いろは「正義のヒーロー『ぼっち仮面』?」 (109)
夏休み目前、期末テストも終わり奉仕部の部室に相変わらず入り浸っているとそんな話を聞いた。
結衣「ほら、最近って怪人とか出てきちゃったじゃん? それと同時期に出てきたんだってー」
そう言って結衣先輩が見せてくれた画像には、頭全体を覆うヒーローっぽいマスクにヒーロースーツに黒いマントのぼっち仮面とやらが写っていた。
いろは(ぼっち仮面って……もうちょっとまともなネーミングはなかったんですか……って、ぼっちって……)
いろは「もしかして、中の人って……先輩、だったりしますか?」
結衣「ヒッキーが? いやいやっ、それはないって!」
雪乃「そうね、あんな性根が発酵しているような男にパンさんに似たカラーリングのヒーローなんて出来る訳がないでしょう?」
八幡「なんでぼっち仮面の話で俺がディスられてるんですかねぇ……。あとパンさん関係ねぇだろ。なんか一色は今日も来てるし……」
奉仕部メンバー三年生でなんか怪人が現れる世界です。
いろは目線。
八幡×いろはSS
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いろは「で、ですよね~……流石にそれは飛躍しすぎで――」
ぼっち=先輩みたいな図式からはじき出された安直な答えを自分でも否定しようとした瞬間、窓の外を指さしながら結衣先輩が叫んだ。
結衣「怪人が校庭にいるよ!?」
雪乃「由比ヶ浜さん目を合わしたらダメっ。変に動くと逆に危険そうね……」
八幡「っ……ちょっと出てくる」
いろは「先輩!?」
八幡「小町が心配なだけだ……!」
先輩が出て行ってから少しして、
結衣「あっ、ぼっち仮面が戦ってる! 怪人はぼっち仮面が倒してくれたみたいだよ!」
雪乃「これで一安心ね」
で、それからまた少し。
八幡「はぁっはぁっ、……っ、小町はっ、無事だった……っ」
結衣「ぼっち仮面が校庭で倒してくれたからね!」
雪乃「あなたもぼっちなんだから、ぼっち仮面くらい戦えれば存在価値も生まれるのに、世界って残酷ね」
八幡「さ、さいですか……」
いろは「え、えぇぇぇぇぇぇええええええええええ!?」
雪乃「ど、どうしたのかしら一色さん……。世界の残酷さがそんなにショッキングだったのかしら」
いろは「いやいやいやいやいやいや! 先輩じゃないですかぼっち仮面! 都合よく出て行って都合よく帰ってきて!」
雪乃・結衣「「……え?」」
八幡「い、一色? 何を言ってるんだ……俺が小町を心配したのが嘘だとでも……」
いろは「え? お二人は本気で先輩をぼっち仮面だと思っていないんですか?」
結衣「そりゃあ……」
雪乃「まぁ……比企谷くんだし……」
いろは(え、)
いろは「ぇぇええええええええええええええ!?」
八幡「…………」
千葉、というか日本各地に怪人と呼ばれるなんか変なのが現れ始めて数ヶ月。大きな被害とかはまだ出ていない、らしいけど、たまにテレビでは怪我人が出たという旨のニュースが流れている。
人型の異形。
いろは「うーん……あれは本当にたまたま先輩が小町ちゃんを心配しただけ……なのかな」
下校中、用あって駅に向かう間もぼっち仮面先輩説が脳内をぐるぐるする。
いろは「っていうか、結衣先輩も雪ノ下先輩もあの状況でどうして先輩がぼっち仮面と疑えないのか……」
むしろ不自然過ぎるレベル。
本人に聞くしかないのかなぁ……でも、先輩が隠してるって事はそう簡単には教えてくれないだろうし……。
考え事をしながら歩いていると、駅の方で騒ぎが起きていた。
――きゃあああああああ!
――怪人だああああ!
――ぼっち仮面が来てくれたぞ!
なんてタイムリー!
先輩に聞いてダメなら、ぼっち仮面に聞けばいい!
