【艦これ】真面目な子ほど壊れやすい (44)
響「――それでね、司令官はいつも私の心配をするんだ」
三日月「はは、司令官らしい……わね」
響「あぁ、彼は本当に優しい」
三日月「そうね」
響「あっ、そうだ。今度司令官の誕生日があるのは知っているかい?」
三日月「うん、知ってるわよ」
響「その時にさ……じ、実はプレゼントを渡したいんだ。でも何を渡せばいいか分からない。だから良かったら……その」
響「――『暁』も一緒に何を渡せばいいか考えてくれないかな?」
※短め
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三日月「……ええ、いいわよ」 ニコ
響「す、スパシーバ! 助かるよ」
三日月「ううん。響の頼みだもの……一人前のレディーに……任せなさい」
響「暁は本当に、いざという時には頼りになる。本当にありがとう」
三日月「いいのよ。あと響……そろそろ休憩時間が終わるんじゃない?」
響「あっ、本当だね。それじゃあまた後で」
三日月「うん。秘書官の仕事頑張ってね」 フリフリ
響「スパシーバ。頑張るよ」 フリフリ スタスタ
三日月「…………」
三日月「……響さん、ごめんね……」
三日月(暁さんがこの鎮守府からいなくなってから、しばらく経った)
三日月(彼女はとても優秀な艦娘だった。だから戦場に出ることも多くて、よく響さんと一緒に出撃していた)
三日月(それに、暁さんはとても優しい人だった。私がこの鎮守府にやってきた時も、色々な事を教えてくれて、鎮守府を案内してくれた)
三日月(そんな暁さんが、私は大好きでした。だけど、現実は非情だ)
三日月(暁さんは……もう、いない)
三日月(司令官に理由を聞いても、ごめん……本当にごめんと謝り続けるだけで、何も教えてくれなかった)
三日月(その様子を見て、察した)
三日月「暁さんは……戦場で……」
三日月(ショックだった……本当に。大好きだった、同じ駆逐艦として尊敬していた暁さんがいなくなったことは、本当にショックだった)
三日月(でも、響さんの場合は、それを通り越してしまったんだ)
三日月(最初は暁さんがいなくなったことに対して何も感じていないかのような様子だった。私も精神的に不安だったからか、その時に強く言ってしまったんだ)
三日月『ど、どうしてそんなに普通でいられるんですか!』
三日月(キョトンとしていた。いきなりどうしたんだろうと言いたげな顔だったのを、今でも鮮明に覚えている。そしてあの時言われたことも忘れる事はない)
響『ど、どうしてそんなに怒ってるんだい? 暁』
三日月『……え?』
三日月(彼女は……壊れてしまったんだ)
三日月『な、何言ってるんですか! 私は三日月ですよ!? あ、暁さんは――』
響『……何言ってるんだい? 君は暁じゃないか』
三日月『……ひ、響さん……』
響『この黒い髪……ちょこんと跳ねてる髪の毛……ふふふ、君は暁だよ』
三日月『……』
響『あは、あはははは……そうだよ。君は暁だ。ねぇ、暁』
響『昨日はごめん……私の事をかばった時、とても痛かっただろう? ……本当にごめん……』
響「……ごめんなさい……暁……ごめんなさい……!!」 ポロポロ
三日月『……っ』
三日月『ひ、響さ…………響!』 ダキッ
響『ごめんなさい……ごめんなさい……!』
三日月『だ、大丈夫よ! あ、あんなのへっちゃらだったわよ』
三日月『……あ、暁は一人前のレディーなんだからっ!』
三日月(それ以降、私はずっと響さんの前では、暁さんを演じている)
三日月(これが正しいことだとは思われないかもしれない。疲れるときだってある)
三日月(でも、姉妹を亡くした響さんの辛さを考えたら……これでいいんじゃないかって思う)
三日月(暁さんも大好きだったけど、響さんの事大好きだから。友達だから)
菊月「三日月……辛くないのか?」
三日月「あっ、菊月。辛くない……って言われたら嘘だけど、これが私のできることだから」
望月「ホント、真面目だよねぇ」
三日月「望月が不真面目すぎるの! もうっ」
望月「うぅ、こんなとこで説教はやめてー」 ダッ
