今回もつれづれと書いていきます。
前回のちひろ「ちょっとどういうことですか!?」の続編です。
【モバマスSS】ちひろ「ちょっと!どういうことですか!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474018096/)
見て頂ければ、大体のお話は見えてくるかと思います。
では、次レスよりスタートします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1474275441
ちひろ「…」
ちひろ「――私は、プロデューサーさんはスカウトの時に、この子はどんな性格をもち、どんなタレント性があるのかを驚くべき時間をかけるんです」
ちひろ「――前は、プロデューサーは大変危険な人物と思っていましたが、そのおかげで皆が売れっ子アイドルになれたと思えば…」
ちひろ「いや、よくはないかと思うんですよね…。小学生をつけ回して、写真を撮って、あまつさえ地域すらも味方に付けてしまう…。こんなの一介のプロデューサーがやっちゃいけないんですよ…」
ちひろ「――とは言いながら、今日も私は、プロデューサーさんのスカウティングノートに目を通すのです」
ケース1 堀裕子の場合
ちひろ「今では、サイッキカーアイドル(?)のユッコちゃん。プロデューサーさんはどういった経緯で見つけたんでしょうか?」
モバP『201○年○月×日 公園で昼食を食べている時、目の前でやたら大きな声を上げている少女を見つける』
モバP『彼女は右手にスプーンを持って、『むむむーん!』と気合が空回りそうな奇声を上げていた。どうやら、スプーンを曲げようとしているようだ』
モバP『しかし、彼女の気合もむなしくスプーンはうんともすんとも言わない。数分が経って、奇声を上げなくなったので諦めたかと思いきや、』
モバP『ダウジングの棒をランドセルの中から取り出した。そしてまたあの奇声を上げて、辺りを歩き始めた。俺の前も歩いたが、残念ながら反応はしなかった』
モバP『こちらも数分経っても反応なく、ランドセルにしまい再びスプーンを取り出した。また奇声を上げるかと思いきや、深呼吸を数度して、『むん!』と一回だけ気合を入れた』
モバP『すると、先ほどまであれほど何も言わなかったスプーンがお辞儀をしたのだ。ぐにゃりと90度曲がった。見ていた俺も声を上げてしまった』
裕子『見ていましたか今の!?私、サイッキカーですよね!?』
モバP『本当に持っているとしたら、これはとんでもない逸材だ。これは追跡対象とさせてもらおう』
ちひろ「…え。ユッコちゃんって本当にスプーン曲げたんですか…。でも、本番でも事務所でも成功していないような…」
モバP『×月×日 あの件があって以降、少女は人目もはばからずスプーン曲げに熱中する日々だ。公園で何度も挑戦するが、曲がらない』
モバP『△月△日 あの公園で待っていると、堀が泣きながら歩いていた。それとなく聞くとどうやら男子にスプーンを取られてしまったらしい』
モバP『△月□日 スプーンの代わりに綿棒を持ってきて、いつものように曲げようとする。諦めの悪さというか、やり続けようとするその心意気は小学生にして中々素晴らしい』
ちひろ「綿棒とスプーン…。似ているんですかねえ…」
モバP『□月?日 学校を見ていると、彼女の作った作文があったので読んでみる。将来の夢はサイキッカーになること。その為に毎日綿棒を曲げる練習をやっていると』
モバP『読んでいたら、堀の友人がやってきて、これを出した後、先生に呼び出されて説教を食らったらしい。それでも、胸を張っていたとか。本当にみんなの前で曲げてやると』
ちひろ「あのポジティブさはもうあったんですね…。夢に一途っていいなあ…」
モバP『☆月!日 音楽の授業で歌のテストがあった。堀も受けたが、かなりひどい。歌声で窓ガラスが割れるそうという表現がピッタリであった。これは候補を変えざるを得ないのか…』
ちひろ「音痴もやはりでしたか…。でも、それだけ致命的な短所があったけど、なにがあってアイドルになれたんでしょうか?」
モバP『!月?日 小学校卒業式。卒業証書を受け取った児童は、一人ひとり未来への抱負を伝えるのがこの学校の伝統となっている。』
モバP『もちろん、堀もそれを行うわけだが、まわりの児童はかなり抽象的な大人象を話していたが、彼女だけは「サイッキカーになります!」と叫んで会場を凍りつかせた』
ちひろ「うーん。今のユッコちゃんからでも想像しやすいですね」
モバP『周りはドン引きだったろうが、俺の評価はうなぎ上りだった。いくら小学生とはいえ、この場であんなこと言えるのは大物か愚か者だ。俺はこの子に賭けてみたい』
まゆ「ちひろさぁん。何を見ていたんですかぁ?」
ちひろ「ひぃぃぃぃ!」
まゆ「あ、ごめんなさい…。驚かせてしまいました…」
ちひろ「まゆちゃん…。おはよう。少し過去の資料を呼んでいたんです」
ちひろ「――これでしまおう。これを読みたいなんて、言われたら、まゆちゃんは…」
まゆ『プロデューサーさんはまゆよりも、他の子の方が大事なんですねぇ!?』
モバP『まつんだまゆ!話せばわかる』
まゆ『問答無用!』
ちひろ「――的なことになりかねない!」
まゆ「…これはプロデューサーさんたちのスカウト帳ですよねぇ?」
ちひろ「へ?まゆちゃん知ってるんですか?」
まゆ「それくらい当然です。まゆはプロデューサーさんのことなら何でも知ってますから」
ちひろ「怒りはしないんですか ?――ん?たち?」
まゆ「プロデューサーさんたちは、スカウトも自分で行うんですよぉ。プロデューサーさんの先輩も後輩も、上司の方もノートがあるんですよ」
ちひろ「マジか…。このキチガイなスカウト文化はこの部署の伝統なのか…」
まゆ「あるはずですよぉ…」
ガサゴソ
まゆ「ほら、綾瀬さんのスカウティングノートですね」
ちひろ「書いた人は…プロデューサーさんの先輩のモバOさん…」
まゆ「今は演出部の係長補佐ですねぇ」
モバO『201×年×月?日 綾瀬穂乃香15歳(中学3年生)を見つける。背筋をピンと伸ばした少女。常に堅い表情で崩さない。ストイックそうな見目。これから彼女について書いていく』
モバO『×月??日 学校の成績は上。得意科目は国語。現代文は学年トップを取れるほど。逆に苦手は理科。生物系が苦手だが、それでも学年では高い位置。学業をおろそかにしないのは評価は高い』
