本屋にて
八幡「今月の新刊はと……」
八幡「……ん?」
八幡「『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』?」
八幡「また変なタイトルのラノベだな」ピラッ
八幡「…………」
八幡「……!?」
八幡「なんだよ……これ……」
八幡「主人公……俺じゃね……?」
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https://www.youtube.com/watch?v=ccMfyDn7RHI
テッテーテレレーテレレーテレレー
タモリ「事実は小説より奇なり」
タモリ「この界隈ではもう使い古されたと言っても過言ではないほどの言葉ですが」
タモリ「逆に自分の人生、所謂事実が小説ないしフィクションではないとはどうして言えましょう?」
タモリ「もしもこの世界が誰かの想像上のものであったなら
タモリ「今宵お送りする奇妙な世界に巻き込まれることも荒唐無稽な夢物語とは言い難いものとなってしまいます」
タモリ「さて、そして彼女は今再び奇妙な世界に巻き込まれてしまったようです」ニヤリ
八幡「いつつ……」
雪乃「マラソン大会で転んで怪我なんて、どうしようもないくらいに格好悪いわね」
八幡「うるせーよ。まぁそれで葉山の進路もわかったわけだし」
雪乃「……そうね」クスッ
八幡「てか誰もいないのに勝手に保健室の薬とか使って大丈夫なのか」
雪乃「特に問題はないんじゃないかしら。治療を必要としてる怪我人がいるわけ……あら、間違えたわ。人ではなかったわね」
八幡「ことあるごとに遠回しに人でなしって言うのはやめろ」
雪乃「あら、そんなことは言ってないわよ。人でなしくん」
八幡「もろ言っちゃってるし。最早原型残ってないから」
雪乃「えーと、消毒液は……」
八幡「…………」
八幡(相変わらずの毒の強さだな。少しくらいその消毒液で消えて欲しいものだ)
八幡(しかし毒の消えた雪ノ下……)
八幡(…………)
八幡(……想像できないな)
雪乃「でも消毒してしまって大丈夫なのかしら。比企谷菌も一緒に殺菌されてしまったり……」
八幡「その呼び方やめろ。てか気に入ってんじゃねぇのそれ」
雪乃「そうよね。あなたは菌どころの存在ではないわね」ニコリ
八幡(これ以上言及したら今度はウイルスとかまで言われそうだ)
雪乃「あなたは害虫レベルだものね」
八幡(もっと酷かった!)
雪乃「ようやく見つかったわ……。あら? 出てこないわ」
八幡「ん? 中身が空なんじゃないか?」
雪乃「……なるほどね。怪我したタイミングでちょうど切れてしまうなんて、さすが比企谷くんね」
八幡「それほどでも」
雪乃「別に褒めてないのだけれど」
八幡(知ってる)
雪乃「替えはあるのかしら……」
八幡「さぁな。普段授業サボる以外の目的で来ねぇからわからん」
雪乃「はぁ……使えないわね」
八幡「ちょっと雪ノ下さん? ……あ、でもあれだ」
雪乃「?」
八幡「そういやベッドで横になってる時に詰め替えとかやってたの見たことあるな。その辺にそういうのあるんじゃねぇの?」ガタッ
雪乃「いいわよ。あなたはそこで座ってて。たとえあなたでも怪我人は怪我人なのだから」
八幡「その一言がなければなおのこと良しなんだけどな……。でもサンキュー」
雪乃「えっと……、ああ、あそこね」
八幡「随分高いところにあるんだな。容器も妙にデカいし」
雪乃「普段あまり使われないのかもしれないわね。ん……届かない……」
八幡「大丈夫か?」
雪乃「平気よ。このくらい――」
結衣「やっはろー!!」ガララッ
雪乃「キャッ!?」ガタッ
八幡「雪ノ下!」
バッシャーン!
