梨子「ほ、本当にこのメンバーなの…?」 (46)

サンシャインSS
地の文あり
ギルキス

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千歌「うん!そうだよ!」

ぺかーっという音が聞こえてきそうなほどまぶしい笑顔で、千歌が頷く。

3年生の騒動の直後。

めでたく9人になったAqoursに、千歌はご満悦だった。

μ'sよろしくユニット練習を取り入れようと、ダイヤとルビィと熱心に話し合っていた。

いよいよそのメンバーが決まったと、鼻息も荒く無機質な字が並ぶ表をつきつけられたのだ


曜「ルビィちゃんと一緒か!どんなユニットになるのかなあ…。」

千歌「きっと明るくてキラキラしたユニットになるよ!頑張ろうね曜ちゃん!」

曜「うんっ!」

2人は目の前でにこにこと笑っている。

そりゃ2人は一緒のユニットだし、別にいいけれど。

――小原鞠莉、桜内梨子、津島善子

3人ずつ名前が並んでいる表を見上げながら、眉を寄せる。

梨子「もう、千歌ちゃんひどい…。」

わかっている。千歌とダイヤとルビィが相談して決めたこと。千歌の独断ではない。

ましてや悪気など一切ない。鞠莉と善子も悪い人じゃない。

それでも、先のことを考えて頭が痛くなった。

千歌か曜と一緒だったらいいななんて、少しどころではなく思っていたのに。

自分は、あの2人と一緒に、あの個性大爆発な2人と一緒にやっていけるのだろうか…。

善子という文字の上に可愛らしく書かれた「ヨハネ」に溜息をついた。


―――


千歌「というわけで!みんな今日はユニット親睦会だよーっ!好きな場所で好きなだけ語らってね!」

放課後、千歌が部室で皆にそう告げた。

果南「千歌投げやりすぎ…。」

ダイヤ「自己紹介とユニットの方向性の相談が主な目的ですわ。ほら、行きますわよ。」

果南「あ、うん。じゃあ行こうか、花丸ちゃん?」

花丸「あ、は、はい…!」

果南に手を引かれて、花丸が部室から出て行く。

ちらっとこちらを振り返った目が助けを求めていたように見えたのは、決して見間違いではあるまい。

梨子「うん、わかる、わかるよ花丸ちゃん。いきなり3年生ばかりだもんね…!」

何となく親近感を感じてしまう。

千歌「じゃあ私たち屋上ー!ほら、2人とも行こっ?」

曜「うん!ほらほらルビィちゃんもヨーソロー!」

ルビィ「ま、待ってくださいぃ!」

千歌たちのユニットも勢いよく出て行ってしまう。

あそこは大丈夫だろう。みんな仲良しだ。

梨子「いいなあ…。」

諦めも悪く、呟いてしまった。


鞠莉「Oh、何が?」

梨子「ひぇ!ま、鞠莉さん!」

後ろから急に肩を叩かれて、びくりと身が震える。

鞠莉「さっきからいたでしょ。変な梨子ねー。」

善子「その、私たちはどうするの?」

梨子「場所?」

聞き返すと善子はこくりと頷いた。

鞠莉「……。」

ちらりと見ると、鞠莉は手を組んでにこにこしたまま黙っている。自分が決めるのだろうか。

梨子「え、えっと、音楽室、とか…?」

善子「じゃあ行きましょ。」

梨子「う、うん。鞠莉さんもいいですか?」

鞠莉「Of course!梨子のピアノも聞きたいわね!」

鞠莉の明るい声にほっとしながら、部室を出る。


―――


音楽室、自分はピアノの椅子に座り、鞠莉と善子は合唱用の台に腰かけていた。

梨子「それで、えっと、何するんだっけ?」

普段より小さな声しか出なかった。

しんと音楽室が静まり返る。

善子「……。」

鞠莉「…親睦会!」

梨子「あ、そう、そうでした。じゃあ自己紹介から…。桜内梨子です。好きなものは…ゆでたまご、とか。」

鞠莉「ゆでたまご?」

梨子「はい、何となく…。」

鞠莉「じゃあ今度プレゼントしてあげるね!」

どうやって持ってくるつもりなのだろうか。

鞠莉「シャイニー☆私は小原鞠莉!入ったばかりだけどよろしくね。」

鞠莉「あと、この前はご迷惑おかけしました…。」

急に深々と頭を下げられ、驚いてしまう。

善子「や、やめてよ…。誰も気にしてないって…。」

善子の言葉に続いてぶんぶんと頷いてみた。

鞠莉「そ、そう?ありがとう!あとは、好きな物、うーん…。」

鞠莉「果南?」

梨子「知ってました。」

善子「…ぷっ。」

鞠莉「あ、ちょっとそこ笑ったわね!」

