上条「53番目の改造人間」 (185)

 
 その日の真夜中に、路地裏から少女の悲鳴が聞こえた。

 
 路地裏に写る二つの人影。一つは少女、もう一つはイノシシの顔が渦を巻いて歪んでいる様な顔をした男の影だった。


 「へっへっへっ・・・安心しな、痛いのは一瞬で後は楽になるぞぉ?」

 
 「キャァアーーーッ!!」


 再び少女が叫び、路地裏に木魂する。歪んだ顔の男の頬に生えた鋭く尖った牙が、少女の喉に突き刺されようとした、その時だった


 「トォッ!」


 「グオォオオッ!?」


 突如として現れた少年が男を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた男は壁に叩きつけられ、地面に伏せる。


 「行けっ。俺が守る」


 怯える少女に少年は肩に手を添え、鋭い瞳で少女の目を射抜く様に見つめる。少女は震えながら頷いて、少年が肩から手を離すと、落としていた何かの入ったケースを掴み逃げ出す。


 「貴様ァ・・・!よくも俺の獲物を!」


 「獲物なら俺がなってやろうか?」


 ニヒルに嘲笑ってその鋭い眼で男を睨む。男は嘲笑う少年に憤慨して、捩じれた口から唾を飛び散らしながら叫ぶ。


 「何を~!?俺が欲しいのは女の生血だ!野郎の血なんざ吐き気がする!」


 「ふんっ・・・血か・・・かつて俺にも流れていたな・・・」


 「あぁぁん?」

 
 少年は目を細めて、自分の左手を見つめる。男は首を大きく傾げる。その瞬間に少年の首に巻かれた純白のマフラーが靡く。

 
 服も黒が混ざった襟が立っている深緑のジャケットに変わり、脇には頭部が赤で後頭部から口まで白いラインが入ったヘルメットを抱えている

 
 腰にはマフラーと同じ、白いベルトが巻かれて中央の赤く輝く2つの風車が回る。
 

 「き、貴様っ・・・まさかぁっ!?」


 少年は脇に抱えていた赤と白のヘルメットを被り、露出した顎には白いクラッシャーを填め付ける。


 ヘルメットにある緑色の二つ眼が輝く風車と同じように、怪しく輝く。


 「ああ、そうだ・・・俺は53番目だ」

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 「・・・きて・・・起きてってば。当麻くん!」

 
 毎日聞いている馴染みのある声で脳の神経を突つかれ目を開く。目の前にはあの時助けた、ピンク色の柔らかな瞳の少女がシーツを被って、自分に覆い被さっていた。裸で。


 上条「んんっ・・・」


 「もおっ、やっと起きた・・・」


 上条「あぁ、すまない。アリサ」


 当麻と呼ばれている少年。「上条当麻」は少女の名前を呼び、後頭部に手を回して自分の顔に引き寄せて口付けを交わす。


 アリサは目を瞑って、無抵抗のまま受け入れる。 


 アリサ「んっ・・・何か夢でも見てたの?当麻くん、笑ってたけど・・・?」


 上条がアリサから唇を離して一言目に出てきた言葉に上条は目を細めた。あの時の事を、アリサに思い出してほしくないと思うからだ。


 上条「あぁ・・・見てたけど、忘れたな」


 アリサ「ふふっ。嘘ついてもダメだよ?だって・・・一度覚えたら忘れないんでしょ?」


 上条「・・・。布団、干すか」


 アリサ「うんっ」


 上条が上半身を起こすと、アリサは返答しない上条に追及せずにそのまま横に寝転んで退き、被っていたシーツを身に包んで立ち上がる。


 上条は下は一応、一枚だけ履いているがほぼ半裸状態でキッチンに向かう。棚の扉を開けてインスタントコーヒーの元粒の入った瓶を取り出す。


 上条「コーヒー飲むか?」


 アリサ「うーん。・・・ホットミルクでお願い」


 上条「ああ」


 アリサはクローゼットから服を取り出して着替える。その間に上条はコーヒーの元粒をカップに入れて、薬缶に水を、鍋には牛乳を入れるとコンロに火をつける。


 ふつふつと鍋の牛乳が温まって来た頃にアリサは着替え終わった。両肩と鎖骨が完全に露出して、スカート丈は短く太腿が露わになっている白いワンピースに着替えていた。


 上条「朝から襲わせる気か?」


 アリサ「もうっ、当麻くんったら」


 上条が悪態をつきながらホットミルクが注がれたカップをアリサに渡す。アリサは頬を染めて満更でもなさそうに受け取る。

 
 上条はほんの一瞬マジで襲いそうになったが、注ぎ口についている笛の音で我に返って欲から逃れる。


 アリサ「そう言えば、当麻くん、補習はあるの?」


 上条「ああ・・・終わったらすぐに帰ってくるからな」


 アリサ「うん。わかった」


 アリサはカップを片手に窓を開けて、ベランダに出る。今日は青空が広がる、洗濯日和だった


 アリサ「良いお天気・・・」


 アリサはカップの縁に口を付けてミルクを一啜りする。口の中に広がる、柔らかな甘味を堪能しているとふと目の前の手摺に目を移す。


 アリサ「・・・え?」


 「・・・」


 手摺に白い物体が引っ掛かっている。よく見ると、白い修道服を身に纏ってベールから銀髪を覗かせている少女だった


 アリサはあまりに非常識な光景に言葉を失って呆然と立ち尽くす。そうしていると、その少女が目を覚ましてアリサを見つめた。


 「・・・お腹がすいたんだよ・・・」


 第一声の言葉の後に、雷の如く腹の虫が鳴り響く。

 
 上条「何だ?朝なのに夕立か?」


 いつの間にか着替え終えた上条は、アリサを後ろから抱き締める。そのままアリサの顎に手を添えて自分の方に顔を向けようとしたが、何かを見ているのに気づいて自分もその方向を見る


 「・・・お腹がすいたんだよ・・・」


 上条「・・・雷様でも落ちてきたのか?」

上条さんである必要


 アリサ「えっと・・・。とりあえず、あり合わせしかなかったんだけど・・・」


 アリサはガラス製の黒い真四角のテーブルに、昨晩の夕食のおかずを幾つか置いた。それを見て銀髪の少女は目をキラキラと輝かせる


 「い、いただきます!」


 ものの数秒でおかずが少女の口の中に入って胃袋へ消えて行った。それを見た上条とアリサは一瞬テーブルの下を覗き込んで、落としてないかを確かめる。

 
 だが、何も落ちてはいなかった。

 
 「ぷは~~っ。美味しかったんだよ、ありがと!」


 アリサ「う、ううん・・・どういたしまし、て・・・」


 少女は眩い笑顔でお礼を言うと、アリサは戸惑いながらも苦笑いで答える。

 
 上条「まさかサメラーの娘とかじゃないよな・・・」


 「サメラーって鮫のラー油のこと?」


 上条「いやいやそんなもの聞いたことも見たことも無い」


 上条は一瞬目を鋭くさせて少女を見るが、少女の返答にへなっと鋭かった目が元に戻って手を顔の前で振り、首も横に振る


 アリサ「そ、それで・・・あなたは?」


 インデックス「私の名前はね、インデックスって言うんだよ?見ての通り、教会の者です。ここ、重要だよ」


 アリサが少女自身について問いかけると、銀髪の少女はそう名乗った。二人はそれぞれ別々の考えが脳内を駆け巡って、目を丸くする。


 アリサ「イン、デックス・・・?」


 上条「目次?」


 インデックス「目次じゃなくて、禁書目録って表記するんだよ?魔法名ならDedicatus545。あ、バチカンじゃなくてイギリス清教の方だね」


 アリサ「デーディカートゥス・・・?」


 上条「・・・ラテン語で捧げる、献身的と言う意味だけど・・・さっきの様子では全然そんな風には見えないんだが」


 インデックス「むむっ!それはちょっと麗しいシスターとして聞き捨てられないんだよ!」


 上条が首を傾げるアリサに対して答えると、インデックスは頬を風船の様に膨れっ面になる。上条は少し呆れ気味にジト目でインデックスを見る。

 上条「自分で麗しいって言うもんか・・・?」


 アリサ「ま、まぁまぁ、それで、インデックスちゃんは、あそこにいたの?」


 上条の返答にインデックスは自分の親指の爪を噛み怒り心頭し始めると、アリサが焦りながら話を割って止めさせて窓越しに見える手摺を指す。


 するとインデックスはアリサが指した方を見て、親指の爪を噛むのを止めて俯きながら答えた


 インデックス「・・・落ちたんだよ。追われてたから、逃げる時に飛び移るつもりだったけど・・・」


 上条「追われてた・・・?」


 上条はインデックスの「追手」と言う言葉に目を鋭くさせ、真剣に聞き始めた。アリサも同様で悲しそうな表情を浮かべているインデックスを見つめる。

 
 インデックス「うん・・・魔術結社にね」


 アリサ「ま、まじっくきゃばる・・・?」


 上条「・・・。・・・その前に屋上から飛び移るのはどうかと思うぞ?」


 インデックス「仕方が無かったんだよ、あの時は・・・それに飛び移る時に背中を撃たれて」


 アリサ「う、撃たれたって・・・!?だ、大丈夫なの!?」


 アリサは勢いよく立ち上がって、インデックスの背後に回り込み修道服の上からインデックスの背中を擦る。だが、純白の修道服にはどこにも傷らしきものは無い。


 インデックス「ああ、傷なら大丈夫だよ。この服には一応、防御結界の役割もあるから」


 アリサ「け、けっかい・・・?」


 アリサが不思議そうに聞き返すと、インデックスは「うん」と答えてから、服のカタチをした教会だとか、布地はトリノの聖骸布だの長々しい説明をし始めて、アリサの頭がパンクしそうになった。


 そんなところで上条がインデックスの口に魚肉ソーセージを捻じ込む。インデックスはまだ説明があるのに!と言いながら、もぐもぐと素麺を啜るが如くソーセージを食べる。


 上条「服の説明はいいから、その敵の説明をしてくれないか?」


 インデックス「え?・・・信じてくれるの?」


 上条「・・・俺も俺で、ヤバイ奴らと戦ってるからな」


 ソーセージを食べ終えて、自分の言っている事に疑問を抱いていない上条をインデックスは問いかける。上条は自分の左手を見つめながら、そう答えた。


 そんな上条をアリサは少し気まずそうに見つめて、インデックスに話しかけた。


 アリサ「当麻くんは、この学園都市を守ってる・・・ヒーローなんだよ?」


 インデックス「ヒーロー・・・?」


 アリサ「うん。とっても強くてカッコいいんだよ!ポーズは、こうだよね?」


 楽しげに話すアリサは両腕を広げて、ポーズがあってるか上条に聞く。しかし上条は眉間に皺を寄せて不満そうなので、違っていた様だ。


 上条「それもだけど、基本はこうだよっ!こうっ!」


 そう言いながら上条は右腕を立てて更に2本の指を軽く曲げながらVの字に立て、肘に左手の3本の指を添える。それを見て、アリサは「ごめん」と舌を出して謝る。


 上条はため息を聞こえる様について、薄く笑みを浮かべアリサの頭を優しく撫でた。

 インデックス「・・・二人は夫婦なの?」


 アリサ「えっ!?」


 インデックスの唐突な質問にアリサは顔を真っ赤にさせて驚く。一方で上条は満足そうに笑っていた。


 上条「いや、残念ながらまだあと3年待たないといけないからな」


 インデックス「あ、そっか。日本では男の人は18歳以上で女の人は16歳以上じゃないといけないもんね」


 上条の言ったことにインデックスは真面目に答える。それに上条は少し拍子抜けて苦笑いを浮かべながら、頬を軽く指先で掻いた。


 ふいにインデックスは名乗ったのに、自分は名乗っていないのを思い出してインデックスに向き直る。


 上条「そう言えばまだ名前言ってなかったな。俺は上条当麻だ」


 アリサ「め、鳴護アリサだよ・・・ほ、本当の名前は、忘れちゃったから、この名前なんだけどね」

 
 上条「ま、いずれ名字は俺と同じになるけどな」


 アリサ「も、もぉっ・・・」


 上条が悪戯に付け足すとアリサはぽかぽかと上条のウニ頭を拳で叩く。本気で叩いてはいない。

 
 インデックス「・・・二人とも仲良いんだね。神のご加護があることを祈るんだよ」


 そう言いながら十字を切ると、インデックスは立ち上がった。立ち上がったインデックスに上条とアリサはそれぞれの行動を止め、目を移す。


 インデックス「二人に迷惑を掛けちゃうから、行くね。ごはん、とっても美味しかったんだよ。ありがとうね」


 そう言ってインデックスは玄関まで歩いて行こうとした。しかし、上条が目ではゆっくりな動きのはずなのにいつの間にかインデックスの前に立っていた。


 インデックスは驚いて声も出せず硬直する。上条はそんなインデックスを見つめたまま、インデックスの両肩に手を乗せ優しく微笑む。


 上条「・・・アリサにも同じことを言ったんだがな・・・俺が守る」


 上条はあの時と同じように、インデックスの目を見つめる。


 インデックス「・・・じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」


 上条「ああ。三途の川だって背負って泳いでやるよ」


 アリサ「私も!・・・怖いけど、インデックスちゃんを守ってあげる!」


 インデックス「・・・っ、すん・・・ぐすっ、ひぐっ」


 上条とアリサは突然泣き出したインデックスに驚いて慌てふためく。先程までのシリアスさは微塵も無くなっていまった。
 

 アリサ「ど、どうしたの?やっぱり、背中が痛いの!?」


 インデックス「ち、がうの・・・」


 インデックスに「嬉しいの・・・本当の神様に出逢えたみたいだから・・・っ」


 インデックスはアリサに首を横に振って否定し、両手で眼から零れ落ちる大粒の涙を拭いて、嬉しそうに笑った。


 上条とアリサはその笑顔を見て、お互い顔を見合わせホッと安堵の溜息をつき頷き合った。この子を守り抜こうと

>>5 三下+第3位(美琴)+三段活用=上条さん


次回予告


 「上条ちゃんは頭は良いのですけど日数が足りないので補修がついたのですよ~」


 上条「マジすか学園」



 「アンタ!今日こそ決着をつけてやるわよ!」


 上条「帰ってアリサチャージしないといけなからパス」



 「Fortis931と言っておこうかな・・・僕の魔法名・・・殺しな かな?」


 上条「俺の名前は上条当麻・・・またの名を「53番目」・・・」


 上条「・・・変身っ!」

期待

乙カレー
昔禁書の書いてました?

>>11 あざーッス。

>>12 別ジャンルのssを書いてた。まどマギ(アメコミクロスss)ポケモン(ほのぼの日常的)

乙です

あれか!期待

>>14 ありがとうございます
>>15 そう、それそれ(どれかわからんけど)


 アリサ「・・・そう言えば当麻くん、補習・・・」


 上条「・・・やべ、もうこんな時間かっ!?」


 アリサに言われて上条は何故か時計を見ていないにも関わらず時間がわかったような口振りで、慌ててそこら辺に投げていた鞄を引っ掴むと玄関に向かう


 上条は靴を履きながらアリサに聞く。


 上条「アリサ、今日ライブは?」


 アリサ「無いよ。だから、今日はインデックスちゃんと一緒に居るから」


 上条「そうか、わかった。悪い、行ってくる!」


 アリサの返答を聞いて、ドアを開けて外へ出ていった。かと思ったが、すぐに戻ってきてアリサに駆け寄った


 上条「行ってくるな」


 上条は微笑みながらそう言って、インデックスがいるにも関わらず堂々とアリサの唇に口付けをする。


 アリサは目を少し見開いて驚くが、次第に目を細めて頬を桜色に染めた。上条は唇を離すと、ドタドタと風の如く再び外へ出ていった。


 アリサは上条を見送りながら指で唇に触れ、頬を染めたまま微笑む。


 インデックス「・・・ホントにらぶらぶだね」


 アリサ「あ、ご、ご、ごめんね!は、恥ずかしいとこ見せちゃって・・・」


 インデックスが話しかけてくるとハッとアリサは我に返って頬から今度は顔を赤く染めて両手を左右に広げて振りながら謝る。


 しかしインデックスはクスクスと笑ってこう返した


 インデックス「いいんだよ。二人が幸せそうなのを見てると、私も幸せな気持ちになるから」


 アリサ「え・・・。・・・あ、ありがとう、インデックスちゃん」


 アリサはその言葉を聞いて恥ずかしさは残るが、内心嬉しい気持ちになってインデックスに微笑みかける。


 
 上条「くっそー。小萌先生に課題増やされる・・・っ!?」

 
 一方その頃上条はぼやきながら、全力疾走で学校へ向かっていた。


 早く学校へ着かないと、と考えていると、突然頭に電流が流れ込み走っていた足を止める。上条は目を鋭くさせ辺りを見渡す。


 誰かに見られていると感じながら、上から視線を感じてビルの屋上を見上げる。


 一瞬黒い影が見えたが、何も無い。上条は眉根を寄せて、黒い影が見えた場所を睨んでいたが誰もいなければ意味がないと結論付け、再び学校へ足を運んでいく

 
 「・・・今、明らかに僕たちの存在に気づいていたね」


 「ええ・・・そのようですね」
 


 小萌「はーい、6分遅刻の上条ちゃんは課題3プラスなのですよ~」


 上条「ですよねー」


 学校へ着いて、上条は自分のクラスの教室へ入るや否や天使のような笑顔を見せる小悪魔に3枚のプリントを渡された


 頭が外れたように項垂れながらプリントを受けとる上条を見ている他の仲間達は、哀れと言った表情を浮かべて同情していた。


 「センセー、何で上条君にも補修がついてるんですかー?」


 「それは気になったにゃー。上やん、別にオレ達並みに頭は悪くないと思うけどにゃー?」


 青い髪の毛の生徒が手をビシッと上げて聞くと、その後に続いて金髪にサングラスを掛けた生徒が言ったその言葉を聞いて上条はピカーンっと頭の中に別の電流が流れて、顔を上げる。


 上条「そ、そうですよ!俺、そんなにまでテストの点数とか悪かったんですか!?小萌先生!?」


 小萌「上条ちゃんは頭は良いのですけど日数が足りないので補修がついたのですよ~」


 上条「マジすか学園」


 ある意味流れてきた助け船に乗り込んだのはいいが、鋼鉄製なので沈んでいくように、上条の心は絶望の泉の底へ引きずり込まれていく。


 小萌にさっさと自分の席に着いてくださいねー、と言われて席へ向かう際に、サングラスを掛けた生徒は残念だにゃーと小さく呟いたのが聞こえて上条はポンと肩を軽く叩いた


 小萌「それでは楽しい楽しい補習授業の始まりですよー」


 上条が席に着くのを見てから小萌はチョークを片手に、天使のような笑顔を今度は補習を喰らった生徒達に向ける。


 「はーいっ!」


 青い髪の毛の長身な生徒はノリノリで返事をするが、上条を含める他の補習生徒達はため息をつきながら返事をする


 小萌「うんうん、青髪ちゃんはいつも返事がよくて結構なのです。他の皆さんも、ちゃんと返事をしないと"すけすけ見る見る゛とコロンブスの卵の刑ですよー」


 小萌は背中にドス黒い悪魔を召喚したのか、とてつもない威圧感を掛けて青髪以外の補習生徒達に言い聞かす


 小萌の恐ろしい刑宣言に上条が怯えている、その頃アリサとインデックスは皿を洗っていた。
  

 アリサ「でも何で、その魔術結社はインデックスちゃんを狙ってるの?」


 インデックス「私が持ってる魔導書を狙ってるんだ思うよ」


 アリサ「魔導書・・・?本のこと?」


 インデックス「そうだよ。どれを狙ってるかはわからないけど」


 アリサ「どれをって・・・何冊持ってるの?」


 アリサは会ったときからインデックスを見ていたが、どこにも本らしきものは持っていない事に疑問を抱く。


 しかしインデックスが次にこう答えた


 インデックス「10万3000冊だよ」

上アリとはありがたや…
劇場版久しぶりに観るか…


 上条「(・・・やっぱり心配だな)」


 上条「(俺が感じた視線を送ってた奴・・・いや、奴らだな。間違いなく、監視していた・・・)」


 小萌が台の上に乗って、それでも届かない黒板に爪先立ちで手を目一杯まで伸ばして数式を書き続けている中、上条は窓の外を眺めながら目は鋭くはないが強張らせる様に細めて様々な考え事を脳内に駆け巡らせていた。


 自分が今この補習授業を受けている間に襲われていたら、インデックスの敵を聞くのを忘れた、敵の目的、今日の晩御飯は3人分作らないと、等一つ余計な考えが入っている様な気がしたが気にしない。


 上条「・・・。・・・ふぐぉっ!?」


 小萌「!?。ど、どうしたのですか!?上条ちゃん!?」


 上条は突然変な声を出して、両腕で腹を抑え込む様に前のめりになりながら足で椅子を後ろに押す様に引いた。小萌や青髪、金髪のサングラスを掛けた生徒はもちろん他の補修生徒達も上条に注目する


 上条の脳内では、サングラスを掛けた男が古い仲間である老人と立ち食いそばを食べ終えて、階段を上がっていると突然腹痛に襲われた時に流れる疾走感のあるBGMが脳内再生されていた。


 上条「は、腹が・・・富士山が、大噴火を起こしている様に・・・痛いっ!」


 青髪「トイレに行けばええやんか・・・」


 青髪の冷静な返答に、上条は頭を抑えながら椅子から立ち上がってヨロヨロと教室の後ろに置かれているロッカーに凭れながら横に移動していき教室の扉を開けて出て行った。


 上条「・・・。・・・よし」


 上条は教室から出て扉を閉めて、耳を押し当てて中の様子を伺う。しばらくざわつきが聞こえていたが小萌のコロンブスの卵の刑宣言が聞こえて静かになる。


 それを見計らって、上条はポケットから携帯電話を取り出す。登録してある電話番号の内の一番上に表示されている番号を押して、電話を掛けた。

 

 アリサ「どうりで・・・持ってるはずないわけだよね」


 インデックス「当たり前なんだよ。でも、アリサが物わかりが良くて助かったかも」


 アリサ「一応、当麻くんから勉強を教えてもらってるからね」


 アリサとインデックスが談笑をしていると、アリサの携帯が鳴った

 


 アリサは携帯を手に取って、受信してきている相手を確認すると、目を見開いて驚く。


 インデックスがアリサの表情が変わったのに首を傾げる。アリサはボタンを押して、その相手と通話を繋ぐ。


 アリサ「も、もしもし?当麻くん?」


 上条『ああ』


 電話の相手は言わずとも上条だった。良く聞こえないとアリサは思うが、多分大きな声で電話できないはずなので小声で電話しているのだと気付く。


 アリサ「どうしたの?まだ補習中なんじゃ・・・」


 上条『気になってそれどころじゃなくなってな・・・大丈夫か?』


 アリサ「うん。こっちは問題ないけど・・・当麻くんはどうなの?」


 上条『トイレに行っていることにしてるから、今の所はな・・・ところで何か聞いたか?』


 アリサは心配そうに聞くと上条はそう答えて、真剣な声になるとアリサに問いかけた。


 その声を聞いてアリサは、いつもなら軽く笑い話をするところなのだが今の上条は真面目に聞いているのだと思い自身も先程インデックスから聞いた話を上条に告げる。


 アリサ「あ、うん。えっと・・・まず、魔術結社が狙っているのはインデックスちゃんが持ってる10万3000冊の魔導書が狙いみたい」


 上条『魔導書・・・如何にもって感じだな。・・・持ってるって言うのはどう言う事だ?」


 アリサ「それが・・・インデックスちゃんの頭の中にあるみたいなの。当麻くんとはちょっと違うみたいだけど、インデックスちゃんは記憶能力が優れてるみたいで・・・」


 上条『なるほど、完全記憶能力か。俺の場合は見た物を保存するんだがな』


 アリサは上条は苦笑いを浮かべて答えるのが何となくわかり、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。


