提督「とある鎮守府のクリスマスかくし芸大会」 (46)

青葉「えー、本日はお日柄もよく絶好のクリスマスパーティー日和となりました」

龍驤「校長の挨拶か」

青葉「では始めましょう。聖夜の艦娘対抗かくし芸大会ー!」パチパチ

龍驤「なんでクリスマスにかくし芸大会するんやろな。正月やれや」

青葉「おっと申し遅れました。本日は司会進行と実況とその他を務めさせていただく、ご存知ワレ青葉こと青葉でございます」

青葉「そして相方を務めるのは『知らざあ言って聞かせやしよう。呉の平野と提督が、言葉残せしまな板の、異名尽きねえ軽空母』、でお馴染みなにわの弁天小僧こと龍驤さんです!」

龍驤「しばくぞ」

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青葉「あれ? 龍驤さん、今日はツッコミに力がないですね。どうしたんですか?」

龍驤「いやな、昨日飲みすぎてな。ちょっとしんどいんや」

青葉「ほお! それはまたどうして?」

龍驤「だって昨日はクリスマスイブやろ? 今年も鎮守府のみんなで独り身女子会してな」

青葉「おお! 楽しそうですね!」

龍驤「それで隼鷹のアホとポーラのアホが飲みまくってな。去年に次のクリスマスまでには彼氏作るぞーっていってたのに今年もこれかいって言って」

青葉「あっはっは!」

龍驤「それでみんなして浴びるように飲んでな。気付いたらみんな全裸やったわ。みんなして笑いあってな。来年は裸一貫で突撃やーってな」

青葉「……とまあそんなどうでもいい話は置いといて、まずは審査員の紹介に移りましょう」

龍驤「しばくぞ」

青葉「今宵もイカれた奴等がやってきた! 今日この日のために五人の審査員が集まってくれたぞー!」

青葉「まさかこの人が来てくれるとは! 火力よし性癖よしこの夜清し! と三拍子揃っている、噂のビッグセブン! ナガトナガトの登場だー!」

長門「今日はみんなの芸を楽しみにしてきた。採点基準は駆逐艦か否かだ。よろしく頼む」

青葉「きたきたきたぁ! 私は戦艦を越えてしまったかもしれない! カレーライスに瑞雲! 坂の上の瑞雲! 石の上にも瑞雲! 果たして私たちはこの領域にたどり着けるのか? 航空戦艦! 日向だあ!」

日向「かくし芸大会とはなかなか趣深い。優勝者にはクリスマス仕様の瑞雲をやろう」

青葉「パーティーならばこの人が黙っているわけがない! 七つの大罪など関係ない! 邪魔をするならば喰らうまで! 一口ですべてを飲み込む暴食空母! ビッグマウス赤城だ!」

赤城「あ、そのローストチキンもらえます?ダースで。そのケーキも。あ、カットしないで結構ですよ」

青葉「私こそがアイドルだ! もはや説明不要! 162㎝、52キロ! 那珂ちゃんも来てくれたー!」

那珂「なにさらっとアイドルの秘密ばらしてんだ。おいカメラ止めろ」

青葉「もちろんこの人も欠かせない! この鎮守府は彼女から始まった! 真のレディとはなんぞや? その答えを見せてやる! 括目するがいい! 我らが秘書艦! レディオブレディ! 暁ー!」

暁「芸は身を助けると言うわ。みんながんばってね」

青葉「いやあ個性豊かな審査員が集まってくれましたね。どうみますか?龍驤さん」

龍驤「まああれやな。不安しかないな。特に 前三人」

青葉「はい、貴重なコメントありがとうございます。さてさて続きまして参加者の紹介です」

龍驤「もっとコメントに触れろ」

青葉「えー参加者は司令官、加賀さん、雷ちゃん、卯月ちゃんの四人です」

龍驤「審査員に比べて紹介雑やな」

青葉「トップバッターはもちろん司令官! 理由はトップバッターが一番目立つからだそうです」

龍驤「まあ司令官らしいな」

青葉「しかし一番目は採点の基準になりやすい! そして場を暖めないといけない! そんな役目は俺がやる! ええい止めてくれるな! これが男の! あ、生き様よお! よよい!」

