戦士「勇者ってこのまま一生結婚できなさそうだなwwwwww」 女勇者「……」 (30)

手に持っていた紅茶が騒々しい音を立てて床に落ちた。
周りの人間がはっとして一斉にこちらを見る。
恥を感じられるほど余裕のない私は構わず、
立ち上がって目の前の男に掴みかかった。

「よせよ勇者、じ、冗談…冗談だって、ははは…」

「ほ、ほら、皆こっち見てるぜ? …な?」

男は心底怯えてる様子で必死に宥めてきた。
だが私の怒りは収まらない。
それどころかその男の情けない姿が、ますます火に油を注いだ。

「てめーは私を怒らせたッ!」

多くの注目を浴びながら、私の右手はこれまでの鬱憤を原動力に男の腹立たしい顔面に真っ直ぐ伸びていった。
しかしビビっていながらも経験の為せる業か、男はさっと顔を逸らして躱した…
ものの、待ち構えていた私の左手によってあえなく撃沈したのだった。
……以上。これが私の近所の喫茶店を出禁になった経緯である。

女勇者「……」ツーン

戦士「なあ、いい加減許してくれても……」

女勇者「は? それ今言う? 殴られてから一時間も経ってない今言うそれ?」

戦士「す、すまん」

女勇者「どんな神経してんの」

戦士「……」

女勇者「はぁ、既婚者のあんたには分からないよ。25歳・独身の焦りと結婚を催促される苛立ちなんて」

※多くの女性は10代で結婚する世界です。

戦士「お、俺だって独身の時代はあったぜ?」

女勇者「あんたは18で結婚しただろ。独身期間が一ヶ月単位のリア充は馬に蹴られて勃起不全になれ」

戦士「言い過ぎだろ……」

女勇者「あーあ。同じ勇者パーティなのに、どうしてこうも差がついたのか」

女勇者「片や、魔王討伐した後の凱旋で若い娘に囲まれひとしきり遊び回った後に気に入った娘と結婚する者」

戦士「……」

女勇者「……片や、勇者として崇め奉られ持て囃されたものの、誰にも一人の女として見てもらえず…というか異常に畏れられて男どころか女子供にも避けられる私……」

女勇者「どうしてこうなった! どうしてこうなった!」

戦士「そりゃお前、スタイル良くて顔も整ってて、それに加えて魔王倒した勇者様とか高嶺の花すぎるだろうよ」

戦士「性格も一見クール(…ってか残忍冷酷)で近寄り難いし」

女勇者「まじかぁ」

戦士「ま、今日の喫茶店のアレ見られたから、周りの認識は多少改まるかもな」

女勇者「悪い方向にね……はぁ」

女勇者「…ほんと、勇者とかなるんじゃなかった。私なんか大人しくパン屋でパン売ってた方が今より幸せに暮らせてたんだろうなぁ……」

戦士「お、おいおい! そんなこと言うなよ!」

女勇者「は?」

戦士「俺達が魔王を倒せたからこの世界から魔物が消え
たんだろ! それによって救われた奴は大勢居るはずだ!」

戦士「そいつらはきっとお前に感謝してる、凱旋した時だって涙流しながらありがとうって言われたじゃないか! その想いを受け取ることこそが勇者の……」

戦士「お前の、この上ない幸せだろうがッ!」

女勇者「ふーん」

戦士「えっ、響いてない……?」

女勇者「いや、どうなの。世界を救った勇者のお供というのを落とし文句に、街中の若い女を犯した戦士がそれを言うのはどうなの?」

戦士「それは…」

女勇者「そりゃーね、ベッドの上で鳴きながらありがとうありがとう言われたら戦士くんは幸せだろうけどさぁ……」

戦士「ごめんなさいもう止めて、俺が最低のクズ野郎なのは分かったからぁ!」

女勇者「……まあ、分かるよ」

戦士「…?」

女勇者「確かに勇者の幸せはあんたの言う通り、人々の笑顔だとか世界の平和だろうけど」