 上条『よし、わかった。とりあえずもうすぐ終わると思うから、待っててくれ』


 アリサ「う、うん。わかった」


 アリサの返事を聞いて上条はチュッとリップ音を鳴らす。アリサは少し恥ずかし気に微笑みながら、同じ様にリップ音を鳴らした。


 上条はそれを聞いて満足そうに電話を切った。アリサも電話を切る


 インデックス「・・・らぶらぶなのはいいけど、そこまでする必要はあるのかな?」

 
 アリサ「あ。あぁぁあ~~~!ごめんなさい~!」


 ジト目になりながらインデックスはアリサに言うと、アリサは顔を真っ赤にさせて手で顔を覆いながら顔を横にブンブンと振る。


 インデックスは別に謝らなくてもと、汗を垂らして苦笑いを浮かべる。


 電話を終えて上条はさらっと流れる様に教室に戻って、小萌自称楽しい楽しい補習授業に戻ってきた。


 小萌「上条ちゃん、大丈夫なのですか?」


 上条「あ、はい」

  
 小萌「無理せずに先生に言ってくださいねー?」


 小萌は心配そうに戻ってきた上条に優しく言って、黒板に向き直る。上条は手で腹を擦りながら席に座って、本当に痛かったわけではないのに長いため息をつく


 上条「(狙いはわかった・・・後は敵を知るだけだな)」


 小萌「はい、ではここで先生が昨日の合間に作った小テストを配るですー。早く終わった人は早く帰れますが、点数が悪かったら罰ゲームですよ?」


 上条が顎に手を添えて、今度は窓ではなく小萌が一所懸命に書いている黒板を見つめて考え事を始めるが矢先、小萌は手に持っている補修生徒達分のプリントをヒラヒラと振りながら見せる。


 「ち、ちなみに小萌先生。罰ゲームのない様ななんですかにゃ~?」


 小萌「はーい、土御門ちゃん良い質問ですねー。罰ゲームはすけすけ見る見るですよー」


 何度も言うようだがその天使様な笑顔をしている小萌先生の背後で、悪い奴が心で爪を研いでいるのが見えた。


 自分から聞いた土御門と他の補修生徒達が震えあがっている。しかし上条だけは動揺せず、考え事に没頭していた。


 前から補習生徒が横着しながら後ろにプリントを渡していき、青髪から土御門へ渡って土御門が上条へ渡そうとした。だが、上条は考え事に没頭して気づいていない。


 土御門「上やーん?」


 上条「・・・あ、悪い」


 土御門が上条の目の前でプリントをヒラヒラとさせてやっと気づくと、受け取るや否や筆箱からシャーペンを取り出して、芯を出すとプリントに自分の名前を書く。


 小萌「制限時間は。質問はある人は手を上げてくださいねー」


 上条「はい」


 小萌が言い終わると上条が即座に手を上げた。


 小萌「はーい、上条ちゃん」


 上条「終わったんで帰ります」


 それだけ言うと上条はプリントを右手に、鞄を左手に持って小萌に近寄ってプリントを差し出す。小萌は目を丸くさせたまま無意識にそれを受け取った


 上条は急ぎ足で教室から出て行く。補習生徒達も小萌同様に唖然として、上条の背中を見送った。


 小萌は顔をプリントに向けて、上条に渡した小テストの採点を目視で確認する。


 小萌「・・・全問正解ですねー・・・」

上条さんめっちゃ頭良くなってる…やべぇ


 上条は早歩きで商店街の道を進んで、アリサとインデックスが待つ自宅へ向かっていた。時間帯は昼下がりで、どこかへ遊びに行ったりしているのか、多くの学生たちが出歩いていた。


 夏の日差しが降り注いで、男友達と笑いながら話している上条と同じ年くらいの若者は額の汗を拭く。だが、上条は拭かない。否、汗を一つもかいていない。 


 ふと目の前を通りかかったドラム缶に車輪を付けた様な形状をした警備ロボを見て、呟いた。


 上条「よお、しっかり働いてるな」


 その言葉に警備ロボは答えるはずもない。だが、上条は微笑んでいた。まるで仲間を見る様に


 「あ」


 上条「今日の夕食・・・いや、昼飯だな。まだ食べてないと思うし」


 「いたいた!この野郎、ちょっと・・・待ちなさいってば!何早足で逃げてんのよ!?」


 上条はアリサとインデックス達と昼食の事を考えていると半袖のブラウスにサマーセーターを着ている短く切った茶髪の少女が声を掛けて来る。


 それに上条は無視しているのか、そのまま素通りして先程よりも早く歩いて逃げようとした。だが無理だった。


 上条「何だ、何か用か?電撃文子」


 美琴「な、何よその書店に売られてるみたいな本の名前!?私には御坂美琴ってちゃんとした名前があんのよ!」


 御坂美琴と名乗った少女は目を吊り上げて両手をビュンビュンと振り回す。それを見て上条はおかしそうに笑うのを堪えながら問いかける。


 上条「それは悪かった。で何か用か?」


 美琴「アンタ!今日こそ決着をつけてやるわよ!」


 上条「帰ってアリサチャージしないといけなからパス」


 美琴「な、何よそれ!?アリサチャージって!?」


 ビシッと上条に指を向けて美琴は堂々とそう言うが、上条はそのままヒラヒラと鞄を持っていない方の手を振って歩いて行く。


 美琴は足元をダンッと踏みつける。すると美琴の髪が小さく電気が走るような音を立てて、足元から電流が地上を走り上条の足元へ吸い込まれていった。


 それを見た美琴は目を見開いて上条を見る。上条は前を向いたまま首だけを少し後ろに向けて美琴に告げた。
 

 上条「・・・。・・・能力は人助けの為に使え。車のエンジントラブルとかに役立つんじゃないのか」
 

 そう言われて美琴はカチンと歯軋りを立てて怒りそうになるが、ふと上条の顔を見て背中に悪寒が走る。正確には上条の顔ではなく目を見て、本能で恐怖を悟ったのだ。

 
 上条が再び歩みを進めると、美琴は上条を呼び止めようと口を開いたが、何を言えばいいのかわからず口をゆっくり紡いだ。


 上条は美琴に見えないように安堵の溜息をついて、早足で自宅へ向かって行った。


 上条「ありゃちょっと煽り過ぎたな。やっべ」


 数十分後に上条は自宅の学生寮へと辿り着いた。暑くは感じないのだが、先程の美琴とのやりとりでため息をつく。


 だがその矢先に、数時間前に感じたあの電流が再び頭の中に流れ込んできた。感じるのは背後から歩み寄ってくる身長約200cmの人物。


 鼻を少し嗅いでみると、体臭から放たれる薬品名は香水と煙草と断定。


 上条「・・・。・・・結婚式にはまだお呼びではないはずなんですがね?神父さん」


 上条は後ろを振り向かずにそう言うと、厚みのある靴底の足音が止まったのがわかった。上条は肩に引っさげていた鞄を降ろして、地面に置く。


 そして背後を向くと、予想した通り立っていたのは長身の漆黒の神父服を着込んでいる男だった。


 まず特徴的なのは右目の下にあるバーコードだ。肩まである髪は真紅に染めて、両耳に大量のピアスと両手の指全てには指輪をはめて、近くに立っているのにも関わらず上条は香水の匂いに気付く。


 煙草の匂いは手に持っているので、嫌でもわかった。


 「ほぉ、やはり気づいていたんだね・・・」


 上条「ああ。俺が学校に行くときに見ていたのは、お前ともう一人の誰かだったんだな」


 「そこまで気付いていたのか・・・」


 そう言うと男は目を瞑って薄く笑みを浮かべている。上条は美琴に忠告をしていた時と同じように目を鋭くさせ、男を睨みつける。


 「いやはやこれは驚きだね。まぁ、そんなことはいいか・・・さて、僕が何をしに来たのかは、わかっているんだね?」


 上条「・・・」


 「・・・黙認と受け取って構わないんだね?」


 男の言葉に上条は答えない。それを見た男は咥えていた煙草を指の間に挟んで、口から煙を吹き出す。


 ステイル「ステイル=マグヌス、と名乗りたいところだけど・・・」


 ステイル「Fortis931と言っておこうかな・・・僕の魔法名・・・殺し名 かな?」


 ステイルと名乗った少年は指に挟んでいた煙草を上空目掛けて指で弾いて投げ飛ばす。火の付いたままの煙草は宙を舞って火の粉を散らす。


 ステイル「炎よ――巨人に苦痛の贈り物を」
 

 ステイルが片手を天に掲げて、魔術を詠唱すると散った火の粉が爆発するように増大して炎の剣がステイルの掲げた手に握られる。


 その炎剣をステイルは躊躇なく上条目掛けて、振り下ろす。炎である為か柔らかく揺れる刃は上条の顔まで迫って来た。


 上条「・・・ふんっ・・・」


 だが、上条は両腕を素早く左に伸ばしてそのままの速度で右腕を右に伸ばして左腕は曲げて戻す。


 上条「・・・変身っ!」


 その瞬間、上条の首に白いマフラーが巻かれ、体を黒の混じった深緑のジャケットに変わった。


 上条「V・・・っ!・・・スリャァアッ!!」


 右手を拳に変えて腰の位置まで曲げ、曲げていた左腕を右手に向かって突き伸ばし、ステイルの振り下ろしてきた炎剣を突き壊す。
  

 ステイル「なっ・・・!?」


 上条「俺の名前は上条当麻・・・またの名を「53番目」・・・」


 上条は炎剣を突き壊した左手を戻すと、拳に変えていた右手に乗せられている赤と白のヘルメットを両手に持ち替え頭に被る。


 そして、白いクラッシャーを填めつけた。緑色の双眼が怪しく光る。


 Ⅴ3「゛Ⅴ3"だ」


 上条―――もといⅤ3は右腕を立てて2本の指を軽く曲げながらVの字にし、肘に左手の3本の指を添える。


 あの時、インデックスに教えたポーズだった。

>>19 本当は上アリじゃなくて「上鳴」だそうで
>>23 この上条さんは物覚えがいい


 次回予告


 Ⅴ3「傷つけるなら、自分の身を傷つけてろ」


 ステイル「そんな事・・・十分に味わったさ!」




 「魔法名を名乗る前に、彼女を保護したいのですが」  


 上条「それなら俺たち、3年後夫婦に任せてくれないか?女版座頭市さんよ」




 「はァい。それでは赤ン坊でもわかる脳ミソについての勉強の始まりでェ~す」


 インデックス「・・・勉強よりお肉をいっぱい食べた方がいいと思うんだよ」


 「うッせェな。テメェのために無駄な時間を使ッてやッてンだよ」

乙っつん

>>28 ありがとう

絵面想像するとなかなかシュールだな

>>30 ど、どこらへんがせうか?カッコよく決まってるはずなのに・・・!?


 ステイル「な、何なんだお前は!?」


 ステイルは突如として、姿を変えたⅤ3に動揺を隠せず目を見開いて一歩後退する。


 Ⅴ3はポーズを取るのをやめて、一歩後退したステイルとは逆に一歩前進して、先程までの喋っていた上条とは思えないほどの低い声で答えた。


 Ⅴ3「名乗ったはずだ。゛Ⅴ3"とな」


 ステイル「名前じゃない、お前の正体だっ!」


 Ⅴ3「今の俺は敵に親切に教えるお人好しではない。さぁ・・・とっとと帰るか戦うか、どちらを選ぶ?」


 ステイル「ふざけた事を・・・もちろん、君には消し炭になってもらう!」


 ステイルは叫ぶと自身が立っている一面の地面に何かが描かれたカードをばら撒いた。ばら撒く際に足元には手元が狂ったのか、同じ様に何か描かれたコピー用紙が数枚舞い落ちた。


 Ⅴ3はその行動を見ながらステイルの顔からどの様な状態になっているのか双眼の複眼で解析する。


 顔から滲み出る汗、息の乱れ、心拍数の上昇。自分から見える複眼の裏には[upset]とわかりやすく動揺していると表示された。
 

 ステイル「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ。それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり

      
      それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、その役は剣。顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ!」


 動揺しているとⅤ3に判定されたステイルだったが、魔術を早くではあるがしっかりと唱える。魔術を唱え終えるとカードの


 真紅に燃え上がる炎の中が黒く、人間の形状している炎の巨人が現れた。口から炎を吐き出して、獣の様に唸り、叫ぶ。


 Ⅴ3「(こいつは炎で攻撃をするのか・・・)」


 Ⅴ3はステイルの攻撃方法を探っていると、一瞬自分の部屋の方を、少しだけ首を動かしてアリサとインデックスが出て来てないかを確認する。


 しかし、ドアから二人は出てこなかった。それどころか2人以外に住んでいる筈の学生寮の生徒達も出てこない。


 Ⅴ3はそれを疑問に少し思ったが、炎の巨人が再び咆哮をあげて、自分に近づいて来るのに気付いて視線を前に戻す。 

 
 ステイル「殺れ、イノケンティウス!」


 ステイルが炎の巨人 イノケンティウスに命じるとイノケンティウスは鋭く尖った指を持つ手でⅤ3を引き裂こうとする。Ⅴ3はベルトの中央のバックルに左右の拳を翳す。


 バックルの二つの風車が上条の体が変化した時よりも超速回転し始める。イノケンティウスがⅤ3の右肩から引き裂かこうとした寸前だった


 燃え上がる炎の手が引き裂こうとした肩を撫でる程度に触れて、流れる様にⅤ3のベルトの二つの風車に手から体まで吸い込まれていく。
 

 ステイル「ば、馬鹿、な・・・!?」


 イノケンティウスが吸い込まれていく光景を見てステイルは目を見開く。イノケンティウスは逃れようともう片方の腕を振るうが、その腕も肩を触れるだけで傷一つつけられず、そのまま両腕から体を、完全にⅤ3のバックルに吸い込まれた。


 Ⅴ3は手をバックルから翳すのを止め、ステイルに近づこうとする。しかし、目を見開いていたステイルは怪しく笑んでいた。
 

 Ⅴ3はそれに気づくと足を止めた。


 その瞬間、カードから炎が吹き溢れて、再びイノケンティウスが現れた。姿は先ほど現れたままで、ダメージを受けた様子は無い。


 Ⅴ3「・・・流石は魔法使い、か?」


 ステイル「残念ながら、魔法使いなんて可愛いものじゃない・・・魔術師だ」


 ステイルが手を上条に向けて振ると、イノケンティウスが再び襲いかかってくる。Ⅴ3は少し腰を猫背に曲げて、額を突き出す。


 Ⅴ3「フリーザーショット」


 Ⅴ3の呟きで、複眼の上辺りにある、細長いバッタの触角の様なアンテナ先端の赤い電球が点滅する。電球の中のミクロサイズの円筒状の機械が回転して、青白い冷気を発生させる。


 イノケンティウスは先程と同じ攻撃手段で、手を振り下ろす。だが手に触れた冷気の中に含まれる水分が炎で蒸発せず、イノケンティウスの中の重油の様な芯に当たった瞬間イノケンティウスの手が凍り始めた。

 
 凍った手は、マグマが固まったように赤い灼熱の炎が詰まっているのか割目から光が漏れている。


 それ見てステイルは3度目も驚かされて、空いた口が塞がらなくなっている。イノケンティウスは自身の手が凍ったのを見て、痛みを感じているわけではないが、怯える様に悲痛の叫びをあげて凍った腕を、燃え上がっている反対の手で触れる。


 触れた瞬間凍っていた腕がポロッと人形の腕が壊れる様に地面に落ちて、砕け散る。イノケンティウスは失った腕から新たな腕が生やして、Ⅴ3を警戒するように睨んだまま叫んだ。


 Ⅴ3「(こいつの熱量を奪えば、いくらでも放出できるな)」


 Ⅴ3は体勢を戻して、自分を睨んでいるイノケンティウスを睨み返す。それにイノケンティウスは唸ったまま睨み合う。


 冷気をつくるにはそれだけの熱量、すなわち相当量のエネルギーを必要なためこの技は滅多に使わないようだった。


 Ⅴ3は再びイノケンティウスが仕掛けて来ると思い右足を前に一歩出して、上半身を前のめりにする。するとイノケンティウスが片目を顰めて、後退した。


 それを見たⅤ3は複眼で確認せずともその行動を理解した。こいつはもう怯えて掛かっては来ない、と


 Ⅴ3「・・・さぁ、どうする。今度はお前自身が相手になるのか」


 ステイルにそう言うと、ステイルは歯を食いしばって怯えるイノケンティウスに指示を出そうとする。だがイノケンティウスは既に怖気ついたのか唸るだけで、動こうとしない。


 絶望的な状況に陥っているのが、ステイルの顔を見て取れた。


 Ⅴ3「・・・一つだけ聞こう。お前達はあの子をどうするつもりだった」


 Ⅴ3はステイルの目的はインデックスの頭の中にある魔道書だとはわかっているのにも関わらず、ステイルにそう聞いた


 ステイル「・・・彼女は僕たちが連れて行く。傷物になろうが、ならまいが・・・必ずっ」

 
 Ⅴ3「傷つけるなら、自分の身を傷つけてろ」


 ステイル「そんな事・・・十分に味わったさ!」


 ステイル「灰は灰に、塵は塵に!――吸血殺しの紅十字ッ!!」 


 Ⅴ3が返した言葉に、ステイルは失っていた戦意を取り戻し、魔術を唱えると右手に真紅の赤い炎剣を、左手には青白い炎剣を手にする。 


 両手に持った二つの炎剣を乱暴に振り回して、Ⅴ3に斬りかかる。Ⅴ3は右手を拳から手刀に変えると、手首から指先に掛けて電流が走った

 
 Ⅴ3「電撃チョップ!」
 

 Ⅴ3は電気を纏った手刀で二つの炎剣を切り裂く。ステイルの蟀谷に一筋の汗が流れる。


 そのまま炎剣を切り裂いた手刀は弧を描く様に掌をひっくり返して、外側を向いていた掌が内側になる様に縦にして手刀を振り下ろす。

 
 手刀がステイルの首元に当る直前、小指の付け根に硬い棒状の様な物が当たって、阻まれる。


 Ⅴ3「うん・・・?」


 Ⅴ3はその物体を複眼で確認する。性質は漆によって外側を加工された木質の、刀を納刀するために使われる鞘だった。


 手刀に流れていた電気が徐々に弱まって、微弱の電流が流れて電気が消えるとⅤ3は鞘をなぞるように見ながら、顔を横に向ける。
 

 「・・・」


 そこに立っていたのは女性だった。Tシャツを胸の下で縛って、ウエスタンベルトを腰に巻いてあるジーンズの左脚側を際どく切断して太腿が露出している。
 

 しかし服装よりも、Ⅴ3は2mもある刀を納刀した鞘でⅤ3の電撃チョップを構えて受け止めているのにすごいと思っていた。しかも電撃チョップを受けたはずの鞘には、傷一つ付いていなかった。


 ステイル「か、神裂・・・」


 Ⅴ3「・・・お前が俺を見ていたもう一人の奴か」

 
 神裂「ええ。そうです」


 ステイルに神裂と呼ばれた女性からⅤ3は手を鞘から離した。神裂も横に向けていた鞘を降ろして、Ⅴ3に向き直った。

 
 Ⅴ3はまず目に行ったのは目だった。胸ではなく、目だった。そう言ったモノはアリサしか興味ないらしい。


 話を戻す。神裂の淡い紫色の瞳は凛としているのにも関わらず、その奥はとてつもなく真っ黒に染まっていた。まるで、絶望を乗り越えるために全てを捨てた覚悟を表す様に


 Ⅴ3「・・・加勢か?」


 神裂「そのつもりですが・・・生憎・・・」


 Ⅴ3が尋ねながら変身を解き、上条当麻の姿に戻る。神裂は変身を解いたのに驚きはせず、否定文的に答える。


 神裂「魔法名を名乗る前に、彼女を保護したいのですが」  


 上条「それなら俺たち、3年後夫婦に任せてくれないか?女版座頭市さんよ」


 上条の口調と声が先程と打って変わって冗談交じりの口調になり、声音も戻っていた。

 
 神裂「・・・目は見えているのですが」


 上条「ああ、知ってるよ」


 神裂はノリで答えたのか真面目に言ったのか、わからないくらいに表情を変えず言うと上条は謝る様に手を軽く上げた


 上条「ところで・・・話を変えるが、保護って言ったよな?」


 神裂「ええ、それが何か?」


 上条「何のためだ?赤髪がヤンデレなだけで、お前達はあの子の味方なのか?」


 ステイル「誰がヤンデレだ!」


 上条がふと疑問に思ったことの質問に神裂が答えると、上条はステイルに指を指して問いかける。


 ステイルは上条を睨んで、怒りながら反論した。先程までⅤ3に変身していた上条と激戦していた、イノケンティウスの姿はいつの間にか無くなっていた。


 ステイルが消したわけではなく、自ら消えたようだった。


 神裂「ステイル、落ち着きなさい・・・。・・・私達はこんな真似を、したくてしている訳ではありません」


 上条「なら・・・何で普通に助けてやろうとしない。何か?正義の味方気取りと言われて恥ずかしいとでも言うんじゃないだろうな?」


 ステイル「そんなものじゃないさ・・・あの子にとっては、僕達は敵同然と思われても当然・・・同じ組織の仲間だとしても」


 上条「何・・・?」


 神裂が目を伏せて俯き加減に上条の問いかけに答える。上条はその答えを聞いて目を鋭くさせると、怒りを込めて聞く。

 
 神裂の代わりに、ステイルは煙草を取り出してホースの部分を口に咥えると、ライターで火をつけ煙を吸って答えた。


 ステイル「いや・・・だった、と言ったほうが正解だね。もうあの子は僕達の事を覚えていないのだから・・・」


 神裂「話を戻します。彼女を連れ戻さなければ、死んでしまうからです」


 上条「ああ、他の敵からも狙われているからな」


 神裂「そうではありません。何もしなくとも、あの子は死んでしまうのです」


 上条「・・・つまりは?」


 上条の言葉に神裂は首を少しだけ左右に振って、否定する。上条は眉を顰めて答えを聞き出そうとする。


 神裂「あの子が私達以外の者達から狙われている理由は、ご存知ですか?」


 上条「頭の中の10万3000冊の魔道書・・・だったな?」


 神裂「その通り。それだけ膨大なまでに記憶した彼女は脳の85%まで使って、残り15%だけで生きているのです。1年でその残り少ない容量がなくなってしまうと、100%となり脳がパンクしてしまうから」


