近い従妹達と会える日を指折り数えて待っていた。
でも、やっぱり思春期というか、女の子の成長は男よりもずっと早かった。
従妹(年上)『ねぇ、暁。スマブラよりもっといいことに興味ない。二人で。ある意味大乱闘だから』ネットリ
二人だと乱闘とは言わないと思う。乱闘というのは集団同士の諍いじゃなかっただろうか。
従妹(年下)『お兄ちゃん、知ってる?お兄ちゃんが18歳になる年、私は16歳になるんだよ?この意味わかる?』ジットリ
そりゃ2歳差だから、俺が18歳の時は16歳になるよ。失礼だな、従妹の年齢くらいきちんと把握しているに決まってるだろ。
女の子達は段々良くわからないことを言うようになった。
その後、何かあったのだろうか、ウチの親と親戚は疎遠になって行った。
俺のカービーは心の無いCPUとばかり戦うようになった。
従妹と会いたいと言っても母さんは決して許してくれなかった。
ある時、あれは二、三年くらい前だろうか、友達も出来ず、従妹とも遊べず、俺は弟か妹が欲しいと言った。
母さん『弟でなく息子なら用意できるわ。貴方がお父さんになるのよ!!』
母さんは突然服を脱ぎ始めたが、ちょうど仕事から帰って来た父さんに羽交い絞めにされた。
必死に母さんを宥めた後、父さんは「二度と今の言葉は口にするな」と強く言った。
きっと俺が子供染みた我侭を言った事に母さんが怒ったのだろう。
親戚と疎遠になったのは深い事情があったのだろうし、友達がいないのは俺の努力不足だ。
それを棚に上げて、寂しさを埋める為に家族を増やして欲しいだなんて、確かに俺は我侭な子供だった。
それでも、心の底には弟か妹が欲しいという思いが燻り続けていた。
従妹達とスマブラをやっていた日々は宝物のように俺の心の中で輝いている。
だから、この子が、双葉が俺のことを兄のように懐いてくれるようになって、嬉しくてつい甘やかしてしまう。
双葉「…あ、暁、明日も一緒に、遊んでくれるか?」
暁「明日は友達と浅草行くんだよ」
双葉「ビュッフェ行ってきた奴らとか…?」
暁「違う友達だよ」
違う友達。
ああ、色々な友達と遊びに行く俺…
友達との予定を聞かれる俺…
嘘みたいだ。
双葉「…それって…女?」
暁「うん、そうだよ。ニコって言ってね。凄く良い子なんだよ。双葉も来る?」
双葉「いい…行かない…でも、早く帰ってきて、一緒に、遊んでくれ」ムスッ
これ知ってる!嫉妬だ。
お兄ちゃんに構ってもらえない妹がヤキモチ焼いてるていう、あれだ。
竜司に借りたマンガにあった。「最近お兄ちゃん、構ってくれない!ぷんぷん!!」って言ってたあれだ。
ふふふ、まったく双葉は仕方がない甘えん坊だ。お兄ちゃんにベッタリなんだから。
暁「双葉は、本当可愛いな」ナデナデ
双葉「ふぁ!?と、突然撫でるな!!」
暁「双葉とこうして(遊んで)るの好きだな…俺」ナデナデ
双葉「わ、わわわわ、わたしも、こうしてるの好きだぞ」テレテレ
暁「……じゃ、じゃあ、俺のことお兄ちゃんって呼んで…」
双葉「だが断る!!」キリッ
(´・ω・`)ショボーン
***
ちっくしょう、あのガキ何が「申し訳ないが、貴女には特に何の美も感じない。美し無くない者を描きたくはないんだ」だよ。
こっちだって取材の為に潜り込むのが目的だっつーの。
大体十六、七のガキに私の魅力がわかってたまるかってんだよったくチキショウが。
??「ちょっとお姉ちゃん、昼間っからビールとか止めてよ」
おっかえり~。そっちこそお洒落してどっか出かけてたの?あ、もしかしてデート?
??「ち、違うし。友達と遊びに行ってきただけだから」カァッ
お~お~赤くなってら。私みたいな新聞記者になるって色気も何も無かったこの子がまぁ…
でもこの感じからすると、この子の方は少なくともマジだよね。
そのお友達の写メ無いの?ちょっとお姉ちゃんに写メ見せてみ。
??「えぇ~お姉ちゃん飢えてるからな…」
ガキには興味無いって。今日会ったガキも綺麗な顔してたけど、全然来なかったし。
??「ほら…」
ほっほ~う、GWを利用して浅草ですか。いいですなぁ~……ってか、イケメンじゃん。
ちょっと、何この子。何ていうか、エロくない?上手そうな鎖骨してんなぁオイ…
??「お姉ちゃん?」
嘘です、嘘ですから!!怖いから!!
??「本当?もし暁君に手を出したらララさんにアリバイ工作手伝ってもらって、お酒に睡眠薬仕込んでその隙にコンクリート抱かせて海に沈めるからね」
怖いよ!!具体的な姉の殺害計画が具体的すぎんだろ!!
でもやるじゃん、二子。こんなイケメンと仲良くなるなんて。
それに性格もよさそうだし。ホント、今日あったガキとはエライ違いだわ。
??「そんなに酷い人だったの?」
この美人記者、大宅一子に向かって、『美を感じない』とか抜かしやがったんだよ。
何て言ったっけかな、確か…そうそう、喜多川祐介。斑目んとこの弟子の。
??「斑目って…お姉ちゃんが追っかけてる画家の斑目?」
そう、盗作疑惑のある画家の斑目一流斉ね。
??「へぇ~…」
以上で投下を終わります。因みに解禁済コープ一覧は下記の通りです。
・戦 車:坂本竜司…暁の親友その①。マブダチ。マブダチ。母親想いの少年。足のケガとかそういうのは無い。
・恋 愛:高巻 杏…暁の親友その②(暁視点)。比較的常識人だが、親友のブチ斬りを揉み消す程度には割り切り早い。
・月 :鈴井志帆…暁の親友その③(暁視点)。カモシダを終わらせた子。貞操は死守。暁のシャツはまだ返してない。
・悪 魔:大宅二子…暁の親友その④にして、暁の情報屋。新聞部。磨けば光る子。新聞部の部室で二人で昼食を食べる仲。
・魔術師:モルガナ…暁の相棒。杏が大好き。暁にもっと男友達が増えればいいと思ってる。
投下します。
店を閉めている間は、キッチンを自由に使っても良い。
自炊出来ると伝えた時の惣治郎さんは当初半信半疑だった。
料理男子なんて言葉が浸透したとはいえ、それは一人暮らしをしている大学生以上の男のイメージだろう。
親元にいる男子高校生の一般的な家事能力はたかが知れている。
だけど、俺が用意した鰈の煮付けを食べると惣治郎さんは黙ってキッチンを使う許可をくれた。
惣治郎「鰈の煮付けを上手く作れる男子高校生って…」
何か言いたげな惣治郎さんの視線が居心地悪い。
だって、友達いないからね、いませんでしたからね!!(過去形、ここ重要!!)