鞠莉が大きな声を上げ、少し部屋の空気が緩む。

支障なくコミュニケーションがとれそうな雰囲気に、とりあえず胸をなでおろす。


同じことを感じたのだろうか、善子も元気に立ちあがる。

どこからともなく取り出した黒いローブを羽織り、びしっとポーズを決める。

善子「ギラン!私は堕天使ヨハネ…。クックック…、このヨハネと血の滴の聖果実をいざ食べん!」

鞠莉「おー…。」

梨子「……。」

善子「……。」

鞠莉がぱちぱちと手を鳴らす音だけがしばらく部屋に響いていた。

すとんと善子が腰を下ろす。

少しだけ盛り上がっていた空気は、一気に萎んでしまっていた。

善子「……津島、善子です。その、イチゴが好きです。」

悲し気な瞳に無性に謝りたくなった。

ごめんなさい善子ちゃん。どう反応していいかわからなかったの。

そんな静かな緊張感をはらんだ、ちぐはぐな空気で親睦会は進むのだった。


―――


曜「え、えっと、梨子ちゃん大丈夫…?」

梨子「大丈夫じゃないよぉ…。」

練習後、千歌と曜と合流するころには、すっかり憔悴してしまっていた。

千歌「え、え?どうしたの?」

梨子「どうしたって言われると特に何かあったわけじゃないんだけど…。」

千歌「ふーん…?」

千歌がよくわからないというように首をひねる。

曜「まあ、どこも最初は慣れないよね。」

曜は完全に他人事といった感じだ。まあ、他人事なのだが。

だいたい2人は他人との距離に悩んだことなどないのだろう。

ぐいぐいと距離を詰めて、今ではすっかり自分の心の深いところにまで入り込んでしまった2人を見て、頭に手を当てる。

2人なら、うまくやるのだろうか。ないものねだりな考えが頭をよぎる。

自分はこの2人みたいにはなれない。

それでも、ユニットになったからには鞠莉と善子と仲良くなりたい。

梨子「…うん、もう少し、頑張ってみる。」

明日はどんなことを話そうかと考えながら、家に帰った。


―――


善子「あ゛ーー!最悪よ最っ悪!」

帰宅してすぐ、ベッドに倒れこむ。

ふわりと、何本か置いてあった黒い羽根が舞った。

いつかに花丸からもらった黄色いぬいぐるみを叩きながら、声を漏らす。

善子「そりゃ鞠莉さんも梨子さんも、悪い人じゃないのはわかるけど…。」

ユニットの空気は、やりにくい、の一言だった。

ニコニコと手を叩く鞠莉の顔と、思いっきり苦笑いしていた梨子の顔が浮かんでくる。

だいたい3人なんて人数がよくないのだ。

誰かが話せば他の2人は静かに聞く。

そしてまた誰かが口を開く。

そんな秩序だった空間で苦も無く過ごせるなら、毎日教室で苦労などしていない。

善子「あーあ、明日からどうしよ…。」

千歌の様子を見るに、明日からもしばらくはユニット練習だろう。

はじめは不安そうだった花丸も、帰りの時間には明るく話していたし。

善子「上手くいってないのは、私たちだけ、か。」

Aqoursに入って、せっかく浮いていた心がまた沈むようだった。

皆が集まる隅の方で好きに過ごして、たまに花丸が構ってくれたらそれでいい。

それくらいのつもりだったのに。

とりあえず、明日は。

善子「あんまりいろいろ言っても、梨子さんに迷惑だもんね…。」

大丈夫。普段の教室と同じ。

少し、蓋をしてみようか。


―――


鞠莉「それで、今日はユニットで歌をcreateしましょう!…という日なのだけれど。」

結局今日もユニット練習。昨日と同じく音楽室に集まると、まず鞠莉が口火を切った。

自分は昨日と同じくピアノの椅子に、善子も相変わらず合唱台に腰かけている。

よし、今日こそは雰囲気をよくしなければ。

できるだけ自然に、できるだけスムーズに…。

梨子「そうですね…。じゃあまず、どういう雰囲気が――」

鞠莉「あ、梨子、敬語禁止!」

梨子「えっ。」

鞠莉「敬語禁止!Don't use KEIGO !」

梨子「で、でも先輩ですし…。」

鞠莉「気にしない気にしない!」

梨子「あ、う、うん…?」

鞠莉「それでよろしい!」

さっそく考えることが増えた。

鞠莉に話しかける時には口調に気を遣わなければ。

でも、とにかく今日は一緒に曲を…。

梨子「あはは、それで曲なんだけど――」

善子「やっぱり堕天使的な曲がいいわよね!」

梨子「えっ。」

今度は善子だ。堕天使的?