結衣「ゆきのんっ!!」
八幡「大丈夫か?」
雪乃「え、ええ……。少し驚いてしまって……」
結衣「ごめんね……」
雪乃「いえ、あなたのせいではないわ」
結衣「それよりゆきのんびしょ濡れだよ! 早く着替えないと!」
八幡「とりあえず床は俺たちで拭いておくから」
雪乃「ありがとう、比企谷くん。それでは失礼するわね」ガララ
結衣「……あたしのせいでごめんね」フキフキ
八幡「別に俺は大したことはねぇよ」フキフキ
結衣「うん……」シュン
八幡「それにしてもあんなに大量に浴びちまっていいもんなのか」
結衣「目には入ってないみたいだったから大丈夫だとは思うけど……」
八幡「ただ濡れただけなら洗濯すればいいだけだしな」
結衣「本当に悪いことしちゃったな……」
八幡「…………」
結衣「どうしたの?」
八幡「何か忘れてるような……」
結衣「? ……あ! ヒッキー膝が!」
八幡「あ。忘れて――」
結衣「雑巾から液が!」
ピチャリ
八幡「っていったぁっ!!!」
八幡(そうしてそれからは特に何もなく、マラソン大会の日は幕を閉じた)
八幡(由比ヶ浜の言った通り消毒液は目や口には入らず、大した怪我もなかったらしい)
八幡(しかし俺はこの時、気付いていなかった)
八幡(この事故によって、まさかあんなことが起ころうとは)
ある日の放課後
八幡「うーす」ガララー
雪乃「あら、比企谷くん」
八幡「よぉ」
雪乃「今日も依頼は来ていないわよ」
八幡「ん。じゃあ」スッ
八幡(いつもの定位置に座り、文庫本を開く)
八幡(わずかな違和感がモヤリと胸の中をよぎったが、気のせいだろう)
結衣「やっはろー!」
八幡(どうやら全員揃ったらしい)
八幡(まぁ、揃ったからと言ってこれと言ってすることもない)
八幡(いつも通りに過ごすだけだ)
材木座「呼ばれて飛び出て参上!!」ガララッ
材木座「剣豪将軍! 材木座義輝!!」チャキーン!
八幡「誰も呼んでないんだが」ゲンナリ
結衣「あ、中二だ」ゲンナリ
雪乃「材木座くんね。何か用かしら?」
八幡(ん?)
材木座「新たな小説のプロットが完成したのでな、お主たちに読ませてやろうと思って来たのだ!」
八幡「またかよ……」
結衣「あ、あたしはよくわからないからいいよね」
八幡(こいつ……逃げる気か……!)
雪乃「仕方ないわね」スッ
八幡(ん!?)
材木座「む……!? 雪ノ下殿……!?」
雪乃「何かしら。読んでもらいたいのでしょう?」
材木座「いや……そ、そうなのだが……」
八幡(んんっ!?)
――
――――
材木座「ど、どうだ……?」
八幡「いや、どうだって言われてもな……」
結衣「…………」ピッピッ
八幡(ガハマさん完全にドロップアウトしてますよね。もう某アイドルグループもびっくりなレベルで)
雪乃「…………」ジー
八幡(対称的に雪ノ下はかなり真剣に読んでいるようだ。てかこれ前のと同じで典型的な今流行のラノベの劣化コピーだからな)
材木座「なぁ、八幡よ……!」
八幡「だからなぜ俺だけに聞く……」
雪乃「…………」ジー
八幡「じゃあとりあえず。どっかで見たような展開を切り貼りしただけにしか見えねぇ」
材木座「ぐふぅっ!!」1COMBO!
八幡「だから先の展開も予想できちゃうしドキドキもハラハラもしない」
材木座「ぬほぁっ!?」2COMBO!
八幡「キャラもありきたりだし、それに感情移入もできない」
材木座「あべしっ!!」3COMBO!
