【艦これ】三日月と黒猫 (77)

電「あっ! 三日月ちゃんが猫さんを連れているのです」

三日月「あ…えっとこの子は…」

黒猫「にゃ」

雷「黒髪黒セーラーに黒猫…なかなか似合う組み合わせじゃない!」

響「ハラショー、黒猫は海外では幸運の印とも言われる。こいつは縁起がいい」

暁「レディーのこの私が膝の上で撫で撫でしてあげてもいいのよ」

黒猫「にゃーん」トテトテッ

暁「ひゃー!かーわいい!頬ずりしてくるぅぅ!きゃー!!」(ふふ、いい子ね。レディたるもの優雅に猫を抱くのも嗜みだわ)

響「暁、逆、逆」

電「愉快な娘なのです」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1473225583

雷「ねぇ、三日月? この猫ちゃん、どうしたの?」

三日月「えーっと… ちょっと訳ありで保護しているというか、何というか」

響「野良猫? 三日月が飼うのかい?」

三日月「え、えぇ。その、アレです。飼い主が見つかるまで的な、えぇ」

雷「何をそんなに挙動不審になっているのよ? 三日月らしくないわ?」

三日月「えっと、その、騒ぎになるといけないかなって」

響「ふむ、鎮守府で飼っては駄目と言われるかもしれないし、最悪保健所に連れていかれるかもしれないね」

三日月「そ、そうです、そうです」

雷「保健所ってことは…」

響「…殺処分」

電「なのです!」

暁「だ、駄目よ、そんな! こんな可愛い猫を死なせるなんて!!」

電「暁ちゃん、声が大きいのです」

雷「三日月、心配ないわ。私たちの秘密にしておくから」

三日月「は、はい… ぜひそうして下さい」

響「飼い主か、里親が見つかるまで、鎮守府のみんなには内緒だ。三日月はしっかり者だからちゃんと面倒を見てくれるよね」

電「暁ちゃんが口を滑らせなければ大丈夫なのです!」

暁「ちょっとどういう意味よ!」

電「なのです」

三日月「それでは私はこれで…暁ちゃん、猫さんを」

暁「うん、ばいばい猫ちゃん。三日月、たまにはこの子の顔を見させてね」

黒猫「にゃっ」

三日月「え、えぇ、もちろん」

雷「そういえば三日月、体の方は大丈夫なの? なんか前の戦闘で大ケガしたって話だけど」

響「すごく強い敵がいたみたいだね」

三日月「う… 。た、たしかに大破しちゃいましたけど、もう治ったので大丈夫です」

電「たしか…陸上まで追撃されて、ピンチのピンチのどうしようもないピンチなときに、司令官さんが助けに入ったと聞きましたが」

三日月「そう…ですね。その敵は司令官が…やっつけました」

暁「陸上に限っては司令官の方が艦娘より強いものね。どうなってるのかしら?」

電「でも、後ろで司令官さんが目を光らせているからこそ、電たちは大破撤退しても安全に帰ってこられるのです」

雷「ま、なんにせよ三日月が無事でよかったわ」

響「司令官はその強敵の報告に軍の本部へ出向いてるんだったっけ? 少しさびしいけど、おかげで三日月はその猫のこと知られずに済むね」

三日月「あはは……不幸中の幸いかもしれませんね。さっ、猫さん、行きますよ。見つからないように人気の少ない所をいきましょう」

黒猫「みぃ」

三日月「では第六の皆さん、これで失礼します」コソコソ

第六駆逐隊『またね~』

雷「三日月、なんだか元気なかったね」

響「さっきの私達みたいに可愛がって騒がしくなると、猫のことがバレちゃうかもしれないからね」

電「三日月ちゃんはこれから、世間の目から隠れるように生きていかなければならないのですね。もう日の当たる場所に出られないのです…」

暁「アンタさっきからどうしたの!?」

三日月「ふぅっ、まさか暁ちゃんたちに見つかってしまうとは…なんとか自然な形で話を進められましたが」ペタン

黒猫「にゃ」

三日月「はぁ…まさか…こんなことになるなんて…」

黒猫「にゃーん」

三日月(私たちはいつものように海域に出撃し、なんとか敵艦隊を撃破しました。けれどそこで出会ってしまったのです)

三日月(深海棲艦を指揮する存在『深海司令官』に)

三日月(『深海司令官』は通常の深海棲艦とは逆で艦娘では有効打を与えることができません。『深海司令官』に対抗できるのは、艦娘を指揮する存在、即ち私達の司令官だけです)

三日月(僚艦のみんなはすでに撤退を余儀なくされ、私に至っては身動きが取れない状態でした)

三日月(ただ結論から言うと私は助かったんです。こうして話していられるのは司令官が到着して助けられたからなんですが…)

三日月「それ以上に困惑する状態が発生しました」

黒猫「にゃーん」

【回想シーン】
数時間前

提督「今日こそ! 決着をつけるっ!」

深海司令官「おもしれぇ、女どもに戦わせるのも気が引けてたところだ。一騎討ちと洒落込もうか!」

提督「おおおおおおぉぉぉっ!!」

深海司令官「だああああああああっ!!」

ズバッ

ガキィン

ザシュッ

ドゴォォン

提督「この一撃に全てを賭ける! 必殺提督獅子王剣、流星斬りぃぃ!!」

提督「斬り捨て御免っ!」

深海司令官「がはっ!?」

深海司令官「お、俺が…この俺がやられるのか? 深海の王となるべきこの俺がぁ…なぜこんな人間にぃ」

提督「お前の野望なんか知ったことか。艦娘の先には、それより強い提督が待っている。お前はそれに勝てなかっただけだ」

深海司令官「おのれ、おのれぇ…」グラッ バタッ

提督「俺の…勝ちだ」



提督「さて…三日月。無事か?」クルッ

三日月(大破)「し、司令官…」

提督「遅くなってしまってすまなかった」

三日月「信じて…ました。必ず助けにきてくれるって…」

提督「間に合ってよかったよ。さぁ、俺たちの鎮守府に帰ろガッ!?」

三日月「え?」

深海司令官「ぐ…が…ぁ… 俺一人では死なん… 貴様も一緒に連れていく」

提督「くっ、貴様っ」

三日月「司令官!?」

深海司令官「あはははっ! 見える、見えるぞ! 俺の深海帝国がぁぁ!!」キュイィン

チュドォォオオン!!

三日月「あ…あぁ… イヤァァァァっ!しれいかーんっ!!」

モクモク…

三日月「そんな…司令官が…」

シーン…

三日月「ううっ…私を助けに来たばかりに…私の、私のせいだ…ごめんなさい…ごめんなさい、司令官っ」

ニャーオ

三日月「…?」

黒猫「……」

三日月「え?こんなところに猫さん?」

みかづき! みかづき! 聞こえるか?

三日月「!?」

三日月「司令官? 無事だったんですか? あれ?どこにいるんですか?」キョロキョロ

ここだ! お前の目の前だ!

