しほ「……そう。わかったわ」
みほ「ごめんなさい、お母さん……でももう、限界なんです……」
しほ「普通科への転科手続きは行っておきます。……あなたも西住の娘。自分の過ちから逃げるようなことは許さないわ」
みほ「……はい、お母さん」
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――大洗・学園艦――
桃「思ったより集まりませんでしたね」
柚子「全部で17人です。私たちを入れて、20人」
杏「まーなんとかなるでしょ。結果オーライ」
沙織「……こんなボロボロでなんとかなんの?」
桃「心配するな。自動車部に聞いたところ、車内の水抜きとサビ取りを行えば、あとは最低限の補修で使えるようになるとのことだ」
華「わびさびで、よろしいんじゃ」
沙織「ただの鉄錆だし……それに、一両しかないじゃん。この人数でどうするの?」
桃「戦車道が廃止になる前に、わが校で使用していた戦車を探してもらう」
梓「探すって……なんにも手掛かりないんですか?」
杏「ない!」
桃「いいか、明日までに残り四両みつけだすこと。では、捜索開始」
沙織「聞いてたのと話が違う……」
華「沙織さん、皆さん捜索に行ってしまいましたよ?」
沙織「うう……でも、私たち二人じゃ……あれ?」
優花里「…………」キョロキョロ
沙織(……一人でどうしたんだろ、あの子。よし!)
沙織「へいカノジョ!一緒に戦車探さない?」
優花里「はい!?……わ、私ですか!?」
華「もう皆さん行ってしまわれて、この場には私たち三人しかいませんよ?」
優花里「……!え、えと……で、でも、私でいいんですか!?」
沙織「二人と一人で探すよりもさ、三人で探したほうがいいじゃん。それに、そのほうが絶対楽しいしさ!」
優花里「わ、私、普通二科、二年三組の秋山優花里といいます……不束者ですが、よろしくお願いします!」
華「こちらこそお願いします。五十鈴華です」
沙織「武部沙織!それじゃ、さっそく探しにいこっか!」
優花里「は、はい!それでは……PANZER VOR!」
沙織「パンツがあほ!?」
沙織「自分たちできれいにしろったってさー……こんなの本当にきれいになるわけー…?」
華「沙織さん、手が止まっていますよ?」
沙織「だってさー……そもそもこのⅣ号戦車って、5人乗りじゃん!なのに3人で掃除しなくちゃいけないなんて……」
優花里「掃除はともかく、Ⅳ号を3人で運用するというのは……車長と通信手、砲手と装填手が兼任になってしまいます……」
沙織「もー……誰か運転ができる素敵な男の人はいないの―!?」
華「……男性は戦車道を受講できませんよ?」
優花里「いや、そもそも男性はこの学校に入学できないであります」
沙織「わかってるってば!もー!」
~~~~
―――黒森峰・学園艦―――
まほ「エリカ、また来たの」
エリカ「隊長、こんばんは……あの子は、部屋ですか?」
まほ「……ええ。お母様には体調が悪い、と言ってあるけど、薄々感づいているでしょう」
エリカ「なら、なんで」
まほ「きっと、お母様も戦車道一筋で、こんなことになったことがないから……だから……どう接したらいいかわからなくなっているんだと思う」
エリカ「そんな!」
まほ「……ごめん。……でも、こうしてエリカが来てくれることで、少しはあの子も喜んでくれていると思う。……本当に、ごめんなさい」
エリカ「……いいえ。失礼します」
~~~~
―――大洗・学園艦―――
レポーター『戦車道の勝利の秘訣とは何ですか?』
まほ『あきらめないこと。そして……どんな状況でも、逃げ出さないことですね』
沙織「見て見て!この人、すっごい美人!」
華「ほんと、素敵な方ですね」
優花里「この凛とした雰囲気、さすがは黒森峰の隊長、西住まほ殿です……」
沙織(うーん……でもなんだか、疲れてる感じがするけど……)
優花里「でもいいんですか?私まで沙織殿のお部屋にお邪魔してしまって」
沙織「もちろん!優花里も今日からチームメイトなんだから!」
華「ええ。いつでもいらしてください」
沙織「……いや、ここ私の部屋なんだけど……」
華「沙織さん、あれを取っていただけますか?」
沙織「あー……はい、お醤油」
華「ありがとうございます。……そういえば、沙織さんの歯ブラシが駄目になってましたから、先ほどのお店で買っておきました」
沙織「ホント?ありがと華……って、ごまかされないんだからね!」
華「あらあら、うふふ……」
優花里(……ひょっとして私、お邪魔なのでしょうか……)
蝶野「大丈夫!戦車なんて、バーッと動かしてグッ!よ!それじゃ、各自スタート位置に移動してちょうだい!最後まで残ってたチームの勝ちよ!」
沙織「……って言われてもー!」
華「初めての訓練ですからね……役割分担はどうしますか?」
優花里「とりあえず、くじ引きで決めてみてはいかがでしょうか?私、ちょうど持っておりますので」
沙織「くじ引きって……まー、どーせ初めてだし、どこでもいっしょか……はい!」
華「それでは失礼します……えーと、操縦手」
優花里「残ったのが、装填手兼砲手、でありますか」
沙織「ってことは……えー!私が車長兼通信手ー!?」
華「あらあら、沙織さん、頑張ってくださいね?」
沙織「うーん、できるかなあ……まあ、やるしかないか」
蝶野「ほら、全車早く乗り込みなさい!」
沙織「や、やばっ、早く乗らないと……って、ええ!?」
優花里「ど、どうしたのでありますか!?武部殿!?」
沙織「ちょっと、なんで麻子が乗ってるのよ!?」
麻子「…………む?おお、沙織。どうした」
沙織「どうしたって……あんた、今授業中だよ!?」
華「あら、沙織さん。この方は?」
沙織「冷泉麻子。私の幼馴染で……」
麻子「…………ぐう」
沙織「寝るなー!」
優花里「武部殿、とりあえず今は、戦車を動かしませんか?」
沙織「もー……ほら麻子、そこは車長席なんだから、あんたはこっちに移動して。…それじゃ華、お願い」
華「……あのー、それで、どうすればいいんでしょうか?」
沙織「どうすればって……どうすればいいの?」
優花里「どうしたらいいんでしょう」
沙織「……あっ!これ、マニュアルだって!えーと……イグニッション?っていうのを入れればいいみたい」
華「イグニッション……これでしょうか?」
優香里「ヒヤッホォォォウ!最高だぜぇぇぇぇ!」
沙織「わっ!……ちょ、ちょっと、驚かさないでよ優花里……で、えーと、シフトレバーを入れてから、アクセルを踏め、って」
華「はい!」
沙織「わわわ!ちょっ、下がってる下がってる!華、ブレーキ!」
華「ブ、ブレーキは……ごめんなさい、わかりません!」
優花里「……!い、いてて……壁にぶつかってしまったであります……みなさん、お怪我は」
華「私は大丈夫です……」
沙織「私も……って麻子!大丈夫!?」
麻子「だ、大丈夫だ。頭をぶつけただけ……それより、一体なんだというんだ。目が覚めてしまったぞ」
蝶野「AチームⅣ号、行動不能!よって、CチームⅢ突の勝利!」
カエサル「よし!」
おりょう「やったぜよ!」
沙織「うぅ……負けちゃった……」
優花里「仕方ないであります、向こうもドイツの名突撃砲でありますから……」
華「でも、砲撃の感触……まだジンジンします……」
蝶野「回収車を派遣するわ。皆動けない戦車をその場に置いて、戻ってきて」
桃「くそ!なぜ当たらんのだ!この照準器、壊れてるんじゃないのか!?」
杏「ま、今の段階じゃこんなもんか。……さて、どうなるかねぇ……」
蝶野「皆グッジョブベリーナイス!特にAチームとCチーム!最後の一騎打ち、素晴らしかったわ!日々の訓練に励むように!それじゃ!」
沙織「はー……なんか告白されるよりドキドキしたぁ……」
華「最初はどうなることかと思いましたけど、すごくワクワクしました!」
優花里「はい!大変充実してました!」
沙織「負けちゃったのは悔しいけど……生徒会もやっつけたし、まあいっか!」
華「沙織さん、名指揮でしたよ」
優花里「はい!名車長でありました!車長兼通信手、武部殿で決まりですね!」
沙織「うぅ……やっぱそうなっちゃうのか……他は今日のままでいいよね?」
華「ええ、私、ジンジンする感触が忘れられません……」
優花里「はい!秋山優花里、装填手を務めさせていただくであります!」
麻子「…………じゃあな、沙織。お先に失礼する」
沙織「あ、ちょっと待ってよ麻子!操縦手おねがい!」
麻子「……もう書道を選択している。悪いが無理」
優花里「あっ、冷泉殿!……せめてお話だけでも!」
華「待ってください、冷泉さん!」
沙織「……遅刻ばっかで単位足りてないじゃん!このままじゃ留年なんでしょ!?」
麻子「……………………わかった。やろう、戦車道」
優花里「改めてよろしくお願いします!これで四人!なんとかⅣ号を運用できそうですね!」
沙織「それじゃ、皆頑張ろうね!」
~~~~
優花里「あー!戦車をこのようにするなんてぇぇぇ!あんまりですぅぅぅ!」
~~~~
ダージリン「結構ですわ……受けた勝負は逃げませんもの」
桃「一両が囮となって敵を引きずり込み、高低差を利用して残りがこれを叩く!」
一同「おぉ~!」
桃「どうだ!自分で言うのもなんだが、素晴らしい作戦だろう!」
沙織「すごいすごい!いくら聖グロリアーナが強豪でも、この作戦なら勝てちゃうかも!」
桃「『勝てちゃうかも』ではない。必ずや勝つのだ!いくら聖グロリアーナがイギリス仕込みの浸透強襲戦術を得意としていても、キルゾーンに誘い込まれればひとたまりもあるまい!」
カエサル「……待てよ?イギリス?」
桃「なんだ?何か文句でもあるのか?」
カエサル「いや……イギリス、キルゾーンへの誘導、そして一斉射撃。どこかで聞いたことが……そうだ、『ギアリーの待ち伏せ』だ」
梓「ギアリー?なんですかそれ?」
カエサル「アメリカ独立戦争中の戦いの一つだ。イギリス騎兵隊の指揮官、ギアリー少尉が、待ち伏せによる一斉射撃で撃たれ、戦死した……聖グロリアーナならばその戦訓を元に、待ち伏せへの対策は万全に取ってくるんじゃないか?」
桃「だ、黙れ!私の作戦に口を挟むな!」
カエサル「……黙れ、とはまたずいぶんな言い草だな。先だっての実戦訓練、一番最後まで勝ち残ったのは我々Cチームだぞ?」
桃「うるさい!作戦は私が立てる!黙って従え!」
沙織「そ、それはいくらなんでも横暴です!」
桃「なんだと!武部、おまえも逆らうのか!?」
沙織「逆らうって、別にそんなつもりじゃ!」
杏「ま、まーまーみんな落ち着いて……」
桃「会長まで!会長はどちらの味方なのですか!?」
カエサル「別に、河嶋先輩の作戦に異を唱えているわけじゃない。ただ、相手が対策を取っている場合のことも考えておくべきじゃないか、と言っているんだ!」
桃「だから、作戦は私が考えると言っている!」
杏「あーもう!わかった!わかった!とにかく落ち着けー!……それじゃ、こうしよっか」
優花里「大納涼祭であんこう踊りですかぁ!?」
華「一生言われますよね……」
沙織「ごめん……会長が、『桃ちゃん先輩の作戦で勝てたらⅣ号とⅢ突チームが、負けたら生徒会チームがあんこう踊りを踊ることにしよう』って……」
優花里「ていうか、なんでその流れで我々まで巻き込まれてるんですかぁ!?」
沙織「う、うん……なんか、勢いで……」
優花里「絶対ネットにアップされて、全国的なさらし者ですぅ……」
華「ふ、二人とも!勝てば大丈夫です!勝てば……って、あら?勝ってしまったらダメなのでは……」
沙織「一応、活躍したら免除、とは言ってたけど……手を抜いて戦ったらまた来年も、って釘刺されちゃった」
優花里「武部殿!絶対活躍するであります!」
華「沙織さん!頑張りましょうね!」
沙織「そ、そうだよね!私たちが大活躍すればいいんだもんね!……だけど、問題が……」
優花里「なんでありますか?」
沙織「……麻子、ちゃんと来るかな……」
~~~~
―――黒森峰・学園艦―――
しほ『そう。みほの具合はまだよくならないのね?』
まほ「はい。……お母様から、何か話していただくわけには……」
しほ『……あの子に話すことなんて私にはないわ。みほのことは、あなたに任せます。……それでは、まほ。今年こそ全国大会、優勝を勝ち取るのよ』
まほ(切れてしまった……みほ、お母様……小梅も辞めてしまって、チームの雰囲気は最悪の状態……これで本当に、プラウダに勝てるの……?)
~~~~
審判「それではこれより、聖グロリアーナ女学院対、大洗女子学園の試合を始める。一同、礼!」
~~~~
桃「いいか!今回は殲滅戦。まずはAチームが偵察に出る。各チームは待機!」
左衛門佐「御意。……とはいうが、カエサルも無茶な約束をしたものだ」
おりょう「勝ってもあんこう踊り、手を抜いて負けてもあんこう踊りとは……これぞ四面楚歌、ぜよ」
カエサル「いや、東ローマの名将、ベリサリウスだな」
エルヴィン「いや、まさしく独ソ戦時の赤軍だな」
左衛門佐・おりょう・カエサル「「「それだ!」」」
おりょう「……って、笑い事じゃないぜよ……」
エルヴィン「まあいい!実戦練習優勝チームの実力、見せてやろうじゃないか!」
カエサル(しかし、我々の意見を全く聞こうとしないとは……生徒会、いくら何でも横暴すぎないか?)
沙織「き、来た!……華、撃って!」
オレンジペコ「仕掛けてきましたね」
ダージリン「こちらもお相手しましょうか」
沙織「ちょっとちょっと!なんでⅣ号ばかり狙ってくるのよー!」
優花里「いやー……、それは我々が囮だからでは……」
沙織「だからって、もー!これじゃ外の様子も見れないじゃない!麻子!当たらないように気を付けてね!」
麻子「わかっている。ジグザグに走ればいいんだろう」
沙織「とにかく待ち伏せ場所まで、急いで―!」
桃「遅い!」
杏「待つのも作戦のうちだよー」
沙織「え、Aチーム、敵に追いかけられてます!あと、えっと!2……いや、3分でそっちに着きます!」
桃「よし、全員戦車に乗り込め!」
桃「撃て撃てー!」
沙織「ええええ!?ちょっと、私たち味方なんだけど!なんで撃たれてるの!?」
エルヴィン「38t、落ち着け!あれはⅣ号だぞ!……おいおい、正気か!?」
沙織「ちょっと、撃たないでよー!すぐ敵も来るんだから!」
桃「こ、今度こそ敵だな!撃てー!撃て撃て撃てー!」
ダージリン「全車両、前進……攻撃」
沙織「なにこれ、すごい攻撃!……って、M3の子たち、戦車を捨てて逃げちゃった!?わあ!生徒会チームは履帯が外れたし!どうすればいいのよー!」
桃「無事な車両はとことん撃ち返せ―!」
エルヴィン「……市街地への撤退を進言する!」
桃「なにー!許さんぞ!」
典子「でも、このままじゃ全滅ですよ!」
桃「とにかく動くものはすべて撃てー!」
沙織「う、うー……」
沙織(なんなのよ!いったいどうすればいいのよ!)
杏「全車、聞こえるー?」
沙織「……!は、はい!」
杏「よーし。このままじゃ間違いなく全滅しちゃう。だから、一か八か市街地の方に逃げるんだ。市街地ならこっちに地の利があるから、地形を活かして、敵を攪乱しながら戦って!」
沙織「りょ、了解です!」
杏「でも、ごめん!38tは履帯が外れて動けそうにないから、指揮権は武部ちゃんに委譲する!武部ちゃん、ごめんね!」
沙織「え、ええー!?そ、そんな、いきなり言われてもー!」
エルヴィン「隊長代理、どうする!?」
典子「Ⅳ号、指示をください!」
沙織「えーっと、じゃ、じゃあ、とにかく市街地に向かいます!動ける車両は付いてきてください!」
杏「武部ちゃん、ごめん!……あんこう踊りは生徒会チームがやるから、頑張って!」
沙織「もー!なんでこうなるのよー!」
~~~~
ダージリン「消えた?」
~~~~
エルヴィン「こちらCチーム、一両撃破!」
典子「Bチーム、一両撃破!」
~~~~
エルヴィン「こちらCチーム、一両撃破!」
典子「Bチーム、一両撃破!」
~~~~
ダージリン「こんな格言を知ってる?『イギリス人は恋愛と戦争では、手段を選ばない』」
沙織「どうしよ、追い詰められちゃった……てか、これ戦争じゃないんですけどー!」
ダージリン「あら、何か言ったかしら?……おさらばね」
杏「さんじょー!そして……発射!」
柚子「会長、一両撃破です!」
沙織「ま、麻子!今のうちに逃げて!」
麻子「逃げるって、どっちに」
沙織「えーと、えっと、わかんないよ、もー!」
ダージリン「全車、攻撃」
~~~~
審判「大洗女子学園チーム、全車両走行不能。よって、聖グロリアーナ女学院の勝利!」
失礼
>>36からミスです
~~~~
エルヴィン「路地裏に逃げ込め!Ⅲ突は車高が低いからな……なんだと!」
妙子「サーブ権取られたー!」
~~~~
ダージリン「こんな格言を知ってる?『イギリス人は恋愛と戦争では、手段を選ばない』」
沙織「どうしよ、追い詰められちゃった……てか、これ戦争じゃないんですけどー!」
ダージリン「あら、何か言ったかしら?……おさらばね」
杏「さんじょー!そして……発射!」
柚子「会長、一両撃破です!」
沙織「ま、麻子!今のうちに逃げて!」
麻子「逃げるって、どっちに」
沙織「えーと、えっと、わかんないよ、もー!」
ダージリン「全車、攻撃」
~~~~
審判「大洗女子学園チーム、全車両走行不能。よって、聖グロリアーナ女学院の勝利!」
~~~~
ダージリン「……残念な試合だったわね」
桃「…………」
ダージリン「最初の待ち伏せ作戦、市街地での戦いに持ち込んだ判断、悪くはなかったわ……ただ、圧倒的に練度が足りていないわね。……黒森峰やプラウダが相手だったら、最初の待ち伏せに失敗した時点で踏みつぶされていたでしょうね」
杏「いやー、わざわざ受けてもらったのに、なんだかごめんね」
ダージリン「いえ、かまわないわ。こちらも全国大会に向けて、市街戦の練度を高めなくてはならないことがわかったもの」
杏(勝って兜の緒を締める、か……やりずらい相手だね、全く)
ダージリン「それと、このチームの隊長はどなた?」
桃「わ、私だ」
ダージリン「……そう。『他人を押さえつけるようなことをしている限り、自分もそこから動くことができなくなる』覚えておくといいわ。それでは、失礼」
桃「…………」
柚子「……ずいぶんと言われてしまいましたね……」
桃「……会長、ふがいない結果になり、申し訳ありません」
杏「まー、練習試合だし、別にいいけどさ……それより先に謝らなくっちゃいけない相手はいるんじゃないかな?」
桃「…………」
杏「ねえ、こんな格言を知ってる?『部下に力を発揮してもらうのは難しいことではない。やりたがっている人にやってもらえばいいのだから』……どう?似てた?」
桃「…………」
杏「ま、とりあえず今は、あんこう踊りの準備をしよっか!」
沙織「あ、あのっ!ダージリンさん!」
ダージリン「あなたは、Ⅳ号の。何かしら?」
沙織「えっと、その……メ、メアド!教えてくれませんか!」
ダージリン「……はい?」
沙織「その……うち、戦車道が復活したばかりで、全然戦車道について質問できる相手がいないんです!そ、それで、ダージリンさんならいろいろ教えてもらえるかな、って……だ、ダメですか?」
ダージリン「あらあら。……そうね。弱きを助け、強きをくじく。それが騎士道精神……かまわなくってよ」
沙織「ホントですか!?ありがとうございます!」
ダージリン「それじゃ、さっそくだけど一つ教えてあげる。『他人に変わって欲しければ、自ら率先して変化の原動力となるべきだ』……ひょっとしたら、すぐに思い出すことになるかもしれないわね」
沙織「……? はい。ありがとうございます!」
~~~~
杏「いやー、負けちゃった」
桃「……約束通り、我々があんこう踊りを踊ろう……それでいいんだろう?」
エルヴィン「…………」
カエサル「…………」
沙織(うわー……雰囲気サイアク……)
桃「どうした?何か言いたいことでもあるのか!?」
カエサル「いや、別に……」
桃「いいか!1つだけ言わせてもらう!……すまなかった!今回の敗戦は進言を聞き入れようとしなかった私のミスだ!」
エルヴィン「…………!」
沙織(桃ちゃん先輩が、謝った!?)