プライベートな時間の使い方なんて勉強とか筋トレとか本読んだり、映画見たり、あとは料理したりね、そういうことしか使い道が無いんですよ。
でもね、料理作れるようになったら、ホームパーティー開いた時に便利だからね。
専ら両親にしか披露される機会が無かった料理だけれども、こっちに来てから日の目を浴びている。
弁当のおかずの交換とかね。竜司の弁当の卵焼きと俺の作った卵焼きの交換は定番になってる。
俺の出汁巻き卵焼きと竜司のお母さんの甘い卵焼きを交換する。
竜司のお母さんは料理上手で、俺は時々料理を教わっている。
ちなみに、常連の一人となった川上先生も、来るたびに俺の料理を所望する。
とてもじゃないけど、お客様にお出し出来るものじゃないのだけれども、と何度も恐縮する俺に先生は笑顔で言ってくれる。
川上「バイトとは言え、仮にも飲食店で働く生徒の実態を知っておきたいの。それに、教え子の手料理が食べられる機会なんて中々無いんだから」
そう言ってウインクする。川上先生はお茶目で生徒想いの先生だ。竜司が惚れるのもわかる。(※誤解です)
川上「これは…濃すぎず、けれどもしっかりした味わい…毎日食べても飽きが来ない味付けね…来栖君、卒業後は先生のお婿さんになる?」
そんな冗談まで言ってくれるものだから、俺も気分が良い。
暁「じゃあこんどからお店に来たら『おかえりなさい』って言ってあげましょうか?」
川上「是非!!」
軽口が叩き合える姉弟のようなこの距離感、生徒人気が密かにあると俺は見ている。
それに、この前は志帆にもご馳走した。
この前、みんなで遊びに行く約束をしていたのだけど、朝起きると何故かベッドの傍に志帆がいた。
朝ごはんがまだだったらしいので、志帆の分も作ってあげたら凄く喜んでた。
ちなみに、何でいるのかって聞いたら、待ち合わせ時間を間違えちゃったそうで。
まったく、志帆はしっかりしているようでドジッ子だ。
朝の10時に四茶の駅で集合だったのに、6時にルブランに来ちゃうなんて志帆はうっかりさんだ。
でも、さっさと起こしてくれればいいのに、一時間も待っているなんて、志帆はちょっと人に気を遣い過ぎだと思う。
* * *
あの日、ルブランがお休みだと聞かされていた俺は前日から仕込んでおいた煮物に火を入れた。
筑前煮と金目鯛の煮付け。
味が染み染みでとても良い出来だ。自分の食事用ではない。
モルガナ「美味そうだな~アキラ、ワガハイのは?」
暁「モナのは薄味にしてご飯とまぶしたの用意してるよ。ちょっと冷めるまで置いてあるから待っててな」
モルガナ「わーい!」スリスリ
暁「くすぐったいって」ハハッ
頬ずりしてくるキメの細かい毛並みの感触がくすぐったい。
相変わらず俺の相棒は可愛いな。
温めたそれをタッパーに詰めると向かう先は惣治郎さんの家だ。
店の手伝いをするようになって距離が随分縮んだけれども、未だにキャンプには至らない。
だからこそ手料理を差し入れるのだ。家事のひと手間を減らしてやることで気遣いが出来るアピール!!
地道なようだけど、こうした一歩を重ねることが輝ける未来に繋がると俺は信じている。
惣治郎さんの家に行くと、インターホンをいくら鳴らしても反応がなかった。
ドアに手を掛けると鍵はかかっておらず、あっさりと開くことが出来た。
もしかして、身体の具合が悪いんじゃ…そう思うとドアをすぐさま開けた。
暁「惣治郎さん!!惣治郎さんいますか!!」
思い切って呼びかけると、奥から何か物音がした。
惣治郎さん?いやもしかしたら泥棒?
胸騒ぎに物音の方へと走ると、何か大きな物音がした。何かを落としたような、いや、転んだような。
暁「誰だ!!」
??「あわわわわ…」
それが、佐倉双葉との出会いだった。
* * *
双葉「お、お前は…」
暁「惣治郎さんのところでお世話になってる、来栖暁って言います。君は?娘さん」
双葉「……佐倉双葉。む、むす、娘なのか」
慌てて転んだ双葉の手を取ると、立たせてやる。
双葉「あ…て、手っ」
暁「あ、ゴメン!!」
双葉「う、ううん、わ、わた、わたしこそ、スマン…」
人見知りする子なのか、おどおどしながら目を逸らす双葉に俺は強い親近感を覚えた。
初対面の人間がいつまでも居座ってるのは彼女も居心地が悪いだろうから、タッパーを差し出す。
双葉「こ、これって…」
暁「これ、良かったら惣治郎さんと食べて」
双葉「え?いいのか?」
暁「ちょっと双葉ちゃんには物足りないかもしれないけどね。無理して食べなくてもいいから」
惣治郎さんを想定して作ったから、肉とかそういうのじゃない。これくらいの年の子には物足りないかもしれない。
俺とタッパーを見比べていた双葉はおそるおそるって感じに受け取る。何だか猫に餌付けしてるような気持ちだ。
次の日、惣治郎さんは不機嫌そうな顔をしていた。
惣治郎「お前…双葉に会ったんだってな」
可愛い娘に自分の居ぬ間に手を出す不埒者と思われたのだろうかと、一瞬焦ったが、空のタッパーを渡された。
惣治郎「双葉の奴からの伝言だ。『美味かった。次は豚の角煮を所望する』だってよ」
どうやら彼女の口に合ったようだ。
それから、惣治郎さんは話してくれた。双葉のことを。
惣治郎「アイツはな…元々は此処の人間じゃねぇ。ある出来事があってから地元にいられなくなってな。親戚はアイツを引き取るのを拒否した。
俺はアイツの母親の友人だったからよ、引き取ったんだが…色々あって学校にはいってねぇ。引きこもりってやつだ。
だが、アイツの境遇を思うと無理も無いって思っちまってな、つい甘やかしてんだが…まぁ、何だ、そういった事情でお前を家に上げることは出来なかったんだ。悪かったな」
謝られるような謂れは全く無かった。可愛い大事な娘が家に居るのに、よく知りもしない男子高校生を同じ屋根の下に住まわせる方が大問題だ。
寧ろ俺は感動していた。友人の娘を放っておけないからと引き取る惣治郎さんの懐の深さに。
そんな人と関わりになれたことに。
惣治郎「バ~カ、ガキが変なお世辞言ってんじゃねぇ。だが…ありがとうよ」
クシャクシャと頭を撫でられた。
何だか今の凄い親子っぽい!!もしくは年の離れた兄弟的な!!
不器用な男のスキンシップって感じだ!!うひゃぁぁぁぁぁ嬉しいよぉぉぉぉぉ!!
男の人に髪触られたの久しぶりだ!!小学生の頃父さんに頭撫でられて以来だ!!
今の俺に尻尾が付いてたらきっとブンブン振ってたと思う。犬みたいに。
それから、俺は時間を見つけては料理を作って佐倉家に持って行くようになった。
惣治郎さんがいる時は惣治郎さんに手渡すのだけれど、いない時は双葉が受け取りに出てくる。
双葉「あ、あき、あきらも、あああああがれ」
四回目の時だろうか、双葉が家に上げてくれた。
タッパーを受け取りながら必死に目を逸らしたまま言葉を搾り出す姿に庇護欲が刺激される。
心を開いてくれているのがわかって嬉しかったけど、これだけは言っておかないといけないと思った。
暁「双葉ちゃん、ダメだよ。双葉ちゃんにはまだわからないかもしれないけど、よく知らない人、それも男の人を簡単に家に上げちゃ」
双葉「……でいい」
暁「え?」
双葉「双葉でいい。それに、あ、あきらは別に、知ら、知らない人じゃない、から」
そこまで言うと、恥ずかしいのか双葉はモルガナをもみくしゃに撫で始めた。
な、何この子ーーー!!!!
ちょ、ちょ、超可愛いんですけどぉぉぉーーー!!!
庇護欲ドッバドバだぜ!!
