ゆん「」
ひふみ「」ガタッ
青葉「どうしてなんですか?」
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ゆん「と、突然どしたん、青葉ちゃん?」
青葉「いや、いつもゆんさんって長袖じゃないですか。不自然な位に」
ゆん「そかな…青葉ちゃんの気のせいやと思うで」
青葉「いえ、入社してからずっと長袖ですよ。夏でもずっと長袖だったじゃないですか」
ゆん「…」
青葉「どうしてかな~って思って」
ゆん「…ウチ、長袖の服が好きなんよ」
青葉「へぇ~」
ゆん「うん、だからいつも長袖なん!」
青葉「ふ~ん…私は半袖姿のゆんさんも素敵だと思うんですけどね」
ゆん「そかな…」
青葉「一回、袖まくってみてもらえませんか?」
ゆん「…遠慮しとく。ウチ、半袖は似合わへんし」
青葉「なーんか腑に落ちないんですよね。どうしてそんなに長袖にこだわるのかなぁ」
ゆん「別にこだわってるわけやないけど…」
青葉「あっ!もしかして長袖が好きなんじゃなくて、半袖が嫌ってことなんでしょうか。でもどうして半袖が嫌なのかな~」
ゆん「だから半袖が嫌いってわけや
青葉「あ!嫌いじゃないんですね。じゃあ半袖になってもらえませんか!?早く早く!!」
ゆん「い、いやや言うとるやないか!しつこいで、青葉ちゃん!」
青葉「あれあれ~やっぱり嫌なんですか?」
ゆん「ちが…今のは言葉の綾で
青葉「で、結局どっちなんですか。半袖が嫌なのか、嫌じゃないのか」
ゆん「…い、いやや!ウチは半袖が嫌いなん。だから半袖にはせぇへんし、袖もまくらない!これでええやろ!」
青葉「何で?」
ゆん「え」
青葉「何で半袖が嫌なんですか。理由を説明してくださいよ、理由を」
ゆん「理由なんて…そんなん、ただの好みの問題や」
青葉「ただの好みの問題で、ここまで嫌がるかなぁ…」
青葉「あっ!!もしかして」
青葉「半袖が嫌なんじゃなくて、半袖になるとまずいことがあるんでしょうか?」
ゆん「っ…」
青葉「あれ~どうしちゃったんですかゆんさん?俯いちゃって。もしかして図星でした?」
青葉「半袖になるとまずい…半袖ってことは…手首か前腕でしょうか?」
ゆん「ぐ…」
青葉「きっと腕に な に か が あるから、半袖になりたくないんだろうなぁ。一体、なにがあるんでしょうか」
ゆん「…ぅ」
青葉「え?何ですか」
ゆん「もう堪忍してな…」
青葉「堪忍って言われても…私がゆんさんを追い詰めてるってことですか。どうして?ねぇ、 ど う し て ?」
ゆん「…青葉ちゃんだって本当は分かっとるんやろ。ウチが半袖になれへん理由」
青葉「え~そんなことないですよ~。むしろ、分からなくて聞いてる感じなんですけど」
ゆん「だからそれは…」
青葉「それは?」
ゆん「…わかった!半袖になる、なるから!」
青葉「!じゃあ半袖になってください。はやくはやく!ほら、ひふみ先輩も見てください!」
ひふみ「えっ…私も、見ていいものなの?」ビクッ
青葉「う~ん。別に見られて困るものではない…ですよね、ゆんさん?」
ゆん「まぁ、別にええよ」
青葉「見られて減るものでもないですよね?」
ゆん「…まぁ、そうやけど」
ひふみ「じゃあ…私も見ていい?」
ゆん「大丈夫です、ひふみ先輩」
ゆん「じゃあ半袖になりますね。この服、特殊な構造だから、脱ぐっていうか、腕の部分を外すことになるんですけど」スッ
青葉「…」
ひふみ(大丈夫かなぁ…)
ゆん「ジッパーを下げて…はい、脱ぎました。さぁどうぞ見てください!」ジー
ひふみ「!!……ん?」
ゆん「あ、あんまり見ないでください、恥ずかしいです///」
ひふみ「え?どういうこと、なの」
青葉「あ~…」
ゆん「だから見せたくなかったんです…太った二の腕を!」
ひふみ「に、二の腕?」
ゆん「私、元々腕が太いんです。それを見せたくなかったからずっと長袖を着てたんです」
青葉「…」
ひふみ「そういうこと、だったんだ」ホッ
ゆん「そうです。それを青葉ちゃんたらなんべんもしつこく…」
青葉「……あははは~そうですよね。ごめんなさい」
ゆん「青葉ちゃん、今回はさすがにデリカシーが無さすぎやで!同じ女ならちぃとはわかるやろ!」
青葉「えへへ…面目ないです」
ゆん「そういうわけやから、ウチは半袖になりとうないの。これでこの話はお終いや!」
ひふみ「そういうことだったんだね。あっ、私会議あるから行かなきゃ…」タタッ
青葉「…」
ゆん「さ、青葉ちゃん仕事に戻り!」
青葉「…」
ゆん「なんや、まだ何かあるん?」
青葉「もう片方の腕も、見せてもらえませんか?」
ゆん「なんや、しつこいなぁ。見せても同じやで」
青葉「いや、そうじゃなくて。ゆんさんって右利きですよね?」
ゆん「そうや。それがどないしたん?」
青葉「右利きの人が腕を片方見せるためにジッパーを下すなら、右手で左腕のジッパーを下すと思うんですよねぇ」
ゆん「…」
青葉「なのに左手で右腕のジッパーを下しましたよね。どうりで、ジッパーを下すのに少し手間がかかってたんですね」
ゆん「…言っとくけど、左腕は見せへんで」
青葉「なんでですか?右腕と同じなんじゃないですか?」
ゆん「今は仕事中や。遊んでる時間はあらへん」
青葉「じゃあ、仕事終わったら見せてくれますよね?」
ゆん「嫌や」
青葉「何でですか?」
ゆん「なんとなくや、な ん と な く。そもそも、青葉ちゃんに腕を見せる義理なんかあらへんわ」
青葉「ふ~ん…そうですか」
ゆん「そゆことや。ほら、仕事に戻った戻った」シッシッ
青葉「…わかりました」タタッ
ゆん(やっと諦めたわ…左腕は見せられるわけあらへんわ)
ゆん「さ、仕事仕事と…」カタカタ
ゆん(昔の自分が恥ずかしいわ…何であんなことしてしまったんやr「ぐぁ…!?」ガタン
ゆん「なんやこれ…青葉ちゃん!?」
ゆん(青葉ちゃんがウチに馬乗りになってる…ウチを転ばしたのは青葉ちゃん!?)
