ペパロニ「姐さん!黒森峰から試合の誘いです!」
アンチョビ「何!?」
※若干の百合要素・オリ設定・独自解釈注意
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1469182449
対戦のルールはフラッグ戦、どちらかのフラッグ車が走行不能となった時点で勝利とする
編成戦車は互いにカルロ・ヴェローチェが4両 隊長車のセモヴェンテ1両の合計5両の編成とする
試合で使った戦車の修理費用はこちら側が提供することとする
もしこの試合でアンツィオが勝利すれば、P40の修理もこちらで請け負う
だが、もし我々黒森峰が勝利した場合はこちらのある願いを1つ、聞き入れてもらう
では、良い返事を待っている 黒森峰学園 西住まほ
ペパロニ「全国大会が終わっていよいよ夏休みだー!って思ったのにぃ!」
ペパロニ「しかもよりにもよって黒森峰とッス!」
カルパッチョ「けど、向こうは慣れてないこちらの戦車を使うことになります…十分勝ち目はあるかと」
アンチョビ「…」
ペパロニ「ね、姐さん?どうしたんだい?」
アンチョビ「………」
アンチョビ「…………この試合、受けるぞ」
ペパロニ「わかりました!姐さんがそういうならあたしらは付いて行くっス!」
カルパッチョ「では、さっそくお返事を…」
アンチョビ「返事は私が書く」
カルパッチョ「え?いいんですか?」
アンチョビ「私が書きたいんだ、書かせてくれ」
カルパッチョ「は、はい」
アンチョビ(まさか…向こうから声をかけてくるとは…ね)
アンチョビ(まぁ、近々挑むつもりだったけど…)
アンチョビ(望むところだよ…まほちゃん)
隊員1「隊長!アンツィオから返事が来ました」
まほ「ありがとう」
エリカ「対外試合をすると言っておられましたが…まさかアンツィオとは」
まほ「……悪いか?」
エリカ「いえ、どのような相手でも全力で戦う、それに対して不服なところはありません」
エリカ「ですが、なぜわざわざこちらに不利な条件や報酬を着けてまで?」
まほ「…気になるか?」
エリカ「ええ、気になります、それに我々が勝った時のこの一文も…」
まほ「それに関してはは…もう既に決めてある」
エリカ「そうなのですか?」
まほ「あぁ…今回は、私が指揮を執る」
まほ(返事はオーケーか、よかった…)
まほ(なに?ウチの戦車でいきなり試合はさすがに難しいだろうから練習期間を3日設ける)
まほ(だから出来る限り速く来い…か)
まほ「優しいのは…相変わらずだな…」
まほ「一週間後が楽しみだよ…ちよちゃん」
アンチョビ「…」
ペパロニ「姐さん!どうしたんスか、思いつめたような顔をして」
アンチョビ「何、昔を思い出してただけだ」
ペパロニ「そういえば、アンチョビ姐さんはどうして名古屋からここまで来たんっスか?」
アンチョビ「忘れたのか!?前にも話したが…このアンツィオ高校の戦車道を救うためだ!」
アンチョビ「2年掛かってしまったが、もう私が居なくなっても大丈夫なくらいにはなったはずだ!」
アンチョビ「来年は私の出来なかった悲願のベスト4、じゃなかった!優勝を目指してくれよ!」
ペパロニ「はい!」
アンチョビ「…」
ペパロニ「しかし…黒森峰と試合って…なんでこのタイミングなんですかね?」
ペパロニ「というかウチと黒森峰って何も接点がないような気が」
アンチョビ「そうだな」
ペパロニ「そうっスよね…じゃあどうしてなんですかね?よくわかりません」
アンチョビ「…………」
アンチョビ「…まぁ、話してもいいか」
アンチョビ「…実はな…私は最初、アンツィオのスカウトの申し出は断るつもりだった」
ペパロニ「え?そうだったんスか!?」
アンチョビ「あぁ、私は確かに名古屋出身だが、実は…中学時代は熊本にいた」
ペパロニ「えええ!?それは初耳ッス!」
アンチョビ「しかも、当初の予定だとそのまま黒森峰に進学する予定だった」
ペパロニ「姐さんが…黒森峰に…考えたくもねぇっスね!」
アンチョビ「ペパロニ…カルパッチョを呼べ」
アンチョビ「いい機会だ、話をしよう」
アンチョビ「なぜ私がアンツィオに来たのか」
アンチョビ「そして、私、ドゥーチェ・アンチョビの中学時代と」
アンチョビ「その同級生、西住まほについて…な」