龍驤「なんでちょいちょい歌舞伎いれてくるん?」

青葉「そんな司令官が私たちは大好きです! いつもありがとう司令官! すごいぞー! かっこいいぞー!」

龍驤「なんや君、司令官に弱味でも握られとんか?」

青葉「さあさあさあ、司令官の芸は『もしも提督が黒人ラッパーだったら』です!」

龍驤「最初やからな、期待しとこ」

提督「……」スタスタ

提督「ご存知俺様提督よ。でももう飾りは置いとくよ。なぜなら今日は無礼講。みんなも騒ごうほれいこう。YEAH」

青葉「まずはフリースタイルから入りましたね」

龍驤「ラップのことはようわからんけど」

青葉「そこそこ韻も踏んでますし、お見事ですね! さすがはこの鎮守府の恋人にしたい男性ランキング一位の男です!」

龍驤「男なん司令官一人やんけ」

青葉「ちなみに二位は連装砲くんでした! 司令官とデッドヒートを繰り広げ最後はなんと一票差! いやあ接戦でしたねえ」

龍驤「司令官、装備に負けそうになったん? 大丈夫?」

青葉「でもそんな司令官がみんな大好きです! 失敗は庇い、成功は誉める! 反省的頭脳の持ち主の優れた指揮官である司令官! つよいぞー! つよいぞー!」

龍驤「なんや君、司令官に金でも握らされとんか?」

提督「それではこれから本番よ。心配するには及ばんよ」

青葉「おっ、ついに始まるみたいですね! これまでの流れはどうでしょうか?」

龍驤「まだなんもやってへんやんけ」

提督「私の名前は暁よ! あかつき a.k.a 月 YO! 当然、私は一人前の! レディとして扱ってよね!」

青葉「おっこれは暁ちゃんの出会いから始めるようですね」

龍驤「なんで暁もラップ刻んどんやろな」

提督「よろしく一緒に頑張ろう。目指すはキン肉万太郎! SAY HO!」

龍驤「なにが?」

提督「魚雷、砲撃あたらねえ。腕も、運気もあがらねえ。くそったれめが負けるかwar。世界に響け俺のフロウ」

提督「SAY HO!」

「「「「HO!」」」」

提督「SAY YO!」

「「「「YO!」」」」

青葉「みんなノリノリですね」

龍驤「うちの鎮守府はあれやな。みんなノリがいいというか、何も考えてへんというか、頭空っぽやな」

青葉「これは深いコメントをいただきました!」

龍驤「これそんな深いか?」

青葉「思考を放棄し、無分別智に至る、と。空の哲学に通じるものがありますね!」

龍驤「通じてたまるか行き止まれ」

提督「これにて終わりよマジ感謝。産んでくれた母に感謝。育ててくれた父に感謝」

青葉「司令官の芸でした。どうでしたか?龍驤さん」

龍驤「うんまあすべてのピンチをSAY HO! で切り抜けたんはすごいわ」

青葉「『提督! レ級が出現しました! どうしますか?』 『SAY HO!』 『HO!』で切り抜けたのは感動しましたね」

龍驤「みんなもとりあえずHO!っていっとけ感あったしな」

青葉「結構盛り上がってましたし、これは高得点が期待できそうですね」

龍驤「そうやろか」

青葉「では審査員のみなさん!得点とコメントをどうぞ!」

長門 5/20
コメント この勢いは嫌いではない。しかし惜しむべきは駆逐艦でないことだな。それを加味した結果だ

日向 10/20
コメント 悪くないがよくもない

赤城 11/20
コメント トップバッターという点で見るとまあまあだが、なにか物足りない

那珂 9/20
コメント SAY HO! に頼りすぎ。底が浅すぎる。もっと深みがほしい

暁 15/20
コメント 良くも悪くもこの鎮守府らしいわね。最初だから甘めに採点したわ

総合得点 50/100

青葉「50点!これは思ったより得点が延びない!」

龍驤「うん、まあ得点は予想通りなんやけど。審査員が割りと真面目に採点してることにビックリやわ。一人を除いてな」

青葉「那珂ちゃんの辛口採点も意外ですねえ」

