【咲-saki-】「ありとあらゆる花々は」【安価】 (89)

照「おはよう咲」

咲「……?」

照「ごめんごめん、私は宮永照。あなたのお姉ちゃんだよ」

咲「照…お姉ちゃん?」

照「そう。あなたは宮永咲。これからいくつか質問するから、答えてね」

咲「うん…」

照「まずあなたが好きな麻雀の役を教えて?」

咲「>>3



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うんこ

照「へえ…タンヤオね…」

咲「お、おかしいかな?」

照「全然。じゃあ次。三色同順と三色同刻、三暗刻と三槓子。四つの中から選ぶとしたら?」

咲「>>6

同順

照「三色同順ね…」

咲「うん…」

照「じゃあ次いくよ。他家からリーチがかかった。もし鳴くとしたらあなたの副露は和了に向かう?それとも邪魔をする?」

咲「えっと…>>8

邪魔

照「ふーん…」

咲「……お姉ちゃん?」

照「何?」

咲「これ、全部麻雀のことだよね」

照「そうだよ」

咲「いつまで続くの?」

照「次で最後。もう一つ聞かせてね」

咲「うん…」

照「あなたは聴牌している。対面が和了牌を切る。だけど和了したら自分が殺される。あなたは和了宣言をする?」

咲「>>12

しない

照「うん…そうだよね。それじゃあ質問は終わり」

咲「疲れた…」

照「そうだね。今はゆっくり寝るといいよ」

咲「どこいくの?」

照「またいつか会おうね。咲」

咲「…お姉ちゃん?」

咲が目を覚ましたのは冷たい道路の上だった。

空から降る雨が容赦なく倒れた咲の身体を打っていた。

状況を把握できない咲は助けを呼ぼうとする。

声は出ず、息だけが吐き出された。

そこで咲は再び意識を失う。

やがて一人の女性が彼女を見つけた。

女性はすぐに助けを呼び、やがて現れた黒塗りの高級車に咲を投げ、そして車は走り去っていった。

咲「ん…」

智葉「目が覚めたか」

咲「ここは…」

智葉「お前が道端で倒れていた。勝手だが助けさせてもらったよ」

咲「あ、ありがとうございます」

智葉「お前名前は?」

咲「宮永…咲…」

智葉「なに?」

咲「だったと思います」

智葉「記憶がないのか?」

咲「はい…」

智葉「……じゃあなんで倒れていたかも」

咲「わかりません…」

智葉「まいったな…」

咲「あなたは?」

智葉「私は辻垣内智葉。実は最近ここら辺で不審な事件が多くてな。お前もそれに関わっているのかと思ったが」

咲「そうなんですか…」

智葉「しかし困ったな。身元も知り合いも分からないか?」

咲「すみません…」

智葉「……」

咲「……」

智葉「しばらくウチに泊まるか?」

咲「え!?」

智葉「部屋ならいくらでもある。記憶が戻るまで使っていいぞ」

咲「いいんですか?」

智葉「ああ」

智葉「飯だ」

咲「ありがとうございます」

智葉「一緒に食べさせてもらうよ」

咲「はい…智葉さんって優しい人ですね」

智葉「…そうかい?」

咲「こんな私に親切にしてくれるなんて」

智葉「そうだな」

咲「はい…」

智葉「……」

咲「……」

智葉「この後、ちょっと付き合って欲しいんだがいいか?」

咲「は、はい!」

咲「あの…」

智葉「私と半荘打ってもらう」

咲「麻雀…」

智葉「ルールくらいは知ってるだろ?」

咲「はい」

智葉「おい、入れ」

黒服「へい」

咲「この人達は…」

智葉「使用人みたいなもんだ」

黒服「使用人って…お嬢…」

咲(智葉さんってお金持ちなんだなあ)

東一局

智葉「ロン、6400」

黒服A「あいた」

東二局

智葉「ツモ2000・4000」

東三局

流局

智葉「テンパイ」

咲「テンパイです」

東四局

智葉(さっきのテンパイはただの形聴だった。そろそろ動いてきてもいいはずだが…おっと5-8m待ちの聴牌だ)

智葉「リーチ」打4m

咲「ポン」打3m

智葉(来たか?)