まるで人型の甲虫。怪人はそんな風貌だった。
いつの日かたまたま見かけたテレビの中に出てくる空想の悪役。
それが、目の前で空想だったヒーローと戦っている。
「ぼっち仮面の勝ちだー!」
「ありがとうぼっち仮面!」
賛美の声を背中に受けながら、ぼっち仮面は路地へと入っていった。
そして、わたしもそれを追うように。
路地の暗いところ。誰もいないところ。ぼっち仮面しかいないところ。
マスクに手を伸ばしたぼっち仮面の背中に声をかける。
いろは「……先輩っ」
ぼっち仮面「!? ……なんだ、一色か驚かせ……」
いろは「やっぱり先輩なんですね」
ぼっち仮面「えっ、いや……」
いろは「ここまで来て隠す必要なくなくないですか?」
ぼっち仮面/八幡「……はぁ。……その、なくなくない、って地味にあざといからやめろ」
さっきまで着ていたヒーロースーツはどこへ行ったのやら。
先輩はいつも通り、総武高の制服を着て私の隣を歩いていた。
というか、わたしが無理矢理先輩の隣を歩いていた。
八幡「……で、どこまでついてくんの」
いろは「そりゃもうっ、先輩が話してくれるまでですよぉ」
八幡「……はぁ。今まで誰にも話したことねぇし、そもそも俺だって信じ切れてないぞ」
いろは「っ、はいっ!」
他の誰も知らない先輩。
わたしだけが知っている先輩。
少しだけ、ほんの少しだけ、嬉しかった。
先輩の話をまとめるとこう。
四月に小町ちゃんと出かけた帰りに怪人に襲われた。
そしたら突然、頭の中に声が響いた。
その子を守りたいか、と。
無論、小町ちゃんを傷つけたくない先輩は守りたいと答えた。
次の瞬間、先輩はヒーロースーツに包まれてぼっち仮面になった。らしい。
あと、ぼっち仮面の話をする戸塚先輩がかわいいらしい。
いろは「誰にも正体はバレてないんですか?」
八幡「ああ、お前がはじめてだよ」
いろは「あっ、もしかして今わたしのこと口説いてますか先輩のはじめてとか欲しくないんで気持ち悪いんで価値ないんで本当そういうのやめてくださいあとごめんなさいまだ無理です」
八幡「あっそ……つか口説いてねぇし……」
いろは(っていうか勢い余ってまだ無理とか言っちゃったあああああ)///
八幡「……バレないんだよ、ぼっち仮面の正体は」
いろは「……はい?」
八幡「さっきみたいに、路地でヒーロースーツを脱ごうとしても、誰もこっちを見ないんだ。それに、誰も路地には入ってこようとしない。都合のいいことにな。ぼっち仮面の特性かもしれない」
いろは「それって、奉仕部の二人が先輩を一切疑わないのもですか……?」
八幡「……ああ。そっちのが色々と面倒なくていいけどな」
そう言う先輩の表情は、少し悲しげだった。
いろは「で、でもっ、わたしは分かりましたよ! ぼっち仮面が先輩だってこと!」
八幡「……そうだな、なんでだ?」
いろは「いやぁ、先輩すきすきエネルギーが色々とあーでこーで」
八幡「はいはいあざといあざとい」
いろは「もうっ、でもつまりはわたしは先輩の特別なんですからねっ! これは運命ですよ!」
八幡「戸塚と……戸塚とがよかった……」
いろは「嫌がらないでくださいよっ!?」
八幡「……まぁ、バレたのがお前でよかったかもな」
いろは「捻デレですかっ!?」
八幡「気楽で」
いろは「今デレましたよねっ!」
八幡「デレてねぇし……」
そう言った先輩の目は相変わらず腐っていたけど、口角は少し上がっていた。
八幡「とりあえずは、まぁ、誰も信じねぇだろうけど、他言するなよ」
いろは「了解です」
八幡「それじゃ、気をつけて帰れよ。今日は二体も怪人出たし、もう出ないと思うが……」
いろは「そのときは、先輩が助けに来てくださいねっ!」
八幡「……はいはいあざといあざとい」
いろは「あざとくないですー本音ですー。っていうか、ホントに助けに来てくださいね?」
八幡「分かった分かった、じゃあな」
いろは「また明日ー!」
手を振って先輩と別れる。
家に帰ってから、スマホで『ぼっち仮面』と検索してみても、どこにも『比企谷八幡』という先輩の名前は見当たらない。当たり前か。
つまり、わたしと先輩だけの秘密。
わたしだけが知ってる先輩の秘密。
いろは「~~~っ!」///
なんだか顔が熱くなってきて、枕に顔を押し付けて身体をくねらせる。
いろは「……先輩が、ヒーロー」
空想と現実が混じり慣れてきたこの世界でも、その事実だけは未だにふわふわしていて、『秘密の共有』という恋する乙女ワードの方が、わたし的には、なんか、こう、心にクるのです。
このあと寝付くまで何回かじたばたした。
第一話『わたしの好きな先輩はヒーローでした』
第一話終了!
