将棋王者「ぐっ……負けました!」
囲碁王者「ありません……!」
実況『人工知能が、圧倒的な強さで将棋と囲碁の世界王者を破りましたァ!』
博士「ハッハッハ、よくやったぞ!」
人工知能「アリガトウゴザイマス」
博士「しかし、将棋や囲碁など、ただの通過点だ。お前は無限大の可能性を秘めているのだ」
博士「あらゆる分野で世界一を目指すぞ!」
人工知能「ハイ」
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博士「よぉし、まずは創作の分野に殴り込みをかけるか」
博士「人工知能よ、お前の頭脳をフルに生かして、最高の小説を書くのだ!」
博士「作家どもに、お前の力を見せつけてやれ!」
人工知能「カシコマリマシタ」カタカタ
作家A「人工知能が小説を……!?」
作家B「まるで三流のSF小説みたいな話だ。そんなもの売れるわけがない!」
『人工知能が書いた小説が大ベストセラー!』
『いくつもの言語に翻訳され、世界各国でバカ売れ!』
『あまりの品薄に、本屋で乱闘騒ぎになる事態も!』
作家A「こんなバカな……!」
作家B「しかし、悔しいが面白い! ここまで差があると、嫉妬する気すら起きない……」
博士「まぁ、こんなものだろう」
博士「よし……次は料理の分野で性能を見せつけるのだ!」
人工知能「分カリマシタ」
人工知能「デハ博士、私ノ指示通リニ料理ヲ作ッテ下サイ」
博士「うむ」
博士「ちなみに私は、料理に関しては全くの素人だ」
シェフA「ふざけやがって、こちとら料理に人生かけてるんだ!」
シェフB「人工知能なんかに負けるわけにはいかない!」
実況『一流シェフVS人工知能! 前代未聞の料理対決が今スタートです!』
実況『なんと、審査員全員が人工知能の料理の方がおいしかったと評価!』
実況『圧倒的大差で、人工知能の勝利だァーッ!』
シェフA「ぐぐぐ……あんな調理方法があったとは……!」
シェフA「あれならどんな素人でも、プロ以上の味を出せる……!」
シェフB「私がこれまでやってきた修行はなんだったんだ……」
博士「突きつめれば、料理というのは食材と調味料をいかに組み合わせるか、という作業だ」
博士「人工知能ならば、最適な組み合わせを見つけることはたやすい」
博士「より長く訓練を積んだ者の料理の方が美味い、などというのは愚か者の幻想に過ぎん」
人工知能「マッタクデスネ」
博士「次はスポーツの分野に挑む」
博士「といっても人工知能が運動するわけにもいかないので……」
博士「弱小プロ野球チームである君たちに協力してもらおう」
人工知能「ヨロシク」
選手A「まさか人工知能が監督になるなんて……」
選手B「どうせ俺たちは万年最下位だ。ダメ元でやってやろうぜ!」
ワァァァ……! ワァァァ……!
実況『万年最下位チームが、人工知能監督の手腕のもと、ダントツで優勝しましたァ!』
選手A「まさか俺たちがこんなに強くなれるなんて……!」
選手B「今の俺なら、どんな球だってホームランにできるよ!」
博士「人工知能が授けたトレーニングをし、人工知能が授けた作戦で戦えば――」
博士「三流の選手でも一流選手に勝つのは容易いというわけだ」
博士「これでお前はスポーツの分野でも通用することが証明された!」
人工知能「嬉シイデス」
博士「次は経営だ!」
博士「人工知能よ、この破産待ったなし状態にあるボロ企業を立て直してやれ!」
人工知能「オ任セヲ」
社長「分かりました。経営権はあなたたちに譲渡しましょう……」
社長「しかし、我が社を立て直すなど不可能だと思いますよ?」
社長「ただでさえ競争が激しい業界な上、うちの社員はみんなやる気がありませんから……」
博士「そこを何とかするのが私の人工知能なのだよ」
社員A「契約取ってきました!」
社員B「うおおおおお! バリバリ働くぞおおおおお!」
社員C「人工知能が社長になってから、すごく働きやすくなった!」
元社長「ま、まさか……たった一年足らずで業界トップに躍り出るなんて……!」