女勇者「でも、女の子の幸せはやっぱり……温かな家庭を持つことなんだよ」

戦士「女の子……?」

女勇者「……」

戦士「あっやべ――――」

戦士「」チーン

女勇者「……帰ろ」

後に目が覚めた戦士は数週間の記憶喪失状態に陥り、
握り拳を見ただけで失禁するようになってしまったという。

――――五年前、勇者と三人の仲間が邪悪な魔王を討った。
この時勇者は20歳、この時点でもちょっと行き遅れてる感が否めないが、
この魔王討伐の旅が終われば巨万の富を得て、
更には理想の男性と結婚し幸せな家庭が築けると……
勇者はそう信じていた。
確かに、国からは一生かかっても使いきれない程の大金を受け取った。
立派な豪邸も賜った。
しかし、恋愛の方はとんと駄目だった。
それは何故か。

……勇者の容姿や輝かしい功績、それと自分とは釣り合わないと意気消沈する男が多い。
それは大いにある。
……単純に性格がキツイ。威圧感が凄い。
それもあるかもしれない。

だが、これら以上の「難敵」を勇者は抱えている。
この難敵の存在ある限り、勇者に婚期は一生訪れない。
それが――――


義妹(賢者)「お帰りなさいませ、お義姉(ねえ)さま?」

女勇者「ただいまぁ」

義妹「……む、何か臭いッ」クンクン

義妹「こっ…これは……まさか、男ッ……!?」ガクガク

女勇者「ああ、それは」

義妹「――――臭いから人物を特定…対象に呪術をかける…」

女勇者「戦士だよ? ほら、あのヤリチンの」

義妹「記憶操作、トラウマを植え付け……えっ!?」

義妹「ああっ! そうだったのですね! 私ったらてっきり遂にお義姉様に悪い虫がついてしまったのかと……」

女勇者「悪い虫…ね。もう25年もその虫に触れてないわ……」

女勇者「手を繋いだことすらない生粋の生娘だよ…はぁ……」

義妹「その調子です、私のお義姉様……」ニッコリ

女勇者「何か言った? …てかお腹空いた、作って」

義妹「はい! 既に用意できてますよ?」

女勇者「さすが我が妹だ」

義妹「ふふ、大好きなお義姉様のためなら毎日美味しい食事を作ることくらい、わけないですよ」

女勇者「……妹が弟だったら今間違いなく惚れてただろうなぁ」

義妹「あら? 女では駄目ですか?」

女勇者「当たり前じゃない、何言ってるの」

義妹(まだ…まだお義姉様には時間が必要なのですね……)

義妹(しかし進歩は感じます…恋愛対象が弟に含まれている、というのはつまり、性別の垣根を越えればあるいは)

女勇者「?」


――――姉妹愛なんて生温い、重すぎる愛がそこにあることに、
勇者はまだ気付かないのだった。

どうしても結婚したい女勇者と
どうしてもレズセしたいその義妹
書き溜め無し。とんでもなく下品にする予定。
不定期に更新します。おやすみ。

女勇者「やっぱり義妹の作る料理は美味しいね」

女勇者「しつこ過ぎない、私好みのあっさりした味。文句無しの100点だね、これは」

義妹「ふふふ、そこまで褒められると照れます、お義姉様……」

女勇者「一生食べていたいなぁ」

義妹「ッ!?」ビックゥ!!

女勇者「ん、急に固まっちゃってどした? 魚の骨でも刺さった?」

義妹「いえ、ふふ…刺さったのは、お義姉様の私への愛です……ああ、奥まで深く伝わるぅ……」

女勇者「え?」

義妹「一生私の料理を食べたいというのはつまり私と一生一緒に暮らすということでそれは家族を超越した恋人という関係で恋人ならば夜毎に身体を重ね愛を確かめ合うことも何ら不思議ではなくて……」ブツブツ