智葉「テンパイ」

咲「ノーテンです」

智葉(結局流局か…)

一本場

智葉(思い過ごしだったか)

咲「リーチです」

智葉「ダブリー?」

咲「はい」

智葉(こっちもイーシャンテンか)打8p

咲「ロン、ダブリー一発断么三色。12000です」

智葉「あ、ああ」

智葉(油断…したな)

南一局

咲「ツモ、4000オールです」

智葉(いや…これは…!)


咲「ロン、12000です」

黒服A「うっ」

咲「終わりですね」

智葉「お疲れ。もういいよ」

咲「あ、はい」

智葉「どうだった?」

黒服C「はい、お嬢の期待に添えられるかと」

智葉「私のリーチに手が進まない鳴き、そして私の待ちを潰した…か」

黒服C「どうです?」

智葉「見ればわかるだろ。私は負けた」

黒服C「それじゃあ…」

智葉「次の代打ちだ」

今日はここまで
続きは明日の夜に

咲「代打ち…ですか?」

智葉「そうだ。薄々感づいてるかもしれないがウチはいわゆるヤクザでな、近頃卓が立つんだ」

咲「や、ヤクザ…」

智葉「心配することはない。負けてもお前に危害は加えさせない」

咲「え?」

智葉「ただその卓に座って、お前の麻雀を打ってくれ」

咲「そんなこと、急に言われても…」

智葉「恩に着せることになるが、恥を承知で頼む。この通りだ」

咲「わかり…ました」

智葉「ありがとう。礼はする。何でも言ってくれ」

不安はあったものの、智葉を信用していた咲は断ることをしなかった。

勝負の時は一週間後。

場所は都内の料亭、咲にとっては意識を取り戻して以来初めての外出だった。

ルールは事前に説明された。

30000持ちスタートのサシウマ。

どちらかの点棒がハコ下を割らない限り対局は続き、先に三戦を先取した側が勝利となる。

そしてカンによる新ドラや裏ドラが無いことからこの試合は長引くことになると智葉は予測した。

対局日の前夜、咲は不思議と落ち着いていた。

月の光が照る縁側に智葉が座っていたのを見つけた。

咲「智葉さん」

智葉「咲か」

咲「寝ないんですか?」

智葉「お前は不安じゃないのか?」

咲「不安ですよ」

智葉「私は月の見える日にはこうしてその光を浴びるんだ。そうすると抱えた不安も紛れる気がする」

咲「へえ」

智葉「明日の夜なら満月が見えれたのだがな」

咲「ちょっとだけ欠けちゃってますね」

智葉「記憶はまだ戻らないか?」

咲「はい」

智葉「……」

咲「ふあ…」

智葉「もう寝なさい。明日は期待しているぞ」

咲「わかりました。おやすみなさい」

智葉「ああ、おやすみ」

目覚めた咲はシャワーを浴び、食事を済ませた。

そして組の門に停められた車に智葉と乗り込む。

咲「そういえば。対戦相手はどんな人なんですか?」

智葉「お互いに隠したままだ。どんなのが来てもきっとお前なら大丈夫だ」

咲「そんな…」

智葉「なぜだかな、大丈夫な気がするんだ」

咲「…はい!」

車のエンジンが止まり、到着を知らせる。

智葉を筆頭に辻垣内組が勝負の舞台に降り立った。

咲「わ、雀卓」

智葉「当然だ。麻雀をするんだからな」

咲「誰もいませんね」

智葉「ああ」

そう言った直後、廊下を駆ける足音が聞こえた。

「うぬが今宵の相手か?」

咲「へ?」

衣「天江衣だ、楽しいひと時にしよう!」

咲「ええ~!?」

咲の目の前には子供以外には形容し難い者が立ち、腕を組んでいた。

これでいいのか、と智葉に聞こうとしたが、智葉の顔は青ざめていた。

智葉「最悪だ…」

智葉がそう静かに呟いたのを咲は聞いた。

今日はここまで
続きはまた明日の夜に

乙っす
ちなみに安価はまたあるんだろうか?