 上条「死んでしまう、と?待て。その理屈はおかしいぞ」


 神裂の説明を上条は割って神裂の言おうとした言葉を言って、話を止める。


 その行動に神裂は伏せていた目を上条に向けた。上条程ではないが目は鋭くなって、少し怒りが籠っている


 神裂「・・・何故ですか・・・?」


 上条「現に・・・インデックスとは少し違うが俺も完全記憶能力者だ。・・・そうだな、ここに来て3年前から記憶能力は優に85%なんて超えているよ」


 神裂「なっ・・・!?」


 ステイル「ば、馬鹿なっ!?なら何故死んでいない!?」


 神裂とステイルは目を見開いて、自分達が知っている知識と全く違う事を言った上条に驚愕する。


 その上条はステイルの言葉に、失礼な、ため息をついた。


 上条「死ぬ死なない以前に、医学的根拠から言えば記憶で死ぬと言う過程がおかしいがな。仮にそれが原因なら・・・何らかの病気か、誰かに仕組まれているとしか考えられない」


 神裂「では・・・誰が・・・」


 神裂は目を泳がせて、立ち尽くしたまま考える。そうしていると上条はある一つの事に気付いた。


 上条「・・・その情報を教えてくれた奴は、知らない奴なのか?それとも逆か?」


 神裂「まさか・・・!?」


 ステイル「あの女狐が・・・!?」


 上条の予想は的中したようだった。この二人の知っている人物、更にインデックスの仲間だった彼女達なら容易に接触しやすく、操れると予想していたのだ。


 神裂とステイルは、今まで自分達がしてきたことはただ、インデックスを傷つけていただけだと言う事実に後悔、いやそれ以上に絶望感に襲われて呆然と立ち尽くし、ステイルの口から煙草がポロッと落ちた。


 それを見かねて、上条はこう言った。


 上条「今ならまだ間に合うんじゃないのか?お前達の事は、あの子はまだ知らないんだろ?」


 神裂「そんな問題じゃありません!あの子に・・・合わせる顔なんて・・・」


 上条「おい、自分を責めるなよ。騙されてただけじゃないか」


 ステイル「・・・騙されてた、だけで、済む様な話じゃないさ・・・僕達は、あの子をどれだけ傷つけた事か・・・っ」


 神裂とステイルはその場に膝から崩れる様に座り込む。それを見て、上条は半場呆れたように二人を見ながらため息をつき、二人に近寄る。


 二人の傍まで来ると、両手を左右に分けて座り込む二人の肩に手を乗せて優しく微笑んだ。鋭かった目も、いつの間にか戻っている。

 
 上条「なら、その分まで謝って、今度は守ってやれ。お前達にあの子を守りたいと言う誓いを持てるならな」


 目は戻っても、その力強い口調で放った言葉を聞いて、項垂れていた二人は顔を上げた。


 神裂「・・・何故・・・」


 神裂は目から一筋の涙を流して、上条の目を見つめた。真っ黒に染まっていた瞳の奥が輝き始めて、息を吹き返したように見えた。


 神裂「何故そこまで、私達のことを・・・」
 

 上条「今の俺は、困ってる人に正しさを親切に教えるお人好しだ」


 ステイル「・・・ふん、さっきまでの言葉と対になってるだけじゃないか」


 上条の言葉を聞いて、率直に答える。上条は「言えてる」と言って苦笑いを薄く浮かべる。

 
 上条「ほら、いいから早く立て。飯食いに行こうぜ。・・・ってもう1時になるじゃないかよ!?あの二人の事だから、お腹空いて勝手に食べてるかもなぁ・・・」


 上条は二人の肩から手を離して、置いていた鞄を拾いに行く。取っ手を掴んで、鞄をよく見てみると端の角が少し黒くなっていた。


 多分ステイルとの戦闘か、イノケンティウスとの戦闘で散った火の子で焦げたのだろう


 上条「(あぁ~あ、ちょっと焦げてる)・・・気になってたんだが、誰もこの騒ぎに気付いてないのは、何かしたのか?」


 神裂「あ、は、はい・・・人払いのルーンを刻んでいる為で、特定範囲への立ち入りを限定する術式で」


 上条「あぁ、聞いただけだから、説明はいい。俺はそっち系のは苦手だからな」


 神裂「そ、そうですか・・・」


 上条は手を振って説明しようとした神裂の言葉を遮って止める。神裂は少し残念そうにして、俯いた。


 アリサ「う~ん、遅いなぁ・・・」


 インデックス「お腹が減り過ぎて背中とくっ付きそうなんだよ・・・」


 アリサ「あはは・・・」


 アリサは棚の上に置かれているデジタル時計を見てまだ帰ってこない上条を気にする。インデックがテーブルの顔を乗せて、腹の虫を夜に鳴く鈴虫の様に連発で鳴らすのに、アリサは苦笑いを浮かべる。


 先に昼食食べていると思っていた上条の予想は外れて、


 そんな時ドアノブのレバーハンドルがガチャガチャと音を立てて、上下に動いた。アリサは振り返って玄関のドアを見る。インデックスもつられて玄関の方を見た。


 アリサはテーブルのガラス板の裏側にセロハンテープで貼られている銀色の筒状の物を、手探りで感触で確かめて掴む。ガラス製なので表側からでも見えるのだが目を反らさないようにするためだったのだろう


 テープごと引き剥がして筒を手に取ると、立ち上がって足音を立てずにフローリングを忍び足で歩いて玄関に向かう。


 玄関の前まで来ると、アリサは片膝を付いて曲げているもう片方の膝の上に右肘を乗せて、動かさないように固定する。


 銀色の筒の銃を向けるように筒の先端を突き出す。鍵穴に何かが差し込まれた音が聞こえて、ドアが開かれた。


 アリサ「っ!」


 アリサは眉間に皺を寄せて目を歪め、筒のボタンに親指を掛ける。


 上条「・・・おう、アリサ。お出迎えありがとう」


 アリサ「と、当麻くん・・・はぁ、もう遅いよぉ」


 ドアを開けて玄関の外で立っていたのは上条だった。上条だとわかるとアリサは持っていた筒を床に置いて、安堵の溜息をつき女の子座りになる。

 
 しかし上条がドアを大きく広げて、壁に当るくらいまで完全に開く様にすると背中を向けている赤髪をした人物と、上条より少し背の高い美形な女性の姿が見えて、アリサは驚く。


 アリサ「え・・・そ、その人たちは?」


 上条「あぁ、インデックスの保護のために来てくれた、神裂さんとステイルだ」


 上条の言葉に神裂は口を少し広げて少し悲しそうな表情を浮かべて俯き、背中を向けていたステイルが振り向いて神裂と同じような表情を浮かべて上条を見た。


 そんなこと気にせず、上条は玄関に入って靴を脱ぎアリサに近寄って手を優しく掴むと立ち上がらせて、もう一度玄関まで、靴を履かずに戻ってくる。アリサも同様で靴下のままで出された。  


 上条「俺の婚約者の鳴護アリサだ」


 アリサ「と、当麻くんっ・・・。あ、え、えっと、は、初めまして鳴護アリサです」


 上条の隠す気0の紹介にアリサは上条を見つめながら、頬を染めながら膨らませて恥ずかしがるが、すぐに二人の方を見てお辞儀をする。


 ステイルは上条が自分と最初に会った時に、結婚式にはまだお呼びではないと言ってたのを思い出して、彼女には溺愛しているのだなと煙草を吹かせながら、呆れたようにため息をつく。
 

 神裂「こちらこそ、神裂火織と申します」


 ステイル「ステイル=マグヌスだ。・・・一応言っておくが、君より年下だと思うから敬語じゃなくていいよ」


 神裂は腰の刀を支える様に掴みながら軽く会釈をして名乗る。ステイルも煙草を咥えるのをやめて名乗るが、その後の言葉を聞いて上条は疑問を抱く。


 上条「え?お前何歳なんだ?」


 ステイル「14歳だが?」


 アリサ「え?」

 
 上条「・・・あ、へぇ~・・・煙草吸ってもそんなにまで伸びるもんなんだな」


 質問にステイルの返した言葉に、アリサは目を丸くさせて驚く。


 上条も煙草を吸うと身長が伸びないと聞いたことがあるので、14歳で成人男性よりも遥に高い身長のステイルに意外そうな表情を浮かべた。


 確かに顔をよく見れば何となくだが、幼さが見えると上条は思った。 


 ステイル「余計なお世話だ。それより、インデックスは?」


 上条「あぁ、そうだったな。アリサ、インデックスは?」


 アリサ「あ、お腹空かせてテーブルで待ってるよ」


 ステイルはイラつきながら聞き、上条が回す様に聞くとアリサが答えた。


 先にアリサから入って、そのまま出てしまったため汚れた靴下のまま戻るのは、少し嫌な感じがしたので普段使っていないスリッパをステイルと神裂の分も出して履くと、インデックスが居るリビングに向かう。


 インデックス「アリサ、とうまが帰って来たの?」


 アリサ「うん。それと、助っ人さん達もね」


 インデックス「助っ人・・・?」

アニメ2期の最後までやってくれたら嬉しい


 インデックスがそう呟くと同時に、神裂とステイルの二人が通路を通ってリビングに入って来た。二人の姿を見たインデックスは、少し怯える様な視線を向けた。


 その視線を浴びた神裂とステイルは、今までしてきた後悔が胸を締め付けてきて息苦しくなる。だがそんな二人の背中に誰かの手が押す様に触れてきた。


 上条だ。

 
 上条「ほら、突っ立ってないで自己紹介ぐらいしてやれよ」


 上条は穏やかに笑って、顔をインデックスに向けながら言う。神裂とステイルはお互いに顔を見合わせて、決意したように頷き合う。

 
 そして神裂とステイルはテーブルを挟んでインデックスと対面して座るする。上条とアリサはベッドの上に座って、その様子を見ている。

 
 アリサは嫌がってはいないが、頬を赤く染めて、胡坐をかいている上条の膝の上に座っていた。と言うよりも座らされていた。 


 神裂「・・・神裂、火織です・・・よろしくお願いします」


 ステイル「・・・ステイル=マグヌスだ。・・・よろしく」


 インデックス「う、うん・・・こちらこそ・・・」


 神裂とステイルが少し戸惑いながら頭を下げて名乗ると、インデックスは二人の様子から敵意は無いとわかり頷いて少しホッとしたようにため息をつく。

 
 そして二人は顔を上げて、数十分ほどの間が空いて重苦しい空気が漂い始める。インデックスはもちろんだが、アリサもどうしたのだろうかと困惑して二人とインデックスを交互に見る。


 すると上条がアリサの頭を優しくポンポンと撫でる様に軽く叩いて、膝の上から降りる様に指示する。アリサが上条の膝から降りると、上条はベッドから降りて神裂の隣に座ると顔をインデックスに向けたまま、問いかけた。


 上条「・・・(どうする?ここで全部話すか?それとも飯食いに行くか?)」


 神裂「(な、何でこんな時に食事の事が出て来るんですか!)」


 上条「(いや、インデックスが相当腹空かせてるみたいだから・・・)」


 上条の問い掛けに神裂は怒りながら問い返すと、上条がそう言って前を向いたまま見ているインデックスを見る。


 インデックスは困惑している様に俯いたままなのだが、よく見ると腹を擦って腹の虫が鳴らないように堪えていたのだった。


 神裂はそれを見て少し考えると、小さく上条とステイルだけに聞こえる様にため息をついた。


 神裂「(・・・はぁ、わかりました・・・先に食事を済ませてから、本題に入ることにしましょう)」


 ステイル「(・・・僕も気持ちの整理が着いてから話すことにするよ)」


 上条「(わかった)」


 上条「インデックス、飯食いに行くか?」


 インデックス「行く!お腹ぺこぺこでお腹が背中に減り込みそうなんだよ!」


 上条の言葉にインデックスは食いかかるような勢いでテーブルを乗り越えると、目をギラギラとさせて上条を見つめる。睨む、と言った方がいいのかもしれないが


 上条「そうか、皆でじゃあ行くか」


 インデックス「うん!こんなに沢山の人と食べるのって、初めてで楽しみかも!」


 インデックスは明るく笑ってそう言うと、神裂とステイルはその笑顔と言葉を見て、聞いて胸が締め付けられるかと思ったが、そんな事は全くなく寧ろ、インデックスの様子を見て安心したような気持になり微笑んだ

>>40 昭和ライダー(その他含め)出す予定だから、多分そこまで行くと思う。


 次回予告


 インデックス「変な人が来たんだよ!?」


 「ガンガンガンガラガンガガンガガンガガーーーーン!!!」


 上条「うるさいぞ饅頭屋」



 「いつものでいいか?」  


 上条「ああ。おやっさんの天下一品のコーヒーをな」


 
 「はァい。それでは赤ン坊でもわかる脳ミソについての勉強の始まりでェ~す」


 インデックス「あれ?この台詞前の予告で言ってたよね?」


 「うッせェな。テメェのために無駄な時間を使ッてやッてンだよ」


 インデックス「その台詞もなんだよ」

なんで53番目でV3って、これそのまんまだからV3なのな。

>>43 大正解。景品はスマートブレイン社食品1年分をプレゼントです


 インデックス「ごはんっごはんっ」


 アリサ「そんなに急がなくてもいいんだよ。インデックスちゃん」


 昼を大分過ぎて、2時になり掛けようとしている時間帯の歩道を、インデックスとアリサを先頭に3人は歩いていた。インデックスは上機嫌に繋いでいるアリサの手を大きく振って歩いていた。


 その様子を見てアリサは微笑み、神裂も薄く微笑を浮かべている。ステイルはまだ心に何かが引っかかってインデックスを見ることが出来ないのか、興味無さそうに街並みを見ていた。


 日差しは相変わらず強く、進んでいる歩道から陽炎が炎のように揺らめいている。ステイルが咥えている巻紙が徐々に焼け落ちて行く煙草の先からも、煙が立ち上って揺らめく。


 上条「神裂さんとステイルはいつからインデックスと知り合いだったんだ?」


 ステイル「彼女が今よりも、もっと幼い頃からだ。ロンドンの中人部の、聖ジョージ大聖堂。そこでインデックスは育ったんだよ」


 神裂「私達が所属しているネセサリウスもそこが本拠地なのです」


 神裂は過去を思い出しながら、あの頃を懐かしむ様にインデックスの背中を見つめていた。


 まだ幼く、誰かがが守ってあげないといけないくらいにまで小さかったあの頃のインデックスの、その小さな背中はあの時より大きくなった。と、寂しげな微笑を浮かべてた


 街並みを見ていたステイルも、インデックスの背中を目を細めて見つめていた。
 

 上条「そうか・・・インデックスの持ち物とかはないのか?思い出にとかで、おもちゃとかそう言うの。


    それで何か思い出せる事ができるか・・・無茶でも試してみないか?」


 上条の言葉を聞いて、ステイルは呆れたようにため息をついて答える気はないのか、神裂に任せているようだった。


 神裂「一度だけ、記念にと三人で写真を撮ったことがあるんです。・・・けれど、記憶を消す際に渡して・・・」


 上条「・・・無くしたのか」


 神裂「その様です・・・私達も気づかない間に」

 
 神裂は今までの記憶を辿って、何時頃その写真を落としたのか確かめるべくインデックスの行動をその思い出すが、彼女の記憶を消してからすぐに離れ離れになるため、思い出せない。


 空の入道雲が頭上の太陽を隠して、周囲が暗きなった時だった。


 インデックス「わわ!?」 


 ステイル「!?、インデックス!?」


 神裂「どうしたんですか!?」

 
 神裂が思い出している時、インデックスが驚いたような悲鳴を上げた。ステイルと神裂はすぐにそれぞれ刀とカードを手にしてインデックスの元へ向かおうとする。


 だが、二人はインデックスの方を見て足が止まった。インデックスとアリサの前に、黒い大きな塊が見えたからだ。


 インデックス「変な人が来たんだよ!?」


 「ガンガンガンガラガンガガンガガンガガーーーーン!!!」


 インデックスがそう言うや否やその黒い塊は大声で歌っているようにそう言った。神裂とステイルは呆気に取られて固まっていると、二人の隣に立っていた上条がスタスタと黒い塊に近づいた。


 上条「うるさいぞ饅頭屋」  


 「あ痛てー!?な、何すんだよ!」


 上条がその黒い塊の上にある出っ張りを強く叩くと、痛がるようにニョキッと出てきたように見えた手で出っ張りに見えた頭を擦った。擦るとガリガリと金属と金属が削れるような音が響いた。


 「・・・って、大将じゃねーか!奇遇だな!どうしたんだ?補習にでも行くのか?」


 上条「昼に終わらせたよ。にしてもそんな鎧着てよくこんな暑い中歩けるな」
 

 神裂とステイルは、上条がその黒い塊と話しているのを呆然としながら見ていると、周囲が明るくなり出してその正体がはっきりと見え始めた。


 鈍く輝く鉄の甲冑の様な物を着込んでいる人間だった。黒く見えていたのは、入道雲の一部が太陽を覆って周囲が暗くなっていたからだったのだろう。


 黄色く透けている目に、河童の様な口をした兜を被って


 黒ずんだ胸の左右の部分には赤く「G」とフレームがついており、腰にはホイールカバーをベルトの様に巻いており胸の部分と同じように黒ずんでいた。

 
 背中には『饅頭』と『日本一がんがんじい』と書かれた幟が立っている。
 

 「ふっふっふ・・・聞いて驚け!」


 上条「見て笑っていいのか?」


 「うぐっ・・・ま、まぁどうせもう笑われてるよ」


 上条の何とも言えない返答にその鎧を着こんだ人物は頭に被っていた兜を外した。外された兜から出てきたのは、ボサボサとした金髪の少年の顔だった。


 少年は、外した兜の裏側を上条に見せる様にする。上条はその兜の裏側を見ると、びっしりとアイスノンが詰め込まれていた。


 「どうだ!これで暑くなるわけないだろう!」


 上条「いや、どうせ温くなって意味なくなるだろ」


 「あ・・・そんなの考えても見なかった。後でまた改良しないとな・・・」


 上条のツッコミに金髪の少年は手袋をはめている手で頭を掻く。上条は呆れたようにため息をつく。


 インデックス「ねぇねぇ、アリサ、かおり。あれがジャパニーズブショーの甲冑なの?」


 アリサ「う、ううん、全然違うよ?」


 神裂「そもそもあんな・・・奇抜な甲冑があっては困ります」


 インデックスは少年が着ている鎧を、日本の伝統的な防具である甲冑と思っているようで、日本人のアリサと神裂に問いかける。


 アリサは苦笑いを浮かべて手を顔の前で振り、神裂は不満に満ちた表情を浮かべて金髪の少年を睨むように見る。ステイルも同様に睨みつけていた。


 インデックス達の会話が聞こえたらしく、金髪の少年はむっとした表情でインデックス達の方を見た。


 「おいおい、そりゃ言い過ぎ・・・」


 なんじゃないのか、と言おうと思ったが神裂とインデックスを見て口を止めた。ステイルは見ていないと言うより、眼中になかったようだ


 金髪の少年は上条の方を向き直って、肩を組んでヒソヒソと耳元で話し始めた。上条は熱くなっている鎧に触れているが、何ともないのか顔を近づける少年に対して眉間に皺を寄せる。


 「おい大将、お前歌姫様では物足りずあんなべっぴんさんにまで手出したのか?」


 上条「なわけあるかっ」


 「あいだ!?だ、だから叩くなって痛いなぁ」


 今度は兜を被っていないので思いっきり頭部を叩かれて少年は目から星が飛び出す。


 上条「お前が変な事言うからだろ。俺がアリサ一筋なのは知ってるだろうが、浜面」


 浜面「悪いって、ちょっとからかっただけだっての・・・」


 浜面と呼ばれた少年は片手を顔の前に出して謝る。その様子を見ていたインデックスがしびれを切らして、二人に声を掛けた。


 インデックス「とうまー、その人友達なの?」


 上条「・・・なのか?」


 浜面「何で疑問文なんだよ!?ほらこれ!」


 浜面はインデックスの問い掛けに、当然の答えを言うと思っていた上条の予想だにしていなった言葉に驚く。


 だが、手の指を小指は立てたまま、残りの指を指の間に入れて絡め、それを上条に見せる。それを見て上条は「はいはい」と少し笑って、手を同じ様にする。


 ステイル「何だい、それは?何か意味でもあるのかい?」


 浜面「これはトモダチの印だ」


 上条「後輩に教えてもらったんだ」


 ステイルが珍しく興味を持った様に二人がしてるその仕草を見ながら問いかけて、浜面が答えた。


 インデックス「へぇ~。私もしていい?」


 浜面「おう!もちろんだ」


 インデックスは二人に近寄ろうとすると、神裂とステイルは止めようとしたが既にインデックスは二人のところで、指を同じようにした


 それを見て浜面はニカッと不良顔のためか爽やかには見えないが、どことなく優しさはある笑顔を浮かべて嬉しそうに言った。


 浜面「これで俺たちはダチだな!」


 インデックス「ダチ?」

 
 上条「友達って意味だ」


 インデックス「友達・・・何か嬉しいかも!」


 インデックスはぴょんぴょんとウサギの様に跳ねて、アリサに近寄った。


 インデックス「アリサも友達だから、これやろう!?」


 アリサ「ふふ、喜んで」

 
 インデックスは手を「トモダチの印」のまま笑ってそう言うと、アリサは微笑んで手の指を絡め、「トモダチの印」をつくる。

 
 上条は微笑ましい光景を見て笑みを浮かべていると、神裂とステイルに上条はある提案を思いついた。


 上条「神裂さんとステイルもどうだ?」


 神裂「え・・・?」


 ステイル「ぼ、僕なんかが友達になる資格など・・・」


 上条の提案に神裂は驚いて小さく呟き、ステイルは煙草を指で摘まんでそっぽを向く。するとインデックスが神裂とステイルに近寄って、トモダチの印を二人に見せる様に背伸びをして二人の前に手を伸ばした。


 身長差があるため、二人によく見える様に、インデックスなりの心遣いでやっているのだろう。 


 インデックス「ねぇねぇ、かおりとステイルもやろうよ~?」


 インデックスがそう言うと、神裂とステイルは少し戸惑っていたが少しして神裂から手の指を絡めて印をつくると、ステイルも渋々手の指を絡め始める。


 神裂「こ、こうでしょうか?」


 ステイル「はぁ・・・」


 インデックス「えへへ、これでかおりとステイルも友達だね!」


 神裂とステイルは明るく笑うインデックスを見て、あの頃と変わっていない笑顔に少し胸を痛めたが、後から込み上げてきた嬉しさに神裂は微笑んだ。


 神裂「そうですね・・・友達ですね」


 ステイル「・・・ああ」


 インデックス「うん!」


 神裂は屈んでインデックスと同じ目線になって答える。ステイルも背中を向けて、インデックスに聞こえるか聞こえないかくらいの声で答える。


 インデックスは二人の返事を聞いて嬉しそうに笑った。


 3人のやり取りを見ていた浜面は涙もろいのか、目尻に涙を浮かべて鼻の頭を親指で擦った。


 浜面「くぅ~、最近のガキ共はやってくんないからよぉ~。泣けるでぇ」

 
 上条「何で関西弁になるんだよ・・・あ、そう言えば店は開いてるか?」


 浜面「ああ、今から戻るとこだったんだ。昼飯抜きで売ってたからよヘトヘトでよぉ」


 浜面はアイスノンが詰め込まれた兜を被ると、背後の道路に停車させていた今や絶滅寸前と呼ばれている、カゴ付きの「スズキ・ランディー50」に足を振り上げて座席に跨る。


 足にはあまり何もつけていないのだが、上半身の鎧が重くて足を振り上げて乗せないと乗れない様だった。


 上条「そうなのか。じゃあ、おやっさんにそっちに行く今から行くって言っておいてくれないか?」


 浜面「お、そうか。じゃあまた後でな」


 浜面はエンジンを噴かせマフラーから黒い煙を薄く吐かせると、発進してテールランプの右側を点滅させ、そのままどこかへ行ってしまった。


 上条「あいつ途中でエンコしたりしないだろうなぁ・・・」


 インデックス「とうまー、名前聞けなかったんだけど、あの人誰だったの?」


 上条「あぁ、また会うからその時聞けばいいさ。さて、行こうっ」


 上条は先に行くと言って去って行った浜面を心配しつつも、目的地へ再び向かい始めた。
  

 しばらく歩いて辿り着いたのは「snack amigo」と店名が書かれた看板が壁に掲げられて、窓にも店名のステッカーが貼られている飲食店だった。


 扉の横には、先程見た事のあるランディー50が置かれており、隣には屋根に「立花レーシングクラブ」と書かれたバイク店があり、学園都市製の最新式、学園都市から見ればオンボロの様々なバイクが並んでいる。