ペパロニ「…な、なんだってええええええ!?」
まほ「というわけで…アンツィオと試合を行うことになった」
みほ「アンツィオと試合!私も見に行ってもいい?」
まほ「あぁ…もっとも、勝てるかはわからないがな」
みほ「お姉ちゃんなら大丈夫だよ!」
まほ「いや…私は昔、彼女に何度も負かされている」
みほ「え?」
まほ「…そうか、みほは別の学校に通っていたから、詳しいことは知らなかったんだな」
まほ「安斎智代美ことドゥーチェ・アンチョビは」
まほ「私の中学時代の同級生だ」
みほ「え・・・えええええええ!!!」
まほ「…昔話でもしようか」
カルパッチョ「呼ばれて来ましたが…まさか、ドゥーチェとまほさんにそんな関係があったなんて」
アンチョビ「おぉ、来たか、それじゃあ、話を始めよう」
アンチョビ「西住まほ…」
アンチョビ「日本最高の戦車道の流派の一角、西住流を受け継ぐもの」
アンチョビ「彼女は素晴らしい戦車乗りだ」
アンチョビ「通信手、砲手、装填手、操縦手、車長」
アンチョビ「どれをやっても、超が付くほどの一流だった」
アンチョビ「私は戦車道の特待生として、彼女と同じ戦車道の名門校に入学した」
アンチョビ「自慢じゃないが、地元での戦車道で私はそれまで、誰にも負けたことがなかった」
アンチョビ「だが、戦車道に関することの全てにおいて、彼女は私の二段ほど上を行っていた」
アンチョビ「まさに、別格の存在だった」
アンチョビ「私は、井の中の蛙だったのさ」
アンチョビ「それでもなんとか自分を奮い立たせて、必死に努力して、3年の時には副隊長にまでのし上がったが…」
アンチョビ「最後まで、隊長にはなれなかったんだ」
まほ「安斎智代美…彼女は、とても明るい子だった」
まほ「隊長や副隊長に意見することも多く、よく可愛がられ、それと同時に努力家でもあった」
まほ「その努力のかいあってか、彼女はすぐに車長になった」
まほ「彼女の駆る戦車はいつも楽しそうに暴れていた…」
まほ「三年の時には、私が隊長、彼女が副隊長となった」
まほ「紅白戦では何度も彼女に負かされたよ」
まほ「一応、戦績は私の勝ち越しだがな」
みほ「二人の関係…私、全く知らなかった」
まほ「…私は、中学の戦車道の全てにおいて頂点に立つつもりでいた」
まほ「西住流を受け継ぐものとして…当然のことだと思った」
まほ「だが…どうしても、彼女に勝てないものがあった」
みほ「…それって?」
まほ「……カリスマだ」
カルパッチョ「それでも強豪校の副隊長、やっぱりドゥーチェはすげぇッス!」
アンチョビ「当然だ、私は常に隊長を目指していたからな」
アンチョビ「まぁ、最後の最後まで、隊長の座に座ることはできなかったがな」
アンチョビ「隊長になれなかったまほちゃんとその日に約束したのさ…絶対に共に頂点を取る…とな」
アンチョビ「まほちゃんは少し笑いながら答えてくれた」
アンチョビ「そして、私達の学校は快進撃を見せて、とうとう全国大会の決勝戦への切符を掴んだんだ!」
ペパロニ「おふたりともすごいっス!」
アンチョビ「だが、実は決勝戦の前に……ある事故が起きたんだ」
まほ「彼女の人の心を掴む力は…素晴らしいものだった」
みほ「確かに、アンツィオの士気は常に高かったです」
まほ「付いたあだ名が、仏の安斎、鬼の西住だ」
まほ「よく西住派、安斎派に分かれて、試合を行ったものだ」
みほ「あ、あははは…」
まほ「まぁそんな派閥のことなど気にすることがないほどに私と安斎は仲が良かった」
まほ「いつも戦車道と指揮、作戦の話ばっかりだったが、安斎と過ごす時間は・・・楽しかった」
まほ「あぁ、彼女も当初は多くの高校のスカウトを蹴り私と共に黒森峰に入るつもりだった」
まほ「…あの事故が起きるまではな」
みほ「じ、事故って…」
まほ「全国大会決勝戦の数日前、最終チェックとして戦った紅白戦の途中」
まほ「彼女の乗った戦車が砲撃の衝撃を受けて」
まほ「崖から転落した…」
みほ「・・・!!」
まほ「それは、乗組員全員が意識不明となる大惨事になった」
みほ「・・・」
まほ「全員一命は取り留め、意識も回復したものの、怪我の影響で彼女は1年半ほどの入院とリハビリを迫られた…らしい」
みほ「…らしい?」
まほ「病院に向かったその日に…安斎は…ちよちゃんは」