三日月「目の前って…」

黒猫「……」ジタバタ ピョンピョン



黒猫「俺が提督だ!」



三日月「」

猫提督「おいおい…あの深海司令官め、最後にとんでもない置き土産を残していったな」

三日月「司令官が猫さんになっちゃったのはさっきの爆発が原因なんですか?」

猫提督「奴の最期の怨念が成したわざだろう。俺の命を奪うつもりだったんだろうが、ぎりぎりのところでT(提督)フィールドを張って緩和できたんだ」

三日月「もとの司令官の姿に戻れるんですか?」

猫提督「わからん。命があっただけマシと思いたいが… 一生このままかもしれん」

三日月「そ、そんな…」

猫提督「このままでは指揮をとることも、次の深海司令官が現れた時に戦うこともできない」

三日月「私が…私が戻る方法を探します!」

三日月「きっと何か方法があるはずです。もしかしたら呪いを解く妖精さんがいるかもしれません!ともかく、鎮守府へ帰りましょう!」

三日月(なんとか戦いを切り抜け、そしてそれ以上に大変な出来事に出くわした私と司令官は、ひとまず鎮守府に戻ったんです)


雪風「あっ!?帰ってきました! 三日月ちゃんです!」

浜風「良かった、無事だったのね」

神通「こんなに傷ついて… ごめんなさい、三日月ちゃん。私達を逃がすために、貴女が…」ダキシメ

三日月「神通さん…みんな… 私は大丈夫、です」

神通「本当なら私が敵を引き寄せて、みんなを逃さなきゃいけなかった。なのに…」

三日月「神通さんは旗艦です! 麾下の私が盾になるのは当然ですよ」

神通「三日月ちゃん…」

三日月「こんな時、生き延びるために、神通さんに訓練してもらったんです」

浜風「二水戦魂ここにあり、ね」

三日月「えへへ。本当は司令官が助けに入ってくれたからなんですけど」

雪風「しれぇが間に合ったんですね。三日月ちゃんにも幸運の女神が微笑んでますねっ」

神通「撤退戦の時の提督は本当に鬼神の如き強さですからね」

浜風「撤退する時、敵を振りきれなくても、提督が敵の上陸を防いでくれますから」

雪風「しれぇだけじゃなくて他所の鎮守府の司令官も同じなんでしょーかねー?」

神通「個人差はあると思いますが… そう言えば三日月ちゃん、提督とは一緒ではないの?」

三日月「あ、あの…司令官は…」

神通「?」

三日月「司令官は深海司令官と戦って……」つ黒猫

神通 雪風 浜風 「?」

三日月「司令官です…」

黒猫「にゃー」

雪風「へ?」

浜風「ど、どうしたの三日月。急に『ヘルメット差し出して、母さんです、っていうウッソ君』みたいなこと言い出して!?」

三日月「……」

神通「三日月ちゃん ………まさか! 提督はっ!?」

三日月「はい、信じられないかもしれませんが、司令官は…」

神通「……戦死、されたのですね」

浜風「!」

雪風「そんな!?」



三日月「えっ!?」

三日月「え”っ!?ち、違います! 確かに危なかったですけど…!」

神通「いいのよ。三日月ちゃん。貴女のせいではないの」

三日月「いえ違います司令官はこの猫さんになっちゃったんです」つ黒猫

黒猫「にゃ」

雪風「三日月ちゃん…」

浜風「猫を…提督だと思い込んで…」

神通「提督のご遺体は…残らなかったのね。 ショックでその猫さんが提督だと思い込んで…ううっ」

三日月「勝手に話ができあがってます!?」

雪風「き、気を確かに持ってください!三日月ちゃん! 雪風は…雪風は三日月ちゃんがしれぇの運を吸い取って生き延びたなんて思いませんから!」

三日月「ここぞとばかりに死神仲間に引き込もうとしてませんか!?」

三日月「ホントに司令官は生きてます!猫さんになっちゃったんですよぅ! そうだ、司令官。さっきみたいに猫のままでも話してください!」


(提督)うん、そうだな。俺から説明しよう。神通、聞いてくれ。三日月の言っていることは本当だ。おれが、俺こそが提督なんだ!

黒猫「にゃにゃにゃん、にゃにゃにゃん、にゃんにゃんにゃ!」


三日月「ほら! 司令官が喋っているでしょう?」

雪風「み、三日月ちゃん…」

三日月「え?」

浜風「私たちには猫の鳴き声しか聴こえないけど」

三日月「ええっ!? し、司令官!?司令官!?」

(提督)なんだと?ばかな? 三日月、聴こえないのか?

黒猫「にゃん!? にゃかにゃ?」

三日月「ほら! 司令官の声が! 聴こえますよね?」

浜風「『にゃん!? にゃかにゃ?』って鳴き声なら…」

三日月「へ? えぇ?」

黒猫提督(三日月にしか俺の声がきこえないだと?)

※注意書 (提督)←このときの台詞は三日月にしか聞こえず、他のキャラには猫の鳴き声に聞こえます。

神通「三日月ちゃん… そのくらいにしておきましょう。 自分を誤魔化しても、提督は帰ってきませんよ」

三日月「そんなぁ! 信じてくださいぃぃ!」

神通「雪風ちゃん、浜風ちゃん。三日月ちゃんをお風呂へ。 ゆっくり休めば落ち着きを取り戻して現実を受け入れられると思うわ」

浜風「はい。 行きましょう、三日月。まずはあなたのケガを治さないと」

雪風「今はその猫さんを連れていってもいいですから…」

黒猫(いかんな… このままでは三日月が精神が壊れた子扱いされてしまう)


(提督)三日月…三日月!


三日月「し、司令官?」


(提督)とにかく一旦入渠場へ行け。俺に策がある。


三日月「は、はい…」

ドック


雪風「じゃあ、三日月ちゃん、雪風達は戻るけど」

浜風「ゆっくり傷を治して。落ち着くまで入っていていいから。気を確かにね」

三日月「うぅ…わかりました…」

黒猫「……」






(提督)よし、あの二人は出ていったな


三日月「はい。あの…司令官、どうしましょう。皆、司令官の身に起きたことを信じてくれませんよ」


(提督)大丈夫、猫になったことはともかく、俺が健在ということは伝える事はできる。 さっきの戦場から俺の所持品は拾ってきているよな。


三日月「あ、はい。 といっても軍刀は折れちゃてましたし、回収できたのは軍帽と携帯端末くらいですけど」


(提督)十分だ!

一方神通たち

神通「…三日月ちゃんはどうだった?」

浜風「とりあえず、お風呂には入れさせました。錯乱は、してないみたいです」

神通「そう… 無理もないわ。私だって信じられないし、この目で安否を確かめたいところよ」

雪風「あのぉ…さっきは雪風も驚いてしまいましたが…よく考えたら、運良く生き残った、という可能性はあるんじゃないでしょーか?」

神通「あの状況から未帰還ということは……そしてあの真面目な三日月ちゃんがあんな事を言う程取り乱しているということは……」

浜風「期待するほど、辛くなる…ですか」

神通「……」

雪風「あぅぅ…ぐすん、しれぇ」



イマコソタチアガレ~ハガネノセンシヨ~♪


浜風「わっ!?」

雪風「神通さんの端末に着信音?」

神通「これは…!」

端末『発、提督 宛、神通 本文:いやー、参った参った。敵との戦闘情報を議論する為に本営にいったんだが、連日会議に連れまわされてさぁ、しばらく帰れそうにないよ。悪いけどその間鎮守府を頼むわ。出撃はせずに遠征にいっててくれ』

神通「え?」

浜風「どうしたんですか? 緊急の連絡ですか?」

雪風「神通さん?」

神通「提督から…メールが来ました」

雪風「ええっ!? じゃあ、しれぇは…」

神通「今は本営にいるとのことですが」

浜風「ここに戻らずに、ですか?」

神通「深海勢のボスクラスと戦ったのでその対策を会議しているそうです。まったく…すぐに連絡を寄こさずに……どれだけ心配したか…うっうっ」

雪風「でもっ!でもっ!じゃあ、しれぇは…っ!!」

神通「はい、生きてます」ニッコリ

浜風「…っ」ヘナヘナ

雪風「よ、よかったアァァァ!」

カッポーン

三日月「はぁ、まさかこんな単純な方法で」チャプン

(提督)この状況なら、わざわざ偽者がメールを送ってくる理由もないからな。とりあえず俺が健在ということは伝わっただろう。

三日月「それにしても猫の手のまま、よくタッチタイピングできましたね」

(提督)猫の肉球にも対応してるんだな、このTタッチ。


※Tタッチ…ティータッチ。タッチパネル型の提督用端末。情報の送受信の他、特定のパネル操作で「ファイナルテイトクライド」して提督がさらにパワーアップする。


三日月「でも、司令官が猫になったことはどうしましょう?」

(提督)その前にな、三日月。なぜ俺は猫の姿のまま目隠しされてるんだ

三日月「わ、私、お風呂に入ってるんですよ。司令官の前で裸を見せるなんてできませんからっ」

(提督)隠すほど立派なカラダでもあるまいに…

三日月「むぅっ! 私だってあと三、四年したらきっと…」

雪風「三日月ちゃぁぁん!」 ガラガラッ

浜風「朗報よ!」バタバタ

三日月「ひゃっ!?」

(提督)なんだ?この声、雪風と浜風か? 浜風はおっぱいか?