雪乃「…………」
八幡「雪ノ下は、どうだ?」
雪乃「えっ!?」
雪乃「いえ、その……」キョロキョロ
八幡「?」
八幡(なにかおかしい)
八幡(いつもなら俺よりも的確な意見……いや批判を繰り広げ、それによって材木座が白目になるのに)
八幡(しかしどうも雪ノ下は口ごもる。口にする言葉を選んでいるようにも見える)
八幡(さっきから思っていることだが、今日の雪ノ下はどうにもらしくない)
雪乃「ねぇ、比企谷くん」ヒソヒソ
八幡「なんだよ?」ヒソヒソ
雪乃「何て言えばいいのかしら……」ヒソヒソ
八幡「いや、思ったことをそのまま言えばいいだろ。いつもみたいに」ヒソヒソ
雪乃「そう……よね」ヒソヒソ
雪乃「ざ、材木座くん」
材木座「はっ、はいっ!!」
雪乃「えーと……、その……」
八幡「雪ノ下……?」
雪乃「…………」ソワソワ
材木座「……っ!」ビクビク
雪乃「あの……、あまり……、面白くは……」サッ
八幡(そこまで言って雪ノ下は材木座から目を逸らしてしまった)
八幡(当の材木座はと言うと……)
材木座「……なんだろう。この遠慮されてる感じの方がダメージが……っ!」
材木座「うわぁぁぁああああああああ!!!」ダッ
ピュゥゥウウウンン……
八幡(まさに風と共に去りぬ、ってやつか。違うか、違うな)
八幡「一体どうしたんだ、雪ノ下?」
雪乃「いえ、その……、どう言えば材木座くんを傷つけずに済むかと思って……」
八幡「はっ?」
雪乃「でも嘘をついて面白かったと言うのも違うでしょう? だからと言ってそのまま言うわけにも……」
八幡「」
八幡(ちょっと待て)
八幡(……)
八幡(…………)
八幡(…………うん、やっぱりおかしい)
八幡「ど、どうしたんだお前?」
雪乃「えっ?」
八幡「いや、えっじゃねぇよ? お前そんなキャラじゃないだろ?」
雪乃「そう……よね……。どうしちゃったのかしら……」
八幡(雪ノ下の特徴と言えばいろいろあるが、その毒舌が挙げられるだろう)
八幡(どんなときにもその正しさをもって相手を切ってしまうような、そんな言葉を平然と吐いてしまうような、そんな人物だったはずだ)
八幡(なのに今日はどうもそれがなりを潜めている。何なら一度たりとも聞いていない)
八幡(俺が部室に入ってきた時も)
八幡(材木座が雄叫びを上げて登場した時も)
八幡(彼女の毒舌を一度も)
八幡(……ん? 毒?)
八幡<相変わらずの毒の強さだな。少しくらいその消毒液で消えて欲しいものだ>
八幡「まさか……」
八幡「雪ノ下の毒舌が消毒された!?」
とりあえずここまでです。
お久しぶりな方はお久しぶりです。これからのんびりまた書いていきます。
何かネタとかあったらぜひください。
今日の23時に投下します。
ネタ提供ありがとうございます。すごく面白そうなので手が空き次第取りかかる予定です。
それでは更新します。
――
――――
結衣「つまり、今のゆきのんは前みたいなキツい言い方をしないってこと?」
八幡「恐らくは」
結衣「うそ……」
雪乃「…………」
八幡「とりあえず由比ヶ浜。なにか頭の足りない言動をしてみろ」
結衣「何その頼み事!?」
八幡「雪ノ下のためなんだ。何でもいいから」
結衣「えーと……」
雪乃「わざわざ私のためにそんなことしなくても……」
結衣「ううん、ゆきのんのためだもんね。んー……。って言うか、こういうのっていざやれって言われてもどうすればいいかわからないよ」
八幡「じゃあ由比ヶ浜。とりあえず徳川の三代目の将軍は?」
結衣「むー……。間違えればいいんだよね。えーとね」
八幡(と、由比ヶ浜は顎に手をやり唸る。いや、そんなに迷うところじゃないよね?)
結衣「徳川……家光!」
八幡「間違えようとしたんだよな?」
結衣「え?」キョトン
結衣「本当は吉宗……じゃないの?」
八幡「」
雪乃「由比ヶ浜さん……」
八幡(いや、偶然とは言え由比ヶ浜の素のミスだ。むしろこっちの方が有り)
八幡(雪ノ下は……)
雪乃「えと……」ソワソワ
八幡(めっちゃ考え込んでる! 由比ヶ浜のために言葉を選んでる!)
