堀裕子「エスパーユッコにお任せあれ!」 (43)
『遠藤さんは松茸の取り方が特殊だと伺ったのですが』
『やってみようか?』
『はい!』
『ホクトプレミアム!』
ズボボッ
『えっ!?』
『ほら、こうなっちゃうんだよね』
『で、これを見せると……』
『ホクトプレミアム!!』
ズボボボボボッ!
『松茸も焦ってんだと思うね』
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346プロダクション事務所
輝子「……フヒッ」
輝子「フヒヒヒ……!」
幸子「輝子さんて…… そのCM見ると、ホント良い笑顔をしますよね」
輝子「……え?」
輝子「そ、そうか……?」
小梅「うん… 凄く嬉しそう、輝子ちゃん」
輝子「そ、そうか……」
輝子「キノコが出ると、ついテンションが……な」
小梅「ふふっ」
小梅「でも… 私もその気持ち分かるかも…」
小梅「私も… そのCM好きだもん」
幸子「そうですね。インパクトとユーモアが凄いですからね」
幸子「一度見ると癖になるというか」
幸子「……というか」
幸子「ボクとしては、先程からテレビを見たまま微動だにしない裕子さんが気になって仕方ないんですけど……」
裕子「……」
輝子「……」
小梅「……」
幸子「……」
輝子「……嵐の前の、静けさ……か?」
小梅「……かも」
幸子「……知れませんね」
裕子「……分かりましたっ!!」
輝子「!」
小梅「!」
幸子「!」
裕子「皆さん! 分かりましたよ!」
裕子「今のはズバリ、サイキックパワーに違いありません!」
輝子「……へ?」
小梅「……へ?」
幸子「……へ?」
裕子「ふっふっふ……」
裕子「普通の方は欺けても……」
裕子「この、サイキックアイドル、エスパーユッコの目は騙せませんよっ!」
輝子「……」キョトン
小梅「……」キョトン
幸子「……」キョトン
幸子「あの、すみません、もうちょっと、順を追って説明をですね……」
裕子「むむっ、これは失礼しました!」
裕子「先程のCMでですね、キノコ取りの名人さんがキノコをズボボッと急成長させていましたが」
幸子「いや、あれは成長じゃなく地上に頭を出したって演出じゃ――」
裕子「あれは実は、サイキックパワーに因るものだったのです!」
輝子「……へ?」
小梅「……へ?」
幸子「……へ?」
裕子「だって、常識的に考えて、キノコが他のキノコに焦りを憶えて急に成長するわけがないですよね?」
裕子「では…… どうすればキノコを急成長させられるのか……」
裕子「……そうっ、サイキックパワー!」
裕子「サイキックパワーに因って実現するさせた……!」
裕子「それが答えです!」ズビシ!
幸子「えっ…… いや、あれCMですから……ね?」
小梅「う、うん、演出というか…… フィクションというか…… だから……」
裕子「しかし…… 生き物を成長させるとは……!」
輝子「き、聞いてない……! 全然……!」
裕子「むむむぅ…… どうやらあの男性、かなりのサイキッカーのようですねぇ……!」
輝子「ど… どうしよう……?」ヒソヒソ
幸子「ど、どうしましょうって言われても……」ヒソヒソ
小梅「や、やっぱり…… 無理矢理にでも突っ込まないと… ダメなんじゃないかな……?」ヒソヒソ
裕子「……輝子ちゃん!」
輝子「フヒッ!?」
裕子「どうかこの堀裕子に、お友達をお貸しください!」
輝子「……えっ?」
裕子「私も…… 私もキノコを成長させたいんです!」
裕子「名も知らぬ男性に負けてしまっては、サイキックアイドルの名折れであり……」
幸子「いや、有名な俳優さんですからね? あの――」
裕子「何より、サイキッカーとしての矜持が許せないのです!」
裕子「ですから、どうか、キノコをお貸しください!」
輝子「……えっ? えっ?」
輝子「……な、なんだこれ?」ヒソヒソ
小梅「取り敢えず…… キノコを貸してあげれば良いんじゃないかな……?」ヒソヒソ
輝子「やっぱり、そ、そういう事…… なのか?」ヒソヒソ
幸子「多分…… そういう事だと……」ヒソヒソ
輝子「……えと、分かりました」
裕子「ありがとうございます!」
輝子「それじゃあ…… 机の下から持って来るので……」
裕子「はいっ! お手数をお掛けして申し訳ありません!」
輝子「い、いえいえ……」
輝子「それじゃあ……」
―――――――――
――――――
―――
―――
――――――
―――――――――
輝子「……あの、これで良いですか?」
ゴトッ
裕子「……あの、ごめんなさい、輝子ちゃん」
裕子「この木の丸太は……?」
輝子「げ、原木栽培用の原木、です」
輝子「小さいですけど…… シイタケくんが生えてるので……」