深夜のテンションで思いついたので、最終回は決まっていますが中盤一切考えてません。考えながら書きます。早めに。
こんなシチュエーション希望とかありましたらどうぞ。書けそうなら書きます。っていうか、中盤のネタにしたい。
いろはすとイチャイチャさせたいだけだったのにどうしてこうなった。
これは技の1号力の2号
なお同時に居合わせても一切協力はしない模様
いろは「あ、あの……っ」
八幡「……なんだよ。生徒会室に連れてきたのはお前だろ? しかも二人きりって……」
いろは「それはそうなんですけど……」
八幡「じゃあ……」
いろは「さっ、さすがに早すぎじゃないですか……っ」
八幡「はぁ……だから、何が」
その……目のやり場に困るっていうか……。
こんなのはじめてだからどうすればいいのか分からないけど……。
いろは「仕事してる隣でそんな無気力にだらけないでください。やる気失せます」
八幡「俺が手伝う仕事ないのに呼んだのお前だろ……。こちとら、ヒーローやったり勉強したりで毎日大忙しなんだよ……そのくせ奉仕部にいたら材木座来るし、仕事ないならだらけたっていいだろ」
いろは「じゃ、じゃあもう少しで終わるので、せめてそれまでは本でも読んでてくださいよ。目の前で溶けられるよりはましです」
八幡「なんで俺が怒られてるみたいになってんの……」
いろは「終わりましたー!」
八幡「本当に少しだったんだな」
いろは「そりゃあ、他の役員さん呼ばないくらいですから。って、言ってる側から溶けますね」
最早、目の腐敗具合からやる気のないゾンビみたいになってる。
いろは「なんだか、本当にヒーローか分からなくなってきますね」
八幡「俺だって分かってねぇよ。千葉のお兄ちゃんじゃなかったら、多分ヒーローにもなれなかったしな」
いろは「ちょいちょい出てくる千葉のお兄ちゃんポテンシャル秘めすぎじゃないですか」
八幡「千葉のお兄ちゃんは凄いんだ……で、なんで呼ばれたの今日」
いろは「それはですね、わたしは何したらいいのかなぁって」
八幡「……仕事じゃないの」
いろは「ちがいますよぅっ! 先輩の事です!」
八幡「へぇ、先輩ねぇ……。えっ、俺?」
いろは「はいっ!」
八幡「俺の何をすんの……養ったりしてくれんの?」
いろは「もしかして今口説いてますか遠回しにプロポーズですかわたし達まだそんな間柄じゃないので無理ですごめんなさい」
八幡「いや口説いてねぇし……っつか、マジでなんの話だよ」
いろは「いやー、ヒーローの秘密を知ったら協力するとかよくあるらしいじゃないですかー」
八幡「でも、俺悪の組織とかと戦ってないんだけど……。何、秘密兵器でも開発してくれんの?」
いろは「いやいや、一介の女子高生に何を求めてるんですか」
八幡「逆に何を求めれば良いんだよ……。癒やし? 戸塚で事足りてるんだが」
いろは「なんでそこで戸塚先輩が出てくるんですか、ここに可愛い可愛い後輩がいるじゃないですか!」
八幡「はいはい可愛い可愛い。帰っていいか?」
いろは「ストーーーップ! 何か先輩の力になれないかって昨日寝る前にちょっと考えてみたんですけど八時間眠れました!」
八幡「健康そうだなお前」
いろは「なんにも思いつかなかったので、先輩はわたしに何をしてもらいたいですか?」
八幡「戸塚」
いろは「先輩はわたしに何をしてもらいたいですか?」
八幡「えぇ……聞いてくれてるのかちょっと分かんない……」
いろは「じゃあ、何かヒーローをやっていて困ってる事とかないんですか?」
八幡「……怪人が現れても情報が遅いとか」
いろは「教えてくれる友達いないですもんね……。だったら、わたしが先輩の情報源になりますよ! 怪人が現れたら、誰かしらから来ますし」
八幡「お、おう……よろしく」
いろは「はいっ!」
いろは「でもでも、先輩って絶対怪人退治してるわけじゃないですよね?」
八幡「まぁ、俺にも都合はあるしな。行かなかったら行かなかったで警察がなんとかするし……」
いろは「じゃあ、どうしてまだヒーローやってるんですか? その、先輩のピンチは小町ちゃんと一緒に襲われた時ですよね、それはもう解決したじゃないですか」
八幡「そう言われると何でだろうな……」
八幡「……ふっ、強いて言うならば、ヒーローだから。だな」
いろは「はぁ、そうですか」
八幡「おい、今いいこと言ったぞ多分」
いろは「はいはいカッコいいカッコいい。もう鍵かけちゃいますね?」
八幡「後輩勝手すぎぃ!」
その時、わたしのスマホに一通のメッセージが届いた。
いろは「先輩っ! この近くに怪人が現れたみたいです!」
八幡「早速か……ちょっと出てくる。戻って来るから荷物頼んだ」
いろは「気をつけてくださいね」
八幡「……ああ」
部屋から出て行く先輩の背中を見送るけど、その背中はなんだかんだ頼もしいのをわたしは知っている。
ただ、なんであんなに悲しげなんだろう。わたしにはまだそれが分からなかった。
いろは「……わたし、先輩の力になれるのかな」
わたしは一緒に戦ったりはできない。
それなのに先輩の力になりたいなんて烏滸がましいのかもしれない。
それでも、先輩の力になりたい自分がいる。
だから、わたしに出来る事があるなら、やろう。
いろは「……いや、本当に何が出来るんだろう……?」
第二話『今日も睡眠時間八時間』
第二話終了!