 学園都市に住んでいる若者達であれば普段は食品関連の施設が並ぶ「第四学区」で食事をしたりするが、ここは上条の学生寮から少し遠いくらいに建っており、学園都市にしては珍しくレトロな雰囲気を漂わせている。


 神裂「そうですね・・・友達ですね」


 ステイル「・・・ああ」


 インデックス「うん!」


 神裂は屈んでインデックスと同じ目線になって答える。ステイルも背中を向けて、インデックスに聞こえるか聞こえないかくらいの声で答える。


 インデックスは二人の返事を聞いて嬉しそうに笑った。


 3人のやり取りを見ていた浜面は涙もろいのか、目尻に涙を浮かべて鼻の頭を親指で擦った。


 浜面「くぅ~、最近のガキ共はやってくんないからよぉ~。泣けるでぇ」

 
 上条「何で関西弁になるんだよ・・・あ、そう言えば店は開いてるか?」


 浜面「ああ、今から戻るとこだったんだ。昼飯抜きで売ってたからよヘトヘトでよぉ」


 浜面はアイスノンが詰め込まれた兜を被ると、背後の道路に停車させていた今や絶滅寸前と呼ばれている、カゴ付きの「スズキ・ランディー50」に足を振り上げて座席に跨る。


 足にはあまり何もつけていないのだが、上半身の鎧が重くて足を振り上げて乗せないと乗れない様だった。


 上条「そうなのか。じゃあ、おやっさんにそっちに行く今から行くって言っておいてくれないか?」


 浜面「お、そうか。じゃあまた後でな」


 浜面はエンジンを噴かせマフラーから黒い煙を薄く吐かせると、発進してテールランプの右側を点滅させ、そのままどこかへ行ってしまった。


 上条「あいつ途中でエンコしたりしないだろうなぁ・・・」


 インデックス「とうまー、名前聞けなかったんだけど、あの人誰だったの?」


 上条「あぁ、また会うからその時聞けばいいさ。さて、行こうっ」


 上条は先に行くと言って去って行った浜面を心配しつつも、目的地へ再び向かい始めた。
  

 しばらく歩いて辿り着いたのは「snack amigo」と店名が書かれた看板が壁に掲げられて、窓にも店名のステッカーが貼られている飲食店だった。


 扉の横には、先程見た事のあるランディー50が置かれており、隣には屋根に「立花レーシングクラブ」と書かれたバイク店があり、学園都市製の最新式、学園都市から見ればオンボロの様々なバイクが並んでいる。


 学園都市に住んでいる若者達であれば普段は食品関連の施設が並ぶ「第四学区」で食事をしたりするが、ここは上条の学生寮から少し遠いくらいに建っており、学園都市にしては珍しくレトロな雰囲気を漂わせている。


 ステイル「学園都市の店にしては、随分と寂れているねぇ」


 インデックス「でも、落ち着いてて何だか懐かしい気がするんだよ」


 上条「俺とアリサの行きつけの店なんだ。さっき会った饅頭屋もここでバイトしてるんだ」


 上条が先にamigoのドアを開けると、カランカランとドアベルが鳴った。上条の後を追って、4人も店の中に入って行った。


 店内は全体的に白く、カウンターが店の奥まで続いて赤色のカバーのカウンター椅子が綺麗に並べられて、まさしくレトロな雰囲気が出ていた。


 だがスナックのハズなのに、カウンターの奥の華やかに飾りが置かれている棚には酒類は全くなくて代わりにジュースが入っている瓶が多数置かれている。


 上条はカウンターに置かれている呼び鈴を軽く押すと、店内にチーンッと音が鳴り響く。


 「よぉっ、当麻、いらっしゃい!アリサちゃんと、友達連れてきたのか?」


 数秒後にカウンターの奥のドアが開いて、白髪が僅かに生えている髪を七三分けにしてパイプ煙草を片手に作業着を着た、初老の男性が出てきた。


 上条「ああ。とりあえずまだ昼飯食べてないから、ランチセットと、あとコーヒーを頼む」


 「いつものでいいか?」


 上条「ああ。おやっさんの天下一品のコーヒーをな」


 上条が先に奥の椅子に座って、その隣にアリサが座る。そしてインデックスが座って、ステイル、神裂の順に座った。


 インデックスは店内を物珍しそうにキョロキョロと見渡して、ステイルは灰皿が無いかと探すと、神裂が自分の目の間に置かれていた灰皿を渡してきて、それに焼けて灰になった巻紙を落とす。


 「わかった。えぇっとアリサちゃんとお嬢ちゃんはホットミルクの方がいいのかな?」


 アリサ「あー・・・今日はコーヒーでお願いします」


 インデックス「私もコーヒーを飲んでみたいんだよ!」


 「そうか、よしっ!腕によりをかけて淹れるぞぉっ」


 そう言うと、上条に「おやっさん」と呼ばれる初老の男性は棚の扉からサイフォン式コーヒーメーカーを取り出した。


 ステイル「(古い物だな。いつ以来だ、あんなものを見るなんて・・・この店だけが、時代の波に乗り遅れたような感じだ)」


 ステイルが初老の男性が取り出したコーヒーメーカーを見ていると、男性は自分を見ていると思ったらしく自己紹介をした。


 藤兵衛「名前を言ってなかったね、私は立花藤兵衛。この店の店長で、隣の「立花レーシングクラブ」のオーナーをやってるんだ」


 神裂「神裂火織です」


 ステイル「ステイル=マグヌスだ」


 インデックス「私はインデックスって言うんだよ!」


 藤兵衛「そうか。元気がいいねぇ」

 
 おやっさんこと「立花藤兵衛」は、顔の皺を寄せてインデックスに優しく微笑みかけた。インデックスもまるで祖父を見る孫の様に笑っていた。


 藤兵衛「ところで、お二人は外から来た人なのかい?」


 藤兵衛が二人と尋ねたのは、ステイルとインデックスだった。多分、服装でそう思ったのだろう。


 神裂も違う意味で人目に思いっきりつく格好なのだがこの学園都市では、ステイルとインデックスの服装の方が奇抜に見えるからである。


 ステイル「ああ。そうだ」


 神裂「私も同行して来ました。インデックスに、会いに・・・」


 藤兵衛「そうかぁ。よかったねぇ、インデックスちゃん」


 インデックス「ん~・・・うん。嬉しいんだよ」


 インデックスは二人と会ってまだ30分そこらなのだが、嬉しそうに笑って藤兵衛に答えた。その答えを聞いて神裂はインデックスを見て、若干目尻に涙を浮かべたがすぐに指で拭く。


 ステイルが少し大袈裟なとつぶやくと、神裂は器用に腰に掛けていた鞘でステイルの脛を叩く。ステイルは声を抑えて痛みに耐え、煙草を灰皿に置き脛を手で摩る。


 上条「おやっさん、ラジオつけてくれないか?朝、新聞見てないからさ」


 藤兵衛「おう、いいぞ」


 手挽きのコーヒーミルでコーヒー豆を挽いていた手を止めて、藤兵衛は棚に置かれている1969年型のホームラジオのダイヤルを回す。


 スピーカーから音が曇って流がれていた曲がザザッと雑音を鳴らして消えると、情報番組に切り替わった。


 『今朝6時頃、路地裏にスキルアウトと思わしき9人の遺体見つかり、アンチスキルに通報が入ったとのことです』


 『遺体の体には夥しい数の銃痕が撃ち込まれており、壁に埋め込まれた銃弾を詳しく検査した結果、第二次世界大戦にて日本軍に実戦投入されていた短機関銃「100式短機関銃 ベルグマンMP18/28短機関銃」のモノと判明しました」


 『この事から1年前から続いている連続殺人事件と関連しているとアンチスキルは睨んでおり、なお、この武器は終戦後に半数以上が廃棄処分され、現在では数十挺程しか現存していないと専門家は話しており


  現在、製造ルートと保有先を辿っていると言う情報が入っているのみで、詳しい状況はまだわかっておりません』


 上条「またか・・・」


 アリサ「最近・・・って言っても、この街は毎日危ないけど、怖くなったね」


 上条は肘をカウンターに置いて両手の指を絡め、目を鋭くさせながらニュースを気にしていた。アリサもそのニュースの事は知っているらしく、少し肩を竦めて怖がっているようだった。


 藤兵衛「アイツらが使うとは思えんしなぁ、それに使うとしても、もっと強力な武器に改造するだろうし」


 ステイル「アイツら、とは?」


 藤兵衛「おっと、気にしないでくれ」


 藤兵衛は思わず口にしてしまった言葉に気付いて手で口を覆い、汗を垂らしながら焦りの色を見せる。


 しかし、それを見て上条が笑って藤兵衛に言った。

 
 上条「いや、おやっさん。この三人には話して大丈夫だ。と言より、言わないとダメだろうしな」


 アリサ「え?どういう事・・・?」


 ステイル「そう言えば・・・聞いていなかったね、君の正体を。まっ、あの時は君が教えてくれなかったからなんだが」


 上条が藤兵衛に答えた言葉にアリサはキョトンとしていると、ステイルが巻紙が無くなってきた煙草の先を灰皿に押し付けて、灰をホースで潰しながら言った。


 上条はステイルの言葉に苦笑いを浮かべ、頭を掻く。


 上条「どうもあの姿になると・・・性格が変わるって言うか・・・よくわかんないんだよな。自分自身じゃなくなるみたいで」


 藤兵衛「あの姿ってお前・・・まさか、変身したのか!?」


 上条「だから大丈夫なんだって。二人はインデックスを守るために来たんだからな」


 藤兵衛はカウンターを乗り越える勢いで身を乗り出し、上条に怒鳴る様に聞いた。それに上条は藤兵衛が口から飛び散らす唾をティッシュで拭きながら答えた。

 
 だが、次にアリサが聞いた質問で上条は硬直した。


 アリサ「で、でも・・・それなら何で変身したの?理由は?」


 上条「え?あぁ・・・それは・・・あれだ。敵だと勘違いしてたし、正当防衛って奴だよな?インデックスを守る為なんだし・・・な?」 


 上条はアリサの質問に先程まで ステイルを見てウインクをした。ステイルはそれを見て不快そうな顔をしたが、ため息を付けながら話を合わせえることにした。


 ステイル「ま、そんな所かな。で、あの姿の時は゛Ⅴ3"と名乗っていたが?」


 上条「あ、ああ・・・まず、俺は人間じゃない。まぁ人間と言えば人間なんだが・・・改造手術を受けてるんだ」


 神裂「改造・・・?」


 ステイルが適当に流したことで、話が進むが上条の表情が険しくも悲しみに満ちた表情に変わる。目も鋭くさせたままである


 アリサも上条を心配そうに見つめて、藤兵衛も先程まで怒鳴っていたのに対して少し気まずそうな顔をしている。


 上条「・・・話せば長くなるんだが・・・10年前、俺がこの学園都市へ初めて来た時、奴らに襲われた・・・」


 上条「・・・デストロンに・・・」


 インデックス「ですとろん・・・?」


 ステイル「小耳に挟んだことはある。暗黒技術を崇拝して独自で動いている秘密結社。こちら側でもなければ、そちら側の組織にも属さない奴らだとね」


 インデックスは上条の言葉をオウム返しに言うと、ステイルが説明するように上条に答える。


 ステイルの言う「こちら側」と「そちら側」は、ステイル達、魔術サイドと学園都市に住んでいる自分達の科学サイドの事を意味するのだと上条は解釈した。

 
 神裂は確かにあの姿で感じ取った上条の力強さは知ってはいたが、そんな組織と戦っていたことに度肝を抜かれる。


 神裂「まさか、そんな者達と戦っているとは思ってもみませんでした・・・」


 上条「あの姿は学園都市には秘密にしているからな。スクープだの言われて家にまで来たら、アリサに迷惑かけるからな」


 インデックス「とうまったら朝からず~っとアリサの事ばっかり考えてるよね?」


 上条「当たり前だろ。考えていないとアリサが寂しがるからな」


 アリサ「も、もぉ~・・・恥ずかしいってばぁ・・・」


 心配そうに見つめていたアリサだったが、上条の言葉に顔を赤くして上条の肩をポカポカと両手で可愛く叩く。


 ステイルはそれを見るのも飽き飽きし始めて、新しく取り出した煙草に火をつけ、ふかし始める。


 ステイル「それで、そのデストロンに改造されたと?」


 上条「正確にはそのデストロンを裏切っていた、医者に助けられて右上半身だけを機械化したんだけどな。


   あの時襲ってきた怪人に右胸のここから右手の手首まで根こそぎ持っていかれて、心臓も少し欠けて、もう少しで死ぬところだったらしい」


 上条は自身の右胸の中心部から少しだけ離れた箇所を左手の指でさして、そこから鳩尾、脇腹、腕を伝い、なぞりながら右手首の所で止めた。

 
 淡々と話す上条の話にステイルと神裂、インデックスも若干引き気味になる。しかし神裂は引くと言うよりも、哀れむ様に上条を見つめる。


 神裂「そこまでにして酷い怪我を負って・・・よく生きていられましたね」


 上条「ああ。さすがは学園都市と言っていいのか、担当してくれた先生は「君は運が良かった」ってだけで済ませてたがな」


 神裂の言葉に上条は苦笑い気味に微笑んで、自身の右手を見つめた。


 右手を見つめている上条に、ステイルは脳裏に一つの疑問が浮上してきた。


 ステイル「一つ聞きたいんだが・・・その無くした部分だけを改造しただけで、あの姿になれるのかい?」」


 その質問に神裂も、確かに右上半身だけを改造しているのなら、何故全身の姿が変わるのか、と気になった。
  

 上条「いや、違う・・・後から先生にそのデストロンの事を聞いて・・・俺は全身を改造手術したんだ。奴らに復讐すると決めて」


 上条は、右手を握り締めて鋭くさせている目を細める。細めた目は、怒りと悲しみの二つの感情が隠っているように見えた。


 神裂「・・・失った自身の体の償いをさせるために・・・?」


 上条「自分の事なんだが、怖いだろう?5歳児がそう考えたんだぜ?・・・一度死んだ身になれば、多分、物心つき始めの子供でもそんな考えが浮かぶんだと思う」

 
 上条「・・・あ、悪いな?自分の正体だけのつもりだったのに」


 上条はV3に変身している自分について話すつもりが、過去の暗い話をしてしまったと自身でも後悔して苦笑いを浮かべて、3人に謝る。


 ステイル「・・・いや。君が謝る必要はないよ」


 神裂「そうですよ。あなた自身の話を聞かずして、知ろうとしていた私達の方が謝るべきです・・・申し訳ございません」


 上条「い、いや俺が勝手に話したことだ。気にしないでくれ」


 ステイルは新しくふかしていた筈の煙草がいつの間にか根本まで灰になっているのに気づき、灰皿に捨てる。


 神裂は立ち上がって、上条に頭を下げた。上条は頭を下げる神裂に焦りながら答える


 インデックス「え、えっと・・・」


 インデックスは何と言っていいのかわからず、足をモジモジと擦って俯いてしまっていた。


 そんなときインデックスが座っているカウンターの前にコーヒーの入ったカップが置かれた。淹れたてで湯気がゆらゆらと揺れている


 藤兵衛「さてさて、暗い話は終わりにして、コーヒーが出来だぞぉ」


 上条「お、待ってました」


 藤兵衛は人数分を置いて、優しく笑った。上条は自分の前に置かれたカップの取っ手を掴んで持ち上げると、鼻腔を擽る香ばしい香りを楽しむ。


 15歳にしては実に大人びている飲み方である。香りを楽しんで、口をつけて一啜りする。


 上条「うん・・・最高だなぁ。おやっさんの淹れるコーヒーは」


 藤兵衛「ははっ、褒めてもおかわりぐらいしか出ないぞ?」


 上条はリラックスして、笑みを浮かべ言うと藤兵衛は嬉しそうに笑って答えた


 謝って立っていた神裂は自分が座っていた席に置かれているコーヒに気づいて、冷ましてしまったらいけないと思い座り直す。

 

 
 ステイル「・・・ふむ」


 神裂「とても・・・美味しいです・・・」


 ステイルも目を瞑りながら飲んでみる。すると目を開いて、その味に意表を突かれたような表情を浮かべて、上条が絶賛するほどの味なのが納得できた。

 神裂も驚いた様な表情を浮かべて、素直に感想を述べる。二人の様子を見て、藤兵衛は再び嬉しそうに笑った。


 藤兵衛「それはよかった。お嬢ちゃんとアリサちゃんは大丈夫かい?」


 アリサ「はい・・・まだちょっと苦い気もしますけど」


 インデックス「うん、ホッとするんだよ」


 藤兵衛「はっはっは。コーヒーの味がわかるなんて、お嬢ちゃんアリサちゃんより大人だねぇ」


 インデックス「ホント?えっへん!アリサよりお姉さんになった気分なんだよ」


 藤兵衛が冗談交じりにインデックスに言うと、インデックスは無い胸を張って、アリサは頬を膨らませた。


 アリサ「もぉ、おじさんったら・・・」


 藤兵衛「はははっ。まぁ、いつかは美味しく飲めるようになれるはずだ」


 上条「おやっさん、音上げてくれ」


 藤兵衛「ん?おぉ、いいぞ」


 藤兵衛は上条に言われた通りにラジオの音量を調整するダイヤルを回して、音量を上げると、スピーカーから曲が流れ始めた。

 リズミカルで、世界のすべてがキラキラと輝いているようなイメージをした旋律。上条は目を細めて、コーヒーを啜りその曲に聴き入る。

 インデックスもその曲を聴いていると、ふとその曲を歌っている歌手の声に、聞き覚えがあるとインデックスは気づいた。


 インデックス「この声・・・アリサの声にそっくりかも」


 アリサ「そっくりって言うより・・・私が歌ってるんだよ?」


 インデックス「えぇ~~~!?アリサが歌ってるの!?」


 アリサは少し照れ笑いを浮かべて教える。インデックスは朝方に会った時は魔術など自分達の事をあまり話していなかったため、余程驚いたのだろう。

 ステイルと神裂も意外そうな表情を浮かべて、アリサを見た。


 インデックス「すっごく上手なんだね!素敵な旋律なんだよ!」


 上条「アリサはこの学園都市の歌姫だからな」


 アリサ「褒め過ぎだよぉ・・・でも、ありがとう」


 インデックスがアリサを褒めると上条も頭を撫でながら自慢気に言った。

 アリサは撫でられて恥ずかしいのか言っている通り褒め過ぎて顔を赤くしているのかはわからないが、嬉しそうに微笑んだ。


 ステイル「ラジオで聞くよりも、歌ってもらう方がいいんじゃなのかい?」


 上条「ラジオバージョンも聞きたいんだ俺は」


 上条の返答にステイルと神裂は肩を傾けて滑ってはいないが、ズッコケるリアクションをする。


 数分して曲が流れ終わり、上条が安堵の溜息に似た吐息をつくとインデックスはアリサに向かって拍手を送った。

 
 インデックス「ブラボーなんだよ!アリサ!」


 アリサ「ありがとう、インデックスちゃん」


 インデックスは立ち上がってアリサに近寄り、目を輝かせながら歌の感想をアリサに伝える。アリサはインデックスの素直な感想を聞いて心底嬉しそうに、微笑んだ。


 上条「そう言えばアイツは?ここに居ないようだが・・・」


 藤兵衛「あぁ、アイツなら着替えているよ。兜は脱げてるんだが、鎧の方が脱げれなくなってるんだったよ」


 藤兵衛はインデックスが飲んで、既にコーヒーが無くなっているカップを手に取り奥の洗面器に入れて水で洗う。

 アイツとは先程会った浜面の事で、脱げれないのは鎧にも詰め込んであるアイスノンのせいでだろう。

 上条はそれを聞いてゲラゲラと笑って始めていると、カランカランとドアベルが鳴ってドアが開かれ来客が現れた。


 「・・・ァ?」


 藤兵衛「おぉ、君かぁ。いらっしゃい」


 入って来たのは真っ白な髪、真紅の血の色をした瞳の、髪の毛と同じように色白の肌をした中世的な整った顔立ちをしていている少年。

 先客が居るのに気付いて無意識に低い声を出した。藤兵衛は少年を見るや否や、カウンターの蓋上の扉を開いて出て来ると、少年に近寄って微笑みかけた。


 「・・・おォ」


 藤兵衛「いつものでいいかい?」


 「あァ、頼む・・・」


 少年は不愛想に短く答えて、奥の窓辺のテーブルのソファに腰を下ろす。太陽に反射するテーブルが白く光り、一瞬少年が見えなくなるような錯覚が見えた。


 上条「知り合いか?」


 藤兵衛「ああ。かなり前から常連になった少年だ。何でも医者をやってるらしい」


 上条「医者・・・?」


 コーヒーをもう一度作りながら質問に答えた医者と言う言葉を聞いて、上条は少年をチラッと横目で見る。少年は窓の外をボーっと見ているだけで、こちらの方は全く気にしていない様子だった。

 見れば見るほど白い肌と赤い目を見て、逆に医者に診てもらった方がいいんじゃないか、と失礼だと思いながら上条は心の中で呟く。


 藤兵衛「よし、出来た」

 
 コーヒーメーカーから出来上がったコーヒーをカップに注いでソーサーの上に置き、それを持つよカウンターから出て藤兵衛は少年の元に持って行く。
 
 藤兵衛がコーヒーを置くと、少年は一応お礼は言っているように口を動かして会釈をした。お礼といっても「おゥ」と上条には聞こえていた。

 藤兵衛はそのまま戻って来ず、少年と対面するように正面のソファに座って話し始めた。上条は「あれ、飯は」と思ったが、少し前までお腹を空かせていたのに、インデックスはアリサと楽しげに話していた。