雪乃「その……正解……よ?」
八幡(悩んだあげく言葉を濁した!)
結衣「ほらヒッキー! 合ってるじゃん!」
八幡(こっちはこっちで頭が残念だ!)
八幡「これは……重症だな」
結衣「えっ!? ちょっとどういうこと!?」
雪乃「ええ……。何だか今までのように話そうとすると、罪悪感というか……」
結衣「ねぇってば!」
八幡「由比ヶ浜は少し静かにしててくれ」
結衣「むー!」プクー
八幡「俺相手でも何も言えないのか?」
雪乃「……わからないわ」
八幡「とりあえずいつも言うみたいに何か俺に言ってみろよ。それで傷ついたりとかもしねぇし」
雪乃「えっと……じゃあ……」
雪乃「……ひ」
八幡「ひ?」
雪乃「ひ……比企谷くんの……バカ」プイッ
八幡「お、おう……」
結衣「ゆきのんこれ狙ってないんだよね……」
雪乃「どういうこと?」キョトン
八幡(ちょっと今のは本気でヤバかった。少し頬を赤らめながらのあれは反則だろ)
八幡(中学時代の俺なら速攻で惚れてアタックして黒歴史に新たな一ページを刻んでいたぞ)
雪乃「私としては精一杯の罵倒文句のつもりだったのだけれど……」
八幡「そ、そ、そ、それは置いといてだな! 毒舌を封印されたとは言っても特にそれで不自由するわけでもないし、とりあえず様子見だ」
結衣「むー! ヒッキーのバカー!」ダッ
雪乃「由比ヶ浜さん!?」
八幡「同じセリフでもあいつだとただの子どもの駄々にしか聞こえないのは何なんだろうな」
――
――――
それから数日
八幡「うーす」ガララ
結衣「あ、ヒッキー」
八幡「よう。雪ノ下はまだ来てないんだな」
結衣「今日ゆきのん来ないみたいだよ」
八幡「へぇ」
八幡(驚いてそんな間抜けな声が漏れた。家の用事か何かだろうか)
結衣「クラスの友達と遊びに行くんだって」
八幡「はぁっ!?」
八幡「すまん、由比ヶ浜。もう一回言ってくれ」
結衣「クラスの」
八幡「おう」
結衣「友達と」
八幡「ダウト」
結衣「なんで!?」
八幡「あいつにクラスの友達なんているわけない」
結衣「普通に修学旅行の時に一緒に回ってたじゃん」
八幡「あれは強制的に班分けされるからだろ」
結衣「そうかなぁ……」
八幡「それに、例えそれが友人だったとしてもだ。そいつらと放課後どこかに出かけたりとかが今までにあったか?」
結衣「確かに今まではなかったけど……。別に悪いことじゃないんだしいいじゃん」
八幡「それを言われちゃ何も返せねぇけど……」
結衣「それにね」
八幡「?」
結衣「あたし、ちょっと嬉しいんだ」
八幡「嬉しい?」
結衣「うん。ゆきのんってさ、すごくいい子なのになんだか周りから敬遠されてるみたいで、もっと友達いてもいいのにってずっと思ってた」
八幡「…………」
結衣「だからこうやって他の友達と遊びに行くって聞いて、安心したって言うと何か変かな」
八幡「……別に、何も変なことは言ってないだろ」
結衣「そうだよね!」
八幡「…………」
八幡(由比ヶ浜だって三浦たちと遊ぶために奉仕部を休む日はある。俺だって何かしらの用事で休むことはある)
八幡(だからこんなことがあるのだって当然だし何か物申す権利なんて俺にはない)
八幡(なのに、どうして)
八幡(こんなにも俺は不愉快なのだろう)
――
――――
それから一週間
結衣「でさー優美子ってばねー」
八幡「…………」ペラ
結衣「あ、そうだ! 今度またみんなでカラオケ行こうよ!」
雪乃「何かイベントなんてあったかしら?」
