【ガルパン】河嶋桃の1日 (20)
大洗女子学園、河嶋桃の朝は早い。
目覚ましが鳴る直前に目を覚まし、ベルがなるのと同時に音を止める。
桃「朝か」
カーテンを開け、大きく伸びをして、欠伸を一つ。
桃「あと五分......」
二度寝である。ちなみに彼女の目覚ましのスヌーズ機能はオフになっている。
ジリリリリリリ
桃「はい.....」
柚子『おはよう桃ちゃん。ちゃんと起きてる?』
桃「起きているに決まっているだろう。桃ちゃんと呼ぶな!」
河嶋桃の1日は同級生、小山柚子のモーニングコールから始まるのだ。
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モーニングコールで目覚めたあと、洗面を済ませ朝食にトーストと作り置きのボイルウィンナー、スクランブルエッグを温めてコーヒーと共に手早く食事をとる。
桃「毎朝柚子が味噌汁作ってくれないかなぁ」
実は朝は和食派なのだが、以前インスタントの味噌汁作りに失敗してからは洋食で済ませているのである。
桃「忘れ物は、ないな。予定の確認も、よし」
朝食後には、スケジュールと持ち物を確認し、他の生徒より早く登校する。
桃「しまった。メガネを忘れていた」
時々つけたまま寝てしまうため、うっかり忘れることもある。
桃「うむ、一番乗りか」
誰もいない生徒会室に荷物を降ろし執務机に向かう。
柚子「おはよう。今日も早いね」
桃「生徒会の役員として当然だ」
ちなみに、小山柚子は、自分と河嶋桃の弁当を作っての登校である。
柚子「あ、これ今日の新聞」
桃「ありがとう」
さらに、生徒会室に来るより先に配達された新聞を各部署に届けていたのである。
桃「朝の生徒会室、と言うより校舎の雰囲気は好きですね。静かで落ち着いていますから」
インタビューで語る通り静かな室内にはキーボードの打鍵音のみが響く。非常に集中していて、視線以外は動かず彼女が優秀な役員であることを伺わせる。
柚子「お茶ここに置いとくね」コト
桃「ありがとう」ズズッ
ちなみに、彼女が今やっている仕事は本来生徒会長である角谷杏の業務なのだがそのことには気づいていない。「広報業務も大変だなぁ」くらいの感覚である。
朝の業務を終えたあとは各々のクラスへ向かい、授業を受ける。
生徒会役員の仕事は生徒自治と言う理念から、社会人顔負けの仕事量であるが、それでも彼女は本文たる学業を疎かにはしない。
桃「む、この前の小テスト82点か」
この結果にも満足はしない。
柚子「あ、桃ちゃん点数上がったね」
桃「桃ちゃんと呼ぶな!そういう柚子はどうだったんだ?ここのところ忙しかったから点数が下がったなどと」
柚子「わたし96点だったよ」
上には上がいるからである。
昼休み。一般の生徒が各々休息を取る中でも生徒会のメンバーは業務に追われる。
桃「大変とは思わない。と言えば嘘になりますが、自らの職責を果たすことは重要ですから」
彼女の真面目な性格がそうさせるのか、朝の生徒会室とは打って変わり、戦場のような執務室で的確に指示を飛ばす。
桃「この件に関しては小山か会長の指示を仰げ。ん?備品についてならこのリストの通りに補充を」
この姿を見て彼女の役職を副会長と勘違いする者もいるほどである。
桃「そうだ、ついでに干し芋を買い足しておいてくれ、いつものメーカーのやつだ」
この指示も毎日であるため、彼女の好物は干し芋だと思われている。
午後からは選択授業である戦車道の授業に参加する。
戦車道。言わずと知れた乙女の嗜みである。
業務に追われ、学業にも手を抜かない彼女は、教養たる戦車道においてもその能力を発揮する。
桃「戦車道はその性質上各所への連絡や調整が不可欠です。競技においては、隊長である西住ほど役立てないのでこういった面でサポートできればと考えています」
謙虚な姿勢も戦車道を通して学んだものであろう。
桃「うてー!うてー!」
柚子「桃ちゃん当たってない......」
練習中は人が変わったかのように勢いがよくなるが、それも彼女に取って安心して過ごせる時間だからかもしれない。
みほ「河嶋先輩ですか?......そうですね、普段は頼りになるしかっこいいです」
大洗女子学園の隊長、西住みほも彼女を信頼していることがわかる。
放課後も生徒会の業務は多忙である。
桃「うむ、この案件については二年生を中心に進めてくれ。大丈夫だ。我々が最終確認を行う」
