【グリモア】転校生「つかささんルート」梓「ッスか?」【私立グリモワール魔法学園】
クッソ面白いストーリーと
平凡なゲーム内容と
クッソ面白いストーリーで大好評のスマホアプリ【グリモア~私立グリモワール魔法学園~】のssです。
・非安価スレ
・ヒーローはつかささん
・転校生はしゃべりまくる上にストーカー
・キャラ崩壊注意
そんな感じで書いて行きます。
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phase1 アイスの取り合い
風子「で、これはいったいどういうことなんですかねー」
梓「あ、あはは……」
転校生「崖崩れで、校舎近くの山道が完全に塞がってるなあ……」
つかさ「服部が私にクッキークランチを譲らんのが悪い」
梓「嫌っズよ! 例え生天目先輩でもクッキークランチは譲れないッス!」
風子「アンタらねえ……!」ゴゴゴゴゴゴゴ!
梓「ひいっ! せ、先輩、助けてほしいッス!」
転校生「風子、梓だけ罰則にしよう」
梓「なんでッスか!?」
転校生「今日もつかささんとイチャつきやがってこの忍者め……!
崖崩れするまでアイスの取り合いだぁ? そんなん俺がしたいわ……!」
梓「ひいい! 助けを乞う相手を間違えたッス!」
つかさ「はっはっは! 仕方あるまい。私と服部は親友(とも)だからな。なあ? 服部?」
転校生「梓、1050年懲罰房行き……っ!」
梓「陰謀ッス―――――――――――!」
phase2 エレンに弟子入り
転校生「というわけで弟子にしてくれ。エレン」
エレン「ふむ。さっぱりわからんがどういうわけだ?」
転校生「わかるだろ! 俺もつかささんとアイスの取り合いをしたいんだよ!」
エレン「よし、帰れ!」
転校生「なんでだよ!? いいじゃねーか! 強くなりたいのは良いことだろ!」
エレン「あのなあ転校生。私でも生天目とタイマンを張ったら5秒で殺されるぞ。
まあ閃光弾・毒ガスありの殺し合いなら生き延びる自信はあるが、
あんなのと1対1で渡り合える服部が異常なんだよ」
転校生「ぐうう……! おのれ梓め……! 俺のつかささんを独占しやがって!」
エレン「服部だってすき好んでやっているわけではないだろう。
あいつは多重スパイだからな。生天目の監視も仕事のうちだ」
転校生「甘いよエレン! 梓はな! 男に対しては小悪魔後輩キャラなのに
つかささんに対してだけ何故かツンデレなんだよ! ガチ臭いんだよ!
つかささんと梓のキャラクエ3話見てみろっつーの!」
エレン「なんだこいつ怖い……まんがタイムきららの読みすぎだろ……」
月詠「うう……校庭10周……もうダメぇ……」
転校生「……少なくともあいつよりは俺の方が見込みあると思うんだ」
エレン「やめろ。守谷だって頑張っているんだ」
月詠「何よ―――――――――――――――――っ!!!!!!」
phase3 ヤンデレ会議
香ノ葉「例のブツやで、転校生」
転校生「こ、これはプールに行ったときのつかささん……! 撮ってたのかよお前」
香ノ葉「ふふふ。そんなことより転校生、まだ代金をもらってへんで?」
転校生「くっく。わかってるよ香ノ葉。ほら、映画村イベのダーリン盗撮だ」
香ノ葉「はああああああああああああああああん♥ ダ、ダーリンの鎧姿……最高やわぁ……」
転校生「男同士ならあいつの写真も手に入れやすいからな。また頼むぜ」
香ノ葉「ふふふ。いつでも歓迎やよ」
絢香「……あんたら何やってんの?」
転校生「見りゃわかんだろ絢香。公平かつ純粋な取引だ」
絢香「聞いた私がバカでした。はい風紀委員、風紀委員っと」
香ノ葉「絢香ちゃん? 今の絢香ちゃんを夏海ちゃんが見たらどう思うかなぁ?」