桃「すまない!もっとお前たちの意見を聞くべきだった!どうか許してほしい!」
カエサル「いや、それは……」
エルヴィン「ううむ……」
沙織(もー!誰かが何か言ってあげないと……あれ?ダージリンさんが言ってたのって、もしかして……そういうことなの?)
沙織「は、はい!えーと……私も、私もあんこう踊りやる!」
優花里「武部殿!?」
沙織「だ、だって、桃ちゃん先輩、練習の時からずっと一人でがんばってたもん!そりゃ約束は約束だけど……私たちがもっと上手ければ、勝てたかもしれないし!先輩一人に押し付けられないよ!」
華「それは……」
おりょう「確かに、旗を付けなければもう何両か倒せてたかもしれないぜよ……」
梓「わ、私たちも……逃げ出しちゃってすみませんでした!私たちもあんこう踊りやります!」
左衛門佐「義を見てせざるは勇無きなり、しょうがない。我々もやるとしよう」
典子「皆がやるのに、私たちだけやらないなんてことできるか!根性ー!」
桃「お前たち……」
カエサル「あー、なんだ……まあ、私も少し熱くなったからな。すまなかった」
エルヴィン「ヨーロッパの弱小国家だったプロイセンが、なぜ強国になれたか知っているか?いち早く参謀本部を創設したからだ。……これからは、作戦会議を開こうじゃないか」
杏「いいねぇ、作戦会議!なんか秘密結社みたいでさー」
優花里「おお!作戦会議!燃えますねぇ!」
麻子「三人寄れば文殊の知恵、とも言うしな」
桃「皆……ありがとう」
杏(ふう……なんとか、全国大会前に雰囲気を立て直せたかな……武部ちゃんには頭が上がらないや)
杏「よーし!それじゃあ皆で、あんこうスーツに着替えよっか!」
~~~~
「大洗女子学園、8番!」
柚子「サンダース……初戦から強豪ですね……」
桃「どんなことがあっても負けられない……」
杏「かーしま、こないだのこと、忘れちゃダメだよー」
桃「わかっています、会長……ですが、負けたら我々は……」
~~~~
――戦車喫茶・ルクレール――
エリカ「初戦は知波単、恐らく二回戦は継続とでしょう」
まほ「ええ。……知波単はともかくとして、継続は隊長が優秀だから、何をしてくるかわからない。……対策が必要ね。学園艦に帰ったらビデオを見ておかないと……」
グラッ
エリカ「隊長!?」
まほ「大丈夫。……少し、目まいがしただけ」
エリカ「その眼の下のクマ……いったい、どれくらい寝てないんですか……少しは休まないと、お体に障ります」
まほ「大丈夫、大丈夫……今年はプラウダを倒して、優勝しなくてはならない。だから、私は大丈夫……」
エリカ「隊長……」
~~~~
――大洗・学園艦――
優花里『有力な情報を入手しました!これでレポートを終わります!』
優花里「がんばりました!」
沙織「ゆかりん、今日一日こんなことしてたんだ……」
桃「でかした秋山!これで敵の編成が判明したぞ!」
エルヴィン「初戦からファイアフライを投入とは……本気だな」
梓「敵の主力はM4シャーマン。私たちのM3の後継型ですね」
優花里「となると、敵の装甲を抜けるのがⅢ突、Ⅳ号、条件によっては抜けるのがM3、ほとんど抜けないのが38tと89式、ですね」
桃「こちらの戦術としては、いかにⅢ突の前に敵をおびき寄せるかになるな……」
カエサル「M3とⅣ号はどうする?」
梓「あの……ここの森に全車集結して、迎え撃つのはどうでしょう?森の中ならM3で装甲を抜ける距離まで近づけるのにも有利に働くと思います」
エルヴィン「森林戦か……ナムは地獄だった……」
桃「だが、全車集まってしまうと森を包囲されてしまった場合、一網打尽に合ってしまう。それに長砲身のⅢ突が動きづらい」
梓「そ、そうですよね……すみませんでした」
桃「あ、あー……いや、目の付け所は悪くないぞ、うむ。どんどん意見を出してくれ」
杏「部隊を二つに分けるのはどうだろ?森の中に伏兵を……そーだね、三両ほど置いて、残りはフラッグ車とその護衛にすんの」
エルヴィン「ふむ。敵がフラッグ車を狙って来れば伏兵が背後から、森に戦力を集中して来れば合流して森林戦で迎え撃つ、か。いいんじゃないか?」
カエサル「一個小隊三両程度ならば、総力を挙げれば圧倒できる。あとはそれを繰り返して戦力を削いでいく、か。悪くないな。河嶋先輩、それでどうだ?」
桃「ああ。わかった。それでいこう。それで、グループ分けとフラッグ車なんだが」
カエサル「森に潜ませるのは、M3,Ⅳ号、それと38tでどうだ?89式をフラッグ車にして、Ⅲ突が護衛するんだ」
桃「いや、38tをフラッグ車にしよう。38tの方が89式よりもわずかだが足が速いからな。もし発見されても、逃げられる確率が上がるだろう」
エルヴィン「……ほう?私たちと組むことになるが、いいのか?河嶋先輩」
桃「……勝利のためだ。それに、お前たちが近くにいたほうが進言を受けやすいだろう」
沙織「……桃ちゃん先輩が、そんなこと言うなんて」
エルヴィン「これは……明日は大雨かな?桃ちゃん先輩」
梓「大雪かもしれないですよ、桃ちゃん先輩!」
桃「うぅ……も、桃ちゃん言うな!だいたいお前ら、先輩への敬意が足りん!今日はその性根を叩きなおしてやる!」
沙織「わー、桃ちゃん先輩が怒ったー!」
カエサル「うむ。それでこそ、桃ちゃん先輩だ」
~~~~
審判「それではこれより、サンダース大付属高校対、大洗女子学園の試合を始める。一同、礼!」
~~~~
桃「いいか!各車説明したとおりのポイントに移動。以後、森林側……う、ウサギさん、アヒルさん、あんこうチームは武部の指示に従え!」
一同「了解!」
柚子「桃ちゃん、恥ずかしいならチーム名を変えてもらえばいいのに」
桃「……士気向上のためだ!仕方ないだろう!」
杏「ま、いーんじゃない?可愛いしさ」
~~~~
梓「こちら、B085地点。シャーマン3両発見!」
優花里「三両……一個小隊ですか。作戦通りに行きそうですね」
沙織「了解!そのままおびき寄せて!」
梓「はい!……すいません、シャーマン6両に包囲されちゃいました!」
エルヴィン「バカな!いきなり6両を投入だと!?」
優花里「武部殿、助けに行きましょう!」
沙織「うん!ウサギさんチーム、アヒルさんチームと助けに行くから待ってて!」
アリサ「ちっ、どっちから援軍がくるかわからないじゃない……隊長。残り三両、南西に展開させてください。敵の援軍が来ます」
ケイ「OK!アリサのカン、信じるわよ!」
沙織「そんな!こっちにもいるなんて聞いてない!」
優花里「全10両中9両この森に投入……ずいぶんと大胆な作戦ですね……」
沙織「と、とにかく、ウサギさんチーム、合流を!」
梓「は、はい!」
あや「でもー!」
あゆみ「完全に囲まれちゃってますー!」
沙織「合流できた!アヒルさんチーム!……煙幕お願いします!」
典子「了解!」
アリサ「煙幕!?ちょっと!何も見えないじゃない!」
沙織「今よ!各車バラバラに逃げて!」
アリサ「ガッデム!逃げられたじゃない!」
ケイ「アリサ、ドンマイ!……それで、次はどうする?」
アリサ「……軽戦車をこの森の中を探し回るのは困難です。ここは、敵をこの森から出れないようにして、フラッグ車を含む別動隊が救援に来るように仕向けましょう」
ケイ「ふーん、それで一網打尽、ってわけ。なんか面白くないけど……ま、いっか!」
梓「ウサギさんチーム、北西、森の出口に……ダメです!敵シャーマン小隊!」
典子「こちら南東に向かって移動中……ああ!また敵と出くわした!」
沙織「もー!どうなってるのよー!どこに行っても敵が待ち構えてるじゃない!」
優花里「行く手を阻むだけで追いかけてこないのは、おそらくフラッグ車が救援に来るのを待っているんでしょう……」
沙織「でも、このままじゃ!」
梓「ウサギさんチーム、南西に向かって移動中……また敵小隊に……きゃあっ!」
沙織「ウサギさんチーム!大丈夫!?」
梓「は、はい!至近弾にびっくりして、いろいろ落としちゃっただけです!」
アリサ「敵フラッグ車、全然助けに来ないわね……そろそろ、一両くらい見せしめに撃破してやろうかしら」
梓『えっと……ウサギさんチーム、西側に向かって移動します!』
アリサ「隊長!森の西側に六両回してください!」
オレンジペコ「数にものを言わせた戦いかた……サンダースらしい戦い、なんでしょうか」
ダージリン「ええ、……だけど、あまりに優雅とはかけ離れた戦いね」
オレンジペコ「それにしても、サンダースの読みはすごいですね……一両も森からの脱出を許していません」
ダージリン「地獄のホットライン。……見ていて気分のいいものではないわね」
オレンジペコ「ダージリン様?」
梓「沙織先輩!こちら森の西側出口に到着……敵の姿、見えません」
沙織「やった!ウサギさんチームはそのまま別動隊と合流して!アヒルさんチーム、付いてきてください!西側から脱出します!」
ケイ「ちょっとアリサ!敵、全然来ないわよ?」
アリサ「なにこれ!どういうことよ!」
梓「あっ!……す、すいません!さっき落とした時に、地図を逆に読んでました!正しくは東側です!」
沙織「了解!方向転換、東側から脱出します!」
アリサ「ガッデム!……初心者チームめ!」
沙織「なんとか脱出できたー……もー、どうしてあんなにこっちの動きが筒抜けなのよぅ……」
優花里「こっちの動きを把握してるみたいな動きでしたからね……これが強豪校のカンなんでしょうか」
麻子「カンにしては出来すぎだったけどな……まさか、盗聴されてるとか」
沙織「うーん……でも、戦車に盗聴器なんて仕込めないだろうし……メール?こんな時に何よ!……ダージリンさん?えーと、『絶対に声を上げないこと』……」
ダージリン『空を見てごらんなさい。サンダースはあの気球で無線を傍受しているわ。無線での連絡は避けたほうがよろしくってよ』
沙織(む、無線傍受!?)
オレンジペコ「いいんですか?こんなことをしてしまって」
ダージリン「ええ。強きを助け、弱きをくじく。それが騎士道よ」
ダージリン(……無線傍受が禁止されていない以上、ここでサンダースが勝てば次以降も使ってくる可能性があるわ。レギュレーションがある以上、サンダースには可能な限り早く消えてもらいたいもの)
~~~~
サンダース生「ジーザス!」
エルヴィン「撃てえぃ!」
~~~~
サンダース生「ジーザス!」
エルヴィン「撃てえぃ!」
~~~~
サンダース生「ドッグチーム行動不能!」
アリサ「ええっ!」
ケイ「Why!」
沙織「無線じゃなくて携帯で連絡してたんだもーん!」
~~~~
桃(携帯)「さて、このあとどうするかだが……」
梓(携帯)「審判に訴えてみてはどうでしょう……?」
優花里(携帯)「ですが、ルールで禁止されていない以上、何らかの処分が下されるとは思えません……」
エルヴィン(携帯)「偽情報を流して、敵軍をどこかに誘導する。……連合国の『ミンスミート作戦』だ。奴らに食らわせてやるのは面白くないか?」
優花里(携帯)「敵はフラッグ車を孤立させています。フラッグ車以外を誘導して、一気に叩ければ……」
梓(携帯)「ですが、フラッグ車の場所がわかりません……」
カエサル(携帯)「手はある」
桃(携帯)「なんだと!なら早く言え!」
カエサル(携帯)「卦だ」
桃(携帯)「なに?」
カエサル(携帯)「私は卦を修めている。それでフラッグ車の位置を当てられるかもしれん」
桃(携帯)「バカな!そんな非科学的な話……」
エルヴィン(携帯)「いや。カエサルの卦は本物だ……私が保証する」
カエサル(携帯)「あとは桃ちゃん隊長が信じるかどうかだ。……どうする?」
本日の投下は以上です。
ぶっちゃけ大洗、乗員がチート揃い
禁止されてなきゃセーフ理論
>>マジすか
書き直します
書き直して新スレで更新します
>>70から訂正
沙織「なんとか脱出できたー……もー、どうしてあんなにこっちの動きが筒抜けなのよぅ……」
優花里「こっちの動きを把握してるみたいな動きでしたからね……これが強豪校のカンなんでしょうか」
麻子「カンにしては出来すぎだったけどな……まさか、盗聴されてるとか」
優花里「いやー、まさかケイ殿に限ってそのようなことは……」
沙織「ちょっとゆかりん!顔出したら危ないよ!」
優花里「ちょっと外の空気を吸うだけであります!心配ないですよ!……ああっ!」
沙織「なになに!?どうしたの!?」
優花里「あ、あの気球は……まさか……」
エルヴィン「恐らく、その通りだな。Dデイ特集で見たことがある」
桃「なにぃ!ルール違反だ!サンダースは失格だ!」
優花里「落ち着いてください……ルールブックでは、無線傍受は禁止されていないであります……」
沙織「うーん……とりあえず、連絡はメールでしよう。……私、車長やりながらできるかなぁ……」
~~~~
桃(携帯)「さて、このあとどうするかだが……」
梓(携帯)「審判に訴えてみてはどうでしょう……?」
優花里(携帯)「ですが、ルールで禁止されていない以上、何らかの処分が下されるとは思えません……」
エルヴィン(携帯)「偽情報を流して、敵軍をどこかに誘導する。……連合国の『ミンスミート作戦』だ。奴らに食らわせてやるのは面白くないか?」
優花里(携帯)「敵はフラッグ車を孤立させています。フラッグ車以外を誘導して、一気に叩ければ……」
梓(携帯)「ですが、フラッグ車の場所がわかりません……」
カエサル(携帯)「手はある」
桃(携帯)「なんだと!なら早く言え!」
カエサル(携帯)「卦だ」
桃(携帯)「なに?」
カエサル(携帯)「私は卦を修めている。それでフラッグ車の位置を当てられるかもしれん」
桃(携帯)「バカな!そんな非科学的な話……」
エルヴィン(携帯)「いや。カエサルの卦は本物だ……私が保証する」
カエサル(携帯)「あとは桃ちゃん隊長が信じるかどうかだ。……どうする?」
本日は以上です。
ルールブック欲しい。
ダージリン「携帯でポチポチっと……廃校イェーイ」
>>106
おとなはウソつきではないのです。
まちがいをするだけなのです……
本日21時より投下するのです。
そうだったっけかもうすっかり忘れてるな
>>112
みほ「戦車道やりたくない」
華&沙織「一緒に他のやろう」
オリエンテーション後
華&沙織「戦車道やろうや」
みほ「・・・」
予定通り21時より投下します。
~~~~
桃『全車、128高地へ移動だ!危険だが、ここで高さを活かして決着をつける!』
アリサ「捨て身の作戦に出たわね!……128高地に向かってください。敵の全車両が向かうはずです」
ケイ「……OK!全車、GO AHEAD!」
~~~~
ケイ「なにもないよー!」
アリサ「バカな!そんなはずは!……まさか、ハメられた……?じゃあ、大洗の車両はどこに……?」
典子「……あっ」
アリサ「……あっ」
典子「右に転換!急げー!……敵フラッグ車、0765地点にて発見!でも、こちらも見つかりました!」
アリサ「待てー!豆戦車!撃て!撃てー!」
桃「……よし!捜索中の全車両、アヒルさんチームに続けー!」
沙織「麻子!お願い!」
優花里「まさか本当に当たるとは!……見つけたのがアヒルさんチームでなければよかったのですが……」
沙織「方向まではわかったけど、具体的な場所まではわからなかったからね……でも、0765地点ならすぐ!追いかけるよ!」
アリサ「豆戦車め!捕まえたわよ!……って!また煙幕!?」
サンダース生「煙幕、晴れます……ジーザス!正面にⅢ突!」
エルヴィン「カバさんチーム、見参!」
アリサ「ゆ、Uターン!後退後退!」
エルヴィン「撃てぇっ!……くそっ、次弾装填、早く!」
アリサ「ひいっ!Ⅲ突と正面からなんて戦ってられないわ!とにかく逃げるのよ!」
ケイ「ちょっとアリサ!今どうなってるワケ!?」
アリサ「すいません!森で敵に見つかって……逃げている状況です!」
ケイ「ちょっとちょっと、話が違うじゃない!……無線傍受!?馬鹿もん!……とにかく、そこで時間を稼ぎなさい!」
アリサ「は、はいっ!」
沙織「今度は0752地点!?もー!」
桃「追え追えー!」
エルヴィン「くそっ!見失った!どこだ!」
アリサ「……ああもう!なんで私がこんなところで、あいつらから隠れてなくちゃならないのよ!」
サンダース生「車長!声を抑えて!……ケイ隊長が来るまでの辛抱です!」
優花里「マズいです……敵本隊を誘導した地点からこの森までは、長く見て10分……それまでに勝負を付けなくては……」
梓「五両で完全包囲なんてできません!隙間から抜けられて敵本隊と合流されたら、今度は私たちが袋の鼠です!」
エルヴィン「だが、一体どうすれば!この森の中で息を潜めている敵を見つけろだなんて、我々はP-1哨戒機じゃないんだぞ!」
桃「うわああん!さがせ!さがせぇぇぇ!ぢゃんずなんだ!あでざえずれば、がづんだぁぁぁ!うわああん!あきらめたらまけなんだぁぁぁ!」
梓(……早く見つけないと。何か、何か手は……そうだ!)
