伊織「やよいと二人で」 (13)

アイマスのSS、地の分あり

苦手な方はご注意ください

では始めます

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私は焦っていた。


いつもならこれで満足できるのかもしれなかったが今回はそうはいかない。


今回のライブには私にとって、かなり大切なライブといっていいかもしれない。


私たちの事務所は全員がトップアイドルへの道を順調にたどっており、最近は一人で仕事をする機会もかなり多くなってきた。


もちろん仕事が増えてきたこと自体は喜ばしいことだし、私の望んでいた通りのことでもある。


全体の仕事が増えることで一人の仕事が多くなることは、ある程度仕方のないことだろう。


だけど私だって仲間と一緒に仕事がしたいと思うこともあるし、それが彼女と一緒ということならなおさら燃える。




「はぁ……はぁ……」


「あれ、伊織ちゃん?もうレッスンは終わったんじゃないの?」


「やよいじゃない。レッスンは終わったけど自主レッスンよ。もうすぐライブだし詰められるところは詰めなきゃね」




大丈夫、まだやれる。まだやることは残っている。


そう思いながら自主練を続けようとするとやよいが心配そうに声をかけてきた。




「でも伊織ちゃんすごく疲れてるように見えるよ」


「心配してくれなくても大丈夫よ」


「……やっぱりだめだよ!伊織ちゃんが倒れちゃったらどうするの?」




そういってやよいは私を止めようとした。


私が大丈夫だというのにどうして彼女は止めようとするのだろう。




「大丈夫だってば。まだやれるわ」


「だめ!今日はもうおしまい!また明日頑張ろう?」



わかってくれないやよいに少しずつイライラが募る。


そもそも二人のライブのためなのだから応援してくれてもいいだろうに。


私ははやく自主レッスンを再開しようとすこしキツくやよいに反論する。



「だから大丈夫だって言ってるでしょう。やよいも早くむこうでレッスンしてきなさい」


「ううん。今日は伊織ちゃんが帰るまでレッスン始めないよ」



やよいはなにを言っているのだろう。


いつもならここまで意固地になることがない彼女がなぜ頑なに帰らせようとするのだろうか。


まだやれる、もう帰れという話をし続けて苛立ちが限界に達したとき、私はやよいに言ってしまった。




「うるさいわね!私のことなんだから私が一番よくわかるわよ!
 
 もういい、やよいは私のこと信頼してないのね。あんたの言うとおり今日はもう帰るわ。じゃあね」


「あ、伊織ちゃん!」




家に帰ってからも私はもやもやした気持ちのままだった。


私はただ二人のライブを成功させたいだけなのになぜやよいはわかってくれないのか。


それともやよいはこんなライブのことなんてどうでもいいと思っているのだろうか。


気持ちが晴れないまま同じことを何度も考えていたらいつの間にか寝入ってしまった。




翌朝、私は起きてもまだすっきりしないままでいた。


今日も朝から仕事だがあまり気乗りがしない。


とはいえサボるわけにもいかないので事務所へ向かう。



「おはよう」


「おはよう伊織」


「おはよう伊織ちゃん」


「あっ、伊織ちゃん……」



事務所にいくと律子と小鳥、そしてやよいがいた。


やよいは今日も事務所の掃除をしているようだ。


私から声をかける気分にもならず、やよいからも話しかけられることはなかった。


結局やよいとは会話をすることなく、律子と共に仕事へ向かった。



その日の仕事は散々だった。


ついぼーっとしてしまうことが多く、声をかけられても反応できなかったため、あとで律子にこってり絞られてしまった。



「でも伊織がそんなにぽけーっとしてるのもめずらしいわね。何かあったの?」


「ぽけーっとなんてしてないわよ!でもそうね、じつは…………」



私はやよいとの喧嘩について律子に相談することにした。


話し終わると律子が大きくため息をついた。



「……なによそのため息は」


「あんたねぇ……やよいはあんたのことを心配して言ってくれてるのよ?
 