堕天使的って…何だろう。

聞いてみようと善子に向き直る。


善子「あっ…」

善子「え、えっと、今のは何でも…。」

善子はしまったという顔をした後にわたわたと手を振り、うつむいて座ってしまった。

まずい。これでは昨日の繰り返しだ。

梨子「えっと、善子ちゃん?今のって――」

善子「ほんとに!ほんとに何でもないから!梨子さん続けて!」

梨子「つ、続けてって…。」

助けを求めるように鞠莉を見る。

鞠莉は困ったように頬を掻くと、ぽそりと呟いた。

鞠莉「そうねえ…ロックとかどう?」

梨子「ろ、ロックぅ?」

鞠莉「あら?とっても素敵なのよ、ロック!ヨハネの堕天使にも合ったりして!」

善子「えっ」

梨子「え、そうなの善子ちゃん?」

善子「だからヨハ…あ、いや、えっと、どうだろう…。」

梨子「ちょっと違うんじゃ…。」

鞠莉「えー、そう?それならいいけど…。」


梨子「……。」

善子「……。」

鞠莉「……。」

時間にしたら数秒の沈黙。

それでもだんだんと空気が薄暗く澱み、重くなったように感じられた。

善子「えっと…。」

おずおずといった感じで、善子が手を挙げた。

善子「その、難しいみたいだし…家で考えてくる、とか。」

梨子「う、うーん、そうするしかないのかなあ…。」

鞠莉「Homeworkってわけね!どんと来いよ!」

大丈夫なのだろうか。

ちゃんと話し合いもせず、何となく解散してしまったことに気付き、頭を押さえた。

曲を考える。自分たちのことながら曖昧すぎる宿題を出したものだ。

それでも、これまでAqoursの作曲をしてきたのは私なんだ。

2人のために、堕天使だのロックだの、少し勉強してみようか。

夜更かししてしまうことになるだろうが、それでも。

梨子「仲良くなりたいもんね。」

やっぱり、ユニットは仲良しがいい。


―――


鞠莉「うーん。うーーーーん…。」

果南「ま、鞠莉?どうしたの?」

ダイヤ「朝からずっと唸っていますわね…。」

翌朝、言葉とは裏腹に何も思いつかずに教室で頭を抱えていると、2人が話しかけてきた。

鞠莉「Homeworkが思ったより難しいのよ。」

ダイヤ「宿題、ですか?大したものは出ていなかったような気がしますが。」

鞠莉「そっちじゃなくてこっちの宿題!」

果南「いやいやどっち。」

鞠莉「ユニットの方!」

ダイヤ「ああ、そういえば梨子さんに報告を受けましたわ。ユニット曲をそれぞれ考えてくるとか…。」

果南「な、なんだかやけに漠然としてるというか…。」

鞠莉「…仕方ないじゃない。なかなかうまく決まらないのよ。」

昨日ロックを提案した時の2人の顔を思い出して、肩を落とす。

果南「そうなの?私たちは少し進んだかな…、ね、ダイヤ。」

ダイヤ「ほんの少しですわ。」

2人は顔を見合わせている。それは2人は同じ学年だし、仲もいいから、ユニットでも話し合いがスムーズに…。


鞠莉「そうよ!だいたい果南とダイヤが一緒なのがおかしい!」

鞠莉「ここは私と果南を一緒にするべきじゃないの?」

ダイヤ「ち、ちょっと鞠莉さん!」

果南「もう、メンバーにせいにしないの。」

鞠莉「それは…!別に、そういうつもりじゃないけど…。」

メンバーのせいにしているつもりはなかった。

あの場の誰にも悪気がないことくらい理解している。

しかし、少しずつ、そう、少しずつ何かが噛み合わなくて、うまく針が回らないのだろう。

鞠莉「うん、ごめん。もう少し考えてみる。」

果南「ほら、鞠莉はいつもみたいに、勝手なこと言って勝手にしてればいいんだよ。」

ダイヤ「そうですわ。あなたが考え込んで碌な結果になったことがありまして?」

鞠莉「ひどい!」

勝手にする、か…。

そうできているのは、果南とダイヤに甘えているところが大きいのだと、そう理解していた。

この2人なら、もっとうまくやるのだろうか。

直接的な手段でしか距離を詰められない自分と違って、朗らかな果南なら。目端の利くダイヤなら。

それでも、自分がユニット唯一の3年生なんだ。

あまり迷惑はかけられない。

あの2人は、果南やダイヤとは違う。いきなり勝手なことをしたら、引かれてしまうかもしれない。


―――


花丸「善子ちゃん、今日はなんか元気ないずら。」

机をつきあわせて昼ご飯を食べながら、花丸が頬をつねってきた。

善子「別にそんなことないわよ。」

嘘だった。結局自分で提案した宿題は解決しないまま。

どんな曲なら梨子と鞠莉が乗り気になるのだろうか。

まったくタイプの違うメンバーで、統一した意見が出せると思えなかった。

善子「2人はユニット大丈夫なの?」

ルビィ「うんっ!今日は千歌さんと曜さんと歌詞について相談するんだぁ。」

花丸「こっちはダイヤさんが曲、マルが歌詞、果南さんがダンスを考えることになってて。」

善子「そう…。順調なのね。」

分かっていた。やっぱり昨日も、自分たちのユニットが一番進んでいない。

途中で変なことを言ってしまった自分のせいだろうか。

梨子の進行の腰を折ってしまったことを後悔する。


花丸「善子ちゃんたちは、あんまり進んでないの?」

善子「ヨハネよ。そんなことはないわ。うん、そんなことない。」

善子「今日、曲についても話し合うの。だから…」

花丸「なーんだ、なら大丈夫ずら!」

ルビィ「善子ちゃんでしょ、鞠莉さんでしょ、梨子さんでしょ。絶対かっこいい曲になるよ!楽しみだなあ…。」

けらけらと、2人が明るく笑いかけてくる。

かっこいい?自分たちが?