三日月「残念でしたね。着衣ですよ」

雪風「しれぇは…しれぇは生きてます!」

三日月「だから最初から言ってるじゃないですかぁ…この猫さんになっちゃったって…」

浜風「もう!しっかりしなさい三日月! 提督は本営に行ってるの! 大丈夫、生きてるのよ。 この猫ちゃんももう自由にしてあげて……って目隠しなんかしちゃ可哀想じゃない」バッ

三日月「あっ!」

(提督)ひゃほーい! 目に焼き付けちゃう……ぜ……

浜風は制服を着ていた。しかしながらその豊かな胸部は布を押し上げて自己主張し、服の中に柔らかな夢と希望が詰まっていることを容易に想像できた。

三日月は一糸纏わぬ姿であった。しかしながらその平坦な胸部は三日月の小さな手で隠し切れてしまい、性的な可食部と言える肉の塊はついぞ発見することはできなかった。

風呂場にタラレバは厳禁であるが、提督は嘆かざるを得なかった。

「服を着ているのが三日月で、裸なのが浜風だったら…」と。

三日月「ちょっと司令官!? 何ですか!その落胆した表情は? 猫の顔でもわかりますよ!?」

浜風「ちょっ!?三日月?」

雪風「三日月ちゃん、だからこの猫ちゃんはしれぇじゃないんですってば!」

三日月「司令官! 猫になったことは伝えてないんですか!?」

(提督)そんな嘘みたいな話を伝えたら、それこそイタズラと思われて信じてもらえないだろーが。提督の生存という事実を伝えるのが先決だ。

三日月「で、でも」

(提督)俺が猫になったと信じてもらえない以上、混乱が起きない内に何とか元に戻る方法を見つけよう

三日月「それは…そうですね。このぶんだと妖精さん達にも信じてもらえないかもしれませんが」



雪風「浜風ちゃん…三日月ちゃんが…三日月ちゃんが…」

浜風「完全にあの猫を提督と思い込んで…会話のマネまで」

雪風「三日月ちゃん、もう元に戻らないんですか?真面目な子ほど壊れやすい、っていいますよ?」

浜風「だ、大丈夫よ、今はまだ混乱してるだけ…のはず」



三日月「そうだ! 鳳翔さんや瑞鳳さんなら私の話を信じてくれるはず!」ダダッ

(提督)おわっ!? 尻尾を引っ張るな! 痛い、痛い、未経験の痛みがぁ~



浜風「行っちゃった…」

雪風「ああ、しれぇ…はやく帰ってきてくださぁい…」

空母寮 三航戦部屋

瑞鳳「えーっと… 三日月ちゃん?」

鳳翔「この猫が、提督である、と?」

三日月「はいっ!」



黒猫「にゃーお」



瑞鳳「…」
鳳翔「…」

三日月「信じられないのはわかります! でも本当なんです! 本当に司令官が敵の「深海司令官」の攻撃で…」

鳳翔「「深海司令官」の存在は私も知っていますよ、提督しか渡り合えないくらい強いことも」

瑞鳳「でも相手を猫にしちゃうなんて聞いたことないなぁ」

三日月「くわしい原理は私にもわからないですが、この猫さんは司令官なんです!」

鳳翔「……」

三日月「だから早く元の姿に戻る方法を探してて…」

鳳翔「三日月ちゃん」

三日月「は、はい」

鳳翔「つまり、その黒猫を鎮守府で飼いたいということですね」

三日月「解体!?」

瑞鳳「違う違う。三日月ちゃん、その猫をペットにしたいんでしょ? それで提督が猫になっちゃったなんて可愛い嘘ついちゃって」

三日月「し、司令官をペットにだなんて!?」
ホワホワーン

ーー
ーーー

提督「むぐむぐーっ」ジタバタ

三日月「あは。私と初霜ちゃんを間違えちゃうようなおバカさんにはお似合いの格好ですよ」ギュッ

提督「んぐっ!?」

三日月「あれぇ?女の子にお股を踏まれて喜んじゃうんですかぁ?これはもっとお仕置きが必要ですね」

提督「んひぃぃぃっ!?」

三日月「なんて顔してるんですか、もう! もっともっと頑張らないと…」

提督「」ビクンビクン

ーーー
ーー

三日月「はわわわわっ」///

(提督)おーい?

三日月「はっ? そっ、そんなっ!? ペットになんて…ありえないですっ! …って、そもそも嘘じゃないんです~」

鳳翔「仏の嘘を方便といい、武士の嘘を武略という… 絶対に嘘をついてはいけないとは言いませんが、時と場合によります。この前も卯月ちゃんが虚報流布で混乱させた罪で銃殺刑になりそうになったんですよ」

(提督)あれは誤解を解くのと弁護するのに大変だったな…

三日月「うーちゃん何したんですか!?」

鳳翔「猫を飼いたいからって、司令官を巻き込んだ嘘をつくなんて良くないですよ」

三日月「そんなぁ……」

(提督)ふむ、三日月、こうしたらどうだ?

三日月「え?」

ごにょごにょ

三日月「なるほど!」




瑞鳳「三日月ちゃん、猫と話し込んでる…」

鳳翔「激しい戦闘で記憶が混乱してしまったのかもしれませんね」

三日月「これで…信じてくださいっ!」バァン!

瑞鳳「これは…五十音と数字に」

鳳翔「はい、いいえの文字の書かれた紙?」

三日月「いきますっ!猫さん?貴方は司令官ですか?」


黒猫(提督)「にゃっ」ススッ

つ「は い」


瑞鳳「えっ!」

鳳翔「これは?」

三日月「やった! ほら、猫さん?この人は誰ですか?」


つ「ほ」「う」「し」「よ」「う」
つ「つ」「ほ」


鳳翔「まさか?」

瑞鳳「これは?」

三日月「ほらぁ! 見ましたか? ちゃんと鳳翔さんと瑞鳳さんを理解して…」



瑞鳳「コックリさんだ!」



三日月「は?」
(提督)え?

鳳翔「三日月ちゃん、大変なものを呼び出してしまって! 猫は霊的なもの、異界のものと結び付きが強いから、こんなことに!あわわわ…」

三日月「あの…」

瑞鳳「ヤバイよ。コックリさんにお帰り願わないと…」

鳳翔「コックリさん、おかえり下さいませ、帰ってヤフってて下さいませ」ガクガク

瑞鳳「鳳翔さん、「ググって」です、「繰繰って」! 三日月ちゃん、その猫さんはもう逃がしてきた方がいいよ」

鳳翔「わ、わ、わ、わたし…こういう怪談は苦手なんです!」ブルブル

三日月「鳳翔さん、意外とかわいいですね!?」

その後も…



三日月「あの~大和さん…」

大和「黒猫!? 宅急便じゃありません!!」

三日月「ええっ!?」





三日月「多摩さんなら!」

多摩「猫の言葉がわからニャいかって? 多摩は猫じゃないにゃ!!」

三日月「ごめんなさーい!!」





三日月「結局、皆さんに信じてもらえないどころか、鎮守府で猫を飼っちゃダメって言われちゃいました」

(提督)ふーむ、コックリさんは信じてもらえるのになぁ

三日月「どうしましょう、これじゃ寮にも帰れません」

(提督)ま、大事なのは元の姿に戻る方法で、俺が猫であることを証明することじゃないからな。しばらくは三日月がこっそり飼ってる黒猫ってことにしよう。

三日月「え~」

(提督)なるべく見つからないように…




電「あっ! 三日月ちゃんが猫さんを連れているのです!」

(提督)いきなり見つかった!?


