小早川紗枝「八つ橋こんちぇると」 (11)

かなり短めのデレマスのSSです。

気軽に読めてふふってはんなり出来たら幸いです。

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紗枝「八ツ橋おいしおすなぁ~」


――――――小早川紗枝の食べているそれは、どう見ても鳩サブレだった。


紗枝の発したその一言で、事務所にいたアイドル達にピリリと緊張が走る。

百歩譲って焼き八ツ橋を食べているならわかる。

しかし、紗枝が手にしているのは生八ツ橋なのだ。

やわらかいニッキにあんこがインしているのだ。


友紀「(え?紗枝ちゃん何言ってるの…?)」

幸子「(カワイイボク達をからかってるんでしょうか…?それともドッキリ……?)」


ひそひそと紗枝を見ながら話す友紀と幸子。

その間も紗枝は気にせず八ッ橋(鳩サブレ)を食べている。

怪訝に思った幸子は髪の横ハネをぴょんと跳ねさせながら、きょろきょろとカメラを探し始めた。


幸子「(ドッキリだとしたら、カメラの位置を把握してボクがかわいく映る角度を探さないと…)」

周子「(まぁまぁみなさん落ち着きなさいな。ここは八ッ橋に定評のあるシューコちゃんに任せなさいな)」

友紀「(シューコパイセン!)」


慌てるみんなをよそに、塩見周子は自信満々に紗枝に近づいた。

周子は確信していた。

和菓子屋の看板娘だったアタシなら食べればわかる、と。

京都生まれなめんな、と。


周子「紗枝ちゃんグッドモーニングさんどす~」

紗枝「あら周子はん、おはようさん~」

周子「八ッ橋懐かしいー。いっこちょうだーい」

紗枝「ええよ~」

周子「ありがとーん」


紗枝から八ッ橋(鳩サブレ)を受け取ると、周子は鳩の頭の部分を一口かじってみた。

パリッと心地よい音をたて歯ごたえのある感触とサブレの風味が口の中に広がる。

牛乳と一緒に食べたいなーと思いつつ、周子は確信した。


――――――周子の食べているそれは、どう味わっても鳩サブレだった。


周子「(みんな聞いて!これ鳩サブレだよ!)」

友紀「(マジっすかパイセン流石ッス!)」

幸子「(いやだから見ればわかりますって……何が京都生まれなめんな、ですか……)」


幸子はため息をつきながら再びカメラを探し始めた。

これはどう考えてもドッキリだ、プロとしてかわいくカメラに映ってかわいく騙されなければ。

まずはカメラの位置を把握して…。


紗枝「いやぁ、みなはんこそこそしはってどないしはりました~?」

幸子「ひぃ!な、なんでもないですよ!」

友紀「紗枝ちゃんあたしにも鳩サブ…八ッ橋ちょうだーい!」

紗枝「ええよ~」

友紀「ありがとうー!」


紗枝から八ッ橋(鳩サブレ)を受け取ると、友紀は鳩のしっぽの部分を一口かじってみた。

パリッと心地よい音をたて歯ごたえのある感触とサブレの風味が口の中に広がる。


――――――友紀の食べているそれは、何が何でも鳩サブレだった。


友紀「この八ッ橋美味しいね!牛乳と一緒に食べたいね!」

紗枝「せやろ~?幸子はんも食べます~?」

幸子「じゃ、じゃあお言葉に甘えて一つ…」


もしかしたらこれはただの紗枝のイタズラなのかもしれない、と幸子は思った。

この八ッ橋(鳩サブレ)も実は鳩サブレの形をした新しい八ッ橋なのかもしれない。

小早川紗枝という少女は、たまにそういったイタズラをすることもあるのだ。

イタズラはんなりっ娘なのだ。

そして姫川友紀と塩見周子という大人も、そういったイタズラが大好きなのだ。

もういい大人なのにだ。


幸子「いただきます…」


紗枝から八ッ橋(鳩サブレ)を受け取ると、幸子は鳩のお腹の部分を一口かじってみた。

パリッと心地よい音をたて歯ごたえのある感触とサブレの風味が口の中に広がる。


――――――幸子の食べているそれは、やっぱり鳩サブレやないかい!


幸子「やっぱり鳩サブレやないかい!」

紗枝「はい~?はとさぶれぇ?」

幸子「八ッ橋じゃなくて鳩サブレですよねこれ!いくらボクがカワイイからってこんなのじゃ騙されませんよ!」


ビシッと指を指してフフーンする幸子。

ちなみに多田李衣菜はこの状況についていけず、10分前から泡を吹いて倒れている。

彼女にこの空間はまだ早すぎたのだ。


志希「ふふふ、実験は成功したようだね紗枝君」

紗枝「せやね~」

周子「わーい志希にゃん先生だー!」


待ってましたとばかりに扉を開けて事務所に入ってきた一ノ瀬志希。

その手には『なんでも鳩サブレコロン』と書かれた薬品が握られている。


幸子「実験……?」

志希「にゃはー☆ちょっと紗枝ちゃんに協力してもらって、新しいコロンの実験に協力してもらってたのだよー」

友紀「新しいコロンって、その手に持ってる怪しげな薬のこと?」

志希「そーそー。食べ物が全部鳩サブレに見えるこのコロンを部屋に充満させて、八ッ橋が鳩サブレに見えるか実験してたのさ!」

幸子「でもこれ、味も鳩サブレの味がしますけど…」


そう言って八ッ橋(鳩サブレ)をかじる幸子。

パリッと心地よい音を以下略。

たしかにそれからは鳩サブレの味がした。


志希「ふふふ、味覚って言うのは不思議なものでね。鳩サブレの匂いがする鳩サブレに見えるものを食べると、それが八ッ橋でも鳩サブレに感じるものなのだよ」

友紀「なるほど流石志希先生だー!さっぱりわかんないやー!」

周子「じゃあ鼻をつまんで目を閉じて食べれば、これも八ッ橋の味がするの?」

志希「そだよー」

周子「わー試してみよー」


八ッ橋(鳩サブレ)をかじる周子。

鼻をつまんでいるせいで何の味も感じなかった。


周子「わー何も味しないよー騙されたー」

幸子「何やってるですかアナタは……」

志希「まぁまぁ何はともあれ、みなさんご協力ありがとうね!実験は成功だね紗枝ちゃ~ん、ご協力感謝するよ」

紗枝「ホントに実験は成功だな~……………なんせ、着物着て京言葉を話すだけでみんなずっと"私"が紗枝に見えてたんだから」

周子幸子友紀志希「「「「……え?」」」」




おしまい!


以上です。
それではごきげんようどすえ~。

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