唯「あずにゃんの……下半身」(32)
いつもの部活
唯「今日もたくさん練習できたねぇ」
梓「いつも通り、ほとんどティータイムだったじゃないですか……」
いつもの帰り道
唯「それにしても、今日はりっちゃんと澪ちゃん、どうしたんだろ?」
梓「幼馴染同士、二人で買い物でも行ってるんじゃないですか?」
紬「ひょっとして……デートなんじゃないかしら///」
いつもの会話
梓「なな、何言ってるんですか!?///そんなわけないでしょう///」
紬「うふふ……わからないわよ?」
でもその日は
忘れられない日となったのです。
梓「だいたい、女の子同士ですよ?」
紬「性別なんて、二人の愛の障害にはならないわ!」
梓「愛!?」
唯「あーずにゃん……私たちも、デートしちゃおうよ!」
梓「!?ええっ!?ちょっ、ちょっと何言ってるんですか唯先輩まで///」
唯「だってー、あずにゃんのこと大好きなんだもん!」
梓「////」カァーッ
紬「あらあら、顔が真っ赤よ?まんざらでも……むしろ嬉しいって顔ね///」
梓「も、もう!!ムギ先輩!からかわないでくださ
瞬間、轟音が響きわたり、眼前からあずにゃんが消えていました。
唯紬梓「……」
私たちは何が起こったのか理解できず、声も出さずに呆けていました。
梓「えっと……あれ?」
なぜかあずにゃんの声が下から聞こえてきます。
梓「どうしたんでしょ……あれ?立てな「あ ず さ ち ゃ ん ! ! !」」
ムギちゃんが、今までに聞いたことのないような大声をあげました。
思わず、私もあずにゃんもそちらを見ます。
表情も今まで見たこともないような物になっていたムギちゃんは、あずにゃんの前にしゃがみました。
落ち着いてくると、私は状況をのみ込めてきました。
最近、ビルを建設するとかで、この道の近くで工事が始まりました。
これは後から知った話ですが、その日は休工日で作業員はいなかったそうです。
そして、骨組みだけのそのビルの高いところから、何らかの拍子に
落ちてきたのです
大きな鉄板が
あずにゃんの上に
その大きな鉄板は、あずにゃんの下半身を完全に潰していました。
だから、あずにゃんの声が下から聞こえてきたのです。
状況が飲み込めてきたとは言っても、私は茫然とその様を見ているしかありませんでした。
紬「……いい?梓ちゃん。これから私が言うことを、私の目をじっと見て、よーく聞いて。」
梓「はい、でも、あの、立てな……」チラッ
紬「私の目を見て!!!!!!!」
梓「(ビクッ)はっ……はいっ……」
紬「はぁっはぁっ……あのね、梓ちゃん。ちょっとショッキングかもしれないけど、落ち着いて聞いて。」
梓「はいです……」
紬「今ね、梓ちゃん、足をね、ちょっと怪我しちゃってるの。」
私には、ムギちゃんの意図がわかりませんでした。
梓「足……ですか?」
紬「こっちを見て!!……たぶん、工事現場から資材が落ちてきたの。」
紬「それでね……きっと、命に関わる怪我じゃないと思うんだけどね、」
梓「は、はい……」
紬「やっぱり、怪我してるところを見ちゃうと、大変だと思うの。」
紬「ほら、私もね、小さい頃に怪我しちゃったんだけど……自分で傷を見てパニックをおこしちゃって」
紬「急にとんでもなく痛くなるし、死んじゃうんじゃないかって……だから、ね、」
紬「今から救急車呼ぶけど、自分で傷を見ないようにって、ね、今、痛くない?」
ムギちゃんは、絞り出すように、とぎれとぎれに、あずにゃんに言い聞かせました。
梓「はい、なんか、痛いっていう感覚はないです。」
紬「なら、なおのこと見ない方がいいわね。ひょっとしたら、怪我の具合で一時的に神経が麻痺してるのかもしれないわ。」
紬「でも、怪我には変わりないからね、急いで救急車呼ぶわね。」
梓「はい、お願いします……」
紬「それでね、救急車が来るまでの間は唯ちゃんとお話できるかしら?」
唯「え?」
梓「唯先輩と、ですか?」
紬「ええ、その方が気がまぎれて、うっかり傷を見ちゃったりしないでしょう?」
梓「そ、そうですね!」
紬「私は救急車や隊員さんを誘導するために大通りにいなきゃいけないから、ね。」
唯「あ、うん、え、えっと、」
紬「じゃあ唯ちゃんにお願いして私は救急車を呼ぶけど、唯ちゃんはほら、ちょっとおっちょこちょいな所があるから、」
紬「急いで、少しだけ唯ちゃんに、注意することをお話ししてから救急車を呼ぶから。」
紬「その間もずっと私と唯ちゃんを見ててね。」
梓「はい、わかりました……」
そう言うと、ムギちゃんは私を連れて、少しだけあずにゃんから離れました。
あずにゃんは、ずっとこちらを見ていました。
唯「あの、ムギちゃん……?な、なんで……」