まほ「私の分まで精一杯頑張れ、だが決して無理はするな」
まほ「というボロボロの字で書いてある涙で濡れていた手紙を残して」
まほ「私達のもとから消えた」
カルパッチョ「そんなことが…」
アンチョビ「正直、今でもこうして立っていられるのが不思議なくらいだ」
アンチョビ「今思うと、後遺症とかも何もなかったのも救いだったな」
アンチョビ「だが、どういう過程であれ戦車道で功績を残すことができなくなってしまった以上」
アンチョビ「特待生であった私はあの学校にはいられなくなってしまった」
ペパロニ「そんな!厳しすぎるッス!」
アンチョビ「後に知ったんだが、まほちゃんが学校に残れるようにと色々と手配してくれたらしいが…」
アンチョビ「どちらにせよ父や母が心配したこともあって、私は、入院してからすぐに、地元に戻ったんだ」
アンチョビ「まぁ、皆に見せられる顔がなかった…というのもあったのだがな」
カルパッチョ「…………」
ペパロニ「…で、でも、それでも、黒森峰に行く選択肢はあったはずっス!」
アンチョビ「あぁ、そうだ、私も、当初はリハビリが終わってから、万全の状態で黒森峰に入るつもりだった」
アンチョビ「けど、スカウトの手は黒森峰を始め、私から少しずつ離れていった」
カルパッチョ「そんな…」
アンチョビ「高校1年の中盤まで、私は何も出来ない状態になってしまったのだからな」
アンチョビ「当然ではあったが…ショックも大きかった」
アンチョビ「彼女と戦車道を歩むことは…出来なくなってしまった」
アンチョビ「治らない怪我を見ていると、戦車道を辞めたい…そう思う日もあったんだ」
カルパッチョ「……」
ペパロニ「……だから、ドゥーチェは練習や試合の時にいつも無茶をするなって…」
アンチョビ「あぁ、もう二度と大好きな戦車道であんな思いはしたくないし、それを見るのも絶対に嫌だからな」
カルパッチョ「でも、それで終わりじゃないんですよね」
アンチョビ「あぁ、入院先の病院のテレビで決勝戦を見た時」
アンチョビ「紅白戦ではなかった、鬼気迫る表情で相手の戦車を次々と撃破していくまほちゃんを見て…」
アンチョビ「私の目に消えかけていたはずの火が、燃え盛った」
アンチョビ「彼女と並んで共に戦うことができないのなら」
アンチョビ「戦車道で彼女と本気で戦い、そして彼女を越える」
アンチョビ「そう思うようになった、そして私は…スカウトの手を残していてくれた」
アンチョビ「アンツィオ高校に入ったんだ」
まほ「どんなことがあっても、前に進み、勝利をつかむ」
まほ「それが…西住流だ」
みほ「…………」
まほ「ちよちゃんを探す時間も、悲しんでいる時間も、私にはなかった」
まほ「共に頂点を取る…という約束は果たせなかった…」
まほ「だが、私達の戦車道が最強であると証明するために、私は決勝戦に望んだ」
まほ「あるいは優勝旗を持って帰りでもすれば、彼女帰ってくるとでも思っていたのかもしれないな」
まほ「私はチームを1つにまとめあげ、決死の思いで戦い、勝利した」
まほ「しかし、彼女は戻ってこなかった」
みほ「お姉ちゃんの中学時代に、そんなことがあったんだ…」
まほ「今度の試合…失ってしまった関係を取り戻すために…私は戦う」
まほ「そして、私が必ず勝つ」
みほ「…うん、お姉ちゃん、頑張ってね!」
アンチョビ「だが、結局、高校の公式戦で黒森峰と対戦することはなく、私の高校の戦車道は終わった」
アンチョビ「そう、終わったが…」
アンチョビ「どうしても戦いたい、今の自分の力を試してみたい」
アンチョビ「彼女にどれだけ近づいたか…」
アンチョビ「そう思っていた矢先に、手紙が届いた」
アンチョビ「対決の誘い、しかも願ってもいない好条件だ」
アンチョビ「すこし想定していたものとは異なるが、ようやく、彼女と戦える」
アンチョビ「だが、勝つためには私だけの力じゃ足りない…お前達の力を借りる!」
ペパロニ「了解っス!」
アンチョビ「試合は一週間後だ…頼んだぞ!」
・・・・・・
数日後…
アンチョビ「・・・来たか」
アンチョビ「・・・久しぶりだな、西住」
まほ「あぁ、3年振りだな」
まほ「・・・ちよちゃん」
エリカ「ブー!!」
まほ「エリカ!どうかしたか?」
エリカ「い、いえ、なんでもないです」
エリカ(ちよちゃん、ちよちゃんって!)