絢香「!? あんたら、まさかこの場も盗撮を!?」
転校生「くっく。盗撮のプロフェッショナルを舐めてもらっちゃ困るぜ」
絢香「やべえこいつ自分のストーカーぶりに誇り持ってるよ」
香ノ葉「黙っててくれるんならこっちもROMは処分するえ?」
絢香「ストーカー同士で手を組むとか、悪夢だわ……」
phase4 妹たちの新年会
16年1月、新年会イベ
春乃「あんまその姿で悪さするんじゃないわよ?」
転校生「わーかってるって春乃。じゃーな」
つかさ「……何をやってるのだ? 転校生」
転校生「つ、つかささん!? い、いえ、私は……」
つかさ「姿は女だが気配でわかる。転校生だろう」
転校生「気配って何それすごすぎるでしょ」
つかさ「……瑠璃川の話、聞く気はなかったんだ」
転校生「……あ、聞いてたんですか」
つかさ「お前がさっき話していた男は、神宮寺の兄だな」
つかささんは珍しくため息を吐く。
転校生「……やっぱ重ねちゃいますか。秋穂と、初音と、……自分を」
つかさ「……何故、兄というのは生き急ぐのだろうな。夏向という奴も、神宮寺樹も」
転校生「……きっと、それが兄ってものなんですよ」
夏向君は、妹の秋穂のために国軍に入るらしい。
樹さんは、妹の初音のために来月、光男さんに接触するらしい。
2人とも、妹よりも長く生きられる可能性は限りなく低いだろう。
つかさ「……だが神宮寺と瑠璃川には、まだチャンスがある」
つかささんはどこか寂しげに、樹さんにちょっかいを出す初音を眺めていた。
つかさ「守ってやれ転校生。兄を失って人格が捻じ曲がるのは、私だけで十分だ」
転校生「言われなくても守りますよ。秋穂も。初音も。……あなたの事もね」
phase5 妹
犬「わんわんわんっ!」
つかさ「ふえええ……」
生天目つかさは犬が大嫌いだった。吠えるし、噛む。それにすごく早い。
だからお隣さんの犬に吠えられると、つかさはいつも一歩も動けなくなる。
兄「何やってんだよつかさ……ああ、またこいつか。よーしよしよし」
犬「くぅーん」
だから、そんな犬におびえること無く手懐けている兄の姿が信じられなかった。
つかさ「お兄ちゃん……こ、怖かった……」
兄「ははは、この子は噛まないよ。つかさは怖がりだなぁ」
笑いながら兄はつかさの頭を撫でてくれる。
つかさ「だって……怖いんだもん」
兄「まったく、しょうがないな、つかさは」
つかさはそれでよかった。自分は弱いけど、でも困ったときには必ず大好きな兄が助けてくれる。
6歳の時、第六時侵攻に出兵した兄が戦死するまで、ずっとそう信じ続けていた。
phase6 復讐鬼
つかさ「北海道で兄が戦死したと聞いた時、私は気絶したらしい」
15年3月にも、『卒業』するはずだったつかささんは気まぐれにそんな話をしてくれた。
つかさ「そのとき、私は死んだのだろうな。起きたら別人になっていた。
憎しみだけが心を支配していた。魔物への憎悪。殺意しかなかった」
風飛の町で服を見ながらつかささんは話す。
つかさ「そう、ちょうどこんなピンクのフリフリのワンピースだったかな。
ワンピースひとつとナイフひとつだけ手にして家を飛び出したよ。
……くっく。お前も見たろう?過去の私の衣服センスを」
転校生「ええ。確かにそんな感じでした。可愛かったですねー……
あのままだったら、今頃ありすあたりと仲良くなってたかもしれませんね」
手芸部のつかささん。あのつかささんだとしっくり来る。
つかさ「そこから山に籠り、我流で魔物を殺す訓練をした。
といっても今お前がやってるような走るとか筋トレとかではないな。
魔物の脳天にナイフを突き刺す練習ばかりしていたよ」
