町娘「ふふっ、今日もこんなに朝早くから、素振りですか?」パカッ
少年「世界一の剣士への道はまだまだだから……むしゃ。うん、おいしい。いつもありがとうね」パクパク
町娘「えへへ。私にできることって、これくらいですから」
少年「町娘ちゃんのお父さんにももう三日も泊めてもらっているわけだし、お世話になりっぱなしで申し訳がないよ」ハァ
町娘「お父さんはお父さん、私は私ですよ。私はこうやってサンドイッチを作るのも、食べてもらうのも好きなんです。気にしないでください」
少年「うーん、そっかぁ」
町娘「もっとも、お父さんは少女ちゃんの喋る……勇者の剣でしたっけ?そちらを調べるぞー、って意気込んでましたし、それが十分お礼になってると思いますけどね」エヘ
少年「お父さんはお父さん、町娘ちゃんは町娘ちゃん、でしょ?」
町娘「……?」キョトン
少年「町娘さんにもちゃんとお礼はいつかするね」
町娘「……はいっ」ニコッ
町娘「楽しみにしてますね♪」
少年「あはは……でもあんまりハードルは上げないでね」
少年「少女ちゃんは?」
町娘「まだ寝てますよ。ツルギさんを抱いて。少年くんは早起きすぎなんです」
少年「あはは。道場で修行してたときも朝の練習は毎日してたからかな。癖になっちゃってて。町娘ちゃんを付き合わせちゃってるかな?」
町娘「いえいえ、私も宿の準備がありますから早起きは大丈夫です。……というかツルギさん、剣なのに寝るんですかね?」
少年「さぁ、どうだろ?」
町娘「それに、剣って抱き心地いいんですかね?」
少女「さぁ、どうだろう……」
少女「ひゃいほーだひょっ!」パクパク
剣「寝なくともよいが、寝ることはできる」
少年「なるほどなぁ」
少女「ひゃー!まひむふめひゃんのはんほひっひほいひー!」パクパク
少年「少女ちゃん、行儀が悪いよ……何言ってるかわかんないし……」ヤレヤレ
町娘「うふふ、そんなにおいしそうに食べてもらえると私は嬉しいですけどね」ニコッ
少女「んんっ!」ゴックン
少女「おいしいよ!ツルギさんも食べる?」
剣「食えん」
少年「そのやり取りも毎日見てるね」
少女「ツルギさんは食べたいな、と思うときはないの?」
剣「あるにはあるが」
少女「よし!だったらとりあえず食べられそうなところから押しつけていってみよう!やっぱりこの宝石かな?」
剣「汚れると言っておろう」
町娘「ふふっ。なんだか、退屈しませんね」
少年「まぁ、うん、そうだね」ハハハ……
町父「おっ、お前らここにいたか」
町娘「あら、お父さん。おはよう」
少女「おはようございます!」
少年「おはようございます!」
剣「……おはよう」
町父「おう、おはよう」
町娘「作業場から出てくるなんて珍しいね。今日はどうかしたの?」
町父「おいおい、人をいつもいつも魔装具の開発ばっかしてると思ってたら大間違いだぞ」
町娘「じゃあそれ以外に何をしているの?」
町娘「……この宿の手伝いもたまにするくらいなのに」ボソッ
町父「あっはっは、こりゃまいったな」ポリポリ
町父「いやな、でも今日は本当に開発の方に手が回りそうになくてな。というのも、城勤めのオヤジに魔石堀りの手伝いを頼まれちまってよ」
少女「魔石掘り……?」
町娘「この街の外れにある洞窟にはね、魔石がいっぱい採れる洞窟があるの」
町父「それらを活用して、この街では魔装具……その勇者の剣みたいに魔力を活用した道具の研究が進み、ここまで大きくなったってわけだな」
町父「つまり、魔装具の研究者が、俺がこの街を大きくしたようなもんだぞ?」
町娘「むむぅ……そこは尊敬してるけど……でもお父さんだけの功績じゃないんだからね?」
町父「がっはっは、分かってるさ」
少年「へぇ……町父さん、すごいんですね」
町父「おう、もっと言えもっと言え!」
町父「っつーわけで、今日はそのツルギとやら、俺は見させてもらえそうにない。大体は見させてもらったし一段落ついたところなんで、丁度いいがな」
少女「じゃあ今日はツルギさんとずっと一緒ってこと?」
町父「あはは、そうだな」
少女「ずっと抱いていられるね!」
少年「いや、背負おうよ」
町娘「じゃあ今日は私が町の案内をしましょうか」
町父「まだ案内してなかったのか?」