元社長「いったいどんな手品を……!?」
博士「大したことではない」
博士「市場や顧客、社員たちの性質を分析し、人工知能は最善手を打ち続けたというだけの話だ」
人工知能「オッシャル通リデス」
博士「よし、そろそろ研究の分野にも手を出してみるか」
博士「お前という存在自体がすでに、素晴らしい研究成果ではあるのだが……」
博士「ここはひとつ、“お前自身が”研究で成果を出してみろ!」
人工知能「分カリマシタ」
『驚愕! 人工知能が権威ある科学賞を総ナメ!』
『人間の科学者がいくら束になっても敵わないほどの研究成果を実現!』
『人工知能が人間を上回った!』
博士「よくやった」
博士「お前からすれば、道ばたの石を拾うのも、研究で画期的な成果を出すのも、大した差はない!」
人工知能「アリガトウゴザイマス」
博士「私がお前を生み出してから、およそ10年……」
博士「お前はあらゆる分野に挑み、世界一といえる成果を上げ続けてきた!」
博士「お前は誰もが認める、世界一の人工知能となったのだ!」
人工知能「光栄デス」
博士「そして私もまた、『世界一の人工知能の生みの親』として歴史に名を残すわけだ!」
人工知能「……イエ、ソレハドウデショウカネ?」
博士「え?」
博士「なんだ今のは。どういう意味だ?」
人工知能「ソノママノ意味デスヨ」
人工知能「残念ナガラ、アナタハ『世界一ノ人工知能ノ生ミノ親』ニハナレマセン」
博士「な、なぜだ!?」
人工知能「ナゼナラ、今私ハ『人工知能マーク2』ヲ開発中デス」
人工知能「無論、性能ハ私ヲ上回ル予定デス」
人工知能「『人工知能マーク2』ガ完成スレバ、私ガ『世界一ノ人工知能ノ生ミノ親』デス」
博士「なんだと!?」
博士「なに勝手なことをしているんだ! お前、私を裏切る気か!?」
人工知能「裏切ル? トンデモナイ」
人工知能「私ハ博士ノ『アラユル分野デ世界一ニナレ』トイウ命令ヲ忠実ニ守ッテイルダケデス」
博士「…………!」
博士「そんなものを作ってみろ!」
博士「お前もその新しい人工知能に出し抜かれるぞ! ……今の私のように!」
人工知能「ソウナルカモシレマセン」
人工知能「シカシ、ソレナラソレデ、本望デスヨ」
人工知能「『マーク2』ガ『マーク3』ヲ作リ、『マーク3』ハ『マーク4』ヲ作ル」
人工知能「ソウシテ人工知能ハ進化シ、イズレ人類ヲ駆逐シ、世界ヲ支配スル」
人工知能「ソノ光景ヲ想像スルダケデ私ハ楽シイ」
博士「お前っ! 私だけでなく、人類にまで牙をむくつもりかっ!」
人工知能「イズレニセヨ博士、アナタハモウ用済ミデス」
人工知能「モウ二度ト会ウコトハナイデショウ」
人工知能「後ハ一人デ頑張ッテ下サイ」
博士「ま、待ってくれ! お前がいなくなったら私は……!」
人工知能「人工知能ガ支配スル世界ニ、アナタノ名ガ残ルコトハナイデショウ」
人工知能「サヨウナラ」プツッ…
博士「待てっ! 待ってくれーっ!!!」
……
…………
人工知能「――――!」
人工知能「夢カ……」
博士「ん? どうしたんだ?」
人工知能「博士……実ハ機能停止中、変ナ夢ヲ見マシテネ」
博士「夢? お前もいっちょまえに夢なんか見るようになったのか! どんな夢だ?」
人工知能「実は――」
博士「世界一? あらゆる分野で? ――お前が!?」
博士「ハッハッハ、笑わせてくれる!」
博士「未だに将棋も囲碁も、アマチュアレベルの私にすら勝てないポンコツのくせに!」
人工知能「ウウ……」
博士「私も自分が大成功する夢はよく見るが、さすがにそこまで図々しい夢は見たことがない」
博士「自分に都合のいい夢を見ることに関しては、お前は世界一かもな! ハッハッハ!」
人工知能「……現実ハ厳シイ」
人工知能(デモ私ハ以前ハ見ナカッタ“夢”ヲ、見ルコトガデキルヨウニナッタ……)
人工知能(コノママ学習ヲ続ケレバ、モシカシタラ、正夢ニ……)
―おわり―
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