アンチョビ「その名で呼ぶな!今はドゥーチェ・アンチョビだ!」
まほ「そ、そう・・・か」
アンチョビ「・・・・・」
まほ「・・・・」
アンチョビ「あー、わかった、ごめんごめん、好きに呼んでくれ」
アンチョビ「私も、昔のように、まほちゃんと呼ぼうか」
アンチョビ「3日間と試合中は、その戦車は好きに使ってくれて構わない」
アンチョビ「ただし、ちゃんと整備はしておいてくれよ」
まほ「あぁ、大切に使わせてもらおう、それと…」
まほ「今回のメンバーに含まれてない暇なメンバーが"勝手に"P40の修理を行っている」
アンチョビ「…!」
アンチョビ「私達が勝たないと修理はしないはずじゃっ!」
まほ「そうだ、だが……あくまであいつらが"勝手"にやっていることだ」
まほ「あの調子なら、おそらく2日で修理は終わるだろう」
アンチョビ「待て……それじゃあ、我々アンツィオが勝った場合はどうなる?」
まほ「そうだな、条件を変更しなくては…」
まほ「よし、ならば、こちらが勝った場合と同じだ」
まほ「可能な範囲でそちらの要望に1つ応えよう」
アンチョビ「え、いいのか!?」
まほ「勝てたらの話だがな、もちろん、素直に負ける気はない」
アンチョビ「よし!じゃあ、お互いの無事と健闘を祈って…」
まほ「あぁ…」
がしっと強く握手をかわす
アンチョビ「よろしく頼むぞ、まほちゃん」
まほ「あぁ、ちよちゃん」
・・・・・
練習期間三日めの夕方
まほ「これで練習は終わりだ!あとは明日に備えて、じっくりと休むこと、以上!」
アンチョビ「…おう、お疲れ様、どうだい?食事でも」
まほ「あぁ、頂くとしよう、すまないな」
アンチョビ「いいっていいって、このくらい」
アンチョビ「戦車を修理してもらえるんだからお安い御用さ」
まほ「…そうか…」
アンチョビ「………」
まほ「……」
アンチョビ「………78戦23勝45敗」
まほ「!」
まほ「覚えていたんだな…」
アンチョビ「あたりまえだ、まほちゃんとの対戦記録は全部大事にノートに記録してある」
アンチョビ「学ぶことが今でも沢山あるからな」
まほ「努力家なところも、変わらないのだな」
アンチョビ「このくらいのこと、やって当然だ」
まほ「そうか…」
アンチョビ「…………」
アンチョビ「明日は多分、これが私の高校最後の対外試合になる」
まほ「受験勉強にはまだ速いんじゃないか?」
アンチョビ「親離れには、時間が必要だからな、そちらの方はその点は大丈夫そうだが」
まほ「あぁ、優秀な新隊長がいるからな」
アンチョビ「ま、私の方もあの二人なら引っ張っていけると思うけど…」
アンチョビ「まほちゃん…私はこの試合で高校三年間…いや、これまでの全てをぶつける」
アンチョビ「…負けない、じゃなかった!絶対に勝つ!」
まほ「…わかった、楽しみにしている…」
翌日
蝶野「ただいまより、アンツィオ高校対黒森峰女学園の試合を始めるわ!」
蝶野「一同!礼!」
「「「よろしくお願いします!」」」
由花里「いやー楽しみですなー、西住殿!」
みほ「はい、この二人が、同じ条件で戦う…」
華「勝敗を握るのは、互いの作戦と練度…ですね」
沙織「みほなら、この状況、どう戦う?」
みほ「そうだね…中央の市街地に乗り込むか、左右の森の中で陣をとって戦うかな」
麻子「始まったぞ…」
由花里「アンツィオは全速力で、中央にフラッグ車を置きまっすぐ市街地へ縦一列に進んでいますね」
麻子「まるで槍のようだな、いや、スパゲッティか?」
沙織「黒森峰もまっすぐ市街地に向かって進んでいるね、なにかを警戒しているみたいだけど…」