>>37
これからもちょくちょく挟んで行こうとは思うんですが麻雀打ってる時は安価なしでいきたいと考えてます
ごめんなさい


智葉「奴は天江衣。日本の麻雀界でもその強さは五指に入る」

咲「あの子が…」

智葉「私も一度だけ戦ったことがあるが…ダメだったよ」

咲「……」

智葉「奴は海底で頻繁に和了をし、更に他家の手牌をイーシャンテンに留めることができる」

咲「海底…」

智葉「防御も上手く、素の火力も高い。非の打ち所がない雀士だ」

咲「……」

智葉「奴に勝つには…支配を上回るしか…」

絶望する智葉の心とは裏腹に咲はあくまで冷静だった。

衣の身体が小さいことからくる安心ではない。

だがそれは咲には説明できない、不明瞭なもの。

衣「おい、衣は名乗ったぞ。其方も名乗るがよい」

返事に一瞬詰まった咲は、一度呼吸を整えて言った。

咲「私は…>>41

咲or宮永or宮永咲

宮永

咲「宮永って言います」

衣「宮永か…ふむ」

咲「衣…ちゃん?」

衣「ちゃんって呼ぶな!衣は20だぞ!お姉さんなんだぞ!」

咲「ご、ごめんなさい!」

菫「天江、そろそろ静かにしてくれ」

衣「む」

智葉「弘世…」

菫「騒々しい挨拶になってしまったな。辻垣内」

咲「この人は…」

智葉「天江衣の雇い主だ」

菫「宮永…と言ったな」

咲「はい」

菫「少しは楽しませてくれよ」

衣「さて宮永よ」

咲「ん?」

衣「この対局、衣は辻垣内智葉との対局を予想していた。何故か理解できるか?」

咲「いえ」

衣「辻垣内智葉より強い麻雀打ちなど探せど見つかるまいと踏んでいたからだ」

咲「……」

衣「衣は強者と打てることを期待していた。だから、闕望させるなよ」

咲はその時、対面から浴びる痛いほどの敵意を通して、漸く理解した。

自分は現在、勝負の世界に立っていることを。

衣「ツモ、海底撈月」

一回戦は衣の一方的な展開で終わった。

黒服A「やはり天江じゃ相手が悪いか…」

智葉「……」

黒服A「お嬢、今からでも代わった方が」

智葉「おたおたするな。咲は一度も振り込んでないだろ」

黒服A「そうですけど…」

智葉(問題はそこだ。ツモだけで咲を飛ばす程の火力。…くそ)

咲(……)

衣(この程度か…)

菫「……」

二回戦

衣「リーチ」

咲「チー」

衣「千五百秋振りに声を聞いた気がするな」

一発消しの鳴きだった。

だが衣は止まらない。

衣「洒落臭い!ツモ!」

天江衣のハネ満ツモ。

この時、衣は既に己の和了に違和感を感じていた。

違和感の正体に気付いたのは次の局であった。

衣「リーチ!」

智葉(ラスヅモの一巡前にリーチ、間違いない…海底に絶対の自信があるんだ)

咲「カン」

智葉(大民槓!?その手があったか!)

咲はチラリと卓に目をやった。

そして。

衣「ロン…!」

反射的に倒してしまった手牌。

この時衣はすぐに理解した。

衣「リーチチートイ…3200…」

己の打点が下がっていっている。

大明槓を許してしまったこと、海底を逃してしまったこと。

全てを悪い方向へと思い込んでしまった衣。

そのダメージは徐々に表れ始めた。

咲「ポン」

衣(衣のツモを喰い取ろうとしているのか!?)