女勇者「まーた壊れちゃったよ。一緒に暮らし始めてから多いな、こういうの」

女勇者「ん? これは……」

女勇者「何だこれ、手紙?」

義妹「ああ、それはさっきお義姉様の留守の間に家に届いたんですよ」ケロッ

義妹「確か、お義姉様のご両親方からだったような…」

女勇者「……ねえ、そのご両親方っていうの止めない?」

女勇者「私の親ってことは、妹である貴女の親でもあるんだから」

義妹「いえ…私はお二人にお会いしたことがありませんし、義妹ですし……」

女勇者「そんなの別に気にしなっ…」

義妹「いいんですっ!! 別にっ!!」

女勇者「えっ」ビクッ

義妹「私はお義姉様の義妹であって、お義姉様のご両親の義娘ではありません! お義姉様の義妹!! これ重要ですから!!」

女勇者「あっはい……」

義妹「はぁはぁ…す、すこし熱くなってしまいました」

義妹「さあ、お義姉様の今日一日のお話を交えつつ、お食事を続けましょう……?」

女勇者「そ、そうだね」

女勇者(私は時々、この娘のことがよく分からなくなる……)

女勇者(もう七年も一緒に居るんだけどなぁ)

――――七年前
まだ義妹が私の義妹じゃなくて、
魔王の手下である「賢者」だった頃。
私と彼女が初めて出逢ったのは夜の公園。
満天の星空の下で、私達は殺し合っていた。


女勇者(当時18歳)『……ふぅ』

女勇者『もう止めにしない? 小さな暗殺者さん?』

賢者(当時14歳)『はぁ、はぁっ…勇者、絶対に、この手でッ……』

賢者『殺すッ!!』ゴォォ

女勇者『……はぁ、そんな幼い見た目でなかなか根性あるね』

女勇者『いいよ、気の済むまで、お姉さんが付き合ってあげる……!』

弱冠18歳にして勇者の力を意のままに使いこなせていた私は、
命のやり取りをしてるというのにかなり余裕で、
賢者が繰り出した魔法をただ機械的に打ち消したり吸収したり跳ね返していた。
正直彼女と私の力の差は圧倒的。
いつでも私はこの戦いを終わらせることができた。
この剣で彼女の胸を貫けば……。
だがすぐにそれをしなかったのは、彼女にすこし興味が沸いてしまったからだと思う。
……いくら実力があっても、精神面はまだまだ幼かったのだ。
慢心したどころか自分の敵を気にかけるなど――――

女勇者『ねえ君、人間でしょ?』

女勇者『何で魔王の手下なんかやってるの?』

賢者『うるさいッ! 話しかけるなよ、余裕こきやがって、今は戦闘中だぞッ!』ゴォォ

女勇者『いや、だって届かないじゃない。いつまでたっても君の攻撃はさ』

女勇者『ここに』トントン

馬鹿にした感じで自分の心臓の辺りを指差す。

賢者『くっそおおおおおおーっ!!』

炎、雷、氷……
各属性の最上位の攻撃魔法が一斉に私を襲ってきた。
だがこれをひらりと身をかわし、或いは打ち払い、冷静に対処した。
それだけに留まらず、地を蹴り、一瞬で彼女と距離を詰める。

賢者『っ…!?』

女勇者『はいタッチ、ゲームイズオーバー…ね?』

私の手が彼女の肩に触れた。
ただ、それだけで彼女の敗北は決定したのである。

賢者『あれ!? 出ない、魔法がっ…出ないっっ!!』

女勇者『ごめん、君の魔法はしばらく封印させて貰ったよ』

賢者『そんな……っ』

女勇者『……ねえ、ちょっとお話しない?』

いくら凄腕の魔法使いでも、
魔法を奪われれば残るは普通の女の子。
その辺のベンチに座らせて、私はその横に腰掛けた。

女勇者『別に取って食ったりしないから、そんなに震えないでよ』

女勇者『それとも……寒いの?』

賢者『……』ブルブル

賢者(失敗した失敗した失敗した……)

賢者(この場を辛うじて逃げ出せても、帰ったところできっと魔王様に失望されて、消されてしまうっ……!)

女勇者『……?』

賢者(……死ぬほど努力して、魔法を覚えて、周りの魔物に人間だって馬鹿にされないように、拾ってくれた魔王様の力に少しでもなれるように……)

賢者(これまで、頑張って生きてきたのに……わ、私はっ、こんなところで……っ)

女勇者『……ああ、そっか』

賢者(私の人生って、なんだったんだろ……誰にも愛されることなく終える命に、生まれてきた意味はあったの……? こんな人生、最初から無ければ――――)

ギュッ

賢者『――――え?』

賢者(あったか、い……?)

