女「私達恋人らしい事してないよね?」彼女「えっ」 (14)

彼女「いや、十分してるでしょ」

女「例えば?」

彼女「えっ。……き、キス……とか」

女「キスなんて友達同士でも普通にするでしょ」

彼女「どこが情報源よ、それ」

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彼女「デートはどう?」

女「友達同士でも茶化してデートなんて言うじゃんかー」

彼女「恋人繋ぎ」

女「結婚しててもアツアツならやるっしょ」

彼女「名前にちゃんと恋人って入ってるじゃない」

女「おしどり夫婦だって実際のオシドリは繁殖の度に相手を変えるから名前だけじゃちょっと」

彼女「ど、独占欲とか嫉妬とか……」

女「そんなの仲のいい友達になら普通にするよ」

彼女「なっ……! お、女はわた、と、友達に独占欲を抱いた事があるの……!?」

女「小っちゃいときの話だよ、小っちゃいときの。彼女だってそのくらいならするでしょ?」

彼女「……」ムスッ

彼女「……女ってたまに変な方向に真面目になるよね」

女「何? 惚れ直した?」

彼女「……」

女「否定しないって事はそう言う事だって自惚れちゃうよ?」キャッ

彼女「……そんなに全力投球してないでたまには休んだらどうなの?」

女「彼女には黙ってたけど……私、マグロなんだよ」

彼女「……!? えっ、だって、え、えっち、の、時……」カァ

女「……あー。そっちのマグロじゃなくて魚のマグロね」

彼女「……え……」カァァ

女「私はマグロなの。常に泳いでいないと生きていけないんだよ!」グッ

彼女「……マグロだって常に全力で泳いでいるわけじゃないんだけど」

彼女「……なら……」ボソボソ

女「ん?」

彼女「……えっち、なら?」カァ

女「性行為なんてセフレでもやるじゃん」

女「そもそもあれだよ、その発言は思いっきり『ろまんちっくあせくしゃる』の存在を無視してるよ!」ビシィッ

彼女「ろ、ろまん……?」

女「恋愛感情を抱くけど他者に性的欲求を抱かない人ね」

彼女「……何? あなたIQが急上昇する薬でも飲んだの?」

女「いや、そんなのあったらとうの昔に常備薬にしてるからね」

彼女「……確かにそうね。私が馬鹿だったわ」

女「そこで納得されるとちょっと……」

女「……で、他にはないの? 恋人らしい事」

彼女「……結婚は?」

女「結婚なんて恋人の終わりじゃん。夫婦になっちゃうんだし」

彼女「……」

女「そもそもお見合い結婚がある時点で恋人だけがするものじゃないっしょ」

彼女「……プロポーズ」

女「……え?」

彼女「プロポーズなら文句ないでしょ。恋人以外ではまずしないわ」

女「……いや、そんな一回こっきりの物を恋人らしい事って言われても……」

彼女「」

女「そもそも失敗したら即破局だし」

彼女「……さっきから、ことごとく私の思う恋人らしい事が否定されているのだけれど」

女「だって恋人だけがするとは限らないかなーって思ったんだもん」

彼女「……それを言うなら私が恋愛感情だって思ってるこれだって恋愛感情とは限らないじゃない」ムスッ

女「なっ……! か、彼女は私の事好きじゃないの!?」

彼女「そ、そうは言ってないでしょ……!?」

彼女「ただ、恋人らしい事を求めるうえで恋愛感情の定義を避けるわけにはいかないと思っただけで……」

女「そもそもこれが恋愛感情かどうかなんて私が決める以外になくない?」

女「他人には感情を本当に量る事なんて出来ないんだし」

彼女「……それを言うなら本人にだって感情を本当に量る事は難しいと思うけど……」

女「そうだけど、でもそれ異性同士でも当てはまる話っしょ」

女「男と女ならさ、たとえ友情でも外野がやれ恋だ愛だって決めつけてかかるんだよね」

女「女同士だとどんなに恋愛ど真ん中でも友情で片づけるくせにさ」

彼女「……そもそも、なんでそんなに恋人らしい事に拘るのよ」

彼女「そこを説明されないうちに提案を否定され続けるのって非生産的だと思うのだけど」

女「……」

女「そう、だよね。うん。ちゃんと説明する」

女「夫婦だって親子だって紙切れ一枚でそれを証明できる」

女「でも恋人ってそれを証明するものが何一つないんだよ?」

彼女「そんなの友達とか親友とかにも同じ事が言えるじゃない」

女「だからだよ」

女「ほら、よくあるでしょ? 友達だと思ってた相手から知り合いとしかみなされてなかったって」

女「それと同じ事が、私たちの関係にも言えるんじゃないかな」

彼女「……」

女「私達は本当に恋人なの? 私が、私達が勝手に恋人だと思い込んでるだけで実際はただの友達じゃないの?」

女「だから、せめて恋人らしい事さえ分かれば胸を張って恋人だって言えるかな、って……」

彼女「女……」

彼女「……そんなに不安なら、その……」

女「……何?」

彼女「……証明できる関係に、なってみる?」

女「それって……」

彼女「……」カァ

女「いや、流石に恋人もちゃんと出来てないうちにパートナーになるのはちょっと……」

彼女「」

女「パートナーになっちゃったら恋人が満喫できなくなっちゃうし私まだ彼女と恋人を味わいたいしなあ……」

女「彼女だって私が好きなものを最後までとっておくタイプだってよく知ってるでしょ?」

彼女「」

女「確かにパートナーになるってすっごく魅力的だよ?」

女「でも、そんなに急いで駆け上がっちゃう必要もないと思うしなるべく濃密な時間を過ごしたいしねえ……」

彼女「……か」ボソッ

女「……うん?」

彼女「……女の馬鹿!」ポカッ

女「うわっ!」

彼女「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」ポカポカポカ

女「痛い痛い! 痛くないけど痛い!」ポカポカポカ

彼女「……」

女「うーん、やっぱ難しいのかな。恋人らしい事」

彼女「……なら」

女「うん?」

彼女「……これから……探しに行きましょうよ」

彼女「その……恋人らしい事、を」カァ

女「……その、さ。幻滅、しなかったの?」

彼女「この程度で幻滅するならあなたの事なんて好きになってないわ」

女「……外、寒いよ?」

彼女「マフラー一つあれば寒くないんじゃない?」

女「……つまりマフラーさえあれば全裸でも寒くないって事!?」キュピン

彼女「……馬鹿」クスッ

女「手袋はどうする? 一組? 二組?」

彼女「一組で十分でしょ」

女「……おっしゃー! これから恋人らしい事、探しに行くぞー!」タッ

彼女「コートくらい着なさい! 風邪ひくでしょうが」

彼女「……いや、ひかないかも。やっぱり」

女「そこは風邪ひくって言いきってよ!」

おわり

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