それから、双葉の部屋に上がるとフェザーマンのポスターが貼ってあるのを見つけた。
フェザーマンじゃないっすか!!
双葉「暁も見てるのか!?」
暁「観てるも何も劇場版は映画館に足を運んでますが何か」
双葉「マジか!!」
フェザーマンって良いよね。ホント、何が良いってさ、仲間達と協力して戦うっていうところが最高だよ。
その次に家に行った時は、惣治郎さんがいたけれども双葉が出て来て帰ろうとしたところを引き留められた。
フェザーマンの話をしたかったらしい。
正直、俺もフェザーマンの話が出来る相手が今までいなかったので嬉しかった。
でも、双葉に手を引かれ、部屋にお邪魔する俺を見る惣治郎さんの目が、悔しそうだったのは気のせいだと思いたい……
暁「俺、フェザーマンヴィクトリーのピンクが初恋なんだ…」
双葉「あ~岳羽ゆかりだな!!」
暁「子供の頃、ピンクアーザスをお嫁さんにするのが夢だったんだ」
双葉「ほっほ~暁も男の子ですな~」
ニヤニヤとされると、流石にちょっと照れてしまう。
麗しのピンクアーザス。
凄くアクションがカッコ良くて、凛々しいんだけど、何処か可憐なんだよね。
双葉「ふぅ~ん…」
といっても、基本フェザーマンシリーズは友情が良い。
初代のレッドイーグルとブラックファルコンが最初はぶつかり合いながらも後に親友になって行くところ。
Rでのブラックファルコンと敵幹部のシュヴァルツの戦いを経て芽生えた友情とか。
双葉「わかるぞ。わかりまクリスティー!!最後に死ぬ寸前のシュヴァルツの煙草にブラックが火を点けてやるシーンがいいんだよな!!」
暁「そうそう!!もうあそこで泣いてさ」
フェザーマンという共通の話題が出来たことで、俺と双葉の距離は一気に縮んだ。
双葉はその内、俺が持参したタッパーの料理を俺と一緒に食べたがるようになった。
惣治郎さんも一緒にどうかと提案すると、双葉に却下された。
女の子は複雑怪奇。お義父さんと一緒に食べるのは照れくさいのだろうか。
今では双葉用と惣治郎さん用とで分けてタッパーを持って行くようになった。
双葉「暁はわたしにガッコ行けとか言わないんだな」
ある日、一緒にご飯を食べているとぽつりと双葉が言った。
暁「双葉と知り合ってまだ一か月にもならないけど、君がサボりたいとか、何となくっていう理由で学校を休む子じゃないっていうのはわかるよ。人前に出るのが怖いんだろ?」
双葉「!?」
暁「何かそれも理由があるって俺はそう思ってる。双葉が自分で悩んで、その結果が今なら俺から今更言える事なんて何もない。だから、それを話すことが苦痛になるなら、俺は何も聞かない」
双葉と話す内にすぐに気づいた。
言葉はたどたどしいけれど、双葉は賢い子だ。それもとんでもなく。
脳の回転に言葉が追いつかない、言葉を省略しちゃうから、聞いていて時々意味がわかりづらくなってしまうんだ。
そんな子が、人に怯えて、人と関わることを避けるように閉じ籠ることを選択した。
そこに意味が無いはずがない。
双葉の頭を撫でてやる。
双葉「ふぇっ!?」
暁「でもね、もし、話さないことが苦しいって思うようになったら、いつでも言って。いつでも、どこからでも駆けつけて、話、聞くから」
勿論最後に「俺で良ければだけどね」と付け加える。
出しゃばり過ぎちゃダメだからね。
距離感大事!!
間合い超大事!!
ここ見誤ると大惨事。
は?お前そこまで仲良くなったつもり?死ぬの?馬鹿なの?なんて顔されたら、暁、泣いちゃう!!
双葉は泣きそうな顔をして頷いた。
* * *
屋根裏に戻ると、それまで大人しかったモルガナが膝に乗って来た。
モルガナ「お前もつくづく面倒見が良い奴だよな」
暁「そうかな?」
モルガナ「けど、お前がお人好しなのは知ってるけど、あそこまで肩入れしてる奴フタバが初めてじゃないか?」
暁「そう…かもね」
モルガナ「もしかして…フタバに…」
暁「モナは鋭いな。モナが思ってる通りだよ。一目見た時には、もう…」
モルガナ「もう、フタバに惚れ…」
暁「気になって仕方が無かった。まるで小さかった頃の自分を見てるみたいで放っておけないんだ」
モルガナ「あ、うん、そうなんだ。そっちかー…」
暁「そっち?」
モルガナ「いや、続けて」
暁「モナには話したろ。俺小学校の頃、女の人に悪戯されたりレイプされたり、友達のお姉ちゃんとその友達に襲われたりしたって」
モルガナ「……おう」
暁「あの頃さ、俺一時期人の目が怖くて、学校に行くのが嫌だったんだ。女の人が俺を見てるような気がしてさ、まぁ、自意識過剰なんだけどね今にして思えば」ハハハッ
モルガナ「いや寧ろ自意識過少だと思うなワガハイ…」
暁「双葉と、結構その時の俺の目が似てるんだ。他人の自分に向けられる視線が怖くて。学校に行きたくないって。人がたくさんいるところに身を置きたくなくて。だから、何とかしてやりたい、支えてやりたいって思って。双葉には迷惑かもしれないけれどね」
モルガナ「アキラ…」
暁「ずっと傍にいてやりたいんだ」
学校に通えるようになるまで。
暁「でも、その前に双葉には女の子としての自覚を持ってもらわないとね。いくら小学生とはいえ、いや、だからこそきちんと今のうちに教えてあげるのがお兄ちゃんの使命だな」フンスッ
モルガナ「えぇーー…ワガハイ、フタバは多分小学生じゃなくて…」
暁「あ、大人っぽいところあるから、中学生かもしれないってことだな」
モルガナ「いや…うん、まぁ、オマエが納得してるなら、それでいいか…」
わたしにはお母さんがいる。いや、いた。
今はいない。
遠いところにいる。
会いたいとも思わない。
みんながわたしをあの人の娘だと言って罵る。
みんながわたしをあの人の娘だと言って蔑む。
みんながわたしをあの人の娘だと言って疎む。
でも仕方がない。
お母さんはそう思われても仕方がない人だから。
お母さんなんて、いや、あんな奴お母さんじゃない。
でも、どれだけ否定したところで、あの人とわたしは血がつながっている。
幸い、お母さんの友達のそうじろうが引き取ってくれて、苗字も変わったから、こっちに来てそういうのは耳にしなくなったけど。
それでも恐怖の記憶は消えてくれない。
わたしは周囲の視線が怖くて学校に行けなくなった。
一体いつまでわたしはこうして閉じ籠っていればいいのだろう。
不安に思わないことは無い。
それでも外に出るのは怖い。
あの日、わたしはアイツと出会った。
アイツはわたしを不用心過ぎると怒ったが、わたしはアイツを知っていた。
一方的にだが。
店を盗聴していたから、声を聴いてすぐにわかった。
それに店でのやり取りを聴いている限りアイツが悪いヤツじゃないことは知っていた。
それどころか、寧ろ凄くイイ奴だった。
どんな奴なのか、ずっと気になっていた。