町娘「武具屋さんや、旅の道具屋さん、あとは食べ物やさんみたいなお店は案内したけど、それ以外はあんまり……」
少年「前はずっと少女ちゃんが服を見てたもんね」
少女「えへへ……楽しくって……」
少年「商人さんがいたら喜んでただろうなぁ」
町娘「商人さん?」
少女「うーんとね、なんだかすごい人だよ」
少年「それじゃあなんにもわかんないよ……」
~街、大通り~
ワイワイガヤガヤ
少年「なんというか、やっぱりすごい風景だよねぇ」
少女「おっきい壁、かっこいいよね」
剣「私はなんだか、息が詰まるがな」
町娘「あの町を囲っているバリケードは魔物避けとして魔法結界が張ってある巨大な魔装具ですから」
町娘「魔力を持っている……魔装具であるツルギさんには何か影響があるのかもしれませんね」
少女「へぇー!あんなにおっきな魔装具もあるんだ!」
少年「少女ちゃん、三日前にも聞いたでしょ」
少女「え?あれ?そうだっけ?あのときは町に着いたばかりで眠くて……」
剣「宿に着いたらすぐに寝ていたな」
町娘「……ふふっ」
町娘「今日は……とりあえず、そうですね。お城と神殿でも見ましょうか」
少女「お城!……どこにでもお城があるんだね?」
町娘「いまや、町や街が国みたいなものですからね」
少年「昔の話で、魔物に対抗するために国を統合して、国同士の……人間同士の争いを抑えて人間の団結を図ったって父さんが言ってたよ。まぁ町とか街が統治するようになっちゃって、あんまり意味はなかったらしいけど」
少女「…………」プシュー
剣「少女には難しいらしいな」
町娘「うーん。"三本の矢"っておとぎばなし、知ってますか?」
少女「うん!矢は一本じゃすぐ折れちゃうけど、いっぱいあったら折れないってやつでしょ!」
町娘「うんうん。そんな感じでね。昔々、人は"魔物を倒すためにみんなで力を合わせよー!"って言って、国がひとつになったんです」
少女「なるほど……」
少年「漠然としたなるほどだね」
町娘「みんな、そんなものですよ」
町娘「そんなものです」
~城前~
少女「お城!わたしたちの街のお城より大きいかな?」
少年「うーん、どうだろ」
町娘「お城、好きなんですか?」
少女「そういうわけじゃないんだけど、お城のパーティーに呼んでもらったこともあるんだよ!」
町娘「へぇ、すごいですね。私もお呼ばれされてみたいです」
町娘「この町の町長さんは少し変わった方なので、パーティーとかあまりしないんですけど」
少年「ぼくは……パーティーはちょっと疲れるかな……」
剣「少年はダンスの練習でヘトヘトだったな」
少年「ヘトヘトにならない少女ちゃんがすごいんだよ……?」
花屋娘「ん?あら?宿娘じゃない!」
門兵「おぉ、ほんとだ。宿父さんは元気かい?」
宿娘「えぇ、おかげさまで」
門兵「そいつぁよかった」
花屋娘「そういえば、そこのブティックに新しいワンピースが入ったらしいわよ。見に行かない?」
宿娘「へぇ……あっ、じゃあ少女ちゃんもいいかしら?」
少女「えっ、いいの?」
宿娘「大丈夫大丈夫!みんなで見た方が楽しいんですから!……あっ少年くんは気まずいですよね。すぐ戻ってくるので、ツルギさんお願いしますね」
少年「う、うん」パシッ
キャッキャッ……トコトコ……
ツールーギーサァーンーーーーアートーデーネェーーー
門兵「いつも、振り回されてばかり?」
少年「……えぇ、まぁ。あっ、でも町娘ちゃんとは知り合ったばかりですけど」
門兵「そいつは大変だな。はっはっは。俺も嫁さんには頭が上がんないから気持ちはよくわかるぜ」
少年「あはは……振り回されてばかりですけど、楽しいですよ」
門兵「くくくっ、だな」
少年「ツルギさんもそうでしょ?」
剣「まぁ、そうだな。振り回され続けるのが私の役目のようなものだし」
少年「それは違う話だと思う……」
門兵「お?その剣、喋るのか。変わった魔装具だな。……いやでも前にそんな話も聞いたか」
ドンッ
少年「あいたっ」ドサッ
剣「……」カランカラン
白衣「あらあら、これは失礼……」
パシッ
白衣「こちらの剣もあなたのものかしら?」スッ
少年「はい、ありがとうございます。こちらこそすみません」パシッ
剣「……すまない」
