【それ町×進撃】歩鳥と巨人の世界 完全版 (476)

それでも町は廻っている×進撃の巨人クロスSS

※前に書いたSSの追加・修正バージョン。自分の気になった部分の修正、説明不足な点の補足、一部追加シーン等ありますが、ストーリー、キャラ、設定は同じです。
あと原作のネタバレがあります。



―アンティーク亀井堂―



歩鳥「ねーちゃん、昔から気になってる事があるんだけどさ」

静「なに?」

歩鳥「この…昔から置いてある、丸い金属に四本足の変な顔ついた奴なに?」

静「あー、リドルの事?それね~私も困ってんだよ~~~使い道がわかんなくてさ~。今なら安くてお買い得のオススメ商品だよ」

歩鳥「使い道のわからんもんオススメ商品にすんのか、この店は」

静「これ昔からずっと売れ残ってんのよね~」

歩鳥「うん、使い道わからんもんね」

静「爺ちゃんの話じゃ、遠い昔に外国から来たもので……ずっと長い間亀井堂にあったとか何とか…」

歩鳥「へえ…外国から来たんだ…そんでずっと亀井堂に…」

静「てかさ~、何か手放したくないんだよね、これ。なんでかはわからないけどさ」

歩鳥「へー?これが?そんなにいいものなのかなぁ…」


静「…で、買うの?」

歩鳥「買わんわ!!」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1472825514

―喫茶シーサイド―


歩鳥「むー………」


ウキ「さっきから何考えこんでんだい?あの子は」

辰野「変な四本足の金属見つめて…いつも以上に変だわ」


紺「おい、何してんだお前?」

歩鳥「うん、これが何なのかさっぱりわからんのだよ」

リドル「…」

紺「このヘンテコな奴か?」


静「私の店に置いてあったものだよ~~」


歩鳥「そうそう」

ウキ「あー、どっかで見たことあると思ったら…」

辰野「あんたまさかこれ買ったの!?」

歩鳥「買ってないよ!?調べる為に拝借してきただけだよ!!」


静「お買い上げありがと~ございま~す」

ウキ「ついに変なもんに金かけるようになっちまったかい…」

歩鳥「だから買っては無いってば!!」


歩鳥「そう言えばさ、静ねーちゃんは何でこれをリドルって名付けたの?」

静「それ、裏っ側に文字のようなものが刻んであってさ~。古いから全部はハッキリ見えないけど」

歩鳥「へー。あ、本当だ」クルッ

静「そんでいくつかだけはっきり見える部分があって、それらを逆さまから読むと片仮名の『ル』『トリ』に見えるんだよ」

歩鳥「ほほー、確かに見えない事もない」

静「なので、それらの文字とパッと思い付いた感じから適当にリドルと名付けました~~」

歩鳥「本当に適当だね」


カランコロン

真田「お、何やってんだ嵐山」

辰野「真田くん!いらっしゃい!!」


歩鳥「おや、真田ではないか。いいところにきた」


紺「真田、お前これ何だと思う?」


リドル「…」


真田「あ、これ亀井堂さんとこのじゃねぇか。まさか嵐山買ったのか!?」

歩鳥「だから買ってないってば!!」

ウキ「しかし、本当に何なんだろうねそれ。不気味だよ」

辰野「売れないなら処分すればいいのに…」

静「でもなー。なんかよ~、捨てたく無いんだよな~…それ」

辰野「えー…これがですか?」

歩鳥「うん…確かに、ねーちゃんの言ってること分かるかも。なんか…見てると不思議な気分になるというか…」

真田「はあ?」

歩鳥「なんか懐かしい気持ちになるような…」

紺「…んー…確かに何か引っ掛かる気はする。なんというか、どっかで見たか?」

歩鳥「そりゃあ、亀井堂に昔から置いてあるからね」

紺「そういう事じゃなくてな…」

辰野「二人とも何言ってんの。気のせいに決まってるでしょ、そんなの。他の人が何か感じるから自分もそう感じるって錯覚してるだけよ」

真田「…いや、言われてみりゃ、俺もなんか変な感じがしないでもない…」

辰野「うん、真田くんが言うならそうかも知れない!ほら歩鳥、私にも見せなさい!!」

歩鳥「なんてメガネなんだこやつは…」


辰野「…」ジー

歩鳥「どう?」

辰野「…んん、確かに何か…心に引っ掛かるような、懐かしいような気持ちになるわね…」

紺「おー!やっぱりこいつには何かあるんだ!!」

真田「なんか嫌な気分では無いんだよな」

歩鳥「そうそう、むしろ何故か懐かしい感じ」

静「私も~」

辰野「私はなんか懐かしい気持ちと…ちょっと複雑な気分が混じってんだけど…」

歩鳥「それはタッツンがひねくれてるからだよ」

辰野「ひねくれてないわよ!本当にそんな感じがするのよ!」

静「むう…四人は同じく懐かしい気持ちになるのに対し、タッちゃんだけはそれに複雑な気分も混じっていると…この違いにも何か意味がある気がするな」

辰野「タッちゃんじゃなくてタッツンです。いや、辰野です」




ウキ「…もう一度裏っ側に書いてあるっていう文字でも解読してみたらどうだい?何かわかるかも知れないよ」


歩鳥「うん、そうだね」 クルッ

紺「これか」

辰野「確かに消えかかってて読めないわね」

静「…」


歩鳥「むー…」

真田「読めそうか?」


歩鳥「ん?逆さまから読むと………『ホトリ・アラシヤマ』……?」

紺「は?」

歩鳥「あれま、私の名前が書いてある!?」

辰野「真面目に読みなさいよ」グイッ

歩鳥「待て待て、タッツン!真面目に読んだら本当にそう見えたんだってば!」

静「どれどれ~?見せてみな」

歩鳥「あ、他にも逆さまから読めそうな部分があったよ」

真田「ん?」

歩鳥「…ル……」


歩鳥「……ノ…タミ?」

静「確かにそう見えないこともない」

紺「だが、何の事かさっぱりだな」

歩鳥「…あれ…」フラッ

真田「!」

ドサッ!

静「!!」

ウキ「歩鳥!?」ダッ


歩鳥「うわ、うわ…なんだこれ、頭グワングワンする…!」グラッ

紺「おい、どうしたんだよ!?」

真田「嵐山!!大丈夫か!?」

辰野「ちょっ…待ちなさい歩鳥、気分悪いなら無理に動いちゃ駄目よ」

歩鳥「ううう…」ズキン


ズキン


辰野「!」

紺「うわっ!」ズキン

真田「なんだ…!?」ズキン

静「…私もか…」グラッ


ウキ「!?おい、どうしたんだいあんた達!!」

辰野「な、なにこれ…意識が、どこかに飛ばされ…」

ウキ「え!?」

ドサッ


歩鳥「ば、ばーちゃん…」グラッ


ウキ「歩鳥!!!」ダダッ



リドル「………」





ゴオオオオオオオ………








歩鳥「………だれ…?私にだれかが話かけてくる…」




???「ありがとう………ずっと忘れない」

歩鳥「……あ………」



…ホトリ……


歩鳥「あ、あはは…思い出した……そうだ…あなたは、あなた達は……」



カアアアアアアッ!!!


―――――――

―――――

―――



パカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッ!!!



エルヴィン「奇行種だ!総員立体機動に移れ!!」

ミケ「はっ!!」バシュッ


奇行種「…」ズシンッズシンッ


リヴァイ「あんまり動き回るんじゃねぇ…綺麗に削げねぇだろうが」バシュッ


ズバッ!!!





849

巨人の出現により追い詰められた人類は、広大な壁を築き、その中で100年の間、巨人からの攻撃を防ぎながら暮らしていた。
しかし、今より四年前、知性を持つ超大型巨人との鎧の巨人の出現により壁の扉部分が破壊され、大量の巨人の侵入を許してしまう。
人類はウォール・マリアを放棄、3分の1の領土と2割の人口を失った。


―ウォール・ローゼ―

訓練兵団施設





サシャ「今年で訓練兵も三年目ですね~」

コニー「三年目も頑張っていこうな」


ジャン(順調に成績は上がっている…このまま行きゃ憲兵団も夢じゃねぇ)



アルミン「………だから、どう考えたっておかしいんだよ。何でたった100年前の歴史を誰も知らないのか」

エレン「そうだよな。書物どころか話でも残って無いのは変だよな」

ミカサ「私、昔…両親に歴史の事を聞こうとしたらはぐらかされた事がある」

エレン「…タブーって事か?」

ミカサ「私にもよくわからない」

アルミン「………王政にとって不都合だから隠したいとしても…ただ誰も喋らないだけで本当に歴史を隠し通せるものなのだろうか」


ミーナ「みんな、ちょっとちょっと!」

ジャン「ん、ミーナか。どうした?」

ミーナ「クリスタが馬小屋でコソコソしてたからさ…何かと思ってちょっと覗いてみたら……見たことない人が五人くらい隠れてたみたいなの!!」

ジャン「なんだって?」

ミーナ「これ、教官に言った方がいいのかな…もし強盗とかだったらクリスタが危ないよ」




馬小屋


歩鳥「な、な、なんなんだよここは……周り高い壁に囲まれてるし外国人ばっかりだし」

辰野「しかもなんか少し古い雰囲気……なんなの?何が起きたのよ?」ガタガタ

真田(なんだこれ…夢か?夢なのか?)

紺「………」ハラハラワクワク

静「おやおや、一名不可解な状況にハラハラしながらもワクワクしてるね~~」

歩鳥「先輩オカルトみたいなの好きですもんね…」

紺「だって、こんな奇妙な出来事に巻き込まれたらワクワクしちまうだろ!?」

辰野「そりゃ紺先輩が特別なんです…私は怖くて仕方ありません」

静「ユニコーンの描かれた軍服を着た連中に何故か追いかけられたしな~」

辰野「どうすんのよ。またそいつらに見つかったら私達どうなるの?」ブルブル

真田「でも、事情話してここに匿ってくれたクリスタって人は優しかったし…話せばちゃんと聞いてくれる人もいるんだよ」

静「うーん、いい人もいるのはそりゃそーだろ。問題なのは、ここは何なのか。何故私達はユニコーンの描かれた軍服を着た連中に追われたのか…」

歩鳥「何か、大きな秘密が隠されている気がするね」



「…ここか?」

「待ってよ、あの人達は…」

「お前はお人好し過ぎるから逆に信用ならん。本当に大丈夫な奴かどうか確かめなきゃならん」

「でも…」

「ユミルの言うことも最もだ。教官にはまだ言わないからまず僕らにも会わせてくれ」

「うん…」



真田「外から話声が…」

歩鳥「なにやら私達の事を話しているのかな?」

紺「何が来るんだ…まさか宇宙人!?」

歩鳥「さすがにそれはないっすよ先輩」


ガチャッ

ユミル「…」ギイッ


アルミン「…」チラッ






歩鳥「めいどっ!」シュバッ



アルミン「え!!?」ビクッ



辰野「なにやってんだお前は!!」ベシッ

歩鳥「ごめんなさい!シーサイドの癖で!」


ユミル「…」



アルミン「あ、あの…君たちは…」


辰野「だいたいあんたはいっつも緊張感が無さすぎんのよ!!」

歩鳥「な、緊張感くらいあるよ!変な世界飛ばされて心臓バクバクしてるよ!!」

辰野「じゃあ、さっきの『めいどっ!』は何よちょうちんまんじゅう!」

歩鳥「訳のわからん悪口言うなタッツンメガネ!!」

紺「そのまんまじゃねぇかそれ」

真田「お前らよせって…」


アルミン「…」

ユミル「…」

クリスタ「あの…」

静「やー、ごめんなさいね。この子達まだ子供だから」ザッ

アルミン「あ、はい」

ユミル「…あんたらは何だ?どこから来た?」

静「そりゃ私達も聞きたい事だね~」

ザッザッ

ジャン「騒がしいな…噂の変な奴等ってのはここか?」


歩鳥「あ、また1人増えた」

ジャン「なんだ、タヌキみてぇな奴だな」

歩鳥「た、た、タヌキィ!?初対面に失礼だぞ馬面ああ!!」

ジャン「んな!?誰が馬面だコラア!?」


紺「どっちもどっちだな」



辰野「家に帰りたい…」ズーン


真田「つーか、本当なんだよこの状況」

ユミル「…クリスタ、アルミン、ジャン。ちょっとお前らは出ててくれ、私1人で話聞くから」

アルミン「え?」

ユミル「…もしかしたら指名手配されてる人間かも知れないから調べてこい」

ジャン「命令口調かよ…まあ、調べてやる」

クリスタ「悪い人ではないと思うけど」

ユミル「いいから行けって」

アルミン「わかったよ、調べてみる」



歩鳥「ちょっと待ったー!私達ゃ指名手配なんかされてないよ!!」

ユミル「わかってるよ、あいつらをここから離すために適当に言ったんだ」

歩鳥「へ?」

ユミル「…まず、あんたらはどこから来た?壁の外から来たのか?」

紺「壁の外?」

静「どこからってそりゃあ、日本からだけど~~」

ユミル「………どうやって来たんだ?」

真田「気付いたらここに…」

ユミル「気付いたら?」

静「私達もパニックになってんだよ。訳のわからない内に気付いたらこんな場所にいて」

ユミル「…嘘ついてる感じではなさそうだな」

ユミル「まあ、とりあえずこの世界の人間で無いのは見れば一発でわかる。服装がこの時代のものではない」

歩鳥「は!確かにここにいる人って格好がちょっと古いよね!」

静(『この時代』…気になる言い方だな)




歩鳥「そういえば、私達馬の絵の軍服来たオッサンどもに追いかけられたんだよ!!」

ユミル「憲兵か。なんか悪さでもしたのか?」

辰野「何もしてないです…急に追いかけられて……」

ユミル「…そりゃあ、中央第一憲兵かもな」

歩鳥「安全第一先生?」

真田「嵐山、今はちょっと静かにしててくれ」

ユミル「この壁の世界を裏から操ってる奴等の一部さ。お前らが明らかにこの世界の服装ではないから、壁の外から来たとでも思われて追いかけられたんだろ」

紺「なんだそりゃ…」


真田「え…じゃあ、もし捕まってたらどうなってたんだ?」

ユミル「まあ、拷問受けながら質問攻めでもされただろうな」

歩鳥「ひえっ」ブルッ

紺「拷も…」ゾーッ

辰野「あーもーやだ!!何でこんな事になっちゃったのよー!!」

歩鳥「落ち着けタッツン!私だって泣き叫びたい気分だ!!」

真田「だが俺も急に恐ろしさが倍増したよ…」

静「うむ…だが、こういう状況だからこそ冷静さを保たなければならない。焦りは思考を鈍らせ、思考が鈍れば命も危うくなる」

辰野「でもどうすればいいんですか…」

ユミル「…」

ユミル「仕方ねぇな、何かわかるまでこの訓練所に身を隠せばどうだ」

静「ん?」

ユミル「とりあえず見た目をちょっと変えときゃ大丈夫だろ、そいつらはお前らの服装に反応してきたんだからな。そんで暫くはここにいたらいいんじゃないか?確か途中からでも入団できたはずだしな」

歩鳥「そ…それはありがたい!!」


紺「でもよ…信用していいのかな?」

歩鳥「え?」

辰野「そうよ、もしかしたらこの人も私達を騙してる可能性だって…」

歩鳥「う、疑うのかよ~!?」

真田「疑いたくはないけど…わからないしな…」

静「この子達の言う通り、あなたとは初対面だし、いきなり信用していいかどうかはわからないよ」

歩鳥「ねーちゃんまで…」

ユミル「まあ疑うのは当然だわな」

静「でも、私達は何もわからない状況だし…頼れそうな誰かに頼るしか無い」


歩鳥「私は信じるよ!!」

ユミル「…」


真田「あ、やっぱ俺も信じる!!」
辰野「!!!私も信じます!!!」バッ

ユミル「え!?」


紺(この二人意見コロッと変えやがった)

静「あらら、信じる派が一気に増えちゃったね~」

ユミル「…」

紺「…まあ、あんたも嘘ついてるようには見えないし」

静「じゃあ、私もあなたを信じるとしよう」

ユミル「そうかい…」



――――――


シャーディス「…新しい入団希望者?」


アルミン「はい、こちらの五名です」

シャーディス「ふむ…年齢は?」


歩鳥「はい!」ザッ


ユミル(実年齢は言うなよ…14~16くらいで誤魔化して答えとけ)


歩鳥「ピッチピチの15歳です!」

辰野「15歳です」

真田「15です!」

紺「16…です」


静「16歳であります」


歩鳥(厳しい!!さすがに16歳は厳しいよ姉ちゃん!!)

辰野(聞いてる方が恥ずかしいわ…)


キース「ふむ…1人、年相応には見えんな」

静「!!」

歩鳥(やっぱりダメだったかー!!?)



シャーディス「お前」ポンッ

歩鳥「へ、私?」

シャーディス「12歳くらいではないのか?」


歩鳥「!?!?!?!?!?!?」


辰野「ぷぷっ…っ」

紺「くっ…ふふ…」

真田(すまん、嵐山…吹き出しそうだった)

歩鳥「な…な…っ」プルプル

静「ドンマイドンマイ」ポンッ


シャーディス「…で、どこから来たのだ?」

静「巨人の襲撃によりウォール・マリアを追われ開拓地に過ごしていました……。最初は巨人への恐怖から兵士になることをためらっていたのです。しかし、色々と考えた結果、何か人類の役に立ちたいと思いここへ来ました。我々五名、心臓を捧げる覚悟は出来ております」バッ

真田(ユミルさんから聞いたこの世界の基本的な話だけでよくこんな長い台詞がスラスラ言えるもんだ)

歩鳥(さすが姉ちゃんだな)

シャーディス「ふむ、まだ教えてもいないのに敬礼も綺麗にできている。名前は?」


静「亀井堂……いや、シズカ・カメイドウであります」

シャーディス「他の者は?」

静「こちらの丸っこい子がホトリ・アラシヤマ」

歩鳥「まるっ…!?」

静「その隣の金髪の猫みたいな子がフタバ・コン」

紺「…」コクッ

静「可愛い顔した男の子がヒロユキ・サナダ」

真田「か、可愛いだなんてそんな…」

辰野(そうよ、真田くんはイケメンで可愛いのよ!わかってるじゃない静さん!)

静「で…こちらの眼鏡の子がタッちゃん」

辰野「え!?」


辰野「ちょっ…待って…」

歩鳥「そうだよ、待ってよ姉ちゃん!」

辰野「歩鳥!」


静「ん?」



歩鳥「タッちゃんじゃなくてタッツンだよ!!」

辰野「おいコラ!!!」

静「あ、ごめんごめん~~~。タッツンね」

辰野「いや、ちが…っ」


シャーディス「了解した。シズカ・カメイドウ、ホトリ・アラシヤマ、フタバ・コン、ヒロユキ・サナダ…と、タッツンだな」

辰野「んなああっ!!?」

静「よろしくお願いします」


歩鳥「なんかワクワクしてきたね!」



辰野「ほ~~と~~り~~~っ!!!」ギロッ

歩鳥「うわ!ちょっと、怖いよタッツン!!」

辰野「あんたが余計な事言うせいでしょうが!!!」

紺「元気出せよ」ポンッ


こうして、歩鳥達は訓練兵団に身を隠すことになった。

それから3ヶ月後………


―――――――


―――


「…憎い…」

「……人間は、どうしようもない…愚か者だ…」
「禁断の領域まで足を踏み入れ………そして……」


「………フェアリー………」


「人類は、大きな罪を………」


………………





「俺は…俺達は、何の為に生まれて来たんだ!?」




――――――






ガバッ!!!


エレン「はあ!はあ!………うっ…」


アルミン「エレン!」

エレン「!」

アルミン「何かうなされていたみたいだけど…どうしたの?」

エレン「…何か夢を見ていたはずなんだが…忘れちまった」



――――――

チュンチュン…チチチ



サシャ「今日もいい天気ですね」

ミカサ「ええ」



ザッザッザッ


アルミン「あ、ミカサ。おはよう」

エレン「よっ」


ミカサ「エレン、アルミン、おはよう」

サシャ「おはようございます!」


ミカサ「…!エレン、顔色があまりよくないみたいだけど…」

エレン「ああ…思い出せねぇけど、嫌な夢を見ていた気がするから…そのせいかも知れねぇ」

ミカサ「大丈夫?熱はない?」

エレン「大丈夫だっての!ベタベタしなくていいって!」

アルミン「相変わらず仲のよろしいことで」


ミカサ「…べちこ焼を作って元気づけてあげたいところだけど、私は作り方を知らないから作れない…残念」


エレン「お前たまに言うよな、べちこ焼。そんな美味いもんなのか?」

ミカサ「ええ、お母さんが昔作ってくれていた……でも、お母さん以外の人はそんなお菓子は知らないらしい。何故だろう」

アルミン「お母さんのオリジナルのお菓子とかではないの?」

ミカサ「違うと思う……『大昔はべちこ焼は平和の味と言われていた』ってお母さんから話を聞いたことがある」

エレン「つまり昔からあるものなのか」

ミカサ「そのはず」

アルミン「不思議な話だね…」

―訓練兵団食堂―


歩鳥「ん~~…っ!」モグモグ

辰野「あんたって本当、何でもすごく幸せそうに食うわね」

紺「いっつもパンとスープばっかりだぞ?」

歩鳥「美味いもんは美味いんですよ!私はね、食べ物こそ世界に平和を導く存在だと思っているんです!何故なら美味しいもんは美味しいんですから!」

紺「よくわからんがまあ、言わんとしていることはわかる」

真田「でもさすがに飽きてくるな…」

歩鳥「じゃあ貰うよ」

真田「いや、貰うなよ!?」

辰野「サシャみたいねあんた…全てが」

歩鳥「全てがってどういう事だ!?」


静「はいはい、食事は静かにね~」

歩鳥「ほい」

辰野「すみません」

真田「しかし、もう入団してから3ヶ月たったんだな」

歩鳥「いい人が多くて良かったよ~」

静「フタバちゃん何か訓練の上達具合が凄いよね~~~」

紺「そ…そうっすか?」

歩鳥「本当に凄いですよ先輩は、教官からも『確実に上位十名に入る』って言われてるぐらいじゃないですか!」

辰野「前からなんでも出来ますよね、紺先輩は」

静「真田くんとタッちゃんもなかなかだし…でも歩鳥はもう少し頑張った方がいいね」

歩鳥「いや~、お恥ずかしい」テヘヘ

紺「お恥ずかしいじゃねぇよ、このままじゃ巨人の餌になるって教官に言われてたろうが」

歩鳥「ま、まあ…別に巨人と戦うつもりはないし~?そもそも私、探偵志望だし?もっと言えば私ゃ指揮官向きみたいな?」

辰野「あんたが指揮官の部隊なんて絶対に入りたくないわ…」

歩鳥「失敬な!」プンプン

真田「ははは」


静「ま、安心して過ごせる場所で良かったじゃないか~~~」

歩鳥「戻る方法がわからない以外には特に不満はないね!」

辰野「…そう…私は、すごーく納得いかないことがあるんだけど………」

歩鳥「ほう?なんぞや?」

ザッザッ…

エレン「お、お前達ももう来てたのか。おはよう、サナダ、ホトリ…タッツン」

ミカサ「おはようタッツン」

アルミン「タッツンもホトリも相変わらず仲良しだね」


辰野「………おはよう」ニコッ


ジャン「お、タッツンじゃねぇか」

ライナー「よう、タッツン!」

サシャ「タッツン!パンをください!」

コニー「おい、タッツンツンのパン取るなよサシャ」

クリスタ「タッツン、おはよう」


ベルトルト「おはようタツノ」


アニ「タッツン」

マルコ「タッツン」

シャーディス「タッツン」



辰野「なんでこんなタッツンが浸透してんのよ!?しかも一人タッツンツンで呼んでる奴いないか!?」

歩鳥「わ、私に言われても困るよ!?」

紺「一人ちゃんと名前呼んでね?」

辰野「え?誰が?」


静「まー、それは別に重要な事じゃないからさておき…」

辰野「な!重要です!私にとったら!」

紺「落ち着けよ、辰野。私は辰野って呼んでるだろ」ポンッ

真田「そう怒るなって。俺はタッツンってアダ名いいと思うぞ?」

辰野「!!!」ズキューンッ

タッツンってアダ名いいと思うぞ→タッツンってアダ名可愛くて好きだぞ→タッツン好きだ

辰野「た、タッツンでいいよ、もう…むしろ呼んで……」

歩鳥「こいつ今とんでもない脳内変換しなかったか?」


ジャン「相変わらず騒がしい奴等だな、お前らは」

歩鳥「よ、おはようジャンホース」

ジャン「…今おれ馬鹿にされた気がしたが」

真田「悪い、あいつに悪気は無いんだ……たぶん」

紺(まだ初対面でタヌキって言われたの気にしてんだな…)


ジャン「サナダ、お前あんな奴のどこに惚れたんだよ」ヒソヒソ

真田「いいだろ別に!お前なんて敵いっこ無い奴相手に惚れてるじゃねぇか」ヒソヒソ

歩鳥「なにコソコソ話てんの?君たち」

真田「な、何でもないよ」


マルコ「二人とも片想い同士仲いいね…」

ジャン「うるせぇよ!」


紺「…」ボー

サシャ「コンセンパイ、パンいらないくださいよ。えへへ…」ヌッ

紺「わっ!?」ビクッ

静「双葉ちゃん、朝食くわなきゃ力出んぞ~」

紺「腹へって無いですし…」

歩鳥「ダメだよ、サシャ。紺先輩のパンだからね」

コニー「そうだぞ、サシャ。コンセンパイに失礼だぞ」

サシャ「はい、すみません…」

紺「いいよ、別に」

歩鳥「よぐねー!」

サシャ「じゃあコンセンパイ、昼飯はちょっとでいいですから…ちょっとで!」ハアハア

歩鳥「あんたも食い意地めちゃくちゃ張ってるね」

紺「つーか、コンセンパイじゃなくてコンかフタバって呼べよ。センパイはつけなくていいよ」

辰野(きっとコンセンパイで1つの名前だと思ってるんだろうな)



エレン「だから、巨人がまたいつ来るかもわからねぇのにそんなお花畑みたいな考えでいいのかよ!」

ジャン「あー、うるせぇな!人がどう生きようが勝手だろうが、誰しもお前みたいに死に急ぎじゃあねぇんだよ!」

ミカサ「…」



紺「またやってるよ、あの二人…」

静「アルミン君もあの二人相手に毎日大変でしょ~~」

アルミン「ははは、すみません、いつも見苦しいところを…」

歩鳥「喧嘩するほど仲が良いとも言うよ」

アルミン「それ言ったら二人とも怒りそうだよ」

静「まあ、どちらの言い分もわかるがね…両方極端な気もするが」

真田「でも…確かに、またいつ巨人が攻めてくるかはわからないんですよね」

静「どうかね~~~…私はもう少し大丈夫だと思うけどね。まだ1年くらい…」

歩鳥「静ねーちゃん、最近それ言ってるけど何でそう思うの?」

静「誰が聞いてるか分からんからあまりデカイ声じゃ言えんよ。自分で推理したまえ、歩鳥」



―――――――


歩鳥「さーて、今日も訓練開始だ!頑張るぞー!」

ミカサ「うん」

エレン「朝っぱらから元気だな、お前は」

静「さて、我々の班は私が班長だと教官から言われているが…班長はアルミン君に任せる」

アルミン「え、僕ですか!?」


静(私達は別の世界から来た存在……この世界の住人にこそちゃんとタメになる訓練を受けて欲しい。それに…)

静「未来と可能性のある若者こそ……こういう大事な訓練を受けておくべきなのだよ」

歩鳥「ねーちゃん、そんな言い方したら本当の年齢バレるよ」

アルミン「へ?」

歩鳥「なんでもないよ~」

静「そうだな、つまり…アルミン君は素晴らしい頭脳と洞察力を持っている。だから、君の長所を伸ばすためにアルミン君が班長になるべきだ」

アルミン「そ、そうかな~…」

エレン「ああ、俺もアルミンも班長に向いてると思う」

ミカサ「アルミンの頭脳はすごい…とても」

歩鳥「そうそう、自信持ちなよ!」

アルミン「はは、ありがとう」

静「さて、今回の訓練は班で協力し多くの巨人(模型)を討伐する訓練であるが…」

静「アルミンくん、さっそく班長として作戦を立て我々に指示してくれたまえ」

アルミン「…えーと…」

エレン「焦ることはねーぞ。訓練だし、お前なら大丈夫」

ミカサ「頑張って」

アルミン「うん」


―――


アルミン「…と、こんな感じにしてはどうでしょう」

静「うん、それぞれの能力を理解した上で役割分担も出来てるね~~。やはり君は才能があるな」

アルミン「いや、それほどでは………あ、あと皆ケガに気を付けて」

歩鳥「ふふ、アルミンを見てると何だかウチの弟を思い出すよ。賢いし優しいし…」

アルミン「特にホトリは気を付けてね」

歩鳥「んえ!?」

エレン「確かにホトリは特に心配だ。とんでもないミスとかやりそうで」

ミカサ「エレンも心配だけどホトリはそれ以上に何をするかわからない」

静「珍しい動物とか見つけて、訓練忘れて追い掛けたりしちゃダメだよ~~~?」


歩鳥「皆の目に私はどう映ってるのかな…?」

――――――

格闘訓練


紺「………」

サシャ「次、私とやりましょう、コンセンパイ!」

コニー「いや、俺とだ俺と!」

歩鳥「私も混ぜてー!」

紺「わ…わかった、わかったからお前ら、落ち着け…順番な?」

サシャ「さっきコニーとやったじゃないですか!」

コニー「コンセンパイにリベンジしたいんだよ!」

歩鳥「紺先輩!私もー!!」

紺「あーーもう、落ち着けっつってんだろアホトリオ!!」





ドシャアッ!


真田「うわっ!」

ジャン「っしゃ、また勝った!」グッ

真田「やっぱ強いな、ジャン…」ジャリッ

ジャン「お前も最初よりは動き良くなってるよ」ガシッ

真田「よし、もう一度…」

ジャン「…ん?待てサナダ!」

真田「え?」

ジャン「いったん休憩だ…それより今は、目立たないように目だけ横にやってみろ」

真田「横…?」チラッ


真田「!!!」ハッ

ミーナ「さあ、かかっておいで、タッツン!」

辰野「行くわよ!」ザザッ


ミーナ「速い!…けど」


ガシイッ!

ミーナ「見切った!」グルン

辰野「キャッ!!」ドサッ

ミーナ「やったー!」

辰野「負けた…これで1対1ね……ん?」



真田「…」ジー

辰野(さ、真田くんが見てる!?)


辰野「まだまだやるわよ、ミーナ!」ジャリッ

ミーナ「急にやる気満々になった!?」





ジャン「…見えたか…サナダ…」ジー

真田「…見えてたぜ、ジャン………揺れてたな…」

ジャン「…ああ、タッツンの……」

真田「それ以上は言うな。野暮になる」


今はただ、目に焼き付けよう…揺れる思い出を胸に



マルコ「…君たち…何を言っているんだ…」


ライナー「ふ…案ずる事はない。あれぞ健全な男子の姿さ」

ベルトルト「君も何を言っているんだ、ライナー」


―座学―

教官「…で、巨人はこのうなじの部分を弱点とし。立体機動による攻撃が最も…」

エレン「…」

アルミン「…」

真田「…」


コニー「できた、教官の似顔絵!」

サシャ「見てください、私も描けましたよ!」

歩鳥「おー!二人とも上手いね!特に眼鏡が!」
コニー「お、お前は巨人の絵を描いたのか、ホトリ!」

歩鳥「…私も教官の似顔絵だよ…」


マルコ「三人とも、真面目に受けなよ」

歩鳥「はい、申し訳ありません」

静「歩鳥、座学は真面目に受けろ。この世界の事がわかる私達には一番大事なことだぞ」

歩鳥「申し訳ありませんでした…」

紺「…」シャキッ


静「見ろ、あの双葉ちゃんが真面目に受けてるんだぞ」

歩鳥「本当だ!」

静「あの子も真面目に聞いてこの世界の仕組みを理解し正体を推理しようと…」

歩鳥「いや、単に異世界とかの類いが好きなだけだと思うけどね、先輩は」

教官「さて、何か質問はあるか?」

真田「あのー…巨人ってうなじ以外に弱点は無いんですか?」

教官「うむ、それ以外に弱点は今のところ発見されていない…」


辰野「前から思ってるんですけど、飛行機とかは作らないんですか?空を飛べたら便利だし安全で良いと思うんですけど」

教官「…」

ライナー「…」ジロッ

辰野「…あれ?空を飛ぶ乗り物って無いんですか?立体機動装置なんて物があるなら…」

教官「ヒコーキ、などというものは聞いたことが無いが……この世界に空を飛ぶ技術などは存在しない。全く、何年生きてきたんだ?お前は」

辰野(え…空を飛ぶ乗り物存在しないんだ)

静「…」

ライナー「…」ヒソヒソ
ベルトルト「…」
アニ「…」


――――――

辰野「はあ…なんか少し恥かいたわ。この世界に空を飛ぶような技術なんてなかったのね…」

静「いや、いい質問だったよ。この世界の真実に一歩近づいた気がするね~」

歩鳥「いや~、でもタッツンが先生からアホな子みたいに言われるの初めて見たよ!」

辰野「あんた少し嬉しそうじゃない?」ギロッ

歩鳥「失敬な!?そんなことは無いぞ!?」


歩鳥「あ、そうだ真田。ちょっと後でノート見せてよ。高校でも見せてくれてたじゃん」

真田「えー?お前ちゃんと聞いてなかったのかよ…」

歩鳥「だって外の訓練で疲れてたんだもん!見せてよ、パンあげるから!」ガシッ
真田「わ、ちょ、腕掴むなって……!」

紺「おい、こんなとこでイチャつくなよ」

辰野「そうよ!!真田くんに迷惑かけてんじゃないわよ!!!」ゴゴゴゴゴ

歩鳥「ひえ!?ご、ごみんなさい……怒らないで…」ビクビク


アニ「ねえ…あんた」ポンッ

辰野「ん、あ…私?」

アニ「ちょっと来てほしいんだけど」

辰野「え?まあ、いいけど」

歩鳥「あり?友達?」

辰野「いや、話すのも初めてだけど…まあ行ってくるわ」




ザッザッザッ…

アニ「…」

辰野「あのー…話ってなに?なんか結構遠くまで歩いてるけど」

ジャリッ

辰野「!!」


ライナー「…」


ベルトルト「…」


辰野「え、いつの間にあんた達も…!」

ライナー「大声は出すなよ」グイッ

辰野「!?」

アニ「ごめんなさい…タッツン」

辰野「え、な…なに!?なに!?」

ベルトルト「大丈夫だ、タツノ。おとなしくしていれば命は奪わない…」

辰野「え…ちょっ、どういうこと…?何なの、あんた達……」

ライナー「タッツン、俺の質問に正直に答えろ……座学の時に、『飛行機』と言ったな?」

辰野「!!」

ライナー「なぜ飛行機なんてものを知っている?この壁の中にそんなものはないはずだ…」

辰野(わ、私…もしかして、ヤバい事言っちゃったの!?)

ライナー「お前は何者だ?」

辰野(うそ、なにこれ、マジでヤバいんじゃないの?)ガクガク




辰野「う、うう…」ジワッ

ライナー「!!あ、おい待て、泣くなタッツン…」

アニ「ライナー…焦るのはわかるけど抑えて。タッツン、怯えてるから…」

ライナー「す、すまん…」

ベルトルト「…」

辰野「な、なによ…何なのよ、三人とも…」

ベルトルト「…まずはこっちの質問に答えてくれ」

辰野「わ、私だってわかんないのよ!気づいたらここにいて!!」

ライナー「…?」

アニ「どういうこと?」

ベルトルト「君はどこから来たんだ?」

辰野「…たぶんこことは違う世界だと思うけど…あんた達に言ってわかるか知らないけど、日本にいて…訳のわからないうちにここに…」

ライナー「ニホンだと?」

アニ「…」

ベルトルト「どうする?ライナー…本当に何もわかっていなさそうだが」

ライナー「…もう少し監視して様子をみておこうか」

アニ「…」

辰野「監視って…別に何もしないわよ…私…」

アニ「あんたが本当の事を言ってるのか嘘をついているのかわからないし、私達も命がけでやってるんだ…悪いけど、危険分子になりそうなものを簡単に見逃す訳にはいかないんだよ…タッツン」


辰野「あ、あんた達こそ何者なの?」

ライナー「…」

ベルトルト「…」

アニ「…」

ライナー「俺達は、この壁に攻撃を仕掛けた張本人だ…」

辰野「え…?」

ライナー「俺が鎧の巨人で、このベルトルトが超大型巨人だ」

ベルトルト「…」

辰野「な!!?」

アニ「嘘に聞こえるかも知れないけど、本当だよ」

ライナー「なぜこんなことを教えたかわかるか?タッツン」

ベルトルト「…もし、僕達の事を誰かに話し、僕達に不利な事をやらかせば……いつでも巨人になり君たちを潰せるということだよ」

辰野(つまり、とんでもない脅迫かよ!!)

ライナー「最後に1つ…よく一緒にいる他の四人は仲間か?」

辰野「!!」



辰野「ち…違う。たまたま息が合っただけで赤の他人、私とは無関係よ。だから手を出す必要なんて無いわ」

ライナー「…」

ベルトルト「そうか…」

アニ「まあ、身を守りたいなら無駄な発言はしないことだよ、タッツン」

辰野(…はあ……なんで、なんでこんなことに………)


辰野(そして…)



辰野(明らかに緊迫感漂う展開のはずなのにどっか間抜けに感じるのは何でだろう…)


※タッツン呼びされているからです。



――――――


歩鳥「おーい、タッツンツンツーン!」

辰野「はあ…」

歩鳥「………」

歩鳥「ツンツーン……フューチャーメガネ」

辰野「…はあ…っ」

歩鳥「おい、どうしたんだよ!タッツン!?いつもみたいに突っ込み入れてよ!?」

紺「なんだ、真田にフラれたのか?」

辰野「……」

紺「…おい、マジでどうしたんだ」

辰野「ごめん、今は1人にして…」

歩鳥「な、なんだよ~本当にどうしたんだよ~~」

辰野「1人にしてって言ってるでしょ、ちょうちんフグ!!」

歩鳥「ちょうちんフグ!?二回目の暴言だ!!辰野め~、私は本気で心配して…」

辰野「うん…ごめん…」

歩鳥「…え、あり?」

紺「…今は1人にしといてやろう、何があったかは知らないけど…」

歩鳥「うん………」

辰野「…」

静「………人には言えない悩みでもあるのかい~?」

辰野「すみません…誰にも言えないです……」

静「…了解~」


静(人には言えない悩み……トシ子ちゃんの様子がおかしいのは座学のあと、アニちゃんに呼ばれた後から…)

静(見た感じ外傷はないとなれば………ふむ………)

静(やはりいるな~……スパイの子供が…)


―――――

グリシャ「…エレン…これからこの注射でお前に記憶障害が起こる」

グリシャ「だが、この鍵を見るたびに思い出せ…お前はいずれ地下室へ行かなければならない。ある少女と共に…」

グリシャ「その少女の名は………」

―――

翌日

―男子寮―

エレン「…う…」パチッ


ライナー「おい、お前ら起きろ。朝だぞ」

真田「んー…今日は休みだしいいじゃないか…」

アルミン「ダメだよ、生活のリズムが狂うから…エレンも起きなよ」

エレン「おう…」ガバッ


ジャン「今日こそ…今日こそミカサをデートに誘う…」


真田「ふふ、俺だって今日は嵐山とデートに…」

マルコ「頑張りなよ、二人とも…」

コニー「サナダ、サッカーしようぜ」

真田「すまん、コニー…今日こそは嵐山とデートすると誓ったんだ!」

コニー「お、おお…よくわかんねぇけど頑張れよ」


エレン(…何か夢を見ていたんだけど……何だっけ)



―女子寮―

歩鳥「こーんせーんトッ!起きてください!」

紺「…」スースー

歩鳥「むう…起きんな…せっかく面白い事言ったのに」

サシャ「さすがは超低血圧ですね」

歩鳥「おい、起きろ先輩!紺双葉!金髪ネコ!パンツ脱がすぞ!」

静「後でぼこぼこにされても知らんぞ、歩鳥」

紺「んん…ほとり…いま、たすけるぞ…」ボソッ

歩鳥「また寝ぼけてるよこの人は…」

紺「バキュウウウゥゥゥンじゃねぇよこの野郎…」

辰野「いつもの事じゃない。そのうち目覚めるからほっときなよ」

歩鳥「あ、タッツン!今日は大丈夫!?」

辰野「まあ、昨日よりは…」



クリスタ「…ホトリ…いる?」

歩鳥「あ、クリスタ!どうしたん?」

クリスタ「さっき教官から私とユミルとホトリで食料の買い出しを頼まれたんだけど…」

歩鳥「いいよ!この少女探偵にお任せあれ!」

ミカサ「探偵は関係ないと思うけど」


歩鳥「じゃあ、ちょっくら行って来るよ」

静「おー」

辰野「気を付けんのよ」

紺「さるつええ…」ボソッ




歩鳥「さーて、お出掛けの準備はいいかな?」

クリスタ「うん」

ユミル「…」

歩鳥「ユミル、返事!」

ユミル「ヘイヘイ」


ユミル(こういう奴苦手なんだよなぁ…私…)

歩鳥「で、何を買いに行くの?」

クリスタ「え、教官から聞いたじゃん!」

歩鳥「ありゃ?なんだっけ…」

ユミル「ああもう、物覚えの悪い奴だ」

クリスタ「えっと…」


ユミル「…」

歩鳥「ああ、そうだった!クリスタは賢いねー」

クリスタ「賢いって…おつかいくらいちゃんと出来なきゃ…」

歩鳥「あはははは」

クリスタ「はははっ」

ユミル(しかし…なんか…)

ユミル(普段、誰も気づいちゃいないが…私以外には自分を表に出さず表情作ってるクリスタが……)

ユミル(あのホトリ相手には少し心開きかけてないか?)

歩鳥「よーし、馬を持ってこい!」

クリスタ「ダメだよ、馬乗って町に出ちゃ~」

ユミル(…顔も性格もガキみたいなとこがクリスタに無意識の内に安心感を与えていやがるのか…?)


歩鳥「てかさー、クリスタ」

クリスタ「どうしたの?」

歩鳥「なんか他の人と話すときは無理して表情作ってる感じあるけどさ。普段からもっと私と居るときみたいにしなよ?」

クリスタ「え!?や…そんな、事は…」オロオロ


ユミル(しかも変なとこだけ勘が良いんだよな、こいつ)


紺「ふああ………ん?なにしてんだ、歩鳥」ポリポリ

歩鳥「あ、やっと起きたんですね、先輩!これから買い出しに行くんです。一緒に行きますか?」

紺「うん…いいよ。暇だし」

ユミル「人数無駄に増やすなよ…」

クリスタ「まあ、いいじゃん」

歩鳥「紺先輩は強いからボディーガードとしても最適なんだよ」

サシャ「では私もついて行きましょう」ヌッ

紺「うわ!?いつの間に!?」

クリスタ「突然現れるからビックリしたよ…」

サシャ「け、決して買った食料をちょっとつまみ食いしようなんて考えていませんからね…?決して!」ハアハア

ユミル「考えてるなこりゃ」

歩鳥「さーて、出発だよ皆!」


―――――

コニー「サナダ…やるんだな?今、ここで!」

真田「ああ、勝負は今、ここで決める!!」

エレン「なに言ってんだ、お前らは」



真田「…嵐山!!」バンッ


静「ん?どーした魚屋のヒロユキくん」

辰野「あ、真田くん!」

真田「…あれ、嵐山は…?」

静「食料の買い出しに出たよ~~」


真田「………」ガクッ

辰野「さ、真田くん…あの、私と…」

アニ「ねえ、タッツン」

辰野「」ビクッ

アニ「いや、怯えないでよ…」

辰野「な、なんでしょう…」

アニ「ちょっと来て」

辰野「うん…」


静「…」

静(ま、今はまだ様子を見ていようか)

ジャン「サナダは不戦敗で撃沈したか…ならば次は俺だ!」ダッ

ミカサ「…」

ジャン「ミカサ!!」

ミカサ「あ、エレン!」ガタッ

ゴンッ!

ジャン「ごふっ!!」←ミカサが立ち上がったと同時にミカサ頭突き直撃

ミカサ「エレン、おはよう…今日も素晴らしい天気ね」

エレン「おう、そうだな…いや、今日ちょっと曇ってるぞ」

アルミン「…」

ジャン「がはっ…」ガクッ

マルコ「ジャン…君って奴は…」

真田「でもちょっと嬉しそうだな、お前…」


ジャン(ミカサの髪の毛…なかなか良い匂いだったぜ…)


静「…ライナーくんとベルトルトくんは?」

エレン「あれ?どこ行ったんだあいつら」

ミカサ「さっき外に出ていったのが見えたけど」

アルミン「何しに行ったんだろう」

静「…ふんふん…なるほどね……ま、いいや」

静「ちょうどここにいるメンバーは訓練兵団の中でも信頼出来そうな人間ばっかだし…ちょっと話してみようかね」

真田「?どうしたんすか、亀井堂さん」

静「ちょっと面白い話を聞かせてやろう。この世界についての…私の推理をね」

エレン「え!?」

静「ま、ただの推理だから本当の事かはわからんけど………みんな聞くかい~?」

アルミン「興味あります、聞かせてください!」

静「君なら興味を持つと思ったよ。じゃ、話そうか。まず、この世界は色々と不自然なんだよな~…」

真田「…」



―――――――



歩鳥「えーと、あとは芋を…うわ、こんな買わなきゃいかんの?」

クリスタ「まあ、訓練兵団に使う食料だからね…」

サシャ「え?私なら1人で食べきれ…」

紺「食べきるなよ」ベチンッ

ユミル「さっさと終わらせて帰ろうぜ…」



カランカラン

店主「毎度~、いつもありがとね」


「おう、この飯屋はうめぇからな。また来るぜ」

「…ん?」


クリスタ「だから~…」

歩鳥「えー?」


(ありゃ…クリスタか?まあ、今は別に関係ねぇな)

歩鳥「あ!」ボトッ

ゴロゴロ!

ユミル「ばっ!何落としてんだお前!」

紺「しっかりしろよ、あほとり!」

歩鳥「すみません!すみません!」ガッガッ

クリスタ「二人ともそこまで言わなくても…落としちゃったのは仕方ないし…」


「…お嬢ちゃん、ここまで転がって来たぜ」ジャリッ

歩鳥「あ、誰だか知らないけどありがとー!オッチャン!」

ケニー「もっと気をつけて歩けよ」



――――――



辰野「…あの……どこまで行くの?町抜けて平原まで来たけど…」

アニ「人気の全くない場所までさ」


ベルトルト「…この辺りなら誰にも見られないな」

ライナー「よし、壁の上に行くぞ。こっそり立体機動装置を持って来た…掴まれ」


バシュッ!!!



ザッ


ライナー「…もうすぐかな…」

辰野「へー…壁の上からの景色初めて見た…」

アニ「綺麗でしょ?」

辰野「うん…」

辰野「って、私の心境は今それどころじゃないわ!!」

ベルトルト「心配しなくていいよ、ちょっと会わせたい人がいるだけだから」

辰野「え?」

ライナー「俺達だけで状況を判断するには難しいからな…」

ライナー「ジーク戦士長に会ってもらう」

辰野「せ…戦士長?」



四足巨人「…」

辰野「あれ、壁の下に何か来たよ?」

四足巨人「…もうすぐ戦士長が来られます」

辰野「ひい!!?喋った!!?」ビクッ

ベルトルト「わかった、お疲れ様」

辰野「な、な、あんな化け物と知り合いなのあんたら!?」

ライナー「化け物とは失礼だな…」

アニ「まあ、否定はできないけど…」

ライナー「む、来たぞ」





獣の巨人「…」ズシッズシッズシッ


辰野「で、ででで……デカイ猿……」ブルブル

アニ「へえ、猿も知ってるんだ」

ガシッ!!!


獣の巨人「…」ガシッ!ガシッ!