いざ会ったら、アイツは何と言うか、その、結構、いや、かなり、カッコいい奴だった。
別に、わたしはチョロくないから、顔だけで心を開くつもりは無かったけど。
アイツはタッパーをわたしに差し出した。
鰈の煮付けと筑前煮とかDKが作る料理じゃないだろう。
そう思いながら受け取った。
一口食べて口に合わなかったらそうじろうにあげればいいや、そう思ってアイツが帰った後に、食べてみた。
双葉「うま…っ」
凄く優しい味だった。
わたしの全てを許してくれるような、此処にいても良いと言ってくれてるような、そんな優しさに満ちた味だった。
気付けば涙が出てた。
泣きながら、温もりが残る料理を食べた。
それからアイツは、暁はやって来るようになった。
面倒見の良い奴だ、こいつ背中にファスナーが付いていて、中からオカン星人が出てくるんじゃないかと呆れながらも、少し嬉しかった。
フェザーマンのファンだと知って更に嬉しくなった。
話してみて、適当にわたしに話を合わせる為に身に着けたアメトークの芸人的なにわかファンではなく、ガチのファンだと気付いて嬉しかった。
同じものが大好きだという偶然が嬉しかった。
フェザーマンヴィクトリーのピンクが初恋の人だと聞いた時は少しイラッとした。
暁がやって来る時間が待ち遠しくなった。
暁はホッとする空気を持ってる。傍にいると安心する奴だ。
同時に胸がずっとドドドドって落ち着かなくなる、心臓に悪い奴だ。
でも、やっぱり一緒にいたい奴だ。
暁は一度もわたしに学校に行かないのかと聞かない。
とうとう、わたしの方からそのことについて尋ねた。
暁『何かそれも理由があるって俺はそう思ってる。双葉が自分で悩んで、その結果が今なら俺から今更言える事なんて何もない。だから、それを話すことが苦痛になるなら、俺は何も聞かない』
そう言って頭を撫でられた。
思わず変な声が出てしまった。
暁『でもね、もし、話さないことが苦しいって思うようになったら、いつでも言って。いつでも、どこからでも駆けつけて、話、聞くから……俺で良ければだけどね』
ズルいよ…
そんな優しい目で言われたら、今すぐに話して、甘えたくなるだろ。
でも、話して嫌われるのが怖かった。
あの人の娘だと言って罵って来た連中と、暁は違うとわかってるけど、もし、万が一、億が一にでも、あの連中のような目でわたしを見てきたらと思うと、怖かった。
嬉しいのと怖いのでわたしは泣きたくなった。
暁が帰ってから、わたしはいつも考える。
どうして、あんなにも暁は優しいのだろうか。
暁が優しいのは当然わかってる。
お店の常連の中にも暁のファンが出来上がっていて、暁が留守だとわかると「暁きゅんいないのかぁ…」と露骨に溜息を吐く客もいるくらいだ。
でも、わたしへの優しさはそんな比ではない。
もしかして…
いやまさか…
でも、やっぱり…
いくらなんでもそれは…
期待と否定の言葉が交互に浮かんでは消えていく。
そして、わたしはふと思いつく。
まだ屋根裏部屋には盗聴器をセットしていないけれども、集音率を上げれば、今日はお店が休みだし、物音といえば暁の立てるものくらいだろう。
もしかして、何かわかるかもしれない。
友達(親友がいるのだと嬉しそうに言っていた)と電話をしてたりして、わたしの話題を口にしてたら。
聞ければ儲けものくらいの可能性だが、やってみる価値は十分にある、そう思いヘッドホンを付ける。
罪悪感に一瞬手が止まるが、知りたいという欲求には勝てずわたしは電源を入れた。
ところどころ聴き取れないものの、店内が静かだからか、暁の声と、ニャンコの鳴き声が聞こえる。
ニャンコとおしゃべりとか……可愛いヤツめ。
暁『―― 一目見た時 ―― 」
暁『気になって仕方が無かった ―― 放っておけないんだ」
暁『双葉と、けっこ ―― たい、支えてやりたいって ―― 迷惑かもしれないけれど』
暁『ずっと傍にいて ―― 』
あばばばばばばばばばばばば
わたしは耐え切れず電源を切った。
断片的に聞こえた単語、しかし、それは十分過ぎる証拠だ。
アイツは一目見た時からわたしが気になって、だから放っておけなかった。
けっこ、とは多分「結婚」だろう。
け、けけけけけ、ケコン!?
アイツはわ、わた、わたしとケコンして、傍にいて、支えてやりたいと思っているわけか。
そ、そうか。
困ったなぁぁ~~可愛すぎるのも罪か。
でも、わたしも…アイツなら…いや、いやいやいや、わたしはそんなにチョロくないぞ。
まずは、カレシとカノジョという関係になってからだな。
いや、だったら告白か。
わたしから?
いや、ダメだ。
告白は男からさせるものだとネットにもあった。
告白された方がイニシアチブが握れるとか、財布の紐は女房が握っていた方が良いとか、カカア天下の方が家庭は上手くいくとか…
とりあえず、暁が早く告白せずにはいられないように、今度は、ひ、膝の上にでも座って、ユーワクしてやるか。
あ、でも、そうしたら、暁が耐え切れずケダモノになって…ってナニ考えてんだわたしは。
その日は結局朝まで一睡も出来なかった。
以上で投下を終えます。前回の距離感の近さはこんな具合です。
おイナリ編に入るので、双葉編はもう少し先です。それではまた。
投下します。今回は短いです。スマヌ。
『最近、女性に「服を脱いでくれ」と執拗に迫る不審者が渋谷近辺で出没しており ―― 』
竜ママ「怖いわね~竜ちゃんの学校の近くじゃないの。杏ちゃんとか美人ちゃんだから心配ね~」
竜司「ウチの学校でも話題になってるわ」
朝食を食べながらぼんやりとニュースを見ていると、味噌汁のおかわりを装ってくれたお袋が頬に手を当てる。
竜司「大丈夫だろアイツなら。気強いし」
アイツ鞭常備してるし。
俺、最低でも日に3回は叩かれてるし。
竜ママ「もう!気が強くても女の子なんだから!!竜ちゃんが守ってあげなくてどうするの?」
お袋は俺の回答が気に入らなかったようで、腰に手を当てて眉間に皺を寄せる。
昔から見慣れたお袋の「私、怒ってます」というポーズだ。
竜司「つか、俺が守る必要あるのかなぁ…」
そもそもレベルはアイツの方が上だし…
竜司「寧ろ、お袋こそ注意しろよ。綺麗な子ばかり狙われてるって話だ」
お袋はケラケラと笑う。
竜ママ「もう、竜ちゃんたら、お世辞なんて言っちゃって。こんなオバサンに誰も声なんて掛けないわよぉ~」
わぁ~お。
この人、鴨志田に迫られたこと、もう忘れてるぅ~
あんた、下の階の大学生にも、大家のジジイにもいやらしい目で見られてるの気付いてないだろ。
外見年齢十代前半だって言っても本人全然信用してねぇし。
授業参観でも、三者面談でも「お母さん、とても綺麗で可愛いですね」なんて教師に口説かれても全部社交辞令って聞き流してるし…
危なっかしいな。
やっぱ当分俺が迎えに行ってやらないとな。
俺がお袋を守る!!