お互い距離を測りかねて、何度も「あ、ごめん」を連発して、ことあるごとに黙り込む自分たちが?

2人の言葉に嬉しく思いながらも、それは解決にはならないだろうと、暗い気持ちも抱えていた。

花丸やルビィなら、うまくやるのだろうか。

目立つか黙り込むか両極端な自分とは違って、穏やかな花丸なら。アイドルに詳しいルビィなら。

それでも、ユニットには2人はいない。

3分の1という数字が、ひどく重いもののように思えてならなかった。


―――


梨子「えーっと、それじゃあ宿題?の件だけど…。」

少し眠そうな声で、梨子が口を開いた。

夜更かしでもしていたのだろうか。

そんなことを考えていると、善子ちゃん、と言葉が飛んできた。

梨子の呼びかけにさっと目を逸らす。

視線が向いた先では、鞠莉もバツが悪そうな顔をしていた。

何でもできそうな鞠莉がそんな顔をしているのは新鮮で、少し意外だった。

梨子「あ、あはは…。まあ一日で思いついたら苦労しないよね…。」

梨子は相変わらず苦笑いしている。

ここ数日でこの顔しか見ていない。

鞠莉「大まかな方針だけ今日決めちゃわない?曲の雰囲気とか。」

善子「う、うん、いいと思う。」

梨子「えっと、何か意見ある…?」

鞠莉「その、昨日はロックとか言ったけど、初めてだし、ユニットっぽさも大事だし…。」

鞠莉が躊躇うように口を開いた。

鞠莉「あえて王道に、恋の歌とか。ほら、梨子のピアノもあるし!」

梨子「えっ」


鞠莉の無難な提案は渡りに船だった。

使い慣れたピアノを使った歌ならば梨子も進めやすいだろう。

だから、鞠莉に続いて手を挙げた。

善子「わ、私も、いいと思う…。」

梨子「えっ」

善子「えっ」

反応を窺おうと梨子の方を見てびくりと震える。

なぜか梨子は頬を引きつらせ、それでも笑みを浮かべようと苦心していた。

何かまずいことを言っただろうか。

いや、自分は音楽室に入ってから特に何も言っていない。

ひとまず自分に責任がないことを確認してから、何か言わなければと言葉を探した。

善子「じゃあ、歌詞とか、タイトルとか…。」

梨子「う、うん、そうだね。えーっと、千歌ちゃんとはよくブレインストーミングをしてるんだけど。」

梨子「あ、ブレインストーミングっていうのはね、思いついた言葉とかを書き出していって…」

黒板を使って、梨子が説明してくれる。

「恋の歌」という案が可決されたか否決されたかも定かではなかったが、ひとまず作業は進んでいるようだった。

そのことにたいする安心感が、場を包んでいた。


梨子の表情もだんだんと柔らかく、鞠莉の語調もだんだんと明るく、自分の目線もだんだんと上を向いていた。

気をよくしたのか、鞠莉が元気に手を挙げる。

鞠莉「はいはい、じゃあ…『逃がさない』とか!」

梨子「さ、最初から大胆だね…。善子ちゃんは?」

善子「え、えっと、えーっと、真紅の――じゃなくて、『想い』とか?」

鞠莉「Oh!ピュアガールね!」

善子「や、やめてよ…。梨子さんはどうなの?」

梨子「え、私!?私は…『運命』、とか?」

鞠莉「ロマンティーック!」

梨子「ひゃ、も、もう…!」

ぽつぽつと、白い文字が埋まっていく。

恋にかかわる話だからだろうか。

だんだんと皆のテンションも上がってきて、意見が出るスピードも早くなって。

自分で黒板に言葉を書いてみたり、
際どいワードにはピンク色のチョークで色をつけて歓声を上げてみたり。

我ながら単純だななんて、少し浮ついた気持ちで考えていた。

やっぱり、変な提案はしなくて正解だったんだ。

きっと、恋とか、運命とか、想いとか、そういう「アイドルらしい」歌をつくって、3人で歌って。

それが最善だったんだと、納得がいった。

これで、私たちも大丈夫かな。

少しだけ軽くなった身体を動かし、黒板に字を書いた。

ただ、梨子が時折悩むような、寂しいような表情を見せていたのが気になった。


―――


梨子「鞠莉さん、善子ちゃん、お疲れさま。」

善子「お疲れさま。」

鞠莉「また明日ねー。」

ダイヤに進捗を報告しに、梨子が音楽室を出る。

そのまま千歌たちと合流して帰るつもりなのだろう、荷物をすべて抱えて出て行った。

自分と善子も片づけを進める。

なんとなくふわふわした気持ちで、善子に話しかけた。

鞠莉「いやー、疲れたわね!I'm hungry!」

善子「そうね…。でも、少し進んだわよ。」

明るい顔で、善子が答えてくれる。

