真「残り雪」 (24)
プルルルルルル…
真「…さ、乗ろうか?雪歩」
雪歩「…うん、真ちゃん」
真「うわー……朝早いからかな?空いてるね」
雪歩「そうだね、私達しか居ないみたい」
真「この向かい合わせの席、懐かしいなぁ」
雪歩「あ、真ちゃん…」
真「ん?」
雪歩「私、隣が良いな…」
真「…もちろん、ほら、おいで」
雪歩「ありがとう」
真「なーに言ってるの、僕と雪歩の仲じゃない」
雪歩「ふふふ、うん、そうだね」
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真「大体…2,3時間って所かな」
雪歩「ん」
真「ん?眠いの?雪歩」
雪歩「ううん、よっかかりたいだけ」
真「そっか」
雪歩「うん」
真「…」
雪歩「…」
真「あのさ」
雪歩「うん」
真「手、握ってて良いかな?」
雪歩「…うん」
真「着いたね〜」
雪歩「そうだねぇ」
真「凄い、抜けるような青空だ!」
雪歩「そうだね」
真「さ、行こうか?雪歩」
雪歩「うん、そうだね」
真「あはは、見てよ雪歩、バスが1時間に2本くらいしかない」
雪歩「…そうだねぇ」
真「待とうか」
雪歩「うん」
真「後に料金支払うシステムなんだね、恥かいちゃった///」
雪歩「ふふふ」
真「わー…窓の外見てよ、何も無いね、雪歩」
雪歩「うん」
真「ん…」
雪歩「眠い?」
真「うん、朝、早かったから」
雪歩「肩、貸すね」
真「ありがと…」
雪歩「おやすみ…」
真「ん…」
雪歩「真ちゃん」
真「…ん……ん、付いた?」
雪歩「うん」
真「…それじゃあ、行こうか」
雪歩「…うん」
真「ちょうどお昼頃だね、太陽が少し暑い…」
雪歩「本当だ」
真「大丈夫?雪歩」
雪歩「うん、大丈夫」
真「そっか」
雪歩「真ちゃん?」
真「ん?」
雪歩「大丈夫?」
真「…うん」
真「食べたなぁーお腹いっぱいだよー」
雪歩「凄い食べたね、真ちゃん」
真「うん、どうせならね!」
雪歩「私もどうせならいっぱい食べたかったけど」
真「雪歩は元が小食だからね、仕方ないよ」
雪歩「でも、美味しかった」
真「そうだよね!いやー自分であんなにお金出して食べたの初めてかもしれないなぁ」
雪歩「けっこうしちゃったね」
真「うん、でも、ね」
雪歩「…そうだね」
真「…さぁ、ここからが大変だよ雪歩!がんばろう!」
雪歩「うん!がんばる!」
真「よっほ!」
雪歩「ふぅ、ふぅ」
真「雪歩、大丈夫?」
雪歩「はぁ、はぁ、ごめん、真ちゃん、もうちょっとゆっくり」
真「うん、ごめんね、ゆっくり行こう」
雪歩「うん」
真「手、繋ぐ?」
雪歩「繋いで良い?」
真「もちろんだよ!」
雪歩「ありがとう」
真「…」
雪歩「真ちゃん」
真「…」
雪歩「震えて…いるね」
真「…」
真「もうちょっとだよ雪歩」
雪歩「っうん」
真「ここの岩場を登れば…っと!ほら、雪歩、手」
雪歩「ありがとう真ちゃん、よっと」
…
…
真「…うわぁ」
雪歩「…綺麗」
真「世界に二人だけみたいだ!!」
雪歩「…本当だね!」
真「ヤッホーーーー!!!」
雪歩「ふふ…ヤッホー!」
真「はは、雪歩の声だ!」
雪歩「真ちゃんの声もだね!」
真「寒くなってきたね、それにちょっと苦しいかな?」
雪歩「随分高い所まで、来たから…うん」
真「道は平らになってきたね、尾根って言うのかな」
雪歩「うん、さっきよりは、少し楽、手、繋いだままで歩きにくくない?」
真「平気だよ」
雪歩「うん」
…
…
真「あ、雪歩」
雪歩「うん、私も見えた」
「「雪だ」」
真「六月でも、この辺には結構雪が残っているんだね」
雪歩「うん、まばらだけれど」
真「真っ白で、まるで雪歩みたいだ」
雪歩「褒められているのかな?」
真「褒めているんだよ」
雪歩「ふふ、なら、ありがとう」
真「……さぁ、探そうか?雪歩」
雪歩「…うん」
…
……
真「夕陽が沈むね…」
雪歩「…うん」
真「寒い?」
雪歩「ううん」
真「…雪歩の手、冷たいね」
雪歩「…真ちゃんの手は、暖かいよ」
真「地平線がユラユラしている」
雪歩「こんなに、こんなにも、綺麗なんだね、世界って」