紬「唯ちゃん、……私だって、わかってる。あの怪我では……梓ちゃんは……」
唯「うっ……ひっ……」ポロポロ
紬「泣いちゃだめ!梓ちゃんを不安がらせるような顔は見せてはだめよ!」
唯「でも……でもぉっ……」
紬「私はね……それでも、希望を捨ててないの。梓ちゃんを助けたいの。」
唯「……?」ヒック
紬「梓ちゃんは幸い、痛みも感じず、落ち着いてるわ。精神面で持っていると言ってもいい。」
紬「ちょっとの間……救急車が来る間くらいなら、生きていられるかもしれない。」
紬「そして、救急車が来れば、梓ちゃんは……助かるかもしれない。」
唯「うんっ……うんっ……」ズズッ
紬「だからね、唯ちゃんには、梓ちゃんを助けるお手伝いをしてほしいの。」
紬「梓ちゃんが怪我に気付かないように……明るくいられるように……」
唯「うんっ……!!」
紬「だって、だって、わだしだって、たいせつなあずさぢゃんにしんでほしぐないもんっ・・・・・・!」ポロポロ
紬「じゃあ、急いで電話するからっ……梓ちゃんを頼んだわよ……」グスッ
そう言うと、ムギちゃんは大通りの方に走っていき、119番通報しました。
紬「もしもし、救急車お願いします!梓ちゃんを……梓ちゃんを……たすけてぇっ……」ボロボロ
さっきまでの、頼もしかったムギちゃんはもういませんでした。
その場に崩れ落ち、ダムが決壊したように、涙があふれ出ていました。
だから、今は……
私がしっかりしなきゃ。
私は急いであずにゃんのもとに向かいました。
唯「あずにゃん!えーっと……怪我、見てない?」
梓「はい、ずっと唯先輩たちの方を見てました。」
唯「よかったぁ……!じゃあね、これからも絶対見ちゃだめだよっ!」
梓「はい、お気づかいありがとうございます。」
唯「今、ムギちゃんが救急車呼んでくれたから、ちょっと待ってようね!」
梓「あの、唯先輩……」
唯「えっ!?なに?あずにゃん。」
梓「なんか凄い汗ですけど……」
唯「あっこれはっ、そのー……さっき小走りしたから!!」
唯「それに今日はちょっと厚着しすぎちゃったかもー?いやーあっついあっつい!!」
梓「もう……汗かいて風邪ひかないようにしてくださいね。」
この汗は暑くてかいたものじゃない。
冷や汗というか、なんというか……俗に言う、「嫌な汗」ってやつだと思う。
自分が怪我している中でも私を心配してくれるあずにゃん。
……絶対に死なせない。
唯「そうだねぇ、ちょっと汗を拭かせてもらおうかな?……って、今日ハンカチ忘れちゃったよ!」
梓「もー、唯先輩は本当にぬけてますねー!」
唯「えへへ……(よし、こんな感じでいつも通りの会話をしてけばいいよね……)」
梓「しょうがないなぁ、私のハンカチ使ってください。」
唯「め、面目ない……//」
梓「確か、鞄の中にタオルハンカチがありますから……あれ、鞄、どこいっちゃったんだろ?」キョロッ
あっ
唯「だめっ!!!!!!」
梓「!?」ビクッ
唯「こ、こ、こっち向いてなきゃだめだよ!!!」
梓「えっ、あ、そ、そうでした。すみません……」
危なかった……
普通に、普段通りに会話するだけじゃいけない。
あずにゃんが周りを見ないように気をつけなきゃ!
唯「……ううん、私こそ大声出しちゃって……ごめんね……」
梓「いえいえ、私のためにしてくれたんですもん。ありがとうございます。」
唯「じゃあ、私が鞄とるから……ハンカチ、借りるね?」
梓「どうぞ。たぶん、内側のポケットに入ってたはずです。」
唯「……(ゴソゴソ)あ、あったよ、これかな?」フキフキ
唯「……ふうっ、サッパリ!」
梓「それはよかったです。」
唯「ハンカチありがとね!ちゃんと洗濯してお返しします!」
梓「そんな……気にしないでください。私たちじゃないですか。」
唯「そ、そう?あ、それに洗濯って言ってもやってくれるのは憂だもんね……」
梓「ふふっ、そうですね。ああ、もとのポケットに戻してくれればいいですよ。」
唯「はーい。」
唯(さっきムギちゃんが電話してから2分くらい)
唯(たしか救急車って、6分くらいかかるんだよね)
唯(だとすると……あと4分!)
唯(あずにゃん……頑張って……)
書き溜めがなくなったでござる
申し訳ないが、もう1時だし寝ます
即死・麻痺云々の突っ込みは「フィクションですから」という一言で片付けます
もうオチは決まってるから、あまり時間はかからないと思います
引き延ばしちゃってごぬんねノシ
id変わる可能性大なので鳥でも付けとこう。失敗してたら笑いもんだが
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