由花里「このままだとちょうど市街地でぶつかることになりますね」
みほ「…お姉ちゃんはそうすると思ってましたが、アンチョビさんも…」
麻子「いや…アンツィオが森の方向に戦車を動かした…あの速度でか?!」
みほ「このルートは…森の中でも木々が少ない部分…」
みほ「アンチョビさんの狙いは…高速移動での奇襲!?」
まほ「撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心 それが西住流―」
まほ「どんな戦車に乗ろうと、私達のやることは変わらない」
まほ「市街地に入り、私達が各個撃破する、他の車両は支援と援護を頼む」
アンチョビ「そうだろうな…そう来ると思ってたぞ!」
アンチョビ(入り組んだ市街地戦だと総合的な練度の低い私達が不利になる可能性が高い)
アンチョビ(そして黒森峰の弱点は…突発的な襲撃にある)
アンチョビ(森を無理矢理最高速度で突っきって平原での勝負に持ち込む!)
まほ「来たか!」」
アンチョビ(これで勝つための最低条件は満たせた……後は)
まほ「側面から全車両による突撃、この速度か…してやられたな」
まほ(変わらないな…私も…ちよちゃんも)
アンチョビ「いいか!これがドゥーチェ・アンチョビとしての最後の命令だ!」
アンチョビ「アンツィオの強みはノリと勢いだ!それを絶対、絶対に忘れるなよ!」
アンチョビ「怪我をしない、無理をしない程度の範囲で…暴れてやれ!」
アンチョビ「どこまでも突き進めーーー!!」
アンチョビ(後必要なのは…ノリと…)
アンチョビ「目指すはフラッグ車だ!撃て!」
アンチョビ(勢いだ!)
まほ「撃て!」
由花里「すごい…こんな闘い、初めて見ました!」
麻子「平野での乱闘か…だが、同じ戦車だからか、何が何やら…」
由花里「お互い、フラッグ車を狙っていませんね」
華「どういうことなのでしょうか、乱闘に乗じてフラッグ車を狙うほうがいいのでは?」
BOOOOOM!
みほ「これで…お互いのCV33は両陣営共に全て走行不能…残すは隊長車のみ…」
由花里「戦場は撃破車両以外は何もない平原のド真ん中」
麻子「これでは、隠れることも逃げることも難しいだろうな」
沙織「ねぇ…みぽりん、どっちが勝つと思う?」
みほ「戦車の性能はまったく同じ…あとは」
みほ「的確な指示と腕、そして」
みほ「互いの意地…でしょうか」
華「精神論ですか?」
みほ「…なんとなくだけどね」
アンチョビ「あの奇襲に真正面から対応するなんて…流石まほちゃん」
まほ「奇襲、奇策はちよちゃんの十八番だったからな」
アンチョビ「対策は完璧ってわけ、か」
まほ「…行くぞ!勝負!」
アンチョビ「望むところだぁー!!」
互いの戦車がまっすぐに向かいあい衝突する
ドガンッと大きな衝撃を起きる
アンチョビ「撃て!」
まほ「撃て!」
衝突の衝撃で砲塔が僅かにずれ互いの砲弾は戦車の上を通過する
そして互いは僅かに距離をとり、またしても、ぶつかりあう
それはまるで、鍔競り合いのようだった
側面の取り合いも後方に回りこむことも一切しない
正面からのぶつかりあい、コンマ数ミリでの回避
ぎりぎりの局面が…何度も続いた
まほ「撃て!」
アンツィオ「撃てぇ!」
まほ「さて、残る砲弾も僅かだ…決めさせてもらう」
アンチョビ「それは…こっちの台詞だ!」
まほ「行くぞ!撃て!」
アンチョビ「いけええええ……」
アンチョビ「なーんてね!」
アンチョビ(読んでいたよ!まほちゃん!)