ぼっち仮面二号はアレですね、目で怪人殺しそう。
ただしばらくは出せないんや……非力な私を許してくれ。戸部が何でもします。
どうでもいいけど、>>21のせいであたりめ噴いた。
いろは「夏休みというわけで、来ちゃいました!」
八幡「一色いろは式論法が理解出来ないんだが……今の日本で必修じゃないから」
いろは「小町ちゃんに教えてもらいました! 今日からしばらく比企谷家は旅行だって!」
八幡「それだと家に残ってる俺が比企谷さん家の人じゃないみたいなんだけど……」
いろは「もしかして今口説いてますか遠回しにうちに婿入りしようとかいう魂胆ですかわたしも行く行くは好きな人の名字になりたいと思ってるので無理ですごめんなさい」
八幡「いや違うから……っつか何うちの妹と仲良くなってんの……? お前に小町は渡さねぇから。あと川崎大志」
いろは「ね、狙ってなんかいませんよっ!」
八幡「あ? うちの小町に狙うほどの価値はねぇだと!? 『小町可愛い』しか言えなくしてやるよ……」
いろは「そんな意味も含んでません!」
八幡「小町を狙わないで家に何しに来るんだよ……」
いろは「えー? そりゃ先輩のお世話ですよー」
八幡「メイドのバイトとか募集してないんだけど……」
いろは「先輩ってなんだかんだメイドとか好きなんですか? ざー……厨二? 先輩みたいですね」
八幡「やだこの子……奉仕部に入り浸るあまり覚えちゃいけないもの覚えて……ないから大丈夫か」
いろは「……なんなら今度着ましょうか?」
八幡「っ!?」
いろは「あっ、先輩今想像しましたねー? どうですか? 似合いますか?」
八幡「い、いや……ちょっと戸塚(妄想)のメイド姿を思い出して……」
いろは「あのっ、戸塚先輩って男の人ですよね? 先輩といると段々心配になってくるんですけど……」
八幡「……で、その荷物に関しては認識したくなかったんだが」
いろは「……絶対滞在期間中に答えさせますからね」
八幡「滞在期間って千葉住みが千葉にいる時に使う言葉じゃねぇだろ……」
いろは「これはキャリーバッグです」
八幡「……もう一回言ってくれる?」
いろは「でぃす、いず、きゃりーばっぐっ!」
八幡「あざとく言ってもそれを家に持ってくる必要性が理解出来ないんだが……」
いろは「小町ちゃんから聞いてませんか?」
八幡「朝起きてたら食事代だけ置かれてて誰もいなかった」
いろは「先輩って……いや、やめときますね……」
八幡「え、何、理由の分からない哀れみの視線とか怖いんだけど……」
いろは「まー、というわけなんで、しばらくお世話になります!」
八幡「小町早く電話に出るんだ……ッ、お兄ちゃん最近日本語が理解出来なくなってきちゃって自分の状況が分からない……!」
八幡「……心なしか、食事代が多かったのは一色のせいだったかー……」
結局電話は繋がらず、
小町『そういえば、今日から会長さん来るからね! 粗相のないように気をつけてね!』
という旨のメッセージだけが先輩のスマホに届いていた。
何、『から』って……長期滞在前提なの……、と先輩はぼやいていた。
八幡「は、はは……小町はドジっ子だなぁ……」
いろは「まー、わたしに出来ることってなんだろなーって考えてたら、小町ちゃんが旅行のこと教えてくれたので、その間先輩のお世話でもしてあげようかなぁって。つまりは擬似同棲生活ですね!」
八幡「何がつまっちゃったの……これだからゆるふわビッチは……。っつか、親御さんはどうなんだよ。俺が父親だったら娘が男のところ行くとか嫌なんだが」
いろは「友達の家って言ってあるから大丈夫ですっ! あとビッチじゃありませんし。あくまでも、わたしはヒーローと受験勉強で先輩大変かなぁって厚意で動いてるんですから」
八幡「はいはい……自分で厚意とか言わないの……」
いろは「冷蔵庫開けても大丈夫ですかー?」
八幡「聞いてないねこの子……。冷蔵庫は……あーなんにも入ってない気がするわ。今日買い出しに行くつもりだったしな」
いろは「じゃあお買い物行きましょう!」
八幡「えぇ……」
いろは「なんで露骨に嫌な顔するんですか。こんな可愛い後輩と新婚さんごっこ出来るんですよー?」
八幡「もしかして今口説いてますか俺専業主夫目指してるんで奥さんと買い物とか負担かけさせるようなことしないんで新婚さんごっこは無理ですごめんなさい」
いろは「うわ……」