ちひろ「早速飛ばしますねぇ…。学校の成績なんてどこから仕入れてくるんだ…」
まゆ「そうやって、いろんなことを知っているって嬉しいですよねぇ…」
モバO『□月◇日 部活は所属はしているが、ほぼ幽霊。すぐに帰り、バレエを行っているようだ。成績は県でも五本指。練習風景を見たが、リズム感、柔軟性は文句なし。以外にもハードに身体を動かしている。バレエ=優雅で穏やかというのは偏見だった。運動量問題なし』
モバO『□月@日 バレエの先生は県下でも有数のコーチ。鬼コーチと誉れ高い人。大会まで選手をとことんまで追い込めて、当日は褒めまくる人だ』
モバO『△月*日 何か上手くいかないようだ。練習の動きにキレがない。普段は崩さない表情にも焦りのようなものが見えた。もちろんコーチも分かっているはずだ。それでも容赦のない指導が飛ぶ』
まゆ「あの人ですかぁ…」
ちひろ「そっか、まゆちゃんと穂乃香ちゃんは宮城県出身だったわね。そんなに有名なの?」
まゆ「はい。この人はメダリスト輩出人と言われる人で、飴と鞭の使い方は最高に上手いって有名です。人が曰く『世界で一番怖いコーチ』って」
ちひろ「すごかったんだ穂乃香ちゃん…」
モバO『△月○日 先日の練習でかなり答えたのか、毎晩自主練を行う。朝も早く起きてやっているらしい。学校の休み時間も動画を見チェック…。向上心は大いに評価したいが、これが悪い方へ行かなければい良いのだが…』
モバO『◇月×日 悪い予感は的中した。自主練と練習でオーバーワークになり、練習中に足を捻ってしまった。捻挫の診断だったが、身体以上に精神的に参ってしまったようだ』
ちひろ「これは…」
まゆ「穂乃香さんも大変だったんですね…」
モバO『?月!!日 ケガは治って復帰。それでもしっかりやりきれるのはさすがだったが、余裕がないのが見て取れた。翌週は中学最後の大会。しっかり調整してほしい』
モバO『?月☆日 大会。綾瀬は5位入賞だった。周り(コーチも含め)が称賛する中、彼女は一人だけ表情が晴れなかった。どういうことだろうか?』
モバO『○月@日 綾瀬の中学卒業。公立の進学校へ進むことが決定。抱負は期待を背負える人間に成長したい。とのこと。バレエは続けるようだ』
モバO「×月△△日 高校に入って、勉強とバレエの両立は非常に難しい。良くやっていると思うのだが、彼女の理想はまだ高いようで、まだ自分を追い込む。こちらが不安になってしまうほどだ。誰かそれを言ってくれる人はいないのだろうか?」
まゆ「写真を見ても、ずっとこの表情なんですねぇ…」
ちひろ「確かに…。入ってきたときの穂乃香ちゃんは、本当に疑っているというか、笑顔一つなかったわね」
モバO『!!月??日 ちなみに学校内での綾瀬の評判は、一見堅苦しいが、丁寧。というのが大方の評判だ。暗いという評判もあったが、総じて話したことのない生徒の評判だ。教師陣も良い。人格的な問題は一切ない』
モバO『さて、バレエの方は成績は落ちていく一方だ。ずっとやってきている綾瀬にとって、それは耐えきれないに違いない』
モバO『×月○日 綾瀬はバレエのレッスンをサボった。見てきて3年目で初めてだ。学校近くの公園で制服姿でベンチに座って、携帯を見ながらため息。やはり罪悪感があるようだ。ここらで少し話をしてもいいかなと思う』
モバO『なお、俺の評価は運動量B 向上心A 性格B 表情D 以上から、スカウト活動を開始する』
ちひろ「Oプロデューサーは、そこから引っ張ってきたんですか…」
まゆ「…暗い世界で一人きり。そんな中、手を差し伸べてくれたのがOさん…。良いお話ですよねぇ…」ウットリ
ちひろ「ここに来て穂乃香ちゃんの表情も明るくなって、笑顔も増えて。そして一緒に頑張れる仲間も増えましたし…」
まゆ「うふ。まゆだって同郷のライバルですからねぇ…。負けませんよぉ」
ちひろ「他のも見てみましょう。Nプロデューサーの新田美波さんを見ていきましょう」
モバN『201×年○月○日 体育館でインドアテニスを行っていた少女たちを見つける。その中に、一際すらっとした少女を見つける。Tシャツにハーフパンツ姿だが、モデルのように足が長い』
モバN『すらっとした手足はやはり魅力がある。アイドルは可愛さが第一だが、セクシーさに特化したアイドルも良いだろう。名前は新田美波。年齢は16歳(当時)これより追跡に入る』
ちひろ「高校からラクロスをやっていたんじゃないんですね」
まゆ「多分、ほとんどの高校ではなかったはずですよ?」
モバN『高校は公立の進学校。テニス部ではナンバー2ペア。成績も良好。文武両道を地で行くタイプなのかもしれない。学生らしい能力が高いというのは、非常にプラスだ』
ちひろ「このころから美波ちゃんは何でも出来てたんですね」
まゆ「モデルでもあれだけのスタイルは、中々いませんからねえ…。背の低いまゆには羨ましいです」
モバN『△月△日 趣味は資格取得。漢検、英検はすでに2級を取得。簿記も3級を取っており、次の目標は都道府県検定らしい。友人が言うには達成感が欲しいらしい。向上心も高いとみていいだろう』
モバN『□月□日 さて学校内での新田の評価だが、学校内でも有名人。あの見目は惹かれるだろう。裏では新田美波ファンクラブが複数存在しているらしい』
ちひろ「すごいですね美波ちゃん…。本人は知っているんでしょうか?」
まゆ「さすがプロデューサーさんですねえ。詳しいことまで知っています」
ちひろ「――この人たちは一体何なら知らないんでしょうか?」
モバN『◇月◇日 都道府県検定は一番下の3級を受験。健のホームページに過去問があり、それをしっかり解いたらしく、筆が進んでいた』
モバN『@月×日 都道府県検定3級に無事合格。後日書状も届いた。次の目標は危険物取扱乙種4類を受験しようとのことらしい』
ちひろ「…もしかして、美波ちゃんはガソリン扱えるのかしら?」
まゆ「でも時期的にはもう取れているんですよねえ…」
モバN『!月!日 進学校の進路決定は早い。新田は文系を選んだらしい。学内成績は上の下。資格だけでなく、きちんと学校の勉強も行えているのも高評価』
モバN『新田の進路は4年制大学進学。国立私立はまだ不明だが、それでも担任は今の学力と新田の努力なら行けると推され、本人も頑張りたいと話した』
ちひろ「すごいですね。資格も取りながら受験勉強も頑張る。良いですね」