結衣「別になくてもいいじゃん!」
雪乃「…………」
結衣「ゆきのん?」
雪乃「お誘いは嬉しいのだけれど、少し用事があるしお断りさせていただくわ」
結衣「そっか……」
雪乃「だから、またの機会に誘ってくれれば、私の都合が合う日なら……」
結衣「うん……」
雪乃「べ、別に、あなたのことが嫌なわけではないのよ?」アワアワ
結衣「うん、わかってるよ、ゆきのん」
雪乃「それじゃお先に」
八幡「ああ、じゃあな」
結衣「ばいばい」
ガララー、ピシャリ
八幡「どうしたんだ? お前らしくもない」
結衣「そうかな……」
八幡「そうだろ。いつものお前なら雪ノ下から断られることはあっても、そこまで落ち込むかよ」
結衣「…………」
結衣「こういうのさ、陰口みたいでイヤなんだけど」
八幡(そう前置きをしてから由比ヶ浜は目を伏せながら口を開く)
結衣「最近のゆきのん、なんか少し距離置かれてるみたいな感じがして」
八幡「…………」
結衣「遊びに誘っても何だかんだはぐらかされちゃうし、……前は断るにしてもキッパリ断ってたのに」
八幡(それは少なからず俺も感じていたことだ)
八幡(今までの雪ノ下は言い方にトゲがあるものの、そこには本音があった。本心とまでは言えなくとも、それに準じた何かが)
八幡(しかし今の雪ノ下からそれは感じられない。無毒であろうとするがあまり、彼女が大切にしていたであろう何かも同時に失われてしまったようにすら感じられた)
八幡「……確かに、前に比べて多少他人行儀な感じにはなってるな」
結衣「でも、そっちの方がいいのかな……」
八幡「?」
結衣「最近のゆきのん、クラスにも良い感じで馴染めてるみたい。J組の子から聞いたんだけど」
八幡「そうなるだろうな」
八幡(そもそもの話、雪ノ下のスペックは女子高生のそれとしては桁外れのものだ。そんな優れた人間とつき合いたいと考えるのは自然の理とも言える)
八幡(しかし実際の雪ノ下の交流関係の狭さは彼女自身の性格によるものだ)
八幡(それが改善されたときにこうなるのも、当然の結果である)
結衣「だからさ、みんなにとってはそっちの方が良いのかなって」
八幡「…………」
結衣「あっ! ご、ごめんね! すごくイヤな話だったよね」
八幡(慌てて弁明する由比ヶ浜に、俺は何も言えなかった)
――
――――
八幡(最近由比ヶ浜と部室に二人でいることが以前より増えた気がする)
八幡(別に言うほど雪ノ下がいない日が増えたわけではない。クラス内の人間関係はそんな短期間で好転するほど単純な話ではない)
八幡(悪化は簡単なんだけどな。ソースは文化祭のあとの俺)
八幡(話は戻して、それなのに増加を自覚するってのはそれだけその一回一回の印象が強いということだろう)
八幡「はぁ……」
??「あれー? もしかして比企谷くん?」
八幡「」
八幡(本当に、この人はどうしてこういう会いたくないタイミングで現れるのだろう)
陽乃「ひゃっはろー!」
――
――――
八幡「どうしてこうなったのでしょう」
陽乃「わたしが比企谷くんをナンパしたからかなー」
八幡「ご冗談を」
八幡(あんなのナンパじゃない。ただの恐喝よ!)
陽乃「さてと、ところでね比企谷くん」
八幡「はい?」
陽乃「最近の雪乃ちゃん、どう思う?」
八幡「!」
――
――――
八幡「どうしてこうなったのでしょう」
陽乃「わたしが比企谷くんをナンパしたからかなー」
八幡「ご冗談を」
八幡(あんなのナンパじゃない。ただの恐喝よ!)