 疑問に思いながら少し温くなったコーヒーを啜る。
 

 ステイル「・・・上条当麻、だったかな?」


 上条「ん?ああ。何だ?」


 上条が最後の一滴まで飲み干した時、ステイルが煙草をふかしして質問をしながら、手招きをしてきた。

 上条は椅子から立ち上がると、インデックスが座っていた場所に座る。改めてステイルを見ると、その表情は不安気に見えてた。


 ステイル「・・・あの話事は、本当なんだろうね?」


 上条「ああ、先生に教えてもらったんだ。まぁ、自分自身でもネットで色々と調べたりしたんだがな」


 神裂「しかし・・・インデックスは一周期毎に、苦しんでいるんです」


 上条「何・・・?」


 ステイルの質問に上条は不安を解消させようと期待を込めて答えるが、神裂が言った言葉に目を鋭くさせて、眉間に皺を寄せる。

 上条の声が聞こえたのか、アリサはインデックスと話すをの止めた。


 アリサ「当麻くん、どうかしたの?」


 上条「・・・」


 上条は黙ったまま椅子立ち上がって腕組みをして傍の柱に凭れる。立ち上がる際に、ステイルと神裂に「今話すしかない」と発声せずに口を動かしていた。


 上条「インデックス、神裂の隣に座れ。二人が話したいことがあるそうだ」


 インデックス「え?う、うん、わかったんだよ・・・」


 上条に言われてインデックスはアリサから離れて、自分が座っていた椅子に座る。座ってから神裂の方を向き、二人が話すのを待った。

 しかし、神裂とステイルは話そうと、否話せなかった。

 藤兵衛の話す声だけが店内に響いて、藤兵衛の話を聞いているかいないかわからないが、少年を含めて6人が黙ったまま数分間が過ぎた頃、神裂が意を決してインデックスを見つめた。


 神裂「・・・インデックス」


 インデックス「な、何?」


 神裂の真剣な眼差しを受けてインデックスはドキッとしながらも返事をした。ステイルも、煙草を灰皿に捻じ込んで火を消す。


 神裂「・・・実は・・・私とステイルは・・・ずっと前から貴女とは親友だったんです」


 インデックス「・・・え・・・?」


 突然の神裂の告白に、インデックスは目を見開いて動揺する。それにはアリサも驚く。上条は少し目を細めて、様子を見つめている。

 神裂は少し俯いて、どこから話すべきかと考えているとステイルが付け足した。 


 ステイル「正確には、元々はそうだった・・・って言うべきかな」


 インデックス「・・・そう、だったんだ・・・でも、私・・・」


 ステイル「覚えてなくて当然さ・・・僕らが、1年前の記憶を・・・いや1年ごとに君の記憶を消していったいたのだからね・・・」


 インデックスは「え・・・」と声を漏らしてステイルを見る。

 
 ステイルは神裂と同じように俯き、煙草を咥えたまま肘をカウンターに乗せてインデックスと顔を見合わせない様にしていた。


 アリサ「ど、どうして・・・」


 神裂「・・・そうするしか、手段がなかった・・・と、言い訳の言葉しか、ありません・・・」


 ステイル「騙されていたのさ、僕ら二人は・・・。・・・僕達が所属しているトップがこう言ったんだ」


 ステイルは自分達が所属してるネセサリウスのトップであり、最大主教-アークビショップ-。ローラ・スチュアートが最初にインデックスに起きた症状について話したことを、そのまま話した。

 
 記憶の消去、 そして10万3000冊の魔導書の知識によって埋め尽くされ、頭がパンクする、と言う事について。


 「・・・はッ。随分と面白い話してるじゃねェかよォ?」


 ステイルが話終えると、藤兵衛と話してはいなかったがコーヒーは飲んでいた少年がソファの背凭れの上に両腕を乗せて顔をこちらに向けて、怪しく笑んでいた。


 「オヤジ、ちょィっとアレ借りるぞ」


 藤兵衛「え?あ、おい」


 カチャっと飲み干したカップをソーサーに置いて話し途中だった藤兵衛を無視し、立ち上がるとズボンのポケットに手を突っ込んで5人の元に来るかと思いきや、前を素通りして行く。

 歩く先には隣のバイク店だった。ガラス製の壁で店内の様々なバイクが見える様に建てられており、ドアが取り付けられているそこへ入っていった。

 しばらくして入ったドアからバイクの設計図を貼ったり、修理の部品の品を書く際に使用する黒板を持って戻ってきた。


 「はァい。それでは赤ン坊でもわかる脳ミソについての勉強の始まりでェ~す」


 インデックス「・・・勉強よりお肉をいっぱい食べた方がいいと思うんだよ」


 「うッせェな。テメェのために無駄な時間を使ッてやッてンだよ」


 インデックスは皮肉も混じれないで言うと、少年は無視するようにチョークを取って黒板に何かを描き始めた。ものの数秒で描き上げたのは人体と脳を繋ぐ神経の構図だった。

 少年はチョークを一度置いて、自分が描いた脳の絵を指して話し始めた。


 「さっきの話だがなァ、医者である俺でもその症状がどンものなのか知りたいもンだなァ


 「前提として脳の容量が限界に達した時点で死んだりしませェん。


  仮にそうなりそうなら脳の神経細胞が構造変化して適応していくかそれかアルツハイマー症になってボケが回ってるジジィとババァみたく、記憶を一切上書きできない状態になってになるかのどっちかだァ。


  あの症状になると実際マジでメンドくェンだよなァ」


 少年は遠い目をして何か疲れた様にため息をつくが、すぐに本題に戻る。


 「そもそも、そんな事例で死んだ人間は過去に1例もねェんだ。部接続ターミナルで外部で生きてる完全記憶能力者を調べた事があるが、そんな該当する死因はなかった。


 「仮にその話が本当なら・・・ここに来てみろ」


 少年はそう言うと壁に凭れて立っている上条に近寄り、ポケットから手を出して後ろポケットから革製のケースを取出して開けると、一枚の名刺を差し出した。
 
 上条はそれを丁寧に両手で受け取り、名前を見る。


 上条「・・・ひとかたみちゆき?」


 一方通行「アクセラレータだ」


 上条「・・・キラキラネームにも程が無いか?」


 一方通行「ここじゃァ当たり前だろォ?」


 上条はそれもそうかと数回頷く。一方通行はレジのカルトン(レジでお金を置くアレ)に定価よりも3倍の料金を支払って、先程の一方通行の話を聞いてフリーズしている藤兵衛に「またなァ」と一言言って店から出て行った。

 少年が去ってカランカランとドアベルが静寂になっている店内に響く。そんな時、上条がある事に気付く。


 上条「お前らがここに来たって事は、もうする一周機になるってことだろ?後何日でだ?」

 
 神裂「あ・・・えっと1週間後です」


 上条「一週間か・・・その間にその苦しむ原因を突き止めないとな」


 上条は残り一週間と言う時間を脳内時計で168時間と数字をカウントダウン形式で設定した。

 数字が1引かれて時間単位が167と減り、分単位が59、そして秒単位とコンマの数字が、上条だけしか見えていないが見る見る内に減って行く。 
  

 上条「ちょっと電話してくる」

 
 そう言うと上条は早足でドアを開けて店の外に出る。

 ドアベルの音に我に返ったのか、藤兵衛はソファから立ち上がってイソイソと黒板を隣のバイク屋へ移動させていった。

 神裂の方から見える窓の外で上条は蟀谷辺りに指を当てて、口を閉開しながら何か呟いていた。それを見ていると神裂は上条の手には何も無い事に気付く。
 

 神裂「・・・彼は、電話機を使っていないようですが・・・」


 アリサ「当麻くん、頭の中で会話できるそうなんです。電話代掛からないから便利だって、言ってました」


 神裂「はぁ・・・(羨ましい・・・って、何を失礼な事を!)」


 神裂は一瞬物欲しそうに見ていたが。あの話を思い出して首を横に振りながら邪念を吹き飛ばす。アリサはそれを見て首を傾げた。


 次回予告


 上条「三日後に病院に行ってみよう。そこで精密検査を受けて、原因を調べるんだ」

  


 アリサ・小萌・インデックス「・・・羨ましい」

 
 神裂「え?」


 
 インデックス「とうまって・・・13人兄弟なの?」

 
 上条「いやビックダディじゃないんだから」


 [18時より再開予定。仮面ライダーアマゾンズ 本日より毎週日曜 BSにて深夜1時から放送中!]


 しばらくして上条が戻って、自分が座っていた席に座る。


 上条「三日後に病院に行ってみよう。そこで精密検査を受けて、原因を調べるんだ」

 
 ステイル「何で三日後なんだい?」

 
 上条「俺は右上半身を無くして、右手の手首だけが残ったって言っただろ?本当、あの時は右手も無くすほどの威力の攻撃を受けていたんだが・・・」


 上条は右手を見つめながら答えた。


 上条「・・・その右手だけは攻撃を受けず、引き千切られて転がってたらしい」


 神裂「つまり・・・攻撃を無力化していたと・・・?」


 上条「ああ。俺が助かってから詳しく検査した結果、その右手は異能の力であれば無効化する能力を持ってる、と言っていた」


 上条は右手を閉じたり開いたりして答える。ステイルは薄く笑んで、煙草の先を灰皿に押し潰す。


 ステイル「・・・なるほど。その右手を使えば、インデックスに何か仕込まれているなら無効化される、そう言う考えだね?」


 上条「その通り。その右手は厳重に保管されて、取り寄せるには結構な認証とか色々が要るから関係者でも1ヶ月は掛かるんだが、何とか3日にまでには短縮させてもらえたんだ」


 神裂「そんなにまで時間が掛かるんですか・・・」


 上条「ああ。俺は所有者と言った感じの立場だから、対応は早くて当然なんだがな」


 

 上条「じゃあおやっさん、またな」


 アリサ「ごちそうさまでした」


 インデックス「ごちそうさまなんだよ~」


 藤兵衛「おぅ、また来いよぉ~」


 数時間後に「snack amigo」を後にして、5人が外に出ると夕日が建ち並ぶビルのガラスに眩く反射して、周囲は夕焼けでオレンジ色に染まっていた。


 神裂「随分と長居をしてしまっていたのですね・・・」


 上条「まぁ、いいじゃないか。どうせ三日間待つだけなんだから」


 神裂「・・・そうですね」
 

 インデックス「・・・」


 5人が人通りの多い道に入ってから、少しして突然インデックスが足を止めた。それに上条の横を歩いていたアリサが気づいて後ろを振り返る


 アリサ「インデックスちゃん、どうしたの?」


 アリサが後を追ってこない無言のまま足を立ち止まっているインデックスを呼ぶ。上条達も後ろを振り返った途端、インデックスはフラ~っと背中から倒れ始める。


 上条「!?」

 
 それを見て上条はすかさずインデックスに駆け寄って、背中に腕を回して倒れるのを阻止する。


 アリサ「インデックスちゃん!?」


 ステイル「インデックス!?」


 神裂「どうしたんですか!?」


 アリサはインデックスの名前を叫ぶように呼んで駆け寄り、神裂とステイルの二人もインデックスの元へ駆け寄る


 神裂「まさかあの症状が・・・!?」


 ステイルと神裂は、冷や汗を垂らして心配しているとインデックスが小さく呻いて呟いた。


 インデックス「・・・おなか・・・へった」


 その言葉に4人は壮大にズッコケ、上条は手だけはインデックスの後頭部に当てたままコケた。

 周囲に居た学生達はそれを見て何かのコントかと思い、拍手を送ったり写メを撮ったりしていた。


 
 上条宅のアパートより15分離れた、多分第二二学区に近い場所に位置するアパートなどが多く点在する建物の路地裏を通って出ると、オンボロの二階建てのアパートがあった。

 そこに住んでいる一人の少女・・・否女性、月詠小萌は園児服が着ているものにしか見えないピンクの服を脱いでいた。

 一人身なので誰も来ないだろうと、白い下着姿のままクローゼットに置かれている棚の引き出しからウサギ柄の自分の体よりも大きくぶかぶかとした緑色のウサ耳フードがついたパジャマと同じようにウサギ柄の入ったピンク色のズボンを取り出してそれ着始める。

 着終えると、開眼、私!と何となく呟きながら服を着る際に被ったフードを片手で後ろにズラす。そして満足気に息をつくと、仕事終わりの一杯と鼻歌を歌いながら冷蔵庫に向かおうとする。

 その時電池が切れかけのインターホンがゲームで流れる呪い系の攻撃を受けた時の音を鳴らした。


 小萌「はぁ~いはいはーい、ドアは頑丈なので蹴らないでくださいねぇ~。痛いですよぉ~」


 そう言いながら玄関のドアに近寄って、プッシュ式ボタンの鍵のボタンを押して鍵を開ける。そして誰かが来たかを確かめようと、ドアを開けた。

 
 小萌「どちら様ですぅ~~~?」


 上条「あ、こんばんは。小萌先生」


 小萌「はい?」


 小萌の目の前に立っていたのは教え子の上条だった。しかも背中に白い服を着た少女と、更に後ろにも見知らぬ帽子を被っている女の子も立っていた。

 
 
 上条「ちょっと失礼しますよ」



 小萌「きゃーーー!?ちょ、ちょちょちょちょっとーっっ!」

 
 
 上条は無理矢理左手でドアを開けて小萌の部屋に入ってくる。それに小萌は慌てて部屋に入ってくる上条の胸板を割と強く押しながら入らせないようにしようとする。


 しかし上条は問答無用と靴を脱いで入り、その後に少女も「お、おじゃまします」と戸惑いながら入って、更に背の高い女性と煙草を咥えた男性も入ってくる。


 小萌「せ、先生困りますよ~!いきなり部屋に上がられて、しかも大勢のお友達・・・の方々を連れてくるなんて、先生聞いてないっ!」


 上条「じゃあ、上がりますね?答えは聞きませんが」


 小萌「言わせてください~!」


 小萌は必死に押し返そうとするが上条は敵地に侵入する戦車の様に部屋の真ん中まで入った。アリサ達も、空き缶やビニール袋、紙くずなどをかわしながら、上条の後を追って真ん中まで入って来る。

 そこで上条は足に何か柔らかい感触に気付いて、足元を見ると乱れている白い布団が見えた。

 上条はその場に置かれた布団を、乱れている端を足で器用に綺麗に広げ背負っているインデックスを降ろして寝かせる。インデックスは唸って、腹の虫をぐうぐう鳴らしていた。


 小萌「って、そ、その子はどうしたんですか!?」


 上条「説明は後でしますので、何かすぐにでも食べられるものありますか?」


 小萌「え、えぇ~~っとちょっと待っててくださいねぇ・・・」


 上条が降ろした少女に小萌は、ワタワタと混乱しながらも上条に言われて冷蔵庫に向かう。足元に落ちている空き缶や紙くずなどを慣れた様にかわしながら冷蔵庫まで辿り着くと扉を急いで開ける。

 しかし、冷蔵庫の中には缶ビールが奥まで詰め込まれていて、食べられるものとしては福伸漬けが入った小袋だけがちょこんと、缶ビールの下に置かれている。

 小萌「な、無いですね・・・」


 上条「あぁ・・・じゃあ俺、買いに行ってきます。何食べたいですか?」


 小萌「え?せ、先生が決めちゃっていいんですか?」


 上条「そりゃもちろんです」


 上条は数回頷いて「何がいいですか?」と問いかける。小萌はオロオロしながら、恥ずかしがりながら後頭部を掻き頬を桜色に染めて言った。


 小萌「・・・で、では~、焼き肉が食べたいな~と」

 
 上条「了解です」

 
 小萌「え、あっ、じょ、冗談で言ったんですよー!?」

 
 小萌が答えた料理の材料をどこで買うのが早いかを、上条は頭の中で検索してそのまま玄関のドアに向かう。小萌は小萌は本当に冗談のつもりで言っていた様で必死に呼び止めようとするが、上条は声が聞こえないようで部屋から出て行った。

 小萌は再びオロオロしながら色んな事が頭の中を駆け巡る。


 小萌「か、上条ちゃんの生活費の圧迫が先生心配ですぅ・・・」


 
 上条「ここならいいか」


 階段下りて上条は、目を瞑って脳波を送る。すると数秒後に遠くから段々とエンジン音が近づいてきて、ブロック塀のアパートに入る為の入口から、一台のバイクが上条の元へやってきた。

 青い車体の縁に白いラインが入って赤いパーツが付いており、カウル前方には丸みを帯びたカバーの中に赤い風車が搭載して、左右の翼の下にはロケットブースターが装着されている。

 
 上条「ひとっ走り頼むぜ。ハリケーン」


 上条は白いヘルメットを被りながら「ハリケーン」と呼ばれるバイクに跨る。そして左足の裏でサイドスタンドを上げるとハンドルを捻り、エンジンを吹かして、ステップに足を掛けヘッドライトをつけると、ブロック塀の入口から出て暗い夜道を進み始めた。


 小萌「はぁ、友達同士で学園都市の見学に・・・」

 
 神裂「は、はい。そうなんです・・・」


 小萌はちゃぶ台の上に散らかっていたプリントや空き缶を、とりあえずと床にも散らかっていたゴミを捨てているダンボール箱に放り込んで、煙草の吸殻が山の様に積み重ねられている灰皿だけをちゃぶ台の上に置いて、ステイル達から事情を聴いていた。

 インデックスはステイルの隣に寝かされており、先程まで唸っていたのにいつの間にか涎を垂らし、敷き布団に滲みを作って寝ていた。

 重度のヘビースモーカーであるステイルはもちろん吸っている、かと思われていたが何と一本も吸ってはいなかった。理由はただ切らしていただけらしい。


 ステイル「昼頃にはコーヒーを飲んだだけだったので、余程腹が空いてるかと・・・」


 小萌「そうなんですか~。それにしても上条ちゃんが彼女持ちだったなんて・・・しかもその彼女さんが、今、大人気歌手の鳴護アリサちゃんだなんて天変地異が起きたくらいの衝撃ですよー」


 アリサ「あ、あはは・・・」


 小萌「ところでアリサちゃんはこれと言う事がわかりましたが、3人の方は上条ちゃんとどんな関係なんですか?」


 小萌は小指を立てて聞くと、それを見て日本人である神裂とアリサは小萌の見た目とのギャップで引き気味に口の端を吊り上げ、イギリス人のステイルは不思議そうな表情を浮かべて首を少し傾げる。
 
 イギリスでは小指を立てる仕草を「卑小なもの」と言う意味なので、それと勘違いをしてアリサのどこがそうなんだ?と思っているのだろう。
 

 神裂「じ、実はたまたま彼女が倒れているところを声をかけてくださって、ここまで案内してくださったんです」


 小萌「なるほど~。上条ちゃんは優しいですからねぇ・・・。・・・でも先生の家が近いからと言う理由で来たんだと思いますけどねっ」


 小萌はプク~っと頬を膨らませてため息をつく。そんな時、スカートのポケットに入っているピンク色の携帯が鳴った。

 取り出して開いて見ると「当麻くん」と表示されており、アリサはどうしたんだろう、と思いながらボタンを押す。


 アリサ「もしもし、当麻くん?」


 上条『アリサ、ちょっとステイルと替わってくれないか?』


 アリサ「え?あ、わかった・・・。あの、ステイルさん、当麻くんが替わってって・・・」


 アリサは携帯を右手で握って左手で底を支える様にステイルに差し出す。ステイルはアリサから携帯を受け取ると、片手で持って耳に当てる


 ステイル「どうしたんだい?」


 上条『一つ質問がある。お前とインデックスは肉食べていいのか?宗教とかは食事に厳しそうな気がするんだが・・・』


 ステイル「食肉を禁じられているのは、ジャイナ教や特定の生き物のモノを禁止されている宗教だけで、肉を食べない期間と言うのもあるにはあるが、今はその期間じゃないから、問題ないよ。


      そもそも食肉が禁止なら、僕だって煙草は吸っていないはずだろう?」


 上条『あ、そう言えばそうだよな。ありがとう。じゃあ小萌先生に替わってくれ』


 ステイルのもっともらしい言葉を聞いて納得すると、今度は小萌と替わる様に言う。ステイルは携帯を無言で小萌に差し出す。

 小萌は膨らませていた頬を空気が抜けていく風船の様に萎ませて、ステイルが差し出す携帯を小さな両手で掴んで耳に当てる。


 小萌「も、もしもし?上条ちゃんですか?」


 上条『はい、上条ちゃんです。先生は牛と豚どっちも食べますか?後鳥も食べますか?』


 小萌「そ、そそそ、そんないっぱい買ったら上条ちゃんの家系が崩壊しちゃいますよぉ~~~!?」


 第七学区の小萌のアパートから1km離れた場所に点在する、スーパーマーケット「体育会系のために!!」。ここでは質より量と言った品揃えの店構えで、商品が売られている。

 そこのお肉コーナーの前で、上条は携帯を肩と耳で挟んだまま両手に輸入牛肉ブランド「大麦牛」と国産豚肉バラうすぎりを持って、下の棚に置かれている三河赤鶏を見ながらどちらを買おうか小萌と相談していた。


 上条「だから、大丈夫ですって・・・」


 小萌『で、ででで、でもですねぇ~!』


 上条「・・・わかりました。とりあえず、適当に買ってきますよ」


 上条はどもりながら、上条はそれだけ言って一度両手に持っている品を戻して携帯を手に取ると、通話を切る。切る際に小萌の悲痛な呼びかけが聞こえた様な気がした。

 携帯をポケットに入れ、上条は足元に置いていた2つのカゴを拾うと先程持っていた二種類の肉と、鶏肉を適当に入れていく。


 上条「ん~・・・まぁ、これくらいなら大丈夫か」


 そう言って上条は牛肉5パック、豚肉5パック、鶏肉4パックの計14パックと業務用ウインナー一袋が入ったカゴを持って、レジへと向かう。

 途中、野菜も買った方がいいかなと思い、針路を変えて野菜コーナーへ向かった。


 上条「おっと」


 「あ、すみませんって訳よ」


 向かう途中、金髪のベレー帽を被った少女が目の前を通りかかって、一旦止まり、少女が頭を軽く下げて謝り通り過ぎていくと再度歩き始めた。

 野菜コーナーへ着くと、まず目に入ったのは「宇宙で育てた宇宙ニンジン」と「遺伝子改良式レタス三号」だった。

 両手に持っているカゴの肉類の一つの値段に比べれば、おつりが結構戻ってくる程のお値段である。だが、普通のでいいかと上条は目線を普通のレタスと茄子に移し替える。

 野菜を買い終え、商品が大量に置かれている迷路のような棚を通ってレジに向かう途中、変な悲鳴が店内に響いた。

 
 「っだあああ!?ウソダコンナコトーーーって訳よーっ!!」

 
 上条はすぐ横から聞こえたのに驚き、首を横に向ける。そこで見たのは、先程目の前を通っていったベレー帽を被った金髪の少女だった。何故か四つん這いになって帽子を床に落としている。

 少女の頭の前には安売りされる商品が置かれるための台があるが、札に書かれている鯖缶は既に一つも残っていない。


 「まさかもう売り切れているとは・・・」


 「はぁ・・・あっちは高いしなぁ・・・。結局、諦めるしかないって訳よ・・・」


 少女はため息をつきながら立ち上がると膝に着いたゴミを掃ってベレー帽を被り直す。

 チラッと横目で上条が立っている棚に置かれている金色に輝く高級鯖缶を見るが、それは通常の鯖缶ではありえない様な最高級蟹缶に匹敵するほどの値段で売られている商品で、とても手が出せないと悟ると、トボトボと歩き出した。