まゆ「はい。美波さんを目標にする高校生組も多いですしね」
モバN『××月??日 3年生が引退した後の部活の方も徐々に頭角を現してきつつある。練習試合では5勝2敗。部活内ではトップの成績だった。運動力も一定レベルはありそうだ』
モバN『!月@@日 学内活動も新田は積極的だ。2年次の文化祭でも委員になり、文化祭でのクラスの出し物取り決めなどを決めて、委員会で決めていく』
モバN『その中で、新田のクラスではメイド喫茶に決まった。これはクラスの男子が裏取引を行い、新田のメイド姿を見たいという団結の結果だった。念のため言っておくが、俺が見たいわけではない。が、衣装に着られてしまうのかをまたとない機会だ』
ちひろ「…これはどうなんでしょうね。Nさんが裏で手を回したというか、何で団結してることすら知ってるんですか…」
まゆ「プロデューサーさんなら、まゆのメイド姿見せてあげたい…」
モバN『?月?日 文化祭。新田のメイド姿は予想以上だった。元々お淑やかな性格だった彼女にメイド役はハマり、校内の男子は元より、他校の生徒も来るほどだった。売り上げは総合トップをたたき出した』
ちひろ「これがその写真ね」ペラ
まゆ「美波さんは凄いですね。高校2年生でもうこの魅力…」
モバN『!?月○日 先日のメイド姿の副作用だ。他の、この県ではそれなりに有名な地元プロダクションが目を付けてきた』
ちひろ「すごい破壊力でしたからね…。ローカルタレントも経験したと思っていたんですが」
モバN『☆月△日 地元プロダクションとの話は父親の猛反対で頓挫したとのこと。本人はどうやら恥ずかしかったらしく、やりたくないらしい』
モバN『××月□日 生徒会選挙に出馬。副会長に立候補。決選投票で当選。なお、開票結果は得票率97%での勝利だった』
モバN『◎月△△日 修学旅行は北海道。クラーク像や時計台、札幌ドームを見て楽しんでいたが、もちろんナンパも後を絶えず、2日目からは新田のグループだけ教師が付いて回った。この魅力はどうやら全国区のようだ』
モバN『□月◇日 3年生ともなると学校行事で美波の出番多くなる。もちろん新入生の間でも美波は有名人となり、会長よりも有名となる。立ち居振る舞いも凛として、女子からも支持が高い』
モバN『!月☆日 高校総体。団体戦メンバーの大将として出場する。が、3回戦で第3シードの高校と当たり、敗退してしまった。個人戦はベスト8。大健闘もむなしく引退となってしまった…』
モバN『△月●日 三者面談。父親と共に進路の確定。神戸の4年制私立大学へ進学したいとのこと。学部は経済学科だ。進路担当もお墨付きを頂いた。受験の科目も確認をして、頑張れという形で終わった』
モバN『×月□日 年も開けて、第一志望の大学の受験日。さすがの新田も緊張していた。受験科目は3科目。英語と政治経済、そして国語をチョイスした。各科目60分。新田は一生懸命取り組んでいた。さて、こちらも準備をしなければいけない』
モバN『○月×日 運動量A 性格A 魅力A 向上心A。文句なし。部長からもGOサインが出たが、一番の問題は父親だ。下手なアプローチは禁物だ。慎重に行わなければ…』
モバN『×月×日 まずは新田に接触。もちろん、拒否されたが、こちらは3年見てきた自負がある。(もちろん3年云々は言わない)新田をどうプロデュースして、1年後の新田。3年後のアイドル新田の姿を伝えた。後日、両親と話をということになった』
ちひろ「さすがに3年は引きますよね…」
まゆ「まゆは、言ってくれた方が嬉しいです…。それだけの思いがあるんですから…」
ちひろ「――平常運転だなぁ」
モバN『×月△日 ついに両親と面談。と思ったが、父親から門前払いを食らった。娘を思えば、芸能界なんて娘を食い物にして当然ということだ。少しして、母親がやってきた。娘と話をして今は揺れているとのことだった。父親の休みの日を聞いてその日に標準を合わせる』
モバN『×月□日 再び訪問。父親は憮然としていたが家には上げてもらえた。新田は入れず3人で面談。今まで見てきたことは伏せて、彼女の魅力と性格などを入れたプロデュース計画を話す。
モバN『もちろん新田を途中で投げ捨てるようなことはしないという前提だ。その後、うちの実績と育成実績を伝える。予想以上に長くなってしまい、途中で新田が帰ってきた。そこでその日はお開きになった。』
モバN『×月☆日 第2回のスカウト交渉。今回もお手製の資料を持ってきた。他のプロダクションのスカウトの現状を話し、その上で我々は新田(対象)を深く多角的に見てきたことをアピール。
モバN『もちろん新田の人生である。最終的な判断は彼女だし。我々は彼女の実現を応援したい。という旨を伝えた。父親も初回と比べると表情は柔らかくなっていた』
モバN『×月!日 今回はまさかの新田サイドからの交渉の申し出があった。自宅に急行すると、新田から2つ質問が飛んだ。まずはグラビア。露出の過度なものはNGにしたいとのことだった。そしてもう1つは神戸の大学で、東京に行くので負担がかかるのではないかというもの。』
モバN『こちらは土日のみの起用で、大学でもやりたいことを最優先しろと伝えた。あくまでもアイドル活動は学業の次でもいいというスタンスでお願いしたいとも。それを聞いて新田の表情は明るくなり、父親は明言を避けたが、アイドル新田誕生となりそうだ』
モバN『△月○日 新田卒業。本人もそうだが、彼女を慕う生徒も一緒に泣いていた。その次の日、新田は電話で、うちでお世話になりたいと電話をしてきた。すぐに契約書類を持って、新田とのアイドル契約を無事果たした』
まゆ「…美波さんとの入団にはそんな過去があったんですね。何というか驚きです」
ちひろ「でも、その甲斐あってすぐに芽が出て、CDデビューまでしているんだし良かったと思いますよ」
ちひろ「――美波マネーは本当に良いドル箱です。ありがとうございました」
ちひろ「しっかし、このプロデューサーのスカウティングノートは面白いですね」
まゆ「アイドル一人一人に物語があるんですねぇ…。もっと見てみたいです」
ちひろ「うーん。この人なんてどうでしょう。どうやって来たのか気になります」
まゆ「ヘレンさんですね。確かにどういう経緯でここに来たのか気になります」
ちひろ「えーっと、担当はTプロデューサー。…海外担当!?うちは普通に海も越えるんですか!?」
