周子「真実ゲーム!」 (18)
周子「ひまー」
奏「……」
周子「奏ちゃんひまー」
奏「そうね」
周子「え、なにその反応」
奏「私は暇じゃないもの」
周子「ふーん、さっきから手に持ってる雑誌、めくってないのに?」
奏「誰かさんがうるさいから集中できなかったのよ」
周子「しゅーこ黙りまーす」
奏「……」
周子「……」
奏「徐々に近づいてくるのをやめなさい」
周子「えー」
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周子「いやーでも、まさかこんなことになるとはね」
奏「全くね」
周子「LiPPSのトークショーのはずが、フレちゃんと志希ちゃんが食べ歩きする公録番組に急遽変更されるなんて、まさかだよねー」
奏「やりたいって言い出す二人もそうだけど、ok出すスタッフもスタッフよ」
周子「ま、みんな喜んでたしいいんじゃない?」
奏「お目付け役に付いて行った美嘉とプロデューサーは喜んでなかったように見えたけど」
周子「いやいや、あの二人は振り回されるのを楽しんでるところあるでしょ」
奏「少なくとも周子にそう言われたくないとは思ってそうね」
周子「わ、今日の奏ちゃん辛辣」
奏「それで、あなたはサボりなの?」
周子「んー?」
奏「周子は便乗担当でしょう。てっきり付いて行くと思ったのに」
周子「それもいいかなと思ったんだけどね、誰かさんがこっそり残ろうとしてたから」
奏「あなたみたいな人に見つかりたくなかったから、とは考えなかったのかしら?」
周子「どうかなー、私にはかまってほしそうな尻尾が見えたけどね」
奏「そうであってほしい、と思う気持ちがそう見せるのよ」
周子「哲学的やねー」
奏「で、本当のところは?」
周子「たまには年上のお姉さんらしいことしようかなーって」
奏「はあ……」
周子「あ、ごめん。怒った?」
奏「いいえ」
周子「怒ってる時の奏ちゃんは瞳孔が細くなるからすぐわかっちゃうんだよー ほれほれ」
奏「それ、猫じゃない……」
周子「じゃ、みんなが戻ってくるまで暇だしなんかしよっか」
奏「唐突ね」
周子「えー、いいじゃん遊ぼうよ」
奏「今日はもう騒がしいのはお腹いっぱいなの」
周子「うーん、じゃあ静かに、座ってなんかしよう」
奏「あら素直」
周子「この柔軟性ですよ奏さん」
奏「自分で言わなきゃ満点ね」
周子「お褒めの言葉もいただいたところで、周子ちゃんから提案があります」
奏「はいはい、聞くだけ聞いてあげる」
周子「真実ゲーム!」
奏「やっぱり聞かないほうがよかったわ」
周子「説明しよう真実ゲームとは! 片方が『真実か挑戦か』と問いかけ、もう片方がどちらかを選ぶ。そして、真実なら出された質問に正直に告白を、挑戦なら出された命令を絶対聞かなくてはいけない。いわば、海外版王様ゲーム。意地と羞恥のぶつかりあい…… 逆らえないスリルと快楽…… そんな闇のゲームなのだー!」
奏「語るに落ちてるわよ」
周子「いいじゃんいいじゃん。この前ほら、一緒に見た映画のなかであったからさ」
奏「ああ…… 意外とちゃんと見てたのね」
周子「誘われた映画くらいちゃんと見るって。それよりさ、やろう?」
奏「それ、私にメリットはあるの?」
周子「いつもは自由気ままで小悪魔的魅力をふりまく周子ちゃんに、あんなことやこんなことをさせるチャンスだよ」
奏「そういうのは志希やフレデリカに頼めばいいじゃない」
周子「いやいやその二人じゃだめなの」
奏「うん?」
周子「奏ちゃんにさー、たまにはいたずらされたい、みたいな?」
奏「どこまで本気なんだか」
周子「やるの? やらない?」
