朋也「な、なんだ!?」
??『オカザえもん』
朋也「オカザ…? ふざけてるのか? フリップじゃなく普通に話せよ」
オカザえもん『職業柄話すのはちょっと……』
朋也「どんな職業柄だよ!」
オカザえもん『そんなことより君に頼みがある』
朋也「今知り合ったばかりの奴の頼みなんて受ける理由がどこにある」
オカザえもん『君は今から、オカザえもんになるんだ』
オカザえもん「はあ? 何を言って……。な、なんだこれは?!」
オカザえもん『僕はもう、疲れた』
オカザえもん「いやいやいや、何を言ってるのか全く分からねえよ。なんなんだよコレ?!」
オカザえもん『後はヨロシク☆』
オカザえもん「ヨロシク☆ じゃね」
??「えっ!!」
ことみ「どうしたの、オカザえもん?」
オカザえもん「ことみか……?」
オカザえもん(夢か……。いかん、ことみの難しい本の話を聞いてたせいで変な夢を見てたんだな……)
オカザえもん「……ん?」
ことみ「どうかした?」
オカザえもん「待て、ことみ。今、俺のことなんて呼んだ?」
ことみ「変なオカザえもん。オカザえもんはオカザえもんなの」
オカザえもん「いやいやいや、なんの冗談だ」
ことみ「?? あっ!」
オカザえもん「そうだ、俺はオカザえもんではなく……」
ことみ「なんでやねん」
オカザえもん「……そうか、杏あたりになにか入れ知恵されたんだな?」
ことみ「なんでやねん」
オカザえもん「ことみ。悪いが用事があるんで先に帰るな」
ことみ「なんでやねん、ってオカザえもん? 行っちゃったの……」
春原「よーっす、オカザえもん!」
オカザえもん「春原か。案の定だが、お前も俺のことをそう呼ぶのな」
春原「なに言ってるんだ? いつもと同じじゃないか」
オカザえもん「お前のことだ。どうせ脅されてそんな風に振る舞ってるんだろ」
春原「よく分からないけど、すごく失礼なこと言ってるよね、お前!?」
オカザえもん「ま、いいさ。で何の用事だ?」
春原「いや、一緒に連れションでもどうかなと思ってさ」
オカザえもん「そんなことのためにわざわざ俺を探してたのか。気持ち悪い奴だな」
春原「探してねーよ! トイレ行こうとしたら偶然見かけたから声かけただけだよ!!」
オカザえもん「そういうことにしといてやるよ」
オカザえもん(そういえば、起きてから顔洗ってないな)
オカザえもん「ついていくのは癪だが、顔洗いたいしな」
春原「そこまで言うなら、付いてこなくていいんですけどねえ」
オカザえもん「誘ったのはお前だろ」
オカザえもん「な、なんだこれは……」
オカザえもん(なんだこの顔……? なんでこんなワケの分からない顔に……)
春原「ん、どうかしたのか? 顔に虫でも付いてたか?」
オカザえもん「この顔どこかで……」
オカザえもん(そうだ、夢で見たアイツだ。だがなんで俺の顔がアイツに……)
オカザえもん『君は今から、オカザえもんになるんだ』
オカザえもん(あれは夢の中の事だろ? 俺が嫌な夢を見るように杏が耳元でなにかささやくとかしてそれで……)
オカザえもん(そうじゃ……なかった? あれは現実で、俺は本当にオカザえもんになっちまったのか……?)
春原「おい、オカザえもん!」
オカザえもん「うるさい、少し黙ってろ!」
春原「……オカザえもん?」
オカザえもん「っ。すまん、取り乱した」
参考画像
Before: ttp://livedoor.blogimg.jp/tatuo_kaicho/imgs/3/2/32aedf09.Jpg
春原「どうしたんだよオカザえもん。お前少しおかしいぞ」
オカザえもん「なあ春原、俺の本当の名前は……なんだ?」
春原「本当にどうしちまっただんよ」
オカザえもん「答えてくれ、春原」
春原「オカザえもん、だろ。少なくとも僕はそう思ってる」
オカザえもん「……違う、俺は……岡崎朋也だ」
オカザえもん「なあ、思い出せよ!」
オカザえもん「一緒に馬鹿やってきたのはこんなふざけた顔の野郎だったか!? こんな奴と一緒にバスケ部相手とバスケして、サッカー部と喧嘩して、2人で喧嘩したのか?!」
春原「それは……そうだろ? なあ、岡ざ、き……?」
オカザえもん「っ! そうだ、俺は岡崎だ! オカザえもんなんかじゃない!」
春原「お前は……岡崎……。うっ、頭が……いてえ……」
オカザえもん「春原、思い出してくれ。お前は俺の……親友だろう?!」
春原「ごめん……オカザえもん……思い……出せないんだ……」
オカザえもん(結局、春原は体調不良を訴えてそのまま寮に帰ってしまった)
オカザえもん(なにが起きてるんだ、一体……)
杏「やっほー、オカザえもん」
オカザえもん「……杏か」
オカザえもん(最初はこいつがいらん事を言って回ってるのかと思っていたが、どうも違うようだ)
オカザえもん(人の呼び方を変えさせるのはともかく、俺の姿形まで変えるのは不可能だ)
オカザえもん(……逆に誰なら出来るんだ、て話だが……)