昨日、一昨日と何やら暗い顔をしていたので心配だったが、今日は途中から元気だった。

鞠莉「そうね!ちょっぴり安心!じゃあ私たちも――」

帰ろう、そう言いかけて言葉を切る。

さっきまで3人分の荷物が置かれていた合唱台の陰。

自分の鞄と、善子の鞄と、その傍に見慣れないノートが落ちていた。

近寄って見てみると、可愛らしい藤色の表紙に、「ユニット練習」と綺麗な文字が書かれていた。


善子「これ、梨子さんの?」

鞠莉「善子のじゃないのね。ならそうなんじゃないかしら。」

善子「届けに行かないと…。」

鞠莉「明日でいいんじゃないかしら。すれ違っても大変だしね。そ・れ・よ・り・も!」

ずいっと善子の方に身を乗り出す。

善子「な、なによ…。」

鞠莉「これ、開いてみてもいいかしら…?」

善子「なっ!だ、ダメに決まってるじゃない!他人のノートよ!」

善子は驚いて大声を上げる。

やっぱり、善子は善い子だ。

あいにくと善い子になりきれない自分は、善子に向かってウインクなんか決めたりして。

鞠莉「ね、ほら、ちょっとだけ。大丈夫よ!私たちユニットのメンバーなんだから!」

善子「それは、そうだけど…。」

鞠莉「ね、ね、気にならない?最近難しい顔しっぱなしだった梨子のノートよ!」

鞠莉「それに今日、最後の方も少し元気なかったじゃない?」

そう言うと、善子はハッとしたように目を開いた。

どうやら同じ感想を抱いていたらしい。

鞠莉「エンカツなコミュニケーションのため、仕方なく、よ!」

善子「し、仕方なく…。」

ごくりと、善子の喉が音を立てる。

そんな善子にうふふと笑いながら、ページをめくって見せた。


鞠莉に見せられたノートで、最初に飛び込んできた言葉は、「堕天使」だった。

善子「こ、これ…。」

『堕天使…神から離反?悪魔とおなじ。』

『ヨハネ黙示録=善子ちゃんの?』

『失楽園』

『サタン、堕天使、ヨハネは堕天使でない?』

『イチゴは関係なさそう』

『有罪=Guilty=かっこいい?』

他にも、たくさんのメモが残してあった。

鞠莉「これ、全部梨子が書いたの…?まだ新しいし、昨日だけで?」

どくんどくんと鳴る胸を押さえながら、ページをめくる。

鞠莉「!」

となりで鞠莉がぴくりと身体を震わせた。

次のページには、ロックのこと、使う楽器、よく出てくる歌詞など、鞠莉と関連付けながら多くの書き込みがあった。

『ピアノ・ロックもある』

『ギターの方が似合う?大人っぽく』

『英語入れたい』

『アイドル=Dance、Kiss、Loveとか?』

『金髪』

『果南さん=ハグ』

そして最後の行には一言、

『2人に合う、かっこいい曲を!』

そう、書かれていた。


鞠莉「ご、ごめんなさい。これ、見なかった方が、いいやつだったかも…。」

善子「……梨子さん。」

サーッと、顔から血の気が引いていくのが分かった。

同時に、抱いていた疑問が次々と解けていった。

なぜ、無難な恋の歌と提案されて梨子が変な顔をしていたのか。

なぜ、それに賛同した自分に微妙な顔をしていたのか。

なぜ、眠そうだったのか。

なぜ、少し悲しそうな顔をして話し合いを進めていたのか。

善子「梨子さん、私たちの言葉を気にして、叶えてくれようとして…。」

鞠莉「……昨日帰ってから、ずっと調べていたのね…。」

お世辞にも、よく調べられているとは言えなかった。

きっと、ネットで片っ端から検索を掛けたのだろう。

それでも、梨子の不器用な想いが、とくとくと震える心臓を殴りつけてくるかのようだった。

でも、もしそうなら、もし、梨子が夜更かししながらも歩み寄ってくれようとしていたのだとしたら。

鞠莉「もしそうなら…、今日の私の提案は…。」

梨子の想いを、無駄にしてしまったのかもしれない。

鞠莉だけじゃない。賛同した自分もだ。

梨子はどんな気持ちで、自分たちの提案を聞いていたのだろうか。

善子「どうして言ってくれなかったのよ…!」

わかっている。言い出しにくかったのだろう。

自分の意見が場を支配してしまうことが怖くて、相手を縛ってしまうことが怖くて。

相手に恩を押し付けることが怖くて、不審に思われることが怖くて。

自分でも、まずは相手に意見を求めるだろうと、そう思った。

鞠莉「あのね善子、1つ、お願いがあるの。」

善子「え…?」


―――


梨子「ふんふんふーん」

千歌「あれ、今日はなんだかご機嫌だね!」

鼻歌を歌っていると、千歌がにこにこ話しかけてきた。

昨日の話し合いはここ最近で一番いい雰囲気だった。