転校生「……7歳くらいの女の子がナイフで魔物を殺す気だったんですか」
つかさ「笑えるだろう? あのまま魔物と遭遇していたらまず死んだろうな。
……しかし私は死ななかった」
つかさ「数年後、本物と遭遇して殺されそうになった時、魔法使いに覚醒したからな」
phase7 戦闘狂
つかさ「学園に来てからも魔物を殺し続けたよ」
つかさ「私には憎しみしかなかった。クエストは受けられるだけ受けた。
魔物を殺す依頼なんて私には渡りに船だったしな」
つかさ「くっく。ちなみに当時はナイフを使い続けていた。
あの頃の私は滑稽だぞ。恐ろしく弱かった。鍛錬など何の役にも立たなかったな」
転校生「武器を使ってるつかささんなんて、想像できませんね」
つかさ「だがな……戦えば戦うほど、魔物を殺すのが楽になって行くんだ」
つかさ「実戦に勝る鍛錬は無いのだと気付いた時、もう魔物を殺すのにナイフは必要ないと気付いた。
なにしろ殴った方が手っ取り早くなっていたからな」
つかさ「人間にとって、自分の成長を実感するのが至上の快楽だというのは知ってるか?」
転校生「ええ。出来ないことが出来るようになるのは嬉しいものですよね」
つかさ「そうだ。……結局、私は自分が魔物を殺すのが上手くなるのが楽しかったんだよ」
つかさ「どんどんズレていったのさ。憎いからではなく、楽しいから殺していた」
つかさ「……やがて気付いたよ。もう兄が死んで悲しいと思っていないこと。
もう魔物を憎いと思っていないこと」
つかさ「悲しみと憎しみはどんな感情だったか。もうよく覚えていない。
誰よりも弱かった私が持っていた誰よりも強い復讐の炎は、私が強くなるほど消えていった。
そして、いまはそのことすらも別に悲しくない。強い自分が嬉しい、闘争が嬉しい。それ以外は喜びと嬉しさで、いつのまにか忘れてしまった」
つかさ「晴れて戦闘狂の出来上がりだ。まったく、狂った話だろう?」
phase8 北海道奪還
16年3月。俺とつかささんは北海道の慰霊碑の前で手を合わせるましろさんを眺めていた。
転校生「何故今、そんな話を?」
つかさ「……ここは兄が無くなった戦場だ」
見渡すとまだ一面は氷漬け。10年間も魔物に侵略されていた北海道の地。
つかさ「だが今の私には、祈りを捧げる資格などないと思ってな」
そういうつかささんの目は、しかし。
転校生「……そんなことないですよ」
つかさ「ん?」
転校生「つかささんがましろさんを見る目、なんだか嬉しそうですよ。
きっと俺らよりもつかささんは、ましろさんの気持ちがわかるんですよ」
つかさ「……私が、お前らよりも人の心がわかると?」
不思議そうに、つかささんはましろさんを眺めていた。
つかさ「……よかったな、雪白」
微笑むつかささんの顔は、とても穏やかで優しそうだった。
この人は人間なのだ。どれだけ強くなっても、それはきっと変わるまい。
phase9 そして現在
梓「……ぱい。先輩。起きてくださいッス」
転校生「……ぐ……」
まだ一部は氷漬けのままの北海道。氷の街で目を覚ました。
転校生「梓か。俺、どんぐらい昏睡してた?」
梓「1分くらいじゃないスかね。吹っ飛ばされたんで、探すのに苦労したッス」
転校生「そっか。悪いな」
梓「しかし、いつ見ても恐ろしいクレーターッスねえこれ」
転校生「ああ、ワンヂェンのクレーターまで飛ばされたのか俺。
懐かしい。3月のイベはあれがなかったらヤバかったよ」
梓「これが始祖十家が一つ、周家の万姫による【ハルマゲドン】の跡ッスか。
これ海の向こうから正確に狙撃したってマジスか?」