アリサ「……くそっ、くそっ……あんな弱小のくせに、どうせすぐに廃校になるくせに……なんでよ、なんでタカシは私の想いに気付いてくれないのよぉ……」
サンダース生(静かになったのはいいけど、ブツブツうるさいなあ……)
アリサ「このままじゃ、私が余計なことをしたせいで負けるみたいじゃない……三軍からやっと一軍の副隊長まで昇り詰めたのに……そんなことになったら……」
梓『敵フラッグ車、発見しました!』
アリサ「なんですって!」
サンダース生「待ってください!またブラフの可能性も……!」
アリサ「うるさい!……やっぱりあいつらは気付いてなかったのよ!さっきのは偶然だったのよ!」
梓『敵フラッグ車、まだこちらに気付いていない模様!このままぎりぎりまで接近して、一撃で倒します!』
アリサ「M3……どこよ、どこから来るの……いいわ。先に倒してやろうじゃない……」
梓『攻撃位置につきました!指示をお願いします!』
アリサ「どこ!どこ!どこなのよぉ!」
……ガサッ
アリサ「あそこよ!撃てぇっ!」
梓「やった!」
エルヴィン「砲声!あっちだ!」
優花里「見つけたであります!」
桃「うわああん!うてぇぇぇ!」
アリサ「ひぃぃぃぃ!」
~~~~
審判「大洗女子学園の、勝利!」
沙織「うそ……私たち、勝っちゃったの……?」
優花里「そ、それも……あのサンダース相手に、犠牲なしで……」
華「すごい……」
沙織「や……やったー!やったよ皆!」
エルヴィン「やれやれ、一時はどうなることかと思ったが……」
梓「まさか、本当にうまくいくなんて……」
桃「お前たち!戦車道は、礼に始まって礼に終わるんだぞ!まだ挨拶も終わってないのに、気を抜くんじゃない!」
おりょう「桃ちゃん先輩、目の周り、真っ赤ぜよ!」
桃「ば、バカなことを言うな!誰が泣くか!」
優季「えー、でも、通信で思いっきり泣き声が流れてきてましたよー。桃ちゃん先輩!」
あや「それに、小山先輩の制服、びしょびしょになってますよ?桃ちゃん先輩」
桃「だ、だから桃ちゃんと呼ぶなー!さっさと整列しろー!」
~~~~
審判「一同、礼!」
「ありがとうございました!」
ケイ「ヘイ、アンジー!」
杏「おーっす、おケイ」
ケイ「今日は完敗よ!……ところで、このチームのキャプテンは誰?」
桃「……私だが」
ケイ「グレイト!まさか負けるなんて思わなかったわ!」
桃「……そうか。いや、まさか私も、本当に勝てるなんて思っていなかったよ」
ケイ「うーん、謙遜はNO!よ!」
桃「謙遜じゃない。……私の役割なんて、小さなものだった。作戦も、無線傍受に気付いたのも、フラッグ車の発見も……全部、私以外の力だ」
ケイ「そう?……でも、勝ったのはあなたの率いるチームよ。あなたには誇る資格があるわ」
桃「そうか……本当にそうなのか……?うっ、ぐすっ……」
ケイ「WHAT?」
桃「うわぁぁぁん!かててよがったよぉー……!うわぁぁぁん!」
ケイ「ワオ!そんなに喜ばれると、私たちも嬉しいわ!ほら!私の胸で好きなだけ泣きなさい!」
~~~~
ダージリン「沙織さん?少し、お時間をいただけるかしら?」
沙織「あっ、ダージリンさん!見に来てくれたんですね!」
ダージリン「ええ。本当はサンダースの偵察のつもりだったのだけれど、当てが外れてしまったわね」
沙織「えへへ……みんなで頑張ったからですよ!」
ダージリン「ええ……あなたたちに、これを贈るわ」
沙織「えっと……紅茶?」
優花里「紅茶ですか!?武部殿、聖グロリアーナは好敵手と認めた相手にしか紅茶を贈らないんですよ!」
ダージリン「前回のあなたたちは、ティーパックでさえ贈るに値しなかったわ。……今日の試合なら、これを贈るに値すると認めてあげてもよろしくってよ」
沙織「いいんですか!?学園艦に帰ったら、さっそくダージリンさんに教わったおいしい紅茶の淹れ方で飲みますね!」
麻子「……それ、飲んでしまっていいのか?」
華「聖グロリアーナのお紅茶。きっと美味しいですね」
優花里「違います!こういうのは飲んじゃダメなんですぅ!」
ダージリン「……この大会、私たちとあなたたちが当たるとすれば、決勝。あなたたちがプラウダを倒し、私たちが黒森峰を倒して戦う。そんな展開、素敵ではなくて?」
優花里「さ、昨年度優勝校、プラウダ高校……道は険しいであります」
沙織「ダージリンさん、ありがとうございます!……それ、すっごく素敵です!」
ダージリン「ええ。決勝でお会いするのを、楽しみにしているわ。……それと、紅茶を飲みたいのならあとで送ってさしあげます」
~~~~
オレンジペコ「ずいぶんと高く評価なさっているんですね」
ダージリン「ええ。……新設の弱小校が、並み居る強豪校を蹴散らし勝ち進む……プロリーグ設立に向けて、戦車道の人気が高まるいいお話になると思わない?」
オレンジペコ「それでは、我々が勝ってしまえば悪役扱いですよ」
ダージリン「『ライバル対決』になるんですもの。そんなことはないわ。……それに、あの小さな暴君の手の内を一つでも明かしておくべきではなくって?」
オレンジペコ「……試合の映像はアッサム様がたくさんお持ちですが、新しい戦車を加えてくる可能性もゼロではないですからね」
ダージリン「『人をほめて使う人が、概して成功している』のよ。せめて、プラウダに奥の手を出させるくらいには強くなってほしいわね」
~~~~
――黒森峰・学園艦――
みほ(……ダメだ。全然眠れない……眠るのが、怖い)
みほ(お母さんを失望させて、お姉ちゃんにも心配かけて、毎日来てくれるエリカさんにも迷惑かけて……私、ホントダメだ……)
TV『さあ、いよいよ開幕しました、戦車道全国高校生大会!』
みほ(……そうか、もうそんな時期なんだ……ダメだ、見たくない)
TV『本日行われました試合は、初出場の大洗女子学園対名門・サンダース大付属高校』
みほ「……大洗?そんな高校、あったっけ……?」
TV『さあ、開始直後に包囲されてしまった大洗!』
みほ(今映ったこの気球……無線傍受装置!?)
TV『森から抜け出そうとしますが、サンダースの巧みな先読みにより、ことごとく失敗!』
みほ「……違う。先読みなんかじゃない。無線を傍受してるんだ」
TV『さあここでM3が脱出!続いてⅣ号、89式も脱出!』
みほ「よしっ!」
みほ(あれ?判官びいき……ってやつなのかな)
TV『サンダース、ここで謎の采配、何もない場所に全軍を移動させるミス!』
みほ「そう。離れた場所に誘導して、あとはこのあたりのフラッグ車を……」
TV『さあ、サンダースのフラッグ車を追って森林に突入した大洗!しかしサンダースの本隊が迫る!』
みほ「急いで……早くしないと、囲まれちゃう!」
TV『そして、ここで試合終了!なんと、勝利したのは初出場の大洗です!』
みほ「やった!」
みほ(あれ?私、こんなにドキドキしてる……戦車道で、楽しいって思ったの?)
TV『いやー、大番狂わせとなった試合でしたね。あきらめない勇気が導いた勝利、と言えるのではないでしょうか……』
みほ(……明日は、学校に行ってみようかな)
~~~~
沙織「すごい!ゆかりんのお弁当、キャラ弁じゃん!」
華「食べるのが勿体ないですね……」
優花里「そういえば、掲示板の号外記事見ました!?」
沙織「見た見た!私たち、注目の的だったね!」
華「ええ。驚いてしまいました」
沙織「ね、このままいけば、もしかして本当に決勝まで行けちゃったりするんじゃないかな!ダージリンさんだってああ言ってくれたし!」
麻子「あまり調子に乗ってると、足元をすくわれるぞ」
沙織「いーじゃん!私たち、強豪校に勝ったんだよ!」
華「一時はどうなることかと思いましたが……」
麻子「私は単位がもらえればそれでいいんだが……みんなはそんなに優勝したいのか」
沙織「……そりゃ私も、せっかくやるからには、できる限り上を目指したいかな……って感じだけど」
優花里「うーん……私は……こうしてみんなで戦車道ができているだけで楽しいですから」
華「私は強い自分になりたいと思って始めて……、確かに試合の緊張感は好きですが」
沙織「なんていうかさ、優勝!っていうより、皆で戦車道をやってる今が楽しいって思うから、頑張れるんだよね!」
優花里「武部殿の言う通りであります!皆さんと一緒に好きな戦車に乗れて、動かせて……私、今が一番楽しいであります!」
華「河嶋先輩に聞かれたら、怒られてしまいそうですが……勝つことだけが、戦車道の道ではないのかもしれませんね」
沙織「そうそう!……私たちの歩いた道が、戦車道になるんだよ!」
~~~~
桃「よし、本日の練習は以上!」
「お疲れ様でした!」
桃「よし。次の試合の作戦会議を行う。参加希望者は30分後に生徒会室集合だ」
優花里「あのー、すみません。私、欠席してもよろしいでしょうか……?」
カエサル「私も休ませてもらいたい」
桃「なんだ、珍しいな。何か用事でもあるのか?」
優花里「あ、いえ。装填手で集まって、それぞれの思ったことや気づいたことを共有しようと思いまして……」
桃「そうか。では、他の参加者は……」
沙織「あ、私も欠席でお願いします!」
梓「すみません、私も……」
エルヴィン「私もだ」
桃「なに?お前らはいったいどうしたんだ?」
沙織「えっと……車長のみんなから出た質問をダージリンさんに教えてもらったので、それを伝えようと思って」
桃「……これでは誰も集まらんじゃないか!」
あけび「あっ、桃ちゃん先輩ー!」
桃「桃ちゃんと呼ぶなっ!何だ!」
あけび「私たちも砲手でミーティングをしようと思うんですけど、どうですかー?」
左衛門佐「先輩にこそ参加してもらわないと、な」
桃「そうかそうか!私の助言が必要というわけだな!」
あや「一番上手くならなきゃいけないですからねー!」
桃「なんだとー!」
杏「言われちったね、かーしま。こりゃ作戦会議は明日かな!」
杏(みんなもいい感じにまとまってきた。……もしかすると、もしかするかもね)
杏「よーし皆!次の試合もがんばるよ!」
「おー!」
本日は以上です。
大洗はアンツィオよりは詰んでない。
てか戦車の質的にたぶん半分より上。
ホントに展開が思い浮かばないんで、ぜひコメントください……
ありがとうございます。
一応最後までのプロットはあります。
次の更新はプラウダ戦終了までです。
明日の21時予定です。
戦車道大会は決勝しかテレビ放映されてないはずだけど、
これはあれか、戦車道専門チャンネルみたいなのが合って
一回戦から放送してるってことかな。
そうなら、アンツィオ戦の後での互いをたたえ合っての宴会シーンなんかは、
楽しい戦車道の体現みたいなもんだから、
みほになんらかの影響をあたえるのは間違いないですね
>>176
決勝しかされてないのは「生中継」です。
ダイジェスト版くらいは夜のニュースでやってると思うのです…
21時から投下します。
プラウダ戦終わんないです…
予定通り21時より更新します。
プラウダ戦は……終わりそうにないです……
~~~~
ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
優花里『以上、秋山優花里がお送りしました!』
優花里「と言うわけで、アンツィオの新戦車とは、P40のことでした!」
杏「ふーん。……こりゃ少し考えたほうがいいかもね。で、このP40ってさー、強いの?」
エルヴィン「……ふふん」
カエサル「……知りたいか?」
桃「なんだ。もったいぶらずに早く言え」
カエサル「P40のデータなら、ここに用意してある!」
沙織「すごい!いったいなんで?」
エルヴィン「私の蔵書量を甘く見るな。グデーリアンからの報告を受けて、すぐに用意したんだ」
カエサル「日本語に訳したのは私だけどな。人数分、コンビニコピーにしてある」
沙織(ネットで調べればよかったんじゃ……)
桃「ご苦労だった。各員、目を通してくれ」
梓「えーっと……主砲75mm、前面装甲50mm……」
沙織「うちの戦車だと、どれくらい強いの?」
優花里「そうですね……Ⅳ号と同等といったところでしょうか」
沙織「そうなの?じゃ、あんこうチームにライバル登場!って感じだね!」
桃「残る車両はCV33六両、セモヴェンテ自走砲三両」
エルヴィン「なら、セモヴェンテは我らカバさんチームのライバル、というわけか」
杏「CV33は豆戦車だから、89式のライバルかなー」
優花里「会長、89式は中戦車です。アヒルさんチームに聞かれたら怒られるでありますよ」
杏「そうだっけ?ま、いーや。次のステージは、山岳と荒地か」
桃「明日より、Ⅳ号ならびに89式を仮想敵とした訓練に入ろう。それでは、作戦案があるものは言ってくれ」
~~~~
桃「うむ。これならば勝てそうだな。……では、解散」
杏「あ、武部ちゃんと秋山ちゃんは、ちょっと残ってもらえるー?」
優花里「私たちですか?」
杏「そ。実はあんこうチームに届いたんだー。……ファンレター」
沙織「ファ、ファンレター!?やった!戦車道をやればモテるって、嘘じゃなかったんだー!」
優花里「武部殿、よかったでありますな!」
杏「はいこれ。せっかくだからちゃんと読んで、お返事も書いてあげるんだよ」
沙織「もちろん!あー、どうしよー!モテ道まっしぐらだよー!」
沙織「……会長の嘘つき」
優花里「まあ、男性からとは言ってなかったでありますから」
沙織「でも、変わった封筒と便箋だなー。えーっと、確か、『ボコ』ってキャラクターだっけ」
優花里「ちょっと前に流行ったやつですね」
沙織「えっと、なになに……『サンダース戦での皆さんの勝利に、勇気をもらいました。応援しています。どうか、勝利のために頑張ってください。西住みほ』あれ?西住って……」
優花里「ええええええええ!」
沙織「わっ!どうしたのゆかりん!」
優花里「にににに、西住みほ殿からですかぁぁぁ!?」
沙織「西住みほ……ああ、あのインタビューの!」
優花里「あれは西住まほ殿であります!みほ殿は、まほ殿の妹で昨年度の副隊長であります!」
沙織「へー、そうなんだ……あれ?『昨年度の』ってことは、今年は違うの?」
優花里「それが、みほ殿は昨年度の決勝戦で、川に転落した戦車の乗員を助けに行った結果、敗北を招いてしまい……今大会は、出場していないそうであります」
沙織「なにそれ!ひどい!やめさせられちゃったってこと!?」
優花里「一応、『健康上の理由のため』となってはいるのですが……その可能性も否定できないであります。武部殿、そのお手紙のお返事、私が書いてもいいでありますか!?」
沙織「……ううん!私にも書かせて!」
~~~~
――黒森峰・学園艦ーー
みほ「わあ!お返事が来てる!」
みほ(早く部屋に帰って読まなきゃ……あれ?お姉ちゃん……電話中?)