八幡「素で引いてんじゃねぇよ……モノマネには定評があるんだぞ……主に由比ヶ浜からだが」
いろは「ちなみに聞きますけど、なんのモノマネが出来るんですか? ゴミとかですか?」
八幡「ひゅー辛辣ぅー……。……ゆ、雪ノ下と、か……」
いろは「 」
八幡「待て、それ以上は何も言うな」
いろは「何も言ってませんよ……」
いろは「まー、引くのは一回見てからですかねー」
八幡「引くの前提でモノマネやるほど肝は座ってねぇよ……まぁ、いつかタイミングが来たらな」
いろは「なんのタイミングですか……」
八幡「物事にはタイミングがあんだよ。葉山が突拍子もなく『一発芸やります! 雪ノ下さんのモノマネ!』とか言いだしたら嫌だろ」
いろは「それは……まぁ」
八幡「逆に、然るべきタイミングでやれば失敗したとしても許される場合もある。つまりタイミング超大事」
いろは「雪ノ下先輩のモノマネとか成功失敗の前に殺されそうな雰囲気ありますけど」
八幡「うん……まぁ、やる内容にもよるな、うん」
八幡「ぼちぼち行くか……食いたいもんとかあるか?」
いろは「ちょっと待ってください」
八幡「これだから最近の若者は……すぐにスマホスマホ……。SNSのグループで返事しないといじめられるとか怖すぎかよ、友達いなくてよかったわ……」
いろは「ちーがーいーまーすーっ! スーパーのチラシ調べてるんです」
八幡「えっ? チラシシラベテル?」
いろは「知らないんですか? 最近ってネットで折込チラシとか見れるんですよ」
八幡「……マジか。チラシとは一体……」
いろは「マジです」
いろは「だから、特売品とか見てから買う物は決めましょう」
八幡「……」
いろは「な、なんですかいきなり見つめてきて……。あっ、もしかして見蕩れてた的なアレですかー?」
八幡「いや、家庭的なんだな、一色」
いろは「っ、そ、そうやって結婚したいとかストレートに褒めるのは無しですっ! 調子狂います!」///
八幡「そこまで言ってないんだが……」
いろは「~っっっ! さ、さっさと決めちゃいましょう!」///
八幡「で、今日は何が特売なんだ?」
いろは「ひょわあああああっ!?」
八幡「その反応、俺の友達の友達の話思い出しちゃうんだけど……」
いろは「先輩友達いないじゃないですか」
八幡「アッハイ……で、何その反応」
いろは「いえ、その……」///
隣でスマホの画面覗かれるのは、なんというか、顔が近いというか……。
いろは「じ、……」
八幡「じ?」
いろは「自重してくださいっ!」///
八幡「えぇ……」
そして、ぼちぼち買う物も決めて、
いろは「さてさて、それじゃあそろそろ行きますか。あんまり遅くなってもアレですし」
八幡「だな」
いろは「なんですかこのおしどり夫婦みたいな距離感口説いてるんで――」
八幡「『だな』だけでネタが長い……」
いろは「むぅー……別にネタじゃないですし」
こっ、この距離感が居心地良すぎる……っ!
中毒もんだよ! 幸福感がすごいよ! 合法先輩だよ! まるで非合法があるみたいな言い草だけど!
……って、こんな事言ってたら怪人が現れてこの雰囲気壊されそう……。これは俗に言うフラグとやら?
いろは「いや、ないないないないない……」
八幡「一人で何言ってんだ……そんなにギャグを止められて嫌だったのか……」
いろは「ち、違いますからっ! ギャグでもありませんから!」
『ピンポーン』
いろは「っ!?」
八幡「警戒しすぎだろ……」
なんだ、チャイムか……怪人じゃなくてよかったぁ。
八幡「ちょっと静かにしてろよ」
先輩がわたしの方を向き注意しながら、モニター越しに対応する。
八幡「はい」
雪ノ下『ひ、比企谷くん?』
八幡・いろは「えっ」
怪人よりヤバいのが来てしまった感が否めないのですが、これは。
第三話『みそ汁が美味しいと、好感度が二週くらい振り切れるって友達の友達が言ってた……らいいなぁ』
第三話終了!
書き溜めしていないのに毎日更新しようとするから窓の外が明るくなる。みんなはちゃんと寝ろよ! ぼっち仮面との約束な!
いろはすは、なんだろうね、同棲したくなるよね……で、なんか家庭的な面が垣間見れて「結婚してぇ……」とぼやくまでが一セット。他SS様の影響です。いろはすSSは良作多いからみんな読もう!
それはさて置き? 噂によれば? 新作ゲーム? の初回限定? にはいろはす? デート回OVA? 付いてくるんだって?