辰野「ちょっ!登ってきた!!登ってきたよ!!?」ビクッ

ライナー「大丈夫だって」

アニ「理由なけりゃ何もしないよ」

辰野「り、理由があれば何かするの…!?」

ライナー「…」

ベルトルト「…」

アニ「…」

辰野「三人して無言になるなよ!更にこえーよ!?」

獣の巨人「騒がしい女の子がいるな~~…」ズシッ

辰野「ギャアアア!!?こいつも喋ったあああああ!!?」

バシュウウウウウ………


ジーク「ふう…」ザッ

ライナー「お久しぶりです、ジーク戦士長!」バッ


ジーク「ん、いいよ…楽にして」

辰野「な、中からオッサンが、出てきた…っ」ガクガク


ジーク「…その子?問題の子は」

ベルトルト「はい」


ジーク「へえ…」

辰野「ひっ!?」

ジーク「…日本人で………平成辺りの子かな?」

辰野「!!?な、なんで…」

ジーク「正解だった?平成ねぇ…その時代にはタイムマシンとかの技術は発達してなかったはずだよなぁ……おかしいなぁ…」

ジーク「俺のいた少し前の時代じゃタイムマシンの研究や実験は行われていたらしいが、悪用を危惧して途中からタイムマシンの研究や資料は全て廃止されたらしいし………」

辰野「???」

ジーク「あ、固まってないでいいよ。座って楽にして」

辰野「は…はい…」ベタッ

ライナー「…何かわかりましたか?」

ジーク「残念ながらわからないなぁ…どうやってここに来たのか…君にもわからないんでしょ?」

辰野「…はい…」

ジーク「ふーん…」

ジーク「そうだな、全く違う時代から来た人間をころすのも…あれだな」

辰野(ころすって…何か物騒なこと言ってるし……)

ジーク「…俺にもわからないんだよな…」

辰野「え?」

ジーク「自分達のやっていることが正しいのか、間違っているのか…そもそもこの世に正しいものなんてのが本当にあるのか?」

辰野「?????」

ジーク「…タッチャンだっけ?」

辰野「タッチャンじゃなくてタッツンです。じゃなくてタツノです」

ジーク「…君…」

ジーク「この世界の行く末を…見届けてみないかい?」

辰野「は…はい?」



辰野「ど、どういうことですか…?」

ジーク「ん…ま、いずれ詳しい話をするさ。まだ早いからな」

辰野「…?」

ジーク「そうそう、最後に1つ。ここに来る前の状況とかは…どんな感じだったの?」

辰野「えっと…丸くて四足で変な顔のついた置物を見てて……」

ジーク「……へえ…そいつはどんな色してたの?」

辰野「『白』でした」

ジーク「…ふむ……聞いたことあるような無いような…。もしやアレの事か?いや、『アレ』だとしても、それでタッちゃんが来た理由が何故なのかは分からないし…そもそも自分の目では見たこと無いし…それだけでは判断できないなぁ…」

辰野「…『アレ』?」

ジーク「ああ…気にしなくていいよ」

辰野「…?」

ジーク「ま、いいや。ライナー、ベルトルト、アニ、この子と訓練兵団に戻っていいよ」

ライナー「はっ」




――――――――



ユミル「…もう少しだ。あとは量少ないから手分けして買いに行こう」

クリスタ「そうだね」

歩鳥「じゃあ、じゃんけんでわかれよー!」

ユミル「いや、ホトリとフタバはこっち来い」

歩鳥「勝手に決めなすっちゃったよこの人」

紺「私は別なんでもいいけど…」

ユミル「クリスタ、サシャ、そっちは任せたぞ」

クリスタ「うん」

サシャ「行きましょう、神様!」



ユミル「………さて、ちょっと話があるんだが…」


紺「…なに?」

歩鳥「先輩、人によって態度変えすぎだよ~」

紺「だって別にユミルとは仲良くないし…」ボソッ

歩鳥「ほー。紺先輩、ユミルと仲良くなりたいってさ!!」

紺「そこまでは言ってねえよ!!」

ユミル「…漫才はいいから聞きたいことがあるんだ」

歩鳥「へい」



ユミル「ここに来るとき、変な置物を見ていたとか言ってたな?」

歩鳥「うん」

ユミル「どんな置物だ?」

歩鳥「えっとー、姉ちゃんがリドルって名付けてたんだけど…見た目は巨人みたいな変な顔がついてて、四足で丸い形」

ユミル「…色は?」

紺「『白』」

歩鳥「うん、『白』だった!」

ユミル「…!!!」




ユミル(…まさか……こいつら………)



――――――

世界は戻り…丸子商店街


―丸子病院―

歩鳥「…」
辰野「…」
真田「…」
紺「…」
静「…」


医者「…検査してみたところ…五人は今まで見たことの無い状態になっていました……」

ウキ「…!?五人は大丈夫なんですか!?目は覚ますんですか!?」

医者「…まだ何とも言えませんが…とりあえず、命に別状はありません…むしろ健康で……しかし、脳に少し変わった事が起きていまして」

ウキ「…!?まさか、脳に異常が…」

医者「異常…というか、ものすごい勢いで脳が活発に働いている、というか…」

ウキ「は、はあ?どういう事ですか…?」

医者「わ、私にもさっぱり…」

ウキ「医者がさっぱりとか言うんじゃねー!!!」

医者「すみません!!」



医者「あの…この五人の親御さんが来る前にもう一度状況を説明してもらいたいのですが…」

ウキ「私にも突然の事で訳がわからなかったんだ………ただ」

ウキ「この、リドルとかいう…奇妙な顔の付いてて四足で丸くて…色は」

ウキ「『黒』の置物をみていたら、こうなっちまったんだ!」



――――――――



ユミル「………」

歩鳥「ん?どうしたの?ユミル」

ユミル「…いや、何でもねえ………」

紺「何だよ…」


ユミル「………ちょっとトイレ行って来るわ」

歩鳥「私もついていこーかえ?」

ユミル「来んでいいわ!!?」

歩鳥「はい」

紺「あいつが戻って来る前に残りの買い出し終わらせておこう」

歩鳥「そうっすね!」



ユミル「………」


ユミル「いや、まさかな…そんなバカな事は……」



歩鳥「そーいやさ…ずっと気になってるんだけど…」

紺「どうした?」

歩鳥「この壁ってどうやって作ったんだろうね?」

紺「どうやってって、まあ……地道に作って行ったんじゃね?」

歩鳥「えー?おかしいよ?」

紺「ああ?」

歩鳥「外には巨人いるのに…こんなデカイ壁なんか作る余裕なんてあるのかな?」

紺「…あぁ…言われてみりゃ、確かに…」

歩鳥「………なにか…匂うぞ…」

紺「屁でもしたのか?」

歩鳥「ちゃうわ!!」ベシッ

クリスタ「あ、二人とも終わった?」ザッザッ

歩鳥「あ、雑談してたら忘れてた」

クリスタ「はは…」

サシャ「ユミルは?」

紺「トイレだってよ」


歩鳥「…二人に聞きたいんだけどさ…」

サシャ「なんですかー?」

歩鳥「この壁の製造方法とかって知ってるの?」

サシャ「え?あー…いや、知らないですねぇ…」

クリスタ「ごめん、私も聞いたこと無い…」

歩鳥「つまり、訓練兵団ですら建造方法を教えない?……ええ?」

紺「…技術の悪用を防ぐために建造方法を伏せているとかいう可能性は?」

歩鳥「それはわかんないな…でも……」


歩鳥「…あ」

歩鳥「そういえば、壁教とかいう宗教があるんだよね?」


―――――――


真田「ついにこの世界の正体が…!?」

静「いや、すまんがまだそこまでは行ってない。とりあえず一部に関する推理だけど~…」


静「この世界には色々と変な部分がある…そう思うところはないかな?君たち」


アルミン「王政は壁の外へ興味を持つことをタブーとし…外の世界に関する書物を所持していると憲兵に取り上げられるとおじいちゃんから聞いたことがあります」

エレン「なんでそこまでして壁の外に興味を持たせたがらないんだろうな…巨人がこえーからか?」

アルミン「……それだけなんだろうか…」

エレン「あと、この兵団のシステムだ…巨人に対抗できる力をつけた人間ほど巨人から遠ざかる事ができる仕組み…」

ジャン「そりゃ仕組みじゃなくて個人の問題だろ。憲兵に入れるような奴でも巨人と戦いたけりゃ調査兵にでもなるだろうし……俺は闘いたくねぇから憲兵だがな」

エレン「だから…皆がそんなんじゃ…」

真田「わかったわかった、今は抑えて」

エレン「ああ、すまん…」

ジャン「悪い…」

静「…そこはジャンくんの言うことも一理あるだろう。仕組みとか関係なく個人の意識の問題でもあるのだろうけど…」

静「


アルミン「僕も薄々それは気づいていました…何かを隠しているように…」


静「とりあえず…ここで私の考えを話そうか」


静「王政側は外の世界に感心を向けさせないようにしている、そして昨日のタッツンの質問…『空を飛ぶ技術』……100年もいて空を飛ぶ技術を発展させようと思わなかったのか?巨人の脅威にさらされず安全に外を偵察できる手段だと思うんだがな……」

アルミン「…」

静「そして、エレンくんとアルミンくんとミカサちゃんから聞いた、シガンシナ区に現れた『超大型巨人』『鎧の巨人』と呼ばれる特殊な巨人」

アルミン「あの2体は恐らく…知性を持っています…無知性にはできない計画的な行動でした」

静「そう、知性持ち……そもそも巨人ってなんだろうな~?」

コニー「デカくて強い奴だ」

静「うん。まあ、そうなんだけど…そういう事じゃなくてね」

静「この巨人の生態もおかしいと思ってるんだ。無知性巨人は、人間以外は食わず…そもそも食事自体を必要とせず、生殖器を持たない…」

静「更に巨人の出現した詳しい理由は教えられていない…なぜ、どこから急にこんな奴等が現れたんだ?」

ジャン「…」

静「おかしいよな~……私は、

>>53に追加


静「私は、意図的なものも感じるね~」

マルコ「巨人と戦う力を持つものを憲兵に行かせることで意図的に人類側の兵力を抑えている、という事ですか?」

ミカサ「そんな事をしても人類側にメリットは無いと思うのだけれど…」

静「うん、普通に考えればミカサちゃんの言う通りだよ」

静「ただ、私には…王政側はら何かの意図があって壁内人類を発展させないようにしてる風にみえるんだな~」


アルミン「僕も薄々それは気づいていました…何かを隠しているように…」


静「とりあえず…ここで私の考えを話そうか」


静「王政側は外の世界に感心を向けさせないようにしている、そして昨日のタッツンの質問…『空を飛ぶ技術』……100年もいて空を飛ぶ技術を発展させようと思わなかったのか?巨人の脅威にさらされず安全に外を偵察できる手段だと思うんだがな……」

アルミン「…」

静「そして、エレンくんとアルミンくんとミカサちゃんから聞いた、シガンシナ区に現れた『超大型巨人』『鎧の巨人』と呼ばれる特殊な巨人」

アルミン「あの2体は恐らく…知性を持っています…無知性にはできない計画的な行動でした」

静「そう、知性持ち……そもそも巨人ってなんだろうな~?」

コニー「デカくて強い奴だ」

静「うん。まあ、そうなんだけど…そういう事じゃなくてね」

静「この巨人の生態もおかしいと思ってるんだ。無知性巨人は、人間以外は食わず…そもそも食事自体を必要とせず、生殖器を持たない…」

静「更に巨人の出現した詳しい理由は教えられていない…なぜ、どこから急にこんな奴等が現れたんだ?」

ジャン「…」

静「おかしいよな~……私は、巨人も何か人為的なものが関係していると思うんだよ」

アルミン「僕もそう思います」

静「そして、シガンシナ区に現れた知性を持つ巨人…」

静「壁の外の情報を隠したがる王政……知られたくない不都合な何かが壁外にあるのだとすれば…」

真田「…」


静「例えば…壁の外にも人間が暮らしていて、そいつらが知性を持つ巨人の正体で……何らかの恨みを持ち壁内に攻撃しているとかな」



エレン「そ、そんな無茶苦茶な…」

静「でもさ~、こう考えた方が辻褄が合う気もするんだよね~…」

静「この数年、全く超大型巨人と鎧の巨人が現れないのは何故だ?いつでも攻撃し簡単に滅ぼす事だってできるだろうに…」

アルミン「……目的がよくわかりませんね…」

コニー「巨人だから気まぐれにやってるんじゃないのか?」

静「コニーくん。忘れないで欲しいのは…鎧も超大型も知性を持っているという点だ」

静「知性を持ち計画的な行動のできる奴等が気まぐれだけで攻撃なんかしないだろう…理由があって攻めてこないんだ」

ミカサ「…壁の中に潜伏している可能性も?」

真田「でも、そんなデカイ奴等がどうやって潜伏なんか…」

エレン「だが、あいつらは急に姿を消したりも出来た…」

静「それだ。それは本当に『姿を消した』のかな?」

静「前の私の仮説に戻ろう…知性を持った巨人の正体が人間と仮定した場合…」

アルミン「…!そうか!」


アルミン「原理はわからないけど…もし、人間の手で巨人になったり、人間体に戻ったりする技術があり…それが可能なら」

アルミン「あれは消えたのではなく、巨人になっていた人間が元の姿に戻り、壁内に潜伏した!?」

エレン「!」

静「お~、さすがアルミン君。言いたい事を見事に言ってくれたね~~」

ジャン「なるほどな…それなら奴等がまだ攻撃して来ないのも分かる。何かを探る為に潜伏しているのか?」

アルミン「そうかも知れない……だとすれば、確実に最低でも二人以上は壁内にいるはずだ」

エレン「それなら、早くその潜伏している奴等を探さねぇと!」

静「まあまあ、犯人探しは今はよそう」

エレン「でも、本当に敵が壁の中に潜んでいるなら…」

静「焦らない、焦らない。それに、目立った行動をしてスパイ探ししている事が敵にバレちゃ元も子もない」


アルミン(もし、静さんの仮説通りに考えて敵が壁内に潜伏しているとするならば……奴等にとって都合のいい隠れ場所はどこだ?)

アルミン(知らない場所でも生活に困らず情報収集が出来、比較的安全に暮らせる場所…)

アルミン(…訓練兵団…?)


静「あと1つ…身近にあって必要不可欠なもので謎の満ち溢れたものが無いかな?」

ミカサ「壁」

静「お、ミカサちゃん即答~!」


真田「確かに壁って建造方法とか…どうなってるんですかね。そもそも巨人がいる状況でどうやって…」

エレン「あるのが当たり前だからそこまで考えてなかったな…」

アルミン「普通に作ったにして不自然ですね」

静「と、言うわけで私は1ヶ月前、歩鳥と共に壁教に接触を試みた訳であります」

ジャン「マジっすか!?」

マルコ「なかなか勇気ありますね…」




―回想―


静「すみませーん」

ニック「なんだね、君たちは?」

歩鳥「壁についてお聞きしたいことがあるのですが…」

ニック「神聖なる壁がどうしたのかね?」

静「どうやって作ったんですか?あれ」

ニック「あれは天より与えられし壁…人智の及ばぬ神の手による産物だ」

歩鳥「はあ?なに言ってんだこのオッサン」

静「…」



静「壁掘って中調べていいっすか~?」

ニック「貴様!神聖な壁に傷をつけるなど…神への冒涜だぞ!!」

静「あはは、冗談ですよ~~」

歩鳥「逃げよう、姉ちゃん!このオッサン言ってること変だよ!」

静「…」


ーーー


静「…で、壁の材質が気になりこっそり削って帰ろうと思ったのだが…」

ミカサ「聞いてる方が怖い…」

静「固すぎて傷の一つも付かんかったよ」

アルミン「本当に勇気ありますね」

エレン「あの壁教とかいう奴等、前から言ってる事がおかしいんだ」

静「果たしてそうかな?」

エレン「え?」



――――――

歩鳥「前に壁教のオッサンと接触したとき…何だか意味不明な事を言っていた」

紺「ああ…言ってたなそんな話。ただの変なオッサンだったんだろ?」

歩鳥「いや…やっぱり考え直してみよう……外観で人を判断するやつは探偵失格であります」


『人智の及ばぬ神の手による産物』

歩鳥「………作ったのは…人間じゃない………?」

紺「はあ?」

歩鳥「でかくて…頑丈で………いっぱい………」


歩鳥「!!!」



歩鳥「クリスタ!!シガンシナ区に来たっていう特殊な巨人…なんだっけ!?」

クリスタ「え!?えっと…」


―――――――



静「端から見りゃただの頭おかしい奴等だろう…だが、私には何かを必死に隠してるように見えたね、都合の悪いものを」

アルミン「都合の悪いもの?」

エレン「でも…人間を守るために作られた壁なのに、何で都合が悪いんだ?」

真田「だよなぁ…」

静「だが、壁の製造方法を誰も知らない…そして壁教と呼ばれる過剰なまでに壁を崇める宗教……つーか宗教がこれくらいしか存在しないのも臭いな」


アルミン「…」


静「で、私なりに考えてみた…壁の正体。一般人に知られたら不都合な材料で…固くてデカイもの、な~んだ?」

アルミン「知られたら不都合で…固くてデカイ…」

静「超大型巨人と鎧の巨人の特性は?」

アルミン「え?っと…超大型巨人は壁と同じくらいの大きさで…鎧の巨人は全身が固い…」


アルミン「…あ!」

ジャン「まさか…!」

アルミン「シズカさんの仮説前提で…もし、超大型巨人と鎧の巨人の特性を合わせ持つ巨人を複数生み出せたとしたら…!」

―――

歩鳥「そう!鎧の巨人は固くて、超大型巨人はめちゃくちゃデカイ!」

歩鳥「『人智を越えた神の力!!』」





歩鳥「壁って巨人で出来てんじゃね!!?」




クリスタ「え…ど、どういうこと…?」

サシャ「壁が巨人って……ど、どこが巨人なんですか!?あれの!!」

歩鳥「んー…私にもよくわからんのだけど」

紺「結局よくわからんのかい!」

歩鳥「ただ…」



「その話…詳しく聞かせてくれないかな?」ジャリッ


クリスタ「!」

歩鳥「だれだ!?」バッ



サネス「壁がなんだって…?」ザッ




――――――――



ザッザッザッ…

辰野「………」


アニ「…ごめんね、変なことに巻き込んで…」

辰野「…ごめんねって言われても、私どうすればいいのよ」

アニ「…ごめん」

辰野「…」


ベルトルト「…」

ライナー「アニ…あまり同情するのはやめておけ」

アニ「…わかってるよ…」


辰野「…あなた達は、普段なにを考えていたの?皆を騙して平気なの!?」


ライナー「…」

ベルトルト「…」

アニ「…」


辰野「ライナー、普段の楽しそうにヘラヘラしてる姿も演技だっての!?」

ライナー「……好きに思えばいい…勝手にしろ」

辰野「な!」

ベルトルト「…今まで平和に暮らしていた君にはわからないよ…」

辰野「はあ!?」

ベルトルト「罪を犯して………自分を保ち続けるのは、簡単な事じゃないんだ」

辰野「…?」

アニ「…」



アニ「…ライナーもベルトルトも、本心では平気な訳じゃないんだよ」ボソッ

辰野「!」


―――――――


アルミン「…壁が巨人で出来ているかも、知れない…」

ミカサ「……まさか、そんな…」

静「まあ、私もただの推理だから本当かはわかんないよ」

コニー「でも、あんなまっ平らな壁のどこに巨人が使われてるんだよ!?」

アルミン「…中にぎっしり詰まっているとか…?」

ジャン「こえーよ…」ブルッ

真田「でも、それなら確かに壁教が過剰になるのもわかるかも……」ゾーッ


エレン「…」

ミカサ「!エレン、どうしたの?」

エレン「いや、なんか…頭が……」ズキンッ

アルミン「大丈夫?」

エレン「……う……うう……」ズキンッ


ミカサ「エレン!?」

ジャン「おい、どうしたお前…」

エレン「…」

真田「おい、エレン!?」

静「エレンくん、どうした!?」


エレン「………」フラッ

ミカサ「エレン、どうしたの?」

アルミン「…?」

コニー「おい、エレンの様子が変だぞ」

エレン「………」ジャリッ

静「!な、なになに…私に近づいて。どうした~…?」

エレン「…」ザッ

グイッ!!

静「!!?」

真田「!?」

アルミン「エレン!?」


エレン「オマエハ、キケンナ存在ダ…キエロ…」グググググッ

静「かはっ!?」

ミカサ「エレン、何をしているの!?やめなさい!!」ガシッ

アルミン「どうしたんだよ、エレン!?」バッ





辰野「…ただいま…って、ええ!!?」

ベルトルト「な、なんだあれ!?」


辰野「エレンが何で静さんの首しめてんの!!?」

ジャン「あ、お前ら!エレンがおかしいんだ!!」

ライナー「おい、エレン!!」


エレン「キエロ…」グググググッ

静「ぐう…っ!」


ミカサ「やめなさいエレン!!」ガバッ

エレン「…ジャマヲ…スルナ…」

アルミン(どうしたんだ?目付きがおかしい!?)


ライナー「エレン、なにしてんだ馬鹿が!!」グイッ

エレン「…」

ライナー「!!!」

ライナー(目付きがいつもと違う!?この目は…まさか…戦士長から聞いた)


ライナー(座標を持つものの目!?)



静「ごほっ!ごほっ!」ガクッ

真田「亀井堂さん!!」

辰野「大丈夫ですか!?」

静「あ、ああ…大丈夫だよ…ごほっ」



エレン「…!!?」ハッ

ミカサ「エレン…!?」

エレン「あれ、俺いま…何を…」

アルミン「…」

コニー「…」

ジャン「…」

ライナー「お前は、さっき…」

静「ごほっ」


エレン「ごめんなさい!な、なんで今、俺は…」

エレン「本当にごめんなさい!ごめんなさい!!」

静「いい、気にするな…エレンくんは普段から口は悪いが仲間想いのいいやつなのは知ってる……」

真田「…エレン、どうしたんだよ?」

エレン「ごめんなさい…でも、俺にも何故か……」

静「…君がシガンシナにいて巨人の被害に遭って…巨人への憎しみが強いのを知ってる」

静「それなのに私が楽しそうに巨人についての推理を語っちゃったからね……色々な感情が混ざって不安定になっちゃったかも知れない。こちらこそごめんな」

エレン「いや、シズカさんは悪くないです…」


ジャン「…ま、お前は死に急ぎ野郎だが仲間を傷つけるような事はしない奴だ…。昨日の訓練は激しかった上にお前はまだ訓練するとか言って徹夜してたからな…疲れてんだろ…」

コニー「そ、そうだよな。エレンはあんなことするやつじゃないからな」

静「気にするな。私に非があるし…誰でも疲れることはあるさ」ポンッ


アルミン(本当にそれだけだろうか…確かにエレンは本来あんなことをする人間ではない…でもあの時、いつもと目付きが違った…)

静(明らかに普通ではなかったな…目付きも喋り方も普段のエレン君ではなかった…)

静(…エレン君自身も知らない何かが…彼の中にあるのか?)


ユミル「………」ザッザッザッ…


ジャン「お、ユミル…」

コニー「あれ!?お前…その怪我どうしたんだ!?」


ユミル「…すまん」ガクッ

エレン「おい、何があったんだ!?」



ユミル「クリスタ、サシャ、ホトリ、フタバが………憲兵に連れていかれた」


アルミン「!?」

真田「ええ!?」ガタッ



ユミル「私も追いかけたんだが…返り討ちにあっちまった…」

ユミル(ケニーとか言う奴がめちゃくちゃ強かったな…くそっ。あいつさえいなけりゃ…)

ミカサ「どういうこと?」


静「次から次へと…なんなの?」

ユミル「…ホトリがいらねぇ事叫んじまったらしい…」

コニー「もしかして壁に巨人がいるって話か?」

ライナー「!?」ビクッ

ユミル「は!?なに言ってんだお前!?」

コニー「いや…さっきまでそういう話してたからよ…推理で」

ユミル「…その話したのあんたか?」

静「あはは~…まあ、お遊び程度の予想話だから気にしないで」

ユミル「…さすがあんたの弟子だな…」

ユミル「全く同じ事を街中で叫んで憲兵に見つかったんだ」

真田「!!?」

アルミン(え…じゃあ、推理当たってたの…?)

静「あ…あいつは~……」


静「そういう事を街中で叫んじゃダメだろ~~……たまに勘は鋭いのに、どっか抜けてるんだよな、もう~~~………」



サネス「ちょっと詳しい話を聞かせてもらおうか」ズイッ


紺「くそっ!!逃げるぞ歩鳥!!」グイッ

歩鳥「ぐえっ!!」


サネス「…お前たち二人も奴等と仲間か?」

クリスタ「え!?」

サシャ「はい!?」


歩鳥「クリスタとサシャも逃げろお!!」

サシャ「え!?っと…逃げましょう、クリスタ!!」

クリスタ「う、うん!」


サネス「皆さん!彼女達を捕まえて下さい!!若くして泥棒に手を染めた哀れな犯罪者です!!」

紺「はあああ!?」

歩鳥「あんにゃろ~!探偵の私を泥棒扱いしやがって!」

紺「お前は探偵の真似事やってるだけだろうが!!」

歩鳥「でも、憲兵に絡まれたって事は私の推理当たってたじゃん!私すごいじゃん!!」

紺「今はそれを自慢する状況じゃねえ!!」ゴチンッ

歩鳥「ごめんなさい!!」


ユミル「…!!おい、どうしたお前ら!?」

紺「ユミル!」

歩鳥「壁は巨人で出来ているという推理を語ってたら…憲兵に聞かれてた!!」

ユミル「バカかお前は!!」

歩鳥「ごめんなさい!」

ユミル「一緒にいたクリスタとサシャも疑われちまう…クリスタ、サシャもさっさと逃げるぞ!」

サシャ「はい!」

クリスタ「な、なんであんなに憲兵の人は必死なの!?」

ユミル「理由なんかお前は知らなくていい!」


サネス「ちっ、逃げられる!!」


ケニー「全部聞いてたぜ…俺に任せな」

サネス「!!」



ギュンッ!!!

ユミル「!!」


ケニー「待ちな、お前らは逃げられねぇぜ」

ユミル(こいつ、はえぇ…いつの間に回り込まれた!?)

歩鳥「あ、あんたは!?」

ケニー「悪いね、俺は憲兵なんだ…ま、仕事だから悪く思うな」

ケニー「あんたは眠っててもらうぜ」ドフッ


ユミル「かはっ!?」

ドサッ!!

クリスタ「ユミル!!」

歩鳥「お前…!」

ケニー「気絶してるだけだ、安心しな」

サネス「よし、囲いこんだ…もう逃げられんぞ」

サシャ「ひいっ!?」

紺「くそ…っ!」ギリッ

ケニー「さて、どうするんだい?サネスさんよ」

サネス「そこの女二名と、仲間の疑いのある二名を連れて帰る」

歩鳥「うそぉ…」ガクッ

紺「…」

クリスタ「…」

サシャ「えっ…え?」

ケニー「悪いな…大人しくついてきな」


歩鳥「うわあああん!なんて事になっちまったんだあああ!!」

―――――――――

場面は訓練兵団に戻る


教官「…」ザッザッザッ


教官「エレンくん、ちょっといいかい?」

エレン「!」

ユミル「!」

ミカサ「あ…ウルクリン教官」


ウルクリン教官「…さっき窓の外で見てたけど…」

エレン「…あ!」

静「もしかして……あの、気にしなくていいですよ。私が悪かったんですから…」

ウルクリン「いや、でもね…ああいうのを見たら教官として話をしなくてはならないんだよ」

エレン「…シズカさん、おれ行きますよ。やっぱりおれが悪いし」

静「そんなことはないって、気にしないでエレン君……」

静「あの、教官……エレン君には話をするだけで許してあげてください……」

ウルクリン「わかったよ。来いエレン」

エレン「はい…」


ザッザッザッ…


ウルクリン「…」



ウルクリン(ついに見つけたよ………座標の持ち主)





ベルトルト(………え!?エレンが!?)

ライナー(ああ…恐らく、座標を持っているのはエレンだ)

アニ(…今まで近くにいて、気が付かなかったなんて…)

ライナー(…)


ポンッ

辰野「!」


ライナー「すまんが…今晩も戦士長に会いに行く……ついてこい……」ボソッ

辰野「はいはい…」ボソッ


―――――――

そして、歩鳥達は連れ去られ…中央憲兵本部



歩鳥「だから…私にもわからないんだってば!!」

サネス「御託はいい…どこから来たのか、何の目的で来たのかを喋れ」

歩鳥「だから、突然この世界に飛ばされてて…目的なんかもないし、私にも何が何やらさっぱりなんだよ!!」

サネス「嘘をつくな!!!」バアンッ

歩鳥「ひい!?理不尽!?」

サネス「次は脅しでなく本当に殴るぞ?」

歩鳥「だ、だ、だから…本当に、知らないんだってぇ………」

サネス「ふん、まあいい…明日まで待ってやるから頭を冷やせ。明日も吐かなければ…」


サネス「拷問だ」


歩鳥「ひえっ…」

バタンッ!!ガチャッ


歩鳥「な、な、な、なんで…こんなことになっちゃったんだよぉ……」


歩鳥「拷問なんて嫌だよぉ…」



歩鳥「紺先輩…クリスタ、サシャ…みんな別の部屋に連れてかれちゃったし………大丈夫かなぁ、みんな………」


歩鳥「………静ねえちゃん、タッツン、真田………ごめんよぉ…私また迷惑かけちゃった………」


歩鳥「……うう………っ」グスッ



歩鳥「お父さん、お母さん、タケル、ユキ子、ジョセフィーヌ…針原さん、森秋先生…婆ちゃん…みんな…」


歩鳥「また会いたいよ…死にたくないよぉ…」ボロボロ


歩鳥「…」ズズッ



歩鳥「…いや、ダメだ、泣いてちゃダメだ!」ゴシゴシ


歩鳥「静ねーちゃんも言ってた…すぐに諦めて思考を止める奴は探偵失格であります!!」

歩鳥(思考を止めるな…脱出し、皆を助ける方法を考えろ!)


ガチャッ


歩鳥「!!」


ケニー「よぉ…」


歩鳥「オッサン!!」

ケニー「へえ、まだ諦めてねぇ顔だな」

歩鳥「当たり前だの前田だよ」

ケニー「…お前、この壁の外から来たんだって?」

歩鳥「壁の外というか…全く別の世界から…」

ケニー「はあ?」

歩鳥「やっぱ分かんないか…」

ケニー「……どんな場所から来たんだ?」

歩鳥「へ?」

ケニー「単純に俺の個人的な興味だ。お前のいた世界の話を聞かせてくれ」

歩鳥「ま、いいけど…」


――――――


歩鳥「………でね、もう…便利な世の中でね。空を移動したりとか、離れてる人とも簡単に話したりもできるんだよ」

ケニー「はあ…作り話みてぇな世界だな」

歩鳥「私から見りゃここも作り話みてぇな世界だけどね」

ケニー「ははっ!」


歩鳥「…はぁ……みんなは、無事かなぁ…」

ケニー「…」

歩鳥「クリスタもサシャも…元からこの世界の人だから色々調べたら潔白なのはわかるだろうから大丈夫だと思うけど…」

歩鳥「私と紺先輩は…絶対ヤバいよなぁ……」

歩鳥「先輩はオカルト好きだけど怖いの苦手だからなぁ…今頃泣いたりしてないかなぁ……心配だなぁ」ハァ


ケニー「………」

歩鳥「…おっちゃんはさ、何で中央憲兵に入ったの?何か他の中央憲兵とは雰囲気が違う気がするんだけど」

ケニー「…何でだと思う?」

歩鳥「わからないから聞いてるんだよ」



ケニー「この世界を…ひっくり返す為だ」


歩鳥「ひっくり返す?」

―歩鳥の想像―

ケニー「そりゃ!」ググッ

歩鳥「地面がひっくり返ったー!!」

ズテーンッ

――――――


ケニー「あー、たぶんお前が想像してるのは違う」

歩鳥「やっぱり?」


ケニー「……ま、いいや」ガタッ

歩鳥「いっちゃうのー?」

ケニー「いつまでも相手してられねぇからな……あ、そうだ」



ケニー「あと一時間くらいしたら『夕飯の時間』だ」


歩鳥「へ?」


ケニー「憲兵1人がお前にも飯を持ってくる」



ケニー「スープが熱いから気を付けろよ?」



歩鳥「はぁ…うん、わかった」


ガチャンッ!


歩鳥「………?」










女隊員「…どうでした?」

ケニー「やっぱり興味あるな。あいつをあのまま中央憲兵の豚どもに渡すのはもったいねぇ」


女隊員2「助けてあげましょうよ…子供が拷問を受けるのは見たくありません…」


ケニー「大丈夫だ……ヒントならやったからな」




ケニー「自称探偵なら…こんな推理くらいは簡単だろう?お嬢ちゃん」


―――――――


真田「……くそぉ、嵐山が!!」バンッ

静「…はぁ……本当に、参ったな……」


アルミン「…まさか……こんなえらいことになるなんてね…」

ミカサ「…」

コニー「なあ、教官とかにも話して憲兵に説得するとかは…」

ジャン「バカ野郎、どう説明するんだよ………」

マルコ「下手な事を言えばその教官まで危ない目にあうんだよ…」

アルミン「それに、憲兵が裏で情報操作等をしているのは昔から噂されていたことだ…何か犯罪をおかしたとかをでっち上げられるかも…」

真田「力づくでも取り返しに行くしかない!!」

静「やめなさい!気持ちは分かるけど…下手すれば余計事態が悪化するだけだ!」

真田「…わかってますよ…そんなことしたら余計に悪くなるのは…でも…」

アルミン「…」

静(クリスタとサシャは元からこの世界の人間だから調べたら大丈夫だと思うが……歩鳥と双葉ちゃんは違う)

静(考えろ……どうすれば助けられる…!?)


ガチャッ


ミーナ「みんな、ちょっと聞いて!」

ジャン「…なんだよ?」


ミーナ「エレンとウルクリン教官が…いなくなったらしいんだけど!!」

アルミン「え!?」

ミカサ「!?」


静「…今度は何だよ~~~…」


―――――――――




ザッザッザッ…


辰野「…」


アニ「…」

ライナー「…」

ベルトルト「…」


アニ「…ごめんね…友達が大変な目に遭ってる時に…」

辰野「あんた、謝ってばっかりね」

アニ「…」


辰野「…知らないわよ、歩鳥なんか………いっつも迷惑かけてばっかりで、いつもバカな事やって…私に変なアダ名つけて………」


辰野「………」ピタッ



辰野「……でも……あいつ…本当は、いいやつなんだよ……」


ライナー「…」

ベルトルト「…」


辰野「………」グスッ



ライナー「…こんな時に呼び出したのは悪いと思っている。だが、今お前は俺達と関わってしまった…もう逃げられん」

ベルトルト「…せめて、友達が無事な事を祈るんだ」

辰野「…」グイッ

アニ「…」ポンッ




辰野「………早くあの猿呼びなさいよ。話があるんでしょ?」


ジーク「ん?いるけど?」


辰野「うわあ!いつの間に!?」ビクッ

ライナー「ビッ…クリした……」

ベルトルト「もう来てたなら言ってくださいよ…」

ジーク「いや、だってさ…さすがにタッツンが泣いてる時に割り込んだら空気壊れるじゃん?」

アニ「…」

辰野「…わかったから早く話を済ませて下さい…」






ジーク「………座標が見つかった…?」

ライナー「はい、確定までは行ってませんが…ほぼ間違いないかと」

ベルトルト「エレンという名で…訓練兵団の中にいました」

ジーク「へえ…」

ザッザッ…


男「戦士長…報告があります」

辰野「あれ?あなた…確か訓練兵団の近くのパン屋じゃない?」

男「私ですよ、四足の」

辰野「あれか!?あの巨人もすぐ近くにいたのかよ!?」

ライナー「彼には俺達と戦士長のメッセージを渡す役をしてもらっているんだ」

ジーク「…で、どうした?」

男「座標を持っていると思われたエレンという男はどこかへ姿を消したようです」

アニ「え!?」

ライナー「何だと!?」

辰野「…?てか、なんでエレンの名前が出てくるの?」

ジーク「…ふーん、もしかしたら、別の勢力に見つかったのかなぁ…?」

ベルトルト「…壁内の王政側の仕業でしょうか?」

ジーク「…かもねぇ…調べて見る価値はありそうだな」



ライナー「…タッツン」

辰野「何?」


ライナー「もしかしたら…歩鳥達を助けられるかも知れんぞ?」

辰野「え?」

ジーク「これから俺達は王政に出向いてみようと思う………タッツンにももちろん協力してもらう」

辰野「………」

アニ「そこには中央憲兵の本部もあるはずだね」

ベルトルト「ついでに助けられるかも知れないよ」

辰野「え!?」

ジーク「ま、俺達としても別世界から来た日本人は確保しておきたいしね、助けたければ好きにすればいいよ。ただし俺達の仕事もちゃんと手伝う事」


辰野「…」


アニ「どうするの?」



辰野「行くわよ…行けばいいんでしょ?」




ライナー「決まりだな」


ジーク「ま、いったん休憩しよう……夜明け前…明るくなる前に行く」

ベルトルト「はい」

男「ご飯を用意しておきました」



辰野「…」

アニ「…」

辰野「ねえ…あなた達は、何が目的なの?そもそも何なの?」

アニ「え?」


ジーク「…ん……そうだな………」



ジーク「タッツンには話しておこうか…俺達の事を………」




その頃、歩鳥は…


歩鳥「はあ………はあ………うぅ………」


汗をかき息切れしそうになりながらも必死に抗っていた


歩鳥「あ……く、ふう…ふう……っ!」





グーーーギュルルルルル……



…空腹に



歩鳥「はあ…はあ……、こんな状況だというのに、お腹がすいてしまった…!」グーッ

歩鳥「朝から何も食べてないしなぁ……」ギュルルル



歩鳥「…ご飯と言えばケニーのおっちゃんが言ってた…もうすぐ夕飯だけど」


歩鳥「なんかやけに引っ掛かる言い方だったような………」



歩鳥「おっちゃんは何を私に伝えようとしたんだ?」



ギュルルルルルグーーー グーーー


歩鳥「ぐうう!私のお腹よ!まだ耐えてくれ!答えが導き出されるまで!!」



歩鳥「…夕飯の時間……その時に憲兵が1人ご飯を持ってくる。その隙にをついて牢屋から脱出しろってこと?」

歩鳥「いやいや、ここは中央憲兵団の本部。ご飯渡しに来た1人から上手く逃げられたとしても、他にも憲兵はウジャウジャいるわけだし…牢屋から脱出してもすぐに捕まりそうだよ」


歩鳥「ん~………」



『夕飯の時間』



歩鳥「…ん?」





歩鳥「誰の夕飯の時間だ?」





歩鳥「…私は勝手に自分のご飯の時間だと思っていたけど……」



歩鳥「中央憲兵全体のご飯の時間って事か!?」





歩鳥「そうか!だとすれば…その時間帯は憲兵みんな夕飯に行ってるから警備もほとんどないはず……私にご飯を渡しに来る憲兵1人さえどうにかすれば」



歩鳥「いける!脱出できる!!」


憲兵「おい、なに一人言ペラペラ喋っている」

歩鳥「あ、ははは…寂しくて自分と会話しておりまして」

憲兵「頭大丈夫か?」


歩鳥「」カチーンッ

歩鳥(こんにゃろおぉぉ~っっっ)


ガチャッ


憲兵「飯だ、食え」


歩鳥(夕飯のメニューはパン、熱いスープ…これらを上手く使えば!!)


憲兵「置いとくぞ」カチャッ


歩鳥「あ、あの…ちょっとお聞きしたいことが…」

憲兵「なんだ?」






歩鳥「私が頭おかしい奴に見えたのか、こんにゃろおぉぉ~っ!!!」バシャアアアッ



憲兵「ぐわっ!!あっつ、足に!?」


歩鳥「これで大声を抑える!!」ガボッ

憲兵「むごっ!!?」


歩鳥「よし、今の内に脱出!!」ダダッ


憲兵「ふごー!ひげはへはー!!」(くそー!逃げられたー!!)



歩鳥「そうだ、謝らなきゃ!」


歩鳥「パンさん、スープさん、食べ物を粗末に扱ってごめんなさい!!」


ダダダッ…


歩鳥「私の推理通り…他に憲兵はいない…やはり憲兵全体のご飯の時間だったのだ!!」

歩鳥「…でも…1つ大きな問題が………」





歩鳥「どこに行きゃいいんだよ!!?」



ザッザッ…

歩鳥「!!」


ケニー「よぉ、成功したようだな」


歩鳥「おっちゃん!!」

ケニー「とりあえず、こっち来な。この部屋が俺の担当する対人制圧部隊の部屋だ」ガチャッ


歩鳥「うん、とりあえずお邪魔するね!」



―――対人制圧部隊集会所(食事中)



ガチャッ


ケニー「戻ったぜ」

歩鳥「お食事中失礼しまーす」


隊員「お、若い女の子だ」

眼鏡隊員「隊長が女の子連れてきたぞ」

トラウテ「その子ですか?」

ケニー「ああ」


歩鳥「うわ…結構いるね人……」

歩鳥(1人じゃどうにも出来なさそうだったから思わずついてきちゃったけど…本当に信用しても大丈夫だよね?)



女隊員「はじめまして。ここにいる人達は普通の中央憲兵とは考え方も行動理由も違うから安心して」

歩鳥「あ、どうもはじめまして」

歩鳥(優しそうなお姉さんだな)


トラウテ「…別の世界から来た人間か…にわかには信じられないが…」

歩鳥「えへへ…よく言われます」


ケニー「ま、とりあえず座れや…ゆっくり話そうぜ」


歩鳥「いや、その前に!紺先輩とクリスタとサシャを助けなきゃダメなんですよ!!」

歩鳥「その三人の居場所が私は知りたいんです!!」

グーーーギュルルルルル………

ケニー「………」

トラウテ「………」


歩鳥「…たはは…失礼しました…」


ケニー「とりあえずまずは何か食っとけよ。腹減ってんだろ?」

歩鳥「いえ、皆を助けるのが最優先です!!」グーッ

ケニー「はっ!面白い奴だな、お前は!!」

トラウテ(また癖強そうなのが来たな…)


――――――


紺「…」クンクン


紺(ご飯持って来られたけど…大丈夫かな、毒とか入ってないかな)


紺(そもそも明日は拷問なんて言われたら食欲なんかわかないよ…)


紺「…」グスッ



紺「パパ…ママ…怖いよ………」グスッ



グーーー グーーー


紺「え、お腹の音!?私の!?いや、そんなはずは…」


ザッ


歩鳥「大丈夫ですよ先輩!私と一緒に脱出してパパとママのいる元の世界へ帰りましょう!」グーーー



紺「…」



歩鳥「助けに来たよ」ニコニコ


紺「お前、今の私の台詞聞いてたのか!?おい!?」ガチャッガチャッ


歩鳥「ちょっ!先輩、静かに!!」


紺「つーか何でそんなとこにいるんだよ、お前は!!」



紺「………なるほど、それでケニーとかいうオッサンが手助けしてくれたと?」

歩鳥「はい、更にケニーおじさんから牢屋の合鍵も貰いまして」チャリッ

紺「なんでそいつは合鍵なんか持ってたんだと突っ込みたいが……その前に」



紺「そのケニーとかいうオッサンは本当に信用出来る奴なのか?」


歩鳥「あー、どうでしょうね。私は大丈夫だと思ったんですけど。実はこれも全部中央憲兵の罠で結局ケニーおじさんも敵でしたーとかいうオチだったらシャレになりませんね」アハハ

紺「ニコニコしながら嫌な事言ってんじゃねぇよ!!」


歩鳥「まあ…普通の中央憲兵よりは信用出来ると思いますよ」

紺「仮に私達を助けるのが本気だとしても…どうせ私達を利用しようとか考えてんじゃねぇのか?」

歩鳥「あー、たぶんそれは合ってます」

紺「んなあっさり言うなよ!中央憲兵とは違うだけで結局狙われてるのは一緒じゃねぇか!!」

歩鳥「だ、大丈夫だって双葉ちゃん…拷問よりマシじゃん」


歩鳥「まあ、今はそんなことより……あとはサシャとクリスタのとこにも行かなきゃ!憲兵の夕飯はだいたい30分程で終わるらしいから」

紺「場所はわかるのか?」

歩鳥「ケニーのおっちゃんに教えてもらった!このすぐ近く…」

紺「!!憲兵だ、隠れろ!」バッ

歩鳥「へっ!?」



憲兵「…」ザッザッザッ



歩鳥「そんな…まだ夕飯の時間のはず…」

紺「やっぱり全員が飯食ってる訳じゃねぇんだろ…1人くらいは見回り役がいるんじゃねぇか?」

歩鳥「むう…すぐ目の前がサシャのいる牢屋なのに」



ガチャン



歩鳥「あ、サシャのいる牢屋に入っちゃった!」

紺「ちっ…」



―――その頃、サシャのいる牢屋



憲兵「…他の奴の飯が終わるまではまだ少し時間がある…」

サシャ「な、なんですか……?」

憲兵「こんな可愛い女の子がいるのに…拷問して話聞き出すだけなんて味気ないよなぁ…」

サシャ「あ、あの…何を…?」



憲兵「おじちゃんと遊ぼうか…サシャちゃん」ニヤニヤ

サシャ「ひっ!!?」





歩鳥「なぁに、言っとんだお前はあああ!!」バシイッ

憲兵「ぐへえ!?」

紺「この変態が!」ガシッ



サシャ「ホトリ!コンセンパイ!」

紺「危ない所だったな…」

歩鳥「全く、キモイ・キショイ・気持ち悪いの3Kだよ!注意書に【スケベ注意】を追加させる気かこの野郎!!全年齢対象だよ、この野郎!!」




憲兵「いだい…」チーン


紺「とりあえず、その辺にあったロープで縛っといた」

サシャ「コンセンパイは身体能力高いから頼りになりますねー」

歩鳥「全く、男は危険でエロスだ!!男は信用ならん!!」

紺「なに言ってんだ」


サシャ「二人ともどうやって脱け出したんですか!?」

歩鳥「うん、ケニーっていう信頼できるおっちゃんの手助けでね…」

紺「…」


紺双葉は何かを突っ込もうとしたが、まあ歩鳥だしな、と突っ込みを入れるのをやめた。





歩鳥「よし、あとはクリスタだね!!」グーーーギュルルルルル

紺「おい、お前また腹鳴ってるぞ」

サシャ「お腹空いてるんですね…」


歩鳥「いやいや、食事よりクリスタ助けるのが最優先だよ!!」



ザッザッザッ

サシャ「!足音が近づいて来ますよ!!」


女隊員「…ホトリ」


紺「誰だ!?」

歩鳥「あ、あのお姉さんは大丈夫だよ!どうしたんですか?」

女隊員「実はケニー隊長からさっき報告があって…」



女隊員「クリスタは別の所に連れていかれて今はここにいないって」

サシャ「え!?」

歩鳥「どういう事!?」

女隊員「いったん私達の部屋に戻ってきて…詳しい話はそこでするから」


――――――――


ジーク「…さて……そろそろ行くかい、君たち」ジャリッ

ベルトルト「はい」

ライナー「了解」

アニ「ふう…」



ジーク「で、タッツンも予定通り任せるよ…わからない事は四足君に聞いて」

辰野「はい…」


四足巨人「…」

辰野「…」



四足巨人「…タツノさん」

辰野「なに?」


四足巨人「てっきり辰野さんは私と行動するのを気味悪がるかと思ってましたが…」


辰野「………」



辰野「さっき聞かされた話………」





辰野「あんな話聞かされちゃ…巨人に対して気持ち悪いとか言えないよ」


四足巨人「…」





――――――――



真田「…タッツンやライナーもいない!?」

コニー「ベルトルトとアニもいないぞ!」

真田「なんで急に…嵐山も心配だし…なんなんだ!!」

ジャン「くそ、一体何が起こってんだよ…」


ミカサ「………どうしよう………」

アルミン「………」

アルミン(教官はエレンの様子を窓から見ていた……そして今エレンと教官が消え………ライナー達がいなくなったのも、あのエレンの様子がおかしくなってからだ…まさか…)


静(これらは繋がっているのか?エレン君を中心に何かが動いている…?)

静(…それにしても…何か、一度に色々起こり始めたな………あまりにも都合が良すぎやしないか?)

静(歩鳥と私が同じ推理をしたと同時に様々なものが動き出した気がする………)

静(ずっと気になっていた、私達がこの世界へ来た理由………まさかそれと何か関係が?)

真田「亀井堂さん…どうしましょう…何か、一気に大変な事が重なって…」

静「……もしかしたら…私達は、やはり何かの意思で来たのかも知れないね……」

真田「え?」


ユミル「…シズカ、サナダ、お前らに話がある」
静「なんだい?」

ユミル「とりあえずホトリ達を助けたいだろ?私に提案がある」

真田「!!嵐山達を助けられるんですか!?」

ユミル「たぶんな、まぁ聞け」


ユミル「…他の奴等には聞かれたくないから小声で話すぞ…私もクリスタは助けたいと思っている」

静「そんな、クリスタ助けたいって事を他の皆に聞かれたくないなんて恥ずかしがらなくていいのに~」

ユミル「『他の奴等に聞かれたくない話』はそこじゃねぇ!!」

静「ごめん」

ユミル「まあ…お前らも何となく察しているだろうが……私は他の奴等と違ってこの世界の事を色々知っている」

真田「うん。なんかあるんだろうなとは気づいてたけど、いい人だと思ってたから特に触れなかった」

静「…君も壁外から来た子かい?」

ユミル「まあ…半分外れで半分正解だ。ついでに巨人になる力も持っている」

真田「!!?」

静「あらま~…マジか」

真田(じゃ、じゃあ…静さんの推理の巨人=人間は……当たってるのか?)

静(…我ながら当たり過ぎて怖いな……何かあるんじゃないのか?やっぱ)


ユミル「…で、だ。ホトリやクリスタ達が連れて行かれたのは憲兵団の本部だろう……」

静「…ちょっといいかい?エレンくんや、タッツンやライナーくん達の事も何か分かる?」

ユミル「ああ。お前らから聞いた話から察するに…エレンはとんでもないものを持っているかも知れない」

真田「な、なにそれ???」

ユミル「まあ、その話は後でする…。すまんが、ライナー達の事はよく分からんが、タイミング的に臭いな」

静「…もしかしたら、ライナー君、ベルトルト君、アニちゃんは…壁外から来たスパイかもしれない…」

ユミル「なに?」

真田「え、な、なんでですか!?」

静「前にタッツンが飛行機発言をしただろう?その後アニちゃんに呼ばれて…それからタッちゃんの元気が無くなりライナー君ら三人と一緒にいる光景をよく見るようになった」

真田「確かに…最近のタッツン、元気なかったですね…」

ユミル「なるほどな。そしてこのタイミング…あいつ等が壁外から来た敵の可能性は高い」

静「…私は、タッツンに外傷がある訳でもなく、まだ確実な証拠までは押さえきれていなかったから様子見で留めていたが…こんな事になるならもっと早くに問い詰めておいた方が良かったかな」

真田「いや、仕方ないですよ………これは」


ユミル「…エレンもたぶん中央憲兵の場所か近辺にいる…」

真田「な、なんで!?」

ユミル「話せば長くなるから簡単に言えば、壁外勢力と王政側両方が探しているものを持っているのが…恐らくエレンだ」

真田「な、なんか…何を言ってるのか訳がわからない…」

静「…まあ細かい話は置いといて、その一緒に消えた教官が王政側の人間だった?」

ユミル「たぶんな」

真田「…それで、嵐山達を取り戻す方法は…」


ユミル「お前らが行けば面倒くさい事になるからな。だから…私の巨人の力を利用する」

真田「巨人の力を?」

ユミル「まず姿がバレないように侵入し…ホトリやクリスタを見つけたら巨人になり、捕まっている奴等を助け逃げる…」

ユミル「私の正体さえバレなけりゃ、『謎の巨人に誘拐されて行方不明になった』で終わらせられるさ」

静「なるほどね…それなら私達まで憲兵に狙われるような事もないか…」


ユミル「だから…私が行くからお前達は待ってろ」

真田「…いや、俺も行かせてくれ!!」

ユミル「ああ?」

真田「嵐山がどうなってるかわからないのに…大人しく待ってるなんて出来ない。手伝わせてくれ!!」

静「私もだ……弟子のピンチに何もしないなんて駄目じゃないか。足手まといにはならないようにするから行かせておくれよ」



アルミン「それに…ユミルだけで行くなんて危険だよ」

ユミル「ちっ…」





ユミル「って、え!?お前聞こえてたのか!?」


アルミン「いや、ミカサが聞こえてたみたいで…『エレンやホトリを助けに行く』という話をしてたんでしょ?」

ミカサ「助けに行くなら私も行かせて欲しい…いや、行く」

ユミル「…ミカサ。どこからどこまで聞いてた…?」


ミカサ「いや、エレンとホトリを助けに行くという部分とユミルが1人で行くという部分だけ聞こえた。あとは小声で聞き取れなかったけど」

ユミル(良かった…バレたくねぇ部分は聞こえてなかったようだな)


アルミン「何か策があるの?」

ユミル「…ああ…私がとっておきの作戦を考えてやった。お前らには内緒だがな」

ジャン「何でだよ!?」

静「まあまあ、これは味方にも教えちゃいけない作戦なんだよ~~~」

ユミル「…お前ら、本当に来る気か?」

ミカサ「ええ」

アルミン「エレンは僕の親友だ…無視なんて出来ない」

コニー「当たり前だろ」

ジャン「はあ…お前らだけじゃ心配だしな。俺もついて行ってやるよ」

真田「ジャン、やっぱりお前は何だかんだで良い奴だ」


――――――対人制圧部隊集会所



歩鳥「え………エレンが、神の力を持っているってーーー!!?」

紺「なんだってーーー!!?」

サシャ「神様ですか!!?」


ケニー「ああ…そういう訳だ」



紺「いや、そういう訳だって全く意味がわからないっすけど」

歩鳥「うん。とりあえずノリで驚いてみたけど何を言ってるのかさっぱりだよ」



トラウテ「隊長…説明が下手くそです。もう少し分かりやすく話すべきかと」

ケニー「すまねぇ」



ケニー「つまりだな…まず、エレンがここに拐われてきた」

歩鳥「エレンまで拐われてきたなんて………」

ケニー「で、エレンは神の力を持っている…だから拐われてきたんだ」

紺「いや、その神の力ってなんなんすか?だから」

サシャ「パンをくれるんですか?」

ケニー「まあ、そこは今はいい…お前らにゃ関係ねぇ」

歩鳥「いやいや、気になるよ!!」

紺「実はあんたもあまりわかって無いんじゃないんすか?」

ケニー「…はは…」

紺「え、図星!?」



ケニー「…で、話を進めるぞ。そのエレンが拐われた先は『レイス家』と呼ばれている貴族…」

ケニー「いや、貴族になりすまし…陰に隠れている、真の王家だ」

歩鳥「真の王家!?」

紺「なんかよくわからないけど、ワクワクする響きだ…」ドキドキ


ケニー「で、クリスタはそのレイス家の娘で…今は偽名を使い暮らしている」

サシャ「え、クリスタがですか!?」

紺「へえ…あいつ身分隠してたんだ…」

歩鳥(やっぱり、クリスタには何かあったんだ…いつも無理してる感じと関係あるのかな)

ケニー「…で、今クリスタはそのレイス家に連れて行かれたんだろう」

ケニー「エレンの中にある力を受け継がせる為にな」


歩鳥「な、なんか…一気に色々な情報を与えられて頭がパンクしそうだけど……」


紺「…クリスタは…なんで偽名を使って生きていたんですか?」

ケニー「…妾の娘だったんだよ、あいつは」

サシャ「え?」

ケニー「母親からも周りの人間からも邪魔者扱いされ…愛されず育ち」

ケニー「更には王家の汚点だと母親を殺され、自分も殺されかけ……親父にレイス家から追放された哀れな奴さ」

サシャ「そんな…クリスタ、そんなことが…」

紺「ひでぇ…あいつ壮絶な人生歩んでたんだ……胸糞悪い話だな……」

歩鳥「…」プルプル

紺「…歩鳥?」


歩鳥「んなひでぇ話があるか!!周りから迫害を受ける娘を放置し母親見殺しにし更には追い出しておいて、今更連れ戻すだと!?なんて都合のいいクソ親父なんだ!!!」

紺「歩鳥…落ち着けよ、ムカつくのは分かるけどよ」


歩鳥「何をやらせる気かはわからないけど…クリスタもエレンも助けるよ!!居場所を教えておっちゃん!!!」

ケニー(……そうだな、エレンを奴等から奪い返しちまえばこっちが好都合だ…)

ケニー「いいぜ、教えやる」

紺(このオッサン…何か企んでるな)



ケニー「ただし、警備は厳重だ…俺達もサポートしてやるよ」

歩鳥「うん、ありがとう!」

サシャ「絶対に助け出しましょうね!!」

紺(今は私達だけじゃ何も出来ないから仕方ないけど…警戒しておいた方がいいな、あのオッサン)



歩鳥「よし、さっそく行くよ!!」

紺「さっそくか」

ケニー「おいおい、ちったぁ休憩すりゃいいのによ」

サシャ「そうですよ!それにホトリ、まだご飯食べてないんじゃないですか!?」


歩鳥「いや…前に本で読んだ事があるんだ……クリスタみたいな育ちの子の心理状態!!」

歩鳥「クリスタとクソ親父を一緒に居させちゃいけない!!一刻も早く行かないと!!!」



―――――――


憲兵「…」ジャリッ


ガサッ


憲兵「!誰だ!?」バッ

バシイッ!!