【回想終了】
そして話は冒頭に戻るのだった

話は冒頭の場面に戻り、第六駆逐隊と別れた三日月はーー

三日月「とりあえず、司令官は鎮守府に住み着いた猫、ってことにしましょうか」

(提督)これ以上三日月が頭おかしい子と思われるのは不憫だしな…ぷぷ

三日月「もうっ! 司令官の窮状を救う為に皆さんを説得してたんですよ! 何笑ってるんですか!」ぽかぽか

(提督)こらっ、叩くな、叩くな



「コラー! 黒猫をいじめるのはNOだからネ!」



三日月「えっ?」

金剛「ヅッキー、猫さんがかわいそうデス。ひどいことしちゃダメヨ?」

三日月「金剛さん…そうですね、私ったら、イライラしちゃって、つい」
三日月(そうだ…私が司令官を元に戻してあげなきゃいけないのに、いけないいけない)

金剛「what? 何かあった? あ、もしかして女の子の日デシタか? 女同士ですし、何かあったら相談してクダサイネ」

三日月「え? その…」

金剛「出撃の日と重なっちゃうと辛いよネ。 作戦行動にも支障が出るから、誰かに相談して交代してもらうのがbetterヨ」

三日月「えっと、お気遣いはありがたいのですが、まだ周期は先なので。三日月は大丈夫です、なーんて」

金剛「アハハ、榛名みたいデース。でも、ヅッキーもしっかり者だから間違ってはないネー」


(提督)なんだ?三日月、もう生理きてるのか? もう子供が産める体なのか!?

三日月「…」ギュウッ (無言のツネリ)

(提督)痛い痛い!
黒猫「にゃー!?」


金剛「Oh!? 言ってるそばからまたしても動物虐待!? イギリスでは黒猫は幸福の象徴だから 優しくしてあげてネー」

三日月「ふぇ? そうなんですか? そういえば響ちゃんも言ってたような… 黒猫は不吉なイメージがありましたが」

金剛「それは魔女狩りのイメージがあったからデス。黒猫は魔女の使い魔として忌み嫌われてたんだヨー。 デスガ、妖精の国イギリスでは結婚式に黒猫が現れると花嫁に幸運が訪れると言われてマス」

三日月「それは素敵ですねっ」

金剛「ワタシと提督の結婚式にも黒猫来て欲しいデス」

三日月「あ…もう結婚するの前提なんですね」

金剛「モチロン! 提督のハートを掴むのはワタシデース!」

三日月「あはは…応援してます」

金剛「thank you ヅッキーは良い子ネー」ナデナデ

金剛「ところでこの黒猫さんはヅッキーのペットなんですか?」ダキアゲ

三日月「えーと、鎮守府に住み着いたみたいで… 成り行きでお世話をするといったところ? です」

金剛「ホゥホゥ、猫さん、ヅッキーの言うことをよく聞くんデスヨ…ひゃっ!?」

黒猫「…」モゾモゾ

(提督)ふむ、折角だ。金剛の胸の谷間を味わっておこう

金剛「ひゃあんっ…ちょっ…ノゥ! それは提督にしか許してな…あんっ」

三日月「ちょっ!? 司令官!! 何やってるんですか!」

(提督)いや、せっかく猫サイズになったから、胸の間に入ったら座りがいいかなぁって……それより三日月、その呼び方はまずかったな

三日月「?」

金剛「ん…ヅッキー、いま猫さんのこと「司令官」って言いマシタ?」

三日月「あっ!?」(また変なこと言ってるって思われちゃう!)

金剛「まさか…この猫さんは…提督の…」ワナワナ

三日月(金剛さん!? もしかして…金剛さんなら信じてくれるかも!)
三日月「…っ、そうなんです! この猫さんは…!」



金剛「提督の名前をつけて、夜な夜な慰めに使っている愛玩動物デスネ?」



三日月「………は?」

金剛「ヅッキーも提督を想うライバルだったんですネ! 提督のLOVEは譲りませんヨ!」

三日月「あの」

金剛「私もヌイグルミに提督の名前をつけて、抱いて寝たりしてますが、猫の名前まで提督にするとは上級者デース! 寂しい夜は舐めさせたりしてるんデショ。榛名がよくやってました」

三日月「ひえっ…」

金剛「比叡じゃなくて榛名ヨ?」

三日月「あっはい」(榛名さん…)

金剛「しかしヅッキー、大事なことを忘れてマース。どんなに妄想の中で淫らに絡もうと所詮は代替物、本物に抱いてもらわなければ意味はないのデース!」

三日月「いえ、あの…抱くとか抱かないとか…」///

金剛「もー! 何をカマトトぶってるデスカ!」

三日月「カマトト…」

金剛「ヅッキーも提督LOVEならわかるでしょ? ……元よりいつ海に沈むかわからない私達です。好きな殿方と肌を重ねたいと思うのは自然なことよ」

三日月(金剛さんが真面目な口調に!? って、これじゃ「勘違いしてます」って突っ込めない!!)

金剛「ヅッキー、いえ三日月…貴女がどれだけ提督の事を愛していようと…一番の寵愛を受けるのはこの私。負けはしません」

三日月「」

金剛「…というわけで精進あるのみデス。待ってて提督! 提督に一番愛してもらうのは私デース! バーニング・ラァァァヴ!!」ダダダーッ

三日月「」

(提督)あっはっはwwwww 見事に勘違いしたまま行っちまったなぁ。これで三日月は夜な夜な猫に慰めさせてるキャラまで付いたわけだ

三日月「元はと言えば司令官が、金剛さんにエッチな真似したからでしょ! もう… ね、猫さんに舐めさせてるなんて、噂になったらどうするんですかぁ!」

(提督)凄えよミカは! って箔がつくんじゃないか? 一気に如月を抜くお色気キャラになれるぞ、ハハ

三日月「…」

グイッ モチアゲ

(提督)はは、は…?

三日月「エッチなことばかり言ってる発情期の猫さんは……保健所で去勢してもらいましょうか……」

(提督)「」ヒュンッ


三日月「……」ムスー

(提督)悪かった、悪かった。ふざけすぎたよ、ゴメン。

三日月「もう司令官はずっと猫さんのままでいればいいんです!」ぷんすか

(提督)それは困るって。 ほら、頼むから機嫌直しておくれよ。天使なミカちゃんの笑顔が台無しだぞ~

三日月「むー……仕方ないですね。もう、あんまり調子に乗っちゃダメですよ?」

(提督)乗らない乗らない!(ふふ、チョロ…三日月「今、チョロいとか思いませんでした?」じとー

(提督)オ、オモッテナイヨ…


そんなこんなで日が暮れて…



三日月「じゃあ司令官。私は戻りますけど、本当に軒下で夜を過ごして大丈夫ですか?」

(提督)ま、野営訓練だと思って過ごすさ。鎮守府の部屋に入って見つかると、また騒動になりそうだからな。

三日月「朝になったら何か食べるもの持ってきますから。明日は工廠の妖精さんに聞いてみましょう」

(提督)そうだな。内地にある、軍本部直属の工廠なら何か情報があるかもな。

三日月「明日は遠くまでお出かけですね」

(提督)ああ、今日はゆっくり休んでくれ。

三日月「はい、おやすみなさい、司令官」

(提督)やれやれ、大変なことになっちまったな…

(提督)元に戻る手立てがあればいいが…

(提督)………




(提督)…誰だ? 出てこい

ガサッ

白猫「…」

(提督)っと、猫か? 今はお仲間か。悪いな、ここ、お前さんの縄張りだったか?