裕子「シイタケですか……?」
裕子「……あっ、確かに生えてますね!」
裕子「へぇー、まだピンポン玉くらいの大きさですけど、ちゃんとシイタケの形になってますね」
裕子「ですが、本当にお借りしていいんですか?」
裕子「成長の過程を見れなくなってしまいますけど」
輝子「だ、大丈夫」
輝子「丁度お鍋が食べたいと思ってたところだから、大きくなったら、寧ろ、こ、好都合?」
幸子「……最近急に寒くなりましたからね」
輝子「フヒ…… 鍋にはキノコ…… 外せない……」
裕子「えっと…… そうことでしたら!」
裕子「このエスパーユッコ、全力でシイタケさんを成長させましょう!!」
裕子「では、早速ですが……」
裕子「始めさせて頂きます!」
裕子「……」
裕子「……ムムッ!」
裕子「キテます…… キテます……!」
裕子「サイキックの…… 波動が……」
裕子「キテますッ……!!」
裕子「……ッ!!」
裕子「サイキックパワー、充填率100%!!」
裕子「……ホクトォォォッ!」
裕子「プレミアムッッ!!」
ズボボッ!
輝子「!?」
小梅「!?」
幸子「!?」
輝子「……」
小梅「……」
幸子「……」
輝子「……あれ?」
幸子「……変わってない、ですよね? 大きさ」
裕子「そう……ですね」
裕子「ですが、確かに手応えみたいなモノは在ったんですが……」
小梅「それに… ズボッって音もしたよね……?」
裕子「……持ち主の輝子ちゃんから見てどうですか? 何かしら変わったところ――」クルッ
裕子「――え?」
小梅「……?」
幸子「……?」
小梅「どうかしましたか?」クルッ
幸子「どうかしましたか?」クルッ
小梅「……え?」
幸子「……え?」
輝子「……フヒッ?」
裕子「……」
小梅「……」
幸子「……」
裕子「しょ、輝子ちゃんが大きくなってる!?」
小梅「しょ、輝子ちゃんが大きくなってる!?
幸子「しょ、輝子さんが大きくなってる!?」
輝子「フヒッ……?」
裕子「……」
小梅「……」
幸子「……」
えらいこっちゃ>ヽ(ヽ゚ロ゚)(゚ロ゚ノ)(゚ロ゚ノ)ノ<えらいこっちゃ ヨイヨイヨイヨイ!!
裕子「……すみません、驚きの余りパニックになってしまいました」
裕子「あの、それで、輝子ちゃん」
裕子「体は大丈夫ですか? 痛い所や何時もと違う所は無いですか?」
輝子「え?」
輝子「うーん…… そういうのは、無い、かな?」
輝子「ただ……」
裕子「ただ……?」
輝子「見える世界が…… その、少し変わった……かも?」
幸子「……ああ、なるほど」
幸子「身長が伸びた分、見えるものの見方が普段とは違ってるって事ですね」
輝子「い、いえーす」
小梅「見た感じだと…… 凛さんや美波さんと同じ位かな……?」
幸子「確か…… 165cm位でしたよね? そのお二人の身長って」
輝子「……え?」
輝子「じゃ、じゃあ、私って、そ、そんなに……?」
裕子「はい…… そうですね」
裕子「少なくとも、確実に私よりも大きいと思うので……」
輝子「そ… そうか…… 私、そんなに大きくなったのか……」
輝子「……」ペタペヤ
輝子「でも……」ペタペタ
輝子「こっちは、そんなに大きくなってない…… のな……」ペターン
輝子「フヒ…… フヒフヒ……」ショボーン
裕子「あ… あははは……」
小梅「あ… あははは……」
幸子「あ… あははは……」
輝子「……フヒ」ショボーン
裕子「……あの」
小梅「……その」
幸子「……えーと」
裕子「……って! そうじゃなくて!」
裕子「輝子ちゃん!」
裕子「本当に申し訳ありません!」
輝子「フヒ?」
裕子「私の所為でこんなことになるなんて……」
裕子「本当にすみませんでした!」ガバッ
輝子「どっ、土下座すか!?」
裕子「ごめんなさい! ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
輝子「えと、あ、あの……」
輝子「いや、別に、大丈夫…… デスヨー?」
輝子「背が伸びただけで…… ふ、不都合が有るわけじゃないですし……」
裕子「十分大問題じゃないですか!」
輝子「そ、そう……?」
裕子「そうですよ!」
裕子「いきなり体型を変えてしまうなんて……」
裕子「私はなんということを……」
裕子「本当に申し訳ありません!」ガバッ
輝子「フヒ!? また土下座!?」
輝子「だ、大丈夫だから!」
輝子「そ、それに…… 大きくなるのも…… 良いんじゃないかって…… 思ったり……?」
裕子「そ、そうなんですか……?」
裕子「ですが…… どうして……?」
輝子「え…… あの…… えーと……」
チラッ
輝子(へ、へるぷみー……!)