ははは、釣られませんよ、そんな罠。制作側が買わせたがってるのがバレバレだぜ……。最大でも三本までしか買いません。あの回大好きなんですよ……。 今日のまとめ。10.5巻はバイブル。
八幡「お、おう、雪ノ下か……なんか用か」
雪乃「そんな事聞かずとも、あなたの所に用がない人間が来ると思う?」
八幡「用がある人はそんな事言わないと思うんですけど……」
雪乃「……猫、見に来たのだけれど。あとそのついでと言っては何なのだけれど、あなたの勉強でも」
八幡「えっ、あー、うん……」
いろは「え、猫いるんですか?」
八幡「ああ……どっかにいる」
雪乃「誰かいるの? 小町さん? てっきりもう旅行に出かけたと思っていたわ」
八幡「えー……まぁ、そんな所だ」
いろは「何がですかっ……。って、なんですか今口説いてますかごめんなさい妹みたいに可愛いとか普段の先輩のシスコンぶりを見てるとプロポーズより愛が深そうで心の準備が出来てません無理です……っ」///
八幡「いや、今そんな場合じゃないから……真面目な話」
いろは「……思ったんですけど、別に悪い事してるわけじゃないんですよ?」
八幡「腐っていたのは目だけじゃなかったみたいね、今ならただの犯罪者で済むわ、性犯罪者という一線を越えるのはやめなさい」
いろは「……もしかして……タイミングって」
八幡「ちげぇよ、誰がこんなの予想出来るんだよ……」
雪乃「……なんだか、失礼な波動を感じるのだけれど」
八幡「いつから波動の勇者になったんだお前は……」
八幡「……とにかくだ、バレると面倒なのは確定的に明らかだし、そもそもお前がここに来た口実はヒーロー云々だろ」
いろは「雪ノ下先輩には通じないんだ……」
八幡「多分な。……まぁ、俺に任せておけ、これでも伊達にあいつらと一年以上近くにいたわけじゃない」
ちくり。
いろは「っ……、はい……お願い、します……」
八幡「そんなに雪ノ下怖いのかよ……」
いろは「い、いえっ、そういうわけでは……」
八幡(さて……プランはいくつか考えておけ。リカバリは自然に迅速に、失敗前提で動くんだぞ! 失敗前提だと全部無駄じゃないかなぁ……勘のいい八幡は嫌いだよ)
八幡「悪いな、今色々とドタバタしてるんだ。勉強の件はありがたいんだが、また後日にしてもらえるか?」
雪乃「別に少し待つくらいいいわよ」
八幡「い、いや、アレがコレでソレがちょっとな……」
雪乃「まったく要領を得ないのだけれど……」
八幡(だ、第二プランだ。1%の閃きよ舞い降りろ……ッ! はっ、99%足りない! 家に来た知り合いを追い返す努力とかした事ねぇよ……)
八幡「え、えぇっとぉ……」
いろは「だ、ダメダメだぁぁぁぁ……っ!」
雪乃「……ドタバタしている割に静かね。それに、小町さんなら「あっ、雪乃さんこんにちわー!」って来そうなものなのだけれど」
八幡「ゆ、雪乃さんこ、こんにちわー……」
いろは「似てない……絶望的の似てない……」
雪乃「でも、そこで誰かと話していたのは確かよね。比企谷くんに電話するような相手はいないんだから」
雪乃「で、小町さんのようなもの。まさか、男性にシスコンのあなたが小町さんのよう、なんて言ったりはしないでしょうから……」
八幡「ひぇっ」(モニター越しの目が怖すぎるんですけどおおおお!)
雪乃「誰か女性でもいるのかしら」
八幡(一色……俺も雪ノ下怖いわ……)
八幡(かくなる上は、一色を小町の部屋にでも隠して……)
いろは「はい、いますよー。雪ノ下先輩こんにちわ」
雪乃「なっ……一色さん?」
八幡「一色!?」
雪乃「……腐っていたのは目だけじゃなかったみたいね、今ならただの犯罪者で済むわ、性犯罪者という一線を越えるのはやめなさい」
いろは「大丈夫ですよー、わたしからお邪魔させてもらってるだけですからー」
雪乃「な、何が大丈夫なのか私には理解出来ないのだけれど……」
いろは「逆に聞きますけどー、わたしが先輩の家にいたら何が大丈夫じゃないんですかー? 別に先輩って目が腐ってるだけで、合意もなしに女の子に手を出すような人じゃないですよねー。あっ、合意があったら分かりませんけどね?」
雪乃「そ、それは……」
いろは「……それは、一年以上近くにいた雪ノ下先輩なら分かりますよね?」
雪乃「…………」
いろは「それに、わたし達、これから夕飯の買い出しに行くので、先輩との勉強会はまた後日にお願いしますねー」
いろは「ポチッと」
そしてわたしは、モニターのボタンを押して接続を切った。
いろは「ふぅー……怖かったですよぅせんぱぁーい……」
八幡「俺、人の返し方って分からないんだけど大丈夫? 助かったんだけど、これ助かってないよね……後日が怖すぎる……」
いろは「大丈夫ですよー。まぁ、雪ノ下先輩と少しぎくしゃくしちゃうかもですけど、先輩に非はありませんし、何かあっても仲直りできますよ」
八幡「……ならいいんだが」
いろは「……少し時間あけて買い物は行きましょっか」
八幡「……そうだな」
まぁ、雪ノ下先輩には悪い事をしたと思っている。半分八つ当たりだったし……。
一年以上近くにいた、とか言われたら、なんか嫌だった。
だってずるい。先輩からしたら、奉仕部はある種の『特別な関係』だし。
先輩からしたら、わたしはただの後輩だし。
先輩にとって、ヒーローの自分が分かる、というわたしがどれほどの価値を持つのか、わたしは分からない。
だから、特別を羨むし僻む。
二人でソファーに座り込む。
けど、そこに会話はなく、チッチッと時を刻む音だけが響く。
先輩の胸中を占めて、今この空間を生み出している感情は何なんだろう?
多分、雪ノ下先輩への罪悪感だろうなぁ。あと後日への恐怖。
こんなに近くにいるのに、近付いてない。
近づけてない。
第四話『モニター越しと隣の距離の違い』
第四話終了!
もうカーテンの間から差し込む朝日には何にも言わないぜ!
贅沢言わないから、朝日で目を覚まして同じベッドで寝ているいろはすを起こしたいだけの人生でした。
どうでもいいけど俺の酉が喪女。
あれ
なんでゆきのんは小町たちが旅行行ったの知ってんだ?