龍驤「まああっちはプロやからな。その辺はシビアなんちゃうか」

青葉「うーん、そんなコメントは求めてないんですが、まあありがとうございました」

龍驤「しばくぞ」

青葉「お次は加賀さんの『一人デュエット』です」

龍驤「最近CDデビューも決まったらしいからな。期待しとこ」

加賀「……」

~♪

加賀「ああ、今日も休みが過ぎていく。たまには遊びに行こうかお嬢さん♪」

加賀「ううん、駄目だよ。今日も布団は私を離してくれない♪」

青葉「おお!男女パート毎に完璧に声を使い分けてますね!これは完成度高いですよ!」

龍驤「男女のデュエット曲か。これは難しいで」

加賀「布団と結婚するのかい。僕の気持ちはどうなるの♪」

加賀「違うわ。布団はただのソフレなのよ。本命はあなただけ♪」

龍驤「ところでこれなんて歌や?」

青葉「加賀さん作詞作曲の『どこかへ行こうか』だそうです」

龍驤「ふーん」

青葉「クリスマスなのにどこにも行けない加賀の心象を表しているんやろか? って顔してますね」

龍驤「してへんわ。仕種ひとつからどんだけの情報引き出すんや。名探偵か」

加賀「さあ出かけよう。君と一緒に外に出よう♪」

青葉「おっ。そろそろサビですね」

龍驤「サビはどうするんやろな」

加賀「「どこかへ行こうか。こんな晴れた日はどこかへ行こうか♪」」

龍驤「!!」

青葉「!!」

龍驤「なんや?今声がハモって聞こえた気がするんやけど」

青葉「これは凄いですねえ。どうやら横隔膜の振動と妖精さんの不思議パワーで二重に声を響かせる方法をマスターしたみたいですね」

龍驤「こんなとこで出すやつちゃうやろ。明らかにさっきの提督の芸と次元が違うやんか」

青葉「ですねえ。これがうわさに聞くミックスボイスってやつですか」

龍驤「それは違うけどな」

訂正

× 龍驤「こんなとこで出すやつちゃうやろ。明らかにさっきの提督の芸と次元が違うやんか」

○ 龍驤「こんなとこで出すやつちゃうやろ。明らかにさっきの司令官の芸と次元が違うやんか」

加賀「洒落た帽子に、気取ったネクタイ。準備万端さあ出掛けよう♪」ヘイカモンッ

加賀「化粧のノリもバッチリ、布団とはお別れね。準備万端さあ出掛けましょう♪」キミトイコウ

青葉「二番は合いの手まで!?」

龍驤「一人なのにすごい盛り上がってる感じがすんな」

青葉「これでヒトカラでも寂しくないですね!」

龍驤「いや一人なのに二人分の歌声が聞こえるって軽くホラーやで」

加賀「……」スゥ

龍驤「ん?」

青葉「加賀さんの表情が変わりましたね」

加賀「どこかへ行こうか♪」「どこへ行こう♪」

龍驤「!?」

青葉「!?」

龍驤「なんや? 今同時に違う言葉しゃべってた気がするんやけど」

青葉「これは本当に凄いですねえ。横隔膜の振動と声の妖精さんの不思議パワーで同時に違う言葉を出す方法をマスターしたみたいですね」

加賀「どこでもいいさ君と一緒なら♪」「どこでもいいわ貴方の隣なら♪」

龍驤「もうこれで食っていけるんちゃうか」

青葉「正直凄すぎてリアクションに困りますね。もうちょっと微妙な芸を期待していたんですが」

龍驤「実況失格にもほどがあるやろ」

加賀「でも今日は寝よう♪」「でも明日にしましょう♪」

加賀「「お休み♪」」

加賀「……」ペコ

青葉「うわあ、もうロマンティックが止まりません」パチパチ

龍驤「結局どこにも行かんのかい。なんやこの歌」パチパチ

青葉「これは高得点が期待できそうですね」

龍驤「たしかにこれは文句ないわ」

青葉「では審査員のみなさん!得点とコメントをどうぞ!」

長門 8/20
コメント なるほど。これも一つの到達点だな。常に限界を追い求める加賀ならではの芸だ。ネックなのは駆逐艦ではないことくらいか。しかしそれが得点に大きく響いたな。残念だ