杏「なによー、つまんなそうな顔して。そんなに私と会うのが嫌かしら?」
オカザえもん「ちげーよ。ちょっと疲れてたんだ」
杏「やめてよねー、そうやって人に疲れを伝染させるの。あーやだやだ。アンタなんかより私のほうが絶対疲れてるんだからね」
オカザえもん「お前も、俺のことをオカザえもんだと思ってるんだな」
杏「はあ? 何言ってんのよ。アンタがオカザえもんじゃなければ、誰がオカザえもんなのよ」
オカザえもん「それは知らんが、俺は岡崎朋也だ」
杏「……とも、や……?」
オカザえもん「俺はオカザえもんなんて奴は知らない。一体、オカザえもんってなんなんだ」
杏「……頭、痛い……」
オカザえもん「杏! なにか思い出せないのか?!」
杏「あー! なんなのよもう! なんか思い出せそうなのに、こう、突っかかって出てこないのよ!」
杏「頭痛いし、ワケがわかんない!!」
オカザえもん「……無理を言ってすまなかった。仕方ないことなんだ、きっと……」
オカザえもん(あの後、見かけた知り合いに手あたり次第話しかけてみたが、何も知らないか、思い出せなくて苦しむか、そのどちらかしかいなかった)
オカザえもん(どうなってるんだ、一体……)
オカザえもん(……ああ、眠い……)
………………
…………
……
オカザえもん『おはよう』
オカザえもん「お、お前! お前のせいで俺は今大変な目に遭ってるんだぞ!!」
オカザえもん『それは違う』
オカザえもん「何が違うっていうんだ。どいつもこいつも俺のことをオカザえもんと呼ぶし、顔はお前と同じ顔になってるし……!」
オカザえもん「全部、お前が俺に押し付けたからだろ」
オカザえもん『それは、……詳しいことは言えない』
オカザえもん「お前は一体なにがしたいんだ。どうしたら俺は元に戻れる」
オカザえもん『元に戻りたいの?』
オカザえもん「当たり前だ! こんなワケの分からない姿でこの先一生過ごすなんてゴメンだ」
オカザえもん『この町は、この場所は好きですか?』
オカザえもん「嫌いだよ、話をそらすな」
オカザえもん『xxxxx』
オカザえもん(……なんだ? 字が霞んでよく見えない……)
オカザえもん「おい、見えない、ぞ……」
オカザえもん「……夢か」
オカザえもん(だが、ただの夢じゃなさそうだ。なにか意味のある夢、なのかもしれない)
オカザえもん(……もう一度寝れば……)
智代「いい度胸だな。二度寝どころか五度寝までしたとは」
オカザえもん「待て智代。これには事情があってだな……」
智代「ほう、言ってみろ」
……
…………
智代「なるほど、オカザえもんと話をするために何度も寝なおした、と。……オカザえもんはお前だろう。なにを言っている」
オカザえもん「今はそうだが、違うんだ。俺は岡崎朋也だ。お前なら、思い出してくれるだろ?」
智代「岡崎……、……ああ、確かに生徒会選挙のときにそんな奴の世話に……」
智代「待て、だが選挙の手助けをしてくれたのは、オカザえもんじゃ……」
オカザえもん「違う、それは岡崎朋也がやったことだ。オカザえもんなんていなかったんだ」
智代「……岡崎は、……オカザえもんはどうして生徒会選挙のときに私を手伝ってくれたんだろうか?」
オカザえもん「それは……」
智代「そうだ、演劇部だ。演劇部は無事に復活したのだろう? その後はどうなったんだ?」
オカザえもん「……演劇、部?」
智代「ん? あれは、オカザえもんではなかった、か……すまない、記憶が混濁しているみたいだ」
オカザえもん「いや、俺も変なことを言ってすまなかった」
智代「正直、オカザえもんの話は半信半疑だ」
オカザえもん「そうか……。いや、半分でも信じてくれるなら十分嬉しい」
智代「だが、二度寝まではともかく五度も寝る必要はなかったんじゃないか。結局二度寝以降は会えなかったのだろう?」
オカザえもん「うっ……」
智代「オカザえもん、お前の心の中にもう少し寝たいという気持ちは本当になかったか? 純粋にオカザえもんと話すためだけに3回も余分に眠ったのか?」
オカザえもん「それはもちろん……」
智代「……仕方ない。本来ならば反省文をたっぷりと書かせたい所だが、生徒会の雑用で許してやろう」
オカザえもん「雑用?」
智代「放課後、生徒会室に来るように。忘れたら今度こそ反省文だからな」
智代「もし反省文を書くとなったら、私がつきっきりで面倒をみてやるから安心してくれ」
オカザえもん「……分かった」
オカザえもん(智代と話して分かったことがある……)
オカザえもん(皆が俺のこと、いや『岡崎朋也』のことを忘れているように、俺も『何か』を忘れているんだ)
智代『演劇部は無事に復活したのだろう?』
オカザえもん(きっと『岡崎朋也が演劇部復活という見返りを求めて、智代に協力した』ということだ)
オカザえもん(どうして俺は演劇部を復活させようとした? そこになんの意味があったんだ?)