白猫「…」ササッ

(提督)あら?行っちまった。 まあいいや、寝よ。

とある別の場所

??「お帰りなさいませ。どうでした?」

白猫「この姿も役に立つな。気付かれずに近づけたよ。」

白猫「クク、予想外の出来事になったが、奴をぶちのめさねば気が済まん」

??「……」キュン

??「 猫の姿になってまで悪者顔してる司令官が可愛い……」ダキッ

スリスリ

白猫「うおっ!? やめろ! 暑苦しいわ!」

白猫「離せ! タ級!」

タ級「猫の顔で凄んでる…可愛い…うぇへへ」

白猫「なにをゆるんだ顔してやがる! あとスカートをはけ!痴女か!?」

タ級「司令官のためなら何にでもなります。痴女でも性奴隷でも肉便器でも… いつ求められてもいいようにスカートもはいてないんですよ」

白猫「ふん、この件が終わったら可愛がってやるよ。それまでは俺のサポートだ」

タ級「はーい」




朝~

テクテク

三日月「おはようございます!」

雪風「あっ! おはよーございます! 三日月ちゃん!」

三日月「昨日は、その…取り乱してご迷惑をおかけしました」

雪風「み、三日月ちゃん、よかった!元に戻ったんだね! しれぇはどこにいるかわかる?」

三日月「えーと、本部で対策会議にかりだされているんですよね」

雪風「そう!そうだよ! しれぇは猫になったりなんかしてないんだよ!」

三日月「え、えぇ」
三日月(なんだか雪風ちゃんを騙してるみたいで気が引けます)


雪風「あれ?それはそうと今日は私服なの?」

三日月(私服)「はい。今日はちょっとお出かけすることになりまして、外出届も出してきました」

雪風「うん!それがいいですよ! 昨日はいろいろ大変だったし、気分転換が必要だよね! あ、そうだ。雪風、今から浜風ちゃんや神通さんに三日月ちゃんが元気になったこと伝えてきます! それじゃ~いってらっしゃい!」タタタッ

三日月「いってきまーす。…って雪風ちゃん、あんなに走って誰かにぶつからないか心配です」







曲り角

ドシン!

雪風「あっ!?」

??「きゃっ」

雪風「あうっ、ごめんなさいです。って、三日月ちゃん!?」

??「え?」

雪風「うそ…さっき向こうで別れてきたばかりなのに何でこっち側に?」

初霜「あの…私は初霜ですよ?」

雪風「あ”っ!? ご、ごめん! さっきの三日月ちゃんと似た服着てたから!」

初霜「もうっ! 雪風ちゃんひどいです! 日本で最後の戦友だったんですよ!?」

閑話休題

三日月「さて、たしか司令官はこの辺に…」

黒猫「…」

三日月「あっ、いました。あんなとこにうずくまって。司令官~」

黒猫「…」

三日月「あれ? もしかしてまだ眠ってるんじゃ… ダメですよ、そんなことじゃ。野生で生き残っていけませんよ」

三日月「なぁーんて…」チョイタッチ

ポロッ

三日月「へ?」

黒 / 猫 ゴトリ(首の落ちる音)

三日月「」

三日月「きっ…」 動くな! 三日月「…っ!? 首筋に何か乗って!?」 (提督)なんだ?三日月か… 三日月「あ… あ… 司令、官?」 (提督)どうしたんだ?そんな青ざめて… お?今日は私服なんだな?もしかして彼氏とデートか? ん? 三日月「わああぁぁ!司令官! 」 (提督)うわっ 三日月「な、なんなんですか?あれ? ね、猫さんの首が落ちて、司令官がし、死んじゃったかと思ってっ…!」 黒 / 猫 ←あれ (提督)落ち着け。あれはダミーのぬいぐるみだ。鎮守府内とはいえこの小さな姿だからな。野外で姿を晒して眠りこけるほど不用心じゃない。 三日月「おどかさないでくださいぃ」 三日月「それにしても意外とたくましいんですね」 (提督)これでも訓練を受けた軍人だぞ 三日月「少し見直しました」

三日月「きっ…」

動くな!

三日月「…っ!? 首筋に何か乗って!?」

(提督)なんだ?三日月か…

三日月「あ… あ… 司令、官?」

(提督)どうしたんだ?そんな青ざめて… お?今日は私服なんだな?もしかして彼氏とデートか? ん?

三日月「わああぁぁ!司令官! 」

(提督)うわっ

三日月「な、なんなんですか?あれ? ね、猫さんの首が落ちて、司令官がし、死んじゃったかと思ってっ…!」

黒 / 猫 ←あれ

(提督)落ち着け。あれはダミーのぬいぐるみだ。鎮守府内とはいえこの小さな姿だからな。野外で姿を晒して眠りこけるほど不用心じゃない。

三日月「おどかさないでくださいぃ」

三日月「それにしても意外とたくましいんですね」

(提督)これでも訓練を受けた軍人だぞ

三日月「少し見直しました」

(提督)で? 何だっけ? 朝ごはんか? それにしてもその服似合ってるじゃないか。ホントにデートか?

三日月「違います! 食べ物は持ってきましたけど…。今日は中央の工廠に行くって言ったじゃないですか」

(提督)おー、そうだった、そうだった。まぁ、まずはメシを食ってから…

もぐもぐ

(提督)ん、何だか薄味だな。

三日月「司令官は今、猫さんになっているじゃないですか? だから塩分の濃いご飯はダメだと思って」

(提督)ふぉぉ!?さすが三日月! 俺の身体の事まで考えてくれるんだな

三日月「おまかせください」えっへん

(提督)まったく…三日月はいいお嫁さんになるぜ?

三日月「えっ!? 私がそんな… お嫁さんとか… ありえないです」///


(提督)いやいや… 気立てがきいて、優しくて、料理も上手で…

三日月「えへへ…」テレ

(提督)真面目で仕事も優秀で…

三日月「そ、そんな…」テレテレ

(提督)おまけに床上手とくれば引く手数多さ!

三日月「最後の! 最後のおかしいですよっ! 誤解を生むような発言はやめてくださいっ!!」

(提督) 『そろそろですか?』→『もっと頑張らないと、ですね』の手ほどき感(意味深)

三日月「あ、司令官、本当に去勢をお望みですか?」真顔

(提督)ひいっ!? 種無しは嫌! 種無しは嫌!

三日月「もうっ! 司令官はエッチなのが玉にキズです」プンプン

(提督)エロいのは男の罪、それを許さないのは女の罪だ。(°3°)

三日月「はぁ…いつまでもおしゃべりしてたら日が暮れちゃいます。はやく工廠へ行きましょう」

(提督)おう、そうするか。

テクテク…

スタスタ…


三日月「でも…」

(提督)ん…?

三日月「なんだか司令官が猫さんになってから、いっぱいお話してる気がします」

(提督)そうだな。俺もこんなに三日月がまくしたててるのは初めて見るかもな。普段の優等生は何処へやら、だ。

三日月「い、いつもは司令官の前だとちょっと緊張してたんですよ。大人の男の人ですし…」

三日月「でも…ドタバタしたのもありますけど、猫さんの姿だと普通にお話できちゃいますね」

(提督)フン、威厳の無い姿で悪かったな

三日月「拗ねないでくださいよぅ。猫さんの姿も可愛いですよ」

(提督)このままの方がいいとか言ってくれるなよ?

三日月「あはは、流石にそれだと皆困っちゃいますよ~」

しばらくして

三日月「あっ!」

(提督)なんだ? 忘れ物か?

三日月「いえ、バスや電車はどうしましょう? 内地にある本部の工廠まで歩いては遠すぎますし、猫さんを連れたままだと乗せてくれないんじゃ…」

(提督)ああ、そっか。ふむ、ペット用のケージかバスケットがあればよかったが。流石にそんなものは用意してないしな。

三日月「どうしましょう~」

(提督)なに、簡単だ!

ぴょんっ もぞもぞ…

三日月「ちょっ!? なんで服の中に入ってくるんですかぁ!? ひゃんっ、や、やだ…っ、どこ触ってるんですか、もうっ!」

(提督)こら、暴れるな。 ん、と、この辺か…。おい三日月、その辺の窓ガラスかなんかで自分の姿を見てみろ。

三日月「え、ええっと… 」チラッ

三日月「あ…」

(提督)どうだ?胸は大きくなったか?

三日月(偽乳)「えぇ……本気ですかぁ?」

(提督)少しの時間しのげればいいのだ。耐えろ。胸の大きな子がバスや電車に乗ってると思わせろ。

三日月「うう… 重い。上半身のバランスが取りにくいです…」
三日月(潮ちゃんもこんな重い思いをしてるのかな?)