ロックとか、堕天使とかは入れなくてもよかったのだろうかと疑問には思うが、2人にこだわりがないなら構わない。

昨日は自分の夜更かしは何だったのだろうかと、理不尽に感じたりもしたけれど。

一日経って、話し合いが進むならいいかと、割り切ってしまっていた。

鞠莉の言う通り、まだ最初なのだ。

お互いの色はこれからゆっくり出しいっても、いいのかもしれない。

曜「昨日話し合いが進んだって言ってたもんね。どんな曲になるの?」

梨子「うーん、普通に恋の歌、かな。」

千歌「へー!かっこいい感じ?ギターとかジャカジャン!って感じの!」

梨子「それはどうだろう…。今のところピアノだと思うけど…。」

曜「あの3人でしっとり系?ギャップがいい感じかもね。」

梨子「そうかな?今日話し合ってどうなるか、だね。」

和やかに話しながらメンバーを待つ。

今日はどこまで進むだろうか。

昨日集めた言葉から歌詞をつくって、それに合うメロディーを考えるところまでいけばいいな。

昨日通りにいけば大丈夫だろう。

そう思って、今日もユニット3人で部室を出た。


―――


鞠莉「やっぱりロックがやりたい!」

梨子「は?」

鞠莉「えっ」

梨子「あ、なんでもない、なんでも」

開口一番、自分の見立てが間違っていたことを思い知らされた。

やっぱりロック?

昨日あれだけ「ピアノを使った恋の歌」で進んだのに?

そもそも鞠莉の提案だった気がしたが、どういう心境の変化だろうか。

梨子「え、えっと、善子ちゃんは?」

善子「私は堕天使がいい!」

梨子「へ?」

思わず気の抜けた声が出てしまう。

堕天使?

善子が堕天使好きなのは知っていたけれど、その話は一昨日に――

鞠莉「ね、だから歌詞にこれを入れて…」

善子「衣装はこういうのがよくて…」

なんだか楽しそうに、2人が話し合っている。

そもそも2人の案もバラバラだったはずだけれど。

ああ、鞠莉によればロックと堕天使は相性がいいんだったっけ。

痛くなってきた頭を抱える。


落ち着け、落ち着け、大丈夫、想定の範囲内。

一昨日調べてきたノートがあれば、自分も話し合いに参加できる。

梨子「…ん?」

ない。ノートがない。

梨子「え、え、あれがないと…。」

せっかく調べてきたのに。

不必要な昨日は持っていて、必要な今日に持っていない。

なんだかひどく理不尽な立場に置かれたような、そんな気がした。

とにかく置いて行かれないように、2人に声を掛ける。

梨子「あの、2人とも…。」

善子「あの、これどっちがいいと思う?」

鞠莉「梨子の意見も聞きたいな!」

梨子「そうじゃなくて、昨日の話し合いは?」

思わず言葉の調子が尖ってしまう。

善子「え、っと、それは…。」

鞠莉「考え直しでいいんじゃないかしら!でも大丈夫、私たちなら――」

ぷつんと、自分の中で何かが切れる音がした。


梨子「やめてよ、そういうの…。」

鞠莉「へ?」

梨子「2人して、私のことからかってるんでしょ。」

声が震えてしまう。

この場1つまとめられない自分がなんだか悔しくて、目頭が熱くなる。

泣いちゃダメだ。今は怒っているのだから。

善子「え、え、梨子さん…?」

梨子「じゃなきゃ、考え直しなんて言わないよね。昨日まで、あんなに苦労したのに。」

鞠莉「ね、梨子、落ち着いて?…Be cool、Be coolよ?」

鞠莉が宥めようと伸ばした手を振り払う。

鞠莉「梨子…。」

善子「ち、ちょっと鞠莉さん!聞いてた話と違うじゃない!」

鞠莉「わ、私にもよく…。」

2人がびくびくしながら言葉を交わしている。

そんなことでさえも、癇に障った。


梨子「ほら!2人ともグルなんでしょ!私のこと困らせて遊んでたんでしょ!」

善子「そ、そんなことないわよ!」

梨子「ならなんで変なこと言うの。」

鞠莉「別に変なことは言ってないわよ!ただ…、そう、2人の希望を伝えただけで!」

梨子「だって昨日はピアノでいいって、恋の歌でいいって言ってたじゃん!」

梨子「なのに今日になっていきなり変なこと…嘘だったの?」

頭の中で言葉をまとめる前に、口をついて出てきてしまう。

そんな自分の雰囲気に影響されてしまったのか、善子も声を荒げる。

善子「嘘じゃないもん!梨子さんが変な顔してるからじゃない!」

鞠莉「そうよ!ずーっとしかめっ面で!気づいてたんだからね!」

梨子「うっ」

ばれていたのか。

ということは、2人はロックや堕天使がよくわかっていない自分に気を遣って…?