まゆ「…本当にワールドワイドな346プロダクションですねえ」
モバT『201×年 某国某所。繁華街でひときわ大きな歓声と手拍子が聞こえた。そこへ向かうと。少し高台になっている場所でストリートダンスを興じている。観衆は技が決まる度に歓声を上げていたのだ』
モバT『その中で、連戦連勝を飾っている女性がいた。名前はヘレンという。彼女のダンスのキレは大したものだが、それ以上に観衆の心を掴むのが上手かった。いかに実力者が技を決めて、流れがわたっても、彼女の流れるようなしぐさ1つで観衆の心が変わっていくのだ。これはよう注目だ』
ちひろ「うーん。確かにヘレンさんの一挙手一投足ってつい注目しちゃうわよね」
まゆ「背があるわけじゃないんですが、手足が長く見えるからでしょうか?何かやってくれそうって雰囲気でしょうか?」
ちひろ「――やってくれそうというか、やらかしてくれそうと言った方が…」
モバT『○月○日 今日もヘレンはダンス対決を行っていた。連戦連勝で観衆を沸かせている』
モバT『バトルが終わった後、彼女はどこへ行くのか。少し探ってみる。運動力は実戦向きなので、後は性格、人格面が分ればいいのだが…。終わった後は、レストランで食事を摂っていた。常連なのかいつもの。と言うとハンバーグに始まり、ウインナーの盛り合わせなど、肉が多めの料理を食べる。メニューを見るとややカロリー過多なのが気になる』
モバT『食事を終えたヘレンはそのままジムに入る。そこで体幹を鍛える器具を中心にワークアウト。ダンス後だが、徹底的に追い込む。向上心は中々のものだ。そしてなぜか俺の方に来て、ワークアウトの指導をしてくれた。「そうやるのが世界レベルのワークアウトよ!」と話していた。世界レベルって何だ』
ちひろ「ここからもう世界レベルがあるんですね」
まゆ「まゆもプロデューサーさんの愛なら世界レベルですよぉ」
ちひろ「――すでに突き抜けてると思います…」
モバT『×月×日 今日はダンスバトルを行わず、飛行機に乗る。行先はブラジルだ。飛び入りのはずだが、きちんと衣装がありそれを着こなす。どんな衣装でも着こなせるのはやはりポイントが高い。そして彼女は踊る。街道を練り歩く。歓声が聞こえてきてそれに応えるかのようにさらに大きく踊る』
モバT『ストリートダンスが主戦場かと思いきや、サンバも器用に踊れるのは驚いた。そして主役を食う勢いなのも評価は高い。そして俺の方を見てウインク
をしてくれたが、それは自意識過剰なのだろう』
モバT『△月△日 今日はジムにこもりひたすらワークアウト。ジムのオープンから終了時間まで一心不乱に身体を追い込んでいた』
モバT『△月☆日 彼女はスポーツクライミングもお手の物らしい。タンクトップにハーフパンツ姿で登りはじめる。プロでも難しいと言われる難関も時間をかけて攻略していく』
モバT『彼女のプレイを見て感動をした若者が何かの言葉(英語以外)で話しかけられたが、それにもしっかりと答えていた。その後、俺に去り際に「サンスクリット語よ」と』
ちひろ「ヘレンさんって結構インターナショナルなんですね」
まゆ「サンスクリット語ってどこの言葉ですか?」
ヘレン「インドの公用語よ。インドの国際的地位が高まっている今、基本的な読み書きができるとあなたの価値は高まるわよ」バタン
ちひろ「」
まゆ「」
モバT『□月□日 私は誰を追っているのか?ヘレンだ。だが、いつの間にか俺の後ろにヘレンがいる。もう彼女は俺のことを手下か何かのように扱っているちなみに今日は高校でダンスレッスンだそうだ。付いてきなさいと言われ、付いていく』
ちひろ「えー。もうTさんはヘレンさんのお付なんですね」
まゆ「うふっ。ヘレンさんにとってTさんは信頼できるパートナーなんですね」
モバT『どんなレッスンかと思いきや、意外と普通で一人に一人に手厚い指導を行う。同じことを聞かれてもイラつかないのも大事なところだ。仕事が終わると、なぜか俺が彼女の持つ車で運転して帰る羽目に…』
モバT『☆月!日 もうヘレンは何も言わずに俺に近づき、今日の仕事を伝え一緒に行くようになっている。これはどちらかというと、個人事業で食って行けるのでは?なおタダ働きではなく、きちんと日当を貰っている。1日300ドルだ。ここ辞めて、ヘレンのマネージャーになろうか真剣に悩む』
ちひろ「――300ドル!?でも日当だから…」
まゆ「ちひろさん、本気で悩まないでくださいよぉ…」
モバT『予定よりも大分早いが、スカウト会議でヘレンを上げてみる。この場合はどうなるのか分からないが。全ての面で問題なしであると伝える。すると、部長からGOサインが出た。ただし、本人がNOと言われたらすっぱり諦めろと言う条件付きだった』
モバT『☆月?日 ヘレンを346にスカウトしたいと伝えると、なんと二つ返事でOKをもらえた。仕事のことを尋ねると、あれはすべてボランティアだという。交通費と少し色を付けてもらっていたらしい。今回でヘレンのスカウトを完了とする』
モバQ『○月○日 新人だが、アイドル候補を探すということだが、先輩のを見ると最低3年は見るという途方もない仕事だ。そこで見つけたのは小学生ではあるが元気が良い少女だ。何かをするのにも「××大作戦!」と叫んでいる。彼女を少し追ってみたい』
モバQ『○月×日 実家は呉服屋のようだ。母親と共に呉服を見て、店に立つときは必ず着ている。「今日は店番大作戦!」とのことらしい。母親の接客を見ながら、時折彼女も一緒に客にアドバイスをする。それを見て客は微笑んでいた』
ちひろ「その時の写真がこれですね。さすがにセクシーというよりは可愛らしいですね」
まゆ「……」
モバQ『×月△日 将来の夢という作文の発表が授業参観で行われた。あずきは両親の呉服屋を継いで大きくしたい。そのためには一生懸命服の勉強を頑張るという旨の発表をして、両親を感動させた』
ちひろ「新人時代からもう学校には我が物顔なんですね…」
モバQ『×月□日 「博識大作戦!」発動。学校の図書館で呉服に関する本を借りて読み込む。休み時間中に本を読んでいるが、しばらくすると静かに本を閉じた。どうやら難しすぎたようだ。両親から話を聞いて勉強するとのことだ』
モバQ『△月×日 卒業式。中学は一理中にエスカレーター式で上がっていくため、ほとんどの仲間と中学もやっていくことになる』
