面倒・・・・・・！！

――某鎮守府

提督「無駄だ・・・！　うんざり・・・・！」

提督「やれ甲板ニーソだの和服だの・・・・・・！」

提督「スクール水着だの・・・！」

提督「どいつもこいつも・・・・・」

提督「艦種毎に統一しろっ・・・！　じゃないと面倒だろうが・・・・！」

提督「破損時の書類作成が・・・・・！」

提督「しかもよりによって・・・・・・」

提督「『提督指定』だと・・・・・・？」

提督「ふざけろっ・・・！　誰が選ぶかっ・・・あんな格好・・・！」

提督「本物が見たいっ・・・・」

提督「一糸乱れぬ統一された制服を・・・・それこそが軍の理想・・・真理・・・・！」

提督「そうは思わないか・・・？　なぁ・・・？　山城よ・・・・・・！」

山城「はい・・・思います・・・・・」

提督「ククク・・・ならば・・・・」

提督「企画しろ・・・！　血沸き肉躍る・・・私の細胞を活性化させるような・・・」

提督「艦娘たちの新たな制服・・・！」



ニューフェイス・・・・・・！



山城「・・・・・・はい」

山城「承知しました・・・」

これは・・・

大勢の艦娘を束ねる高レベル艦でありながら

暴君・・・クソ提督のご機嫌を常に・・・最も身近で気にしなければならない

いわば中間管理職・・・

戦艦と航空母艦の中間に位置する女・・・

山城（くっ・・・なんてこと・・・）

山城（水泡・・・霧散・・・・・・！　またしても・・・）




山城（姉様との食事が・・・パァ・・・！）




航空戦艦山城の苦悩と葛藤の物語である

鎮守府　第二作戦会議室――

山城「えー・・・。と・・・いうわけで始動よ・・・新プロジェクト・・・・・・！」


　　　ざわ・・・
　　　　　　　　　　　　ざわ・・・


山城「提督を喜ばせる悪魔的な制服・・・そのアイデア・・・！」

山城「それを募るための場・・・だけど・・・それは後・・・！」

山城「その前に・・・まず・・・自己紹介・・・・・・！」

　ざわ・・・
　　　　　　　　・・・え？


山城「もちろん・・・この中に戦友の名前を覚えていない者はいない・・・」

山城「いないけど・・・必要・・・！　新プロジェクトを円滑に進めるため・・・新たな結束は・・・！」

山城「互いをもっと知るために・・・名前だけではなく・・・趣味や特技等々・・・」

山城「自己紹介・・・！　順繰りに・・・！」

山城「まずはあなたから・・・」

　「えっ・・・」

山城「さぁ・・・！」

　「あっ・・・ハ、ハイ・・・・・・！」

山城（これでOK・・・！　ノープロブレム・・・）

否・・・！

実は山城、この時点でちゃんと覚えていなかった・・・戦友たち・・・！

山城の言ったことは半ば建前・・・偽りの理由・・・！

いや正確に言えば・・・戦友の名前は朧気ながら憶えている・・・・・

が・・・・！　一致しないのだっ・・・顔と名前が・・・・・・！

自分に近しい戦艦ならまだしも名前も顔も似ている姉妹艦が並ぶと・・・

もう無理っ・・・判別不可能・・・・・！

しかしそれも当然のこと・・・

山城は基本的に姉様大好き娘・・・故に興味なし・・・他の艦娘には・・・一切っ・・・！

提督と姉様、西村艦隊・・・そしてそれ以外・・・

超極端っ・・・・・・スモールワールドな女・・・！

山城（ともあれ問題ないわ・・・今ここで名前を憶えて・・・顔を合致・・・・・！）

山城（セットで覚えれば問題ない・・・）

筑摩「と・・・利根型二番艦・・・・・筑摩と申します・・・趣味は・・・間宮のスイーツを制覇することです・・・」

山城「筑摩・・・筑摩・・・」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ……

山城「あなたは筑摩ね・・・・・はい・・・・次・・・・・！」

「あぁ・・・・」

グラーフ「Graf Zeppelin級航空母艦一番艦、Graf Zeppelinだ・・・」

山城「・・・・・・あっ・・・？」ざわ・・・

グラーフ「趣味は・・・間宮のスイーツを・・・・」

山城「待って・・・！」

山城「・・・・・・」

山城「今・・・なんか・・・」

山城「二人・・・・・・！！」

山城「二人分くらい・・・名前を言わなかった・・・？　グローブだのチャップリンだの・・まるで・・・・」

山城「お笑いコンビ名みたいな・・・・・」

グラーフ「む・・いや・・・！」

グラーフ「『伯爵』という意味のグラーフ＋名前がツェッペリンでGraf Zeppelinだ・・・！」


　　　ざわ・・・
　　　　　　　　　ざわ・・・


山城（ぐっ・・・・何？　なんなの・・・・・！？）

山城（邪魔・・・・・！）

山城（ただでさえ沢山の名前を憶えなきゃいけないってときに・・・なんて面倒くさい名前・・・）

山城（ふん・・・でも・・まぁ・・・・）