まほ「はい。……ええ。問題ありません。必ずやプラウダを倒します」
みほ(お母さん……かな)
まほ「ええ。……みほも具合がよくなって、なんとか学校に通えています」
みほ(そうだ。お母さんにも……心配、かけたよね。あとで謝らなくちゃ)
まほ「はい。……私は、西住流そのものです。絶対に優勝してみせます。……それでは」
みほ(西住流、そのもの……)
まほ「みほ?帰っていたの」
みほ「う、うん」
まほ「そう。食事の前にちゃんと手を洗うのよ。……それじゃ、私は学校に戻るから」
みほ「あ、……いってらっしゃい、お姉ちゃん」
まほ「行ってきます……みほ、あなたには私がついてる。心配しないで」
みほ(お姉ちゃん、すごく疲れた顔してた……私の、せいだよね。……そうだ、手紙、読まないと)
~~~~
柚子「あららー……」
桃「貴様ら徹夜で修理だ―!」
~~~~
審判「これより二回戦第四試合、アンツィオ高校対大洗女子学園の試合を開催いたします」
~~~~
華「数が合いませんね、合わせて11両もいる」
優花里「P40もいません。二回戦のレギュレーションでは10両までと……」
沙織「うーん……でもそんなバレバレの反則するかなぁ……バレたら即失格だよ?」
杏「チョビが反則をするとも思えないしねぇ……聞いてみれば?」
沙織「聞いてみるって……誰にですか?」
杏「相手に。白旗掲げて軍使、って言って近づけば、撃ってはこないでしょ?ホントにズルしてたら運営に言えばいいだけの話だし」
桃「わかりました。アヒルさんチーム、頼めるか」
典子「了解!」
優花里「やりますねぇ!欺瞞作戦なんて。……詰めが甘かったですけど」
エルヴィン「11両置くとはな……何かの作戦なのか?」
桃「一体何が狙いなんだ?」
あや「間違えちゃったんじゃないですか?」
梓「あやちゃん、それはさすがにないんじゃないかな……」
桃「あー!わからん!そんなことより、この後どうする!?」
優花里「……もともとの作戦通り、ここで守ればいいんじゃないですか?」
エルヴィン「賛成だ。敵の狙いはわからないが、ここに全車両が集まって守る限り、アンツィオの戦車相手に敗北はないだろう」
桃「……そうだな。看板はどうする?」
エルヴィン「何かに使いたいが……我々の戦車が隠れるには低すぎる。壊すしかないだろう」
桃「わかった。各車十字路北側に待機だ」
ペパロニ「よっしゃー!一番乗り!って、あれ?」
桃「全車、撃て!」
ペパロニ「姐さん!」
アンチョビ「なんだ!?包囲に成功したのか!?」
ペパロニ「いえ!CV全車、撃破されたっス!すいません!」
アンチョビ「はあ!?」
優花里「撃破!やりましたね!」
梓「これで数の上では同じ!」
桃「あとはCV一両、セモヴェンテが三両、P40か……」
優花里「撃破!やりましたね!」
梓「これで数の上では同じ!」
桃「あとはCV一両、セモヴェンテが三両、P40か……」
アンチョビ「一同!フラッグのもとに集まれ!『分度器作戦』を発動する!」
桃「北に進むぞ!全速前進!」
~~~~
沙織「敵フラッグ車、CV一両、セモヴェンテ一両発見!」
カルパッチョ「75mm長砲身は、私に任せてください!」
アンチョビ「任せた!」
典子「CVは私たちが!」
~~~~
沙織「発射!」
~~~~
審判「大洗女子学園の、勝利!」
~~~~
優花里「やりました!次はいよいよベスト4ですよ!」
沙織「うん!順当に行けば、次は……」
みほ「あ、あのっ!……よ、Ⅳ号戦車の乗員の方ですか!?」
沙織「ん?……えーっと……誰?」
優花里「あ、あああ、あなたは……に、西住みほ殿ですかっ!?」
みほ「は、はいっ!」
沙織「ちょっとゆかりん、驚いてるじゃない……えーと、西住さん?あの手紙の」
みほ「はい!……あの、お返事、ありがとうございました!」
沙織「すごい!わざわざ試合を観に来てくれたの!?ありがとう!」
みほ「い、いえ……お礼なんて……その……お返事を読んで、どうしても一度お話をしてみたくなって……武部沙織さん……は、どなたですか?」
沙織「ん?私だよ!」
みほ「あ、あのっ……武部さんは、その……勝つだけが戦車道じゃないと思う、って……『勝たなくちゃ意味がない』なんてことはない、って……」
沙織「ああ、うん。それは……」
アンチョビ「いやー、今年こそは勝てると思ったんだけどなー……でも、いい勝負だった。決勝まで行けよ!我々も全力で応援するから!……だよな!」
「おーっ!」
アンチョビ「諸君!試合だけが戦車道じゃないぞ!……これが!アンツィオの流儀だ!……ん?その制服……黒森峰か!?なんで黒森峰がここに!?」
みほ「え、えーっと……」
ペパロニ「決まってるじゃないすか姐さん!アンツィオを強敵と見込んで、偵察しに来たんすよ!」
みほ「いや、その……」
アンチョビ「な、なんだってー!そうか、そこまで我らアンツィオは高く評価されていたのか……よーし!あんたも食べてくよな!?」
みほ「は、はい……」
みほ「わ、私までごちそうになって、本当にありがとうございました!」
沙織「いいのいいの。アンチョビさんがいいって言ってくれたんだしさ」
みほ「あの……大洗もアンツィオも、どっちのチームもすごく楽しそうで……どうして、戦車道でそんなに楽しめるんですか?」
沙織「どうしてって……西住さんは楽しくなかったの?戦車道」
みほ「私は……戦車道で楽しいと思ったことなんて……」
沙織「じゃあ、なんで戦車道やってたの?」
みほ「それは……戦車道の家元の家だから……」
沙織「私は、戦車に乗るのがすっごく楽しい。……そりゃ勝てたら嬉しいし、負けたら悔しいけど……皆で戦車に乗るのが、すっごく楽しいから、だから戦車道やってるの。……それは、西住さんから見たら変なのかもしれないけど、でも、間違いじゃないと思う」
みほ「楽しい、から……」
沙織「私はまだ始めたばっかだけどさ、ダージリンさんも、ケイさんも、アンチョビさんも、みんな楽しそうだった。だから、私は間違ってないと思う」
みほ「…………」
沙織「あっ!なんかごめんね!ずっと戦車道やってきた人に、偉そうなこと言っちゃって!」
みほ「い、いえ!あの、本当にありがとうございました!」
沙織「ううん。こっちこそ、試合観に来てくれてありがとう!」
みほ「はい!……また、お手紙書いてもいいですか?」
沙織「手紙?うーん……それよりもさ、メアド教えてよ!メールしよう!」
みほ「は、はい!」
~~~~
沙織「ダージリンさん!」
ダージリン「あらあら、いらっしゃい」
沙織「あのっ!私たち、試合!応援しに来ました!」
ダージリン「うふふ。ありがとう。こんなに可愛らしい応援団に来てもらったんですもの。負けるわけにはいかなくなってしまいましたわね」
沙織「か、可愛いだなんて、そんな……」
ダージリン「アンツィオ戦、観戦させていただいたわ。……面白い試合だったわよ」
沙織「その……決勝で会いましょう!」
ダージリン「あら。もうプラウダに勝ったつもりでいるなんて……気の早いことね」
沙織「そういうわけじゃ……でも、すっごく楽しみなんです!」
ダージリン「そう。……なら、なおさら負けるわけにはいかなくなりましたわね。『女は簡単に泣く。しかも自分を泣かせたことについてよく覚えている』。……お誘いを、断るわけにはいきませんもの」
沙織「あの!……頑張ってください!」
~~~~
審判「これより準決勝第一試合、聖グロリアーナ女学院対黒森峰女学院の試合を開催いたします」
~~~~
優花里「凄い!クロムウェルですよ!」
沙織「やった!一両撃破!」
~~~~
梓「ああっ、マチルダがぁ!」
エルヴィン「これで戦況は五分、か……」
~~~~
桃「バカな!マウスをあんな手で!?」
杏「やるねぇ……ありゃ、当分修理できそうにないよ」
~~~~
おりょう「……ダメだ、もう終わりぜよ……」
沙織「そんなことない!ダージリンさんはまだあきらめてない!あきらめたらそこで終わりでしょ!戦車も恋も!」
~~~~
審判「黒森峰女学園の、勝利!」
~~~~
優花里「ああ……やはりティーガーの壁は厚すぎたであります……」
沙織「そんな……ダージリンさん……」
~~~~
まほ「はあっ……はあっ……」
まほ(やっと……勝った……)
エリカ「隊長!やりました!」
ダージリン「ごきげんよう……まほさん」
まほ「……ダージリン。いい試合だったわ」
ダージリン「ありがとう。……悔しいけれど、完敗だったわ」
まほ「いいえ、危ないところだったわ。まさか、あなたが奇策を使ってくるなんてね」
ダージリン「失敗してしまえば、それはしょせん失策ですもの」
まほ「そんなことはない。……こちらはマウスをやられた。……プラウダとの試合が、一気に厳しくなったわ」
ダージリン「気の早いこと。決勝の相手はまだ決まってなくてよ?」
まほ「……大洗がプラウダに勝つなど、ありえないわ」
ダージリン「そう。妹さんの調子は、どうかしら?」
まほ「ずいぶん、元気になった」
ダージリン「それにしては、観戦には来てないのね」
まほ「……みほは……」
ダージリン「次の試合がプラウダと決めつけるのは早いわ。『好きこそものの上手なれ』と言うでしょう?……ひょっとすると、今のあなたよりも強いかも、ね」
エリカ「……言わせておけば!」
まほ「エリカ。……私は、西住流そのもの。……たとえどうあっても、負けることはないわ」
ダージリン「そう。……あなたたちの次の試合は、大洗とよ。……だって、どちらも守れなかった約束なんて、悲しすぎるとは思わない?」
まほ「……なら、大洗を倒す。それが……西住流だから」
ダージリン「……そうでしょうね。では、ごきげんよう」
~~~~
沙織「ダージリンさん!」
ダージリン「……ごめんなさい。約束、果たせなかったわ」
沙織「でも、すごくいい試合でした!」
ダージリン「ありがとう……でも、負けてしまったわ」
沙織「勝ち負けだけが、戦車道じゃないと思います!」
ダージリン「そう。サンダース戦の後のこと、覚えてる?」
沙織「はい!私たちと決勝で戦うのが、素敵だって!」
ダージリン「ごめんなさい。あれは、嘘だったのよ」
沙織「嘘って……どういうことですか!?」
ダージリン「あなたたちは、せいぜいプラウダの当て馬になってくれればいい。そう思って、言った言葉だったのよ」
沙織「そんな……」
ダージリン「そう、嘘だった。嘘だったはずなのに」
沙織「……えっ?」
ダージリン「ねえ、知ってる?……聖グロリアーナのOG会はね、三つあるの。マチルダ会・チャーチル会・クルセイダ―会の、三つ。どこも多額の寄付をしてくれる……わが校の戦車道は、その寄付に支えられているわ」
沙織「…………」
ダージリン「でもね。お金を出してくれるということは、口も出してくる。……わが校にセンチュリオンが導入できないのも、それが理由。私には、クロムウェルの導入が精いっぱいだった」
沙織「……そんな」
ダージリン「黒森峰だって、同じようなもの。……だから、心のどこかで、何にも縛られずに戦車道をするあなたたちがうらやましかった。ねたましかった。……でも、なぜでしょうね。気付いたら、あなたたちのことが好きになっていた。……本気でおうえんするようになっていたの」
沙織「ダージリンさん……」
ダージリン「あらあら。負けたのは私なのに、なぜ沙織さんが泣いているの?」
沙織「だって、だって……」
ダージリン「プラウダ高校は、強敵よ。だけど、あなたたちなら。あなたたちだからこそ、勝てるわ。その理由が、あなたたちにはあるもの」
沙織「……はい!私達、絶対勝ちます!……勝ち負けとかじゃなく、ダージリンさんとの約束を叶えるために!」
ダージリン「ええ。私たちは、協力を惜しまないわ」
~~~~
――黒森峰・学園艦――
みほ「プラウダ高校……今の大洗の戦力で、私だったら……」
>>226訂正
ダージリン「黒森峰だって、同じようなもの。……だから、心のどこかで、何にも縛られずに戦車道をするあなたたちがうらやましかった。ねたましかった。……でも、なぜでしょうね。気付いたら、あなたたちのことが好きになっていた。……本気で応援するようになっていたの」
沙織「ダージリンさん……」
ダージリン「あらあら。負けたのは私なのに、なぜ沙織さんが泣いているの?」
沙織「だって、だって……」
ダージリン「プラウダ高校は、強敵よ。だけど、あなたたちなら。あなたたちだからこそ、勝てるわ。その理由が、あなたたちにはあるもの」
沙織「……はい!私達、絶対勝ちます!……勝ち負けとかじゃなく、ダージリンさんとの約束を叶えるために!」
ダージリン「ええ。私たちは、協力を惜しまないわ」
~~~~
――大洗・学園艦――
桃「いいか、これがプラウダの戦車だ」
エルヴィン「T-34が7両、T-34/85が6両、IS-2、KV-2がそれぞれ1両で、レギュレーションいっぱいの15両」
優花里「堂々たる、ソビエト戦車部隊ですね……」
カエサル「それに対する、われら大洗は」
梓「B1が加わって、6両……」
優花里「Ⅳ号は長砲身に換装しましたが、戦力の差は圧倒的です……」
桃「……だが。我々はこれに勝たなくてはならないんだ」
杏「まー、一朝一夕に思い浮かぶことでもないし……まだ時間はあるしさ、今日の作戦会議はこれで終わりにしよっか」
沙織(……ダージリンさんの言ってた、『勝てる理由』って……?)
沙織(ダージリンさん、『答えが見つかったら、教えてちょうだい。答え合わせをしてあげるわ』……って……もー!教えてくれたっていいじゃない……)
麻子「おーい沙織。鍋、吹きこぼれてるぞ」
沙織「あっ!ちょっと麻子!早く言ってよ!」
華「あらあら。沙織さんにしては珍しいですね」
優花里「なにか他のことを考えていたんでありますか?」
沙織「あはは……まあ、そんなとこ」
麻子「どうせ、いもしない男のことだろう」
優花里「間違いないでありますね!」
沙織「あっ!ひどーい!ゆかりんまで!」
優花里「武部殿、あれを取ってもらえますか?」
沙織「あー……はい、ソース……って、ごまかされないんだからね!」
優花里「ありがとうございます……あれ?このやり取り、どこかで見たような……そうそう。私が初めて武部殿のお部屋にお邪魔した時の、武部殿と五十鈴殿のやり取りであります!」
沙織「そういえば、そんなこともあったね……」
麻子「なんだか、戦車道を受講してからずいぶん経ったような気がするな」
沙織「初めて会った時のゆかりんのあいさつ、覚えてるよ!『不束者ですが、よろしくお願いします!』って!」
華「まるで、お嫁さんのようでしたね」
優花里「ああー!思い出させないでくださいよー!」
沙織「ほんと、いろいろあって、いろんな人と出会ったなあ……」
優花里「はい!カバさんチームの皆さんに魂の名前をいただいたり、アンツィオで鉄板ナポリタンを食べたり……」
麻子「オッドボール3等軍曹」
優花里「冷泉殿ー!それは言わないでください!」
沙織「さあ!冷める前に食べちゃおっか!」
カエサル「機動防御はどうだ?逃げ回りつつ、要所要所で反撃して、少しづつ敵を削っていくんだ」
優花里「ダメです。……私たちの戦車はどれも、T-34より遅いであります。……それに、この競技場の天候で我々がプラウダよりも長く戦えるとは思えません」
梓「一か八か、フラッグ車だけを狙って突撃してみるのはどうでしょうか?」
エルヴィン「プラウダには重戦車がいる。KV-2の主砲は射程内なら一撃で我々の戦車を撃破可能だ……仮に装填の遅さを利用してかいくぐっても、今度はJS-2。とうていうまくいくとは思えん」
杏「そんな重戦車がいるんじゃ、防御を固めてもあっさり破られるだけか……」
桃「ええい!何か手はないのか!?」
エルヴィン「無茶を言わないでくれ。我々はマンシュタインじゃないんだぞ」
桃「だが、今までは出たじゃないか!」
優花里「いくらなんでも、この戦力差では無茶でありますよ……」
桃「とにかく何か考えろ!我々は絶対に勝つんだ!勝たねばならないんだ!」
杏「かーしま、ちょっとストーップ。……さ、そろそろ練習の時間だし、続きは練習後にまたやろっか」
~~~~
――プラウダ・学園艦―――
ノンナ「準決勝は、残念でしたね」
カチューシャ「去年カチューシャたちが勝ったところに負けるなんて!」
ダージリン「勝負は時の運、と言うでしょう……次は準決勝だというのに、余裕ですわね。練習しないでいいんですの?」
カチューシャ「燃料がもったいないわ。聞いたこともない弱小高だもの」
ダージリン「そう。初心者ぞろいでここまで勝ち上がったこと、本当にまぐれかしらね?少しは気を引き締めてかかったほうが良いのではなくて?」
カチューシャ「何よ!カチューシャが負けるかもしれないっていうの⁉」
ダージリン「いえ。お気を悪くさせたならごめんなさい。ただ、万が一ということもあるかもしれないでしょう?」
カチューシャ「万が一なんてありえないわ!いいわ。見てなさい!一番あいつらが悔しがるような作戦で叩き潰してやるんだから!」
~~~~
桂里奈「リップ、色付きのにしたほうがよくない?」
優季「準決勝って、ギャラリー多いだろうしね!」
あゆみ「チークとかも入れちゃう?」
左衛門佐「どうだ!」
そど子「あなたたち!メイクは禁止!仮装も禁止よ!」
おりょう「いちいちうるさいぜよ……」
妙子「戦車にバレー部員募集って書いて貼っておこうよ!」
あけび「いいねー!」
華「アンツィオ高に勝ってから、みんな盛り上がってますね」
麻子「まったく、なんでここまでそど子が来るんだ……」
桃「お前たち!何をしている!」
左衛門佐「桃ちゃん先輩。なに、準決勝に出るにあたって、恥ずかしくない格好をしようとだな……」
桃「うるさい!真面目にやれ!」
おりょう「真面目にって、……練習は真面目にしてるぜよ」
桃「そんなことでどうするんだ!練習前にも自主練習をするくらいでなくて、プラウダに勝てるか!負けたらそこで終わりなんだからな!」
桂里奈「でも、負けても次があるじゃないですか」
あや「相手は去年の優勝校だし、胸を借りるつもりで……」
桃「それではダメなんだ!勝つんだ!勝たないと意味がないんだ!」
華「ですが、勝ち負けよりも、大事なことがあるはずです」
麻子「……なぜそこまで勝ちにこだわるんだ。初出場でベスト4。助成金目当てなら、もう十分だろう。あとは来年、装備を整えて挑めばいい」
桃「なぜだと……?来年だと……?そんなこと……」
杏「かーしま。……いいよ。話そう」
桃「……会長?」
杏「……みんなの力で、ここまで来たんだ。誰か一人に頼るんじゃなく、みんなの力を合わせたから、来られた。……みんななら、背負えると思う」
桃「はい。……負けたら、わが校は無くなる。廃校になるんだ」
杏「学園艦のコスト削減のため、成果のない学校から統廃合の対象になる、って。最後の一年を泣いて過ごすより、何かにすがりたくってさ……とっさに、戦車道大会で優勝する、って言っちゃったんだ」
桃「……古いだけで、何も特徴のない高校が生き残るにはそれしかないんだ」
柚子「みんな、黙っていてごめんなさい……」
典子「バレー部復活どころか、学校がなくなるなんて!」
おりょう「……無条件降伏」
華「この学校がなくなったら私たち、バラバラになってしまうのでしょうか……」
沙織「そんな!そんなのって!」
紗季「……でも、勝てばだいじょうぶ」
カエサル「そ、そうだ!勝てばいいだけの話じゃないか!」
エルヴィン「カエサルの言うとおりだ!プラウダを破ればそれでいいんだ!」
優花里「そうであります!勝てば、廃校になんてならないであります!」
梓「はい!なんとかして、勝てる作戦を立てればいいんですよね!」
沙織「そうだよ!あきらめたくなんてない!絶対に勝とうよ!」