モバQ『□月○日 中学入学。彼女の友好は良好で誰とでも仲良くなれる。性格的にも明るく活発そうなので敵は作りづらいかもしれない』
モバQ『□月??日 運動は可もなく不可もなく。スポーツテストは平均的な成績であった』
モバQ『部活は家庭研究会。理由は呉服の勉強をしたいから。本格的に呉服屋の後継ぎとして頑張っていくようだ。部活仲間を連れて呉服を着せあいっこをする。すでに呉服の着こなしはバッチリのため、あずきが部員の呉服の着付けを行う』
まゆ「その時の写真があるいますよぉ…」
ちひろ「アウト!いくら新人でもこれは撮ったらいかんでしょうがぁ!訴えられますよ!」
モバQ『家庭研究会はもちろん呉服の着付けだけでなく料理や裁縫も行う。特に裁縫は呉服の生地を使った和の小物が大好評だった』
モバQ『◇月@日 夏休み。部活仲間と地元の夏祭りに行く。もちろん全員浴衣姿。彩り鮮やかな浴衣は夏祭りの雰囲気そっくりだ。カメラマンと称して写真を撮らせてもらった。後日、彼女らに写真を郵送した』
モバQ『そして意外だったのは、金魚すくいだ。彼女はいつになく真剣な表情でポイで金魚をすくっていく。聞いた話だが、コツはポイを濡らさずすくい続けることらしい。彼女は15匹すくったが、酸欠になるからと放流しながらやった記録だ。彼女の金魚すくいにギャラリーが付くほどで、その後の金魚すくいは繁盛していた』
モバQ『友人曰く、子どもの頃やった時に1匹もすくえなかったのが悔しかったようだ。負けん気も人一倍ありそうだ』
モバQ『中学2年になり、彼女に一つ悩みが出てきた。それは背が伸びないことだ。運動部を行っているクラスメートたちは順調に伸びていたり、そもそも小学校高学年で伸びた子もいたが、あずきはそれがなかったらしい背の低さがコンプレックスになっているようだ』
モバQ『調べたが、13歳後半の平均身長は155センチ。彼女は143センチ(当時)医学的には低身長と言われる部類だ。クラスメイトからは励まされて笑顔で振る舞うが、一人の時はしんみりとしてしまう』
モバQ『低身長を克服するため、様々なことをしていた。牛乳を毎朝飲み、給食でも飲む。後は適度な運動。部活が終わって家に帰るとすぐにジャージに着替えて近所を走り込む』
モバQ『○月!!日 中学3年に上がったが、効果は出ず代わりにバストが急成長する。低身長なので余計に目立つ。セーラー服のリボンが逆にお辞儀しているのは中々見たことがない。学年でもかなりのものになった』
ちひろ「…仕事柄とはいえ、なんてところを注目しているんですか…」
まゆ「…やっぱり男の人は大きい方がいいんですか」
ちひろ「大丈夫。まゆちゃん。外見で好きになるような男の人はろくでもない人だわ」
まゆ「ありがとうございます」
モバQ『△月△日 家に帰ると母親があずきと一対一で話をしていた。内容は低身長のことだ。昔の日本人は身長が低かった。背が低いから和服が似合う。あずきは和服が似合う人間になるために生まれた。だから気にせず昔のように笑顔になってと話をしていた』
モバQ『泣きながら聞いていたあずきは昔のように明るくなると決意。そして和服が似合う美人になると決意を表した。肩口で切り揃えた短い髪も和服が似合うよう伸ばすことになった。コンプレックスと向き合い、自分らしく生きると決めた決意には俺も涙が出た。娘が生まれたらこうなるのだろうか』
モバQ『その日以降、あずきは努めて明るく振る舞うようになった。伸びる黒髪は綺麗なストレートで和服に映える。文化祭での発表会で使うポスターで、あずきの振り向き美人の画で撮ったポスターは隠れファンに盗まれる事態になった』
モバQ『△月□日 文化祭では和服でお茶をたてた。その仕草は艶やかであり、中学生とは思えない色気があった。髪留めもしないで書き上げる仕草に息をのんだ男は多数いたに違いない』
モバQ『部活も一段落し、進路は公立高校進学。将来を見越して家政科のある高校への進学を希望していた。学力もあったので問題なかったが、ぜひ彼女をスカウトしたい。すぐに部長に相談し、報告をする。魅力A 運動力C 向上心B 性格Bでスカウト活動を行う』
モバQ『◇月!?日 部長と共にあずきのスカウトに入る。部長からこちらとしては中央でアイドル活動をしながら学校生活を送ってほしいというもので、もちろん高校は家政科のある私立学校。講師陣も有名な方がいる学校だ。両親はもちろん、あずきも知るくらいの有名な人だ』
モバQ『もちろんそれだけでなく、学費は特待生の枠を使えるため学費は公立高並であること。そして最も大事なプロデュース方針。そこは長年見てきた俺が説明する』
モバQ『あずきには和服の似合うアイドルになってもらいたい。その為に和服雑誌、和服業界中心に売り込みを行うこと。グラビアも和服中心にして同世代に和服の魅力を伝えていくと』
モバQ『少し迷ったが、あずきはアイドル活動を通して呉服の勉強になれるかの質問。高校での勉強はもちろん、現場でいろんなものに見て触れるのは必ずプラスになれると説明した』
モバQ『あずきは、アイドル活動をしたいと話し。両親も承諾した。俺の初めての担当となる桃井あずき。誕生だ』
まゆ「あずきちゃんも、あずきちゃんなりにくろう、悩みがあったんですね…」
ちひろ「誰だって、そういうのはあるはずですから。まゆちゃんだってそうでしょう?」
まゆ「はぁい。まゆはいつプロデューサーさんがまゆのこと振り向いてもらえるか心配でして…」
ちひろ「――さすがまゆちゃん…。ぶれませんね」
まゆ「あ、まゆはそろそろレッスンに行ってきますね」
ちひろ「はい。頑張ってくださいね。――さてと、私は…。留美さんのスカウティングノートでも見てますか…。えーっと担当は、モバRさんの初担当でしたね」
モバR『201×年 ○月○日 外回りの新規開拓…。A社への飛び込み営業だ。と意気込んだのは良いが、どこがどこだか分からない…。とにかく、広報部に行きたいのだが…』
???「あの。何かお困りでしょうか?」
モバR『俺に話しかけてきたのは、紺のスーツに、紺のパンツスーツ姿の女性。髪は肩まで伸びたセミロング。切れ長の双眸はいかにもキャリアウーマンと言えそうな見目だ』
モバR『すみません。広報部に向かいたいのですが、迷ってしまいまして…』
???「広報部はここの階の、この廊下を突き当たって右になります」