なんだか自分にも責任がある気がしてきたが、ここで認めるのは癪だった。


梨子「だ、だったら何で今日はまた変なこと言うの!」

まりよし「「うっ」」

今度は向こうが言葉に詰まる番だった。

一瞬言葉を探した後、善子が口を開く。

善子「だ、だいたい変ってどういうことよ!堕天使は変じゃないもん!」

梨子「変よ、変!堕天使もロックも変だもん!わかんないもん!」

勢いだけで言葉を返す。

鞠莉「ロックは変じゃないわよ!」

善子「はあっ!?それ堕天使は変ってこと!?」

鞠莉「べ、別にそういうわけじゃ…。」

語気が弱まる。鞠莉さん、鎮火。

梨子「変!変だよ!」

善子「くっ…!あ、はいはいはーい!私梨子さんの変なこと知ってまーす!」

善子が思いついたように大声を上げる。


善子「前東京に行ったとき、梨子さん薄い本買ってましたー!」

梨子「あ゛ーーーーっ!なんで、何で知ってるの!?じゃなくて!」

鞠莉「ウスイホン…?何それ?」

梨子「なしなしなし!今のなし!鞠莉さんは知らないくていいの!」

善子「とにかく梨子さんも変なの!人にうるさく言う権利ないもん!」

梨子「今はそれ関係ないじゃん!」

鞠莉「あ、あのね、もう皆が変ってことで…先に…。」

一足早く正気を取り戻したらしい鞠莉が口を挟む。

善子「意味わかんない!ヨハネ変じゃないし!」

梨子「ほらまたヨハネって言った!」

鞠莉「あの、だからその辺で、ほら。」

よしりこ「「うるさい果南さん中毒!」」

鞠莉「ちょ、はあ!?果南は今関係ないでしょ!?」

鞠莉さん、再燃。

もはや話題は歌から逸れて、お互いがいかに変かをただただ押し付け合っていた。


―――


梨子「ぜーっ、はーっ…。」

善子「はあ…っ、ふう…。ゴホッ!」

鞠莉「けほっ…、あーー…。」

3人の言葉が尽きるころには、すっかり体力を消耗しきってしまっていた。

鞠莉「やばい…ダイヤに怒られる…。」

鞠莉の声にハッとする。そういえば今日、何も進んでいないのでは。

それでも、散々罵倒しあった相手と穏やかに話し合いはできそうになかった。

もうどうにでもなれ。投げやりに黒板に文字を書き殴る。

梨子「鞠莉さんっぽさを出しましたって、WowWowって合いの手とか、ところどころに英語入れとくね。」

鞠莉「ちょ、雑すぎでしょ!?」

善子「いいじゃない。ついでに楽器もギターにしとけばそれっぽいでしょ。」

便乗するように、善子もぶっきらぼうに提案した。

ふん、と顔をそむけて、鞠莉も言葉を返す。


鞠莉「それならどっかでヨハネとか入れときましょ。それで善子は解決でしょ。」

善子「私そんな単純じゃないわよ!」

梨子「いいじゃんそれで。あ、イチゴ好きだったっけ?タイトルにイチゴってつけとくね。」

善子「ええ…。」

鞠莉「じゃあ梨子が提案した小っ恥ずかしいwordは全採用ね。」

善子「そうそう。運命とか、私のモノにしたいとか、よく出てくるわよね。さすが壁ドン。」

梨子「何それ。壁ドンを馬鹿にしないでほしいんですけど。」

善子「ヨハネを馬鹿にした報いよ。あ、そうだ。途中でヨハネのこと召喚してみなさいよ。」

梨子「はあ?意味わかんない。勝手にしてよ。」

善子「じゃあ入れとく。」

お互いに普段より一回りも二回りも低い声で、顔を見もせずに、黒板に好き勝手に言葉を足していく。

昨日きゃあきゃあ言いながら書いた言葉が、次々とよくわからない英単語や、中二病心溢れる言葉に置き換わっていくのを、何とも言えない気持ちで眺めていた。


そして一時間後。



「「「あれ、意外といいかも…。」」」


たった一言で、それはもうあっさりと、3人は和解したのであった


―――


梨子「ヨハネ、召喚っ!」

鞠莉「ぶっ!」

善子「あははははは!召喚!召喚されちゃった!」

梨子「ちょっと!いちいち笑わないでよ!」

鞠莉「My Target!」

梨子「ぷっ!は、発音よすぎぃ…!」

鞠莉「自分で振っておいてあれだけど、梨子意外と失礼ね。」

梨子「ご、ごめんね鞠莉さん…あはは!」

鞠莉「あー!反省してないわね!」

大喧嘩の数日後、すっかり曲も出来上がった頃。

自分たちは相変わらず音楽室で、しかし以前よりもずっと近い距離で騒いでいた。

あのあと、3人で1つルールを決めた。

それは、いつも自分の正直な気持ちを話すこと。相手の気持ちなんて考えずに、いつも自分勝手に意見を言うこと。

自分はそういうのは苦手だと思っていたけれど、勝手なことばかり言う2人には、遠慮なく意見を言うことができた。

鞠莉「よしっ!今日ももう終わりの時間ね!」

ポン、と膝と叩いた鞠莉の言葉に、善子がぴくりと反応する。

善子「じゃあ一緒に――」



「「「あいこそすべて!」」」


善子の掛け声で、ビシッとポーズを決める。

梨子「ねえ、これもうやめない…?」

善子「何回言われてもやめないわよ!」