転校生「マジだよ。人間ICBM、周万姫(ジョウ・ワンヂェン)は射程距離と精密性に優れた魔法使いらしい。
小蓮が電話で緯度と経度を伝えただけで、海の向こうから正確に着弾させてたよ」
梓「恐ろしい話ッスね……やっぱ始祖十家ってのはバケモノ集団なんスねえ」
ズズ……ン……
梓「……そして今そこで生天目先輩とやり合ってるのは……その周万姫よりも
強いとされている魔法使いってわけッスか」
転校生「そうらしいな」
立ち上がろうとして、足が震えている事に気付いた。
転校生「つかささんと互角以上に殴りあうなんて……そんなバケモノ、会長以外で初めて見たよ」
つかさ「我妻梅と戦いに行くぞ」
転校生「やめましょうつかささん。死にます」
梓「百歩譲って殺されると思うッス」
つかさ「お前らはついて来るな。私は明日、北海道に発つ」
転校生「はあー、北海道か。防寒具と軽食用意しなきゃ……もしもし、もも?」
つかさ「なんでついて来る気満々なのこいつ」
転校生「つかささんを1人で行かせられるわけないでしょう」
梓「生天目先輩諦めましょう。ヤンデレには言葉が通じないッス」
転校生「ゆうてお前も行くんだろヤンデレ2号」
梓「自分が先輩と生天目先輩の監視をいくつの組織から依頼されてると思ってんですか。
どっちかでも死んだら自分大目玉ッスよ」
転校生「はいはいツンデレ発言乙」
つかさ「……まったく、お前らも物好きだな」
つかさ「もうすぐfateコラボイベントも始まるし、そっちの方が楽しいと思うぞ?」
転校生「遠慮しときます。つかささんが出ないイベントに興味無いんで」
つかさ「ははは、流石の私もそろそろ怖いぞ?」
転校生「照れなくていいんですよつかささん。あなたとなら南半球へでも着いて行きますから」
つかさ「なあ服部、そろそろ水無月に相談した方が良いだろうか」
梓「いやあー、いいんちょでもこれは厳しいと思うッス」
転校生「ホテルは東北で手配しときますね。ふふふ?♪」
そんなこんなで北海道に来たものの。
転校生「まさか1分で吹っ飛ばされて気絶させられるとは思わなかった」
梓「この状況で寝ないでくださいよ。なんか妙に幸せそうな顔してたし」
転校生「……つかささんが夢に出て来た」
梓「はい?」
転校生「つかささんが夢に出て来たんだよ」
俺は誇らしい気持ちで胸を張る。
転校生「どうだ、やはり俺以上に生天目つかさを嫁にするのに相応わしい男は居ないだろう」
梓「……うわあ」アトズサリー
転校生「どうした梓。俺のつかささんへの愛に怖気づいたのか?」
梓「先輩……もう自分の中では先輩が白藤先輩と同じフォルダーにカテゴライズされてます」
転校生「香ノ葉?」
俺じゃない別の転校生に熱を上げている女生徒の顔を思い浮かべる。
転校生「ああ、奴は素晴らしいよな。愛に対して誠実だ。転校生の奴もさぞ幸せだろう」
梓「やべえよこの人、白藤先輩を『誠実』で片付けたよ」
転校生「だいたい、お前は俺の事言えるのか服部。見てろってつかささんに言われたはずなのに
つかささんの戦いに手え出しただろ。後で怒られるぞ」
梓「自分だってやりたくてやってるわけじゃないっスよ……」
転校生「はい出ましたツンデレ。お前にだけはつかささん渡さねえ」
梓「もうやだこの人……ていうか先輩、最近生天目先輩にしゃべり方似て来てますよ」
転校生「そうか?……まあ、好きになると口調移るっていうしな」
梓「自分で言って恥ずかしくないスか」
転校生「全然」
梓「とにかく、もう先輩はおとなしくしててください。自分は手出して生天目先輩にキレられても
逃げられますけど、先輩はそうは行かないでしょう」
転校生「黙れ服部。貴様そう言って自分だけつかささんに加勢する気だな。