小梅(……うん!)
幸子(……はい!)
幸子「そ… そうですね。背が低いと、逆に不便な事も結構有りますしね」
小梅「う、うん。買いたい服の… サイズが無かったり…」
小梅「そもそも体型的にどうしても似合わない服があったりして」
輝子「そ、そうそう」コクコクコク
幸子「それに、歳を間違われることも良く有りますよね」
小梅「あ、うん、それも有るよね…」
小梅「小学生に間違えられたり」
輝子「わ、私も… 有るな、それ」
輝子「私… 来年高校生…… なんだけどな…… フヒ……」
輝子「……それを考えると身長が伸びたのは、む、寧ろ、良かった?」
輝子「せ、生活とか… アイドルの活動で、困るような身長でも無い、ですし…… ね?」
幸子「ですね。正直、ボクももう少しでいいから伸びて欲しいですし」
小梅「私も… せめて、普通くらいは…… うん」
輝子「あの、だから、その…… 裕子ちゃん……」
輝子「そ、そこまで謝ってもらわなくても…」
輝子「私は、全然、だ、大丈夫、だから」
裕子「……輝子ちゃん」
裕子「……」
裕子「ですが……」
裕子「皆さんが組むユニットは大丈夫なんですか……?」
輝子「……ユニット?」
裕子「142'sの事なんですが……」
輝子「……」
小梅「……」
幸子「……」
輝子「……あっ」
小梅「……あっ」
幸子「……あっ」
輝子「え… あ… あの…… それは… だ、大丈夫… だと…」
小梅「そ、そう…! 大丈夫… だから……」
幸子「そっ、そうですよ!」
幸子「142cmだったのは事実ですし! ただ、少し背が伸びただけで!」
小梅「う、うん! ファンの皆も、分かってくれる筈だから……!」
幸子「それに、名前が問題ならちょっと変えればいいだけで……」
小梅「うん… 大丈夫…… 絶対大丈夫だから……」
小梅「今まで通り…… 何も変わらないから……」
輝子「……」
小梅「……」
幸子「……」
裕子「……決めました」
輝子「……?」
裕子「輝子ちゃん!」
輝子「は、はいっ!?」
裕子「輝子ちゃんの体は、この堀裕子が必ず元に戻します」
裕子「絶対に、お約束します……!」
裕子「ですので、少しの間、ご辛抱して頂けないでしょうか」
裕子「私の何に換えても、必ず元に戻しますので……!」
裕子「どうかお願いします!!」
輝子「え? あ、は、はい?」
裕子「ありがとうございます!!」
輝子「で、でも、何か方法が有るんですか?」
裕子「……恐らく、今回の件は、私のサイキッカーとしての能力が足りず
力の制御が出来なかったから起きたものと思います」
裕子「ですので、これから修験を積み、自分の力を制御出来るようになれば、輝子さんの体を元に戻せる筈です」
幸子「しゅ、修験て…… 裕子さん、何をするつもりですか……?」
裕子「富士の樹海に籠ります」
輝子「……へ?」
小梅「……へ?」
幸子「……へ?」
裕子「古今東西、超能力者やサイキッカーと呼ばれた人は皆、生死を懸けた修行の末、その力を開眼したとされています」
裕子「ならば、私も、生死を懸けて、力を開眼して来るまでです……!」
裕子「今のような、中途半端な力ではなく……!!」
輝子「え、あの、危ない事は止めて――」
裕子「そういうわけにはいきません」
輝子「あの、でも、そ、そこまでしなくても……」
輝子「いや、ほ、ほんと、まじで大丈夫ですから……」
輝子「きゅ、急に来た成長期? みたいなものなんで……ね?」
輝子「それに… ゆ、裕子ちゃんに何か有ったら… 嫌… ですし……」