陽乃「さてと、ところでね比企谷くん」
八幡「はい?」
陽乃「最近の雪乃ちゃん、どう思う?」
八幡「!」
>>50
間違えた
八幡「どうって……」
陽乃「あれ? 気付いてないなんて言わせないよ?」
八幡(口元には笑みを浮かべているが、目が少しも笑っていない。少しでも逃げようとしたら殺すと告げている)
八幡「雪ノ下さんも気付いてたんですか」
陽乃「そりゃね。お姉ちゃんだから」
八幡(ふふんとどこか得意気に鼻を鳴らす。そんな仕草がどこか幼く見えた)
陽乃「で、どうなの?」
八幡(まぁ一瞬ですけどね。この人の場合それすら計算でやってそうで恐い)
八幡「別に。あれはあれで良いんじゃないですかね」
八幡(人の振る舞いにどうこう言えた口ではないし、それに何よりも今の雪ノ下の行動は社会一般的にはむしろ理想的なものだ)
八幡(それで上手くいっているようだし、友人すらまともにいない俺にとやかく言う筋合いはない)
陽乃「ふーん」
八幡(俺がそう答えると陽乃さんは急に冷めたような声音になり、俺に対しても興味を失ったようだった)
陽乃「比企谷くんはそう思うんだ」
八幡「……雪ノ下さんはどう思うんですか」
陽乃「つまらない」
八幡「えっ?」
八幡(その時、俺はしまったと心底痛感した)
八幡(今、そんなことを聞けば、どんな解答が返ってくるのかわかっていたのに)
八幡(背筋を震わせる声で、耳の奥に呪いのように残る言葉が出てくることが)
陽乃「今の雪乃ちゃん、つまらない」
八幡(どことも言えない方を見つめる陽乃さんの表情は、酷く凍てついたものだった)
ここまで。
一話は二回で終わらせようと思ってたのに初っ端から計画頓挫。
最終章予告
葉山「やったか?」
八幡(?)「GYAAAAAAAAAAA!!!!!!」
八幡「あぁ、俺は…好きなのか…。」
闇八幡「俺はお前だ!」
闇八幡「黒幕はお前をりようしている。」
八幡「俺、比企谷八幡は…を愛し続けます。これから先ずっと一緒にいてくれないか?」
そしてすべての交錯した世界は加速して行く
多重人格者の俺の復讐するのは間違っていない
最終章
『闇夜を切り裂き未来を手に掴む。』
10 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします sage 2016/09/09(金) 13:41:39.03 ID:ij/k8YcBO
魔王様「HA☆YA☆TO☆(笑)の分際で…身の程を再理解させる必要があるみたいね?」
薄化粧マッチョメン×100に囲われたHA☆YA☆TO☆(笑)「ア゛ッ゛----!!!!」ズブッ… ズブッ… ズブッ… ズブッ……
何故かいるE.H(姓.名)女史「愚腐腐腐腐腐……」
落ちそうなので生存報告だけ
八幡(何も言えなかった。眼前の女性が口にしたセリフは、俺の心を動揺させるにはあまりにも十分すぎた)
陽乃「わたし個人の意見だからね。比企谷くんがどう思おうが構わないよ」
八幡(悪戯に俺の反応を楽しむ陽乃さん)
八幡(まるで俺の考えを全て見透かしているようで酷く不快だ)
陽乃「あ、そうそう」
八幡「はい?」
陽乃「これ、渡しとくから」コトッ
八幡「……なんすか、これ」
陽乃「雪乃ちゃんが元に戻る薬だよ♪」
八幡「!?」
八幡「どうしてこんな――」
陽乃「さてと、私の出番はこれでおしまいかな」
八幡「えっ?」
八幡(出番? 何を言っているんだ?)