三日月「あっ、逃げた! ふふ、もう、仕方ないんですから……ふふふ」
テクテク
雷「……三日月……」
三日月「……雷さん……」
雷「もしかして……今日も響とお話ししてくれたの? 暁として」
三日月「……はい」
雷「……本当にごめんね……そして、ありがとう、ね」
三日月「いえ、私はこれしか……できませんから……特型駆逐艦ではない私ができることは、裏方の仕事です」
雷「……ごめんね……」
三日月「大丈夫です」
三日月(暁さんがいなくなってから、雷さんも元気が無くなってしまった)
三日月「雷さん……体調に気を付けてくださいね。あまり無理はしないように」
菊月「私も同感だ……辛い時は相談に乗るからな」
雷「うん。……ありがとう」
雷「それじゃあ、ね」 テクテク
三日月「……はい」
ガチャ
三日月「ただいま」
睦月「あっ、三日月ちゃんおかえり!」
「「「おかえり~」」」
三日月「はい、ただいま、みんな」
文月「三日月ちゃんどこ行ってたの~?」
三日月「ちょっと、お散歩に行ってたの。今日も遠征ないから」
皐月「そうだね~、最近遠征全然ないよねぇ僕たち。すっごく暇だよー」
三日月「確かに。私達は燃費の良さが売りなのに、最近全然遠征ないもんね」
長月「正直に言ってしまえば戦場に出たいが……」
如月「私達、弱いもんねぇ……」
三日月「あはは……まぁ、今は気にしても仕方ないよ。飲み物みんなの分買って来たから、皆でのも?」
弥生「……ナイス、三日月」 グッ
「「「わーい!」」」
三日月「あははは、喜んでもらえて嬉しい」
テクテク
卯月「……」
三日月「あっ、うーちゃん。ただいま」
卯月「……おかえり」
睦月「ふふふ……喜べうーちゃんよ、三日月ちゃんがジュース買ってきてくれたにゃしぃ」
如月「こらこら、なんで睦月ちゃんが偉そうに言うのかしら~?」
睦月「偉い妹がいて姉として誇らしいからなのです! エッヘン!」
三日月「あはは、睦月ちゃんに喜んでもらえて嬉しいなぁ。うーちゃんも飲みましょう?」
卯月「……いらないぴょん」
三日月「そ、そう? なら冷蔵庫に入れておくね?」
卯月「……まだ飲み物ならいっぱい余ってるのに……あれ、どうするんだぴょん?」
三日月「え? 余ってるの? なんで飲まないのよみんな~……」
菊月「私達は燃費の良さが」
弥生「売りだから」
文月「ね~うーちゃーん」
卯月「…………」
三日月「もうっ、なら買ってこなくても大丈夫だったね。ってうーちゃん、どこかに行くの?」
卯月「……ちょっとお散歩してくるぴょん」
三日月「そ、そう……行ってらっしゃい」
卯月「……ん」
テクテク
皐月「なんか最近元気ないよねぇうーちゃん」
弥生「……暁が……いなくなってから……だよね……」
如月「こ、こら……弥生ちゃん」
弥生「あっ……」
三日月「……」
弥生「三日月……ごめん……」
三日月「ううん、大丈夫だよ。一番辛いのはきっと……響さん達だから」
「「「…………」」」
三日月「……空気重くしちゃって、ごめんね? 私、ちょっとうーちゃん心配だから見に行ってくるね?」 スタスタ ガチャ
電「あっ」
三日月「……あっ、電さん……」
電「三日月ちゃん、こんにちはなのです」
三日月「はい……こんにちは」
電「どうしたのですか?」
三日月「ちょっと、うーちゃん探してて……」
電「卯月ちゃんなのですか? 卯月ちゃんでしたら先ほど見ましたが……なんだかブツブツ言ってて怖かったのです……」
三日月「……そう、ですか……どこに行ったかは分かりますか?」
電「どこに行ったかまでは……分からないのです。お話ししたわけではないですから」
三日月「分かりました。色々とありがとうございます」
電「いえいえ。――あっ、そういえば三日月ちゃんに聞きたいことがあったのです」
電「今暁ちゃんがどこにいるか知っていますか?」
三日月「……いえ、分かりません」
電「そうですか。最近暁ちゃんのいる場所がよくわからないのです。『響ちゃんと一緒にいる事は多いのですが』……」
三日月「……あのお二人は……仲良いですから」