白衣「……あらあら、へぇ。そう。この剣喋るのね。こちらこそぶつかってしまってごめんなさいな」
白衣「しかし、おかしな魔装具……。いや、少し前に似たような話を聞いたわね。えぇとなんだったかしら……」アタマグルグル……
白衣「……まぁいいわ。おにいさん、これは私からのお詫びよ」
シュゥゥ……ポンッ
〈白衣の 右手に 小さな花束が 現れた!〉
少年「……魔法?」
白衣「いいえ、手品ですわ」フフッ
スッ
〈少年は 小さな花束を 渡された!〉
白衣「それでは、おにいさん。またいつか」
門兵「おぉ、ちょうど帰って来たみたいだぞ」
少女「ただいまー!」
少年「おかえり……少女ちゃん服買ったの?」
少女「……なんていうのかな、これ!」
町娘「少し変わった形ですけど、ワンピース……ですかね?」
町娘「私からの、プレゼントです」
花屋娘「私たちからの、でしょー」
町娘「この街からの、歓迎のプレゼントということで」
花屋娘「いぇーい♪……まぁ着せ替えが楽しくって盛り上がっちゃっただけなんだけど」ボソッ
町娘「少女ちゃん、マゼンタのリボンがかわいくて目立っちゃうから、おとなしめのものにしておいたんですよ」
少女「えへへ……似合うかなぁ?」
少年「いや、まだ袋の中だしわかんないかなぁ」
花屋娘「ロマンがないなぁ、うりうり~」
少年「え~」グリグリ
~神殿~
町娘「ここが神殿です。祀ってあるのは魔石採掘の神様……ですかね?」
花屋娘「私に聞かれても……そういうのは秘書ちゃんの方が詳しいんじゃない?」
少年(花屋娘さんはすごく自然に着いてきてるなぁ)
少女「秘書ちゃん?」
町娘「友達です。町長の秘書をしてるんです」
花屋娘「大変そうだよねぇ……」
町娘「いつも振り回されてるもんね……」
少年(まるでぼくだなぁ)
町娘「あぁ、でもあと一ヶ月くらいでこの神殿を中心にお祭りがあるんですよ」
花屋娘「あぁ、うちももう祭りで使う花の準備で大忙し大忙し」
少年「忙しいのになんでここにいるんですか……」
花屋娘「ゴーイングマイウェイが私の信条だからネ」グッ
花屋娘「その少年くんの持ってる小さい花束とか私がもうその辺にお供えしときたいくらいだよ」
少年「我が道を行きすぎてませんか……。やめてください」
花屋娘「えへへ、じょーだんじょーだん、やんないってばぁ」
少女「むむー。そっかぁ。お祭りかぁ。じゃあお祭りまではここにいようかなぁ?」
少年「あぁ、ずっといるわけにもいかないし、いい節目かもね」
町娘「ふふふ……じゃあ……改めて!」
「「?」」
町娘「ふたりとも……」
花屋娘「ふたりとも……」
ハパァーン パパァーン
〈小炸裂魔法! 花びらがはじけて、宙を舞う!〉
「「魔装具の街にようこそ!」」
少女「……」キョトン
少年「……」キョトン
「「…………!」」ワァァ
少女「あっ、ありがとう!」
少年「わぁ、す、すごい、ありがとうございます!」
剣「ほう……」
花屋娘「へへーん、これも魔装具だよ。マジカルクラッカーってやつ!」
町娘「あっ、ふたりともじゃなくてツルギさんもいるからさんに……にん?にんでいいのかな?」
花屋娘「あぁ、もう!細かいことは気にしなーい気にしなーい!」
少女「……」チラッ
少年「……」チラッ
フフッ
少年(魔装具の町。)
少年(ぼくらが最初に訪れた街は、暖かさに溢れた、素敵な街でした。)
第一話、おしまい。
つづく。
少女「おにぎり食べる?」勇者の剣「食えん」
少女「おにぎり食べる?」勇者の剣「食えん」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1456725399/)
の続きです。
全十二話予定です。
よければお付き合いください。
町娘が宿娘になってたりしてますが、細かいことは気にしなーい気にしなーい。
【第二話】
カチャカチャ……
少年「こんなもんかなぁ」
町娘「あら、おはようございます」ペコリ
少年「あ、 おはよう。町娘ちゃん」
町娘「今日もお早いですね」
少年「お互い様だよ」アハハ
町娘「じゃあ今日は一緒に行きましょうか」
少年「えっ。ぼくの素振り見るの?」
町娘「はい、そういうの見るの好きなんです」
少年「へぇ……変わってるね」
町娘「え?そうですか?」キョトン
ブンブン!!