輝子「だから…… その、あの…」
輝子「本当に、大丈夫ですから」
裕子「……輝子ちゃん」
裕子「……お心遣いありがとうございます」
裕子「こんな事を仕出かした私の身を心配して頂けるなんて…… 本当に嬉しいです」
裕子「ですが、どうか、私の我が儘を許してください」
裕子「どうしても…… 私は、輝子ちゃんの体を元に戻したいんです」
裕子「私にとって、サイキック能力は……」
裕子「……人を笑顔に」
裕子「幸せにするものなんです……!」
裕子「決して、誰かを悲しませ、不幸にする為のものじゃない……!」
裕子「私は…… サイキックの力を信じているから!」
裕子「輝子ちゃん! 私は必ず無事帰ってきます!」
裕子「そして必ず、輝子ちゃんの体を元に戻します!」
裕子「それまで、少しの間、待っていてください!」
裕子「それでは堀裕子、行って参ります!」ズダダダダッ
輝子「……」ポカーン
小梅「……」ポカーン
幸子「……」ポカーン
幸子「って! ポカーンとしてる場合じゃないですよ!?」
小梅「……あっ!」
輝子「そ、そうだった!」
幸子「あの勢いだと裕子さん本当に樹海に行っちゃいますよ!?」
輝子「おっ、追いかけないと……!」
輝子「……って、ん?」
プシュュュー……
輝子「……」
小梅「……」
幸子「……」
幸子「……この空気の抜けるような音は」
小梅「もしかして……」
小梅「……ああっ!」
幸子「……ああっ!」
輝子「フヒ……?」Ver.142cm
小梅「もっ、元に戻ってるぅぅぅっ!?」
幸子「もっ、元に戻ってるぅぅぅっ!?」
小梅「……!」
小梅「幸子ちゃん! 輝子ちゃんの隣に立ってみて!」
幸子「!」
幸子「 は、はいっ!」
幸子「……」
幸子「ど、どうですか……?」
小梅「……うん!」
小梅「変わんないよ! 同じ身長になってる!」
幸子「ほっ、本当ですか!?」
小梅「うん! 間違いないよ!」
幸子「じゃ、じゃあ、次は小梅さんが隣に立ってみてください!」
小梅「うん!」
小梅「……」
小梅「ど、どうかな……?」
幸子「……同じです! 小梅さんと輝子さん、同じ身長ですよっ!」
輝子「じゃ… じゃあ…… 私、もしかして……!」
幸子「はい!」
小梅「うん!」
輝子「……」
輝子「……そっかぁ」
輝子「私……」ヘナヘナ
輝子「戻れたんだぁ……」ペタン
幸子「しょ、輝子さん!?」
小梅「しょ、輝子ちゃん!?」
輝子「じ、実は… ダメかもって思ってから……」
輝子「大丈夫って言ってたけど…… 本当に、三人でやれるのか、不安で、怖くて……」
輝子「だから…… ううぅ……」
幸子「だからって…… 泣かないでくださいよ……!」
幸子「ボクだって……」
幸子「本当は、怖くて、泣きたかったんですから……!」
小梅「というか…… 泣いてるからね……? 幸子ちゃんも……」
幸子「そう言う小梅さんだって、泣いてるじゃないですか……!」
小梅「だって…… 私だって… 今まで通り… 三人で出来るか… 私も不安で仕方なくて……」
小梅「でも……!」
輝子「……フヒッ」
幸子「……はいっ」
「「「良かったよぉぉ~!!」」」
ムギュゥゥゥ……
ドア<ガチャ
美波「ただいま戻りました」
凛「ただいま戻りました」
凛「って……」
美波「えーと…… どうしたんでしょうか……ね?」
凛「さ、さあ……?」
輝子「……あっ」
小梅「……あっ」
幸子「……あっ」
輝子「165's」
小梅「165's」
幸子「165's」
美波「へ……?」
凛「へ……?」
幸子「……あ、いえ、呼び間違えを少々」アセアセ