衣「ポン!」

衣手牌
22234m567p68s〈777s〉ポン

咲の鳴きに手拍子で合わせてしまったポン。

だが次巡咲は6sツモ切り。

衣(動いたのは失敗だったか!)

咲「ツモ、タンヤオのみ」

反撃の狼煙は、ゆっくりと舞い上がっていた。

南2局
ドラ8p

12巡目

衣(どういうことだ…衣の支配力が及んでいない?)

咲「チー」打8p

咲は2pをチーして234の面子を作る。

衣(バカな!奴の手牌は既に聴牌していたはず!衣の勘が鈍っているのか!?)

咲の河
3m6m3s9s南北1s4m7s中1s8p

衣(ピンズのチンイツか…?)打2m

咲「ロン」

衣「!」

咲「12000です」

34m〈234〉56788p234s

衣「な、なんだそれは…くっ!」


流れを掴んだ咲はそのまま衣の点棒を削り、二回戦を制した。

衣「詫びよう。貴様は衣に匹敵する強者だ」

咲「どうも」

三回戦

咲の流れは消えない。

更に、天江衣はまるで抵抗をせず連続の敗北を許した。

智葉はそれがとても不自然に感じたが、咲の勢いに茶々を入れまいと黙殺していた。

そして、障子の向こうが闇に包まれ出したことに誰も気付かないまま、四回戦は始まった。

咲「ツモ、2000オール」

東一局、咲はツモ上がりを終えた瞬間、肌に当たる敵意の変化を感じ取った。

衣「待たせたな」

咲「うっ…」

衣「御戸開きと行こうか」

月は満ち満ちて、雲一つない夜空を照らしていた。

今日はここまで
続きはまた明後日の夜に

咲(支配力がさっきとは別次元だよ…なんで…)

衣「知りたいのならば教えてやろう。今宵は満月。衣の力が満ちる刻」

智葉「そういえば…」

衣「宮永という名前に衣は二度惜敗を喫した」

菫「……」

衣「だがその二人と闘った時と現在は違う。衣は強くなった。嘗ての会稽の恥、悪いが今雪がせてもらうぞ」

咲「…私だって智葉さんに助けてもらった。その恩を返すために、勝つよ」

二本場。

衣が再び流れの手綱を握る。

二連続倍満ツモ上がり。

南入する頃には既に咲との差は4万を越えていた。

だが咲も引かない。

最初の親番を逃したものの、南場だけで衣に二度直撃。

気付けば傍で見ていた智葉も菫も完全に時間を忘れ没頭していた。

迎えた西局、衣の親番。

四巡目、衣は少考の後3m切り。

衣手牌
1111244m5677p9s南

菫(3m切り?なぜだ?)

更に四巡後、衣の意志に牌が乗る。

11112244m777p南南

菫は興奮し、座ってはいられなかった。

咲も衣の気を感じとる。

咲「リーチ!」

だが衣は動じない。

4mをツモり、1mをカン。

衣「衣の…勝ちだ!ツモ!」

咲「ーっ!」

嶺上開花四暗刻。

この夜、最初で最後の役満は衣が勝ち取った。

智葉(痛すぎる…!この役満は如何に咲と言えど揺らいでしまう!)

智葉の心配は現実のものとなり、咲はその後二連続で衣に振り込み、四回戦を終えた。

五回戦。

衣の二連続海底。

この時点で菫は勝利を確信していた。

智葉も負けを認めようとしていた。

だが咲だけは違った。

東三局、衣はまたも海底牌を狙っていた。

衣(南家のリーチが入っているが、奴は和了の待ちは既に無い。このまま衣の三連続和了だ!)