桃「……ああ!そうだ!その通りだ!」
杏「ま、そういうことだよね……みんな、今日は練習なんてできるわけないよね。作戦会議組以外は、解散しよっか」
エルヴィン「くそっ!なぜこの学校にはティーガーもパンターもないんだ!」
杏「昔はあったのかもしれないけど、予算がなくていいのはみんな売っちゃったらしいんだよね……」
優花里「まさかこんなところで、東部戦線のドイツ軍の気分になるとは思いもよらなかったであります……」
梓「……そういえば、ドイツ軍はどうやってソビエトの戦車と戦ってたんですか?それがわかれば、なんとかなるかも……」
エルヴィン「自転車のカゴにパンツァーファウストを突っ込んで、国民突撃兵のマネ事でもするか?……歩兵という要素のない戦車道では、参考にしようがない」
カエサル「いっそ、どっかに援軍を出してもらうとか……できるわけがないな」
桃「何か、何かないのか!?」
杏「こりゃ、本当に手詰まり状態だね……」
典子「し、失礼します!」
杏「ありゃ。アヒルさんチームじゃん」
典子「あ、あのっ!私たち、バレーボールのことしか頭にないですけど……でも、根性はあります!作戦会議に入れてください!」
おりょう「邪魔するぜよ」
エルヴィン「おりょう!もんざ!」
左衛門佐「……いや。私たちも歴女の端くれ。専門範囲外ではあるが、なにか助けになれるかもしれないと思ってな」
華「こんばんわ、皆さん」
優花里「五十鈴殿!冷泉殿!」
麻子「……負けて単位が帳消しになってしまっては困る。話に加わるぐらいはしてやろう」
優季「あれー?みんな来てたんですねー」
梓「みんな!」
あや「えっと、みんなで話して、なんか私たちにもできることがないかなーって思って……私たちも入れてください!」
そど子「ちょっと!入口にこんな集まってたら、部屋に入れないじゃない!」
麻子「おー。そど子たちも来たのか」
そど子「なによ!一番後にチームに入ったからって、会議に参加できないなんてことはないわよね!」
杏「あはは……こんなに来ちゃったら、生徒会室じゃ入りきらないじゃん……」
桃「来るなら最初から来ないか、バカ者め……」
柚子「大教室、使えるようにしてきますね!」
杏「みんな!これが終わったら、今日はパーっとやろう!生徒会特製あんこう鍋、ご馳走しちゃうよ!」
「おー!」
~~~~
沙織「あー、あんこう鍋おいしかったー!まさか、会長があんなに女子力高いなんて、意外だよねー」
沙織(でも、結局作戦は何も出なかった……あ、西住さんからメール)
みほ『武部さん、次は準決勝ですね。どうか頑張ってください』
沙織「西住さん、このボコのスタンプ、いったい何年前のなのよ……」
沙織(……もしかして、黒森峰で副隊長やってた西住さんなら、なにかいい作戦を考えてくれるかも……)
沙織「なんて、ダメだよね。戦車道が嫌でやめたのに、やめる原因になった所と戦うから助けてくれー、なんて、言えないよ……。あーあ、でもどうしよー!」
沙織(そうだ。少し体を使おう。……押し入れの整理でもしよっと)
沙織「……なにこれ、なつかしー……まだ捨てないで持ってたんだ……ずいぶんやったなあ……あれ?もしかして、これ……えーと、ダージリンさんのアドレスは……」
~~~~
ダージリン「沙織さん、ごきげんよう」
沙織「ダージリンさん!わざわざ届けに来てくれたんですか⁉」
ダージリン「ええ。これが一番早いですもの。……はい。こちらがお願いされたものよ」
沙織「ありがとうございます!……でも、ずいぶん重いですね」
ダージリン「ええ。……どうやって、答えにたどり着いたのかしら?」
沙織「えへへー。これです」
ダージリン「あら。『大洗女子学園・過去問題集』」
沙織「ダージリンさん。プラウダみたいな強豪校の戦術って、大きく偏ってるんですよね?」
ダージリン「そうね。主将は毎年入れ替わるし、メンバーも毎年入れ替わるわ……でも、戦車はそう簡単に入れ替えられないし、戦術も基本的には上級生に教わるから、教わった以外のことはできない。……私たちにアンツィオの機動戦ができないようにね」
沙織「強豪校どうしなら、きっと相手の戦術に合わせて対策を取れます。……でも、データのない私たちに対しては対策をとることができない。だからきっと、一番得意な戦術をぶつけてくる」
ダージリン「ええ。……強豪校は、取れる戦術の幅がそれほど広くない。だって、練習していない、いえ、できないんですもの。戦車の種類に偏りがあるから」
沙織「だから、今までの試合のデータを本当に徹底的に分析すれば、プラウダが取る作戦がわかると思ったんです!」
ダージリン「上出来よ。それにもう一点。初心者しかいないあなたたちは、戦車道における戦術の定跡をほとんど理解していないわ。……だからこそ、先手を取り続ける限り駆け引きでは優位に立てる。……チェスの駒を直接投げつけてくるかもしれない相手の行動なんて、読めませんもの」
沙織「駒を直接投げてくるって……すごい例えですね……」
ダージリン「でも、この量のデータを一人で分析するには、とうてい時間が足りていないのではなくって?」
沙織「それは大丈夫です!私、一人じゃないですから!」
~~~~
典子「こ、この量を3日で見るんですか?」
桃「そうだ。見終わったら、こちらの紙に必要事項を記入して提出してくれ」
典子「……やるしかないんですよね!根性!」
おりょう「うう……目がしぱしぱするぜよ……」
あや「うぇぇ……太陽がまぶしいよぅ……」
そど子「あなたたち……居眠りは、許さないんだからね……」
麻子「ね、眠い……もう計算はいやだ……」
~~~~
桃「諸君!ご苦労だった!諸君のおかげで、プラウダ高校のデータ分析は完全に終了したぞ!秋山、頼む」
優花里「はい。プラウダの戦術としては、やはり包囲殲滅の割合がおよそ70%と、かなり高くなっています。逆に、電撃戦や浸透強襲はほとんどありません」
エルヴィン「やはり、赤軍と似たような戦術だな」
優花里「そしてそのうち80%に、何らかの形で偽装退却が含まれています」
左衛門佐「偽装退却……釣り野伏せか」
あや「でも、どうしてあんなに簡単に釣られちゃうんでしょうね?私たち、お魚じゃないんですよ?」
優花里「偽装退却を行う囮部隊に、フラッグ車が含まれている割合が非常に高いからだと思われます。ファイアフライのような長射程の戦車を持たない場合、ほぼ確実にフラッグ車を囮に加えていると言えるでしょう」
カエサル「フラッグ車さえ落とせば、弱小でも一発逆転。食いつかざるを得ないような餌をぶら下げているというわけか」
麻子「だが、どうしてあんな回りくどい攻め方をするんだ。プラウダの戦力なら、正面から普通に攻めれば、もっと簡単に勝てるんじゃないのか?」
沙織「ダージリンさんに聞いたら、『プライドを搾取するのが大好き』なんだって」
麻子「なるほど。いけ好かないやつなんだな」
優花里「伏兵を配置する場所としては、村落が多いです。続いて森林、茂みなど……市街地で少しずつ削っていくのも好きなようですが、偽装を施したりといったことはほとんどしてきません」
桃「地図によれば、次の雪原ステージにはいくつかの村落が存在する。ここに伏兵を置いてくる可能性が高い、ということだな」
優花里「はい。……すべてのデータから考えて、78%の確率で、プラウダは二回の偽装退却による村落への誘引ののち、伏兵による完全包囲を取ってくると考えられます」
梓「78%、ですか……」
典子「それで、こっちはどう立ち向かうんですか⁉」
優花里「村落へ引き込まれてしまえば、まず勝ち目はありません。囮部隊を正面から包囲するのも不可能です。ですから、フラッグ車の含まれているであろう二つ目の囮部隊が交戦を開始してから後退するまでの時間差を利用して、迂回した一両が後退するフラッグ車の側面を衝く。これしかないと思います」
杏「78%、ねぇ。それで、迂回するのはどの車両にするのさ?」
優花里「砲の威力、操縦技術、速度。すべてを考え、Ⅳ号が適任かと」
杏「Ⅳ号か。わかった。……ところで、22%の方を引いちゃったら、どうなるのさ?」
優花里「遊びなし、正面からの全力包囲をとってきているかと思われます。……勝機はありません」
杏「……なるほど。今日からの行いには気をつけなきゃいけない、ってわけだね」
本日は以上です。
無茶を言わないでくれ。>>1はマンシュタインじゃないんだぞ。
明日の21時に投下予定です。
プラウダ戦終了までいきます。絶対いきます。
展開が…出ない…
アンツィオの詰んでる点
・機動戦重視なのに訓練用の燃料すら不足
・ノリと勢いが売りなのにメイン火力が待ち伏せ重視の自走砲
・作戦を理解してもらえない
苦戦させようとしたけど無理でした
乙
チョビはみぽりんみたいに分かりやすい作戦名を付ければいいと思うの
>>271
チョビ「ぱらりら作戦だ!」
ペパロニ「ぱらりら……音を出しながら進むんすね姐さん!」
チョビ「こっつん作戦だ!」
ペパロニ「こっつん……カチコミっすね姐さん!」
チョビ「ふらふら作戦だ!」
ペパロニ「ふらふら……大丈夫っすか姐さん!すぐ病院につれてきます!」
そもそもフラッグ車をP40にしたのに直接戦いに参加するわけでもなく逃げ回るわけでもないのがなんとも
CVにつけて逃げ回らせた方がよかろうに…
まほのティーガーくらい強ければわかる話だけど
まぽりんの体調が悪いのはつわりのせいだった……?
なんかもう、それでもいいかなって…
>>253
ダージリン「……どうやって、答えにたどり着いたのかしら?」
沙織「えへへー。これです!」
ダージリン「あら。『ひよこクラブ』」
本日21時より投下いたします。
まぽりんの口調安定しない問題。
6話→「これも戦車道よ」
劇場版→「ここはお前の家だ」
ファッ!?
~~~~
みほ「お母さん、ご心配をおかけしました……。ごめんなさい!」
しほ「……みほ、健康には気をつけなさい。コンビニで買えるものばかり食べていては体に悪いわ。もっと体を労わらなくてはダメよ」
みほ「えっ……?」
しほ「母親が娘の体を心配して、何か不思議なことでもあるというの?」
みほ「う、ううん……ありがとう、お母さん」
みほ(てっきり、怒られると思ったのに……)
しほ「それより、まほ」
まほ「はい」
しほ「この間の試合、どういうことなの?……あんな手に引っかかって、マウスを撃破されてしまうなんて」
まほ「……申し訳、ありません」
しほ「あの程度の小細工、正面から打ち破れなくてどうするの。……西住の名を背負っている自覚を持ちなさい」
まほ「……はい、お母様。決勝こそ、西住流として恥ずかしくない戦いをしてみせます」
みほ(……お姉ちゃん、お母さん……)
しほ「準決勝第二試合……プラウダの相手は無名の弱小校。見に行く価値はないでしょう。チームの錬度向上に努めなさい」
まほ「はい。わかりました」
みほ「あの、お姉ちゃん……」
まほ「心配はいらないわ。私は西住流で、黒森峰の隊長……お母様も、私のためを思って言ってくれているから」
みほ「……うん。きっと、そうなんだよね」
まほ「みほ。……大洗とプラウダの試合、気になるのでしょう?」
みほ「えっ!?ど、どうして知ってるの!?」
まほ「みほのことなら、なんだってわかるわ。私はみほの姉だから……試合、一緒に見に行きましょう」
みほ「でもお姉ちゃん、練習は……」
まほ「プラウダの手の内を探ることも重要だもの。……お母様には内緒よ」
みほ「わぁっ……お姉ちゃん、ありがとう!」
~~~~
おりょう「Ⅲ突のキャタピラ、換装終わったぜよ」
典子「ラジエーターに不凍液、入れ終わりました!」
エルヴィン「うん。寒冷地用の準備はこんなところか……ところで、あれは何をやっているんだ」
杏「かーしま、次の目はー?」
桃「はい。……3です!」
杏「うーん。惜しかったねー。4だよ」
桃「も、もう一度お願いします!」
優花里「なんでも、プラウダの戦術を当てる勘を鍛えているそうであります」
エルヴィン「敵が全力包囲を仕掛けてきた場合の、機動防御戦術への切り替えか……」
優花里「はい。そうなってしまっては、逃げ回って相手のミスに期待するしかありませんから」
カエサル「……だが、あれに意味があるのか?」
おりょう「……何もしないよりは、ましだと信じたいぜよ」
梓「負けたら廃校……敵がこっちのデータ通りに動いてくれることを祈るしかないんですね……」
エルヴィン「それは違う。……自分の人生は、自分で演出する。祈るのは最後の手段だ。それまでにできることがあるならば、なんだってやろうじゃないか……それがたとえ、サイコロの目当てでもな」
麻子「どうしたそど子。柄にもなく緊張しているのか」
そど子「そど子って呼ばないでよ!……当たり前じゃない!初めての試合が廃校のかかった試合なのよ!緊張して何が悪いのよ!」
麻子「この寒さの中で、それだけ元気なら大丈夫だ、たぶん」
そど子「たぶんって何よ!」
麻子「わからないことがあったら無線で質問してくれ……そど子」
そど子「だから!園みどり子!」
麻子「わかった。そど子」
そど子「全然わかってないじゃないの!」
杏「5。また外れ……かーしま、一回くらいは当てようよ……」
桃「わかってます!次こそ当ててみせます!」
杏「……ちょい待ち。どうやら向こうから来てくれたみたいだ」
桃「もう少し待って来なければ、こちらから行く予定でしたが……手間が省けましたね」
杏「そだね。運はこっちに向いてきてるのかな?」
桃「……地吹雪のカチューシャ、ブリザードのノンナ」
カチューシャ「あはははは!このカチューシャを笑わせるために、こんな戦車用意したのね!」
左衛門佐「む……何事だ?」
カチューシャ「……あ、あっははは!ちょっとあなた、何よその頭!」
左衛門佐「何とは失礼だな。準決勝に挑むにあたって、恥ずかしくない格好で挑もうと思ってだな……」
カエサル「どうしたんだ、一体」
カチューシャ「あはははは!あなたも、何よそれ!なんで頭に草なんか巻いてるの!?」
カエサル「なんでって……これが正装、月桂冠だろう」
カチューシャ「あなたたち、本当に面白いわね!」
杏「やあやあカチューシャ。よろしく、生徒会長の角谷だ」
カチューシャ「……ノンナ!」
桃(……肩車?)
カチューシャ「あなたたちはね!全てがカチューシャより下なの!戦車も技術も身長もね!」
杏「うーん……まあ、そうだろうね。プラウダには勝てそうにないや」
桃「ああ。ぜひ胸を借りるつもりで挑みたい」
カチューシャ「ふーん、ずいぶんと物分かりがいいのね……」
杏「いやー、参っちゃうよね……まぐれで勝ち上がっちゃったせいでさ、こんな所まで来ちゃうんだもん」
カチューシャ「ま、いいわ。降伏はいつでも受けてあげる。行くわよノンナ!」
梓「ま、待ってくださいカチューシャさん!」
カチューシャ「なに?何か用かしら?」
梓「その……実は私たち、こんなに寒いとは思ってなくて……せめてたき火でもしたいんですけど、薪もなくて……お願いします!分けていただけないでしょうか!」
桃「おい、澤!これが終われば暖かい場所に入れるんだ!みっともない真似はよせ!」
梓「河嶋先輩……でも私たち、寒くて寒くて……」
あや「凍えそうなんです……」
優希「冷凍みかんになっちゃいます……」
カチューシャ「あんたたち、そんな恰好でここまで来たの!?……しょうがないわね。少し分けてあげるわ。後で取りに来なさい」
梓「本当ですか!?ありがとうございます!」
~~~~
カチューシャ「ノンナ、あの被り物見た!?ホントに面白かったわね!」
ノンナ「はい。斬新なデザインでしたね」
カチューシャ「それに、あの弱っちそうな戦車!何よ、万が一なんて絶対にありえないじゃない!」
ノンナ「では、作戦は」
カチューシャ「うーん……あのまま負けさせてもなんか面白くないわね……やっぱり、一度期待させてから包囲して殲滅してあげましょう!」
ノンナ「しかし、乗ってくるでしょうか?」
カチューシャ「絶対に乗ってくるわ!……薪も防寒着も持ってないんですもの。長期戦を挑んでくるわけないじゃない」
ノンナ「……ええ。そうですね」
カチューシャ「見てなさい。あの頭でさらし者にして、二度と表を歩けないようにしてあげるんだから」
~~~~
まほ「この寒さに、圧倒的に劣る車両……どのような手に出るのかしら」
みほ(……とにかく、フラッグ車を守りながらゆっくりと進むしかない)
まほ「大洗女子学園。なんとか勝ち上がってきたけれど、この辺りが限界ね」
みほ(沙織さん、皆さん……頑張ってください!)
~~~~
杏「よーし、行ったね。皆、ご苦労さん」
桃「全員、防寒具の着用を許可する!」
梓「うーん、でも、言うほど寒く感じないですね……」
左衛門佐「ふふん。防寒対策には、唐辛子を肌に塗り込んでおく。『雑兵物語』に書いてあったことが役に立ったな」
優香里「はい。この気温なのに、塗ったところがポカポカして……まるで寒さを感じません!」
左衛門佐「そうだろう。そのうえ唐辛子の成分が肌に刺激を与え、シミやそばかすを予防できるというおまけ付きだ」
沙織「なにそれ!すごい!」
左衛門佐「だが、一つ気を付けなくてはならないのが、この状態で目が痒くなったからといって、うっかりこすってしまうと……」
桂里奈「うぎゃーーー!」
左衛門佐「……ああなる」
杏「しっかし皆、いい演技だったよ」
桃「恐らく、敵は完全に油断しただろう……これでこちらの思惑通りになるといいが」
典子「ですが、もうできることは全部やりました!」
梓「やるだけのことはやりました。後は……」
優花里「ええ。ただ戦うのみ、です」
~~~~
審判「これより準決勝第一試合、聖グロリアーナ女学院対黒森峰女学院の試合を開催いたします」
>>313
訂正
~~~~
審判「これより準決勝第二試合、大洗女子学園対プラウダ高校の試合を開催いたします」
~~~~
カチューシャ「いい!?あいつらにやられた車両は、全員シベリア送り25ルーブルよ!」
~~~~
プラウダ生「敵は全車北東方面に走行中。時速約20Km」
カチューシャ「ふうん。やっぱり一気に勝負をかけてきたわね。ノンナ!」
ノンナ「わかってます」
~~~~
桃(……偽装退却、単純包囲……くそっ。結局どっちの戦術を取ってくるんだ!?)
桃「そど子!何をしている!」
ゴモ代「それが、前に進んでいるつもりなんですけど……!」
桃「カモさんチーム、一旦後退……誰か見てやれ!」
沙織「了解!麻子がいきます!」
桃「いいか!データ通りならば、そろそろ敵とぶつかるはずだ!各車周囲の警戒を怠るな!」
沙織「了解!前方の雪、榴弾で崩して先に進みます!」
~~~~
沙織「……11時に敵戦車!各車警戒!」
エルヴィン「ついに現れたな」
桃「……フラッグ車の姿は見えるか!?」
沙織「いえ!敵は三両だけで、フラッグ車は見当たりません!」
桃「わかった!各車前進!カバさんチームとあんこうチーム、射撃!」
沙織「はい!……敵戦車、二両撃破!残る一両、後退していきます!」
桃「よし!データ通りの展開だ!あんこうチーム以外の全車は追撃を開始!あんこうチームは迂回を……いや!待て!」
桃(敵の退却……本当に追った先にフラッグ車がいるのか?Ⅳ号を迂回させ、もしいなければそれでわが校は廃校……)
梓「河嶋先輩!早く追いかけないと、敵にこっちの狙いを悟られてしまいます!」
桃「わかってる!」
桃(くそっ!……78%、78%なんだ!なぜ迂回の指示を出せない!)
優花里「先輩!機動防御に移るならば、その指示を!」
桃(機動防御……そうだ、機動防御なら、すぐには負けることはない。ここは無理に元々の作戦にこだわるより、一旦様子を見た方が……いや、しかし!)