 上条は首を落としたまま店から出ようとする少女の背中を見つめて、先程少女が見ていた鯖缶を見る。


 「はぁ・・・長時間摂取しないと動悸が激しくなるし手足が震えて幻覚が見えるようになるってのに・・・」

 少女は自分でも何度したかわからないくらいの溜息を再びつく。余程鯖缶には目が無いらしく、本当にどこぞの虚無ロボットの主人公が暴走している時の様に目が渦を巻いていた。

 そんな時背後からエンジン音が聞こえたが、気にしないでいると一台の青いバイクが道路を横切って、自分が歩く方向より少し前に出てから道路の端で停車した。

 
 上条「おい」


 その青いバイクはハリケーンで、乗っていたのはもちろん上条だった。上条はヘルメットを被ったまま丁度横を通りかかる少女を呼び止めた。

 少女は無視しようかと思ったが、今時の若者が乗るようなバイクにしては派手で、しかもカウルの羽の下にある物体にパンパンに膨らんだ袋を引っかけているのを見て、少し不審に思いながら呼び止めた上条を見る。


 「何ですか?ナンパならまだ間に合ってるんで、お断り・・・」


 上条「間違えて買ったんだが、いるか?」


 そう言いながら上条は腕に引掛けていたビニール袋から、何かを取り出す。それを見て少女は最初は石化して固まっていたが、数秒後に意識が戻った。


 「え、えぇぇえええ!?いやいやいやいやいやいやいやいや!!そ、そそそそそ、それってあの超高級なやつじゃないの!?」


 上条「ん?・・・まぁ、安売りしてたのとは別の棚に売られてたんだが、これじゃないのが欲しかったんだ。よかったらあげるよ」


 「いや、え、えぇ・・・(ど、どうしよう、マジでいいのかな・・・)」


 上条が持っていたのは、先程少女が見ていた高級鯖缶だった。どう見ても、間違えて購入するモノではないと少女は思いながら上条に問いかけると、上条は少し考えてから答え高級鯖缶を差し出す。

 少女は差し出された鯖缶が夜に現れた太陽の様な輝きを放っている様な錯覚に襲われて、手で眼を覆って考える。

 間違いなく、高級な物で物好きな学生でも買いそうにない代物をそう簡単に譲ろうとする上条を不審に思いながら考えていると、少女はある考えが浮かんだ。


 「・・・み、見返りは何が欲しいって訳よ!?」


 ビシっと少女は上条に指を差して、多分これを貰う代わりに自分に何かしようと言う魂胆があると思いそう言う。


 上条「これやるから、暗い顔しないでくれ」

 
 上条は高級鯖缶を下投げで軽く少女に投げ渡す。少女は慌ててそれを両手で掴んで受け取ると、上条は「じゃな」とだけ言ってエンジンを吹かせた。

 暗い夜の道をハリケーンのヘッドライトで照らしながら闇を切り裂く様に去って行く。両手に受け取った高級鯖缶を持ったまま少女は、上条が見えなくなるまで呆然としながら見送った。


 少女に鯖缶を譲って数分後、暗闇に染まった周囲に注意しながら道路を走っていると前方10m先に何か四角い物体が二つ置かれているのに上条は気づくとブレーキをかけて停車する。

 道路に置かれていたのは、2台の緑色をしたかなり旧式のアンテナ付きアナログテレビだった。

 上条はヘルメットを被ったままハリケーンから降りると、目を鋭くさせながらその2台のテレビに近づいて行く。次の瞬間、突然テレビがついて画面にスノーノイズが映し出される。

 「フラーイ、フラーイ!」

 そして不気味な笑い声の様な声が聞こえて、上条はテレビから離れる。2台のテレビの端と端がくっつくと間からニョキッと鋭い2本の牙が生える様に出てきて、その下にチャンネルを切り替えるためのダイヤルが伸び出て来る。 

 テレビの下から中央にサソリのマークが掘られたバックルの赤いベルトを中心に段々と緑色の蛇腹状の体が伸び出て毛むくじゃらの腕とその腕の先に朱色の鋭い爪を持った手が生えた。

 
 上条「貴様・・・改造人間か」

 
 テレビバエ「その通り!俺はデストロン第34番目改造人間、テレビバエだ!フラーイラフーイ」


 テレビバエと名乗った改造人間は、再び怪しく笑い声の様な声を出して背中からハエの様な羽を生やした。


 テレビバエ「V3よ。今なら俺と共にデストロンへ行き、世界征服に参加出来るチャンスはあるんだぞぉ?」


 テレビバエは赤い手を擦り合わせて左右に広げ、上条を誘う様に言うと目となっている画面に青白く光るデストロンのマークが浮かび上がった。

 上条はヘルメットを後ろに投げる。ヘルメットは宙を舞って下に停車していたハリケーンのハンドルに見事に引っ掛かった。ハリケーンが自動的に移動して引っ掛かる様にしただけなのは内緒話

 上条はテレビバエの言葉は無視して、右手を見つめた。


 上条「貴様らによって俺の体も・・・家族も・・・失った。・・・幼き命さえも」


 テレビバエ「フラフラフラッフラ~~イ!そんな事は水に流して、仲良くやろうとは思わないのかぁ?」


 上条「・・・そんな事・・・」


 テレビバエ「そうそう。たかだか体のほんの一部が無くなっただけじゃないかぁ」


 テレビバエはケラケラと狂気染みた笑い声を上げて、両手を叩き鳴らしながら


 上条はその言葉を聞いて、テレビバエを睨みつける。



 上条「ならば貴様にとっても死ぬことは「そんな事」になるんだな」


 上条の首元に白いマフラーが巻かれて、深緑色のジャケットが身に纏われる。脇の赤いヘルメットを被り、クラッシャーを顎に嵌め込む。

 緑色の双眼が怪しく闇夜に輝き、ベルトの風車が真っ赤に光りながら回転する。

 
 テレビバエ「殺る気かぁっ!?Ⅴ3!」


 Ⅴ3「トォッ!」


 Ⅴ3はテレビバエの言葉を無視して飛び上がり、体を捻らせて宙返りをするとテレビバエの背後に着地する。

 テレビバエは後追う様に後ろを振り向く。


 テレビバエ「ヌゥッ!?」


 Ⅴ3「電撃チョップ!」


 テレビバエ「グゥォオッ!?」


 テレビバエが振り向いた瞬間にⅤ3は右手に電気を走らせ、胸部に手刀を叩き込む。テレビバエは胸を抑えながら後退し、鋭い爪を振るう。


 Ⅴ3「トィヤッ!」


 だがⅤ3はテレビバエの振り下ろす手を片手で止め、空いたボディに左の回し蹴りを放つ。
 
 テレビバエはケロ飛ばされ、地面に叩きつけられて転がる。力なくフラフラと立ち上がるが、体がダメージで揺れる。


 テレビバエ「おのれェ・・・っ!」

 
 Ⅴ3「止めだっ!」


 Ⅴ3は上空高く跳び上がり、2枚のマフラーがまるで羽の様に羽ばたき始めて宙で円を描くように旋回する。

 緑色の閃光が突風を吹かせて竜巻を発生させると、テレビバエが吸い込まれる様に巻き込まれて上空まで吹き飛ばされる。

 上空に放り出されたテレビバエは自身の背中に生えている羽を羽ばたかせる。だが、目の前にⅤ3が迫って来た。


 Ⅴ3「ライダァアッ!遠心ッキィィイイック!!」


 遠心力を乗せた両足蹴りが目であるテレビの画面を蹴り割る。中のケーブルや電子部品が火花を散らしてショートし破壊される。

 
 テレビバエ「フラァァァアァアアァアア~~~イ!!」


 テレビバエは画面を抑えながら断末魔をあげ、背中から倒れて大爆発を起こし爆発四散する。この間、僅か7分間の間の出来事だった。

 Ⅴ3は背中で爆風を受けながら、変身を解き上条当麻の姿に戻る。
 
 上条は首だけを少し後ろに向けて、鋭くさせた目で燃え上がる黒い塊を見る。そしてそのまま歩き出し、目の前に移動してきたハリケーンに跨る。


 小萌「同棲までしてるんですかぁ~・・・」


 アリサ「は、はい」


 小萌「上条ちゃんがそこまで進んでるとは思ってもみませんでしたぁ・・・」


 小萌はまだ人生の半分も言っていない少年に少し先を越されている様な気持ちになって重くため息をつく。目の錯覚かフードの耳も意思がある様に垂れ下がっているように見えた。

 そんな時誰かが小萌曰く、対新聞屋用に頑丈にしてあるドアを2回叩いた。


 小萌「はいー?」

 
 小萌は扉に返事をすると、くぐもった声で「俺です」と聞こえた。その声は上条だとわかると、小萌はすぐにドアに近寄って開ける。

 そこに立っていたのは言わずとも上条だった。小萌の顔を見ると、優しく微笑んだ。


 上条「すみません、遅くなりました」


 小萌「い、いえいえそんな・・・。・・・えっと、あの、上条ちゃん?」


 上条「はい?」


 上条が手ぶらで何も持っていないのに小萌は気付く。それを言おうとした時、カンカンっと音を立てて薄い鉄製の階段を誰かが上がってきた

 小萌は階段の方を見ると、現れたのは金髪の赤いパーカーを着た見た目不良の少年。


 浜面「ま、待ってくれよぉ、大将~~」


 上条「お前が食べたいって言ったんだろう?」


 浜面だった。手には大量の肉と野菜が入ったビニール袋を手に持っている。

 車酔いでもしているのか、目の下に隈をつくり顔が青褪めてゲッソリとしているように見える。


 浜面「そ、そりゃわかってるけどよぉ。あんなスピーdむぐっ」


 上条は浜面の口元を素早く手で覆って言葉を遮らせる。それを小萌は首を傾げて見ていると、上条を見つめながら問いかけた。


 小萌「上条ちゃんのお友達ですか?」


 浜面「ま、まぁ・・・恩人ッスかね?助けてもらったんで」


 小萌「そうなんですかぁ・・・って、その手に持ってるのは・・・」


 浜面「あぁ、食材ッスよ。大しょ・・・か、上条君が買ってきた」


 小萌「荷物持ちさせられてたんですか~。上条ちゃんは悪い子です」


 小萌は腰に両手を当てて、上目遣いになりながら上条を見る。上条は参ったなぁっと少しも困っている様には見えず後頭部を掻いていた。

乙カレー

>>72 ありがとうございます
   よかったぁ。見てくれてる人が居て・・・誰も見てないのかと思ってた


 インデックス「はぐはぐ、がふっ!」


 アリサ「イ、インデクスちゃん、落ち着いて?まだいっぱいあるから」


 インデックスは次々と焼かれた牛肉や豚肉を時折タレを付けずに口の中へ放り込んで行く。アリサは脂でベトベトになっているインデックスの口元を濡れタオルで拭いて、苦笑いを浮かべる。

 上条が買って来ていた肉類は既に5パック程空になっており、今は業務用ウインナーを上条と浜面が小さなホットプレートの上で箸で突ついて転がしながら焼いている。

 
 上条「大量に買っておいて正解だったな」


 今朝方見たインデックスの食欲旺盛さを思い出しながら、上条は次々と焼いた肉を胃袋に収めて行くインデックスを見ながら表面が焼けて剥がれているウインナーを大皿に乗せる。

 
 浜面「マジでどういう胃袋してるんだよ・・・あぃてて」

 
 小萌「う、動かないでくださいね~」


 同じく隣でウインナーを焼いている浜面は、何故か夏場の合宿に行って大量の蚊に噛まれたように顔と腕に歯型の痕がついている。

 小萌は救急箱から消毒と包帯を出して浜面の治療をしていた。それは数分前の事。

 上条と浜面が小萌の家に入って、上条がインデックスに向かって「肉だぞー」と言った。

 その途端に布団に寝転んでいたインデックスが目を覚ましたかと思うと、ムクリと起き上がって浜面が手に持っている白い袋の中に自分が求めている食べ物だと認識するや否や、歯をむき出しにしながら襲いかかる様に浜面に飛び込んできたのだ。

 後はわかる通り、インデックスに噛みつかれたのである。

 
 神裂「その、申し訳ございません」


 浜面「あ、いやいや、気にしなくていいぜ。ははは・・・」


 神裂は浜面に土下座をして謝る。それに浜面は手を横に振って許しを得させる。

 ステイルは謝る気はなさそうだったので、神裂が無理矢理頭を掴んで顔面を畳に押し付ける。

 
 上条「まさか噛みついて来るとは思わなかったな」


 浜面「はぁ・・・」


 上条は首をガクッと落とす浜面の背中を手でノックする様に軽く叩く。


 浜面「まさかたかが肉を食べたいがために、こんな目に遭うなんてよ・・・」


 上条「神が下した答えが不幸だったのかもな」


 浜面「欲に惑わされたらいけないってことを学んだよ」
 


 インデックス「おっふろ、おっふろ」


 ネオンと街灯の光で照らされている夜道を7人と大勢の影が歩いていた。

 先頭を歩く一番背の低い影はインデックスで、歌いながら右手にアヒルの人形やタオルが入っている洗面器を、左手はアリサの手を握っている。

 その後を上条達が後を追う様に歩いていた。向かう先は銭湯である。


 ステイル「インデックスは彼女の事を余程気に入ったようだね」


 上条「ああ」


 浜面「大将、気にしないのか?」


 上条「仲が良いなら、気にすることはないだろ?」


 浜面「そ、そうか・・・大将の事だから妬くと思ってたんだがな」


 上条「ハハハ、まぁ野郎なら繋いでる手はどうなってたんだろうな」


 浜面の言葉に上条はサラッと恐ろしい事を言った様な気がした浜面と神裂、ステイルは上条を見て蟀谷に冷や汗を一筋垂らして絶句する。小萌は聞こえなかったようだった。 

 しばらくして瓦屋根の建物が見えてきたところで、前方の道路からサイレンを唸らして走行する消防車が通りかかり赤色の回転灯を光らせ、赤い閃光を残しながら闇夜へ消えて行った。

 神裂は気になったのか、足を止めて振り返るとその後を見つめる。

 
  
 神裂「何かあったんでしょうか・・・?」



 上条「テレビが爆発でもしたんじゃないのか」


 上条は流す様に言うと、そのまま先に銭湯へ入って行ったインデックスとアリサを追う。神裂は少し気にかかるが、ステイルに呼ばれて出入口に掛けてある暖簾を潜り、銭湯へ入って行った。 

 
 
 女性陣と分かれたXY染色体持ちの男性陣は、男湯の広い湯船に入って疲れを抜く様にため息をついた。


 日本男児である上条と浜面は頭に畳んだタオルを乗っけて湯船の縁に両腕を乗せ、イギリス人のステイルは三角座りをして湯船に浸かっている。

 
 上条「ステイルは銭湯は初めてか?」

 
 ステイル「湯船に浸かること自体ほとんどないからね」


 浜面「ところで、お宅は大将とはどんな関係なんだ?」


 ステイル「・・・借りがある、とでも言っておこうかな」

 
 上条は目を少し見開いて驚く。ステイルは上条の方を見ていないが、口元は薄らと笑みを浮かべていた。
 

 浜面「そうか、なら俺と同じだな。俺も大将にはデカイ借りがあるからよ」


 上条「あれは俺じゃないだろ?」


 浜面「いや、あの時は一緒に助けてくれただろ?だから大将にも借りはつくらせてもらうぜ?」


 上条「・・・そうか」

あうn

乙カレー
好きだから完走するように


 同じく富士山が背景に描かれた巨大な湯船に浸かっている女性陣は、同時に安堵の溜息をつく。

 左からインデックス、アリサ、神裂、小萌の順に並ぶように湯船の縁に凭れている。ちなみに、女性陣は全員頭に20円で借りたタオルを畳んで乗っけている。

 インデックスはどうして頭にタオルを乗せるのか不思議に思っていたが、今はもう気にしてもいない。


 インデックス「はあぁ~~~・・・」


 アリサ「気持ちいいねぇ~・・・」 


 インデックスは最初は色々と銭湯の意味を間違っていたが、それももう気にしてはいなかった。ただ富士山とコーヒー牛乳はあるんだ、と思っていた。

 神裂は掌で湯を掬って、肩にかけたりしてゆったりと浸かり力を抜いてリラックスする。 


 神裂「長らくシャワーだけでしたので、こうしてゆっくり湯に浸かるのは久しぶりです・・・」

 
 小萌「そうなのですかぁ~・・・」


 神裂「はい・・・」

 
 アリサ・小萌・インデックス「・・・」


 神裂は久しぶりに入れた自分を包み込むお湯の暖かさに満足しているが、他の三人の目が行く先はお湯に神裂の胸元に浮かぶ二つの禁断の果実。

 スイカ。大玉ビックバン。

 それを見てインデックスと小萌は顔を下に向けて、自分のまだ弛んでは無いものの艶立つだけの胸元を見て、アリサはそこそこなよやかな胸元を見る。
 

 アリサ・小萌・インデックス「・・・羨ましい」

 
 神裂「え?」

 
 神裂は目を点にして、俯きながら残念そうにため息をつく三人を見て焦る。

 インデックスとアリサはともかくとして、小萌の方がショックが大きかったようだった。

 しかし、そんな小萌は何かを思いついたように顔を上げてアリサの方を見る。


 小萌「アリサちゃん。せっかくなのですから、一発歌っていただけませんか?」


 インデックス「あぁ!私も聞きたいんだよ!」


 アリサ「うん、いいよ。じゃあ・・・この一曲しかないよね」


 そう言うとアリサは咳払いをして、少し唾液を飲み込んで喉を潤すとマイクを握っているフリなのか右手を筒状にして口の前に持ってくる。
 

 アリサ「ババンバ、バンバンバン・・・ババンバ、バンバンバン」


 アリサの歌声は男湯と女湯を区切っている天井から少し下げて大きな隙間を開けている絶対防壁から、男湯へ響き渡り上条達にも聞こえてきた。

 
 上条「お、アリサか・・・」


 浜面「あぁ・・・こんな贅沢な風呂は他には無いなぁ」

 
 上条と浜面はアリサの歌を聴き入って二度目の溜息をつく。だが、ステイルは俯いたままでアリサの歌を聴いていなかった。


 ステイル「・・・」


 上条「ん・・・?あれ?ステイル?」


 上条は俯いたままのステイルに呼びかけるが返事がなく、そのまま顔からブクブクと水中で息を漏らしながら沈んで行く。

 浜面は慌ててステイルの頭を掴んで湯船の内に乗せた。ステイルの顔は真っ赤になって、目を回しながら声にならない声で唸っている。


 浜面「お、おいおい、逆上せたのか!?やべ、大将運ぶぞ!」

  
 上条「えぇ~~」


 浜面「えぇ~~じゃねぇーよ!バカヤロウ!」


 浜面は本当に嫌そうな顔をする上条に一喝して、ステイルを湯船から出す。上条は渋々湯船から出るとステイルの足を掴んで持ち上げる。

 浜面もステイルの手首を掴んで持ち上げるとそのまま脱衣所へステイルを運んで行った。

 
 
 浜面「何で扇風機が無いんだよ」



 上条「聞いたら壊れたらしいぞ」


 脱衣所までステイルを運んだ浜面は、番台に居座っているおっちゃんと言える男性から団扇を借りてステイルに向けて風を仰がせている。

 あの黒く分厚い服を切れば、間違いなく脳の血管が切れるだろうと言う判断で、服は貸し出しの浴衣をステイルに着させていた。上条と浜面も浴衣を着ている。


 浜面「つぁああ~~~、大将交替してくれ」 


 上条「ああ」


 浜面は団扇を仰いでいた右手を軽く振って、団扇を上条に渡す。上条はそれを受け取ると、横向きに仰ぎ始める。


 その頃女湯の脱衣所では、ゴキュゴキュッと女性陣は腰に片手を当てて瓶を口に当てて傾けていた。

 
 
 小萌「くっはーーーーっっっ!!」



 小萌は一気に瓶の中身を飲み干すと「喉越し」と言う言葉で説明は不可能な感覚を味わって勢いよく棚の上に置く。ラベルには「COFFEE MILK」と書かれている。

 他の三人も「ぷは~~」と息をついて喉越しの感覚を味わう。喉越しを味わった小萌は100円を投入口に入れてマッサージ機に座る。

 
 小萌「はぁあうぅ~~~、ひとっ風呂浴びた後のコーヒー牛乳は最高ですねぇ~~~」


 神裂「同感です」


 インデックス「アリサはコーヒー苦手なの?フルーツ牛乳だけど・・・」


 アリサ「う、うーん・・・こっちの方が好きだから選んだんだけどね」
 

>>76 あうn・・・?