憲兵「ぐえっ!?」ドサッ

ライナー「悪いな…」ガシッ

アニ「大声出しちゃ駄目だよ」

ジーク「目も塞いでおいて」

ベルトルト「はい」


憲兵「な、なんだ…何をする気だ!?」

ジーク「まあまあ、質問に答えてくれりゃ解放してやるよ…と、その前に」


四足巨人「どうですか、タツノさん。周りに他の憲兵は?」

辰野「…」バッ


ジーク「うん、周りには誰もいないみたいだな」

憲兵「い、い、命だけは………」

ジーク「ああ、話聞きたいだけだから命は大丈夫だよ。俺達の顔も見てないしね、君」


ジーク「…エレン・イェーガーはどこだ?」

憲兵「わ、わからない…連れてこられたのは知っているが、場所までは…上の人間しか詳しい場所は知らないんだ」

ジーク「そう。じゃ…やっぱり本部に突撃するしか無いみたいだなぁ」

憲兵「!?」

ジーク「ありがとね。三人ももういいよ」

ライナー「はい」

ザッザッザッ…


憲兵(怖かった…なんだ、今の……)



四足巨人「あとは手筈通り」

辰野「私が通行人のフリしてあの人を解放すれば良いんでしょ?」

四足巨人「はい」


ジーク「…いやぁ、タッツンがいてくれて良かったね今の。タッツンいなけりゃ、ころすしか無かったからねあの憲兵」

ベルトルト「…」

ジーク「縛るのに使った紐や布から指紋採取されて君たちがやったとバレちゃ大変な事になるからね。でもタッツンが後から通行人のふりして憲兵を助け紐や布を処分すれば証拠はなくなる」

ジーク「…君たちもなるべく人殺しはやりたくないよな…?」

アニ「…」

ジーク「だが、心を悪魔にしなければならない時がある。それが俺達の使命だ、例え全人類から恨まれようと……悪夢の歴史を止めるために…」

ライナー「…はい」





辰野「…大丈夫ですか?」


憲兵「すまん…君。さっき怪しい人物を見なかったか?」

辰野「いえ…すみません、見てないです」

辰野(後はこの使った紐や布を処分する…)


辰野「なにしてんだろ、私………………真田くん…どうしてるかなぁ…はぁ…」

辰野「…まぁ、まずは歩鳥を助けなきゃね……」


―――――――



ウルクリン「……連れてきたよ、父さん」


ロッド「うむ、よくやった」



エレン「んー!!んー!!!」バタバタ


ロッド「元気のいいやつだな」

ウルクリン「…これで力を取り返せるね」

ロッド「ああ」



エレン「ふう…ふう…」


エレン(なんだ…これ)


エレン(なんでウルクリン教官が…なんでこんなとこに俺は連れてこられたんだ!?)



サネス「…連れてきました」ガチャ


ロッド「うむ」


エレン「!!」






クリスタ「…え?」



エレン(クリスタ!?)




――――――――


歩鳥「クリスタ!エレン!いま行くぞー!!!」ザッザッザッ




時はいったん2ヶ月前に戻る………





訓練兵団



サシャ「コンセンパイ!!どうしたらあんな速く走れるんですか!?」

紺「え!?えっと…」オロオロ

コニー「教えてくれよ!!」

サシャ「あの素晴らしき走りをもう一度見せてください!!」

紺「わ、わかった!わかったから落ち着けって………えっと…」

コニー「コンセンパイから走りを習って俺もライナーみたいに…」

紺「…つーか…センパイの部分は名前じゃないから……」





歩鳥「おやおや、紺先輩も友達が出来てるみたいだね。良かった良かった」

辰野「まだ、友達っていうか一方的に絡まれてる感じだけどね」

真田「サシャとコニーは誰とでも仲良くなれるな。まるで嵐山みたいだ」

歩鳥「いやいや、そんな誉めなすって…」

辰野「アホなとこもね」

歩鳥「おま!!」カチーンッ



―――書庫

ガララッ

歩鳥「よーし、今日もいっぱい本読むぞー!」


クリスタ「…」パラッ

静「よう、歩鳥」


歩鳥「あ、静ねーちゃん!読書中?」

静「うん…ここの本も面白いよ~~~。持って帰りたいくらいだ」


歩鳥「勝手に持って帰っちゃダメだよ」


真田「俺の読み途中だったのどこだっけ…」


辰野「…てかさ、この世界の文字って日本語の逆バージョンよね。覚えやすくて助かるけど」

歩鳥「そう、日本語の逆バージョンという所にも何かしらありそうな気がしないでもない………流石いいとこに目をつけるね、プレミアムメガネ!」

辰野「誰がプレミアムメガネか!!」バシッ

歩鳥「誉めてるじゃん!」

辰野「どこがよ!!」


静「君たち~~。図書館ではお静かに~~~」



ガヤガヤ

歩鳥「む、静ねーちゃんが『静かに』と言った途端ガヤガヤと騒がしいぞ!」ピクッ



訓練兵男「クリスタ、本なんか読んで無いで俺と遊びに行こうぜ」

クリスタ「え、え!?」ビクッ

訓練兵男2「てめっ!俺と、俺と遊び行こうぜクリスタ!」

クリスタ「………」

訓練兵男3「この本なんかオススメだよ、クリスタ」

クリスタ「あはは…」ニコニコ


真田「クリスタか…相変わらず人気だな」

辰野「全く、男どもは可愛いってだけで群がって…」

辰野(その点、顔に惑わされない真田くん!やっぱりイケメン!!)


訓練兵男「それでよー…」

クリスタ「…」ニコニコ


歩鳥「………」


辰野「しかし、クリスタも毎回ニコニコしてばっかりね…」


ガヤガヤ



歩鳥「…ちょっと、君たち」


訓練兵男「あ?誰だ?」

訓練兵男2「この前入ったホトリって奴だろ」


歩鳥「あんま群がってガヤガヤすんのやめなよ。クリスタ困ってんじゃん」

クリスタ「!」


訓練兵男「はあ?何言ってんの?」

訓練兵男2「クリスタ普通にニコニコ笑ってるじゃん。どこが困ってるんだよ」

歩鳥「はあ?君たちにはこの娘の顔が笑顔に見えるの?」

クリスタ「…」

歩鳥「いい?これは愛想笑いと言って『笑顔』ではないの。つまり、『笑った顔見せてやるからさっさとどっか行けウルセェんだよこんちくしょー、あーウゼ』という気持ちが込もってんだよ!!」

クリスタ「いや、そこまでは…」

訓練兵男「なんだよこいつ変な奴だな」

訓練兵男2「モテないから嫉妬してんだろ」

歩鳥「んな!私だって商店街の皆から可愛い可愛い言われながら育っ…」

訓練兵男3「タヌキみたいな顔してるもんな」

歩鳥「」グサッ


クリスタ「ちょっと、やめなって!」


真田「お前ら、嵐山をいじめんな!!」

辰野「そうよ!面食い男!!」

静「…」



訓練兵男「ちっ、ウゼーな…帰ろうぜ」

ザッザッザッ…



クリスタ「あの…ホトリ…」

歩鳥「………はは………そうだよ……どうせ私の言われてた『可愛い』は美少女的な『可愛い』じゃなくてタヌキ的な『可愛い』だよ………」

真田「いや、そ、そんなことねーよ!嵐山!」

辰野「そ…そうそう、饅頭みたいに丸っこいくて可愛いし…」


歩鳥「なあ、辰野。それ慰めてんの?馬鹿にしてんの?」

辰野「ゴメン、本当に悪気はなかった…」

静「元気出せって、どっちの意味でも可愛いは可愛いだろ~~~」


クリスタ「あ、あの……ありがとう…」

歩鳥「ん?うん。でもクリスタもちゃんと困ったなら表に出さなきゃダメだよ」


ガチャッ

ユミル「なんだ、クリスタまた本読んでたのか」

クリスタ「うん」

歩鳥「あ、ユミルだ。ちゃんとクリスタの教育はしっかり頼むよ!」

ユミル「は!?」

歩鳥「男どもに群がられて愛想笑いしか出来なかったのさ…もっと反抗することも覚えるべきだと思う」

ユミル「…そうかい」



歩鳥「なんかクリスタの笑顔って見たことないよねー……見てみたいのに」

辰野「え?よくニコニコしてない?」

真田「ああ、クリスタの笑顔は女神スマイルと言われてるぞ」

歩鳥「ええ?真田とタッツンもあれが笑顔に見えるの??」

辰野「?」

真田「?」


歩鳥「ありゃ…?なに?私が変なの?」

静「いや~……まあ、歩鳥の言う通りあの娘の笑顔は『作り物』って感じがあるね…」

歩鳥「ねーちゃんも!?まあ、作り物かどうかはわかんないけど…私も何か違和感を感じて仕方ないんだよね」

静「…ま、人それぞれ事情はあるから、むやみやたらに首突っ込むのはやめておきなよ~~~」


歩鳥「うーん………ねえ、真田」

真田「ん?」



歩鳥「真田はさ…クリスタのことどう思うん?」


真田「…え!!?」



真田(ま、まさか………『私とクリスタどっちが好きなの?』という意味の質問!?)


真田(確かに、クリスタは可愛い………でも)


真田(俺にとったら………嵐山の方が……)



真田「100倍可愛い……と、思っておる…」


歩鳥「はあ?まあ確かにクリスタは普通の人の100倍可愛いかも知れんけどさ」



――――――――

―――



レイス卿領地


ガサガサッ


ケニー「俺はレイス卿に護衛を頼まれたからここまでしか案内してやれねぇ…ま、俺の部下がついてるから安心しな」


歩鳥「いや、ここまで連れてきてくれただけでもありがたい」

紺「…」

ケニー「なんだ、お前。信用してねぇって顔だな…安心しろ、俺は初めから自分の目的の為にレイス卿や中央憲兵に尻尾振ってるだけだ……そして俺にとっちゃお前らも貴重な存在だからな」

紺(…私達に何かする訳じゃなくても…やっぱり何か企んでる気がする…)

歩鳥「そう!私は貴重な存在…天才女子高生探偵なのだよ!!」

サシャ「さすがホトリですね!!」

紺「お前ら何でそんなに緊張感ないの」



トラウテ「さて…隊長に頼まれたから途中までは一緒にいてあげる。けど、私も自分の立場を危なくしたくないから目立つような事までは出来ないよ」

歩鳥「いやいや、居てくれるだけでありがたいっす姉さん!」

眼鏡隊員「トラウテにそのつもりが無くてもこいつは何かやらかしそうだな…」

歩鳥「な!失礼ですぞ!」

女憲兵「まあまあ、早く行きましょう」

ジャリッジャリッ


憲兵「…」



サシャ(見張りがいますよ…)

紺(参ったな…いきなりか)

トラウテ(大丈夫だ、問題ない)


女憲兵「…あの」ジャリッジャリッ

憲兵「ん、君は対人制圧部隊の…どうした?」

女憲兵「さっき向こうに怪しい人影が…ついてきてくださいませんか?」

憲兵「なんだと?どこだ」

ザッザッザッ…

歩鳥(おお、憲兵の仲間が味方にいるのは便利だね)

トラウテ(私達は王政に忠実なように振る舞っているからね…中央からの信頼は厚いんだよ。今のうちにレイス卿の屋敷に侵入するぞ)

紺「…」キョロキョロ

トラウテ(そんなキョロキョロしなくても大丈夫だよ)

紺(あ、はい)


―――レイス卿の屋敷


歩鳥「ほあ~…広っ」

サシャ「このデカイ屋敷のどこかにエレンとクリスタが…」

眼鏡隊員「たぶんな」

トラウテ「とりあえず、まずはレイス卿の部屋まで行ってみよう…周りに注意にするんだよ」

歩鳥「ふふ、探偵の誰からも見つからない潜入術を披露してあげるよ」コソコソ

紺「泥棒みてぇだな」


サシャ「…!どこからか少しいい匂いがします」ピクッ

トラウテ「え?」

眼鏡隊員「何も匂わないが…」

紺「サシャは鼻がいいからな」

歩鳥「いい匂い…つまり、誰かご飯を食べている?」ジュルリッ

トラウテ「なるほど…匂いが本当ならそうかもね」

紺「つか歩鳥、今のジュルリッってなんだ」

サシャ「そういえばまだ何も食べてないですね、ホトリ…空腹大丈夫でしょうか…」


歩鳥「クリスタとエレンがここに連れ去られているとなると…エレンはわからないけど、娘であるクリスタには自分を信頼させるために悪い扱いはしないはずだ」

歩鳥「つまりレイス卿とクリスタがご飯を食べている可能性が高い。サシャの感じている匂いを辿れば少なくともクリスタの居場所には辿り着けるかも知れない!」

トラウテ「ほう…なかなか冴えてるね」

紺「じゃあ、サシャ。このまま匂いのする方向へ案内してくれ」

サシャ「お任せください!」クンクン







憲兵「…」ザッザッ


ゴチンッ!

憲兵「いたい!」ドサッ



眼鏡隊員「…よし、気絶したな」

歩鳥「さっすが眼鏡さんだね」

紺「サシャ、まだなのか?」

サシャ「はい、もう少し先です」

トラウテ「…ん、ここは」

歩鳥「どしたの?」

トラウテ「レイス卿の部屋だ」

歩鳥「お!!」

紺「ボスの部屋か!!」

サシャ「でも、中に誰かいる感じは無いですね…」

トラウテ「ちょうどいい。入ってみるかい?」

歩鳥「うん、入ってみたい!」

紺「何かあるかも知れないしな」




ザッ ザッ…

サシャ「へえ…本ばっかりですね」

紺「面白味のねぇ部屋だ…がっかり」

眼鏡隊員「何を期待したんだ」

歩鳥「タンスの中を拝見しまーす」ガチャッ



歩鳥「…ああっ!!」

紺「どうした、何かあったのか!?」


歩鳥「そうか…なるほど、何だかんだでクリスタの親だもんね……なるほど……これは…」

トラウテ「どうした?何かあったのかい?」チラッ

歩鳥「見てください、レイス卿の服!」バッ


歩鳥「サイズが小さい………つまり、レイス卿はチビなんです!!」

紺「どうでもいいことで騒ぐな!!」ゴチンッ

歩鳥「いでっ!!」

トラウテ「…」ハァ

サシャ「あ、お菓子の食べ掛け発見」



歩鳥「…ん?」

紺「今度は何だ?」


歩鳥「タンスの奥に…何か隠すように怪し気なケースが…」ガサッ

トラウテ「また下らないものじゃないだろうね…」

歩鳥「いや、次は…下らないものではなさそうです」ガサゴソ

サシャ「何でしょうね、このケース…」

眼鏡隊員「開けてみるか?」

歩鳥「うん」

カパッ





紺「な、なんだこれ!?」


歩鳥「注射器!?」

サシャ「薬みたいなのもありますよ!!」

トラウテ「なぜ注射器なんかが入っているんだ?」

紺「なんだこれ………あ、危ない薬じゃないよな………?」

歩鳥「………」ジーッ



歩鳥(何か怪しい気がする…わざわざ隠すように置いてるなんて、バレたり無くしたりしたら困るもの…?)

歩鳥(薬のような瓶…注射器…)



ポロッ


歩鳥「あ、しまっ…!」

紺「あ!」


パリイイイイインッ



サシャ「あ…注射器が……」

紺「…割れちゃった…」

歩鳥「あ、あわわ…っ」

トラウテ「…もう少し気をつけて持ちなさい…全く」


歩鳥「…」



歩鳥「………」



ガッ!!


サシャ「!」

歩鳥「…」ザッザッザッ

紺「割れた注射器持ってどこ行くんだ?」


歩鳥「…」ガラガラッ

眼鏡隊員(窓を開けた?)








歩鳥「証拠………」





歩鳥「隠滅!!!」ブンッ



トラウテ「何やってんだあああ!!?」


紺「壊れた注射器ぶん投げて証拠隠滅しやがった!!!」


カチャーン…




歩鳥「あはは…何やってんだって……証拠隠滅だよ」

サシャ「意味がわかりません!!」

紺「何でそんなことする必要があるんだよ…」


歩鳥「いや…なんか、大事そうに閉まってあったし……レイス卿にバレたら怒られるかなぁ…って……」


トラウテ「子供かお前は…」ガクッ



歩鳥「まあ、変な薬の入った瓶は無傷だから回収したし、それで収穫は良しとしましょう!」

紺「何に使うんだよそんな薬」

歩鳥「いや~、もしかしたら何かわかった時に役立つかも知れないじゃないですか?」

トラウテ「…まあいい。そろそろ行くよ」


―――――

中央憲兵本部前


ザッザッザッ…

ジーク「さ~て、憲兵の本部はここで合ってるかい?」

男(四足巨人)「はい、ここで間違いありません」

ライナー「…」

ベルトルト「…」

アニ「…」



辰野「………」


辰野(あれ、もしかしてこれ……このまま行ったら………)

辰野(憲兵の人達、殺されるんじゃないの…?)



ジーク「ん?どうかしたか、タッツン」

アニ「…」


辰野「あの………」


辰野「実は、その…今まで関係ないって言ってたけど……私の友達も、私と同じ世界から来たの」

ベルトルト「ああ、わかってるよ」

辰野「え!わかってたの!?」

ライナー「当たり前だ。お前の気持ちを汲んで気付かないフリをしてやってただけだ」

アニ「うん」

辰野「マジかよ…」


ジーク「…で、タッツン。それがどうかしたの?」


辰野「あ、だから、その………1つ聞きたいんですけど……やっぱり、こ…ころし…とか、するんですか?」

ジーク「最初はバレないように侵入するけど、バレたらころすよ」

辰野(ハッキリ言うなぁ、このオッサン…)

辰野「あの……私の友達、アホだけど発想力は凄い奴で…もしかしたら、憲兵の格好して逃げてるなんて可能性もあるから…その…」

辰野「ころし、は…やめて欲しいです」

ジーク「…」

アニ「…うん、私も…ホトリは何をするかわからないから、慎重に進むのが良いと思います」

辰野「!」

辰野(え…気を遣ってくれたの?)

ライナー「…そうだな…」

ベルトルト「僕もそう思う…」

ジーク「………わかったよ。タッツンの言う通りにしよう」




辰野「…」

アニ「…」



辰野「あの…さっきはどうも、ありがと。アニ」


アニ「いいよ、お礼なんて」



アニ「私はただ…逃げてるだけだから」


辰野「?」



アニ(手を汚す事から逃げている……もう今さら遅いのに)




中央憲兵本部内部

ダッダッダ!

憲兵「捕らえていた三人が脱走した模様!!この施設からは簡単に出られんはずだ、探せ!」

憲兵「全ての出入り口を固めろ!!」

サネス「くそ…こんなときに対人制圧部隊はレイス卿の護衛か…!とにかく探せ!!」



ジーク「あーらら、何だか中が騒がしい事になってるみたいだよ」

ライナー「会話から察するに、どうやらタッツンの仲間が脱走したらしいですね」

辰野(歩鳥のやつ、本当に脱走するとは…やるじゃないの)

ベルトルト「でも、こんなに憲兵がたくさんいちゃ脱走しても逃げられないのでは?」

アニ「早く見つけなきゃ先に憲兵に手を出されるかも…」

ジーク「それは困るね。まあ、状況は好都合…」

ジーク「タッツンの仲間も座標も一気に回収してやろうじゃないか」ザッ


辰野「…」

ジーク「あ、タッツンは安全なとこにいればいいからね。戦えない奴が近くにいても足手まといなだけだし」

辰野(気ぃ使われてんのか馬鹿にされてんのか…)

ジーク「それに、言った通り殺しはしないから安心しなよ…」

ジーク(まあでも、結局いずれは…壁内人類も全て…)


憲兵「侵入者発見!奴等の仲間か!?」

憲兵「動くな!!撃つぞ!!」


ジーク「どうぞどうぞ」ジャリッ


憲兵「く、撃て!!」


パンッ!パンッパンッ!



ジーク「…ふう…やっぱり痛いもんは痛いなぁ…」ザッ


ジーク「こちらもお返しだ」


憲兵「な、な…っ」

憲兵「傷が…再生して……」

憲兵「何者だあ!?」



ジーク「化け物だよ」メキッグググ



ブンッ!!!



憲兵「ぐはっ!?」

憲兵「ぎゃっ!!」

憲兵「ぐえっ!!」


ドサッドサッドサッ



辰野「な………なに今の………床剥がして丸めてボールにして投げた………!?」


アニ「巨人体ならもっと凄いこと出来るよ」



ライナー「戦士長、まだまだ来ます」


ザッザッザッ

憲兵「なんだあいつらは!!何をしている!!」


ベルトルト「数が多い…!」


ジーク「ま、大丈夫大丈夫。弱いのがいくら群がったところで俺達にゃ勝てないからさ」



ジーク「あの群がって来たのは俺一人で充分だから、ライナー、アニ、ベルトルトはタッツンと一緒に目的のやつ探してきて」

ベルトルト「わかりました!」

ライナー「行くぞ、タッツン!」ダダッ

辰野「あ、うん!」

憲兵「止まれ!!」

アニ「邪魔だよ!!」

憲兵「いたっ!!」



ジーク「さーて…そんだけの数でいいのかな?君たち」


憲兵「な、こちらは約30人だぞ!」

憲兵「逃げられると思うな!!」


ジーク「君たちこそ…逃げる準備した方がいいんじゃないの?」シュウウウ



ダッダッダ…


辰野(歩鳥達はまだ憲兵に見つかってないよね?どこいるんだろう…)


ベルトルト「このっ!」ビシッ


ライナー「はあ!!」ドガアッ

憲兵「ぐふっ!!」ドサッ


アニ「はあ…さすがに疲れてきたよ…」

辰野「…大丈夫?」



ライナー「…おい」


憲兵「な、なんだ…」

ライナー「脱走した人間とエレンはどこだ?」

憲兵「脱走した奴等はまだ知らねぇよ…見つけてない…」

ベルトルト「エレンは?」


憲兵「さあ…何の話かな…」

ライナー「答えろ」

憲兵「ひっ!待て!こ、ここにはいない!」

ライナー「なんだと…?」


憲兵「エレンは……レイス卿の屋敷に連れていかれた………だから、見逃してくれ…」

ベルトルト「レイス卿の屋敷?」

ライナー「場所はどこだ?」



辰野「…え?ここには居ないってこと?」

アニ「たぶん…」




―――その頃、外…中央憲兵本部前



ミカサ「エレンはどこにいるの!?吐きなさい!!」

憲兵「わかった!言うから叩かないで!!」


ユミル「…憲兵本部の中がやけに騒がしくないか?」


憲兵「捕まえていたうちの三人は脱走して…行方がわからなくなった。そして…エレンとクリスタは、レイス卿の屋敷だ…」


アルミン「レイス?貴族家の!?なんで貴族家に…」

真田「え?嵐山もエレン達もここにはいないって事か…?」

ジャン「そういう事だろうな」

静「じゃあ、今やけに本部の中が騒がしいのは何故だ?」

憲兵「脱走者を探していたら…謎の侵入者が現れたんだよ……」

静「侵入者?」

コニー「どういう事だよ…」


アルミン「そっちも気になるけど…まずはエレンや皆を助けるのを優先しよう」

静「そうだね。何か引っ掛かるけど、よくわからんもんを相手にする余裕はない」

ミカサ「…じゃあ、急いでレイス家の場所へ行こう」


レイス卿屋敷前


ユミル「あれがレイスの屋敷か…」

アルミン「うん、確かこの辺りで合ってるはず…」

ジャン「よく知ってるな」

アルミン「昔、壁内の地図の本を見るのが好きで…その時の記憶だよ」

静「凄い記憶力だね~~~アルミンくん」

ミカサ「そう…アルミンの頭脳は昔からイケメンだった」

真田(頭脳がイケメン?)

コニー「ん?そこに何か落ちてないか?」

マルコ「え?あ…本当だ」ガサッ

アルミン「何かの…破片?」

静「ん~?」


ジャン「これ、壊れた注射器じゃねぇか?」

アルミン「本当だ…なんでこんなところに落ちてるんだ?」


ユミル「!!」

ユミル(あの注射器は…!?)

静「…」


静「何か知ってそうだね、ユミル」

ユミル「あ!?いや…さぁな」

真田「明らかに反応が怪しいっすよ」

ユミル「ま、まあ、たぶん私が思ってるのとは違う…こんな場所に落ちてる訳がねぇ…」


アルミン「……何で注射器が…謎だ………」


静「…1つ思い付いた事がある…」

真田「!」

ユミル「なんだ?」

静「例えば…憲兵本部から脱走した歩鳥がこの屋敷に侵入していると考えて」



―――静ねーちゃんの推理


歩鳥「よーし!レイス屋敷へ侵入だ!!」



歩鳥「むむ!何か発見したぞ!?注射器!?なんじゃこりゃ!!」

歩鳥「うーん、うーん」

注射器ポロッ

歩鳥「あ」

カチャーン


歩鳥「…」


歩鳥(持ち主に見つかったら怒られる!!)



歩鳥「証拠隠滅!!!」ブンッ

―――――――


静「なーんてこと…」



アルミン「あははは、さすがにそれは…」



静・真田「…あり得る」


アルミン「あり得るの!!?」





―――――――



ケニー「…」


ウルクリン「………」


クリスタ「………」



ウルクリン「…と、言うわけだ。はじめまして、クリスタ………いや、ヒストリア」

クリスタ「………お兄さん……?」


ウルクリン「うん。俺と父さん以外はもう…いないけどね」


クリスタ「…父は…今どこに…」

ウルクリン「エレンから色々と話を聞き出そうとしているところさ。もう少し待っていれば来るよ」


クリスタ「………何で、今さら………」


ウルクリン「いま、君が必要になんだ」

クリスタ(…私が…必要……)

ケニー「…」



ザッザッザッ…


ケニー「!」



ケニー「部屋の外から足音がする…ちょっと見てくるぜ」

ウルクリン「ああ」



クリスタ「…」


ウルクリン「遠慮せずに食べな、ヒストリア。今日から俺達は家族だ」


クリスタ(家族………)



ガチャッ


ケニー「…」チラッ



歩鳥「!!あ、おっちゃん」

ケニー「…よう、よく来たな」

紺「…」

サシャ「まさか、その部屋に…クリスタが」


ケニー「ああ、いるぜ」


紺「どうする?歩鳥」

歩鳥「…いま誰といるの?クリスタは」

ケニー「兄貴とだ…」



紺「様子見て行くか?」

ケニー「ああ。また合図するからそれまで隠れて…」


歩鳥「それじゃ駄目だ!!」バッ

サシャ「え!?」

紺「おい待て!!」


ケニー「馬鹿!早まるんじゃねぇ!!」


歩鳥「好きなだけ馬鹿と言え!!私の勘が『放っておくな』と言っている!!」

歩鳥「クリスタの心を縛らせず解放させろと!!」ダダッ


サシャ「どういう事ですか!?」


歩鳥「クリスタアアアアア!!!」ガチャッ


クリスタ「!?え、歩鳥!?」ビクッ


ウルクリン「な、誰だ君は!?」

歩鳥「お前が誰だあああ!!!」

ウルクリン「君こそ誰だ!!!」




クリスタ「待って…兄さん…あの娘は…」


ウルクリン「…いや、駄目だ。君が信じるべきは家族である俺…」



歩鳥「…クリスタにぃ…!」ジャリッ

ウルクリン「え?」


歩鳥「呪いの言葉を吐くんじゃ!!」ザッ



ウルクリン「ま、待て…」



歩鳥「ないよおぉぉ!!!」ドカッ


ウルクリン「あふっ!!!」ドサッ


クリスタ「あ!!」



紺「…あー…」


サシャ「…ホトリ……」


歩鳥「………」



ウルクリン「」チーン←気絶中


歩鳥「………」


ケニー「……………」





歩鳥「もう少しで大変な事になるとこだった」


ケニー「もう大変な事なってるっつーのバカ野郎!!!」


歩鳥「いや…ちょっと小突いて軽く気絶してるだけだし…怪我も無いし、そんな騒がなくても………」


ケニー「あのなぁ!程度の問題じゃねぇんだ!物事には順序ってもんがあるだろ!?もっと慎重に行動するべきだろ!!?」


歩鳥「ご、ごめん…思ったまま突っ走るの僕の悪い癖……」


クリスタ「もう…ホトリは相変わらずおっちょこちょい何だから……兄さん怪我は無いし良かったけど」


歩鳥「ごめんね、クリスタ…えへへ…」


紺「…何か私も心配になってきた……手ぇ出しちまってこのあとヤバいんじゃねぇか?」


サシャ「…でも、歩鳥と喋ってるクリスタって普段と雰囲気違いますよね」


歩鳥「クリスタ、こんなと居ないで訓練兵団に戻ろう!」


クリスタ「…でも…せめて父さんから話を聞いてからでも…」


歩鳥「駄目!!」

クリスタ「そうかなぁ…」



ケニー(しかし、クリスタのやつもっとホトリに怒りを向けるかと思ったがそうでもないな……それだけ普段からホトリはアホな行動を取っているということか……)


ガバッ

ウルクリン「き、君は…何をするんだいきなり……父さんにもぶたれたこと無いのに……」

歩鳥「げっ!もう立ち上がった!!」

ウルクリン「当たり前だ。さっきは流れのノリで気絶したが君みたいな普通の女の子のどつきで気絶するわけないだろう」

歩鳥「えへへ…そりゃごもっともで…」

紺「ごもっともじゃねぇよ!どうすんだアホ鳥!!」

サシャ「憲兵呼ばれたら……」



ケニー「………」



ケニー「ウルクリン!この変な丸いガキは俺が始末しとくからお前はクリスタをさっさと親父のとこつれてけ!!」

ウルクリン「わかった。任せたよケニー」

クリスタ「待って、三人には何もしないで!!」

ウルクリン「大丈夫。あの三人は後でちょっと話を聞くだけだ」



歩鳥「ああ、クリスタ!」


ケニー「いいから今はついてこい!!こうするしかねぇだろ!!」グイッ


紺「…なんでそんな必死になってまでクリスタと親父を会わせたくねえんだよ!」

歩鳥「だってさ…クリスタは親から利用されようとしてるんだよ!」

歩鳥「それに…今までずっと家族から見放され周りからも邪魔者扱いされていた子がさ…実の親から謝罪されて暖かく迎え入れられたらどうなるよ!?」

ケニー「あのな…そうは言ってもやれる事には限度ってもんがあるだろうが。特にお前みたいな力の無いガキンチョにはな」

歩鳥「うう……ぐうの音も出ない…」

歩鳥(こんな時…ユミルがいればなぁ…)


―――――――――



―――――


レイス屋敷地下牢


ロッド「…」


エレン「はあ…はあ…」


ロッド「無駄だ、お前はここからは出られない。まだ巨人の力もコントロール出来ていないようだしな」

エレン「…は?巨人の力?なに言ってんだ…!」

ロッド「そうか…本当に何も知らないのか。いや、記憶はあるはずだが、思い出しかたがわからないのだな」

エレン「…!?なに!?」

ロッド「グリシャも酷い男だな…詳しい話も伝えず自らの息子に受け継がせるとは」

エレン「な…何を言ってんだ!?なんで父さんの名前を知ってんだ!!お前は何者だ!!!」

ロッド「…」


ガチャッ


ウルクリン「父さん、クリスタを連れてきた」

クリスタ「…」


エレン「!?」

クリスタ「え、エレン!?」

ロッド「…ヒストリア…」

クリスタ「!」

ロッド「今まですまなかった」ギュッ

クリスタ「え……っ」



ロッド・レイスは自分の計画は完璧に進められていると思っていた………

しかし、彼は知らない…一見アホにしか見えない1人のイレギュラーの存在を………



――――――


憲兵「」
憲兵「」


ミカサ「見張りは見つからないよう背後から高速で峰打ちしておいた…20分は寝ていると思う」


真田「すげぇ…ミカサ」

ジャン「どうだ、すげぇだろ!ミカサはすげぇだろ!!」

アルミン「なんでジャンがそんな自慢気なの」

静「んー…しかし、皆はどこにいるのかね~」

ユミル「…」

コニー「なあ、おい。ここの部屋扉でかくて怪しくね?」

マルコ「そこは書庫だよ、書いてあるじゃないか」

コニー「あ、本当だ」

真田「…いっぱい本ありそうだな」

静「…」


静「道を全く知らん屋敷の中を適当に動き回っていてもあれだ。少し入ってみない?」

アルミン「え、でも…」

静「何か情報あるかも知れないじゃ~ん?それにこの屋敷の設計図みたいなのでも出てくりゃどこに行けばいいかもわかるしさ」

ユミル「そうだな。少し入ってみるか」



―――書庫


ガサガサッ


アルミン「あっ!」ガサッ


ジャン「なんか見つけたのか?」

アルミン「この屋敷の内部の図面だ…」

ミカサ「なんと!」

真田「やったな、アルミン!それがありゃ…」

ユミル「よし、行くか」

静「そうだね~……ん?」



静「…んん?」

ユミル「なんだ?」



静「この本変じゃない?」

ユミル「は?」

静「タイトルは『作られた兵隊 中編』だけど…前編と後編がどこにもない」

コニー「へ??」

ジャン「それがどうかしたんですか?」


静「横には隙間もなく他の本がびっしりだったから誰かが前編後編を持ち出した訳ではない……つまり初めから中編しかなかった。アルミンくん、君は本の前編を読まず中編をいきなり読むかい?」

アルミン「いや、読まないですけど…」

静「そんなものが本棚に混じっている。おかしいと思わないかい?この本…何かあるんじゃないのかな~?」パラパラッ


ユミル「…」


チャリンッ

静「!!」

アルミン「え!?」


真田「本の隙間から鍵が落ちてきた…」


静「なんだこれ~…すげー気になる……ごめんユミル、3分ほどだけ観察してもいい?」

ユミル「すぐ終わらせろよ」



静「ん~……」


コニー「あれ?さっき本抜いた奥に穴がないか?」

静「え?」

アルミン「本当だ、鍵穴だ!!まさか…」


静「…ちょっと鍵突っ込んでみようか~」



ガチャン!



ゴゴゴゴゴ…


ジャン「本棚が動いた!!」

静「マジかよ…」

真田「……奥にまた本がたくさんある部屋が出てきましたよ……」



ジャン「なんだこりゃ……」

ミカサ「早くエレンを助けたいけれど…こんなものを見たら少し気になってしまう……悔しい…」

アルミン「…でも、知らない文字の本ばっかりだ」


ユミル「…」


真田「知らない文字じゃ読めないですね…静さん、やっぱ行きましょうか」

静「いや、少し待て少年…」ピタッ


静「一冊だけ…日本語で書かれた本があるぞ~?」

真田「本当だ!!」

ユミル「!」

静「…でも時間もないし、適当に開いた一ページだけ読んで行くぞ」




静「…」


真田「…」



静「コードネーム・タイタン」



静「戦争用に作られた………フェアリー」



―――――――


エレン「………」



ウルクリン「…エレンの様子はどうだ?」

ケニー「ぐっすり眠っているよ。運ぶなら今のうちだ」


ウルクリン「いま、父さんが例のものを取りに行っている。そうしたら早速行こう…礼拝堂へ」

ケニー「ヘイヘイ」


ザッザッザッ…

ロッド「…」

クリスタ「…」

クリスタ「お父さん…あの、エレンは……」

ロッド「大丈夫。エレンには少し話を聞くだけだから心配ない」

クリスタ「…うん…」

ロッド(さて…注射器と…)ガサガサ


ロッド「………………」


ガサガサッガサガサッ



ロッド(………あれ!!?)

ロッド(注射器が…ない!?薬もない!?)

クリスタ「…?なにしてるの?」

ロッド「い、いや…なんでもないよ、ヒストリア」

ロッド(おっかしいなぁ…ここに置いていた筈なんだが…)

ロッド「ちょっと用事があるからウルクリン兄さんと先に馬車へ行ってなさい」

クリスタ「うん」


―――馬車


エレン「…」



ウルクリン「…」


ケニー「…」



ケニー(いいぞ…俺の計画も順調に進んでいる。このまま隙をついて…エレンと注射器を……)


エレン「…」



ケニー(ククク…)









???「………」ガサッ



―――――――


―――

エレンの夢の中





エレン「…う…」


エレン「……ここは?」


ザッザッザッ…

エレン「!」



リドル「…」



エレン「なんだ…こりゃ?」


学者「…なんということだ……」

エレン「!」


学者「私は…とんでもない事してしまったのか…?」


エレン(誰だ…あれ?)



学者「いや、私が間違っているはずはない…人類をより良くするためには仕方なかったのだ…」


エレン「あの…あんた、誰ですか?」


学者「…」


学者「私は……この世界に絶望したもの…」

エレン「え?」

学者「………」

学者「そして…姉弟を解放するために……」

エレン「な、なんのことですか!?」


学者「…私は、…初代…」


ゴオオオオオ…




「…」


「……ホトリ………」



「…タ……スケテ……」


―――――――

トラウテ「…と、いうわけで…ケニー隊長はいったんロッド・レイスの護衛として一緒に礼拝堂へ向かう」


トラウテ「その後、私達も時間差で向かい…隙をつき、ケニー隊長と共にエレンを奪う。いいな」

隊員「はっ!!」


紺「…なあ…なんであんた達もエレンを取り返そうとするんだ?明らかに変だし怪しいぞ」

サシャ「ですよね…」



トラウテ「…君たちは知る必要はない。とりあえず隊員に、君たちも大事な人間だから守れと言われている」

紺(…あのオッサン…やっぱうさんくせぇ…なに考えてやがる)


トラウテ「とりあえず君たちはここで待っておきなよ」


サシャ「いや、同期が拐われているのに何もしないなんて嫌です!」

紺「まあ…そうだな…おい、歩鳥」



シーン………


紺「…あれ?」

サシャ「あれ?ホトリは?」


トラウテ「どうした?…ホトリがいないの?」

紺「い、いない…歩鳥!?」

サシャ「あなた、何かしましたか!?」

トラウテ「いや、私達は何もしてないよ!?これは本当だ!!」



紺「…ん?」カサッ

サシャ「どうしました?」

紺「あれ、知らない内にポケットに手紙みたいなのが…」ガサッ


『私、こっそりレイス卿の馬車に乗り込み先に礼拝堂へ行ってきます。ふふふ…女子高生探偵の名は伊達じゃないんだよ!じゃーね!!byホトリ・アラシヤマ』


紺「…あ…」

サシャ「…あ…」


紺・サシャ「あんの、アホトリ~~~!!!」

間違い

隊員×
隊長○


――――――

礼拝堂


カツンッ カツンッ カツンッ…


ロッド(ふう…屋敷に注射器なくて焦ったけど礼拝堂にも置いてて良かった…)

クリスタ「お父さん!エレンをこんなとこに連れてきてどうする気なの!?」

ロッド「大丈夫。エレンを傷つけるようなことはしないよ」

ウルクリン「安心するんだ」

クリスタ「うん…」


ケニー(あちゃ~…この嬢ちゃん段々思考が停止してきてるな。まあ、仕方ないが…)


エレン「…」


ロッド「よし、エレンを鎖で繋いでおく」

ケニー「了解」カチャカチャ


ウルクリン「…一応口も塞いどく?」

ロッド「いや、大丈夫だろう…自分の力も知らないみたいだしな」

クリスタ「…やっぱり…」

ウルクリン「大丈夫だから」

クリスタ「うん…」


ロッド「よし、クリスタ。ちょっと着替えよう…」

クリスタ「え?」

ウルクリン「大事な儀式をやるから」

クリスタ「ぎ、儀式…?」

ロッド「いいから。服を置いてある場所まで案内してあげよう」

ウルクリン「こっちだ」
クリスタ「…」ザッザッ

ロッド「ケニーも念のため護衛としてついてこい」

ケニー「ヘイヘイ」



ケニー「…ん?」ピクッ


シーン………



ケニー(…気のせいか)

ザッザッザッ…





歩鳥(…あっぶな~…バレるかと思った…まあ、ケニーのおっちゃんにならバレても大丈夫だろうけど、また怒られるしなぁ)


歩鳥(ふふふ…なんと私、ケニーのおっちゃんや皆に内緒でこっそりレイス卿達の馬車に乗り込んでしまいました!)

歩鳥(そしていざというときの護身用に木の枝と石ころも拾ってきた…完璧だね)


歩鳥(きっと今頃、紺先輩やサシャも私を「すごい!探偵!カッコいい!」と称えているよ…むふふ)


歩鳥「さてさて、それはそれとして…なんと私」



歩鳥「鎖で繋れたエレンを発見してしまいました!!」



エレン「…」



歩鳥「しかも半裸!半裸!?何故に!?露出イェーガー!!」



エレン「…」



歩鳥「…しかも無反応…寝てるみたいだ…」


歩鳥「タッツンがいたら良いツッコミ入れてくれただろうな…」



ザッザッザッ!


エレン「…」

歩鳥「エ~レ~~ン!起きな!」


エレン(半裸)「…」

歩鳥「!」ドキッ


エレン(半裸)「…」


歩鳥「ゴクリ…」ドキドキドキドキドキドキ

エレン「…」

歩鳥「…」ジー←顔近付ける

ドキドキドキドキドキドキ

エレン「…」

歩鳥「…」


ドキドキドキドキドキドキ


エレン「…ん…」

ドキドキドキドキドキドキ

歩鳥「ゴクリ…」コチョコチョ←木の枝の先で鼻こちょこちょ

エレン「ふあ…っ」


エレン「ふあっくしょん!!!…あ、あっ!?」


歩鳥「グッモーニン、エレン」ニコニコ

エレン「…」

歩鳥「大変なことなってるね」

エレン「お前、今!何してたおい!?」

歩鳥「いや、声かけても起きなかったから…ちょっと鼻をこちょこちょ…」

エレン「アホかお前は!?つーか何でお前がここにいるんだ!!?だいたいここどこだ!!?」

歩鳥「ま、待って待って落ち着いて!」


歩鳥「とりあえず私もよくは分かんないんだけど、エレンはレイス卿達に馬車で礼拝堂の地下へ運ばれたようだよ」

エレン「…なんか、壁や柱がキラキラしてるな」

歩鳥「うん、何だか不思議な光景だよね」

エレン「つーかよ…んなふざけてる暇あるなら鎖外すなりしてくれりゃいいのによ…」

歩鳥「あのね~…私はこれでも自称探偵だよ?観察力ならそこらの人達よりはあると自負したい気持ちでいる」

エレン「はあ…だから何だよ」

歩鳥「エレンの繋がれている鎖を見てごらん…こりゃ専用の鍵が無きゃ外せない構造だよ。それに、私の力じゃ無理やり鎖外すのも無理…つまり」


歩鳥「私じゃ鎖外すの無理だからとりあえずエレンを起こすという結論に至ったたのだよ」

エレン「そうか…そこまで瞬時にして頭が回ったのは凄いと思うがどっか腑に落ちないのは何故だろうな…」

歩鳥「多分レイス卿が持ってると思うんだけど…どうするかな」

エレン「…はあ…なんでこんなことになっちまったんだろうな…」

歩鳥「大丈夫だって、私がいるじゃないか!」

エレン「この状態で仲間がいるのは嬉しい状況のはずなのに、どこか不安を拭えない…」


―――――――

ジーク「…ふむ……それで?」

ライナー「はい…憲兵から聞き出した話なら、エレンはレイス卿の屋敷に連れていかれたあと、近くの礼拝堂へ行くらしいです」

ジーク「ふむ、じゃ…礼拝堂へ行ってみようか。地図ちょうだい」

ベルトルト「どうぞ」

アニ「…ホトリ達も居るかはわからないけど…とりあえずまず礼拝堂に行くからね」

辰野「うん…」


ジーク「ふむ…結構近いな」

辰野「…あの…」

ジーク「なんだい?」

辰野「…」


辰野「本当に…壁の中を、滅ぼすしか無いんですか?」

ジーク「そうだね。この呪われた繰り返される歴史を止めるには…力づくしか無いのさ」

辰野「…」

ジーク「ま、俺だって別に自分の考えが一番正しいと思ってる訳じゃない」

ジーク「だが…いつまでも『アレ』のせいで世界を好き勝手されちゃたまらんだろ」

辰野「…私、考えてたんですけど…」

ジーク「ん?」

辰野「私達がここに来たのって…戦士長の話していた『二人の姉弟』と関係があるんじゃ……」

ジーク「さあね、そりゃ俺にも分からんさ」

ライナー「準備できました」

ジーク「さて、それじゃ…行くよ君たち」

辰野「…」


――――――


歩鳥「ところでだね、エレンくん」

エレン「なんだよ?」

歩鳥「実は私ちょっと前にレイス卿の部屋に不法侵入して勝手にタンスとか漁ってたんだけど…」

エレン「探偵つーか泥棒だな」

歩鳥「こんな薬の瓶を二本見つけて来たのだよ」

エレン「何の薬だそりゃ?」

歩鳥「この私にもわからない……女子高生美少女探偵の名に懸けてこの謎は解明しなければ」

エレン(美少女と言い切りやがったぞ)

エレン「…瓶になんか文字が書いてあるみたいだが?」

歩鳥「そうなのだぜ」

歩鳥「それぞれ『ヨロイ』、『サイキョウノキョジン』と書かれているだけど………何のことだかさっぱりだね」

エレン「訳のわからん薬だな……間違っても飲むなよ」

歩鳥「飲まんわ!」



エレン「…ん?」ピクッ


エレン(いや、待てよ…こんな薬…どっかで見たような気が…)


エレン「う、頭が…」ズキッ

歩鳥「どうした!?大丈夫?」

エレン「ああ、大丈夫だ…何でもない」


ザッザッザッ…


エレン「!向こうから誰か帰って来るぞ!!ホトリ、隠れてろ!!」

歩鳥「マジで!?まだ見つかるのはマズイ!!避難だ!!」ササッ



ケニー「…おや、お目覚めのようだな」ジャリッ

ロッド「…」

クリスタ「エレン、起きたの!?大丈夫だからもう少し辛抱してね!」

エレン「!?クリスタ!?なんで…!」

歩鳥(あの子!そんなとこいちゃダメでしょ!!)


ロッド「さて…邪魔者もいない…始めようか」

エレン(…ホトリはまだ見つかってないな…だが…)
歩鳥「…」コソコソ


エレン(なんでよりによって俺の背中の真後ろに隠れるんだよ!あいつらが後ろに来たらバレちゃうだろ!?)




エレン「…あんた達は何が目的で俺をこんなとこまで連れてきた!?クリスタ!おめぇも何でそんなジジイと一緒にいるんだ!!」

クリスタ「お、お父さんなの!エレン、大丈夫だから落ち着いて話を聞いて!」

エレン「落ち着いてられるか!鎖で繋がれてんだぞこっちは!!」

歩鳥(いや、エレン…ここは落ち着いて話を聞こう。まずは向こうの言い分や目的も聞かなきゃこっちもどうしていいかわからないよ……力づくで脱出するのはぶっちゃけ不可能だし)ヒソヒソ

エレン(………そうだな、わかったよ…お前の言う通りだ。今はいったん大人しくしてやる)ヒソヒソ


エレン「…とりあえず、あんた達の事も詳しく聞かせてくれなきゃ…こっちも訳がわかんねぇだろ」

クリスタ「お父さん…早く話をしてあげて」


ロッド「…君は今は思い出せないだろうが……我々レイス家が代々受け継いで来た力を君の父親が奪った」

エレン「!?父さん!?」

ロッド「巨人の力だ…、更にその中でも頂点にたつ…神に等しい力。その巨人の力が今、お前の中にある」

クリスタ「…!?」

エレン「!!?はあ!?巨人の力って何だよ!?」

ロッド「…巨人を人間に変える力がこの世界には存在するのだ。シガンシナ区を攻撃してきた超大型巨人と鎧の巨人…彼等もその類いだろう…」

ロッド「…だが、君ではその力を使いこなせない、だから我々レイス家に返してもらう。それが人類の未来の為にもなるのだ」

クリスタ「よ、よくわからないけど…」

エレン「何言ってやがんだ、お前は…っ!」


歩鳥(い、今…さらっととんでもない情報が入ったよ!超大型巨人も鎧の巨人も、巨人になる力を持った人間…更にエレンもそれと同じ力を持っている!?)


歩鳥(とりあえず、何とか把握できる部分だけで推理してみよう)


歩鳥(たぶんあのオッサンが言ってる事は嘘じゃない………エレンの父親が力を奪った…)

歩鳥(その力を取り返す……レイス家に…)


歩鳥(力を取り返すってどういう事だ?)


歩鳥(………)



『巨人は人間を食べる』



『食べる』



歩鳥「………っ!!!」ピキィィィンッ



歩鳥(ま、まさか………エレンを……)


歩鳥(エレンを食べさせる気なのか!!?)



歩鳥(待てよ、それならばあの薬の中身は……『ヨロイ』『サイキョウノキョジン』という名前…人間を巨人にする力…)


歩鳥(巨人の力を与える薬!?)


歩鳥(おっそろしい結論に至っちまった!!どうしよう!!このままここにいちゃヤバい!!!)



歩鳥(………ん?)


歩鳥(うあ!ヤバい!!私もヤバい!!しまった、色々あって忘れてたよ!!)

歩鳥(だめ!今は抑えて!!今はまだ…!!)グググ





ロッド「…さて、まずはエレンに父親の記憶を思い出して戻して貰おうか」ザッ

クリスタ「え?」

エレン「…!!?」

ケニー「…」



ググ…


グウウウウウウウウ…






エレン「……………」


ロッド「…」


ケニー「……………」


クリスタ「………え?なに今の音?」



エレン「………」


エレン(俺の真後ろから聞こえたから音の正体はわかっちまった……)


エレン(ホトリ………お前って奴は………)


歩鳥(すいません…すいません…私のお腹が鳴りました…)


歩鳥(だって!!朝からずっと何も食べてないんだもの!!!)



ロッド「まさか…エレンの中に眠る巨人の力が目覚めようとしている音か…?」


エレン「!?」
歩鳥「!?」


クリスタ「え!?」

ロッド「今のような音がこんな場所で聞こえるのは不自然だ……私も巨人の力には詳しく無いのだが、もしかしたらエレンの中にある巨人の力を関係があるのかも知れん」

クリスタ「巨人の…力…」

ケニー「確かに、エレンの方から音が聞こえたしな」

エレン「いや、俺に振らないでくれ!!!」


ロッド「まずいな、巨人の力が目覚める前に済ませるぞ」

エレン「ええ!?」

歩鳥(まあ、私のお腹の音なんですけどね)フッ


歩鳥(待てよ…これ、いい状況なんじゃね?)ピクッ

歩鳥(私はか弱い乙女でエレンは囚われの身…力の勝負では敵わない…だが……よし、いけるぞ!!たぶん!!)

歩鳥(エレン!安心してここは私に任せて!知恵比べと行き当たりばったりで私の右に出るものはいないよ!!)ヒソヒソ

エレン(『行き当たりばったり』とかいう聞きたくない単語が混じっていたが気にしないようにしよう)ヒソヒソ



ロッド「ついてこい、ヒストリア」

クリスタ「あ、うん」



???「あいや、待たれい!!!」ドンッ


ケニー「ああ!?」

ロッド「む、誰の声だ!!?」



「巨人の力が目覚める音…ふふ、惜しいですなぁ……レイス興」


クリスタ(あれ、この声って…)

エレン「…」


???「そう、あれは巨人の力の音だ………しかし、残念ながらエレンのではない。私の中に潜む凶悪な巨人の力だよ…」


ケニー「はあ?」

ロッド「くっ!どこから喋っている!目的を話せ!!!」


???「私の目的もあなたと同じエレンの力です。しかし、私の持つ巨人の力に勝てますかな?レイス興」


ケニー(この声…)

クリスタ(まさか…)

エレン「…」



ロッド「貴様は何者だ!?正体を現せ!!」



ザッ!!!



???「人は私をこう呼ぶ………天才、人類最高の頭脳…女子高生メイド探偵……」ザッ







歩鳥「嵐山ディテクティブ………名探偵ホトリ・アラシヤマとね!!!」バアアアアアアアアンッ





クリスタ「またホトリ!!?」


ケニー「やーーーっぱり、お前かい!!!」



エレン(こいつ…ここぞとばかりにとんでもねぇ事ぬかしてやがる……)


歩鳥「ふふふ…レイス卿……エレンは私がもらい受けますよ」

エレン「…」


歩鳥(こら、エレン!そこは助けを求めて!)

エレン(え!?)

歩鳥(私もエレンの力を利用しようと拐おうとしてるって設定なんだから抵抗しなきゃ不自然でしょ!!)

エレン(そ、そうか…)


エレン「ちくしょー!!!変 な や つ に狙われて大変なことになっちまってるよ!!!ミカサ、アルミン、助けてくれー!!!変 な や つ が…」

歩鳥(こいつ、ここぞとばかりに『変なやつ』を強調してやがる…)



ケニー(なに考えてんだホトリの奴は…)


ロッド「くっ…エレンを拐われる訳には……しかし巨人の力を持っていると言っている。うかつに近づくのも危険だ…っ!」

ケニー(しかも信じちゃってるよこの人…)

クリスタ「ホトリ、何してるの!?」

歩鳥「クリスタこそなにしてんの!?」

ロッド「む、知り合いか?ヒストリア」

クリスタ「え、あ…」


歩鳥「よく聞けレイス卿!!私はクリスタも拐おうとしてるんじゃーい!!!」

クリスタ「!?」

ケニー「…」

ロッド「くっ!ヒストリアまで狙っていたとは…貴様、本当に何者なのだ?壁の外から来たのか?」

歩鳥「………キッサ・シーサイドと呼ばれる秘境の地さ………人の少なさが特徴の地だよ」



―――――――

次元を越えて



ウキ「客が少ないっつったか!?ええ!?」

嵐山母「え!?」ビクッ


ウキ「あ、や…ごめん……なんか今、歩鳥が変なこと言った気がしてね…」



ロッド「なるほど…やはり壁の外から来たのか…だが、力を貴様に渡すわけにはいかん」


ロッド「ケニー…戦えるか?」

ケニー「いやぁ、俺、昔ウーリの巨人に負けてから巨人恐怖症で…」

ロッド「…」ギロッ

ケニー「ははは、ご命令とあらば戦いますよ」


歩鳥「では…ここは1つ、話し合いはいかがですか?」

ロッド「なんだと?」

歩鳥「どちらがエレンを受けとるかの話し合いです」

ロッド(…奴の持つ巨人の力がどのようなものなのかは未知数だ…下手に手を出すより話し合いが懸命か)

歩鳥(…と、いう風に考えてくれたら助かるね)

ロッド「いいだろう」

歩鳥(よしきた!!)