輝子「フヒフヒ」コクコク
小梅「うんうん」コクコク
美波「?」
凛「?」
凛「それで、どうかしたの?」
凛「泣きながら抱き合ってたみたいだけど」
幸子「それが……」
幸子「先程凄いアクシデントが起きまして……」
美波「アクシデント……?」
幸子「はい、実は裕子さんが……」
美波「裕子ちゃんが?」
凛「裕子が?」
輝子「……あっ」
小梅「……あっ」
幸子「……あっ」
輝子「裕子ちゃんを追い掛けないとっ!」
凛「え、え?」
美波「あの――」
幸子「それでは!」
輝子「行ってきまーす!」
小梅「行ってきまーす!」
幸子「行ってきまーす!」
美波「あ、はい、行ってらっしゃい?」
凛「あ、うん、行ってらっしゃい?」
美波「えっと…… なんだったんでしょうか……?」
凛「さ、さあ……?」
後日、事務所
美波「へぇ、そういう事があったんですね」
裕子「はい」
凛「輝子達が飛び出していったから、どうしたんだろうって思ってたけど」
裕子「いやぁ…… 先日は輝子さんは勿論、皆さんにまでご迷惑をお掛けしてしまって……」
机の下<「だ、大丈夫、元に戻れたし、全然、問題… ナッシン」シュッシュッ
机の下<「それに、165cmの世界を、経験できて、面白かった… ですし」シュッシュッ
凛「……ああ、なるほど」
凛「165'sって身長の事だったんだ」
美波「ふふっ、私も、165cmの輝子ちゃん、是非見たかったですね」
美波(それにしても…… 裕子ちゃん、本物のエスパーだったんだ……)
凛(それにしても…… 裕子って、本物のエスパーだったんだ……
美波「……でも、なんで元の身長に戻れたんでしょうね?」
美波「戻れたこと自体は喜ぶべきことですけど……」
裕子「うーん…… 小梅ちゃんのご友人曰く」
『今の裕子さんの力だと… 人を恒久的に大きくするのは無理なんだろうって…』
裕子「だそうです」
美波「……ご友人」
凛「……ご友人」
裕子「はい! なんでも、霊感とかが強い方らしいですよ」
美波「霊感……」
凛「霊感……」
美波「……あっ(察し」
凛「……あっ(察し」
美波「……えーと」
美波「そ、そういえば、輝子ちゃんはどうしたんですか?」
美波「先程から机の下に籠ったままですけど」
机の下<「フヒ。キノコに水やり… です。き、霧吹きを使って」シュッシュッ
美波「……ああ、それで音が」
机の下<「あと、どれを頼むのかの選定も…」
凛「……選定?」
机の下<「……う、うん。それじゃあ今日は…… これだな」
ゴソゴソ
輝子「裕子ちゃん、今回はこれを……」
つシメジ&マイタケ
裕子「はいっ、お任せください!」
美波「……?」
凛「……?」
美波「あの、それってどういう事か教えてもらっても?」
輝子「あ、このキノコ、裕子ちゃんに、大きくしてもらうんです。フヒ」
美波「……え?」
美波「それって…… サイキックな力で……?」
裕子「勿論ですよ! そんな事サイキックパワー以外には出来ませんから!」
凛「……大丈夫なの?」
美波「えーと…… 失敗したんですよね……? 昨日」
裕子「……ふっふっふ」
裕子「このサイキックアイドル、エスパーユッコを侮って貰っては困ります!」
裕子「その失態は最早過去のもの!」
凛「いや、昨日の事だからね?」
裕子「長きに渡る厳しい修験を積み重ねた結果……」
凛「いや、1日しか経ってないよね?」
裕子「ついに、キノコを成長させる事が出来るようになったのです!」
裕子「そう! サイキックパワーによって!」ババーン!