女勇者『こんなにも冷たくなっちゃって……ごめん、早く抱き締めて、暖めてあげるべきだったよね』

女勇者『目の前の女の子一人救えないで、何が勇者だよ……』

賢者(……これがこの人の、匂い……)

賢者『――――ッ! は、離せよ!! 人間なんかが私に触れるな!!』ジタバタ

賢者『私はお前を殺そうとしたんだぞッ!? それなのにこんなことして、頭おかしいのか!』

女勇者『だって、君も人間じゃない』

女勇者『私は人間の味方の勇者だから。何もおかしくないよ』

女勇者『……え、なに? 私、汗臭い?』クンクン

賢者『そ、そんなことは無い、けど……っ』

賢者『いやッ! そ、それよりも、私は人間じゃない!!』

女勇者『……どこからどう見ても可愛らしくて肌の白い、人間の女の子だけど』

賢者『違う!! 私は産まれたばかりの赤子の時に人間の親に捨てられ、そのまま野垂れ死ぬところを魔王様に拾われた!!』

賢者『そしてそれからの14年間魔界で過ごし、魔王様の為に私は生きてきた! だから私は人間なんかじゃない!!』

女勇者『……』

女勇者(魔王が人間の赤ん坊を……? 何で……?)

賢者『……だから、離せよ。お前と私は相容れない』

女勇者『うーん、今のを聞いたらますます放っておけないよ』

賢者『は?』

女勇者『話を聞くに、きっと君は完全に魔王に利用されてるね。同じ人間をぶつけて私の油断を引き出す為に……』

賢者『だから何? 魔王様に拾われた時点で私にはその道しか無かった。勇者…つまりお前を殺すことだけが私の存在意義だった……!!』

賢者『この日のために色々頑張ってきたッ! ……負けた今となっては全てが水の泡だけどな……』

女勇者『……このまま私が君を帰したら、用済みとなった君は魔王に殺される』

賢者『だろうな』

賢者『何だ? 哀れに思ったのなら今ここで私に殺されてくれ。出来ないのなら、下手な同情はよせ……』

女勇者『うん、決めた』

女勇者『私と一緒に来なよ』

賢者『!?』

賢者『な、何を言ってるんだ!? 錯乱状態なのか!?』

賢者『話の流れからして私が人間に恨みを持ってることくらい分かっただろう!? ならば私が何と答えるか想像できない程馬鹿ではないだろっ!!』

女勇者『いや、答えなんて聞かない。引き摺られてでも来てもらうよ』

女勇者『いずれ殺されてしまう人を放ってはおけない』

女勇者『だって私は勇者だから』

女勇者『……それに、君程の魔法使いが気付いてない訳無いよね』

賢者『……』

女勇者『もう魔封じの効果はとっくに切れてるんだけど』

女勇者『ふふ、思ったより私の胸は居心地良かったかな?』

賢者『……でも、私なんかが生きていても、何の意味も無いぞ。価値が無いんだ、私の命には』

女勇者『いや、意味はあるよ! これから生きる意味!!』

賢者『えっ……』

女勇者『いい? 君は一生――――』

女勇者『――――私の為に生きること』




義妹「……お義姉様、ああ、お義姉様ぁ」スリスリ

女勇者「んん、むにゃむにゃ……」

義妹「あの言葉を頂いてから、私の身も心もお義姉様のものとなりました……」

義妹「私が一生をお義姉様に捧ぐのですから、お義姉様も私にそうすべきだと、そうは思いませんか……?」

義妹「……ねえ、お義姉様ぁ?」ニッコリ

女勇者「ぐぅ…ぐぅ…」


月明かりが差し込む勇者の寝室。
気持ち良く眠る彼女の傍らに、下着姿の女が一人。
静かな夜に、ひっそりと勇者の純潔が奪われようとしていた――――

今日は更新できない。
代わりと言っちゃ何だが過去作貼っておくわ。
全部安価だけど。暇潰しに使って。

冒険者「俺の旅の目的は >>3 だ」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1458549520

勇者「ハードモードだけど頑張って魔王倒す」【安価】
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1460281228

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