ケニー(なるほどな…戦う力はねぇから嘘ついて話し合いにさせようとしたって訳か?)


歩鳥「ではまず私から…1つレイス卿に尋ねたい事が…」

ロッド「なんだね?」

歩鳥「レイス卿は何を目的として、エレンを…」

エレン(ん?俺が連れてこられた理由なら聞かなかったか?もう少し詳しく聞くってか?)


歩鳥「何の為にエレンを半裸にさせたのか!?」ビシィッ

エレン「いや、そっちかよ!?」



ケニー(…やっぱりただのアホなのか?あいつは)

エレン「…」


歩鳥「さあ、答えなさい!レイス卿!まさか趣味かね!?」


ロッド「…お前に答える必要はない」

歩鳥「んな、半裸の理由勿体ぶられたって誰も喜ばねぇよ!!!つーかどうでもいいよ!!!」

クリスタ「じゃあ初めから聞かなくていいじゃん!!?」ビシィッ

ケニー「ナイスツッコミだ、ヒストリア」

ロッド(何を言ってるんだ奴は…こちらを油断させる為の作戦か?)


ケニー(ったく、アホすぎてヒストリアみてぇにツッコミ入れたくなる……)


ケニー(………ん………?ツッコミ?)

ケニー(あのヒストリアがツッコミだと!!?)



クリスタ「も~…ホトリは変なことばっかり言うんだから」ハァ


ケニー(…さっきまで父親の操り人形みたいになってたあいつが人間らしい表情に人間らしい行動をしていやがる…)


歩鳥「てかさ、本名ヒストリアなの?」

クリスタ「え?あ、うん」

歩鳥「じゃあ、ヒストリアって呼んでいい?」

ヒストリア「…いいよ」ニコッ


ケニー(しかも自然な笑顔まで!!)


エレン「へえ…お前、そんな顔できるんだな。今までは無理して作ったような表情で気持ち悪いと思ってたけど」

ヒストリア「え!?」

エレン「でも、今のお前の表情は良いと思うぞ?」

ヒストリア「えへへ…」

歩鳥「おい、気持ち悪いは失礼だぞ、エレン」ベシッ

エレン「悪い悪い」

ロッド「おい、何を雑談している…交渉中だぞ」

歩鳥「おっと、そうでしたね、レイス卿」



ケニー(…なんてぇこったい……)



ケニー(気付いたら、ホトリが現れてからこの場の重い空気がガラッと変わりやがった……)


ケニー(ホトリ・アラシヤマ………あいつ…ひょっとして……)


歩鳥「エレンは私のものザマスヨ~」オホホホ


ケニー(アホだが……実はすげぇ奴なんじゃねぇか…?)


ヒストリア「…」


ケニー(しかもいつの間にか、さらっとヒストリアの名前表記変わってるし…)




歩鳥(…エレン…他に何か聞きたいことある?)

エレン(……父さんについてだな…)

歩鳥(………私の予感だと、聞いてもいいことならない気がするんだけど…それでも聞く?)

エレン(ああ、自分の父さんの事を知らないのは嫌だ)

歩鳥(ま、そうだよね)


ロッド「…」


歩鳥「では、レイス卿…あなた方から力を奪ったエレンの父親とは何者なのですかな?先ほどから引っ掛かっていたのですが…」

ロッド「…私にも詳しい事はわからない…だが、壁の外から来た人間だろう。彼は巨人の力を持つものだった」

エレン「…!!」

歩鳥「…」


ロッド「そして、壁が破壊された日の夜…この礼拝堂まで、その時レイス家の巨人の力を受け継いでいた長女フリーダ・レイスと交戦し………」


ロッド「フリーダは力を上手くつかいこなせなかったのか…グリシャ・イェーガーに敗北し、その力は奪われてしまったのだ」

ヒストリア(……フリーダ…?どこかで聞いたことあるような……)

ロッド「そして、その力は今…エレンの中にある。その力こそが人類の希望であり………レイス家で使いこなせない神の力」

エレン(何だって!?つまり、父さんは…人類に必要な力を俺に渡しちまったって事か!?)


歩鳥「…」

歩鳥(あれ?今の話なにかおかしくない?)



エレン「…父さんは、何故そんなことを…」


歩鳥「…その他の家族はどうなったのですか?」

ロッド「…妻は去年、病気で死に…私の子供はフリーダとヒストリアだけだ」

ヒストリア「え、ウルクリン兄さんは?」

ロッド「彼は妻の年の離れた弟だ…今は私と暮らし息子として接している」

エレン(父さんが…ヒストリアの家族のフリーダさんをころした…?)

歩鳥「エレン、父さんのやったことに疑問抱いてるだろうけど気にしちゃダメだよ…てか、何かおかしい」

エレン「え?」

ロッド「…昔からフリーダは変なことを言っていてな……『子供はたくさん作る必要はない』『繰り返されてきた歴史が変わる』と……」



歩鳥(フリーダって人…まさか…)

歩鳥(わざと負けた?)

ヒストリア「繰り返されてきた歴史…って…?」

ロッド「私も詳しい事は知らないが…人類は始まりと終わりの歴史を幾度となく繰り返してきたらしい…」

エレン(始まりと終わり?)

ロッド「そして、レイス初代王の願いは完璧な人類を作りいつか平和な世界を生み出すこと……」

ヒストリア「…」

ロッド「その為に初代王は、壁の中に人類を集め、記憶を改竄…そして外の歴史を全て排除し、理想の地を作ろうとした」
エレン「!?」

ロッド「そして…姉弟の神を解放しようとしたのだ」

歩鳥「完璧な人類?姉弟の神?なにいってんだこのオッサンは…」

ロッド「姉弟の神は、何度も繰り返されてきた歴史に…人類に絶望し…そして…」



「神だと?馬鹿なこと言ってんじゃねえ」

ロッド「!!」

歩鳥「あ!」



ユミル「その『姉弟』は神様なんかじゃねえよ………」ザッ


ヒストリア「ユミル!?」



ユミル「その二人も…ただ馬鹿な奴から勝手に神として崇められてた被害者にすぎない」


ヒストリア「ユミル、なんでこんなとこにいるの!?」

ユミル「お前こそ何してんだよ、ったく」

ロッド「…なんだね、君は。どこから来た」

ユミル「どこでもいいだろ」


真田「嵐山!エレン!」ダダダッ

静「お、良かった~…まだみんな無事のようだな」


歩鳥「真田!静ねーちゃん!みんなも…」

コニー「おい、なんでエレンが鎖で繋がれてんだ!?」

ジャン「一体なにしてんだ!?」


ミカサ「エレン!助けなきゃ…っ」ジャリッ


エレン「待てミカサ!まだ来るな!」

ミカサ「!?」

アルミン「なんで!?何が起きてるんだ!?」

エレン「今…そこのオッサンから話を聞いているんだ。もう少し手を出さず待っててくれ」

アルミン「…ミカサ…」

ミカサ「…わかった…」グッ


静「…ユミル…その姉弟ってのは何なの?それが黒幕なの?」

ユミル「違う。そいつらはただ巻き込まれただけさ…馬鹿な人間のせいでな」

ユミル「とっくに死んでいる姉弟を勝手に自分達の神として祭り上げ…過剰なまでに崇めて人類に絶望していた、『フェアリー』狂信者……そいつらのリーダーが…」

ユミル「お前らレイスの先祖だろ?」


ロッド「…なんだ、それは?そんな話は私も知らない。貴様は何者だ?」

歩鳥「ユミル、何を知ってるの!?もっと色々話してよ!!」

ユミル「…今はゆっくり話してられる状況じゃないだろ」



「お~っと、先客がいるじゃないか」


歩鳥「!?」


ジーク「さーて、どうするかね…」ジャリッ



歩鳥「だ、誰だオッサン!!」

ジーク「おや…日本人の顔つきだ。タッツンの仲間はあれだね」

ライナー「ええ、あれとそこの二人もタッツンと同じ世界から来たのだと思われます」

ベルトルト「そして、あの鎖に繋がれているのが…座標の持ち主です」


エレン「…!?ライナー!ベルトルト!なにしてんだ!?」

ジャン「!?」

コニー「お前ら、何やってんだ!?」


真田「あいつら…なんで…」

静「あの眼鏡のオッサン…私達を見て『日本人』と言ったよ」

アニ「ジーク戦士長!」

ジーク「お、来たね。アニちゃんにタッツン。座標も日本人もここにいたよ」

辰野「!!」


歩鳥「タッツン!?なにしてんの!?」

辰野「歩鳥!?真田くんにみんなも!!」



ロッド「くっ…次から次へと!いかんな…こうなれば」

ヒストリア「!」

ロッド「ヒストリア…この注射を打て」

ヒストリア「え…えっ?」

ロッド「そして、エレンを…」

ユミル「クリスタ!そいつを打つな!!」

ヒストリア「!!」

歩鳥「それは駄目だ!!」

ユミル「お前ら、もう待たなくていい!止めろ!」

カアアアアッ!!!


ユミル「!!光!?」

真田「う…!ライナー達のいる方から!!」



ズシイイインッ


アルミン「…な…っ!」

コニー「は…はあ…!?」

ジャン「冗談だろ…?」

ミカサ「…ライナーとアニと、眼鏡の男が………」

ズシイイインッ!!!


獣の巨人「…」

鎧の巨人「…」

女型の巨人「…」


ゴオオオオオ…


辰野「ほ、本当に…巨人になった……」

静「くそっ、えらいこった~!」


ベルトルト「エレン、悪いけど…僕達と来てもらうよ」シュダッ





エレン「な…なんだ、なんなんだよ突然!?なんなんだお前らはぁ!!?」


歩鳥「あいつら…巨人だったのかよ…!!?」



「待った」


ユミル「!!」


ウルクリン「父さんの邪魔はさせないよ…」


ウルクリン「父さんは、身寄りのなくなった僕を息子同然に迎え入れてくれたんだ…この巨人の力をもらってね」


ヒストリア「え!?」

カアアアアッ!!!

ウルクリン巨人「グオオオッ!!!」ズシイイインッ



ライナー(ちっ、向こうにも巨人がいたか…)


獣の巨人「邪魔するなら容赦はしないよ…」

ミカサ「くそ、エレンのところに行かせろ!!」バッ

ロッド「さあ、今のうちに注射を打つんだ!!」

ヒストリア「えっ!?」

ロッド「エレンの持つ力は、レイス家の血を引く者にしか扱えない…だから、ヒストリア。お前がやるしかない」

ヒストリア「な…なに…」

ケニー「…なんだと…?」

ロッド「!」

ケニー「その力ってのは…レイス家の人間じゃねえと使えねぇのか?」

ロッド「そうだ」

ケニー「ふ、ふざけんじゃねえ!!」

歩鳥「おっちゃん、こんなときになに言ってんだよ!?ヒストリア!注射は打っちゃ駄目!!」

エレン「くそ…こんなときに、動けやしねぇなんて…っ!」

ケニー(くそ…っ!じゃあ俺は、今まで何の為に…!!)


ヒストリア「…お父さん…私、ずっとここにいて…フリーダって名前を聞いてから…少しずつ思い出せそうなの…」

ロッド「!」

ヒストリア「はっきりとは思い出せないけど…私には、優しくしてくれたお姉さんが一人いた…気がする」

ロッド「…」

ヒストリア「フリーダって、まさか…そのお姉さん?」

ロッド「………そうだな、あの娘は優しかった。お前を気にかけ会いに行っていたのだろう」

ヒストリア「!!」

エレン「…!!」

エレン(なんだそれ…ヒストリアに優しくしてくれた姉さんを…俺の父さんが…)

ヒストリア「じゃあ…姉さんは……」

ロッド「グリシャ・イェーガーに殺された…」

ヒストリア「…」

ロッド「だが、姉さんはまだエレンの中に生きている。だから、エレンを食い、姉さんとレイス家の力を取り戻すんだ」

ヒストリア「………」


ユミル「おい、惑わされるな!!」

ヒストリア「!!」

ユミル「レイスの力は確かにレイスの人間しか扱えない…だが、力を受け継いだら初代王の亡霊に洗脳されちまうんだ!!」

ヒストリア「…え!?」


ロッド「…だが、人類の平和の為にはそれしかないのだ…。姉さんの無念も晴らしたくないのか?」

ヒストリア「…」

歩鳥「ダメだ、ヒストリア!たぶんフリーダさんは何か理由があってわざと負けた…ここで注射を打ったらフリーダさんのやった事が無駄になる!!」

ヒストリア「!?」

ロッド「打て!ヒストリア!!」

ヒストリア(どうすればいいの…何が一番正しいの!?)


ユミル「……クリスタ…」ザッ

ヒストリア「ユミル!!」

ユミル「…お前の生き方に口出しする権利は、私にはない…」

ヒストリア「え!?」

ユミル「だから、最終的な判断はお前の好きにしろ…だがな、いつまでも自分の無いまま周りに流されるのだけはやめてくれ」


ヒストリア「…」

ユミル「何が一番正しいのかなんて誰にもわからねぇよ…だがな…これだけは…聞いてくれ」

ユミル「……自分に自信を持って…胸はって生きろよ」



ヒストリア「………」


歩鳥「くそ!巨人大パニックなのに丸腰で何もできない!!」

エレン「ちくしょう!鎖が外れねぇ!!」


ヒストリア「……!!!」


ロッド「打て!!!」

ヒストリア「やだっ!!」ブンッ

パリイイイイインッ

ロッド「って、ええぇ!!?」



ロッド「ああ!注射器があ!?」

ヒストリア「何が神の力だ!!そんなの私の知った事じゃない!!」バッ

ダダダッ


ロッド「!!おい、鞄を返せ!!」

ケニー「もういいだろ」ザッ

ロッド「いた!!足踏むな!!」


歩鳥「ヒストリア!!」

エレン「お前…!」

ヒストリア「エレン!お父さんから聞いた話は気にしないで、いま助けるからね!」カチャカチャ

歩鳥「よし、私も手伝うよ!!」

ヒストリア「ごめん…私のせいで。早くこの場からみんな逃げなきゃ」

エレン「いや、お前は悪くねぇだろ…」

歩鳥(だが…巨人数体に対しこっちは訓練兵ばっか…どうすんだよ…!考えなきゃ!!)



ユミル「よし…あっちは何とかなったみたいだな…」

静「うん。だけど…」


ウルクリン巨人「グオオオッ」ブンッ

鎧の巨人「!!!」ザザザッ

獣の巨人「へえ、ライナーの巨人をぶっ飛ばすたぁ、やるじゃん…」


ミカサ「くそ!この巨人ども…エレンから離れろ!!」ビュン

女型の巨人「!!」ビクッ


鎧の巨人「…」

ライナー(ちっ…やはりミカサは違うな…俺達が巨人になっても恐ろしい強さだ)

ミカサ「ライナー…アニ…何故…」

アルミン「くそっ!どうすればいい、どうすればいいんだ!?」

静「落ち着くんだ、アルミンくん!パニックになれば余計追い詰められる!!」

コニー「おい、ライナー!何の冗談だよ!?」

ジャン「くそ…やるしかねぇのか。サナダ、お前も持って来てた立体機動装置装備しろ」

真田「え!?」

ジャン「パニックになったって何もならねぇ…今できる最善のことをやらなきゃ…」

真田「…そうだな……あ!」


辰野「何よ、これ…私どうすりゃいいのよ…っ」

真田「タッツン、無事か!?」ザッ

辰野「!真田くん!!」

真田「…えらい事になっちまったな…まさか、あいつらが…」

辰野「…うん…」



獣の巨人「さて…俺達も遊んでられるほど暇じゃないんだ。俺も動くとするかね」


ズシイッ




ヒストリア「よし、外れた!」ガチャッ


歩鳥「エレン解放!!」

エレン「すまねぇ…ああくそ、頭がこんがらがってやがる…っ」

歩鳥「考え事は後だよ…今は…」


ザッ

ベルトルト「…」ザッ

エレン「!!ベルトルト!!」

歩鳥「…あんた達…本当に、壁の外から来た奴等なの!?」

ベルトルト「そうだよ。エレンとホトリ…そしてホトリの仲間の四人には僕らと来てもらう」

歩鳥「ええい…色々な人達から狙われちゃうね、私達…」

ビュンッ

ベルトルト「!!」ビクッ

ミカサ「ベルトルト!」ギュンッ

ベルトルト「くっ、ミカサか!」ザッ


ビュンッ!

ベルトルト「!」

真田「はあ、はあ…ベルトルト、嵐山も連れていかせやしないぞ」ザッ

ベルトルト「サナダ…」

歩鳥「真田!!」

真田「……なんでだよ…」

ベルトルト「…」

真田「ライナーもお前も、訓練兵団で楽しそうだったじゃないか!なのに、どうして…っ」

ベルトルト「仕方ないんだ…誰かがやらなきゃ、終わらせなきゃダメなんだよ」


ウルクリン巨人「グオオオッ!!」


獣の巨人「…なかなか強いけど、うん。俺には勝てないぜ?」

獣の巨人「ふんっ!!!」ドゴオッ

ウルクリン巨人「…!!!」ドオオッ

獣の巨人「ライナー、アニ、後は任せたよ」ザッ

鎧の巨人「…」


獣の巨人「俺は…座標と日本人を頂こう」ズシッ


エレン「!!く、来るんじゃねぇ!!」

歩鳥「なんかデカイ猿が来たよ!?」



「バキュウウウウウンッ!!!」バキュウウウウウンッ


獣の巨人「!!なんだなんだ?」シュウウウ


ケニー「待てや毛むくじゃら…俺は今、機嫌が悪いんだ……」ガチャ


歩鳥「おっちゃん!!」



ケニー「レイスの力を乗っ取るのは失敗したが…おめぇらにはまだ興味ある。さっさとこっから離れとけ」

ミカサ「ベルトルトは私が止める。早く行って!!」

エレン「す、すまねぇ、ミカサ」

歩鳥「ありがとう!ほれ行くよ!!」

ヒストリア「うん!」

真田「だが、巨人ばっかの中を逃げるのも難儀だぞ!!」


ケニー「喋るデケェ獣たぁ…冗談もほどほどにしやがれってんだ!!」バキュウウウウウンッ

獣の巨人「…お前…なかなか腕がありそうだな…」ズシンッ



ベルトルト「ミカサ、どいてくれ!」

ミカサ「あなた達こそ近づくな!!」



ウルクリン巨人「ガアアアアッ!!」ドオオオッ


鎧の巨人「…」ドオオオッ



コニー「おい、ライナー!俺達は無視かよ、何か答えろよ!!」

アルミン「コニー!近づいちゃダメだ、危ないから!!」

ジャン「…気持ちは分かるが、もうあいつらは俺達の仲間じゃねぇ…」

コニー「突然過ぎてそんなの受け入れられっかよ!!何がなんだか訳わかんねぇよ!!」

ジャン「俺だってまだ受け入れられねぇよ!でもただパニック起こしてるだけじゃ何にもならねぇだろ!!」

静「君たち、落ち着きなさい……こういう時こそ冷静になるべきだよ」

アルミン「コニー…気持ちは分かるけど…もう、どうにもならない」

静「辛いし頭もパニック起こしてるだろうが…とにかく今はこっから脱出しないと…」


ズシイイイイインッ!!!


女型の巨人「…」


ジャン「ちくしょう!アニ…っ!!」

アルミン「僕達を……いや…」

アルミン「少し前の会話から察するに、エレンを逃がさないように道を邪魔する気だ…」

コニー「ちくしょう!アニもベルトルトも!何がしてぇんだよ!」

静(やはり、同期が敵だとわかっても簡単には受け入れられないよね…)
静(さて、彼等は恐らく私達も狙っている……どうするか)



ヒストリア「ユミル!!」


ユミル「クリスタ!こっち来い!!」

歩鳥「あ、クリスタじゃなくて今度からはヒストリアと呼んで…」

ユミル「あ!?今はそれどころじゃない!後で聞く!!」

ヒストリア「ねえ…」

ユミル「なんだ?ヒストリア」

歩鳥「ちゃんと聞いてるじゃん」

ヒストリア「ごめん…みんな、私がずっと流されてたから、こんなとこまで…みんなまで来ちゃって、こんなことに…」

ユミル「…気にすんな。別にお前があの巨人どもを呼んだ訳じゃねぇだろ」

歩鳥「そうそう、何でも自分のせいにするのはダメだぞ!」

エレン「…俺こそ、父さんが変なことしなけりゃ…」

ヒストリア「だから気にしなくていいって!」

歩鳥「そうだよ、まだ詳しい事わかって無いんだから!」


真田「…ってか、どう脱出すればいいんだ…こんな状況で…」

ユミル「…」

ユミル(私の巨人ならこの空間は有利で素早い動きができる…本来なら脱出は簡単だろう。だが…今はあの巨人どももいる。私が巨人だと知りゃ狙ってくるだろう…そうなりゃ脱出できる可能性も低くなる…)

ユミル(どっかでその隙を作らなきゃいけねえ。どうする!?)


歩鳥「そうだ、タッツン!」

辰野「歩鳥…」

歩鳥「何してたんだよ、何であいつらと一緒だったの!?」

辰野「話せば長くなるけど……」


辰野「うう…」ガクッ


歩鳥「どうした!?」


辰野「ごめん…私、あんな危ない奴等連れてきちゃって…」

歩鳥「いや、タッツン!心配しなくても「連れてきた」じゃなく、むしろ「連れてこられた」にしか見えなかったから!!だから泣くなって!!」

真田「…タッツンが無事で良かったよ」

辰野「うん…」

真田「…ライナーやベルトルトは…なんで………っ」



辰野「…」



歩鳥「…!タッツン、もしかして…何か聞いたの?」


辰野「…うん…」





静「おい、危ない!そこ避けろ!!」


歩鳥「え!?」ビクッ


グオッ!!!

真田「!!」


真田「嵐山!辰野!危ない!!!」ガバッ


歩鳥「ぎゃっ!?」

辰野「きゃあっ!?」


ズドオオオオオンッ!!!!!



シュウウウ…


歩鳥「い、岩が飛んできた…」ガクガク

真田「危なかった…」

辰野「ごめん、ありがとう…真田くん」


ケニー「おっと、すまねぇ!獣野郎の投石避けたらそっち行った!!」

歩鳥「投石って何だよ…こえーよ…」ガクガク


獣の巨人「驚かしちゃってごめんな~。まあ、今の避けなくても外れてたんだけどな、ちゃんとタッツンの仲間には当たらないよう気い使って投げてるし」


歩鳥「知らんわ!岩が飛んできたら怖いわ!!つーかお前が喋れるという事実が一番怖いわ!!!」

静「歩鳥、今はツッコミしてる場合じゃないぞ」

辰野「そうよ、あいつら私達も狙ってるんだから…ふざけてる状況ないのよ、ちょうちん」

歩鳥「誰がちょうちんだトシ子メガネ!!」

辰野「ふざけてる状況ないっつってんだろ!!」ビシッ

ユミル「おい、お前ら何ふざけてんだコラ…」ピクッ

真田「まあ、でも…二人ともなんだかんだで再会できて嬉しそうっすね。タッツンもまた元気になったし」



エレン「くそ…こんなときに俺は丸腰だなんて…」

ヒストリア「どうしよう…」



コニー「ライナーもアニも話かけても答えてくれやしねぇ…」ザッ

ジャン「説得は諦めるしかねぇよ…」

アルミン「出口の方はアニの巨人がいて迂闊に通れない…僕らの逃げ道は塞がれている」

静「…そうだ、歩鳥!双葉ちゃんとサシャちゃんは!?」

歩鳥「あの二人なら大丈夫だよ!ここには私1人で(勝手に)来たから」

静「そうか…無事なら良かったが…」

真田「何か脱出する方法はないだろうか…」

アルミン「…」


静「とりあえず、状況を整理する…」


獣の巨人「ふんっ!!」ブオッ

ケニー「バキュウウウウウンッ!!」


静「あのリーダー格と思われる獣の姿をした巨人は………………なんか知らんオッサンが相手にしている」

歩鳥「ケニーのおっちゃんだよ」

真田「へえ…知り合いなのか?」


静「そして…ベルトルトくんはミカサちゃん1人で相手をしている。が…」


ミカサ「ふんっ!!はあっ!!!」ビュンッビュンッ

ベルトルト「ま、待ってくれ!ちょっと話し合おう!!」ビクッ


静「…あっちは特に心配はいらんな」

歩鳥「むしろベルトルトの方が心配だよ」



ウルクリン巨人「…」シュウウウ

鎧の巨人「…」ズシンズシンズシン!!


静「ライナーくんの巨人は………………なんかよく分からん巨人と戦っている」

歩鳥「うん」

辰野「もうちょい何かコメントしてあげようよ」


静「そして、アニちゃんの巨人は出口への道に立ち塞がっている」


女型の巨人「…」


歩鳥「すっげー構えて待ち構えてるね…」



静「とりあえず、隙を突くなら今の乱戦状態が一番都合がいいのだが………」

アルミン「問題がアニの巨人………と、獣の巨人が先程のように投石をして逃走を邪魔する可能性もあります」

静「うむ、あり得るな」


ロッド「…ウルクリンの巨人も押されている…状況は絶望的だ…」フラッ

ヒストリア「あ、お父さん!何か滅茶苦茶顔色悪いけど大丈夫!?」

エレン「顔色悪いのはお前が注射器割ったからじゃないかな。いや、あれでいいんだけど」

静「あの小さいオッサンは誰~?」

歩鳥「誘拐犯。そして私が誘拐事件を解決した名探偵…」

静「そうかそうか、私達がいない間に変なこと言ったんだな」ポンポン

歩鳥「ひゃへ!?」ビクッ

エレン(見抜かれてやがる…)


ロッド「そうだ、君…嵐山ディテクティブと言ったか?」

歩鳥「はい!?あ、私!?」

真田「本当俺たちがいない間になに喋ってたんだ、お前」


ロッド「君…巨人の力を持っていると言ったな?今その力を使えないのか!?」

歩鳥「まだそのネタ引っ張る気かい、このオッサン!?」



真田「なあ、嵐山…もしかしてお前…自分を名探偵とか巨人になれるとか言ったのか…?」

歩鳥「え?あ、それは~…あはは~~………まさか、その……倒置法」


まさかその
↓倒置法
そのまさか


辰野「やっぱり言ったんじゃないの!!アホじゃないの!?」

歩鳥「そげに怒らいでも…」

ヒストリア「いや、でも…あのときホトリが居なかったら…もしかしたら私あのまま流されていいように使われてたかも知れないし…」

エレン「あと…皆が来てくれるまでの時間稼ぎになったな」


静「へ~~、そうなんだ~。やるじゃん歩鳥」

歩鳥「えへへへ、ほら見なよ!私やっぱり凄い!」


静「…で、脱出方法を考えなければならない訳だが…」

歩鳥「話逸らされた!?」

真田「いや、違うぞ嵐山。脱出方法の話が主題だったのに途中から嵐山の話に逸れてた方だぞ」

歩鳥「はい、そうでした。すみません…」

辰野「あとで聞いてあげるから」ポンポン


ユミル「…とりあえず…どっかで隙が出来りゃ私が全員まとめて脱出させられるんだが…」

ジャン「!何か考えがあるのか?」

ユミル「ああ」



ミカサ「…でも…相手は巨人で、アニはとても素早い…隙を作るのは簡単な事ではない…」

アルミン「獣の巨人の投石も心配だしね」

エレン「あれ、ミカサはベルトルトの相手してなかったか?」

ミカサ「アニの方に行った」


ベルトルト「はあ…はあ…怖かった」
女型の巨人「…」


真田「本当だ、いつの間にかベルトルトあっちにいる…」

ミカサ「あの獣型の巨人に『アニの方に行っとけ』と命令されていた…」

静「むう…逃げ道の方にまた1人増えてしまったな…」



ヒストリア「何とかしなきゃ…もし、獣の巨人や鎧の巨人まで私達に向かって来たら…」

ユミル「もう逃げ場は無いな」

コニー「くそ…何か手は無いのかよ!」

ジャン「…ベルトルトも、同期の中じゃミカサ、ライナーに並ぶ実力者だ。こっちは正直ミカサ以外は大した戦力にはなれねぇ…」

ミカサ「…」

エレン(くそ……どうすればいいんだ!俺だって戦いたいのに…!)ギリッ

真田「アルミン……どうしよう…」

アルミン「僕もいま考えてる………何か、向こうの気を逸らせるもの………」

歩鳥(なにか無いか……脱出する手段…)

辰野「………」



女型の巨人「…」


――――――

アニ「…タッツン…あんた、前に言ったね。私達は壁を壊して何とも思ってないのかって…」

アニ「…私は…本当は、誰も殺したくない…殺されたくもない……。本当は、平和に、普通に暮らしたいんだ………なのに…私は戦わなきゃいけない……本当は嫌なのに…」

アニ「…故郷に…家に帰りたい………お父さんに会いたい………」


――――――


辰野「………」

歩鳥「!タッツン?どした?」

辰野「え!?いや……なんでもないよ」

真田「こんなときにボーッとするなよ」


静「…」

静(タッツン…何か心配だな)


歩鳥「そーだ、エレン。巨人の力を持ってるって聞いたけど…」

エレン「すまんが俺にも分からん。巨人の力なんて言われたってよ…」

アルミン「え!!?」

ミカサ「エレンに巨人の力…!?どういうこと!?」

歩鳥「まあ、説明すると長いし色々と都合もあるから超簡単に説明するなら、その巨人の力を持ってるから狙われたのさ」

エレン「まあ、詳しい話はまた後だ…」

ユミル「………」

静「でも、もし本当にエレンくんが巨人の力を使えるなら…脱出できる可能性も出てくる」

ユミル「いや、安易にやるのは止めておいた方がいい…」

エレン「え?」

ユミル「仮に巨人になれたとしても、いきなり自分の思い通りには動かせない…最初は巨人の体を意識持って制御できないんだ。だから、それは最後の手段だ…」

静「む、そうなの…」

ジャン「ちょっと待て、何でユミルがそんなことを知っているんだ」

ユミル「色々あんだよ」


獣の巨人「あー、さっさと済ませたいのに邪魔くさいししぶといなぁ、こいつ」

ケニー「うっせえ!バキュウウウンッ!!!」

獣の巨人「腕がよくてもね~…散弾じゃあ、勝てないよ」シュウウウウ


ケニー「くそ、もう弾が切れそうだ…しかも何発撃ったって効きやしねえ!!」

ケニー(くそ…もうホトリ達は無視して俺1人で隙ついて逃げちまうか!?さすがにまだ死ぬ気はねぇぞ!!)



ズウウウウウウンッ!!!

ウルクリン巨人「…」ガクッ

鎧の巨人「…」ズシンッ

ライナー(よし、もう相手は力が切れかけている…)


ヒストリア「ああ!ウルクリン兄さんの巨人が!!」

歩鳥「おっちゃんももうキツそうだ…っ」

エレン「く…っ!アルミン!お前の立体機動装置貸せ!!」

アルミン「え、まさか!?」

エレン「俺が囮になるからその隙にさっさと逃げろ!!」

真田「なに言ってんだエレン!そんなことしたらお前が…!!」

エレン「…ウジウジしてたって時間がなくなっちまう…それに、気付いてんだろ?アルミン」

アルミン「え?」

エレン「もう全員で脱出するのは不可能だ……そして、奴等は俺を狙ってる。他の皆が生き残るには俺が囮になるしか無いんだ」

アルミン「親友を囮になんかさせられるわけないだろ!」

ミカサ「それなら、私が囮に…!」

エレン「バカ言ってんじゃねぇよ!ミカサは脱出しろ!」

真田「あのな…俺だって皆だって…友達を囮になんかしたくないんだよ」

エレン「そんな甘い事言ってられる状況じゃないだろ!」

ジャン「エレン…お前の言う通りこんな状況じゃ甘い事言ってられねぇよ」

真田「ジャン!?」

ジャン「だがな、それでも簡単に割り切れるもんじゃねぇだろ」

エレン「だが、そんな事言ってたら…!」

静「君たち、そうやって言い合ってる方が時間の無駄遣いだよ…」

エレン「な…!」

静「落ち着きなさい。上手く行くかはわからないけど…1つ思い付いたから」


歩鳥「ねーちゃん!何考えたの!?」

アルミン「…エレン…いったん落ち着こう…」

エレン「…いや…すまん、俺もお前らの気持ちも考えず好き勝手言ってよ…」

ミカサ「…」ポンッ



静「まず始めに…作戦に当たって、合図したら一斉に全員が一ヶ所に集まる事。だいたい巨人が両腕広げたくらいの範囲内にね…これは守って」

アルミン「え?何でですか?」

ユミル「私の考えてる脱出方法に必要なんだ」

静「…ユミル…黙ってたら後で混乱するし、スムーズに作戦進める為にも言っちゃえば?」

ユミル「…ちっ…まあ、そうだな…」



ユミル「あのな…私は巨人になる力を持っている」


アルミン「えっ!!?」

ヒストリア「…ゆ…ユミルが!?」

エレン「マジかよ!?じゃあなんで巨人になって戦わないんだよ!!」

ユミル「私の巨人はパワーが無いから戦闘しても無駄に力を浪費するだけだ。だが、スピードは他の巨人よりある…。そんで奴等の予想外で行動するためにもギリギリまで正体を隠している方がいいんだよ」


アルミン「なるほど…確かに、あらかじめ巨人の姿を見せちゃそれに対して対策を練られるかも知れないからね」

ジャン「いきなり言われても信じ難いがな…」

歩鳥「でも、実際にライナー達も巨人になっちゃったしね…」

エレン「で…作戦は?」

静「うむ、説明しよ~」


静「まず…そこにアニちゃんの巨人とベルトルトくんがいるわな」

歩鳥「うん」

静「ミカサちゃん…一人だけずば抜けて強い君が作戦の要だ」ポンッ

ミカサ「ちょっと照れる」

静「アニちゃんとベルトルトくんの目的は…エレンくんと歩鳥、真田、タッちゃんと私の捕獲だ…」

辰野(…今は空気を読んで黙っておこう)

静「ここには都合よく柱がいっぱいある…これも利用する」

静「まず、私達は全員固まってエレンを守るようにあっち側の柱と柱の間の間隔が狭い場所へ向かう」

静「向こうにとっちゃ、私達はわざわざ狭い場所に行って捕まえやすくなったと思うだろう。だからきっと二人がかりで私達を挟み撃ちするような形で来るはずだ。まずここで、二人は挟み撃ちしたと思っているだろうがこっちにとっちゃ相手の戦力を分散させられた事になる」

アルミン「ほう…」

静「そしてまず、ベルトルトくんの足止めは…エレンくん、ユミル、ヒストリアちゃん、アルミンくんだ。アルミンくんの立体機動装置は念のためエレンくんに渡して……。いいかい?戦いはしなくていいからね?アルミンくん…君ならやれる。ベルトルト君の足止めは任せたよ」

アルミン「あ、はい!」

静「そして、アニちゃんの方は…残りのメンバー、ミカサちゃん、ジャンくん、マルコくん、コニーくん、私、歩鳥、タッちゃん、真田くん…私達は自分達用のと、予備の立体機動装置を2つ持って来ていたからこの2つは歩鳥、真田くん、タッちゃんに渡しておく」

辰野「あの…私達、立体機動なんて3ヶ月くらいしかしたこと無いんですけど…紺先輩なら使いこなせるでしょうけど」

静「わかってるよ、私達はこれで別の役目をやるんだ」

静「まず、私達で立体機動で一斉にアニちゃんの巨人の周りを近付き過ぎない程度に飛び回る。そして隙を見て私、歩鳥、真田くん、タッちゃんの四人は特に間隔の狭い柱の陰に隠れる。そして、ジャンくん、コニーくん、マルコくん、ミカサちゃんで巨人を撹乱しながら私達が隠れている地点までアニちゃんを誘導し……ちょうど良いとこまで来たら、この立体機動装置のワイヤーを使い私達四人で一斉に巨人を目潰しする」


静「そしてアニちゃんの視界を遮り…でも、巨人の特性でちょっと経てば再生するだろう。だから、巨人の目を潰したら再生する前に素早く皆が近くまで集まる。ベルトルト君もアニちゃんを助けようと近づくだろうから、私達が近くに寄るのを邪魔はされないだろう」

静「そして近くに集まったら後はユミルだね…」

ユミル「ああ。私が巨人になりアニの巨人の目が再生する前にお前らを回収してさっさと脱出する」

アルミン「……なかなかキツい作戦ですね…」

静「まあね~~…でも、巨人相手にゃやっぱ簡単にはいかんさ~」

歩鳥「あ、ケニーのおっちゃんとかレイス卿は置いてっちゃうの!?」

静「巨人連中の目的はエレンくんだよ。エレンくんが脱出したとなればすぐさまをこっちを追いかけて来るだろうさ。だから心配いらんよ。まあ、104期組は全員脱出した方がいいだろうけどね…エレンくんを誘い出すための人質にされる可能性もあるし」

ヒストリア「なるほど…」

静「そんで、奴等に追い付かれる前にさっさと脱出し身を隠す……その後の事はその時に考える…」


女型の巨人「…」

ベルトルト「…」


ベルトルト「…!」ピクッ



ザッザッザッ!


静「よ~し、みんな行くぞ~~!」

歩鳥「おー!」

真田「おーっ!!」

エレン「…上手くいけるだろうか…」

アルミン「わからないけど、やってみるしかないさ」

ミカサ「大丈夫…私が必ず上手く行かせてみせる…」


アニ(…私達から離れた場所から逃げる気?私の巨人は足が速い、無駄だよ!)

ベルトルト「…ちょうど柱の間隔が狭い通りに入ってくれた…挟み撃ちにしよう、アニ」

女型の巨人「…」コクッ


ズシンッズシンッズシンッ!!


ジャン「来た!!」

アルミン「分散してきた…という事は…」

静「よし、こっちの思惑通り二手に別れてくれたな…」

歩鳥「へへ、どうだどうだー!凄いだろ!」

ヒストリア「考えたのはシズカさんだよ、ホトリ」



女型の巨人「…」ズシンッズシンッズシンッ!!


ベルトルト「…」ビュンッ


静「前方からアニちゃんの巨人…後方からベルトルトくん。後方は任せたよ、アルミンくん」

アルミン「わかりました!」ザッ

静「あと、マルコくん…やっぱりアルミンくんのサポートを頼めるかい?」

マルコ「は、はい!わかりました」

ベルトルト「…君たち、逃げることは出来ないよ…おとなしく止まってエレンをこちらに引き渡すんだ」ジャリッ


エレン「なんだ、てめえらはいきなりよ…なんの冗談だ!?なに考えてやがんだ!?」

ヒストリア「待って、ベルトルト…話し合おうよ!!」

ベルトルト「…」

アルミン(…そう…わざわざ戦闘する必要はない…要は女型の巨人の動きを止めるまでの時間稼ぎと脱出するための隙を作ればいいんだ。シズカさんがベルトルト側にこのメンバーを選んだのも……)

ユミル「…」

アルミン「マルコ…手伝ってくれるかい」

マルコ「うん…」

ベルトルト「…話し合いは出来ない…時間は無いんだ」ザッ

エレン「や、やんのか!?」ザッ

ユミル「待てや、エレン…まだ手は出すな」

ヒストリア「ずっと一緒にいた人達が…敵だったなんていきなり言われても…わからないよ!」

ベルトルト「…わからなくていい…」

アルミン「待ってくれ、ベルトルト…詳しい理由だけでも聞かせてくれないか?理由によってはこっちも考えるし……」

マルコ「そうだよ、何も話さないままじゃ納得出来ない。それに、ずっと一緒にいた仲間じゃないか」

ベルトルト「………」

アルミン(よし、動きが止まった…)



女型の巨人「…」


ミカサ「アニ……エレンは渡さない…!」ジャキッ

コニー「くそ……やっぱりやりづれぇ…」

ジャン「だが向こうはやる気満々だ、戸惑ってても仕方ねぇ…!」

静「よし、まずはアニちゃんに怪しまれないように私、歩鳥、タッツン、真田くんも一緒に立体機動で女型の巨人の回りを飛び回る…その後、柱の陰に移動し隠れて待機し、私が合図したら一斉に四人のワイヤー攻撃で巨人の目を狙う。わかった?」

歩鳥「了解であります!」

辰野「はい!」

真田「行くぞ!」


バシュッ!!!


アニ(一斉に向かって来たか…数があれば勝てるとでも思ってるの?)


ビュンッ!ビュンッ!

アニ(…くっ…なんだ、微妙な距離を保って周りを飛び回って…私がエレンのとこまで行くのの足止めのつもりか?)

女型の巨人「…」グオッ

静「腕を伸ばしてきた!捕まらないよう避けろ!」

ジャン「あっぶな!!」サッ

ギュンッ!!

ミカサ「はあ!!」シュバッ

女型の巨人「!!」ビクッ

アニ(くっ…やっぱりミカサだけは違う…気い抜いたらやられるかも…)

ビュンッ!ビュンッ!


ジャン「コニー!うなじの方に回りながら飛べ!」

コニー「わかった!」

ジャン(そうすりゃ、相手は弱点であるうなじを守る事に集中する…)


ミカサ「隙が出来た!」ギュンッ

ズバッ!!

アニ(…!!しまった、うなじに気を取られて足を…くそ、何て速さだ、ミカサ……だが…)

ミカサ(…足が固くてあまり刃が通らなかった…)

アニ(ギリギリで硬質化が間に合った)


静「よし、私達がアニちゃんの視界に入ってない内に柱の陰に隠れて!」

歩鳥「うん!」

真田「了解!」

辰野「…」


ベルトルト「…わかったよ…ちょっとだけだ。何を聞きたいんだい?」

アルミン「!」

マルコ「…ベルトルト。君たちがウォール・マリアの壁を破壊した巨人なのか?」

ベルトルト「…もう隠す必要もないね…その通りだよ」

ユミル「…ライナーが鎧の巨人っつーことは…お前が超大型巨人か」

ベルトルト「…そうだ」

アルミン(やはりそうか…一人だけ巨人にならなかったのもデカくてここじゃ身動き出来ないからだ)

エレン「おい、お前……俺、前に言ったよな?超大型巨人が破壊した壁の扉の破片で家が潰されて…母さんが死んだんだ」

エレン「その話を聞いた時…どんな気持ちだったんだ!?」

ベルトルト「………あの時は……」



ベルトルト「気の毒だと思ったよ」



エレン「てめえ!!!なんだそりゃ、喧嘩売ってんのかオラァ!!!」

ヒストリア「エレン、抑えて!!」


アルミン「………君は、つまり……訓練兵団に居たのも…スパイの為なのか?」

ベルトルト「…そうだ」

マルコ「……今まで…」

マルコ「今までどんな気持ちで僕らと一緒にいたんだ!?」

ベルトルト「…」


ユミル「…」


ギュンッ!!

ミカサ「はあ!!」ブオッ


女型の巨人「…」グオッ

ミカサ「うっ!?」シャッ

アニ(くそ…ミカサが厄介だな…)

ミカサ(アニはやはり強い…なかなか刃を当てられない…)

ジャン「…ミカサはすげーな…なんであんなのと渡り合えるんだ…」

コニー「俺らとレベルが違い過ぎるぜ…」



静「…よし、全員陰に隠れたか?」

歩鳥「うん、あっち側の柱にはちゃんと真田とタッツンがいるよ」




真田「…三人とも…巨人の相手頑張ってくれ…」

辰野「………」


辰野(本当に…敵対するしか無いのだろうか……)

真田「…なあ…タッツン」

辰野「!な、なに…?」

真田「どうしたんだよ、何かずっとボーッとしてるぞ」

辰野「…う、うん…ごめん」

真田「…アニの戦うのが辛いのか?」

辰野「!」



辰野「…そうかも知れない…」




エレン「てめえらは…ライナーもベルトルトもアニも……ずっと、俺達を騙し続けていたのか!?」

ヒストリア「…なんで…」

ベルトルト「…」


マルコ「…あの楽しそうにしてた毎日は…嘘だったのか…!?」

アルミン「僕らはずっと仲間だと思っていたのに…」


ベルトルト「………」


ユミル(途中から作戦じゃなく本心で語ってるな…だが、そっちの方がベルトルトにも響くだろう…)


ベルトルト「…僕だって…」


ベルトルト「僕だって仲間だと思ってた!!人だってころしたくなんかなかったし!!敵対なんかしたくなかった!!ずっと一緒にいたかったよ!!」

ユミル「…っ」


アニ(ミカサが厄介だし…ジャンもコニーもすばしっこくて鬱陶しい…位置を変えよう)


女型の巨人「…」ズシンッズシンッ

ジャン「!方向を変えやがった!?」

コニー「誘導地点よりずれちまうぞ!」

ミカサ「くっ!違う方向には行かせない!」ギュンッ

ズバッ!!

女型の巨人「!!」ガクッ

アニ(くっ…しまった、膝の裏をやられた!?)

アニ(…ん?)ピクッ



歩鳥「…ねえ、静ねーちゃん…」

静「!待て!」

歩鳥「え?」

アニ(…!ホトリとシズカ!?柱の陰に隠れて何を…)

歩鳥「え!?あ、見られてる!?」

静「巨人が体勢を崩したせいで私達が視界に入っちまったんだ!誤算だった!!移動するぞ!!」

アニ(何か考えていたのか?一応捕まえておくか)


グオッ!!

コニー「!!」

ミカサ「待て!!」ギュンッ


静「危ない!!」


歩鳥「あ…っ」


ガシッ!!!




ベルトルト「…僕らは…謝ったって許されないことを、取り返しのつかないことをした…恨まれても、ころされても仕方のないことを」


エレン「…」

ベルトルト「だけど、僕らは罪を…受け入れられなかった。訓練兵団に居る間は…少しだけ、気が楽だった」

マルコ「…」

ヒストリア「…」


ベルトルト「嘘じゃないんだ、みんな!確かに僕らはみんな騙した!でも、全てが嘘じゃない!!本当に仲間だと思っていたよ!!」

アルミン「…ベルトルト…」


ベルトルト「ああ……でも、誰か、お願いだ………」

ベルトルト「誰か、僕らを見つけてくれ…」


ユミル「………」



歩鳥「うあ、しまっ…た…」

女型の巨人「…」ググッ
アニ(よし、ホトリは捕まえた)

ジャン「ホトリ!!」

真田「嵐山!!」バッ

静「なんてこった!」バッ

辰野「アニ!歩鳥を離しなさい!」バッ

コニー「くそ!」

ミカサ「その手を離せ!」ビュンッ

女型の巨人「…」

静「っ!!キックが来る!離れろ!!」

ブオンッ!!!


ジャン「ちくしょう!!」

真田「うわ!!」サッ

ミカサ「くそ…っ!」

歩鳥「ちょ…っ!アニ!離して!離せってば!」バタバタ

アニ(…悪いね…)


静「くそ、どうする!」

真田「アニ!嵐山を返せ!!」


歩鳥「ちょっと、マジで離してえええ!!!」バタバタ



「歩鳥、いま助けるぞ!!」


歩鳥「え!?」

辰野「あの声は…!」

ギュンッ!!



紺「やああっ!!」ズバッ!!


歩鳥「紺先輩!!」


女型の巨人「!!」

アニ(しまった!不意討ちで気づかなかった…!?)


静「巨人の指を切った…やるな双葉ちゃん」


スタッ


紺「もう大丈夫だぞ、歩鳥」

歩鳥「せんぱあああい!怖かったよおおお!!」ウエエエン

紺「わかったわかった、鼻水まで流すなや」ポンポン


真田「ありがとうございます…」

辰野「先輩、初めて触った日から立体機動上手かったですもんね」

歩鳥「その立体機動装置はどうしたんですか?」

紺「対人制圧部隊の人から借りた」


サシャ「皆さん!!」

コニー「お、サシャも!!」

トラウテ「隊長は!?」ザッ

歩鳥「あ、向こうにいるから対人制圧部隊の皆さんはおっちゃんの援護に向かってあげて!!」


アニ(くそ…増えるなんて…!)

歩鳥「それで…どうするの?姉ちゃん。たぶん柱の陰に隠れて不意討ちの作戦はバレちゃってるよ」

静「ああ、困ったね………歩鳥、何か持ってないの?そのバッグに色々入ってそうだけど」

歩鳥「えっと………石ころとか………」ガサゴソ

辰野「子供かあんたは」



歩鳥「あとはこんなんしか無いけど…」ゴソッ

静「それな~に?」

歩鳥「信煙弾ってやつ。トラウテさんから緊急時の信号用にもらってたんだけど…煙出すだけだから巨人相手じゃ役に立たないだろうし…」

コニー「煙じゃ巨人にダメージ与えられないもんな…」

静「…前に座学で聞いたことあるな。色の付いた煙出すんだっけな?」

ジャン「はい、そうっす」

真田「でも、そんなんじゃどうにも…」

静「………いや、待て。行けるかもしれん」

歩鳥「え!?」

ミカサ「何か策が…?」

静「うん。歩鳥、それは一本しか持ってないの?」

歩鳥「うん。私は一本しか…」

紺「あ、私もトラウテさんからもらったのが一本…」

サシャ「私も」

静「…ふむ、合計三丁か。1つ作戦を思い付いた、みんな聞いてくれたまえ」


静「まず、信煙弾2つは私が持つ……残り1つはジャン君が持ってくれ」

ジャン「あ、はい」

歩鳥「どんな作戦?」

静「…」


静「とりあえず、ミカサちゃん、フタバちゃん、コニー君、ジャン君は立体機動でアニちゃんを撹乱…歩鳥、真田くん、タッツンの三人は少し離れた場所からワイヤー攻撃で牽制」

静「…で、私が合図したらミカサちゃん、フタバちゃんで巨人の目を攻撃してくれ」

ミカサ「わかった」

紺「はい」

歩鳥「…何かあまり要領を得ない中途半端な説明の仕方だね…何か隠してない?姉ちゃん」

静「何でもないよ~。とりあえず歩鳥は気にせず私の言う通りにしてくれたらいいから」

歩鳥「うん…」

静「で…ジャン君。君は物分かりがいいから…信煙弾を撃つタイミングはその時になればわかるはずだ」

静(…中途半端な言い方でゴメンね、ハッキリ話すと騒ぎそうなのが一名いるからさ)ボソッ

ジャン「!」ハッ

ジャン「…なるほど…そういう感じの作戦っすか…」

静「何となく察してくれたかい~?」

ジャン「確かにあいつは止めそうだ…でも、気をつけてくださいよ」

静「心配ありがとうね」


女型の巨人「…」ズシンッ

静「む、来たな…アニちゃん。始めるぞ、皆言われた通りに進めてくれたまえ」

「了解!」

バシュッ!

ジャン「…」ビュンッ

コニー「…」ビュンッ

サシャ「…」ビュンッ

ミカサ「…」ビュンッ

紺「…」ビュンッ


アニ(来たな…!くそ、またちょこまかと…)


ビシュッ!ビシュッ!

女型の巨人「!」

歩鳥「ほれほれ、ワイヤー攻撃だぞ~!」

アニ(なんだ?どういうつもりだ?)

静(気が逸れた、今のうちだ!)ガチャッ


バシュッ!!

女型の巨人「!」

ギュンッ!!

静「行くぞ~~~!アニちゃん!!」ビュンッ


真田「!亀井堂さん!?」

辰野「な…!」


アニ(シズカ…!?こんな私に接近して、どういうつもりだ!?)

歩鳥「ちょっ…何してんだよ姉ちゃん!?そんな近づいちゃ危ないって!!!」

女型の巨人「…」グオッ

静「うっ!!」ガシッ

アニ(捕まえた!!近づきすぎたね…)

ミカサ「あ!!」

歩鳥「ほら、言わんこっちゃない!!」

静(…だが、腕は塞がれていない…予定通りだ)

バシュウウウ!

女型の巨人「!?」

ジャン「今だ!」バシュウウウ!バシュウウウ!

真田「え、信煙弾!?」

アニ(どういうつもり!?)

静「よくやった!私が信煙弾を構えるまでの目眩まし…」ガチャッ

歩鳥「!」

静「捕まえて私を固定してくれてありがとうな…狙いが定まりやすい」

アニ(!?)


バシュウウウ!バシュウウウ!バシュウウウ!

アニ(な!両目に信煙弾を!?前が見えない…)

静「今だ、ミカサちゃん!双葉ちゃん!」バシュウウウ!バシュウウウ!

紺「了解!」ギュンッ

ミカサ「わかった!」ギュンッ


女型の巨人「!!」


ズバッ!ズバッ!



アニ(しまった!両目をやられた…まずい!だが…)

アニ(片目だけでも早く再生させれば!)

女型の巨人「…」シュウウウ


静「よし!全員ユミルちゃんの近くまで速やかに移動!」ザッ

辰野「は、はい!」

歩鳥「姉ちゃん!なに危ない事を……心配したよ!!」

静「…だから言わなかったんだよ。特に歩鳥は余計な心配して作戦に集中出来なくなっちゃダメだし…」

歩鳥「う……言い返せない…」



ベルトルト「…僕だって…」

アルミン「…」

エレン「…」

ベルトルト「…!!」ハッ



ベルトルト「あ、アニ!!目をやられたのか!?」

アルミン「!!」

ユミル(…ベルトルトに同情してる場合じゃねぇ…やることやらなきゃな)ザッ

ベルトルト「アニ、助けに行く!!」バシュッ


ユミル「全員、近くに来い!!」ガリッ


ベルトルト「!」

ベルトルト(皆ユミルの近くに集まってる?何を…)


カアアッ!!!