竜ママ「そうだ、美人さんって言ったら、暁君も心配だね」
竜司「暁は男だから心配する必要は……無いとも言えないな…」
満員電車に乗ると杏を差し置いて痴漢に遭う確率の高い親友。
お袋も親友も俺が守護らなきゃ。
* * *
今日もいつものようにルブランに行く。
お寝坊な暁君は私が起こしてあげないと、まったく仕方がないんだから。
惣治郎「おはよう。暁のやつならまだ寝てるぜ。コーヒーでも飲むかい」
このお店のコーヒーは絶品で、最近ではこの一杯が無いと始まらない気がする。
お茶請けに出してくれたドーナツは甘すぎず、シンプルだけれども香ばしい。
彼の手作りらしい。美味しそうに食べる私をマスターは微笑ましそうに私を見ている。
マスターのなかでは私は毎朝朝に弱い彼氏を迎えに来ている健気な彼女ということになっている。
その認識は半分正解だし、残り半分もいずれ真実になるので、つまりは間違っていないということになる。
二階に行く。暁君もモナくんもまだぐっすり夢の中。
志帆「暁君、朝ですよ~?」ナデナデ
小声で呼びかける。起こさないように。
フワフワの癖毛は撫で心地が良い。
なでなで。
暁「んん…」
なでなで。
暁「ん、ふふ」
可愛い…
暁「ふ、むにゃ…」
可愛過ぎる…
うっ
ふぅ…
替えの下着を持って来て正解だった。
気が付けば一時間程暁君の寝顔を見つめていたけれど、これもいつものこと。
起きた暁君と学校に行くとき、マスターが「若いからって…まぁ、ほどほどにな」と呆れていた。
何が程ほどなのだろう。
* * *
最近杏が落ち着きが無い。元々落ち着きの無い子ではあるのだけど、輪をかけてソワソワしている。
学校に行く途中も何度も後ろを確認する。
志帆「杏、どうかしたの?最近後ろを気にしてるみたいだけど」
モルガナ「ワガハイで良ければ力になるぞアン殿!!」
杏「うん…何か誰かに見られてる気がしてね」
杏が不安そうに眉を顰める。気が強い杏だけど、困った顔をすると小さな子が泣きそうな顔になる。
モナくんが「アン殿」と心配そうに声をかける。
竜司「ははっ、無い無い、コイツに限って」
杏「フンッ」ビシッ
竜司「痛ぁっ!?」
坂本君の余計なひと言は、今日も絶好調だ。
志帆「ストーカーかしら。モデルやるようになってから、変な手紙貰うことがあるって言ってたよね」
杏「ああいうのは珍しくは無いんだけどね。でも、誰かに付き纏われててるようなのは初めて」
モルガナ「アキラ、何とかしようぜ。アン殿の美しさならよからぬ輩に狙われてもおかしくねーぞ」
暁「鴨志田の例もあるからな」
杏は外見のせいか、淫売とかビッチだとか、薄い本の凌辱要員とか、色々言われてる。
お願いすればさせてくれそうだとか。これだからモテない男って…と思わないでもないけど。
もっとも、この噂は鴨志田が自首した時についでに「杏はビッチどころか男の人と付き合ったことも無い処女で、少女マンガのキスシーンにも照れる子」という話を流してもらった。
勿論、捏造なんて無い、100%事実だ。
杏からも「ちょっと志帆ぉぉぉぉぉぉ!何流してくれてるのぉぉぉぉ!!」と喜ばれた。親友だもんね。
志帆「でもどうするの?」
暁「一端、杏と別れたフリをして、物陰から様子を見る。逃げる杏、追うストーカー、そして、それを追う俺達。つまり挟み撃ちの形になる」ドヤッ
ドヤ顔可愛い…
ふぅ…
ちょっとドヤ顔する暁君は可愛くて、私は替えの下着を二着持ってきた自分の判断を褒めてあげたくなった。
* * *
放課後、俺とモルガナ、竜司、志帆、杏のいつものメンバーで下校する。
いつも通りのメンバーで、いつも通りのルートで、さり気なく杏と渋谷駅で別れる。
杏には出来るだけ自然さを装ってセントラル街の方へ。おびき寄せる場所は決まっている。
薫君のおじさんがやってるミリタリーショップだ。
路地裏で行き止まりだからこそ、ストーカーを囲い込めるし、万が一相手が強硬的手段に出た場合は避難場所にも出来る。
志帆「あ、あの人じゃない?」
見れば、背の高い男が杏の後ろを追っていた。
遠目からでも若い男だということがわかる。もしかして俺達と似た年齢だろうか。
杏を追って路地裏に消えたのを確認して、俺達は急ぐ。
万が一にも杏が乱暴されるようなことがあってはいけない。
『―― 、―― ?』
『―― !?―― !!』
声が聞こえる。言い争ってるようだ。
急がないと。もしかしたら変質者かもしれない。
謎の男「頼む!!脱いでくれ!!俺も脱げばイーブンだろ!!いや、寧ろ、俺が脱ぐ!!」(杉田)
竜司「」
モルガナ「」
志帆「」
うん、変質者だ。
謎の男が現れたところで今回の投下は終わります。次回はもう少し長いのを投下します。
今から投下します。
前回までのおさらい。
① 杏が最近誰かに見られてる気がするってさ!
② 鴨志田の件もあるし、放っておけない!
③ よっしゃ、罠に嵌めよう!
④ ストーカーが現れたよ、狙いどうり!
⑤ 何故か「俺が脱ぐ!」とか言い出したよ!
⑥ 変態だ!!
⑦ 杏殿を性的な目で見る薄い本はいい加減にしなさい!
⑧ 杏殿をビッチ扱いする薄い本もいい加減にしなさい!
⑨ 杏殿を寝取られ要員にする薄い本も(以下略)
⑩ ラヴェンツァ本もっと出て欲しいな。トリックスターのトリックスターでトリッキーな目にあって欲しいよね!
杏のストーカーを挟み撃ちすべく、罠を張った俺達の前に、謎の男が現れた。
男は杏に執拗に熱意をぶつけ、脱衣を強要していた。
寧ろ、男自身が脱ぐと言い出す始末。
つまり、男は変態だ。
謎の男「さぁ、俺は脱ぐぞ。勿論、パンツまでな。パンツまでだ!」ヌギヌギ
竜司「」
謎の男「さて、君の番だ。勿論パンツも脱ぐのだ。パンツもな!」バッサァ
モルガナ「」
謎の男「ここは掃き溜めのような場所だな。だがそれでもいい。いや、それがいい。薄汚い場所にあってこそ引き立つ美!!」パンツイッチョウ
志帆「」
謎の男「どうした脱がないのか?もしや、恥ずかしいというのか。いかん、いかんぞ。君はイヴだ。アダムとイヴのイヴだ。イヴが制服を着るか?着ていないだろう」パンイチ
杏「」
謎の男「ん?君達は一体何の用だ?俺は今からここで彼女の裸体を描かなければならないんだ。用があるならば手短に頼む」ボクサーパンツデス
男は如何にも「僕、不機嫌です」と言いたげだ。
杏「あの…イブって?」
謎の男「失礼。モデルになってもらう以上肝心な説明をしなければならなかったな。君を駅で見かけた時、これだと思ったんだ。
その均整の取れた肉体。陽光を浴びてキラキラと輝く金色の髪。美しく勝気さと少々の愚かさを秘めた顔。一目見た瞬間に確信した。
楽園を追放された不安と不満を胸に抱えたイブとは君のようであったのだと!!」ムラサキノラメイリパンツデス
気が付けば男はパンツだけになっていた。
春とはいえ、流石にパンツ一丁になるには寒かろうに、男は気にもしていない。
多分アドレナリンが出ているから寒さなんて感じていないのだろう。
スゴイ、それだけ彼はこの現状に興奮しているということだ。
杏という最高のモデルに出会えたことに。あの笑顔を見ればわかる。彼はきっと一途な男なのだと。
それだけ何かに夢中になれるなんて、スゴイなぁ~。
竜司「いやいやいや、何『スゴイなぁ~』って顔してるのお前!?」
志帆「暁君たら、可愛い」ウフフフ
竜司「志帆もホッコリしてる場合じゃねーし。お前の親友がパンツ男に迫られてるんだぞ」
モルガナ「このままじゃアン殿がヘンタイ野郎の餌食になっちまう。アン殿、今ワガハイが助けるぞ!!」
謎の男「ム?猫!?何だ、何を訴えている?」
モルガナ「おい、アン殿にそれ以上近づくんじゃあねぇぞ!!」ニャー!!