……
少年「……」
町娘「あら」
……
ブンブン!!
少女「ふっ!ふっ!」
ブンブン!!
……
町娘「……ふふっ。今日は少女ちゃんの方が早かったみたいですね」
少年「……むぅ」
町娘「……?」
少年「あぁ、いや、なんでもないよ」
少年「おーい、少女ちゃーん」
少女「ん?あれ?少年くん、どうしたの?」
少年「ぼくはいつもここで朝、素振りしてるんだよ。少女ちゃんは……ってまず、なにそれ?」
少女「ピッケル!!!!」
少年「うん、それはわかるけど……」
少女「今日はね!町父さんと魔石堀りをおてつだいするの!」
町娘「えぇ……。お父さんったらいつのまにそんな約束を……」
少年「少女ちゃん、偉いね」
少女「少年くんもだよ!」
少年「うん、だよねぇ……」
町娘「驚かないんですね」
少年「まぁ、なんとなく予想はついてたからね……」
剣「慣れたものだな」
少年「お互い様です……」
ブンブン!!
少女「ふっ!ふっ!」ブンブン
少年「あのさ、少女ちゃん」
少女「えっ?とっとぉ……」
ピッケルドサッ
少女「なにかな?」
少年「さっきから思ってたんだけど……ピッケルは……横振りじゃないと思うよ……」
少女「えぇー!」ガーン
少年「野球の練習のときの素振りの影響かな」
町娘「野球をやってたんですか?」
少女「勇者になるためにね!」エッヘン
町娘「勇者になるために……野球……?」ハテ……?
少年「気持ちはわかるけどあまり深く掘り下げないで」
町娘「……っとと。そういえば。今日はお二人ならサンドイッチが足りませんね」
少女「サンドイッチ?」
少年「いつも朝、素振りのあとに貰っちゃってるんだ……」
少女「えっ、少年くん、ずるい!」
町娘「ふふっ、今日の朝食は早めにしましょうか」
少女「さんせーさんせー!ツルギさんももうお腹減ったよねー!」
剣「減らん」
ヨォーシワタシモアシタカライッショニスブリスルゾー!
ウン,イインジャナイカナ
ツルギサン,メガグルングルンニナルカラ,カクゴシテネ!
ダイジョウブダ……
…………
町娘「……ふふっ」
~宿、食堂~
町父「おっ、来たか。待ってたぞ」
町娘「はいはい、お父さんのはこっちね」
町父「おう、ありがとうな。それはそうと、ふたりには今日の説明をしなきゃな」
少年「説明、ですか?」
町父「ピッケルでガツガツする!以上だ!」
「「「簡素!」」」
町父「冗談冗談。……いや、やることは本当にそれだけなんだが」
少女「それだけなんだ……」
町父「あぁ、でもそうだな。まずはピッケルだが……こいつは少しばかり細工がしてある」
少女「細工?……ビームとか出るの?」
町父「出るぞ」
「「「出るの!?」」」
町父「はっはっは」
町父「こいつは、魔装具でな。魔装具ってのは魔石を使いやすく道具に組み込んだ……」
町娘「あぁ……お父さんは語りはじめると長くなるんだから!ちゃっちゃと!」
町父「むぅ……簡単に言えば、魔石が壊れない程度に力を倍増してくれる。だから疲労自体はある程度抑えられるはずだ」
少女「へぇ……!すごいんだね!」
町父「逆に言えば、そのピッケル以外だと採掘が難しいんだ。普通のピッケルではまず硬すぎて無理だし、強すぎる魔装具だと魔石をおもいっきり砕いちまう」
少女「じゃあツルギさんでがつがつはできないのかぁ……」
町父「そういうことだな」
少女「残念だなぁ」
少年「ツルギさんでがつがつするつもりだったの?」
町父「ちなみに、採掘中に魔物が出たときは……」
ビビーッパチュンッ
町娘「あっ、わたしの卵焼きが……黒こげに……」
町父「このビームで魔物を退治だ」
少女「……!」キラキラ
町娘「わたしの……たまごやき……」
少年「えぇ……」
町父「がっはっは!どうだろう!すごいだろう!」
町娘「おーとーうーさーん?」
町父「!? よし、行くぞお前ら!」ガタッ
パシッ
町娘「みなさんはゆっくり食べててくださいね!」ニコッ
町父「あっ、ちょっ、まっ、悪気は、ちょっ」
ズルズル……アァーレェー……
少女「……」キラキラ
剣「……うむ」
少年「……うん」
少年「今日もサンドイッチは、おいしいなぁ」
第二話、まだつづく。
開幕早々からやらかしてますが、誤字脱字はほんといつも勢いに頼りすぎてすごい見落としてるので、教えていただけるとありがたいです。
レスに対するお返事なんかは基本的には全部終わってからさせていただきます。
それではまた明日。
おやすみなさい。
~採掘場~
ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!