ユミル巨人「…」シュウウウ


ヒストリア「ゆ…ユミル…本当に巨人に…」

エレン「…嘘じゃなかったんだな…」

歩鳥「うへえ…」

静「いちいち反応してる暇はないよ!ユミルの巨人に早く乗って!!」

バッ!!バッ!!


ベルトルト「くっ…驚いてる場合じゃない!逃げる気だな!?行かせない!!」バシュッ



ユミル巨人「…!」シュバッ!シュバッ!シュバッ!

ベルトルト「な…!なんて動きだ!追い付けない!!」

歩鳥「おお、すごく速いぞ!!」

アルミン「…これなら逃げられるかも…!」

ヒストリア「頑張って、ユミル!」


女型の巨人「…」ガバッ

ユミル巨人「!」

女型の巨人「…」ギョルッ


エレン「片目だけ早く再生させやがった!?」

アニ(逃がさな…)


バシュッ…ドス!!

女型の巨人「!?」

静「悪いな~アニちゃん!片目だけ優先して早く再生させるのも私の予測範囲内だ!」

アニ(くっ…!?予測されてたなんて!)

ユミル(よし、このまま脱出…)

ヒュルルルルル………



ドオオオオオン!!!



ユミル巨人「!!!」ビクッ

静「な…っ」


アルミン「投石!?」


ヒュルルルルル………


ドオオオオオン!!ボゴオオオオ!!!
ドドオオオオオン!!!


辰野「キャアアアアア!?」

歩鳥「おいおいおい!岩がどんどん降ってくるよ!?」

真田「なんなんだあ!?こえーよ!?」

ジャン「…前方が岩で塞がれちまった…」

ユミル(…!!!)

アルミン「嘘…もう少しだったのに…」


エレン「くっ…そ!」


静「……遅かったか…」



ズシンッ!ズシンッ!!



獣の巨人「おいおい…逃げちゃあダメだろ~…?」ズシンッ


鎧の巨人「…」ズシンッ



エレン「くそ…獣の野郎とライナーまで…!」

ヒストリア「そんな…っ」

ミカサ「く…!」ギリッ

アルミン「なんてことだ…こんなたくさんの岩で道を邪魔されたらユミルの巨人でも逃げるのに時間がかかる…いや、そもそも投石でユミルの巨人自身を狙われたら…」

ユミル(まずいことになった…さすがにあいつらまでいちゃ…!)

コニー「どうすんだよ…もうダメなのかよ!?」

女型の巨人「…」シュウウウ

ベルトルト「…」ザッ


辰野「…アニも復活したみたい…」
紺「あ…う、あ…」
真田「だ、だめ…なのか、俺達…」ガクッ

歩鳥「ヤバいよ、なんだよ…どうしたらいいんだよ…!」

獣の巨人「まあまあ、落ち着きなって。そっちにゃ俺達の欲しい人間がたくさんいるからすぐ手は出さないから」

獣の巨人「…おとなしくエレンと日本人を渡してくれりゃね」ズシンッ

アルミン「ニホンジン?」

静「…私達のことだよ…」

静(どうする、本当にヤバいぞ…逃げれば投石、戦えば全滅は確実だ………万事休すか……!?)


トラウテ「隊長!隊長っ!!」

ケニー「く…っ、やられちまった…骨が何本かいっちまったぜ、こりゃあ…」

隊員「くそ!」ガチャ

ケニー「やめろ!あの毛むくじゃらにゃお前らじゃ勝てねえ!挑んだって無駄死にだ、それだけはやめろ!!」

女隊員「…はい…」

トラウテ「…どうしましょう……」

ケニー「…ああ、くそったれな状況だ……もう神様に祈るしかねえな………んなもん信じちゃいねぇが……」





獣の巨人「…抵抗の意志は無いみたいね…じゃ、無理やりにでもエレンはいただこうか」ズシンッ

アルミン「ま、待って!話し合い…」

獣の巨人「時間稼ぎにゃ乗らないよ」グオッ


歩鳥「ま、待てコラ!!」

エレン「くっ!やってやる!!」

静「待て、無茶だエレンくん!」

ミカサ「エレンは渡さない!!」ジャキッ

ジャン「!!ミカサ!?」

アルミン「待て、ミカサ!行っちゃダメだ!!」


ミカサ「削いでやる!!!」ギュンッ


静「ダメだっ!やめろ!!」

エレン「ミカサ!!!」

シュバッ!!!

ミカサ「…!!」

ガシイッ!!

獣の巨人「ほう…かなり速い、が…突っ込んで来るだけじゃ勝てないよ」

ミカサ「しまった…!」

アルミン「ミカサが捕まった!」

ジャン「野郎!!」


エレン「ミカサを離しやがれ!!」ザッ


獣の巨人「…悪いな…君に恨みは無いが…」グググッ

ミカサ「うあ…っ!!」

歩鳥「待てえぇ!!」


エレン「テメェら…!!」ブチッ



エレン「いい加減にしろおおおおおおおおおお!!!」


ビリビリ ビリビリ ビリビリ


ビリビリビリビリビリビリ!!!



ユミル(!!!)


ベルトルト(!!)

ライナー(!!)

アニ(!!)



ジーク(!!!)



ジーク(まさか…座標が発動したか!?)



エレン「てめーら!!好き勝手やってんじゃねえぞ!!もうやめろ!!!」ビリビリ



ジーク(…!!!)


シュウウウ………


ミカサ「…!!!」

アルミン「え…え!?」


ヒストリア「何が…!?」


シュウウウ………



ミカサ「うわっ!」ドサッ





ジーク「…く…」シュウウウ


ライナー「な…人間体に、戻っちまった…」シュウウウ

アニ「うそ…」シュウウウ

ベルトルト「これが…座標の力!?」


歩鳥「な、なんか巨人体から人間に戻っちゃったよ!?」

エレン「ミカサ!早くこっち戻ってこい!」

ミカサ「うん!ごめんなさい!」ザッ


ユミル(…なんて力を持ってやがるんだ…)


静「…エレンくんが…何かしたのか…!?」


ジーク(ちっ……これからどうされるか分からん……仕方ない、体勢を立て直すか…)

ジーク「ライナー!アニ!ベルトルト!撤退するぞ!!」

アニ「!」

ライナー「いや、もう一度巨人化すれば…」

ジーク「まだ何をされるか分からん…物事は慎重に進める。今は撤退し作戦を立て直す」

アニ「…わかりました」ブルブル

ライナー「!」

ベルトルト「アニ?」

アニ(あれが座標…あれの相手をしなきゃいけないの…?)

ジーク「ベルトルト、お前の巨人化の爆発のパワーで上の地面を破壊しろ。そこから脱出する」

ベルトルト「了解」


静「!!向こう撤退するみたいだ!!」

歩鳥「マジで!?」

真田「た…助かっ…た…」ガクッ


エレン「待てよ!好き勝手しておいて…!」ザッ

アルミン「待て!深追いはダメだ!」

辰野「………」

静「…」


ベルトルト「…」ガリッ



ボゴオオオオン!!!!!


歩鳥「どわっ!!?」

ジャン「何て爆発だ!!!」


超大型巨人「…」シュウウウ



エレン「…あいつが…」ギリッ

アルミン「エレン…悔しいのは分かるが、今はあいつらが撤退するのを大人しく見てるしかない」

ジーク「よし、ライナー。立体機動装置で俺達も上まで送ってくれ」

ライナー「了解」バシュッ


アニ「…」ヘナッ

ライナー「!」

ジーク「アニちゃん、何してんの?」

アニ「怖い…」


ライナー「おい、何を言ってるんだ!!」

アニ「なんで、同期と戦わなきゃいけないの……それに、座標なんてあんな………」ブルブル


ジーク「…早く立ちな…弱音は後で好きなだけ吐きゃ…」


ヒュルルルルル…


ライナー「!!アニ!上!!」

ジーク「!!」





歩鳥「あ、アニの上から岩が!!」

アルミン「超大型巨人の爆発の影響で上の地面の塊が落ちてきたんだ…!」

歩鳥「アニ、危な…!」

ダダダッ!!!


辰野「アニイイイイイ!!!」ダッ


歩鳥「タッツン!!?」


アニ「!!」

ドオオオンッ!!!


ザザッ

アニ「うっ!?」

辰野「はあ……はあ………ボーッとしてちゃ……ダメでしょ…っ」ザッ

アニ「ご、ごめん…なんで…」

辰野「…」


辰野「…故郷に帰りたいんでしょ?お父さんに会いたいんでしょ?ならもっと…しっかりしなきゃダメでしょ!!」

アニ「…」


ジーク「全く…」ザッ

辰野「!」

アニ「タッツン!早くあっちに戻って!」

静「おい!早くこっち戻ってこい!」

辰野「あ、うん、ごめん…今戻っ…」ザッ

ガシッ!!


ジーク「どうせここまで来たんだ…タッツンも付き合いな」グイッ

辰野「!!」


歩鳥「タッツン!!」

紺「おい、辰野離せ!」


真田「くそ…!!」

辰野「待って…まだ…っ」

ジーク「待たないよ」


歩鳥「タッツンを離しやがれえええ!!!」ダダダッ


ガッ

歩鳥「ぐわっ!いってえ…っ!!」ズテンッ

辰野「歩鳥!来ちゃダメ!」

歩鳥「やだ!行くなぁ!!」

紺「辰野!!」ダッ

真田「タッツン!!」ダダッ


真田(友達がどっか連れて行かれるのも…嵐山が悲しむ顔も嫌だ…!!)


辰野「ダメ!来ないで!」


ガシッ

辰野「!!」

真田「オッサン!タッツンを離しやがれ!!」

ジーク「ふう…っ」


ガシッ!

ライナー「…ちょうどいい。サナダも来い」

真田「!!」


紺「待てコラア!!」

静「くっ…!!ダメだ、これ以上深追いするな!」ギリッ

歩鳥「…!!」


ジーク「じゃあね、また」ザッ

真田「お前らまで来るな!捕まっちまう!!」

辰野「…ごめん…!」



歩鳥「辰野!!真田ぁっ!!!」



ゴゴゴゴゴ………








その後……

彼等は礼拝堂から脱出

対人制圧部隊によりこの事は各兵団のトップに伝えられ、調査兵団と駐屯兵団は壁の外からの敵の襲撃を迎え撃つため準備を始める………

そして、エレンと104期、歩鳥達は人気のない場所へ身を隠すことに………














ウトガルド城



パチパチパチ…



ライナー「…」

ベルトルト「…」

アニ「…」


辰野「…」

真田「…」



真田「なあ…」


ライナー「…なんだ」



真田「お前らは…なんで、戦っているんだ…」

真田「一緒に過ごしてた同期なのに…なんで戦わなくちゃいけなくなった…」

ベルトルト「…」

アニ「…」


ライナー「………」


ライナー「すまん…」


真田「!」

辰野「!」


ライナー「…本当に…皆にはすまないと思っている……」



ベルトルト「…」

アニ「…」


ライナー「…俺もな…皆と過ごして楽しかった…罪の意識が頭から消えたことはなかった」

真田「………」


ライナー「だが、俺はもう…手を汚しちまっている…今さら引けないんだ、ここまでやっておいて…な」

ライナー「だから俺は…ただ、戦士としての使命を最後まで貫く…そうするしかないんだ」

真田「…」


ベルトルト「僕も…本当は怖いんだ。今まで一緒に過ごしてきた皆と敵対するなんて…でも…もう…後には引けない。誰かがやらなくちゃならない」


アニ「…うん…」

辰野「…」

真田「…」


真田「座標ってのを奪うのが…お前らの目的なのか?」

ライナー「…ああ」

ベルトルト「そして、壁内人類も滅ぼさなけりゃならない」

真田「な、なんで!?」

アニ「…呪われた歴史を止めるため…」

辰野「…でも、やっぱり…ころすのは、違うと思う…」

ライナー「…」


ザッザッザッ…


ジーク「…よう、若者同士会話中かい」


ライナー「戦士長…」


真田「…あなた達は…なんなんだ!?」


ジーク「…」


ザッ!


ジーク「…ふう…」

ベルトルト「…」

アニ「…」

辰野「…」



ジーク「…ごめんな」


ライナー「!!」

真田「…え!?」

辰野「せ、戦士長が…謝っ」



ジーク「君らみたいな若者に…重たい使命背負わせちまって…」



ライナー「戦士長…」


ジーク「だが、もう…甘いことは言ってられないんだ……」

ジーク「君らにも壁内人類にも悪いと思っている…」

ジーク「そして、別の時代から来た君たちも巻き込んでな」

真田「…」

辰野「…」



ジーク「前にも言ったよな、タッツン…俺は、自分が間違っているのか正しいのかもわからない……」

ジーク「だから、君たちのような別の時代を生きてきた人間から見て…俺達の行い、この世界の行く末、未来…それらを見届けて欲しいんだよ」


ジーク「偉そうにしておきながら自分にも自信が無いのさ。恥ずかしい事にな」

真田「…」

辰野「…」


ジーク「…ま、弱音本音吐くのはここまでにしておこう」コポコポ



ジーク「とりあえず、皆コーヒーでも飲みな……やれることをやるしかないんだ、俺達は」

ライナー「…」


パチパチパチ…











歩鳥「…んが…っ?」パチッ



歩鳥「あれ!?どこだここ!?」ガバッ


静「よう、やっと起きたか歩鳥」

歩鳥「あ、静ねーちゃん!」


静「ここは昔の東洋人やアッカーマン家の隠れ家らしいよ~~、ケニーとかいうオッサンが教えてくれた。今はここで身を隠してるのさ」

歩鳥「あれ…私、いつから寝てたの?」


静「なんでタッツンと真田を助けなかった!!って私達に突っ掛かってきた後、倒れこんだんだよ…疲れが溜まってたんだろうね」


歩鳥「そうか…タッツン、真田……」

静「ごめんな…助けてやれなくて」


歩鳥「いや、いいよ…確かに近付いたら危なかったもん……」



歩鳥「…!静ねーちゃんなに読んでるの?」

静「レイス卿の屋敷にあった本だよ~~」

歩鳥「うへー、勝手に持ち出したのか……ん?」チラッ



歩鳥「え!?日本語!?」バッ

静「その通り、日本語で書かれた本なんだな~~…これが」



歩鳥「何が書いてあんの!?」

静「ロボット、人工生命体とか…そんな類いだね」

歩鳥「書かれた年月は?」

静「聞いたことのない元号だね~~…」

歩鳥「……日本語…聞いたことのない元号、高い技術力……そんなものが書かれた本があるという事は」


歩鳥「この世界は…私達がいた世界のずっと未来の姿!?」


静「うん…単純に考えればそうだろうな~~~。だが、少し引っ掛かる」


静「レイス卿の言っていた『終わりと始まりの繰り返し』。なんだと思う?」

歩鳥「あー…そういやそんな事言ってたな……わからん」

静「突飛な予想だが………この世界は私達のいた世界の未来の可能性でもあり過去の可能性でもある……」

歩鳥「へえ?」



静「つまり…人類はずっと、グルグルと同じような歴史を繰り返し廻り続けているということではないだろうか」

歩鳥「ん~~~?待って、よくわかんない」



静「まあ、難しい~~話は置いといて。ここに書いてあるのどう思う?」

歩鳥「え?んーと……戦争用フェアリー……」

静「フェアリーとはこの本が書かれた時代に生まれた人工生命体の事だ」

歩鳥「…タイタン?」

静「そう、戦争用に生まれた人工生命体…その名がタイタン」

歩鳥「まさか!巨人の事!?外うろついてるのとか!?」

静「いや…外にいる無知性はまた別だと思う」

歩鳥「へえ?」

静「この本に書かれている事から推察するに、昔、1人の人間とほぼ同じのフェアリーの少女を作った科学者がいるらしく…その資料などは何者かによって全て抹消されているはずだった。しかし、その科学者の残した資料がまだ残っていたらしく…それには人間とほぼ同じのフェアリーの少女の事が書かれていたらしい」

歩鳥「…」

静「そして、その資料を元にある科学者は人間と同じレベルの知能を持つフェアリーの研究を始める………そして長い年月をかけ人間と同じ知能を持つフェアリーを作ることに成功」


静「まあ、フェアリーというのは元々、観賞用の人工生命体の事だったのだが…途中からこの言葉自体が人工生命体全ての総称として使われていったらしい」


歩鳥「ははぁ…」

静「で、その発展として作られたのが戦争用のフェアリー…」


歩鳥「…あ、そうか…人間とほぼ同じの人工生命体…つまり…!」


静「…巨人化の力を有する人間…それが戦争用のフェアリー…タイタンの事だと思われる」


歩鳥「待って、じゃあ…、エレンや、ライナー、ベルトルト、アニは…」

静「…ま、どこまでがそうなのかもわからんが…」


静「…歩鳥、ロボットとフェアリーの違いはなんだ?」

歩鳥「え?そりゃ……知能があって…生きてる事?」

静「もしお前がこのフェアリーの立場だったらどう思う?」

歩鳥「え?」


静「もし、自分が戦争の為に…人をころすためだけに作られた存在だったとしたらどう思う?」

歩鳥「そんなの嫌だし…納得できないよ」

静「嫌ならどうする?」

歩鳥「…え…どうするって…」





歩鳥「………反逆?」


静「………」

歩鳥「あ…」

静「何か思い付いたか?」

歩鳥「まさか…」




グギュルルルルル………


歩鳥「」

静「………」



歩鳥「ご、ごめん…お腹鳴っちゃった……てか、そう言えばまだ何も食べてなかった…」タハハ


静「おめえ~~って奴はよ~~~」



静「ま、続きはまた後な。飯持ってきてやるから食べな、あと疲れてるだろうから今日は1日ベッドで休んどきなさい」ガタッ

歩鳥「うん、ごめん」エヘヘ

静「あと、この本も置いておくから見ていいよ」

歩鳥「うん」



ガチャ バタンッ



歩鳥「…」パラッ



歩鳥「はあ………」





歩鳥「…やっぱり私は…巨人達と殺しあってるだけじゃ…解決しないと思うよ……」



静「…ユミル」

ユミル「あん?」


静「歩鳥起きたよ」


ヒストリア「え、起きたの!?良かった…話してきていい?」

静「いいよいいよ~~」

ユミル「…そうか」


静「じゃあ、そろそろ頼むよ…知ってることを全て話してくれ」

ユミル「ああ、晩飯食ったら話そう」








―――巨大樹の森





ジーク「……はあ……べちこ焼き…食いて~~な~~~……」


ベルトルト「…」

アニ「…」

真田「…?」

辰野(急になに言い出すんだこのオッサン)

ライナー「は…?べちこ焼き…ですか?」


ジーク「そうか、知らないわな…美味いんだぞ?カラフルで、パリッとしてモチッとして…」

真田「カラフル…」

辰野「それがなんなんすか」


ジーク「…人間てのはぁ、ろくでもないもんいっぱい発明してるが…」

ジーク「料理や菓子…音楽とかは、そんな人類の中でも偉大な発明だと俺は思うぜ?」


真田「…そろそろ話してくれ。あんた達は何者なんだ?」

ライナー「…戦士長…サナダにも話しましょう」



真田「レイス卿の屋敷にあった本に載っていた…戦争用に作られた人工生命体…タイタン」

真田「それは巨人の事じゃないのか!?」

ライナー「!お前、どこでそんな…」

ジーク「…ふう…何か変なこと知ってるみたいね…」ザッ

ジーク「だが、外をうろついている無知性は違う」

真田「…じゃあ…ライナーやベルトルトやアニ…」

ジーク「その三人も、近いが違うな……生まれつきに巨人化の力を持っている訳ではなかった。タイタンとは生まれつきで巨人化の力を持っている者だ」

真田「え?」


ジーク「…俺は、生まれた時からこの力を持っていた…そして、ずっと血生臭い場所に生きていた」

辰野「…」


ジーク「戦争用フェアリー…タイタンとは……俺の事だよ」


―――――


ケニー「オメェ…、アッカーマンと東洋人のハーフだったな」

ミカサ「はい」

アルミン「ミカサに用ってなんですか?」

エレン「変なことする気じゃないよな…」

ケニー「おいおい、信用してくれや、ちったぁよ」ガタッ

ケニー「…実は…東洋人の血を引いてるってお前に見せたいもんがあってな」

ミカサ「?」

ケニー「これだ……東洋人の間で使われていた暗号の解説書」バサッ

ミカサ「暗号…?」パラッ

アルミン「…あれ?これ…どっかで見たような…」

ケニー「あに?」

エレン「…!!この本に載ってる暗号…いくつかミカサの刺青で見たことあるぞ!!」

ミカサ「!!」

アルミン「それだ!」

ケニー「なんだと!?なんだその刺青ってのは…見せてみろ」

ミカサ「はい」

アルミン「さっそくミカサの刺青に書かれている内容を解読してみよう」

パラッ パラッ

ケニー「…あ…?なんだこりゃ?」

アルミン「お菓子の作り方…?」

エレン「はあ!?なんだそりゃ!?」

ミカサ「…」


ケニー「おいおいおいおいおいおい!何で菓子の作り方なんてもんが刺青にしてあんだ!?」


ミカサ「………あ……まさか…」







ミカサ「べちこ焼き!?」




―――――


歩鳥「なんか、表情前より良くなって来たね~」

ヒストリア「そうかな…」アハハ


ガチャ


紺「あ、歩鳥!目え覚めたんだな!!」

歩鳥「あ、紺先輩!おはようございます!」

紺「もう昼過ぎだよ」

歩鳥「まあまあ、私にとったら朝です」


紺「…辰野と真田…無事かな」

歩鳥「私は無事だと信じるよ。でも…どうやって助けよう…」

紺「なあ…歩鳥。またあいつら攻めてきたら、人類勝てると思うか?」

歩鳥「…どうだろうね…」

ヒストリア「…ライナーやベルトルトやアニとも…戦うしか無いのかな?」

紺「まあ、私達が戦いに連れ出されることは無いだろうけどさ」

ヒストリア「…」

歩鳥「…私は…戦ってるだけじゃ解決しないと思う」



ヒストリア「…何とかならないのかなぁ…」

紺「…ま、今は休んでろよ歩鳥…疲れ溜まってるだろ」

歩鳥「うん、とりあえず今は休むよ」

ヒストリア「じゃあ私もそろそろ行くね」

紺「またな」

歩鳥「うん、またね~」




―――――



歩鳥「さーて、晩飯晩飯♪」


紺「すごく嬉しそうな顔するな、お前…」

歩鳥「だってちゃんとご飯食べるの久しぶりだもの!」


静「…歩鳥」

歩鳥「ん?」


静「晩飯が終わったら…やっと謎明かしの時間だよ」

歩鳥「へ?」


紺「今夜、ユミルが知ってること全部話すってさ」

歩鳥「え、マジで!?」


歩鳥「…いよいよ謎の核心に迫る時が来たのか…!?」



カチャカチャ


ジャン「はあ…えらいことになっちまったな」

コニー「ライナー達、また攻めてくるのかな…」

サシャ「私まだ頭が整理つかないですよ…」

エレン「…ここにジッと隠れてるなんて嫌だぞ…俺も戦いたい」

ミカサ「駄目」

アルミン「エレンが狙われてるんだからジッとしてなきゃ…」

エレン「俺を探すために他の人達が殺されたらどうすんだ」

静「…まあ…私らが戦闘に駆り出される事は無いだろうけど…」


歩鳥「………」モグモグカリカリ


ジャン「…ホトリ、飯食いながら何を紙に書いてるんだ?」

歩鳥「作戦計画書だよ、ジャンくん」

ジャン「作戦計画書?」

紺「お前、まさか…戦う気か?やめとけって」

歩鳥「戦うなんてしないよ。タッツンと真田を救って戦いも止めさせる…死者を出さずに」

ジャン「…そんなことが出来るのか?」

歩鳥「やるよ。意地でも戦いなんか止めてやる」カリカリ

紺(…歩鳥、戦争とか大嫌いそうだもんな…)




エレン「あのなぁ…ホトリ、これは命をかけた真剣な戦いなんだ…冗談じゃすまねぇんだぞ?」

歩鳥「ちょっ、何か私が悪ふざけしようとしてるみたいな言い方だね!私だって真剣に殺し合いが嫌なの!!」

ミカサ「誰だって嫌だと思う…けど、それでも戦わなければならない時だってある。こっちをころそうとしている相手に説得するなんて、簡単に出来る事ではない」

エレン「綺麗事だけじゃどうにもならない事だってあるんだ…」

歩鳥「…そりゃ…私だって分かってるけども…」

静「歩鳥の気持ちも痛いほど分かるけど…エレンくんやミカサちゃんの言う通り、世の中甘いことばっかりじゃないからね~…」

歩鳥「…」

歩鳥「私がバカな事言ってる自覚あるよ。でもやっぱり私には…それも都合のいい逃げ道に見えるよ!要はどうにもならないから『仕方ない』で済ませてるんでしょ!?」

静「うん、そうだよ」

歩鳥「わお、即答…」

静「仕方ない状況で、死にたくないし守りたいものもあるから…何とか自分の心に言い訳して戦うんだよ」

歩鳥「…うん…」

歩鳥「でも私は、戦う前にまず戦いを止める努力をするよ」

エレン「そうか……まあ、お前の考えを否定する気は無いよ」

紺「…私はお前のやることに協力してやるよ」


ユミル「お前ら…そろそろいいか?」

歩鳥「!」


エレン「そうだ、何か大事な話があるらしいな…」

ヒストリア「…どうしたの?ユミル」


ユミル「…お前らも知っての通り、私は巨人の力を持っている」

ユミル「で…この世界の事についても大体は知ってる」

アルミン「!」

ミカサ「なんと」

紺「何か色々隠し事してそうだな~、とは思ってたんだ」


ユミル「…で、私が知ってることを…話そうと思う」

歩鳥「お!ついに来たね!」ワクワク

ユミル「…んなワクワクするような内容じゃねぇよ」

歩鳥「いや、ごめん…やっぱりそういう話になると名探偵の血が疼くというか…」エヘヘ

紺「いつから名探偵になったんだお前は」

ジャン「さっきまで真剣な顔つきだったのにいつものアホ面に戻ったぞ…」

アルミン「それがホトリの良いところだよね」

歩鳥「バカにされてんのか誉められてんのか…」

アルミン「割と真面目に誉めてるよ」


エレン「ホトリは名探偵つーか泥棒だよな。レイスの屋敷に勝手に侵入して変な薬盗むし…」

歩鳥「ち、違いますわよ!?名探偵として怪しい物を回収しただけでございますわよ!?」

紺「あからさまに怪しい反応すんなや」ベシッ

ユミル「ん?薬?何のことだ」

エレン「なんか、『ヨロイ』やら『サイキョウノキョジン』やら書いてある奴だっけ?」

歩鳥「そうそう!これの事ね!」ガサゴソ


ユミル「…お前…こんなもん持ち出してたのか…」

歩鳥「私の推理だと、これは人間に巨人の力を与える薬…」

ユミル「正解だ」

紺「ほー」


歩鳥「おぉ………試しに飲んでみようかとも思ってたけど、飲まなくて良かった……」

エレン「変なものは口に入れるなと親に教わらなかったか?」



静「どういう風に使うもんなの?それ」

ユミル「人間を無知性巨人にする薬………要は人間を人工生命体に変えちまう薬だ。シズカがレイス屋敷から勝手に持ち出した本に人工生命体の事が書いてあったろ?それと『ある物』を更に研究し作られた薬だ」

ユミル「…で、既に巨人の力を持つ人間に投与させても、薬に含まれた巨人の特性を得る事が出来るんだ」

静「へえ~、なるほど」

紺(歩鳥と二人揃って泥棒探偵か…)

静「じゃあ…外にいる無知性巨人はこの注射でなった奴?」

ユミル「いや、外にいる無知性はまた別だ」

静「え~~~?あ、外にいる無知性はさっき言った『ある物』ってのに関係あるの?」

ユミル「うん」

アルミン「…そもそも、外にいる無知性巨人とライナー達、知性を持つ巨人は仲間なの?」

ユミル「仲間じゃない。まあ…これから順を追って話すよ」

歩鳥「メモもばっちり用意したし、いつでも聞く準備は出来てるよ!」

ユミル「…じゃあ、始めるぞ…」





ユミル「…そうだ、シズカ…もうお前らの事も今のうちに話しておけよ…これからどうなるかわからないんだ」

静「そうだね~…」

アルミン「え?」







―――――――――







ジーク「この世界はずっと同じような歴史を繰り返し続けて来た………人類が繁栄し、ついには世界をも破壊し人類同士で殺し合い…最後は『巨人』が出現し…滅び、また生まれる…何度も同じように廻り続けている」



真田「…え?ど、どういうこと…?」



ジーク「人類を管理するシステムがこの世界には存在するんだ………まあ俺も実物は見たことないが、壁の中のどっかの地下にあるだか何だか聞いたことあるけどね」


ジーク「そいつは人類がダメだと判断したら人間を巨人にするウイルスのようなものを撒き散らしちゃうんだ。そして、そのシステムの脳はどっかの地下にあるが…『体』となるのが座標だ」



ジーク「座標とは全ての巨人を操り、人類の脳にも影響を与える力」


ジーク「外にいる無知性巨人は…そのシステムにより巨人に変えられた人間達さ」


真田「………」


ジーク「で、その『ある物』とフェアリーからヒントに作られたのが…戦争用の人工生命体、タイタン。生まれつき巨人化の力を有する者」

ジーク「そして、更にそこから発展させたのが人間に巨人の力を与える薬。ライナー達がそれだ」

ジーク「人工生命体なんてろくでもないもん作って…反逆を起こされ、世界中で戦争が起きた。人間同士でもころし合っていた。そして、システムが発動し…半数の人類は巨人に変えられ、巨人に残りの人間が喰われ…そして生き残った者たちは2つの勢力に分かれた。それが壁内人類と俺達だ」

ジーク「俺達のいる場所…ライナー達の故郷には、生き残った人工生命体や人間とのハーフ…薬で巨人の力を与えられた人間等がいる。ライナー、ベルトルト、アニの持つ力は昔から代々受け継がれてきた」

ジーク「実は今までも二度ほど攻撃を仕掛けた事はある…だがレイスの持つ座標の力には敵わずに終わっていた」

ジーク「そんでどちらの攻撃の後もレイスは壁内人類の記憶を改竄させ忘れさせた」


真田「…」

ジーク「…で…その壁内人類は世界を破滅に至らしめた罪人として壁に閉じ込められ…105年の猶予を与えられる」

真田「…猶予?」



―――――

ユミル「…つまり、その105年の間だけ最後の平和を満喫させてやるって事だ。まあ、その平和を維持させるために憲兵が汚い仕事するって矛盾が起きてるみたいだがな。その105年が過ぎたら…巨人化のウイルスが撒き散らされ全ての壁内人類は巨人になる」

アルミン「え!?」

エレン「はあ!?」

ジャン「なんじゃそら…」

紺「なあ…確か、この壁が出来てから105年って来年だよな?」

サシャ「そ…そうです…」

コニー「もうすぐじゃねぇか!」

歩鳥「急にそげなこと言われても…」

静「…じゃあ…レイス家とは?」

エレン「そうだ…レイスって何なんだ?」

ヒストリア「…」


ユミル「ちょっと説明が難しいが……例えば「人類の始まりから終わり」までを1つの『人類の歴史』として…その人類の歴史一回につき1つの血筋が人類を管理するシステムにより選ばれる」

ヒストリア「選ばれる?」

ユミル「無知性巨人は一定の時間が経てば自然に消滅する。だが、何人かの人間は元に戻され、その中から座標を持つ人間が選ばれるんだ。そしてそこから新たな人類の歴史が始まる」

ユミル「そして、その力は長い歴史の中で子孫に受け継がれていき…」

ユミル「その受け継がれてきた力の持ち主が、今のこの世界のレイス家だ」

アルミン「つまり、そのシステムは人類を管理するための血筋を1人選び、その力を継ぐ人間を通して人類を監視し…ダメだと判断すれば滅ぼして、その後わずかに残しまた長い歴史をかけて人類を繁栄させる…それを何度も繰り返して来たと?」

ユミル「その通り」

歩鳥「なんか頭ん中がこんがらがって来た…」

ユミル「そして、人工生命体フェアリー……知性を持つ巨人は、今この私達が生きている人類の歴史の中で生まれた存在だ」



―――ある日…三体の「巨人化の力を有する人工生命体」が誕生した。

三体は、それぞれ「ジーク」「グリシャ」「ユミル」と名付けられた。






………気付けば、俺達は毎日巨人の力と戦闘の訓練ばかりやらされていた。
そして、敵国との戦いに駆り出され、たくさんの人間を葬り多くの戦闘機や戦車を破壊した。

毎日毎日毎日毎日毎日…戦いばかりの日々だった。俺達にはそれ以外は何もなかった。
そもそも、その為に生まれたのだから…





ジーク「そして、俺はある日…戦場で1人の女に出会ったんだ」





ジーク「俺がその日任されていた任務は…自国の不穏分子共の抹殺だったんだ」


真田「…」

辰野「…」


ジーク「ま、俺はそんときは戦いしか知らなかったし、他人の事を考えるなんてしたことがなかった。だから相手が力の無い一般人だろうと殺したさ、躊躇なくな」

真田「…」


ジーク「そして、目標を全て葬り終えた時…女は現れた」



ジーク「その女は、不穏分子とされていたターゲットの娘だったらしく…父親の姿を見つけ、激しく泣いていた」

ジーク「俺は…何で泣いているのかわからないから近づいて観察した」



――――――



女「う…うう……ぐす、な、なんで…なんで…!」


女「なんでこんな酷い事が出来るの!?」


ジーク「…?任務だからやった…それだけだ………任務はちゃんと終わらせた。酷い事なんかない」

女「人の命を何だと思っているの!?」

ジーク「…死んだら何か問題があるのか?」

女「当たり前でしょ!彼等だって死にたくなかった!みんな…生きてたのよ!しかも…ただ国にとって不都合だからって…そんな理不尽な理由で…!!」

ジーク「…」

女「あなたには…生きているって事が何なのかわからないの!?」

ジーク「…考えた事もない」

ジーク「俺はただ、戦うために生まれた…」

女「!?」

ジーク「お前はターゲットではない。さっさと去れ」

女「………」


その女は何かを考え込んでいる様子だったね…


女「あなた…まさか、最近生まれたっていう…戦争用の人工生命体?」

ジーク「…そうだ」

女「…」

女「駄目…あなた、私と居なさい」ガシッ

ジーク「…は?」

女「私は貴方を許せない…でも、貴方みたいな可哀想な人を生み出した者も許せない」

女「貴方が戻ったらまた犠牲者が増える…人をころす為だけの道具になってはいけない。あなた自身にとっても害でしかない」

ジーク「…?」


女の制止する手を振りほどき逃げることなど簡単だった。
しかし…今まで出会った事の無い雰囲気の人間に、俺は興味を持ったんだ。



ジーク「…何を作っているんだ?」

女「お墓」


ジーク「…なんだそれは」

女「ここに死んだ人が眠ってるの…そしてその人はこの世に確かに生きていたという証でもある」

ジーク「そんなものを作って何の意味があるんだ」

女「…はあ…」

女「いいから、あなたも手伝って。あなたがやったんだから…責任持ってやりなさい」


ジーク「…」


俺には何がなんだか訳がわからなかったね。だが…何故か逆らえなかった



女「…あなたには私が『人間らしさ』を教えてあげるわ」

ジーク「…人間らしさ?人間はころし合って憎みあい妬み合ってるイメージしかない」

女「…まあ…悲しいけど、確かにそれも人間だからやる事だよね」

女「でも、私が言ってるのはさ…そういうのじゃないの。人間にだって綺麗な部分もあるんだよ」


――――――

ジーク「それから俺はその女と暮らし始めた……最初は単なる変わった物への興味だったよ」

真田「…」

ジーク「だが…一緒に生活する内に…俺は今までになかった様々な感情を持てるようになったんだ」



ジーク「心地良かった…研究室や戦場ではなかった感覚だったよ」

ジーク「その女はべちこ焼きが好物でな…俺もよく食っていたよ。美味かったなぁ……俺は、その時……人間も悪くないと思っていた」

ジーク「そして、恐らくその女を愛していたのかもしれない」

真田「でも…その、研究者達が…黙ってないんじゃ…」

ジーク「その通りだよ、サナダくん」

ジーク「悲劇は突然起きた……俺は結局、血に濡れた運命からは逃れられなかったんだ」




…俺と女はある日、研究員や軍人どもに見つかった…そして、俺は、『女は無関係』『俺が脅して一緒に居させた』と嘘を吐いた…女を守りたかったからだ


ジーク「そして、俺は女が手を出されないよう黙ってついていったよ………」

ジーク「だが、2日後…」




―――――

研究員「ジーク…本当にあの女は何でもなかったのか?敵国のスパイとかでもないのか?」

ジーク「だから何もないと言っているだろう」

研究員「そうか…じゃあ本当に何もなかったのか?拷問しても最期まで吐かなかったからな」


ジーク「…!!!」



ジーク「貴様……今、なんと言った………」ガシャ!

研究員「ひ!?」

ジーク「拷問だと!?『最期まで』だと!?」



――――――


ジーク「その後、俺は研究員や軍人を殺しながら女を探した…そして、見つけたんだ……が…」



ジーク「……もう…死んでいた」





ジーク「しかも…その遺体は……酷い有り様だったよ」


辰野「…っ!!」

真田「………何を…されてたのか、想像もしたくないな………」



ジーク「俺は…悪魔と呼ばれても殺されても仕方ない存在だ……だが、何故彼女が殺されなければならなかったのか」

ジーク「俺はその日から再び感情を捨て……そして、人類への憎しみで頭がいっぱいになった」

ジーク「それから俺は世界中から人工生命体を集めた…人間を滅ぼす為にな」




―――――――


ヒストリア「…ユミルが…巨人化の力を持つ人工生命体!?」


ユミル「いや、名前はユミルだが私の事ではない。まあ、その辺りも詳しく話す」






ある日、生まれた三体の人工生命体…タイタン

その中の1人、『ユミル』



『ユミル』は生まれつきから戦いを好まない性格であった。



研究員「全く…駄目だな、あれは…役に立たん…」



ユミル「…ぐすっ…」


グリシャ「大丈夫だ、ユミル…泣くなよ」ポンッ


ユミル「…うん」

グリシャ「なあ…俺さ、考えてる事があるんだけど…」

ユミル「なに?」

グリシャ「この研究室から逃げ出さないか?」

ユミル「…え?」



『グリシャ』

彼は三体の「タイタン」の中でも最も正義感の強い男であり普段は温厚な性格だった。しかし、獣の様な狂暴性をみせる事もあったという。それは兵器として生まれた故の本能だろう


そして、彼の正義感の強い面にはある科学者が関係していた。その科学者は後に、『レイス初代王』と呼ばれる者である。
科学者時代のレイスは、元々別の分野の学者であった…
彼は先祖から『座標』を受け継いでいた。
身勝手な人類に絶望しながらもその繰り返される歴史を止めるため、人類をよくしようと様々な研究も続けていた。

そして、レイスは戦争用の人工生命体である『グリシャ』に接触。
表向きには「研究の為」としていたが、その真意は「兵器として作られた人工生命体に人間らしい優しさを与える」事であった。


そして、それは成功し…強い正義感を持つグリシャは戦争を嫌い、ユミルを連れ研究室を脱走した。


そして、その後二人はレイスの元へ行くことになる…



しかし、一見まともな科学者に見えるレイスは…ある狂気的な面も持ち合わせていたのだ。
それは、人工生命体への異様なまでの崇拝と執着。
彼のグリシャに優しさを与えたこの行動も、その一環であった…



レイス「…グリシャ、ユミル…これが『ホワイトリドル』と呼ばれるものだ」


グリシャ「…白い球体に顔と四本足…」

ユミル「なんですか?それは」



レイス「これが、この前君たちに教えた『人類管理システム』…人類が駄目な生き物だと判断すれば『巨人化』のウイルスを撒き散らす」


レイス「ずっと奴等に脅され奪われていたが…君たちの脱走を手伝うついでに奪い返した」



グリシャ「そんなものがこの世にあったなんて…っ」


レイス「そして、こいつは他にも様々な機能がついているみたいなんだ…タイムマシン機能や通信機能…しかし、未知の技術が使ってあるから私も迂闊には手を出せない」


ユミル「…なんか、怖い…」

レイス「ふふ、君たちは人工生命体だから大丈夫だよ」


レイス「人工生命体は、人間のように醜い欲望が無い…素晴らしい、完璧な生命体だよ…」


ユミル「…?」

グリシャ(この人…何を言ってるんだ?)

レイス「そして私は…ホワイトリドルを元にこんなものを作り上げた」



レイス「ブラックリドル……人間や霊体の精神と交信や、記憶の読み取り等が可能なのだ」


レイス「…一番最初に生まれた、人間と同等な知能を持つフェアリーの話を知っているか?」

ユミル「話くらいなら…」

グリシャ「確か、一度その情報は全て抹消されたはずだけど、また見つかって…研究され、体も丈夫な出来になり…そして、俺達が生まれた」

レイス「そうだ…私は、その可哀想なフェアリーの少女と…話をしてみたいと思っていたのだ」


レイス「そしてこれを作り上げ…つい先日、成功した」

ユミル「…え?」


レイス「フェアリー研究施設にはその少女の髪の毛が残されていた…そして、それをホワイトリドルの一部として組み込んで、研究を繰り返し…つい先日、ついに…彼女との交信に成功した」

グリシャ「ど…どういう事…?」


レイス「はっきりとした声は聞こえなかったが…微かにこう聞こえた」



『タスケテ』『カイホウシテ』


レイス「恐らくこれは…自分の苦しみから解放させて欲しい…と、私に訴えかけているのだ。愚かな人間達から助けて欲しいと」


ユミル「………」

ユミル(本当に…そうなのかな…?)


その夜、ユミルはこっそりと『ブラックリドル』の元へ行く。


そして…ユミルはブラックリドルに話し掛けた



ユミル「ねえ…聞こえる…?あなたは誰?」


………




???「あなた…私…と…同じ、匂い…が…する」


ユミル「!!」


その時、ユミルの脳内に少女の声で返答が返って来た。少し聞き取りづらかったが…


???「あなた…には…声が届き…やすい、みたい」

ユミル「…同じ人工生命体だからかな?」


???「私は…解放、されたい……」

ユミル「え?なに?何から解放されたいの?」

???「…私は…このリドルに…接触され…再びこの世に…生きて返れると…思った……そして…次こそは……普通の人間として……生まれたいと…」

ユミル「え?どういう事?」


???「でも…願いは叶わなかった……私は……………」


ユミル「…え?」



ユミル「…!!?」


ユミル「……それは…本当なの!?」

???「…ごめんなさい……でも、私は………」

ユミル「あなた…名前は何て言うの?」


???「…キリエ」


――――――

歩鳥「…え!?そん時ユミルは…何を聞かされて驚いたの!?」

ユミル「…今までの『人類の歴史』は始まりと終わりを繰り返していたが、それはそれぞれ違う世界だった。だが、私の今いるこの『人類の歴史』から狂ったんだ」


ユミル「私の今いるこの『人類の歴史』になってからは…時間そのものがループしているんだよ。つまり、本当に同じ歴史が何度も繰り返されているんだ」


静「…」


紺「え、どゆこと?」


ユミル「図で説明しよう」


人類の歴史①始まり←―――――――――→終わり


人類の歴史②始まり←―――――――――→終わり


人類の歴史③始まり←―――――――――→終わり






ユミル「…と、いう感じだったのが……私達がいる歴史を仮に⑤として」



人類の歴史⑤始まり←―――――――――→終わり

人類の歴史⑤始まり←―――――――――→終わり

人類の歴史⑤始まり←―――――――――→終わり



ユミル「…という感じになっちまったんだ」

紺「あー…何となく理解できた」


歩鳥「そ…それはなぜ!?」

エレン「…」



ユミル「…科学者レイスは…異様にフェアリー等の人工生命体に入れ込んでいた…そして、そのフェアリーの少女の意思をリドルに取り入れる事で神として崇め…その少女こそが人間を裁くにふさわしいと判断したんだ」


ヒストリア「なにそれ…」

ジャン「勝手な話だな、おい」

ユミル「そうだ…その勝手な考えと行動のせいで……時間のループが生まれた」



―――――――

キリエ「私は…ブラックリドルを通じて喋る事が出来るけど……魂は既に、ホワイトリドルに取り込まれている…あの科学者がやったの…」


ユミル「え!?」

キリエ「そして…」



キリエ「私は、フェアリーの軍団と人間の軍団の殺しあいを見た…そして最後は巨人が出現し…巨人になった人間は悪夢を見続け…最後は全ての人間が滅ぶ………」

キリエ「そんな結末は嫌だった…何より…私は……普通の人間として生まれたかった……そして、私はホワイトリドルに捕らわれ何も出来ない。だから………リドルの力を使い、時間を巻き戻していた…何度も、何度も…」

キリエ「…でも…結果は変わらなかった…」


ユミル「…!!」


ユミル「待ってて、私が…レイスさんを説得してみる!」




………そして後日説得しようとしたが……


レイス「でたらめを言うんじゃない!彼女は死んでもなお苦しみ続けているんだ!リドルで彼女の思い通りにさせれば、彼女の心は解放されるはずなんだ!!」




…何を言っても通じなかった。そして、ユミルは…



ホワイトリドルを盗むことには失敗したが
ブラックリドルを持ち出し、グリシャと共にレイスの研究室から脱走した。



その後………

それぞれの『タイタン』達の動き



『ジーク』

人類を滅ぼすため、人工生命体を集めた彼は様々な国へ攻撃し、多数の犠牲者を出し…世界を恐怖に陥れる


『グリシャ』

強い正義感を持つ彼は、一部の人間や人工生命体と協力し「ジーク一派」や人類の中の「フェアリー撲滅派」と戦う。多くの人間から差別を受けながらも信頼してくれる人間とともに戦い続ける。ある日を境に行方不明になるが詳細は不明である。


『ユミル』

差別を受ける人工生命体や、人間とフェアリーのハーフ等を集め、1つの村を作り上げる。そこに住む者は「ユミルの民」と呼ばれる事になる。
そして、非暴力による反戦、人類とフェアリーを和解させるため行動するが一部の人間達から迫害を受ける。




世界中で憎しみや争いが加速していき…


…更に、『人間に巨人の力を与える薬』が生まれ…世界はますます滅亡の一途を辿る………

…そして…ホワイトリドルの機能が発動し、人間達が巨人に変えられ…その巨人に多くの人類が殺されて行った…



レイス「………」


レイス「…私がしたことは正しかったのか?いや…間違っているはずは…間違っているはずなどない……」





そして、レイスは大量破壊兵器として扱われていた『超大型巨人』達を元に壁を作り…その中で人類に最後の平穏を与える。



しかし…



その壁の中で人間が暮らすには数が多すぎた…様々な理由により迫害を受ける者達もいた。
そして、一部の人間達は壁から追い出されたのである。





ジーク「…ふん…こんな状況になっても、まだ、醜い事を繰り返すか……」



ジーク「…君達…壁から追い出された人間だろ?」


ジーク「俺と一緒に…戦わないかい?」



ジーク「…俺は…色々調べてる内に知ったんだ…この世界の仕組み。人類は昔から殺しあい…滅び、始まりと終わりを繰りし続けてきた。急に現れた無知性巨人もその仕組みによるものだ」

ジーク「…悪夢のようだろう?殺しあい、憎みあい、妬みあい…最後は世界をも破壊し滅び巨人になり…全てが終わる…そして、また始まる」


ジーク「そして、その元凶は壁の中にあるみたいだ」

ジーク「立て、今日から君達は…戦士だ」


ジーク「繰り返される…呪われた人類の歴史を、俺達の手で止めるんだ」


―――――――


辰野「…」


ジーク「…」


真田「…」



真田「あの…まだ、人間を…恨んでるんですか?」



ジーク「いや…もう、恨みもないね…時間経ちすぎたし…」

ジーク「今は…ぶっちゃけ、疲れたという気持ちが強いかなぁ…」

辰野「疲れた…」

ジーク「うん。自分も…人間を裁けるような存在ではないしねぇ…」



ジーク「…でも…また同じ歴史を繰り返すのは、嫌だなぁ………」

ジーク「だから、ここらで座標を奪い、この世から消して…座標が移ってしまう可能性のある壁内人類も滅ぼす。そうすりゃ、呪われた歴史も止まる…はずだ」

真田「…」



ジーク「人間も、俺達人工生命体も……この世にいちゃいけない存在なんだよ…」

辰野「…」




―――――――



ユミル「…そして…私の事だが……」



生き残ったユミルの民はこの壁の中にいた…
しかし、その民族は60年以上前に迫害を受け始めた。
人工生命体…フェアリーの存在は隠していた過去の歴史の産物であり、過去を隠したい王政側にとって不都合な存在であった。


そして………ユミルの民は「世界に戦争を起こした張本人」と嘘の情報を流され、壁内人類から恨みを買う。



ユミル「…私は…幼い頃からそのユミルの民と仲良くしてた。だから何で皆…あんなに恨みをぶつけるのかわからなかった」


…そして、ある日…ついにユミルの民は壁外追放を食らう…


憲兵に抗議した私も反逆者として一緒に放り出された…



ユミルも戦ったが…巨人のあまりの数に疲弊し…力もなくなり…他のユミルの民もどんどん死んでいき……死にそうになれば延命に無知性巨人になる薬を打つものもいた…
そして



残ったのは私とユミルだけになった




私は巨人に襲われ…死ぬ寸前だった……そして……


ユミル「…ごめんなさい……巻き込んでしまって……」


ユミル「…これが今、私にできる償い…」


「…え?」


ユミル「貴女に巨人の薬を打つ…そして私を食べて、知性を持つ巨人に……」

「な、なんのこと?」

ユミル「私は…もう…力を使いすぎて…長くない、から…あなたに、私の命あげる……」

「え!?」

ユミル「生き延びて………」


――――――


ユミル「…そして、私は…知性巨人になったが、力をちゃんと制御できず…暴走し、無知性になっちまった。その後、60年ほど経ち…人間に戻れた」


ユミル「私はユミルの記憶を受け継いだ……だから、ユミルと名乗っている」



エレン「…」

アルミン「…」

ミカサ「…」


静「…」

紺「…」

ヒストリア「…」

ユミル「…以上だ」



歩鳥「ねえ…」

ユミル「なんだ?」



歩鳥「じゃあ…私達がここに連れてこられたのは…どういう事?」


ユミル「…」



ユミル「お前達なら歴史を変えられる…そう思ったのかも知れん」


ユミル「たまにいるらしいからな…歴史を変えてしまう程の…常人とは違うような奴が…」


歩鳥「…」



ヒストリア「…なんか…どうして、そんなことなっちゃったんだろうね…」

静「ふう…っ」


エレン「……父さんは…途中から行方不明…一体、何が…」

ユミル「…それは、お前の中のグリシャの記憶が蘇れば…わかるだろうな」


エレン「…ユミル」

ユミル「ん?」

エレン「巨人の力の使い方を…教えてくれ」






紺「はあ…ちょっと頭クラクラする…」

コニー「俺もだ…」


静「あんなごちゃごちゃした話聞かされちゃね~……」


ジャン「でも…俺達はそれで、どうすりゃいいんだよ」

アルミン「……」





歩鳥「………」



歩鳥(リドルに魂を捕らわれた女の子…助けてあげたい…きっと、その子に私達が呼ばれたんだもの…)


歩鳥(…何で私達が選ばれたんだろう……歴史を変えられる人間……)


歩鳥(静ねーちゃん?勘鋭いし…いや、でも…それだけならアルミンもすごく頭いいし勘鋭いし…)


歩鳥(…うーん…)



歴史を変えてしまう程の常人とは違う奴

歩鳥(…歴史を変えてしまう程の……常人とは、違う………)


常人とは違う


歩鳥(常人には理解できない?不可解な人?)