その頃の第七駆逐隊

潮「くしゅん!」プルン

朧「大丈夫?」

漣「おおぅ、くしゃみで胸が暴れ出した」

曙「なんて凶暴な胸… 今の私じゃ敵わないわね…」

朧&漣(曙じゃ何年たっても敵わないんじゃ…)

潮「はうぅぅ…」

ブロロー

(提督)ふうっ、やっと降りられたな。

スタッ

三日月「ううううっ… 周りの乗客に変な目で見られましたぁ~」

(提督)それだけ三日月のスタイルが良かったのさ。

三日月「絶対胸に詰め物してるのバレてましたよ!! クスクス笑われてました!!」

(提督)よかったな! イヤらしい視線にさらされたわけじゃないんだ、汚らわしくはないだろう!

三日月「別の意味で良くないです!」

(提督)ま、過ぎたことはともかく… やっと到着だな


【海軍本部直属工廠】どーん


三日月「おっきいですね」

(提督)これでも直属工廠のうちの1ケ所なんだけどな。

三日月「こんなのが全国にあるんですか…」

(提督)ああ…主に新型艤装の研究やそれを使う艦娘適合者の調整訓練、最終運用試験なんかかな?

三日月「知りませんでした。私は訓練校から直接鎮守府に向かわされて艦娘になりましたから」

(提督)まぁ、関係するのは大本営のお偉方か技術畑の連中かな。俺たちも今回は組織運営の方には用はない。

三日月「工廠で作業してる妖精さんに、ですね!」

(提督)ああ。艦の魂を艤装と人間にリンクさせるのは呪術的な要素も多いからな。深海棲艦や深海司令官の呪いの対処法もあるだろ、きっと! 多分! おそらく!

三日月「確信が持てないところが辛いです」

三日月「さぁ、司令官、妖精さんのところへ行きましょう」ダキアゲ

(提督)お、おい。自分で歩くよ。

三日月「ダメです。こんな所を猫さんが勝手に歩いてたら見咎められてしまいます。お行儀よくしないと」

(提督)艦娘とはいえ、猫を抱いた私服の女の子が歩いてるだけでも、だいぶ場違いだけどな。

三日月「やっぱり制服で来た方が少しはマシでしたでしょうか。せっかくの遠出なので浮かれてしまいました」

(提督)まぁ、何かあったら俺の名前を出せよ。俺としては三日月の私服も珍しくて可愛かったから眼福だけどな。

三日月「ほ、褒めてもなにも出ませんよ」ぴょこぴょこ

(提督)(アホ毛がものすごい勢いで動いてる…)



三日月「あら?」

(提督)なんだ?

三日月「あそこに女の子がいます。あの子も艦娘でしょうか?」

(提督)あれは…朝潮型の娘だな。

三日月「あのっ…こんにちは」

??「…ん。…どうも。…なに、貴女、猫なんか連れて」

三日月「えっと…私、黒猫提督(※)鎮守府所属の睦月型駆逐艦三日月です。ちょっとこの猫さんのことで、こちらの妖精さんたちにご相談があって」

満潮「ふーん。私はショタ提督(※)鎮守府所属の朝潮型駆逐艦満潮よ…。今日はうちの司令官が装備の事で妖精さんに相談があって……」



ショタ提督「だーかーらー、妖精さんっ! 僕達提督も艦娘みたいに海に出て戦える装備はないの!?」バンバン



三日月「わっ!?」

(提督)なんだぁ?

満潮「はぁ…司令官ったら」

※便宜上の呼び名です
ショタ提督&満潮ちゃんについては『提督「満潮ちゃんの髪をほどきたい」』からのチョイ役

妖精さん「そんなものは無い!そんな便利な物があれば世の提督が深海棲艦を滅ぼしとるわい! そもそもお前さんがその年齢で提督の技量を修得し、曲がりなりにも深海棲艦の侵攻を水際で食い止められるようになったのだって相当な技術の進歩の賜物なのだ」

ショタ提督「だからってさ、満潮ちゃ…いや艦娘の子達だけに戦わせるなんておかしーよ」

妖精さん「そもそも指揮官が前線で武器を振り回してどうする。提督の能力とは本来、艦隊指揮に特化されているのだ。撤退時にしんがりを務める戦闘力があるだけでも御の字なのだ」





ショタ提督「まったく~! 戦いはこれから激しくなるっていうのに…」

満潮「司令官は頑張る方向を間違えてるのよ。戦いは私たちに任せなさい」

ショタ提督「むぅ」

満潮「でも……いざとなったら助けに飛び出してきてくれるんでしょ?」///

ショタ提督「もちろんだよ!! 飛行甲板だろうが、連装砲ちゃんだろうが、二式大艇ちゃんだろうが何だって使って助けに行くよ!」

満潮「それだけで…十分よ」///

ショタ提督「ふふっ、行こうか」

満潮「えぇ」








三日月「な、何だったんでしょう? 彼らは」

(提督)若いねぇ…

三日月「あの男の子も司令官の職位にあるんですか?」

(提督)少年提督、ってやつだな。詳しく話すと長くなるが、簡単に言うと古今の名将の魂を分霊してきて、依代の少年にリンクさせるらしい。まぁ艦娘の男版だ(艦船は女性とリンクし、英霊は男性とリンクする)。で、晴れて天才少年のできあがり、と。

三日月「そんなことが…。じゃああの男の子は、依代にされて戦場に送り込まれたんですか?」

(提督)さぁな? 基本的には最低でも軍の訓練を受けさせるそうだが。もしかしたら本当に天才少年で素質があったかもしれないし、艦娘にホの字で被験者に名乗り出たかもしれん。

三日月「ホの字って…そんな理由で」

(提督)いいじゃないの、愛の力wで提督になるって。大本営も次代の人材集めは必死だからな。素質ある奴が集まるなら、案外推奨したりして。三日月も未来の提督を引っかけてきたらどうだ?

三日月「私はっ!そんなつもりで「あの人」に近づいたわけじゃ…」

(提督)ん?誰?「あの人」って?

三日月「あ”っ!?」

(提督)ほーう……ほうほうほう……ほうほうほうほうほう…… ニヤニヤニヤニヤニヤニヤ

三日月「忘れて! 忘れて下さい!」アタフタ

(提督)いやいや、いいんだよぉ? 恋愛禁止だなんて野暮なことは言わない。こりゃ元の姿に戻ったら、睦月と如月を幹事にしないとな。睦月型で最高に素敵な恋バナパーティをしようぜぇ~

三日月「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




妖精さん「う る せ ぇ ぞ !」




三日月「ひいっ!?」
(提督)ひえっ!

妖精さん「何なんだお前は?さっきから猫を抱いたまま、独り言を言ったり叫んだり!」

三日月「あーっと、すみません、すみません!」

(提督)妖精さんがいるの忘れてた。

三日月「あのっ、単刀直入にお聞きします。深海棲艦の呪いで猫さんになっちゃうということはありますか?」

妖精さん「呪い、だと~?」

三日月「鎮守府の司令官が猫さんになっちゃう呪いです」

妖精さん「変なこという駆逐艦だな。その抱えてる猫が司令官だとでもいうのか?」

三日月「そうです」

妖精さん「はーん…この間抜けヅラの猫がねぇ」じー

(提督)何だとコラ!妖精さんだからってタダじゃすまんぞ。フェアリーダンシングでロイヤルハートブレイカーかますぞ!

フシャー!!

三日月「司令官、威嚇しないで下さい」メッ

妖精さん「うーん、何言ってるかわかんねぇな」

三日月「でもでもっ! この猫さんは司令官なんです! 私を守るために深海司令官と戦って、その時に受けた呪いが原因で…」

妖精さん「深海司令官ねぇ。話は聞いたことあるが、呪いを使うなんて情報は入ってきてねぇなぁ」

三日月「そ、そんなぁ」

(提督)ちぃっ、ここにも情報無しか




妖精さん「深海棲艦“が”呪いをかけるってのは聞いたことない」

(提督)ん?