俺は後でつかささんに殺されてでもつかささんに加勢するぞ」
梓「頼むから自分に嫉妬しないでください」
ロクに魔法も使えないこの身が恨めしい。初音から譲ってもらった
JGJ特性対ミスティックライフル『ジンライSP』を抱え直す。
phase10 初音
初音「ほら、持ってけよ転校生」
転校生「ああ、悪いな」
転校生「……でも本当にいいのか? ジンライSPとカムロジクシー。これ高いだろ」
初音「今さら気にすんなよ。アタシとお前の仲だろー?」
けらけらと初音は笑う。
初音「……生天目か。転校生」
転校生「おお。つかささんは魔力が多すぎて俺の魔力供給が役に立たねえからな。
少しは他で役に立たねえとよ」
初音「……そっか」
初音は缶ジュースを傾ける。
初音「バケモノだと思ってたけどさ、今思うと生天目って、ちょっとアタシに似てるよ」
転校生「お前とつかささん?」
2人の共通点を思い浮かべる。
転校生「ああ、『敬意』って言葉を知らねえとこがそっくりだよな」
初音「ブッ殺すぞ」
投げられたジュース缶を片手でキャッチする。
初音「……自分の命に価値を感じられないとこ、とかさ。たぶん、あいつもそうだなって」
転校生「……初音……」
神宮寺家はその長い歴史において、身内を決して贔屓しない能力至上主義の企業だ。
その神宮寺を歴史上初、本家の一族だけで支配してしまった天才世代。それが現世代の8兄弟。
神宮寺哲馬、篤子、樹といった天才集団の、その末妹として初音は生まれた。
初音「魔法使いは人類の希望だ。覚醒しちまった以上、前線で戦うしかねー」
初音「まして、あの政界の重鎮、冷泉のお嬢様がグリモアに来てんだ。
武器でメシ食って来た神宮寺の娘が前線に行くってなったら、良いイメージアップだろ」
初音「だからさ、アタシは嬉しかったんだよ。覚醒できて。これはこれで役に立つからな」
転校生「……死ぬって決まったわけじゃねーだろ」
初音「違うさ。アタシはどっちでもいいんだよ。……アタシは、アタシの命より神宮寺が大事だ」
初音はベンチに座って空を見上げる。
初音「兄様たちの足だけは引っぱりたくないんだ。神宮寺の名前に傷をつけない程度に戦って、
死んだら死んだで武器商人の神宮寺にぴったりの宣伝になる。それで満足なんだ」
初めて会った時、初音は自分が長生き出来ないことを悟りきっていた。
初音「でもさ……最近、少し考えるようになったんだ」
でも、初音は確かに変わって来ている。
初音「アタシは戦えるんだ……樹兄様を取り戻すために、最前線で戦える」
転校生「……お前……」
初音「案外悪くなかったよ。魔法使いってのも」
樹さんの件は初音に絶望を与えたはずだ。でも初音はそれを乗り越えつつある。
初音「お前にも会えたしな」
ぴょんと立ち上がって、初音は笑った。
転校生「……つかささんがさ、前に俺に言ったことがあるよ」
初音「あん?」
転校生「初音や秋穂を守ってやれ。あいつらにはまだチャンスが有るってさ」
初音「――――」
傍に立って、肩を抱いてやる。
転校生「一緒に樹さん助け出そうぜ。初音をくださいってあの人に言うまではさ、
樹さんにもお前にも、死んでもらったら困んだよ」
初音「……はは。バカかよお前」
初音は涙目になったけど、泣きはしなかった。
初音「日本の誇る最大の軍需企業、神宮寺が8兄弟の末妹だぜ。んな簡単に行くもんじゃねえんだよ」
転校生「俺ってそういう方が燃えるタイプなんだわ」
初音「ははは、知ってるよ。あの生天目の尻なんか追っかけられる男だからな」
互いの首にキスをする。初音は少しだけ背が伸びた気がする。
初音「沙那あたりに殴られる覚悟はしとけよな。アタシの周りはモンスターペアレントばっかだぜ」