電「でも、夜お部屋にもいないのです! これには電もプンスカなのです。こんなに心配かけて……」
三日月「たまに、行った方が良いかもですね」
電「え? 三日月ちゃん、電達のお部屋に遊びに来るのですか?」
三日月「ううん、何でもないです。こっちの話ですから」
電「そうですか……では引き続き電は暁ちゃんを探すのです。三日月ちゃん、またね~なのです」
三日月「うん、またね~」
テクテク
三日月「…………」
三日月(心を壊してしまったのは、響さんだけではない)
三日月(電さんも壊れてしまってる)
三日月(彼女は、暁さんがいなくなってから、ずっと彼女を探し続けている。無表情で、無心で)
三日月(それでも、私の事も三日月として認識はしてくれている。会話も普通にできる。でも、暁さんの事を探し続けている。ずっとずっと)
三日月(そして、そんな電さんでも、響さんと一緒にいる時は、私が暁さんを演じている時は……私の事を暁さんだと認識する)
電『ど、どこ行ってたんですか暁ちゃん! 心配したのですよ!?』
三日月(怒りながら、泣きながら、私に抱きつきながら色々と電さんは言う)
三日月(……今日も響さんと話している時に見つかっちゃったら、また同じこと言われるんだろうなぁ)
三日月(でも、別にかまわない。それで電さんに一瞬だけでも感情が戻るのなら)
睦月「ほんと、三日月ちゃん頑張り過ぎだよぉ~」
如月「ほどほどにしなきゃ、体調崩しちゃうわよ?」
三日月「二人とも……大丈夫だよ、私は」
三日月「これくらいしかできませんから」
三日月「だから、もっともっと頑張らないと、なんです」
三日月「……うーちゃんを探さないと」
テクテク
睦月「それにしても、静かだよねぇ。眠くなってきちゃうよ~」
三日月「あはは、そうですね」
テクテク
夕立「あっ」
時雨「……やぁ、こんにちは。三日月」
三日月「こんにちは、夕立さん、時雨さん」
夕立「し、時雨! あっち行こうよ」
時雨「う、うん。じゃあね、三日月」
三日月「はい」
テクテク
夕立「――」 ヒソヒソ
時雨「――」 ヒソヒソ
三日月「…………」
睦月「最近……ああいうコショコショ話してる子多い気がするにゃしぃ……」
如月「それに、なぁんかはぶかれてる気がするのよねぇ私達。さっきも三日月ちゃんにしか挨拶しなかったし」
三日月「もしかしたら私が……暁さんを演じたりしてるのが原因かもしれません。ごめんね、みんな……」
皐月「三日月のせいじゃないよ!」
文月「三日月ちゃんは頑張ってるよ~? だからそんな哀しまないで~」
三日月「……ありがとう、文月ちゃん」
三日月「……もっともっと、頑張らないと……」
睦月「お、応援はするけれど……無茶はしないでねー? おねぇちゃん心配なのです」
三日月「うん、大丈夫。ありがとう、睦月ちゃん」
夕立「……」
時雨「……」
テクテク
三日月「あっ」
卯月「――もう、い――ぴょん」
雷「……」
三日月「うーちゃん!」
卯月「!!」
望月「やっと見つかったね……疲れた」
長月「だらしないぞ望月。しゃんとしなさい」
菊月「それにしても卯月が雷と話しているなんて珍しいな」
文月「ね~」
卯月「…………」
三日月「うーちゃん、こんなところにいたんだね。ちょっと心配になって探しに来ちゃったよ」
卯月「……何で心配だったの?」
三日月「最近うーちゃん、元気ないから……みんなもついてきちゃったみたい」
三日月「みんな優しいですから。えへへ」
卯月「……」 ギュッ
雷「……三日月……それと、みんな?」
睦月「おぉ! 雷ちゃんは睦月たちを無視しないのです!」
三日月「はい、なんでしょう? あとみんないますよ?」
雷「……うん、そうね。みんないるわ」
文月「それにしても、うーちゃん何のお話してたの~?」
弥生「あっ、それ私も気になってた……」
電「……実はちょっと卯月と三日月だけに話したいことがあるから、みんなちょっと席を外してくれないかしら?」
皐月「え!? 何の話あるの? 二人だけに話したいことなんて言われたら気になっちゃよ」
雷「…………」
如月「……うーん、これはなんか深刻そうね」