三日月「深海棲艦“が”?」

妖精さん「そんなことができるなら、とっくにどの鎮守府の提督も猫に変えられて陥落してるわな」




妖精さん「深海棲艦が猫に変える呪いを使うとは聞いてないが… “提督が猫になる話”は聞いたことあるぞ」

三日月&提督「ええええぇぇっ!?」

三日月「ど、ど、どこで聞いたんですか! いえ、元に戻る方法は? 教えてください」

妖精さん「そんなこと言われてもなぁ… 水兵服姿の女の子が、艦娘より強かったり出しゃばって戦う提督を猫にしている、って都市伝説みたいなものだぞ」

(提督)女の子?

三日月「水兵服って…海軍の関係者でしょうか」

妖精さん「さぁね。悪いが私の知ってる話はこれくらいだ。 さぁ、満足したら帰った帰った!」

三日月「あわわ…」

(提督)まったく、せっかちな妖精さんだ

三日月「あのっ、教えていただきありがとうございました」ペコッ

帰り道

三日月「結局、具体的なことはわかりませんでしたね」

(提督)原因が深海棲艦でない可能性が出てくるとはなぁ…

三日月「でも、司令官が猫になった時、あの場所には司令官と深海司令しかいませんでしたよね」

(提督)“提督が戦っていた”って条件は一致してるな。それも、海軍側と深海側の提督がいっぺんに条件を満たしたことになるけど…

三日月「あの場に誰かいた、ということでしょうか」

(提督)さぁな

(提督)しかし、まいったな。帰りは人の姿に戻れると踏んでたんだが ←in三日月の服

三日月「……うぅ、また胸に詰め物」


ママー、あの子服に何か入れてる~
見ちゃいけません!


三日月「はぅ~」///

(提督)よし、公共交通機関はくぐり抜けたな。しかし、金剛の胸は据わりが良かったが、三日月は出っ張りが少なくて掴まるのに大変だったぜ、ふぅ。

三日月「女の子の胸にしがみついておいて何て言い草ですか、もう!」

(提督)怒るな怒るな。ああ でも、こんなこと件のボーイフレンドには見せられないか

三日月「だからっ! そういうのじゃないんです!」

(提督)ほぅ? じゃ、どういうの?

三日月「そ、それは…黙秘です! 黙秘します!」

(提督)ふふ、だんまりが通じると思っているのか?

三日月「な、何されたって喋りませんから!」

(提督)くっくっく、それは尋問のし甲斐が……

(提督)ッ!? 三日月っ!?

ドンッ

三日月「きゃあっ、何でいきなり体当たりするんですか? 尻もちついちゃったじゃないですか!はっ?まさか尋問ってカラダに聞くとかじゃ…」

いきなり黒猫提督に体当たりされた三日月。

当然のことながら文句を述べるがしかし、その言葉は最後まで続かなかった。
尻もちをついた彼女の眼前、つまり立っていたままだったら直撃するコースを白い何かが猛スピードで突き抜けていったのだ。

ぎょっとする三日月。
その「白い何か」を見つめる黒猫提督。
そして着地した「白い何か」が動いた。

「猫…さん…?」

提督とは対をなすような真っ白な猫であった。ゆっくりと、しかししなやかな力強い動きでこちらに向かってくる。
いきなり飛んできた白猫に怪訝な表情を見せる三日月とは対照的に、黒猫提督は険しい表情で白猫に声をかけた。

「昨晩ぶりだな、今日はえらく攻撃的じゃないか」

「え…と、司令官のお知り合いですか?」

「昨日の夜、寝る前にな。会話もしなかったがな…」

「昨日のは様子見…やり合うつもりはもともと無かった。昨日は、な。」

「しゃべっ……た!?」

白猫が黒猫提督と会話するのはわかる。だがそれが自分にも聞こえたことで三日月は驚きの声をあげた。

「そう驚くことはないだろう駆逐艦? そっちの黒猫野郎の言葉はお前にも届いているのだからな」

そんな三日月を意に介することなく、白猫は話し続けた。三日月は今、艤装もつけていないし制服でもない、一見すればただの少女だ。なのに、艦娘、それも駆逐艦と見抜かれたのである。この白猫は自分を知っているのか?と三日月は訝しみ、そしてあることに思い当たった。

『司令官が戦うと猫に変えられてしまう』
『あの場所には敵と味方の「司令官」がいた』
『味方の方は黒猫になっている』

「司令官、まさかこの白猫さんは…」

「俺も同じ事を考えたよ」

「フフフ」

白猫はヒゲをピンと立てて不敵に笑った。

「どういう理屈かはわからんが、あの戦いで二人とも生き延びて猫になっちまったみたいだな。やっぱり深海側の呪いじゃないのか…。いや、そもそも自爆したくせに、なんでお前が無事なんだよ」

黒猫提督が疑問をぶつける。もっとも深海司令官も猫になっている以上、「無事」とは言い難いが。

「どうもあの場におかしな力が働いたみたいだな。だがこの際、それについては後回しだ。あの時、遅れをとった借りを返させてもらうぞ!」

人間の姿をしていた時に喫した敗北の雪辱を期する白猫。彼にとっては元の姿に戻ることより、黒猫提督へリベンジすることが重要だった。全身の毛を逆立てて戦闘態勢に入ろうとしている。

それに待ったをかけたのが三日月だった。

「待ちなさい! 司令官の前に私が相手です!」

「ふん、艦娘が深海司令官である俺に敵うわけがあるまい」

「以前ならともかく、猫さんの姿になってるなら私だって! 抜錨!!」

三日月が私服姿から艦娘の姿へ変身する。
艦娘はそれぞれの艤装、制服を転送する力を備えており、緊急時には外出先でも艦娘の能力を発揮できるのだ。

「先手必勝です!」

いきなり単装砲を放つ三日月。猫に向かって兵器を使用するというとんでもない絵面だが、相手は深海司令官である。判断は悪くないはずだ。

が。

「ふん」

白猫に届く前に砲撃が無効化された。いや、正しくは受け止められたのである。

「三日月! 気を付けろ! もう一体いるぞ!」

黒猫提督がさけぶ。その指摘通り、白猫の前に一体の深海棲艦が立っており、彼女が三日月の砲撃を受け止めていた。

「まったく過保護にも程があるぞ…タ級」

「だって…司令官はあの黒猫と戦うんでしょ? この黒髪に邪魔はさせないよ」

「戦艦タ級…」

「あなたの相手は私がしてあげる。おいでおチビちゃん」

「くっ」

さすがに無視できる相手ではない。三日月は白猫を標的から外さざるを得ず、戦艦タ級とマッチアップする状況になってしまった。
黒猫提督の援護ができず、顔をしかめる三日月。

「申し訳ありません、司令官。お力になれなくて」

「構わん、構わん。むしろそんなところに深海棲艦を野放しにしておく方が厄介だ。見たところ、そのタ級1体のようだし、そいつはお前に任せたぜ、三日月!」

「はいっ! お任せください!」

旧型の睦月型駆逐艦が戦艦クラスと相対するという不利な状況でも、黒猫提督から信じて任されたことは三日月の戦意を高揚させた。

「負けたくはありません!」

こう見えて彼女は負けず嫌いなのである。

こうして提督と深海司令官の2度目の対決は、艦娘と深海棲艦が戦う横で猫同士が睨みあうという奇妙な状況で始まった。

「いっきまーす!」

三日月は速度を活かし、タ級の側面、背後に回り込むように立ち回る。
艦船の魂を受け継ぐとはいえ、身体は人間のソレである。純粋な艦隊戦とは訳が違う。クラスが上の戦艦とだって戦い方はある。

「すばしこい奴!」

タ級は大口径大火力な分、砲の取り回しは悪い。
足を止めての撃ち合いならともかく、近づかれてはアドバンテージも少なくなる。
大型艦は接近を許さないことが大事。エスコートに従事することの多い三日月はこの点をよく理解していた。だからこそこの状況は、大型艦の弱点を突くことができるのである。


しかし…


(う…攻めきれません)

三日月は肉薄できずにいた。純粋に1対1ならアクロバティックに接近して、至近距離から魚雷を撃ち込むことも可能だろう。

(司令官…)

だが今は正確には2対2なのである。
マッチアップは猫対猫、娘対娘であるが、いざとなったら上官のフォローに入らなければならない。たとえ上官自身が不要だ、といってもだ。
それはタ級も同様であり、結果として三日月とタ級は戦うというより、ともに上官の護衛、もっと言えば上官同士の戦いを「見守る」という形になった。

それくらい黒猫提督と白猫深海司令官の戦いは激しいものだった……

しなやかな肉食獣の身体がぶつかり合う戦い。前足は相手を突き飛ばし、鋭い爪は肉を切り裂き、隙あらば喉笛を食い千切ろうと狙って噛みつき合う。
野生を縛る理性はいらないと言わんばかりのビーストモードであった。








(提督)おおりゃあ! ネコパーンチ!