歩鳥(変わった言動をとる人………)


歩鳥「…!!」ピクッ


その時、歩鳥は…
1つの恐ろしい結論に至ってしまった。



歩鳥(ま、ま、まさ…か…)ガタガタ





常人とは違う=他人と違う言動を放つ人


=…


変わった人


=…


変な人


=…













アホ


常人とは違う人=他人と違う言動を放つ人=変わった人=変な人=アホ=…





嵐山歩鳥





変わった言動をとる人=アホ=歩鳥






歩鳥「…」


歩鳥「………」



歩鳥「い…いや……まさか、ねぇ?ははは……」ダラダラ




歩鳥「うーん…う~ん…」


ジャン「何を唸ってんだ。腹でも減ったのか?」

歩鳥「ちゃうよ。ライナー達との戦いを止めて和解する方法を模索してるんだけど…なかなかいいアイディアが浮かばなくて」

アルミン「まあ、和解なんて簡単な事じゃないからね」

歩鳥「そうなのだぜ」



歩鳥「…こうなったら…エルヴィン・スミスとかいうオッサンを拉致して…私が調査兵団団長に成り代わるか」

エレン「何バカな事を言ってんだお前は!?」

ジャン「そんなことしてタダで済むと思うなよ」

紺「お前は本っ当にアホ鳥だな」

歩鳥「ジョークだよ!?そげに一斉に怒らいでも!」

紺「ツッコミだよ。ありがたく思え」

ミカサ「まあ…ホトリが言うと本気かジョークかわからないし」

歩鳥「私ゃ、どんだけ変な奴だと思われてんだ!?」

紺「ははは」


歩鳥「助けてよ、ヒーちゃん!みんなが私をいじめるよ!」

ヒストリア「あはは…まあ…歩鳥なら仕方ないよね」ポンポン

歩鳥「この子まで言うようになった!!誰の影響だ!?ユミルか!?」

ユミル「お前の影響もあると思うぞホトリ」


―――

ジュウウウ…


サシャ「どうですか?」

ミカサ「うーん…いまいち…」モグ



静「ん?なんかいい匂いがするな~~~。ミカサちゃん、何作ってんの~~?」


ミカサ「あ…えっと、べちこ焼き」



静「…!」ピクッ



静「べちこ焼きだって!?」





――――――



巨大樹の森



ジーク「…で、もう少し詳しい話をするが……外をうろついてる無知性巨人の本当の役割を知ってるかい」

真田「え?人を…食べることじゃ?」

ジーク「それが違うんだな…人を食べ減らすだけじゃない」



ジーク「人を食い…そして食われた人は大地に吸収され…それが自然を育み植物等を再生させる」


ジーク「人間により破壊された自然を再生させるのも…巨人のもう1つの役割なのさ」



――――――


ミカサ「…お母さんから聞いた話では……昔、種族間の憎み合いや殺し合い…そして、戦争が起きていた。でも、そんな中でも1つだけ…全ての種族に愛されたものがあった」


ミカサ「それが…べちこ焼き」



静「………」



静(この話とユミルの話を総合して考えれば…べちこ焼きは人間と人工生命体両方に愛されたお菓子…)



静(しかし、巨人の出現により…存在そのものが消えかかっていた……更には過去の歴史を消したい王政側にとってもその存在は邪魔かも知れない。だからせめて…製造方法だけでもと暗号として刺青に残したという事か?)



静「…歩鳥にも、べちこ焼きの事を教えとこう。あの子のヒントになるかも知れない」


―――――――



ジーク「…俺達の済む壁外の小さな村…ライナー達の故郷。そこにいる人間は皆、壁の中から追い出されたものや過去からの生き残りである人工生命体や、人間とのハーフ達だ…」

ジーク「壁の外で巨人に追われ、家族や友人や恋人を目の前で喰われたりしながら必死に逃げ延びて来た奴等や過去に人間から迫害を受けてきた奴等がいる………だから、彼等の多くは壁内人類を憎んでいる」


辰野「…」

真田「…」



ジーク「そして、俺達戦士の目的は…壁の中にいる人類を巨人に食わせ、人類に破壊された自然を再生させ…座標を奪い巨人の歴史の連鎖を止めることだ」


ライナー「…」

ベルトルト「…」

アニ「…」



ジーク「だが…時間が経ちすぎてしまったのか…人類への憎しみも薄れてきて……あの優しかった女を度々思い出すんだ」

ジーク「そして、自分のしている事は本当に正しいのかと自問自答するようになった………だが。ここまでやっといて後戻りなど、無責任だし許されないだろう」

ジーク「だから俺は…最後までやるよ。そして…タッツンとサナダくんに、この世界の行く末を見届けて欲しいんだ」


――――――

ザッザッ

ケニー「よお、ホトリ」

歩鳥「あ、ケニーのおっちゃん」

ケニー「お前…もし巨人が攻めてきた時、何かやらかす気らしいな」

歩鳥「やらかすって、何か私がアホなことするみたいな言い方だな~」

ケニー「面白そうだったら俺も参加させてくれよ」ギシッ

歩鳥「面白そうって私は真面目なんだからね」



歩鳥「あ、てかさー。色々あって聞き忘れてたんだけど…」

歩鳥「地下のゴタゴタで何となく察したけど、おっちゃん、エレンの持ってる力奪おうとしたんでしょ?なんで?」

ケニー「この世界をひっくり返す為……だが、それは無理な願いだった。ユミルから聞いた話から察するに、力を使うにゃ最初に座標として選ばれた人間と同じ血を持ってなきゃ駄目みたいだな…」

歩鳥「まあ…でも、力を使えたら使えたで、先祖の記憶に支配されるときがあるらしいし…良かったんじゃないかな」

ケニー「そうだな…結果的にはな」

ケニー「…ウーリはきっと…その先祖の亡霊とも戦いながら生きてたんだろうな」

歩鳥「ウーリ?」

ケニー「レイス家の人間であり…俺の友人だった男だ」

歩鳥「へー…あ、だからレイス家の人間にも信頼されていたんだね!?」

ケニー「まあ…それもあるだろうな」

ケニー「俺は…たぶん、力を手に入れる事で……あいつと同じ景色を見てみたかったんだろうな」

歩鳥「…」

ケニー「ま、どうせ俺みてぇな人間はすぐに死ぬ運命さ。もうすぐあの世で会えるかもな、ウーリと」

歩鳥「ちょっと、不吉な事言わないの」

ケニー「実際、俺は死んでも仕方ねえクズだぜ?」

ケニー「ヒストリアの母親を殺したのも…俺だ」

歩鳥「…え!?」


ケニー「まあ…ヒストリアは俺の顔覚えてないみたいだが…教えりゃ思い出すだろうがな」

歩鳥「ちょっ…サラッととんでもない事を!!どういうこった!?」バンッ

ケニー「…俺だって正直、ガキの前で親ころすなんざ気分悪い事だよ…」

歩鳥「じゃあ…なんで…」

ケニー「命令だったからだ」

歩鳥「命令だったからって…」

ケニー「それだけじゃねえ…俺は昔から何人も殺してきたよ」

歩鳥「…それは…何となく察してたけども…」

歩鳥「でも…どんな理由があっても、命を奪うのは罪だし悪いことだと思う。ヒストリアに謝るべきだよ」

ケニー「簡単に言うけどよ…そりゃつまりヒストリアにまた、母親が殺された光景を思い出させることでもあるんだぞ」

歩鳥「あ…そっか…」

ケニー「…俺は……あの時……」

歩鳥「え?」


…あの時…ヒストリアの母親が吐こうとした言葉…

アレを最後までヒストリアに聞かせたくなかった………


歩鳥「ん?なに?」

ケニー「…いや、やめとこう…言い訳じみて聞こえるからな」

歩鳥「?」

ケニー「…ホトリ…お前はアホだが、真っ当で優しい人間だな」

歩鳥「アホは余計だよ」



―――――


歩鳥「せーんぱーい!!」ガチャッ

紺「わ、なんだよ!もうすぐ寝ようと思ったのに元気な奴だな…」

歩鳥「紺ばんは(こんばんは)!!!」



紺「…」

歩鳥「…」



紺「さっさと部屋から出てけ」グイッ

歩鳥「わーん!追い出さないで、ごみんなさい!!」


紺「…で、何の用?」


歩鳥「実はですね、紺先輩に2つ頼みがありまして」


歩鳥「携帯電話の充電器持ってませんか!?」

紺「あー?ここは電気なんか通ってないだろ?」

歩鳥「いや、あの…あれです。コンビニとかにある電池式の。それなら使えるでしょ?」

紺「あー、それなら確かあるよ。この世界来てから使って無いから電池も残ってるし」ガサゴソ

紺「でも、携帯電話なんか何に使うんだよ?電波無いから意味ないだろ」

歩鳥「電波が無くても使える機能はあるじゃないですか」ムフフ

紺「で…もうひとつの頼みは何?」

歩鳥「先輩に歌を歌って欲しいんです!!」



紺「は~?なんで?別にいいけども…」

歩鳥「私はね…歌には特別なパワーがあると思っているんです」

歩鳥「歌を聞けば人間はその歌に気をとられ、その瞬間は『戦い』を忘れるのです!!」

紺(………本当にそうなのだろうか………)


紺「まあ、歩鳥の持論はわかったけど…あれか、そのお前が考えてる戦いを止めさせる作戦とやらに使うのか」

歩鳥「そうですよ。さあ、先輩!ついに私の助手としての力を発揮するときが来ました!存分に歌ってくださいな!」

紺「まあ…歌うのは好きだから別に構わんけど。なぜ私が勝手に助手にされてるのかは納得出来ないが」

歩鳥「着実に計画は進んでいるぞ…ふふふ」カキカキ
紺「…」


歩鳥「…これで…戦いを止めて…皆を守りたい」

紺「!」

歩鳥「訓練兵団の皆も…暮らす内にお世話になった街の人達とかも。皆…生きてて欲しい…」

紺「…」

歩鳥「元の世界にはもちろん戻りたいけど…この世界の人達も好きだから」エヘヘ

紺「…うん」

歩鳥「先輩も友達出来ましたよね」

紺「ああ…サシャとコニーな」

歩鳥「…あん時はどうなるかと思いましたよ。皆と出会って2ヶ月くらい前の時…」

紺「え?あぁ…」


ー回想ー




訓練兵団 階段


サシャ「コンセンパイ!今日も走りを教えてください!」

コニー「コンセンパイ師匠!」

紺「先輩師匠って意味わかんねぇよ…」

歩鳥「人気者だね先輩~」

辰野「あはは…」

紺「うー…わかったよ。じゃあ今日の昼…」

サシャ「さっすが、コンセンパイ!太っ腹!」ポンッ

紺「…!」ピクッ



あはははは…
何やってんだよ座成~

もっと上から落とさないと怪我しねーじゃん



紺「…おい」

サシャ「はい、なんでしょう!」

グイッ!


サシャ「!?」

歩鳥「!?」


紺「テメェ何、人の背中押してやがんだオラァ!?」

サシャ「え…え!?」

辰野「ちょっ…先輩!?」

コニー「ど、どうしたんだよ…」

歩鳥「押したって…今の軽く背中に手ぇ当てただけじゃん!何も危なくなかったよ!?」

サシャ「あ、あ…あの……ごめんなさい……」

紺「…!」


紺「くそ…っ!」ダッ

歩鳥「ちょっと、先輩!待ってよ!?」

静「…あらら…見てたけど、双葉ちゃんどうしちゃったの?」ザッ

歩鳥「わ、わかんない…急に怒って……」


サシャ「ううう…コンセンパイ怒らせちゃいましたぁ…」

コニー「嫌われたかな…」

辰野「だ、大丈夫だって!ちゃんとまた話してみたら…」


静「なあ…歩鳥。あの子、過去に階段で何かあったの?」

歩鳥「え?いや…何も聞いてない。そういえば先輩、あんまり過去の事とか話したがらないけど…」

静「…そう…」

静「まあ、あの子もちょっと感情的になってカッとなっちゃっただけだろうから…ちゃんと話せば大丈夫だと思うよ」



静「あと、歩鳥…余計な詮索はしなくていいからね」

歩鳥「え?」

静「過去の事は…あの子が自分から話すまで待ってな」

歩鳥「…うん」




紺「………」


紺(あの事を思い出して…カッとなっちまった。何であんな事言っちゃったんだ…あいつはただ私と仲良くしたかっただけだろうに)


紺「…はぁ………せっかく、仲良くなれそうな奴が出来たのに…」

紺(もう、私の事…怖がって近づいて来ないだろうな)


「コンセンパイ!」

紺「!」


サシャ「あ、あの…さっきはすみませんでした!お詫びにお肉を…」

コニー「おいおい、肉なんかどこから持って来るんだよ!」

紺「……はは…」

ザッ

紺「いや…私の方が悪かった。ゴメンな…」


サシャ「!ゆ、許してくれるんですか!?」

紺「許すも何も…勝手に怒った私が全部悪かったよ…もう気にすんなって」

サシャ「コンセンパイ!」

コニー「コンセンパイ!」


紺「それより…さ、約束しただろ?」ポリポリ

紺「…一緒に走ろう」


サシャ「…!はい!」

コニー「もちろん!」


ザッザッザッ!


歩鳥「うんうん…仲直り出来て良かった」

辰野「一時はどうなるかと思ったわね…」ホッ

――――――――

紺「はは…あったよな、そんなこと」

歩鳥「仲直り出来て良かったですよ」

紺「うん…あいつらには申し訳ない事したよ、本当…」

歩鳥「一緒に頑張りましょうね、先輩」

紺「うん」

歩鳥「…絶対に戦いを止めてみせますよ、私は」

紺「………なぁ、歩鳥」


歩鳥「はい?」



紺「…あんま無理しすぎんなよ……頼むから…」


歩鳥「…」


紺「…お前に何かあったら……」


歩鳥「…」


歩鳥「大丈夫ですよ、先輩。前に言ったじゃないですか」



歩鳥「私はサザンクロスでも石炭袋でも降りませんって」


紺「!」


紺「お前…まだ覚えてたのかよ、それ…」

歩鳥「忘れるわけないじゃないですか~」




歩鳥「この世界の人達をを守って…そしたら、必ず皆で元の世界に戻りましょうね!」

紺「…うん」


歩鳥「さーて、寝る前に外で頭をリフレッシュしよう」ンーッ


紺「…じゃ、おやすみ」

歩鳥「はい、おやすみなさい。また明日」ガチャッ


紺「…」



紺「…皆で…戻れるよね…」



歩鳥「…ん~っ、夜風が気持ちいいな~~」


歩鳥「……はあ……っ」ボサッ



歩鳥「…真田…タッツン…どうしてるかな……」



ザッザッザッ…


ジャン「ホトリじゃねぇか、なにしてんだ?」

歩鳥「ジャン、いや…ちょっと寝る前に頭のリフレッシュをね」

ジャン「…ま、お前でも色々不安になるわな」

歩鳥「私でもって何だよその言い方…ジャンこそなにしてんの?」

ジャン「エレンとアルミンとミカサが、エレンの巨人化の訓練するって言ってたからちょっと手伝いにな…アルミンに誘われてよ」

歩鳥「あはは、単にミカサと一緒にいたかっただけでしょ?」ケラケラ

ジャン「な、何でミカサが出てくるんだテメエ!?」

歩鳥「え?好きなんでしょ?丸分かりだよ」

ジャン「ちっ…お前は変なとこだけ勘鋭いよな」

歩鳥「いや、これはモロに皆にバレバレだと思うけど」

ジャン「うるせえな…」

ジャン「それより、サナダとタッツンは…どこまで連れてかれたんだろうな」

歩鳥「うん……そういやあんた、真田と仲良かったよね」

ジャン「ああ。お前もあいつらとずっと仲良かったんだろ?」

歩鳥「うん…そういえば、真田とはどう仲良くなったん?」

ジャン「あ?あぁ~…」


ー回想ー


訓練兵団 男子寮

ライナー「…なぁ…クリスタって可愛くないか?」

ベルトルト「えっ!?あ、あぁ…僕もそう思うよ」

アルミン「うん…クリスタは美少女だよ。あの美しい金髪で優しいし女神だし…」

エレン「アルミンがこんな熱く語るとは…」

マルコ「うん。まあでも確かに一番可愛いかもね」

コニー「クリスタは良い奴だな」

ライナー「ジャンやサナダもそう思うだろ?」

真田「え?ああ…うん。可愛いと思うよ」

真田(俺は嵐山が好きなんだけどな…)

ジャン「確かにクリスタは可愛いくて神様のようだ…だがな」


アルミン「!」

ジャン「金髪美少女よりも、やっぱり……黒髪美少女こそが至高なんだよ!!!」←ミカサを想像しながら


ライナー「ぬうっ!!」
エレン「ジャンの奴…なんて熱い目をしていやがるんだ!」


真田「その通りだ、ジャン!!」ビシイッ


ライナー「!!!」

アルミン「サナダ!!」


真田「やっぱり、金髪美少女よりも………黒髪美少女だよな!!!」←歩鳥を想像しながら


※美少女に感じるのはあくまで真田の主観です。歩鳥の見え方には個人差があります。


エレン「サナダの奴も…なんて熱い目をしていやがるんだ…っ」

マルコ「なるほど…確かに、黒髪も悪くない…」

ライナー「ふっ…そうだな。金髪も黒髪も…素晴らしいものだ」

アルミン「うん…それぞれに良さがあるんだよ」


ジャン「…サナダ、お前とは気が合いそうだぜ」

真田「ああ…」

――――――


ジャン「…………………」

ジャン(さすがにこれを話すのは恥ずかしいな…)


歩鳥「ん?黙り込んでどうしたのさ?」


ジャン「いや、まぁ…色々と気が合ったんだよ」

歩鳥「はぁ」

歩鳥「…真田もタッツンも大事な友達だから…助けてあげたい…」

ジャン「そうだよな…」

ジャン「…ところでよ、お前…真田のこと友人としか見てないのか?」

歩鳥「はあ?真田は幼なじみで友達だよ」

ジャン「…もしもの話だが…サナダの奴がお前の事を好きだったら、どう思う?」

歩鳥「!?」ブッ

歩鳥「な…っ、急に何言ってんのかね、この人は!?」


ジャン「…もしもの話だよ…どう思うんだ?」

歩鳥「いやいや、もしもも何も真田はタッツンの事が好きなんだよ?よく私とタッツンが居るとこに来るじゃん?そんでさ、タッツンは真田が好きなんだよ。つまり二人は両想いなわけ」

歩鳥「だから私ゃ、二人の邪魔をしないように…真田とタッツンが一緒に居るときは気を遣って離れて…」

ジャン「…お前は勘が鋭い奴だ」

歩鳥「えへへ、そんな誉めないでよ」

ジャン「だから本当は…気づいてんじゃねぇのか?」

歩鳥「はい?」

ジャン「本当に両想いだと思ってるならそこまで気を遣う事も無いだろ。本当はタッツンが片想いで…サナダの本心に気づいてるからそこまで気を遣ってるんじゃねぇのか?」

歩鳥「………」

歩鳥「はあ…何で急にそんな話しようと思ったわけ?」


ジャン「…なんだろうな…なんつーか…」

ジャン「お前もサナダもタッツンも……もしあの巨人達がまた攻めてくりゃ…いや、確実に来るだろう。そうすりゃ、もう二度と同じような生活が出来なくなるかも知れない…最悪、二度と会えなくなる可能性だってあるんだぞ。こう言っちゃ悪いがな」

歩鳥「…」

ジャン「もし、そうなったらよ……何も


――――――


歩鳥「さーてと…もう寝よ…」フアア



エレン「…お、ホトリ」

アルミン「まだ起きてたの?」

ミカサ「普段はすぐ寝てるのに」


歩鳥「あ、仲良し三人組。ちょっと色々考える事あってね~。巨人化の訓練は調子どう?」

アルミン「何とか巨人になりながら意識を保つ事は出来るようになってるみたいだよ」

エレン「ああ。この調子で巨人化を完璧にして…あいつらを」

ミカサ「…」

歩鳥「それなら、人類側の戦力も安心ってわけだね。で、やっぱ調査兵団に協力するの?」

エレン「いや、俺達はホトリに付くつもりだ」

歩鳥「え!マジで!?」

アルミン「僕の提案だよ…たぶん壁外側はエレンが調査兵団に協力してる可能性が高い事を考慮して攻めてくる」

アルミン「だからあえてホトリ側に付いて…向こうの裏をかくつもりだ」

歩鳥「なるほど、さすがアルミンだね!」


歩鳥「…でもさ、私に付くって言っても…私は戦いを止める気なんだよ?」

エレン「ああ、わかってるよ。本当に止めれるならそれでいいんじゃないか?」

歩鳥「へ?」

エレン「俺は確かにあの巨人達が憎いしぶっ潰したいけど…もし戦わずに終わればそのぶん、しぬ兵士も少なくなるんだ。俺だって人がしぬのは嫌だよ」

歩鳥「そっか、…そうだよね」

アルミン「それにホトリ1人じゃ心配だしね。問答無用で襲われたときの為にもエレンが居れば安心でしょ?」

歩鳥「なるほど、ボディーガードって訳だね」

ミカサ「私も」

歩鳥「そだね、エレンとミカサがボディーガードに居れば怖くないな!」

エレン「ははは」

ミカサ「ふふ」


歩鳥「そう言えば、私達4人って訓練の時よく同じ班だったね」

アルミン「ああ………やっぱ歩鳥の成績やら性格を見てそうなったんだろうね」

歩鳥「へ?」

エレン「なるほどな…よくドジするし変な事やるから一番優秀なミカサと面倒見の良いアルミンが付いてると…」

歩鳥「こ、こっちの世界でもやっぱり子供扱いなのか私は……」

ミカサ「待って、それならエレンも少し当てはまる。すぐ感情的になるし…」

エレン「おいおい、まさか俺も子供扱いされてるって言いたいのか?」

歩鳥「仲間だね♪」ポンッ

エレン「何の仲間だ!?」

アルミン「ははは…」

歩鳥「…ところでさ、あの、エレン…」

エレン「ん?」

歩鳥「ライナーやベルトルトやアニ……もし、私が止められなくて戦うことになったら…やっぱり……」

エレン「…」

アルミン「…やっぱりホトリも辛いよね」

歩鳥「うん…や、ごめん。エレンやミカサやアルミンが故郷を奪われた側だから…私は偉そうな事を言える立場じゃないよ。でも、何て言うか…その」

エレン「…はっ…」

歩鳥「な、何かねその笑いは」

エレン「それは、俺とあいつらの問題だ。お前がそんな難しく考える事はねぇよ」

歩鳥「でも…」

エレン「それに、もし失敗したら…なんてお前らしくねぇよ。お前は馬鹿みたいに気の向くまま明るくしてればいいんだ」

歩鳥「そっか…ありがと」


エレン「俺は基本、平和ボケしたような発言は嫌いなんだが…ホトリの発言なら何か許せるよ」

ミカサ「なんか色々と幼いからだと思う」

アルミン「はは、そうかもね」

歩鳥「ちょ…、子供扱いとは失礼な奴等め!」

エレン「俺は誉めたつもりだったんだけどな」

アルミン「でも…ホトリがいると何か雰囲気が明るくなるよね」

歩鳥「ん?そう?」

ミカサ「うん…話すの苦手な私も、ホトリ相手なら話しやすい」

エレン「だから、まあ…お前はあんまり重苦しく悩まず、やりたいことやってりゃいいんだ」

エレン「お前が明るくやってると…俺達もみんな気が楽なんだ」

ミカサ「うん」

アルミン「そうだね」


歩鳥「…ふふ、そう言われちゃ、全力で頑張らなきゃあかんね」


歩鳥「元気出たよ三人とも、ありがとう!!一緒に頑張るぞ!!」

エレン「おう!」

アルミン「皆で生きて…全部終わらせよう」

ミカサ「うん」

歩鳥「三人とも大好きだ!終わったら私の助手にしてやろう!!」

エレン・ミカサ・アルミン「いや、それは遠慮願う」

歩鳥「おいっ!!」ビシイッ

ハハハハハ…




―――――――





「…姉ちゃん…なんで、あんな人間達をこの世界に呼んだんだ…」

「…もう…終わりにしたかったから…」

「なんでだ!俺は…俺はまだ諦めたくない、姉ちゃんを幸せにしてあげたいんだ…!」

「もう、いいから…もう終わりにしよう」


「…俺は認めないからな、姉ちゃん…」

「…」



「嵐山歩鳥……俺達のところまで来てみろ。俺を止めたけりゃな…」


「…アリオ…」




――――――


パチパチパチ…


真田「…」

辰野「…」


ライナー「…」

ベルトルト「…」

アニ「…」



真田「なあ…ライナー…ベルトルト」

ライナー「なんだ?」

真田「本当に…やるのかよ?壁の中には、ずっと一緒にいた仲間がいるんだぞ…」

辰野「やっぱり……そんなのを見るなんて…嫌だよ、私達は…」

アニ「…」


ベルトルト「でも…君たちに僕らを止めることは出来ないよ。それに、君たちと同じ世界の人間は助ける…この世界の人間ではないから」

真田「そういう問題じゃないんだよ!」

辰野「そうよ。あなた達にも同情するし…しばらく一緒にいたから、三人も我慢してやる気なのはわかるよ」


辰野「でも…それでも……」


ライナー「………」


ライナー「本当に…すまん…」


真田「…すまんじゃないよ……」

アニ「でも、もう…このまま放っておけばいずれ、壁の中の人間は巨人になる…そして、壁の中にいる…長い時間で無知性化してしまった大型巨人も目覚め、壁が崩壊するんだ。巨人になりそこねた人間達も巨人に喰われる。どちらにしろ地獄が待ってるんだよ…」


辰野「じゃあ…もう、どうする事も出来ないっていうの?」

ベルトルト「だから…せめて、一緒にいた…友達だった僕らの手で…」

真田「…世界はどうしようもない状況で、お前らが切羽詰まるのも仕方ないと思う……けど」

真田「何て言えばいいか、わからないけど………みんな、何か…大事なものを見失ってるんじゃないか…?」



ライナー「……俺だって…あいつらとの平和な毎日をずっと送れるなら……そうしたいさ」


ライナー「だが、もう…駄目なんだ。時間がない…地獄しか待ってない。もうどうしようも無いんだ」


ライナー「…」グイッ


真田「ライナー…」

真田「…泣くなよ…」



ベルトルト「……僕だって嫌だ………」

ベルトルト「…僕は、最低だ……少しホッとしてるんだ………自分の本音を吐ける相手が…サナダやタツノがいて…」グスッ

アニ「…ごめんなさい…本当に、ごめんなさい…」ボロボロ


真田「…」


辰野「…」



真田「タッツン……俺達は、どうしたらいいんだろうな…」

辰野「…この三人も、壁の中にいる皆も見捨てたくない…」


真田「…はあ…」



四足巨人「…ご飯を持って来ました」ザッザッ


辰野「!」

真田「あ、四足の喋る巨人…」


ライナー「!お前ら、泣くな…涙ふけ」

ベルトルト「うん…」

アニ「…」グイッ



四足巨人「…三人とも…泣いていましたね。大丈夫ですか?」

ライナー「あ、いや…っ」

四足巨人「いいんです。今は作戦中ではありませんから」


辰野「…そういえば、あなたもライナー達と同じように…元々壁の中の人だったの?」


四足巨人「いえ、私は壁ができる前から居ます…人工生命体フェアリーの一種です。戦闘向きではなく偵察用に作られた人工生命体です」



真田「え!?そうだったの!?」

四足巨人「まあ…私以外にも生き残りの純粋な人工生命体は居ますが、その中で戦う力を持っているのは戦士長だけです。残りは私のように偵察用だったり他の用途で生み出されたフェアリーだったり…」

四足巨人「もう戦士長以外で戦う力を持っているのは…巨人薬の力で昔から受け継がれてきた鎧、超大型、女型だけなのです」

真田「…」

四足巨人「…私は、ジーク戦士長につかえて100年以上は経っていますね…」


真田「…そうか…あんたも人工生命体だったのか。だから喋れるのか…」

ライナー「いや、それは関係あるのか知らんが」

四足巨人「…これからどうなるのかわかりません…とりあえず、同じ仲間として暮らしていたあなた達五人で…話ながらご飯でも食べてください。私は離れたところにいますからお気になさらず」

辰野「あんたって意外と紳士よね」

四足巨人「ええ…モテないですけどね。タッツンさんにも最初怖がられましたし」

辰野「ちょっ、変な冗談言わないでよ。つーか、タッツンさんってなんじゃい」

アニ「ふふ…」

辰野「あ、笑った」

アニ「あ、ごめ…」

辰野「いや、謝らなくていいから」

四足巨人「では…私は失礼します」

真田「…まあ…ちょっと落ち着いて。飯でも食うか」

ライナー「そうだな…」

ベルトルト「うん」


――――――――


―――――翌朝


「サナダ…起きて、サナダ…」


真田「う…あ、あらし…やま…?」


「サナダ…」



真田「嵐山あああ!!」ガバッ


ベルトルト「うわあ!?」ビクッ

ライナー「おい、そいつはベルトルトだ」

真田「…はっ!?」


真田「すまん…寝ぼけてたみたいだ…」

ベルトルト「いや…別いいけど…ビックリした」

ライナー「タッツンはどうだ?」


辰野「お…きる、から…もうすぐ、おきる、から……」

アニ「…なかなか起きない」

真田「そういや、低血圧とか聞いたことあるな…タッツン」



辰野「…はあ……おはよ…」フラッ

アニ「おはよ」

ライナー「おう」

辰野「…今のこの世界とこの状況…夢じゃなかったか…夢なら覚めて欲しかった…」

ベルトルト「…うん、気持ち分かるよ」

ライナー「…でな…実は二人に報告がある」

真田「え?」

ライナー「ついに明日…壁に攻撃を開始するそうだ」

真田「え!?」

辰野「…やっぱり、止めないんだ……どうしても止められないの…?」


ライナー「…ああ…もう、無理だ」



――――――


そして…翌日





四足巨人「…申し訳ありませんが…私はあなた達二人の側にいるよう命じられました」


辰野「…真田くん…どうしよう…」


真田「…」

真田「このまま、ここにじっとしてるなんて……」







ザッ…ザッ ザッ



ジーク「さて…準備はいいかい?君たち」


ライナー「はい」

ベルトルト「いつでも行けます」

ジーク「アニちゃんも大丈夫?」

アニ「大丈夫です」


ジーク「…さあ…これで最後にしよう…」





―――


ウォール・ローゼ 壁上



ミケ「…エルヴィン」ピクッ


エルヴィン「どうした?」

ミケ「…巨人のにおいが多数接近してくる」

ハンジ「なんだって!?」

エルヴィン「…前にマリアが破られた時も、同じ感じだったと聞く…と、いうことは…」

リヴァイ「…ついに来るな」

エルヴィン「ああ。各員、急いで情報を伝達!迎え撃つ準備に入れ!!」


バシュウウウ…





―――――――


トラウテ「隊長!巨人がもうすぐ来る可能性が高いとの事です!」ザッ


ケニー「ご苦労さん……だとよ、もうすぐ来るみたいだぜ?」


歩鳥「ん…」ザッ


静「ついに来るか…大丈夫か?歩鳥」

歩鳥「大丈夫だよ、準備は万全。先輩も大丈夫ですか?」

紺「ああ。無茶すんなよ、歩鳥」

歩鳥「…で、私と来るメンバーは…」


ヒストリア「…私も行くよ、ホトリ」

ユミル「お前らだけじゃ心配だしな」

サシャ「私達だって行きますよ!」

コニー「あいつらとはもう一度話がしたい…」

ジャン「俺も…同期として知らんぷりは出来ねぇな」

マルコ「僕もだ」


エレン「…ミカサ…アルミン…行けるな?」

ミカサ「ええ」

アルミン「大丈夫…心の準備も出来た」

歩鳥「はは、結局みんなで行くことになったね」

ケニー「いいじゃねぇか」

静「仲間は多い方が心強い」




静「さ…戦いが本格的に始まっちまう前に行こう」

紺「戦いを止めるのが目的だもんな」


歩鳥「うん!…あ、そうだアルミン」ガサゴソ

アルミン「ん、なに?」

歩鳥「これ、アルミンに渡しておくよ」コトッ

アルミン「これは…」

歩鳥「『ヨロイ』と『サイキョウノキョジン』の薬」

アルミン「な、なんで僕に…」

歩鳥「私が持ってるよりアルミンの方が安心できるからね……判断力も優れた勘もある。信頼してるから一番いい判断をしてくれそうな君に託すんだ」

歩鳥「いざって時は……任せたよ」


アルミン「…わかった。任せてくれ」ギュッ



―――――――





ミケ「…来た…前方より、毛で覆われた巨人が接近!」

ハンジ「報告で聞いたタイプの巨人か」

リヴァイ「超大型や鎧も来るだろうな…」

ピクシス「いよいよじゃな…」

ハンネス(エレン、ミカサ、アルミン…あいつらのいる壁内を…めちゃくちゃにされてたまるか)

エルヴィン「行くぞ!!心臓を捧げよ!!!」





ついに攻めてきたジーク、ライナー、ベルトルト、アニの戦士達…

迎え撃つは、調査兵団と、駐屯兵団・憲兵団精鋭達の連合軍



人類の命運を左右する戦いが今…幕を開ける。



そして





この大きな戦いに…

嵐山歩鳥が乱入する





歩鳥「いくぞ、我ら嵐山探偵兵団!!!」

紺「なに勝手な名前つけてんだお前は!?」


ウォール・ローゼ トロスト区門


ゴオオオオオオ………



獣の巨人「…」





ハンジ「獣の巨人…ずっと離れた位置からこっちを見て動かないよ」


リヴァイ「なにしてんだありゃ…やる気ねぇのか?」


ミケ「他の無知性巨人も定の位置から動く気配は無いな」

リヴァイ「どうする?こっちもつったって待って気きか?」

エルヴィン「もう少し待て」

エルヴィン(こちらの様子をうかがっているのか?鎧の巨人や超大型巨人の姿も見えない)

エルヴィン「…巨人の人間体が隠れながら接近している可能性もある。警戒を続けろ」

「はっ!!」




獣の巨人「…」

ジーク(…見た感じエレンの姿は見えないな…どこかに隠れているのか?)

ジーク(まあいい…確認は済んだ。そろそろ動くか)



エルヴィン「まず、我々が何よりも阻止しなければならないのは壁扉の破壊だ…超大型巨人を接近させてはならない」



ミケ「!木の陰から人影が現れた!!」

ハンジ「!!」


ライナー「…」ダダッ

ガリッ



カアアアッ!!!



鎧の巨人「…」ズシイイイッ


エルヴィン「鎧の巨人!!」

リヴァイ「人間が巨人になるってのはマジだったみたいだな…迎え撃つか?」

エルヴィン「ああ…このまま奴に壁を登り飛び越えられでもしたらいけない…一匹たりとも侵入させるな!」

ハンジ「了解!!」

リヴァイ「行くぞ、お前ら」バッ


リヴァイ班「はい!!」


鎧の巨人「…」ズシンッズシンッズシンッ

ライナー(…俺の巨人の鎧の隙間にはベルトルトが隠れている。どうせ奴等の刃や砲弾は俺には通じない。攻撃を防ぎながら接近し扉の前でベルトルトが巨人化すれば…誰にも止められんだろう)


ヒュンッ…

ライナー「!」


カランッ…

エルヴィン「む?待て、総員動くな!何かが落ちてきた!!」



リヴァイ「なんだ…?」

エルヴィン「奴等の罠かも知れん…いったん下がれ!」


ハンジ「でも…巨人側も止まったみたいだよ」

エルヴィン「なに?」


ライナー(今…目の前に何か落ちてきた?なんだ?人類側の新兵器か?いったん止まって様子を…)


ジーク(ん~?なんか落ちてきたなあ……)



~♪~~♪~~♪


エルヴィン「!?落ちてきたものから何か音楽のようなものがが聞こえるぞ!?」


リヴァイの台詞訂正

×リヴァイ「どうする?こっちもつったって待って気きか?」

○リヴァイ「どうする?こっちも突っ立って待っている気か?」

>>298の歩鳥の台詞訂正


×皆と出会って2ヶ月前~

○今から2ヶ月ちょっと前~


『七色の 黄昏降りてきて~』



ハンジ「あの目の前に落ちてきたものから…歌が聞こえる!?」


リヴァイ「あれも…巨人の力だってのか?」



???「その通り…」ザッ


???「これこそが…『平和』という名の巨人の力…」


エルヴィン「人の声?」バッ

ハンジ「誰だ!?」


???「私は…この戦いを止めるため現れた…平和の探偵……」



リヴァイ「はあ?」



歩鳥「嵐山歩鳥!!!」


ライナー(鎧の巨人)「なんでお前がいるんだあ!?」



静「あいつ…なんか訳のわからない事抜かしてやがんな~~。何をしでかす気やら」

アルミン「え?シズカさんもホトリの計画の詳細知らないんですか?」

静「うん?知らないよ~?」

ヒストリア「え…シズカさんも何らか協力してると勝手に思ってた…」

ジャン「つまりホトリ一人で全て考えた作戦って訳か…なんか不安になってきた

マルコ「僕もだ…」

サシャ「え?もしかしてみんなホトリの作戦の内容知らなかったんですか?私も知らなかったですけど」

コニー「作戦内容知らないのについてきた奴等もついてきた奴等だな。俺も知らないけど」

紺「みんな歩鳥が移っちまったかな…」

エレン「つーか今、鎧の巨人の中からライナーの声聞こえたぞ」


『~~~♪』


サシャ「…てか、この歌の声、コンセンパイじゃないですか?」

紺「うん…そうだよ……私が歌った歌を歩鳥が携帯に録音した奴だ」

コニー「ケータイ?ロクオン?」

紺「つーか、あいつ…私に歌わせて…その歌を何に使うかと思いきや、自分の登場曲かよ!!」


ジーク(ありゃ、タッチャンの仲間じゃないか…危ないなあ、あんなとこまで来て…何しに来たんだ?)


ライナー(まあ、いい…気にせず突撃だ!!)


リヴァイ「来るか!?」ジャキッ


歩鳥「ストーップ!!刈り上げくんと鎧の巨人及びライナーストーップ!!!」ダダダッ


鎧の巨人「!?」ビクッ


リヴァイ「あっぶね!?近づくなアホタレ!!」ビクッ


歩鳥「いいかい?戦う前にまずは…話し合いでも出来ないのかね?人間は知能と言葉が発達した生き物…力で争うだけなら馬鹿でも獣でも出来る」

歩鳥「人間として生まれたなら、まずは言葉を使うべきだよ!!」


エルヴィン「で、君は何だ?危ないから早く下がりなさい」

歩鳥「くう…っ、いいこと言ったつもりなのに華麗にスルー…」

静「歩~~鳥~~~!私は、感動~~したよ~~~!!マ~ジで~~!!」



歩鳥「わざとらしいフォローはいらないよ!!」

リヴァイ「拗ねんな、さっさと用件を言え」

『~~~♪』


ハンジ「…あの音が出てる変なものを投げ入れたのも君か?」

歩鳥「そうです。私の携帯です。ぶん投げたのに壊れてないのは突っ込まないでください」

ペトラ「ケータイ?」

オルオ「なんだそりゃ」

リヴァイ「それより…何しに来たんだ?遊びに来ただけなら叩いて家まで帰すが」

歩鳥「ですから…戦いを止めに来たんです」

ザッザッ…

ピクシス「ほう…戦いを止めにとな?何故じゃ?」

歩鳥「人が死ぬのが嫌だからです。それ以上の理由もそれ以下の理由もありません」

リヴァイ「だが…向こうが攻めてくるんだ。だから仕方ないだろう」

歩鳥「いや、だからこそ向こうにも戦いを止めさせるんですよ。迎え撃つんじゃなくて」

リヴァイ「よくそんなおめでたい事が言えるな」


歩鳥「おめでたくて結構です。私は…みんなの平和を願っているんです。自分の願いを求め…その為に行動することが悪いことですか?」

リヴァイ「……ま、そうだな、そりゃお前の自由だ。こっちも言い方が悪かった」

歩鳥「…聞いてください…」スー

ハンジ「ん?」



歩鳥「ダウンタウンへ繰りだっそーうっ!♪ダウンタウンへ繰りだっそーうっ!♪」

ペトラ「何か歌い出したした!?」ビクッ

モブリット「しかも音痴だ…」

ハンジ「変わった子が居たもんだね」


リヴァイ「おい、本当に危ないから下がれ。戦いを止めたい気持ちは分かるが、そんなことは難し…」

歩鳥「いや、今止まってるじゃん」

リヴァイ「なに?」


エルヴィン「…」


獣の巨人「…」


リヴァイ「………」

リヴァイ「そうだな」

歩鳥「そうだよ」



ペトラ「ていうか君…さっきから兵士長にタメ口……」

歩鳥「え?…兵士長!?あの噂のリヴァイ兵士長!?」

リヴァイ「…ああ」

歩鳥「へ~、すごいね君!そんな年で兵士ちょ…」

ハンジ「いや、30代だから」

歩鳥「へ?」

ハンジ「リヴァイ30代だから」

歩鳥「………」

リヴァイ「………」


歩鳥(タメくらいかと思ってた!!!)


歩鳥「あ、は、ははは…重ね重ね失礼致しまして本当にすみません………………ごめんなさい」

リヴァイ「…気にするな」


オルオ「つーか本当に何なんだ?お前は」



エルヴィン(…あの少女が現れてから戦局が止まった……あの謎の音の出る物体…あの子は何者だ?)


エルヴィン「きみ…少し話がある。こっちへ来たまえ」

ハンジ「君、エルヴィン団長がお呼びだよ」

歩鳥「え!団長!?」

歩鳥(むふふ…計画通りだね。団長に興味を持ってもらい…そしてかっこよく団長の隣に行き、かっこよく団長と交渉!!)

歩鳥「はいはい、今いきまーす!」バシュッ

リヴァイ「お前、立体機動装置まで持って来てたのか」


ギュイイイッ

歩鳥(このままかっこよく団長の隣に着地だよ!)

ギュイイ…

歩鳥「…ん?」

ハンジ「あれ?」



アルミン「…あ」


静「待て歩鳥!その方向は危ない!!」

エルヴィン「ん?」


歩鳥(やば…飛びかたミスった!!)



アルミン「マズイ!あの方向……団長にぶつかる!!」

エレン「なにい!?」

リヴァイ「ば…っ!!!」


歩鳥「団長!!避けてえええ!!!」ギュイイイッ

エルヴィン「え?」



ゴチイイイイインッ




歩鳥「い…たたた…っ」ズキズキ


歩鳥「…ん?」



エルヴィン「」チーン


歩鳥「!!!!!!」



ミケ「あ…あ…っ」

ハンジ「うわあ…っ」


ペトラ「だ…団…長…」


エルヴィン「」チーン


歩鳥「はわわわわわ…」ブルブル


リヴァイ「…大丈夫だ、頭突きで気絶しているだけだ」


ハンジ「いや、まずいよ。司令塔が動けなくなっちゃったじゃないか…」

ミケ「なんてこった…」

リヴァイ「はあ…」


歩鳥「う…うう…」



歩鳥「申し訳ありません………」


オルオ「申し訳ありませんで済むかかあああ!?」

ペトラ「もう終わりだああ!!」



人類の明日はどっちだ!?



静「…まさか…歩鳥が……噂のエルヴィン団長に『頭脳』で勝ってしまうとは…」

アルミン「いきなり何言ってんですか、シズカさん。上手いこと言ってるつもりですか」

ヒストリア「しかも頭脳じゃなく頭突きだし」

ジャン「まさか…あれがホトリの作戦じゃねぇよな?」

エレン「あれが作戦なら一発殴ってやるよ」

ミカサ「いや…あの子の反応からしてドジが発動しただけだと思う」

紺「こんな状況で普段通り雑談してるお前らも大概だよ」

静「仕方ない…私ちょっと行ってくる。皆はまだ隠れてていいよ~」

ユミル「頼むぞ」





オルオ「…どう責任をとる気だ」

歩鳥「申し訳ありません…」

ペトラ「申し訳ありませんじゃないでしょ!?」

歩鳥「うう…責任を持って…」


歩鳥「私が代わりに団長を…」グスッ

ハンジ「いや、それだけはやめてくれ、本当に。マジで」



リヴァイ「まあ、ピクシスの爺さんに指揮を任せるのが無難だろう」

ハンジ「そうだね」

ピクシス「うむ、ワシの出番か」

ミケ「誰か来たぞ」

リヴァイ「今度はなんだ?」


静「すみませ~ん!この子が大変な事をやらかしてしまい…」タッタッタ

歩鳥「静ねーちゃん、ごめんなさい…」グスッ

静「わ~かったから、気を取り直して、はい」


オルオ「知り合いかよ!」

ペトラ「来る前に止めて欲しいものだわ…」



ジーク(なに突っ立ってんだよライナー…さっさと行け)

獣の巨人「ガアアアアア!!!」バアンッ


リヴァイ「!!」

鎧の巨人「!!」ビクッ


ライナー(しまった…任務を続け無ければ)


鎧の巨人「…」ズシンッズシンッズシンッ


ハンジ「また来たぞ!」

リヴァイ「俺がやる」ザッ


静「あの~~~…さっきからずっと思ってたんですけど」

静「超大型巨人になるベルトルトくん…鎧の巨人のヨロイの隙間に居るんじゃないですか~~?」

鎧の巨人「!?」ビクッ

リヴァイ「なんだと?」

静「例えば…誰からも狙われないような…あそこの部分とか」

ピクシス「なるほど、有り得るのう」

ハンジ「よし、全員で鎧の巨人のヨロイの隙間らしき部分を狙え。超大型巨人になる人間が隠れているかも知れない」

ベルトルト(見破られた…)ダラダラ



歩鳥「駄目だ!まだ戦いは許さないよ!」バッ

リヴァイ「うお!?」

静「よし、復活したな歩鳥」

オルオ「いや、止めてくださいよ頼むから」


静「…そこの座ってるリーダーのお猿~~~!!」

獣の巨人「!」

静「鎧の巨人の動きがまた止まっちゃったって事は…あんたの作戦は私が見破っちゃったって事でいいんだよね~!?」

獣の巨人「…」


静「そっちも作戦見破られたらまた態勢立て直しなんかも面倒でしょ~~!?だから一旦休戦して…話し合いなんて無理かな~~~!?」


ジーク(ふん…作戦なら見破られても大丈夫なように立ててあるよ)


静(まあ、作戦なんか見破られてもいいように何重にも練ってるだろうが…)

静「よし、後はあんたの出番だ歩鳥」ポンッ

歩鳥「へ!?」


獣の巨人「…」


歩鳥「そうだよー!中のおじさん出ておいでよ~!」ニコニコ

ジーク(…)



ジーク(なに考えてんかね、あの子は…罠か?)



歩鳥「ラブ&ピース!メイド&ピース!」

リヴァイ「お前は交渉をしようとしてるのか喧嘩売ってるのかどっちだ」


ジーク(…いや…ありゃ罠や裏なんか無いアホ面だ)


ジーク(…あんな平和バカな人間も…いるんだな…)


ジーク(…)



ジーク(裏の無い無邪気な表情…あの女みたいだ)

ジーク(…)



獣の巨人「…」ズシッ


静「!動いた!?」

歩鳥「お!?」

ハンジ「怒ったんじゃないよね?」


獣の巨人「いいよ…君の話だけでも聞かせて貰おうかな」



ハンジ「喋った!?」

ミケ「それもビックリだが、話し合いに答えたのもビックリだ!!」

リヴァイ「…ほう…」

歩鳥「よっしゃ!」


静(やはりこの子は…人をひきつける何かがあるな…)




ライナー(何だって…!?)


獣の巨人「悪いな、ライナー…ちょっと待っててね」

鎧の巨人「…」

ハンジ「…本当に信じていいのか?」


獣の巨人「…話を聞くとは言ったが攻撃を止めるとは言ってないよ。どうなるかは…その子次第だ」

歩鳥「!!」


オルオ「おいおい、マジかよ…」

ペトラ「君…責任重大よ…」

歩鳥「あはは…いざその場になるとプレッシャーがヤバいね…」ダラダラ

静「始めに戦いを止めさせるといい始めたのはお前だ、歩鳥」

獣の巨人「あと…条件がある。そこの女の子1人だけがこっちまで来てもらおうか…心配しなくても襲わないから」

獣の巨人「あと、ライナーは鎧の巨人のまま…俺も巨人体は出したままで居させてもらう。話してる隙を狙われたりされたら敵わないんでね」

ピクシス「わかった。いいじゃろう」


リヴァイ「…ここまで話は進んじまった。やるしかねぇ、いいな?」

歩鳥「りょ、了解であります!」

静(…エルヴィン団長を気絶させたのは単なるドジだろうが…結果的にそのお陰でここまで出来たのかも知れんな…)





ザッザッザッ…


巨人「…」


歩鳥「うひゃあ…周り巨人ばっかり…動かないけど」


獣の巨人「…」バシュウウウ…

ジーク「心配しなくても巨人達は俺が命令するまで動かないよ」ザッ



歩鳥「あ、猿のうなじから出てきた」

ジーク「…巨人体は出したままで居させてもらうよ」

歩鳥「心配しなくても私は罠とか仕掛けてないよ」

ジーク「君はそうでも他は分からんからね…」



ライナー(まさか…戦士長が話し合いに応えるなんて…)

ベルトルト(どうなるんだ…?)



エレン「マジかよ…あいつ話し合いまで持っていっちまったぞ」


ヒストリア「ホトリやるね…」

紺「こっからが心配だけどな」






ジーク「…で…君は何故そこまでして戦いを止めさせたいんだい?」

歩鳥「誰にも死んでほしく無いからです!」

ジーク(汚れも偽りもない真っ直ぐな眼だ…本当にそう思っているんだな)

ジーク「でもね…君のいた世界だって…どこかで戦争や犯罪が起きて…理不尽に人が死に不幸になっている人だってたくさんいるでしょ?」

歩鳥「そんなことはわかってます……人間1人にできることなんて限られてるし…人間1人を救うことだって凄く難しい事で…今、私がやってる事も…ぶっちゃけ上手くいけたら奇跡だと思ってます」

ジーク「…」

歩鳥「でも…なんていうか…その…」

歩鳥「全ての人が幸せになるなんてのは無理なのはわかってます…だから、せめて…自分の周りや…手の届く範囲だけでも幸せになって欲しいというか…」


歩鳥「…話、脱線しちゃってますかね?えへへ…」

ジーク「いや…君がどういう人間なのか分かっ

ジークの台詞修正

○ジーク「いや…君がどういう人間なのか分かったよ」


歩鳥「てか…私こそ聞きたい事あるんですけど…真田とタッツンは無事なんですか?」

ジーク「ああ、大丈夫だよ。ちゃんと飯もあるし」

歩鳥「そっか…良かったあ~…っ」ホーッ

ジーク「…くくく…」

歩鳥「な、なんですかその笑みは」

ジーク「いや…」

ジーク「君は…本当に素直に感情を表すんだな」

歩鳥「はあ…それはどういう意味の発言なのか」

ジーク「誉めてるよ」

歩鳥「ありがとーございます」


ジーク「ま…君が本気なのはわかったが…こちらとしても…もう引き下がれないところまで来てるんだ…」

歩鳥「むう…私だってせっかくここまで来たんだから引き下がれないっすよ」

ジーク「ふふ」

歩鳥「まあ…ちょっとお茶でも飲みながら話しましょう」ガサゴソ

ジーク「お茶なんて持って来てたのかい…」




―――――――


真田「…なあ…あんた、頼みがあるんだ…俺達を、ジークやライナー達の居る場所まで連れていってくれ」

四足巨人「しかし…戦場ですよ。危険です」


辰野「やっぱり…自分達だけ安全な場所にいるのは…」


真田「もう一度、ジークに交渉してみる…攻撃を止めてくれないか」

四足巨人「…」


辰野「…ダメかな…?お願いだから…!」


四足巨人「わかりました。いいでしょう…ただし、何かあっても私は責任取れませんよ」

辰野「ありがとう!」

真田「あんた結構いいやつだな!」

四足巨人「…まあ、勝手に脱走されるよりはマシですから」





ズシッズシッズシッ…



四足巨人「見えてきました」


真田「本当だ…ライナーの巨人やジークの巨人がいる…」

辰野「あれ?なんかみんな止まってない?」

真田「確かに…何で?」

四足巨人「む、獣の巨人の足元にジーク戦士長とタツノさんの友人が…」

辰野「え?」





歩鳥「お茶の味はいかがですかな?」

ジーク「…うん、お茶だね」ゴクッ



真田・辰野(え、これどんな状況!!?)



その頃…壁の上



駐屯兵「ん?四足歩行の巨人が来たぞ」

駐屯兵「本当だ…人が二人乗ってる」

憲兵「巨人達の仲間か?」

憲兵「…警戒しとおけ」



―――


歩鳥「そういえば、オッサンは何でこの無知性巨人達に命令出したり出来るの?」ゴクッ

ジーク「それが俺の生まれ持つもう1つの能力…自意識を持たない人工生命体を操る事が出来るんだよ。限度はあるけどね」

歩鳥「ほへー」


ジーク「………この世界にも人間にも未来はない…全てを一からやり直す…その必要があると、俺は思うんだ」

歩鳥「…私はやっぱり…そんなの納得いかないよ」

ジーク「…そうかい…」


ダッダッタ…

ジーク「!」


辰野「ちょっと歩鳥!そんなとこで何してんの!?」

真田「なんでジークと話してんだ!?」


歩鳥「あ!タッツン!!真田!!」

ジーク「…おいおい…連れてきちゃったの?」

四足巨人「すみません…」


リヴァイ「おい、何か二人ほど四足歩行巨人と共に来たようだが」

静「あ、あの二人は歩鳥のお友達です」

ハンジ「へえ…」


エルヴィン「…う…」


ペトラ「あ、団長!」

エルヴィン「なんだ?何が起きている?」

リヴァイ「ああ。お前が寝てた理由から説明してやろう…」


ヒュンッ ヒュンッ


リヴァイ「…ん?」

ミケ「今、壁上から兵士が三人ほど降りていったぞ」

リヴァイ「爺さん…」

ピクシス「いや、ワシは何も命令しておらんぞ!?」

静(…ん?まさか…)


静「まずい!早くさっきの兵士達止めてください!」


歩鳥「…でさー…まあ、和平交渉みたいな感じかな?」

辰野「あんた…勝手で無茶苦茶な事やってたのね」

真田「どんな状況でも相変わらずだな」

歩鳥「せっかくの再会なのに普段のノリの台詞かよ!!」

辰野「そりゃあんたも普段の歩鳥だからよ」

ジーク「…ま、今は歩鳥ちゃんと話してるんだ…二人は下がっ…」


四足巨人「ジーク戦士長!」

ジーク「!」


パアンッ!パアンッ!