モバR『「ありがとうございました」俺はお辞儀をするついでに首から下げた社員証を盗み見た。「秘書課 和久井留美」と書かれてあった。これは営業よりも収穫があったかもしれない。今後、和久井を重点的に見ていくこととする』
モバR『×月×日 和久井は23歳。俺よりも年上だった。まあ、歳下には見えなかったが。彼女は入社2年目だが、出来は非常によく現在は営業部長秘書を担当しているが評判は上々とのことだった』
ちひろ「うーん。うちのプロデューサーさんたちは一体どこでそういうのを手に入れるんでしょうか?新人でこれですからね。もはやこの人たちはけーじーびーの人たち?」
モバR『△月△日 性格は真面目。堅物。融通が利かない。オンオフの区別がはっきりしている。言いたいことをはっきり言う。隙がない。同僚、同期の評判だ。何というか、あまり仲間内の評判は良くない。良く言えば仕事にまい進している。悪く言えば、一匹狼。孤高と言ったところか』
モバR『社内美人ランキングがあれば、五本指に入る美人。だが無口。付き合いが良くない。これは男性の評判。ルックスは文句ない。が、新人の俺が言うのもアレだが、あれでミスを起こせば居場所を失いかねない。そんな気がする』
モバR『なお彼女は、秘書検定を持っておる。その他にも英検準1級。簿記検定2級。運転免許(AT限定)を持っている。実地は2回失敗。卒検は1回失敗している』
モバR『□月□日 部長と共に地方への出張。常に一歩後ろに下がって部長の荷物を持つ。そして宿泊先のホテルでは部長との夕食を断る。この部長は決してそういう噂がある人ではない。ちなみに食事はスーパーで買った惣菜を自室で食べていた』
モバR『@月@日 会社帰りの道中、ふと足を止めてショーウインドウを見ていた。そこにいたのは子猫。タワーに上り、他の子猫とじゃれ合う姿を見てうずうずしていた。猫が好きなようだが、建物の中には一歩も入らず名残惜しそうにその場を後にした』
モバR『☆月☆日 今日、他部の部長から嫌味を言われた。内容は上手くいっているのは営業部と上手く付き合えているからだと。その部長は業績が悪化して、降格も示唆されている。非常に敏感な問題になりかねなかった(和久井が言えば発展していただろう)が、和久井は無視していた』
モバR『そして何事もなく業務を終わらせてい時少し過ぎに帰社。普段は真っ直ぐ変えるのだが、この日は別の道を行き、ゲームセンターに入る。意外なチョイスだったが、ゲームセンターは無視して上の階にあるバッティングセンターに入る。そこで千円札を入れて1ゲームだけチケットを買った』
モバR『入ったのはこの中でも一番遅い80キロ。右打席に立つ。非常に珍しい。元オリックスのタケハラを思い出す。バットを寝せた構えから豪快な空振り』
モバR『ボールが来てから振っているが、本人はいたって真面目な表情でフルスイングを繰り返す。結果は全球三振。息を切らせて出ていく。空振りに苛立っている様子はなかった。恐らく彼女なりのストレス発散方法か』
ちひろ「へえ。留美さんでもこういう時があるんですね。まるでドラマの女性主人公みたい」
モバR『○月×日 3年目に入り。人事異動。3年目では異例の主任に昇格。今度は常務の秘書となることが決まった。この抜擢に先輩社員は快く思っていなかった』
モバR『○月!日 早速常務との連携は良好。気持ちよく業務が出来ていると太鼓判だった。留美も笑顔で応えた。かなりの自信になっているようだった』
モバR『×月?日 秘書課内でも和久井の立場は偉くなり、私語や集中力の足りない社員に容赦ない注意が飛ぶ。同僚、先輩は面従腹背のような形で、和久井がいなくなると陰口を叩くようになっていた。』
モバR『□月△日 和久井のバッティングセンターに向かう頻度が多くなってきている。雰囲気もかなりとげとげしている。いつもの80キロで挑戦するもいつものように全球三振で終わる』
モバR『とおもいきや、もう1セットやり始める。後半はもうやけになってバットを振っていた。ストレス発散の方法には少しやり方を指導した方がいいかもしれない』
モバR『☆月◇日 恐るべき日が来た。和久井を常々快く思っていない同僚、先輩が共謀。資料を隠されてしまった。その日は全社会議で担当部分の資料を全てだ。彼女の担当は常務の発表資料と秘書課の発表資料だ』
モバR『隠された和久井は捜索をすぐにあきらめて、タブレットを使ってスライドの資料を作り始める。非常に機転を利かせたやり方だ。そして会場では和久井が全社員の前で失態をすることを想像して同僚たちがニヤニヤしていた』
モバR『そして和久井の出番となる秘書課発表となった。手元に資料がないことを最初に詫びを入れた後、スライドをまじえた説明を行い、無事に乗り切った。非常に頭のまわるやり方はアイドルよりもうちの事務所に来てほしいくらいだ』
ちひろ「留美さんは、私やプロデューサーが不在の時は代わりに事務作業をやっていただいていますし、本当に助かってます。もちろんアイドルの方でも」
瑞樹「あら?ちひろちゃん。こんなところで何をしているの?」
ちひろ「あ、川島さん。お疲れ様です。これは、今までのプロデューサーさんたちのスカウティングノートです。多分川島さんのもありますよ」
瑞樹「あの時は驚いたわ。まさか3年見て来て色んなこと知ってるんだもの。私のことを私以上に知っているとか。あの時は本当に怖かったわ…」
ちひろ「――常識人の川島さんですら、怖いってるんだから学生組はストーカーと思われたんでしょうね…」
モバR『?月☆日 しっかり実績を伸ばし上司からは期待されていたが、本人も同僚たちもあまりそれを望まない雰囲気が出ていた』
瑞樹「これは留美ちゃんのスカウティングノートね?最初の頃はかなり愚痴も多かったしやっぱり苦労していたのね」
モバR『!月△日 和久井が異動願いを出したそうだ。しかし、課長と常務、営業部長は反対していた。彼女の貢献からみて「はいそうですか」とは言いにくい。なんとかここに残ってくれと留意の説得に入ったが平行線で終わった』
モバR『間もなく3年が経つ。異動願を出してからの和久井は業務こそ全うしているものの、最初の頃見た雰囲気はなかった。ただ業務をこなして、同僚や上司とは最低限の会話だけをして、仕事が切り上がれば帰る。そんな日々を過ごしていた』
モバR『評価としては、知力A 運動D 性格B ギャップA スカウト会議ではゴーサインが下りたので、初めてのスカウトに入る』