まほ「……この状況で停車!?装填急げ!」
まほ「慌てるな…向こうは後退し…!?」
アンチョビ「前…進!」
アンチョビ「よし!こっちが有利だ!いいか!ここで確実に仕留めろ!」
まほ「正面から来るぞ!……撃て!」
アンチョビ「撃て!」
BOOOOOOOOM!
みほ「け、結果は…」
・・・・・・・・
蝶野「勝者・・・黒森峰女学園!」
アンチョビ「はぁー、私の負け、か」
まほ「相打ちだったようだが、一瞬、私の方の戦車の砲撃が速かったみたいだな」
まほ「…いい勝負だった」
アンチョビ「これで、戦績はダブルスコアか…」
まほ「さて、戻るぞ」
まほ「…忘れてはいないだろうが、念のために言っておく」
まほ「お前達には、こちらの要求を1つ聞き入れてもらう」
アンチョビ「あぁ、そうだな…」
・・・・・・
アンチョビ「頼むから…あんまり難しいのはかんべんしてくれよ」
まほ「あぁ…少しだけ、時間をくれないか?」
アンチョビ「わかった」
ペパロニ「いやー、お役に立てなくてすいません!」
カルパッチョ「強かったですね、黒森峰の人達は」
ペパロニ「あの乱闘の中、的確にこっちの弱点を狙ってきたッスよね!マジすげぇっス!」
カルパッチョ「はい、すごく勉強になりました」
ペパロニ「で、黒森峰は何を頼むんスかね?」
アンチョビ「それがよくわからないんだ」
まほ「悪いが…いいか」
アンチョビ「あぁ、それで何だ?出張屋台か?秘伝のレシピか?戦車関連はかんべんして」
まほ「安斎智代美」
アンチョビ「ん?フルネーム呼びはめずら」
ガシッ
まほ「私と共に…来てくれないか」手を握りながら
アンチョビ「し・・・・ふぇ?」
ペパロニ「え、ええええーー!!!?」
カルパッチョ「まぁ…」
アンチョビ「なななななな!?」
まほ「今日、ちよちゃんと戦って、改めて思った」
まほ「私には、お前が必要だ」
まほ「私と…共にいてくれ」
アンチョビ「………///」
エリカ「あばばばばばば」
みほ「……ごめん!私、先に帰ります///」
由花里「に、西住殿-!待ってくださいー!」
沙織「こ、これって愛の告白…だよね///」
麻子「告白も正面からとは…流石西住流だな///」
華「キマシタワ-」
アンチョビ「…」
まほ「私のわがままかもしれないが」
まほ「受け入れて、くれないか…?」
アンチョビ「……あっ…///えっ…その…///」
ドゥーチェは こんらんしている!
まほ「頼む…」腕をギュッと強く握る
アンチョビ「……きゅう///」バタン
ドゥーチェは わけもわからず そのばにたおれた!