転校生「怖えーよ。つか、今でも見られてるよな? 多分どっかから」
初音「見せつけてやりゃいいさ。監視が多いのは慣れっこだろ?」
転校生「……俺の監視はロケラン撃って来たりはしねーんだよ」
初音「ははは。もし撃たれたらアタシが守ってやるよ、ダーリン♪」
phase11 戦闘狂
そして北海道。初音からもらったジンライSPが動くのを確認する。
転校生「よし、行くか」
梓「それって神宮寺さんのライフルッスよねえ」
転校生「おお。つかささんにもお前にも魔力供給は意味ねえからな」
梓「前から思ってたッスけど神宮寺さんと生天目先輩って先輩の中で浮気じゃないんスか?」
転校生「つかささんは憧れだ。初音は守ってやりたい女だ。うん、浮気じゃねーな」
梓「先輩の恋愛方程式がわかんないッス……」
転校生「つか梓、おめーやっぱ見てたろ? えっち、すけべ」
梓「何の話かわかんねッスな~♪」
転校生「ちっ、しかし寒いな。制服なかったら動けねーよ。誰か炎出せねーのか」
梓「グリモアの学園生が3人もいてみんな自然魔法苦手ってのもすごいッスよね」
転校生「お前とつかささんが特殊すぎんだよ。おかげで俺が役立たずじゃねえか」
梓「グリモアでも最も特殊な魔法使いに言われたくないッスよ」
梓は戦闘に魔法を使わないのでコスパが恐ろしく優れている。梓にも魔力供給は意味が無い。
転校生「そもそもグリモアで最も継戦能力の高いコンビと組むとか……魔力タンクは寂しいぜ」
梓「まあまあ。元気出してくださいよ魔力タンク先輩」
転校生「うっせーよ」
ズズ……ンン……
梓「でも真面目な話、先輩は下がってた方がいいと思うッスよ
転校生「この期に及んでそれかよ。今更だろ」
梓「例えば先輩が100人居たとして、自分なら1分で皆殺しにできます」
転校生「自慢かよ。まあお前なら魔物相手にも似たようなことやってるしな」
梓「で、自分が100人居ても、正直我妻梅には勝てないかもしれません」
転校生「……おいおい、冗談だろ学園5位さん」
梓「いやー、自分もちょっと舐めてましたよ。さっきお会いして冷や汗だらだらでしたね。
世界2位の魔法使い……世界最強の女、我妻梅。ここまでの物とは」
転校生「肉体強化にステ全振りしてる生天目つかささんと殴り合うんだもんなあ」
梓「たぶん、我妻梅は遠距離戦も普通にできるはずッスよ。
なのに敢えて生天目先輩の土俵で戦ってるんでしょうね。
勝てるわけ無いッスよ。そもそも魔物でもないのに、なんで戦いなんか……」
転校生「……つかささんは、多分、強い人間と戦いたいんだと思う」
梓「……人間? 生天目先輩のライフワークは魔物を殺すことッスよ?」
転校生「ああ。そりゃそうなんだけど……多分、つかささんも限界を感じてるんじゃねーかな」
梓「……限界、ッスか?」
転校生「裏の魔物はやべーからな。ガーディアンには結局逃げるしかなかったし、
それに……来月にはムカデのムサシとつかささんは戦う気だ」
梓「……でしょうね。勘弁してほしいッスよ」
転校生「つかささんも感じ始めてるのさ。『人間の限界』って奴をな。
……だからこそ、人間でありながら自分よりも遥かに強い人と戦って、
人間の可能性を信じたいんだよ」
梓「…………」
転校生「なまじあの人は強すぎる。身の回りでは、誰もあの人に殴り合いでは勝てない。
だから、つかささんは殴り合いでどこまで強くなれるのかの指標が欲しいんだよ」
梓「それで我妻梅ッスか……まったく、付き合わされる身にもなってほしいッスよ」
転校生「……でも着いて行くんだろ、お前は」
微笑んで梓に問う。
梓「着いて行くんでしょう? 先輩も」