日向 18/20
コメント 素晴らしい。よくぞここまで鍛え上げた

赤城 19/20
コメント 技術もさることながら、飽きさせない工夫が随所に散りばめられている。さすがというほかない

那珂 19/20
コメント 人間業じゃない。認めたくないけど歌手としての才能に溢れている

暁 20/20
コメント 言葉もないわ。文句なしの満点ね

総合得点 84/100

青葉「得点はなんと!84点!」

龍驤「やっぱ審査は真面目やな。ビッグセブンもコメントは真面目やな。結論がアホやけど」

青葉「長門さん以外は高得点でしたが、長門さんは何が気に入らなかったんでしょうか?」

龍驤「駆逐艦じゃないからって書いとるやん」

青葉「うーん、なぞですね。長門さんをどう攻略するかが鍵となりそうです」

龍驤「あ、こいつ話聞く気ないわ」

青葉「三番手は雷ちゃんの『増えるダンス』です」

龍驤「ワカメみたいやな。どんなんやろ」

青葉「これはどうみますか? 龍驤さん」

龍驤「さっきいったやんけ。しばくぞ」

~♪

青葉「あ! 音楽が始まりましたよ! これはどうでしょくか?」

龍驤「音楽の解説いる?」

青葉「もちろんですよ! そのために龍驤さんを呼んだんですから!」

龍驤「うーん。軽快なアップテンポの曲やな。ダンスにぴったりやと思うで」

青葉「予想通りのコメントありがとうございます。では始まるまで待ちましょうか」

龍驤「もっとコメントに触れろ。そして広げろ」

雷「……」

青葉「おっと始まるみたいですね」

龍驤「登場は普通やな」

青葉「雷ちゃんの左右にあるあれは、なんでしょうか? 龍驤さん」

龍驤「鏡やないかな。雷が映っとるしな。合わせ鏡ってやつやな」

雷「……♪」バッ

青葉「ダンスが始まりましたね」

龍驤「キレがあるな」

雷「……♪」サッ

青葉「なかなか激しいダンスです。よほど練習したんでしょうね」

龍驤「アップテンポの曲が雷にぴったりやな」

雷「……♪」バッ

青葉「ふむ、今のところ増える感じはありませんね」

龍驤「鏡がキー何やと思うけどな」

雷「……♪」バッ

青葉「今のところは鏡に大きな変化はありませんね。ちゃんと雷ちゃんが映ってますね」

龍驤「……いや待てよ。鏡合わせの雷の中で一人だけ別の動きしとるやつがおらんか?」

雷「……♪」サッ

青葉「!!」

青葉「本当ですね! 一人だけ別のダンスしてます! これはアハ体験ですね! 脳が若返った気がします!」

龍驤「それは知らんけどな」

雷・雷「「……♪」」バッ

青葉「いつの間にか雷ちゃんが二人になってます!」

龍驤「あれはたぶんウイッグつけた電やろか」

青葉「それにしても息ぴったりですね。双子みたいです」

龍驤「こういうの流行りそうやな。双子ダンス言うて」

雷・雷「「……♪」」ダッ

青葉「あれ? 引っ込みましたね」

龍驤「次はどうなるんやろうな」

青葉「どうなるんでしょうか? 見当もつきません! まさかまた増えるなんてことは! ないですよね!」

龍驤「実況めちゃめちゃ下手やな君」

雷「……♪」バッ

青葉「あっ……。減っちゃいましたね」

龍驤「正直増えると思っとったわ」

雷「……♪」シュ

青葉「あっ! 今度は青葉が発見しましたよ!」

龍驤「うん」

青葉「なんと! 鏡写しの雷ちゃんが! 別の動きをしてます!」

龍驤「今度は三人やな」

雷・雷・雷・雷「「「「……♪」」」」シュシュシュシュ

青葉「おお……。雷ちゃんが四人そろうと壮観ですねえ」

龍驤「電と他は誰やろな。文月とか若葉あたりか?」

~♪

青葉「そろそろクライマックスですかね?」

龍驤「曲の感じからいってそんな感じやな」

雷・雷・雷・雷「「「「……♪」」」」バッバッバッ

雷「……♪」ダッ

雷「……♪」ダッ

青葉「あれ!? あれはなんでしょうか?」

龍驤「おお」

青葉「なんと、舞台の端からさらに二人の雷ちゃんが参戦!」

龍驤「さらに増えるんやな」

雷・雷・雷・雷・雷・雷「「「「「「……♪」」」」」」バッバッバッバッ

龍驤「六人もおるのに一糸乱れぬダンスやな。もうこれ金取れるレベルやで」

青葉「確かにダンスは上手いですけどお、なーんか物足りないんですよね。まだなにかあるというなら話は別ですがね。 いやいやまさかこれ以上はないでしょう。ね? 龍驤さん」