(深海司令官)何の!肉球ガード!

ポカスカ ポカスカ

(深海司令官)くらえっ、ひっかき攻撃!

(提督)いでっ!? やりやがったなこの野郎!お返しだ!

バリバリっ バリバリっ

(提督)うおーっ!噛みついてやる!

(深海司令官)俺だって! がぶっ!

取っ組みあい~ ゴロゴロ~ 地面転がり~





タ級「な、なんて激しい闘い…」

三日月「一瞬たりとも目が離せません」

(提督)ちいっ! おい、今は決着をつける前に、人間の姿に戻る方法を探すべきじゃないのかよ!?

(深海司令官)知らんなぁ! 俺がすべき事は、お前に敗北の二文字を刻むことだぁ!!

ドシン!!

(提督)うぐっ、ぐあっ!

(深海司令官)ふっ、次は貴様に戦死の二文字を刻んでくれる!

三日月「司令官!危ない…っ!」バッ

タ級「ちっ、こいつッ」

(提督)やめろ!来るな、三日月!

(深海司令官)はっ!まずは貴様から死ねぇ!!

三日月「ッ!!」




「あれぇ? ダメじゃない、猫ちゃん達。 こんなとこでケンカしちゃ~」


(深海司令官)…… ピタッ


(提督)…… パタッ


三日月「えっ?」

タ級「司令官たちの動きが…とまった?」



女の子「もーっ! せっかく私のペットにする予定だったのに勝手に逃げ出したあげくケンカするなんて。もっと強めに洗脳しなきゃ」

タ級「水兵服の少女?」

三日月「水兵…少女… まさか?」

女の子「あ。どうも初めまして。私、エラー娘って言います」

エラー娘「この提督たちは、本来の役割を越えて出しゃばった活躍をした罪で、猫にしちゃいました。時々いるんですよね、この世界の主役は艦娘と深海棲艦なのに、自分で戦わなきゃ気が済まないっていう人達が。なんなんでしょうかね? 女の子だけに戦わせてはおけない!(キリッ) とか 戦う俺カッコイイ! とか思ってんですかねぇ」

三日月「あ、あなたが猫になる呪いをかけたんですか!?」

エラー娘「そうですよ。この猫ちゃん達はこれから私の下でエラー猫として働いてもらいます」

(提督)……

(深海司令官)……

エラー娘「元気が有り余ってるみたいだし、いい手駒として使えそうです」

タ級「ふざけるな!司令官を元に戻して!」

三日月「エラー娘さん!貴女はいったい何者なんですか!?」

エラー娘「わたし? そーですね。神さま、というのはおこがましいので、神の御使い…みたいなものですかねぇ」

タ級「神…?」

エラー娘「この世界のイレギュラー、いなくなった方が良いものを排除していくんですよ。そう、ショタ提督なんかも排除対象ですね。ああいうのはいけません」

三日月「そんな…少年提督は海軍本部が決めたもののはず。そんな勝手に…」

エラー娘「いけないものはいけないんです。そう決まってるんです」

タ級「ちょっと!ショタなんてどうでもいいけど、うちの司令官は元に戻してよ!」

エラー娘「しつこいですね。干渉するなら貴女達もイレギュラー扱いです。エラー猫ちゃんたち、やっておしまいなさい」

(深海司令官)……

タ級「な…」

(提督)……

三日月「司令官!司令官! 正気に戻ってください!」

エラー娘「ふふ、貴女たちもエラー猫になった上官に痛めつけられれば諦めもつくでしょう?」

タ級「やめて!司令官!」

三日月「しれいかぁーん!!」


ビ カ ー ッ

三日月「!」

タ級「!?」

エラー娘「何の光ィィ!?」



提督「ふぅ、三日月の声で目が覚めたぜ」

深海司令官「なかなか可愛い泣き声だったぞタ級」



ミカ&タ「司令官!!」

エラー娘「そ、そんな、猫の姿からも洗脳からも抜け出すなんて」

深海司令官「ふん、手駒になんてされてたまるかと憤っただけだが… 呪いをかけた者の前で強く念じれば解けるのか? よくわからん仕組みだな」

提督「案外、お前の方がイレギュラーなんじゃないか、エラー娘?」

エラー娘「な、なんですって」

提督「提督の数だけ艦娘がいるんだ。逆に艦娘の数だけ、鎮守府という世界の数だけいろんな提督がいても別にいいだろ」

エラー娘「このっ…どこまでも主張する出しゃ張り過ぎめっ!」

提督「当たり前だ!指揮官が範を見せなくてどうする! おい、深海野郎!合わせろ!」

深海司令官「ふん、貴様が俺に合わせろ!」

提督「ちっ、勝手にしろ! いくぞ、エラー娘! 」

エラー娘「なにっ、このふたり連携して!?」

深海司令官「出しゃ張りで当たり前だ」

提督「俺たちは…」


「「戦う俺カッコイイ!!って思ってるからな」」ダブルテイトクキーック!


エラー娘「きもーーーーっ!?」チュドーン



深海司令官「案外他愛ないな」

タ級「司令官… 素敵、濡れた」

提督「よっと…どうだ三日月、俺カッコよかっただろ?」

三日月「さすがにカッコつけすぎだと思いますよ」

提督「」

提督「ま、まぁそれはいい。 あとの問題は…」

三日月「深海司令官…ですね」

提督「あぁ」



深海司令官「さて、お互いヒトの姿に戻ったわけか…」

提督「どうする、決着をつけるか」

深海司令官「……やめだ」

タ級「えっ?」

深海司令官「邪魔が入ってしらけた。次は俺たち深海棲艦の艦隊が、貴様の鎮守府を潰してやる」

タ級「司令官、いいの?」

深海司令官「帰るぞ。この後タ級を可愛がってやらんといけないからな」グイッ

タ級「あっ…司令官てば」///





三日月「深海司令官たちが下がっていきます。いいんですか?司令官」

提督「うーん、最後にいちゃつきやがったから、ちょっと腹立つな。撤退を認めると見せかけて後ろから撃っちゃおうか?」

三日月「さすがにそれは…」

三日月「それにしてもよかった。司令官が人間の姿に戻れて本当によかったです」

提督「あぁ、三日月が頑張ってくれたおかげだな」

三日月「わたしの力なんか…そんな…」

提督「謙遜しなくていい。正直、猫になったとき、お前が側についていてくれて安心したんだよ。一人だったら不安で潰れていたかもしれん」

三日月「わりと好き放題やってませんでしたか?」

提督「そんなことはないぞ。三日月がいてくれたから自然体でいられたんだっ!」

三日月「あ、ありがとう…ございます……」テレテレ

三日月「そっ、そういえば、司令官はどうやって猫の呪いから人の姿に戻ったんですか?」

提督「うーん、実は詳しくはわからないが… 声が聞こえたんだ」

三日月「声?」

提督「三日月や鎮守府の皆の声がな。それを聞いたら人の姿に戻って、鎮守府に帰らなきゃいけないな、って強く思ったんだ」

三日月「司令官」じーん




提督「鎮守府に戻って、睦月型の皆と最高に素敵なコイバナパーティをしなければいけないからな!!」b グッ

三日月「やっぱり司令官は猫さんのままでいればよかったんですっ!!」/////

おしまい

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom