健夜「いよいよ開戦インターハイ」咲「私は観戦」 (676)

以前建てた、健夜「咲ちゃんアイス買ってきたよ」
の、続きです

・咲さんのキャラがかなり改変されてます
・すこやんが咲さんのコーチになってます
・後輩にマホがいます
・インハイ観戦にきてます

これらを心に置いておいて貰えれば、過去作は読まなくても大丈夫だと思います。

今回、阿知賀テイスト強めかも

のんびり更新です。よろしくお願いします

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【インターハイ2日目・Aブロック第2試合】



怜「リーチ」ビシッ


玄(園城寺さんのツモ切りリーチ!)ビクッ


玄(牌譜や映像で見た事と同じ事が起こるとしたら……)


美幸(誰かが鳴かないと……!!)


ソフィア(キッついわぁ)


怜「ツモ 3000,6000」ゴゴゴゴ


玄「はぅっ!!」



恒子『先鋒戦決着ぅぅぅぅぅぅ!!!』


恒子『まさしく圧倒的!!!千里山女子、園城寺怜選手!!!+48000点と他校を大きく突き放しましたぁぁぁ!!!』



怜「お疲れ様」


美幸「お疲れっしたぁ~……」


ソフィア「きっつ……」


玄「お疲れさまでした……」グスッ



健夜『この対局での和了りのほとんどが園城寺選手、そしてその全てがツモ切り立直からの1発ツモでしたね』


健夜『これは凄いです』


恒子『大きく突き放されはしましたがまだ先鋒戦!!他校もまだまだ巻き返せるぞおお!!』



健夜(ふぅ……)


健夜(咲ちゃん、何やってるかな)


―――――
――――――――――
――――――――――――――――



【Aブロック会場・観戦室】



「このアナウンサー大阪のおばちゃん並に元気ええな」


咲「……」ペロペロ


「格下相手とは言え、怜も中々やるやん?」


「…ま、ウチらの方が強いけどな!」


咲「……」


咲「あなた誰ですか……」チラ


「はっ!?ウチを知らんて、ホンマに言っとるん!?」


咲「……もしかして姫松高校の方ですか?」ペロペロ


「なんや、知っとるやないか。そりゃ、天下の姫松を知らん訳あらへんよな!」アッハッハ


咲「……」ペロ


「てか、自分さっきから何食べとるん?」



咲「なにって…見てわかりませんかアイスですよ」


咲「あ、大阪にはアイスが存在して無いんでしたっけ?すみません」ペコ


「なんでやねん!!」ベシッ


咲「あぅ」


「アイス言うたら大阪のたこ焼きアイスやろ!」


咲「うぇ……」


「いや今のツッコむとこやて」


咲(面倒くさい……)



由子「やっと見つけたのよー」


「ん?」


「なんや、由子かいな」


由子「なんや、じゃないのよー」


由子「洋榎がおらへんからミーティング出来ないって恭子がカンカンよー」


洋榎「げっ、忘れとった!!」


洋榎「はよ戻らんと!怒られんのはイヤやー!!!」タッタッタ


咲「……」


由子「相変わらず忙しないのよー…」ハァ


由子「……」チラ


咲「……」メガアウ


由子「私服……?観戦しに来た子なん?」


咲「え?あ、はい」



由子「……」コホン


由子「大阪姫松、応援よろしくぅ!!なのよー」フリフリ


咲「え?あ、はい……」フリ


由子「ほな、またねー」タッタッタ


咲「……行っちゃった」


咲「洋榎さん……って言ってたな、あの人」


咲「観戦してたらいきなり話しかけてきたから何となく会話してたけど……」


咲「初対面でツッコミ入れられるとは思ってもみなかったよ」フゥ


咲「……?」チラ


咲「あ、アイス溶けてる!!っていうかベトベト!」ベットリ


咲「……最悪」

―――――――――――――――――――


【Aブロック2回戦 昼休憩】



健夜「ふう……やっと休憩…」


恒子「おっ疲れー!一緒にご飯食べ行こう!さぁさぁ!」


健夜「あー……」


恒子「もしかして、誰か先約が?」


健夜「ううん、そういう訳じゃ」


健夜「ちょっと待ってね?」つケータイ


恒子「小鍛治健夜!愛人とのランチを電話でキャンセル!」キャッキャッ


健夜「違うから!!……1人追加してもいいかな?」


恒子「うん?も、もしかして愛人を私に紹介……!?」


健夜「だから違うって!!」プルルルル



恒子「にゃはは!おっけーおっけー!」


健夜「もぅ…………あ、もしもし咲ちゃん?」


『うわっ……本当にこんな小さい機械で電話できるんだ……』


健夜(何時代からやってきたの……)


『もしもし、何か用ですか?』


健夜「あ、うん。お昼なんだけど……」


――――――
―――――――――――
―――――――――――――――――


【インターハイ会場・関係者食堂】



咲「あの、私ここに入っても良かったんですか?」


健夜「だいじ」


恒子「大丈夫大丈夫!!けど、その首からかけてる証明書とったらダメだよー」


咲「あ、はい…」


恒子「やー!それにしても、こんな可愛い子教え子がいるのに黙ってたなんて!!すこやんの薄情者ー!」ウリウリ


健夜「あぅ」


咲「可愛い教え子……」テレ


恒子「かーわーいーいー!」キャー


恒子「宮永咲ちゃんって言ったっけ!私はスーパーアナウンサー福与恒子!」


健夜「自分で言うことじゃないよ…」


咲「あはは……」


咏「あっれー?小鍛治プロに恒子ちゃんじゃね?」パタパタ


理沙「…こんにちはっ」プンスコ


健夜「咏ちゃんに理沙ちゃん」


はやり「はやや~☆皆揃って何やってるのかな~☆」キャルン


良子「Good morningです皆さん」


咲(お昼じゃん)


恒子「おわっ、トッププロが集結…」


健夜「皆揃って…どうしたの?」


咏「どうしたって、お昼食べに来た以外に無くねー?」パタパタ


咲(扇子に着物……テレビのキャラ作りじゃなかったんだ)



理沙「ご飯!」プンスコ


咲(なんで怒ってる風なんだろ?)


はやり「はやりはぁ、アイドルだからぁ、お昼は食べないぞ☆」キラン


咲(このプロきつい……)


はやり「はやや?★」


咲「」∥彡サッ


健夜「皆一気に集まるなんて、偶然だね」


はやり「だね~☆」


咏「やー、今年のインハイも盛り上がってて何よりっすねー」


咲(あっちはあっちで話してるし…なるべく存在感を消してご飯食べちゃお)

ワイワイ ガヤガヤ


咲「……」パクパク

咲「あ、この鮭美味し……味覚えてお父さんに出してあげよう」モキュモキュ



良子「アナタは選手では無いんですか?」スッ


咲「ひぅっ!!??」ビクッ


咲(い、いつの間に後ろに!?)


良子「おっとソーリー、驚かせてしまいましたか」


咲「か、戒能プロ……(だったよね?)」


良子「高校生ですね?見たところ制服では無さそうだったので少し興味が」


咲「えと、私は」



咏「うっひょー!何その子!すっげー!私服だよ私服ー!」キャッキャッ


はやり「こんな子大会に出てたかな☆」


理沙「……誰!」プンスコ


健夜「あ、えと、この子は……」


咲(いつの間にか皆こっち見てるし……)


恒子「聞いて驚け皆の衆!」


恒子「この子は、なんと小鍛治プロの隠し子であるぞー!!」






健夜「……へっ」



咏「なっ……!?」


良子「あ、アンビリバボーです…」


理沙「……意外な真実!」プンスコプンスコ


はやり「は、はやや~★おい健夜、どういう事かな★」ピクピク


健夜「いやいやいや!何言ってんの恒子ちゃん!!」


咲「そうです。こんな人がお母さんだなんて、そんなオカルトありません」


健夜「そんなに拒絶されると逆に傷付くね!?」


恒子「なははっ!実は~」

―――――――――――――――――――



咏「へぇ~?地元の高校の教え子ねぇ~?」ジロジロ


咲(ち、近い……っ)


はやり「健夜が高校のコーチやってたなんて初耳だぞ☆」


理沙「おどろき!」プンスカ


健夜「まあ、地元に移ったついでみたいな感じだよ」


はやり「ついででこんな女の子誑かして、やっぱり悪魔だね☆」


健夜「誑かして!?」


咲「ついで……」ムスッ


良子「にしても勿体無いですね。小鍛冶プロの教え子なら麻雀も打てるんでしょう」


咲「い、いえ……私はそんなに」



健夜「もう、良子ちゃん意地悪したらダメだよ?」


咲「え?」


健夜「トッププロなんだから、目の前の人が打てるか打てないか、分からない訳ないよ」



咲「確かに……」


良子「そーりーそーりー。ちょっとした出来心です」


咏「見た感じ、かなーり打てそうじゃね?……知らんけど」


はやり「うーん、はやりはそういうのに疎いから分かんなーい☆」


理沙「そんな訳ない!」プンスカ


はやり「はや?★」


理沙「な、なんでも!」プンプン


咲「えっと……」


健夜「……」


健夜「ごめんっ、こーこちゃん。ちょっと用事思い出したから、また後でね!」スッ

咲「あっ」


咏「え、行っちゃうんすか?」


健夜「あはは、また後でね!」タッタッタ


良子「行ってしまいましたね」


はやり「健夜もしっかり教育者してるんだね☆」


咏「うん?どゆこと?」


理沙「にぶちん!」プンスカ



恒子(っていうか、このプロ勢の中に私一人だけ置いていかれるとキツいよすこやん!!!!)


――――――――――――――――――――


咲「どうしたんですか、急に抜け出して?」


健夜「ふぅ…いや、だって咲ちゃん困ってたから」


咲「へっ?」


健夜「うん?」ニコッ


咲「……」


咲「も、もう。急すぎてご飯残してきちゃいましたよ」プイッ


健夜「あれ!?機嫌悪くなってる!?」


咲「別に。ついでの私の機嫌なんてどうでも良いんじゃないですか?」ブスッ

咲「私、ついでなんでしょう」


健夜「えっ?……それで怒ってるの?」


咲「怒ってないですから!もう、良いです」フイッ


咲「あ、ほらもうこんな時間ですよ?打ち合わせとかあるんじゃないですか」



健夜「え?そんなはず……わっ!この時計時間止まってる!」


咲「アホですか」ハァ


健夜「うぅ」


咲「全く…… 」スッ


咲「はい、これ」つ腕時計


健夜「え?」


咲「無かったら困るでしょう」


健夜「で、でも」


咲「良いですから」グイッ


健夜「あ、ありがと、咲ちゃん」


咲「か、貸すだけですからっ!」


健夜「じゃあ、二つあっても邪魔になっちゃうし、私の付けててくれるかな」スッ


咲「あっ、何勝手に……」


健夜「いいからいいからっ」←咲の手首につける



咲「……」ジーッ


健夜「咲ちゃん?」


咲「あ、いえ、何でもありません。私はこの動いていない意味の無い時計で我慢しますので」


咲「早く行ったらどうですか?あと三十分しかありませんよっ」


健夜「うん!それじゃあ、また電話するね」


咲「分かりました」コク


咲「……」チラ


咲「……健夜さんの時計…」





咲「~~♪」








健夜「はぁ、まさか時計壊れてるなんてなぁ…」


健夜「……ん?」


健夜「腕時計を交換」


健夜「……」


健夜(なんか恥ずかしいな……///)テレ


――――――――――――――――――――

【Aブロック2回戦・大将戦】


穏乃『ロン、6400!』


恒子「決まったぁぁぁぁぁ!!Aブロック2回戦大将戦を制したのは、千里山女子と阿知賀女子だぁぁぁぁ!!!」


健夜「阿知賀女子、高鴨穏乃選手の最後まで勝ちを諦めない姿勢に、牌が答えていましたね」


健夜「しかし、準決勝にはあの白糸台高校と新道寺女子、そして今回大敗を喫した千里山女子が出てきます。」


健夜「阿知賀女子には厳しい戦いとなるでしょう」


恒子「さすが!若い子に厳しい小鍛冶プロですね!」


健夜「厳しくないよっ!」


健夜「なんにせよ、準決勝は明後日からの開始ですからね。何が起こるかは分かりません」

恒子「お前らぁぁぁ!!明後日の準決勝も見逃すなぁぁ!!」

健夜「お前らとか言ったらダメだよ!?」




健夜(阿知賀……赤土晴絵さんか)


――――――――――――――――――――




咲「健夜さん、また随分と厳しい事言ってましたね」


健夜「え、咲ちゃんまで!?」


咲(無意識か……)


咲「まあ、私も同じ意見ですけど」

咲「というか、Bブロックに比べてAブロックの2回戦は随分とレベルが低いんですね」


健夜「咲ちゃんも相当だよ……」


健夜「まあ、Aブロックには第一シードの白糸台高校が入ってるからね。バランスを取ってるんだと思うよ」


咲「へー。でもBブロックには神代小蒔さんがいますよね」


健夜「まあシード辺りのバランスは運営が考える事だからね」アハハ


咲「私、Bブロックの方の会場見てこようかな」

健夜「神代さんを見に?」

咲「あと、姫松と臨海もですかね」

健夜「うーん、良いけど大丈夫?私はこっちの会場から出られないし、マホちゃんも今居ないし」

健夜「もし迷子になったら……」



咲「……我慢します」




咲「でも、少し勿体ないですね」


健夜「なにが?」


咲「阿知賀の面々。ほぼ全員が特殊なのに、準決勝で潰されちゃうんですから」


健夜「あぁ、確かに面白そうな子達だったね。特に先鋒の子」


健夜「あの子がいたら、咲ちゃんでも裏ドラの支配権取られちゃうかも」クスクス


咲「それは無いですけど……って、あれは」




穏乃『このままじゃ……』

憧『なに弱気になってんのよ!』


玄『お、落ち着いてっ』


晴絵『……』




咲「あれって、阿知賀の人じゃないです?」


健夜「本当だ。なんか揉めてる?(赤土さんだ……)」


咲「あんな通路の真ん中で……」ハァ




晴絵「まあ、私も今のままでは論外だと思う」


灼「はるちゃん…?」


宥「寒い…」プルプル


憧「晴絵!アンタまで……っ」



『私も概ね同じ意見ですかね』テクテク

『ちょ、咲ちゃん!?』





玄「!?」ビクッ


晴絵(な、何だ……?)ブルッ


宥「誰……?」


穏乃「あ、あれって……」


憧「小鍛冶健夜!?」


灼(はるちゃんの……っ!)



咲「通路塞がれて通れないので、少しどいてもらえ……」ピタ


咲「……」


咲「……ん?」ジーッ


晴絵「っっ」ピクッ


健夜「咲ちゃん?」


咲「んー?」ジーッ


咲「……あの、もしかして」


晴絵(な、何だ……?)


咲「違ってたら申し訳ないんですけど、赤土晴絵さんですか?」


晴絵「え?」


咲「10年前、インハイで健夜さん相手にハネ直を決めた赤土晴絵さんですか?」


晴絵「あ、あぁ…私は赤土晴絵だけど…」チラッ


健夜「あはは…」ニガワライ


咲「!!」パァ


咲「ちょっと健夜さん!何で教えてくれなかったんですか?」


健夜「いや、てっきりもう知ってる物かと……」


咲「知りませんよ!全く、これだから健夜さんは健夜さんなんですよ!」


健夜「え、それどういう事!?」



穏乃「あ、あの!!」


咲「え?」チラッ


穏乃「あっ、いや……」ビクッ


咲「???」クビカシゲ


健夜「いや、いきなり知らない子が自分たちのコーチを見て目を輝かせてたら気になるよ」


健夜「すみません赤土さん、お取り込み中に」ペコ


晴絵「い、いえ。こっちが道塞いでたんですから」


晴絵「もしかして、その子が一部で噂になってる?」


健夜「うわ…本当に噂になってたんですね…はい、そうです。できれば内密にお願いします」



咲(なんか世間話始めちゃった……)チラッ


玄「っ」ピクッ


咲(改めて間近で見ると、皆可愛いな……そして5人中3人おモチが…)


咲「べ、別に気にしてなんか無いもん……」


咲「……」ズーン


憧(ちょっと誰か、この子の事聞きなさいよ!)

穏乃(わ、私は無理!)

宥(寒い……)プルプル

灼(はるちゃんの事知ってたし、はるちゃんの知り合い?)

玄(小鍛冶プロと一緒にいたね……でも赤土さんは知らない風だったよ?)

憧(もー!訳わかんない!)



咲「……奈良県代表阿知賀女子学院」


5人「!!」ピクッ


咲「松実玄さん。ドラが集まりやすい。しかしそのせいか手が読まれやすく、防御面が脆い」


玄「えっ…?」


咲「松実宥さん。玄さんのお姉ちゃんで、こちらは萬子、赤色が入っている牌が集まりやすい。手は読まれ易いが、技術とセンスが良いのでさほどのデメリットにはならない」


宥「私の事……」


咲「新子憧さん。目立つ能力はないが、地力は断トツで高い。特に鳴きがとても上手。しかし、先を読む力が欠けているため、一歩攻め切れない所がある」


咲「鷺森灼さん。正直、私にはよく分からない能力。何らかの法則性はありそうだけど、筒子が鍵という事、待ちが関係してる事はほぼ確実」


憧(いきなり何!?怖すぎでしょ!)



咲「そして……」ジーッ


穏乃「っっ」ピクッ


咲「あの」


穏乃「は、はいっ!?」



咲「その、ジャージの下って何か履いているんですか?」


穏乃「……えっ?」


咲「だから、そのジャージの下……」


健夜「咲ちゃん、そろそろホテル戻ろっか」


晴絵「お前らも、戻って休むぞ」


咲「えっ!?帰っちゃうんですか!? 」バッ


晴絵「お、おおう……」


咲「残念……10年前のインターハイの映像、見たのはつい最近だったんですけど」


咲「負けちゃったとは言え、あの健夜さんにハネ直させた何て凄いなって思ってました」


晴絵「……負けたのに、か…?」


咲「え?はい。だって、まだ若くて全盛期だった健夜さんにハネ直ですよ?とっても凄いと思います」


健夜「まだ若くてって余計な一言だよ!!」



咲「赤土さんは私が2番目に尊敬してる人なんです。だから出来たらお話したかったんですけど…」


健夜「早く帰らないと。マホちゃん迎えに行かなきゃだし」


咲「残念です。それじゃあ、また機会がありましたらお話聞かせてくださいね」ペッコリン


晴絵「……あぁ、ありがとう」ニコッ


健夜「では、失礼します」ペコ


咲「……」ジーッ


穏乃「??」


健夜「咲ちゃん?」


咲「あ、すみません。今行きます」タッタッタ





玄「行っちゃったのです」

憧「晴絵、今のは?」

宥「咲ちゃんって言ってたね……」

晴絵「あぁ、その話はホテル戻ってからにしよう」

晴絵(準決は明後日……どうにかできるか?)


――――――――――――――――――――


【夕方・咲宿泊ホテル】


咲「……」


健夜「高鴨さんのこと?」


咲「え?」


健夜「さっきから考えてるの、高鴨さんの事でしょ」


咲「よく分かりましたね」


健夜「ふふっ、何年咲ちゃんと一緒に居ると思ってるの?」


咲「いや、たった3年くらいですけど……」


咲「健夜さんは、あの高鴨穏乃さんを見てどう思いましたか?」



健夜「うーん、特に何も?」


咲「やっぱりですか」


健夜「って事は、咲ちゃんも?」


咲「はい。何も感じませんでした……」




2人「「何かがあるのに」」





咲「……」


健夜「……」


咲「ま、考えるだけ無駄ですかね。本当に何も無いだけかもです」


健夜「そうだね。どの道、明後日の準決勝を抜けるのは難しいと思うし」


健夜「おっと、じゃあそろそろマホちゃんを駅まで迎えに行ってくるね」


咲「本当に私は付いていかなくていいんですか?」


健夜「うん。もしも迷われたりしたら、目も当てられないからね……」


咲「う、うるさいですねっ」



健夜「それじゃあ行ってきます」


咲「はい、いってらっしゃいです。気をつけてくださいね」フリフリ

健夜「うん」ニコ



バタン




咲「……ふぅ」



咲「そういえば、マホちゃんは追試大丈夫だったのかな…連絡ないけど」


咲「もう、世話が焼けるなぁ」クスクス




ピンポーン



咲「!?」ビクッ


咲「ビックリした……忘れ物でもしたのかな」テクテク


咲「はーい」


咲「健夜さん……物忘れが酷いからアラフォーなんてからかわれ」

ガチャ


穏乃「み、宮永さん!!」


咲「……」


咲「え?」


――――――――――――――――――――


【数分前、阿知賀女子・宿泊ホテル】




穏乃「こ、小鍛冶プロの教え子!?」


灼「宮永咲……」


晴絵「正確に言えば、地元の高校の生徒とそのコーチという関係だそうだ」


玄「私達と赤土さんみたいな感じですか?」


晴絵「まあ、そんな感じかな」


憧「それはまた……とんでもない子だった訳ね」


宥「可愛らしい子だったよね」


灼「でも、不気味だった」


玄「そういえば、何で私たちの事を……」


晴絵「そりゃ、数分前まで対局してたんだ。見られててもおかしくないだろ」


玄「そっか……」



晴絵「どの道、あの子の事を考えている暇はない。アンタ達は今日、千里山に何点差つけられた?」


憧「6万点……」


晴絵「明後日の準決勝には、それより強い白糸台が出てくる」


晴絵「さっきも言ったが、今のままでは論外だ」


5人「……」グッ


穏乃「……あの」


晴絵「ん?」




穏乃「宮永さんと小鍛冶さんのホテルの部屋、教えてください」



――――――――――――――――――――

【咲、宿泊ホテル】




咲「高鴨さん?」


穏乃「あの、その……」


咲「……?」


晴絵「いきなり押し掛けてきてすまない」


咲「赤土さん!」


晴絵「あれ、小鍛冶プロは居ないのか?」


咲「はい。今さっき出かけていきました」


晴絵「そうか……ほら、シズ」


穏乃「」コク



穏乃「あの、宮永咲さん」


咲「はい?」


穏乃「私と、私達と……」


穏乃「麻雀を打ってくれませんか」


咲「……」


玄「私からもお願いしますっ!今度こそ……園城寺さんに勝ちたいんですっ!!」


灼「準決勝は、何としてでも越えていきたい」


憧「私からもお願い」


宥「お願いします……」


咲「……」


咲「……あの、こんな事は言いたくないんですが」


咲「もし、私と打つことで何かを期待してるとしたら」


咲「私と打っても、何も変わらないと思いますよ?」



穏乃「そ、そんな事!」


咲「では何が変わるんでしょう?


咲「仮に今日、明日と一緒に特打をするとしましょう」


咲「2日、たった2日打つだけで、今日6万点差付けられた千里山と、白糸台、新道寺を相手に出来るまで変わると思いますか?」


穏乃「……っっ」


咲「……」



咲「赤土さんは、どう思うんですか?」


晴絵「……私も、宮永さんと同じ意見だ」


晴絵「世の中はそんなに甘くは無い」

咲「なら」


晴絵「でも、何もせずに諦めるのも……違うと思うんだ」


咲「……」


晴絵「正直さっきまで、私はもう諦めていた」


晴絵「でも、この子達はまだ何とかなると、諦めたくない、出来ることがあるならやりたいと」


晴絵「そう言った。なら、私はこの子達の意見を尊重したいと思う」

晴絵「何より、私も思い出させて貰った。諦めて、立ち止まっていても何も変わらないって事を」


咲「……私が、あなた達よりも麻雀が弱いかもしれませんよ?」


穏乃「それは無いと確信してたんだ」


咲「何故?」


穏乃「……小鍛冶プロの、教え子なんだから」


咲「……」ピクッ


穏乃「どう、ですか?」


咲「……成程。健夜さんの教え子なんだから私達に負けるような雑魚ではないでしょ」


咲「そういう意味ですか」


穏乃「え?いやっ」


晴絵「ああ、だから示してくれないか?私からも、頼む」ペコ



咲「……良いでしょう。私も、久々に知らない人と打ちたいと思っていましたし」



咲「それに、諦めたらダメという点に関しては私も同意見ですので」


5人「!!」


穏乃「ありがとう、宮永さん!」


玄「じゃあさっそく雀卓がある所に……」


咲「いえ、その必要は無いですよ。どうぞ上がってください」


宥「え?」


咲「この部屋、健夜さんが張り切っちゃって無駄に広いんです。雀卓なら二つ置いてありますよ」

憧「うわっ、ホントだ広っ」

玄(スイートルームみたい……)




咲「……始めましょうか」ニコッ


――――――――――――――――――――


健夜「ま、まさか私が迷子になるなんて」


マホ「仕方がないですよー、東京の駅って迷路みたいですし!」


健夜「マホちゃんは優しいね…それと良かったよ、追試1発で合格できて」


マホ「えへへ、早く宮永先輩に会いたかったですから!」


健夜「そっか…っと、やっと帰ってこれたね」


マホ「宮永先輩、怒ってないでしょうか?」


健夜「あはは、大丈……?」


マホ「あれ、中に誰か居るみたいですよ?」



健夜(もしかして……)



咲「ロン、12000の……何本場でしたっけ、6本場?です。松実玄さんのトビですね」


玄「うぅ……っ」レイプメ


咲「あ、健夜さんお帰りなさい。マホちゃんも!」


健夜「う、うん。ただいま」


マホ「宮永先輩!マホ、追試1発合格でした!」ギュー


咲「あはは、出来たら追試を受けなくて済むようになると良いね」ナデナデ


マホ「えへへ……///」


健夜「……」チラッ



穏乃「か、勝てない……」

灼「異常……」

宥「玄ちゃん……」

憧「ヤバすぎでしょ……」



健夜「咲ちゃん、これは……」


マホ「あ、マホも気になってたです。この人たちは誰ですか?」



咲「実は……」


―――――――――――――――――――

健夜「なるほど…」


晴絵「すみません、いきなりで」


健夜「いえ、私は咲ちゃんさえ良いなら問題は無いですけど」


マホ「でもでも、これって意味あるんですか?」


マホ「宮永先輩、普通に打ってるのに余裕じゃないですか。その宮永先輩にすら勝てなかったら無駄だと思うです」


咲「こらマホちゃん、失礼でしょ」ムニ


マホ「あぅ」


穏乃「普通に……?」


咲「まあでも、確かにそうかも…」


玄「えっ……」


宥「そ、それって…」


咲「あ、いえ。協力を辞めるって事じゃないですよ」


穏乃「ほっ…」



咲(ただ闇雲に打っても意味は無いか……)


咲「マホちゃん、ちょっと頼んでも」


マホ「良いですよ!宮永先輩の頼みなら何でも聞くです!」


咲「そ、そう?」


健夜「咲ちゃん、私はどうすればいいかな」


咲「健夜さんは立場上、あんまり関わったらダメでしょう。今は赤土さんとお話してて良いですよ」


晴絵「え゛」


健夜「そっか、じゃあ何かあったら遠慮なく言ってね」


咲「はい」


晴絵「え゛」




咲(ただ闇雲に打っても意味は無いか……)


咲「マホちゃん、ちょっと頼んでも」


マホ「良いですよ!宮永先輩の頼みなら何でも聞くです!」


咲「ありがと」


健夜「咲ちゃん、私はどうすればいいかな」


咲「健夜さんは立場上、あんまり関わったらダメでしょう。今は赤土さんとお話してて良いですよ」


晴絵「え゛」


健夜「そっか、じゃあ何かあったら遠慮なく言ってね」


咲「はい」



晴絵「え゛」




咲「……さて」ピタ

咲「改めて自己紹介しますね」クルッ



咲「茨城県、つくば女子校一年。宮永咲です」


マホ「つくば校付属、つくば中学校二年。夢乃マホです」


玄「あ、阿知賀女子先鋒、松実玄です」


宥「次鋒、松美宥……です」


憧「中堅、新子憧よ」


灼「副将、鷺森灼」


穏乃「大将、高鴨穏乃です!!」


咲「まずは……」


穏乃「特打ですね!」




咲「近くの銭湯に行きましょう」



5人「……」



5人「「「「え?」」」」

――――――――――――――――――――

【ちかくのせんとー!】



咲「はふぅ…」チャポン


咲「温かい…」


マホ「健夜さんは来なかったんですねー」ポカポカ


咲「うん。赤土さんと対策でも練ってるんだと思うよ」


マホ「それってダメなんじゃ……?」


咲「まあ、ギリギリのラインの助言しかしないと思う。それに、赤土さんは一人でも充分凄いんだよ?」


マホ「むー……マホも先輩に褒めて貰いたいです」


咲「あはは、全部終わったら褒めてあげるね」


マホ「やたっ!頑張ります!」



穏乃「あ、あの……麻雀は…?」


憧「正直、温泉なんて来てる場合じゃ」


咲「皆さんは少しリラックスが必要です。焦っていても良い練習は出来ませんよ」


マホ「見てください宮永先輩!クラゲです~」


咲「おおっ、すごいねマホちゃん。どうやってやるの?」


マホ「ここをこうやって……沈める!」


咲「おぉぉぉ!スゴいね」


憧(なんかさっきと雰囲気違うわね…)


玄「なんの話してるの?」


宥「お風呂あったかーい…」ポワポワ


咲「あ、お二人と……も」


玄「??」ポヨーン


宥「あったかーい」ボイーン


咲「……」ブクブク


マホ「宮永先輩が沈んでいきます!?」


咲(悔しくなんてない……!)



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【ほてるにきかん!】



咲「さて、では始めましょうか」


咲「この部屋には雀卓が二台ありますが、人数は7人で1人足りないのでさっそく健夜さんを使いましょう」


健夜「使いましょうって……よろしくね」


咲「でも、あくまでも数合わせとして入ってもらうだけなので、さすがに健夜さんには手を抜いて打ってもらいます」


健夜「うん、分かったよ。10巡までは和了らない」



穏乃「ほ、本当に親しいんだね……」コソコソ

憧「小鍛冶プロが凄い舐められてる気もするけど……」コソコソ



咲「卓の分け方ですが、健夜さんと準決勝の相手を想定した場合を話し合ってこちらで考えました」


A卓
・宮永咲
・松実玄
・新子憧
・鷺森灼


B卓
・夢乃マホ
・小鍛冶健夜
・松実宥
・高鴨穏乃



咲「この分け方にした理由、その他諸々は卓に付いたあとで私とマホちゃんが話しますので、とりあえず卓に付きましょう」


健夜「あ、ちょっと良いかな」


咲「ダメです」


健夜「ええ!?」



咲「嘘です。どうかしましたか?」


健夜「赤土さんから伝言で、私は私でお前達の役に立てる行動を取るからお前達も頑張れ。信じてるぞ」


健夜「だそうです」


穏乃「赤土さん……」


咲「健夜さんは私にそんな事一度も言ってくれた事ないので、羨ましい限りですね」



健夜「えっ?」


咲「はい、では始めましょう」


宥(本当に仲が良いの……?)


灼(ツンデレ……)

ここから暫くWith阿知賀編です。


――――――――――――――――――――

【阿知賀強化ミニ合宿・A卓】


咲「では、改めてよろしくお願いします」


憧「宮永さ……ねえ、咲って呼んでもいい?」

咲「えっ?」


憧「あ、いや、ダメだったら良いのよ?」


咲「あ、いや、その、うん……大丈夫…だけど……」


憧「そっか、なら咲って呼ぶわね」


玄「わ、私も!咲ちゃんって呼ぶのです」


灼「よろしく、咲」


咲「……」

憧「どうかしたの?」



咲「い、いや」


『咲ちゃんは女子高生の友達っぽい事に慣れてないだけだから、気にしないでいいよ』

『下の名前呼びって友達っぽい事なんですかー?』


咲「う、うるさいですよ健夜さん!!」


『あはは、ごめんごめんっ!』


咲「……もう…」チラッ


憧「……」ニヤニヤ


玄「咲ちゃん」ニコニコ


灼「意外と可愛い所もある……」フッ


咲「~~~ッッッ/////」カァ


咲「と、とにかく!新子さん、松実さん、鷺森さんをこちらに呼んだ理由は……いや、体験してもらった方が早いですね」


咲「とりあえず、東風戦を3局やりましょう」


憧「分かったわ」


玄「よろしくねっ」


灼「よろしく」



――――――――――――――――――――

【B卓】



『う、うるさいですよ健夜さん!!』


健夜「ふふっ、咲ちゃん可愛い」


マホ「では、こちらも始めましょう!」


宥「えと、夢乃さん……?よろしくね」


穏乃「よろしくお願いしますっ!」


マホ「マホの方が年下ですから、マホで構いませんよ?」


宥「じゃ、じゃあ……マホちゃん」


穏乃「よろしくっ、マホちゃん!」


マホ「はい。ヨロシクお願いするです」


マホ「さっそく、お2人がこっちに来た理由ですが……えっと……」



マホ「な、何だったでしょうか……?」オロオロ


健夜「私から説明するね」


マホ「ごめんなさいです……」シュン


健夜「まず、この組み分けの基準は準決勝でそれぞれが戦う相手で、最も手強い相手を想定した結果です」


穏乃「うぅん……?」


健夜「松実宥さんなら、次鋒戦で最も手強いのはやはり白糸台の弘世菫さんでしょう」


健夜「そして大将……こちらは他の3人は皆手強い」


マホ「だからマホなんですね!」


宥「……??」


健夜「まあ、やってみれば分かるから、とりあえず何局か打ってみよっか」


穏乃「はい!」


宥「よろしくお願いします」


マホ「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



穏乃(宇宙……?)



――――――――――――――――――――

【A卓】


咲「はい、最後も私のトップですね」


咲 127000
憧 92000
玄93000
灼 88000



憧「つ、強い……っ!」


玄(……?)


灼「咲意外マイナス……」


咲「松実さん、何か言いたそうですね」


玄「へっ!?あ、その……なんだか、普通に強かったなって」


咲「……そう打ちましたから」


咲「さてこの卓分けは、それぞれが注意すべき相手を想定した場合で分けています」


咲「準決勝、松実さんが注意すべきは宮永照、鷺森さんは新道寺の白水哩、新子さんは千里山の江口セーラ」


咲「私が見た限りでは、この3人以外は特に驚異に成り得ません」


咲「しかし、この3人だけは別次元に強い」


玄「えっ、園城寺さんは……?」


咲「あの方は……強いですが、非常に不安定です。それに、相手はあの宮永照。園城寺さんでも抑えるのが手一杯で気にする必要はないでしょう」


咲「いや、一人では抑えることすら出来ないかもですね」


玄「そんなに…」


咲「宮永照は少し特殊ですが、この3人に共通することは技量の高さと打点の高さ」



咲「この数局、松実さんが言ったように私は普通に打ちました」


咲「そしてこの結果です。加えて、今の私よりもあの3人は強い」


咲「今の打ち方の私に負けるようでは、勝ち抜けるのは難しいでしょうね」


咲「まず新子さんへの課題は、私に普通に勝つこと」


憧「1つ、いい?」


咲「はい」


憧「白糸台の渋谷尭深には注意しなくていいの?」


咲「あぁ…。あの人は、ラス親になった時以外は注意は必要ありません」


咲「そして、ラス親には必ずならないので大丈夫です」



憧「ラス親でなくても、役満が出る可能性は高いのよね?」


咲「それは新子さん次第です。状況を見て、即座に点数を切り捨てる判断が出来れば防げるかもしれません」


憧「……やってやるわ」グッ


咲「そして鷺森さん。本番でのあなたの仕事は白水哩が縛りを掛けた局に出来るだけ和了らせないことです」


咲「白水哩の和了りは、大将戦にも響く。それを踏まえて、鷺森さんの課題は超早和了り、それと縛りの察知」


灼「縛りの、察知……?そんな事…」

咲「出来ます。少なくとも、ビデオを見た限り私には出来ました」


咲「私も翻数を縛って、配牌時に宣言するのでそれを止めてみてください」


咲「縛った時と普通の時。この微妙な打牌の差、打ち筋、捨牌の違い、それらを感じ取るように」


灼「ま、待って。咲は縛りをかけて、それで和了れるの?」


咲「その点はご心配なく。…私は点数調整が得意ですから」


灼「……?」



咲「最後に松実さん」


玄「はいっ」


咲「はっきり言います。松実さんでは宮永照に勝つ事はできません」

玄「……」


憧「ちょっと咲!そんなにはっきり言うこと」


咲「それじゃあ、何て言えば?適当に、頑張れば勝てますよ!なんて言って宮永照にカモられてこればいいと?」

憧「そ、それは……」


玄「いいの、憧ちゃん。分かってた事だから」


憧「玄……」


咲「私は、松実さんではと言いました。そもそも、一人で宮永照に勝つ必要はありません」


灼「どういう事?」


咲「これも体験してもらった方が早いですね……健夜さん!ちょっと来てくれますか?」オーイ


――――――――――――――――――――

【B卓】


マホ「ダブリー」


穏乃(またっ!?)


マホ「カン、ツモ18000」

宥(これって……)プルプル


マホ「リーチ、1発4000オール」

マホ「ポン、チー、ツモ、1000.2000」

マホ「それです、掴みましたね。ロン8000」



健夜「終局、だね」


マホ「どんどん行きますよー」



穏乃「マホちゃん、今のは……」


マホ「白糸台の大星淡、弘世菫、千里山の清水谷竜華のコピーです」


宥「こ、コピー?」


健夜「マホちゃんは1度見た能力を再現できるの」


マホ「こんな事もできちゃいますよ?」


マホ「まずは松実宥……」

マホ「そして宮永先輩……」

マホ「カン!もう1個、カン!カン!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

マホ「ツモ、清一、断幺九、トイトイ、三暗刻、三槓子、赤1、嶺上開花」



穏乃「な、ななななな!?」


宥「こんなのって……」


マホ「えへへ、できましたーっ!」


健夜「松実宥さんの萬子集めと、咲ちゃんの嶺上開花の組み合わせだね」

穏乃(嶺上開花……?)


健夜「あれ、でもそれやるとマホちゃんって……」


マホ「ぁ……もうマホ限界です……1時間休憩です……」グテー


健夜「体力使い果たすんだったよね」


マホ「し、しくじりましたぁ……」


健夜「高鴨さんと松実宥さんには、コピー状態のマホちゃんと対局して大星さん、弘世さん、清水谷さんの打ち方に慣れて貰います」


穏乃「新道寺の鶴田姫子さんは……」


健夜「あの選手は副将次第と言った面が大きいので、今高鴨さんに出来る事はないです」



健夜「咲ちゃんが鷺森さんへ、白水さんへの何かを助言しているはずですが、リザベーションが発動してしまえば止める術は無いので、対策は必要ありません」


穏乃「み、宮永さんや小鍛冶プロでも止められないんですか!?」


健夜「んー……私たちは試したことないから何とも」


『健夜さん!ちょっと来てくれますか?』


健夜「ん?ごめん、呼ばれちゃったから席外すね」


穏乃「あ、はい!」


健夜「なにー?」テクテク



マホ「はふぅ……よし、落ち着いたです!どんどん対局していきま」


マホ「あれ、健夜さんは?」


宥「宮永さんに呼ばれてあっちの卓に行ったよ?」


マホ「じゃあもうしばらく休憩です……」グテー



穏乃(麻雀してる時とは随分違うんだなぁ)




――――――――――――――――――

【A卓】


健夜「咲ちゃん、どうしたの?」


咲「健夜さん、この3人と5割本気で打っててください」


憧「えっ!?」


玄「こ、小鍛冶プロと!?」


灼「本気……?」


健夜「え、良いの?」


咲「はい。宮永照対策の準備みたいなものです。2局ほど打った後で、1人ずつ私と交代して健夜さんと打ちます」


健夜「……なる程ね。まあそうするしかないよね、宮永さん相手は」


咲「はい」



咲「では、あっちの卓は私が入ってくるのでよろしくお願いします」


健夜「分かったよ」


憧「え、ちょ咲!?」


健夜「……じゃ、やろうか」ゾゾゾゾゾゾ


憧「ひうっ!?」


玄「ひ、ひぃ……」プルプル


灼(この人がハルちゃんの…)ゴゴ

咲さんとマホの雀力はかなり高めになってます。
まあ、闘牌描写はほぼ無いので関係ないですね

【B卓】



マホ「ふぅぅ……」グテー


マホ「」チョンチョン


マホ「はい?」ムニュ


咲「疲れちゃった?」ニコッ


マホ「宮永先輩!!」バッ


宥「宮永さん」


咲「その、あっちの3人は私を咲って呼んでるので、2人も咲でいいですよ」


穏乃「じゃあ咲!改めて、私達に協力してくれて本当にありがとう」


宥「ありがとう」


咲「お礼は準決勝を突破できたら言ってください。私たちもできる限りの協力はしますが、突破できる確率は低いですから」


宥「それでも、ありがとう。咲ちゃんは温かいね」


咲「……そんなことないです」



マホ「健夜さんが戻ってくるまで、宮永先輩が打ってくれるんですか?」


咲「ううん、ていうかマホちゃんまだ疲れてるでしょ」


咲「もう、無闇にコピーを組み合わせたらダメっていつも言ってるでしょ?」


マホ「うぅ、ごめんなさい……」シュン


咲「でも、今日はまだチョンボしてないね」ポフ


マホ「!!」


咲「偉い偉い」ナデナデ

マホ「てへへ……えへへへ…」ニヘラー


咲「さて」ピタ


マホ「ぁ……」ショボン



咲「どうですか?問題なく打ててます?」



穏乃「あ、うん。マホちゃんの力には驚いたけど」

宥「本当に、弓で狙われてるみたい…… 」



咲「……」チラッ


咲「ん、これってまだ対局の途中?」


マホ「はい!南二局で私がバてちゃって、丁度先輩が健夜さんを呼んだので、途中です」


咲「へー……」チラ

穏乃「??」


咲「……」


咲「じゃあ、やっぱり南3、4局は私と打ちましょう。マホちゃんは普通に打つだけで良いから」


穏乃「え?わかった!」

宥「よろしくお願いします」


マホ「マホはチョンボだけしないように気をつけるです…」


咲「うん。じゃあよろしくお願いします」


…………………………………………………


咲「カン」

咲「ツモ、嶺上開花4000オールの4本場」


穏乃「また嶺上開花……っ!」


宥「これって……」


マホ「いつ見ても凄いです!」


咲「……五本場」


咲(やっぱり思い過ごし?)


穏乃「チー!」


咲「え?」


穏乃「え?」


咲「あ、いや、ごめんね」


咲(今の鳴きで槓材がマホちゃんに移った……)



マホ「ありゃ…聴牌だったのに……残念です」スッ


咲「ポン」

咲「カン」


穏乃(またっ)


咲「……?」


咲「またカン、ツモ嶺上開花6000オール」


咲「和了りやめです」


穏乃「ふあぁぁぁ強すぎる!!」


宥「凄い……」


マホ「うーん……?」



咲「高鴨さん」


穏乃「うん?」


咲「高鴨さんって、後半から調子出てくるタイプですか?」


穏乃「え?うーんどうだろう?考えてみればそうかも!」


穏乃「ほら、局の頂上が近づいてくるじゃない?それが山みたいで」エヘヘ


咲「!!」


マホ「山が好きなんですかー?」


穏乃「うん、小さい頃からよく近くの山で遊んでてね」


マホ「へー」



咲「……それじゃあ、マホちゃん引き続きよろしくね」


マホ「え、もう行っちゃうんですかー?」


咲「うん、そろそろあっちも終わりそうだしね」


マホ「分かりました!」


穏乃「行っちゃった」


宥「何だか考えてたね」



マホ(大星淡さんをコピーしてた時に感じた違和感は……うーん、まだ確信は持てませんね)


【A卓】



咲「健夜さん、調子は……」


憧「」

灼「」

玄「」


咲「あらら…」


健夜「あ、咲ちゃん。丁度こっちも終わった所だよ」


咲「どうしでした?実際に打ってみて」


健夜「うーん……正直、やっぱり今のままじゃ厳しいかな」


咲「こちらの3人は、とにかく対局の積み重ねですからね」



憧「あぶなっ、意識飛びかけてた!」


玄「これが小鍛冶プロ」


灼「悔しいけど凄すぎる…」


咲「では、鷺森さん、新子さんの順番で私と交代してもう2局ほど行きましょう」


咲「松実さんはずっと入っていてください」


玄「う、うん」


健夜「私はまた5割?」


咲「別に、全力でも良いですよ?」


憧「はっ!?無理無理無理!!」


玄「死んじゃうよ!」


咲「冗談です。流石に私も死んじゃいます」


健夜「あはは」


灼(本当かな)


咲「では、お2人は普段通りに打ってくださいね」


玄「さっきは普段通りに打っても1回も和了れなかったんだけど……」


咲「大丈夫ですから。あ、交代している間は向こうの卓に入って来てください」


鷺森「ん、了解」


咲「では、始めましょうか」


健夜(咲ちゃん楽しそうだなぁ)クスクス


――――――――――――――――――――



憧「……嘘…」


玄「か、勝った……?」


憧 112000
玄106000
咲 110000
健夜 81000



咲「はい、おつかれ様でした」


健夜「5割じゃ厳しかったなぁ…」


憧「な、何で……!?」


咲「それは後で答えます。鷺森さん!終わりました、交代です」


灼「ん、よろしく。結果はどうだった?」


咲「それは対局した後で。とりあえず打ちましょう」


玄(今の局……まさか……)


咲「では、よろしくお願いします」

ミス
咲→101000点です



――――――――――――――――――――



灼「え……勝った……?」


玄(やっぱりだ、咲ちゃんは私にはドラ近くを鳴かせたり、灼ちゃんには鳴きで筒子をツモらせていたり)


玄(小鍛冶プロが和了りそうなら誰かに振込み、または即流ししてサポートしてる)


玄(サポート?協力……)


玄「!!」


咲「おつかれ様でした。松実さん、答えは出そうですか?」


玄「…正直、私には無理かもって感じだけど……うん、やるよ!」



咲「…はい」ニコッ


玄(ていうか、咲ちゃんのはサポートってレベルじゃないよ!掌で転がされてるみたいだった……)


健夜「一方的にやられた私って……」



咲「健夜さんも、ありがとうございました」ニコッ


健夜「!!」


健夜「えへ、えへへ。うん、どう致しましてっ!」


咲「では、健夜さんはあちらに戻って続けてください。私たちは私たちの対局を時間まで続けましょう」


憧「って、さっき勝てたのはなんでなの?」


灼「私も気になる」


咲「それは戻ったら松実さんに聞いてください」


咲「では、打ちましょうか」



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――――


【ミニ合宿終了】



穏乃「今日はほんっっとうにありがとうございました!!」


玄「ありがとうっ!」


憧「ありがとね」


宥「ありがとうございました……!」


灼「ありがとう」


咲「いえ……ほんの数時間打っただけですから」


穏乃「でも、お陰で何か掴めたような」


憧「私も」


咲「自惚れてはいけません」


咲「皆さん、初めよりはかなり良くなったと思いますが、それでも付け焼刃程度です。実際に通用するかは、分かりません」



咲「後は明日一日、できる限り頑張ってくださいね」

咲「赤土さんならきっと、何か皆さんの役に立つ事をしてくれるはずです」


玄「咲ちゃんありがとうっ!」ギュー


咲「ぅわわっ!?」


宥「私も、ありがとう」ギュー


憧「あ、ならアタシも!」ギュー


灼「空気を読んで私も」ギュー


咲「わわっ、ちょ、苦し……」


穏乃「うおおおおお!ありがとう!!」ガバッ


咲「ちょっ、きゃうっ!!」バタッ


穏乃「あははははっ!!」



健夜「羨ましい……」


マホ「健夜さん、声に出てますー」


健夜「はっ」


咲「と、とりあえずですね!」


咲「今日はもう遅いので、気をつけて戻ってください」


5人「「「ありがとうございましたー!!」」」


咲「あ、高鴨さん!」



穏乃「??」



咲「……いや、頑張ってくださいね」


穏乃「もちろんっ!!それじゃあねっ」


咲「はい」



バタン


咲「……」


健夜「ふぅ、おつかれ様」


マホ「お疲れ様です!帰ってきて早々こんな楽しいイベントが待ってるなんてマホ思ってなかったです!」


健夜「あはは、それは私もだよ。咲ちゃんがこんなに肩入れするなんて……」


健夜「咲ちゃん?」



咲「……」スースー


マホ「ね、寝てる!?」


健夜「ふふ、珍しく張り切ってたもんね」スッ


咲「んぅ……」


健夜「お疲れ様」ナデナデ


マホ「健夜さん、明日はオフですかー?」


健夜「うん、折角だし3人でどこか行く?」


マホ「良いですね!明日、先輩にもどこか行きたい所が無いか聞いてみましょう!」


健夜「じゃあベッドに運んでっと」ヨイショ


マホ「あれ、宮永先輩着替えなくて良いんでしょうか?」


健夜「確かに、シワになっちゃうね」



マホ「せんぱーい?起きてくださいー」ユサユサ


咲「んん……」スヤスヤ


マホ「せんぱいってばー」ユサユサ


咲「むにゃ…」スヤスヤ



健夜「起きないね」


マホ「ですね……」


健夜「……」


マホ「……」


健夜「起きないなら……」


マホ「……仕方がないですねっ」


2人「「これは仕方の無いこと!」」グッ


ヌギヌギ ハダシロイデス…
チョットサワッテモイイカナ…? アー!ズルイデス マホモ!



?「割愛じゃ、すまんの」


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すこやんは解説なので、次からマホ咲と、阿知賀の誰か+咲が多くなります。
初めに言うと、決勝戦は書く予定がないので、インハイが1通り終わった後に余裕があれば、咲さんとインハイ出場者の、色々裏ストーリーみたいな感じのを書ければなと思ってます。

準決勝は若干、シリアス(?)が入るかもです。感想など嬉しいです、ありがとうございます


―――――――――――――――――――

【朝】


咲「……んぅ…」ムク


咲「ん…朝……?私寝てた…いつの間に……」フワァ


咲「…あれ?パジャマなんて着てたかな……」


マホ「あ、先輩おはようございます!」


健夜「朝ごはん買ってきたよ」


咲「おはようございます、マホちゃん健夜さん」


咲「すみません、私いつの間にか寝てたみたいで」


健夜「へっ!?あ、ううん!大丈夫だよ、ね?マホちゃん!」


マホ「はい!むしろご馳走様でした!」



咲「ごち…?まあいいや」


咲「私パジャマなんていつ着替えましたっけ?」


健夜「え、ななな、ななんでそんな事聞くの?」


咲「は?いや、寝ぼけて着替えてたなら恥ずかしいなって思っただけですけど……?」


咲「……何でそんなに慌ててるんですか?」


健夜「あ、いや、うん!自分で着替えてたよ!」


マホ「はい、しっかり意識もありましたー」


咲「そっか…マホちゃんが言うならそうなんだね。良かった」


健夜「ほっ…」


マホ「それより!健夜さんは今日オフみたいなんですけどぉ……」チラチラ


咲「あれ、打ち合わせとか無いんですね」


健夜「うん。事前に大まかな打ち合わせは終わらせてあるから」



咲「へー。じゃあどうします?ホテルで麻雀でも」


マホ「……」チラチラ


咲「……?マホちゃん?」


マホ「あ、あの……宮永先輩さえ良ければ、どこかに行きたいなぁ……なんて…」チラチラ


咲「どこか?」


健夜「折角だから、東京見物でもしない?」


咲「……?」カンガエ


咲「!!」リカイ


咲「…えぇー……外暑い…」チラ


マホ「えっ…」ウルウル


咲「ぐぬぬ……」



咲「ね、ねえマホちゃん?ホテルで麻雀じゃやなのかな?」


健夜(咲ちゃん外出苦手だからね)


マホ「マホ、宮永先輩と久しぶりにお出かけしたいと思ってたです……」


健夜(あれ、私は?)


咲「ぐぬぬぬぬ……」


咲「はぁ……マホちゃんには敵わないなあ…」


咲「良いよ、久々に3人で出掛けよっか」


マホ「!!やりましたぁ!」パァッ


健夜「良かったね、マホちゃん」



咲「それで、どこに行くんです?」


健夜「…スカイツリーとか?」


咲「うわ、ビックリするほどベタですね」


健夜「うるさいよっ!」


マホ「あの、特に無ければ、マホが考えたルートにしませんか?」


咲「そんなの考えてくれたの?」


マホ「はいっ!一生懸命頑張りました!」


咲「これが出来る子ですよ、健夜さん?」


健夜「つ、次は私も頑張るもん」


咲「はいはい、期待しないで待ってますね」クスクス



咲「じゃ、折角ならたくさん遊べる方が良いしさっそく行こっか」


マホ「ま、待ってください先輩!」


咲「うん?」


マホ「あの……」


咲「??」


マホ「パジャマのままです……っ!」


咲「あ……////」


健夜「朝ごはんも食べてないしね」


マホ(こういうちょっと抜けてる所も可愛いです)


健夜(何だかんだで楽しみにしてるんだよね……可愛い)

―――――――――――――――――――


【東京観光だいじぇすと!】


咲「凄いおっきい……」


マホ「こんなにおっきいんですねー」


健夜「修学旅行以来だなぁ雷門」

咲「健夜さんの修学旅行って、私生まれてますかね?」


健夜「」ガーン


―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――



メイド「そこのアナタ可愛いですねーっ!良かったらどうぞ!」


咲「えっ?」ウケトリ


メイド「そこのメイド喫茶のチラシですっ」

咲「へぇ、メイド喫茶……」


メイド「学生さん?凄く可愛いです」ニコッ


咲「そ、そんなことないと思います…」


メイド「良かったら寄っていって…」


マホ「あ!宮永先輩いました!」


健夜「もう、ちょっと目を離したらこうなんだから」


メイド「あら、お二人も素敵ですねっ!よければメイド体験とか」


健夜「えっ、メイド?」


メイド「お姉さんは猫耳とか似合いそうですね!」


健夜「お、お姉さん!」パァ


メイド「美味しいお菓子もありますよ!」


咲「お菓子……!」パァ


マホ「あはは、すみません。私たちそういうのはちょっとー、失礼しますです!」

―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――



『マジでー!?』キャハハ
『チョーウケるねー!』キャハハ


咲「こ、ここは何ともまあ……」


健夜「竹下通り……若い子がいっぱいだね」


マホ「宮永先輩!私たちもアゲて行かなきゃダメですよ!」


咲「あ、アゲて?」


健夜「コピーしちゃった」


マホ「ちょーウケますね!」


咲「な、何が!?」

―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――


咲「ひっ、ひいっ……」プルプル

マホ「だ、だだだだだ大丈夫ですよ!ガラスの床なんですから!」プルプル


健夜「結局スカイツリーも来てるし……」


咲「ちょ、ちょっと待って……1.2 3で行こっ?」


マホ「そ、そうですね!そうしましょう……っ」


咲「い、いくよ?1.2の」

健夜「わっ!!」


2人「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」


健夜「あはははっ!」




――――――――――――――――――――


健夜「ちょ、2人ともごめんってばー!」


咲「ねえ、マホちゃん誰か知らない人が着いてくるよ?」

マホ「お巡りさん呼びましょうか」


健夜「機嫌直してー!!」


―――――――――――――――――――


【かえりのでんしゃ!】



咲「ふぅ…久々にこんなに遊んだかも…」


マホ「今日はありがとうございます!マホのワガママ叶えてくれてっ」


咲「ううん、お礼なら健夜さんに……あれ」


健夜「んん……」スヤスヤ


マホ「えへへ、寝ちゃってますね」


咲「起きた時には1人で終点だ」


マホ「泣いちゃいますよ、きっと」アハハ


咲「ふふっ、まあ……一番気を使ってくれてたもんね」スッ


咲「ありがとうございます、おつかれ様でした」ナデナデ



マホ「主に気を使ったのは宮永先輩の迷子にですね」クスクス


咲「う、うるさいなっ!」プンスカ


健夜「んぅ……?」


健夜「私寝てた……?」パチ


咲「あ……」←撫でてる


健夜「えっ?」←撫でられてる


咲「え、えっとこれは……その……/////」


健夜「なんだ夢かぁ……」


咲「えっ」


健夜「えへへ……」スヤスヤ



マホ「また寝ちゃいましたね」


咲「よ、良かったぁ……」ホッ


咲「こんな所見られたら、恥ずかしくて死んじゃう所だった……」


マホ「宮永先輩は健夜さん大好きなんですね。マホ、ちょっとじぇらしーです」


咲「べ、別にそんなんじゃ……」

ワイワイ ヤイヤイ




健夜(~~~~~~ッッ/////)

―――――――――――――――――――

【インターハイAブロック準決勝】



恒子「さあさあ!高校生雀士達の夏の祭典、インターハイもいよいよ終盤戦!!Bブロック準決勝だあああああ!!」


健夜「今年もとてもレベルの高い選手ばかりで、凄く見応えがありますね」


恒子「そしてそして!Bブロック準決勝で死闘を繰り広げる高校は、どこも強豪揃い!!まずは、福岡県代表、新道寺女子!!」


恒子「北部九州最強のチームと呼ばれているこの高校ですが、見どころは何処ですか?」


健夜「やはり、副将の鶴田選手、大将の白水選手でしょう。この2人のコンボはプロでも止められる人は多くありません」


恒子「すこやんでも?」


健夜「わ、私は試したことないから……」


恒子「意地でもできないと言わない姿勢には、わたくし最早感服致します!」


健夜「別に意地なんて張ってないからね!?」


健夜「コホン、しかし先鋒の花田選手にもある意味では注目すべきでしょう」


恒子「宮永照選手との戦いだからですか?」


健夜「はい。これは花田選手だけに言える事ではありませんね。各校の先鋒が、どう宮永照選手を止めるのか」


健夜「そこに注目したいです」




恒子「なるほど。ではでは、続いて!」


恒子「北大阪代表、千里山女子!!Aブロックに出場している姫松高校と、大阪の2大名門と呼ばれている高校です!」


恒子「今年も、シード校と呼ぶに相応しい戦いを見せてくれました!」


健夜「このチームは非常に安定していますね。特に先鋒、中堅、大将の3人の3年生は素晴らしい能力を持っています」


ミス
所々AブロックとBブロックがごっちゃになってますね。こちらはAブロックです



恒子「続きまして、こちらは悲願の10年ぶりのインターハイ出場を果たし、準決勝進出という大快挙を果たしました!」


恒子「奈良県代表、阿知賀女子学院!!」


健夜「このチームも、中々面白い選手がたくさん集まっています。特に先鋒の松実玄選手のドラを集める力は、宮永照選手の打点を下げる役割を持てるでしょう」


健夜「しかし、2回戦の結果だけをみれば如何せん、他の3校と比べ実力不足感が否めません。この2日間でどう変わったのかも見どころでしょうね」




恒子「そして最後!!インターハイといえばこの高校!!一昨年、昨年と二度連続優勝を果たし、圧倒的な実力で準決勝まで登り詰めてきました」


恒子「西東京代表、白糸台高校おおおおおおおお!!!!」


健夜「このチームについてはほぼ言う事はありません。先鋒の宮永照選手は言わずもがな、他の選手も白糸台の先発に選ばれるだけの実力を持っています」


恒子「そういえば、このチームには天照大神って呼ばれてる牌に愛された子?の選手が2人も居るんですね!」


健夜「そうですね……長野県龍門渕高校の、天江衣選手、鹿児島県永水女子の神代小蒔選手に加えて」


健夜「白糸台の宮永照選手、そして大星淡選手。この4名の選手は牌に愛されている様な闘牌を見せる」


健夜「その内の1人、白糸台大将の大星淡選手にも注目したいですね」


恒子「さあさあ、見どころしかないAブロック準決勝!!先鋒戦はーっ!!」



恒子「CMの後!!」ビシッ

『おつかれ様でーす』


恒子「ふぃぃ……」




健夜(阿知賀女子……咲ちゃんが言っていた事が確かなら……)


健夜(……高鴨穏乃さんか)


――――――――――――――――――――

【Aブロック準決勝・観戦会場】


咲「お姉ちゃん、ラスボスみたいな扱い受けてるな……」


マホ「宮永先輩のお姉さんって、あの対局室で読書してる人ですか?」


咲「うん。そうだよ」


マホ「先輩にとっても似てますね……特に髪型!」


咲「よく言われるよ」


マホ「でもでも、雰囲気はあんまり似てませんね。お姉さんの方はクールな感じですけど、宮永先輩は可愛い感じです!」


マホ「いや、でも麻雀に関わってる時の先輩はキリッとしてカッコイイ感じですし……似てるかもです!」


咲(どっちなの……)


咲「まあ、お姉ちゃんはあれでもお菓子が大好きだったり、意外と優しかったりして可愛い所もあるんだよ?」



マホ「へぇ~……そういえば、何で先輩は茨城で、お姉さんは東京に住んでるんですか?」


咲「んー、私が中学生に入った辺りの頃に、お父さんとお母さんがそれぞれ茨城と東京に転勤になっちゃってね」


マホ「そういえば先輩のお母さんはプロ雀士でしたね」


咲「うん。東京のチームに移籍する事になって。それで、お姉ちゃんは中学3年生だったから、強豪白糸台があって丁度良いって理由でお母さんに付いて東京行ったの」


マホ「それで先輩はお父さんに付いて茨城に来たんですねー」


咲「そういう事」


マホ「健夜さんが地元の茨城のチームに移籍したのも、それくらいの年ですよね確か」


咲「そうだったかな?」


マホ「マホ、健夜さんと先輩の出会いのキッカケも知りたいです!」


咲「えぇっ……」


マホ「わくわく」


咲「……まあいっか。あれは確か、4月の終盤頃だったかな」


――――――――――――――――――――


【咲・中学1年、春】



咲「うぅ……ここ何処ぉ……?」ウルウル


咲「やっぱり、慣れない土地で買い物なんて1人で来るんじゃ無かったよ……」

咲「でも一緒に来れる友達なんて、まだ居ないし……」


咲「はあ…」


咲「ん?あれって…」


〈つくばプリージングチキンズ〉



咲「チキンって、鶏肉の事だよね?」

咲「……」グゥゥ



咲「……お腹空いたし、あそこで休憩しよう」テクテク


ガチャ


咲「すみま」


「ロン!8000」
「チー!ポン!」
「ツモ!1000.2000!」


咲「えっ?麻雀……?」テクテク

咲(なんで麻雀?)


咲(最近流行りの、麻雀喫茶っていう奴なのかな?)


咲(ど、どうしたら良いんだろう……店員さん来ないし……空いてる卓に入ったら注文取りに来てくれるのかな……)



咲「うーん……さすがに知らない大人と打つのは怖い……あっ」


女性「……」

咲(あの人弱そうだし、女の人だし入れて貰おう)


咲「すみません、打ちたいんですけど!」

健夜「えっ、誰?誰かの娘さん?」


咲「え、娘?私のお父さんは宮永界ですけど……」


健夜「宮永さん?そんな人ウチのチームに居たかな…」


咲「……チーム?」


健夜「ま、いっか。暇潰しなら、私と打つ?」


健夜「残念ながら、私は他の人と打たせて貰えないから2人麻雀になっちゃうけど」



咲「あ、はい。それで大丈夫です。えっと、あと食べ物とか……」


健夜「ふふっ、見かけによらず注文してくるねアナタ」


健夜「おーい!軽く食べれる物持ってきてもらって良いかな!」


モブ「……?小鍛冶さん、その子は?」

健夜「分かんないけど、気にしないで」

モブ「は、はぁ…」


健夜「さて、じゃあやろっか」


咲「は、はい(あれ、もしかして入る場所間違えた?)」


……………………………………………………


咲「ロン、3900」

健夜「ふぅ、終局だね」

健夜 27600
咲 22400


健夜「……?」


咲「お強いですね」


健夜「そうかな。2人麻雀の東風なんだし、運だよ」


健夜「アナタこそ、中々面白い打ち方するんだね」


咲「私は宮永咲って言います。……そんな事ないと、思います」


健夜「私は小鍛冶健夜。まあそういう事にしておこっかな」



咲「……小鍛冶、健夜……?」


咲「ってあの、元世界2位の?」


健夜「あはは、さすがに名前言ったらバレちゃうか」


健夜「驚いt」


咲「" これで "世界2位?」


健夜「」ピクッ


咲「これならお姉ちゃんの方がよっぽど強いや」


健夜「」ピクピク



健夜「ちょっと、そこの2人卓に着いてくれないかな」


咲「えっ?」


健夜「ふふっ、咲ちゃん。今度は4人打ちしよっか」


咲「さっき他の人とは打たせて貰えないって……」


健夜「良いから、ね?」


咲「は、はあ……良いですけど」


健夜「……よろしくね」ゴゴゴゴゴゴゴ


……………………………………………………

健夜 189000
咲 104500
モブA 62000
モブB 45500



咲「終局ですね」


モブA B「」チーン


咲「……さっきは手を抜いてたんですか?」


健夜「うん、まあ……でも今回は5割くらいは本気で打ったんだけどな」


咲「本気は、出さないんですか」


健夜「そのセリフは咲ちゃんにそのまま返したいかな」

咲「私は……」


健夜「それに、さすがに小学生相手に本気はね」



咲「…………小学生?」


健夜「えっ、小学生……だよね?」


咲「私、中学生なんですけど」


健夜「えっ……」


咲「……」ジトーッ


健夜「あ、あははは……いやぁ、うん、若く見えていいね!!」アセアセ


咲「小鍛冶さんと違って、私は若く見られたって嬉しくないです!!」


咲「でりかしーが欠けてるんじゃないですか?はぁ、これだからアラサーは!」


健夜「まだアラサーじゃないよっ!!」



咲「……もう帰ります、さよなら!」テクテク

ガチャ

咲「べーっ」


バタンッ


健夜「行っちゃった……」

健夜「……」チラ


健夜「5割は本気出したんだけど…」


健夜(プラマイゼロ……)


――――――――――――――――――――

【回想終わり】


咲「まあそれで、色々あって健夜さんが私しか部員の居なかった麻雀部……って言っても廃部寸前だったんだけど」


咲「にコーチとして来て、地元のヒーロー小鍛冶プロの権力で麻雀部の廃部は無くなったの。それから2年後にマホちゃんが入ってきて」


マホ「今に至る訳ですね!」


マホ「チキンだけ見て飲食店だと勘違いしちゃうなんて、宮永先輩可愛いです」


咲「引っ越して来たばかりで、そんなプロチームの名前なんて知らなかったから」


咲「っと、話してる内に始まるね」



恒子『テレビの前、スクリーンの前のお前らぁぁぁぁ!!CM明けたぞぉぉ!!』

健夜『またスポンサーからクレーム来るよ!?』


咲「さて」



煌『2回戦では宮永さんにボッコボコにやられたけど、今日の日は負けませんよ?』

怜『ほな、よろしく』

玄『よ、よろしくお願いしますっ!』

照『よろしくお願いします』



咲「松実さんはどう出るかな?」



恒子『Bブロック準決勝、先鋒戦……』

恒子『スタートですっっっっっっ!!!!』

書き忘れていました、
照との関係は、比較的良好な設定です。

色々感想ありがとうございます。嬉しいです。
2人の過去も後ほど書く予定ですっ

ミス
咲の二局目→100500点でプラマイゼロです。


【先鋒戦】





玄(ドラはいつも通り来てくれてる……けど)チラ


照「……」


玄(今日は宮永照さん、チャンピオンが居るんだ!)


玄(思い出せ……咲ちゃんとの特訓を…)


玄(……あれ、宮永……?)


玄「……」ジーッ

照「……?」


玄「えっ!?」ガタッ



怜「な、なんやどないしたん?」


煌「何かありましたか?」


玄「あっ、すみません……何でもありません」


玄(あの角みたいな髪……宮永…)



玄(ま、ままままままさか、チャンピオンって咲ちゃんのお姉さん!?)



怜「リーチ!」ドンッ


玄(そ、そんな事考えてる暇じゃ無かった!!園城寺さんのツモ切りリーチ!)

怜「ツモ、2000.4000」



恒子『決まったぁぁぁ!!準決勝先鋒戦、最初の和了りは千里山女子、園城寺怜!!』

健夜『ツモ切りリーチからの一発ツモ。この選手の特徴ですね』


恒子『しかし東一局はもう終わりですね』


健夜『はい。ここからです』





玄(さすが園城寺さ……っ!?)ズズズズズ


照「……」


玄(な、何……今の……?何か、大事な物を見られちゃったみたいな…)


怜(今の、船Qが言っとったやつか……)


煌(慣れませんねーこの感覚)



玄(そういえば、赤土さんが宮永さんは最初の一局は様子見するって……)


玄(てことは、次からが本番!)


――――――――――――――――――――

【観戦室】



マホ「マホにはあれ、マネできません」


咲「照魔鏡?」


マホ「いえ、園城寺って人の方です」


咲「あぁ……あれは、少し特殊だからね」


マホ「特殊ですかぁ?確かに数巡先まで見えるなんて普通じゃないと思いますけど……」


咲「まあまあ、それはまた後でね」


マホ「はーい。それで、先輩は誰を応援してるんですか?」



咲「え?特に誰も……」


マホ「お姉さんとか、松実さんとかじゃないんですか?」


咲「それはまぁ……お姉ちゃんに応援なんて必要無いと思うし」


咲「松実さん達とは半日一緒に麻雀打っただけだしね。期待はしてるけど」


マホ「先輩らしいですね」クスクス


咲「何が?」


マホ「なーんでもないです♪」


マホ(ふふっ、素直じゃないですね)


照『ツモ、1000.2000』


マホ「あ……」


咲「始まった……どうなるかな」



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_____________________________________________




恒子『ぜ、前半戦終了ーーーッッ!!』


健夜『予想してはいましたが、これは……』


恒子『まさに圧倒的!!前半戦、宮永選手以外が和了る事が出来たのはたったの2回!!』


恒子『前半戦のみで+66000点を獲得したのは白糸台高校、宮永照!!!』


健夜『各選手は協力して宮永選手を止めようとしていました。しかしこの結果……これは後半戦、どうなるのか分かりませんね』


恒子『誰かこのとてつもない選手を止める事は出来るのかぁぁぁぁ!!!』




マホ「うわぁ……先輩のお姉さん、めっちゃくちゃです」


咲「それでもこの点差で収まってるのは、松実さんがドラを抱えているのと、南場の親を他の2人が全力で流したおかげだね」


マホ「ドラが来てたらどうなってたんでしょう……」


咲「間違いなくトビ……いや、トビはないかな……?」


咲(何でこんな人が新道寺の先鋒?って思ってたけど……そういう事か)


咲(私はあんまりそういうやり方は好きじゃないな)


マホ「でも、やっぱり松実さんは練習した事をすっかり忘れてしまってるです」


咲「ううん、覚えてはいると思う。鳴けそうな所を積極的に出してるし」


咲「でも、やっぱりドラを切れないっていうデメリットは厳しい……」



マホ「お姉さんに狙われてますね」


咲(……松実さん)チラ


玄『……うぅ…』フラフラ

咲「……」



咲「私、ちょっとお手洗い行ってくるね」


マホ「一人で大丈夫ですか?」


咲「私、高校生だから!」


マホ「あ、これ迷子になったな……って思ったら、そこから動かずに電話してくださいね」



咲「最近、マホちゃんの保護者感が凄い……」


――――――――――――――――――――

【Aブロック会場・とある廊下】




玄「……うぅ…」グスッ


玄「点棒…いっぱい取られちゃった……」


玄「合わせる顔がないよ…皆にも、咲ちゃん達にも……」


咲「あ、じゃあ来ない方が良かったですかね?」


玄「えっ……?」



咲「なにしょげてるんですか。捨てられた子犬みたいな顔して」

咲「はい、飲みますか?」つ お茶




玄「咲ちゃん……なんで……?」


咲「飲まないなら良いです」


玄「あ、の、飲む!有り難く頂くよ!」つウケトリ


玄「んっ……」ゴクゴク


咲「間接キスですね」


玄「ぶーーーーっっっ!!」




玄「えっ!?!?/////」カァ



咲「嘘ですよ、なに赤くなってるんですか」


玄「も、もう!咲ちゃん!!」


咲「あはは、すみませんって」


玄「もう……急に現れたと思ったら…」


咲「でも、その表情ですよ」


玄「えっ?」


咲「打ってる時、ちっとも楽しそうじゃ無かったですから」


玄「そ、それは……宮永さんが……って、そうだ!!」


玄「チャンピオンって咲ちゃんのお姉さん!?」


咲「さてどうでしょう?お姉ちゃんに勝ったら教えてあげます」



玄「今お姉ちゃんって言ったよね……」


咲「あ……今のは忘れてください」


玄「えへへ、咲ちゃんって意外と抜けてる所あるよね」


咲「現在進行形で不抜けてる松実さんには言われたくないです。」


玄「ふ、不抜けてなんか……」


咲「知ってます。見ていましたよ、頑張っていましたね」


玄「っっ……」ジワッ


玄「…でも……宮永さんには通じなかった……」グスッ


玄「折角咲ちゃんや皆が特訓してくれたのに……」



咲「いえ、松実さんがドラを抱えているお陰であの程度の被害で済んだんです」


玄「でもっ、いっぱい振り込んじゃったし……」


咲「まだ前半戦じゃないですか」


玄「でも……」


咲「でもでもでもでもって、どうして松実さんはそんなに自分に自信が無いんです?」


玄「自信を持てる私なんて居ないから……っ!!」


咲「なっ……」


咲「私が応援しているんです……っ。少しは期待に応えようとか、そういうのは無いんですか……?」


玄「……へっ…?」


咲「あっ……」


咲「……もう良いです。せいぜい最後の局も、宮永照に苛められてください」


咲「このままでは全国放送で公開処刑ですね。楽しみにしてます。では」スタスタ


玄「さ、咲ちゃん待っ」


アナウンス『休憩時間残り2分です。選手は速やかに対局室へ……』


玄「あ……」


玄「……」テクテク





咲「……」チラ


玄「……」トボトボ


咲「……もう」スタスタ


――――――――――――――――――――

【観戦室】



マホ「あ、先輩おかえりなさいです。」


咲「うん、ただいま」


マホ「どうでしたか?松実さんの様子は」


咲「……」




咲「え、今なんて?」


マホ「ですから、松実さんの様子はどうでした?」


咲「……なんで分かったの」



マホ「マホは宮永先輩の事ならなんでも分かっちゃいますから♪」


咲「…知らないよ、あんな人の事なんて」プイッ


マホ(あらら……何があったんでしょう)




恒子『さあさあ、準決勝先鋒戦、後半戦が今!!始まります!』


健夜『最初の親は花田さんですが、もう宮永選手の様子見はありません』


健夜『各選手、自分に出せる以上の力を出せないと、食い殺されてしまいますね』



【対局室】



玄(咲ちゃん……)タン



照「ロン、2000」


玄「あっ……」



怜(阿知賀の……)

煌(ちょっとヤバいですねー)




照「ロン、3900」


玄「えっ……?」


玄(ホンイツ……?あれ、いつの間に鳴いて…)


怜(これはアカン!阿知賀の、意識が別のとこに行っとる!)


玄(また点棒取られちゃった……ダメだな私…)


玄(やっぱりこんな私、咲ちゃんに応援してもらう資格なんて無いよ)


玄(出来ることなんてドラを抱えるだけ……勝てっこないよ……)


玄(もういっその事諦めちゃえば……)

玄(……)




玄(……諦、め……?)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【回想・ミニ合宿】



憧「あー!また完敗……」


灼「正直、勝てるビジョンが全く見えない……」


玄「もう無理だよー……」


咲「何言ってるんですか、ほら次行きますよ」


玄「やっぱり、今の咲ちゃんも止められない私じゃチャンピオンを止めるなんて……」


咲「良いですか、松実さん」



咲「対局中に一番してはいけない事、それは諦める事です」


玄「それは……分かるけど…」


咲「分かる?はい、では諦めてはいけない理由を言ってみてください」


玄「……試合は最後までどうなるか分からない……から?」


咲「ぶー、全然違います」


咲「大体、本気で諦めようと思う状況に陥った時はもう何をしても大抵無駄です。速やかに諦めましょう」


憧「言ってること矛盾しすぎでしょ!?」


咲「冗談です。諦めるという事は、なんの役にも立たない、でくの坊が一人増えると言う事」


咲「ここで準決勝を思い浮かべましょう。相手はあの宮永照、松実さんが諦めてしまえば怪物を止めるのは園城寺さんと花田さんです」


咲「それも、でくの坊が飛ばされない様に配慮もしなきゃいけない」


玄「で、でくの坊を連呼されると傷つくよ……」



咲「詰まる所、迷惑なんです。一緒に卓に着いている2人にもですし、宮永照だってヤル気のない人を相手にしてもつまらないでしょう」


咲「分かりましたか?なので、諦めるくらいなら卓を引っくり返して滅茶苦茶にした後で失格になってください」


『ちょっと咲ちゃん、何不穏なこと言ってるの!?』


咲「松実さんにはドラが集まる。それだけで充分な役割を果たすんです」


咲「忘れてはいけません。それは充分な効力を発している事を」


咲「絶望的な状況に陥った時、きっと諦めようと思ってしまうでしょう。宮永照はそういう相手です」



咲「なので諦めたくなった時は、その事を思い出してください」




咲「全く相手になってない訳じゃない、むしろ宮永照へ最大の妨害をしているのは自分だ、と」


玄「うん……」


灼「咲は槓ドラ乗せてくるから、あんまり妨害にはならないけど」


咲「ちょ、せっかく良い話してたんですから!」

憧「あはははっ!」


玄「……ふふっ」ニコッ


_______________
______________________________
_____________________________________________


玄(ダメだ……諦めちゃ…)


『いえ、松実さんがドラを抱えているお陰であの程度の被害で済んだんです』

『私が応援しているんです……っ。少しは期待に応えようとか、そういうの無いんですか……?』


玄(私、忘れてた……何も出来てない事なんてない、私は宮永さんにドラを行くのを防げてる)


玄(そうだ、それだけで充分妨害にはなってるはず……問題は、そこからもう1歩、どう進むか)


玄(園城寺さんも花田さんも、何とか宮永さんを止めようと頑張ってるんだ)


玄(私だけ諦めるなんて……できないよね)



玄(ごめんね、咲ちゃん。ありがとう)

玄「……」フゥ


玄「よしっ、頑張るよっ」ゴッ



怜(なんや……?少し空気が変わった……?)


煌(スバラです、共に頑張りましょう)


照(前半戦の時やさっきとは明らかに何かが違う……鏡を使う……?)


照(……いや、それは危険か)

照(……面白い)フッ



玄(宮永さん笑ってる……なんていうか、そっくりだな咲ちゃんに……不敵な笑みが)


玄(って、ダメダメ!今は対局に集中しなくちゃ)


玄(応援してくれてる人が、たくさんいるんだから)



【観戦室】




咲「……ふーん」


マホ「何とか首の皮一枚繋がった感じですねー」


咲「気持ちを入れ替えただけで勝てる相手じゃないけどね」


マホ「またまたぁ、先輩のその顔には良かったって書いてありますよ?」


咲「そんな事ないもん」プイッ


咲「!!」ピクッ



咲「……そろそろか」


マホ「え?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

恒子『跳満ツモおおおおおおお!!南入して親は再び宮永照!!ラス親にして跳満ツモです!!』


健夜『これで4連続和了……これは非常にまずい状況です』


恒子『南4局4本番!!この時点で2位の千里山女子と1位白糸台高校の点差は約10万点!!』


恒子『かつてこれ程点差のついた先鋒戦があったでしょうか!!!』


健夜『他3校の選手も、出せる力以上の力を出しているように感じます。しかし、これは……』

健夜『前半戦より速さも打点もケタ違いです』


恒子『跳満をツモり、勿論親は続行!!!その目はまるで、獲物を前にした肉食獣!!続ける、誰かの息の根を止めるまでっ!!』




健夜(ここで止めないと、最悪の事態は免れないけど……)

健夜(松実さんはドラを……)



咲「松実さんも良くやった、やったけどこれは覚悟しなくちゃいけないね」


マホ「トビですか?」


咲「うん……新道寺の花田さんの能力は誰も飛ばさせない能力だと思う。」


咲「プロと打っても一度も飛ばなかったって話もあるし……けど、宮永照と対局したことは無い」


マホ「何事にも上限はあるって事ですね」


咲「次来るであろう倍満を止められなければ、そこで試合は終局」


マホ「次からは役満地獄ですかー?おっそろしいです……」



咲「後半戦入ってから……正確には、阿知賀のでくの坊に命が宿ってからのお姉ちゃんは調子が良すぎる」


咲(松実さんの変化に反応したか……)


マホ「あっ」


咲「来たね。これを止める事ができなかったら……」


照『リーチ』ゴゴゴゴゴゴゴ



恒子『白糸台宮永選手、ツモれば倍満の清一色手を聴牌!!リーチです!!』

健夜『これを止める事ができなければ……』





健夜『終わります』

咲「終わる」


――――――――――――――――――――


【対局室】



照「リーチ」ゴゴゴゴゴゴゴ


玄(つ、強すぎるよ……!!)


怜(これまでは、他2人の協力もあってなんとか宮永の親は流せてきた……でも、よりによってラス親で連荘て、ラスボスかいな)


煌(さすがはチャンピオンですね……格が違います)



怜(ふぅ……正直、もう身体クタクタや……こんなん小学生の頃のマラソン大会以来やで、ほんま……)


怜(はぁ……なんで麻雀打ってマラソンと同じ気分にならなアカンねん……もう投げなしたいなぁ…)


怜(投げ出したいけど……)チラ


玄「……」


怜(阿知賀のはまだ諦めてへんな……最初に諦めそうになった時はどないしよ思ったけど)


怜(でも、この子と新道寺のが協力してくれてたお陰で、想定してたよりは体力消耗してへんわ……)



怜(ほんならまあ……)


怜(もう1回だけ無茶するわ……)


怜(…戻ったら竜華に怒られるやろなぁ……膝枕、してもらいたいわ…ごめんな……)

怜(……)スッ


怜(トリプル……)


怜(3巡先や……ッッ!!)ゴッッッッ


怜「うっ……!!」クラッ


玄「園城寺さん!?」


怜「大丈夫や……自分の事に集中せぇ!」ハァハァ



玄(園城寺さん……)



玄(こんな時咲ちゃんなら……)

玄(ふふ、ダメだな私。私は咲ちゃんじゃないし、あんな事言われた後なのに……)




玄(……あんな事…?)


『……もう良いです。せいぜい最後の局も、宮永照に苛められてください』

『このままでは全国放送で公開処刑ですね。楽しみにしてます。では』


玄(待って……?最後の局も……?このままでは……?)


玄(最後の局、つまり今この状況のこと……。でも、苛められてください……?)


玄(それなら、今までもやられっぱなしだったんだし、最後の局 "まで" って言うはずだよね……考えすぎ?)



玄(そもそも、何で咲ちゃんがあのタイミングで私に会いに来たか……)


玄(普通なら励ましに来た……けど、咲ちゃんは普通じゃない。勿論、励ましに来てくれたって言うのもあるかもしれないけど…)


玄(考えて……最後の局も。という事はあのままの私では、止められるはずの最後の局も止められないという事……)


玄(あのままの私……不抜けて、自分の役割すらも忘れていた私……役割…)


玄(思い出せ……宮永照には1人では勝てない、私はドラを……抱える……)


玄(ドラ……リーチ……協力……)







玄「……」


玄「そういう事……」ポロ



煌(涙……?)


怜(ここで来るんか!!阿知賀の松実玄!)ハァハァ

怜(なら、これや……!)タン


煌「ポン!」

煌(その涙は、諦めの涙ではありませんね)


煌(ならば不肖、花田煌!最後までお供致しましょう!!)


怜「ぽん……っ!!」

照「……!!」


玄(小さい頃お母さんにずっと言われてた、ドラを大切にしなさいって)


玄(それ以来、自分からドラを捨てる事は無かったけど……)



玄(ごめんね、私はあなたと同じくらい大切な仲間が出来たの……)スッ

――――――――――――――――――――


恒子『あ、阿知賀女子松実玄選手、これは!?』


健夜『驚きました……』


健夜『宮永選手は、松実選手がドラを切れない事を知っていた。知っていたからこそリーチを掛けた』


健夜『ドラが出ないと決めつけて……しかし』




健夜(私自身も、二度経験した事だった)



【観戦室】

マホ「決めつけたから、リーチ……」


咲「そう。対局者の特性を完璧に見破る宮永照なら、ドラは必ず出ないと決めつける」


咲「でも……」




咲 健夜「『人は、予想を越えてくる』」



玄(もう二度と戻ってきてくれないかもしれない……けど……)


玄「リーチ!!」ダンッ

玄(私は待ってるっっ!!)



怜「ポンっ!!」

怜(改変完了……!)


照「……ッッ」チャッ

怜(そうやチャンピオン、それが阿知賀の……)



照「……」タン

怜(当たり牌や)



玄「ロン!!」


玄「リーチ断幺九 一盃口ドラ7……16000の4本場は17200ですっ!!!」





恒子『せ、先鋒戦決着ーーーーーーッッッ!!!』


恒子『チャンピオンがこんなに大きく振り込んだのはいつ以来でしょうか!!』


健夜『今のは、これ以外道が無いと言っていいほどの各校の打ち回しでした』


健夜『どこか一つの高校だけでも諦めていれば、この結果は有り得ません』


健夜『やはり、インターハイは面白い』


恒子『そんなAブロック、準決勝先鋒戦を締めくくったのは阿知賀女子、松実玄ーーー!!!!』



ワアアアアアアアアアアアア!!!



先鋒戦・最終結果

白糸台176800
千里山 83000
阿知賀 73200
新道67000



~Aブロック準決勝先鋒戦、終局~


【観戦室】



咲「……」


マホ「す、凄い……」


咲「私、ちょっと外の空気吸ってくるね」


マホ「え?」


マホ「……はい。でもすぐ戻ってきてくださいね」ニコッ


咲「うんっ」スタスタ


マホ「……ふぅ」



マホ「本当に凄かった……けど…」チラ




照『ありがとうございました』

玄『お疲れ様でした!』

怜『お、お疲れさん……』ハァハァ

煌『スバラな対局ありがとうございました!』



マホ「最後のお姉さんのリーチ……あれは多分…」


マホ「ふふっ、やっぱり姉妹似てますです」ニコッ


【会場・外】



咲「……ふぅ」


咲「今の対局は凄かった……凄かったけど……」



『私ね、ドラを捨てるとしばらく来なくなっちゃうんだ』


『しばらく?』


『うん。最後に捨てたのは中1の頃だったんだけど……一年間、来てくれなかったんだ』


『……そうなんですか…』


『でも、小学生の時に捨てちゃった時は3日後くらいには戻ってきたの』


『何ですかそれ……随分と気分屋なドラなんですね』


『あはは、そうなんだー』クスクス

『…………』




咲「……」



咲「もし……」

咲「もしも一昨日の夜、私達と特訓なんてせずに赤土さんと対策を練っていれば……」



咲「松実さんがドラを捨てる以外の筋道だってあったんじゃ……」

咲「……」グッ




「なに言ってるの、咲ちゃん」


咲「!?」バッ


玄「えへへ」


咲「……松実さん」


玄「もー、探したよー?控え室に戻ってすぐに観戦室に行ってもマホちゃんしか居ないんだもん」


咲「何しに来たんですか」


玄「え?それはお礼を言いに…」


咲「お礼?あんな事言われた後でお礼なんて、松実さんって意外とアレなんでs」


玄「本当にありがとう」ニコッ


咲「ッッ」


玄「諦めそうになった時、咲ちゃんの言葉を思い出した」


玄「ドラを抱えるその先の、そこからもう1歩進んだ私に出来ること。咲ちゃんとの特訓で、その事に気付けた」


玄「きっと、咲ちゃんとの特訓が無ければ、咲ちゃんの言葉がなければ私は自分からドラを捨てるなんて、想像すらできなかったと思う」


咲「……しっかり自分で辿りついた……辿り着いてしまった決論でしょう」



玄「ううん、導いてくれたのは咲ちゃんだよ」


咲「あんな、たった一試合の為だけにドラを捨てて……。分かってます、ドラを捨てる以外の道なんて、無かった……」


咲「それでもっ!もう2度とドラが来なかったらどうするんですか……?」


玄「それでも良いの」


咲「良い訳が」


玄「良いの」


咲「なんで……っ」


玄「阿知賀の皆、地元で応援してくれてる人達、マホちゃん、小鍛冶さん。それに咲ちゃん」


玄「皆、ドラと同じくらい大切な存在なの。だから、皆をこの先に導いていけるなら、私は満足なんだ」ニコッ



咲「なっ……」


玄「って、えへへ……なんだか恥ずかしいね」テレテレ


咲「そ、そんな理由で……?」


玄「私にとっては大切な理由だよ」


咲「……」


玄「だから、ありがとう咲ちゃん」


咲「あなたは本当に……」


玄「うん?」ニコッ


咲「……だ、大体!前半戦であんな不抜けた試合をするから、皆を不安にさせるんです!!」


玄「また言われた!?」



咲「そもそも、大量失点した大戦犯がそんな事言ったって無駄ですよっ!」


玄「大戦犯!?」


玄「うう…まさかこんなに言われるとは……」


咲「でもまあ……」


玄「こ、今度は何を……っ!?」





咲「とっても素敵な対局でした」


咲「お疲れさま、大変でしたね」ニコッ


玄「えっ……?」


咲「大量失点して大戦犯ですが、私にとっては凄く格好良かったですよ」


玄「咲ちゃん……?」


咲「きっと松実さんにとって、辛い対局でしたよね」


玄「っっ……」


咲「なので、お疲れさまでした。良く頑張りましたね」


玄「咲ちゃん……っ」ジワッ



咲「……誰にも言わないので、今だけは特別に良いですよ」スッ


玄「ありがとう……咲ちゃん……」ギュッ


咲「……はい」ナデナデ



玄「うぅ……ひっぐ……」ポロポロ


咲「素敵でした、松実さん」ギュッ


玄「ドラ……!!もう来てくれないかもしれない……!!」ポロポロ


咲「はい、そうですね……でも、阿知賀の皆は居ます」ナデナデ


玄「いっぱい点棒取られちゃった……っっ!!」


咲「はい、そうですね……でも、とっても素敵で恰好良かったです。きっと皆が取り返してくれます」


玄「辛かった……怖かった…皆の夢を私が終わらせちゃうんじゃないかって……!!」ギュゥ


咲「はい……そうですね……でも、皆の夢を繋げたのは松実さんです」ギュッ


玄「うっ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」ボロボロ




咲「よく頑張りましたね……素敵でしたよ、玄さん」ナデナデ



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咲「……落ち着きましたか?」


玄「ぐすっ……うん、なんかごめんねっ?」ハナレ


咲「い、いえ……」チラ


玄「………」ジーッ


咲「……っっ」


咲「こ、この事皆にバラしたら怒りますからね!?」


玄「それは本来私が言うべきセリフじゃないかな?」


玄「…バラしたりしないよ、2人の秘密」


咲「わ、分かってるなら良いんです……」


玄(年下の胸の中で号泣したなんて、死んでも言えない!!)



会場く ワアアアアアアアアアアア!!



咲「えっ、今何時ですか!?」


玄「えっと……はい」つ 時計見せる


咲「あぁ!?もう次鋒戦どころか中堅戦の始まりですよ!!」


玄「へっ!?次鋒戦終わっちゃったの!?」


咲「玄さん何分泣いてたんですか……!!」


玄「さっそくそんな大きな声で秘密言わないで!?」


咲「あーあ…中堅戦間に合うかn」


咲「!?」バッ


玄「きゅ、急にどうしたの?」



『ののかー!早く早く!』

『そんなに急いでも、もう始まっていますよ……』

『相変わらず麻雀以外はお子ちゃまだじぇ』

『子供じゃない!』



咲「……あれは…」


玄「え、の、和ちゃん!?」


和「えっ?」

優希「じょ?」

「ほう……?」



咲「あなたは…」


衣「妙な気配がするとは思っていたが……これは想像以上だ」ニヤ

?「to be continuedじゃけえ」

続きは夜に投下出来たら投下します


【偶然の出会い】



咲「天江衣ちゃん……」


衣「ちゃんではなく!!」


玄「和ちゃん!」


和「玄さん……!?」


優希「んん?のどちゃんのお友達か?」


和「先ほど話した、昔奈良にいた時の友達です」


優希「ってことは、今私たちが試合を見に来た阿知賀女子の選手か!」


玄「久しぶり、和ちゃん。いつかは会うだろうと思ってたけど……」


和「本当に……お久しぶりです。穏乃達は元気ですか?」


玄「うん、とってもね」


優希「そっちの私服の子も、のどちゃんの友達かー?」


和「いえ……可愛らしい方ですが、違いますね」


玄「あ!紹介するね、この子は……」チラ


玄「うっ……!?」ビクッ


咲「……衣ちゃん」ゴゴゴゴゴゴゴ

衣「ちゃんではなく……」ゴゴゴゴゴゴゴ


玄(な、何これ……!!辛い!そのオーラお姉さんよりも辛いよ!)

和「???」


衣「ののか達に付いてこちらの会場に来てみれば……思わぬ財宝に出会ったものだ」


咲「牌に愛された子筆頭の天江衣ちゃんにそんな事言って貰えるなんて、光栄だね」



衣 咲「……ふふふふふ」ゴゴゴゴゴゴゴ



玄「さ、咲ちゃん……」プルプル


咲「!!玄さん、すみません」


和「天江さん、お友達になれたようで良かったです」


衣「ふふふっ……」


優希「今のはそんな生優しい空気じゃ無かったと思うじぇ」


咲「玄さん、この人たちは?」


和「長野県代表、清澄高校副将、原村和です」


咲(えっ、私、玄さんに聞いたのに……)


和「以後、お見知りおきを」


咲「っていう事は、準決勝に?」


優希「いや、負けたじぇ!2回戦で!私は片岡優希、よろしくな!」


咲(じゃあなんでお見知りおき……?)



咲「ていうか負けた……?」チラ


衣「なんだ?」


咲「いえ……衣ちゃんを倒してきた高校が2回戦で負けるなんて、意外で」


衣「ちゃ・ん・で・は・な・く!!」プンプン


和「これは言い訳みたいになってしまいますが……うちの大将の選手が1回戦後に高熱を出してしまって」


衣「……衣を倒したのもそやつだ。衣の一番の友達!」


優希「それで、私たちの高校は補欠部員なんて居なかったから、棄権しようって言ったんだけど、その子が出るって聞かなくてな」


玄「それはまた……なんと言うか」


和「まあ、あの人が本調子で出られなかった事に後悔がないと言えば嘘になりますが、自分の全力を出した結果ですので」


優希「悔いはないじぇ!」



衣「だから、衣が代わりに出てやると言ったのに!」


和「それは無理ですって。常識的に考えてください」


衣「むむむ……」


咲(そういえば健夜さんが言ってた……長野県の天江衣を倒した無名校の一年生……)


咲(得意技は確か……)


和「私達は取材と一緒に、個室で試合を見させてもらう事になっているのですが」


和「よければ一緒にどうですか?」


優希「タコスもあるじぇ!」


咲「あ、私タコス嫌い」


優希「がーーーーん!!!」


玄「私はさすがに……そういう訳にはいかないから、控え室に戻るよ 」


咲「私も、後輩を1人で待たせちゃってるので、すみません」



和「そういえばまだ試合中でした。こちらこそ申し訳ありません」


衣「ののか!試合終わっちゃう!」


和「では、玄さん。穏乃や憧によろしく伝えておいてください」


玄「良かったら電話番号教えてくれない?色々落ち着いたら皆で会いに行くよ」


和「それは盲点でした……では、これ番号です」


玄「うん、また連絡するね」


和「……はいっ。では、玄さん宮永さん、また」


優希「じゃあな!」


衣「咲とはいつか卓の上で相見えたいものだ」


咲「満月の夜に、ね」ニコ

衣「ほう……?」ニヤ


玄「ま、またねーっ!」フリフリ



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咲「……では、私たちも戻りましょうか」


玄「あ、あの!咲ちゃん!」


咲「はい?」


玄「その……私たちも、ケータイの番号交換しておかない?」


咲「え、何でですか?」


玄「な、何でって言われると……したいから?」


咲「したいからって……」

玄「ダメかな…?」


咲「あの、色々協力をしたり、胸の中で泣かれたりはしましたけど」


咲「元を辿れば……というか、そもそも私達はこんな頻繁に会う間柄じゃないんですよ?」


玄「そ、それは……」


咲「実際、一昨日に別れた後はもう会うつもりなんて微塵もありませんでしたし」


咲「まあ、今日はあまりにも不抜けた玄さんが見ていられなくて、行ってしまいましたけど」


咲「なので、別に連絡先の交換とかそんなのは」


玄「あー、焦れったいよっ!私達は友達!うん、友達だから連絡先の交換くらい普通だよっ」


玄「はい、これ私の番号とメールアドレス!」


咲「ちょ、押し付けられてもっ」


玄「要らなかったら捨てても良いから!ね!」


玄「それじゃあ、また!」タッタッタ


咲「ちょ、ちょっと玄さん!」


玄「ばいばい!」




咲「……行っちゃった」



咲「こんなの渡されたって困るよ……」チラ


咲「……メールか…」


咲「メールのやり方……」ウーン


咲「べ、別にしたくてする訳じゃないし……」


咲「……うーん…こうかな…?違った……」ポチポチ




咲「説明書持っててよかった……」ポチポチ


……………………………………………………


玄「急がないと憧ちゃんの試合まで終わっちゃう!」タッタッタ


テレレーン♪


玄「メール?和ちゃんかな……」カチャ


玄「……えっ」


From?咲

To ?玄さん

……………………………………

バカ玄さん
仮に決勝に行けたとしても、もう協力はしないので会いに来ないでください。





玄「咲ちゃん……」グスッ


玄「やっぱり迷惑に感じてたのかな……あれ、まだ下がある?」


玄「けど見てる暇ないや!ごめん咲ちゃんっ、返信は控え室戻った後!」タッタッタ




From 咲

To 玄

……………………………………

ばか玄さん
仮に決勝に行けたとしても、もう協力はしないので会いに来ないでください。












でも、泣きたくなった時やどうしても相談したい時は連絡しても良いです

では、また。 宮永咲より



………………………………………………



一方、咲



咲「……返信来ないし…」


咲「……もう少し待とうかな…」


【観戦室】




咲「ごめんねマホちゃん、おまたせっ」


マホ「あっ、宮永先輩!遅いです!」プンプン


咲「本当に面目ないよ……」


マホ「えへへ、大丈夫ですよ」


マホ「でも、次鋒戦終わるまで戻ってこないとは思ってませんでしたー」


咲「ちょっと色々あって……」


マホ「今丁度、中堅戦の途中休憩なので次鋒戦の内容を教えましょうか?」


咲「ん、じゃあお願い。できれば、中堅戦の前半戦のことも」


マホ「はい!……って言っても、特に驚くべきことは起こってないですね」



咲「じゃあ、私が事前に予想してた通り?」


マホ「はい、大方。次鋒戦では松実宥さんの活躍で白糸台の点数が削れて、千里山との差がつまりました」


マホ「それと、新道寺の次鋒さんが意外とやり手で、全体的に差が縮まった結果でしたね」


咲「ふんふむ……」


マホ「これは少し予想外だったんですけど、白糸台の弘世菫さんには癖があるみたいですね」


咲「癖?」


マホ「はいです。千里山、清水谷さんのゾーンをコピーしてくまなく探した結果、誰かを狙う時視点と指の動きに変化を見られました」


咲「癖を探す……なんて言うのかな、キッカケになったのは?」


マホ「松実宥さんが、弘世菫さんからの狙い撃ちを全て躱していましたです」


マホ「さすがに、マホのコピーとのわずかな対局だけで、全弾躱すなんて……と思ったので探してみたら」


咲「案の定だった訳か……」


咲(お姉ちゃんは気づかなかったのかな)



咲「やっぱり、赤土さんが癖を見抜いたのかな」


マホ「そこまでは……。でも、そう考えるのが妥当だと思うです」


咲「なるほどね……ありがと。じゃあ中堅戦の前半戦は?」


マホ「はい。こっちはほぼ全て宮永先輩の読み通りに進んでます」


咲「江口セーラが暴れた?」


マホ「はい。新子憧さんも踏ん張ってますけど、なんとも……」


マホ「それに、江口セーラさんが1.2回戦の時よりも、更に火力が高く、速度が早くなっています」


咲「インターハイの魔法だね……」


咲「あ、渋谷尭深のこれまでの最初の捨牌は?」


マホ「確実に暗記はしてないですけど、三元牌が多かったので確実に大三元狙いです」


マホ「江口セーラさんが連荘を結構していたので、かなりストックが貯まってるかもですね」



咲「あとは後半戦次第、か」


マホ「でも、このまま行けば仮に大三元を和了ったとしてもマイナス分は取り返せないと思うです」


咲「つまり、中堅戦も1位とそれ以下の点差が縮まる試合になるのかな」


マホ「……これ、言っていいのか分からないんですけど」


咲「うん?」


マホ「……正直、お姉さんの活躍で白糸台には期待してましたです。なのに…」


咲「ま、まだ中堅戦の前半戦だから!そういう事言うのは良くないと思うな私」


咲「……同意見だけど」ボソッ


マホ「ボソって言っても聞こえましたよ今」


咲「コホン、まあ実際、次鋒の弘世菫さんはかなり強いと思う」


咲「赤土さんに癖を見抜かれなければ、キツい状況は続いたと思うよ」



マホ「確かに、松実宥さん以外は躱せていなかったです」


咲「でしょう?それに、玄さんのお姉さんもかなり強いしね」


マホ「玄さん?」


咲「あっ、な、何でもないっ!」アセアセ


咲「とにかく、中堅副将と凌いだとしても、大将には鶴田姫子がいるからね」


マホ「リザベーション、でしたっけ。あれもマホにはコピーできない技です」


咲「あれは2人でやる、コンビ打ちみたいな物だしね……多分、私とマホちゃんなら出来ると思うよ」


マホ「えっ、本当ですか!なら今度やりましょう!」


咲「いや……それは…考えとくね!」



マホ「えー……何でですかぁ」


咲「何でも!」


マホ「むー……あれ、大星淡さんは気にしなくて大丈夫なんですか?」


咲「あの子は……少なくとも準決勝の内は大丈夫だと思う。いや、高鴨さん次第かな」


マホ「へー…じゃあ、副将からの見どころは新道寺ですね!」


咲「うん、私も早く見たいな……リザベーション」


咲「っと、後半戦始まるね」


マホ「あ!大事な事に言い忘れてました!」


咲「え?」


マホ「千里山の江口セーラさん、前半戦が始まる前にジャンプして空中で一回転して着地してました!」


咲「なにそれ………」


――――――――――――――――――――

恒子『中堅戦終了っっっ!!!』


恒子『白糸台、渋谷尭深選手の大三元により中堅戦終了です!!』


健夜『今のは分かっていても防げなかったでしょうね』


恒子『しかし!千里山女子の江口セーラ選手が驚異の+36000点と、1位白糸台高校との差を大きく縮めました!!』


恒子『続いて、阿知賀女子、新子憧選手も+12600点と大躍進!』


恒子『大きく凹んだ新道寺ですが、副将にはエースの白水哩選手が控えています!!』



健夜『副将戦一番の注目選手ですね。この選手と大将の選手のコンビネーションにも期待しています』


恒子『さあさあ!!注目の準決勝副将戦はっっ!!!』


恒子『昼休憩の、後おおおおおお!!!』


健夜(それにしても、白糸台高校は調子が悪いのかな……)


健夜(次鋒の選手はかなり良かったけど、何で松実宥さんは躱せたんだろう?)


健夜(……後で咲ちゃん達に聞こう)


――――――――――――――――――――



咲「凄かったね、オーラスの渋谷尭深の手牌」


マホ「ですね…大三元に応えるように、ストック以外の牌も比較的揃いやすい牌がきていました」


咲「でも、新子さんも踏ん張った。これで白糸台との点差も……」


マホ「結局、阿知賀を応援してるんですねー?」


咲「……まあ、どこか1校くらい応援しないとつまんないかなって思っただけだよ」


マホ「へー」ニコニコ


ピロリーーン♪


咲「ん?」


マホ「メール?」


咲「そうみたい……」ポチポチ


マホ「健夜さんですか?」


咲「んーどうだろう……あれ、これどうやってやるんだっけ……」ポチポチ


咲「……あ、こうか」ポチポチ



From 玄さん

To 咲
………………………………………………

さっそくメールくれるなんて(ノ*°▽°)ノ
嬉しいな、ありがとう!

お言葉に甘えて、そういう時は頼らせて貰うね。

あ、そうそう!中堅戦終わって昼休憩だけど、良かったら一緒にどうかな?
皆も会いたがってるし……。

………………………………………………


咲「あの人は全く……」ハァ


マホ「……じーっ」←気になる


咲「あぁ、玄さ……松実玄さんから。さっき色々ね」


マホ(なるほど……だから名前で)


マホ「へー!ふふっ、別に玄さんって呼んでても良いんじゃないですかー?」


咲「そ、それはいいのっ!」


プルルルルル プルルルルルル


咲「今度は電話……あ、健夜さんだ」


マホ「先輩のケータイさんも随分忙しくなりましたね」クスクス


咲「1人のアドレスが新しく入っただけだよ」


ピッ


咲「はい、もしもし?」



健夜『あ、咲ちゃん?』


咲「違いますって言ったら切るんですか?」


健夜『まず誘拐を疑うよ……迷子になって拐われるとかありそうだし』


咲「ぐっ……言うようになりましたね。……どうかしましたか?」


健夜『それがお昼なんだけど、私打ち合わせが入っちゃって』


咲「はい」


健夜『悪いんだけど、マホちゃんと2人で食べててもらえる?』


咲「それは良いですけど……。私たちの事よりも仕事を選んだんですね」


健夜『えっ!?』


咲「冗談ですよ。仕返しです。分かりました、お疲れさまです」



健夜『ビックリした……うん、ありがとう』


健夜『はぁ……もうクタクタだよ』


咲「あはは…あのアナウンサーの人、エネルギー凄いですからね」


健夜『そうなんだよー……っと、いけない、いけない』


健夜『そうそう、1つ白糸台の弘世さんについて聞きたいんだけど』


咲「あぁ、白糸台の次鋒なら、赤土さんが癖を見抜いたみたいです」


咲「癖自体もマホちゃんが確認しています」


健夜『癖?……気づかなかったな』


咲「私もですよ。赤土さん、健夜さんに壊された割に充分生きてますね。安心しました」


健夜『嫌なこと言わないで!?』


健夜『あ、ごめん、もう時間だ』


咲「はい、ではお仕事頑張ってください」


健夜『うん、ありがと!またね』


咲「はい、また」ピッ




マホ「健夜さん、なんて言ってました?」


咲「お昼、打ち合わせ入ったから2人で食べてって」


マホ「えっ、それは残念ですね」


咲「仕事を選んだ健夜さんに慈悲はないよ」クスクス



咲「さて、お昼か…」



――――――――――――――――――――

【数分前阿知賀・控え室】


玄「……」ソワソワ


穏乃「玄さん、なにソワソワしてるんですか?」


玄「へっ、あ、いや、何でもないよ!」アセアセ


晴絵「今のところ、順調に点差も縮めていけてる。もう一踏ん張りだ」


灼「次は私……」


穏乃「うはぁ!!私の出番ももうすぐだー!」


宥「ふぁ、ふぁいと!」グッ


憧「ただいまー」ガチャ


穏乃「あ、憧!おかえり!」

玄「おかえり、憧ちゃん」

宥「お疲れさま」

灼「やったね、プラス収支」



憧「うん……でも、大三元は止められなかったし、江口セーラにも稼ぎ負けた…」


晴絵「憧は充分自分の仕事をやったさ。胸を張れ」


憧「ありがと、晴絵」


晴絵「さてと、じゃあ昼飯でも食べに行こっか!」


玄「あ、あの!」


晴絵「うおっ」ビクッ


宥「玄ちゃん?」


玄「ちょっとした提案が……」つ ケータイ


【現在】



穏乃「……」ジーッ


憧「……」ゴクリ


宥「……」プルプル


灼「……」チラチラ


晴絵「……」クスッ


玄「へ、返信来ないのです……」


憧「やっぱりダメだったんじゃない?もう会いに来ないでって書いてあったんでしょ?」


玄「で、でも、また連絡してもいいとも書いて」


灼「お昼誘って良いって事では無いと思」


宥「社交辞令とか…」


玄「うっ」グサッ



穏乃「ていうか、玄さんいつの間にそんな咲と仲良く?」


玄「へっ!?」


憧「確かに、いつの間にメアド交換する仲に……」


憧「先鋒戦後、お手洗いの後和に会って話し込んでたら遅くなったんだっけ?」


宥「私の試合見てもらえなかった」ズーン


穏乃「なんか怪しい……」ジトーッ


玄「あうっ、えっと……」


ピロリーン♪


5人「「「!!!!」」」


玄「き、来た!」



穏乃「は、早くメール開いてください!」


憧「ど、どうせ断られてるわよ……」チラッチラッ


灼「……」←興味津々


宥「わ、私ももう一回会いたいな」


晴絵「随分と懐いたもんだなぁ……」クスクス


玄「じゃ、じゃあ……!」ポチポチ




From?咲ちゃん

To? 玄

…………………………………………

ホントにばか玄さんですね

会いませんってメールした数分後にお昼を誘うその神経には、驚きです。

お昼の誘いは、すみませんが受けられません。


ですがもし、もしも今日の準決勝を無事突破する事が出来たら、晩ご飯をご一緒しましょう。
期待しています


PS,赤土さん、癖の件お見事です。それを活かしたお姉さんも。

……………………………………………………


――――――――――――――――――――


【観戦室】

マホ「良かったんですか?断って」


咲「うん。準決勝も終わってないのにそう頻繁に関わるのは、ね」


マホ「それもそうですね。健夜さんも仲間はずれになっちゃいますし」


咲「そういう事」


咲「さて、昼休憩は50分か……マホちゃん何か食べたいものある?」


マホ「うーん……」


咲「特になければ、近くの喫茶店とか」


マホ「あ、それ良いですね!」


咲「この会場の食堂でもいいよ?」


マホ「あ、それも良いかも……」



咲「……マクド○ルド」


マホ「それも良いですね……」


咲「ファミレスとか?」


マホ「捨てがたいです……」


咲「焼肉」


マホ「あー!その手もありますね…」


咲「ぷっ……ぎ、銀座のお寿司屋さんとか?」


マホ「むむむ……それも捨てがたいです…」


咲(ふふっ……全部肯定して面白い)



マホ「って、あれ?銀座のお寿司屋さんなんて無理ですよね!?」


咲「小鍛冶プロにツケておいてください、とか言えば意外といけるかもよ?」


マホ「や、やってみますか……?」


咲「冗談だから!それやって、ウチはツケ無理ですとか言われたら……」


マホ「言われたら……?」ゴクリ


咲「食い逃げ……そして捕まり牢屋?」


マホ「ひぃっ!!だ、ダメですね!大人しく喫茶店にしておきましょう!」


咲「ふふっ、そうだね。じゃあ行こっか」


マホ「あ、先輩待ってください!」


咲「うん?」



マホ「はい」つ 手

咲「え?」



マホ「もし迷子になられたりしたら、マホ探し切れる自身が無いので」 つ手


咲「こ、この年になって2つも下の子に手を引かれるのは……」


マホ「そんなの気にしなくても良いですよ!」


マホ「むしろ、迷子になってしまう方が避けるべき事態です」


咲「うぅ……確かに、迷子になる確率も高いし……」スッ


咲「よろしく…お願いします////」ペコ


マホ「はいっ!ではレッツゴーです!」ニコニコ

阿知賀編、もう暫く続きます


――――――――――――――――――――


【再会】



マホ「ケータイで調べたら、この辺りに良いお店があるみたいですねー」

咲「……」


マホ「ホットドッグが美味しいらしいですよー」


咲「……ねえ」

マホ「はい?」


咲「なんか、道行く人が私たちの事見てる気がするんだけど気のせいかな」


マホ「仲の良い姉妹みたいで微笑ましいなー、っていう視線ですよきっと」


咲「そうかな?」

マホ「はい!手を繋いでる事なんて誰も気にしてません」


咲「……そうかなぁ…」



咲「まあ良いけどさ」


咲「そうそう、この前マホちゃんの家に行ったとk」


マホ「……」ピタッ


咲「わわっ!ど、どうしたの急に立ち止まって」


マホ「先輩……」ササッ


咲「な、なに?後ろに隠れて……」

マホ「……」



「咲……?」


咲「えっ……」ビクッ


咲(こ、この声……)


「サキ?サキって誰?」


「本当に来てたんだ、咲」


「無視!?」





咲「お、お姉ちゃん……?」


照「久しぶり」

―――――――――――――――――――――――


咲「お、お姉ちゃん……」


照「お父さんから電話で来るとは聞いてたけど、会わなかったから嘘かと思ってた」


咲「……いくらお父さんでも、そんな嘘つかないよ」アハハ


咲「あと、大会中に会いに行ったら迷惑かなって」


照「そんな事はない。咲は今からご飯?」


咲「うん、丁度お姉ちゃん達が出てきたお店にね」



照「そう。……あれ、そっちの子が手紙に書いてあった?」チラ

咲「あ、うん」


マホ「ゆ、夢乃マホです……先輩にはいつもお世話になってて…」


照「私は宮永照、咲の姉」


マホ「は、はい…その、試合見てたので知ってます…」


咲「お姉ちゃん、その睨むみたいな目つきやめてあげて?マホちゃん怖がってる」


照「えっ……笑ってたつもりなんだけど…」


咲「…相変わらずだね」




「あ、の、さぁ!!」

「そろそろ私も会話に混ぜて貰えないかな!」



照「淡、少し静かに」


咲「……大星淡さん」


淡「おっ、知ってんの!?まあ当たり前だよねっ!」


淡「そうですとも、私こそが白糸台大将の大星淡!」


淡「麻雀の強さは高校100年生だよっ!☆」



咲「……お姉ちゃんがいつもお世話になってます」


照「えっ、別にお世話には……」


淡「やだなぁテル!今のは軽い挨拶みたいなもんでしょ!なに本気で返してるの?」


淡「ねっ?」


咲「……」



照「咲……色々話したい事もあるけど、元気だった?」


淡「また無視!」


咲「うん、そこそこね。」

咲「お姉ちゃんは……元気そうだったね。試合、見てたよ」


照「あぁ。あの3人は手強かった……特に阿知賀」


照「まさかドラを切ってくるなんてね。前半戦とはまるで別人みたいだった」


照「楽しかった」



咲「……そっか」ニコ



淡「えー?そうかなぁ……」


淡「私にはただのドラ倉庫にしか見えなかったけど……最後のだって、苦し紛れがたまたま上手くいったんじゃないの?」


咲「」ピクッ


照「淡。淡も見てたでしょ?あれは偶然でできる代物じゃない」


照「つまり、あれが出来る程の選手だと言うこと」


淡「対局したテルがそう言うならそうなんだろうけどさ……」


淡「まっ、誰が来てもこの私が皆ぶっ倒してあげるから、見ててよね!」

照「淡、そんなに傲慢な態度だと……」




咲「……自分の身の程を見誤ると、足元を掬われますよ」



マホ「せ、先輩」ギュ


淡「……もしかして、今のは私に言ったのかな?」ゴッ


咲「…だとしたら?」


淡「テルの妹の癖に、自分の身の程すら弁えられないんだね」ゴゴゴ

咲「……」


淡「……」ゴゴゴゴゴゴ


咲「……」

マホ「先輩……」クイクイ


咲「……」ハァ



咲「……マホちゃん、行こっか」


マホ「は、はいっ」ホッ


照「咲」


咲「じゃあ、またねお姉ちゃん、大星淡さん」


咲「大星さんは大将戦、期待してますね」


照「咲、大会中はちょっと会うの厳しいと思うから……」


咲「分かってるよ。また連絡するね」


照「ん」


咲「では」テクテク


マホ「す、すみませんっ、失礼しますです」タッタッタ



淡「…なんなの、アイツ!」


淡「テルの妹だからって、ちょっと調子に乗りすぎじゃない?」


照「今のは淡も悪い。例え自分が対局してなくても、戦った相手を侮辱するのはダメ」


淡「……ふんっ」


淡「サキって、テルの妹なのにあんまり大したこと無さそうじゃん」


照「……どうしてそう思った?」


淡「だって、なーんにも感じなかったもん!」


照「……そう」


照「ほら、早く帰ろう。菫に怒られる」


淡「そうだねー」


照「……」



【喫茶店】



咲「ごめんね、マホちゃん」


マホ「え?」


咲「なんか嫌な空気にさせちゃって」

マホ「そ、そんな!マホだって、ちょっとカチンと来てましたし」


マホ「宮永先輩は間違ったことなんてしてませんよ」


咲「……そうかな」


マホ「そうです!」


咲「……」シュン



マホ「……よしっ」


マホ「宮永先輩、はいっあーんです!」スッ


咲「えっ?」


マホ「ほらっ!」


咲「あ、あーん……」パク

マホ「どうですか?」


咲「……おいひい」モグモグ


マホ「ふふっ、良かったです」


咲「……ありがとう」ニコ

マホ「~~~っっ/////」カァ


咲「??」




マホ「そ、それにしても!あれが白糸台の大星淡さんですか」



咲「そうだね……ちょっと予想外だったかも」


マホ「あの性格が、ですか?」


咲「それもあるけど……」


咲「予想以上に厄介そう、かも」

マホ「え?」


咲「あの子の能力は、予選で1度だけ見せたダブリーからの山の角でカン、次巡にツモで槓裏モロ乗り」


マホ「はい。マホがコピー出来た訳ですから、あれは能力ですね」


咲「でも多分、それだけじゃない」


マホ「そうなんですか?」



咲「考えてみて?もし、ダブリーを掛けたとしても、山の角でカンするまで和了れないとしたら」


マホ「角に辿りつく前に、大星淡さんが誰かに振り込む可能性や、誰かが和了る可能性が高い……ですか?」


咲「そう。勿論、誰かが大星淡に振り込む可能性だって高い訳だけど、カンをする前にツモしてもロンしてもダブリーのみ」


マホ「大星淡さんはダブリーを発動した場合、山の角でカンするまでロンもツモもしない……」


咲「そう考えると、おかしいよね。そんな能力、インターハイっていう舞台で通用する訳がない」


マホ「なら、他にどんな能力が?」



咲「分からない……けど、似たような人に最近会った」


マホ「最近ですか?」


咲「うん」



咲「……まあ、数時間後には大将戦だし、それまでお楽しみにしておこっか」


マホ「それもそうですね!あ、店員さんオレンジジュースください!」


咲「私もお願いします」





咲(……自分の能力発動域まで誰にも和了らせない手段…)

咲(龍門渕の天江衣は、海底撈月を得意としていた。そして、その能力を最大限に活用するための手段が、一向聴地獄)

咲(とすると、大星淡は……)

あわあわをちょっと嫌なキャラにしてしまいました。
好きな方は申し訳ない


――――――――――――――――――――



マホ「あ、そこのテレビでこれまでのダイジェストやってます」



咲「あれはBブロックの方だね」


マホ「Bブロックはまだ2回戦が終わったばかりなんですねー」


咲「明日Aブロックは休みで、Bブロックの準決勝、その次の日は両方休みで5位決定戦、次の日が最終日の決勝戦っていう予定みたい」

咲「あ、神代小蒔……」


マホ「ちゅ、九蓮宝燈和了ってますよ?」


咲「流石に次元が違うね、この神代小蒔は」


マホ「確か、神様を降ろす……でしたか?そんなの本当に出来るんでしょうかー?」



咲「少なくとも、憑依系の能力者は複数人いるね」


咲「ほら、この永水の大将も……」


咲「あ、見ちゃダメ!」サッ


マホ「わわっ!?み、宮永先輩?急に目隠ししないでくださいー!」


咲「見たらダメだから!」

マホ「なんでですかー!」


咲(な、なななななんなのこの人!)

咲(鹿児島、永水女子……とんでもない物を持ってるよ……べ、別に悔しくはないけど)



咲「あ、副将に移った。はい、マホちゃんもう良いよ」



咲(ていうか、よく見たらマホちゃんも結構……)クッ


マホ「び、ビックリしました」


咲「ごめんね?ちょっと刺激が強い選手が出てたかr……見ちゃダメ!!」サッ


マホ「またですか!?」


咲(な、なんなのBブロック!!そのBって、BIGのBなの!?大きさで勝負してるの!?)

咲(あ、この人玄さんの友達の……確か原村和。へぇ、インターミドルのチャンプだったんだ)


咲(これは……デジタル?いや、にしては若干オカルト染みてる)


咲(オカルト並のデジタルか……そういえば、ネトマ界にそんな話が…)



咲(……ていうか、なんでペンギン抱いてるの?顔は可愛いし、スタイルは良いし、ちょっとキャラ付け贅沢すぎないかな)


咲(永水の副将は………小四喜、鬼門か。モノクルさんに押さえ込まれた結果だね)


咲「あ、ごめんねマホちゃん、もういいよ」スッ

マホ「み、宮永先輩……」


咲「お、怒った……?」


マホ「その……マホ、激しいのは嫌いじゃありませんけど……ここでは人の目がですね…/////」ドキドキ


咲「……?」


マホ「えへへ////」


咲「あ、もうこんな時間。そろそろ会場に戻ろっか」


マホ「は、はいです!」


マホ「あ、マホ明日のBブロックの準決勝、見に行きたいんですけど…」


咲「ずっと目隠しで音声だけになると思うけど……良い?」


マホ「嫌ですよ!?」


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【閑話・宮永咲と……】


~インハイ期間中、ある時~




咲「健夜さん、ジュース買ってくるから待っててって言ってたけど」


咲「遅いし、ここで立って待ってるのも暑いし疲れたよ…」


咲「また誰かに見つかって話してるのかな?」


咲「……」カンガエ


咲「……ちょっと近くのベンチ探すくらい大丈夫、だよね」


咲「ケータイもあるし、うん。大丈夫っ」


咲「……迷子になりませんように」



咲「それにしても暑いなぁ……」テクテク




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咲「やっとベンチ見つけたよ…結構歩いた気がするけど…」


咲「気のせいかな」


咲「やっと座れる……」テクテク


咲「……ふぅ」スワリ


咲「……ん?」チラ


小蒔「……」アセアセ


咲「……」





咲(えっ?)



咲(この人……神代小蒔…だよね?)


咲(しまった、ベンチしか見えてなかった……隣に座っちゃったよ)


小蒔「……」チラチラ


咲(な、なんか凄い気にされてる……そりゃ当たり前か…)

咲(いきなり知らない人が隣に座ってきたら誰だってビックリするよね)


咲「……」フゥ


咲「あ、あの」


小蒔「は、はい!!わ、私何か失礼な事でもしたでしょうか!?」ビクッ



咲「え?あ、いや、その……」

咲(テレビで見るのと全然雰囲気違うな……)



咲「神代小蒔さん、ですよね。鹿児島県、永水女子の」


小蒔「へっ?あ、はい!神代小蒔と申します!」

咲「テレビで試合見てて、凄いなって思ってました」


小蒔「そ、そうですか?ふふっ、少し嬉しいです」


咲「……」

小蒔「……」





咲(き、気まずい……)



咲「えっと、すみません、隣に座ってしまって」


小蒔「いえいえ!お気になさらずっ」


咲「……」

小蒔「……」




咲「えっと、いい天気ですね?」


小蒔「そうですね!もう少し風が吹いてくれたら、もっと良いのですがっ」


咲「あの、もう少し落ち着いて貰っても良いですよ……?」

咲「別に私、怪しい者ではないので……」



小蒔「へっ?」


咲「いや、何となく落ち着かない風だったので…すみません、いきなり隣に座られて困りますよね」


小蒔「そ、そんな事ありません!」


小蒔「……ふぅ。申し訳ありません、私、見知らぬ人…それも同年代の方と話すのに慣れていなくて…」


小蒔「緊張してしまって…」


咲「そうなんですか?」

小蒔「はい…」


咲「……意外と普通の女の子なんですね」


小蒔「えっ…?」


咲「あ、すみません。今の発言は失礼でした」



小蒔「いえ!その、どういう意味で……?」


咲「いや…テレビで試合を拝見しましたが、対局中は……その、凄く圧倒的で迫力があるなって思ってたんです」


咲「でも、こうして間近で見て話してみると……その、失礼かもしれませんが、普通の人だったんだなーって」


小蒔「普通……」


咲「すみません、牌に愛された子なんて呼ばれてる神代さんに、そんな事」


小蒔「……」


咲「あ、あの……?」

咲(やばっ、怒って最上位の神様とか降ろされちゃったらどうしよう……対抗できるかな…)


小蒔「……」グスッ



咲「泣くほど!?」


咲「あの、ごめんなさいっ、私……」


小蒔「違うんです、この涙は……嬉しくてっ」


小蒔「有難うございます」ニコッ


咲「えっ……」



小蒔「……私、昔から自分は普通じゃないって周りの皆から言われて、育ってきたんです」


咲「……」


小蒔「実家の神社の長女として産まれて、この身に神様を宿して……」


小蒔「ずっと、あなたは特別な子って言われてきました」



小蒔「それが、嫌な意味でない事は分かっています……」


小蒔「けれど最近では、麻雀ですら牌に愛された子なんて言われてしまって」

小蒔「段々、特別味が大きくなっていく自分が、怖くなって……」


小蒔「いつか、普通の皆と、仲良くできない日が来てしまうんじゃないかと……」


咲「……」


小蒔「だから、貴方に普通って言ってもらえて……初めて会った貴方にそう言ってもらえて、嬉しいんです」


咲「ひょっとして、こんな所で一人で座っていたのは……?」


小蒔「はい……きっと今頃、チームの皆が私を探していると思います」


咲「……はぁ」



小蒔「心配をかけてしまっているでしょうか……」


咲「アホですか」

小蒔「えっ」


咲「心配を掛けているだろうかって、そんな申し訳なく思う位なら、抜け出して来なければ良いんですよ」


小蒔「それは…」



咲「もう…なんで私が知り合う年上の人は、こうも抜けているのか……」ハァ


咲「良いですか?別に、あなたは特別でもなんでもありません」


小蒔「!!」



咲「まず、身体に神様ですが」

咲「……すみません、さすがにそれは特別ですかね」


小蒔「は、はい…」

咲「ですが、私だって同じくらい特別です」


小蒔「それは、どうしてですか……?」


咲「聞いて驚いてください」

小蒔「は、はい……」ゴクリ





咲「私は、元世界2位の小鍛冶健夜プロを意のままに操れる存在ですっ」



小蒔「……え?」


咲「この年であの人をコキ使えるのは、私位でしょう」フンス


小蒔「えっと……」

咲「何ですか?」





小蒔「その、小鍛冶健夜さんとは…誰なんですか?」





咲「……」

小蒔「す、すみませんっ…私、有名人とかそのような話に疎くて……」


咲「んふっ……いえ……こちらこそ何かすみません……」ククク


咲「ぷっ、健夜さん……知名度低っ…」アハハ



咲「まあそうですね……分かりやすく言えば、麻雀で神代さんと宮永照さんと天江衣さんを同時に相手しても」


咲「捻り潰せる人を、私は従えてるんです。下僕と言っても……いや、従者……?」


咲「まあ、神代さんの神様みたいに私に味方してくれるんです」


小蒔「そんな方が居たんですね……」


咲「それとですね、私は神代さんの最上位の神様相手でも、きっと余裕で相手に出来るでしょう」

咲「牌に愛された子?ちゃんちゃら可笑しいですね」


咲「あなた達が牌に愛された子なら、私やマホちゃんは、牌と結婚した子と呼んで欲しいです」



小蒔「おぉ……!!」キラキラ



咲(あれ、本当に信じてるのかな……純粋過ぎない?神代さん)




咲「ま、まあ、今の話は軽く盛りました」


咲「神代さんに最上位の神様を降ろされたら、私でも……ギリギリの戦いになるでしょう」


咲「とにかく!」

小蒔「は、はいっ!!」


咲「私も、つい最近知り合った人達に、この子は特別な子だと思われています。……多分」


咲「ですが、私は特別ではありません。容姿、普通。性格、普通。学力、普通」


咲「私は、普通です。そう自負しています」


咲「よって、私と同じくらい特別な扱いを受けている、特別な力を宿している神代さん」


咲「あなたも、ごく普通の女子高生です」



咲「何故なら、私とあなたは同じ存在だから」

咲「あなたと同じ存在の私が普通なら、あなたも普通なんです」


咲「仮に!あなたの事を特別だ、と言う人が居るとしましょう」


咲「それでも、あなたは特別にはなりません」


咲「何故なら、あなたと同じ特別な存在は、少なくとももう一人、私が居るんですから」


咲「……特別の称号は、オンリーワンにだけ与えられるんです」



小蒔「……」

咲(全く筋通ってないけど……どうかな)



小蒔「正直……」


咲「はい」


小蒔「言っている事はあまり良く分かりませんでした……」

咲(ですよねー…)


小蒔「けど……」ニコッ

咲「!!」



小蒔「私は……普通、なんですよね」



咲「はい、普通で……」チラ


咲「いや、一部を除いて普通ですね……」クッ


小蒔「えぇ!?」

小蒔「ど、どこを直せば全部普通になれるんでしょうか!」


咲「……直せないので諦めてください…ていうか、直そうとするなんて私への嫌味です」


小蒔「えぇ……?」

咲「まあ、そこは気にしないでください」


咲「良いですね?」


小蒔「わ、分かりました!」


咲(ふぅ……なんか放っておけなくて、適当に慰めちゃったけど……上手くいったのかな?)



小蒔「……」ジーッ


咲「何です?綺麗な方にあまり見つめられると、照れちゃいます」


小蒔「ご、ごめんなさいっ!/////」

小蒔「その、初対面なのに、不思議と心を許せてしまう方だな……って思いまして」


咲「つまり、告白ですか?」


小蒔「えっ!?/////そ、そんな……あの、私そんなつもりではっ/////」


咲「ふふ、冗談ですよ。可愛らしい反応しますね」クスクス


小蒔「も、もう!!からかわないでください!////」



小蒔「そうだ!あの、お名前を伺っても……?」

咲「そういえば名乗っていませんでしたね」


咲「私は宮永咲。インターハイには観戦に来ました」


小蒔「咲さん……」

咲「咲さんはやめてください……誰も呼んでいないので、少しこそばゆいです」


小蒔「……なら、咲さんと呼びたいです」


咲「えぇ……」

小蒔「……」チラチラ


咲「まあ、それでいいです」

咲「……特別、ですよ?」


小蒔「!!」ジワッ



小蒔「はいっ!」ニコッ

――――――――――――――――――――

【宮永咲と神代小蒔】




咲「へぇ……それじゃあ、いつでも強い神様を降ろせる訳ではないんですね」


小蒔「はい。事前に、神様サイクルを調整して大会の本番などで強い神様を降ろせるようにするんです」


咲「か、神様サイクル」

咲(何それ……)


咲「ちなみに、この前2回戦の映像を見たんですけど、あの時はどの位の神様だったんですか?」


小蒔「そうですね…確か、5番目の神様だったはずです」

咲「ご、5番目ですか?」


小蒔「はい。神様は弱い方から順にしか降ろせない様になっているので」


咲「へぇ……」

咲(あれで5番目……?まだ4回も進化を残してるって……)



小蒔「でも、降ろしている時の記憶は曖昧で、気付いたら点が増えたり減ったりしているんです」


咲「ふんふむ…神様を使うんじゃなくて、完璧に憑依させるんですね」


咲(戒能プロや北海道のあの人とは根本から違うのか)


咲「神様に憑依させるんじゃなくて、神様を自分の意思で動かす事はできない感じですか?」


小蒔「神様を自分で動かすなんてとんでもないっ!そんな失礼なことは……」


咲「えー、身体を貸して上げてるんですよ?その位してくれないと、神様の宿し損じゃないですか」


小蒔「そ、それは考えた事がありませんでした……」

小蒔「咲さんは凄いです!」


咲「いえ、それが出来たら神代さんは物凄く強くなるだろうなって思って」


小蒔「ふふっ、有難うございます」


小蒔「ですが、残念ながら多分できません……」


咲「そうなんですか……それは残念です」


小蒔「咲さんは、私に強くなって欲しいんですか?」


咲「うーん、どちらでも良いですが、私なら最強状態の神代さんと戦いたいですかね」


小蒔「そうなんですか……」


咲「後、決勝戦に鍛えて欲しい選手も出てくるので」


小蒔「鍛えて欲しい……?」


咲「あ、この話は良いです。……そもそも、決勝に出られるかすら分かりませんし」



咲「強いといえば、大将の方も凄いですよね」

小蒔「霞ちゃんですか?」


咲「そう、石戸霞さん」


小蒔「はい!霞ちゃんはとっても凄いんです!」


咲「好きですか?」


小蒔「はいっ!大好きです」

咲「私よりも?」


小蒔「えっ……」

咲「私よりも好きですか?」


小蒔「そ、それは……/////その…」

小蒔「さ、咲さん!イジワルな質問禁止です!////」


咲「ぷっ…神代さん、からかいがいがあって可愛いです」クスクス

小蒔「咲さん!/////」プンスカ


咲「あはは、すみませんっ」





咲「……っと、そろそろ時間みたいですね」チラ


小蒔「えっ…?」チラ



霞「やっと見つけたわ、小蒔ちゃん」


小蒔「霞ちゃん……」


初美「探しましたよー!姫様!」


小蒔「初美ちゃんも……」


霞「もう、あまり心配を掛けさせないで欲しいわ?」


初美「控え室で待ってる2人も心配してますよー!」



小蒔「ごめんなさい……」



霞「私たちも、ごめんなさいね」

小蒔「えっ……?」


霞「小蒔ちゃんが、何か悩んでいたのは、何となく感じていたわ」

霞「けれど、小蒔ちゃんはいつでも自分の中に溜め込んでしまうから……」


初美「今回は自分から打ち明けて欲しくて、待ってたんですけどねー」


小蒔「それは……」


霞「小蒔ちゃん。私たちは、チームメイトである前に、昔から一緒の友達よ?」


初美「はい!親友ですよー!」

霞「だから、遠慮なんて要らないの」



初美「でもでも、お胸の成長の悩みは相談しない方がいいですよー!」


初美「霞ちゃんに相談すると、何を言われても嫌味にしか感じませんからねー!」


霞「ちょっと、真面目な話をしているんだから茶化さないの」


初美「私のお胸の話だって大真面目ですよー!!失礼な!」プンスコ


小蒔「ふふっ……」クスクス

小蒔「霞ちゃん、初美ちゃん、有難うございます」ニコッ


初美「あれあれー?この様子だと、悩みが解決している様ですよー?」


霞「ここで一人で考えている内に、解決したのかしら?」


小蒔「そうだ!お2人にも紹介しますね!」




小蒔「咲さ……」



小蒔「あれ……?」



初美「紹介ですかー?誰もいませんけどー」

霞「あらあら…夢でも見ていたのかしら?」クスクス


小蒔「……」

小蒔「はいっ、そうみたいですっ」クス


初美「とりあえず、控え室に戻りますよー!早く2人を安心させてあげなきゃです!」

霞「そうね。行きましょ?小蒔ちゃん」


小蒔「……はいっ、行きましょう!」


小蒔(有難うございます、咲さん)



小蒔(このお礼は、いつかまた…)ニコッ


…………………………………………




咲「……」プルルルル プルルルルル


咲「あ、もしもし健夜さんですか?」


咲「……はぁ?健夜さんが遅いからいけないんで……」


咲「ご、ごめんなさい……私が悪かったです…はい……」




咲「なので迎えに来てください……」グスン



閑話・カン!

同じ魔物だからこそ解決できる悩みもありますよね。
次回より副将開始します。それと、ちょくちょくこの様な閑話を挟もうかなと。



【観戦室】



恒子『さあさあ!昼休憩も終わり、まもなく準決勝副将戦開始です!!』


恒子『現在、トップを走るのは白糸台高校。宮永照擁する絶対王者は未だ健在!!』


恒子『そしてすぐ後を追うのは、大阪の名門千里山女子!!中堅の江口セーラ選手の活躍には目を見張る物がありました!!』


恒子『3位に付けているのは10年振りにインターハイ出場を果たした奈良県、阿知賀女子学院!!一時は先鋒戦で沈みましたが、次鋒、中堅と堅実なうち回しで上との差は僅かです!!』


恒子『そして4位に付けているのが、北九州代表、新道寺女子!!現在大きく凹んではいますが、むしろここからが本番と言って良いチームです!!』



恒子『さてさて小鍛冶プロ。これからの準決勝どうご覧になられますか?』



健夜『そうですね……やはり、副将戦で注目すべきは新道寺の白水哩選手です。』


健夜『北部九州最強の学校と呼ばれる新道寺女子で、3年間エースを務めている実力は、生半可な物ではありません』


健夜『タダでさえ地力の高い白水選手ですが、その和了りは大将戦にも影響を及ぼしますからね』


健夜『他の3校は、どう白水選手を止めるのかが重要になってくるでしょう』



恒子『なるほど!さあさあ、Aブロック準決勝、副将戦!!今、スタートです!!!!』






マホ「白水哩さんって、そんなに手強いんですか?」


咲「うん。あの人は強いよ」



咲「リザベーションを除けば、能力は何も無い。それでも今まで新道寺でエースを張ってこれたって事は、それを成し得る実力がある」


マホ「そのエースを副将に置いている所がまた……なんて言うか、賢いですね」


咲「今年白水哩が副将に置かれてるのは、多分宮永照対策をした結果だね」


咲「先鋒の花田さんは捨て駒。エースが少ない副将にあえて白水哩を置いて、後半一気に畳み掛ける」


マホ「もしも、白水哩さんが稼げなかった場合とかは考えて無いんでしょうか?」


咲「ないね」


マホ「どうしてですか?」





咲「白水哩は、その"もしも"を起こさせない。だから、絶対的エースなんだよ」


――――――――――――――――――――

【対局室】


灼(いよいよ私の出番)


灼(晴ちゃんが超えられなかった壁、私たちが……!)


灼(その為には、白水哩を突破する必要がある)チラ


哩「……」


灼(咲との特訓のおかげで、何となくだけど縛りをかけた局が分かるようになった)


灼(でも……)



…………………………………………………


【阿知賀・ミニ合宿】




灼「今のは……2翻?」


咲「正解です。平均4巡までには分かるようになりましたね」


玄「灼ちゃん凄い!」


憧「私には全ッ前分かんないわ」


灼「毎回、手替わりもせずに宣言した翻数で和了ってる咲のが凄いと思……」


咲「とにかく、これで縛りの察知は問題ないでしょう」


玄「ならこれで!」



咲「ですが、はっきり言ってそんな物が分かった所で大して役には立たないと思います」


玄「えっ……?」


憧「なら何の為にやったのよ?」


咲「そりゃ、分からないよりは分かる方が便利だからですけど……」


憧「それはそうだけど」


咲「話しを続けます。」


咲「これで鷺森さんは、白水哩を絶対に和了らせてはいけない局が分かるようになった」


咲「でも、これはさほど意味のある事ではないと言いました。何故なら、分かった所で白水哩を止められなければ意味が無いからです」


灼「それは確かに……」



咲「少し話しが変わりますが、私の予想では副将戦時点、新道寺は最下位につけているでしょう」


憧「自分で言うのも悲しいけど、私らじゃないんだ?」


咲「まあ阿知賀でも構いませんが、3位か最下位なのは間違いないです」


憧「あ、構わなかったのね」




咲「はい、ここで問題です。副将戦時点で最下位の白水哩は、どんな縛り方をしてくるでしょうか」


咲「1、質より量で細かく刻んでくる。2、量より質で3局ほどに全てをかけてくる」


咲「松実さん、どうでしょう?」


咲「ちなみに、白水哩が縛ってくる翻数は、丁度満貫になる"2翻"、跳満になる"3翻"、倍満になる"4翻"、三倍満になる"6翻"、そして役満になる"7翻"です」


玄「えっ、私!?えっと……2だと和了れなかった時に辛いから、1……かな?」


咲「ぶー。正解は、その両方です」


玄「選択肢に入ってなかったよそんなの!」


咲「そうでしたっけ。すみません」


咲「とにかく、白水哩は大きいのと小さいの、その両方を組み合わせてくるでしょう」


咲「白水哩の傾向として、2翻で縛った局は必ず和了っています」


咲「なので、縛りを察知した後、2翻以下なら切り捨てても構いません」




灼「えっ?」


咲「いや、止められるなら止めてみても良いんですけど、多分厳しいでしょう」


玄「じゃ、じゃあ、もしも質より量作戦で来られたら負けちゃうんじゃ」


咲「ですから、それは無いと言いました。白水哩が縛りをかけるのは最高でも5回ほど、それも大きいのは2回ほど、残りを小さいのにしてくるでしょう」


玄「な、なんでそんな事分かるの?」


咲「大前提として、強力なリザベーションという能力は、乱発出来ないからです」



咲「良いですか?準決勝、新道寺女子は厳しい戦いを強いられる事になると言いました」


玄「うん…」


咲「いくら白水哩でも、和了れる局と和了れない局は存在する」


咲「そして、忘れていませんか?白水哩が縛りをかけて、仮に和了る事が出来なかった場合。大将の選手も和了る事が出来ないんです」



咲「なので、白水哩は頻繁に縛りをかける訳には行かない。しかし、副将戦でも稼がなくてはいけないし、大将にも稼いで貰わなきゃいけない」


憧「な、なんか頭こんがらがってきたわ」


咲「簡単に言いますと、白水哩は縛りをかけた局は死ぬ気で和了りに来る。でも、細かい縛りばかりでは、大将戦ではそこそこの打点を出せるかもしれないけど、副将戦では稼げない」


咲「だから、必ず数回、大きい翻数を縛って和了りにくる」


咲「そして、縛りをかけたという事は、和了りを期待できる配牌だと言うこと」



咲「結論を言います。今から鷺森さんに練習してもらうのは、超早和了り」


咲「簡単に早く出来上がってしまう2翻以下の縛りは、実力差で確実に止める事はできない」


咲「なので、数回あるであろう縛りの内、手作りに時間がかかる6翻以上の縛りを察知した時」


咲「そこが、鷺森さんの勝負所です。これは絶対に和了らせてはいけません。そこに全てを掛けてください」



咲「もう一度確認します。2翻縛りは放って置いて構いません。3翻、4翻は出来れば妨害してください。6.7翻は必ず止めてください」


咲「6.7翻は絶対に、です」



――――――――――――――――――――



灼(そう、白水哩を止めなくちゃいけない)


灼(咲が言ったように、2翻以下の縛りは私では止める事が出来なかった)


灼(……あくまでも、咲が手作りした2翻だけど…)


灼(咲は白水哩を今の打ち方の自分よりは強いだろうと言ってた。という事は、白水哩の2翻以下縛りも止められないという事)


灼(でも、咲の手作りした6翻以上は、何とか止められる様になった)


灼(……けど、咲には悪いけどあの特訓は意味が無くなる)


灼(何故なら)



哩「よろしく」

誠子「宜しくお願いします」

浩子「ほな、よろしくお願いします」

灼「……よろしくお願いします」



灼(全局私が和了るつもりでやるから……!!)


――――――――――――――――――――



【対局室】


~南1局~



咲「……ちょっとヤバイな」

マホ「はい?」


咲「鷺森さん……何か焦ってる感じ」


マホ「そうですか?今は南1局、これまで2回和了れて、いい感じに見えますけど」


咲「でも、白水哩はこれまで一度も縛りをかけていない」


咲「和了る事自体は悪い事じゃないし、むしろ良い事なんだけど…」


咲「けど……それによって心に隙が生まれる」


マホ「あっ……」


咲「来た……マズい、このタイミングは」


――――――――――――――――――――



【観戦室】



~南1局~



咲「……ちょっとヤバイな」

マホ「はい?」


咲「鷺森さん……何か焦ってる感じ」


マホ「そうですか?今は南1局、これまで2回和了れて、いい感じに見えますけど」


咲「でも、白水哩はこれまで一度も縛りをかけていない」


咲「和了る事自体は悪い事じゃないし、むしろ良い事なんだけど…」


咲「けど……それによって心に隙が生まれる」


マホ「あっ……」


咲「来た……マズい、このタイミングは」


――――――――――――――――――――

【対局室】



灼(いい調子。白糸台の人は千里山が潰してくれてるし、私は2回和了れた)


灼(このまま行けば、勝てる……!!そして私が晴ちゃんを決勝へ……)タン


「ロン」


灼「えっ……?」





哩「16000」


――――――――――――――――――――


恒子『ば、倍満です!!新道寺、白水哩選手!!阿知賀女子、鷺森選手に倍満直撃です!!』


健夜『今のは避ける事ができた直撃でした。鷺森選手、これは少し不注意でしたね』




マホ「い、今の」


咲「今のは縛りを掛けてた。南1局、大将戦では役満が来る」


咲「和了る事は良い事。でも、和了ろうとする事と、焦って和了ろうとするのとは全然違う」


マホ「確かに……今の鷺森灼さんは自分の和了りしか見てなかったように見えます」


マホ「白水哩さんの手は、少し考えれば読める手だったのに。鷺森灼さんは全く進んでいない自分の手を優先した……」



咲「そもそも、察知すら忘れてる……。察知をしていた場合、あの手ならもうとっくに和了っていたはず」


マホ「それでも、自分の手を高くしようとしたのは……」


咲「さっきの2回の和了が、まだやれると心に隙を生んだ……」


咲「それも、聴牌気配すら感じられないほどの」


咲「察知すら忘れるほど焦ってる……?何かおかしい、この前はこんなミスはしなかった」



健夜『今の直撃に焦ることなく、ペースを戻せると良いのですが』

健夜(危険牌を切っておいて倍満直撃されて、その事を自分が1番驚いてる……)




咲「私は、白水哩は量より質を優先はしない、両方を組み合わせてくると言った」


咲「だから、満貫以上で縛ってくるのは1、2回で他は細かく刻むだろうと」


咲「けどそれは、一度故意に縛りを止められたら警戒してくると考えたから」


咲「そして、あの時の鷺森さんなら止められると確信していたから」


咲「でも、白水哩に隙を見せれば……」


健夜(これは団体戦。自分一人で戦う競技じゃない。早く、自分の役割を思い出さないと……)



哩『ツモ!3000.6000!!』


――――――――――――――――――――


恒子『ふ、副将戦前半戦終了ぉぉぉおぉ!!!』


恒子『圧倒的!!新道寺、白水哩選手が+36000点と大きく巻き返しました!!!』


健夜『これには流石、と言うしかありません』

恒子『現在1位は変わらず白糸台高校!!しかし、2位千里山女子との差は僅か20000点ほど!!玉座を守り切れるか!?』


恒子『3位は、大きく点を回復させた新道寺女子!!最下位から一気に浮上し、2位千里山女子との差も僅かです!!』


恒子『そして、最下位に転落してしまったのは阿知賀女子!!ここから巻き返せるか!?』


健夜『始めの倍満直撃後、集中力が切れてしまいましたね。この出費は痛手となりました。後半戦で取り戻せると良いのですが』



恒子『後半戦はどんな戦いが見られるのか!!注目の試合は、15分後です!!!』



――――――――――――――――――――


【観戦室】



咲「白水哩が前半戦で縛って成功した回数は3回…つまり、全部……」



マホ「高いのは南一局の倍満と南二局の跳満ですかね?」


咲「うん。それぞれ、7翻、6翻、だったから、決勝では役満、三倍満を覚悟しなくちゃいけない」



マホ「それは中々……」


咲「仮に、役満か三倍満が来る時に鶴田姫子が親だった場合……目も当てられないね」


咲「少なくとも、最初の倍満は防げたはずなのにどうして」


咲(何か精神的な変化があったとしか思えない……)


プルルルルルル プルルルルルル



咲「電話…?」




マホ「健夜さんでしょうか?」


咲「何の用だろ?」スッ


咲「……これ」


マホ「えっ?」


マホ「松実玄さん……」


プルルルルルル プルルルル


咲「……」



マホ「出ないんですか?」


咲「いや……出る」ピッ




咲「……もしもし」


玄『もしもし、咲ちゃん?』


咲「はい」


玄『……』

咲「はぁ……なんですか、玄さん」


玄『ごめんね、いきなり』


咲「そう思うならかけてこないで貰えると嬉しいですね」


玄『……ごめん』


咲「もう……調子狂います…」


咲「それで、どんな用事ですか?」



玄『灼ちゃんの事なんだけど……』


咲「悪いですが、私から助言出来る事は何もありません」


玄『えっ……』


咲「玄さんが分からないのなら、私にも分かりませんよ……」


玄『な、何でもいいの!何か気付いた事とか……』


咲「……」


玄『咲ちゃん……?』




咲「……仮に、私が何かに気づいていたとしても、教える義理はありません」


玄『えっ……?』



咲「チームメイトの問題すら、他人の私に頼る事しか出来ないんですか?」


玄『他人……』


咲「私は、あなた達阿知賀女子の仲間じゃない」


玄『咲ちゃん……』


咲「今晩の約束は無しになりそうですね。じゃあ切ります」




玄『待って!!』


咲「……」


玄『ごめん……私、焦ってた』



玄『灼ちゃんは、何も答えてくれないの……対局室に行って話しかけても、謝るばかりで……』


咲「……」


玄『控え室を出る前だって、普通の、いつもの灼ちゃんだった……』


咲「……」


玄『少し様子が変わったのは副将戦の卓に着いてからで……』


咲「…………」



玄『ぁ……』


玄『……ごめんね、急に掛けて……やっぱり切るね』





咲「……ちがは…」


玄『え?』


咲「……阿知賀は、10年前のインターハイ、準決勝で敗れたんですよね」

咲「赤土さんが……そう、確か赤土さんが失点して……」


玄『う、うん……私たちがインターハイを目指したのは和ちゃんに会いたかったのと、赤土さんが超えられなかった』


玄『準決勝の先へ、赤土さんを連れていくため……』


咲「……」


玄『それがどうかしたの……?』


咲「……ひょっとして、鷺森さんは人一倍その気持ちが大きかったんじゃないですか」


玄『!!』


咲「じゃあ、さよなら」


玄『待っ』


ピッ
ツー ツー ツー





咲「……」



マホ「先輩……」


咲「私の考えが、足りてなかった」


マホ「えっ……?」

咲「鷺森さんは、誰よりも準決勝にかける想いが強かったんだ」


咲「自分が何とかしよう、自分が赤土さんを導こう。そんな気持ちを起こすのが当たり前だった」


咲「そんな鷺森さんなら、2翻以下とか関係ない、全ての局自分が和了る、なんて気持ちになってもおかしくなかった」


咲「……そんな想い、私は知らなかった……それを知ってれば、もっと何かしらの方法があったはずなのに」


咲「私は……」



マホ「……」






マホ「……宮永先輩は、言ってることが滅茶苦茶です」



咲「え……?」


マホ「協力を終えた時、宮永先輩はこんなのは付け焼刃程度だから、通用するとは限らないと言っていました」


マホ「それはつまり、自分の協力は試合に必ずしも関与しないだろう、という事です」


マホ「でも、今の先輩は自分があの時何かをしていれば、知っていれば、事態を変えられたのに、そういう事を言っています」





マホ「ほら、滅茶苦茶ですね」 ニコ


咲「それは……」


マホ「宮永先輩は少し変わりました。阿知賀に関わる前までは、こんな先輩じゃなかった」



マホ「阿知賀に情を抱いてしまっているんでしょう?だから、自分の協力がダメだったのでは、そんな事考えちゃうんです」


マホ「宮永先輩は神様ですか?宮永先輩が起こしたアクションが、阿知賀の運命全てを左右でもしているんですか?」


咲「……」


マホ「……マホにとっての宮永先輩は、神様みたいな物です」


マホ「宮永先輩の言う事は全部正しいと思いますし、宮永先輩の行動には全て意味があると思っています」


マホ「大好きな、大好きな先輩です」


マホ「……でも、今の先輩の行動は正しいと思いませんし、意味もないと思います」


マホ「今の宮永先輩は……」





マホ「大嫌いです」



咲「マホちゃん……」


マホ「……」


咲「……ごめん。そうだよね」


咲「私、知らない内に自惚れてたのかもしれない」


咲「阿知賀の人達に頼られてる内に、上手くいってる試合を見てる内に……いつの間にか」


マホ「……」


マホ「宮永先輩が……宮永先輩が、あの時に何を言ったところで、鷺森灼さんの今の状況は変えられませんでした」


咲「……うん」


マホ「だから、宮永先輩はしっかりと自分にできる正しい選択を、正しい助言をしたんです……」



咲「……うん、ありがとうマホちゃん」ニコッ


マホ「もう……大嫌いなんて、言わせないでください……」グスッ


咲「うん……ごめんね、マホちゃん」


マホ「許しません……膝枕してくれないと……許しません……」


咲「そんな事で許してくれるなら、こちらこそだよ」スッ


マホ「先輩は大バカです……」スッ


咲「うん……」


マホ「でも……大好きです」ポフッ


咲「……うん、ありがとうマホちゃん」ナデナデ


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【とある廊下】


ツー ツー ツー

玄「……」



玄「行かなきゃ」


――――――――――――――――――――


【対局室】


灼「……」


灼(私、バカだ……)


灼(自分一人でやってる試合じゃないのに……なんであんな事……)


灼(今、何を何回和了られた……?倍満、跳満……)


灼(私……)


「灼ちゃん!!!」

灼「っっっ!!」


灼「玄……」


玄「灼ちゃん」


灼「ごめ」


玄「ごめん、はもう良いよ灼ちゃん」


灼「……っっ」



玄「……少し、我慢してね」

灼「えっ」



バチンっ!!




灼「っっ!!」ヒリヒリ


玄「……」


灼「く、玄……?」


玄「灼ちゃん、赤土さんを決勝に連れていくんだよね」


玄「なら、どうしてごめん、なんて言うの?」


灼「それは……失点しちゃったし……」


玄「まだ、試合は終わってないのに?」


灼「っっ」

玄「もう一度聞くよ?」




玄「灼ちゃん、赤土さんを決勝に連れていくんだよね」


灼「うん……」


玄「誰よりも、その気持ちは強いんだよね」


灼「うんっ……!」


玄「もう、諦めちゃったの?」


灼「諦めてない……諦めてないけど……!!」


灼「前半戦……察知は出来なかったけど、多分何回も縛りで和了られた……」


灼「これは自分だけの失点じゃない、穏乃への負担にも……」


玄「何で自分の試合も終わってないのに大将の事を心配してるの!!!」


玄「私は、私達は灼ちゃんを信じてる」


玄「赤土さんを想う灼ちゃんの気持ちを知ってる!!」



玄「だから、灼ちゃんも私達を信じて?灼ちゃんの気持ちを、私達にも手助けさせて?」


玄「灼ちゃんの想いを信じる、私たちを信じて!!」


灼「玄……」


玄「灼ちゃん……」


灼「それ、普通は大将の穏乃が言うセリフだと思……」


玄「なーっ!?」


灼「ふふっ」



灼「……でも、ありがとう」



灼「私、自分がやらなくちゃ、自分がハルちゃんを導くんだって、思っちゃってた」


灼「私の想い……皆に預けても良いんだよね……」


灼「皆と一緒に叶えれば……良いんだよね」


玄「……うんっ!」


灼「ありがとう、玄」ニコッ


玄「ううん、灼ちゃんの元に連れてきてくれたのは……咲ちゃんだから」


灼「うへ……こんな体たらく咲に見られてたら、今夜何言われるか……」


玄「今夜……」


灼「玄?」


玄「あ、なんでもっ!」


玄「それじゃあ、信じるよ灼ちゃん」


灼「うん、大丈夫」グッ


灼(私の気持ちを信じる、みんなを信じる)


灼(私一人で戦うんじゃない、皆でハルちゃんを……)



灼(だから私は、私に出来ることをやる)ゴッッッ


――――――――――――――――――――

【観戦室】


玄『~~~!』

灼「!!」



咲「玄さん……」


咲「!!」チラ


マホ「んぅ…」スースー


咲「……ふふっ、ありがとうマホちゃん」ナデナデ


マホ「んっ… えへへ……」ムニャムニャ


――――――――――――――――――――



恒子『副将戦終了ーーーーーッッッ!!』


恒子『オーラス、白水哩選手が倍満を和了るかと思いきや、阿知賀の鷺森灼選手が跳満直撃で止めてみせました!!』


健夜『前半戦とは明らかに違いました。休憩中にチームメイトと何やら話していましたが……それがいい影響を与えたのかもしれませんね』


恒子『副将戦も終わり、已然としてトップは白糸台高校!!なんとか玉座を守りきりました!!』


恒子『そして2位に千里山女子!!白糸台高校との差は約10000点です!!』


恒子『大きく点を回復させたのは新道寺女子!!あの大きな凹みを、巻き返し2位との差も僅かです!!』


恒子『4位に転落したのは阿知賀女子学院ですが、それでも後半戦の怒涛の巻き返しにより、充分巻き返せる位置に付いています!!』


健夜『とても接戦のいい勝負ですね。大将戦が楽しみです』



恒子『小鍛冶プロも注目の大将戦は、20分後開始ですッッッッ!!!』


「お疲れ様でしたー」


恒子「ふぃーつかれたぁ」


健夜「お疲れ様。大将戦もよろしくね」


恒子「どったのすこやん、労いの言葉なんて」



健夜「私だって労いの言葉くらい使うよ!」


――――――――――――――――――――


【観戦室】



咲「鷺森さん……良かった」

マホ「んっ……」ムク


咲「あ、ごめんねマホちゃん。起こしちゃった?」


マホ「マホいつの間に寝て……」アクビ

咲「結構すぐに寝てたよ」クスクス


マホ「……ん?…あぁっ!!」バッ



咲「うわわっ!」

マホ「ふ、副将戦終わってます!!!」



咲「う、うん。今さっき終わったばかりだよ」

マホ「なんで起こしてくれなかったんですかぁ!?」


咲「だ、だって気持ちよさそうに寝てたし……」タジッ


マホ「マホの寝顔はホテルで好きなだけ見られますよ!でも、副将戦は1度しか見られないんですー!!」ブーブー


咲「そんな事言われても……寝顔、可愛かったよ?」


マホ「えっ?」


咲「??」ニコッ


マホ「み、宮永先輩……狙ってるんですか?///」


咲「狙ってるって……何を?」


マホ「な、何でもないですっ」

マホ「うぅ…/////」



マホ「そ、それより!結果だけ見たら鷺森さんは巻き返したみたいですねっ!」


咲「あぁ……うん。休憩中に、玄さんが何か言いに行って、後半戦は吹っ切れたみたいだった」


マホ「へー」


咲「な、なんかあんまり興味なさそうだね…?」


マホ「うーん、まあ宮永先輩が松実玄さんと電話した辺りで、大丈夫だろうなとは思ってましたから」


咲「へっ?」


マホ「言ったじゃないですかー。マホの宮永先輩のする事には、全て意味があるんです!」


マホ「結果は、出たみたいですね」ニコッ

咲「!!」



咲「マホちゃんは全く……」ハァ


マホ「先輩?」


咲「いつからそんなに生意気になったのかなー?」コチョコチョ


マホ「きゃっ!!ふふっ、ちょっと宮永先輩っ!あはははっ!」


マホ「くすぐったいですー!あははっ!ふふふっ、やめて下さいー!」ジタバタ



咲「あははははっ!」


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シリアス(?)入れて、副将の描写を誤魔化す。
福岡弁とか考慮してませんよ……



【阿知賀・控え室】



灼「皆、迷惑かけてごめん……それと、ありがとう」ペコ


穏乃「だ、だだだだだ大丈夫ですよ灼さん!おおお、お疲れ様でした!」


憧「ちょっ、シズ緊張しすぎ!」


穏乃「だってさぁ!」


晴絵「灼、お疲れさん。良くやったな」


灼「……うんっ!」




玄「……」


宥「玄ちゃん…何かあったの?」




玄「へっ!?あ、何でもないよお姉ちゃん」


宥「嘘……玄ちゃん、嘘つく時すぐ分かるよ」


玄「お姉ちゃん……」


宥「話したく無かったら、無理しなくて良いから」


宥「一人で考えて、考えてもダメだったらお姉ちゃんや皆を頼ってね?」


玄「ありがとう、お姉ちゃん」ニコッ


宥「ふふっ、良いの良いの」


ピロリーン ピロリーン



玄「あっ、メール……」カチカチ


玄「……」ポチ




玄「……えっ…?」

――――――――――――――――――――


【観戦室】



マホ「はぁ…はぁ……み、宮永先輩やりすぎですよぉ……」ビクビク


咲「ふふっ、ごめんごめんっ」


マホ「ふぅ……。それにしても、鷺森灼さんが本気で止めにいっても縛りを成功されるんですから、白水哩さん相当ですね」


咲「うん…。試合を見てた限りでは、4人の中で頭一つ…いや、三つ分くらい抜けてた」


マホ「でもでも、宮永先輩の予想では止めれる可能性の方が高かったんですよね?」


咲「そのはずだったんだけど……」



咲「やっぱり、インターハイに出場する3年生は成績が良くなる……みたいなオカルトがあるのかも」




マホ「にわかには信じられませんねー」


咲「……ねえ、マホちゃん」


マホ「はい?」


咲「私、阿知賀には勝って欲しいなって……ほんの少しだけ思ってるの」


マホ「まあ……関わりを持った訳ですからね。マホはなんとも思いませんけど」


咲「あはは、相変わらずだね……」


咲「だから、さ」

マホ「良いと思いますよ?仮に、今からやる事で誰かに何かを言われたとしたら、マホが先輩を守ってあげるです」



咲「……そっか、ありがとう」つケータイ


――――――――――――――――――――


【阿知賀・控え室】




From 咲ちゃん
To 玄

……………………………………


高鴨さんへ


確信が持てなかったので、伝えようかは迷っていましたが、念の為伝えておきます。

大将戦、大星淡はダブリー、カンからのドラ4の他に、配牌を悪くする類の物かツモを悪くする類の物を併用してくると思われます。

大星淡に連荘させてはいけません。そのため、大星淡が親の局がリザベーションの局と被っていなかった場合、鳴きを使って即流ししてください。
前半戦だけで結構です。
大丈夫。大星淡は油断しているはずです。数回鳴いても警戒は薄いでしょう。


それと、確信は持てませんが、画面越しに見る清水谷竜華から妙な雰囲気を感じます。
ゾーン以外に、何かがあるかもしれませんので充分に注意してください。

………………………………………………




穏乃「だ、ダブリー以外にそんなのまであるの!?」


晴絵「言われてみれば、そうだ。ダブリーしてからカンするまで和了らないんじゃ、リスキーすぎる」


憧「だから、角に行くまで誰にも和了らせない手段も一緒に使ってくるってこと?」


灼「チート……」



宥「鳴けっていう事は、鳴けば和了れる位の支配っていう事かな……?」


晴絵「大星淡は1度しか公式戦で能力を見せていないからな……さすがに、それだけで全ては分からないが……」


穏乃「でも、やってみて損はない……ですよね?」


晴絵「あぁ。元々、全員が格上なんだ。やれる事はやった方が良い」


玄(咲ちゃん……)


宥「玄ちゃん?」




玄「お姉ちゃん……私、副将戦の休憩中灼ちゃんの所に行く前に咲ちゃんに電話したんだ」


宥「……うん」


玄「咲ちゃんなら、何か気付いたんじゃないかって…期待して」



宥「……」


玄「それで、咲ちゃんに言われた」


『チームメイトの問題すら、他人の私に頼る事しか出来ないんですか?』


玄「って。それで、ハッとしたんだ。私、咲ちゃんに頼りすぎてたんだって」

玄「最終的には、ヒントを貰った形になったんだけど……」



玄「もう、絶対に嫌われたと思ってた……メールなんてもう来ないし、電話だって出来ないんじゃないかなって」


宥「でも、さっきあのメールが来たんだね」


玄「うん……。メールをしてくれた事は嬉しい、嬉しいよ?だけど、本当にこれでいいのかなって……」


玄「だってこれじゃあ、私たち、咲ちゃんを利用してるみたいで……」



宥「……咲ちゃんは、そんな事を思われる方が嫌なんじゃないかな」


玄「えっ……?」


宥「だって、今のメールは咲ちゃんが私たちの為に、自分の意思で送って来てくれたんだよね」


玄「うん……」


宥「それを受け取った私たちが、咲ちゃんを利用してるみたい、なんて思ったら」

宥「私は、いけないと思う」


玄「でも……私は咲ちゃんに頼りすぎで……」


宥「咲ちゃんは、それを嫌だと言った?」


玄「チームメイトの問題すら、他人の私に頼る事しか出来ないのかって……」


宥「違うよね、玄ちゃん」



宥「それは、頼るべき問題じゃない所を咲ちゃんへ頼った、玄ちゃんへの怒り」


宥「さすがに、私だって怒るよ……?」


宥「対局相手への対策とかじゃない、私たちの仲間の問題まで咲ちゃんに頼るなんて、それはおかしいよ」


宥「でも、対局相手への対策や、打ち筋へのアドバイスとかは……何だかんだ言いつつも、丁寧にしてくれたんじゃないかな」


宥「……今、あのメールが来たことが何よりの証拠だよね」


玄「確かに……」



宥「頼る事が間違いなんじゃない、頼るべき所と頼ってはいけない所があるんだよ」



宥「玄ちゃんは、そこを少し間違えて咲ちゃんに怒られちゃっただけ」


玄「怒られちゃっただけって……咲ちゃん、凄い怖かったんだよ……?」


宥「お姉ちゃんは怒られるような真似しないから、知らないよぉ」


宥「咲ちゃんは、少しだけ素直になれないだけでとっても暖かい子だと私は思うなぁ」


玄「私も……このメールで、そう確信したのです」フフッ


玄「ありがとう、お姉ちゃん!やっぱりお姉ちゃんは最高のお姉ちゃんなのです!」ギュー



宥「ふふっ、暖かいね~」ポカポカ



――――――――――――――――――――



【インハイ会場・観客対局室】



咲「……どう?マホちゃん、できそう?」


マホ「うーん……天江衣さんの一向聴地獄をベースに色々試したですけど……」


マホ「ダブリーと、カンと槓裏に加えてとなると……多分、悪ツモ系では無いですね」


咲「ってことは、ほぼ確実に配牌操作系……」


マホ「うーん…厄介ですね」


咲「そうだね……ツモが悪くなるだけなら配牌が良ければ充分に和了りを狙える…」


咲「けど、配牌が悪い場合はいらない牌を何度も捨てて、手を作っていく必要がある」


マホ「ダブリーって所がまた性悪ですねー……振り込んでもダブリーのみって分かってはいても、振込みは避けたい」


マホ「人は必ずそう思う生き物ですし……それに、乗るのが必ずしも槓ウラだけとは限らない」


咲「その思考が大星淡にとって格好の餌食になる……振込みを恐れて、タダでさえ悪い配牌からオリを選び続けると、すぐに山の角」


マホ「その点、新道寺は相性が良いですね」


咲「うん。リザベーションさえ発動すれば、悪配牌も悪ツモも全て関係ないからね」




マホ「そういえば、私と先輩なら似たようなの出来るって言ってましたよねー?」


咲(げっ、覚えてた!)


マホ「丁度良い機会ですし、リザベーションの対策が思いつくかもです!」


マホ「やってみましょう!」



咲「えぇ……そ、そろそろ大将戦始まっちゃうよ?観客席に戻らないと……」


マホ「大将戦はそこのテレビで見るって先輩が言ったんじゃないですか!」


咲(そうだったー!)


咲「あー、もう、分かったよ!やるよ、やるけど……本当に良いんだよね?」


マホ「はいっ!」


咲「じゃあ、卓について?」


マホ「了解しましたぁー!」


咲「よし……じゃあ、いくよ?」

マホ「わくわくっ」


咲「……」カチャ

咲(リザベーション、7)ゴッッッ



マホ「……?」


マホ「宮永先輩?何も起きまs」








マホ「んぅっっっ!!!!!???/////」ビビクン



咲「ツモ、3000.6000」


咲(リザベーション、クリア)


マホ「あっ……んっ……/////」ピクピク


咲(だから止めておきたかったんだけどなー……)

マホ「あっ…あぅ……っ/////」ピクピク



マホ「な、何ですか……今の……/////」ガクガク

咲「リザベーションだよ?」



マホ「な、なんか……急に体がふわってなって……変な感じで……頭真っ白になっちゃいました……/////」ハァハァ


咲「今は最大の7翻で縛ったけど、それより下に行くにつれて刺激も弱くなるみたいだね」



マホ「し、新道寺の2人は試合中にこんな事をしてたんですか……/////」


咲「こんな事っていう言い方は止めようね……イケナイ事してるみたいだからね」


咲「ちなみに……局をリセットして、マホちゃん配牌してみて?」


マホ「ちょ、ちょっと待ってください……腰に力入らなくて……/////」


咲(ど、どれだけハードだったの!?)


マホ「は、はい……配牌できました……って、これは凄いですね!!」


咲(あ、元気になった)


マホ「配牌的に、これは緑一色でしょうか?」


咲「どれどれ……うわっ、本当にできてる……」


咲「まあ、リザベーションをするとこんな感じになるって事だね」


マホ「随分、ハイリスクハイリターンな事をしてたんですね……」


咲「そ、そうだね」アハハ


咲「あ、始まる」チラ


恒子『準決勝もいよいよ大詰め、大将戦です!!』


恒子『各校の選手達が続々と対局室へと集まってきていますね!』




咲「……やっぱり、清水谷竜華…何かおかしい…」


マホ「うーん、マホにはよく分かりませんね」


咲「なんて言うのかな……永水の神代小蒔みたいに、何かが憑依してるような…」



恒子『選手の紹介です!!まずは、奈良県代表阿知賀女子学院!!2回戦では勝ちを諦めない姿勢で見事勝利を掴んで見せました』


恒子『勝利の女神は大将戦でも微笑むのか!!高鴨穏乃選手です!』


健夜『言っては何ですが、格上の選手ばかりのこの大将戦でどの様な戦いを見せるのか、ある意味では1番期待しています』


恒子『そしてそして、福岡県代表新道寺女子からは、鶴田姫子選手です!』

健夜『副将の白水選手に続いて、こちらも新道寺のエースと言って良い選手です。特に今回は、爆発的な一撃を何度も秘めているので、そこに注目したいですね』


恒子『続いて!!準決勝には最早常連、北大阪代表、千里山女子からは、清水谷竜華選手!』


健夜『先鋒の園城寺選手、中堅の江口選手に続いて、3年トリオの最後の選手ですね。非常にバランスの良い、センスのある選手です』

健夜(……2回戦の時と何か違う…)


恒子『そして、最後!!先鋒戦から一度もトップから落ちることなく大将戦まで来ました!!』

恒子『その力はまさしく絶対王者、西東京代表白糸台高校から、天照大神の一人、大星淡選手!!』



健夜『この選手は、予選から今まで一度も本気を出していない様に感じました。この大将戦で、本気の大星選手を見られるのか、注目したいです』




マホ「本気を見られるのかって、あの大星淡さんを見れば一目瞭然ですよねー」


咲「だね。清々しいほどに殺気ばら蒔いてる」


マホ「喫茶店の前で会ったときは、弱い犬ほどなんとやらって思ってましたけど、これで実力があるのがムカつきますー」


咲「ま、マホちゃん、ひょっとして大星淡嫌い?」


マホ「嫌いです。意味が分かりません。先輩にケンカ吹っ掛けた罪は重いですよ」


咲「そ、そっか…(喫茶店ではそんなに気にしてなかった風だったのになぁ)」


マホ「大体、試合前からあんなみっともなく殺気垂れ流しておいて、負けた時とか考えてないんでしょうか?」



咲「……考えてないんだろうね。いや、それも当然かも」



咲「今年入った一年が、他の牌に愛された子達と同格に扱われて、しかもチームメイトに宮永照」


咲「個人の実力だって、その辺の人に負ける事はない位は、兼ね備えてる」


咲「それこそ、負けなんて知らないんだよ」


マホ「お姉さんは注意をしないんでしょうか?」


咲「最低限はしてるだろうけど……。ああいう負けず嫌いなタイプは、一度負けないと改心しないんじゃないかな」


咲「加えて、部内で大星淡に勝てるのは宮永照だけだから、それを負けとは思わない。仕方の無いことだと割り切っちゃう」


マホ「うわぁ……理論破綻してますね。負けず嫌いなのに、お姉さんになら負けても仕方無いなんて。負けは負けなのに」


咲「まあ、ここで陰口みたいな事言うのも良くないよ。この辺にしておこう」


マホ「……ですね。ちょっと反省です」


咲「あ、始まるよ」


マホ「高鴨穏乃さんは大丈夫でしょうか?」


咲「そればっかりは本当に分からない……一度会って、マホちゃんに照魔鏡で見てもらえば良かったかも」


マホ「会得するのに時間掛かっちゃいましたからね……すみません」


咲「あっ、別にマホちゃんを責めてる訳じゃっ」オロオロ


マホ「ふふっ、分かってますよっ」


マホ「高鴨穏乃さんについては、お楽しみにしましょう!」


咲「そうだね。何でもかんでも事前に分かってちゃつまんないか」フフッ


恒子『Aブロック、準決勝大将戦……』


恒子『スタートですっっっ!!!!』




~大将戦、開戦~


次回、咲さんとすこやんの昔話の閑話を挟みます。
2人の背景上、少し暗い?話になってしまいますっ


――――――――――――――――――――

【閑話・宮永咲と……】



〈咲、中学1年・6月〉





咲「……」ペラ

「ねー、咲ー?」


咲「……」ペラペラ


「ねえ、咲ってばー」

咲「……」ペラ


「さぁきぃー」



咲「……何ですかもう、うるさいですね」ジロッ



先輩「うわぁ…先輩に向かって何ていう言い草なのこの子は……」


先輩「しかも、私は生徒会長なのよ?」


咲「生徒議会長ですけどね、正式名称は」


先輩「細かいわねぇ……それよりさ、咲」




咲「何ですか……私、本を読んでるの見えませんか?あ、見えませんかすみません」


先輩「私の目だってまだ機能してるわよ!?」


先輩「それで……」




咲「……友達ならできていませんよ。もう、8割方諦めてますし」



先輩「…ダメよ、そんなの。つまらない中学生活になっちゃうわよ?」


咲「3年間、一人で部員ゼロの麻雀部に通い続けて、4月から毎日の様に放課後、私の所に来ている友達のいない人には言われたくないです」



先輩「ぐっ……言うようになったわね……てか、私は友達いるし」


咲「聞いてませんよ」


咲「……大体、暇つぶしなら先輩が居ますので」





先輩「私、来週には引っ越すわよ?」




咲「……」


咲「は?」


先輩「私、来週には引っ越すわよ?」


咲「……意味が分かりません」


先輩「だから、私来週には」


咲「その意味が分かりませんって事じゃありません」

咲「……どうして急に」


先輩「いやぁ、両親が離婚しちゃってさ」アハハ


咲「……はぁ!?」



先輩「それで、母さんの実家に行くって訳」


先輩「おかしいでしょ?」



咲「いや……クスリとも笑えませんよそれ……」


先輩「まあ、そんな訳だからさ。私以外に、話せる人を見つけなさいよ」




咲「だから、そんなの無理ですって……私の性格知ってますよね」


先輩「ふふっ、それはまあね……入学式に咲を見かけて以来、咲が笑った所って見たことないし」クスクス


咲「あなたは毎日、飽きもせず笑ってますよね」




先輩「はいはい、今はツンデレ咲ちゃんのツンツンを受けてる暇は無いのよ」スッ


咲「ちょっ、何ですかっ…離してください」


先輩「咲、あなた細過ぎるわよ?誘拐とかされそうになったら、抵抗できないんじゃ……」グイグイ


咲「先輩にすら抵抗出来ないんですからまあ無理かも……って、だから離してくださいって!」


先輩「あーあー、目じゃなくて耳が機能しなくなっちゃったー、聞こえないわー(棒)」


咲「離・し・て」ゴッッッッッ

先輩「わー、怖いっ!それじゃ、行くわよー」ズルズル



咲「なっ……!?」



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_____________________________________________


……………………………………………………

【つくば中学・旧校舎】




咲「ここって……」

ガタガタっ!!


咲「ひゃあっ!?」ビクッ


先輩「あははっ、何ビビってんのよ!窓が揺れただけじゃない」

咲「び、ビビってませんし」


先輩「……」ニヤリ

咲「うぅ…なんでこんな所に……」ピクピク




先輩「……わっ!!!」


咲「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ダキッ


先輩「ぷっ、やっぱり怖いんでしょ」




咲「せ、せせせ先輩、何のつもりですか……」


先輩「別にー♪いやぁ、役得役得」テクテク


咲「……?」←抱きついてる


咲「ばっ!?!?な、何してるんですか!!/////」

先輩「してたのは咲の方なんだけどー?」クスクス



咲「~~~~~っっっ/////」


………………………………………………


先輩「さてと、着いたわね」


咲「……ここって、麻雀部の部室ですよね」


先輩「ええ、そうよ?そして、今日から咲の部室でもあるわ」


咲「言ってる意味が分かりません」


先輩「咲、あなたは麻雀部に入るべきよ」




咲「言ってる意味が」


先輩「咲、大切な話よ」


咲「っっ……」




先輩「私には、分かるわ。咲、あなたは麻雀を止めるべきじゃない」


先輩「部として機能はしていないけど、麻雀には触れているべきよ」


咲「……なんで今更…」


咲「だってこれまで、一度も私を麻雀部に誘ったことなんて無かったじゃないですか……っ」


先輩「それは、咲が麻雀を嫌ってると思っていたから」

咲「……はぁ?今だって」


先輩「いいえ、違うわね。咲、あなたはこの間私に話したわよね」



先輩「1度だけ、知らない人と麻雀を打ったって」



咲「あれは……別に、麻雀を打ちに行った訳じゃ」


先輩「そんなのはどうでもいいのよ」


先輩「咲、あなたはあの時から、私が麻雀の話をする度に表情を変えた」


先輩「あなた、麻雀が好きなんでしょう?」


咲「好きではありません」


先輩「咲、自分に嘘を吐くのは止めなさい」



咲「……話になりませんね、帰ります」スッ


先輩「明日、この時間にもう1度ここに来なさい」


咲「……さようなら、先輩」





先輩「……」


――――――――――――――――――――


【次の日・放課後】





咲「……」ペラ


先生「宮永ー、本なら家に帰ってから読めー」


咲「……はい」パタン


咲「……」キョロキョロ


咲「……馬鹿馬鹿しい、帰ろ」スッ


咲「……」テクテク


生徒「ねえ、聞いた!?」

生徒B「何を何を?」


咲(……)テクテク


生徒「生徒会長の話!」


咲「……」ピタッ





生徒B「あー!知ってる知ってる、引っ越しちゃったんでしょ?」


生徒「なんだ、知ってたかー」


生徒B「良い会長だったのに、残念だよねー」テクテク




咲「ちょ、ちょっと待ってください!!」



生徒「え?」


選手B「えっと、何かな?」



咲「今、話してたのって……」


咲「先輩が、もう引っ越したって、本当ですか……」


先輩B「生徒会長の事?うん、本当らしいよ?」


生徒「引継ぎも、もうとっくに終わったんだって」


咲「っっっ!!」ダッ


生徒「あ、ちょっと!」


生徒B「……何だったんだろ?」


―――――――――――――――――――

【旧校舎・麻雀部部室前】



咲「……はぁ…はぁ…」


咲「……」グッ


ガチャ



咲「……」テクテク


咲「誰も……いない…」キョロ



咲「せ、先輩……?居るんですよね?」


咲「め、面倒くさいですから、早く出てきてください」



咲「……」


咲「……なんで」

咲「どうして……引っ越しは来週って…そう言ったじゃないですか…」


咲「……」

咲「雀卓……」スッ


咲「!!これ……手紙…?」

咲「……」ペラ



咲「っっ……」


…………………………………………

私の大好きな後輩へ



この手紙読んでるって事は、一先ず賭けには勝ったみたいね。……良かったわ。



初めに、私の大好きな後輩ちゃんへ謝らないといけない事があります!
私の引っ越し、来週じゃなくて明日。つまり、今日でしたー!

ふふっ、驚いたかしら?

何でそんな嘘をって?

そうねぇ……色々理由はあるけど、強いて言うなら最後まで強いアナタを見ていたかったからかしら?

アナタは、優しい子だから、明日私が引っ越すなんて言われたら、気を使うでしょう?

私は、先輩の私にも強気で当たってくるアナタを、最後まで見ていたかった。
理由はそれだけかしらね。


さて、読書が好きなアナタに自分の書いた文を読まれるのは小っ恥ずかしいんだけど、まあ手紙なんだし、おかしな所があっても許してね。

私は、本当に伝えたい事は昨日伝えたつもりよ。アナタは麻雀を続けるべきだわ。

でも、そうねぇ……今の状態の麻雀部に可愛い後輩を連行して、私みたいな末路を辿らせるのはアレだし、お土産を用意したわ。

うん、もう私にしてあげられる事は無い。


次に会う時には、笑い合いながら麻雀が打てると良いわね。
……私の、密かな夢。



名前を書かずアナタって書いてるのは、もしもこの手紙を他の人が見てしまった時に、アナタが嫌な思いをしないためよ?
ふふっ、夫婦っぽいとか思っちゃったかしら?



それじゃあね、私の始めての後輩。
一つ、忘れないで。アナタは優しい子よ。きっといつか、アナタを受け入れてくれる人が現れる。




可愛い後輩が愛した先輩より


……………………………………………………



咲「……馬鹿馬鹿しい…」グッ


咲「意味わかんない……有り得ない…信じらんない……」



咲「……信じたくない…」


咲「…ぅっ……うぅ…」グスッ


咲「意味わかんない……意味わかんないですよ……ッッ!!」

咲「どうして……っっ……うぅ…」グスッ


『ひゃあっ!?』

咲「!!」ピクッ


『な、なんだ……窓が揺れただけか…』




咲「せ、せんぱい……?」スッ



『ていうか、こんな所に麻雀部なんてあるの……?』


咲「先輩!!」ダッ


ガチャ

咲「やっぱり悪ふざけなんですよね!?せんぱ……」


「……えっ?」


咲「……あな、た…」







健夜「咲ちゃん……?」





咲「…小鍛冶……健夜……」



――――――――――――――――――――


咲「……」


健夜「えっと……」


健夜「な、泣いてた……?」


咲「っっっ……」


健夜「あ、えっと……その…」オロオロ


咲「……何しに来たんです、こんな所に…」


健夜「えっ?」


咲「…何をしに、来たんですか……」


健夜「えっと……」



健夜「昨日、私がお世話になってた人の娘さんからいきなり電話があってね?」


咲「!!そ、その人の苗字は!?」


健夜「えっ?」


咲「あ……いえ……」


咲「何でも……ありません。続けてください……」


健夜「う、うん……。それで、この中学の旧校舎にある麻雀部に、一人だけ部員がいるから、その子に麻雀を教えてあげてってお願いされたんだ」


咲「っっっ……」


健夜「勿論、急だったし断わろうと思ったんだけど……」


健夜「その……」


健夜「宮永咲ちゃんって名前を出されてね……。とってもお世話になった人の娘さんだったし、咲ちゃんの名前も出されたから」



健夜「来るだけ来てみようって……咲ちゃん!?」


咲「……っっ…ううっ…」グスッ


健夜「わ、私何か嫌なこと言ったかな!?ご、ごめんね……?」


咲「馬鹿馬鹿しいです……っ…始めから……このつもりで……っっ」ボロボロ

咲「…うぁぁぁぁ……!!」グスッ


健夜「……」



咲「もう……何も…分かんない……っ」


健夜「……咲ちゃん…」ギュッ


咲「!!な、何ですか……っっ…離してっ……」グイッ



健夜「ごめんね……私、今は何がなんだか分からないから……」ギューッ


健夜「今の咲ちゃん、とっても辛そう……だから、私にぶつけて…?」ナデナデ



咲「…っっ…あなたまで…いみわかんないです……っっ!」ジワッ

健夜「咲ちゃん、我慢するのはもうお終いで良いんだよ……」


咲「なに……を……」

健夜「咲ちゃん」ナデナデ


咲「っっっ……うぅ…」

健夜「誰にも、言わないから」ニコッ


咲「っっっ……」ジワッ

咲「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っっ…!!」ギュッ


咲「先輩……来週引っ越すって……そう言ったんです……っっ!!」


咲「先輩、また明日ここに来てって、そう言ったんです……っ!!」


咲「なんで…どうして……折角…一緒に居るのも悪くないって!!そう思い始めた時に、どうして!!」グスッ


咲「どうして居なくなっちゃうんですか……っっ!!」


健夜「うん……」ギュッ




咲「うぁ…っっ…あぁぁぁぁぁぁ……!!!」ポロポロ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




健夜「……落ち着いた?」


咲「ごめんなさい……取り乱して」ゴシゴシ


健夜「ううん、平気だよ」ニコッ


咲「……」


咲「さっきの、小鍛冶さんが言っていた……お世話になった人の娘というのは…」


咲「多分、私の先輩……です…。元麻雀部の…」


健夜「そう、みたいだね」



咲「……」


健夜「……」




咲「……私は、麻雀が大嫌いでした」



健夜「っっ」




咲「理由は、とても幼稚な物です」


咲「……誰にも勝てなかった、ただ、それだけ」




健夜「プラマイゼロ……」


咲「…気付いてたんですか」


咲「そうです。私が打つと全て、プラマイゼロになっちゃうんです」


咲「小さい頃は、普通に打てたんです。……なのに、ある日突然……」


咲「あはは、面白いですよね。勝とうとして打ってるのに、プラマイゼロ……負けようとして打ってもプラマイゼロ」



咲「それ、一緒に打ってる人からしたらどう見えるんでしょう?」


咲「一度や二度なら、偶然だと思って気にする人は少ないでしょう」


咲「……けど、毎日打つ人からしたらそんな気持ちにはならない」


咲「わざと負けられている、そう思いますよね」



健夜「咲ちゃん……」


咲「私には、お姉ちゃんがいるんです」


健夜「うん…言ってたね」




咲「お姉ちゃんは、私のこの体質に対してとっても親身になってくれました」



咲「毎日毎日、どうにかして私のプラマイゼロを止めようと、必死で私なんかの為に頑張ってくれたんです」



咲「たくさん、たくさん、たくさん、たくさん打って、打って、打って、打って、気が遠くなるほど打ちました」



咲「結果、30局くらいしましたかね?」


咲「全てプラマイゼロですよ」クスクス


咲「それでも、お姉ちゃんは何とかしてくれようとしていました」


咲「相手の特徴を看破する力まで編み出して、とにかく一生懸命に……」


咲「また、楽しく麻雀を打とうって、そう言ってくれました」


咲「……でも、ダメなんです。無理な事くらい、私が一番良く分かってる」




咲「プラマイゼロにならない方法が一つありました。私は、いつでもプラマイゼロは止めることができた」




健夜「……何も思わず、打つこと」


咲「……正解です。何も思わずに打つ」


咲「勝ちたいとも思わず、負けたいとも思わない。楽しみたいとも思わず、相手を楽しませたいとも思わず……とにかく、無心で。ある種の適当ですよね」


咲「そうやって打つことで、プラマイゼロにはならない、それは分かっていました」



咲「……でも、それはしたくなかった…」


咲「勝ちたいと思わずに卓に着くなんて、一緒に打つ人への冒涜です」


咲「それがお姉ちゃんだったら、尚更!!」




咲「……だから私は、何かと理由をつけてお姉ちゃんと打つのを止めました」




咲「そして、打たないでいる内にお姉ちゃんは東京、私はここ茨城に転校することになったんです」


咲「お姉ちゃんの想いも、優しさも、思いやりも、努力も、全部、全部、全部……私が辛い、それだけの理由で踏みにじって、無駄にさせた」




咲「……私は、麻雀が大嫌いです」

咲「こんな、腐った打ち方しか出来ない私が……大嫌い」


咲「だから……小鍛冶さんや先輩には申し訳ないですが…」


咲「私は……」


健夜「……」




健夜「……私も、麻雀が大嫌いなんだ」


咲「え……?」



健夜「私、ここの地元のクラブチームに来る前までは恵比寿のチームにいたの」


健夜「とっても有名な、かなり強いチーム」


咲「……」


健夜「私は、咲ちゃんとは逆だった。」




健夜「誰とやっても勝つ、どんな状態でやっても勝つ、対局者が皆で協力して打ってきても勝つ」


健夜「誰も、私に勝てる人なんて居なかった」


健夜「最終的に、私に勝とうと思う人なんて居なくなっちゃったよ」



健夜「だから……だから私は、世界1位になるための試合を棄権したの」


健夜「……1位になってしまえば…麻雀を続ける意味が、無くなってしまうから……」



咲「……」




健夜「たくさんの人に怒られたよ。まあ、当たり前かもしれないね…日本人初の世界一位になれる人材、そんな私が棄権したんだから」


健夜「……でも、なんで私が怒られなきゃいけないの?そう思った」


健夜「だって、仕方無いじゃない……」


健夜「私だって、麻雀を続けたかった!!」



健夜「その為には、目標を失う訳にはいかなかった……勝てるって分かってても、勝つわけにはいかなかったの……」



健夜「……そんな時に、丁度地元のクラブチームが潰れそうだっていう話を聞いたんだ」


健夜「……良い機会だと思った。恵比寿には居づらくなっちゃったし」


健夜「だから、恵比寿のチームを抜けて、ここ茨城のチームに移籍した」


健夜「皆大喜びしてくれたよ。たくさん感謝された」



咲「……でも、次第にそうでもなくなった」



健夜「……うん。ここのクラブチームの人達は、私とも喜んで打ってくれた」


健夜「けど、私は本気を出さなくても、適当に打っても圧勝してしまう」



健夜「皆も、きっとそれを分かってたと思う。……でも、誰も私に怒ったり、嫌だと言ったりはしなかった」


健夜「日に日に、皆明らかに疲れているのに気付いた。……でも、誰も文句を言う所か、私と対局してくれたんだ」


健夜「……その優しさが、逆に私を苦しめた」


健夜「だから、お願いしたんだ。しばらく私とは打たないで欲しいって」


健夜「多分、皆もいつか言われるのを分かってたのか……それとも、自分たちから言う予定だったのか」


健夜「すぐに納得して私の事は気にせずに、打ってくれた」




健夜「……そんな時に、一人の女の子がやって来たんだ」



健夜「なんだか不思議な子だった。キョロキョロしてるし、ご飯とか注文するし」


健夜「で、その子は私と打ちたいって言ってきたの」


健夜「私も暇だったし、このくらいの子になら手を抜いて、負けてあげればいいやって思えた」


健夜「……でも、私は負けられなかった」


健夜「よく分からなかったよ。私は、本気で負けに行った。それこそ、和了ろうなんて微塵も思わずに」


健夜「でも、気付いたら勝ってた」


咲「……」




健夜「それで、その違和感を確かめるために安い挑発に乗って、今度は四麻をした」


咲「安い挑発って……小鍛冶さんは、本気でムキになってた様に見えましたけど?」


健夜「……ちょっとだけムキになったけど」

咲「……ふふっ」




健夜「今度は逆に、飛ばしちゃっても構わないやくらいの気持ちで、半分本気で打った」


健夜「恵比寿に居た時でも、半分本気の私に勝てる人なんて1人も居なかったから」


健夜「……同卓してくれたチームメイトには申し訳ないと思ったけど」


健夜「本当に本気で打った」





健夜「……でも、今度は勝てなかった」


咲「勝てなかったって……一位だったんですから、勝ちじゃないですか」


健夜「飛ばせなかったんだから、負けだよ」


咲「何ですかその悪魔みたいな基準……」


健夜「ふふっ…それで、その女の子……」



健夜「咲ちゃんが帰った後、私は牌譜を見て、生まれて始めて麻雀で目を疑ったよ」


健夜「よく見たら、あからさまなプラマイゼロ。私と打って、飛ばない所かプラマイゼロをやってのける子がいるんだって」


健夜「でも……少し考えたら勘違いだって分かった」




健夜「だって……咲ちゃんはプラマイゼロになるためだけに、牌に愛されてたから」



健夜「……牌は、咲ちゃんをプラマイゼロにさせるためだけに、咲ちゃんを愛した」




健夜「プラマイゼロを拒もうとした時、咲ちゃんの配牌やツモは必ず、プラマイゼロになるような点数にしかならない」


健夜「逆もまた同じ。対局相手が咲ちゃんのプラマイゼロを止めようとした時……」


健夜「相手の手は、咲ちゃんの点数がプラマイゼロになるような役しか作れなくなる」


健夜「……そして、プラマイゼロを止めようと、相手が和了りを故意に無視しようとすると、無意識的に和了ったり、振り込んだりしてしまう」


健夜「1度目の対局で私が感じた違和感はそれだった」




健夜「咲ちゃん自身はきっと、出来た手を無視する事は出来るんだよね……」


健夜「でも、咲ちゃんの性格が、和了れるのに和了らないという選択を拒絶している」


健夜「結果、プラマイゼロは誰にも止められない、完璧な物が完成する」


健夜「……皮肉にも、咲ちゃんのその性格が…プラマイゼロを止められない、最大の理由になっちゃってるんだ」



咲「……ご明察です」ニコッ




健夜「こんな子がいるんだって、信じられなかったよ……」


咲「私だって、信じられませんでした。こんなに強い人が、存在してたんだって」


咲「5割しか本気を出してないのに、とてつもない。人と打ってる気なんてしてなかった」




健夜「私は、そんな咲ちゃんを見て初めて……」

咲「私は、その時小鍛冶さんを……健夜さんを見て初めて…」





咲 健夜 「「こいつを叩き潰したいって思った」」





咲「……はぁ?そんな事、出来ると思ってるんですか?アラサーの癖に」


健夜「……身の程を知ろうか、咲ちゃん。小学生にしか見えないよ?」



咲「……」

健夜「……」


咲「ふふっ」

健夜「あはっ……」




咲「あははははははっっ!!」


健夜「ふふふふっ、あははっ!!」





咲「何を勝手に語り出すのかと思いきや、私に勝てる人がいないからつまらない?」


咲「あははっ、中学生の私のプラマイゼロすら止められない癖に!?」



咲「………私を叩き潰してから悩んだらどうですか?」





健夜「咲ちゃんこそ、勝てないから麻雀が嫌いって」


健夜「……私に叩き潰されて、負けてから言ってくれるかな?そういうのはさ」





咲「……あなたに、出来るんですか?」


健夜「咲ちゃんこそ、出来るのかな?」




咲「……良いでしょう。健夜さんに思い出させてあげます」

健夜「私も、咲ちゃんに思い出させてあげるよ」




咲 「あなたを叩き潰して」




健夜「麻雀の楽しさを、ね」



――――――――――――――――――――


【数日後・雀荘】




男「お、俺はそろそろ抜けさせて貰います!」タッタッタ





健夜「いや……ホントに……どうなってるの咲ちゃん……」ハァハァ


咲「健夜さんこそ……どうなってるんですか」ハァハァ


健夜「全っ前飛ばせないし……私、こんなに全力で打ってるのに……」ハァハァ


健夜「仮にも元世界2位だよ……?おかしい、こんな小学生に……」ハァハァ


咲「私だって……全力で打ってるのに…こんなアラサー一人飛ばせないなんて…」ハァハァ


健夜「まだアラサーじゃないよ!!」プンスカ


咲「わー怒ったー。ほら、歳を取ると怒りやすく……そう、更年期ですか?」


健夜「まだ24だよっ!!」プンスカ


咲「まだって所に焦りを感じますねー?私、まだ中学生なので分からないですー」


健夜「ぐぬぬぬぬぬ……」



少女「あのー?ちょっと良いですかー?」


咲「あ、ごめんね?人数合わせで入って貰っちゃって」

咲「ありがとう」ニコッ


少女「あっ/////い、いえ……っ!それは大丈夫です……/////」


少女「そ、それよりお姉さん達強いんですね!!」


少女「さっきまで、角のお姉さんは毎回プラマイゼロ、そっちのお姉さんは毎回トップでした!」


少女「色んな対局を見てきましたけど、こんな凄いのは初めてです!」




咲「この人よりは私の方が強いんだけどね、ちょっと調子がね」


健夜「何言ってるの?私の方が強いでしよ?」


咲「はい?私のプラマイゼロを止めるって言ってから何日経ちましたっけ?」


健夜「咲ちゃんこそ、私を叩き潰すって言ってから随分と苦戦してるみたいだけど?」






少女「でもでも、やっと角のお姉さんが1勝ですね!今のは、とっても痺れた試合でした!」


咲「まあ当たり前だよ。私がこんなアラサーに負ける訳……」



咲「……え…?」


健夜「……いま、何て…?」



少女「そう言えば全然スコア見てませんでしたね?この対局で、角のお姉さんが初白星です!」


咲「嘘………でしょ…?」


健夜「咲ちゃん……!!」

咲「健夜さん……」




少女「えっ!?ちょ、お姉さん達どうして泣いているんですか!?」


少女「ちょっと、泣き止んでくださいー!!」



少女「お二人共ー!?」アワアワ






健夜「……どう?私を叩き潰した感想は…」

咲「どうですか……?初めて叩き潰された感想は……」グスッ




咲「健夜さん麻雀って……」
健夜「……咲ちゃん麻雀って」




咲 健夜 「「楽しいよね」」ニコッ





~対局結果~


咲 136000
健夜 118000
少女 92000
男 54000




閑話・咲と健夜 カン

ちょっとベタな展開過ぎましたかね……
書いてみたかったお話でした。

閑話でのシリアスは、あと1回(多分)
赤土さんを考えています。

それと、気づけば400レスを超えていました。これだけ長く書けたのは初です。
皆さん、お付き合い頂きありがとうございます。

感想などありがとうございますっ
とても嬉しいです。
大将戦後に、咲健夜マホや咲×誰かの絡みを書きたいと思います。が、大将戦の結果を少し悩んでいます…
明日には投下します

長野の誰かとの絡みも考えていますので、何卒ですっ

一応この話は、咲マホ健夜以外原作基準で進んでいますので、高校が変わっていたりはしない予定です。

なので、清澄の大将は、無名校の1年で得意技がある……という事で何となく想像して頂けたらなと思います。あの辺は紛らわしくてすみません
別キャラを期待されてた方は申し訳ないです…

何となく、名前をぼかさない絡ませ方が思いついたので書けたら書いてみたいと思います。

【対局室・大将戦開始】




穏乃(始まった……)


穏乃(……あれ?何でだろう、控え室ではあんなに緊張してたのに…)


穏乃(意外と落ち着けてる……)チラ


淡「……」ゴゴゴ

姫子「……」

竜華「……」



穏乃(皆強そうだな……大星さんとか、物凄く怖いオーラ発してるし……)


穏乃(こんな沢山の強い人に囲まれて、ちょっと前の私だったら逃げたくなってたよね)クス


穏乃(それでも、今は怖い所か早く打ちたいって思ってる)



穏乃(そういえば、この状況……思い出すなぁ…あの特訓…)ニガワライ


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【阿知賀・ミニ合宿】



咲「それ、ロンです24000」


穏乃「か、勝てない……」


咲「ほら、まだだよ高鴨さん」ゴゴゴゴ


健夜「ちょ、ちょっとやり過ぎじゃ……」


マホ「健夜さん、口出ししない約束ですよー」


健夜「ご、ごめん」


咲 164000
健夜 128000
マホ 82000
穏乃 26000




咲「高鴨さん、私たちは別に高鴨さんを虐めてる訳じゃないの」



憧「いや、どう見ても虐めでしょあれ!?」ヒソヒソ

灼「なら、咲にそう言ってみればいい」ヒソヒソ

憧「無理無理無理!!」ヒソヒソ



マホ「聞こえてますよー」


憧「すみませんっ!!」ビクッ


健夜「あはは……」

咲「良いですか?大将戦の選手は皆が格上、それも高鴨さんがこれまでに対局した事ないほどの選手達です」


咲「故に大将戦、どれだけ対策をしたって、対局相手の雰囲気に飲まれちゃ意味がないんです」


穏乃「対局相手に……飲まれる…?」


咲「……」ゴッッッッッッ


穏乃「うっ……」ビクッ




咲「はい、飲まれた」



健夜「つまり、格上ばかりの大将卓でビビっちゃったらダメってこと」


穏乃「で、でも、咲は格が違う気が」


マホ「そうでも無いですよー?今の宮永先輩は、軽く殺気を撒き散らしただけです」


咲「今のに飲まれてたら、大将3人相手なんか出来ません」


穏乃「でも…何ていうか、ゾワッてするんだよ…怖いっていうか……恐ろしいっていうか」


咲「うーん……」


咲「それを楽しい、そうは思えませんか?」



穏乃「楽しい……」



咲「なんか、今の高鴨さんは生き残るのに必死な小動物みたいです」


健夜「……」


穏乃「……?」


咲「……あれ、伝わり辛かったかな」


マホ「ええっと……とにかく、麻雀を楽しんでないって事ですね!」


咲「もしかして、例えは余計でした?」


咲「ま、良いです。それで、どうでしょう?私たちと打っていて、楽しくないですか?」


穏乃「正直……楽しいとか、楽しくないとか、感じてる余裕がない…かも」



咲「では、私たちと打つことは楽しくないですか?」


穏乃「えっ…?一緒の質問……」


健夜「違うかな。初めの質問は、対局自体の話。二つ目は、それ以前、私たちと麻雀をする行為その物の話」


咲「あの、さっきから良い所だけ持っていくの止めて貰えませんか?」


健夜「そんなつもりないよ!?」


咲「で、どうでしょう?」


穏乃「……」


穏乃「……しい」


咲「はい?」


穏乃「楽しい…よ、咲や小鍛冶プロ、マホちゃんと打つのは、打てるのは楽しい」


穏乃「こんな強い人達と戦えるのが、すっごい楽しい、ワクワクするよ!」

健夜「……」フフッ



咲「……」ゴッッッッッッ



穏乃「……?」


咲「……心構えって言うのは、勝負事に関してとっても大切な物です」


咲「先程までの高鴨さんは、私たちが怖くて、ただ飛ばされないように必死なだけでした」


咲「だから、私の少しの殺気だけで怯んで、飲まれてしまっていた」


咲「でも、今。私たちと打つ事、強い人と打つ事が楽しいと、言葉に出して言った途端」


咲「私のプレッシャーにも、何も感じなくなりましたよね」



穏乃「えっ!?さっきからプレッシャー放ってたの……?」


咲「……この位なら感じますかね…若かりし頃の健夜さん」ゴッッッッッッッッ


穏乃「うひゃぁ!ホントだ!」


咲「……上出来です」




マホ「健夜さん!健夜さんしっかり!」ユサユサ


健夜「若かりし……若かりし頃……」ガーン


マホ「先輩!健夜さんがダメージ受けてますー!」


咲「……はぁ」



咲「……わー、こんな所にまだ若々しくて高校生にしか見えない素敵なアラサーがいますー(棒)」


健夜「!!」ビクッ

健夜「……えへへ、若々しくて高校生にしか見えない……/////」テヘヘ


健夜「って、結局アラサーなの!?」


マホ「あ、生き返りましたー」


咲「……でも、本当に顔は可愛らしいですよね、健夜さん」


健夜「……えっ?」


マホ「マホ、こういうの何て言うのか知ってますー。童顔!」

咲「それだね」

健夜「なんかやだ!?」




穏乃「……ふふっ…」



咲「!!」

穏乃「ふふっ、あははははっ!!」


穏乃「何か、3人にやられて怖いと思ってたのがバカみたいだ!」アハハ


健夜(おっ、これは……)


マホ(……ふーん)


穏乃「ふぅ……咲、次は全力でやってよ」


健夜「……」


咲「……私は全力でやってるよ?」


穏乃「……」ジーッ


咲「……はぁ、分かった」





咲「……意識飛ばさないようにね」ゴッッッッッッッ


健夜「じゃあ、私も久々に……」ゴゴゴコゴゴゴ


マホ「うーん…では、コピーの新作宮永照さんを試してみましょう!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ


穏乃「えっ、ちょ、私は咲に頼んd」


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【回想終わり】




穏乃(そうだ……この3人には悪いけど、私はもっと強い人達を知ってる)


穏乃(だから、楽しませて貰います!大将戦!)


穏乃「阿知賀女子、高鴨穏乃です!よろしくお願いします!」


淡「……は?」


姫子「よ、よろしく」


竜華「ふふっ、ウチは好きやでそういうの!よろしくな!」



淡(コイツは確か……あぁ、あのドラ倉庫の所の大将か…)


淡(ま、元気で居られるのも今の内……かな!!)


淡「……」ゴッッッッッッ



姫子「!!」

竜華(白糸台、大星淡……)



穏乃(うひゃぁ!赤土さんや咲の言ってた通り!凄い圧力!)


穏乃(そして配牌は……)


穏乃(……これは喜べない結論になったんじゃ…?)



穏乃(配牌、5向聴だ)


穏乃(その上多分……)



淡「リーチ!」ダンッ



姫子(ダブリー!?)

竜華(ダブルリーチ……こっちは配牌むっちゃ悪い言うのに)


穏乃(やっぱり来るかー!)



穏乃(他の2人は……大星さんのダブリーについては知らなかったっぽいな)



穏乃(っていうか、それが当たり前なんだよね……だって、県予選で1回やっただけだよ?ダブリー)


穏乃(それを能力だって気付いた所か、この配牌操作まで予想済みとか……)



穏乃「ポン!」



穏乃(咲ってカッコイイー!!)キラキラ


穏乃(赤土さんも、怪しいと思ってたみたいだし……この場合って、赤土さんと同じ思考の咲が凄いのか、咲と同じ思考の赤土さんが凄いのか)



穏乃「チー!」



穏乃(どっちなんだろう……)ウーン


穏乃(って、こんな事考えてる場合じゃ無かったー!!)


穏乃(あれ、親って誰だっけ!?えっと……最初がダブリーだったから…)


穏乃(親、大星さんじゃん!!)


穏乃(やばっっ、変な事考えてる場合じゃないよ私…………)


穏乃(……)


穏乃「……あれ?」



竜華「??」



穏乃(私、いつの間に2副露してたんだっけ……)


淡(何コイツ……さっきからボーッとしてるし、鳴かれてちょっと焦ったけど、適当に打ってるだけ?)


淡(ふんっ、いいカモだね…………高鴨だけに)タン






穏乃「ろ、ロン。8000です」





淡「……」

淡「……は?」

――――――――――――――――――――


【咲・観戦場所】



恒子『こっ、これはー!?大星淡選手以外の配牌がとても悪く、大星淡選手がダブルリーチで和了るかと思いきや!!』


恒子『高鴨穏乃選手、2副露から大星選手へ直撃を決めました!!』


健夜『大星選手の親が流れましたね。しかし、和了った本人が一番ビックリしている様に見えます』


恒子『準決勝大将戦、面白い試合になりそうだーっっ!!!』


健夜(……何、今の…)







マホ「む、無意識ですか!?」


咲「多分……」



咲「私たちとの特訓で、6巡までに最速手で必ず和了れっていう特訓やったじゃない?」


咲「多分、あれと大星淡対策の即流しが上手く噛み合って、無意識の内にああなってた……んじゃないかな」


咲「いや、分からないけどね?」


マホ「そういえば、あの時もボーッとしながら打ってたりしてた様な気がするです……」


咲「今のは偶然が重なり合った結果だね……二度は起きないと思う」


マホ「でもでも、大星淡さんの親は流しました!」



咲「うん、3人の圧に飲まれてもないし……今のところ上出来かな」



咲「っっ……」ピクッ

マホ「そう上手くもいかないみたいですねー……」


咲「意外と早く、本気になったね」


淡『……』ゴゴゴゴゴゴゴゴ




咲「牌に愛された子、大星淡、か……」


――――――――――――――――――――


【対局室】


淡(……高鴨穏乃ッッッ!!)ゴッッッッッッ


淡「カン!」


穏乃(な、なんかツモまで悪くなってる気がするんだけど!?)

穏乃(鳴ける機会もないまま、山の角まで来ちゃったし……)


穏乃(……ちょっと待って?仮に、カンしてからの一巡の内に、誰かが鳴いてズラしたとしたら……)


竜華(さっきは驚いたわ…穏乃ちゃん、2回戦よりむっちゃ強なっとるやん)


竜華(せやけど、今注意すべきはこの大星淡や……2連続ダブリー……)


竜華(まだ辛うじて運が良かっただけだと言える範疇やけど……)タン



姫子(このプレッシャー……絶対に、あのダブリーは偶然じゃなか)


姫子(ばってん、さっきから配牌が……)タン


穏乃「チー!」スッ

穏乃(鳴けた!)




淡「……無駄だよ」

淡「ツモ」パララララララ


姫子(ダブリーのみ、良かったと)


淡「安心するのは早いと思うよ?」

淡「ダブリー、ドラ4」

姫子(槓ウラ!?)


淡「3000.6000」


竜華(まさか……!!)


穏乃(ズラしても和了るのか……)





淡(もう偶然は起こさせない……高鴨穏乃、アンタは飛ばす)


――――――――――――――――――――

【咲・観戦場所】



恒子『決まったぁぁぁ!!なんと、大星淡選手!!2連続ダブルリーチだけに留まらず、槓ウラが全て乗り、ダブリードラ4の跳満!!』


恒子『親被りを喰らった新道寺には、少々キツい展開です!!偶然とは言え、これは手痛い!!』


健夜『……偶然なら良かったね』




咲「これで、一先ず明らかになったね」


咲「大星淡の能力は、ダブルリーチからの山の角でカン、そしてツモまたはロンで槓裏全乗りの跳満」


咲「それに加えて、自分の能力発動圏内まで誰にも和了らせないための、強制配牌5向聴」


マホ「今のは良いタイミングで鳴きましたけど、ズラしは意味が無いみたいです」



咲「うん。かなり強力な支配だね」



マホ「うーん……これは、どうなるか分かりませんねー」


咲「清水谷竜華も、まだゾーンは愚か、隠し持っていそうな能力も使ってない」


咲「……まあ、まだ東2局だから当然か…」

マホ「その東3局も終わりそうです」



淡『ロン、12000』


恒子『またまた大星選手、ダブリードラ4の跳満を今度は千里山女子の清水谷竜華選手に直撃!!』


恒子『これで、トップを走る白糸台高校のリードが広がりました!!』



咲「次は高鴨さんの親番……」


マホ「最低でも2回は和了りたいですねー。点差がヤバイです」


咲「そうだね。……でも多分、この辺りで動く」




竜華『……』コォォォォ

閑話で、福岡勢やちゃちゃのんなどとも絡ませたい
なとは思ってるんですけど、方言が難しすぎる……

大将戦、もうしばらく続きます


――――――――――――――――――――

【対局室】




穏乃(やっぱり、能力を知ってるとか知らないとかはあんまり関係ない……)


穏乃(赤土さんも咲も言ってたけど、それを止められなきゃ意味が……)



竜華「ポン」スッ

竜華「チー」スッ




穏乃(清水谷さん……?なんでそんな無意味な鳴きを…)


淡(二度目は無い、私のダブルリーチは誰にも止められない)タン


竜華「牌に愛された子だか何だか知らへんけど、あんま舐めんで貰いたいわ」


淡「!?」

竜華「ロン、役牌ドラ3、8000」



淡(役牌バック……ッッ)




穏乃(え、ちょっと待って?清水谷さんは一巡目から鳴いてきた…)


穏乃(そこから今ロンするまで、全部ツモ切りはせずに交換してて、この巡目……)


穏乃(無駄ヅモ無しだったって事だよね…)


穏乃(まるで、鳴きで有効牌を引いてるみたいだ)



竜華(これ、配牌悪なかったら地和行けたんちゃう?)


竜華(まあ、そんな上手くはいかへんか)



穏乃(これが、強豪校の大将!!)


竜華(何にせよ、次は南1局や……新道寺の鶴田姫子…)チラ




淡(なんか調子出ない!清水谷、コイツは私よりも弱いはずなのに…)


淡(しかも、次の局はリザベーションとか言うのが来る局……しかも役満)



姫子(ぶちょーがくれた役満キー……)ゴッッッッッッ


穏乃「っっっ!?」

淡(へぇ……面白いじゃん)



姫子(おいでませ、役満!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴ


穏乃(うわぁ……これ、手牌見なくてもヤバいの分かるよ……)


穏乃(マホちゃんが手牌全部を字牌で染めてた時と同じ感じ…それよりも凄いかも)


穏乃(鶴田さんがリザベーションを発動した局、絶対に振込みは許されない!)


淡(ちっ…よりによって、私が親の時にか……)





淡「……」ウズッ




淡(……ふふっ、良いね良いね、超面白いじゃん!!)


淡「ダブルリーチ!!」


穏乃「!?」

竜華(こいつ、正気なん……?鶴田姫子が役満和了る局でダブリーって…)


姫子(あくまでも正面から向かってくっか…)


淡(当然っっ!!)



姫子(私とぶちょーのこん絆、破れるもんなら破ってみろ!!)ゴッッッッッッ


――――――――――――――――――――


【咲・観戦場所】



咲「へぇ……」


マホ「宮永先輩は、大星淡が今ダブリーを掛けた理由に共感できますか?」


咲「出来るかな」


咲「プロですら止められないって言われてるリザベーション、それも役満級が来るなんて、ワクワクするよ」


咲「大星淡は少し傲慢ではあるけど、根っこの部分は私たちと同じなんだ」




マホ「麻雀が好き……」


咲「うん。だから、自分が止められるのか、それを試したくなった」



マホ「けど、これは個人戦じゃありませんよー?」

咲「そう。自分一人で戦ってる訳じゃない……」


咲「だから、共感は出来るけど、自分が楽しむためにチーム全体をリスクに掛ける今のダブリーは、賛成はできないかな」




マホ「あっ、それと!」


マホ「さっきマホと先輩でやったリザベーションよりも、新道寺のは力が違う気がするです」


咲「それは私も感じた……。多分、練度や慣れだけの差じゃない」


咲「……悔しいけど、私たちではあれ程のリザベーションは出来ないかな」



マホ「むっ…他の人に出来る事なんですから、マホと先輩にも出来ますよ!」


咲「じゃあもう一回やってみる?」

マホ「……それはもう少し考えさせてくださいです/////」




マホ「あっ」


恒子『役満ツモぉぉぉぉぉ!!新道寺女子、鶴田姫子選手、リーヅモ、清一色、断幺九、二盃口、ドラ2の役満です!!』


健夜『5巡目でこれをやられてしまっては、流石に誰も止められないでしょうね』


恒子『小鍛冶プロでも?』


健夜『そ、それはやってみないと何とも……』


恒子『やはり、頑なに出来ないとは言いません!!しかし、それでこそ小鍛冶プロですよね!』


健夜『えっ、それどういう意味!?』







咲「うわ、凄いな鶴田さん」


マホ「先輩なら止められますよね?」


咲「余裕だよ」


マホ「流石です!」キラキラ


咲「……嘘、ちょっとギリギリかも」ボソッ


マホ「えっ?」


咲「あ、いや、なんでもないよっ!」


――――――――――――――――――――


恒子『前半戦終了ーっっ!!』



恒子『なんとなんと!!新道寺女子、鶴田姫子選手!!南1局で役満をツモった後、南2局で三倍満までツモってみせました!!』


健夜『他の3校は彼女が親でなくて助かりましたね』


恒子『現在の点数状況は、1位は未だ白糸台高校!!玉座は誰にも渡しません!!』


恒子『そして、2位に浮上したのが新道寺女子!!1位、白糸台との差もそう大きくありません!!』


恒子『一方、3位に転落してしまったのは千里山女子ですが、上2校との差も1万点強と、ほぼ差はないぞ!?』


恒子『最下位の阿知賀女子ですが、二度の和了りと、他校の振込み、他校の親被りによって徐々に差を詰めています!!』


健夜『大将戦という試合の終盤に入って、4校どこでもトップを狙える位置に着きましたね』


健夜『これは、予想がつきません。各選手悔いの残らないよう全力の試合をして欲しいです』



恒子『注目の、大将後半戦は15分の休憩の後ーっっっ!!』





穏乃「……」フゥ


穏乃(何とか点差は詰めれたけど……私が和了れたのは2回か…)


穏乃(大星さんと鶴田さんと清水谷さん、凄すぎるなぁ)


穏乃(私も頑張らなきゃっ)


憧「シズ」ピト


穏乃「冷たっ!?」ビクッ


憧「あははっ、ほいお茶」


穏乃「憧ー、ビックリさせないでよ!」



憧「ごめんごめんっ」クスクス



憧「調子はどう?」


穏乃「うーん、まあまあ…?でも、試合は楽しめてるよ」


憧「…そっか。晴絵も、このままで良いって」


穏乃「ん、了解」




憧「……なんか、シズ変わったわね?」


穏乃「え?」


憧「なんか、落ち着いたって言うかさ」


穏乃「なんだよそれー?前は落ち着きが無かったって言いたいのかー!」


憧「あはは、まあねー」


穏乃「なにをー!?」プンスカ



穏乃「……んーまあでもさ。ちょっとだけ、咲の影響受けてるのかも」


憧「咲の?」


穏乃「うん。咲ってさ、何があっても全然動じないし、凛としてて、カッコいいじゃん?」


穏乃「だから、私もあぁ言う子になりたいなって、少しね」


憧「ふーん……」


憧「でも、咲だって女の子らしい、可愛い所とかあるわよ?」


穏乃「あー、銭湯行った時にさ、サイダーを水と勘違いしてフタ開けたら、顔サイダーまみれになってた時は笑えたね」クスクス


憧「そうそう、顔真っ赤にして可愛い……って、こんな話してる場合じゃなくて」


憧「憧れとか、影響とか、そういうのも悪くはないけどさ、シズはシズの麻雀を打ちなさいよね」


穏乃「何言ってんのさ、そんなのは当たり前だろ?」


穏乃「自分の出せる力は、全て出すよ」

憧「分かってるなら良いわ」




憧「楽しんで来なさいよ、シズ」グッ


穏乃「当然!」コツン


――――――――――――――――――――


【咲・観戦場所】



マホ「あのお2人は仲が良いんですね」


咲「同じ一年生だし、そういえば幼馴染みなんだって」


マホ「幼馴染みですかー、良いですね!」



咲「マホちゃんは、幼馴染みとか居るの?」


マホ「んー、1人だけ居たんですけど、小学校の頃に引っ越しちゃいました」


咲「……引越しは嫌だね」


マホ「先輩はどうなんですか??」


咲「私は……居ないかな」


咲「小さい頃に、お姉ちゃんと私と3人でよく遊んでた子は居たんだけど」


咲「私達が引っ越しちゃったから……それ以来、全然連絡してない」




マホ「へー……そういえばマホ、結構昔に先輩と健夜さんに会ったような記憶があるんですけど」


マホ「記憶が曖昧なんですよねー。先輩は覚えてませんか?」


咲「うーん……」


咲「……覚えてないかなぁ、夢とかじゃない?」


マホ「まあマホ、先輩の夢いっぱい見ますから、そうかもしれませんね!」


咲「えっ、いっぱい見るのは恥ずかしいから止めて欲しいな……」


マホ「えへへー」



咲「あ…ちょっと私、お手洗い行ってくるね?」


マホ「今度は本当のお手洗いですか?」



咲「あはは、うん。高鴨さんの所に行くとかじゃ無いよ」


咲「普通にお手洗いに行ってきます」


マホ「そうですか……先輩」


咲「迷子になったなって思ったら電話、でしょ?」


マホ「正解です!行ってらっしゃいです」


咲「う、うん……この確認、恥ずかしいから嫌だな……」


マホ「ダメです♪」



咲「私って一体……」ズーン


――――――――――――――――――――

【閑話・宮永咲と……】



咲「はぁ……全く、マホちゃんは私の事を孫とか、そういう目線で見てるんじゃ……」テクテク



咲「ここらで、私の先輩らしさを思い出させてあげな」ピタ



「けほっ、けほっ…」ヨロヨロ



咲「えっ……」


「うぅ……」ヨロヨロ


咲「……」


咲「……仕方ないよね」


咲「あの、大丈夫ですか……?」タッタッタ


「あぁ…心配かけてごめんな?大丈夫や」ヨロヨロ


咲「全然大丈夫そうには見えないんですけど……」



咲「園城寺怜さんですよね、千里山女子の」


怜「ウチのこと……知っとるん…?」クラッ


咲「ちょ、危なっ」ダキッ




怜「はぁ…はぁ……」


怜「し、心配せんといて…ただの仮病やから…」ハァハァ


咲「これが仮病だったら、女優とか目指した方が良いと思いますよ…」


怜「おおぅ……中々鋭いツッコミやん……」


咲「とにかく、見つけてしまった以上は放っておけません」


咲「一先ずそこのベンチに行きますよ?……自分で歩けますか?」




怜「ほんま、おおきにな……」コホッコホッ


咲(……何でこの人がこんな所に…)


――――――――――――――――――――



咲「スポーツドリンク買ってきましたけど……飲めますか?」


怜「あぁ…貰うわ……こほっ…こほっ」


咲「……良いです、とりあえず寝転びましょう」


咲「……どうぞ、私の膝でよければですけど…硬いベンチよりはマシでしょう」ポンポン


怜「……ええの?」


咲「私が良いって言ってるんですけど」


怜「ほんなら……お言葉に甘えて…」スッ



怜「ふぅ……」ポフ



咲「口、開けてください」


怜「…」アーン


怜「んっ…ん…」ゴクゴク



咲「ゆっくりで良いですから」

怜「ん……」ゴク



咲「もう良いですか?」


怜「はぁ……うん、落ち着いたわ…」


怜「ほんま助かったわ、おおきにな」



咲「いえ…目の前に死んでしまいそうな他人がいれば、誰だってそうします」


怜「あはは…確かに、そうかもしれへんな」



怜「アンタは…私服みたいやけど、選手じゃあらへんの…?」


咲「まあ、そうですね。観戦に来ただけです」


怜「そんなら申し訳ないわ……ウチに時間取らせてもうて」


咲「いえ、お気になさらず」



怜「……」

咲「……」



怜「……聞かへんの?」




咲「……医務室から抜け出して、清水谷さんの所へ行こうとしていた理由をですか?」



怜「なっ……」


咲「あれ、違いましたか?」


咲「先鋒戦で体力を使い果たしてしまった園城寺さんは、控え室に戻った後、力尽きて医務室へ送られた」


咲「なぜ救急車を呼ばなかったかは知りませんが……」


咲「それで、先程目が覚めた園城寺さんは今が大将戦の休憩中だと知って、会いに行こうとした」

咲「私の想像ですけどね」




怜「……アンタ、何者なん…?」


咲「私は、宮永咲です」



咲「先鋒戦では、素敵な対局を見せてくれてありがとうございました」


怜「えっ…」



咲「無闇に体力を消費する打ち方は、あまり褒められた物ではありませんけどね」クスクス


咲「それでも続けた園城寺さんは、とっても凄いなと思います」



怜「……ふふ、なんや、夢でも見てるみたいやな」


咲「げ、幻覚ですか?」


怜「ちゃうわ……ウチが一番言われたかった言葉を……目が覚めてから初めて言ってくれたんが咲ちゃんで」


怜「その苗字が宮永と来たもんや」



怜「夢みたいやろ?」



咲「言われたかった言葉って……それは申し訳ない事をしました」


怜「何言っとるんや。こんな素晴らしい太ももの持ち主に言われるんなら本望やで」




咲「……はい?」

怜「せやから、こんな素晴らしい太ももの持ち主に言われるんなら本望やって」




咲「……変態」ジト


怜「褒めたのに変態って、どういう事やねん」


怜「っっ……こほっ、こほっ!」



咲「ああもう…そんなに興奮するとまた体調が悪くなりますから…」


咲(どうしよう、この状況……)




怜「咲ちゃん……ウチ、竜華ん所行かへんと……」


咲「いや、こんな状態で何を馬鹿な」


怜「お願い……初対面の咲ちゃんにこんなん頼むの、変やって分かっとる…」


怜「けど、何となく感じるんや。放っとるオーラはえげつないけど、この子は信用できるって」



咲「……感じてるなら、早く言ってください」スッ


怜「ふふっ、誰もここに来んように撒き散らしてくれとるんやろ?それ…」


怜「その優しさ、ウチを竜華の所に連れて行く事に使ってくれへん…?」


咲「……ダメです、医務室に戻ってください」


怜「お願いや…竜華の顔を一目見るだけでもええから……」


咲「……ダメです。何かあってからでは遅いので」た。医務室までは送りますので戻りますよ



怜「最後のインハイなんや……悔いは残したない」


咲「……」


咲「はぁ……もう、分かりましたよ…」


怜「ほんまに!?」



咲「だって、断ったって一人で行くつもりなんでしょう」


咲「……倒れるなら、私の目の届く範囲で倒れてくれた方が楽なので、仕方なくです」


怜「咲ちゃん……」ジーッ


咲「はい?」




怜「めっちゃええ子やな……後輩におったら、好きになっとったかもしれんわ」


咲「……」スッ


咲「早く、行きますよ……休憩、終わっちゃいます」


怜「なんや、照れとるん?」ニヤ


咲「照れてません。ほら、肩貸してください」


怜「えー?照れとるんやろ?だって、耳まで赤いで?」クスクス


咲「気温が高いからですよ」


怜「ぷっ、姉に似て頑固やな」クスクス


咲「……お姉ちゃんと話したんですか?あと、頑固じゃないですから、照れてませんし」


怜「あ、ほんまに妹だったんか」


咲「ええ、まあ」



怜「話したって程は会話してへんけどな?」


怜「先鋒戦が始まる前、対局室を素通りして全く別の所行こうとしとったから、声かけたんや」


咲「お姉ちゃん……」ハァ


怜「そしたら」


怜『迷子になんて、なりそうになって無いから』


怜「を、連呼されてもうてな」クスクス


咲「すみません、お姉ちゃんがご迷惑を……」


怜「いや、チャンプの意外な所見れて面白かったわ」


咲「成程、そのお礼も兼ねてお姉ちゃんは全力で相手してくれたんですね、多分」


怜「それは勘弁して欲しかったわ……」


怜「まあ、初出場であんな超大物と戦わせて貰って、感謝はしとるし楽しかったのも確かやけどな」





咲「……え?」



咲「園城寺さん、初出場……インハイ初出場で、千里山の先鋒なんですか?」


怜「せやで?ふふん、凄いやろ?惚れてまう?」


咲「……」


咲「……あなた、もしかして能力が発現したの、つい最近じゃないですか?」


怜「え?あぁ…まあ、そやな。3年入ってちょっと経ってからやね」


咲「……だからか」


怜「咲ちゃん?」



咲「いえ……」





咲「……園城寺さんの能力は、私がこれまで見てきた中で過去最強の能力です」



怜「えっ、照れるなぁなんか」


咲「能力の話であって、地力の話ではありませんので、園城寺さんが過去最強の選手という訳ではありませんよ?」


怜「それは言わんでええやん……それで?」



咲「そんな能力に、園城寺さんの身体が付いていけていません」


咲「これは別に、能力による負担が大きいとかではありません。単純に、能力発現からインターハイまでの期間が短すぎて、まだ能力に慣れていないんです」


咲「園城寺さんは、自分でもその事には気付いているでしょう?」


怜「……うん」



咲「このまま能力を使いこなせずに無理を続けてしまうと、二度と麻雀の出来ない身体になってしまうかもしれません」


咲「能力を少し多く使っただけで、先ほどの様な状態になってしまうのは、はっきり言って異常ですよ」



怜「やっぱ、無理せんほうがええんやろうか……」






咲「……なので、仮に決勝へ上がった場合……私を会場から探し出してください」


怜「へっ?」




咲「無理をするなと言っても、どうせアナタは無理をするでしょう?」


咲「なので、多少無理をしても問題ないように……少しなら、協力しますから」


咲「決勝の前に、まだ能力に適応出来ない様なら私を見つけてください」


咲「べ、別に、心配をしている訳ではありません」



咲「あの先鋒戦を戦いきった人が、1人でも欠けるのは嫌ですし。それに、同卓したお姉ちゃんも、園城寺さんが倒れてしまってはショックを受けてしまうかもしれませんから」


咲「それに、私も試合を見るんです。こうして関わってしまった以上、園城寺さんに倒れられてしまったら、寝覚めが悪いです」


怜「……めっちゃ早口やな」クスクス


咲「う、うるさいですね」



怜「……ウチ、昔から言われとったんや」


怜「無理をしたらアカンって」


怜「私生活でも、病弱を理由に無理をしたらアカン、麻雀でも、無理をしたらアカン」


怜「……けど、無理をしないウチは只の凡人で、無理をしない訳にはいかんかった」


怜「だから、今の咲ちゃんの言葉は……正直、グッときたわ」


咲「私だって、無理をするなとは言ったはずですが」


怜「せやな…けど、無理をしても問題ないように協力をしてくれるとも言うたやろ?」


怜「皆、ウチに無理するなって言うばっかで、無理をしたいウチの気持ちを……中々理解してくれへんかったから」



怜「無理が出来るようにって言ってくれたんは、咲ちゃんが初めて……初めての人やね」クスクス



咲「……愛されているんでしょう、仲間に」


咲「昔、部活のコーチにお前を潰したいと言われた私からしたら、とっても羨ましいですかね」


怜「そんな事言われたん!?」


咲「ええ、まあ」


怜「……でも、咲ちゃんはそれが嫌やなかったんちゃう?」


咲「はい?」


怜「だって、今の咲ちゃんの顔、めっちゃ笑顔やったし」クスクス


咲「……」


怜「可愛ええ笑顔、ご馳走さんな」ニコッ





咲「~~~~っっ////」



怜「ふふっ、一本取ったで」ニコッ


咲「うるさいです、行きますよっ」テクテク


怜「ちょ、咲ちゃんウチ病弱やから、ゆっくり……」


咲「そんなにゆっくりしていたら、休憩終わっちゃいますよ」


怜「そやった」


咲(……大阪の人って、どうしてこうも…)ハァ



咲(……そういえば、姫松の応援忘れてたな)


――――――――――――――――――――


【とある廊下】




竜華「前半戦は耐えるのが精一杯やった……」


竜華「大星淡…まさか、ダブリーからの跳満を連発なんて…」


竜華「……怜が繋いでくれた大将戦や」


竜華「ウチが負ける訳には行かへん」グッ


「りゅ、竜華……」ハァハァ


竜華「えっ……?」


「竜華、ウチは竜華の中におる」


「竜華は一人や無い、忘れんといて……」ケホッケホッ


竜華「と、怜……?」



怜「なんや……ウチの顔忘れたんか?」



竜華「怜!?な、何でここにおるんや!!」


怜「竜華が寂しがっとるとアカン思って……」


竜華「あ、アホ!!!安静にしとらなアカンやろ!!」


怜「あんなん只の仮病やから…大丈夫や」


竜華「そんな訳……っ」


怜「とにかく、時間もあらへんから聞いてや竜華……」


怜「竜華は、一人やない」



怜「千里山の皆がついとる、だから自分が楽しめる戦いをしてき」


竜華「ウチが楽しめる……」


怜「ウチの繋いだ大将戦やない、竜華が勝利に繋げる大将戦にするんや」


怜「大丈夫、ウチはいつでも竜華と一緒やで?」

怜「これまで竜華の膝に溜めてきた怜ちゃんパワー、感じてや」


竜華「怜……」ギュッ



怜「ふふっ、苦しいわ、竜華…」ギュッ


――――――――――――――――――――


咲「……」ウデクミ


怜「お待たせ、咲ちゃん」

咲「……」



怜「……あれ、咲ちゃん?」


咲「……私の今の気持ち、分かります?」


怜「ゆ、有名校の先鋒と大将を間近で見れて、嬉しー……とかじゃ…」


咲「ちゃうわ」



怜「お、おおう…何故に関西弁…」




咲「園城寺さん、私に何て言いましたっけ?」


怜「りゅ、竜華と会って話したいって……」


咲「……違いますよね?」ゴゴゴゴ



怜「さ、咲ちゃん?そんなエグいオーラ出されたら、ウチ辛いわ……」


咲「あなたは、一目見るだけで良いと言いましたよね?」


咲「別に、話をした事はなんとも思ってません」

咲「私も話をするんだろうなとは思ってましたので」


怜「な、ならええやん?」



咲「ええやん?ええくないですよ」

咲「どっこもええくありませんよ」



怜「ええくないって何やねん……」



咲「清水谷さんの所への行き方が問題なんです」


咲「なんで顔を見た途端に走り出して、清水谷さんの所へ行くんですか」


咲「何かあったら、清水谷さんだって試合所じゃありませんよ」


怜「そ、そら、アナウンスが休憩あと2分やーって急かすからで……」


怜「そや!咲ちゃんは笑っとった方が可愛ええよ?だから、あんま怒らんといてや」


怜「怒った顔は阿修羅像みたいや」


咲「」ピキッ



怜(あ、今のはさすがにアカン)




咲「……はぁ…まあ良いです」



怜(あれ…怒らへんの?)


咲「肩、貸してください。医務室戻りますよ」


怜「せっかくなんやし、控え室にも行きt」


咲「はい?」ニコッ


怜「すみません戻ります……(やっぱり怒っとる!)」


咲「じゃあ、行きますよ」テクテク


怜「なんだかんだ、最後まで付き合ってくれるんやな」


咲「……仕方なくですよ」プイッ




怜「おおきにな、咲ちゃん」ニコッ

咲「……いえ」クス




閑話・宮永咲と園城寺怜、カン

12時頃に大将戦と赤土さんの閑話を投下します。
始めに謝りたい……大将戦、雑で申し訳ないです!

途中で力尽きた……



【咲・観戦場所】





咲「ただいまー」


咲「……って、どうしたのマホちゃん」


マホ「あ、先輩やっと帰ってきました!!もう、遅いですよ!!」プンプン


咲「あはは…心配かけて申し訳ないです」


マホ「既に後半戦始まってますよー!」マッタク

咲「途中で死にそうな園城寺さんに出会っちゃって」


マホ「へー死にそうな園城寺さんに……って、どういう事ですか!?」


咲「まあまあ、その話は後ね」



マホ「とても後回しにしていい話とはマホ思えませんけど……」


咲「大丈夫、きちんと生きてるから」


マホ「当たり前ですよね!?」


咲「……なんか、マホちゃんのリアクション健夜さんに似てきたな」


マホ「え゛……」


咲「……と思ったけど、そうでもないかも」


マホ「で、ですよね!健夜さんに似てきたなんて、マホどうしようかと思いました」


咲(何となく、訂正しておいて良かった)



マホ「マホ、心配で宮永先輩にたくさんメールと電話したのに出なくて」


咲「えっ?」つケータイ取り出し


咲「……ほんとだ、っていうかこれは怖いよ」


咲「メール20通に電話40件って……」


マホ「えへへ…何かあってからじゃ遅いですから!」フンス


咲(ドヤ顔する所じゃないよマホちゃん……)


咲「っと、後半戦始まっちゃってるって、今はどんな感じ?」


マホ「えっとですね……」

マホ「!!」ヒラメキ


咲「マホちゃん?」



マホ「その前に宮永先輩、膝枕してくださいです」


咲「え、何で?」


マホ「マホを待たせた罰です!」プンスコ


咲「えぇ……一応、他の人がいるんだけど…」


マホ「してくれないなら、マホ怒ります」


咲「怒ってるから膝枕を所望したんじゃ……」


マホ「うるさいですー、マホの耳には肯定しか入ってきませんー」


咲「そ、そんな子供みたいな……」

マホ「マホ、子供ですもん」プクー


咲「……」


マホ「じーっ……」



咲「……はぁ、やっぱりマホちゃんには敵わないなぁ」



咲「まあ、いっか……なんだか最近のマホちゃんは甘えんぼだね」クスクス


咲「おいで?」ポンポン


マホ「そうです、マホは甘えんぼになりました」スッ


マホ「ですから、先輩はマホに甘えられてくださいです」ポフ


咲「ふふっ、分かりました分かりました」クスクス


マホ「はぁ~……マホ、あの時宮永先輩に膝枕して貰って以来、癖になっちゃいました」ニヘラー


咲「膝枕かぁ……確かに、車の中でマホちゃんにして貰ってた時は気持ちよかったけど」


咲「そんなに良いものなの?」ナデナデ


マホ「宮永先輩の膝枕だけですけどね」



咲「さっきも、膝枕を褒められたんだけど……自分じゃよく分かんないや」


マホ「……」




マホ「……え、宮永先輩、誰かに膝枕したんですか?」


咲「あ、うん……園城寺さんに…」


マホ「……」


咲「ま、マホちゃん?」


マホ「宮永先輩は、金輪際、マホと健夜さん以外に膝枕をしてはいけません」ムスッ


咲「えっ」


マホ「いけないったらいけません。ダメです、禁止です!禁止令です!」プイッ


咲「だ、大丈夫だよ?そんな、知らない人に膝枕するほど私も軽率じゃ……」


マホ「そんな事言って!園城寺さんにはしたんですよね!」


咲「ま、まあ…」



マホ「とにかく!ダメったらダメですからね」ムスッ


咲「……もしかして、ヤキモチ?」


マホ「……そーですよ、いけませんか」


マホ「只でさえ、インハイを見に来て宮永先輩に知り合いが増えて来てるんです……」


マホ「膝枕くらい、マホの特権にしてください」


マホ「宮永先輩は、マホだけの先輩なんですから……」チラ


咲「……」


咲「……可愛い」クス


マホ「えっ……/////ぁ、も、もう!!そんな甘い言葉にはもうひっかかりません!!////」


マホ「宮永先輩はいっつもマホの嬉しがる言葉を、ベストタイミングで言って有耶無耶にするんですから!!」プンスコ



咲「ふふっ、じゃあこうしよっか」


咲「膝枕はもうマホちゃん以外の人にしちゃったから……膝枕をしてナデナデされるのは、マホちゃんだけの特権」ナデナデ


咲「ね?」ニコッ


マホ「……約束、ですよ?」


咲「うん、約束ね」


マホ「先輩……」ドキドキ


咲「……マホちゃん…」








恒子『決まったぁぁぁぁ!!後半戦、東4局!!』


咲「うわわっ!!」ビクッ



恒子『千里山の清水谷竜華選手、リーチ一発ツモからの倍満が炸裂しました!!』



健夜『まるで、次にどの牌が来るのか、どのような道筋で和了るのかが分かっていた様な打ち筋でしたね』


健夜『今の一撃で、白糸台高校が初めて2位に落ちました』


恒子『これまで玉座に腰を下ろしていた白糸台高校を2位に落としたのは、千里山女子、清水谷竜華選手ですっっっ!!!』


健夜『先程から、大星淡選手が少々大人しい気もしますが……これで、後半戦も南入』


健夜『終盤戦です』


恒子『その南1局、初めの親は高鴨穏乃選手!!』



恒子『さあさあ、各校どのような戦いを見せてくれるのでしょうか!!!』




咲「そ、そういえば後半戦始まってるんだったね……マホちゃん?」


マホ「……」ボーッ


咲「マホちゃん?」ペチペチ


マホ「はっ……す、すみません先輩……ボーッとしてました…//」


マホ「宮永先輩が帰ってきた時は東2局でしたから、話している間にあれから2局ほど進んでしまいましたねっ」


咲「点数だけ見れば、大星さんはダブリーを一旦引っ込めて、様子見してる感じかな?」


マホ「はい。健夜さんも仰ってましたが、今まではとても大人しくしています」


マホ「きっと、前半の役満リザベーション相手にダブリー掛けた事で注意されたんでしょうか」


咲(休憩中に誰かが指示したか……お姉ちゃんはそういう事はしないし、多分次鋒さんだね)


マホ「それと東1局の高鴨さんの親で、高鴨さんが2回和了って、上との点差を詰めました」



マホ「親が流れたあとの東2局で、鶴田さんのリザベーション…満貫が飛んできて、大星淡さんの親が流れた所で、先輩が帰ってきました」


咲「それで、今の清水谷さんの倍満と……東3局は大星淡が安手を和了って南入か」


マホ「かなり良い勝負ですね」


咲「うん。鶴田さんは後1回、南2局に跳満があるし……気になるのは清水谷さんの、まるで園城寺さんみたいな打ち筋……」


咲(さっきの休憩中での対面で、隠れてた能力が発現したのかな……)


咲(結果、高鴨さんの敵を強くしちゃったかも……でも、高鴨さんも強い人と戦えた方が楽しいよね)




咲「それにしても、もう試合も後半戦だけど……」チラ


穏乃『……』


マホ「高鴨穏乃さんですか?」


咲「うん。そろそろ何か変化が見られれば良いんだけど……」



咲(山…それが高鴨さんの "なにか" が発動する為の鍵…)


咲「ねえマホちゃん、山って聞いて麻雀だと何を想像する?」


マホ「そーですねぇ……やっぱり、牌が積んである所、でしょうか?」


咲「だよね……でも、そんな簡単な所に影響を及ぼす力だとしたら、見つけられないハズがない…」


マホ「だとしたら、そこでは無くて別の山に影響する力ですかね?」


マホ「うーん…牌の山以外に、何かあったでしょうか?」


咲「少し、考えてみよっか」

マホ「はい」




咲「高鴨穏乃はスロースターター……山…頂上に近づく……」



マホ「山の、頂上……頂上…スロースターター…牌の山…頂上……深く…?」



咲「山の深く……山の、深い所……そして、局の頂上……終盤…」



マホ「能力は…局の終盤にしか発動しない……」




咲「……マホちゃん、そういえば特訓で大星淡をコピーして高鴨穏乃と対局した時、何か違和感があるって言ったよね?」


マホ「はい、言いました……そして、宮永先輩も嶺上で和了る時に、何かを感じたと言っていました」




咲「共通点は……」


マホ「山、ですね」




咲「全部のヒントを合わせて考えてみると……何だっけ」



マホ「高鴨穏乃さんの能力発動域は、局の終盤…前後半あれば後半戦の南場」


マホ「併せて山の深い所…そして、その能力の効力は、山の支配…内容は…」


マホ「山に関わる能力の、無効化…?」


咲「ツモ補正や配牌補正もあるかもね」


咲「でも、大体は絞れた……そして…」



マホ「今仮定した能力が本当だったら……」


咲「……」ウズッ


マホ「宮永先輩、楽しそうですね」クスクス


咲「まあ、ね。……高鴨穏乃…いつか本気でやってみたいな」


マホ「うーん……でも、マホ思うんですけど後半からしか能力が発動しないとしたら、25000点持ちの個人戦では、飛ばされて終わりそうです」


マホ「それに、無効化した所で地力で劣っていては話になりません」


咲「そうだね……でも多分、この大将卓っていう場所では、これ以上に無いくらい役立つんじゃないかな」


マホ「珍しいですね、能力無効化系なんて」


咲「まだ無効化かどうかは分からないけどね……というか、何処かでズレてる気がする」



咲「でも、確かに珍しいね。……清澄高校の原村和が、それっぽい兆候を見せてるけど」



マホ「あ、マホ知ってます!インターミドルチャンピオンですね!」


マホ「ネトマ界ではのどっちって呼ばれてて、めちゃ強らしいですよ?」


咲「……やっぱり?」


咲「その、のどっち。私が初めてネトマやった時にボコボコにされて、私にネトマのトラウマを植え付けた人だ」


マホ「マジですか」


咲「……マジです。天使みたいなアバターだよね?」


マホ「そーですそーです!」


咲(あの時の恨み、いつか晴らしてやる)



咲「そういえば、阿知賀の皆の昔の友達なんだって。原村和」


マホ「へぇ~。世間は狭いものですね」


咲「あはは、本当にね」


咲「……そういえば、清澄の大将…映像見るの忘れてたな」


マホ「何か言いましたか?」


咲「ううん、何でも」



咲「……さて、高鴨穏乃は何を見せてくれるのかな?」


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【閑話・宮永咲と……】


~インターハイ期間中、ある時~





咲「健夜さん、どうしたんです?急に近くの雀荘行こうなんて」


健夜「ちょ、ちょっとね!用事がね!」


マホ「凄く怪しいです……」


咲「理由も話さず急にホテルから連れ出されて……」


咲「これで大した事ない案件だったら、怒りますからね」


健夜「う、うん……それは大丈夫」


咲「はぁ…」


マホ「ていうか、この時間に子供が雀荘なんて入れるんですか??」


健夜「うん。貸し切ったから」


咲「は?……貸し切った?」




健夜「っと……着いたね」



マホ「まーじゃんばー……麻雀バー?」


咲「バーって、お酒飲むところ……?」


マホ「す、健夜さん、マホたちを犯罪に染めようと!?」


健夜「違うよ!?」


咲(……この感じ)



健夜「それじゃ、入ろっか」


ガチャ




健夜「お待たせしました」


「いえ、お疲れ様です」


「急な頼みを聞いてくださって、有難うございます」


マホ「あれ?アナタは……」


咲「やっぱり……」




晴絵「こんばんは、夢乃さん。それと、宮永さん」


咲「……赤土さん」


咲「……」ジロ


健夜「うっ……これはそのぉ……」アセアセ


晴絵「私から説明します」


健夜「お願いします……」



咲「ど、どうしたんですか?赤土さん」


咲「こんな雀荘何かに呼び出して……しかも、貸し切りまで…」


マホ「阿知賀の人達の事ですかー?」


晴絵「いや、今回の事は皆には伝えていないし、関係もない」


晴絵「私自身の事で、お願いがあって呼んで貰ったんだ」


咲「呼んでもらった……ですか?」


咲「それじゃあまるで、私とマホちゃんに用事がある様な……」


晴絵「半分正解で半分不正解……。私は、宮永さんに用事があるんだ」



咲「私に……?」



咲「健夜さんとの対局について、お話を聞かせてくれるとかですか?」


咲「な、なら、こんな所じゃなくてホテルでも……」


晴絵「近いが、少し違う」



マホ「……先輩に何を頼むつもりですか」ジロ


健夜「マホちゃん、今は抑えて……」


マホ「なっ……」


健夜「お願い」


マホ「……」


マホ「……はい、ごめんなさいです」



咲「意味が、分かりません……。それ以外の理由で、雀荘なんかに呼び出す理由が」


咲「……」


咲「……雀荘…?」


咲「雀荘……貸し切り…健夜さんとの対局……赤土さん自身の……」


咲「私に、頼む……」ピクッ




咲「ま、まさか……」


晴絵「あぁ、そうだ」





晴絵「宮永さん、私と対局してくれないか?」


晴絵「……本気で」




咲「な、なんでそんな……」


晴絵「とても、恥ずかしい、自分勝手な理由だ……軽蔑してくれても構わない」


晴絵「10年前……私は、小鍛冶さんに圧倒的なまでにやられた」


晴絵「それは知っていたよね」


咲「は、はい……でも!赤土さんの健夜さんへのハネ直は、それだけで価値がっ」


晴絵「負けは負けなんだ……それから、私はしばらく牌に触れられなかった」


晴絵「怖かったんだよ、小鍛冶さんが、麻雀が」


晴絵「卓に着く度に、小鍛冶さんの事を思い出した」




咲「い、嫌です。何を言われても、私は赤土さんとは打ちません」


咲「私は赤土さんを尊敬しています、これは本当にです」


咲「赤土さんとは……打ちたくありません」


健夜「咲ちゃん……」


咲「健夜さんは知ってますよね?私の想いを。知ってて……ここに連れてきたんですか」


健夜「っ……」



晴絵「話を聞いてくれ……」


咲「赤土さん…」


晴絵「麻雀を打つのがトラウマで、克服出来なかった私の前に現れたのが……」


晴絵「シズや憧、玄に宥、そして灼だった」



晴絵「皆は頑張って、努力して、諦めないで、準決勝の舞台にまで私を連れて来て……連れ戻してくれた」


咲「……」


晴絵「そして、準決勝の先へ私を連れて行くと……そう言ってくれている」


咲「その話と、私が赤土さんを相手にする事は関係が」


晴絵「でも、思い出すんだ」


晴絵「皆が準決勝の話をする度に、あの頃の記憶が蘇る……」


晴絵「そして、嫌でも重ねてしまうんだよ…あの頃の私の姿を、あの子達に……」


晴絵「怖いんだ」


晴絵「あの子達が…あの子達まで、準決勝を超えられなくて、私と同じ道を辿ってしまうんじゃないかって」



咲「……だから、そのトラウマを払拭するために、健夜さんの教え子である私と打って欲しい……って?」


咲「それなら、私と打たなくて健夜さんと打てば……」


咲「ぁ……」


晴絵「そうだよ……情けない話だ」


晴絵「小鍛冶プロと打つのは……まだ、怖いんだ……」


咲「……」


晴絵「こんな事……頼むのは間違いだとは分かってる……けど!」




晴絵「頑張っているあの子達の横で、私がこんな気持ちを抱く訳には……いかないだろ……」



咲「……」


咲「……見損ないました」スッ


健夜「咲ちゃん!」


咲「馬鹿馬鹿しい、帰ります」テクテク


健夜「待って」




咲「……待って?よく貴方がそんな口叩けますね」ジロ


健夜「ごめん……でも……」


咲「貴方が壊した人間です、貴方が治すのが筋でしょう」


咲「……マホちゃん、帰るよ」


マホ「せ、先輩……」


健夜「……」



咲「……失礼します」



健夜「……」スゥ


健夜「赤土さんの事…尊敬してるんじゃ、無かったんだ」


咲「……」ピクッ


咲「……今、なんて言いました?」


健夜「……」


咲「私が聞こえた言葉と、貴方が発した言葉が一緒なら……」




咲「……許しませんよ」



健夜「赤土さんの事、尊敬してなかったんだって言ったの。……あれ、聞こえなかったかな?」


咲「…………」フゥ


咲「貴方が一番知ってるでしょう……貴方には、話したはずです」



健夜「知ってるよ?咲ちゃんがあの時の対局を最近見たなんて、嘘」


健夜「ずっと昔、咲ちゃんが麻雀を捨てようとしていた時、捨てきれずに居た理由の一つがあの対局」


晴絵「なっ……」



咲「だったら……」


健夜「だからこそ、だよ」







咲「貴方、自分が何を言ってるのか理解して口を開いてますか?」ゴッッッッ



健夜「……」


咲「私の恩人を……私の手で潰せと言っているんですよ?」


健夜「……ほら、尊敬なんてしてない」



咲「小鍛冶健夜……あんまり怒らせないで貰えますか……」



健夜「尊敬してるなら、やる前から潰すなんて発想出ないよね?」


咲「私が赤土さんを尊敬してるのは、麻雀の能力じゃない」


咲「対局に取り組む姿勢です」


健夜「なら、尚更じゃない?」



咲「……どういう意味ですか」



健夜「咲ちゃん、貴方は赤土さんを恩人と言った」


健夜「尊敬しているとも」


咲「……はい」


健夜「その恩人で、尊敬している人が、咲ちゃんにしか頼めない事だと、頭を下げてるんだよ?」


咲「それとこれとは話が別です」


健夜「咲ちゃんさっき、見損ないましたって言ったよね」


健夜「……心の中で、思ってるんじゃない?」


健夜「目の前で自分の理想の赤土さんとは全く違う、真逆の赤土さんを見て……」


健夜「昔の赤土さんに戻ってほしいって」


咲「知った口を……!」







「まあまあ、その位にしておいた方が良いんじゃねー?」


咲「!?」


「隠れて盗み聞きなんて、はやりのする事じゃないんだけどなー☆」



咲「三尋木プロ……瑞原プロ……」



咏「ややっ、久々の再開がこんな修羅場だとは思わなかったわ~」パタパタ


はやり「健夜もとんでもない時に呼んでくれたもんだね☆」


咲「あなた方が何をしに来たのかは知りませんし、知ることも無いでしょう。私から話す事はもうありません」


咲「マホちゃん、帰ろう」


咏「やー、咲ちゃんそんなに逃げたいの?」


はやり「意外と臆病者さんなのかな☆」


咲「安い挑発ですね」






咏「なら、これでどっかな」ゴッッッッッッ


はやり「もうちょっとお話したいな☆」ゴゴゴゴゴ



咲「……小鍛冶健夜に次ぐ二大雀士って聞いてどんな物かと思ってましたけど…」




咲「この程度とか、笑わせますね」





咏「……マジっすかぁ…」タラ


はやり「いやぁ……はやり予想外☆」


咲「でも、もう良いですよ」


咲「折角、トッププロが2人も時間を割いて来たんです」


健夜「……!」


咲「私の尊敬する赤土さんはもう居ない事も分かりましたし」


晴絵「……」


咲「だったら、もう面倒臭くなっちゃいました……」


マホ「先輩!」


咲「大丈夫だよ、マホちゃん」





咲「……やりましょうか、対局を」ニコッ



――――――――――――――――――――


健夜「それじゃあ、ルールを確認するね」


健夜「咲ちゃんの要望で、普通の麻雀ではないルールです」


健夜「まず、卓につくのは咲ちゃん、赤土さん、はやりちゃん、咏ちゃんね」


咏「よろしくねん」

はやり「よろしく☆」

晴絵「……よろしく」

咲「……」



健夜「ルールは簡単、東南戦1回勝負。赤土さんは咲ちゃんのプラマイゼロを潰す事が出来れば勝ち」


健夜「25000点持ちの30000点返しだから、最終的な咲ちゃんの点数が29600~30500点なら赤土さんの負け、それ以外なら咲ちゃんの負けです」



健夜「赤土さんと咲ちゃん以外が和了った場合は、誰の点数も減らないし、2人の点数も増えません」


健夜「といっても、2人には手を抜いて貰うので和了りは極力せず、振込みも最低限避けてもらいますが」


健夜「逆の場合、つまり咲ちゃんと赤土さんがツモったり、ロンした場合、ツモの場合は3人分の点数が入りますが、他2人の点数は下がりません」


健夜「咲ちゃんから赤土さん、赤土さんから咲ちゃんへのロンは、通常通りの点数計算です。咏ちゃん、はやりちゃんへのロンは点数が動きません」


健夜「これが重要ですが、連荘はあり。しかし、+の300点は無しです。8000の1本場でも、8300点にはなりません」


健夜「それに伴い、リーチ棒の1000点も無しです」


健夜「大明槓からの責任払いはありです。その他も大会ルールと同じです」



咲「……説明が長い。プラマイゼロを潰せ、連荘の追加点とリー棒なし、私たち以外は点が減らないし増えない、2人は手を抜け。それだけで充分です」


健夜「……ごめん、咲ちゃん」


咲「プラマイゼロの事ですか。別に、気にしてません」


咲「どの道、私が故意にプラマイゼロをしようとして止められるのは貴方だけなんです」


咲「もし止める事ができれば、貴方と同じと認められて一石二鳥でしょう」


健夜(ごめんね……)



健夜「……では、始めてください」


――――――――――――――――――――


南・1局



咲「ロン、8000」


晴絵「っっ……」


晴絵 36000
咲 29400
咏 25000
はやり25000



マホ(無謀です……宮永先輩のプラマイゼロは止められない…)


マホ(プラマイゼロ圏内に入ってから、赤土さんが和了った点数を、そのまま赤土さんから直取りしてる……)


マホ(その上、2人しか点棒が動かないんですから、宮永先輩のプラマイゼロを崩せる訳がない)




健夜(咲ちゃん……ここまで……)





南2局


晴絵「ツモ!16000オール!1本場っ」


咲「カン、もう1個カン、カン」


咲「カン、ツモ、嶺上開花、四槓子」


咲「8000.16000」



南・3局



晴絵「ロン……16000…」


マホ(赤土さんの点数を調整して、倍満以外和了れないようにしてる……)



咲(これで、後は300.500を和了れば30500点で私の勝ち……)




南・4局




咲(もう、良いよ。意味が分からない)


咲(健夜さんも、赤土さんも、言ってる事が滅茶苦茶だよ)


晴絵「……」スッ


咲「それポン」



晴絵「リーチ」


咲(……私がポンした次巡にリーチ?1000点増える訳でもないのに…)


咲(もうやだ……考えるのも面倒臭い…)


咲(来た……この6pを加槓で……)



咲「……っっっ!!!」




咲(違う……違う、違う……!!何で私は今6pをポンした……!?)



咲(分かってる、嶺上開花で和了れるから……でも、違う……!!)


咲(300.500程度、嶺上開花じゃなくてもあと数巡で和了れた!!)


咲(でも、今のポンで嶺上開花以外の目が遠くなった……ッッ)


咲(私は、勝負を急ぐあまり嶺上開花に頼った……)


晴絵「……」


咲(少し河を見れば分かることだった…)



咲(この6p、赤土さんには当たらない……いや、赤土さんが捨てた牌なんだからそもそもフリテン……でも、他の2人は違う!!)


咲(ルール説明の時、他の2人には極力和了らないで貰うと言った……でも……)



咲(絶対にとは言っていない……)



咲(恐らく、この6pは三尋木プロの当たり牌……)


咲(加槓すれば槍槓を受ける…点数は減らないけど29400点……私の負け……)


咲(加槓せず普通に捨てたとしても、平和だけでも役があれば……負け…)



咲(オリを選べば、私が手替わりする前に赤土さんはツモってくる……)


咲(さっき6pをポンしなければ……ッッ)


咲(いや……違う…赤土さんは、私が嶺上開花で決めて来ると、そう読んだ)


咲(……さっきの6pは、私が鳴いたんじゃない……)


咲(赤土さんに、鳴かされた……ッッ!!)



マホ「汚いですよ……健夜さん」ギロッ


健夜「これも、必要なことなの……っっ」






咲(つまり、私の選択肢は2つ……振り込んで負けるか、オリて負けるか)


咲(まさか、最後に協力して来るなんて……)





咲(……いや…私も、玄さんに教えた事だ…)


咲(一人で勝てない相手に、一人で勝つ必要は、無い……)


咲(10年前、赤土さんは周りとの協力なんて考えず、無我夢中で、自分の力で健夜さんに挑んで、負けた)


咲(でも、この対局は……)

咲(この、対局は……?)



咲「……?」



咲(いや、違う……この違和感は……)



咲(……赤土さんは、昔のままだ……何も変わってない、私が尊敬する……あの姿勢を貫いてるんだ……)


咲(だから……だとすれば、この局面は……)



咲「……」


咲(……やっぱり、赤土さんは凄いな)


咲「……」


咲「赤土さんは……私の尊敬する、人です……」


晴絵「あぁ……ありがとう、咲」ニコ









咲「カン」


咲「……ツモ、嶺上開花……300.500」




試合結果

晴絵 35700
咲 30500
はやり 25000
咏 25000




勝者、宮永咲




――――――――――――――――――――



【宮永咲と赤土晴絵】




健夜「ほんっっっっとうに、ごめん咲ちゃん!!」ギュー


咲「鬱陶しいです、離れてください」グイグイ


健夜「やだ!離れたら絶対に私に近寄ってくれないもん!!」ギューッ


咲「さっきは……まあ怒っていましたが、健夜さんの安い挑発に乗った私も私です」


咲「……それに、昔に戻ったみたいで、少しだけ……懐かしかったですから」


健夜「さ、咲ちゃん……っっ!!」パァッ



咏「やーめっちゃ懐いてんな~小鍛冶さんが咲ちゃんに」パタパタ


はやり「はやり達、ボッコボコにやられた後なんだけどね☆」




マホ「マホは許していませんよ」


マホ「こんな事、宮永先輩に二度とさせないでください」


健夜「うぅ……ごめんねぇ……!!」シクシク


マホ「アラサーの涙に価値があるとでも?マホ、ほとほと見損ないました」


咲「まあ、マホちゃん。今回の件は、私に免じて許してあげて?」


マホ「先輩!でも……」


咲「マホちゃんは、笑ってる方が可愛いよ」


マホ「あっ……うっ…/////」


マホ「し、仕方なくですよ!?宮永先輩に免じて、仕方なく許してあげます!」プイッ



晴絵「……ありがとう、咲」


咲「いえ……こちらこそ、あの頃の…いえ、あの頃以上の赤土さんが見られて、とっても嬉しかったです」


咲「……ありがとうございました」ニコッ


健夜「でも、見破られるとは思ってなかったな」


マホ「マホ、さっきの説明だけじゃ良く理解出来なかったです……」


咲「私は、あの場面……6pを赤土さんに鳴かされて、引いて来た6pで加槓すれば三尋木プロに槍槓を貰うか、普通に切ってもロンされて、負ける」


咲「赤土さんのリーチに対してオリれば、自分の和了りが遠くなって、赤土さんに和了られて負ける」


咲「つまり、加槓で槍槓に振り込んで負けるか、オリて赤土さんが和了って負けるかの、二択を迫られた……」


咲「と、途中までは思ってた」



咲「10年前、赤土さんは他の対局者との協力なんて考えず、健夜さんに挑んで、負けた」


咲「だから、今回は他の誰かと協力して、私を倒しに来たんだなって」



咲「でも、違った」


咲「三尋木プロの捨牌は、偶然6pが当たり牌に見える様になっていただけだった」

咲「そして、赤土さんはその事に私よりも早く気付いて、それを利用して私の思考を操作した」


咏「そだねぃ…さすがに、私も2人の勝負に割って入るほど野望じゃないよ」


はやり「多分、割って入っても何も出来なかったけどね☆」




咲「赤土さんが他の人と協力している、そうやって私に思い込ませる事が、本当の狙いだったんだ」


咲「だから、私は槍槓が無い可能性に賭けて、勝負に勝った」



晴絵「一つ、良いか?」


咲「はい、何なりと」


晴絵「どうして……私が、協力はせずにあくまで1対1で勝負をすると思った?」


咲「それは簡単です」


咲「阿知賀の皆の為に、トラウマを払拭したい」


咲「あんなに必死になっていた赤土さんだからこそ、自分一人の力で……」


咲「健夜さんの時に出来なかった事を、そのまま私にぶつけようとする」


咲「そう、確信したからです」ニコッ




晴絵「……そうか」



晴絵「……ありがとう」ギュッ




咲「うわわっ!?/////」



咲「あ、赤土さん………その、恥ずかしいです…////」


咏「ひゅーひゅー!!」


はやり「もっとやれー☆」




マホ「なーっ!?ちょ、先輩に負けた癖に何してるんですか!?」


健夜「だ、ダメだよ咲ちゃん!!憧れが恋心に変わるなんて、そんなの私認めないよ!!」


晴絵「咲、耳貸してくれるか?」コソッ


咲「は、はいっ……////」


晴絵「咲は、私の事を2番目に尊敬してるって言ったな」コソコソ


咲「お、覚えてたんですかそんな事……」



晴絵「一番は、もしかして……」


晴絵「……」ボソッ



咲「~~~~~ッッッ/////」カァ


咲「な、内緒ですからね!!/////」


晴絵「ははっ、分かってる分かってる」クスクス



マホ「ちょっと!!今、何を耳打ちしたんですかー!?」


健夜「さ、咲ちゃんが誑かされてる!!」


晴絵「2人の秘密、だよな?」


咲「は、はい……/////」




健夜「咲ちゃんー!?」


マホ「先輩ー!!!!」


咏「っしゃあ!!そんじゃ、今日は朝まで麻雀大会と洒落こもうかねぃ!!」


はやり「ほら、咲ちゃん入って☆さっきやられた分、倍返しするから☆」


咲「私だって、挑発された恨みはまだ消えてませんよ?」


咲「健夜さん以下のアラサーが、私に勝てると思わないでください」ニコッ


はやり「潰す★」




健夜「咲ちゃん、中学生の時みたいになってる……懐かしいなぁ」クスクス


マホ「確かに、あんな感じの時もありましたねー」





晴絵「あの、小鍛冶さん」


健夜「ん、なんですか?」

晴絵「……私と、対局を」




穏乃「あっー!!赤土さん、やっぱりここにいた!!」

玄「こ、小鍛冶プロに咲ちゃん!?マホちゃんも!」

宥「三尋木プロと瑞原プロもいる……」




咲「あっれー?勝っちゃいましたー。潰すんじゃなかったでしたっけ?牌のお姉さん(笑)」


はやり「もっかい!!マスターお酒!!」


咏「うっはー!燃えてきた!!」




憧「なんであそこ、ドス黒いオーラ出てんの!?」

灼「ハルちゃん……」



晴絵「あ、アンタたち!!?なんで!」


灼「ハルちゃんが全然帰ってこないから、その辺で聞き込みしてた」


穏乃「そうしたら、トシさん……?っていう人が、ここにいるって教えてくれて!」



晴絵「熊倉さん……」


マホ「マホは今最高に機嫌が悪いです……誰でもいいから、卓に付いてください」グイグイ


玄「ちょ、引っ張らないで!?」ズルズル

憧「私、まだ死にたくないんだけど!?」ズルズル

宥「寒いよぉ……」プルプル




咲「はい、また私の勝ちですね」


はやり「もっかい!!マスター、焼酎!!」


咏「次は負けないよん!!」



健夜「咏ちゃん、私と交代」


咏「そんなー!!」


咲「うわ、平均年齢一気に上がりましたね」


健夜「余計なお世話だよ!!」


はやり 「潰す★」



穏乃「うおーー!!面白そう!私も入れてください!!」


玄「な、なにこれ!?」



咲「ねえ、赤土さん?」


晴絵「……ん?」


咲「……いえ、何でもありません!」

咲「私と、麻雀を打ちましょうか」ニコッ


晴絵「……あぁ、存分に」




閑話・宮永咲と赤土晴絵、カン

こちらも、書いてみたかったお話でした。
最後の方は、まあ楽しい感じになればいいかなと思いましたが、雑感出てましたかね。

一つ聞きたくて、清澄の大将の候補が、原作の咲さん(こちらは絡む場合大将と表記)か、みなもちゃんとの二択になっているんですが、絡ませるならどちらが良いのでしょう……

みなもちゃんは原作で詳しく出ていないため、半オリキャラみたいになるかもですが……

レス感謝です。
少し考えて、書いていこうと思います。大将戦後、まずは、咲健夜マホや、Bブロックの選手達、普通の長野勢との絡みを書きたいと思っていますので、何卒ですっ

沢山のレス感謝です。
当初は、咲さんも個人戦でインハイに出場して貰うのも良いかなと思っていましたが、闘牌が微塵も書けないので諦めた結果です……

とりあえず、大将戦の終わりまで投下しますね


【対局室】




穏乃「……」タン



竜華(怜、どうや?)


トキちゃん(……)フリフリ


竜華(って事は、誰かが和了る言うことやな……親やし、穏乃ちゃんか…?)


トキちゃん(りゅーか、ウチのストックは今ので0や…)


竜華(そっか。助かったで、怜。後はウチが、楽しんで勝つわ)


トキちゃん(ほなな~)フリフリ



竜華(……よし、やったるで!)ゴッッッ




姫子(さっきの清水谷の倍満で、うちは3位転落か……)


姫子(大星淡……随分と大人しいと…何かするつもりか?)



淡「……」

淡(……気に入らない)


淡(千里山も、新道寺も、阿知賀も)


淡(どいつもこいつも……格下のはず…なのに
なんで私がこんなに苦戦してる訳?)


『自分の身の程を見誤ると、足元を掬われますよ』



淡(っっっ!!!)



淡(何で今更、サキの言葉なんて……)



淡(……私は、負けない。負けるわけには、行かない)


淡(負けるわけが、無い!!!!)


淡「ツモ!!チートイ、ドラドラ。2000.4000」




竜華(こっちか!!)


姫子(今度は普通に和了ってきた……)



穏乃「……」





姫子(けど、次はぶちょーが鍵をくれた局……)


姫子(ありがとうございます、ぶちょー!)


姫子(おいでませ、跳満!!)ゴッッッッッッ




穏乃「……」ピクッ


穏乃「……」




穏乃「……」ボッ



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【白糸台高校・控え室】



照「……!」


菫「照、どうかしたか?」


照「……いや…何でもない」


照(今の感覚……阿知賀?)



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【どこかの観戦場所】




衣「おおっ!これは中々!」


「衣、楽しそうだねー?」


衣「あぁ。お前達の応援に来た以上の収穫だ!衣の遊び相手を沢山見つけたからな!」


「ふーん…私はそういうの興味無いから分かんないや」


「……ねえ、もう一回聞いてもイイ?昼に会った、宮永咲っていう人の話」


衣「良いが、どうしてそんなに気にしているのだ?」


「それは、秘密ー♪けど、その宮永咲が私の知ってる宮永咲だったら、私が麻雀を続けてる絶対の理由が叶うのだ!」



衣「ふーん…」






「………早く会いたいよ、咲…」





【実況室】



健夜(この感じ……)


健夜(高鴨さん?)


健夜(やっぱり、咲ちゃんの予想した通り…)


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【どこかの控え室】


小蒔「んっ……咲ちゃん……?」パチ


初美「あれ、姫様お目覚めですかー?」


霞「ふふっ、おはよう小蒔ちゃん」


小蒔「……少し、違いますね…」ウトウト


小蒔「……」スヤスヤ


初美「お、起きたと思ったらまた寝ましたよー!?」



霞「あらあら…おやすみ、小蒔ちゃん」クスクス




【咲・観戦場所】



咲「これは……」


マホ「高鴨穏乃さん……」


咲「リザベーションは発動している。という事は、高鴨穏乃の能力は相手の能力無効化じゃない」


咲「能力全てを無効化する訳じゃなくて……」


マホ「ピンポイントで潰す、ですか」


咲「うん。だから、私の嶺上開花もカンは出来たし、大星淡のコピーでもダブリーは出来た」


咲「それを考えると、高鴨穏乃の能力で無効化されるのは、その先」





咲(まるで、この準決勝大将戦に進むのが分かっていて授けられたみたいな能力だね)クス




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【対局室】



姫子(……これ…何…?)


姫子(ぶちょーを、とても遠くに感じる……)



竜華(なんや…?鶴田姫子、随分と和了るのが遅い…)


淡(そんな悠長に時間上げるほど、私も優しくないよ!!)


淡「リーチ!!」


竜華(コイツ、またか!!)




淡(さっきは役満を止められなかったけど、今度こそ……!!)



姫子(ぶちょー……!!!)


姫子(……っっ!!!掴んだっ!!)




姫子「ツモ……3000.6000!!!」ゴッッッッッッ



淡(結局和了られた……リーチは失敗だったか)


淡(けど、今ので辛うじてトップになった……このまま行けば、勝てる)




穏乃「ツモ、4000.8000」


竜華(なっ!?6巡で!?)


姫子(高鴨穏乃…何か様子が…)


淡(高鴨穏乃……ッッ!!)



点数状況

阿知賀高校 120500
白糸台高校 100500
千里山女子 90000
新道寺女子 89000






淡(この点数なら何でも良いから和了れば二位抜けできる……)


淡「……」



淡(……私が二位狙い?)



淡「……」


淡(……そんな事、する訳が、ない!!)




淡「ダブルリーチ」ゴゴゴコゴゴゴ


姫子(大星淡っっ、よりによってオーラスで来るか!!)



竜華(このプレッシャー……ッッ)




穏乃「……」ボボ



淡(私が二位抜けなんて、そんな負けみたいな事、許す訳が無い!!!)



淡「カン!!」



淡(阿知賀を潰して、私達が1位で勝つ!!)




淡「……ふふ、高鴨穏乃…良くやった方だけど、残念だったね」



淡「ツモ、3000.ろくせ」


穏乃「……ドラ、捲らないんですか?」




淡「……あぁ…ごめんね、忘れてたよ」


淡「けど、どうせ私の勝ち……」



淡「……な…に…?」





姫子「ドラが……」


竜華「乗ってへん……?」



淡「高鴨、穏乃……ッッ!!」





穏乃「そこはもう、あなたのテリトリーじゃない」




恒子『試合終了ぉぉぉぉぉぉ!!!!』


恒子『この結果を、果たして誰が想像したでしょうか!!!!』


恒子『準Aブロック決勝、大将戦を制したのは、10年振りにインターハイ出場を果たした、奈良県代表……』


恒子『阿知賀女子学院だぁぁぁぁぁぁ!!!!』



恒子『2位通過は何と、白糸台高校!!!!阿知賀女子学院が、下克上を果たしました!!!』


健夜『清水谷選手と鶴田選手の手も、逆転出来る手を聴牌していましたね』


健夜『しかし、結果的に1位通過したのは阿知賀女子学院、高鴨選手です』


恒子『つまり……』


健夜『はい。勝利の女神は、二度彼女に微笑みました』



恒子『Aブロック準決勝を通過したのは、阿知賀女子学院と白糸台高校だぁぁぁぁ!!!!』




~最終点数結果~

阿知賀高校 119500
白糸台高校 103500
千里山女子 89000
新道寺女子 88000





~阿知賀編・カン~

大将戦は原作、アニメを想像して頂ければ……
どうにも書き悩んでいたので、結構雑になっちゃいました。

ともあれ、一先ず阿知賀編(Aグループ編)はお終いです。軽い閑話を挟んで、咲さん達にはBグループの観戦に行って貰おうかと。
書き溜めがゼロなので、更新速度は遅めです……

そういえば、実写化するんですね。先に準決勝をアニメ化して欲しいのですが……っ!

【閑話・宮永咲と……】


~麻雀バー~




憧「まだ準決勝を抜けたってだけなのに、こんな所貸切にしてお祝いなんて…」アキレ


穏乃「憧!憧!これ、何か変な味するオレンジジュース!」キャーキャー


憧「ちょっ、シズ!それお酒!誰から貰ったのよ!?」


咏「およ、呼んだー?」


はやり「一応ノンアルコールだぞ☆」


憧「なんで2人が居るのとか、ノンアルコールでも飲ませるなとか、突っ込み所多すぎ!!」


健夜「あはは…今日の事話したら、2人も来たいーって言い出してね」クス



玄「お2人だけじゃなくて、戒能プロや野依プロも居たような…」


良子「呼びましたか?」ヒョコッ


玄「突然!!」ビクッ


宥「お料理温かくて美味しい~」ポカポカ


灼「なんか、思ってたお祝いの席と違う……」


晴絵「まあまあ灼。楽しいから良いんじゃないか?」


灼「……そうだね、ハルちゃん」ニコッ



穏乃「な、なんか酔ってきた気がする……!」


憧「いやいやいや、アルコール入ってないからそれ」


咏「あっれー?私の酒、なくなってんだけどー」


はやり「はややっ、もしかして高鴨さんが飲んだのって……☆」


憧「嘘でしょ!?ちょ、シズ!」


穏乃「うにゃぁ……」ポケー


はやり「あはは☆」


健夜「ちょっと、未成年にお酒飲ませたらダメだよ!?」



良子「まあまあ、何事も経験ですから……さっ、小鍛冶さんもどうぞ」つ お酒


健夜「あ、ありがとう…」ゴク


健夜「美味しいね、これ」


良子「ちなみに、アルコール度数見てください」


健夜「えっ……?な、なにこれ!?度数高っ!!」

健夜「良子ちゃん、なんてもの飲ませてくれるの!?」


玄「お姉ちゃん、楽しいね」ニコッ


宥「うんっ、とってもね~」ポカポカ


_______________
_______________



【少し外れたカウンター席】





咲「……」フゥ


咲「……」ボーッ


「……隣!良いかな!」プンスコ


咲「野依プロ……」




理沙「こんばんはっ!」プンスコ


咲「こんばんは。……良いですけど、皆の所には行かなくていいんですか?」


理沙「大丈夫!私、静かな方が好きだから!」プンプン


咲「気が合いますね、私もです」ニコッ



理沙「じゃ、邪魔だったかな!」


咲「いえ、とんでもないですよ」


理沙「良かった!」プンプン


理沙「……こ、これ…!」つ ユビサシ


咲「はい?」


理沙「た、頼んで貰っても良いかな…!」プンスコ


咲「あ、はい。大丈夫ですよ」



咲「すみません、これ一つお願いします」


店員「かしこまりました」ニコ


理沙「ありがとう!私、頼むの苦手で!」プンスコ


咲「いえいえ」クス



咲「……」ホゥ


理沙「……」フゥ


理沙「一緒にいた女の子!」プンスコ


咲「マホちゃんの事ですか?」


理沙「その子!寝てるね!」プンスコ


マホ「んぅ…」スヤスヤ


咲「はい。皆の所へ行ったら?って言ったんですけどね……私の隣にいるって聞かなくて」クスクス


理沙「……なるほど!好かれてるんだね!」プンスコ


咲「なら……嬉しいんですけどね」ニコ


理沙「……きっとそう!」プンスコ


店員「お待たせ致しました」スッ


理沙「っっっ!!」アセアセ


咲「有難うございます」


店員「またご注文ありましたら、何なりと」ペコ


咲「……」ニコッ


理沙「あ、ありがとう!」プンスコ


咲「いえいえ」ニコリ


理沙「……」ゴクゴク


理沙「美味しい……!」


咲「それは良かった」クス




咲「……」ホゥ


理沙「……」ゴク


咲「そういえば、Bブロックの解説は野依プロもやってらっしゃるんですよね」


理沙「やってる!明日の準決勝もやる予定!」プンスコ


咲「私、詳しく見てないので知りたいんですけど、清澄高校って知ってますか?」


理沙「清澄……2回戦で負けちゃった所かな!」


咲「そうですそうです。その高校の大将……」


咲「いえ、その高校ってどんな感じでしたか?」


理沙「とても魅力的だった!大将の子の調子が悪く無ければ、結果は分からなかったかな!」プンスコ


咲「……」


理沙「清澄高校がどうかしたの!」プンプン



咲「いえ、何でもありません。ありがとうございます」


理沙「……」


理沙「そっか!」プンスコ


咲「……」


理沙「……」ゴク


咲「……」フゥ


マホ「ふふ…せんばぁい……マホはもう…我慢できません……」ムニャムニャ


咲「マホちゃん……夢の中で何を……」


理沙「……」クス



咲「……可愛らしい笑顔ですね」



理沙「!!!!み、見てた!」プンスコ


咲「ふふっ、どうでしょう?」クスクス


理沙「は、恥ずかしい!/////」テレプンスコ


咲「あはは」ゴク


理沙「……/////」ゴク


理沙「!!」


理沙「……ちょっとお手洗い!」プンスコ


咲「はい、行ってらっしゃいです」




咲「……ふぅ」ゴク


咲「……」



玄「咲ちゃんっ」


咲「……今度は玄さんの番ですか」


玄「き、気付いてたの?」


咲「まあ、はい…野依プロは玄さんに気を使って席を外したんでしょう」


咲「野依プロ、お手洗いって言って席立ったのに、真逆に進んでいきましたよ」


玄「あ、あはは……」


咲「……」


玄「……」チラ


咲「……何です?」


玄「ううん、咲ちゃんってカッコイイなって」


咲「……素直に喜べませんね」



玄「あ、可愛いの方が嬉しかったり?」


咲「違います。玄さんに言われても嬉しくないという事です」


玄「想像の遥か上を行く酷さだった!?」


咲「……」


咲「よく鷺森さんの調子を戻しましたね」


玄「えっ?」


咲「阿知賀の決勝進出に大きく貢献したのは玄さんです」


咲「自分に自身を持っても良いと、分かりましたか?」



玄「きゅ、急に真面目な話になるんだね」


咲「で、どうなんですか」


玄「……うん。少しは自身、ついたかな」


咲「……そうですか」


玄「でも、私が先鋒戦を戦い抜けたり、灼ちゃんを元気付けたからってだけの理由じゃ、無いんだよ?」


咲「??よく分かりません」


玄「……えっと、ね」


玄「その、咲ちゃんが、あの時……先鋒戦の後に……褒めてくれて、励ましてくれたから……」チラ


玄「私は自分の仕事をしたって、言ってくれたから……自身が付いた、んだよ…?」


咲「……」



玄「だから、ありがとうっ咲ちゃん」ニコッ


咲「……」


咲「……決勝に、私はいませんよ」


玄「っっ」


咲「この意味、分かりますね?玄さん」


玄「……うん、分かってる。大丈夫だよ」


玄「咲ちゃんに教わったこと、忘れないから」


咲「……信じますよ?」


玄「でも、泣きたくなったら……」チラ


咲「……その時は、特別です」


玄「うんっ……ありがとうございました、咲ちゃん」ニコッ



_______________
_______________




はやり「ささっ、咲ちゃん☆」グイグイ


咏「改めて乾杯の挨拶頼むよん」


咲「な、何で私が……」


理沙「咲ちゃん!頑張って!」プンスコ


穏乃「可愛いよ咲ー!!」


憧「ちょ、シズ一口で酔いすぎでしょ!?」


灼「咲がするのが妥当だと思」


宥「そうだねぇ~」ポカポカ


晴絵「決勝進出の立役者って言っても良いくらいだからな」


良子「詳しくは知りませんがMVP、ですね」



健夜「咲ちゃん、頑張ってっ!」


マホ「んぅ……寝起きでよく分かりませんけど……頑張ってくださいですー……」


咲「健夜さん、マホちゃんまで……」ハァ


はやり「緊張しちゃって恥ずかしいのかな?☆」


咏「恥ずかしくて逃げちゃいたいんなら、お姉さんが変わってあげるよん?」


咲「……別に、そういう訳では」


はやり「よし☆なら、乾杯の音頭よろしく☆」


咲「あっ」


咏「ちょろい所も可愛いねぃ」クスクス


咲(また安い挑発に乗っちゃったよ……)


咲「……まあ、良いですかね」


咲「……ふぅ」




咲「……皆さん、まずは決勝戦進出おめでとうございます」



阿知賀「「「ありがとー!!」」」



咲「……最初に皆さんを見た時、私は思いました」


咲「何故こんなに弱いチームがインターハイに出ていて、2回戦を突破出来たんだろうって」


憧「な、中々言うわね……」


灼「咲らしい……」


咲「ですが、私のそんな感想とは裏腹に、阿知賀の皆さんは決勝進出まで成し遂げました」


咲「私やマホちゃん、健夜さんの協力も……少しは影響しているでしょう」



咲「ですが、それを活かし、自分たちで考え、行動し、実践し、努力して」


咲「結果を出して見せたのは、誰でもない阿知賀の皆さんです」



玄「咲ちゃん……」ジワッ


宥「やっぱり、温かい子だね……」



咲「私も……ほんの少し」


咲「自分が関わった皆さんがしっかりと成果を出せて……その…」


咲「嬉しく、思います……」ボソッ


穏乃「咲……!!」パァッ


咲「……ですが、もう準決勝は終わり」


咲「私の出しゃばっていい舞台では無くなりました」



咲「阿知賀の皆さんが、決勝戦をどのように戦い切ってみせるのか」


咲「阿知賀の協力者では無い」


咲「宮永咲として、期待しています」





玄「……うんっ、咲ちゃん…見ててね!」


宥「咲ちゃんに期待されてるなんて、負けられないね~」


憧「宮永咲としてって所も、結構嬉しいかも」


灼「咲の期待も乗せて、決勝を戦い切ってみせる」


穏乃「ありがとう、咲」






咲「……それでは、皆さん」


咲「準決勝の突破、そして決勝に」スッ



咲「乾杯!」




「「「「「乾杯ーーーーー!!!!!」」」」」





閑話・宮永咲と阿知賀女子、カン


これにて、阿知賀編は終了になります。

Bブロック編は、大会の内容などではなく、咲×誰かの絡みを重点を置いて書いていこう思います

少し考えましたが、阿知賀編は終わり、とりあえず一息付いたので、このスレはキリの良いここで終わります。
書き溜めが無いと続けられない性格なので、また書き溜めてから、Bブロック編のスレを建てようと思います。

一先ず、お付き合い頂きありがとうございました!

~Bブロック編・予告~




咲「……あの、先程から跡を付けてきて……何か私に用事ですか?」


「なっ!?わ、私が見えるっすか……」


咲「いえ、見えません。今のはハッタリ」


咲「気配を感じたので適当に声をかけてみただけです」


「なっ……」


咲「で、どんな用でしようか?」


「そ、それはそのっすね……」




【跡をつける謎の人物!】



「おっ?アンタさん、どっかで見た顔やな」


咲「いえ、人違いだと思います」


「そや!たこ焼き食べて観戦しとった子やん!」


咲「アイスなんですけど……」


「あれ?そやっけ?言われてみれば、たこ焼きアイス食べとった気もするな」


咲「いや……」


「突っ込むところやで、今の」


咲(面倒くさい……)


【再会!】



咲「あれ……見たことある顔って思ったら……」


「あら?……咲さんではないですか!」


「サキサンって何?食べ物?」


「いや、違うでしょウ……そこの少女の名前だと思いマス」


「何だ、知り合いか?」


「はい!中学の頃、お母さんの研究で茨城に少し滞在していて……その頃に少し」


咲「久しぶりだね、明ちゃん」




【またまた再会!】






咲「これを着ろって……メイド服…?」


「そそっ!お嬢さん似合いそうだし!」


「先輩……見知らぬ方にそういう事を頼むのは…」


「でもでも、素敵に似合うと思いますよ!」


咲(何なのこの人たち……)




【謎のコスプレ集団!】





咲「……私、読書してるの見えませんか?……あぁ、そういえば見えないんでしたね」


「……ふふっ、久々に聞くと良いものね。咲のツンツンも」


「久しぶりね、咲。元気だったかしら?」


咲「貴方が残した置き土産のおかげで、貴方みたいな中学生活は送らずに済みましたよ」




咲「……先輩」





【先輩と後輩】




そして……



咲「……久しぶりだね」


「うん、本当に……」


「会いたかった、咲」


咲「急に居なくなっちゃって、ごめんね」


咲「でも、麻雀を続けてるなんて、思ってなかったな」


「一時期は……止めた」


「でも……咲に会うために、また頑張ったよ」ニコッ



「大好き、咲」




【謎の幼馴染み登場】





次回、咲-Saki-観戦編~said B~

(本編は予告と異なる場合があります)

沢山のレス、感想などをありがとうございました。
とても励みになりました。

次スレは、出来るだけ早く建てようと思いますので、その時は何卒ですっ(ペッコリン)

書き溜めてからと言いましたが、次スレを建ててしまいました。
まったり更新していきますので、よろしくお願いします。
健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473073727/)

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