三日月「……うん、そうみたいね。ごめんみんな、雷さんの言う通りちょっと席を外してくれないかな?」
「「「はーい」」」
三日月「ふふ、ありがとう、みんな」 ニッコリ
卯月「……っ」
雷「……」
三日月「……うん、みんなちゃんと離れてくれました」
雷「……そうね。……うん。あなた達、良い子だもんね……」
三日月「い、いきなりどうしたんですか?」
雷「……ううんなんでもない。実は卯月から相談を受けててね」
三日月「そ、相談……?」
卯月「……そうぴょん」
三日月「もしかして……最近元気ないことと関係あるの?」
卯月「……」 コクリ
三日月「な、なんで私達に先に相談しないのよ」
卯月「……三日月は疲れてるぴょん……それに……」
三日月「つ、疲れてないよ!? ご、ごめんね変な心配かけちゃって……だから、相談には乗るから……何かあったか言ってみてよ、うーちゃん」
卯月「……じゃあ、質問に答えてほしいぴょん」
三日月「な、なに?」
卯月「昨日のご飯、何食べた?」
三日月「え?」
三日月「な、何って……確か、カレーだった。うん」
卯月「……そうだね。カレーだったよ。じゃあ何人で食べたぴょん?」
三日月「な、何でそんなこと聞くのよ!」
卯月「いいから答えてよ」
三日月「そ、そんなの睦月型のみんなだから……10人でに決まってるじゃない! うーちゃんどうしたの!?」
雷「…………」
卯月「……どうしたのは」
卯月「三日月の方だよッ!!」
三日月「え……う、うーちゃん?」
卯月「……三日月」 ガシ
卯月「よく聞いてほしいぴょん」
三日月「い、痛いよ……」
卯月「……ほ、他のみんなは……」
三日月「い……痛いって」
卯月「もう……っ、う……えぐ……っ」 ギュー
三日月「う、うーちゃん痛いよ……は、離してよ……」
卯月「……もう、ここには!!」
三日月「ッ、離してったら!」
卯月「いないの!!」
三日月「……え?」
卯月「もう! この鎮守府には三日月と卯月しか残ってないの! 他の睦月型は……みんなもういないの!!」
三日月(……な、何言ってるの?)
三日月「な、何言ってるの!? うーちゃん、私怒るよ!?」
雷「……っ、ごめん……ごめんね……三日月……!!」
三日月「な、なんで雷さん泣いているんですか!」
卯月「……この鎮守府、そんなに大きくないぴょん。いれる艦娘には限界があるぴょん。卯月はレアだから……三日月は……響が更に壊れないために必要だから……解体されずにすんだぴょん」
三日月「うーちゃん!! なんでそんな、ひどいこと言うの!?」
睦月「う、うーちゃん……冗談だよね? いつもの……」
如月「……そ、そうよね……」
三日月「睦月ちゃんと如月ちゃんの言う通りです……冗談だよね!? いつもの!」
卯月「……睦月と如月まで解体するとは思わなかったぴょん……あの二人は卯月たちと違って強くなるのに」
弥生「……冗談だよね? 卯月」
皐月「あはは……けっこうダメージある冗談だけどね」
文月「……うぅ……」 ジワァ
三日月「っ!」
パシーン!
卯月「ッ」
三日月「卯月ちゃん……文月ちゃんに謝ってよ……泣いてるじゃない!!」
卯月「あぁ、今は文月と話してるんだ……泣いてたね文月。あの時、心の底から司令官の事嫌いになったぴょん」
長月「……卯月……どうしてそうまでして冗談だと言ってくれないんだ……」
菊月「……あぁ、お前らしくないぞ」
三日月「長月ちゃんと菊月の言う通りです! あなたらしくないよ!!」
卯月「……でもさ、司令官も……真面目な人だったんだよ……暁が沈んでからは……あんなにゆるーくやってたのに……今じゃ効率しか考えない人になってしまったぴょん……あはは……」
望月「ありゃ~だめだねこれ……完全に疲れてるよ卯月」
三日月「望月……そんな言い方しないの……同感だけれど……」
卯月「……ねぇ、三日月」
卯月「他のみんなってさっき席外してどっか行ったんじゃなかったぴょん?」
三日月「え?」
卯月「どっか行ったはずなのに、なんでいきなり話しかけてこれるの?」
三日月「……え?」