謎の男「ふむふむ、そうか、成程」
モルガナ「それ以上近づけばワガハイの爪がオマエの大事なオタカラを引き裂くぞ!!」ニャー!!
謎の男「君の言いたいことはわかった」
モルガナ「フフン!わかったか、ワガハイの恐ろしさが」ニャフフン
謎の男「君もモデルになりたいのだな。確かに、ルイス・ウェイン然り、猫も古くから絵画に描かれてきたモチーフの一つだ。そして女と猫の組み合わせも王道だろう。だが、すまないな名も知らぬ猫よ。今回のモチーフには君は不要だ。そこのイブの裸婦だけで良い」
モルガナ「そんなこと言ってねぇよ!!」フシャー!!
謎の男「わかっている。己の美しい頃の輝きを残したいと思うのは美を解する者として当然の欲求。そういう意味では君は芸術がわかっている猫と言えるだろう」フッ
モルガナ「びた一文としてわかってねぇ!?」ニャフン!!
謎の男「ふふふ、そうかそうか。見どころのある猫だ。そうだ、君をダヴィンチと名付けよう。再び相見える機会があればその時は君を描かせてもらおう」
ダヴィンチ「勝手に自己完結しやがったこいつ」
ダヴィンチが力無く項垂れる。
暖簾に腕押しとはこのことだろう。そもそも彼にダヴィンチの言葉が聞こえるはずがないのだけど。
謎の男「ん?まだ脱いでいなかったのかイブ?」
杏「脱ぐか!!つーか誰がイブよ!!」
謎の男「まったく、時間は常に流れているものなのだ。こうしている間にも君の若さと美は衰えてしまうかもしれないのだぞ?脱ぐのに手間取るならば俺も手伝おう」
杏「ひっ!」
謎の男「もしやここで描くことに疑問が?フッ、画材のことなら心配するな。いつでも描けるように持ち歩いている」ゴソゴソ
杏「ひぃっ!!」
男は下着に手を入れると、下着からキャンバスとコンテを出した。
下着からキャンバスとコンテを出した。
下着からキャンバスとコンテを出した。
竜司「ちょっと待て」
謎の男「ん?」ガサゴソ
竜司「今、おま、お前どこから?」
謎の男「?下着からだが?」キョトン
竜司「心底不思議そうに聞き返すなよ腹立つ!おい、暁、お前からも言ってやれ」
確かに、俺も先程からずっと気に掛かっていたことがあった。
暁「アフリカ単一起源説がある以上イブを金髪と決めつけていいの?」
竜司「そこ!?」
志帆「私も聞いたことあるそれ。何かイブといえば金髪って安易かもね」フフフッ
謎の男「何…だと?」
男は雷に打たれたように崩れ落ちた。
志帆の「安易」という言葉がショックだったみたいだ。
芸術家って「普通」とか「ありきたり」とか「安易」みたいな言葉嫌うって本当だったんだ。
杏がその隙に男の横を通り過ぎてこちら側にやって来る。
杏「こ、怖かったよ~!!」ビエーン
暁「よしよし」ナデナデ
志帆「アン、ダイジョウブ?」チッ
杏「志帆…?」
謎の男「馬鹿な…俺のインスピレーションは平凡で取るに足らないものだったのか…」
パンツ一丁の美少年が路地裏で蹲っている姿は色々とシュールだ。
あ、薫君のお父さんが店から出てきて ―― そして他人のフリをして店に戻った。
これ何かいけない誤解を招いた気がする…
謎の男「ふふふ、そうか、俺の才能など所詮はそんなものだったのか…」
……何だかちょっと可哀相な気がしてきた。
彼は変態でも何でもなく、ただ彼なりに一生懸命だったんじゃないだろうか。
それを表現する術が少し不器用なだけで、誤解されてしまうのかもしれない。
* * *
砂を噛むような思いで過ごした中学三年生の二学期、三学期。
理由は「あの事件」だ。市外での事件だったのに、一体どこから漏れたのだろうか。
モブA『オイ、来栖の奴また修羅場ったんだってよ』ヒソヒソ
モブB『同級生の母親って聞いたぜ俺』ヒソヒソ
モブC『マジかよ。同級生の母親と不倫してたのかよ』ヒソヒソ
モブD『夏休みずっと女の家に入り浸ってたんだろ?』ヒソヒソ
中学三年の夏休み明け、クラスは針の筵度がアップしていた。
そして、それに乗っかる様にクラスの女子達が囲んで騒ぎ始めた。
モブE『酷い!私の告白断って、人妻となんて!!でも好き!!遊びでもいいの、だから私と』
告白断ったのはゴメン。でも遊びでとか、女の子が簡単に言っちゃいけません。
モブF『ちょっと、何勝手に一人で盛り上がってるのよ。そもそも暁は私と付き合ってるんだから、ね?暁』
そのような事実はございません。というか、君が帰り道同じだから一緒に帰ろうって家の前まで付いて来ただけの気がするんだけど…てか名前呼び?