龍驤「フリもめっちゃ下手やな君」

雷「……♪」ダッ

雷「……♪」ダッ

青葉「!!」

龍驤「!!」

青葉「なんと雷ちゃんがまた二人! 今度は客席から飛び出してきました!」

龍驤「客席にまで潜ませとったんやな。脱帽やな」

雷×8「「「「「「「「……♪」」」」」」」」バッバッ

青葉「おお……。すごい。8人も集まると壮大ですね。キング雷ちゃんになりそうです」

龍驤「かくし芸なんてレベルちゃうな」

雷×8「「「「「「「「……♪」」」」」」」」トトトトト

青葉「おっ! ついにフィニッシュでしょうか?」

龍驤「どんなポーズでおわるんやろ」

フッ

青葉「あれ? 電気が消えましたね」

ジャーン

雷「……!」ポーズ

龍驤「……最後は一人に戻るか。いや感動したわ」パチパチ

青葉「……へたくそなフリをしてた自分が恥ずかしいです」パチパチ

龍驤「ほんまにな」

青葉「えーっと、どうでしたか?」

龍驤「いやもうなんも言えんわ」

青葉「正直、青葉も感極まって言葉もないです。みなさんレベル高いですねほんと」

龍驤「漫才でも組んで出よかなと思ったけどやめてよかったわ」

青葉「それでは審査員のみなさん! 得点とコメントをどうぞ!」

長門 20/20
コメント 非常に愛らしかった。特に増えるというのが素晴らしい。うちにも一人ほしい

日向 15/20
コメント 練習の成果が見える。鏡を使った仕掛けもわるくない

赤城 15/20
コメント 後半の怒涛の展開は見事。最後に一人に戻るというのもメッセージ性があってグッド

那珂 14/20
コメント ダンスにまだ粗があるが、熱意と情熱は感じた。将来が楽しみ

暁 18/20
コメント 感動したわ。次に何がくるのかとドキドキしながら見てたわ

総合得点 82/100

青葉「総合得点は82点!」

龍驤「思ったより伸びんかったな」

青葉「やはりみなさん、どうしても加賀さんと比べてしまうんでしょうね」

龍驤「あれは人間業じゃないからなー」

青葉「それにしても! 長門さんが初の満点! というか二桁得点自体初めてですね!」

龍驤「ああもう触れんとこうと思ってたのに」

青葉「なにが原因だと思いますか?」

龍驤「性癖やないかな。一人ほしいとか書いとるし」

青葉「なるほど! わからないと!」

龍驤「もうそれでええわ」

青葉「さてラストを飾るのは卯月ちゃんの『パントマイム』です!」

龍驤「前二人のレベルが高かっただけに期待値も上がるな」

~♪

卯月「……」テケテケ

青葉「なんかどこかで聞いたことのあるような音楽で登場しましたね」

龍驤「なんやあの格好。羽織に、持ってるのは扇子か?」

卯月「……」スッ

卯月「……」パクパク

青葉「……これはまさか」

龍驤「エア落語?」

卯月「……」ビシッ

青葉「おお、これはこれですごいですね」

龍驤「仕種だけで落語を表現するとはな。たいしたもんや」

卯月「……」フーフー

卯月「……」ズルズル

青葉「龍驤さんあれは何でしょうか?」

龍驤「演目は『時そば』みたいやな。そばを食べとるとこやな」

青葉「ほお! 詳しいですね!」

龍驤「落語で食べる仕種ちゅうのは難しくてな。何せ小道具も何も使えんからな。如何に食べる仕種を表現するかで噺家の腕が問われるんや」