>>77 ありがとうございます、そう言っていただけると励みになります

 
 1時間して、小萌が呼んだタクシーが銭湯の前で停車した。タクシーを呼んだ理由はもちろん逆上せて気絶しているステイルを運ぶためでもある。

 神裂と上条の二人でステイルに肩を貸して後部座席の奥へ座らせ、その横に神裂が座って小萌は助手席へ座る。


 神裂「では、お二人ともインデックスの事をお願いします」


 上条「ああ。何かあったら連絡する」


 神裂は窓を開けて上条達に、インデックスの面倒見てもらう事に感謝の意を込めて会釈をして軽く頭を下げる。

 本来は神裂とステイルがインデックスの保護をするはずだったのだが、ステイルがあの状態のため小萌が「ウチで看病するといいですよ~」と言って、最初は戸惑ったものの神裂はその申し出を受け入れて現在に至る。

 
 神裂「インデックス・・・お二人にご迷惑をかけないようにしてくださいね?」


 インデックス「わ、わかってるんだよぉ~・・・」


 神裂「ふふ・・・では、おやすみなさい」


 インデックス「うん、おやすみ。かおり」


 小萌「おやすみなさいです~」

 
 インデックスは走り去るタクシーに手を振って、アリサも小さく手を振る。タクシーが曲がり角を曲がって消えると浜面は欠伸を一つして、タクシーが走行していった道と同じ方向へ歩き出す。

 
 浜面「俺も帰るわ。じゃな、大将、お嬢さん方も」


 上条「おう、またな」


 浜面は歩きながら振り返って、笑みを浮かべながら別れを告げる。上条は軽く手を上げる。浜面の姿が見えなくなるまで見送ると、上条はアリサとインデックスの方を向く。


 上条「さて、俺達も帰るか」


 アリサ「うん」



 「はい、では明日はよろしくお願いしますの」

 
 第7学区にある常盤台中学の高級感溢れる女子寮の一室で、薄く長いピンクの癖っ気がある髪を小さく揺らして少女は携帯の通話を切る。

 携帯を自分の枕元に置くと、ベッドの縁に座って片腕を上げ背筋を伸ばす。目の前にはもう一つのベッドがあるが誰も寝ていない。

 今夜はもう寝ようとベッドに身を委ねようとした時、携帯がなる。携帯を手にして相手の名前を確認して、通話のボタンを押す。 


 「どうしましたの、初春?もう良い子は寝る時間」


 初春『白井さん!また謎の爆発物事件です!』


 受話口から聞こえた慌てた様子の声で聞こえた言葉に少女、白井黒子は立ち上がった瞬間、背後のクローゼットの前に立った。

 携帯を肩と耳で挟みながらクローゼットを開けて常盤台中学の制服を取り出そうとする。


 黒子「現場は何処ですの?」


 初春『そ、それが・・・もう消防の方々が処理をし終えてしまして・・・』


 オズオズと返してきた初春に、黒子は制服を手にしたまま拍子抜けてコケる。


 黒子「そ、それなら明日にでも連絡してくださいな」


 初春『す、すみません。一応連絡を入れておこうと思って・・・』


 黒子「それで、今回はどのようなものでしたの?」


 黒子は手に持っていた制服を掛け直して、そのまま後ろに下がってベッドに腰掛ける。事後とは言え、害をもたらすのであれば風紀委員として見逃すわけにはいかないのだろう。


 初春『はい、第7学区の道路上で炎上している物体の破片を調べた結果、液晶ディスプレイと判明しました』


 黒子「テレビの画面に使われているあれですわよね?」


 初春『そうです。幸い完全下校時間でしたので死傷者は0でしたけど、炎上していた物体についてはまだ何とも言えない状況でして・・・』

 
 死傷者は居ないと言う点では初春の声は安堵の色を見せていたが、状況収集に手間取っている点に関しては残念そうに聞こえた。

 初春が言う「爆発物事件」は、最近起こっていると言うわけではない。黒子が学園都市へ来るずっと前から頻繁に発生している事件でああり、必ず夜に道路、路地裏、公園さらにはビルの屋上で、何かが爆発した痕跡があると警備員や風紀委員に通報が入るのだ。

 
 
 黒子「わかりましたの。では、



 初春『はい、よろしくお願いします』



 黒子が初春との通話を切った頃、上条達は学生寮へ戻ってきていた。最初に上条が入って部屋の電気を付けると、アリサが先ず思ったのは、暑い。と言う事なので、エアコンのリモコンを手にしてボタンを押す。

 蒸し暑い部屋を変えるためにエアコンが冷気を送り込み始める。アリサはエアコンの前に立って冷気を浴びる。


 上条「体冷やすんじゃないぞ?」


 アリサ「わ、わかってるよぉ・・・」

 
 上条はそう言うと、後ろから抱き締めて頬に口付けをする。それにアリサは驚きと恥ずかしさが込み上げて来て顔を真っ赤にする。


 インデックス「アリサ、ちょっと喉が渇いたかも・・・」


 アリサ「あ、麦茶があるからちょっと待ってて?」


 インデックスは二人が口付けしているのにもう慣れたのか気にしている様子はなかった。上条はアリサを離すと、アリサはキッチンに向かい冷蔵庫の扉を開ける。

 アリサが冷蔵庫からボトルに入っている麦茶をコップに注いでいると、インデックスはふと参考書とCDの入ったケースや、五線ノートがずらりと並んでいる本棚の上に置かれている、写真立てに気付く。

 そこに写っている写真を見てインデックスは近づくと、更に顔を近づけて上条に問いかける。


 インデックス「ねぇねぇ、とうま・・・これって・・・」


 上条「ああ、それは」


 インデックス「とうまって・・・13人兄弟なの?」


 上条「いやビックダディじゃないんだから」


 上条は手を見えない何かに当てる様にビシッと振りツッコむ。だが確かにインデックスがそう思うのも無理はない。

 写真には上条にそっくりな少年達が山を背景に肩を並べて、笑っていたり何故か殴っていたりしているのが写っていた。多分フレームに収まりきれないから物理で退かそうとしてたのだろう。


 上条「そこに写ってるのは・・・まぁ、俺だ」


 インデックス「・・・どれが?」


 上条「真ん中に写ってるのが、俺自身で他の12人は」


 アリサ「当麻くん!ちょっと、おぼん取ってもらえないかな?」


 上条も写真に近づいてインデックスの隣に立ち、真ん中に写っている自分を指す。他の12人の上条に似ている少年について話そうとした時アリサの声を聞いて話すのを止める。


 上条「・・・まぁ、いづれ会えるかもしれないから、その時教えるよ」


 インデックス「?。うん・・・」


 インデックスは少し気になるが、喉の渇きを潤したいと言う気持ちを優先して写真から視線を逸らす。

 
 アリサが入れてくれた麦茶をインデックスは飲み干して、深く息をつく。

 上条とアリサも麦茶を飲んで、一息つく。するとアリサがある事を思いだした。


 アリサ「インデックスちゃんはどこで寝かせようか?」


 上条「あぁ・・・俺は床で寝るから、インデックスとアリサはベッドで一緒に寝てくれ」


 インデックス「でも、とうま風邪ひいちゃうよ?」


 上条「大丈夫だ。そんな軟な体に作り替えられていないからな」

 
 上条は左手を見つめて皮肉めいた言葉を返す。アリサは少し悲しげな表情を浮かべるが、上条がそれに気づいて優しく微笑みかけるとアリサも苦笑い気味に微笑み返す。
 
 22時になり、アリサとインデックスはベッドに寝転んで上条は薄茶色のカーペットが敷かれている床の上に寝転ぶ。


 アリサ「おやすみ、当麻くん」


 インデックス「おやすみなんだよ」


 上条「ああ、おやすみ」


 次回予告



 上条(?)「やぁ!皆元気かな?暑くなって来たね。水遊びには気を付けて、危ないところに行くんじゃないぞ」


 上条(?)「え?(?)がついてるのは何故かって?それはまだ秘密さ」


 上条(?)「次回はこれだぁ!」

 

 
 マナーの悪い客人を説教した浜面がピンチになった時、一人の少年が助けにやってきた。


 子供だからと容赦はしないと襲いかかる客人を少年は軽々と返り討ちにする。


 少年の正体はいかに!?
 



 空から舞い降りた少年


 上条当麻の親戚か?

 
                      ご期待ください


 早朝、学園都市を朝日が包み込んで、ビルやマンションの窓ガラスに光を反射させて、道路の側溝に植えられている樹木の枝に止まっている鳥が鳴き、朝が来たことを告げる。

 上条宅では鳥の鳴き声の代わりに、上条の頬に口付けをされる音が鳴った。その音が上条の外耳道を通じて脳内の神経を刺激し、半分寝ていた脳が起動する。

 
 上条「ん~・・・」


 アリサ「おはよう。当麻くん」


 上条「ああ。おはよう」


 上条は目の前にいるアリサの後頭部に優しく手を回すと、そのまま引き寄せて口付けをしようとする。しかし横から来る鋭い視線に気づいて、二人は首を横に向ける。


 インデックス「・・・」


 アリサ「お、おはよ~、インデックスちゃん」


 鋭い視線を送っていたのはもちろん隣のベッドで寝ていた筈のインデックスだった。描写を入れていなかったが、アリサのキラキラと光る星のデザインが入ったパジャマを着ている。

 アリサは頬を染めると慌てて上条から離れて、誤魔化す様に挨拶をする。上条は少し残念そうに苦笑いを浮かべて、同じ様に挨拶をする。


 上条「お、おはよう」


 インデックス「おはよう・・・」


 インデックスはまだ眠たそうに大きく欠伸をして目を擦る。先程の光景は見えていなかったらしく、アリサはホッと安堵の溜息をつく。

 しかしそれを良い事に上条はインデックスからアリサの顔が見えないように前に出ると、そのまま口付けをする。アリサは突然の事に数秒呆然とするが、今何が起こっているのかわかった途端頬から顔が真っ赤になる。

 上条は唇を離すと、悪戯が成功したと言った様な微笑を浮かべてキッチンに向かう
 

 インデックス「ん~~・・・あれ?アリサ、顔赤いよ?」


 アリサ「あ、だ、だだだ、大丈夫大丈夫!」 


 インデックスは顔を真っ赤にしているアリサに気づくと、アリサは焦りながら手を顔の前で横に振る。


 上条「インデックス、朝飯は何が良いんだ?


 インデックス「あ、おみそしるがいいんだよ!」


 インデックスは頭の中で「?」を浮かべるが、上条の言葉に、一目散にキッチンに向かった。


 アリサ「はぁ・・・」
 

 アリサは恥ずかしさで上条に対して呆れてついたのか、インデックスにバレなくて安堵してついたのかわからないため息をつく。



 上条「それじゃあ行ってくるな」


 アリサ「うん、行ってらっしゃい」


 インデックス「行ってらっしゃいなんだよ!」


 朝食を済ませた上条は補習へ向かうべく、アリサとインデックスに見送くられながら玄関で靴を履て外へ出た。

 しかし数秒後インデックスと出会った初日と同じように戻ってきて、アリサに口付けをする。


 上条「行ってきます」
 

 アリサ「う、うん・・・」


 上条は爽やかに笑ってアリサを見つめてから、再び外へ飛び出して行った。アリサはもう恥ずかしさで返事しか返せなくなり、悶える。

 インデックスは「らぶらぶなのはいいんだけど・・・自重してほしいかも」と心の中で呟いた。
    

 
 学園都市の中心部に仮囲いや重機に囲まれた他のビルよりも遥に高く聳え立つ、天まで届きそうな柱状の建造物。

 上空2000mにまであるため、近くからでは見上げても頂点が見えないくらい高いこの建造物は、何のためのに造られているのか未だにニュースにも取り上げられていない。

 そんな巨大な柱の頂点に。7スタッと靴底が地に着く音が鳴り、布が風に靡く音が響く。

 その影は、人の様な影をしているが、赤いタレ目の双眼が太陽の光を反射させており、前身は深緑色の異形のカタチをしている。

 突風が異形のカタチをした影に吹きかかると、一瞬にして姿が変わった。そこに立っているのは幼き少年の姿だった。

 見た目は8歳前後で背丈は125cm程度で顔立ちはあどげなさが残っており、ツンツンとした黒い髪は額の中心で分かれて鼻の頭には絆創膏が貼られている。


 「うん、良い風だなぁ・・・当麻兄ちゃんは元気かな?」


 少年特有の高い声で少年は呟きながら、全身で受け止める風の心地よさに口元に笑みを浮かべるとそのまま飛び込みの棒飛びの要領で足から地上へ重力によって、落下して行く。



 「でさでさ、その高級鯖缶が超~~美味しかったって訳よ!」


 「フレンダ・・・その話超聞き飽きました」


 第15学区に点在するファミレスチェーン店「Joseph's」。店内の一角で昨日上条の高級鯖缶を貰った少女が、興奮気味に菫色の服を着た美琴と似たような短髪をしている茶髪の少女と話していた。

 茶髪の少女の壁側の隣にはジャージを着た耳まである黒髪の少女が、額をテーブルに乗せて脱力している。


 フレンダ「いやいやいや、結局絹旗も食べてみればわかるって訳だから!」


 絹旗「はいはい・・・と言うか、今は超それどころじゃないでしょう」


 絹旗と呼ばれる少女は、興奮しているフレンダの話を流して本題に入ろうとする。フレンダは話を流されて頬を膨らませた。 


 絹旗「今は麦野の事ですよ。お二人に連絡か何か超ありましたか?」


 フレンダ「いんやぁ~、結局音信不通って訳よ。滝壺は?」


 絹旗は少し心配そうに麦野と呼ばれる人物の名前を言うと、フレンダは手を顔の前で振る。フレンダに呼ばれた滝壺は額をテーブルから離して起きると、二人を見ながら小さく呟いて答える。


 滝壺「・・・無い」


 絹旗「はぁ・・・麦野、超どうしたんでしょうかね・・・」


 絹旗はため息をつきながらストローを口に咥えて氷が混ざって味が薄くなったメロンソーダを啜り飲む。

 フレンダ、絹旗、滝壺は学園都市の裏に潜む組織の一つ「アイテム」のメンバーであり、この場に居ない麦野と呼ばれる人物はアイテムのリーダーなのだが、5か月前から忽然と姿を消したのである。

 5か月前、ある組織からアイテムにその依頼が届き、その以来を麦野が単独で引き受けてその後突然消えたのだ。


 フレンダ「大丈夫だって、レベル5な訳だし」


 絹旗「でも、あの麦野が任務放棄だなんて・・・しかも、滝壺さんの能力追跡でも見つからないなんて超不自然過ぎます」


 レベル5。それは学園都市に七人しかいない最高レベルの能力者であり、麦野はその中で第4位の座を持っている。

 その麦野が引き受けた依頼は直属の上司である電話相手から、任務放棄扱いされそれ以来アイテムへの信頼度が劇的に落ちて依頼がぱったりと途絶えてしまい、3人は資金の入手が困難となってしまっている状態なのだ。

 滝壺はそれほど気にしてはいないようだが。


 滝壺「・・・」


 フレンダ「まぁ・・・確かにあの麦野がねぇ~・・・」


 フレンダがストローでアイスコーヒーを飲み干すと同時に、自動ドアが開いて音楽が鳴る。女性の店員が接客の挨拶を言おうと振り返る。


 「いらっしゃい・・・ませ・・・?」


 浜面「一人で・・・」


 「は、はい・・・あちらのお席へどうぞ」


 来店してきたのはあの鎧を身に着けた浜面だった。店員は人差し指を上げて何名かを答える浜面を、空いてる席へ案内する。浜面は鉄と鉄が擦れる音を出しながら席へ向かう。

 店内にいる客達も鎧を着ている浜面に訝しむ視線を向けるが、浜面は兜の中で暑いのか息を荒くしている。店員が案内した席は、フレンダ達が座っている席の隣だった。
 
 フレンダ達は後ろの席から聞こえる音に気付いており、後ろを振り向いて浜面を見ていた。


 フレンダ「何アレ・・・」


 絹旗「超・・・不審者です」


 滝壺「・・・」

 
 フレンダと絹旗も浜面を訝しげに見ていた。だが、滝壺の視線は他とは少し違い、不思議そうに見ている。

 浜面がその席へ腰を下ろすと店員は「ごゆっくりどうぞ」と言うや否や逃げるように店の奥へ消えていった。浜面は兜を被ったままため息をつく。
 

 浜面「あっちぃ・・・」


 浜面は兜の縁に手袋をしてる手を差しこんで、兜を脱ぐ。兜を脱ぐと顔中汗だくになっており、前髪の先に汗の雫が垂れる。
 
 現在の時刻は昼過ぎ、7月下旬の季節であり外が炎天下の地獄と化している。汗だくになっているのも当然と言えよう。


 フレンダ「ふぅ~ん・・・結構良いんじゃないの?」

 
 絹旗「いやぁ・・・あれ着てる時点で超無いですよ」


 滝壺「・・・」


 フレンダは浜面の顔で判断したようで絹旗に聞くと、絹旗は浜面が着ている鎧を判断して好感は持てないようだった。滝壺は後ろを振り向いたまま浜面を見ているだけで、会話に混ざろうとはしない。

 浜面は注文をしようとメニューに手を伸ばした時、床に何かが割れる音が店内に響く。店内にいた客の目線は浜面から音がした方向を向く。


 「おい!俺の足踏むとは良い度胸してるじゃねぇか!」


 「も、申し訳ございません!」


 そこでは、首にドクロのネックレスを着けている、緑色のタンクトップを着たスキンヘッドの屈強な男が、先程浜面を席へ案内した店員に怒鳴りつけている光景が見えた。

 床には店員が持っていたと思われる業務用トレイやおしぼり、割れたコップの破片が散乱して水溜りが出来ていた。 

 来客達が屈強な男に恐れて目を背けたり、店員の安否を心配する中、一人の男の声が店内に響いた。


 浜面「おいおい、今のはお前の所業だろう」


 「あぁ?・・・何だぁ?」


 屈強な男は振り返って、浜面の方を見る。浜面はメニューを掴もうと伸ばしていた手を引っ込めて、腕組みをしながら男を見ていた。


 浜面「さっきお前がその人に足引っ掛けてたのはお見通しなんだよ」

 
 「だったら何だ?」


 浜面「その人に謝れ。じゃないと俺の強さにお前が泣くぜ?」


 「へっ、面白いじゃねぇか・・・来いよ?」


 浜面は兜を被ると、席から立ち上がって男に近づいて行く。客達は警備員か風紀委員に連絡しようか迷い、一方でフレンダ達は浜面がどうするのかを観察する様に見ている。
 
 浜面と男は至近距離まで近づいて対面すると、お互い睨み合ったまま動かず数分の間が空く。

 店の自動ドアが開いて、来客が入って来た瞬間浜面が右ストレートを男の顔面目掛けて放つ。だが男は首だけを動かして避けると、浜面の右腕を掴んでそのまま強引に窓ガラス目掛けて投げ飛ばす。


 浜面「あぎゃっ・・・!?」


 浜面は窓ガラスをぶち破って歩道に放り出されてガラスの破片を背中で更に細かくして地面に叩きつけられる。

 鎧を身に纏っていたおかげで血塗れにはならなかったが地面に叩きつけられた際に頭を打って、兜を被っているにも関わらず意識が朦朧とする。


 「へっへっへっ、残念だったな。饅頭屋さんよ」


 浜面「(やっべ~、能力者だったのかよ!?)」


 男は割れた窓ガラスから飛び降りて、地面に倒れている浜面に近づいて行く。饅頭屋だと言ったのは恐らく浜面の背中にある旗を見たからだろう。

 浜面は相手が能力者だとわかって焦り始める。だが意識が朦朧としていて目が眩み、まともに立ち上がれない。


 「さて、喧嘩を売られたからにはちゃんと買わないとな」


 「やめてあげなよ」


 「あぁ?」


 男は声がした方を見る。そこに立っていたのは、空から舞い降りてきたあの少年だった。上空2000mから落下してきた筈なのだが、どこも怪我をしている様子はなかった。


 「何だ坊主。正義の味方気取りか?」


 「気取りじゃない。その通りだよ」


 少年は歩きながら言葉を返して、男に近づいて行く。

ヒュウ♪

>>93 ミロヨヤツノキンニクヲ!マルデハガネミタイダゼ!


 「おーおー。生意気ぬかしてると、痛い目に遭っちゃうぞぉ~?」


 「お兄ちゃんがね?」


 男は近づいてくる少年を腰に手を当てて屈む様に視線を合わせる。少年が目の前まで来た瞬間、屈強な男の鳩尾に鉄の様な硬い何かが突き刺さる。


 「がふっ・・・!?」


 肺の空気を吐き出し、男は目を見開いて苦しみながら地面に叩きつけられる。男の鳩尾に突き刺さった様な感覚の正体は、少年のボディブローだったのだ。

 男は左手で鳩尾を抑えながら少年を睨みつけて、立ち上がる。


 「こ、この、ガキっ・・・!」


 黒子「ジャッチメントですの!」


 「っ!ちぃっ!


 男が立ち上がった時、少年の目の前に突然黒子が現れて右手を下に向け、左手で服の袖に付けている腕章を相手に見えるよう横に引っ張る。

 男は黒子が見せている勲章を見て、風紀委員だとわかると舌打ちをして逃げ出した。

 黒子は相手を追いかけようと思ったが、仰向けに倒れている浜面が目に入って、救助か追跡かのどちらを優先するか一瞬惑う。


 浜面「行けっ!俺に構わなくいい!」


 黒子「!・・・わかりましたの」


 浜面の言葉を聞いて黒子は姿を消す。浜面は黒子が居なくなって、苦しそうに上げていた首を地面に降ろす。


 「大丈夫?浜ちゃん」


 浜面「あぁ・・・悪いな」


 少年は浜面に近寄って浜面が被っている兜を外す。浜面は上半身を起こして、少し朦朧とする意識を正常にしようと首を横に振る。

 強く瞑っていた目を開くと視界がはっきりし始めて立ち上がろうとした時、少し鼻がムズムズする感覚に違和感を覚えて鼻を啜って手袋越しに指で鼻先に触れる。

 指を鼻先から離して見てみると、赤い手袋と同じ色をした粘り気のある液体が付いているのに気付く。 


 浜面「あ、鼻血・・・」


 「えっと・・・あぁ、ごめん。無い」


 浜面は鼻血が出ないように鼻を摘まんで止血しようとする。少年はポケットを漁ってポケットティッシュが無いか探すが、無かったようだ。


 浜面「(参ったな・・・)」


 心の中で呟いていると、不意に誰かが肩を軽く叩いた。横を向くと、そこには滝壺が立っていた。滝壺は浜面を無表情のままじっと見つめている

 店の奥で黒子の後を追って来ていた風紀員が客人達に事情聴取をしている中、フレンダと絹旗はコソコソと風紀員にバレないようにこっそりと店から出て来ていた。


 滝壺「・・・」

 
 浜面「え、えっと・・・何か用か?」


 浜面は自分をじっと見つめる滝壺に内心ドギマギしながら問いかける。数秒滝壺は浜面を見つめて、徐にポケットに手を入れてをハンカチを取り出す。
 

 滝壺「・・・手」


 浜面「手?」


 滝壺「手・・・鼻から離して?」


 浜面「え?いや、鼻血が・・・」


 浜面は鼻血が出ている事を言おうとしたが、滝壺が浜面の鼻を摘まんでいる手を離させる。

 塞がれていた鼻腔が開いて溜まっていた血が流れ出す前に、滝壺が持っていたハンカチで鼻腔が塞いで血が止まる。

 浜面は呆然として滝壺の行動を見ていると、鼻血が出ていない方の鼻腔で息をすると、仄かに甘い香りが鼻腔を擽った。 


 浜面「(やべ・・・甘い香りが・・・)」


 滝壺「・・・」


 フレンダ「マジで?結局滝壺・・・ああ言うのが好みだった訳?」


 絹旗「超以外です・・・」


 遠くから滝壺と浜面の様子を伺っているフレンダと絹旗が女子トークを繰り広げていると、少年が割れた窓ガラスから飛び出てきた。

 
 「あれ、いらなかった?」


 少年の手には紙ナフキンが握られており、これで止血しようと考えていたのだろう。


 滝壺「・・・鼻栓、作れる?」


 「うん。・・・はい、どうぞ」


 滝壺は片手でハンカチを持ちながら鼻を抑えて、紙ナフキンで作られた「鼻にティッシュをつめる」「紙縒り」とも呼ばれる物を受け取る。

 ハンカチを離して、紙縒りを素早く鼻に詰め込む。詰め込んだ後は抜けない様に紙縒りを時計回りに置くまで捻じ込む。浜面はくしゃみが出そうになるが、耐える。

 
 
 滝壺「これでいい・・・」



 浜面「あ・・・あ、ありがとな」


 滝壺「・・・この子にも、お礼は言うべき」


 浜面「あ、そ、そうだな。ありがとな、兄貴」


 「だから、ってあ、違った。何で兄貴なるのさ、僕の方が年下なのに」


 浜面の「兄貴」とういう言葉に少年は最初は当然の様に苦笑いをしながら答えようとしたが、滝壺が視線に入って慌てて今、初めて言われたように返す。

 滝壺は一瞬自分を見た少年を見つめながら首を傾げる。


 浜面「あ、そ、そうだった。悪い」


 「もうっ・・・あ。浜ちゃんの血、付いちゃってるけど・・・」


 少年はため息をついた後、滝壺が持っているハンカチに赤く滲んだシミがついているのに気付いて指を差す。

 滝壺は血の付いた部分を内側にするようにハンカチを折ってポケットに仕舞う。


 滝壺「新しいの買えば・・・いい」


 浜面「あぁ・・・じゃあ」


 「あのぉ・・・」

 
 浜面が何かお言おうとした時、店員が話しかけてきた。


 
 浜面「ラッキーだな。お礼にタダだってよ」


 「タダってどう言う事?」


 浜面「え?・・・あ、あぁ、お金を払わなくても食べていいって意味だ」


 「へぇ・・・あ、じゃあお子様ランチ食べたい」


 年相応な質問と選んだメニューに浜面はまるで兄の様に聞き入れて、注文をしようとする。

 
 フレンダ「じゃあ私はこのフルーツパフェ食べたいって訳よ」


 絹旗「私も超同じもので」


 滝壺「・・・」


 浜面「・・・あれ?どなたですか?」


 フレンダ「あ、お構いなくって訳よ」


 絹旗「超その通りです」


 浜面「いや気にするよ」


 フレンダと絹旗は笑顔で浜面に言うと、浜面は手をビシッと見えない壁に当ててツッコむ。


 フレンダ「いいから、早くボタンを押してって訳よ」


 浜面「いやだから、何で見ず知らずのアンタらが同席してるんだよ!」


 浜面は対面して座っているフレンダ達に指を差して上下に動かす。フレンダと絹旗はさも当たり前の様な表情で言葉を返した。

 
 フレンダ「滝壺が鼻血を止めてあげたんだから、結局恩義は返させてもらう訳よ」


 絹旗「と言うわけで、お礼は奢りで超お願いします」

 
 浜面「いやその理屈はおかしいだろ!?」


 浜面は両手でテーブルを叩いて青筋を立てながらフレンダと絹旗の返答に異議を出す。

 滝壺が鼻血を止めた、と言う理由付けで金欠気味のフレンダと絹旗はタダとなっている浜面に奢ってもらおうと言う魂胆なのだろう。3人が口喧嘩を続けていると、浜面の隣に座っている少年が肩を軽く叩いた。