いろは「でー、あれとこれでー」
八幡「……ちょっと多くないか?」
いろは「それは先輩がカップ麺とかで済まそうとしちゃうからそう見えるだけです。料理を作ろうととしたらこれくらいにはなります。本当に専業主夫目指してるんですか? あ、お金これくらいになりますけど大丈夫ですか?」
八幡「へぇ、これだけ買ってこんなもん……大丈夫だ。よし一色、好きなお菓子一つだけ持ってきていいぞ」
いろは「わたしは子供ですか……。まぁ、いいって言うなら持ってきますが」
八幡「そんなに高いのはダメだぞ」
いろは「いや、だから子供ですか……」
なんて言うか、これじゃあ……親戚のお兄さんに連れられてスーパー来た感が否めないっ! 新婚さん感よどこへ! 今あなたを世界で一番欲している人間はここにいるよ!
まぁ、なんて願ったところで先輩が露骨に嫌がるしなぁ……ここはおとなしくお菓子を選ぼう。女の子は甘いお菓子と素敵な何かで出来ているのです。
先輩が押すショッピングカートから単身離れ、お菓子売り場へ。
……よし、小さなお子様の影はなし! 流石に高校生がお菓子売り場は恥ずかしいしね……。なんでだろう、お菓子売り場は大好きだったのに時間という溝がわたし達の間には深々と存在しているわけでもないけど、お菓子売り場っていうのは子供の場所みたいなイメージがある。
とまー、どうでもいい事は置いておいて。
昔から変わらないパッケージのお菓子や見た事のないお菓子とか逆に好きだったのに姿を見せてくれないお菓子とか……色々目に入ってきて目がしみる……。
いやでも、これは心ときめいちゃいますよ。逆に心ときめかない人がいたらそれは置いてきちゃいけないものを人生のどこかに置いてきちゃった人。
いろは「どーれにしよーうっ、かなっ」
八幡「独り言まであざとく聞こえるとか女子高生ってずるいなぁ……」
いろは「のわっ!? い、いたんですか!?」
八幡「お前がとててっと早歩きしただけでついてきてたわ」
いろは「~~~っ」///
八幡「ふっ……いいんだぞ、子供心はいつだって忘れずにな」
いろは「そう言いながら物色するのはずるいです! 先輩も照れてくださいよぅ!」
八幡「何も恥ずかしがる事はないだろ、何なら小町がいようが菓子選ぶぞ。戸塚とだったら……戸塚ならきっとお菓子売り場に目を輝かせてから俺の目線に気づいて頬を赤らめて咳払いして「い、行こう八幡っ」ってちらちら未練がましそうにお菓子売り場を見ながら……」
いろは「あの、通報されないうちに早く選びましょうか」
いろは「あっ、『ひもQ』だ。なんか最近流行ってたなぁ」
八幡「ほう、温故知新というやつか。女子高生も隅に置けないな」
いろは「いえ、『ひもQゲーム』っていうのがあって、簡単に言えば『ポッキーゲーム』のひもQ版です。クラスの子がやってました」
八幡「……違う意味でドキドキしそうだな。喉につまりそうで」
いろは「だいたい一回やったらみんなやめてました」
八幡「それは流行ったと言えるのか……?」
いろは「あっ、『ひもQ』だ。なんか最近流行ってたなぁ」
八幡「ほう、温故知新というやつか。女子高生も隅に置けないな」
いろは「いえ、『ひもQゲーム』っていうのがあって、簡単に言えば『ポッキーゲーム』のひもQ版です。クラスの子がやってました」
八幡「……違う意味でドキドキしそうだな。喉につまりそうで」
いろは「だいたい一回やったらみんなやめてました」
八幡「それは流行ったと言えるのか……?」
いろは「むぅ~……中々に悩みますね」
八幡「なんならアイスでもいいぞ、暑いしな外」
いろは「そうですねー……」
ちょっとばかしお菓子売り場で何も選ばないという背徳感に足を取られながら、冷凍食品売り場へ。
いろは「あぁあぁ~涼しい~」
八幡「早く選ばないと置いてくぞ」
いろは「そんなお母さんみたいな事言わないでくださいよぅ」
……あれ、これはますます新婚さん感から離れているような……。
八幡「選べないならば、選ばなきゃいけない状況下に置かれればいいんだ」
いろは「……つまり?」
八幡「五、四、三二一……」
いろは「カウントダウン!? しかも早い!? えぇっとっ、じゃあこれで!」
八幡「『パピコ』か。手が汚れないはずなのになんかべとべとしてくるアレな」
いろは「はいっ……でもなんでですかね、汚れないはずなのにべとべとするの」
八幡「んじゃ、俺は何にすっかなぁ……」
いろは「ちょっとちょっと、パピコですよパピコ」
八幡「……いや、何度言ってもパピコはパピコだが……」
いろは「パピコの特性を答えよ、です」
八幡「……二つあるからなんか贅沢」
いろは「違いますよ! パピコは分けられるアイスじゃないですか!」
八幡「……ワケル? 奪われるとかじゃなくて?」