典子「先輩!指示を!」
桃(それで敵がミスをしなければ、結局敗北するしか……)
杏「かーしま!……これから投げるさいころの目、当ててみ!」
桃「……6!」
杏「よしきた!……6!やっと当たったよ!」
桃「はい!」
桃(何を迷っていたんだ私は!ここで決めないでどうする!?……隊長だろう!)
桃「……あんこう以外の各車、退却する敵戦車を追撃!あんこうは作戦通りに迂回を開始しろ!」
「了解!」
桃「とにかく撃ちまくれ!雪を巻き上げて、あんこうの離脱を悟られないようにするんだ!」
沙織「麻子!お願い!」
麻子「わかった」
沙織「って、ちょっと麻子、どこ行くの!?」
麻子「データよりも敵の動きが早く、こっちの動き出しが遅かった……間に合わせようと思ったら、こっちに行くしかない」
沙織「で、でも!そっち、森だよ!?」
麻子「わかってる」
桃「おい!あんこう!どこに行くんだ!」
麻子「沙織、信じてくれ。夜目は効くほうなんだ」
桃「あんこう!応答しろ!」
沙織「……桃ちゃん先輩!……あんこうチーム、森を突破して迂回します!」
桃「森を突破!?この暗闇でか!?」
沙織「お願いです!麻子を……私たちを信じてください!」
桃「……信じる!頼んだぞ!」
沙織「はい!」
~~~~
ノンナ「カチューシャ。囮の第一陣が後退を開始しました。敵もこれを追撃。まもなく第二陣と合流すると思われます」
カチューシャ「ほら見なさい!やっぱりあいつら、まんまと引っかかったわ!」
ノンナ「どちらかの重戦車を近くに伏せたほうが良かったのでは?」
カチューシャ「ダメよ。のこのこと引き込まれた敵が、カーベーたんを見て絶望するから面白いんじゃない!」
ノンナ「……ええ。そうでしたね」
カチューシャ「早く来ないかしらね!一番悔しがる勝ち方で勝って、土下座させてやるんだから!」
~~~~
沙織「ま、麻子!本当に大丈夫なの!?」
優花里「武部殿!喋ると舌を噛みますよ!」
麻子「問題ない。ちゃんと見えている」
華「落ち着いて……落ち着いて……」
~~~~
まほ「おそらく偽装退却。引っかかった時点で勝負は決まったわね」
みほ「……ううん。Ⅳ号が迂回してる……うまく森を抜けられれば」
まほ「そう。……みほと戦車道のことを話すのは、ずいぶん久しぶりね」
みほ「うん……そうだね、お姉ちゃん」
~~~~
梓「あそこに固まってる……フラッグ車を含む敵部隊、発見!」
桃「よし!」
エルヴィン「データ通りの作戦を使ってきたな!……あとは、あんこうが間に合うかどうか!」
桃「信じるしかない!全車、突撃!」
典子「アターック!」
梓「撃てっ!」
そど子「冷泉さん、何してるのよ……こんな時まで遅刻したら、許さないんだから!」
沙織「麻子!少し右に寄せて!」
麻子「……わかった」
沙織「ちょっと、右だって!」
麻子「あのまま右に行っていれば、木にぶつかる。一旦左に曲がってから大きく曲がるのが一番早い」
優花里「武部殿、そろそろ森を抜けます!」
沙織「あとはこのまま直進!それで、敵の右側に出るはず!」
麻子「任せろ」
左衛門佐「やった!一両撃破!」
桃「敵は退却を開始したぞ!追え!護衛の注意をこちらに引き付けるんだ!」
エルヴィン「あんこう、まだか!」
沙織「……あんこうチーム、森の突破に成功!敵の側面に付きました!」
桃「敵は村落への後退を始めている!早く!」
沙織「わかりました!……華!ゆかりん!撃って撃って撃ちまくって!」
華「いいえ……一発でいいはずです」
沙織「えっ?」
華「麻子さん。僅かでかまいません。停止していただけますか」
麻子「いいのか?護衛のT-34にやられるぞ」
華「はい。……撃たれる前に当てます」
麻子「わかった。3つ数えたら停止する。3……、2……、1……」
華「花を活けるときのように集中して……」
麻子「0」
華「……発射」
審判「試合終了!大洗女子学園の、勝利!」
沙織「や、やった!すごいよ華!」
優花里「ま、まさか、本当にこの戦力差で勝てるなんて……」
華「初撃破、もらってしまいましたけどね」
沙織「でも、勝てたんだよ!……これで、決勝進出だよ!」
桃「やった!やった!」
杏「うんうん。かーしま、よくやったぞ」
桃「か、かいちょぉぉぉ……」
杏「ほらほら、泣くなって……隊長なんだからさ」
カチューシャ「ちょっと!どういうこと!?なんでカチューシャが負けてるのよ!」
杏「やーやーカチューシャ。運がなかったね」
カチューシャ「こんな弱小校にカチューシャの狙いを見抜ける人間がいるなんて、聞いてないわよ!隊長は誰なのよ!」
桃「ああ、私だ。……だが、別にそちらの戦術を見抜いたわけじゃない」
カチューシャ「何よそれ!どういうこと!?」
桃「私たちは、プラウダ高校の試合のデータを全員で徹底的に分析した。その結果、今日の試合ではこの作戦を使ってくる可能性が高いと判断した。だから事前に対策を立てておいた。それだけだ」
カチューシャ「で、データって……そんなの、精度を上げようとしたら、どれだけの量が必要になるのよ……」
桃「でも、勝つにはこれしかなかったんだ。試合の映像を観てよくわかった。プラウダと我々では、これまで積み上げてきたものが違いすぎる。……ただ、私たちはその積み上げてきたものが何なのかを、調べることができたんだ。……戦車道は、戦争じゃないから」
カチューシャ「……そう。そうだったの……。あなたたち、なかなかのものね……決勝戦、見に行くわ!カチューシャをがっかりさせないでよ!」
杏「ありがとうカチューシャ。ところで、分けてもらった薪だけどさ、実はうちもちゃんと持ってきてたんだよね……返したほうがいいかなー?」
カチューシャ「えっ!?ま、まさか、カチューシャをだましたって言うの!?」
杏「データだけじゃ、本当にそっちが予想通りの作戦を取ってくれるか不安だったからね……こっちを甘く見てもらったってわけ。『謀多きは勝ち、少なきは負ける』……孫子も言ってるしね」
カチューシャ「っ…………!く、悔しくなんてないんだからねっ!」
~~~~
みほ「……すごい……勝っちゃった……」
まほ「プラウダの作戦を読み切り、隊員の猪突を防ぎ、突破不可能と思われる場所を突破する……驚いたわ。素晴らしい実力があるチームね」
みほ(でも、なんだか……今までの大洗の戦い方と違うような気がする……気のせいかな……)
まほ「みほ。あなたに感謝するわ。おかげでこの試合を直接見ることができた……あなたが憧れるのも、無理はない強さね」
みほ「べ、別に強さにあこがれてるってわけじゃ……」
まほ「……これは、対策が必要ね。何か温かいものでも食べて、早急に学園艦へ戻りましょう……」
グラッ……
みほ「お、お姉ちゃん!?お姉ちゃん!すみません!誰か救急車を!」
本日は以上です。
・包囲の一番厚いところを突破
・38Tを実質捨て駒に
プラウダ戦のみほってすごく西住流だと思う。
次回の投下は一応明日の21時予定で
>>1「えっ!この戦力で黒森峰を!?」
他ssのネタで盛り上がってすまない
ただちょっと母乳がほしくて……
そういえばマウスの代わり何がいいですか?
マジで劇場版の初期案みたいな展開になりそうだな
てか、これで大洗が優勝したらみほ要らん子じゃん
>>352
そもそもみぽりんいなかったら自動車部をパリダカに出せばいいと思います…
ナカジマ「ポルシェティーガーで、パリダカ戦車部門優勝……ですか?」
みほいない方がスムーズに勝ってる…
依存と慢心が無くなって必死さがましたからか…?
>>359
みぽりんは戦車道の家の娘なので、「試合前の挨拶で相手を騙そう」とか「徹底的なデータ戦術を使おう」とか出ないと思うんです。
ひよこクラブネタが出てきたってことは、こっちも一人くらい妊娠させた方がいいのか…?
そして妊婦ならたまごクラブじゃないのか…?
ダージリン様お誕生日おめでとうございます!
でももう出番は……
本日21時より投下します。
~~~~
―――大洗・学園艦―――
桃「決勝戦のレギュレーションは20両までだ。黒森峰の使用するであろう戦車は、ティーガー、パンター、ヤークトパンター……」
エルヴィン「……こっちの戦力も強化されたとはいえ、もはや戦力差については語るまでもないな」
梓「で、でも、初戦からそうだったじゃないですか!」
典子「そうですよ!皆で黒森峰のデータ解析もしましたし、今度も何か手がありますって!」
杏「いやー、それがさー。黒森峰って、『隊列を組んで前進、立ちふさがるものは全部叩き潰す!』みたいな戦い方でしょ?……遊びがなくてさ、隙が見つからないんだよね……」
あや「またフラッグ車だけを狙ったらいいんじゃないですか?」
優花里「黒森峰のフラッグ車は、かの西住まほ殿のティーガー……一両の戦車としては、間違いなく大会中で最強です。そう簡単にはいきません」
カエサル「一応、奇襲からの立ち直りが遅いというウィークポイントはあったが、それを活かすには我々は実戦経験が足りなすぎる……生半可な奇襲では、重戦車の装甲に跳ね返されて終わりだ」
杏「実戦経験、ね。……とりあえず今日はここまでにしよっか。練習後にお疲れさん。……そうそう、みんな土曜日は朝六時に学校集合でよろしく」
沙織「どこかと練習試合ですか?相変わらず急ですね……」
左衛門佐「して、相手は」
杏「ないしょ。ま、当日になればわかるって。レオポンさんチームとアリクイさんチームのみんなはいきなりの試合だけど……ま、頑張ってね」
ナカジマ「あいよー。任せといて!」
ねこにゃー「が、がんばります!」
~~~~
まほ「みほ。心配をかけてしまったわね……」
みほ「ううん。……お医者さん、過労だって。しばらく休めばよくなるっていうから、お姉ちゃんもたまにはゆっくり休んで……」
まほ「そんなことはできないわ。ただでさえ病院に運び込まれて練習できなかったのだもの……すぐに退院して、決勝に向けて対策を練らねいと……」
みほ「そんな!無茶だよお姉ちゃん!」
まほ「無茶ではないわ。……私は、西住流だもの……」
しほ「まほ……具合はどうなの?」
みほ「お母さん!」
まほ「お母様……大丈夫です。やれます」
しほ「そう。まさか大洗が勝つとは思わなかったわ。言いつけを破って試合を見に行っていたことは目を瞑ります」
まほ「……ありがとうございます」
しほ「でも、決勝まで時間がないわ。他に異常はないのだから、早く練習に復帰しなさい」
まほ「はい。わかっています」
みほ「お母さん、そんなの無茶だよ!お姉ちゃん、ずっと疲れて、無理してたんだよ!」
しほ「みほ。それは誰のせいだと思っているの?」
みほ「そ、それは……」
しほ「……もし倒れたのがあなたなら、私もゆっくり休むように言えるわ。でも、まほは違う。まほは西住流の道を歩む者、西住の名を背負う者……西住流に、戦車道に背を向けたあなたの立ち入っていい話ではありません」
みほ「……でも!私は……私はお姉ちゃんの妹だもん!お姉ちゃんが無茶しようとしてるのを、黙って見てられないよ!」
しほ「なら、あなたがまほの代わりにチームを率いるというの?」
まほ「みほ……もういい。ありがとう」
みほ「お姉ちゃん……」
まほ「お母様、ご心配をおかけしました……私はけっして退きません。必ず、大洗を倒して優勝を勝ち取ってみせます」
しほ「ええ。それでこそ西住流よ。……決勝戦、期待しているわ」
みほ(そんな、そんなのって……)
~~~~
沙織「今日は麻子、ちゃんと起きられたんだね」
麻子「戦車道を始めてから、低血圧が少しは良くなったからな……」
優花里「練習試合は久しぶりでありますね!」
華「会長はあのように言っていましたが、いったい相手はどちらの学校なのでしょう……」
優花里「相手はわかりませんが、廃校がかかっていない試合、とても楽しみです!」
沙織「あ、あれ!見て!聖グロリアーナの学園艦だよ!相変わらず大きい!」
華「対戦相手って、聖グロリアーナだったんですね」
ダージリン「みなさん、ごきげんよう。パンツァージャケットでお会いするのは久しぶりね」
杏「久しぶりー。急な練習試合、受けてくれてありがとう」
ダージリン「いえ。決勝で再戦、という約束を守れなかったのですもの。……決勝進出、心からお祝いするわ」
沙織(もー、ダージリンさんも教えてくれればよかったのにー。わざわざ秘密にすることでもないじゃん……え?あれは……)
ケイ「ヘイ、アンジー!」
杏「おー、おケイ」
ケイ「今日はよろしく頼むわ!サンダースの本当の力、見せちゃうよ!」
杏「20両、決勝仕様のサンダースとの試合、楽しみにしてるよ」
沙織(ケイさんまで!?ってことは、サンダースとも戦うの!?)
カチューシャ「ふーん。小さいけど、けっこう良さそうな町じゃない!」
杏「やーやーカチューシャ、準決勝ぶり。干しイモあげようか?」
カチューシャ「……そ、そうやってまただますつもりでしょ!その手には乗らないんだからね!」
杏「そっかー、残念だなー。すっごく美味しいのに」
カチューシャ「……やっぱりもらってあげてもいいわ!」
沙織(カチューシャさんまで!)