噂は悪意と好奇心で歪められていた。
誤解だと声を大にして叫びたくても、誰も信じてはくれない。
皆がそうあってほしい、そうに違いない、という形に歪んで行く事実は、歪んだ形のまま認知される。
積み重なった誤解は幾層にも幾層にも重なり、重みで固まって行きそして「事実」になってしまう。
暁「あの…そんなに落ち込む必要無いと思うよ?」
杏「ちょ、暁!」
謎の男「何…?」
暁「独創的な絵が必ずしも素晴らしいとは思えないし。奇抜すぎて理解出来ないものより、素直に綺麗な絵の方が俺は好きだから」
謎の男「……」
暁「だから、元気出して、な?あと服を着よう?」
竜司「ったく…ほっときゃいいのに」
ダヴィンチ「そうだぞ、まったくあんなヘンタイ野郎はずっと落ち込んだままならいいんだ」プンスカ
志帆「ふふ、でもそこが暁君の良いところじゃない」フフッ
杏「お人好しというか何というか」クスッ
謎の男「……失礼」バッサァ
暁「え?」マエガミカキアゲラレル
謎の男「美しい……」
暁「は?」
杏「は?」
志帆「あ?」
謎の男「ヴェールのように顔を覆う前髪に隠された美貌。イブが朝日を浴びて咲き誇る真紅の薔薇だとすれば、君は月明かりの下で妖艶に咲く黒紫のダリアだ…是非ともモデルになってくれ!!」ガバッ
男に花に例えられたのは初めてだなぁ。
ねぇ、ダリアってどんな花だったかな竜司。
竜司「言ってる場合か!!」
謎の男「男同士だ、気兼ねなどいらん。さぁ、脱いでくれ!!」
志帆「あは、コロそ」
謎の男「いや、ここは先ほどのイブと二人で。そうだ、まさに楽園追放の絵に相応しいじゃないか。勝気で無邪気なイブの手を引く、憂いを帯びたアダム。ふは、ふはははは!漲ってきた!昂ぶってきた!滾ってきたぞ!!」
杏「暁と裸で一緒か…チョットイイカモ」
志帆「杏?」
杏「う、嘘だから!嘘、嘘。志帆、その目止めて!!」
謎の男「何という日だ!インスピレーションに訴えかけるモデルに、それも二人も出会えるとは!!今日は失楽園記念日と名付けよう!!」
記念になるんだかならないんだかわからない記念日だなぁ。
??「こら!!祐介!!ここにおったか!!」
息を切らせて走って来たのは、厳格そうなオジサンだ。
祐介「先生、そんなに息急き切ってどうされたんですか?」
??「もうパンイチになっとるぅぅぅぅぅ!?」
祐介「やれやれ、気持ちが若いままなのは素晴らしいですが、そんな大声まで上げられて、お体に障りますよ?」
??「それ、お前が言う!?言っちゃう!?」
あれ?あの人って確か…
暁「斑目一流斎さん…ですか?」
斑目「ハッ、いかん。もしや、この馬鹿者めが何か粗相を」
粗相と言うか…
竜司「杏にヌードモデルになれって言ったくらいか」
志帆「あと暁君にもね」
杏「何よりいきなり脱ぎだしたのがね…」
斑目さんは青汁と梅干とレモンと酢を一瓶丸々飲み干したように顔を歪める。
タイトルを付けるとすれば「悔恨」だろう。
斑目「申し訳、申し訳ございません!!!」
それは、見事としか言いようが無かった。
流れるように素早く、けれども優雅とさえ言える動きだった。
斑目「年頃の娘さん達に、この馬鹿弟子が破廉恥且つ御無礼なことをしてしまい申し訳ございません」
一体何回、何十回、何百回、或いは何千回と繰り返したのだろうかと思えるものだった。
最適解とも言える見えないラインがあって、そこに一ミリの狂いも淀みも無く身体をなぞるような。
そんな惚れ惚れとするような ―― 土下座だった。
斑目「不肖の弟子の過ちは即ち師の過ち。何卒、何卒気が済むまでこの老体めを存分に詰ってください。その代わり、この事は、この事はどうか、どうかご容赦を…!!」
竜司「いや、あの、頭上げてくださいよ」
杏「そうですよ、直接何かをされたわけじゃないですし」
モルガナ「アンタが謝ることじゃねーよ」ニャーン
志帆「そこの彼を一発ぶっ飛ばさせてくれればいいので」
皆、自分の父親くらいの年代の人の本気の土下座に憐みやドン引きを通り越して居た堪れなくなってる。
俺もそうだ。父さんが自分と同じ年頃の子供に土下座をしたらと思うと涙が出てくる。
祐介「先生の土下座はいつもながら見事なものだな。機能美と造形美を兼ね備えていると言って良い」フムッ
斑目「お前も謝らんか!!」ドゴッ
祐介「ぐふっ」
斑目さんが祐介の頭を掴んで勢いよく地面にたたきつける。
凄く良い音がしたけれども、構わず何度も祐介の頭を地面に擦りつける。
勿論、自分の土下座も継続中だ。
文字通り地に頭を擦りつけるような土下座をする師弟に、それ以上掛ける言葉もなかった。
ようやく本人達の(というか斑目さん)気が済んだのか、額からヤバいくらいの血を流しながら師弟は帰って行った。
斑目さんは何度も途中振り返っては頭を下げていた。
祐介はパンツ姿のまま帰って行った。
暁「これ(祐介の服)、どうしようか」
志帆「ちょうどおあつらえ向きにお店があるから売りましょう」
岩井「!?」
こっそり様子をうかがっていた岩井さんが心底ギョッとした顔をしていた。
以上で本日の投下を終えます。ようやくマダラメ編です。次回はまた気長に待ってもらえたら…
???「魅力がカリスマ止まりで助かった」
???「魅力ステータスが無くて助かった」
今から投下します。
暁「盗作疑惑?」
紅茶を淹れながら暁君が首を傾げる。
ありがとうと言って、カップを受け取ると問題の記事を見せる。
暁君はPC画面が良く見えるように身を寄せてくる。
コーヒーと洗い立ての清潔なシャツの匂い、それとシャンプーの匂いにクラクラとする。
ヤベェ、高校生男子って汗臭い生き物じゃなかったのか。
彼氏いない歴=年齢の私には初めてのことだ。
暁「七色の筆を持つ画家と言われている斑目一流斉であるが、一部では本当に七色の筆を持っていると言われている…」
二子「斑目一流斉は作品ごとに画風が変わる画家として有名なの。時には同じ人間がよくもここまで画風やタッチを変えたって言われてるものまであるの」
暁「だから盗作疑惑?この記事でも描かれてるね。歴史に名を遺した画家には作品によって同じ人間が描いたとは思えない作品を残している画家もいるが大抵はそれは時代を経ているって」
二子「その時の流行や画家の価値観、或いは新しい試みなんかで変わることはあるけど、それは段階を踏んだものが多いの」
ドヤ顔で言ってるけど、これは全部お姉ちゃんの受け売り。
お姉ちゃんは家で酔っ払うと取材のことや、取材に際して調べた知識を話したがる。
本人は翌日になると綺麗サッパリ忘れてるんだけどね。
酒癖は悪いし、がさつだし、愚痴が八割を占めてるけど、残りの二割が興味深いからつい色々聞いてしまう。
ちなみに愚痴の八割は、共に社会悪を暴こうと誓い合っていた相棒が取材で知り合ったイケメンIT社長と玉の輿結婚をしたことへの恨みつらみだ。
いや、今アンタが冷や飯食いなのは、杉村とかいう議員がSM倶楽部の常連だっていうセンテンススプリングな記事を載っけて芸能部にすっ飛ばされたからでしょ。
そうツッコむと愚痴が更に長くなるので言わないけど。
暁「つまり、同時期に全く異なる画風の作品を多く出しているから疑惑が出てるっていうこと?」
さっすが暁君。察しが良い。
二子「それだけじゃないの。これを見て」
ブクマしておいた別の記事を見せる。そこには斑目がとある展覧会であいさつをしている場面。
後ろには長身のイケメンが立っている。暁君がちょっと可愛い感じだとすると、彼は綺麗系といった感じのイケメンだ。
暁「これって…」
二子「お弟子さんらしいわ。斑目は画家としては勿論有名なんだけど、もう一つの面があってね。
孤児を引き取って育てているっていう慈善家としても知られているの。彼もその一人だっていう話しなんだけど」
暁「けど?」
二子「でも、それは将来有望な画家の卵を発掘して、自分の作品にフィードバックする為なんじゃないのかとも噂されてるわ」
つまりは自分の作品の為のストックということだ。言っていて気分の良いモノじゃないけど。
暁「凄いなニコ。ここまで調べてるなんて。今すぐにでも新聞記者として通用しそうじゃないか」
ああ、尊敬をこめたキラキラした眼差しが痛い。お姉ちゃんの取材した結果なの。
でも、見栄っ張りな私は「すごいでしょ?」なんて答えてしまう。
うん、と素直に頷く暁君に増々良心が痛むやら、可愛いなコンチクショウと照れるやらで、
誤魔化すようにチキン照り焼きサンドに手を伸ばす。暁君のお手製だ。
うん、美味しい。
マヨネーズには辛子がほんのり利いていて、レタスのしゃきしゃきした歯応えとみずみずしさが共にアクセントになっている。
もう一つあった卵焼きサンドは既にお腹の中だ。和風仕立ての卵焼きとキュウリのハーモニーが堪らなかった。
これを食べたらコンビニのサンドイッチは暫くは食べられない。
二子「ところで、どうしてサンドイッチだったの?」
暁「だって、いつも本読んだりPC叩きながらお弁当食べてるから、だったら片手間に食べられるのがいいと思ってね」ニコッ
くっ、お気遣いの紳士か!