山城（グラーフ・ツェッペリン・・・ここまでくると逆に覚えやすいかもしれないわね・・・）

実は・・・・・・

鎮守府の提督は書類仕事メインゆえに・・・そこまで艦娘の名前をいちいち覚える必要はない

しかしその下・・・・艦娘として実戦にも出る山城は別・・・・！

多数の艦娘を管理統率する立場であるため・・・・・

提督のようにぞんざいな扱いはできない・・・むしろ・・・・・

突如として背後から撃たれぬよう信頼を勝ち取ること・・・本当は必要不可欠・・・・・・！

だから記憶・・・・・！

テスト前日に一夜漬けをする学生のように繰り返す・・・面倒な名前も黙って記憶する山城・・・・・・！

山城「次っ・・！」

「はい・・・」

三隈「ごきげんよう・・・三隈です。趣味は間宮のスイーツを制覇することです・・・よろしくお願いしますわ・・・」

山城（三隈・・・みくま・・・）

山城（よし・・・・・こういう普通の名前なら・・・・あ）

いやっ・・・！　まずい・・・・・！

山城（三隈はまずい・・・・・・！　だって最初に自己紹介した艦娘は・・・・確か・・・）



ちくま――――！！



山城（ぐっ・・・・まさかの「くま」かぶりっ・・・・・・！）

山城（なんて紛らわしい・・・・・・！）

もしかすると・・・・・・

この「くま」かぶりに気付かなければ・・・

山城は案外すんなり二人の名を記憶できていたかも知れない・・・・

気が付いてしまったがために二つの名前が混同・・・・・・！

気づきのデメリット・・・・・・！

しかし山城は気付いてしまった・・・・・・・・・・！

いや必然気付いてしまう・・！

なぜなら・・・・

山城は今まで数々の死闘を・・・気づきによって乗り越えてきた秘書艦だから・・・・・！

曲がりなりにも優秀・・・・！　優秀ゆえの気づき・・！

山城（くっ・・・・・！）

山城「・・・・・・・・・次っ・・！」

　「！！　はいっ・・・」

山城（ぐぐっ・・！　来てっ・・・・！　覚えやすい名前・・・・・・・！）

祥鳳「軽空母・・・祥鳳です・・・・・・趣味は間宮のスイーツを制覇することです・・・・・」

山城（！！　よしっ・・・・！）

山城「祥鳳・・・・あなたは祥鳳よね・・・・！　よし・・・よし・・・！」

祥鳳「は、はぁ・・・」

山城「よし・・・！　次の・・・・」



ぞっ・・・



山城（！？）

山城（えっ・・？　何・・？　今の・・・・）



不意に・・・・・

正体不明の悪寒が山城を襲った・・・・・！

何が原因かわからないが・・・・・・・・・

首筋にねっとりとまとわりつく・・・嫌な予感・・・・！

「ど、どうかしました？　山城さん・・・」

山城「えっ・・・？　いや・・・なんでもないわ・・・・・つ、次・・・お願い・・・」


しかしすぐに山城は・・・・・


「では」


その嫌な予感の正体を知る・・・・・・


「私は・・・」

鳳翔「航空母艦・・・鳳翔と申します・・・・・・・！」

山城（がっ・・・・・！）

鳳翔「趣味は・・・」

山城「あぁ～～～～～！？」ｶﾞﾀｯ

山城「鳳祥ときて・・・・・・・次が翔鳳ぅ～～～～～～！？」

山城「あるかっ・・！！　そんな偶然・・・・・・・・！！」

祥鳳「山城さん・・・・・！」

山城「あぁ・・！？」

祥鳳「その・・・逆ですっ・・・！」

祥鳳「祥鳳と・・・・・・鳳翔ですっ・・・・・・・！」

山城「知らないわっ・・・・・・！　そんなことっ・・・・・・！」

山城「いい加減にしてっ・・・・・！！　あなたたちっ・・・・・・！！」

山城「どいつもこいつも紛らわしいっ・・・・・・！！」

グラーフ「クク・・・・」

山城「あ・・・・・・？」

グラーフ「もしやそれは・・・私が・・・どいつ艦だから・・・？」

山城「シャラップ・・・・！！」

山城「全員改名しなさいっ・・・・・・！！　私の覚えやすい名前に・・・・！！」

山城「名前だけじゃく・・・趣味も・・・・・・！！」

山城「口を揃えてスイーツスイーツって・・・・全員・・・学校帰りの女子高生気分かっ・・・・・！」

山城「言っておくけど・・・赤疲労・・・！　あなたたちの名前は全て・・・・・」

山城「miss連発・・・！　戦果０っ・・・・・・！」

山城「一人もいないの・・・・！？　クリティカルっ・・・・・・！」

山城「私の記憶っ・・・・・・頭の中に・・・・クリティカルぅ～～～～～！！」

　　　　・・・？
　　　　　　　　　　　・・・？


――結局


この日の会議はグダグダのまま終了・・・

なんの進展もないまま終了・・・・


それでも・・・・！！

がんばれっ山城・・・・・・！！

負けるな・・・山城っ・・・・・・！！！



第１話　終・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・