輝子「おお……!」パチパチパチ
美波「……」
凛「……」
凛「……で、マジなの? 輝子」
輝子「マジもマジ…… 裕子ちゃん、マジぱない」
裕子「ですが、どういうワケか、輝子さんが栽培しているキノコじゃないとダメなんですよね」
輝子「ふ、不思議… だな」
裕子「ですねー」
美波(……それって、輝子ちゃんを想うキノコサイドが起こした奇跡とかなのでは)
凛(……それって、輝子を想うキノコサイドが起こした奇跡とかなんじゃ)
輝子「ま、まぁ、シメジくんもマイタケくんも、早く大きくなりたいって言ってるから、願ったり叶ったり…だけどな」
美波(そっちっぽいなぁ……)
凛(そっちっぽいなぁ……)
裕子「さてさて、それでは、観客さんもいらっしゃることですし……」
裕子「エスパーユッコのスーパーサイキックイリュージョン、始めましょうか!」
輝子「フヒッ、お願いしまーす」
裕子「……」
裕子「……ムムッ」
裕子「キテます…… キテます……!」
裕子「……!」
裕子「サイキックパワー、充填率100%!!」
裕子「……ホクトォォオ! プレミアムッッツ!!」
美波(ホクトプレミアム……??)
凛(ホクトプレミアム……??)
ズボボボッ!
美波「!?」
凛「!?」
裕子「成功…… です……!」
輝子「おお……!」パチパチパチ
美波「……」ポカーン
凛「……」ポカーン
輝子「これもまた… 凄い成長ぶり…… だな」
裕子「はい! 何処に出しても恥ずかしくないキノコさんに成長させたつもりです!」
輝子「あっ、こ、これは炊き込みご飯にするつもりだからから、お、お楽しみに… フヒッ」
裕子「はいっ、お裾分け、ありがとうございます!」
美波「……えっと」
美波「夢…… でしょうか……? これって……」
美波「それとも…… 現実……?」
凛「さ、さあ……?」
凛「……ふふっ」
凛「……でもさ」
「フヒヒ、逞しいキノコは… 良いキノコ…… フヒッ」ニコニコッ
凛「あんな幸せそうな笑顔を見せられると……」
凛「どっちか分からないなら、現実の方であって欲しいと思っちゃうかな」
美波「……ふふっ、そうですね」
凛「それに……」
凛「やっぱり、裕子の方も嬉しいんだ?」
裕子「……そう、ですね」
裕子「やっぱり、そうですね」
そう……
私にとって、エスパーという存在は……
悪の怪人を格好良く倒したり、世界の危機を颯爽と救ったり
悲しみや不幸に暮れる誰かに手を差し伸べて
その人を笑顔に…… 幸せに出来る存在で
私はずっと、そんな存在になりたいと、追い続けて来た
本当は…… そんなものは無いと
何時まで現実から目を背け、何時まで追い続けているのかと
そう、私の中の私の知らない私が囁いた事も在る
何時までも、夢の世界に、子供の世界に居続けるわけにはいかないと
本当は、私にだって分かっていたから
……でも
追い続けて、本当に良かったと思う
「フヒッ、シメジくんも、マイタケくんも…… 凄く…… 美味しそう……!」
追い続けたからこそ、この笑顔が見れた
追い続けたからこそ、笑顔を届ける事が出来た
追い続けたからこそ、ここにはこんな幸せが在る
きっと…… 恐らくこの先も、悪の怪人と戦ったり、世界を救ったりは…… 多分、無い
けれども、私はこの先も、追い続けよう
私にも出来ることが在ると知ったから
私でも、誰かに笑顔を、幸せを届けられると知ったから
私が選んだこの道は、決して間違いではないと、心の底から思えるようになったから―――
輝子「ゆ、裕子ちゃん、ありがとう」
輝子「ま、また、頼んでも…… いい?」
裕子「もっちろんです!」
裕子「この……」
裕子「エスパーユッコにお任せあれ!!」ズビシ!
―――だから、私は追い続けよう
何時までも、何処までも、エスパーという存在を
私が思う、エスパーという存在を
私は、追い掛け続けよう
凛「えっと… 張り切ってるとこ悪いんだけどさ」
美波「アイドルの方も…… ね? 裕子ちゃん?」
裕子「……あっ」
裕子「……」
裕子「……あ、アイドルの方もっ、エスパーユッコにお任せあれ!」ズビシ!
美波(……なんだかなぁ)
凛(……なんだかなぁ)
おわり
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