青葉「……龍驤さん。あんまり解説っぽいこと言わなくていいですよ。己の立場をわきまえてください」

龍驤「うち解説やないん?」

卯月「……」ペコ

青葉「お後がよろしいようでーっと」

龍驤「仕種だけやったのになぜか面白かったな」

卯月「……!?」ハッ

青葉「……? どうしたんでしょうか?」

龍驤「なんやあったんかいな」

卯月「……」グヌヌ

卯月「……!!」バッバッ

青葉「ん? まさかこれは」

龍驤「変身ポーズ?」

卯月「……」シャキーン

青葉「なるほど! どうやら落語中に敵が乱入してきたみたいですね」

龍驤「なんやそのシチュエーション。生まれて初めて聞いたわ」

卯月「……」キッ

青葉「おお! これから戦いの始まりですね!」

卯月「……」ダダダダ

卯月「……!」キーック

龍驤「急にえらいアグレッシブになったな」

卯月「……」グワーッ

龍驤「で、やられるんかい。めっちゃ弱いやん」

卯月「……」グググ

青葉「待ってください! 卯月ちゃんはまだ諦めていません! 会場のみんな! 青葉と一緒に卯月ちゃんを応援しましょう! がんばれー! 卯月ちゃーん!」

「「「「がんばれー! 負けるなー!」」」」

龍驤「ヒーローショーか」

卯月「……」ニッ

青葉「笑った!?」

龍驤「ピンチのときに笑うのってかっこええよな」

卯月「……」サッ

青葉「なんでしょう? あのポーズは?」

龍驤「うーんなんやろな」

卯月「……」ブーン

龍驤「あ、わかったで。あれ水上機飛ばしとんのや」

青葉「おお! なんとエア瑞雲ですか!?」

龍驤「瑞雲とは限らんけどな」

卯月「……」ピース

青葉「やったー! 勝ったみたいですね!」

龍驤「結局瑞雲だけで敵殲滅しよった」

卯月「……」ポロポロ

青葉「泣いてる……? 何かあったのでしょうか?」

龍驤「さっきまでめっちゃ笑顔でピースしとったやん。情緒不安定か」

卯月「……」スッ

青葉「ああ、わかりましたよ。さっきの戦いで友達を亡くしたんですね」グスッ

龍驤「なんでわかるん?」

卯月「……」ザッ

卯月「……」スタスタ

卯月『友の亡骸を越えて私は行く。そう、これが私の決めた道だから。さらばイマジナリーフレンドよ、私の心の中で生きよ』

青葉「ナレーションが入りましたね。いい話ですねえ」ポロポロ

龍驤「まあイマジナリーフレンドは心の中でしか生きられんやろな」

卯月『立ち止まるわけにはいかない。私はまだやるべきことがある。これが私の生き様だ。笑いたくば笑うがいい』

龍驤「ヒーローとしての宿命か。かっこええやんけ」

卯月『そして聞くがいい、私の噺を。客席で』

龍驤「落語のことかい」

青葉「さあ卯月ちゃんの『パントマイム』でした。どうでしたか?」

龍驤「あれパントマイムって呼んでええんかな? 面白かったけど」

青葉「無言劇って意味だそうですからいんじゃないですか?」

龍驤「ナレーション入っとったけど」

青葉「まあそれは置いといて、さあ審査員の皆さん! 得点とコメントをどうぞ!」

長門 20/20
コメント 可愛かった。表情がころころ変わってとてもよかった。もって帰りたい