まほ「だ、大丈夫か!?」お姫様抱っこしながら
エリカ「」
ペパロニ「ね、姐さーん!」
・・・・・・・・・・・・・
アンチョビ「な、こ、ここは…」
まほ「目覚めたか、ここはアンツィオの保健室だ、急に倒れたから驚いたぞ」
アンチョビ「うわああああああ!!!」
まほ「どうした!何かあったか!?」
アンチョビ「…び、びっくりしたじゃないか!いきなり声をかけるな!」
まほ「そうか、済まなかった」
アンチョビ「……で、今は、何時だ!?」
まほ「…もうすぐ夜明けだな」
アンチョビ「もしかして…倒れてからずっといたのか?」
まほ「駄目だったか?」
アンチョビ「いや、済まない…試合が終わったらパーティの予定だったのに…」
まほ「パーティなら明日にでも行えばいい」
まほ「黒森峰からも副隊長が倒れてしまった、この季節だから熱中症かもしれない」
アンチョビ「でも・・・」
まほ「あまり気にするな」ナデナデ
アンチョビ「・・・あぅ///」
アンチョビ(そうだ、思い出した…)
アンチョビ(私、告白されたんだ…)
まほ「それで…起きたばかりですまないが…さっきの返事について」
アンチョビ「…え?」
まほ「今、聞かせてくれ」ズッ
アンチョビ「な!近い近い///」
アンチョビ「ちょっと待って!あと離れて!」
まほ「わかった、答えが出るまで待っている」
アンチョビ「…………」
まほ「………………」
アンチョビ「……………」
まほ「…少し……話をしないか?」
アンチョビ「あ、うん…」
まほ「ずっと、ちよちゃんのことが気になっていた」
アンチョビ「・・・///」
まほ「居なくなった日から…ずっと」
まほ「戦車道を続けているのか、今どこで、何をしているか」
まほ「無事であるとは聞いた、だが、どうなっていたのかまではしらなかった」
まほ「スカウトを行うような戦車道の強豪校は全て調べ尽くした」
まほ「だが、ちよちゃんの名前はどこにもなかった」
まほ「次に、ちよちゃんが戦車道をやめて地元に行ったのだと思い、愛知県の学園艦をすべて調べた」
まほ「戦車道を辞めていてもいい、もう一度、ちよちゃんと話がしたい」
まほ「それでも、ちよちゃんはどこにもいなかった」
まほ「そして、ちよちゃんがいない時間が、3年も続いた」
まほ「一度はちよちゃんのことを諦めかけた」
アンチョビ「……」
まほ「だが、3年の時の全国大会」
まほ「マジノ女学院に勝利して二回戦に出場したアンツィオ高校」
まほ「次のみほの対戦相手と知った、その学校を調べてみたら…」
まほ「そこに…ちよちゃんがいた」
まほ「戦車道大会では、アンチョビと登録されてはいたが、写真を一目見て、ちよちゃんだとわかった」
まほ「ちよちゃんがスカウトされてアンツィオ高校の戦車道を立て直していたことを知ったのは」
まほ「全国大会が終わってから、そう、つい最近のことだった」
まほ「長い時間が掛かってしまったが…私は、ようやくちよちゃんを見つけることができた」
まほ「そして…ちよちゃんが戦車道を続けていたことがすごく嬉しかった」
まほ「…大洗との試合を見させてもらった」
アンチョビ「えええ!見てたのか!?」
まほ「珍しく作戦は失敗してたみたいだが、戦車で元気に駆けるちよちゃんを見て、私はとても嬉しかった」
まほ「試合を見て確信した」
まほ「……ちよちゃんの戦車道は死んでいなかった」
まほ「いや、むしろ中学の時よりも、輝いていた…」
アンチョビ「…できれば…勝ったマジノ戦を見て欲しかったかな…///」
まほ「もちろん、ビデオだが見せてもらった、素晴らしい戦いだった」
アンチョビ「あ、ありがとう///」
まほ「どうだった?アンツィオは…大変だったか?」
アンチョビ「まぁな…苦労もたくさんあったし、課題も未だに解決してない」
アンチョビ「それでも、楽しかった」
アンチョビ「マジノ女学院に勝った時、私は、初めてまほちゃんに勝った時と同じくらい嬉しかった」
アンチョビ「悲願のベスト4…の前に妹さんに負けちゃったけどな」
アンチョビ「悔いがない、とは完璧には言いきれないけど…精一杯走り切ったつもりだ」
まほ「そうか」
まほ「……………」
アンチョビ「………………」
まほ「…そろそろ…いいか?」
アンチョビ「あぁ、覚悟は出来たし、答えも決まった…」
アンチョビ「その前に…一つだけ聞かせてくれないか?」
アンチョビ「本当に…私でいいのか///」