ジーク「な!?」

辰野「きゃっ!?」

真田「うえ!?」

歩鳥「だ、誰だ発砲したのは!?」



駐屯兵「動くな…全てわかったぞ」ガチャ

憲兵「そこのホトリとかいう女…巨人の仲間だな?そして自作自演していたのだろ?」

歩鳥「はあ!?」

ジーク「おいおい…どういうこった?」


駐屯兵「そこの二人が四足歩行巨人と共に来て…そこのホトリと親しげに喋って…巨人の仲間なんだろう」

辰野「いや、え!?」

真田「ちょっと待って…」


静「待ってください!その子達は巨人の仲間じゃない!」

駐屯兵「ならば、その証拠を見せろ!」

歩鳥「う…っ、証拠って…」

憲兵「巨人なんて血も涙もない人間を襲うだけの奴等だ!信用できるか!」

歩鳥「待って…!」

真田「…確かにこいつらは悪い事したよ!でもこいつらの言い分だって聞いてもいいだろ!?話もせずに一方的に…」

駐屯兵「そいつら巨人は話もせずに一方的に襲ってきた!」

辰野「だからって、私達まで巨人の仲間なんて決め付ける理由にはならないし…!」

エルヴィン「…向こうとの和平交渉はピクシス司令からも許可をもらっている…焦らずとも様子を見て決めれば良いだろう」

駐屯兵「俺は故郷のシガンシナを巨人に滅茶苦茶にされたんだ!和平などする気はない!」

歩鳥「………っ」

辰野「ど、どうするのよ…」

真田「向こうは巨人への敵意や憎しみで一向に話を聞く気がない……でもあんなこと言われちゃ責めれねぇよ…」

歩鳥「…」

歩鳥「お、落ち着いて!交渉に失敗したら私に何してもいいから、今は時間をちょうだい!」


憲兵「ふざけるな、敵の親玉は目の前だ!撃て!」

ジーク「!」

ピクシス「待て!勝手な行動を取るな!」

リヴァイ「お前ら、やめろ!銃を下ろせ!」

駐屯兵「俺達の故郷を返せよ!!」ガチャッ


リヴァイ「ぐっ!」ダダッ

辰野「きゃあああ!?」ガクッ

真田「くそ、伏せろタッツン!!」


歩鳥「撃つなあああ!!」ダッ



パアンッ!パアンッ!





辰野「…え……?」パチッ


真田「……あ………」ブルブル


リヴァイ「…ちっ…!!」


ピクシス「馬鹿どもが…っ」



辰野「…え…嘘…」





静「歩鳥いいいいい!!!」





歩鳥「…」



辰野「歩鳥!!!」ダダッ


真田「歩鳥が俺を…庇って…撃たれた……」ガクッ



辰野「ちょっと!なに黙ってんの!?目え覚ましなさいよ!?」


歩鳥「…」


静「意識が無いのは撃たれて倒れた時に頭を打ったんだ。撃たれたのは足…応急処置すればまだ助かるはず……」

辰野「でも…血が……」


静「…くそ…!」


真田「てめえら!何で撃った!!何で撃ったあ!!」ガシッ

憲兵「うっ!?」

駐屯兵「あ…あれ、巨人じゃ……ないのか?」ブルブル

駐屯兵「俺、撃ったの…普通の女の子だったのか…?」ガクッ

真田「…くっ、今更後悔したって遅いんだよ!!」

憲兵「…」ガクッ



アニ「…」ザッザッ


真田「!」

辰野「アニ…」



駐屯兵「…」

憲兵「…」

リヴァイ「…お前達はもう休んでろ…」ザッ

エルヴィン「…」



紺「おい!歩鳥いいい!!!」ダダッ

ヒストリア「な、なんで…!」

エレン「見てられねえ!行くぞ!」



ジーク「……残念ながら…和平交渉は途中で決裂だな」ザッ


辰野「!!」

静「待って!まだ歩鳥が目覚めるまで…」


ジーク「…もういいよ。気分悪くなった」


獣の巨人「アアアアアア!!!」ズシンッ


ジーク(いつもそうだ…優しい人間ほど、理不尽な負の感情に巻き込まれ…真っ先に傷ついちまうんだ。俺みたいなクズはいつまでも生きてんのによ…)


ライナー(…ホトリ… まさか、お前が撃たれるなんて…)

ライナー(…戦士長はやる気だ。俺も戦いを再開せねば)


鎧の巨人「…」ズシンッ


エルヴィン「…動き出したか…」

リヴァイ「くそ…もうどうしようもねえ、やるぞ」



獣の巨人「アニちゃんは…そこのホトリちゃんとお友達を見張っておいて」

アニ「了解」

静「くそ…歩鳥は…本気で、戦いを止めようとしていたのに…」

歩鳥「…」



アニ「…」


辰野「…ごめん…ごめんね、歩鳥…」


辰野「私が…ここに来なければ…変な疑いを持たれず…撃たれずに済んだかもしれないのに…」

真田「俺だ…最初にここに来たいと言ったのは俺だ。俺が悪いんだ…」

静「自分を責めるんじゃない!二人とも悪くない!」

四足巨人「…」

アニ「…」


辰野「うう…」グスッ

真田「…アニ…」

アニ「…なに?」

真田「本当に戦いを続ける気かよ?」

アニ「もうどうにもならないから…仕方ないじゃない」

辰野「仕方ない?歩鳥の本気で戦いを止めようとしてた気持ちを無視して…仕方ないって理由で戦いを続けるの?」

静「…撃たれた歩鳥を見ていた君の表情…とても悲しそうに見えたけどね」

アニ「…」

真田「…アニ…それでも戦い続ける気なら…」

真田「…俺と勝負しろ」

アニ「…は?」

真田「俺と勝負して…俺が勝ったら…」

真田「俺達に協力しろ!そして…一緒に戦いを止めてくれ、歩鳥の為にも!」

アニ「…」



アニ「いいよ」


ゴゴゴゴゴゴ…

鎧の巨人「…」


超大型巨人「…」



紺「くそ…歩鳥のとこに早く行きたいのに!!」

ミカサ「…彼等と…戦うしかないの!?」

エレン「…みたいだな…くそ…」

アルミン「…」

ヒストリア「でも…ホトリは…戦いを止めようとしていたのに…」

ジャン「…」

エレン「ああ…だから、皆しぬなよ…ライナーとベルトルトも生け捕りだ」グッ

アルミン「エレン…」

エレン「今は戦うしかない!」ガリッ






エレン巨人「オオオオオ!!!!!」





アニ「…あんたじゃ…私には勝てないよ」ザッ

真田「やってみなきゃわからないだろ」ザッ


辰野「真田くん…アニ…」

静「…」







歩鳥「…」



―――

――――――


歩鳥(6歳)「ねーちゃん家に泊まる!!」

静「ダメだよ~、もうお家帰らなきゃ~~」

歩鳥(6歳)「やだやだやだ泊まる泊まる!ねーちゃん家に泊まる!!」

静「あ~もう、わかったわかった~~、歩鳥のお父さんとお母さんに許可もらってからだよ」







歩鳥(6歳)「ねーちゃん!この白くて変な顔ついた四つん這いの変なのなに!?」

静「それね~、リドルっつーんだよ~~。それ売りに来た人から『関わりたくないから誰かにでも売り付けて』って言われたけど~…そんな怪しいもん無理矢理他人に売り付けるのもね~」

白リドル「…」

歩鳥「えー、変だけど可愛いじゃん!」

静「か、可愛い…のか?」

歩鳥「この子ちょーだい!」

静「一応売り物だからタダはダメだよ~~」

歩鳥「じゃあ、今日1日だけ一緒にいさせて!!」

静「えらく気に入ったね~。ま、1日だけならいいよ。じいちゃんには内緒な」

歩鳥「やったー!」

白リドル「…」



歩鳥(6歳)「うえええん!!」

静「なになにどうした」

歩鳥「リドルと外に出てたら無くしちゃった~~~!!」

静「無くしちゃった!?その前に外にまで持ち出してたの突っ込みたいが…!それより探しに行こう!!」

静「うわ、外雨強っ…でも商品無くしちゃじいちゃんに怒られるし歩鳥泣いてるし…」



ザアアアアアア………





バシャッバシャッバシャッ


静「あ~!あれじゃないの!?」

歩鳥(6歳)「あれだー!」バシャッバシャッ


白リドル「…」

静「見つかって良かったな~」ポンポン

歩鳥(6歳)「うえええん!雨のなか置き去りしてごめんねええ!!」

白リドル「…」


静「そんな置物相手に泣かんでも…」


………





歩鳥(中学生)「ねーちゃん!小説書いたの見てみて!」

静「はいは~い…見せてみそ」


白リドル「…」


歩鳥(中学生)「ん?あ、リドルおはよー」

静「なに置物相手に挨拶してんだよ~~~」

歩鳥(中学生)「え?んー、何か見られてる感じがしたというか…」

静「ちょっと気味悪いこと言うなよな~」

歩鳥(中学生)「リドルって昔からずっとここあるよね~」

静「誰も買わないからね~~」


白リドル「…」






…歩鳥…




――――――――

ウォール・ローゼ壁門前



ビュンッ ビュンッ


ガキイインッ


リヴァイ「ちっ…!刃が通らねえ!!」

鎧の巨人「…」ズシンッズシンッ



ボオオオオオ…


超大型巨人「…」ゴオオオ


ハンジ「ダメだ、熱で近づけない…これじゃ斬撃を加えられない…!」



ペトラ「兵長!どうすれば…」

リヴァイ「手当たり次第攻撃しろ、弱点を探せ!」

リヴァイ「ただし、死なない程度にな、誰一人死ぬな!損害は許さん!」

オルオ「はっ!」


ミケ「!後方から新たな巨人が来たぞ!」

リヴァイ「なに!?」




エレン巨人「オオオオオ!!」ズシンッズシンッズシンッ!


エルヴィン「あれも敵か!?」


アルミン「突然ですみません!説明してる暇はありませんが、あの巨人は味方です!!」


ハンジ「いきなり言われてもね…」

エルヴィン「いや、信じるしかあるまい…我等の兵力だけであの巨人二体を相手にするのは正直厳しい」

リヴァイ「…了解した」


ライナー(あれが恐らくエレンの巨人…自分から来るとは)



アルミン「とりあえずまずは皆でエレンを援護しながらライナーを止める!みんなしぬなよ!!」

ミカサ「わかった」

紺「歩鳥…大丈夫だよな…くそっ!」


サシャ「私の視力なら何とか見えますが…怪我はしてますが命までは関わらないと思います」

コニー「良かった…」

紺「でも…こんなことなるなんて…歩鳥…」

ユミル「今はライナーを止める事に集中しろ」

ヒストリア「うん…」


エレン巨人「…」ズシンッズシンッ

ライナー(…突撃か…エレンらしい戦法だ。だが、ただの巨人のパワーでは俺の巨人の鎧に傷をつけることは無理…)


アルミン「やれえ!エレン!!」


エレン巨人「オオオオオ!!」ブンッ



ガシャアアアアアンッ


鎧の巨人「!!?」ズザザザッ

ライナー(な…俺の巨人の鎧が、破られた…)


エレン巨人「…」パキッパキッ


ライナー(硬質化!?)


アルミン(予想通りだ…)

アルミン(エレンがさっき巨人になる際に、『ヨロイ』の薬を投与した)

アルミン(『ヨロイ』は名前の通り鎧の巨人と似通った性質を持つ…これならライナーと戦える)


ミケ「あの巨人のパンチで鎧の巨人に傷がついたぞ!」

リヴァイ「そいつは助かった…俺達もあの巨人を援護…」



ズシンッ!ズシンッ!ズシンッ!


リヴァイ「!!」


巨人「…」ズシンッズシンッズシンッ


エルヴィン「無知性巨人数体が動き出した!!迎え撃て!!」

リヴァイ「ち…、俺達はあの巨人どもを狩るぞ!」



ジーク(…全ての無知性を動かすのは奴等全体が弱ってからだ…)

ジーク(あのエレンの巨人が硬質化を得ていたのは想定外だった…無知性も少しは動かさなければライナーも一人では辛いだろう)




鎧の巨人「…」


ライナー(甘く見ていた…いかん、全力で掛からなければ)


エレン(…ライナー、ベルトルト…俺はお前らが憎い…だが、お前らを殺したら………ホトリが悲しむだろうな……)

エレン(だから、死なねえ程度にその巨人から引きずり出してやる!!)



ザザザッ!!


真田「ぐっ!!」



アニ「…サナダ…もう止めなって…」ハアハア

アニ「あんたじゃ私と格闘しても勝てない…そんな事わかってるだろ?」


辰野「真田くん…それ以上は…!」


真田「…うるせえ…俺は…諦めないから…」ザッ


アニ「………私は…戦士長に、あんた達が取り返されたり勝手な動きをしないよう見張りを命じられてる…頼むから……大人しくしてて…」


真田「…やだ。嵐山は戦いを止めることを願っていた…だから、俺達が代わって…」

アニ「もう…無理だよ」


静「…確かに無理かも知れないけど…君の場合は、諦めて自分の本心から逃げてるだけに見えるよ」

アニ「!」

真田「アニ!俺はお前がどけるか協力するまで何度でも立ち上がるぞ!!」ダダッ

アニ「う…っ」



辰野「…」


歩鳥「…」



エレン巨人「オオオオオ!!」ガンッ

鎧の巨人「…!!」ブンッ


ガシャアアアッ!!


ミカサ「はっ!!」ビュンッ

鎧の巨人「!!」

ライナー(ち…っ、ミカサもいちいち鎧の壊れた部分を狙ってきて厄介だな…)


ライナー(…)

ライナー(くそ…同期に情が移っちまってる……ちゃんと攻撃できない)




ジャン「…そういや、ケニーのオッサンはどこだ?姿を見ないぞ?」

アルミン「僕も見てないからわからないけど…」


紺「それより!さっさとそこどけライナー!」



ガアアアアアンッ!!


エレン巨人「…!!!」ズザザザッ


エレン(くそ…!!ライナーのタックルは強烈だ!!)

アルミン「強い…!」



エレン(だが…まだだ、まだ負けねえ!)

エレン(ホトリがあそこまでやったのに、結局戦うハメになっちまったが…せめて、死人を出さずに終わらせてやる!誰も死なせない…負けてたまるか!!)


エレン巨人「オオオオオ!!!」ブンッ

ドガアアアアッ


鎧の巨人「!!!」


ライナー(くそ…ダメだ、エレンの気迫に押されている!!)


ミカサ「押してる!!」

ジャン「エレン!ライナーを引きずり出しちまえ!!」


エレン(勝ってやる…ライナーに!!)

ガシャアアアアアンッ!!!


鎧の巨人「…」ボロッ



ライナー(…くそ……もう、無理だ…)


ヒストリア「もう…ライナーは動けないみたい…」

ユミル「…私が手助けする必要はなかったな」

コニー「ライナー…」

サシャ「あの…まさか、命奪ったりは…」

ミカサ「心配しなくてもやらない。ホトリも悲しむ」

アルミン「…もう鎧の巨人は戦意喪失したみたいだ…うなじを剥がしてライナーを拘束しよう」


ズウウウウウンッ!!!

紺「うわっ!?」

ジャン「デケエ足音…!まさか!」

アルミン「来た…っ」


ズウウウウウンッ!!!




超大型巨人「…」



紺「そうか…まだベルトルトも居る…」


エレン巨人「…」ザッ



リヴァイ「はあっ!!」ズバッ


ハンジ「くそ…こんだけ倒してもまだ獣の巨人の周りにはたくさん動いてないやつがいる。こっちの被害状況は!?」


エルヴィン「負傷者は出ているが…まだ死人は0だ」


リヴァイ「わかった……このまま誰も死ぬなよ…」






獣の巨人「…」ズシンッ


ジーク(さて…ライナーも動けなくなっちまった…少し予定より早いが俺も動き始める頃だな)


ガコッ ボキッ

ジーク(俺の拡散投石で…一気に殲滅してやろう)


獣の巨人「…」メキメキッ


ジーク(行けっ!!)



「バキュウウウウウンッ!!!」


ジーク(!!!)


バンッ!!バンッ!!


獣の巨人「なに!?指を…誰だ!?」


ジャリッ



ケニー「よう、毛むくじゃら…お前が動くのを待ってたんだ。シズカに、いざというときの為と頼まれていた」ジャキッ

ケニー「………」

ケニー(ホトリの奴が兵士に撃たれそうになる寸前…俺が遠くからその兵士に銃を向けた。だが…)

ケニー(その瞬間ホトリは、『撃つな』って目で俺を見てきやがった)


ケニー(ったく、お人好しのアホにも程があるぜ…)



エルヴィン「…!獣の巨人…さっき投石をしようとしていた…!」

ハンジ「え!?」

エルヴィン「何者かに阻止されたようだが…リヴァイ…獣の巨人の相手を頼めるか?また目を離した隙に何をされるのかわからん。ならばあえてこちらから向かい、奴の作戦を狂わせる」

リヴァイ「…わかった。任せておけ」ビュンッ





リヴァイ「…!」



ケニー「よう…久しぶりだな、リヴァイ」

リヴァイ「ケニー!?何故あんたが!?」

ケニー「ま、色々あってな…」

リヴァイ「…さっき獣の巨人を止めたのもあんたか?」

ケニー「そうだよ。どうだ、俺達で協力して奴の相手をしねぇか?」」

リヴァイ「…あんたには言いたいことが山ほどあるが…今はそれどころじゃない。いいだろう、あんたが居るなら心強い」

獣の巨人「…」



真田「うあああ!!」ダダダッ


ガシイッ


アニ「く…う…っ」ギリッ


バシンッ!!


真田「かはあ!!」ドサッ


アニ「本当…もう、やめなよ…あんたも限界でしょ?」

真田「はあ…はあ……うるせえよ……俺は…まだ、立てる」フラッ


アニ「…っ」



辰野「アニ…お願い…、私達に協力して…!」

静「君も本当は…争いなんて嫌なんだろ!?」



アニ「……嫌だよ…」

真田「!」


アニ「でも…どうする事も出来ないじゃないか!!」


真田「どうする事も出来ないって言って何もしなけりゃ…何も出来ないままなのは当然だろ!!」

真田「諦めんなよ!例え無謀でも…自分の気持ちに正直になるのが大事なんじゃないのか!?」



辰野「アニ!一緒に戦いを止めよう!!」


アニ「………っ!」



ボオオオオオッ!!!


ジャン「うあっ!!?」

紺「くそ!熱で近づけないよ!」

マルコ「熱風でアンカーも外れる…!」

ミカサ「どうしよう…」


エレン巨人「…」ズシンッズシンッズシンッ!!

ガシイッ!


超大型巨人「…」



ベルトルト(ライナーがやられてしまった…僕がやらないと…!)


超大型巨人「…」グンッ!

ドガアアアアアッ!!!


エレン巨人「!!」ギュンッ


ミカサ「エレン!!」

ズザザザッ!!!


エレン巨人「…」ブシュウウウ…


エレン(くそ…思い切り蹴られちまった……ベルトルトめ!!)

ジャン「エレンの巨人じゃやっぱり歯が立たねえか…!」

コニー「ちくしょう、ベルトルト!もう止めろよ!」

サシャ「ど、どうするんですか、アルミン!?」
ユミル「…私の巨人でも無理だぞ…」

ヒストリア「そんな…」


超大型巨人「…」ズウウウウウンッ


紺「ヤバい、もう壁まで来ちまう!どうすんだよ、アルミン!!」

アルミン「…」

ミカサ「く…」ジャキッ

アルミン「待って、ミカサ」

ミカサ「!」


アルミン「…これに…賭けてみよう……」


アルミン「『サイキョウノキョジン』」


ベルトルト(…君たちじゃ僕の巨人は倒せない…おとなしく下がって…)

ベルトルト(…ん?何をしてるんだ?)


アルミン「エレン…賭けになるけど、これを…使ってくれるか」

エレン巨人「…」コクッ

エレン(このまま普通にやっても勝てない…賭けを信じよう)

ミカサ「エレン…」










ゴオオオオオ………



ベルトルト「…な…っ!!?」



ズウウウウウンッ!!


ズウウウウウンッ!!!




エレン巨人(80m級)「グオオオオオオ!!!!!!」

ベルトルト(エレンの巨人が巨大化した…!?一体なにが!?)

ドゴオオオオオオ!!!

超大型巨人「!!?」ドシャアアッ



エレン巨人(80m級)「…」シュウウウ

ズウウウウウンッ


ベルトルト(くそ…硬質化の能力も合わさって強烈だ…だが…!)

ベルトルト(僕だって…負けられないんだ!!)

超大型巨人「…」グオンッ

ドガアアアアアッ!!!


エレン巨人「!!」

エレン(ぐっ…返して来やがった!!)


ヒストリア「エレンが…更に巨大化した…」

ミカサ「凄い…」

紺「やったじゃねぇか、アルミン!成功したぞ、賭けが!」


アルミン「うん……でも…」

アルミン(1つだけ気掛かりな事が…)


エレン巨人(80m級)「オオオオオ!!!」ゴオオオオオ!!


ズウウウウウンッ!!!

ジャン「ベルトルトがひざまづいた!!」

超大型巨人「…」シュウウウ


ベルトルト(ダメだ…完全にパワー負けしている…!!)

エレン(…なんだ……?)

エレン(意識が少し朦朧としてきた…)


エレン(いや…それより今は、ベルトルトの巨人を倒さねえと!)


ドガアアアアアアンッ!!!


超大型巨人「!!」ドシャアアアッ


ミカサ「…完全にベルトルトが負けている…」


ベルトルト(くそ…ダメだ、もう力が…持たない…巨人から出た方が懸命だ!)


ベリッ!


ベルトルト「はあ、はあ…!」ブチブチッ


ジャン「ベルトルトが出てきた!」

アルミン「よし!拘束…」


ドサアアッ!!!


アルミン「!!」

ミカサ「え…エレン!!?」


エレン巨人(80m級)「…」ブシュウウウ

シュウウウ…


エレン「…う…」シュウウウ

サシャ「あれ!?」

紺「エレンの巨人が消えちゃったぞ!?」


ユミル「そうか…硬質化に、更なる巨大化…強力だが、その分パワーを消費し過ぎたんだ…もうエレンはしばらく巨人化は出来ない!」

アルミン「…!!」

エレン「くそ、すまん…っ」ハアハア


ミカサ「エレン!大丈夫!?」

エレン「力が出ねえ…」

アルミン「すまないエレン!今は休んでて!」


ベルトルト「…力を…使いすぎたみたいだね」ザッ

アルミン「!」

コニー「ベルトルト…!」


ズザザザッ!!!

リヴァイ「はあ…はあ…っ!」


ケニー「くそ…リヴァイと組んでも…厳しいのかよ」フラッ


獣の巨人「…」ズシンッ!!


獣の巨人「…俺は、戦う為に生まれた人工生命体だ…」

ジーク「人間が勝てると思うなよ」



獣の巨人「オオオオオ!!!!!」バアアアンッ


リヴァイ「…!!」



┣¨┣¨┣¨┣¨ド!!



巨人「…」┣¨┣¨┣¨┣¨ド!!!


リヴァイ「残りの無知性巨人どもが一斉に来やがった!!」

ケニー「ちいっ!くそったれめが!!」



ジーク(ベルトルトもやられた…だが、エレンも力を使えなくなった…人類側も疲弊してきた頃だろう。後は無知性の群れで殲滅する…)


エルヴィン「総員!無知性の大群が来るぞ!!やるしかない!!」

ハンジ「さすがにあの数は不味いかも…」ゼエゼエ




リヴァイ(くそ…誰も死なないでくれよ…!!)ギリッ

ジャン「どうすんだ、巨人の大群が向かって来やがったぞ!」

アルミン「う…!」


ハンネス「お前ら!なにしてんだよ!!」ザッ


ミカサ「!」

エレン「ハンネスさん…」

ハンネス「事情は後で聞く!今はお前らは壁の上にでも避難しろ!!」

ユミル「それが懸命だな…アルミン」

アルミン「…わかった…」

紺「歩鳥や辰野、真田、静さんは…!?」

ジャン「今は仕方ねえ!俺達が巨人に食われちまう!逃げろ!!」

紺「くっ!!」



リヴァイ(さすがにあの数はダメだ…さっさとこの獣を始末し、他の無知性を片付けねえと…!)

ケニー「…参ったな…勝てんのか?これ…」

リヴァイ「やるしか無いだろ」ジャキッ


獣の巨人「オオオオオ!!!」



巨人「…」┣¨┣¨┣¨┣¨ド!!!


ペトラ「はあ…はあ、数が多すぎる…!!」

オルオ「くそ…やってらんねえよちくしょう…!!」

ハンジ「諦めるな!全力で迎え撃て!!」

エルヴィン(不味い…数の差が違いすぎる!このままでは…!!)


ジーク「終わりだ…」





~♪~~♪~~♪


ジーク「!!」

獣の巨人「…」バアアアアン!!!


リヴァイ「…!!」

ケニー「あ!?」


巨人「…」ピタッ


エルヴィン「…獣が、巨人を止めた?」


『暗い気持ちだって すぐに晴れて~♪』



リヴァイ「歌声!?」



ハンジ「なんだ!?」


エルヴィン「歌がどこからか聞こえる……!」



サシャ「あれ…この声…!」

コニー「まさか…」


ミカサ「…フタバの声…」

紺「私の歌を録音したのを…再生させてる音だ!!」


ヒストリア「そして、その歌と同時に聞こえる…」

ジャン「音痴な歌声…!」

アルミン「この歌声は…」

エレン「………やっと……起きたか……」

ライナー「!」

ベルトルト「!」





歩鳥「ダウンタウンへ繰り出そう!!♪ダウンタウンへ繰り出っそーう!!♪」ダンッダンッ





紺「歩鳥いっ!!!」





歩鳥「あたたた…っ!!」ガクッ


静「怪我してるのに動くからだ…」

辰野「あんたねえ!ちょっとは自分の怪我の心配もしなさいよ!!」

歩鳥「ごみんなさい…」

真田「無茶すんなよ、嵐山」



女型の巨人「…」


ジャン「そんで歩鳥達がいるのは、女型の巨人の手のひらだ…」

アルミン「アニ…協力してくれてるのか?」



エルヴィン「…」



獣の巨人「…」



エレン(…また戦いが止まった…)





辰野「ほら、私達が支えてあげてるから」

真田「一緒に止めるぞ…こんな戦い」

歩鳥「うん…ありがとう」





歩鳥「…すう…」





歩鳥「全員!!戦いをやめんかあああ!!!」



エレン「…」

アルミン「…」

ミカサ「…」

ヒストリア「…」

紺「…」





歩鳥「この世界に…後が無いらしいのも聞いたし…あんた達壁の外に住んでる人間が…昔、壁の中から追い出された人達ってのもアニから聞いた…」

歩鳥「でも」


歩鳥「だからといって…人の命を勝手に奪っていい権利があるのか!!?壁の内にいる人も外にいる人も…もっと話してお互いの事を知るべきなんじゃないのか!?」

歩鳥「みんな…みんな、ただ…幸せになりたいだけのはずなんだ!!どこにいる人だって…!」



エルヴィン「…」

ハンジ「…」

リヴァイ「…」



ライナー「…」

ベルトルト「…」


アニ(…)



獣の巨人「…でも…君は…人間に勝手な疑いを持たれ撃たれた」


歩鳥「それも人間だからだよ!確かに痛かったし怖かったし怒りも感じた…でも、その私を撃った人達だって…きっと、怖かっただけなんだ…自分達の幸せが壊れるのが!守りたいものがあるから必死だっただけなんだ!」

駐屯兵「…!」

ジーク「そう感じるのは君に余裕があるからだ…もし撃たれたのが自分でなく他の人なら…そんな事は言えないだろう」

歩鳥「それは、否定しないよ。でも…やっぱり、間違いに怒りや憎しみだけで返すのは…間違いを繰り返すだけだと、思う」

憲兵「…」


ジーク「…」



辰野「…」

真田「…」

静「…」



歩鳥「…私…アホだから…上手く言えないし…子供っぽい事しか…言えないと思う……でも」

歩鳥「それでも私はこの戦いを止めさせたい…」


ジーク「…」



歩鳥「…もっと…人間を信じた方が…いいと思う」

歩鳥「世界には…色んな性格や考え方をした人がいるし…どんな人にだって…色んな可能性があるんだよ」

歩鳥「あんたのやってることは………人間の可能性を否定してる事なんじゃ、ないかな」


歩鳥「…もっと人間を信じようよ」



ジーク「…」


歩鳥「…エルヴィン団長…ジーク戦士長…ちょっと代表者としてお互い来てください」


ジーク「…」


リヴァイ「どうする?エルヴィン」


エルヴィン「いいだろう…行こう」


ジーク「…なんだい?」ザッ



エレン「何をする気だ?」

紺「…」

ライナー「…」






ザッザッザッ…



歩鳥「…あの…これ…」ガサゴソ



スッ



ジーク「!!」

エルヴィン「これは何だ?」





ミカサ「あれは…私が作った…!」






歩鳥「べちこ焼きってお菓子です…食べてください」ニコニコ



エルヴィン「…変わった色の菓子だな…」

歩鳥「でも美味いっすよ」エヘヘ

ジーク「…」

ジーク(懐かしいな…あの女が死んでから…ずっと食わなかった…)

歩鳥「ささ、お二人とも召し上がれ。食べながら話し合いませんか?」ニコニコ

エルヴィン「…」パリッ

ジーク「…」パリッ





エルヴィン「…うむ…」


エルヴィン「美味いな…」

歩鳥「でしょでしょ~?」

エルヴィン「…何だ、この不思議な味は………懐かしい気持ちと、優しい気持ちの混じったような菓子だ…」


ジーク「…」


歩鳥「どうですか?戦士長さんは?」



ジーク「…」ボロッ


歩鳥「!!!」


静「!」

辰野「え!?」

真田「…!?」


アニ(嘘…)

ライナー(戦士長が泣いてる!?)

ベルトルト(初めて見た…)


歩鳥「あ、あ、あの…大丈夫ですか?どうかなさいました?」オロオロ


ジーク「ふふふ………そうか……やっとわかった…」グイッ

ジーク「俺はこの菓子が好きだった…だが、あの女が死んだ時から食うのを拒否するようになった…」

ジーク「それは…もしかしたら、べちこ焼きのこの不思議な味で……あの女の優しさを思い出して、自分の中の憎しみや怒りが消えるのが…怖かったのかもな……」


歩鳥「…」




ジーク「…ふう…っ」


エルヴィン「…」



歩鳥「…私は…こんな状況だからこそ、壁の中にいる人も外にいる人も…協力するべきだと思うんです…」

歩鳥「そりゃ…いきなり仲直りなんて上手くいかないのはわかってます…でも、だからと言って諦めて何もしなければ何も変わらないままなんです」

歩鳥「少しずつでも…お互い、理解して…少しずつでも協力し合う事だって出来るはずなんです」


歩鳥「私達は機械じゃない!いくらでも変われる可能性があるんです!!未来を信じましょう!!」






ジーク「………」



ジーク「エルヴィン団長…だったか?」

エルヴィン「!」


ジーク「この戦い………」



ジーク「やめにしよう」




静「…!!」


アニ(!!)

真田「え…マジで…!」

辰野「やったあ!!」



四足巨人「…」

四足巨人(私は気づいていました…戦士長は長い間ずっと…つかれている様子でした)

四足巨人(もしかしたら本当は…自分の戦いを終わらせるきっかけが……欲しかったのかも知れない)



ライナー「…終わった…?」

ベルトルト「終わる…のか?」



コニー「やったあ!!」

サシャ「やりましたね皆さん!!」

ジャン「まさか…本気で止めちまうとは…」

マルコ「ははは…」

ヒストリア「良かった…これで…もう…」

ユミル「…あいつは…アホだが、本当…不思議な奴だな」





エレン「…」

ミカサ「エレン…」


アルミン「…終わったよ…」


エレン「…」

ミカサ「…」

アルミン「…やっぱり…複雑な気持ちかい?」

エレン「…故郷を奪われたんだ…ホトリの言う通り簡単に仲直りなんて出来ないさ」

ミカサ「…うん」

エレン「でも…戦いなんて起きない方が…これ以上しぬ人が出なくて済むもんな」

アルミン「エレン…」


エレン(簡単に怒りは消えない…でも…)


エレン(いつかは、憎しみを乗り越えて…分かり合える日も、来るのかな…)


歩鳥「はあ…っ」ガクッ

辰野「歩鳥!大丈夫!?」

歩鳥「えへへ…一気にドッと疲れが…」

真田「本当…やったな、嵐山!」

静「大した奴だよ…」ポンッ



紺「歩鳥!」ダダッ

歩鳥「あ…先輩!」

紺「やったじゃねえかよ、おい!一時はどうなるかと思ったんだぞ!!」グイッ

紺「本当に…良かった」

歩鳥「へへ…だって私は、名探偵ですよ?」

静「いや、探偵は関係ないけどな」

辰野「だいたい、いつから名探偵になったの」

紺「お前もうちょい考えて発言しろよ」

アニ「全く…どこまでも歩鳥だね」


歩鳥「ちょっ…一斉にツッコミかよ!?アニまで混じってるし!?」


紺「あははは」


真田「いや…本当によくやったよ、嵐山…お疲れさん」






歩鳥「おーい、みんな~!」ザッザッザッ


ヒストリア「ホトリ!すごいよ、本当に終わらせちゃうなんて!」

ミカサ「とても驚いた」

歩鳥「いやいや…皆も居てくれたからだよ」

ジャン「…とりあえず、もう今日は休めよ」

ヒストリア「疲れてるだろうし怪我もしてるし」

歩鳥「うん」

エレン「よう、おかえり」

アルミン「怪我は大丈夫?」

歩鳥「うん。…でも、実際まだ問題は山積みだと思う…」

エレン「うん…簡単な事じゃない」

アルミン「これからが大変だろうね」

歩鳥「でも、これからも諦めないで頑張ろう!」

エレン「そうだな…ありがとよ」





ズキンッ


エレン「!!」

アルミン「!」



エレン「…う…?」

ミカサ「え!?」バッ


歩鳥「ちょっ…どうしたの!?」


エレン「な、何かが…来る!?」

ズキンッ


歩鳥「え!?」

アルミン「どうした…っ!?」




エレン「…」ガクッ


ミカサ「エレン!?」


コニー「おい、様子が変だぞ!?」


アルミン「エレン!」



エレン「…エレンの体から…失礼するよ…」ボソッ

ミカサ「!?」


歩鳥「…!エレンじゃない!?誰だ、誰かエレンの意識を乗っ取っているのか!?」


エレン「察しがいいね…お前が…歩鳥か…」


歩鳥「!!」


アルミン「な、なにが…!?」



歩鳥「あんたは誰だ!?まさか、あんたが私達をこの世界に呼んだ奴か!?」


エレン「君たちを…呼んだのは…姉ちゃんだよ…」

歩鳥「姉ちゃん!?」


ユミル「…まさか…!」



歩鳥「お前は誰だ!?」


エレン「俺は………アリオ」




エレン「…歩鳥……俺は……この廻り続ける世界を…止めさせるつもりは…ない」

歩鳥「!?」

ユミル「…」


エレン「姉ちゃんと俺が…普通の人間として…暮らす世界が来るまで………」


歩鳥「なにを言ってんだ!?」



エレン「…歩鳥……エレンの家の…地下室までこい……そこにリドルが…ある…」


歩鳥「…!?」


エレン「…外をうろついている巨人なら…俺がリドルの力を使い…止めておいてやる………来い……歩鳥……」

ドサッ!

アルミン「エレン!!」

エレン「う……俺は…?」

歩鳥「大丈夫かエレン!?さっきまで意識を乗っ取られていたんだ!」

エレン「はあ!?」


紺「歩鳥…どうした?」ザッザッ


歩鳥「…ごめん、みんな…まだ終わってないみたいだ…」


歩鳥「会いに行かなきゃいけない」



ジーク「…キリエとアリオか…知ってるよ、話はね。グリシャから聞いた」

エレン「…!父さんから!?」

ジーク「へー…きみ、グリシャの子供か……。まあ、あいつとは敵対していたが、兄弟みたいなもんでもあった」

アルミン「…」


紺「行くのか?歩鳥」

歩鳥「うん、私がお呼ばれされてるみたいだからね」

静「…エレンの家の地下室にある…リドルとか言ってたな」

真田「…何でエレンの家の地下室に?」

エレン「…父さんの記憶も思い出せないからわからない…だが、地下室へ行けばわかるかも知れない」

歩鳥「とりあえず地下室へ行くしかないみたいだね」

ミカサ「ええ」

辰野「はあ…まだ終わらないのね…」

歩鳥「たぶんこれで最後だよ…私達を連れてきたのは…アリオの姉ちゃんらしいから…」

辰野「でも、何で歩鳥を?」

静「…」


ライナー「…」


ベルトルト「…」


真田「あ、ライナーとベルトルト」


エレン「…」

辰野(重い空気ね…まあ仕方ない…)


歩鳥「あ、ライナー!ベルトルト!何か顔見るのだいぶ久しぶりだね!!おいでよ!!」

ライナー「!?」

ベルトルト「!?」

紺「お前…ちょっとは空気読めよ…」

歩鳥「へ?だってもう敵対してないし私が話したいだけだし…」

ライナー「しかし…」チラッ

エレン「いいよ別に。ホトリがお前らと話したいってんだから俺は関係ないだろ」

ベルトルト「うん…ごめん…」

エレン「お前らとちゃんと話すのはまた後でいいよ…今はホトリの相手しとけ」




ジャン「…ライナー…ベルトルト」

コニー「…」

サシャ「…」



ベルトルト「みんな…」

ライナー「…すまない…」

サシャ「…も、もう…敵になんてならないでくださいね…っ」グズッ

コニー「やっぱりお前らは…俺の友達なんだよ…!」

ライナー「サシャ…コニー…」


アルミン「…」





アニ「…」

辰野「アニも、そんなとこ隠れてないで皆のとこに行きなよ」

アニ「タッツン」

辰野「そうやって人から遠ざかるから誤解されたりするんだよ。皆のところに行きたいんでしょ?」

アニ「…うん…」


真田「…こっちは、何だかんだで大丈夫そうだな」

静「あの子達は、いい子達だからね…理解し合えるよ、きっと」


静「それに、私達はこの世界の住人じゃない…これ以上の関わりは持てないよ」

真田「そうっすね」


静「後の私達の問題は…」



歩鳥「…どんな理由で呼ばれたか知らないけど…ちょっと休憩したらすぐ行こう。何が起こるかわからない」

紺「…キリエとかいうの…知り合いとかでは無いんだよな?」

歩鳥「たぶんねー」

静「いや…もしかしたら」

紺「!」

静「ずっと歩鳥の事を見ていたのかも知れないよ…キリエちゃんって子は」

歩鳥「へえ?」






エルヴィン「…では…これで、あなた方も壁内への攻撃は二度としないと?」


ジーク「うん…今まで騒がせて悪かった。しかし、壁の外にいる人間は壁内に恨みを持つ人間も多い。和平も簡単には進まんだろう」

ピクシス「こちらも、特にウォール・マリアに住んでいた者は…あなた方にいい感情を抱かないでしょうな。先は困難ですが…少しずつでもいい方向へ行けるようお互い努力しましょう」

ジーク「ああ」

エルヴィン「後は…この世界を管理するシステムというものへの対策が問題だ…」

ジーク「…それなら…俺に案がある」



そして、歩鳥達と104期は調査兵団と共にエレンの家の地下室へ向かう事になった…



エルヴィン「本当に巨人はいないようだな」

リヴァイ「わざわざ俺達の為に巨人を止めておいてくれるなんざ律儀な野郎だ」

ザッザッザッ…

ハンジ「…つまり、その『ホワイトリドル』ってのがこの世界を管理するシステムで…人類がダメだと判断したら人類を巨人に変え自然の再生を行い…最後は数人の人間だけを残し他を滅ぼさせ、また世界を一からやり直しさせると…。しかもホワイトリドルには時間を操作する等の様々な未知の機能が備わっているのか」

静「そんなとこっすね~…で、今の私達がいる時間軸ではもっとややこしい事になってるって」

ユミル「レイスの先祖がキリエっつーフェアリーの少女をホワイトリドルの一部に組み込んじまってからだ…そしてどうやら、さっきの出来事から察するに、その時キリエだけでなくアリオの霊体も乗り移っちまったらしい」

静「そして…時間を操作し何度も同じ時間を繰り返していると…」

ハンジ「つまり…それ、ホワイトリドルを半分その姉弟に乗っ取られているようなもんだよね」


静「そうですね~~。まあ、好き勝手やってんのは弟の方だと思われますが」


歩鳥(…きっとその二人も過去に何か酷いことがあったんだろうな…)ギュッ


紺「…」



真田「ところで…俺気になってる事があるんだけど」

真田「亀井堂にある…四足で顔がついた…白い色の球体の置物。あれの名前…リドルじゃありませんでした?」

静「うん…ホワイトリドルという名前からして…それだろうね」

辰野「あ、あの変な置物!?」

歩鳥「じゃあ、私達がここに来たのはやっぱりリドルの力だったのか」

紺「でも、何で私達なんだよ」

静「さっきも言ったけど…たぶんお前だよ歩鳥」

歩鳥「なんで私なのかね…」


静「ま、何を話しても予想の域からは出ないよ。本人に聞くのが手っ取り早いね~」


――――――


―――



エレン「…ついた…俺達の故郷…」


ミカサ「シガンシナ区…」

アルミン「…変わり果ててるね…」


ベルトルト「…ごめん…」

ライナー「なんと言えばいいのか…」

エレン「いいっつってんだろ。そういう話はまた後だ」

アニ「…うん」



歩鳥「………」

辰野「これは…酷い有り様ね」

紺「怖いな…」

歩鳥「………」ズズッ


真田「って、おい嵐山!?泣いてないか!?」

歩鳥「だってさ…こんな光景見たら…悲しくなるじゃん…」ズズッ

歩鳥「きっと皆…普通に暮らしてたのに…」

ミカサ「ホトリ…」

エレン「だからってホトリが泣くことは無いだろ…」

アルミン「そうだよ、落ち着いてほら」

歩鳥「うん…」


ライナー「………」

歩鳥「あ!その…ライナー達を悪く言った訳じゃないよ!あの…」オロオロ

ライナー「え!?いや、わかってるぞ、うん」

ベルトルト「そうだよ、気にしなくていいよ…」

アニ「あんたが感情豊かなだけなのは知ってるからさ」


エレン「…こっちだ…俺達の住んでた家…」

ミカサ「…」

歩鳥「馬に一緒に乗せてくれてありがとね、ヒストリア」

ヒストリア「うん、無理しないでね」

辰野「後は私達が支えててあげるから」

真田「ゆっくり歩けよ」

歩鳥「うん、ありがと」

アルミン「…準備はいい?入るよ」

歩鳥「…あのさ…私、1つ恐ろしい事…想像しちゃったんだけど……」

アルミン「え、なに?」ビクッ



歩鳥「地下室の鍵…忘れてきてないよね!?」


エレン「はあ?ホトリじゃあるまいし忘れる訳ないよ」

辰野「あんただったら忘れてたろうけどね」

歩鳥「ちょっ!人は結構真剣に聞いたのにいつものノリの返答かよ!」

真田「まあ、確かに忘れてたら恐ろしいな…長い距離また往復だ」





アルミン「あった…これが地下室か…」

ミカサ「この中に…」

エレン「…」


エレン(父さんは何でリドルなんてものを地下室に持っていたんだ?ここから先へ行けば…わかるのか?)

ハンジ「エレンくん、開けてくれたまえ」

エレン「はい」ガチャ

歩鳥「いよいよだね」


エレン「ああ」



ガコンッ…











カッ カッ カッ…



アルミン「あ…部屋が見えたよ」

歩鳥「果たしてこの先には…何が待ち受けているのか…!?」

紺「リドルだろ」

歩鳥「いや、うん。まあ…そうなんだけどさ。あれだよ、雰囲気付けだよ」

静「ちょっと拗ねた顔してないの~」

紺「わかったわかった、ツッコミ入れてごめんな」

辰野「最後まで同じ調子ねあんたは」

真田「まあ、それの方が安心だよ」



エレン「…広い部屋に出た」

アルミン「あ…何か置いてある」

ミカサ「白と黒の置物…」


白リドル「…」


黒リドル「…」



歩鳥「リドルだ!」

真田「白と黒の二種類がある…」

静「うちの店にあったのが…この白い奴だね~…」


リヴァイ「黒い方は何なんだ?」

静「なんだっけ?確かユミルから前に聞いた話なら…黒いリドルはレイスの先祖が白リドルを元に作った『記憶や意志を読み取る力』を持ってる奴だっけ」

ユミル「そうだ…キリエの意志とはそれを通し会話していた」

歩鳥「…」


歩鳥「記憶を読み取る力って…事は…」

歩鳥「この黒いリドルに触ったら…エレンの中にあるお父さんの記憶も蘇るんじゃないの?」

エレン「!」

アルミン「あ、本当だ!」

静「久しぶりに冴えてるな」ポンポン

歩鳥「いやいや、それほどでも」

エレン「その通りだな…試してみるよ、ホトリ」

ミカサ「さすが名探偵」

歩鳥「えへへ」


静「で…アリオくんは?」

紺「そういや…来いって行ったのに…」


歩鳥「…このホワイトリドルに話しかけてみよう」

白リドル「…」

歩鳥「おい、アリオ!来てやったぞ!返事しなさい!」


白リドル「…」


ズキンッ


歩鳥「…うっ!?」ガクッ

辰野「!」

紺「歩鳥!?」

真田「大丈夫か!?」

静「どうした!」


歩鳥「…大丈夫…呼ばれた…だけ…」

紺「え!?」

歩鳥「…行ってくるね…」ヘヘ


真田「おい、嵐山!?」ガシッ

紺「どうしたんだよ!?」グイッ

辰野「ちょっと歩鳥!?」ガシッ


静「あ…」



カアアッ!!!


ドサッドサッドサッドサッ


歩鳥「…」
真田「…」
辰野「…」
紺「…」

静「おい、四人とも!どうした!?」


ジャン「…!なんだ!?」

サシャ「な、何があったんですか!?」

エレン「おい、お前らどうした!?」


ユミル「…たぶん…白リドルの中にいるアリオにホトリが呼ばれたんだ。意識を中に連れていかれたんだろう…サナダ、フタバ、タッツンもホトリに触れていたせいで巻き込まれたんだ」

静「!」

ヒストリア「だ…大丈夫なの?」

ユミル「それは…あいつら次第だろ」








――――――



辰野「…う…」

真田「ここは…どこだ?」


紺「また変なとこに来ちまった…」

歩鳥「…この建物…何か書いてある…」


辰野「え?」



歩鳥「…外天楼…?」






「…ここは俺がリドルの力を使い作った仮想空間…君たちの意識は今リドルの中にある」


真田「!!」

紺「誰だ!?」


歩鳥「…まさか…あんたが…」


ザッ…ザッ…



アリオ「やっと会えたね…歩鳥」

キリエ「…」




―――――


黒リドル「…」


エレン「…こいつに触れれば…父さんの記憶が、蘇るかも知れない…」

ミカサ「…」

アルミン「…」



ヒストリア「…私もいい?」

アルミン「ヒストリア」

ヒストリア「レイスの…先祖の事がもっと詳しくわかるかも知れないから」


エレン「そうか…よし、行くぞ」

ヒストリア「うん」


ジャン「…」

サシャ「…」

コニー「…」



エレン(父さん…俺はここまで来た……父さんの知っている全てを見せてくれ)

ペタッ…


ビリッ!!!




エレン「…う…」パチッ


ヒストリア「な、なに?何が起きたの?」



グリシャ「…久しぶりだな。エレン」


エレン「!父さん!?」

フリーダ「…ヒストリア…覚えてる?」


ヒストリア「あ…全部思い出した…フリーダお姉さん!」



ウーリ「ここは黒リドルにより作られた君の中に眠る記憶と精神の世界だよ…エレン。ヒストリアも来てしまったみたいだがね」



「俺もいるぜ」


ウーリ「!」


ヒストリア「え!?」




ケニー「…まさかと思って…俺もこっそりエレンに触れてたんだ。まさか予想通りお前に会えるとはな…ウーリ」

ウーリ「ケニー……相変わらず面白い男だな」フフ


グリシャ「ここにはエレンの中の記憶の世界…今まで座標を引き継いできた様々な人間の記憶もある。だからレイス家の人間の精神体もいるんだ」

ヒストリア「そうなんだ…」


エレン「…理屈はわかった。でも今知りたいのは…父さんが何故、リドルを持って地下室にしまっていたのか…」

ヒストリア「あと、レイスの先祖の事をもっと詳しく知りたい」




世界中で人間同士、人間とフェアリー、フェアリー同士と様々な争いが起きていた混沌とした時代…

世界の平穏の為に戦っていたグリシャだったが…ジークとの激しい戦いの末行方不明となっていた。







グリシャ「…う…」



ジーク「よう、目が覚めたかい。兄貴」

グリシャ「ジーク…」

ジーク「……なあ……」


ジーク「もう人間なんか見捨てちまえよ。奴等は敵だけでなく自然もお構いなしに焼き払ってんだ。超大型巨人になる薬を大量の人間に使ってな」

グリシャ「…お前の仲間にも超大型巨人の力を持つ奴はいるだろう」

ジーク「…俺達はなるべく自然まで巻き込まないように気は使ってるよ。敵の超大型巨人に対抗するために使ってるまでだ」

グリシャ「…ジーク…憎しみをぶつけるだけでは何も解決しない」

ジーク「人間は世界を身勝手に壊す…だから俺が制裁を加える。それだけだ」

グリシャ「それで本当に平和になれると思っているのか!?」

ジーク「ああ。人間がいなくなりゃ平穏は訪れるさ」

ジーク「そういや…ユミルはどうしてんだ?ユミルの民とかいう、様々な種族の集った奴等で…反戦活動をしていたらしいが」

グリシャ「…協力してくれるものもいるが、敵意を向ける者や迫害する者も多いらしい」

ジーク「は、そりゃそうだ……人間なんて奴は相手を理解するより迫害する方を優先する生き物なんだよ」

グリシャ「お前は……愚かな…」

ジーク「何とでも言えよ」



グリシャ「…もうすぐ……ホワイトリドルが発動するらしい」

ジーク「ああ。知ってる。前にお前からそいつの存在を聞かされてるよ」

グリシャ「なら、なぜ愚かな戦いを続ける」

ジーク「兄貴よ…人間は昔から人間同士で殺し合いしてた…ずっとどこかでな。何度殺し合っても学ばない…愚かな生き物なんだ」

ジーク「そして、その人間を潰すために俺達は人間を攻撃してる…そんな状況でも思想や宗教等の違いで人間同士は殺し合いを続けている」

ジーク「例え俺がいなくたって…ホワイトリドルが発動する運命だったさ」


グリシャ「…人間が一斉に巨人になれば…俺達のような自意識を持つ人工生命体も、恐らく人間として認識され喰われるぞ?」

ジーク「だからなんだ」

グリシャ「…俺は…ホワイトリドルの機能を停止させる手段を考えているんだ。未知の素材が使われていて…今の人類の力では、ある程度の分解は出来ても、機能停止させるまで破壊することはできない。そもそも破壊すれば何が起きるかもわからない…」

グリシャ「だが、このままリドルを発動もさせたくない」

ジーク「だから…人間がいなくなりゃそれも機能しなくなるだろ」

グリシャ「…確かに、人類を管理するのが目的だからそうかも知れん。だがな、俺は人類を救うために止めたいんだ」

ジーク「は…っ、そこまでしたいかね」






その後…グリシャがユミルの村から離れている隙に「ユミルの民」は一斉攻撃を受け村を焼き払われてしまい…ユミルの民により管理されていたブラックリドルが奪われてしまう。

そして、それと同時にホワイトリドルが発動

世界中の人間は巨人になって行き…巨人にならなかった人間は巨人達により喰われていった。




グリシャ「…俺は、無くなったブラックリドルを探す。世界を救う何かの鍵になるかも知れない」

グリシャ「…お前はユミルの民を連れて巨人から逃げるんだな」


ユミル「…死なないでね…」


その後…グリシャは行方不明となった。


そして…

グリシャ「人工生命体にも色々あってな…俺達『タイタン』は年を取るのが非常に遅いタイプだった」

エレン「…」



それから数十年後


壁の世界にグリシャは訪れる



ブラックリドルと共に






グリシャ「…その後は…レイス家の人間がホワイトリドルを隠している場所を探った……それがこの地下室だったんだ」




グリシャ「…そして…俺はブラックリドルを通じてキリエから様々な話を聞いたよ」

グリシャ「ホワイトリドルは全てではないが、機能の一部を乗っ取られているみたいだった」

グリシャ「アリオという男にな」

ヒストリア「…」

グリシャ「そして…キリエはこう言っていた」


キリエ『もう終わりにしたい…アリオを止めてあげたい。このホワイトリドルによって繰り返される歴史も止めたい…でも、どうしたらアリオを…ホワイトリドル止められるのか…』


キリエ『…私は…昔……出会った。歩鳥という子に……リドルを通じて。あの子は優しくて、人間味の溢れている子だった。周りも…あの子がいるだけで明るくなっていた』

キリエ『アリオやリドルを止めるためには…力じゃいけないと思うの。歩鳥みたいな優しい子こそが必要だと思う』


キリエ『…賭けてみるわ…あの子に』



キリエ『時間を越えて…あの子を呼んでみる…』





グリシャ「…俺は…ホワイトリドルの機能を停止させるにはどうすればいいか考えた」



グリシャ「キリエは…リドルを通じ座標を持つものと交信できた。だから俺はキリエとリドルを通じ、ウーリ・レイスやフリーダ・レイスと対話したんだ」

ヒストリア「え!?」

ウーリ「ホワイトリドルの隠し場所を教えたのは私だ」

フリーダ「…もう終わらせたいから座標を受け継がせる必要は無いって。だから私はあの日…わざと負けたの」

ヒストリア「…」

エレン「…」


エレン「それで…何で、俺に力を渡したんだ?」


グリシャ「ああ…巻き込んでしまって悪い」

グリシャ「…俺はキリエとアリオの事から1つの結論を出したんだ……もしかしたら」

グリシャ「人工生命体や人工生命体とのハーフの人間なら…ホワイトリドルの機能に干渉しやすいのでは無いかと」

エレン「!?」

グリシャ「だから俺はエレンに喰われる事で…座標を持つお前の中の一部になり…そこからホワイトリドルに近付こうとした」

グリシャ「そして…お前に継がせたのは…もしも人工生命体やそれとのハーフがリドルと干渉しやすいのならば…先代血筋が同じでなくとも座標の力を使えるのでは無いかと思ったからだ」

グリシャ「そして、前に礼拝堂の地下で…その一端を見せたよな。俺の予想は当たっていたようだ」

エレン「…だから…俺に力を…」

グリシャ「しかし、1つ問題がある…アリオの存在だ。彼はホワイトリドルに眠る一部の機能を支配している」


グリシャ「彼を何とかしなければ…ホワイトリドルを完全に止めることは出来ない」




ケニー「ところでよ…この壁を作ったレイスの先祖は結局なんなんだ?」

ヒストリア「うん…」


ウーリ「…この壁が出来てからの初代レイス…彼は元々科学者だった」

ヒストリア「それは…ユミルから聞いた」

ウーリ「彼は実は…人工生命体と人間のハーフなんだ」


ヒストリア「え!?」

ウーリ「だから…人工生命体の血が濃い彼の意思は強く残り…後の我々レイスの子孫の意思に干渉してきていたのだ」

ケニー「そうだったのかい…」


ウーリ「キリエとアリオをホワイトリドル取り込み…神として崇めフェアリーを過剰なまでに神聖化する宗教のようなものも作っていたらしい」

ウーリ「彼は人間を救いたいと思いつつも争いを続ける人間に絶望もしていた…2つの感情を抱いていたのだ。しかし、次第に絶望の感情の方が大きくなっていたんだ。そして、人工生命体を崇めるようになっていった…」


ウーリ「恐らく彼は…完全なフェアリーになりたかったのだろうな」



―――――――


―――



キリエ「…」

アリオ「…」



歩鳥「…最初に質問しても…いいかな…」


歩鳥「キリエちゃん。なんで…私を呼んだの?」


キリエ「…歩鳥なら…救ってくれると思ったから。あなたは優しくて…周りを明るくする不思議な力を持っているから」


歩鳥「…ちょっと照れるな…」ポリポリ

辰野「照れとる場合かっ」

キリエ「それに…ずっと見てきたから」

歩鳥「…ああ…リドルの中から?」

キリエ「うん…」


歩鳥「あとさ、もう1つ。私達がこの世界に来て…何だか色々都合よく重なって周りが動いてた気がするのは…」

キリエ「…ホワイトリドルには少し先の未来なら予測できるシステムもあるの」

キリエ「それで…どのタイミングで連れてきたら、本来の歴史からどう変わるかを予測して…一番いい時間軸に呼んで来たから」

歩鳥「なるほどね…通りで私やエレンが同時に拐われたり…色々重なって起きた訳だ」

キリエ「…壁外との戦いに割り込んだりとか、ジークを説得しちゃったりとか、予想外の事もあったけど」



アリオ「…姉ちゃんは優しいから…お前に期待してるみたいだけどな…」

歩鳥「!」


アリオ「俺は違う。ずっと平穏に暮らしてきた人間に…何が救えるってんだ」

歩鳥「…アリオは…何で私を呼んだのさ」


アリオ「話してみたかったからだ。姉ちゃんがやけに気に入ってる歩鳥とかいう奴に」

キリエ「…」


アリオ「歩鳥……君は自分が生まれてきた意味がわかるか?」

歩鳥「はあ?」

アリオ「君は…家族に必要とされ生まれてきたのか?」

歩鳥「……私はそうだと思いたいけど」

紺「何が言いたいんだよ」



アリオ「俺と姉ちゃんが生まれてきた理由を知ってるか?俺は…何のために生まれてきたか…お前にわかるか?」

キリエ「…アリオ…もういいから…」



ザザザッ!