 やよいだってライブを成功させたいに決まってるじゃない」


「そんなこと私だってわかってるけど……
 
 それでも私は大丈夫だったって言ってるでしょう?」



次のライブを絶対に成功させたいという気持ちが強かった。


疲れていてもやよいとのライブのためだと考えればいくらでも練習できる気がしていた。




「自分の体のことだって自分がわからないことはあるものよ。
 
 プロデューサーみたいな超人なら話は変わるけど、あんたはまだまだ中学生なんだから自分の体を大切にしなさい」


「でも……」


「じゃあ例えばやよいが今にも倒れそうな状態でレッスンを続けてたら
 
 あんたはそのままやよいをほうっておいてレッスンを始めるの?」


「そんなわけないじゃない!そんな状態のやよいをほうっておけるわけ……あっ」


「はいはい、さっさと仲直りしちゃいなさい。

 やよいだってさびしがってるわよきっと」



律子にそういわれ、私はやよいと連絡をとることにした。


やよいに連絡するだけでこんなに緊張するなんて初めてかもしれない。


電話だと何を話していいかわからなくなりそうだったので言いたいことをまとめてから話そうと思い、メッセージを入れておくことにした。



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話があるの。今日の夜事務所で待ってるわ。

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「伊織ちゃん……いる?」



なにを言おうか考えながら事務所でやよいを待っているとやよいが仕事から戻ってきた。


ここには小鳥もいるし、部屋を移ったほうがいいだろうということで社長室でやよいと二人で向き合った。


まずは昨日のことを謝らなければ。



「その……「ごめんなさい!」」



驚いて顔を上げるとやよいが頭を下げていた。



「なんでやよいが謝るのよ」


「わたし、伊織ちゃんが頑張ってレッスンしてるのはわかってたんだけど、

 昨日の伊織ちゃんすごく疲れてるように見えて、それでこれ以上続けると伊織ちゃんが倒れちゃうって思ってそれで……」


「それにメッセージを読んで伊織ちゃんにもうあんたなんて友達じゃないって言われちゃうんじゃないかって考えてたら……」



やよいは今にも泣きそうな声で私にそう言った。


私がいけなかったのにこの子はそれでも私を心配してくれている。


こんなことを考えている場合ではないと思いつつも私は内心とても嬉しく思った。



「昨日のことは私が悪いわ。あなたの言っていたことは当然のことよ。

 ライブをどうしても成功させたくていつも以上に練習を続けちゃったの」


「私の心配をしてくれてありがとう、やよい」


「それに友達じゃないなんて言うわけないでしょ?私たちはずっと親友よ」



私も言っていて泣きそうになってきたがなんとかこらえきれた。


少ししてやよいが顔を上げたと思ったらやよいは号泣していた。



「い、伊織ちゃ~ん……」



やよいはそのまま私に飛び込んできて思いっきり泣いたあと、疲れたのかそのまま眠ってしまった。


さすがに社長室でずっとこのままでいるわけにもいかないので、小鳥を呼んでやよいを仮眠室に移動させてもらった。


小鳥がなんだかにやにやしながらこっちを見てきたので後ろから一発はたいておいた。



「ふふっ、でも伊織ちゃんとやよいちゃんが仲直りしてくれてよかったわ。
 二人とも朝から悲しそうな顔してるんだもの、こっちがハラハラしちゃったわよ」


「私悲しそうな顔なんてしてたかしら……」


「してたわよ、やよいちゃんの顔をちらっと見て悲しそうな顔してうつむいてたじゃない」



自分ではそんな顔をしていたつもりは全くないのだがいつも私たちをよく見ている小鳥のことだ、きっとそうだったのだろう。



「それほど伊織ちゃんにとってやよいちゃんは大切な存在なのね」


「まぁ……そうね」



失って始めて気付くなんていうけれど、本当にそうなのかもしれない。


私にとってやよいは唯一無二の親友で、これからもずっと一緒にいられたらどんなに素敵だろうか。


喧嘩するほど仲がいいというし、今回のこともきっと私たちには必要なことだったということにしておこう。


きっと私たちはこれから先も喧嘩をすることがあるだろう。


それでも私たちは何度でも仲直りし、親友であり続けるのだ。




終わり

以上になります

読んでくださった方がいれば感謝を

この二人を喧嘩させるの難しい…

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