モバR『○月○日 その日の仕事帰り。和久井は久しぶりにバッティングセンターに向かい、今日も80キロ相手に空振りの山を築いていた。いつもは入る前と出た後では変化はないが、今回はやや猫背気味だった』
モバR『あなたは打席に立って空振りして帰ってくるだけで満足ですか?』
留美「何が言いたいの?」
モバR『打席に入った打者は少なくともヒット、あわよくばホームランが打ちたいと思っています。あなたはそういうのに興味はないのですか?誰も見ていない打席でくすぶるのではなく、私は満員のドーム、スタジアムで、あなたを打席にたたせる。そして綺麗なホームランを打たせる自信があります』
モバR『申し遅れました。私はこういうものです』
留美「芸能事務所。へえ、超有名のアイドル事務所のプロデューサーが私に何か用?もしかしてヘッドハンティングに来たのかしら?」
モバR『そうです。ですが、あなたの行き先は従業員の一人ではなく、アイドルとしてあなたを引き抜きに』
留美『冗談はやめて。あなたが私をどれだけ知っているのか知らないけど、私はもう26。アイドルなんて歳じゃないわ。もうそんな夢は見れないの。それに私は――』
モバR『最高に虫の居所が悪いんですよね。分かりますよ。ずっと見てきましたから』
留美「は?」
モバR『うちの事務所のプロデューサーはアイドル候補の女性を最低3年見るんです』
留美「ということは、私はその候補なわけ?」
モバR『はい。あなたさえよければ我々はあなたを歓迎します』
モバR『その後、場所を移して和久井に今後のプロデュース方針を説明。全てに納得したうえで和久井と契約合意』
モバR『次の日。和久井は会社に退職願を提出。上司からの留意もすべて突っぱねて今月末に退職。月初に契約となった』
留美「R君。私をアイドルにさせた責任きちんと取ってもらうからね」
瑞樹「あらあら。留美ちゃんはもう未来の旦那様最有力候補を捕まえたのね。さすがやり手」
ちひろ「…まあお互い良い大人ですから。わきまえているとは思えますが」
瑞樹「この間、留美ちゃんの手帳が開きっぱなしだったから見ちゃったけど、日記に『年上の女房は金のわらじを履いてでも探せ』とR君に言わせているらしいわ。一体どういうことかしらね?」
ちひろ「わかりたくないわ」
ちひろ「さて、今回はこれで最後にしましょうか」
瑞樹「あら、じゃあ最後はP君のが良いわね」
ちひろ「散々悪事すれすれのことやっていた人がまだ…。ありましたね。今回の最後は雫ちゃんですよ」
モバP『201×年 岩手県近郊の大型牧場での営業中、そこで牛をトラックに入れる手伝いをしていた少女を見つける。まだ中学生か小学生の間だが、すでに主張激しいバストのサイズは天性のものがある。これは要注目ではないだろうか』
ちひろ「さっそくあの人は、いつぞやの愛梨ちゃんのようなことを書いて…。しかも今回はかなり露骨じゃないですか…」
瑞樹「もしかしてP君はロリコンで巨乳好きなの?」
ちひろ「さあ、知りたくもありません…」
モバP『×月×日 素性が大体わかった。及川雫。現在13歳。中学1年生。近くの中学校に通っている少女だ。体格が成長する時期ではあるが、それでも同学年と比較するとかなり大きい』
モバP『彼女の実家は乳牛を育てて、その乳製品を販売して生計を立てている。その手伝いもしっかり行っているようだ。牧草を運び、牛に食べさせ搾乳の手伝いをする…。考えるだけで身体は鍛えられそうだ』
モバP『△月△日 及川の性格はのんびり屋。ゆっくりとした喋り方で、語尾を伸ばす話し方だ。近くでおいかわ牧場の商品があったので、牛乳を一本購入。本当の牛乳という感じだ。値段は少しするが、質を求める人ならばこれを買っていくだろう。地元の牛乳という名に恥じないものだ』
ちひろ「そう言えば、プロデューサーさん帰ってきたときにやけに乳製品をお土産にもらっていたんですよ」
瑞樹「それも雫ちゃんのところの?」
ちひろ「はい。今では定期的に乳製品を取り寄せていますからね」
モバP『□月□日 及川の運動能力はあまり良くない。スポーツテストは握力と持久走以外全て中位から下位。特に反復横跳びは途中で転んでしまい測定不能をたたき出すほどだ』
モバP『だが、農作業で鍛えた腕っぷしと下半身は非常に強く、重いものは簡単に持ち上げるので女子からは頼られる存在だった』
モバP『☆月☆日 学校の成績は中位と言ったところ。性格は男女で大きく差がないのも一つポイントだと思う』
モバP『アイドルという仕事柄、見目が特に秀でているのを鼻にかけて性格に難がある人が多い中、こういう性格は非常に好ましい』
モバP『@月@日 及川の一日は早い。日の出前には目を覚まして、まずは牛を外に出す。その間に敷いていた草をすべて取り換え、牛を戻す。それで朝は六時過ぎる。朝ご飯を食べて、学校へは自転車で通学する。なるほどこれは身体が鍛えられる。レッスンでもすぐに通用できそうだ』
ちひろ「やはり農作業って鍛えられますか?」
瑞樹「そりゃそうよ。私は稲作だったけど、体験の次の日は腰が筋肉痛でばっきばきだったのよ。雫ちゃんは胸に目が行きがちだけど、腕の筋肉はしっかりついてるし、背筋も綺麗よ」
モバP『?月×日 休日になると一日中及川は牧場を手伝う。朝の草代えはもちろん、その後の牛の搾乳も手伝う。手慣れた感じで一人でそれを行い、絞ったタンクも一人で持ち上げ運んでいく。密かに持ってみたが、これはかなりの重さだ。この馬力は一体どこから?』
モバP『☆月△日 学校の水泳の授業。この頃から異性を気にして水泳に参加しなくなる生徒が多くなるが、及川は真面目に授業に参加する』
モバP『競泳水着からでも分かるあのサイズは、同級生の心を魅了しているに違いない。参考資料の為に保存しておく』
ちひろ「」
瑞樹「」
モバP『!月?日 部活は家の都合で所属していないが、入学当初はその体格から運動部のスカウトが多かったらしい。バスケもバレーもあったが、すべて断っていた。ちなみに運動かどうかはハテナだが、近所に馬を飼育している牧場があり乗馬も出来る。自転車より乗りこなせると近所でも噂である』
モバP『以前、及川が乗馬をしているシーンがあり、偶然にもそれが撮れたので、データに残す。うーんロデオは恐ろしいな』
ちひろ「愛梨ちゃんの時以上にすごいですね。雫ちゃんは背もあるから、すごく映えますし…」
