どうももりくぼです。構わないでください。

もりくぼは今アニマルリターン企画ということらしいです。

再びリスの恰好をしています。

吾輩はリスである。

名はもりくぼという。

飼い主はまだない。

もりくぼは一生誰かに飼われるつもりはありません。

もりくぼは自由なリスです。

逃げるという消極的な自由ですけど…

ああ、言い忘れました。今は机の下に隠れています。

なんだいつも通りかと思った人もいるかもしれませんが今日のもりくぼは違います。

今日はなんとちひろさんの机に匿われています。

口の堅いちひろさんのことですからもりくぼのことは黙ってくれる……くれる……ください……

見つかったらもりくぼは死んでしまいます。

もりくぼは隠れるのには邪魔な尻尾を抱きかかえ、安住の地を味わっています。

どうせもりくぼのことです。

人気はないはずなので誰か代役を見つけてくるでしょう。

リスの恰好をしたまゆちゃんとかいいと思います。

まゆちゃんは少し臆病なところがあって多分リスっぽくなると思うんですけど……

まゆちゃんは臆病なだけではありません。

ちゃんと芯のある子です。もりくぼにはないしっかりした芯が……

プロデューサーが言えばまゆちゃんはリスの格好を着こなすはずですし……

もりくぼは所詮骨なしチキンなのでこうして波が過ぎ去るのを待つのみです。

自分で思って少し悲しくなりました。

相棒の尻尾を抱きしめることとします。

ギュッとするととてもいいクッションです

アイドルをしていると周りのみんなは眩しいのでもりくぼは静かにその場を去るのみです。

一緒に輝こうなんて思いません。

もりくぼはどこまで行ってももりくぼ。

みんなの輝きの邪魔になってしまいます。

輝くというと輝子ちゃんのことを思い出します。

輝子ちゃんは裏切りものです。

もりくぼが勝手に仲間だと思っていただけですけど。

輝子ちゃんはすごい人です。輝き方を知っています。

名は体を表すというか本当にそんな感じです。

輝子ちゃんは自分をさらけ出すととんでもなく輝いています。

ものすごく遠くの超新星爆発の光が地球に届くように。

もりくぼには絶対できない輝き方をしますから。

星輝子いい名前ですよね……

もりくぼは所詮もりくぼです。

もりくぼは森の窪地のことを意味します。前調べました。

でも今思えばリスの格好をして穴に隠れているのはまさしく自分の状況です。

もりくぼもやっぱり自分の名前を表しているのでしょうか。

もりくぼはギュッと相棒の尻尾を抱きしめました。

柔らくてとっても気持ちがいいです。

乃々という名前についても調べてみたことがあります。

乃という言葉の意味は「あなた」とか「すなわち」とかいう意味があるそうです。

もりくぼは考えました。一体どういう意味になるのかと。

「あなた」という意味で考えるとあなた達という意味で訳分かりません。

「すなわち」でも同じですけど。

もりくぼは少ない勇気を振り絞りお母さんに聞いてみたことがあります。

そうして得た答えは漫画から取ったということです。

正直意味分からないんですけど……

なんで四コマ漫画の主人公の名前から取るんですか……

確かにその漫画は唯一の新聞の面白い所ですから読みますけど……

なんなんですか、それ……

まあいいです。所詮もりくぼなんてそんな存在です。

成人してたらヤケ酒しててもいいと思うんですけど……

そうして酔っぱらって道で吐いてやります。

もりくぼの唯一の社会への反抗です。

ロックンロー……

あ、今のはロックな人を読んでいる訳ではないですからね。

来ないでください。本当に……

ちひろさんがさっきからちらちらとこちらを見ています。

なにかあったんでしょうか。

もりくぼを見ても面白いものは一つもありませんよ。

抗議の意味を込めてまたギュッと相棒の尻尾を抱きしめました。

もりくぼの目は獣の目。

かなり怖いはずです。

やっぱりこれはクッションとして欲しいんですけど……

仕事終わったら買い取っていいですか？

もりくぼはこのクッションを抱き締めるぐらいしか能がありません。

本当ですから……

能ある鷹はなんちゃらと言いますがもりくぼはチキンです。

しかも骨なしでカラッと揚がっています。

もりくぼを食べようとすると中から油が出てきて滑って床に落ちます。

食べられることなくもりくぼは捨てられるのです。

大きな舞台でのライブだって他のみんなが人気なんだってこともりくぼは分かります。

もりくぼはみんなのおまけです。むしろみんなを輝かせるための踏み台です。

そんな引き立て役楽しくないですから……

本当ですよ……もりくぼは少しも楽しくないですから……

もりくぼを一人にさせてくださいね……

でも本当は少しだけ……本当に少しだけ……

なんでもないです忘れてください。

もりくぼにも気の迷いというものもあります。

神様はもりくぼを作った時バグの発生について調べてなかったんだと思うんですけど……

もりくぼの相棒は物を言わぬ尻尾です。

ギュッとすると気持ちよくて安心しますから……

少し尻尾から声がしたような気がします。多分気のせいです。

この尻尾はものを言わないはずですから。

それですからもりくぼの友達です。

人と付き合う時には事故がつきものです。

うっかり相手の触ってはいけない部分に踏み込んでしまいますから。

そんな風になるならもりくぼは一人がいいです。

もりくぼのせいで誰かが傷つくなんてそんな悲しいこと他にありませんよ。

所詮もりくぼなんて路傍の石ですから。

その石に躓く人がいるなんてなんてもりくぼは嫌です。

誰からも嫌われないようになりたいんです。

もりくぼはチキンですから。

うっかり誰かと正面衝突なんて嫌なんですけど。

尻尾から声が聞こえます。

でももりくぼは人が好きなんです。

これは多分もりくぼの言葉じゃありません。

もりくぼが人を好きだったらもう少し外にいると思います。

もりくぼが人を好きだったら撮影から逃げてこんなところに隠れていません。

もりくぼはギュッと尻尾を抱きしめます。柔らかいです。

光です。もりくぼに光が差し込みます。物理的に。

見慣れた見たくない顔が見えました。

もりくぼはため息をつきました。

守護者ちひろ神はなんと買収されてしまったのです。

なんていうことでしょう。

安息地はもりくぼの関係ない所で終焉を迎えたのです。

エデンの園もこんな終わり方しませんよ……

見慣れた顔の人のことをもりくぼは知っています。

もりくぼの踏み込まれたくないところまでズカズカ土足で入ってきます。

それでももりくぼの一番大切な所は大切に扱ってくれます。

この人はもりくぼには眩しすぎます。

この人はもりくぼには暖かすぎです。

この人はもりくぼには不相応ですけど……

でももりくぼの側にいてくれる人です。

好きか嫌いかでは嫌いじゃないですけど……

光のある場所に連れていくのは勘弁してください……

せめて最後の抵抗にギュッと尻尾を抱きしめます。

この人は『オーケーオーケーそのまま行こう』とか言っていました。

最低なんですけど……帰っていいですか……？

もう仕事なんてむぅーりー……

短いですが終わりです。