彼女は三年生。すでに引退が迫っている。後進の育成についても配慮をしなければならない。
桃「後輩の育成は重要です。我々はいつかいなくなるわけですから、その後を託せる人材を育てなければいけません。我々も先輩からさまざまなことを教えてもらい学びましたから」
先代から次代へ。この話を語る彼女はどこか寂しそうであった
桃「なんだ、どうした」
生徒会室の一角が騒がしくなる。トラブルのようだ。
桃「なにぃ!どうしてこんなことになった!!」
ミスへの叱責。副会長である小山がフォローに入る。
桃「まぁいい。起きたものは仕方がない。あとはこちらでやる。柚子、行くぞ」
厳しく叱った後は、自らがその後処理に回る。きつい口調になるのも、後輩への期待があればこそである。
成長を促すための優しさなのだ。
二人は足早に生徒会室から役員の執務室へと移動する。
桃「どぉ"しよ"ぉ"柚子ちゃ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"!!!」
柚子「よしよし、大丈夫だよぉ」
.......不測の事態に狼狽えても親しいもの以外にはその姿を見せない。信頼できる仲間がいてこそである。
トラブルに見舞われながらも、業務は続く。
桃「そうだ、これはこれでいい。さっきは怒鳴ってすまなかった」
怒ることだけが後輩への指導ではない。よくできれば褒め、やる気を起こさせることも重要なのである。
桃「あぁ、そうだ。ついでに頼みたいことがあるんだがな」
桃「干し芋を買ってきてくれ。残りが少なくなってきていてな」
業務の多さからその場を離れられないことが多い彼女はよくこのように買い物を頼むことがある。
そのため、彼女は「本当に干し芋好きだなぁ」と思われている。
テキパキと業務をこなし、それでも彼女達が生徒会室を後にするのは辺りが暗くなってからである。
杏「みんなー、今日も1日お疲れ様ぁ」
生徒会長の労いの言葉で解散となる。執務中彼女が何をしていたかは、業務の多忙さゆえか誰も知らなかった。生徒会室にはいたような気がするが、取材班も詳細を把握できなかった。そのくらい忙しいのである。
桃「では、皆気をつけて帰るように」
彼女はメンバーを見送ってからようやく帰り支度を始めるのである。
桃「皆を見送った後のがらんとした生徒会室を見ると、今日も一日よく頑張ったなと思います。疲れも感じますが、満足感と言うか、達成感がありますので、明日も頑張ろう。という気持ちになれるんです」
そんな思いを胸に彼女は一人、自宅へと戻る。
桃「ただいま」
柚子「おかえり桃ちゃん。ご飯出来てるよ。それともお風呂にする?」
桃「今日は先にシャワーにする。暑くて汗をかいた」
柚子「もう、ちゃんとお湯に浸からないと疲れ取れないよ」
桃「ゆっくりするとご飯が冷めるだろう」
仲間想いの友人との会話もいつも通りである。決して新婚の夫婦ではない。
桃「いや、柚子のご飯はおいしいな。本当に毎日ありがとう」
柚子「桃ちゃんわたしが作らないとすぐにコンビニのお弁当とかで済ませちゃうんだもん。あ、ほっぺたついてる」
桃「わたしも自炊出来るようにならないとなぁ。柚子ちゃんに毎日とは言わないでもお味噌汁作ってあげたいし」
柚子「もう、そういうのはわたしがやるよ。それに桃ちゃんは生徒会の仕事頑張ってくれてるし。いっつもありがとう」
桃「桃ちゃんと言うな。柚子ちゃんもありがとう」
柚子「うん」
こうして夫婦.....失礼しました、友情を確かめ合い、明日への活力にしていくのである。(これ本当に付き合ってないんですよね?)ひそひそ
柚子「それじゃ、明日の朝の分冷蔵庫に入れてあるから。後ちゃんと寝る前に歯を磨かないとダメだよ」
桃「分かってるよ、おやすみ」
柚子「おやすみー」
こうして、河嶋桃の1日が終わる。
これからも生徒会広報として彼女は活躍していくだろう。
それは彼女一人の力ではなく、多くの仲間に支えられているのである。
提供:大洗女子学園放送部
取材協力
大洗女子学園生徒会執行部
大洗女子学園選択科目戦車道履修者
FIN
終わりです。HTML依頼出してきます
優秀な桃ちゃんを書きたくて書きました。劇場版だとすっごい仕事できる感じでかっこよかったです。
多分、桃ちゃん陰で干し芋先輩って呼ばれてる
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