瑞樹「今で170センチでしょ?アイドルじゃなくて、モデルにしても活躍できたんじゃないかしら?でも、そんな子を地元も含めて放っておくのかしら?」
モバP『?月○日 及川は何が恐ろしいかというと、自分のプロポーションに無頓着であるところだ。聞いたところによれば、及川はあのバストサイズであっても、ブラを付けないという話だ』
モバP『クラスメイトだけでなく、同級生からプロポーションが良くなる秘訣を聞かれ、「それは毎日うちの牛乳を飲んでいるからですー」と答えてそれから一か月間、地元の販売店全てからおいかわ牧場の牛乳が消えた。なお効果は人それぞれなのだから、現実は恐ろしい』
モバP『×月□日 2年生に上がったが、及川は相変わらずだった。休日には時たま来る見学者を案内していた。そこで謎の歌を歌っていたが、これは周辺牧場で作った歌らしい。後日、その歌を動画サイトで調べたところ見つかった。思いもよらず歌はうまそうな印象だ』
雫「このおいかわ牧場はとーっても美味しい牛乳を使った製品を作ってます~。今回は皆さんとどうやって作られるか見ていきましょ~」
モバP『牧場見学では、牛舎を見学した後は、牧場で放し飼いになっている牛を見た後に搾乳体験を行う。そこで取れた牛乳を使ってチーズを作る体験を行う。そこでも雫は慣れたて感じでチーズ作りの見本を見せる』
モバP『その後は、近くの牧場の馬を使っての乗馬体験を行って終了となる。最後においかわ牧場の牛乳をお土産に渡される。きちんとチラシもありお取り寄せも可能になっている。抜け目ない』
モバP『午前中と午後に1回ずつ見学会が行われ、多い日には一度に4組の見学客を入れて行うようだ。説明も分かりやすく、特に搾乳の仕方は非常に良かった』
モバP『◇月☆日 3年生になっていよいよ進路を決めなくてはいけなくなったが、及川は元々家業を助けるために、農業高校への進学を決めていた。ただ、両親は農業高校に限らず、好きにしていいと話していたようだ。その上で及川は農業高校への進学を決めたようだ』
モバP『□月○日 進路決定の時。及川は実家の牧場を継ぐために農業高校への進学を決定する。学力的にも問題ないとのことだった』
モバP『後は体調管理をしっかりしてほしいとのことだったが、及川を見てから風邪などを引いたところはない。健康最優良児である』
モバP『そして入試の日。さすがの及川も緊張した表情で入試先の学校へ来ていた。高校入試ということで科目は国数英社理の5科目。猛勉強をしたのでまず問題はないと思うが…。そこまでは確認できない』
ちひろ「入試はやっぱり駄目なんですね」
瑞樹「それすらも入れたら、もう日本では入れないところないんじゃないかしら?」
モバP『○月△日 県立高校の合格発表だ。及川は、無事に合格した。同級生となろう男子生徒のほとんどが、及川の胸を見ていたが、本人はどこ吹く風であった』
モバP「さて、及川を追いかけて間もなく3年が経つ。今月のスカウト会議で及川のデータを提出する。魅力A 運動B 正確B 野望B 根性A。運動は少し贔屓目に見た。野望は何だと部長から質問されたので、本人はおいかわ牧場を大きく有名にしたいと答えた」
モバP『部長からはGOサインが出ることになり、すぐに及川の実家に向かい、及川とのアイドル契約に向かう』
モバP『実家ではスカウトである俺に驚いた。念のため本当かどうか調べて電話をかける。電話に出たのはちひろさんで、うちはちゃんとした事務所で活動もしていることを伝えてもらった』
モバP『その後は、及川のプロデュース方針の説明。魅力満点なボディのことは控えめに話し、中央でやっていくことになってしまうという部分も付け足した』
モバP『これには及川の両親も悩んでいたが、及川本人はやる気があるようで中央に行き、たまに戻ってきて実習を受けに戻るというスタンスで行きたいと話した』
モバP『もちろんそうなれば、中央でも事務所の負担で通信制の学校を使って基礎的な学力はフォローすると約束する。もう一度、アイドルもやって二つの学校を行うという大変なことをすると釘を刺したが、』
雫「その点なら、大丈夫です~。私、農作業で体力と根性には自信がありますから~」
モバP『こちらとしてもその言葉を待っていた。3年も見て来て及川にはそれをこなせるくらいの力はある。だからそれを提案したのだ。女子寮も及川の部屋は予約してある。受け入れ態勢はバッチリだ』
雫「プロデューサーさん。これから宜しくお願いします~」
ちひろ「最後は綺麗に締めましたね。アイドル雫ちゃんの誕生というわけですね」
瑞樹「何というか、こういうところまで知っているというのは、長年見てきたからこそよね」
ちひろ「私はアイドルではないのですが、少し羨ましいなと思います」
瑞樹「少なくとも私を含めてここにいるアイドルみんな、3年はプロデューサー君に付きまとわれていたんだもの…。ちょっと不気味よね」
ちひろ「まあ、瑞樹さんも売れっ子だからいいんじゃないですかね…。あら、これは?」
ちひろ『モバA監修! 社外秘!他社アイドルスカウティングノート』
ちひろ・瑞樹「…さーて!仕事に戻りましょう!」
アイドルのスカウティング第2弾はここいらで区切りたいと思います。
新しいSSのネタが下りてきたので、そちらを書いたら第3弾やろうかなと思います。
さて、ここで一つ宣伝をさせてください。
現在モバマスSS企画で「メアリー・スーがいない頃」というSSコンペでは作品募集中です。
投稿期間は11月の20日までで、テーマは『プロデューサーと出会う前のアイドルたちのお話』です。
オリP名義で投稿予定作品をここで上げておりますので、遺憾ないご意見、ご指摘をよろしくお願いします。
今回のSSは1000字から4000字以内という規定でございますので。かなり駆け足で作っております。
SS企画サイト「メアリー・スーがいない頃」様
http://cinderellassplan.wixsite.com/is-not-here
投稿予定作【モバマスSS】私が私である理由
【モバマスSS】私が私である理由 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475213947/)
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