卯月「ここに戻って来たの? その時足音……あった? ……ねぇ!! 答えてよ!!」
雷「う、卯月! 抑えて!」
三日月「あっ……あ……」
卯月「いきなりパッて現れたの!? ――そうだろうね! 三日月、突然話し始めるもんね! 一人でさ!!」
三日月「あ……え……?」
夕立『……また、一人で話してるっぽい……こわいよ……最近の三日月ちゃん』 ヒソヒソ
時雨『……仕方ないよ……あの子は……頑張り過ぎた……今はそっとしてあげよう……』 ヒソヒソ
三日月「あ……ああ……」
提督『……ごめんな……三日月……』
三日月『え……うそ、ですよね』
提督『……俺の事は恨んでくれて構わない……本当にすまない……』
三日月「そんな……」
提督『……嘘じゃない。君と卯月以外は……この鎮守府では必要ないと判断した』
提督『……遠征も……レベリングを兼ねて他の子でやらせればいいからな……だから』
三日月『……そ、そんな……!!』
提督『……全員解体した。解体したら普通の女の子に戻るって聞いてたんだけど……あれ嘘だったんだな』
提督『みんな……いなくなってしまったよ』
三日月「うそだぁあああああ!!!!」
三日月「そんなの!! 嘘よ!! 嘘だよッ!!」
卯月「嘘じゃない!!」
卯月「全部!! 本当のことぴょん!!」
三日月「うそだうそだうそだうそだ!! ――嘘だよッ!!」
卯月「じゃあ!! 周りを見てみなよ!!」
三日月「いいよ!! 見てあげるよ!! ねぇ、みん――」
…………――
三日月「な……?」
…………――
卯月「……卯月と、雷と……三日月以外は……誰もいないよ……」
三日月「……うそ……むつきちゃん?」
……
三日月「きさらぎちゃん?」
……
三日月「やよいちゃんさつきちゃんふみづきちゃんながつきちゃん……きく……づき……?」
……
卯月「……おねがい……おねがい三日月……帰ってきてよ……!!」
卯月「……うーちゃんをひとりに……しないでよ……!!」
三日月「……あぁ、あああああ――」
み ん な は も う い な い ?
三日月「ああああああああああああああああああああああああッ!!」
三日月「あぁ、あああああ……はぁ、はぁ……!!」
雷「ごめん……私が……私達があなたに負担をかけすぎちゃったから……ごめんなさい!! ごめんなさい!!」
卯月「帰ってきてよ……帰ってきてよ……三日月!!」 ギュゥ
卯月「もう……ひとりぼっちはいやなんだ……ぴょん……!!」
三日月「……あは」
卯月「……もう、頑張らなくて、いいよ……だから!」
三日月「あはっ――あはははははははは!」
卯月「元に戻ってよッ!!」
三日月「――――」
三日月(うーちゃん……私がこんなのになってた間……私が幻覚と話してる間……ずっとひとりだったのかな?)
三日月「…………」
三日月(きっと……さびしかったよね……わたし、唯一残った姉妹なのに……)
三日月「そっか……」
三日月「みんな……もう、いないんだ……!!」 ウルウル
三日月「みんな……解体されちゃったのか……司令官に……」
卯月「……」 コクリ
三日月「……全部、思い出したよ……わたし……あの後気絶しちゃって……」
三日月「……ごめんね、うーちゃん。一人にさせちゃって」
卯月「……み、三日月……もとに戻ったぴょん?」
三日月「うん……ぜんぶ、思い出したよ……」
卯月「うぅ……うわあああああああん!! うわあああああ!!」
三日月「……あはは……ごめんね……ごめんね……!!」
雷「……ッ……三日月……わたし」
三日月「……雷さん、謝らないで……ください。心が弱かった、私が悪いんです」
雷「……ごめんね……!」
三日月「……うーちゃん、ちょっと私……司令官の所行ってくるね」
卯月「……え?」
三日月「大丈夫。心配しないで。もう、平気だから」
卯月「み、三日月……」
三日月「じゃあ……行ってきます」
建造ドック
提督「……よし、……今度こそ……来てくれ」
響「司令官……最近建造ばかりしてるね」
提督「あぁ、ある子が帰って来てくれるのを待ってるんだ……今度こそ……妖精さん! 開けてくれ!」
ぷしゅぅぅぅ!!