桃「ということで、各車単位での練度向上及び、実戦経験の差を少しでも埋めるために、急ではあるがこの二日間、各校とみっちり練習試合を行う!」
杏「しかし、よく協会から許可が出たね。こんだけ試合したら、賠償やらなんやら大変なことになるんじゃない?」
ケイ「Dont'worry!心配はいらないわ!サンダースに聖グロリアーナ、プラウダ!これだけの強豪校が付いてるんだから、この程度なんてことないもの!」
カチューシャ「私たちに勝った大洗が無様に負けちゃったら、プラウダの面目も丸つぶれになっちゃうわ!あなたたちには勝ってもらわないと困るだけよ!」
ダージリン「そういうこと。こんな時くらいOG会の力を使わせてもらわないとね」
優花里「す、すごい……まるで戦車の博覧会であります……」
沙織「う、うん……あれ?でもどこか忘れてるような……」
アンチョビ「待て待てー!このアンツィオを忘れてもらっては困るぞ!」
杏「おー、チョビ子」
アンチョビ「アンチョビだ!」
桃「ああ。各校の食事を用意してくれるんだったな。よろしく頼む。安斎」
アンチョビ「だからア・ン・チョ・ビ!違う!試合をしに来たんだ!『マカロニ作戦・ヌォーヴォ』、覚悟しとけよ!」
杏「まー、そんなわけで皆、せっかくこうして協力してくれるんだ。連戦になるけど、頑張ろう!」
~~~~
「試合終了!サンダース大学付属高校の勝利!」
ケイ「うーん、ちょっと惜しかったね!」
~~~~
「試合終了!プラウダ高校の勝利!」
カチューシャ「これがカチューシャの本当の力よ!」
~~~~
「試合終了!聖グロリアーナ女学院の勝利!」
ダージリン「奇手も二度目からはただの悪手。そう簡単に通用するものではないわ」
~~~~
「試合終了!大洗女子学園の勝利!」
アンチョビ「だから二枚は予備だって言ったじゃないかー!」
~~~~
沙織「つ、疲れた……」
優花里「四連戦はさすがに堪えるであります……」
ねこにゃー「げ、ゲームとはぜんぜん違う……」
ももがー「ギア固すぎだっちゃ……」
ナカジマ「うーん。これが戦車道かー」
ツチヤ「次こそ、ドリフトドリフト!」
沙織「で、でも、せっかくの久しぶりの寄港、せめてアウトレットでお買い物を……」
桃「待て、どこへ行くんだ」
沙織「え?お風呂に入ったらお買い物に行こうと思って……」
ダージリン「あらあら、そういうわけにはいかないわ。車長の皆さんは、私たちと戦術のお勉強よ」
カチューシャ「カチューシャ戦術、叩き込んであげるわ!」
沙織「そ、そんなー!」
ノンナ「砲手の皆さんは、私たちと特訓です」
ナオミ「覚悟しろ。お前らには、平等に価値がない……なんてな」
優花里「ハ、ハートマン軍曹でありますか……」
ニーナ「んだば、装填手はこっちですー」
アリーナ「カーベーの装填で鍛えた腕前、みせてけるべ!」
カルパッチョ「たかちゃん、頑張ろうね!」
カエサル「ひなちゃん!うん、いっぱい教えてね!」
ペパロニ「操縦手はこっちだ!ブッ飛ばしていこうぜ!」
ツチヤ「レースなら負けないよー!」
忍「ペパロニさんって、車長じゃ……」
ペパロニ「いやーそれが、『お前がいるべき場所はこっちじゃない』なんて言われちゃってさー!」
麻子「……なるほど」
妙子「通信手は、アリサさんが教えてくれるんですね」
アリサ「……そうよ。なにか文句ある?」
優希「うーん、無線傍受はいらないですよー?」
アリサ「わかってるわよ!」
アンチョビ「よーし!特訓が終わったらアンツィオ流の宴だ!楽しみにしとけよな!」
~~~~
―――黒森峰・学園艦―――
まほ「よし。これで本日の練習は終了だ」
エリカ「隊長……過労でお倒れになったと聞きました。練習は私に任せて、隊長は試合までお休みになっていた方が……」
まほ「……エリカ、それはできない」
エリカ「なぜです!?いくら家元の期待に応えるためだからといって、隊長のお体の方がずっと大事なはずです!」
まほ「それは、違うわ」
エリカ「なら、なんでなんです!?」
まほ「あの子は……みほは、大洗の戦車道に惹かれているの」
エリカ「元副隊長が、大洗の戦車道に?」
まほ「……そう。みほが心を閉ざしたとき、西住流は何もできなかった。でも、大洗の戦車道はみほの心を開くことができた。……西住流の戦車道が壊しかけたあの子の心を救ってくれた」
エリカ「ですが、それは隊長のせいではありません!」
まほ「いいえ、私の責任よ……だって私は、西住流そのものだもの」
エリカ「ですが……それでは……」
まほ「だから、みほが惹かれる気持ちはわかるわ。……それでも、私はそれが悔しい。……私は、みほの姉だもの。みほの心が大洗の戦車道に惹かれているのが、西住流がみほを救えなかったことが、悔しくてたまらない」
エリカ「隊長……」
まほ「でも、私は……西住流は、戦って勝つこと以外に方法を知らないから。だから、私は退くことはできないの」
エリカ「……わかりました。私は隊長を支えてみせます。ですが、一つ約束してください。……本当に無理な時は、絶対に私に言う、と」
まほ「ええ。約束するわ」
エリカ「隊長。小梅たちの抜けた穴も埋まりました。戦力的には去年よりも優れているはずです……絶対に、勝ちましょう」
まほ「エリカ、ありがとう」
~~~~
桃「それでは、協力してくれた各校の面々に、礼!」
「ありがとうございました!」
杏「皆、本当にありがとう。おかげで黒森峰とも、何とか戦えそうだよ」
ダージリン「いえいえ。皆さん本当に真剣で、こちらも教えがいがありましたわ」
カチューシャ「いい!?あなたたちはカチューシャに勝ったんだから、カチューシャに負けた黒森峰に負けるはずがないのよ!」
ケイ「ベストを尽くせば、きっと結果は付いてくるわ!GO AHEAD!」
アンチョビ「……すまない。一ついいだろうか」
杏「んー?チョビ?どうかしたの?」
アンチョビ「この二日間お前たちを見てきて思ったんだが……お前たち、何か次の試合に負けられない、特別な事情があるんじゃないか?」
杏「……鋭いね、チョビ」
アンチョビ「安心しろ。その事情が何なのかを教えてくれとは言わない」
杏「そっか、ありがとう」
アンチョビ「だが、これだけは言っておく。……楽しむことを、忘れないでくれ。きっとそれが、お前たちの戦車道の根っ子なんだと思う。勝つことを最優先にするのは、黒森峰の専売特許だ。……だから、きっとそれじゃ勝てない。お前たちが勝てるとしたら、お前たちの戦車道を貫いた先に答えはあるはずなんだ」
桃「……だが、それで負ければ!」
ダージリン「安心なさい。あなたたちには、私たちがついています。私たちが力を合わせれば、大抵のことは叶えてみせるわ。だから、私たちの心を掴んだあなたたちの戦車道を、決勝でも見せつけてあげなさい」
桃「私たちの、戦車道……」
アンチョビ「長々としゃべって済まなかったな!それじゃ、決勝でも頑張ってくれよ!」
桃「ああ!ありがとう!」
杏「よし、皆!大洗、ファイトー!」
「おー!」
本日は以上です。
次は明後日にはなんとか……
>>397訂正
~~~~
―――黒森峰・学園艦―――
まほ「よし。これで本日の練習は終了だ」
エリカ「隊長……過労でお倒れになったと聞きました。練習は私に任せて、隊長は試合までお休みになっていた方が……」
まほ「……エリカ、それはできない」
エリカ「なぜです!?いくらお母様の期待に応えるためだからといって、隊長のお体の方がずっと大事なはずです!」
まほ「それは、違うわ」
エリカ「なら、なんでなんです!?」
本日21時より投下いたします。
まほ「厚い皮膚より速い足だ」
なおT-34より速い戦車はない模様。
~~~~
蝶野「両チーム、隊長副隊長、前へ!」
エリカ「弱小校のくせに、よくこんな不似合いの場所まで勝ち上がってきたわね」
杏「すごいでしょ。もしここで負けても、『黒森峰と同じ』準優勝だしね」
エリカ「なんですって!」
桃「会長も私も三年生だ。そちらは目上に対する礼儀は教えていないのか?」
まほ「エリカ、よせ。……すまない。失礼した」
蝶野「本日の審判長、蝶野亜美です。お願いします」
杏「教官、久しぶりですねー。今日はどうぞよろしくお願いします」
蝶野「あら。あれっきり呼んでくれないんだもの、こっちは待ってたのに」
杏「いやー、すいません。理事長がカンカンになっちゃってて」
蝶野「そうなの?」
杏「今日は教官に教わったこと全部出しきりますから、判定のほうもどうかよろしく……なんちゃって」
蝶野「あはは!それはできないわ。判定は厳正、公平よ!……西住師範のお嬢様も、お久しぶりですね。ご活躍、聞き及んでます」
まほ「ええ。ありがとうございます」
蝶野「それじゃ、フェアプレーでね。……両校、あいさつ!」
「おねがいします!」
蝶野「では、試合開始地点に移動。お互いの健闘を祈るわ」
まほ「行くぞ」
エリカ「はい……たまたまここまで来れたからって、いい気にならないでね」
杏「いやー、蝶野教官の指導があったからだよ。やっぱ西住流ってすごいねぇ」
エリカ「あなたたちが西住流を語らないで!」
杏「そっちの隊長、具合悪そうだったけど大丈夫?……森の中を走るとすっごく揺れるらしいから、気を付けたほうがいいかもね」
エリカ「……この重戦車編成で森なんて通るわけないじゃない」
杏「本当にそう?一応同門なんだしさ、仲良くしようよ」
エリカ「誰が同門よ!……答える義務はないわ。見てなさい、邪道は叩き潰してやる」
杏「あの反応、クロかな?」
桃「どうでしょう。牽制にはなったかと思いますが」
杏「こないだうちがやったみたいに、有利な場所につく前に正面の森をショートカットされたらたぶんそこで終わりだからね……まったく、薄氷どころかウエハースの上を歩いてるようなもんだよ」
桃「ですが、これしか勝利の道はありません」
杏「因果なもんだねぇ……」
~~~~
しほ「大洗女子学園……あの戦力でよくここまで勝ち上がったものね。……それにしても、あなたが応援に来たいと言い出すなんて」
みほ「……お姉ちゃんの応援がしたくて」
しほ「大洗の戦い方は邪道よ。でも、どこか人を引き付ける部分があるのは否定できない。高校戦車道連盟の方でもそんな声が上がっているの」
みほ「はい……他のどことも違う戦い方をする高校だと思います」
しほ「そうね。ただ、まほは邪道に負けるほど弱くないわ」
みほ(お姉ちゃん、武部さん……)
~~~~
杏「皆、ついにここまでやって来たぞー!」
「おー!」
杏「黒森峰に、勝ちたいかー!」
「おー!」
杏「廃校、阻止したいかー!」
「おー!」
杏「よーし、それじゃ頑張ろう!作戦は考え抜いてきた!あとは勝つだけだー!」
「おー!」
杏「それじゃ隊長、あとはよろしく」
桃「はっ。……いいか、私たちはついにここまで来た。正直な話、私はまだ安斎の言う『私たちの戦車道』というのが何なのかはわからない。……だが、私たちがやりたいように戦うこと、それがきっと私たちの戦車道を貫いた戦い方なんだと、私は思う……いいか、全力を尽くすぞ!」
「おー!」
~~~~
まほ「これより決勝戦だ。相手は初めて対するチームだが、けして油断はするな。……敵フラッグ車はヘッツァー、当てさえすれば勝ちだ」
エリカ(……『そっちの隊長、具合悪そうだったけど大丈夫?』)
まほ「まずは迅速に行動せよ。グデーリアンは言った。『厚い皮膚より早い足』と」
エリカ(『森の中を走るとすっごく揺れるらしいから』……もし隊長が途中で倒れれば、黒森峰は……)
エリカ「隊長、よろしいでしょうか」
まほ「エリカか。何だ」
エリカ「作戦の変更を進言します。……ショートカットは止め、森を迂回すべきです」
まほ「なぜだ?」
エリカ「はい。我々の重戦車は足回りに不安があります。無理に森を通過して、下手をすれば接敵前にヤークトティーガー、エレファントを失うことも考えられます」
まほ「……そうか」
エリカ「それに、敵も僅かなりとも西住流を学んでいるようです。もしかすれば、奇襲を読んでいる可能性があります。……戦力的にはこっちが圧倒的に勝っているのですから、正攻法で問題はないかと考えます」
まほ「……わかった。森は迂回しよう。各車、引き続き素早い行動を心掛けろ」
エリカ(これでいいはず、これで……)
~~~~
桃「全車、前進開始!」
~~~~
まほ「行くぞ!」
~~~~
沙織「こちらはあんこうチーム。207地点まであと2km。今のところ、黒森峰の姿はありません。ですが皆さん油断せず、気を引き締めていきましょう!」
梓「敵は奇襲を仕掛けてこないようですね……」
左衛門佐「鳥が飛び立っていない。森を進んでいることはないだろう」
杏「ちょっとは仕込みの効果があったってことかな?」
桃「よし!黒森峰が来る前に207の山地を要塞化する!」
~~~~
黒森峰生「敵、11時方向に確認!」
まほ「あの先は坂道だ。向こうにはポルシェティーガーがいる。足が遅いから簡単には登れまい。十分に時間があるはずだ」
沙織「黒森峰、追いついてきました!」
桃「よし!煙幕を使え!」
エリカ「忍者じゃあるまいし、こざかしいマネを!撃ち方用意!」
まほ「撃ち方やめ!……弾には限りがある。次の手を見極めてからでも遅くない」
エリカ「くそっ……逃がすもんですか!」
~~~~
ケイ「私たちの時に使った手じゃない。あれ効くのよねー……」
アリサ「弱小らしい戦い方ですね、まったく」
ケイ「あっ、煙幕晴れるわよ」
~~~~
エリカ「もうあんな所に!ポルシェティーガーを途中で分離……ここで捨て駒にする気だというの!?」
まほ「……高地に陣取る88mmは脅威だ。一時停止、射程に入らないよう警戒しつつ前進。囲んで数両で一気に撃破しろ」
エリカ「各車、急ぎなさい!」
まほ「よし、撃て!」
エリカ「了解!……なんですって!?看板!?」
まほ「……時間を稼がれたな。ほかの車両は山頂に到達している。恐らくポルシェティーガーは付近の森に伏せてあるのだろう。エリカ、足の速い数両を率いて索敵を頼む。他の車両は榴弾装填!」
まほ(要塞攻めでキングティーガーが欠けるとは……せめて小梅がいれば……)
~~~~
アンチョビ「おお!『マカロニ作戦』じゃないか!」
ペパロニ「黒森峰を騙すなんて、うちとは違いますね!」
アンチョビ「お前が何度言っても忘れちゃうからだろ!」
~~~~
まほ「全車停止」
桃「来たぞ!全車両、砲撃準備!」
まほ「よし……囲め」
桃「砲撃始め!フラッグ車の前にいる車両を狙うんだ!」
左衛門佐「やった!パンター撃破!」
エルヴィン「次!1時のラングだ!」
優花里「五十鈴殿、やりましたね!ラング撃破ですよ!」
梓「これで……18対8!」
~~~~
オレンジペコ「あの陣形は、私たちの……」
ダージリン「ええ。聖グロリアーナ直伝の防御陣形よ。黒森峰とはいえ、そう簡単に攻略はできないわ」
ダージリン(もっとも、重戦車を前面に出して本気で攻略して来たら、対抗は難しいのだけど……)
~~~~
まほ「……ヤークトティーガー、正面へ」
華「硬い……」
カエサル「これが王者の戦いか……」
典子「せっかくここまで来たのに……このままだと撃ち負ける!」
おりょう「とにかく、撃って撃って撃ちまくるしかないぜよ!」
梓「……河嶋先輩!ここから退却しましょう!」
桃「わかった!レオポンさんチーム!頼むぞ!」
~~~~
直下「よーし!このまま進んで、一気に落とすわよ!」
ホシノ「よーく狙って……それ!」
直下「うぁぁぁぁ!なに!?なんなのよぉ!」
ナカジマ「いやー、意外にうまくいくもんだねー」
~~~~
アンチョビ「おい!『マカロニ作戦・ツヴァイ』まで!……ってか、何で知ってるんだ!?極秘情報のはずだろ!?」
カルパッチョ「……ドゥーチェ、今は観戦に集中しましょう」
アンチョビ「いや、でもだな!」
カルパッチョ「観戦に集中しましょう?」
アンチョビ「あ、ああ……」
~~~~
黒森峰生「11号車、15号車!背後からヤークトティーガーに狙われているぞ!」
黒森峰生「こちら17号車!自分が……申し訳ありません!やられました!」
黒森峰生「私が……くそっ、さすが100mm、硬い!」
黒森峰生「待て!三突向かってくるぞ!」
~~~~
オレンジペコ「あんなに混乱した黒森峰を見たのは初めてです!」
ダージリン「黒森峰は隊列を組んで正確に攻撃する訓練は積んでいるけど、その分突発的な事態に対処できない」
オレンジペコ「マニュアルが崩れてパニックになっているわけですね……」
ダージリン「それに、前大会のトラブルでメンバーが入れ替わってしまった……恐らく、新メンバーにはマニュアルを叩き込むしかなかったのね」
オレンジペコ「ロイヤルタイガーを索敵に出さざるを得なかったのも影響していますね」
ダージリン「小隊長クラスの不足、これも大きな弱点の一つ。……いくらまほさんとはいえ、20両を一人で指揮するのは容易いことではないもの」
~~~~
沙織「右側がぐちゃぐちゃだよ!」
典子「突っ込みましょう!」
桃「ああ!煙幕を使いながら、あんこうを先頭に右方向へ突っ込め!」
黒森峰生「ダメです!逃げられました!」
まほ「すぐに体勢を立て直せ。エリカ、すぐに戻って来い。追撃を頼む」
エリカ「申し訳ありません!左動力系に異常、修理が完了するまで動けません!」
>>438訂正
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黒森峰生「11号車、15号車!背後からポルシェティーガーに狙われているぞ!」
黒森峰生「こちら17号車!自分が……申し訳ありません!やられました!」
黒森峰生「私が……くそっ、さすが100mm、硬い!」
黒森峰生「待て!三突向かってくるぞ!」
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優花里「渡河地点に到着しました!ここを渡れば市街地まですぐです!」
桃「よし。上流に重い戦車を配置しろ!流されるのを防ぐんだ!」
桂利奈「あれ?あ……う、動かない!」
桃「ウサギさんチーム、どうした!」
梓「え、エンストみたいです!」
優花里「危ない!」
沙織「このままだと横転しちゃう!」
麻子「モタモタしてると黒森峰が来るぞ」
沙織「だけど!」
梓「……私たちは大丈夫です!先輩たちは先に行ってください!」
あや「あとから追いかけます!」
エルヴィン「くそっ!なんてことだ!」
典子「チームメイトを放って行くなんて、できません!」
ねこにゃー「ゲ、ゲームではこんなことないのに……」
そど子「一体どうすればいいのよ!」
~~~~
しほ「……エンジントラブルのようね」
みほ「そんな……」
しほ「こうなってしまったら、M3は切り捨てるしかない。勝利のためには、犠牲が不可欠なの」
みほ「……………………」
しほ「戦車内は安全、スタッフが来るのを待てばいい。……それだけの話よ」
みほ「で、でも……」
しほ「市街地にたどり着く以外に大洗が勝つ方法はないわ。だから、それが正しい選択よ。……弱小とはいえ、ここまでたどり着いたチーム。当然そんなことは理解しているはず」
みほ(やっぱり、そう……なの……?)