いけないいけない。落ち着け落ち着け。
私は友達。私は友達。オーケー?
暁「紅茶のおかわりいる?」
二子「う、うん。この紅茶美味しいね」
暁「良かった口に合って」
二子「私紅茶好きだって言った事あったっけ?」
暁「言うも何も、見てればわかるよ」
落ち着けぇぇぇーー!!
落ち着け私ぃぃぃーー!!
暁君は友達。私と暁君は友達。ダチ公。マブ。オーケー?
暁君の周りには高巻さんとか鈴井さんとか、超レベル高い女子がいるんだから、そういうのは無いから、私とフラグとか無いから。
期待するのは無い。私は顔グラも無いモブだから。オーケー?
よぉぉぉし、落ち着け、落ち着いたな私?
二子「でもゴメンね。情報代なんて、冗談のつもりだったんだけど」
暁「別に一人も二人も同じだよ」
二子「でも暁君のはサンドイッチじゃないじゃん」
暁「おかずは一緒だよ。ホラ」
確かに、暁君のお弁当箱には卵焼き、キュウリとレタスのサラダ、チキンの照り焼きが詰められていた。
っていうか、お揃いのおかずを詰めたお弁当とかさ、これってさ、いや、何を考えてる私。
暁「……お揃いのおかずをつついてると何だか…」
暁君が少し照れたように笑う。
暁「家族(兄妹)みたいだね」テレッ
二子「家族(夫婦)!?」
やっべぇぇーーーー!!!
これ、確実に私を妊娠させに来てるわ。
孕ませる気だわ。
トキメキで妊娠させるつもりだわこの男!!
落ち着け、落ち着け、落ち着けぇぇぇーーー!!!!
新聞記者はクールにならないといけないのよ。
冷静に、客観的に、俯瞰的に物事を見ないといけないのよ。
オーケー?
やっぱり収入が不安定な新聞記者だから、まずは籍だけ入れておいて。
少しお金に余裕が出てきたら式を家族だけでひっそりとやって。
二次会は何処かレストランを貸し切ってやるのが良いかな。
いやいやいや、そうじゃない。
そうじゃないぞ、落ち着け、落ち着け、大宅二子。
*
ニコが何かブツブツと呟き始めた。たまに彼女はこうなる。
きっと、将来有望な新聞記者の彼女のことだ、情報を整理するために自分の思考に集中しているのだろう。
双葉も一緒にいる時よくこうなる。
この前一緒にフェザーマンを見てる時に、子供が出来ても一緒に観てるのかなと言ったら、
「二十歳歳までに子供を出産するとして…三人、いや四人までなら養育費は十分株の収入で賄えるから…だとしたら…」と真剣な顔で呟いていた。
親子でスーパーヒーロータイムを楽しむって何だか仲良し家族って感じで憧れるなと思ったのだけど、耳に入っていないようだった。
娘が出来たらプリキュアにも付き合うのだろうか、とかそんな妄想をしてしまう。
今のところそんな当てもないのだけど。
それよりも、今はもっと気になることがある。
暁「この写真…これって喜多川祐介だよな?じゃあ、やっぱり…」
彼は杏の裸を描きたがっていた。
芸術家としての熱いパトスに、俺は圧倒されてしまった。
きっと、彼のような人間こそが真に芸術に身を捧げた人間というのだろう。
ただ、その表現の仕方が不器用なだけで。
もし、彼の一途で不器用な想いが利用されているのだとしたら…
*
どうにかして喜多川祐介と接触を取らなければ、そう思っていたが、思いがけずその機会はやって来た。
祐介「待っていたぞ」
学校の帰り、そう言って声を掛けてきたのは、ほかならぬ喜多川祐介本人だった。
暁「喜多川祐介?」
祐介「先日はすまなかった」ペコリ
そう言って菓子折りを手渡される。
暁「あ、これはどうも御叮嚀に」ペコリ
祐介「あれからずっと考えていた。何がいけなかったのかと。そしてわかった。君を描くならば失楽園のアダムではなく、天に召される崇高なる救世主。
イエスとして描くべきだったのだということに」ハァハァ
暁「あの…後ろ」
祐介「だから脱いでくれ!!何、心配するな。俺も脱ぐ。自然に囲まれて、俺も君も身も心も曝け出す。描き手とモデルが心を通わせ合い、リラックスをした時こそ、俺達は自然に還ることが出来る。
つまらぬ理性から解放され、全てを開放した時こそ真の美への一歩が始まる」ハァハァ
暁「だから…後ろを…」
祐介「だから、さぁ!!今度こそ、俺は君をキャンバスに刻み込まなけれ…ブルラジッ」ゴシュッ
忠告空しく喜多川が崩れ落ちた。祐介の後ろには志帆が立っていた。
手ごろな重さと持ちやすさの石が赤く染まっている気がしたけれども、確認する前にそれを志帆は遠くへと放り投げた。
今のって血…
志帆「気のせいだよ?」ニコッ
とっても可愛らしい笑顔だった。
こんなに可憐で可愛らしい笑顔をする子が音も無く背後に忍び寄って石で後頭部を殴打なんてするはずがないね。
志帆「さて、コレをしま…何処かに運ばないとね」
今始末って言おうとした?
志帆「気のせいだよ?」ニコッ
とっても可愛らしい笑顔だった。
こんなに可憐で可愛らしい笑顔をする子が倒れ伏した男子高校生を人知れず何処かへ遺棄しようとするはずがないよね。
暁、反省☆(テヘペロ)
志帆「今の可愛いかったからもう一回やって!」
それは良いけど、志帆、踏んでるから。喜多川、踏んでるから。
*
グリグリとなおも踏み続ける志帆を宥めて、喜多川の持ち物から彼の家へと運んでやることにした。
ぐったりとした180超えの喜多川の身体タクシー後部座席をみっしりと占拠し、膝の上に志帆を乗せることで何とか収まることが出来た。
嫁入り前の、年頃の娘さんに何て恥ずかしい真似をと悔やむが、
志帆「いいの、気にしないで暁君。私は全然気にしてないから。寧ろラッキーというか、堪らないというか、替えの下着を用意して来て正解だったなって思ってるくらいだから」
志帆は優しいいつもの笑みでそう言ってくれた。
替えの下着という文脈はわからなかったけれども、きっと志帆なりにこの場を和ませてくれようとしているのだろう。
膝の上にのって、タクシーが揺れても大丈夫なように首に腕を回した彼女は、俺の首に顔を埋める格好になっているからその表情は見えないが、
きっと恥じらいを堪えているのだろう。
志帆「私は大丈夫だから(スーハー)あと三十分でも一時間でも(ハムハム)三時間でも十時間でも(クンカクンカ)平気だから。でも、ちょっと不安定だから、ギュッてするね(ハスハス)…………フゥ…」
助手席ではなく、トランクに荷物を積めば助手席に志帆を座らせてあげられることに気付いたのは、喜多川の家に着いた時だった。
志帆はぐったりとしながらも何故か満ち足りた顔をしていた。
俺の膝のズボンは水でも零したようにびっしょりと濡れていた。
車内が狭かったから、きっと汗をかいてしまったのだろう。
男の汗臭い空間に女の子を押し込めてしまったことを悔やみつつ、喜多川の家に入ることにした。
以上で本日の投下終了。間が開いて申し訳ない。それではまた。
このSSまとめへのコメント
池田良い奴過ぎたワロタ
面白かった。
ところで新島先輩はまだかね?
ずっと2018だと思ってたら2017な件
投稿すんの遅すぎん