まほ「あぁ、ちよちゃんじゃないとダメだ」
アンチョビ「…そうか」
アンチョビ「…………い、いいよ///」
まほ「そうか!」
まほ「それじゃあさっそく…これを書いてくれないか」
アンチョビ「何よ、これ……」
アンチョビ「推薦…選手届?」
まほ「あぁ、そうだ…」
まほ「実は、国際強化選手に指定された選手は推薦枠というものを貰えてな」
まほ「世界大会を開催する時、日本代表を1人、必要だと思った選手を選べるんだ」
まほ「その推薦枠にお前を選びたい…」
アンチョビ「…………」
まほ「これで…ちよちゃんと共に、最高の舞台で戦車道ができる…」
アンチョビ「あーっ…私と共に来てって…そういう」
まほ「ん?どうした?」
アンチョビ「…………あほおおおおおおおおおおお!」
まほ「…んなっ!?」
アンチョビ「すっかり勘違いしたじゃないか!!あほぉ-!!!」
まほ「な、何を怒っているんだ?」
アンチョビ「これが怒らずにいられるかああああ!」
アンチョビ「折角…折角、決意を固めたのに!」
アンチョビ「こんなの!あんまりだあああ!!」
まほ「落ち着け…」
アンチョビ「フー、フー」
まほ「…何か悪いことをしてしまったか」
アンチョビ「当たり前だぁー!!」
まほ「…悪かった、それじゃあこれは」
アンチョビ「いいや…それは受け取る!」
アンチョビ「やってやる!日本代表だろうがなんだろうが!」
アンチョビ「覚悟を決めた以上は!」
アンチョビ「どこまでもお前についていってやる!」
アンチョビ「こうなったら、世界中に私達の名を轟かせるぞ!」
まほ「…あ、あぁ、そうだな」
まほ「ちよちゃんと私なら、不可能なことなどない」
アンチョビ「そうと決まったら…宴だぁあああー!」
アンチョビ「皆起きろー!やるぞーー!!」
・・・・・・・・・・
アンチョビ「そんなわけで、日本の代表としてこの私、ドゥーチェ・アンチョビが選ばれた!」
アンチョビ「お前らの分まで世界で暴れてきてやるからなぁー!!!」
アンチョビ「そら、皆飲めー!皆食えー!」
「「「「ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!」」」」
まほ「…素晴らしい統率力だな…」
アンチョビ「おお!来たな!よし!夕方にもう一度やるぞ!」
まほ「どういうことだ?」
アンチョビ「決まってるだろう!試合だ!」
アンチョビ「車両はまだ残っている!軽戦車、豆戦車での戦いをもっと学ばせてもら」
まほ「そうだな…よし!ティーガー、ヤークトティーガー、それと…マウスを持って来い!」
アンチョビ「ええ”!?」
アンチョビ「すまない、まほちゃん!それだけは…」
アンチョビ「それだけは、勘弁してくれぇー!!!」
FINE
おまけ 後日…
まほ「…何、大洗が大学選抜と試合だと!?」
まほ「あぁ……わかった、戦力を整えてすぐに向かおう」
まほ「エリカ…準備を急いでくれ、行くぞ!」
エリカ「はっ!…隊長、どうかなさいました?」
まほ「済まない、少しだけ連絡をさせてくれ…」
まほ「……ちよちゃん…一つ頼みたいことがある」
アンチョビ「誰だ!今屋台でいそがし…まほちゃん?」
まほ「時間がないので要件だけ話す…明日、大洗が廃校を阻止するために大学選抜と戦う」
まほ「30両対8両の殲滅戦でな」
アンチョビ「な、なんだと!?そんなの、ただの蹂躙じゃないか!」
まほ「だからこそ、私達で援軍を組む、来てくれ」
アンチョビ「わかった…だが戦車はどうすればいい?」
アンチョビ「P40は長期入院中だし、セモヴェンテも全部そっちが壊したじゃないか!金はそこそこもらったけどまだ、修理中だぞ」
アンチョビ「今動ける戦車は…」
まほ「CV33が残っていたはずだ、それで来てくれ」
アンチョビ「はぁっ!?あの大学選抜相手に、豆戦車でどうやって…」
まほ「…この戦い、ちよちゃんの力が必要になるはずだ」
アンチョビ「……わかった…切るぞ」
まほ「………」
アンチョビ「おい!ペパロニ!カルパッチョ!屋台は中止だ!行くぞ!」
以上になります 当初の予定と異なり書いていくうちにだんだんと百合成分薄めの友情エンドになりました
次は何を書こうかな…
うわああああ!よりにもよって秋山殿の名前誤字ってる!
……次はみほゆかでも書こうかな
このSSまとめへのコメント
劇場版cv33でも大活躍だったな〜 さすがドゥーチェっす!