真「…うん」
雪歩「真ちゃん」
真「うん?」
雪歩「ごめんね?」
真「…ううん」
…
……
真「んぅ…」
雪歩「少し、ぼうっと、してきた、ね」
…
真「星しか、ないね」
雪歩「…綺麗」
真「へへ、雪のベッドは、少し、寒いね?」
雪歩「うん…冷たい、ね」
真「雪歩」
雪歩「真ちゃん」
真「肌、冷たいね、本物の雪、みたいだ」
雪歩「真ちゃん、泣いてるの?」
真「ううん…ないて、ない、よ…ないて……なんて……」
雪歩「真ちゃんの涙、暖かい…」
真「へへ、指先の冷たさも…解らなくなってきちゃった…」
…
…
真「もう、寝る、ね、雪歩」
雪歩「…うん」
…
…
雪歩「ねぇ、真ちゃん?」
真「うん…雪歩」
「「好きだよ」」
…
……
………
…………
……………
…………………………
P「少し大人びたか?」
真「あー!少しは酷いですよ!!僕はもう27歳ですよ!プロデューサー」
P「それを言うなら、俺はもう社長だ!」
真「ふふ、あははははは」
P「ははははは…」
真「……10年、経ちますね」
P「…やっと、出向く決心がついたのか?」
真「…僕だけ、ずっと行けませんでしたから……」
P「無理も無い、だって見つかったのはお前だけだったんだから…」
真「…」
P「あ、悪い…」
真「いえ………今だって、どこかに居るって思ってます…」
P「…気持ちは、解るよ」
真「さ!行きましょう!こういうのは勢いが大事なんです!」
P「おう!」
P「…ここからは、一人で行くか?」
真「お気遣い、ありがとうございます」
P「あの、さ……真、解っているとは思うが」
真「大丈夫です、そんな事絶対にしません」
P「そうか…そうだな、よし、じゃあ、行ってこい」
真「はい」
……
…………
………………
P「たった一度のキスを見られて」
P「ゴシップに晒されて、二人で会う事も禁止されて…」
P「…」
P「…なぁ」
P「…なぁ、雪歩」
P「真、綺麗だったぞ」
P「見に来てやれよ…」
パンッパン
「久しぶりって、言いたく無いんだけど、久しぶりかな?雪歩」
「でも、雪歩はこの下には居ないんだよね?はは、不思議な気持ちだなぁ」
「…」
「この時期にしては、少し、寒いね、あの日を思い出すよ」
「こういう日はさ、決まって雪歩の幻想を見ちゃうんだ」
「へへ、恥ずかしいんだけどね」
「…」
「あの日、雪の上に寝ていたはずの僕は」
「救助隊に発見された時、雪の上に居なかったって聞いて」
「雪歩に、おいてかれちゃったかな、って思ったんだ」
「…」
ピトッ
「冷たいなぁ…」
「まるで、あの日の雪歩のようだ」
「…僕が怖くなっちゃったから、かな?」
「…生きたいって…思っちゃったから?」
「雪歩…」
…
…
「…」
「…行くね?雪歩」
「プロデューサー…いや、社長がさ、まってるから」
「また、これるか、決心はつかないけどさ…」
「……じゃあね、雪歩」
…
…
…
「…雨、かな……」
「夜だから、良く見えないや」
「あの日のように、星は見えているのに…」
「冷たい……これって…」
「雪…?」
「あぁ…」
「見たくなかった」
「…こんな所で、見たくなかったなぁ」
「…また、幻想だ」
「あの日のように、雪歩は僕に向かって」
「泣いているの?」
「そう、聞くんだ」
「そして冷たい手を伸ばして」
「真ちゃんの涙、暖かい…」
「そう、言うんだ」
「…あれ?」
「…暖かい、な」
「…この手は、暖かい」
「ただいま……真ちゃん」
…
…
P「遅いな…真…」
P「う〜冷える…珍しいんじゃないか?この時期にこんなに寒いのは…」
P「小雨もパラついてるし…」
P「…」
P「…」
P「おい…」
P「おい、まさか!!」
「ただいま、プロデューサー」
P「うわ!びっくりした!随分遅かったなまこ………」
P「………まったく!いつ、帰ってくるかと思ったよ!」
P「お帰り、ふたりとも」
終わりです。
お付き合いいただきありがとうございました。
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