日向 20/20
コメント ベストだ。特によかったのは瑞雲で敵を倒すところだな。卯月はよくわかってる

赤城 20/20
コメント そばをおいしそうに食べる卯月ちゃんを見て食欲が止まりません。わんこそば食べたい

那珂 15/20
コメント 次々に変わる展開に心躍る。言葉無しでここまで表現できるセンスには嫉妬すらおぼえる

暁 16/20
コメント 笑いあり涙ありの超大作を見てるようだったわ。見終わったあとの清涼感は素晴らしいわね

総合得点 91/100

青葉「91点! なんと満点が三人も!」

龍驤「加賀を越えたか。意外やな」

青葉「やはりこれは長門さんを味方につけたのが大きかったんでしょうか?」

龍驤「まあな。逆に言うと駆逐艦じゃないのにここまで善戦した加賀を褒めるべきやな」

青葉「日向さんと赤城さんも満点ですが、やはりそばと瑞雲を登場させたのが効いたんですかねえ」

龍驤「これはもう作戦勝ちやな」

青葉「さあ、これですべての審査が終わりました! 果たして優勝はどなたになるのでしょうか?」

龍驤「え? まだなんか順位変動する要素ある?」

青葉「もちろんです! 実は黙っていましたが、龍驤さんだけに与えられたスペシャルな権利があるんです!」

龍驤「そうなん?」

青葉「ええ! 龍驤さんが特に気に入った、という芸に特別に加点ができる権利です!」

龍驤「うわめっちゃ熱いやつやん。誰が優勝するかはうちにかかっとるわけやろ?」

青葉「その通りです! さあ龍驤さん! だれに加点するか決めてください!」

龍驤「うーん迷うな。あ、ちなみに何点加点していいん?」

青葉「一点です!」

龍驤「しばくぞ」

青葉「龍驤さんの加点も終了したところで結果発表です!」

青葉「発表しましょう! 今年のクリスマスかくし芸大会! 優勝者は! 卯月ちゃんの『パントマイム』に決定だー!」

「「「「わー!」」」」パチパチ

青葉「西洋の哲学者バークリーは言いました! 『存在するとは知覚されることである』と! 私たちは確かに感じました! 卯月ちゃんが食べるそばを! 戦っていた敵を! 放った瑞雲を! そして、友に誓ったあの決意を!」

青葉「であるならば、それはもう現実に存在しているといっても過言じゃないのです! 空想を超えて現実へと昇華させた卯月ちゃんに、今一度盛大なる拍手をお願いします!」

「「「「わー!」」」」パチパチ

青葉「他のみんなもよく頑張ってくれました! 今宵私たちが見たすべての芸! そのすべてが芸術というに相応しい! 『アートマンは不滅のものである』! そう感じずにはいられません!」

青葉「そして何よりも! こんな青葉に長時間付き合ってくれた龍驤さんに! 盛大な感謝と拍手をお願いします!」

「「「「わー!」」」」パチパチ

青葉「ありがとう! 龍驤さん! ありがとう! クリスマス!」

青葉「それではみなさん! 名残惜しいですが、この辺でお開きといたしましょう! 実況、司会進行、解説は青葉がお送りしました! メリークリスマス!」

龍驤「……」

龍驤「結局うちの役目はなんやったん?」

完!

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