真田「うわ!?」

歩鳥「わわ、なんか勝手に頭の中に映像が浮かんでくる!」

紺「こ、これは…!?」

辰野「や、やだ…やめて!」ガクッ



アリオ「…ごめん…無理やり見せる気はなかったんだ…だが…感情が抑えられなく…勝手に映し出してしまったようだ…」

キリエ「…」


真田(…ある学者が自分の娘の細胞を使い、娘と同じ姿をしたフェアリー…それがキリエ。そして…)

真田(その学者が精神的に参った時、キリエを無理やり……)

真田(そして生まれてきたのが…)


紺「うう…っ!」

辰野「み、見たくなかった…っ」ウプッ


歩鳥「…アリオ…」



アリオ「なあ…歩鳥、答えてくれ」

歩鳥「!」

アリオ「姉ちゃんは…俺は、何のために生まれたんだ!!」


歩鳥「………っ」ギュッ



アリオ「…」

キリエ「…」



アリオ「…答えられないか?歩鳥…」


キリエ「いきなりそんなこと言われて…簡単に答えられる訳が無いじゃないの…」

アリオ「…」


歩鳥「…アリオ、でも…あんたはリドルに囚われてから、必死に自分達の運命を変えるため、リドルの力の一部を支配してきたんでしょ?」

アリオ「…」


歩鳥「つまり、アリオは…普通に生まれて普通に生きたかったんでしょ!?生まれてきた意味じゃなく…自分がどう生きたいかが大事なんじゃ…ないかな。意味は、生きながら作るものじゃないのかな」

アリオ「…そんな言葉で納得いくと思うのか?俺は、父親にも友人にも裏切られ、信じていたものを…ずっと過ごした人生を否定されたに等しい…」

アリオ「姉ちゃんは…ずっと子供の姿のままで、フェアリー用の電池がないとすぐにボロボロになる脆い体だった……そして、姉ちゃんはずっと……どんな気持ちで生きていたのか」

キリエ「…」


歩鳥「…ごめん…」


アリオ「…このホワイトリドルに取り込まれてから…様々な人類の歴史も見た」

歩鳥「…」



アリオ「酷い有り様だった……最後は結局、人間が世界や他の生き物…同じ人間を滅ぼして行き……そして、最後は人間全て巨人にされ、終わる」

キリエ「…」



アリオ「歩鳥…お前は言ったな?ジークに…人間を信じようと」

アリオ「だが、人間は何も学ばず自然や命を破壊し続け…何度も滅びを繰り返し、そして…俺達のようなものまで生み出してしまった」


アリオ「人工生命体?ふざけるなよ…自分を何様だと思ってやがる。人間がそんな領域に踏み込んでいいとでも思っているのか?」

アリオ「そして、最後は人工生命体に反逆され世界中で争いが起きた…自分達の尻拭いも出来ない、バカな連中だ」


真田「…」

紺「…」

辰野「…」

歩鳥「…」


アリオ「そして俺と姉ちゃんはそんな世界は嫌だし…自分達も…人間として生まれたかった。だから何度も時間をやり直しさせた…でも、結果は変わらなかった」

アリオ「俺はもう…人間を信じられなくなってきた…」

アリオ「歩鳥…お前だっていつまでもそんな人のいい性格でいられると思っているのか?自分には負の感情が一切ないと言い切れるか?」

歩鳥「…」

アリオ「お前の優しさは本当のものなのか?偽りのものじゃないのか?」

キリエ「アリオ!」


キリエ「そうやって…口では言うけど、アリオだって…結局今も…普通の人間として生まれたかったと、思っているでしょ?」

アリオ「…」


歩鳥「…」

真田「嵐山…」


歩鳥「…ごめん…考えが、まとまらない」



アリオ「…」



歩鳥「でも…私は、二人とも…こんなものにいつまでも囚われてるんじゃなく…楽になって欲しい……」

歩鳥「…だからキリエは私を呼んだんでしょ?」

キリエ「…うん…」

アリオ「俺は…まだ、そんなつもりはない」


辰野「あ、あなたねぇ…っ」

歩鳥「いいよ、タッツン。私は…二人を救いたい」

紺「お前…」

アリオ「…」

アリオ「歩鳥…お前を1つ試そう」

歩鳥「え?」

アリオ「君のその気持ちが本物なのか」


アリオ「…歩鳥1人で来てもいいし皆で来てもいい…この建物を入り屋上まで来るんだ」

紺「…?」

辰野「それだけ?」


アリオ「…そして、その道中には様々な人類の醜い歴史が映し出されている」

歩鳥「!」

アリオ「目を背けたくなるようなものばかりだ…その中を通り抜け…屋上まで来い。俺はそこで待っている」

アリオ「まあ、無理なら無理でいいよ…別に。途中でも呼べば助けてあげるから」



歩鳥「…」

アリオ「ただし、俺を最後まで説得できないようなら…歩鳥はこのホワイトリドルにずっと居てもらう」

歩鳥「!?」

真田「はあ!?」


キリエ「アリオ…!何もそんな!」

アリオ「…じゃ、屋上で待ってるよ」


フッ


真田「ど、どうすんだよ…」

紺「歩鳥、行くのか?」

歩鳥「…うん、行くよ」

辰野「こ、怖いんだけど…何が映し出されるのよ」

歩鳥「無理なら目をつむってていいよ…私だって怖いし」

歩鳥「無理になったら私が引っ張ってあげるからさ」



ガコン…



歩鳥「みんな…心の準備はいい?」

紺「う、うん…」ギュッ

歩鳥「先輩、いきなり私にしがみついてんじゃないっすか…」

辰野「せ、先輩は本当に…怖がりなんだから…ねえ」ガクガク

歩鳥「タッツンもじゃん」タハハ

真田「…俺は、耐えてみせるぞ…。最後まで、行ってみせる…」

ザッザッザッ…





ダダダダダダッ!!


辰野「ひっ!?」ビクッ

歩鳥「さっそく来たか!」

ぎゃあああああ!!
あああっ!!!



辰野「うわあ!怖い!」

紺「いきなりひでえ映像流しやがる…!」

真田「うう…っ」

歩鳥「きついねえ…こりゃ」

歩鳥(でも…最後まで行かなきゃ)


ドオオオオオンッ!!ボオオオンッ!!!
ゴオオオオオ…ッ



真田「ぐうっ」

辰野「きゃああ!」ビクッ

紺「うぅ…こ、怖く…ない…」ボロボロ


歩鳥「…ふう…っ」ダラダラ


助けて……助…け…


辰野「うぷ…っ」ガク


歩鳥「タッツン!?」


辰野「ごめん…もう…無理…」グスッ



歩鳥「…わかった。私の手につかまって。目えつむってていいから」

辰野「本当ごめん…」

歩鳥「いいんだよ。無理に見ることない」ギュッ

真田「…嵐山は、強いな…」フラッ

真田(俺もちょっとヤバい…)




ああああああ!!

うあああ…っ


神様…っ!!



パアンッ パアンッ !!!



紺「はあ…はあ…ううう…っ!」ボロボロ


紺「もう、見たくない…」フラッ


歩鳥「…先輩も無理しなくていいよ。怖いなら目えつむって」

紺「ごめん……」パチッ

歩鳥「真田は?」


真田「俺は…大丈夫、だ…っ!」ゼエゼエ


歩鳥「…無理してない…?」

真田「嵐山だって無理してんだろ…」

歩鳥「…ははは」

歩鳥「じゃあ真田…タッツン任せたよ。私は先輩引っ張って行くから」

真田「任せろ」



歩鳥「…ねえ…真田」

真田「!」

歩鳥「正直、私もかなりキツいからさ…心強いよ。ありがとう」

真田「うん」


歩鳥(…こんなとき…静ねーちゃんも居れば頼りになっただろうに…)

歩鳥(でも、今は居ないから仕方ない…私達だけで何とかしなきゃ!)


――――――


屋上




アリオ「…」


キリエ「…何も…あんなの見せなくても良いじゃない…」

アリオ「俺は無理に見ろとは言ってない。説得したければここまで来いって言った…それに呼べば助けてやるとも」

キリエ「…でも、歩鳥をこのホワイトリドルにずっと居させるって…」

アリオ「姉ちゃんの為に言ったんだ」

キリエ「…ねえ…アリオ」

アリオ「なに?」

キリエ「あなた…本当は……」

アリオ「…」


ガチャ…

アリオ「!!」

キリエ「!」





アリオ「…まさか…本当に…」



ザッ…






歩鳥「へへ…来てやったよ…アリオ」フラッ



真田「タッツン!もう目え開けても大丈夫だぞ!」

辰野「うう…音だけでもキツかった…ごめん、真田くん」

真田「いや、いいって。俺ももうヤバいから…」ガクガク

紺「…お…屋上ついたか?」ブルブル

歩鳥「着きましたよ、安心してください」


アリオ「…まさか無事に最後まで来るなんて…」

歩鳥「全然無事じゃないわ!何度か目眩して倒れかけたわ!!」



歩鳥「…で、私はちゃんと来たよ。何か言いたいことはある?」

アリオ「………」


アリオ「…なんで…そこまで…」


歩鳥「…あのさぁ、アリオ…私、なんとなく気付いたんだけどさ…」

アリオ「…?」


歩鳥「あんた…こうやって心配してあんな場所からも来てくれる人間を…待ち望んでたんじゃないの?」ザッ

アリオ「な…っ?」

歩鳥「人間不信なようなこと口では言うけど…本当は、信じたいんだよね」ザッ



歩鳥「ねえ、アリオ…あんた。最初下で会った時より…見た目幼くなってるよ」

アリオ「!?」

アリオ(本当だ…何で…)

歩鳥「…それがきっとあんたの本心だからだよね。子供の頃が楽しかったから…またあんな楽しい毎日に戻りたかった」

キリエ「…」

歩鳥「…自分の存在を認めてくれる人間にいてほしかった。お姉さんと普通の人間として生活していたかった」


歩鳥「…ただ、それだけだよね?難しい話なんか並べず正直に言いなよ」


アリオ「………」


辰野「…」

真田「…」

紺「…」



キリエ「アリオ…もう、いいでしょ?」


アリオ「く…う…っ」


アリオ「俺は…」


ギュッ

アリオ「!」



歩鳥「辛かっただろうね…でも、私には…何もできない……ごめんね…」グズッ

アリオ「な…泣いてんのか!?なんで…」


真田「…」


アリオ「俺は…今までさんざん好き勝手やって…あんた達には…あんな映像を見せて…」


歩鳥「本当にね…一発叩いてやりたい気持ちもあるけど」グズッ


辰野「おいっ」

キリエ「…」



歩鳥「…でもさ…世の中には完璧な人間なんていないよ…あんたも含めてさ」ポンッ

アリオ「!」

歩鳥「人間なんて弱い生き物だよ………だから、悪いことだってやるし」

歩鳥「でもね、変わる事だって…頑張ればきっと出来るから」


アリオ「…」

歩鳥「えーと…まあ、何と言えばいいのか…いい言葉が思い浮かばんけど…」


歩鳥「あんたも人間だよ、アリオ。誰がなんと言おうと私が認めてあげるから」


アリオ「…うう…っ」

キリエ「…」ギュッ


アリオ(俺は……誰かに…人間として認めて欲しかったのか……)

歩鳥「もういつまでもホワイトリドルなんてのに居ないで…楽になりなよ。こんなとこ居たって苦しいでしょ」

アリオ「……」ズズッ

歩鳥「大丈夫、私はずっと覚えていてあげるからね。だから安心しなよ?」


アリオ「…でも…もし、君たちが元にいた世界に戻れば…その記憶は全て消えるんだ」


歩鳥「あ、そうなの!?じゃあ…」


歩鳥「そんときゃ生まれ変わって私んとこ来な!『忘れんなアホー!』って!」


キリエ「ふふっ…」

紺「簡単に言うよお前は…」

辰野「生まれ変わってって…」


アリオ「…お前は…アホだな…」グイッ

歩鳥「んえ!?ショック!」

アリオ「でも…」

アリオ(何故だろうな…心が楽になってきた)



アリオ「俺は…バカだった…自分勝手にやって…姉ちゃんにも迷惑かけて」

キリエ「…」


アリオ「ごめん…」



歩鳥「気にしなくていいって。だいたい最初は無理矢理ホワイトリドルに取り込まれたんでしょ?」

アリオ「そうだけど…」


歩鳥「過去の事あーだこーだ言ったって…何も変わらないよ」


アリオ「…」

キリエ「私も、歩鳥達を勝手に連れてきて…ごめんなさい」

歩鳥「いいっていいって。楽しい事だってあったしね!!」



歩鳥「…もう…気はすんだ?」





――――――――



―――――



――



訓練兵団食堂



歩鳥「はい、という訳で!明日リドルの力を使って私達は元の世界に帰り…ホワイトリドル機能停止作戦が決行されるわけですが!!」


歩鳥「今夜は私達と104期の皆のお別れ会をしようと思う!今まで皆ありがとー!明日のお別れまで…存分に楽しもうではあるまいか!!」


エレン「あいつ泣き笑いながら喋ってるよ」

ミカサ「ふふ…」

アルミン「寂しくなるね…」


歩鳥「それでは皆…」



歩鳥「めいどっ!!」ビシッ


辰野「乾杯じゃないのかよ」ビシッ

紺「おめーはアホか」ビシッ

ヒストリア「ちゃんとしようよ最後くらい」ビシッ

歩鳥「ひいいいん、三人から同時にツッこまれた!!しかもヒスちゃんまで!!」


静「はいはい、かんぱ~い」



真田「まあ、いつかは別れる時が来るのはわかってたけど…寂しいなやっぱ」

ジャン「ああ…」

マルコ「楽しかったね」

ライナー「お前とは訓練兵団で色々な話をしたよな…エロ本とか」

真田「ブッ!!?」

ライナー「ベルトルトもエロ本の話してるとき興味無さそうなこと言いながらソワソワしてたもんな」ハハハ

ベルトルト「な、な、何を言ってるんだライナー!!エロ本なんて!!」

ジャン「デカイ声でエロ本とかいうなよ。聞こえるぞ」


アニ「…」ジロッ


ベルトルト「うわあああ!アニに見られてる!!」ワアアア


ライナー「す…すまん…」

真田「大丈夫だって。俺なんか現物を見られたからよ」ポンッ



歩鳥「ベルトルトでかい声で恥ずかしい言葉叫んだよ。全くエロユキのツレはやっぱエロエロだね」

辰野「年頃の男子はあんなもんよ」



歩鳥「ところで…結局壁って何で出来てたの?」

静「前に予想した通り巨人だよ…グリシャさんとレイスの記憶が蘇ったエレンくんから聞いた」


静「彼等は戦争で大量に量産された大型巨人らしい…そしてその技術を封印させるため、その力を使い巨人達を壁にし存在を無いものにしたんだ」

歩鳥「その巨人達は、これからどうなるのかな…」

静「ホワイトリドルが機能停止したらリドルの力により生まれた無知性巨人や座標の力で生まれた壁も消えるらしい。その時、壁にされた大型巨人達も…100年以上も壁にされていて無知性の状態になっちゃってるから、ホワイトリドルの機能停止と一緒に消えちゃうらしいよ…」

歩鳥「…そっか…」



静「そんで、前に私の首しめてきたのはやっぱり初代レイスの亡霊だったみたいだよ。私の勘が当たったから…」


静「キリエちゃんに呼ばれたのは、謎に気づく事で歴史の流れを変えてくれるかもと思ったのもあるかも知れないね」

歩鳥「うん」



静「ま、今はそういう話より、皆と楽しみなよ。今日明日で最後だよ」


サシャ「コンセンパイ…お別れなんて寂しいです…」

コニー「うう、コンセンパイと友達になったのに…」


紺「悲しむなよ、二人ともありがとうな。楽しかったよ。…センパイの部分は名前じゃないけどな」


サシャ「タッツンともこれで最後なんですね…」

コニー「タッツンはツンツンしてたけどいい奴だったよ…」

アニ「ありがとうね、タッツン。ずっと忘れないよ」


辰野「うん、元気でね」

辰野「…ところで、今更言うのもあれだけど、私は最後までタッツンなのね…まあ、もういいけども」


静「タッチャン…最初の1週間くらいは気味悪がってあまり関わろうとしてなかったのに、だんだん打ち解けて今ではここでの友達も多いよね。私も嬉しいよ」

辰野「タッチャンじゃなくてタッツン…じゃなくて辰野です。てかわざと言ってませんか?」


歩鳥「サシャ…コニー…楽しかったね、色々な思い出…」

サシャ「はい…」グズッ

コニー「座学で教官の似顔絵を書いたり…立体機動で木の枝を利用した凄い動き発明して教官に怒られたり…」

サシャ「夜中にお腹空いてホトリと食糧庫に忍び込んで失敗したり…」

歩鳥「タッツンの無くなった立体機動装置を探してたら実は単に私が間違えてタッツンの使ってただけだったり………寝てるジャンのノートに落書きしたりしたね」

コニー「ああ…そんなこともあったな」ハハ


ジャン「ちょっと待て!寝てる間に落書きってなんだコラ!?」ガタッ

歩鳥「ちゃ、ちゃんと消したよ…さすがに残すなんて酷い事はしないって」

ジャン「そういう問題じゃないだろ!?」

歩鳥「申し訳ありませんでした…」


ヒストリア「三人とも子供みたいな思い出ばっかりだね…」ハハハ


歩鳥「ヒストリアも自然体になって来たし…私も安心して帰れるよ」

ヒストリア「うん、ありがとう」

辰野「最近のあんた良い感じだよ」

ヒストリア「ホトリやユミルのおかげだよ」

静「このまま性格が歩鳥に似てきちゃうかもな~」アハハ

ヒストリア「ん…と、それはちょっと…」

歩鳥「返答に困った顔すんなよ!?」

紺「ははは」

歩鳥「そんで紺くんはユミルとは気が合わないままだったね」

紺「な、別にいいだろ」

ユミル「私も別にホトリみたいに友達いっぱい欲しい訳じゃねえよ」

コニー「よし、二人で腕相撲でもしろよ」

紺「え~?」

ユミル「何でだよいきなり」

歩鳥「激戦の末、目覚める友情って奴だね」

ヒストリア「いいね、見てみたい」

ユミル「ヒストリアまで言うか…っ」

歩鳥「先輩とユミル、どっちも意外と強いからどうなるかわからないね」

辰野「先輩は下手な男子の数倍運動神経いいからね」

歩鳥「やっぱ双葉は男だった…」

紺「おい、歩鳥、辰野。お前らも後で相手してやるから覚悟しとけ」

歩鳥「ひえっ!?」

辰野「私まで!?」


歩鳥「そういえばさ、ホワイトリドル止めるのってエレンの力を利用するんでしょ?」モグモグ

エレン「そうだよ」

ミカサ「ホトリ、パンをモグモグしながら喋らない」

歩鳥「それってさ…何か、大丈夫なの?危険とかはない?」


エレン「ああ…父さんが考えた方法で…座標を通して俺の精神をホワイトリドル内部の機能の中枢まで送り内から破壊する作戦らしいけど」

エレン「もしかしたら…破壊できても俺の精神も二度と戻って来れなくなるかも知れないらしい」

ミカサ「…」ギュッ

歩鳥「え!?何それ!?」

アルミン「…言っちゃったね、エレン…ホトリなら騒ぐだろうから黙っておこうって言ってたのに」

エレン「やっぱり、嘘ついたり黙ってるなんか出来ないよ」

歩鳥「…」

エレン「そんな顔すんなよ。心配するな、必ず成功させて帰るさ」

エレン「だから…お前は俺を信じて明るく居ろよ。そっちの方が俺も落ち着く」

歩鳥「…うん、わかった。頑張ってね!」

エレン「おう」


ジャン「…最後まで騒がしい奴だったな。ホトリは」

真田「うん」

真田「でも…あいつが居ると空気が明るくなるんだ」

ジャン「…そうだな。ま、頑張れよ」ポンッ


真田「はは、お前もな」




アニ「…私達はいったん故郷に帰るつもりなんだ」

ライナー「ああ。まずは故郷の人間達を説得しなけりゃならんからな」

辰野「そっか…大変だろうけど、頑張ってね」

ベルトルト「うん」


真田「いつか皆、分かり合えたらいいな」

ライナー「ああ…いつかな…」

アニ「…」



辰野「ま、辛気臭い話は今はよそうよ」

アニ「うん」




歩鳥「…さてさて、お食事も終わったところで…私に1つ面白い提案があります」


エレン「おう、なんだ?」

アルミン「面白い提案?」

静「な~に?」


歩鳥「ジャーン!これを見てみそ!」

黒リドル「…」



辰野「それ!リドルじゃないの!」

歩鳥「そそ、ブラックリドルは単に意思の通信機能や記憶解読機能があるだけだから別に危険がないというわけで破壊はしません…という訳です」

歩鳥「まあ、正確には捨てられようとしてたのを私が鼻水と涙たらしながら欲したら『まあ危険物ではないし』とくれたのであります」


静「鼻水涙流してまで欲しかったかよ~~~」

真田「何に使うんだよ?」

ジャン「玩具ではねえぞ?」


歩鳥「ふふふ…アルミンくん。この黒リドルの持つ機能は何かな?」


アルミン「えっと…だから、記憶の読み取り…」

歩鳥「それだ!」ビシッ

アルミン「え!?」ビクッ


歩鳥「ユミルの話だとこいつは記憶の『保存』も可能らしい」

ユミル「ああ」


静「ははあ~~…にゃるほど。あんたの考えは読めた!」


アルミン「もしかして…」

ジャン「そいつに俺達の記憶を保存して…時代を越えた先にいるホトリ達の下へ届けようって訳か」

歩鳥「その通り!皆の記憶をこいつに保存して…そして歴史を越え私達のいる時代にもこいつが残っていれば、私達の住む町にこの黒リドルが流れてきて…また記憶として皆と再会できるかも知れないじゃないか!」

紺「へー、面白そう」

辰野「あんたにしちゃいいこと考えるじゃん」

歩鳥「えへへへ、もっと褒めて」

静「うん…これまでこの歴史は何度も繰り返して来たみたいだし…それを私達が止めた訳だけど」

静「まあ、その繰り返しだった中での私達が呼ばれたこの世界が、私達がいた元の時代より過去だと仮定したら…可能かも知れないね」

アルミン「上手く行くかは運もあるけど…」

歩鳥「いいじゃんいいじゃん、やってみようよ!」


歩鳥「ついでに、よく一緒にいた私達メンバーの名前をリドルの裏に掘ろう」クルッ

マルコ「掘れるの?」

歩鳥「ブレードでは無理だった」

ヒストリア「もう試したんだね…」

マルコ「どうするの?」

歩鳥「ふふふ…私の天才頭脳は何でも閃くのだよ」

ジャン「勿体ぶらんでいいからさっさと言え」

真田「まあまあ」

歩鳥「エレンくん!硬質化の力でちょうどいいサイズの刃物を作ってくれたまえ!」

エレン「そんな事に巨人の力使わせる気かよ!?まあ別にいいけどさ!」

アルミン「でも、確かに硬質化の力で作った刃物なら掘れるかも…」

ミカサ「私とエレンの名前は是非くっつけて欲しい」

歩鳥「もちのろんだよ!」

辰野「じゃあ私は…」

紺「落ち着け」






バシュウウウウウ…


エレン「ほら、作ってやったぞ…これでいいか?」

歩鳥「お、ちょうどいいね!サンキュー!」ガリッ

ライナー(本当に硬質化で作るとは…平和的な巨人の使い方だ)


辰野「うーん、でも歩鳥が掘るのは心配だわ」

静「な~んか失敗して取り返しのつかないことになりそうだもんな~~」

真田「そういう事言うな………と、言いたいとこだが否定できない……」

歩鳥「うん、自分でも思った」

紺「思ったんかい」ベシッ


歩鳥「じゃあ、ここは手先の器用なアルミンに任せよう」

アルミン「え、ぼく!?」

ミカサ「うん、アルミンなら安心」

ジャン「アルミンなら心配いらないな」

エレン「頼んだぜ」

アルミン「うん…結構責任重大だなぁ…」

歩鳥「大丈夫大丈夫」ポンッ

アルミン「わ、ちょっと今は触らないで!」

歩鳥「す、す、すみませんでした…っ!」ガクブル


辰野「あんた本当に抜けてるわね…」ハア


ガリッ ガリッ ガリッ



ガリッ ガリッ………






アルミン「ふう…あとはユミルの名前を掘って……完成だ」


ユミル「…私のとこは、ユミルの民と書いておいてくれ」


アルミン「え?」

コニー「何で?」


ユミル「ユミルの民の理想は…争いを無くし和解させることだった。ホトリはそれを一歩進めさせてくれた。その礼みたいなもんだ」

歩鳥「ははあ、なるほどね」


アルミン「…出来た」フウ


歩鳥「おー、すごい!」

エレン「上手く掘れてるじゃねぇか」

ヒストリア「さすがアルミンだね!」

ジャン「うん…まあ、悪くねえな」

真田「こいつとまた会えるかも知れないと思うとワクワクするな…」

辰野「見せてみ~…」チラッ





辰野「って、なんじゃこりゃあああああ!?」

歩鳥「うわ!?突然なに1人ツッコミしてんだよ、タッツン!?」

ライナー「何か不満でもあるのか?」

静「変なとこは別に無いと思うけど?」

辰野「見て!ちゃんと見て!」





『リドルの裏に掘られた文字』』

エレン・イェーガー
ミカサ・アッカーマン
アルミン・アルレルト
ジャン・キルシュタイン
マルコ・ボット
コニー・スプリンガー
サシャ・ブラウス
ヒストリア・レイス
ホトリ・アラシヤマ
ヒロユキ・サナダ
タッツン
シズカ・カメイドウ
フタバ・コン
ライナー・ブラウン
ベルトルト・フーバー
アニ・レオンハート

ユミルノタミ



辰野「なんで!私だけ!タッツンなんだ!」


アルミン「あ…ごめん!いつもの癖でつい…」

ミカサ「ごめんなさい…もうタッツンが定着してしまっていて…」

マルコ「でも…タッツンっていいアダ名だと思うよ…?」


辰野「…うん…まあ、いいよ。タッツンで……私も騒ぎすぎたよ。せっかく掘ってくれたのにケチつけるのも悪いもんね。それに考えようによれば、タッツンってアダ名こそが皆との思い出と言えるかも知れない…」

辰野「大事なのは、掘られてる名前じゃなくて…思い出だもんね!」

アニ「…うん、その通りだね」

コニー「良いこと言うじゃねえか」

歩鳥「そうそう、タツノでもトシコでも…タッツンはタッツンなんだから、思い出を大事にしようね、タッツン」

辰野「あんたね、余計なこと言わなくていいから」


―――――――

翌日





白リドル「…」


歩鳥「ついに帰るときが来たね…」

紺「うん」

静「色々あったね」


エレン「お前ら、あっちに行っても元気でな!」

ミカサ「…ホトリは不思議な子だった…」

アルミン「うん。あんな人は初めて見たよ…」

歩鳥「アルミン!黒リドルは任せたからね!」

アルミン「うん、皆の所に届けれるように大事にしておくよ」

歩鳥「ミカサ!エレンと仲良くね!」

ミカサ「照れる」

歩鳥「エレン!ホワイトリドル止めて…ちゃんと無事戻れよ!」

エレン「言われなくてもわかってるよ!!」



ライナー「…ついに行っちまうんだな…」

ベルトルト「…色々巻き込んでしまってすまなかった」

真田「いいんだよ。俺も…お前らに会えて良かった」

辰野「途中でくじけたりしちゃダメだよ。頑張ってね」

アニ「うん…和解させてみせるよ」

ライナー「それが俺達の罪滅ぼしだ…まあ、都合のいい考えかも知れんが」

エレン「そうだな、お前らに都合のいい考えかも知れん」

ベルトルト「エレン…」


エレン「でも、本気で罪滅ぼししたいと思ってるなら何も言わねえよ…黙って見ておく」


ベルトルト「…うん…ごめんね…」

エレン「こんなときに辛気臭い話はやめようぜ」

ライナー「ああ…」

歩鳥「…私はエレン達もライナー達も好きだからね!」

エレン「ははっ」

ライナー「ありがとうな」


ジャン「…あばよ。なんだかんだで楽しかった」

マルコ「ずっと忘れないよ」

サシャ「ううう…!寂しくなりますよぉ…!」

コニー「これは涙じゃねぇ…汗だ」グスッ


歩鳥「あはは、皆いつまでも忘れないでね」

紺「…楽しかったよ」

真田「じゃあな、コニー、サシャ、マルコ…ジャン」

真田「お互い、頑張ろうな。友よ」

ジャン「おう、お前も諦めんなよ」

歩鳥「あの二人なに話してんの?」

静「恋の話だよ」

紺「結局お前は本当に気づいてないのか?歩鳥」


ヒストリア「…みんな…楽しかったよ。バイバイ」

歩鳥「うん、ヒストリアも今の調子で元気でいるんだよ」

ヒストリア「本当に…ありがとう」グスッ

歩鳥「笑って笑って。笑顔でお別れしようよ」

紺「それがいいな」

ヒストリア「うん…」

ユミル「…お前らが来なかったら…また歴史の繰り返しになっていたかも知れない。ありがとうな」

歩鳥「うん。じゃあね、ユミル」

紺「…また腕相撲したかったな」

ユミル「…はっ、そうだな」

辰野「本当に少し友情が芽生えてる」

ヒストリア「お~…」

真田「そういえば…どっちが勝ったんだ?」

歩鳥「ん~?」


リヴァイ「…間に合ったか…」ザッ

歩鳥「!あ、兵士長さん!」

ハンジ「本当はもっと色々話を聞いてみたかったんだけどね」

リヴァイ「…ホトリだったか?こいつらが、お前らに一言謝りたいそうだ」

歩鳥「!」

駐屯兵「…すまない。あの時は、巨人への怒りや焦りで…頭が一杯で…」

憲兵「申し訳ない」

歩鳥「いやいや、いいですって。気にしないでください」

歩鳥「これからも頑張ってくださいね」

駐屯兵「ああ…すまない。ありがとう」



ケニー「…俺も知らない世界か。ちょっと興味あるが…」


歩鳥「あ、おっちゃんもいたんだ。来る?」

ケニー「いや、やめとくよ。見送るだけでいいさ」


歩鳥「憲兵団のとこでは助けてくれてありがとうね!」


ケニー「おう。じゃあな」


ケニー(俺は結局生きてる………)

ケニー(ま、もう少しの間待ってろよ…クシェル…ウーリ)




ジーク「…そろそろいいかい?君たち」

歩鳥「猿のおっちゃん」

真田「ジークさん…来てたんですか」

ジーク「ああ…タッツンも、思えば長い事俺達といたな。元気でな」

辰野「あはは。お元気で」


エレン「じゃあ…そろそろホトリ達を帰そう」

アルミン「そうだね」

歩鳥「うん…」



歩鳥「キリエ、アリオ…もういいよ。私達を元の世界に送ってくれても」

白リドル「…」

アリオ(わかった…じゃあ始めよう)

キリエ(ありがとう…歩鳥……ずっと忘れない)


歩鳥(…うん…二人も…もし生まれ変われたら……私の所まで来てね)



白リドル「…」カアアアアッ


真田「来た…っ」

静「いよいよだね…これで私達は帰れる」


紺「長かったね…」

辰野「うん」

歩鳥「みんな、元気でね!バイバイ!!」



カアアアアッ!!!!!!










シュウウウウウ………



エレン「………ホトリ達の姿がなくなった…」

ミカサ「帰れたのね…」

アルミン「うん…帰ったら、この世界での記憶も無くなっちゃうらしいけど…」


ジャン「…そのために、黒リドルをあいつらのいる時代に届くまで大事にしとくんだろ」

アルミン「うん」


ヒストリア「…うう…」

サシャ「うわあああん…」

コニー「寂しくなるぜ…っ」

ライナー「…」


ライナー「これから…頑張らねばな…」




アルミン「…ふう…さて…最後に」


ミカサ「…ホワイトリドルの機能を止める…」

エレン「ああ」


アルミン「…危険も伴うらしいけど…」

ミカサ「…っ」

エレン「やってやるさ」



ジーク「待ちな」

エレン「!」


ジーク「エレン…お前がそんな危ない事をする必要はないよ」

エレン「ジーク…!?」


アリオ(エレン…ホワイトリドルは俺達で止める)

キリエ(あなたは…未来を生きて)

エレン「…!?キリエと…アリオ?」


ジーク「…こいつは俺が始末する。若者は…まだまだ長い未来があるだろ」

ライナー「戦士長…なにを…」


ジーク「…次の戦士長は四足くんに託してある。彼と一緒に壁内人との和解を進めなさい」

ベルトルト「…!」


ジーク「アリオ…キリエ…昨日話し合った通りにやれるか?」ザッ


ジーク「あと…これには…エレン、君にも少し協力してもらうよ。でも君はサポートくらいだから危険はない、安心してね」

エレン「…わかった」


ジーク「…グリシャ…文句は無いだろ?」

グリシャ(…)


ジーク「無いようだな。始めよう」





ジーク「アリオ、キリエ、タイムスリップ機能…作動開始」

白リドル「…」


ジーク「エレン…君は座標を通し、ホワイトリドルの内部を少しだけいじってもらう。深いとこまでは行かないから危険はない」

エレン「わかった…」


エレン「…」グッ



アルミン「なにをする気だ?」


ジーク「タイムスリップ…移動場所指定…」


ジーク「生物のいない星だ」

―――――――

ホワイトリドル内部


エレン「う…これは、リドルの内部か…」



グリシャ「そうだ。ジークに言われた通り、深くまで行く必要はない」

エレン「父さん!」

グリシャ「…私も手伝おう」


キリエ(エレン!気をつけて!)

エレン「!」



レイス「…邪魔はさせん…」

グリシャ「…初代レイス」

エレン「え!?」

レイス「ホワイトリドルを破壊はさせん…人類の為には…」

エレン「うるせぇよ、こんなもん必要ねぇ…」

レイス「必要ないだと!?わかっているのか!?人類を管理するものがなければ…野放しにしていればいずれ世界全体をも破壊し…」

エレン「………」

エレン「俺は、人間の可能性を信じる」

グリシャ「…ああ、俺もだよ。エレン」

レイス「!!」

エレン「ミカサを、アルミンを、仲間を…皆を、ホトリ達のいる世界を守るために」

エレン「ホワイトリドルなんざ、ぶっ壊してやる!!」

レイス「貴様…!」

グリシャ「そこをどけろ!!」

レイス「ぐう…っ」



キリエ(…レイスは、後は私に任せて)

エレン「!」



キリエ「…もう…やめましょう」

レイス「!!この声は…キリエ!?」

アリオ「…もういいんだ。間違っていたんだよ…」

アリオ「そもそも…人類を管理しようなんて、それこそ神様気取りで傲慢だよ」

キリエ「…ねえ…レイス…あなたは」

キリエ「あなたが最初に望んでいたものは何?」

レイス「…私が…最初に望んでいたもの………」

レイス「…全ての人間が…幸せに暮らせる世界…」

キリエ「…ホワイトリドルなんかでは…人は幸せになれないわ」

レイス「………」


レイス(私は…間違っていたのか……どこから、間違っていたのだろう………そうだ…私は…ただ…)

レイス(…平和な世界を……)



エレン「………」

グリシャ「エレン、こちらに集中しろ」

エレン「あ、うん!」

グリシャ「…ここから座標の力を使い…ホワイトリドルのプログラムを少し書き換えるのだ。エレンと私がいれば…機能に干渉しやすいはずだ」

エレン「わかった…やるぞ、父さん」


―――――――

エレン「…う…」パチ

ジーク「…エレン…終わったかい?」

エレン「…ああ、こっちは終わった」

ジーク「お疲れさん。じゃあ…行ってくるよ。この白リドルと共に」

エレン「え?」

ジーク「本来リドル自身を転移や地球外への転移は不可能だが…リドルに干渉しやすい人工生命体やがいたことでホワイトリドルのプログラムを書き換えることが出来た」


ジーク「誰も居ない惑星へ、俺が…ホワイトリドルと共に転移する」

アルミン「!?」


ジーク「じゃあね」



カアアアアッ!!!






生物のいない惑星



キリエ(…ジーク…)


アリオ(本当にこれで良かったのか?二度と戻れないぞ…)


ジーク「問題ないさ…元から死ぬつもりだった」

白リドル「…」


ジーク「こいつで仕上げだ…戦士の故郷に一本だけ持っていた…禁断の巨人能力の注射だ」

ジーク「こいつは…惑星一つ吹き飛ばす威力を持っている。自分も巻き込むがな」

ジーク「…この惑星に今いる生物は俺だけ…俺が消えればこいつは星から生物がいなくなったと判断するだろう。惑星が無くなりゃ生物も生まれなくなる。生物がいなけりゃこいつも役目が無くなり機能停止する」

ジーク「…あばよ」プスッ



カアアアアッ!!!









チュドオオオオオオンッ!!!!!







生物のいないある惑星が破壊され…
ホワイトリドルは宇宙を漂った…

人間のいない空間…
ホワイトリドルは人類を管理する為に作られたシステム
生命反応のない場所で、ホワイトリドルは自分の役目が終わったと自己判断し…
機能を完全に停止させた。
もう二度と…動く事はない。





そして、機能が停止したことにより壁と無知性巨人…座標は世界から無くなり

アリオとキリエの魂は解放され天に昇った…



―――――――

―――――



ああ…そうだ、思い出した…

歩鳥「これは…あの時の記憶だ……黒リドルはちゃんと……私達のとこまで、来たんだ…」


歩鳥「…ん?まだ続きがある?この映像は…」





歩鳥「…!別れてから1年くらいの皆の映像だ!!」



―――――――

エレン巨人「…」ズシッズシッ

鎧の巨人「…」ズシッ

超大型巨人「…」ズウウンッ

ジャン「よーし、そこだ。いいぞエレン!ライナー、もっと材料運んで来てくれ!」


アルミン「…ホトリ達と別れてから1年がたった。もう壁や無知性巨人は無くなり……エレンやライナー達の巨人の力を利用しながら、街の復旧作業をしている」

コニー「おい、何一人言言ってんだ?アルミン」

アルミン「わ、ちょっと、今この黒リドルに記憶を保存させてる最中なんだよ…」

コニー「あ、そうなのか。すまん」



ミカサ「エレン、みんな。そろそろ休憩にしよう」

エレン「ああ」ジャリッ

ライナー「ふう…」

ベルトルト「疲れた…」

アニ「お疲れ様」

ジャン「あんま無理して巨人の力使いすぎると身体に負担かかるんだろ?程々にな」


ライナー「ああ、大丈夫だ。復旧作業の手伝い程度なら休憩さえ取れば問題ない」

マルコ「…ふう…あっちもだいぶ建て直して来たよ」ジャリッ

サシャ「そう言えば、ライナー達の故郷の人とは進展は?」

アルミン「うん…女王になったヒストリアが中心にちょこちょこ向こうまで話に行ってるらしいけど、なかなか上手く進まないらしいよ」

ライナー「やはり…簡単には行かんな…」

エレン「…まあ、焦ってもいけねぇよ。そういうのは」

ベルトルト「うん」

ジャン「そういや、黒リドル持ってきてどうしたんだ?アルミン」

アルミン「ああ、ちょうどホトリ達と別れてから1年だし…皆の事をこいつに保存しておこうかと」

コニー「じゃあ、ヒストリアも呼んでこようぜ」

アルミン「でも、今は女王だし…」

ミカサ「大丈夫、あのこ意外と暇だから」



王政本部


ウルクリン「…ヒストリア」

ヒストリア「ん、どうしたの?」

ウルクリン「友達が呼んでるよ」

ヒストリア「え!?」ザッザッ

ガチャッ

ユミル「よう」

アルミン「ヒストリア…ちょっといいかな?」

ヒストリア「うん、どうしたの?」

アルミン「ホトリ達と別れてから1年って事でこの黒リドルに僕達の記憶保存しておこうかと思うんだけど…一緒に来る?」

ヒストリア「うん、行きたい!」

ロッド「ちょっと待ちなさい、ヒストリア。女王の仕事は…」

ヒストリア「ごめん、お父さん代わりにお願い!!」

ロッド「ええ!?」

ウルクリン「あはは」



ケニー「…ま、女王の護衛なら俺がやってやるから心配すんなや」ジャリッ






ヒストリア「お待たせ!」ザッザッザッ

エレン「お、皆集まったか」



アルミン「じゃ、今の皆の姿をこの黒リドルに残しておこう」

ミカサ「うん」

ジャン「あいつらは元気にやってるかな…」

ライナー「元気にやってるだろうさ」

アニ「特にホトリは騒がしいからね」

アルミン「あはは」

コニー「ホトリー!みんなー!見てるかー!?」

サシャ「私達は元気ですよー!!」



エレン「こらこら、お前らで独占するな」

アルミン「とりあえず、皆の笑った顔を保存しようか」

ミカサ「笑った顔」

エレン「ちょっと恥ずかしいな」

ジャン「ま、いいじゃねえか。それもよ」


―――――――

―――――



歩鳥「…エレン…ちゃんと成功できたんだね。あはは…皆、元気でやってる」

歩鳥「…ん?さっきのから更にまだ先の映像が…」

………ホトリ……聞こえてるかい?僕…アルミンだよ


歩鳥「…!アルミン!?すっかり老けちゃってまあ…」


あれから何十年も経ち…色々大変な事はあった…でも、何とかライナー達の故郷と分かりあえるとこまで来れた

歩鳥「!!」

そして…悪用されたら危険な巨人化の技術も…僕らの世代で完全にこの世から抹消させるつもりだ…



…この僕の記憶が君のところまで本当に届いているのかわからないけど…
もし見ているのなら、安心してくれ…僕らは何とか平穏を築いているから

歩鳥「…うん…ちゃんと届いてるよ…」



でも、この先なにがあるかわからない…人が増えればまた世界で戦争が起きるかも知れない…でも、それでも…

人間の可能性を信じよう…どれだけ道を間違えたって、また正すことだって出来るはずなんだから

歩鳥「うん…」


じゃあね、ホトリ…

いつまでも笑顔でいてね。僕らも笑顔でいるから。

歩鳥「…あはは…最後に皆の笑顔の映像を残すなんて………涙出てきたじゃん」ポロッ


――――――――


―――――


―――



丸子商店街


丸子病院



歩鳥「…んがっ!?」パチッ



黒リドル「…」


歩鳥「…ここは…病院?」

紺「う…寝て、た…?」パチッ

静「…ん~…?」パチッ

辰野「う…あれ?」パチッ

真田「あれ、何か…見てたんだけど…」パチッ

嵐山母「歩鳥!!」

嵐山父「良かった!目が覚めたんだな!!」

歩鳥「うわ!お父さん、お母さん!」


ウキ「良かった…目が覚めてくれた…」

歩鳥「ああ、そうだ…このリドルを見てたら寝ちゃったんだっけ…うーん、何か見てたんだけど思い出せないなぁ」

歩鳥「でも…これだけは何となくわかるよ。このリドルは…すごく大事なものだって…そんな気がするんだ」

ウキ「…おい、歩鳥や。どうしたんだい」

歩鳥「え?」

ウキ「涙が出てるよ」


歩鳥「あ、本当だ…でも…」

歩鳥「何だか…暖かい気持ちの涙だよ」






一週間後…



亀井堂


静「よう、歩~鳥~」

歩鳥「ねーちゃん、この小説読んでよ。私が書いたんだ」

静「はいはい、見せてもらうよ~」


黒リドル「…」

歩鳥「相変わらずここにあるんだね、リドルは」

静「うん、この前から余計捨てたくない気分になっちゃってね」

歩鳥「…私にとっても宝物だよ」

静「うん」

歩鳥「さーてと、頼まれた買い物しなきゃ。読み終わったら教えてね!」

静「はいよ。行ってらっしゃ~~~い」







紺「…あ、歩鳥」

歩鳥「先輩!こんにちは!」

紺「これからシーサイド行くとこだったんだけど…」

歩鳥「私、ばあちゃんに頼まれて買い物の途中だったんですよ!」

紺「ふーん。付き合うよ…心配だし」

歩鳥「心配って…子供じゃないんだから…」

紺「はは」

歩鳥「…先輩もうすぐ受験でしたっけ?」

紺「うん…」

歩鳥「頑張ってくださいね、応援してますから」

紺「ありがとな」


―――――――――――

――――――――



ラーメン屋 大名行列


歩鳥「やっぱり美味いねえ、ここのラーメン」ズゾゾ

辰野「あんたいつもチャーシュー麺ね」

歩鳥「タッツンこそいつも天津麺じゃん」ズゾゾ

真田「どっちも美味いじゃん」ズルッ


辰野「はあ…もうすぐ進路決めなきゃダメだよね~…」

真田「うん、一年生の頃は時間あるし大丈夫だろと余裕こいてたら…意外と時間経つの早いし決まらない…」

辰野「ほんと、あっという間だよね」

歩鳥「私は…図書館の司書とかいいかな~…とか、思ってんだよね」ズズッ

真田「へえ~…司書ね」

辰野「おお、まともな進路じゃないの。確かにあんた本好きだもんね」

歩鳥「そんで、司書探偵とか…」

辰野「いや、探偵はいらないけどね」

歩鳥「おいっ!?」ベシッ

真田「ははは…」



歩鳥「はあ~…美味かった。ごちそうさま~!」

真田・辰野「ごちそうさま~」


歩鳥「さて、次はどこへ行こうか!」

辰野「昼からシーサイドでバイトだろ」ベシッ

歩鳥「そうでした!」

真田「じゃ…俺もシーサイド行くかな」

辰野「うん、来て来て!」

歩鳥「貴重なお客様だ、大歓迎だぞ真田くん」

真田「遠回しに客いないって言ってるようなもんだな」

辰野「メイド長が聞いてたらキレてるわね」



???「キャッ!」

歩鳥「!悲鳴!?大丈夫ですか?お姉さん!」

???「…さっき…通りがかりの男にバッグを盗まれました…」


真田「どうした?嵐山」

歩鳥「この二十代の綺麗なお姉さんがバッグを盗まれたらしい!さっそく追いかけてくる!」

真田「なんだって!?俺も行く!」

辰野「あ、私も!」

???「皆さん…ありがとうございます」



泥棒「…」ダダダダッ

歩鳥「くそ…っ、あいつ早い!!」


紺「なにしてんだ?歩鳥」

歩鳥「あ、先輩!あいつお姉さんのバッグを盗んだんです!追いかけてください!」

紺「ん~…仕方ねえな…追いかけてやるよ」ジャリッ


紺「ふっ!!」ドウッ

ダダダダダダ!!


歩鳥「うわ!先輩はやっ!?」



紺「捕まえた!!」ガシッ

泥棒「ぐえっ!」ドサッ

歩鳥「ははは、どうだ見たか!」

紺「捕まえたのは私だぞ、歩鳥」


歩鳥「お姉さん…これ、バッグです」

???「あ、ありがとうございます!!ありがとうございます!!」

紺「いえ…」

歩鳥「ふふ、照れてますな先輩」


「姉ちゃん!なにしてんだよ!」

???「あ、さっきバッグを盗まれて…この人達が取り返してくれたの」

「そうなんだ…どうもありがとう」

歩鳥「いえいえ、当然のことをしたまでで」

紺「弟さんですか?」

???「はい」


真田「お~い、嵐山!」

辰野「そろそろ行かなきゃバイト遅れるよ!」

歩鳥「あ、本当だ!それでは!」



???「…本当にありがとう」



「…姉ちゃん、盗まれた時に怪我しなかった?姉ちゃん二十歳になってもおとなしい性格だから」


???「そんな心配しなくても大丈夫だって…私だって大人よ」

???「あなたこそ、高校生にもなって子供っぽいじゃない……アリオ」


アリオ「子供っぽいとは、失礼だな。姉ちゃん」


キリエ「ふふ」


アリオ「そういえばさ、丸子商店街に変わったメイド喫茶があるんだって行ってみようよ!」

キリエ「はいはい。行ってみよっか」


歩鳥「…」





何気ない日常…平穏な日々
それはちょっとした拍子で崩れ去る事もある。


でも、私達は日々…明日も平穏な世界であるよう祈りながら暮らしている


楽しい事 悲しい事 嬉しい事 ムカつく事 憎たらしい事 残酷な事 不幸な事 幸せな事

この様々な人間が生きている世界では…様々な事が起きている。
それでも私達は…未来を信じて生きていかなければならない。

良い事も悪い事も全て引っくるめて…この私達の世界は存在している。



明日も…またこんな何気ない日常が続きますように。



そう信じながら…

それでもこの世界は…




―――――――――

喫茶シーサイド

カラン コロン



歩鳥「めいどっ!!!」




…それでも町は廻っている



おしまい

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