いろは「どんな人生歩んできたんですか……」
八幡「親父は自分のアイスも買ってるくせに「パピコは人と分けるために割れるんだぞ」っつって一つ奪ってったり、小町はあげないと声のトーン少し下がるし、他の誰かとアイスとか食べた事ないし……」
いろは「……わたしのパピコ分けてあげますから泣かないでください先輩」
八幡「な、泣いてねぇし、パピコ考えたやつに会ったら一回ぶん殴る覚悟を決めただけだし……」
会計を済ませ、スーパーから出るとまだ日は高く、燦々と降り注ぐ太陽光が乙女の敵過ぎる。
いろは「はい、せーんぱいっ♪ 人生初後輩パピコですよー」
八幡「何、後輩パピコって……ちょっといかがわしいんですけど」
いろは「いらないんですか?」
八幡「……いるいる、何なら二ついるレベル」
いろは「二本もあげませんよ……一袋じゃないですか」
水滴がしたたっている袋を開け、更に水滴のしたたるプラスチック容器をていっと二つに分ける。
いろは「この暑さじゃすぐ溶けちゃいますねー」
八幡「……誰かにもらうパピコって、なんか、なんだ、その……尊いんだな……」
いろは「ふふっ、なんですかそれ」
八幡「お前も約十八年誰にもパピコを分けられずに生きていれば分かる」
いろは「そんなぼっち生嫌ですー」
八幡「おい、せめてぼっち人生と言え。なんか、人間とぼっちが別の生き物みたいになってるだろ」
いろは「ん~っ! この少しだけ大人っぽい味が美味しいんですよ! 夏補正もかかってすごく美味しい!」
八幡「聞いてないねこの子……まぁ、うまいならいいんだけどさ」
先輩が容器を開けた瞬間、ポケットでスマホが震えだした。
まさか、まさかまさか……。
いろは「……先輩、怪人です」
八幡「んぐっ!? まだ一口しか食ってねぇのに……」
八幡「悪い、買った物家まで持ってってくれ。鍵も渡しとく」
いろは「あっ、はい」
八幡「……あと、パピコこれ捨てといてくれ。口つけたあとだしな……」
いろは「あっ……はい……」
八幡「じゃ、早めに帰る」
そう言って、先輩はわたしから怪人の出現場所を聞いて、走って行った。
いろは「……もう」
アスファルトに落ちた雫は汗かパピコの水滴か。
いろは「……あー、二本とも同じくらい食べてあるからどっちがどっちのか分かんないなー」
……。
いろは「~~~っ! 食べた者勝ちだからっ! って、誰にも見られてないしっ!」///
家に帰ってから空容器二本をゴミ箱に捨てた。
先輩の家のソファーに横たわる。
謎の緊張と共に謎のフィット感。
いつ帰ってくるか分からない先輩を待つのは、どこか空しい。
いろは「……先輩、遅いなぁ……」
食品を冷蔵庫にしまってからしばらく。
テレビも明かりも点けないで、たまにスマホの画面を覗くも、ぼっち仮面は苦戦はせずとも、どうやら手間取っている様子。
いろは「……はぁ」
ふとため息をつく。
先輩を待っていた。
いつからか、わたしは目を閉じていた。
……。
…………。
……………………。
ひたり。
いろは「ひょわぁ!?」
首! なんか冷たいの! 当たった!
八幡「お前リラックスしすぎだろ……まぁ、いいんだが」
がばっ、と身体を起こすと先輩が呆れた顔をしていた。
いろは「あ、おっ、お帰り、なさい……?」
八幡「俺ん家だぞ……ただいま」
あ、なんか新婚さんっぽい。
いろは「あっ、それ」
八幡「ああ、買ってきた」
先輩が持っていた物はパピコだった。
八幡「やるよ。……だから、その、なんだ……えーっとだな……」
いろは「……あっ、もしかして分けて欲しいんですか?」
八幡「っ、あーもー、うっせうっせ、全部食え食え」
ぷいっと顔をそらす先輩。なにこれカワイイ……っ。
いろは「いいですよーっ、分けましょうよーせーんぱーいっ」
八幡「いっ、いらんいらんっ。やっぱパピコは一人で食うのが至高だわ」
いろは「そんな事言ってないで食べましょーよーっ」
結局しばらくの押し問答の末、先輩に一本食べさせた。
なんだか幸せな気がする。うん、幸せ。
わたしと先輩の心の距離がどれくらいかは、分からない。
けど、少しずつでも、近づけたら、近づけていられたら。
第五話『それはとてもイイコトな気がする』
第五話終了!
寝たいZE! 眠いZE! 寝るZE!
安心してくれ>>72! 俺は後付けの天才と呼ばれたかった人間だ! ごめんなさい。あとでフォローします。
違和感とかあったらご報告お願いします……。
書きます……そろそろ書きます……。先日、OVAも届いていろはす成分ガンギマリですし!
あと、酉消えてて間違っているかもですが>>1です。間違ってたら微調整して元のに戻します。
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