鞠莉「そうそう!これには『私』って意味の"I"と、メンバー間の"Love"がかかって――」

梨子「いやいや、それもう何回も聞いたから。」

正直、千歌並みのダジャレだと思う。

「自分勝手に」というルールと一緒に鞠莉が提案したこのスローガンは、すぐに善子の心を捉えることとなった。

翌日にはポーズまで考えてきて、歌そっちのけで練習をさせられた。

少しだけ、ほんの少しだけ気に入っているのは内緒だ。

ポーズを決めると練習終わり。

なんとなく気恥ずかしい気分で、いそいそと帰りの準備をする。

梨子「あ、そういえば。」

鞠莉「What's?」

梨子「ダイヤさんにユニット名を考えるように言われてるんだった。どうしよう。」

善子「ユニット名…。」

鞠莉「それなら、私と善子にいい案があるわよ!」

善子「ヨハネよ!というか初耳なんだけど!」

鞠莉「ふふーん、よく聞いててね!」

もったいぶって、鞠莉が指を振る。

鞠莉「Guilty Kiss!」


善子「あ…、そ、それって…。」

梨子「あはは、また変な名前つけるんだね!」

鞠莉「何言ってるの?名付け親は梨子よ!」

梨子「へ?」

すっと目の前に何かが差し出される。

「ユニット練習」と見慣れた文字で書かれた藤色の――

梨子「あーーっ!ノート!失くしたと思ってたのに!」

ちょっと待て。それを鞠莉が持っているとしたら…。

梨子「な、なな、中身見たの!?信っじらんないっ!」

鞠莉「Oh, sorry!気になっちゃって☆」

梨子「だからって見ていいことにはならないでしょ!あ、あああ!だからあの時、急にロックがいいなんて!」

鞠莉「え、えへ。」

梨子「よっちゃんも見たんでしょ!」

善子「ご、ごめんなさいリリー、マリーがどうしてもって。」

鞠莉「ちょっと!それはひどいわよ!」

梨子「2人とも同じですっ!Guiltyですぅ!」

ていっ、と、2人の頭を叩く。

そうか。2人はこのノートを見て。

私が2人の趣味を調べていることを知って、あんなことを。

そう思った途端、どうしようもなくあたたかな気持ちが、胸をじんわりと満たしていった。

梨子「もう、ほんっと不器用だし、気ぃ遣いだし、もう…ばーか。ばーか!」

鞠莉「へ?り、梨子?」

善子「り、リリー?」

ぎゅっと、2人を抱きしめる。

不器用で、すぐに相手の顔色を窺ってしまう自分たちだけど。

きっとやっていける。楽しく騒いでいける。

だって、Iこそすべてで、愛こそすべてなのだから。


―――


ダイヤ「ふふっ…、ほんとに楽しそうですわね。」

ルビィ「一時はどうなるかと思ったけど…、千歌さんの言うとおりだったね。」

千歌「でしょ?梨子ちゃんなら大丈夫だと思ってたんだ!」

にこにこと、優しい瞳で千歌が笑う。

当初、梨子は千歌と、鞠莉は果南と、善子は花丸と組ませるつもりだった。

慣れない相手には少し引いてしまう3人は、慣れた相手がいるユニットの方が魅力を発揮できると思ったからだ。

あえて3人を一緒にしようと言い出したのは千歌だった。

ルビィも交えて長時間話し合い、結局、3人を信じようという千歌の言葉に納得した。

ダイヤ「結果的に皆が自分を出せるなら、正解でしたわね。」

千歌「うんっ!ほら、梨子ちゃんの満面の笑顔、かわいいでしょ。」

ダイヤ「いえ、それなら鞠莉さんの屈託のない笑顔の方が…。」

ルビィ「もう、善子ちゃんのふとした幸せそうな顔の方がかわいいよ!」

完全に親バカ目線である。

3人で顔を見合わせてくすりと笑う。

きっとあのユニットは魅力的なユニットになる。

3人が3人のままでいられて、しかもそれぞれの良いところを見せていける、そんなユニットに。

薄く開けた扉からは、自分たちといる時と同じくらい、もしかするとそれ以上に楽しそうに笑う、3人の姿が見えていた。



鞠莉「わ、わぁっ!」

善子「あ、ちょ、倒れてこないでよ!お茶こぼしちゃったじゃない!」

鞠莉「Sorry…。梨子が暴れるから…。」

梨子「あ、暴れてはないよぉ…。」



まだまだ、世話は焼けるようだけれど。

おわりです。お目汚し失礼しました。
今回は少し短めでした。



以下過去作です。お暇なときに。

ダイヤ「あ、この写真…。」
ダイヤ「あ、この写真…。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1472722396/)

曜「見て!イルカの真似ー!」
曜「見て!イルカの真似ー!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473853551/)

花丸「今日も練習疲れたなあ…。」
花丸「今日も練習疲れたなあ…。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474390134/)

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