梓も微笑んで問うて来た。
転校生「俺はもっとつかささんを見たい。つかささんが魔物を殺す姿を見たい。
着いて行くさ。どこまでも」
梓「……歪んでるッスよ。先輩は」
あるいは、つかささんに必要なのは、あの人をちゃんと女の子として扱える男なのかもしれない。
でも俺はそんな男にはなれない。俺はつかささんの強さに憧れてしまったから。
あの人を女の子に戻すなんてとんでもない。生天目つかさは最強の戦闘狂だ。
あの人の戦いを、戦闘狂の生末を。後ろでいつまでも追い続けていたい。
転校生「歪んでてけっこうさ」
俺は憧れてしまったのだから。戦闘狂・生天目つかさに。
――ヒュッ、ドオオオオオオオオオオン
転校生「うわっ! 何か飛んできたぞ!」
梓「生天目先輩ッスよ! 先輩! 大丈夫ッスか!?」
つかさ「……ふふ……」
転校生「……つかささん?」
梓「……あ、あの~」
つかさ「ふふ……ふはははははははははははははははははははははははは!!!!!!」
嬉しそうに、とても嬉しそうに、つかささんは大声で笑った。
つかさ「手を出すなよお前ら……出したら殺すぞ……!」
ふらりと、立ち上がる。
つかさ「これが……これが世界最強の女、我妻梅か……! 期待以上だ! はっはは……!」
だらりと垂れ下がった腕。やばい。既に鯨沈を使ってしまってるらしい。
梓「……これ、もう止めらんないッスね。止めようとしたらガチで殺されるッス」
転校生「今更だろ。とにかく援護するぞ。後で殺されようが、今はつかささんは殺させない」
ジンライSPを構える。霧の向こうから、ゆらりと蒼い髪の女の姿が現れる。
梅「……実に多様ね」
その女からの迫力だけで、一歩も動けなくなりそうだった。
梅「膨大な魔力を肉体強かのみに使い、限界を超えて肉体強化を重ねる……まさか魔力切れの前に、
肉体の方が悲鳴を上げるまでの強化とはね……ふふっ、若いって恐ろしいわ」
傷ひとつない。つかささんの切り札、【鯨沈】を相手に殴り合って。
梅「そっちの子も面白いわね。魔力は大したこと無さそうなのに、とんでもない動きだわ」
梓「あはは……恐縮ッス」
梅「そして……あなたが噂の男の子ね? 中々身のこなしも悪くないわ。国連軍機甲師団かしら?」
転校生「師匠がそこ出身です」
梅「あら、なるほどね。良い動きをするわけだわ。ふふふ」
これが、我妻梅。世界最強の女。
梅「さて……死ぬ前に、三人とも名前を聞いておこうかしら」
三人がかりで、秒殺される未来しか見えない。
それでもつかささんは、自身にさらに強化魔法を重ねる。魔力は余っても肉体は耐えきれない、その魔法を。
つかさ「名などどうでもいい……ただの気狂いだ。好きに戦い、理不尽に死ぬ」
つかささんは愉しそうに、拳を打ち合わせた。
転校生「気狂い親衛隊1号。さすらいのイケメン。気狂いの未来の夫です」
俺も愉しくなって、ジンライSPの照準を合わせる。
梓「……気狂い親衛隊2号。さすらいの忍者。……横の2人の保護者ッス」
梓も、困ったように笑って、クナイを構える。
そんな俺たちを、我妻梅は心の底から愉快そうに眺めていた。
有望な戦士を品定めするように。これからの闘争に心躍らせるように。
梅「ねえ、戦うことは好きかしら?」
つかさ「我が人生の全て」
そして戦闘狂は、蒼髪の魔女へと跳びかかった。
phase12 2016年7月、その後
そして、一か月後、2016年7月。
転校生「疲れた……」
梓「もう動けないッス……」
つかさ「ええい、つまらんつまらんつまらん!」
裏世界遠征から帰って来たつかささんはずっとこんな調子だった。
つかさ「結局、我妻梅にも! そしてムカデのムサシにさえ勝てないとは……!