咲「チー」

衣(鳴きで海底を阻止か、だが下家が振り込んで終了だ)

衣の思惑通り、下家は衣の和了牌を切る。

衣「ロ…」

咲「ロン」

衣はハッとしたように咲を見る。

咲の顔は笑みに溢れていた。

楽しそうな顔で、牌を倒す咲。

咲「3900です!」

衣「あ…」

咲の笑顔が輝いて見えたのは気のせいではない。

既に夜は明け、己の支配が弱まったのに衣は気が付いた。

衣「あは、あはは!」

菫「天江?」

衣「弘世会長、衣は負けるぞ!」

菫「なに?」

一度の咲の和了で敗北宣言に菫は理解ができない。

衣「見よ。衣の海をこんなに楽しそうに泳いでいる」

咲「衣さん」

衣「ああ、分かってる。最後まで付き合おう」

衣はそこから最後まで振り込まなかった。

だが咲は闘いに勝利した。

智葉「勝負あり…だな」

智葉はゆっくりと立ち障子を開ける。

まだ顔を出したばかりの太陽に、智葉は目を瞑る。

菫「ああ」

智葉は菫の相槌を聞き、部屋を出て行った。

衣「宮永よ、楽しかったか?」

咲「うん」

衣「久しく忘れていた。楽しむという感情。今一度勉強させてもらった!」

咲「私も、こんな強い人、昔の…」

咲はここで言葉に詰まる。

衣「昔の?」

咲「私…昔、こんな強い人と麻雀したことある…」

衣「憶えてないのか?」

咲「……」

菫「一つ聞いていいか?」

咲「え?」

菫「君の苗字は分かった。君は宮永照の血縁か?」

咲「宮永…照…?」

衣「そうだとしたら咲とも血が繋がっていることになるぞ」

咲「咲って…私の…」

衣「知らぬはずはないだろう。今はヨーロッパのプロリーグで麻雀を打っている宮永咲だ」

同じ名前。

それが偶然であると考えることは胸のざわめきが許さなかった。

宮永咲に会えば、自分が何者か理解できる。

そう確信した咲の目は次の目標を見据えていた。

宮永咲の物語は、記憶喪失により止まっていた咲の時間はここから動き始めることになる。

今日はここまで
続きはまた明後日の夜に

日本海の真ん中、一つの船が波に揺られていた。

その豪華客船には三種類の人間が乗っていた。

一つは日本や中国、韓国の富豪。

一つは勝負師。

そしてもう一つは

美幸「つぎの卓が決まったわよ」

照「……」

絶対の存在、宮永照であった。

咲「ツモ、ラストです」

智葉「お疲れ様」

咲「智葉さん、いつになったらヨーロッパに連れてってくれるんですか?」

智葉「まだだ。パスポートもないお前を外に出すにはリスクが高い。もっと稼げ」

咲「…はい」

高レートの麻雀の代打ちとして咲は連勝を続けていた。

咲はすぐにでも海外へ飛び、“宮永咲”に会いに行きたかったが智葉はこの程度の良い駒を失うのを嫌った。

咲がそんな智葉に不信を抱き始めるのも当然のことだった。

だが、咲にも一つの希望があった。

天江衣と激闘を終えた早朝のこと。

菫「宮永咲に会いたいのか」

咲「はい」

衣「咲が日本に帰って来るのは半年後って聞いたぞ」

咲「そんなに…」

菫「……宮永照に会うといい」

衣「!」

咲「あの…宮永咲のことは分かったんですけど、宮永照ってのは?」

菫「宮永咲の姉だよ」

咲「咲の…姉」

衣「だが宮永照がどこにいるかなど」

菫「ああ。照は裏の世界に消えた。だが一つだけ手がかりがある」

咲「手がかり?」

