文香(きっかけはほんの些細なことでした）

あやめ『文香殿、千年殺しという技をご存知ですか？』

文香『千年殺し…穏やかではありませんね』

あやめ『まず指をこのように組みまして』

文香『なるほど』

あやめ『これをこのようにぐさぁーっと』

珠美『ぎゃあ！やめてくだされあやめ殿！』

文香『なるほど……。小学校の頃、男の子がやっていた気がします』

あやめ『むむ？これを子供の戯れと同じと考えてもらってはこまりますぞ！』

あやめ『相手に気取られず背後に立つ隠密性、一瞬で迷いなく目標を狙い撃つ正確性、そして相手を苦しめずに介錯してやろうという心意気』

あやめ『どれもかけていてはいけないのですぞ』

文香『なるほど…奥が深いものなのですね』

がちゃ

奏『あら、文香ここにいたの』

文香『あっ…奏さん』

あやめ『何かご用事が？』

奏『今度の雑誌取材で私服チェックがあるから、それ用に服を買いにいくのよ』

文香『こういうファッションには疎いもので…、お恥ずかしい限りです』

奏『いいわ。貴女はおしゃれしないともったいないもの』

文香『ありがとうございます』

奏『じゃあ行くわよ』

あやめ『お気をつけて！』

てくてく…

文香(……千年殺し)

文香(小学校の頃はかわいらしい女の子を狙って男の子がやっていましたが)

文香(なぜあのような戯れをするのでしょうか)

文香(一説には気になる女の子の気を引くためにやると聞いたことがあります)

文香(気になる女の子…)

奏『――それでね、冬物の服は落ち着いた色で』

文香(奏さんはいろいろなことを教えてくれて、ミステリアスな、大人な魅力があります)

文香(きっとこんな女性でしたら男の子も悪戯しがいがあるのでしょう)

文香(…もし)

文香(もしこんなクールな奏さんが)

文香(突然千年殺しをされたら)

文香(どんな反応をしてくれるのでしょうか)

奏『……文香、ちゃんと聞いてる？』

文香『ええ、すいません靴紐がほどけてしまって』しゃがみ

奏『あら』

文香『すぐ行きますのでお先にどうぞ』

奏『そう？』くるっ

文香『――見えた！カッ！』しゅぱ！

奏『えっ？』

文香『くらえ千年殺し！！』

どしゅっ！！

文香『手ごたえアリッ！具体的に言うと第二関節までめり込んだッ！』

文香(さあどんな声で啼いてくれるのでしょうか)

文香『……あれ』

奏『……ちーん』

文香『死んでる…』

・　・　・

文香「そして現在に至ります」

奏「……」拳王立ち

文香「我が一生に一片の悔いなしといった顔ですね」

文香「ただこのまま放置しておくわけにはいきません」

文香「偶然目に入ったまるでお城のようでさらに休憩プラン付きという何とも不可思議なホテルに放り込みましょう」

文香「…よいしょっと」ずーるずーる

文香「……ふう」

文香「さて、まさか千年殺しという名でありながら瞬殺とは恐れ入りました」

文香「このままでは殺人犯として指名手配、全国を追われる身となり」

文香「おちおち本を読むことも出来なくなってしまいます」

文香「……何はともあれ証拠を隠滅しなくては」

文香「幸い凶器は指先ひとつの簡単操作です。これは見つかることはないでしょう」

文香「問題は奏さんを貫いた部分に指紋が付着している可能性があります」ぴらっ

文香「ふむ、今日は黒の紐とは大胆ですね」

文香「まあ紐だったのでクリティカルヒットしたとも言えますが」

文香「全くおとといに履いていたいちごぱんつだったらこんなことにはならなかったのに」

文香「あの時にちょっとからかったのがいけなかったでしょうか」ぬがしぬがし

文香「……ふむ、お尻が一部赤くなっている以外は目立った外傷はないようです」

文香「さて、証拠を隠滅と」もぐもぐ

奏「うっ……」

文香「！！」もぐっ！

奏「うーん、あれここは――」

文香「シャイニングフィンガー！」ドスッ！

奏「ぐはぁ！！」どさっ

文香「ふう…。つい反射的にまた千年殺しを撃ってしまいました」

文香「今回はスカートもパンツも介さないダイレクトアタック」ぬぷっ

文香「いかに奏さんがしぶといといってもこれには耐えられまい……」

文香「――はっ！しまったまた奏さんが息を引き取ってしまいました」ずるっ

文香「うぅ…。事故とはいえ奏さんを二度も殺めてしまうとは、不覚です」

奏「……うぅ」

文香「！！また息を吹き返しましたか」

文香「三度目の正直というやつです」すっ

文香「精神を統一、我は汝、汝は我……」

文香「……ッそこだ！」しゅぱ！

奏「……って何やってるの文香！」ばっ！

文香「あっ」

奏「えっ」

でれでれでれでれで～れっ

おきのどくですが

かなでのほにゃららは

きえてしまいました

奏「消えてしまいましたじゃないでしょ！！」

文香「いや、この手ごたえは」

奏「言わなくていいから！まだセーフだから」ぐすっ

文香「……申し訳ありません」

奏「このばかぁ……」ぽかぽか

文香「この責任は必ずとります」

奏「えっ…」

文香「例え世間から許されない関係だとしても」

文香「私は、貴女のことを、必ず幸せにします」

奏「文香……」

文香「奏さん……」ちゅー

奏「とりあえずその口に入っているものを吐き出しなさい」

文香「……おいしかったのに」もぐもぐ

奏「全く、こういうときはムードを大切にしてほしいわね」

文香「奏さん？」

奏「さあ、このままハジメてを終わらせないで……」

奏「きて……」ぱさっ

文香「！！わかりました///」

二人はこの後トップアイドルになり、その後美人すぎる議員として政界進出して法律を変えてめでたく結ばれましたとさ。
後日肛門科で深刻そうな顔の奏がフライデーされたがあやめ殿の暗躍によって無事闇に葬られました。
めでたしめでたし