我が力の無さをこんなに歯がゆいと思ったことは無い!」
転校生「いやつかささん、退却のときに敵のボスっぽいのブッ倒してたじゃないですか」
梓「勘弁してほしいッス……ここ2ヶ月くらい生きた心地がしてないッス……」
つかさ「あんな小物はどうでもいい。私の力不足はよくわかった! 服部起きろ! 訓練だ! 私と戦え!」
梓「それ訓練じゃなくて死闘ッスよね!? 今ちょっと冗談につき合うつもり無いッスよ!?」
転校生「頑張れ梓。応援してる」
梓「他人事だと思わないでください!? 今気が立ってるんでガチで怒るッスよ!?」
つかさ「ははは! いいだろう服部! 本気で来い!」
梓「いやあああああああああああ死にたくないッス―――――――――!!!!!!」
チトセ「……呆れたわね。本気でギリギリまでムカデのムサシと戦っていたの?」
転校生「これでも梓がかなり急かしたんですけどね。ま、間に合ってよかったです」
転校生「ねえチトセさん。裏世界って、始祖十家が敵なんですよね?」
チトセ「ええ。私も見たわけではないけど」
転校生「……まさかとは思いますけど、ジェイソン・デラーや我妻梅が敵ってことは……」
チトセ「……想像したくないわね」
そんなことになったら流石に勝てる気がしない。
ジェイソン・デラー。我妻梅。周万姫。始祖十家はバケモノだらけだ。
チトセ「そういえば彼女、我妻梅とコネクションが出来たそうじゃない。いい機会だわ。
いざというときのために、我妻梅との間に良好な関係を保ってほしいのだけど」
転校生「つかささんに無茶言わないでください。あの人に戦略的な行動なんて出来るはず無いです」
チトセ「でも我妻梅は言って来たそうじゃない。『私のそばに居なさい』って」
転校生「……それについては嬉しい提案だと思ったんですけどねえ。つかささんにその気はなさそうです」
つかさ『私があの女に教えを乞うと思うのか? 目を覚ましてやろう、転校生』
チトセ「……ほんと、扱いづらいわね」
転校生「でも、そこがいいんですよ。誰かに媚びるなんて、つかささんじゃありません」
愛しいヒーローの顔を思い浮かべる。
転校生「あの人は決して誰にも従わず、誰にも屈しない。俺の大好きな最強の戦闘狂です」
ミナ「おーいサーヴァントー!」
転校生「おおミナ、恋。どうした?」
恋「晴れて未来のミナに接触できたことじゃしのう。退却を手伝ってくれた梓に礼を言おうと思ってな」
転校生「ああ、梓なら今……ちょっとつかささんと遊んでるよ」
本人は死にもの狂いだけど。
ミナ「おおそうか! 今回はあのオーガにもずいぶんと世話になったしな!
これからお疲れ様会をやるのだが、オーガも招待してやろう!」
恋「うむ。生天目には梓がいつも世話になっておるしのう」
転校生「えっ、マジで?」
正直つかささんがそんなものに参加するとは天地がひっくり返っても思えない。
転校生「いや、誕生日会の要領で梓が頑張ればなんとかなるかな……わかった。誘ってみるよ」
ミナ「ああ! よろしく頼むぞ! サーヴァント!」
未来の自分と出会ったというのに、ミナはいつにも増して元気いっぱいだった。
転校生「強くなって行くんだなあ、あいつも」
ここはグリモワール魔法学園。少年少女が強く、逞しく成長する風飛の丘。
転校生「さて……とりあえず初音に会いに行くか」
戦いはまだまだ続く。とりあえず、好きな女の子の傍に居ようと思った。
終
自分の理想のグリモア生活を文字にしただけ
つかささん大好きです。初音大好きです。あずつか大好きです
ストーリー更新でつかささん梅に弟子入りでビビりました
おつでした
このSSまとめへのコメント
戌年は虎千代つかさルートだった