奏「はあ…… 少しだけなら付き合ってあげるわよ」
周子「お、言ったねー?」
奏「その代わり、負ける気はないから。やめるなら今のうちよ」
周子「おー怖い怖い」
周子「じゃあ私から」
奏「いえ、私からよ」
周子「え? こういうのは言い出しっぺの私からでしょ」
奏「私は既にあなたの挑戦を飲んだの。次は私の番、でしょ?」
周子「屁理屈だー 横暴だー」
奏「ふふ、周子の口から出る言葉とは思えないわね」
周子「しょうがないなー こういう時は譲るのが大人ってもんだよね」
奏「言ってなさい。じゃあ『真実か、挑戦か』」
周子「『真実』」
奏「あら、てっきり周子のことだから『挑戦』かと思ったわ」
周子「嘘つきな奏ちゃんに、裏表のないところを見せてあげようかなってね」
奏「そう。じゃあ質問、本当はなんで私のところに来たの」
周子「え、いきなりそれ聞いちゃう?」
奏「嫌ならあなたの負けよ。『真実』でしょ」
周子「うー……」
奏「ほら、どうするの?」
周子「やっぱりなし、『挑戦』にしてー」
奏「自分で言ったことくらい守りなさい。ほら、『真実』よ」
周子「奏ちゃんが……」
奏「私が?」
周子「奏ちゃんがそのまま消えちゃいそうに見えて……」
奏「は?」
周子「いや、なんかな、急にそんな気がして…… うちらがふざけてばっかりいるからLiPPS嫌になってたりとか」
奏「馬鹿ね、そんなわけないでしょう」
周子「ほんまに?」
奏「ええ、むしろこんなに面白い場所もないと思ってるわよ。リーダーってのも悪くないし」
周子「……」
奏「周子?」
周子「もー、ひとがせっかく恥ずかしいこと言ってるのになにその余裕!」
奏「あなたが勝手に喋ったんじゃない……」
周子「もう怒った! はい奏ちゃん、『真実か挑戦か』!」
奏「『挑戦』」
周子「ちょ、そこは『真実』でしょ」
奏「むしろ私くらいになると語るほどの真実なんてないのよ」
周子「むぐぐ……」
奏「ほら、何をすればいいの? なんでも、してあげるわよ。周子が本当は私に何をさせたいか言ってごらんなさい」
周子「なにこれ周子ちゃんがヘンタイみたいじゃん……」
奏「違うの?」
周子「思ってもないくせに…… うーん、どうしようかな、口いっぱいに八つ橋を頬張るとか」
奏「八つ橋なんてこの場にないじゃない」
周子「確かに。あ、わかった、じゃあTulipを1コーラスアカペラで歌う!」
奏「『忘れて来てあげたのよ 自分の傘は』」
周子「うわ、うまっ! 本人みたい」
奏「本人だもの」
周子「しまった」
奏「そもそも散々練習で歌ってきてるんだから別に今更あなたの前で歌ったところで恥ずかしくもなんともないんだけど……」
周子「これは周子ちゃん一生の不覚……」
奏「はい、私の番ね」
周子「が、しかし。もう一番恥ずかしいこと言ったから何も怖くないもんねー」
奏「自爆だったけどね」
周子「ほらほら、無敵の周子ちゃんにお題を出しなさい」
奏「『真実か、挑戦か』」
周子「ふ、『真実』!」
奏「今の体重は?」
周子「え」
奏「最近いろいろなところに顔出しつつ何かとお菓子とか食べてるけど、今の体重は?」
周子「え」
奏「曲のレパートリーも全部覚えきったし、合わせ練習くらいしかしなくなったじゃない? 運動量が減ってどのくらい体についたのかなと思って」
周子「奏さん……」
奏「早く」
周子「それだけはご勘弁を……」
奏「あなたがお風呂あがりに体重計に乗ってるところを覗くことだってできるのよ。自分から言ったほうが楽になれるんじゃない?」
周子「むむむむー!!!」
奏「唸ってもだめ」
周子「……45kg」