青葉「…!」グググ
ゆん「や、やめてな青葉ちゃん!」
青葉「…!」グググ
ゆん「自分いい加減にしぃ!八神さんに言いつけるで!」
青葉「…!」ジーーーー
ゆん「や、やめて!ジッパー引かんといて!」
青葉「…!」ジーーーーーー
ゆん「やめて…お願い…お願いやから」
青葉「ジッパー下しちゃいました。左腕、見せてもらいますね」グググ
ゆん「や…やめてやめてやめてやめて!!!」グググ
青葉「…マウント取った相手に、勝てるわけないじゃないですか」ススッ
ゆん「いや、いやいやいやいやいやいや!!!!脱がせないで!やめてよ!」
青葉「言葉づかいが普通になってますよ~。さぁ、左腕はどんな風になってるのかなっ…と!」バッ
青葉「…」
ゆん「うっ…うぐっ…見ないで…見ないでよぉ」
青葉「……気持ち悪い」
ゆん「いや…いや…嘘だ…こんなの嘘だ…うっ…」
青葉「…」パシャッツ
ゆん「!?」
ゆん「や、やめて!」
青葉「いいでしょう。撮られたから治るものでもないし」パシャパシャ
ゆん「なんで…なんで青葉ちゃんはこんなことするの?」
青葉「こんなことって、どんなことですか?教えてください、ゆんさん」パシャパシャ
ゆん「いや…もう嫌…」グスグス
青葉「ふふ…ゆんさんの泣き顔、かわいいなぁ」
30分後
八神「おつかれ青葉。ゆんってどこ行ったか知らない?」
青葉「ああ、体調が悪いから早退しました。八神さんに伝えておいてと言われましたけど」
八神「そうなの?大丈夫かなぁ。…あ、でさ青葉、このキャラクターのグラフィックなんだけど…
次の日
りん「もしもし、飯島さん、体調はどう?……え、仕事辞めるって、突然どうしたの?」
りん「事情は言えないって…ちょっと待って。ねぇ」ブッツーツー
その後、ゆんさんのお母さんから会社に電話ががかかってきました。
娘をそっとしておいてほしいとのことでした。
これ以降、ゆんさんと連絡がつくことはありませんでした。
数日後、会社宛てにゆんさんから退職届が送られてきました。
みんな、突然のことに戸惑っていました。
しずくさんは、「こういうことも時には起こる。仕方がないことだよ」と言っていました。
結局、ゆんさんは退職になりました。机の私物は、ダンボールに入れてゆんさんの家に送りました。
そしたら、受け取り拒否されて戻ってきてしまいました。
遠山さんはしょぼくれてましたが、すぐに元に戻りました。でも無理してる感じがします。
八神さんは昔の事を思いだしたのか、落ち込んでいます。自分のせいなんじゃないかって自分自身を責めてるみたいです。
はじめさんも寂しそうです。はじめさんはゆんさんと仲が良かったですから。
ひふみ先輩は、私のことを避けている気がします。どうしてなんでしょうねぇ。
部署の雰囲気はガラっと変わりました。
業務量を細かく配分し、無理のないスケジューリングで仕事を進められるようになりました。
先輩方も、すごく優しくなりました。よく声をかけてもらえるようになったし、お昼にも毎日連れてってくれます。
一度八神さんと仕事終わりにご飯を食べました。
酔った八神さんに、「お願いだから青葉は辞めないで」と泣き付かれました。
遠山さんも、裏ではすごく落ち込んでいることも知りました。
はじめさんもやっぱり寂しそう。ひふみ先輩は何故かビクビクしてます。
こんな職場を盛り上げられるのは、新人である涼風青葉、私をおいてほかにありません。
私が元気に明るく働けば、先輩方もまた元気になると信じています。
さぁ、今日も一日頑張るぞい!
終わり
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