ありす「お疲れ様です。戻りました」
ちひろ「ありすちゃん、お疲れさま」
ありす「橘です」
ちひろ「ありすちゃんはそんなに名前で呼ばれるのが嫌い?」
P「まぁまぁちひろさん。アイドルたちは色々と我慢しなければならないんですから、事務所での呼ばれ方くらい本人の希望通りにしてあげてもいいと思いますよ」
ちひろ「でも苗字で呼ぶと距離ができてしまうきがしませんか?」
P「呼ばれる本人が気にしてないならいいじゃないですか。橘さん、お疲れさま。今日のレッスンはどうだった?」
ありす「トレーナーさんに褒められました。基礎がしっかり身に付いてきているって」
P「いつも予習復習を欠かさずにやってるからだね。お母さんから聞いてるよ」
ありす「あ、ありがとうございます」
P「今は焦って挑戦することよりも、しっかりと確実に基礎を固めることを優先しようね」
ありす「はい。わかりました。それでは着替えたら帰ります」
ちひろ「……。橘さん、他の子たちも戻ってきてるから、急ぐ用事があれば譲ってもらうようにしてくださいね」
ありす「っ……。はい」
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かな子「ありすちゃん、お疲れさま。クッキー良かったら食べてね」
ありす「橘です」
かな子「あ、ごめんね…」
ありす「っ…いえ、あの……」
周子「こーら、ありすちゃん。そないなことゆーてかな子ちゃん困らせたあかんよー」
かな子「周子さん、私は大丈夫ですよ」
周子「あかんってかな子ちゃん。ここはビシッとゆーてあげんと」
かな子「でも、何か事情があってのことだったら…」
ありす「ありすって名前が嫌いなだけです」
周子「そないに変な名前かな?可愛と思──」
ありす「わっわたしはっ!ただ橘と呼んでほしいと言ってるだけです!それの何がダメなんですか!?」
かな子「ありすちゃん…」
ありす「橘です!」
周子「さよか。そないにゆーならそうしよか、橘さん」
翌日
ありす「おはようございます」
ちひろ「おはようございます、橘さん。プロデューサーさんはもうすぐ会議から戻ってくるから待っててくださいね」
仁奈「あの、橘おねーさん…お、おはようでごぜーますよっ!」
かな子「お、おはよう。橘さん。今日はシフォンケーキ焼いてきたから、後で一緒に食べようね」
周子「おはよう橘さん。今日は寒いねぇ」
ありす「……」
ちひろ「橘さん、どうかしましたか?」
ありす「…っ、なんでも…ありません」
P「お、みんなおはよう。朝から会議で待たせてしまったみたいだね、すまない」
ちひろ「お疲れさまでした。お茶淹れてきますね」
P「ええ、お願いします」
ありす「……」
P「それじゃあ、今説明した通りで今日も1日やっていこう」
周子「せや、前から気になってたんやけど、Pさんって頑張るってゆわへんよね。どうして?」
かな子「そう言えばそうですね。私も気になります」
P「そこまで大した理由じゃないんだけどな、頑張るって漢字が嫌いなんだよ」
仁奈「プロデューサーは漢字が苦手でごぜーますか?」
周子「あはは。そうなん?」
P「違う違う。頑張るって『頑な』に『張る』って書くだろ?語源とかは知らないんだけどさ、これって頑固になって意地を張るって意味に思えてな」
ちひろ「調べて見ましたけど、『眼を張る』を語源として動かずに見張るという意味から現在の意味に派生した説と、自分の考えを押し通す『我を張る』という2つの説があるみたいですね」
仁奈「難しい言葉がたくさんだとわかんねーですよ」
P「わかりやすく言うと、何かあっても一人でやりとげろよって突き放した言い方に思えてしまうんだ。だから嫌いなんだよ」
かな子「じゃあ卯月ちゃんは…」
P「自分で言う分には問題ないんだよ。ぼく個人が誰かにかける言葉として気に入らないって思ってるだけだから、そこまで不覚考えなくていいんだよ」
ありす「……」
周子「Pさんはほんま優しいね」
P「そうか?嫌いな言葉を使ってないだけだぞ?」
かな子「私もそう思います。そんなことを考えることが優しいんですよ。ほら、優しいって漢字は「人」を「憂う」って書きますよね」
周子「かな子ちゃん賢いやん。うんうん、ほんまかな子ちゃんのゆー通りやわ」
仁奈「うー……?」
ちひろ「あのね、仁奈ちゃん。これが『優しい』って漢字なんです」
仁奈「たくさん書かなきゃだから難しいでごぜーますね」
ちひろ「うふふ、そうですね。人偏は『人』の意味だって習いました?『憂う』っていうのは心配する、気にかけるって意味なの」
ありす「……」
仁奈「プロデューサーが仁奈に優しいのは仁奈のことが心配だからでごぜーますか?」
P「うーん、そういうことじゃないんだよ」
ありす「に、仁奈さんが素直で、元気で、…その、可愛いからだと思います」
仁奈「ありがとーごぜーます!ありすおねーさんもか……あっ」
ありす「……」
周子「あれ?橘ちゃん?」
ありす「ありすでいいです……」
周子かな子ちひろ「!?」
ありす「もうっ、そんな顔しないでください!…プロデューサーのそんな話聞いたあとに名前で呼ばないでくださいなんて……それに…」
P「ん?周子と何かあったのか?」
周子「ちょっとね。あんまり橘ですゆーから、徹底的に橘って呼んだろってね」
P「おいおい、ぼくに相談なしでそんなことを?勘弁してくれよ。それで橘さんが辞めでもしたら──」
ありす「ありすですっ!」
ちひろ「あらっ」
P「橘さん?」
ありす「ありすですっ!」
P「おい周子。橘さんおかしくなっちゃったじゃないか!」
かな子「プロデューサーさん。ありすちゃんは頑張ることを辞めて優しくなったんですよ」
P「へ?」
周子「かな子ちゃん上手いやん」
ちひろ「頑なに意地を張るのをやめて、人のことを気にかける様になったってことですね」
仁奈「やったー!ありすおねーさん!」
ありす「は、はい」
仁奈「優しくなりやがったでごぜーますね。仁奈はありすって名前がありすおねーさんにピッタリだと思ってたから、嬉しいでごぜーますよ」
周子「仁奈ちゃんにさ、橘さんって呼ばれたんどうやった?」
ありす「…あの…….、すごく悪いことをしている様で…辛かったです」
P「あれ?ぼくの知らないところで始まって終わった感じだけど…」
かな子「大丈夫ですよ、プロデューサーさん」
ちひろ「ありすちゃんは賢い子ですから……ってもうこんな時間!?やだっ、もうすぐ記者さんが来ちゃう!」
P「かな子と橘さ……」
ありす「ありすですっ!」
P「ありす……。とにかく、少し遅れるってトレーナーさんに電話しとくから」
かな子「はい、わかりました」
ありす「行ってきます」
周子「行ってらっしゃ~い」
ちひろ「周子ちゃん、のんびり手を振ってる場合じゃないですよ!応接室の片付け手伝ってください!」
周子「え?」
ちひろ「昨日はきらりちゃんのインタビューできらりんルームにデコレートしてあるの。周子ちゃんがそのままインタビューされてもいいって言うのなら──」
周子「するする!シューコ片付けしまーす」
終わり
モバP「子守歌…」を書いたあとにありすが浮かんだので、ありすが少し大人になれたお話を考えてみました
寒いけどお気張りやす
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