ビーガガガ
ガリガリガリガリ
少女「わぁ……魔装具がいっぱい!」
少年「採掘用の魔装具って、このピッケルだけじゃないんですね」
町父「それは俺の自作だからな!最高だぞ!」
…………
ドリルギュイイイイイン
ガリガリガリガリ
…………
少年「あっちのほうがすご……むぐっ」ガシッ
町父「よぉーし!掘るぞ掘るぞー!」
少女「はぁーい」テクテク
少年「むぐっむぐっ……ぷはぁー、ちょっくちっ」
町父「グッドラック」グッ……トコトコ
少年「えぇ……」
少女「よいしょっ!そいや!とぉーっ!」
ガシンッ!カキンッ!ガリガリッ!
少女「てぇーいっ!えぇーいっ!とーお!」
ガリガリガリガリ!!!!
少年「楽しそうだね」
少女「楽しいよ!」
少年「そう……えいっ」
ガリガリッ!
少年「よいっ……しょっと」
カキンッ!
少女「そいやっ!そいやっ!ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」
ガキンッガキンッドゥルルルルル……
少年「なにそのかけ声……っていうかどうやってるのそれ?」
…………
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」ガキンッガキンッ
少年「けんしーけんしー」カンッカンッ
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」ガキガキ
少年「けんしーけんしー」カンカン
町娘「ふふっ……個性的なかけ声ですね」
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」ガキガキ
少年「けんしーけんしー」カンカン
町娘「……あのっ」
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」ドカバキグキグシャ
少年「けんしーけんしー」カンカン
町娘「あーのー!」
少年「けんしーけん……!?町娘ちゃん!?」
町娘「あはは……」コマリ
少年「危ないところだった……もう少しで無心で魔石を堀り続けるマシーンになってたよ……」
町娘「そんな呪いじゃないですよ」アハハ
少女「うんうん、楽しかったもんねー!」
少年「少女ちゃんはよくあんなに動いてて疲れないね……」
町娘「ふふっ。少女ちゃんだけじゃなくて、少年くんもお疲れでしょう?差し入れのおにぎりです」スッ
少女「わぁ!ありがとう!なんだか懐かしい!」
少年「ありがとう、町娘ちゃん」
町娘「いえいえ。採掘場に差し入れに来るのもよくあることなんです。今日もお父さんのところに差し入れしてきましたし」
少年「わぁ、そうなんだ。おつかれさまだね」
町娘「いえいえ。好きでしていることでもありますから」ニコッ
少女「むしゃむしゃ。好きでやってること?」ムシャシムシャ
町娘「えぇ……そうですね。えぇと……」チラッ
……
ガキンッガキンッ
コッチラヘンハダイタイオワリマシター
ヨォーシジャアツギウエイクゾー
リョウカイデス!