菫「来月の頭、韓国と日本の間を行き来する船が出る。その船は違法なカジノ船、超高レートの麻雀もある。そしてそこで照の存在が確認された」

衣「聞いたことがある。現在の日本における最高レートの賭場と同等だと」

咲「なんで私にそこまで」

菫「楽しい麻雀を見させてもらった礼だよ。童心に帰った気分だ」

衣「では衣からも一つ。友達になろう、咲」

咲「友達」

あまりにも聞きなれない言葉に、復唱してしまう。

咲「うん!」

差し出された手を握り、衣と菫に別れを告げた。


智葉「カジノ船?」

咲「はい。それに参加できませんか?」

智葉「なぜ?」

咲「私だったら他の雀士に負けることはありません。レートが高いと聞いたので、そこでの勝負を最後に私は宮永咲に会いに行かせてもらいます」

智葉「……検討しておく、下がれ」

その日は雨がざんざんと降っていた。

咲は目を閉じて、雨を感じる。

屋根、ぐちゃぐちゃな土、塀の向こうのアスファルト、それらを叩く雨水の音がよく聞こえた。

床がキィ…と鳴った音に、咲は目を開けた。

咲「智葉さん」

智葉「……」


咲「今日、月見えませんね」

智葉「そうだな」

咲「……」

智葉「…そういえば、お前を助けた日もこんな雨が降っていたな」

咲「……」

智葉「咲、次が最後の仕事だ」

咲「それじゃあ!」

智葉「ああ、行こうか。そのカジノ船に」

美幸「もうすぐ日本につくって」

照「うん」

美幸「宮永さん、何か食べたら?」

照「いい」

美幸「……もー、何読んでるの?」

照「……詩集」

美幸「ふーん」

照「椿野さんは日本に帰ったら何をするの?」

美幸「何もやることないの。またこの船乗っちゃうかもね」

照「そうなんだ。私と一緒だね」

美幸「へえ」

照「……」

美幸「…私に何か詩を読んでよ」

照「……そうだな、じゃあ」

瞳はまるで碧い菫。
頬はまるで紅い薔薇。
手はまるで白い百合。
どの花も競うて咲いた。
しかし──心は腐っていた。

今日はここまで
続きは明日の夜に
次は安価したいと思ってます

船の停泊する港に辿り着くまでに長いトンネルを通った。

真夜中の真っ暗闇を抜けたそこには禍々しさすら感じさせる光があった。

まともに目も開けられない程の光量に智葉はサングラスをかける。

智葉「いるか?」

咲「ありがとうございます」

身体チェックを終え船の中に入るとまず個室に案内され、長々と船の説明を受けた。

智葉「いいか。今度のレートは今までとは桁が違う。一回の負けでこれまでの勝ちが消えるかもしれない」

咲「はい。覚悟はできています」

智葉「…いいだろう」

緊張が解けないまま、ホールに足を踏み入れた。

A

「待てや…!」

「……」

「逃げるんか?」

「そういうことにしといていいよ。あと無理をしないで」

「くそっ……」

B

「ちょいタンマ……コレで」

「ロン」

「……狙った?」

「そう」

「……ダル」

目に付いた卓は>>79

AorB


B

白望「ハア……」

照「それじゃあ私は抜けるので」

白望「…お疲れです」

照「…何か用?」

咲「あっ、いえ、ここ初めてで…」

照「そうなんだ。実力に自信はある?」

咲「…はい」

照「へえ…。今私の対面に座っていた人、宮永照って有名な人だから打ってもらったら?」

咲「え…宮永…照?」

照「それじゃあ、頑張って」

白望(何話してんだろ…)