オカザえもん(……分からない……)
智代「流石に今度は遅刻せずに来たな」
オカザえもん「そりゃあ、HRが終わってからここに来るまでの間に遅刻する理由がないからな」
智代「それもそうだ。さて、それでは買い出しに行くぞ。オカザえもんお前は荷物持ちだ」
オカザえもん「荷物持ちはどうでもいいが、そのオカザえもんって呼ぶのやめてくれないか」
智代「ふむ、私としてはお前はオカザえもんなのだがな……。本人が嫌がっているならそれも仕方がないか」
智代「それなら、なんと呼べばいい? 岡崎か? しかしそうなると少し分かりにくいな……」
オカザえもん「分かりにくい? なにがだ」
智代「なにがって、ここは岡崎市だろう。岡崎と呼んだら町の話をしてるのかお前の話をしてるのか分かりづらいだろう」
オカザえもん「待て、この町はそんな名前だったか?」
智代「また変なことを言っているな、オカザ、えっと……朋也」
オカザえもん「いや、変なことを言ってるのは智代だろ。この町の名前はもっと別の……あれ?」
智代「岡崎で合ってるだろう? 私も今朝のことで少し記憶に自信がないが、それでも朋也は混乱しすぎだぞ」
オカザえもん「そう……だな……」
オカザえもん(……本当にそうだった……か? ダメだ、思い出せない……)
智代「買い物といえば康生町だな」
オカザえもん「なんというか、寂れてるな」
智代「そんなことはないぞ。……まあ確かに248号のイオンに多くの客を取られている感は否めないが、依然として地元に愛されている場所だ」
智代「住宅街からイオンに行こうとすれば山を越える必要があるが、康生は町全体が平地にあるから特に近所の人は大助かりだ」
智代「それに今の岡崎は康生のおかげであると言ってもいいほど歴史的に重要な場所なんだぞ」
オカザえもん「そうなのか」
智代「この町がどうして康生って言うのか、知ってるか?」
オカザえもん「いや知らん」
オカザえもん(そもそも岡崎市も康生町もさっき知った名前だしな)
智代「康生町は、徳川家『康』が『生』まれた町っていう意味なんだ。もし、家康が違う場所で生まれていたら、康生の発展はありえなかった」
智代「康生が発展しなければ岡崎が今ほど発展していたかも分からない。それほど重要な場所なんだ」
オカザえもん「へえ、相変わらず色々知ってるな」
智代「岡崎市民なら知ってて当然だ、朋也」
オカザえもん「そ、そうか……」
智代「でも確かに、朋也の言う通りずいぶん寂れてしまったよ。大きなデパートはあるが、テナントはどんどんと抜けていく」
智代「時代に合わないのかもしれないな……」
オカザえもん「智代は、ここが好きなのか?」
智代「……そうだな、思い入れのある場所だ。昔はスケートリンクがあって家族で遊びに行ったりしたんだ。小さかったが映画館もあってな」
智代「座っていれば次の上映もその次の上映もずっと見ていられたな。楽しいものは全部、この場所にあった」
智代「なくなってしまったのは、求められていなかったからなのだろうな」
智代「すまない、暗い話をしてしまったな。それよりも買い出しだ。朋也には今日の荷物全部持ってもらうからな」
オカザえもん「ああ、気にするな。任せておけ」
アフターの汐生まれたあとあたりを想定
一発ネタだったんだけどそこそこシリアスっぽい路線に入ってしまって困惑している
オカザえもん(忘れている事が、知らないことがある。そこに何か重要なヒントがあるような気がする)
オカザえもん(それが分かれば、もとにもどれるかもしれない)
オカザえもん『戻る意味はあるの?』
オカザえもん「また出たな。ということは、今ここは夢か」
オカザえもん『戻って待っているのは君の嫌いな場所だ』
オカザえもん「っ……」
オカザえもん『それでも戻りたいのかい?』
オカザえもん「確かに……」
オカザえもん『君はこのままで良いんだ』
オカザえもん「はっ?!」
オカザえもん(またアイツの夢か……)
オカザえもん(確かに、もし俺の知っている所に戻ったとしてどうするって言うんだ)
オカザえもん(……今と変わらない。いや)
オカザえもん(どうせここは現実じゃない、それだけでこっちの方がよほど気楽だ)
オカザえもん(ずっと夢を見ていられるならそれで良いじゃないか。何も悪いことは……ない……)
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