提督「……はは」
暁「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」
提督「あはっ――あはははははは!! やったぁ!! やったぞ!!」
暁「!!」 ビクゥ
提督「暁が帰ってきたんだ!! あははっはははは!!」
暁「な、なに……この人……」 ガクブルガクブル
響「――え?」
響「あかつき……?」
暁「あっ! あなた響よね! よかった……姉妹がいて……ねぇ、このひと――」
響「ちがう」
暁「え?」
響「ちがうちがうちがうちがう……違う!!」
暁「ひ、ひびき……?」
響「わ、私の姉さんは……暁は……!!」
「私ですよね? 響さん」
提督「!?」
響「!! 暁!!」 パァァァ
暁「へ?」
三日月「あははは……司令官……こんなところにいたんですね」
提督「三日月……」
響「暁! 司令官が変なんだよ……この子の事を暁って……」
三日月「まぁ、それは……勘違いはダメよね。プ、ン、ス、カ……うふふふ」 ニッコリ
暁「ちょ、ちょっと! あなた誰よ! それに一人前のレディーは――」
三日月「ごめんなさい、黙ってて?」
暁「っ!!」 ゾクッ
響「そうだよね……暁はここにいるのに……司令官……本当にどうしたんだい?」
提督「……三日月……お前何でそんなものを持っているんだ?」
三日月「あぁ、コレ(のこぎり)ですか?」
三日月「えへへ……ちょっとやりたいことがありまして」 ニッコリ
三日月「……そこの駆逐艦さん?」
暁「へ? わ、私?」
三日月「はい、そうです」
暁「な、なに……?」
三日月「一度だけ、抱きしめていいですか……?」
暁「へ?」
三日月「…………」
暁「べ、べつにいいけど……」
三日月「……ありがとう、ございます」
ギュー
三日月(あぁ……暁さん……ごめんなさい……わたし……あなたの生まれ変わりを……)
暁「こ、これでいいの?」 ギュー
三日月(……解体します)
三日月「はい」 ギュー
三日月(司令官への恨みのために)
三日月「……響ー」
響「……なんだい?」
三日月「ふふ、嫉妬しないの。あなたは暁の事好きだもんね? 大丈夫、私も響の事大好きよ」
響「そ、そういうことじゃ――」
三日月「んで、お願いがあるの」
三日月「司令官の事、抑えといて」
響「え?」
提督「っ!」 バッ
三日月「急いで!!」
響「――う、うん!」
ガシ
提督「くっ」
三日月「ふふ、さすが響……ありがと。お礼はちゃんと言えるし」
響「う、うん……でも、これ……」
三日月「そのままでいて」
三日月「司令官……今心が壊れちゃって不安定なの。だから暁の事も勘違いしたのよ」
響「あぁ、なるほど。そういう事だったのか」
三日月「ええ」
三日月「んで、これからその治療を行うわ」
三日月「……ちょっとこっち来てくれますか?」 パッ
暁「へ、……い、いいけど……」
テクテクテクテク
――解体所
提督「おい……まて……三日月!!」
響「暁! そ、そこは……」
三日月「ねぇ、駆逐艦さん」
暁「な、なに? あとこれなに?」
三日月「ふふ……あなたのとってもレディーなお部屋ですよ」
暁「え!? ほんと!?」
三日月「はい」
暁「は、はいっていいの!?」
三日月「いいですよ。ごゆっくり」
暁「わ、わかった! ありがと」
ガシャーン
提督「まて! 待つんだ暁!!」
三日月「司令官」
提督「っ!!」
三日月「この子は……暁さんじゃありません」
三日月「暁さんは……轟沈したんですから」
響「――え?」
三日月「……」 ガシ
提督「待て三日月!! 解体だけは!!」
三日月「……うふふ」
三日月「……ごめんなさい、2代目……暁さん。私の中で暁さんはあの人だけなんです」 ガッ
カーン、カーン、カーン
提督「――う、うわあああああああああああ!!」
三日月「あっはっはっはっはっはっは!!」
響「え……暁……?」
三日月「……響さん……茶番は終わりです……もうみんなおしまいにしましょう」
三日月「私は三日月です。暁さんはもういません」
響「――」
提督「あぁ……アぁ……」
三日月「あは、あははは……みんな、もう、壊れてんですねぇ……」
三日月「さ、司令官……次はあなたが解体される番です」
提督「…………」
三日月「……みんなと同じ目にあってもらいますよ? あっ、あとから私と……うーちゃんも連れて行くので待っててください。もう、ぜんぶおしまいにしましょう」
三日月「もう、わたし……がんばれません。あはははは……」 ポロポロ
提督「…………」
三日月「さぁ、これをつかって、ゆっくりゆっくり解体してあげますよ……あなたは艦娘じゃないですからね……」
響「…………あかつきが……あははは……」
三日月「……みんな、壊れてるんです」
三日月「私も、あなたも」
ガシ
三日月「さぁ、司令官……逝きましょうか。みんなに謝る言葉、考えといてくださいね?」
三日月「……ちょっと、休憩しましょう。ゆっくり逝きましょう。……それでいいんです」
真面目な子ほど壊れやすい。
おしまい
お目汚し失礼しました。
お付き合いありがとうございました。
三日月ちゃんは大天使。
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