陽乃「じゃ、あとは任せるね」
八幡「ちょっと雪ノ下さん――」
陽乃「バイバイ、比企谷くん♪」
――
――――
八幡(陽乃さんから解放された帰途は清々しいものでは決して言えないものだった)
八幡(むしろ逆に重々しい)
八幡(陽乃さんの言葉が今も脳裏にびっしりとこべりついている)
陽乃『今の雪乃ちゃん、つまらない』
八幡(それは言った当人の冷酷さのせいでもなければ)
八幡(言われた雪ノ下への同情のせいでもない)
八幡(あの瞬間、俺はあの人の言葉に思わず心の中で頷いてしまったのだ)
八幡(今の雪ノ下を否定する言葉を、肯定してしまった)
八幡(そんな自分が嫌で、仕方なかった)
八幡「ちくしょう……」
八幡(ポケットの中に入っている容器の感触が、さらに気分をどん底にさせる)
八幡「どうしろってんだよ……」
――
――――
八幡「よう」
雪乃「あら、こんにちは」
八幡「今日は部活来るのか」
雪乃「ええ。これでも部長なのだから」
八幡「…………」
八幡(憎まれ口の一つも消えてしまった雪ノ下)
八幡(でもそれこそがみんなが望む雪ノ下雪乃である)
八幡(否定しようとするのは、これまでの雪ノ下雪乃を知るごく少数の知人の中のさらに一部分のみ)
雪乃「じゃあ」
八幡「ああ」
――
――――
八幡(雪ノ下と別れてから俺は何となく授業を受ける気もなくし、保健室のベッドに横たわっていた)
八幡「……なんつーものをくれたんだあの人は」
八幡(ポケットの中の物のせいでどうにも落ち着かず、睡眠の世界に落ちることも許されなかった)
八幡「はぁ……」
戸部「うぃーす!」
八幡(戸部……?)
八幡(カーテンのせいで姿は見えなかったが、水素よりも軽い言葉で誰が来たのか察した)
八幡(あ、そういえば今の時間体育だっけ。材木座は準備運動の二人組の相手どうしたんだろ。まぁ、どうでもいいけど。)
先生「どうしたの?」
戸部「いやーそのー、ちょっとタックル食らって擦りむいちゃって」
八幡(嘘つけ。今の時期マラソンだろ。何をどうやったらタックル食らうんだよ)
先生「そうなの。じゃあとりあえず膝出してね」
戸部「ほい。いつつ……」
先生「痛そうだねー。じゃあっと……」ゴソゴソ
戸部「あれ? 消毒とかしないんっすか?」
先生「あー、そういうのは最近はしないかな」
戸部「なんで?」
先生「毒も殺せるけど、皮膚にもダメージいっちゃうからねー。水とかで洗い流すくらいがちょうどいいって話があるくらいなの」
戸部「へー、そうなんっすか」
八幡(おい、本当に理解できているのか?)
先生「それにね」
戸部「はい?」
先生「何でもかんでも薬に頼っちゃうのも考え物だと思うよ。私の立場で言うのもなんだけど」
戸部「薬は体にいいものなんじゃないんっすか?」
先生「傷でもなんでもあくまでも自分を治すのは自分自身なの。薬はそのサポートをする役割でしかないのよ」
戸部「へー、そうなんっすか」
八幡(いや、だからそれ理解できてないだろ)
先生「人間の自然治癒力って言うとバカにされがちだけど、本当は薬なんかに頼らない方がいいってこと。……はい、おしまい!」
戸部「うぃーす! あざす!」
八幡「…………」
八幡「治すのは自分自身、か」
――
――――
放課後
八幡「結局どうするか決まらねぇままだな」
八幡「このままがいいのか、戻すべきなのか……」
八幡「…………」
八幡「とりあえず部室に行くか」
八幡「うぃーす」ガララー
雪乃「あら、今日は早いのね。引きこもりガヤくん」
八幡「」
八幡「…………」
八幡「……………………」
八幡「あれ?」
――
――――
ソレカラドシタ
八幡「まさか自然に元に戻るなんて……」
結衣「あはは……。ほんとにまさかだったね」
雪乃「いろいろと心配をかけたわね。ごめんなさい」
結衣「べ、べつにゆきのんが謝る必要ないよー! 元々あたしがいけないんだし!」
八幡「雪ノ下さんからはこんなのももらって、どうしようってなってたのによ……」
結衣「なにそれ?」
八幡「雪ノ下が元に戻る薬っつってたな」
雪乃「ちょっと見せてくれるかしら?」
八幡「ん? おう」
雪乃「……」
雪乃「プッ」
雪乃「ふふふふ……」
八幡「な、なんだよ」
雪乃「比企谷くん。これ、ただのエタノールよ」
八幡「えっ」
雪乃「あなた、姉さんに騙されたのよ」
八幡「」
八幡(俺の黒歴史ノートに、新たなページが追加された瞬間であった)
八幡(てか本当に嫌だ、この姉妹……)
雪乃「それに――」
雪乃「私が消毒液なんかで簡単に変わってしまうような人間に見える? だとしたらあなたの目は節穴どころかフシアナサンね」
八幡「さすがにその罠には引っかからねぇよ」
八幡(いやマジだからね? リモートホスト表示されて焦ったりとかしてないからね?)