咲「私と、打ってもらえますか?」

白望「え…いいけど」

智葉「はぐれてしまったな…」

溢れんばかりの人混みに流され、智葉と咲は別れてしまっていた。

周りを見渡し、探す。

智葉の目に止まったのは咲ではなく、卓を離れた照だった。

智葉「み…宮永照…!?」

頭が考えるより先に智葉は照を追った。

咲について何か聞きたかったのか、それとも麻雀の勝負を挑むつもりだったのか。

だが見失ってしまった故、その理由は智葉自身にも分からないままとなった。

智葉「くそ…あいつに当たったら組ごと潰されかねん…」

最悪の出来事が頭をよぎる。

宮永照とは勝負をさせない。

智葉がそう決意した時、別の客の会話が聞こえた。

「あの白い髪の女、強いぜ」

「さっきはバカヅキに負けたがな。また打つんだって?見に行こうぜ」

智葉(新しく卓が立ったか…もしや)

智葉(ビンゴ…白い髪の女ってのは対面のか。どこかで見た憶えが)

白望「それじゃあ始めますか」

東一局

親:白望

白望(んー…脇は雑魚だけど対面の新顔さんは強さがわからないな…)

白望「じゃあ、リーチで」

咲「ポン」

白望(あれ、いいのかな)

白望「んー…ツモ」

咲「…えっ?」

白望(あったまってる席の流れをくれたけど、コレはわざと?)

咲「……」

白望(じゃ、ないっぽい…)

白望(カモか)

白望「ツモ、2000オールの一本場」

咲(なんで…流れが見えない…?)

白望「ツモ、3900オールの二本場」

咲(止まらない…!止められない…!)

白望(これが宮永照の流れか…。酷いな)

卓に着いた時、咲は既に流れを見失っていた。

白望は紛れもない一流の雀士。

集中力が一瞬でも途絶えれば、そこを突いてくるのは当前。

宮永照という幻想を前にして、早速窮地に陥った咲。

三本場、牌山が出た刹那。

乾いた音が卓に響いた。

智葉「バカが…死にたいのか!」

智葉の平手打ちを受けた咲は数秒茫然としていたが、すぐに卓に目を戻す。

咲(そうだよ、集中しなきゃ。卓上で見るべきものは未来でも過去でもない、現在だ!)

白い靄に包まれていた卓上の流れは晴れ渡っていた。

大きなリードを許した東一局。

漸く咲は勝負の舞台に立つのであった。

今日はここまで
続きは明後日の夜に

遅れてしまってすみません
明日の夜に続きやりたいと思います

咲(三万点差…まずは親を蹴らなきゃ…)

白望「リーチ」

白望手牌
123456789m78p南南

咲(速い…でもやれることはある…)

咲「ポン」

白望(それくらいじゃ流れは消えない)

咲「ポン!」

智葉(対面にツモらせないようにしているが…)

咲「ポン!!」

白望(すごいな…でももう限界でしょ)

咲(当たれ…!)打4m

下家「ロン」

下家手牌

23m67899p西西〔北北北〕

智葉(下家に和了牌を押し付けたのか!)

白望(流されたけどまだ大丈夫…)

咲「ポン!」〔東東東〕

咲「チー!」〔123m〕

咲の河
3s8s7p2p4s北南2s8m

白望「……」打9s

咲「ロン」

123456m9s〔東東東〕〔123m〕

白望(すごい迷彩だな。これは仕方がない)

東三局

白望(手がまっすぐすぎる…)

咲「ツモ!」

智葉(持ち直した!これで流れは五分五分)

白望(…まあいっか。こっちの方が楽しいし)

東四局

白望「ちょいタンマ」

智葉(あっ…!岩手の小瀬川だ!思い出したぞ!)

白望「リーチ」

智葉(迷ったら手が高くなる…だったか)

咲(待ったが入ってからリーチまで5連続手出し…)

白望「ツモ」

咲(面白い人だな)

白望「南入」

咲「はい」

南一局で咲が満貫のツモ。

続く南二局で咲から白望に振込み。

南三局

咲(この親を逃したら逆転は難しくなる…)

咲「リーチ!」

白望(この親を流せば大分楽だ)

白望「ポン」

智葉(ここで引くようではその程度だが、小瀬川は強い!)

白望「ツモ、500・300」

智葉(流石だ…)

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