……
町娘「いろんな人が輝いていて、いいなって」
少年「輝いてる?」
町娘「えぇ、みんな輝いてます。稽古しているときの少年くんも、ツルギさんと話してるときの少女ちゃんも、魔装具を作ってるお父さんも……」
町娘「何より。ここから見える景色は、みんながみんな、輝いてます。みんな一生懸命、何かのために輝いてます」
町娘「だから、わたしは……」
…………
少年「ん?……どうしたの?」
町娘「……あはは。なんでもありません」
町父「おっ、ふむふむ、すごいな。中々魔石を掘れてるじゃないか」
町娘「あら、お父さん」
町父「おう、こっちにいたのか……。じゃあおまえたち、今日はもういいぞ。掘った魔石を作業場まで運んでおいてくれ。町娘は案内を頼む」
町娘「もう、お父さんは人使いが荒いんだから……台車はこっちですよ」
少女「もしかして、この台車もまそーぐ?」
町父「はっはっは。それは普通の台車だ」
~街中~
ガラガラガラガラ
少女「よいしょぉ……よいしょぉ……」ガラガラ
少年「えっさぁ……ほいさぁ……」ガラガラ
町娘「台車のときはあのかけ声じゃないんですね」
少女「うーん。せっかくだから……ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」
少年「えっさー………ほいさー……」
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!ほら!少年くんも!ほら!」
少年「えぇ……けんしーけんしー」
町娘「……ふふっ」
ガラガラ
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」
少年「けんしーけんしー」
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」
少年「けんしーけんしー」
眼鏡「…………」
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」
少年「けんしーけん……」チラッ
眼鏡「…………」ジトーッ
少年「しーけんしー」
少女「ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」
トコトコ……
トコトコトコ……
眼鏡「……目があった」
少年「けんしーけんしー」
眼鏡「……」グリグリ
少年「やめて。杖が刺さる。頬に刺さる。やめて。いたい。やめて」
少女「あっ!眼鏡ちゃん!ひさしぶり!ゆーしゃゆーしゃ~!」
眼鏡「……なにその挨拶」トマドイ
少年「少女ちゃん、なんかテンション高いんだよ……」
眼鏡「……仕方ない」
少年「そうなんだけどね」
町娘「えっと……?こちらは……?」
少年「あぁ、えっと。眼鏡ちゃん。魔法使いだよ」
眼鏡「……よろしく」
町娘「よろしくお願いします」ペコリ
少年「しかし、やけに時間がかかったね?ぼくらの四日遅れくらい?」
眼鏡「……そこも含めて、話がある。そこの酒場に来て。商人も待ってる」
少年「あー……そうしたいのは山々なんだけど」
ガラガラ
少女「これを運んだあとだね!ゆーしゃっ!ゆーしゃっ!」ガラガラ
眼鏡「……仕方ない」シャララ
〈眼鏡の摩擦軽減魔法! 少女の台車と地面間の摩擦が減少した!〉
少女「ゆーしゃっゆー……うわっ!すごい!滑る!つるつる!すごい!」
少年「えっ……」グッ
グッグッ
少年「あの、ぼくのは何もなってないんだけど」
眼鏡「……さっき、私を無視したから」
少年「えっ」
少年「冗談だよ!冗談!ごめん!」
眼鏡「……」
〈眼鏡の摩擦軽減魔法! 少年の台車と地面間の摩擦が減少した!〉
眼鏡「……私も、冗談」
少年「っとと……」ガラッ
少年「おぉ……!軽い!」
町娘「ふふっ……おもしろい人がいっぱいですね」
少年「えっ……と……」
少女「そうでしょ!!!」
町娘「はい♪」フフッ
少年(……先、越されちゃったな)ポリポリ
ガラガラガラガラ……
~酒場~
商人「おっ、来たか」
眼鏡「……やっと見つけた」
少女「商人さーん!ひさしぶり!ツルギさんも連れてきたよ!」
少年「お久しぶりです」
剣「……久方ぶりだな」
町娘「……おじゃまします」
商人「おぉ、騒々しいな。っと、そちらのお嬢さんは……」
町娘「町娘です。よろしくお願いします」
商人「商人だ。こちらこそよろしく」
商人「少女たちはもうこっちに打ち解けてるのか?」
町娘「まぁ、私の周りでは……」
少年「あはは、なんというか……」
商人「流石ってやつだな」チラッ
少女「へ?わたし?」
剣「うむ。流石だ」
町娘「……?」
商人「あっはっは。まぁまぁ、とりあえず。そうだな。積もる話ばかりだ。お互いに情報交換といこう」
商人「四日前……そこにいるツルギさんが大地から抜かれた日のことから順にさ」
第二話、終わり。
つづく。
一応前回のあらすじを簡単に。
【前回のあらすじ】
ある日、少女は地面に刺さってる勇者の剣と出会いました。
少女は勇者にしか抜けないその剣を抜くべく、あの手この手で勇者を目指します。
世界一の剣士を目指す少年、行方不明の勇者パーティ魔法使いの妹の眼鏡、その眼鏡のお世話役(?)の商人さん、あと変な怪盗さんや町を統治するお城の人々なんかと出会いつつ、少女は少しずつ成長し、なんだかんだで勇者の剣を抜きました。
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