~~~~
沙織「桃ちゃん先輩!助けに行きましょう!」
桃「……わかっているのか?これで追いつかれれば、廃校なんだぞ?」
沙織「わかってます!……でも!私たちは助けたいんです!桃ちゃん先輩も言ったじゃないですか!『私たちのやりたいようにやるのが、私たちの戦車道だ』って!」
桃「他の者も、同じ意見か?」
「……はい!」
桃「わかった!ウサギさんチームを助ける!秋山!方法は任せるぞ」
優花里「了解です!……Ⅳ号のワイヤーを使って、我々の戦車でM3を牽引します!一旦車外に出てください!」
~~~~
エリカ「弱小のくせに、甘いことしてるわね……これじゃまるで、あの時と一緒じゃない……」
まほ「……ああ、そうだな」
エリカ「隊長、丘を越えたら川に沈めてやりましょう……勝って隊長の……、私たちの戦車道が間違っていなかったことを証明するんです!」
まほ「ああ。……それが、西住流だ」
~~~~
優花里「ワイヤーの先端を投げます!受け取ったら自分たちの戦車にくくり付けて、次の戦車に投げてください!では、いきます!」
そど子「重たいわね……でも、仲間を見捨てて進むような風紀を乱す行い、するわけにはいかないわ!」
エルヴィン「私は隊員だ。指揮官の命令に従う……それが仲間を救う命令の場合は、特にな!」
ねこにゃー「お、重い……でも、これがゲームじゃない、本物の戦車道!」
梓「先輩たち……ありがとうございます!……それっ!」
典子「こんなピンチになっても、皆でだったらきっと……そう!根性で!」
柚子「よし!……こっちは結び終わったよ!」
ナカジマ「こっちもオッケー……レオポン、ばっちり!」
沙織「皆、敵集団来てるよ!ウサギさんチームを援護して!」
~~~~
しほ「なるほど。大洗もそういう選択をするの……万に一つの勝利も、消えてしまったわね」
みほ「ま、まだ……まだ勝負は終わってません!」
しほ「いいえ、終わったわ」
みほ「でも、市街地までたどり着ければ……」
しほ「たとえたどり着いたところで、あのような邪道のチームにまほが敗れることなどありえないわ」
みほ「そんな……」
しほ「みほ、いい加減理解しなさい。『戦車道にまぐれなし』。それを最優先に見据え、そこに向かって何を捨ててでも突き進むからこそ得られる。勝利とは、それほど重いものなのよ」
みほ「はい……」
しほ「もうあなたにそのような生き方を強いるつもりはありません。でも、西住の名を背負って戦車道をするというのは、そういうことなの」
みほ(皆さん、どうか……)
~~~~
梓「M3、準備終わりました!」
桃「よし、前進開始!渡河を再開しろ!」
桂利奈「うぅ……動いてー……やった!」
沙織「みんな!うさぎさんチーム、動き出したよ!」
エリカ「とらえた!砲撃開始!……ああもう!惜しいところで!」
まほ「おそらく、市街地か……」
~~~~
桃「よし、この橋を渡れば市街地まですぐだ!全車、いくぞ!」
杏「……みんな、こんな時だけど、いや、こんな時だからこそ聞いてほしい」
梓「会長?」
おりょう「何ぜよ?」
杏「実はさっき、どっちにするか決められなかった……廃校と天秤にかけて、少し迷っちゃったんだ。でも、皆はすぐにうさぎさんチームを助けに行くことを決めてくれた……みんな、ありがとう」
典子「そんなの、当たり前ですよ!」
沙織「正しいとか、間違ってたとか、そんなんじゃありません。みんなが助けたかったから、助けた。……それでいいじゃないですか」
杏「ありがとう。……みんながうちの生徒で、本当によかった。たとえ勝っても負けても、大洗女子学園の生徒会長として、そのことを誇りに思う。……廃校、絶対に阻止しようね」
本日は以上です。
次でおそらく最終です。
最弱のチームとは、
・アンツィオの乗員
・黒森峰の車長
・知波単の隊長
ではなかろうか。
本日21時より投下いたします。
予定通り21時より投下します。
まとめサイトに転載する際は、
>>70-77→>>88→91
>>197、>>198→重複
>>226→>>229
>>397→>>414
>>438→>>443
の訂正をお願いいたします。
>>88-91です
~~~~
エリカ「市街地へ急げ!」
典子「黒森峰、あと三分で到着します!」
桃「わかった!各車、所定の位置への移動は完了したな?」
エルヴィン「カバさんチーム、OKだ」
梓「M3、大丈夫です!」
典子「89式、すぐに向かいます!」
杏「全車準備完了、何とか間に合ったかぁ」
桃「よし。フラッグ車を囮にすれば、黒森峰は間違いなくこっちを追ってくる」
杏「それが西住流、らしいからね」
優花里「市街地に誘い込んで、少しずつ戦力を削る。この作戦は、アリクイさんチームにかかっています」
ねこにゃー「が……がんばります!」
典子「根性だよ、根性!」
沙織「猫田さん、がんばって!」
ねこにゃー「は、はひっ!」
エルヴィン「互いの位置の把握が肝だ。各車、情報を密にしてくれ」
典子「黒森峰、市街地に到着しました!」
桃「よし!作戦開始!」
黒森峰生「敵発見!ヘッツァーとポルシェティーガー、最後尾にB1!路地へ入っていきます!」
まほ「追え。逃がすな」
杏「よし、追ってきたね……」
エルヴィン「401を左折、その後402を右折してくれ」
柚子「了解!」
まほ「キングティーガー、パンター2両、正面ブロックを迂回して右に進め」
エルヴィン「そのまま直進すれば挟み撃ちにされる。一つ先の角を左だ」
エリカ「そんな!いない!?」
まほ「……分散してフラッグ車を捜せ。大通りに出ることはないはずだ」
典子「敵、分散しました!」
エルヴィン「了解。ラングが412を直進中……Ⅳ号、M3!こっちで敵正面の建物を崩す!瓦礫で足を止めたところを背後から撃て!」
梓「了解しました!」
沙織「足が止まった……華、撃って!」
エリカ「12号車撃破!?いきなり王面の建物が崩壊した……?」
まほ「恐らく、線路を挟んだところにあるあれだ」
エリカ「あれは……立体駐車場?本当に小賢しい……」
まほ「ああ。あそこに何両か置いてこっちの動きを見張っている」
エリカ「では、砲撃で黙らせれば……」
まほ「いや。この距離で正確に敵車両を狙うのは不可能だろう……まるでトーチカだ」
黒森峰生「すいません!敵フラッグ車、見失いました!」
ねこにゃー「えーと……敵は建物で見えなくなっちゃったけど、398から394の辺りにいると思います……」
典子「了解!……敵発見!415方面に直進中!」
ももがー「さっすがねこにゃー氏ナリ!」
ぴよたん「芋砂の鏡ぞな!」
エルヴィン「ふむ……とすると、えー、ここを直進だから……」
カエサル「Ⅳ号はこのまま直進……か?」
おりょう「M3はここを迂回すればいけるはずぜよ」
エルヴィン「よし。Ⅳ号直進、M3は414を右折してくれ。敵の側面を突ける」
エリカ「今度は13号車撃破……隊長!」
まほ「エリカ。別動隊を率いて駐車場の攻略に向かえ」
エリカ「お言葉ですが、一時ここから離れたほうが!」
まほ「西住流に敵に背を向けるという選択肢はない」
典子「黒森峰、ティーガーⅡ、ヤークトパンター、パンター三両を本隊から分けました。駐車場に向かってます!」
杏「さすがに、戦力の逐次投入をしてくれるほど甘い相手じゃないかぁ……」
優花里「はい。この戦力に手を出せば、我々の方が返り討ちにあってしまいます……」
エルヴィン「……そうか。では、最後の作戦だな」
優花里「敵戦力の多くは駐車場に誘導できました。あとは後続のエレファントやヤークトティーガーをどうにかできれば……」
梓「後続の方、私たちに任せてもらっていいですか?」
桃「ああ。任せた!」
エルヴィン「頼んだぞ、みんな!」
ねこにゃー「お、応援してます!」
桃「泣いても笑っても、これが最後だ!」
~~~~
黒森峰生「敵発見!フラッグ車です!」
まほ(フラッグ車単独……罠だな)
まほ「……追うぞ。捕まえて決着を付ける」
まほ(なら、その罠ごと正面から打ち破るだけだ)
~~~~
梓「最後尾発見、準備いい?」
黒森峰生「こちらエレファント!M3にやられました!」
~~~~
杏「よしよし……敵フラッグ車、先頭で付いてきてくれてる……小山!狭い道だけど、なるべく左右に動いて、的を絞らせないでね!」
柚子「はいっ!」
まほ「フラッグ車だけを狙え!」
~~~~
あや「128mm超怖いんだけど!」
梓「合図ですぐ左に曲がって!一か八かだけど……」
~~~~
梓「すいません!うさぎチームやられました!あとは先輩たち、よろしくお願いします!」
~~~~
エルヴィン「我らの」
カエサル「歴史に……」
左衛門佐「今」
おりょう「幕が下りた……」
ねこにゃー「わ、我が」
ももがー「生涯に……」
ぴよたん「一片の悔いなし……アル」
ねこにゃー「ぴよたん氏、どっちですか……」
エリカ「隊長!駐車場の制圧完了しました!すぐそちらに合流します!待っていてください!」
~~~~
杏「まずいね……駐車場が落ちちゃったよ……」
桃「まだか!?まだ準備は終わらないのか!?」
杏「かーしま、待つのも作戦のうち、だよ!」
ナカジマ「こちらレオポン!373に到着!」
沙織「あんこうも到着しました!」
桃「よし!我々も373に向かうぞ!」
まほ(ヘッツァーの進行方向が変わった?……大通りに誘導しようとしているな……待ち伏せか)
桃「大通りに出るぞ!」
まほ「路地を抜けた直後の攻撃が予想される!抜けたらすぐに旋回、2時の角度で受けろ!」
桃「よし!今だ!」
華「発射!」
ホシノ「発射!」
まほ(外した?……違うな。狙いは最初から後続の車両か)
そど子「今よ!」
典子「アターック!」
黒森峰生「た、隊長!B1と89式が邪魔で後退できません!」
典子「根性で押せー!」
まほ「パンツァーカイルの最後尾はラング。それを利用したか」
杏「うん。どうせフラッグ車は待ち伏せを読んでるだろうからね。これで後続の前後はふさいだ。しばらくは援軍も来れないでしょ」
まほ「……西住流に逃げるという道はない。ここでフラッグ車を落とす」
~~~~
しほ「なるほど。これを狙っていたのね」
みほ「ポルシェティーガー、Ⅳ号、ヘッツァー……」
しほ「性能で勝っているとはいえ、一対三。うまくこの状況に持ち込んだと言わざるを得ないわ」
~~~~
沙織「あんこうチーム、次弾装填しました!」
スズキ「レオポンも完了!」
優花里「国際強化選手、西住まほ殿のティーガー……」
麻子「Ⅳ号じゃ側面か後方に回らないと倒せないぞ」
華「ですが、回り込んでいただけたら必ず当ててみせます」
沙織「みんな、行こう!」
まほ「……難しい状況だが、ここを乗り越えれば優勝だ。行くぞ」
~~~~
ダージリン「この状況に追い込まれた。いえ、どちらも狙っていたのかしら」
オレンジペコ「三対一……どちらが勝つのでしょう……」
ダージリン「それはわからないわ。でも、ただ一つ言えること……土壇場を乗り切るのは勇猛さじゃないわ。冷静な計算の上に立った捨て身の精神よ」
~~~~
ホシノ「発射!」
まほ「撃て!」
まほ(正面にポルシェティーガー、Ⅳ号。ヘッツァーはポルシェティーガーの背後に隠れているか)
ナカジマ「効っくー……レオポン、まだまだいけます!」
まほ(ヘッツァーを狙うには側面から回り込む必要がある……それにはⅣ号とポルシェティーガーの間を抜けないとならない)
沙織「発射!……ダメ、やっぱ正面からじゃ効かない!」
桃「あんこう!ティーガーの後方に回り込め!」
沙織「桃ちゃん隊長!?でも、隙間が空いたら向こうもレオポンを回り込んできますよ!?」
ホシノ「すいません、さすがにまだ動いてる的に当てるのは……」
杏「わかってる。こっちでティーガーの動きを止めるから、あんこうが後ろからの攻撃で決めて」
沙織「わかりました。麻子、全速力でお願い」
麻子「履帯切れるぞ」
沙織「大丈夫。ここで決めなきゃ、どうせ同じだもん」
華「みんなの想いを込めた一撃……当ててみせます」
沙織「わかった。……前進!」
黒森峰生「Ⅳ号、動きました!」
まほ「ポルシェティーガーとの間を抜けろ!PANZER VOR!」
~~~~
しほ「この攻防で最後ね」
みほ(お姉ちゃん、沙織さん……)
~~~~
まほ「今だ!ヘッツァーを撃て!」
杏「小山、今だよ!」
柚子「はい!」
杏「とっつげきー!」
~~~~
カチューシャ「ヘッツァーで直接体当たり!?」
ノンナ「車高の低さを利用しましたね。あれではティーガーの右履帯はもう……」
~~~~
沙織「華!今だよ!」
華「はい。……これで決めます」
黒森峰生「後方にⅣ号!」
~~~~
みほ「……お姉ちゃん!」
~~~~
まほ(……みほ!)
まほ「後ろに構うな!ヘッツァーを狙え!」
まほ「発射!」
華「……発射!」
~~~~
蝶野「大洗女子学園フラッグ車、走行不能!……よって、黒森峰女学園の勝利!」
~~~~
沙織「そんな……そんな、ここまで来て、負けちゃったの?」
優花里「優勝できなかった……廃校、ですか?」
華「申し訳ありません。私がもっと早く狙いをつけられていれば……」
麻子「……やれるだけのことはやった。後は受け入れるしかない……のか?」
杏「あ、あはは……そっか、やっぱり無理かぁ……」
柚子「これで、大洗女子学園は……」
桃「そんな……誤審だ!そうに決まっている!」
杏「かーしま。……届かなかったんだよ、私たちは」
桃「か、かいちょお、かいぢょおぉぉぉ……」
杏「泣くなよかーしま……そんなに泣かれちゃったら、私が泣けないじゃんか……」
~~~~
まほ「……いい試合だった。戦術レベルでは、完全に我々が敗北していた」
杏「まっさか、三対一でも負けちゃうとはね……」
まほ「紙一重の勝利だった。来年はもっといい試合をしよう」
杏「来年、か……ごめん。それはできない」
まほ「なぜだ?準優勝を果たしたとなれば、大洗も強豪の一角だろう」
杏「うちさ、今年度で廃校になっちゃうんだ」
まほ「……そうか。それは決定事項なのか?」
杏「うん。……この大会で優勝すれば、廃校を取り下げるって文部科学省と約束してたんだけどさ、……あとちょっと、足りなかったよ」
まほ「諦めるのか?」
杏「えっ?」
まほ「約束をしていた、叶わなかった。そこで諦めるのか?」
杏「だって、もう方法が……!」
まほ「方法を考えるよりも先に、勝利のために何が何でも突き進む。少なくとも、我々ならばそうする」
杏「西住流……」
まほ「部外者が差し出がましいことを言ってすまない。だが、私は来年も、大洗と黒森峰の戦いが見たい」
杏「そっか……黒森峰の隊長にここまで言われちゃったら、諦めるわけにはいかないかな……」
まほ「ああ。……私の妹も、大洗のファンなんだ」
杏「あーあ。まさか向こうの隊長に言われちゃうなんて、我ながららしくないなぁ」
桃「……かいぢょぉ?」
柚子「会長……」
杏「まだ私たちは終わってない。本当に校舎から追い出されたわけでもなければ、学園艦を奪われたわけでもない。小山、かーしま……涙を止めるんだ。まだ泣くのも、諦めるのも早すぎるんだよ。もう一度、皆の心を奮い立たせなきゃ」
~~~~
オレンジペコ「大洗女子、本当に惜しい戦いでしたね……」
ダージリン「ええ。ねえ、ペコ。こんな言葉を知ってる?『途中であきらめれば、得るものより失うものの方が、ずっと多くなってしまう』」
オレンジペコ「ルイ・アームストロング……」
ダージリン「彼女たちがここで諦めさえしなければ、まだ失わなくてすむ……かもしれないわ」
オレンジペコ「ダージリン様?もう帰るんですか?」
ダージリン「涙に濡れた顔を見に行くほど、悪趣味ではないわ……それに、早く学園艦に帰ってOG会に連絡を付けなくてはならないもの」
オレンジペコ「OG会に?どうかなさったんですか?」
ダージリン「ええ。弱きを助け、強きをくじく。騎士道精神をお持ちの方々は、それを存分に発揮する機会を待ち望んでいるとは思わない?」
~~~~
みほ「お姉ちゃん!」
まほ「みほ……お母様」
しほ「まほ。優勝、ご苦労だったわね」
まほ「ええ。ありがとうございます」
みほ「お姉ちゃん……すごかった。カッコよかった」
まほ「ありがとう。みほの応援のおかげだ」
しほ「西住流らしい戦いだった。……反省材料は多いけれど、見事だったわ」
まほ「……お母様。それは違います」
しほ「違う……どういうことかしら」
まほ「私は、この試合で自分の戦車道を見つけました」
みほ「お姉ちゃんの、戦車道?」
まほ「ああ。最後の攻防の時、私には確かにみほの声が聞こえていた。だから勝つことができた。……みほがチームメイトを助けに行った時も、私がもっと強ければあんなことにはなっていなかった」
みほ「お姉ちゃん……」
まほ「私は、姉としてみほに強い姿を見せるために勝つ。……それが、私の戦車道です。お母様」
しほ「……そう。それが、あなた自身が勝利に向かって進む理由、というわけね」
まほ「みほ……また、戦車道を始める気はない?」
みほ「それは……ごめんなさい。でも、もう少し考えて、自分の中で答えが出たらまた始めたい。……私もお姉ちゃんみたいに、自分の道を見つけたいから」
まほ「わかったわ……その時まで、私は勝ち続ける」
みほ「うん……でも、無茶だけはしないでね」
まほ「お母様。優勝のごほうびというわけではありませんが、一つわがままを聞いていただけないでしょうか」
しほ「あなたが?珍しいわね。何?」
まほ「大洗女子学園の廃校を止めるために、力を貸してください」
みほ「大洗が、廃校……?」
まほ「……この大会で優勝すれば廃校を取り下げる約束があったと、向こうの生徒会長に聞きました」
しほ「学園艦統廃合の話が進んでいたとは聞いていたわ。……そう、大洗のことだったの」
まほ「大洗はたしかに敗れました。ですが、彼女たちの実力と、未経験者だけでここまでたどり着いた努力はご覧になっていたはずです。……どうか、力をお貸しください」
しほ「いいえ。それはできません」
まほ「なぜです。彼女たちの存在は、高校戦車道連盟にとっても有益なはずです!」
しほ「ええ。その通りね。でも、協力してほしいのなら自分たちで頼みに来るのが筋、と言うものよ。向こうの代表に伝えなさい。『話を聞くくらいはしてあげる』とね」
まほ「お母様!」
しほ「あくまで話を聞くだけ。それもあなたに頼まれたから仕方なく、よ」
~~~~
杏「みんな!顔を上げて、話を聞いてほしい!」
あや「かいちょう……でも、私たちの学校、なくなっちゃうんですよ……?」
典子「バレー部復活も叶わないまま……」
左衛門佐「無念だ……」
杏「そう。このままだと、今年度末には廃校になる……だけど、まだ廃校になったわけじゃない」
麻子「優勝できなければ廃校、と約束したんだろう?」
杏「いいや、違う……私たちは『優勝すれば廃校にしない』と約束したんだ。『優勝しなければ廃校にする』んじゃない」
桃「そもそも廃校の理由の一つは、これといった実績がないこと。……全国大会準優勝、実績としては十分のはずだ!」
優花里「じゃ、じゃあ、まだ終わりじゃないってことですか?」
あけび「ドゥースに突入、ですか!?」
杏「それは、まだわからない。細い道かもしれない。いや、それどころか道ですらないのかもしれない……でも、まだ終わってない。生徒会は、絶対にあきらめない」
梓「私も、あきらめたくありません!……それに、戦車なら道じゃないところでも進んでいけます!」
杏「たはは、澤ちゃん、こりゃ座布団一枚だね」
優季「でも、澤ちゃんの言う通りです!」
杏「みんなに言ったよね?『泣いて過ごすよりも、希望にすがりたかった』って。……その気持ちはまだ変わってない。どれだけの希望を皆に見せられるのかはわからないけど、泣いて過ごすのが嫌なら、諦めないでもう一度付いてきてほしい」
>>518訂正
杏「それは、まだわからない。細い道かもしれない。いや、それどころか道ですらないのかもしれない……でも、まだ終わってない。生徒会は、絶対にあきらめない」
梓「私も、あきらめたくありません!……それに、戦車なら道じゃないところでも進んでいけます!」
杏「たはは、澤ちゃん、こりゃ座布団一枚だね」
優季「でも、梓の言う通りです!」
杏「みんなに言ったよね?『泣いて過ごすよりも、希望にすがりたかった』って。……その気持ちはまだ変わってない。どれだけの希望を皆に見せられるのかはわからないけど、泣いて過ごすのが嫌なら、諦めないでもう一度付いてきてほしい」
沙織「……私!付いてきます!皆と離れ離れなんて、絶対にいやだもん!」
エルヴィン「ああ!何ができるかはわからないが、できる限りのことはしよう!」
典子「根性だよ!みんな!」
華「野に咲く花は、踏まれてもけして枯れません。なら、私たちもきっと!」
ねこにゃー「コ、コンティニュー……」
カエサル「大会を経て隊長も少しは頼りがいが出てきたからな!頼むぞ、桃ちゃん隊長!」
おりょう「桃ちゃん隊長、任せるぜよ!」
左衛門佐「一蓮托生、でござるな。桃ちゃん隊長」
桃「あー!だから桃ちゃんと言うな!とにかく!今大会、素晴らしい戦いぶりだった!各員の奮闘に感謝する!……皆、よく頑張った!行くぞ!せーの!」
「PANZER VOR!」
以上で完結です。
お読みいただき、まことにありがとうございました。
まとめに転載の際は>>468の訂正をお願いします。
劇場版は……もう少し時間を……
やるとすれば別スレで
ちなみに小梅は普通科でエリカとみほの取り合いをしたりしてます。
小梅「みほさん!お昼は私と食べるんですよね!」
エリカ「あら。私のハンバーグが食べたいって言ってたわよね」
みほ「え、えっと……お姉ちゃんに呼ばれてるから……」
こんな感じ。
まとめサイトのコメントを見て気付く
後半大洗の戦い方南海の頃のノムさんだ…
お久しぶりです。
10月中には劇場版編を開始します。
大洗女子の出番は若干少なくなりそうです。
続きで劇場版が来ますか!
みほだけでなく小梅ちゃんも戦車道に復帰して欲しいですねぇ
あとみほと小梅の絡みも楽しみですw
>>564
マシマシです
本日21時より新スレにて投下いたします。
続編はみほの復活がメインになります。
次スレです。
【ガルパン】西住みほ「あの……私、戦車道、やめます……」【劇場版】
【ガルパン】西住みほ「あの……私、戦車道、やめます……」【劇場版】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476446529/)
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