男「ことわざって結構怖いよな」友「なんで?」 (30)

―居酒屋―

男「……でさー、ホント危なかったよ」

友「ハハハ、『前門の虎、後門の狼』ってやつだな」

男「まったくだ」

男「ところで、ふと思ったけど……」

友「なに?」

男「ことわざって結構怖いよな」

友「なんで?」

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友「『猿も木から落ちる』って、落ち方悪いと猿死んじゃうよな、こわ~い……みたいな話?」

男「いや、そうじゃなくて」

男「たとえばさ、お前に悪い噂が流れたとするじゃん。実はロリコンだとか」

友「なんでロリコンなんだよ……まあいいけど。で?」

男「でさ、俺がそれをすっかり信じ込んで、お前をヘンタイ扱いする」

男「で、後々になって、その噂がデマだったことが分かる。当然お前は怒るよな?」

友「そりゃ怒るよ」

男「どう考えても、100%俺が悪いよな?」

友「悪いよ」

男「でもさ――」

男「そこで俺が“『火のないところに煙は立たぬ』っていうだろ?”っていったらさ」

男「俺が100%悪いはずなのに、その悪さが80%とか90%ぐらいになった感がないか?」

友「あ~……確かに」

友「噂を信じたお前は悪いけど、こっちにもちょっと責任あるのかも感が出てくるかも」

友「ロリコンって疑われるような行動を取ってたかも……みたいに」

男「な?」

男「あと他にも、どこかのアパートで部屋を借りたとする」

男「でも住んでみると、ゴキは出るわ、雨漏りするわ、あちこちヒビ入ってるわで、さあ大変」

男「当然、大家に苦情をいう」

男「でもそこで、“『住めば都』といいますよ”なんていわれたら」

男「もうちょっと頑張って住んでみるか感が出てくるだろ?」

友「うん……出てくるかもしんない」

男「なんかのプロが、仕事でミスをしたとする。当然そのプロはミスの責任を取らなきゃいけない」

男「だけど、『弘法も筆の誤り』ってことわざを持ち出したら」

男「しょうがないよね、プロだってミスぐらいするよね、って感じになるじゃん」

友「ミスの内容にもよるけど――」

友「ミスをされた側がとっとと許してやれよ、ってムードになることもあるかもな」

男「だろ?」

ならないよ

男「どう考えても理不尽な目にあってる奴に『石の上にも三年』なんて励ましてみたり」

男「『病は気から』なんて、もちろん正しいっちゃ正しいんだろうけど」

男「“病気なんて気合で治せや”って風にも使えるじゃん」

友「ブラック企業なんかが使いそうだな」

男「あと今思ったけど『良薬口に苦し』」

男「あれがあるから俺、クソまずい薬は無条件でなんか効き目ありそうって思っちゃうもん」

男「実際どうだか分からないのに。逆に甘い薬はクソ、みたいな」

友「苦い上に効力大したことないって薬もありそうなもんだしな」

男「まあ、プラシーボ効果みたいなのはあるかもしんないけどさ」

男「それと、今俺たち酒飲んでるけど『酒は百薬の長』って」

男「酒飲みが“『酒は百薬の長』なんだ、もっと飲ませろ!”ってな具合にも使えるし」

友「酒飲みにとっちゃ、あれほど心強いことわざもないわな」

友「だけど、ちなみに『酒は百毒の長』って言葉もあるぞ」

男「え、そうなの!? どっちやねん!」

友「どちらにせよ、ほどほどにしろってことだろ」

友「ようするにだ。お前の言いたいことはこういうことだろ?」

友「ことわざってのは古くから伝わる言葉で、先人の知恵や経験の結晶みたいなもんだ」

友「それを引用すれば、当然単に自分の意見を言うより説得力が増す」

友「もちろん、正しく使えばなんの問題もないんだけど――」

友「場合によっちゃ、ことわざを“盾”にして、悪いことや理不尽なことに」

友「ある種の正当性を与えることができちゃう……それが怖い、ってことだろ?」

男「そうそう、そういうこと!」

男「ことわざって悪用することもできちゃうよなって、ふと思ったんだよ!」

友「ことわざとは違うけど、『お客様は神様です』なんかもまさにそれだな」

友「理不尽なクレームも、この言葉があるからわりと許される的な」

男「いるいる! そういう奴!」

友「ま、本来は歌手や芸人の心構え的な意味で、客が無茶いうための言葉じゃないんだけど」

友「まあ……あれだな」

友「ことわざを自分の過ちをごまかすために使うべきではないな」

友「ことわざ作った人も、悪用されたらきっとあの世で怒っちまうよ」

男「そうだな」

男「もし、自分が間違ったことをした時は、古いことわざに頼らず」

男「自分で考えた言葉で、弁解するなり謝罪するなりすべきだな」

友「――とまあ、それっぽい結論が出たところで、そろそろ会計といきますか」

友「会計お願いします」

店員「こちら伝票になります」

友「6000円か……結構食って飲んだな」

友「じゃあ、ワリカンでいいよな?」

男「……」

友「どうした?」

男「ごめん……」

男「今、財布の中確認したら、500円しか入ってなかった」

友「ハァ?」

友「お前、さっき金あるっていってたじゃん! こないだ銀行で下ろしたって!」

男「いや、それは本当なんだよ! ただ確認が甘かったっていうか……」

男「本当のこといったのに、結果的にウソになっちゃったっていうか……」

男「とりあえず――」

男「『まことから出たウソ』ということで、今日のところは許してくれ!」

友「新しいことわざ作んな!!!」







おわり

瓢箪から乙って感じだな

棚から乙

鬼の目からも乙

二階から乙

猿も木から乙る

河童の乙流れ

×酒は百毒の長
○万病の元は酒に通ず

物知らずな馬鹿に労いの言葉など無い

>>22
http://www5e.biglobe.ne.jp/~dobuita/sub21.html#koto002
http://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/1950.php
http://the-kotowaza.seesaa.net/s/article/423014556.html
http://www.shirakami.or.jp/~kikusui/senryu.htm
ん?なんだって?

>>22
猿も木から落ちる
弘法も筆の誤り
河童の川流れ

好きなのを選べ

>>23-24
ほう・・・

http://da-inn.com/sakehyakuyakunocyou-19147-2/
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/tsuredure/turedure150_199/turedure175.htm
http://www5f.biglobe.ne.jp/~mind/knowledge/japan/tsuredure049.html

諺には原典が付き物なのでなぁ
“酒は百毒の長”の初出たる原典を提示してもらおうか

“万の病は・・・”を百毒の長の初出とは認めないのでそのつもりで

なんだ加速中だったか

「期限は○○ニダ!」
「でも最近はこういう意味で使われてるぞ」
「そんなの関係ないニダ!ウリナラが正しいニダ!認めないニダ!」

丸わかりですわ

諺には原典が付き物って初めて聞いたわ
詳しい人ってのは何にでもいるもんだね

認めないんでそのつもりで(キリッ

こいつテニプリの作者とかにも物知らずな馬鹿とか言ってそう
原典云々てよりその態度がきもすぎ

なんで喩え話に原典何て求めてるんだ…(困惑)

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