八幡(でもアレ初見は回避不可能だと思うんですけどね。別に俺は引っかかってないけど)
八幡(俺は、引っかかってないけど!)
八幡(大事なことなので二回言いました)
結衣「でも、よかったの?」
雪乃「なにがかしら?」
結衣「だってせっかく友だちとか増えていたのに……」
雪乃「あんなので出来た関係なんて意味ないわ。私自身そんな上辺だけの物に意味を見いだせないもの」
八幡(まったく。雪ノ下はやはり雪ノ下だ。そんな彼女の言動に心底ほっとしている自分がいる)
八幡(……しかし雪ノ下がまちがっているとは言わないが、合っているとも言い難い)
八幡(前に平塚先生がこんなことを言っていた)
八幡(仲良くする必要はない。うまくやれ)
八幡(根本的に俺たちはその技能に関して、未だ欠けている部分があると言わざるを得ない)
八幡(だからこそ、雪ノ下がそれを会得するのがこんな方法であっていいわけがない)
八幡(薬に頼った成長を、はたして成長と言えるだろうか)
八幡(……ま、とりあえずああだこうだ考えるのはよしにして、こうなって良かったと思うことにしよう)
雪乃「その何かしらの意味を含んだような目つきは何なのかしら? 不審を通り越して不快なのだけれど」
八幡(……でも)
雪乃『ご、ごめんなさい』
八幡(やっぱあれはあれで……)
八幡(……いや、結局はないものねだりなのかもな)
八幡「なんでもねぇよ」クスッ
世にも
奇 妙
な物語
https://www.youtube.com/watch?v=ccMfyDn7RHI
テッテーテレレーテレレーテレレー
タモリ「人はほんの些細な出来事でその性格が変わってしまうと言われています」
タモリ「精神が脳に依存することを基に精神外科という医学が生まれました」
タモリ「脳を物理的にいじることにより、精神疾患などを治療しようとした分野です」
男「あー、あーー!!!」バンッ
タモリ「……しかし、様々な理由により現在では禁忌とされている、魔の領域でもあります」
タモリ「彼女の迷い込んだ奇妙な世界も一歩間違えれば……」
男「あぁぁあああーーー!!」バンッバンッ
タモリ「……おっと、これ以上はタブーですかねぇ」ニヤリ
テレレッテッテレレーテッテッ
テレテッテッテッテッテレレレレーレー
テッテッテレレーテレレーテレレ
テーンテレレレレレン
ようやくの一話でした。
最後をどうするかが予想以上に難しく迷ってしまい、こんなにも時間がかかってしまいました。申し訳ありませんでした。
最後の男はヤンデレルートの場合ってこと?
>>96
おっしゃる通り、時と場合によっては雪ノ下がこうなってもおかしくなかったという話です。
作中では全く触れていませんが、精神外科の世界で有名なロボトミー手術の考案者、エガス・モニスが自分の患者に銃で撃たれたという逸話を基にしています。
お久しぶりです。
二話の内容を考えていたのですが、このスレでやれる内容ではなくなってしまったので、別のスレを立てました。
お手数ですが、よかったらそちらの方も読んでいただけたら幸いです。
八幡「俺の知らない俺がイル」
八幡「俺の知らない俺がイル」 - SSまとめ速報
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このSSまとめへのコメント
俺ガイルSS史上、最高の作品が戻ってきた!(個人的に)
期待