奏「それ、あなたの公式プロフィールの体重でしょう」
周子「なんで知ってるん!?」
奏「私と身長1cmしか変わらないのに周子の方が重いんだなと思って覚えてたのよ」
周子「奏ちゃんさあ、スタイルいいのに軽すぎない? 絶対サバ読んでるよね」
奏「さあ、どうかしら。でも秘密は女を美しく見せるって言うでしょ」
周子「あ、じゃあ私も秘密ってことで。終わり!」
奏「おっと、一本取られたわね」
周子「ふー……危ない危ない」
奏「じゃあ周子がいっぱいいっぱいになったところでこの辺で終わりましょうか」
周子「いやいやいや、待たんかーい」
奏「これ以上周子をいじめるのも、さすがに私の良心が痛むのよ」
周子「めっちゃ笑顔やないかーい」
奏「……ふふふ」
周子「はー。まあ、奏ちゃんが笑ってくれたからいいや」
奏「あら」
周子「だから勝負に負けたけど、私の勝ちってね」
奏「しょうがないわね」
周子「めでたしめでたし」
奏「なかなか面白かったわ、ありがとう周子」
周子「いえいえー」
奏「……」
周子「……」
奏「……」
周子「あ」
奏「何か悪いこと思いついた顔ね」
周子「ふっふっふ、負けっぱなしで終わるわけにはいかないよね」
奏「さっきと言ってることが違うじゃない」
周子「そもそも奏ちゃんから始まったんだから周子ちゃんで終わるべきだと思わない? 一回多いのずるいじゃん」
奏「はいはい、これで最後ですからね、周子ちゃん」
周子「いつまでその余裕を保てるかな、『真実か挑戦か』!」
奏「もちろん『挑戦』」
周子「かかったな!」
奏「は?」
周子「奏ちゃんは最後でも絶対『挑戦』を選ぶと思ったもんねー 私からのお題はこれ、どどん!」
奏「今日のあなたは随分賑やかね……」
周子「奏ちゃんは私にキスする!」
奏「……周子?」
周子「あれあれ? どうしたの、キスキスちゅっちゅ言ってる奏ちゃんならお遊びのキスくらいできるよね?」
奏「わかったわ、聞いたのね遊園地の時に文香とありすに言ったことを」
周子「そのとおり。ばっちり聞いたからね。『周子に迫らないのは、本当にしちゃったら困るから』って言ったんでしょ? いやー、まさか奏ちゃんにそこまで思いをよせられるなんて、さすがの周子ちゃんでもわからなかったな」
奏「やれやれ、どちらが口を滑らせたのかしらね。まあ、いいんだけど」
周子「ほらほら、余裕ぶってないでキスしてみー? 唇はしゃべるためじゃなくー?」
奏「×(kiss)」
周子「!?」
奏「はい、これで満足かしら? お姫様」
周子「え、えー、な、なんで」
奏「頬にしただけで大げさね」
周子「や、だって……あかんって、うちまだ心の準備が」
奏「あら、珍しく耳まで真っ赤の周子が見れたわ。写メをとってみんなに送らなきゃ」
周子「わー! は、恥ずかしいわ……みんといて……」
奏「教えてあげましょうか?」
周子「ふえ?」
奏「そう言ったのがあなたの耳に届いたら、勝手に勘違いして意識してくれるかと思ったのよ」
周子「……」
奏「普通にやったって動揺しないでしょ? だから種を蒔いておいたの、こういう時のためにね」
周子「う、嘘つき! 奏ちゃんの嘘つきー!」
奏「嘘なんてついてないわ」
周子「うう、うううう………」
奏「さて、そろそろいい時間ね。ゲームはおしまい、みんなを迎えにいきましょう」
周子「はー…… かなわんわー」
奏「……本当とも言ってないけどね」
周子「え?」
(Unkiss me)
以上です。
初投稿でしたので、何か不手際があれば申し訳ありません。
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