 「いいじゃん、浜ちゃん。皆で食べると美味しいんだしさ」


 浜面「け、けどよぉ・・・」


 フレンダ「ほらほら、弟君もそう言ってるんだしさ~。ケチな男は結局女にモテないって訳よ~?」


 絹旗「超その通りですね」


 浜面「ぐぬっ・・・ちぇっ。わかったよ」


 浜面はオーダーコールシステムのボタンを乱暴に掌で押す。それを見たフレンダと絹旗はテーブルの下で浜面から見えない様に親指を立てる。

 ボタンを押してから数秒で店員がやって来た。店の中は先程の騒ぎで客達はいなくなり、浜面達の5人だけとなっている。

 浜面が注文を言っている間に、フレンダが少年に話しかけた。

 
 フレンダ「ボク~。さっきあの馬鹿デカイ大男にボディーブローかましてたの見てたんだけど能力者なの?」


 「ううん。僕は無能力者だよ」


 絹旗「無能力者って・・・でも超すごいの一発ぶち込んでましたけど・・・?」


 「僕の・・・親戚の人に空手を教えてもらって、鍛えてるからね」


 絹旗は割れた窓越しから、少年があの屈強な男の鳩尾に拳を叩き込んでいたのを見ていた為少年が無能力者だと言う事に疑惑を抱く。

 少年はソファ型の椅子に足を乗せて膝立の状態になると、腕をフレンダ達の方に触らせる様に伸ばす。フレンダは首を傾げながら少年の腕に触れる。


 フレンダ「嘘っ!?硬っ!?何これ!?」


 絹旗「どれどれ・・・え?ちょ、超・・・硬いんですけど・・・」


 フレンダと絹旗は少年の異様なまでに硬い腕に驚いて、ペタペタと触ったりスリスリと擦ったりする。少年は擽ったそうに笑った。


 「だから、鍛えて、きゃははっ。鍛えてるのっ」


 少年は擽ったさから逃れるため、腕を無意識に引っ込める。フレンダと絹旗ははたと我に返って同時に謝った。


 しかしフレンダと絹旗は少年の鋼鉄の様に硬い腕の感触が気になって、質問をする。 
 

 フレンダ「いやでも、結局鍛えてそんなにまで硬くなる訳・・・?」


 「なると思うよ。僕なってるんだし」


 絹旗「超・・・説得力がありますね・・・」


 フレンダ「僕、お名前は?」


 絹旗「そう言えば超聞いてませんでしたね。私は絹旗最愛です」


 フレンダ「フレンダ=セイヴェルンって訳よ」


 筑上条「筑上条(つくかみじょう)当麻だよ」


 フレンダ「筑上条・・・?何か語呂が悪いくない・・・?」


 筑上条「僕に言われても・・・」


 フレンダの返答に筑上条は苦笑いを浮かべながら頬を指先で掻く。


 浜面「あ、俺は」


 フレンダ「アンタはいい」


 浜面「ひどいなおい!?」


 滝壺「・・・私は、滝壺理后。・・・あなたは?」


 浜面「え?あ、は、浜面仕上・・・」


 滝壺「・・・」

 
 浜面「(な、何でそんなにまで俺の事見るんだ?)」


 滝壺が浜面の事をずっと見ているのにフレンダが気づくと、少し呆れた様な目で口を引き気味に開ける。

 
 フレンダ「えぇ~?滝壺ったらこんなのが好みな訳?」


 浜面「はぁ?」


 フレンダは浜面に指を差して滝壺に問いかける。それを聞いて浜面は目を丸くさせ、口を半開きにする。


 好み?と浜面が聞き返そうとすると先に滝壺が口を開いた。


 滝壺「・・・うん」


 浜面「え」


 フレンダ「本気(マジ)か?」


 絹旗「本気で?」


 滝壺「本気だ」


 筑上条「しょおた~いむ」


 絹旗「(超何ですか今の)」


 絹旗が流れにノッて言った一連の言葉に、自分自身で謎に思っていると店員が注文した品を持ってきた。


 料理がテーブルに置かれると、浜面が何だかんだで置かれたフルーツパフェをフレンダと絹旗の前に置く。フレンダと絹旗は


 フレンダ「にしてもねぇ・・・結局信じられないわ。筑上条君、ホントに無能力者な訳?」


 筑上条「うん。・・・あ、でもね、能力じゃないけど違う力は持ってるよ」


 絹旗「超どんにゃ力でふか?」


 絹旗はパフェを咥えたまま問いかけると、筑上条は手に持っているスプーンを置く。


 筑上条「お姉ちゃんたちの中で、能力者の人は居る?」


 絹旗「私で超よければ」


 絹旗が手を上げて自分が能力者であることを伝えると、筑上条は腕を触らせる様に伸ばす。手は横に向けて握手を求めるようにしている。

 
 絹旗は触れればいいのかと思い、筑上条の手を握る。


 筑上条「やってみて?」


 絹旗「・・・?・・・え?何ですかこれ?」


 絹旗は頭の中でいつものように演算をして能力をしようとするが、何も起きないのに驚く。筑上条は得意気に笑って答えた。


 筑上条「僕の右手は能力を消すことが出来るんだよ」


 絹旗「何ですか、それ・・・超聞いたことないですよ」

見てるからはよ


 筑上条「ん~っとね、研究者の人でもわかんないんだって」


 フレンダ「ふぅ~ん、未来都市と言えどもダメなものはダメな訳ね~」


 フレンダはパフェにカブりついて呆れ気味に言う。筑上条が皿の縁で最後の一口のオムレツを食べると浜面がある事を思いだす。


 浜面「ところで、あに・・・あぁ、筑上条は、何でこっちに来たんだ?」


 筑上条「・・・あっ、僕当麻兄ちゃんに会うんだった」


 浜面「大将にか?」


 筑上条「うん」

 
 筑上条は最後の残していたカラ揚げとポテトを食べて咀嚼し、飲み込むと残り少なくなっていたジュースも飲み干す。

 
 そしてお行儀よく手を合わせて「ごちそうさま」と言った。


 浜面「そうだったのか。なら丁度家に居るかもな」


 筑上条「うん。じゃあ僕行くね」


 フレンダ「えぇ~~?もう行っちゃう訳~?」


 筑上条「ごめんね、お姉ちゃん」

 
 筑上条が席から立ち上がると、フレンダは残念そうに言うと筑上条は苦笑いを浮かべてフレンダに謝る。

 
 するとフレンダは一瞬目を見開いて少し俯くと、どこか寂しげな目になる。


 フレンダ「・・・」


 絹旗「フレンダ?」


 フレンダ「あ、な、何でもないって訳よ。そっか~、じゃあまた会えたら話そうね?」

 
 筑上条「うん!じゃあね!」


 筑上条は無邪気な笑みを浮かべて、店のドアへ向かいカウンターにいた店員に元気よく「ごちそうさま!」と言って出て行った。

 
 浜面と絹旗は筑上条に手を振っている中、フレンダは筑上条を見送ったまま呟いた 


 フレンダ「・・・お姉ちゃん、ね・・・」


 滝壺「・・・あの子とは、兄弟じゃないの?」


 浜面「いや、違う。何て言うか・・・まぁ、かなり前なんだが、俺が野郎共から女の子を守ろうとして、やられてさっき見た様に助けられて」


 フレンダ・絹旗「情けな」


 浜面「う、うるせぇな!女の子はちゃんと守ってやったんだぞ!?」


 フレンダと絹旗は呆れた目で浜面を見ながら言い、浜面は机を乱暴に叩き言い訳を言う。滝壺はその様子を無表情だが、ジュースをストローで吸いながら飲んで見ていた。


 小萌「はい、上条ちゃんは昨日の小テストは言わずとも百点満点ですよー」


 小萌は昨日行った小テストを一人一人に返していき、上条に返す時に補習組の生徒たちに聞こえるように言う。


 それを聞いた生徒達は「またかっ!」と心の中で叫びながら恨めしそうに上条を見た。だが当の本人は全く気にしないで小テストを鞄の中に突っ込んでいる。


 上条「じゃあ帰って良いですか?」


 小萌「はーい。どうぞ~」


 青髪「上やん、どうして君はそんなにまで頭がいいんや!?」


 土御門「にゃ~、学校はサボってるのに不思議なもんだにゃ~」


 青髪は涙を流しながら上条に問いかけ、土御門は掛けているサングラスの青いレンズ越しから上条を見る。ちなみにこの二人は補習組の中ではビリから2番目と3番目だった。


 上条「頭が良いって言うより・・・物覚えがいいだけだからな?」


 青髪「あ、何やろ、すごいムカツク」


 上条「覚えるだけだろ!数式とは計算方法を」


 上条は平然と答えると青髪は握り拳を作って背後に負のオーラを纏う。上条はビシッと指を指して反論する。


 青髪の心臓に上条の返した言葉が矢印型の矢となって突き刺さり、額をゴツンと音を立てて机に突っ伏す。


 青髪「出来てたらここには居らんやろう・・・」


 土御門「ま、青ピの場合は小萌先生に会いに来てるだけだろうけどにゃ~」


 青髪「な、何でバレたんや!?」


 上条「わかるっての・・・じゃあな。今日で俺は補習から解放されるから、2学期にまた会おう」


 上条は扉を開けて、踵を返し教室に居る補習組に丁寧に説明をして扉を閉めた。閉めた後、教室内から悔みと怒りの混ざった騒ぎ声が聞こえたが、上条は気にせず廊下を歩いて行った。

 
 
 上条「やっと補習も終わったなぁ・・・」



 上条は鞄を引っ提げ、気まぐれで昨日とは違うルートを歩いて帰っていた。補習が終わったと言う事は、健全な少年の楽園への扉が開いたと言う事を意味する。

 
 だが上条はインデックスの事を忘れてはいない。脳内時計のタイマーは132と減り、インデックスがいつ倒れたりしないか注意しなければならないからである。


 そんな中、突然上条の耳に何かが落ちる音と奇妙な声が聞こえた。改造人間である上条は常人の50倍の聴力を持っており、4k離れた場所から落ちた針の音でも聞き逃すことはないのだ。


 上条は目を鋭くさせてその方へ走り出す。走り出した矢先に煉瓦で造られた花壇があったがそれを軽々と手を使わずに飛び越え、公園内へ入っていった。


 公園内に植えられた木をかわしながら風のように突っ走って、声が聞こえた地点まで来る。

 
  
 上条「どうした!?」



 「「「え?」」」

  
  
 上条が辿り着いた場所には、3人の少女が居て一人は尻もちをついていた。



 もう一人少女が居て、向かい側の木々の影にあるベンチの横に立って驚いた表情を浮かべて上条を見ていた。


 上条「何かあったのか?」


 上条は尻もちをついている少女に近寄って、屈みながら問いかける。

  
 尻もちをついている焦げ茶色をしたショートカットの少女は慌てて立ち上がって、手を横に振りながら答えた。

 
 「あ、え、えっと、大丈夫ですよ?ただ能力で浮かんでて、落ちちゃっただけなので・・・」


 上条「あ・・・そうなのか・・・」


 「す、すみません。心配かけさせてしまって」


 上条はホッと肩を撫で下ろして安堵の溜息をつく。すると後ろに立っていた髪留めで七三分けにしている少女が謝った。
 

 上条「いや、俺が勝手に来ただけだ。気にしないでくれ」


 「は、はぁ・・・」


 上条は立ち上がって苦笑い気味に微笑みながら答える。


 「あの・・・さっきあっちから来ましたよね?」


 上条「ん?そうだが・・・」


 ベンチの横に立っていた少女が、木陰から出てきて上条に近づいて、上条が走って出てきた木々を指しながら上条に問いかけてくる。

 
 薄青緑の瞳をしていて、白梅の花を模した髪飾りをつけているセミロングの黒髪が太陽の光で輝く。

 
 「あそこからむーちゃ・・・あ、この子が落ちた音が聞こえたんですか?」


 上条「・・・ああ。俺耳は良い方だからさ。じゃあ、気を付けて能力は使えよ?」


 「は、はい」


 上条は数秒考えて自分が改造人間だとバレないように誤魔化し、七三分けにしている少女に注意をして公園の出口へ向かって行った。

 
 「はぁ~・・・びっくりしたね」


 「うん。いきなり出て来るんだもん・・・」


 「でも悪い人ではないんだろうね」


 「うん、助けて来てくれたんだと思うよ」


 

 上条「何も無くてよかった・・・」


 上条は先程の事を思い出しながら、ため息をついて歩いていた。

  
 能力を使っていたと聞いたときは、何か危ない事をしていたのかと思っていたが、ただ遊んでいたのだとわかって安心しているのだろう。


 学生寮までもすぐと言う所で、ふと目の前を歩いている裾結びしたTシャツに片方の裾を根元までぶった切ってもろに脚が露出しているジーンズを履いた、ポニーテールの女性を見つけた。


 上条「神裂さん!」


 神裂「!・・・どうも。昨日ぶりですね」


 上条が神裂の名前を呼びながら駆け寄ると、それに気づいて神裂は後ろを振り返って上条だとわかり腰に差している刀を支えながら、会釈をする。

 
 上条「俺の家に行くところだったのか?」


 神裂「ええ、その通りです。貴方も、帰る途中だったのですか?」


 上条「ああ、ちょっと前に補習が終わってな」


 神裂「そうなのですか・・・。・・・補習と言う事は、成績が不十分だったと言う事ですか?」


 上条「あぁ・・・成績じゃなくて出席日数でな。遅刻が多くて補習ついてしまって・・・」


 神裂「・・・なるほど。それなら仕方のない事ですね」


 上条「まぁな、ははっ・・・」


 神裂は上条が遅刻をする理由を察して、苦笑いを浮かべながら答える。それを聞いて上条は頬を指先で掻いて答えた。

 
 その後神裂と上条は他愛もない話をしながら学生寮まで歩いて行った。


 数十分後に二人は上条の自宅である部屋にまで辿り着き、上条はドアを開けた。 


 上条「帰ったぞ~」

 
 「あ、おかえり!当麻兄ちゃん!」


 家に帰って来るなり元気いっぱいな声で上条と神裂を出迎えて来るツンツン頭の少年が玄関のすぐ前にあるキッチンからエプロン姿で現れた。


 エプロンの丈が身長よりかなり長めなのか裾が床について踏みながら歩いている。


 上条「・・・筑上?」


 アリサ「遊びに来たんだって」


 筑上条「うん!」

 
 アリサが壁からヒョコっと顔だけを出して微笑みながら言い、筑上条はそれに明るく笑いながら頷いて応える。


 神裂「・・・親戚の、子ですか?」


 上条「ん~・・・まぁ、簡単に言えばだ」

 

 上条「別世界≪パラレルワールド≫の俺だ」

>>105 遅れて申し訳ない


 次回予告

 
 上条「俺の他にも、悪の組織と戦っている奴らがいるんだ」
 

 筑上条「当麻兄ちゃんが53番目で、僕はプロトタイプなんだ」

 

 一方通行「ん~んん~ん~・・・」


 「先生の腕は天使の寝床『エンジェルベッド』なのよ」



 「動ける者だけでもやるしかないじゃんよ!実弾の使用を許可する!撃てぇ!」


 上条「変身!Vスィイイッ!」


 「スカイ・・・変身!!」


 「変身っ!」



 
 『―警告!Index-Libroum-Prohibitorum――禁書目録の「首輪」第一から第三まで全結界の貫通を確認』

 
 『一0万三000冊の『書庫』保護のため 侵入者の迎撃を優先します』
  

 神裂「私は・・・仲間を見捨ててでも、彼女を守ると誓ったのですッ!」



 「ライダァァ・・・変身!!」

 
 
 ライダー関係ないですが、シン・ゴジラはIMAXで是非観に行く事をおすすめします。

 あと、やったぁあああ!!!萩野さん銀メダルおめでとぉ~~~!!


 インデックス・アリサ「「いただきまーす」」


 インデックスとアリサはホカホカの炊きたてのご飯を山盛りに盛った茶碗を片手に、筑上条とアリサが調理して作ったおかずを食べる。

 上条と筑上条は食べずに談笑をして、神裂も最初は昼食を勧められて断ろうとしたが己の腹の虫は正直だったので戸惑いながら頂くことにした。


 筑上条「でね、この間エベレストから飛んだんだよ!」

 上条「すごいな。どうだったんだ?」

 筑上条「最高だったよ!ぶわぁーーーってどこまでも飛んで行けそうって感じだった!」


 上条は筑上条から出てくるもはや子供どころか人間なのかと言うくらいにまで疑わしい発言を繰り広げる。
 それを聞いて、神裂は租借していたご飯を飲み込むと先程上条が言っていた言葉を思い出して、上条に問いかける。


 神裂「あの・・・お話の途中で申し訳ありませんが・・・別世界とは、どういう意味ですか?」

 上条「あぁ・・・俺の他にも、悪の組織と戦っている奴らがいるんだ」

 神裂「・・・改造、手術を受けて、ですか?」


 神裂は申し訳なさそうに聞くと上条は頷いて、少しだけ鋭くさせている目を伏せる。


 上条「まぁな、けど俺みたいに自ら改造手術を受けた奴も二人居るんだ。友の敵討ちの為、人類の夢の為にな」

 筑上条「当麻兄ちゃんが53番目で、僕はプロトタイプなんだ」

 神裂「プロトタイプ・・・?」

 筑上条「うん。飛行用改造人間の試作機とかで、イナゴの能力を持ってるんだ」

 上条「ちなみに俺は赤トンボらしい。プラスでバッタもな」

 筑上条「あ、あとね変身したら僕、空も飛べるんだよ!」

 筑上条「ハングライダー部に入ってるから変身しなくても飛べるんだけど、実はそのハングライダーが落っこちちゃって、死にそうになったところを助けて貰ったんだ」

 神裂「そう、なんですか・・・」 


 神裂は少し困惑した。無邪気な笑顔で筑上条は説明しているのだが、それは幼さ故に自分自身がどうなっているのかよくわかっていないから見せれる笑顔なのだろうと気まずくなっているからだ。
 それを見かねて上条は筑上条の頭に手を置くと、撫でて話すのを止めさせる。

 
 
 上条「その話しをするのはよくないぞ?筑上」


 筑上条「あ・・・ごめんなさい、火織お姉さん」

 神裂「い、いえ。お気になさらず・・・」


 インデックス「あ、君ってあの写真に写ってるよね?」
 
 上条「今更気付いたのかよ・・・」

 筑上条「あははっ」


 インデックスはアリサに3度目のご飯のおかわりをよそおっている間に写真立てを指す。上条が呆れるように返すと、筑上条は面白そうに笑った。

 神裂はインデックスが指した写真立てに入っている写真を見て驚く。


 神裂「これは・・・この、貴方にそっくりな方々も・・・」

 上条「ああ。こいつ(筑上条)と同じパラレルワールドの俺だ」

 神裂「・・・。・・・この方々も、改造人間なのですか・・・?」

 上条「あぁ・・・まぁ、大半はな」

 神裂「・・・」

 
 上条は迷ったように言うと、神裂は少し気にしながらも写真を見つめる。
 

 インデックス「ねぇねぇ、とうま。パラレルワールドって何?」

 上条「簡単に言えば、今お前はこの世界で飯を食ってるだろ?それが逆にお前が食べていない世界もある、それがパラレルワールドだ」

 インデックス「へぇ~。じゃあ、ちっちゃいとうまはそこから来たの?」

 筑上条「うん。そうだよ」

 インデックス「でもどうやって来たの?」

 筑上条「んっとね、この世界に通じる穴があるんだよ。そこから通ってここまで来てるんだよ」

 インデックス「結構簡単なんだね」 


 筑上条は天井を指して答える。インデックスが天井を見ながら言うと、神裂は立ち上がった。

 
 神裂「では、私はこれで失礼いたします」

 上条「あれ、もう行くのか」

 神裂「はい。インデックスは元気そうですので、まだ大丈夫と思いましたから」

 インデックス「えぇ~、もう行っちゃうの?」

 神裂「申し訳ありません、インデックス。何しろステイルをほったらかしにして来ているので・・・」

 上条「あ、そういえばそうだったな」

 神裂「では、もし何かあれば・・・これに掛けてください」


 神裂はそう言うと小さな紙切れを渡した。そこには電話番号が漢数字で書かれていた。上条はそれを受け取ると、脳内に記録する。

 
 上条「ああ、わかった。ありがとうな」

 神裂「はい。では、失礼します」


 神列は刀を手で支えたままお辞儀をし、ドアを開けて上条の家から出て行った。


 インデックス「ちっちゃいとうまの世界の私ってどんな感じなの?」


 筑上条「わかんないなぁ。会ったことないから」


 上条「居る世界と居ない世界とで様々あるからな。居たとしても性別が違うこともある」


 インデックス「へぇ~。でも居るとしたらきっととうまよりも背がおっきくて、かおりみたくボンキュッボーン!な感じなんだよ」


 上条「何で確定してんだよ・・・」


 筑上条「あははっ」


 インデックスの脳内では上条(168cm)よりも背が高く、神裂ぐらいのプロポーションの自分の全体図があやふやに浮かぶ。
 上条は何となくインデックスが予想している姿を同じような全体図を思い浮かべて呆れる。筑上条はまた可笑しくなって和やかに笑った。


 アリサ「そういえば、筑上君はいつまでここに居られるの?」
 

 筑上条「あとちょっとかな?すぐに帰らないといけないんだ」


 上条「そうか・・・あっ、そうだ!すっかり忘れてた!」


 アリサ「・・・あぁ!」


 筑上条が残念そうに答えると、上条も少し寂しそうに笑って頭を撫でた。その直後に何かを思い出したのか大声を上げる。それにつられてアリサも上条を指さして笑みを浮かべた。
 筑上条とインデックスは二人の行動が理解できず、目を点にしている。


 インデックス「え?何が?」


 筑上条「どうしたの?」


 上条「筑上、実はな・・・」


 上条は今までの経緯を説明する。筑上条は上条が言う言葉を聞きながら無言で頷く。
 上条が全て説明し終えると、筑上条は頭を指で掻きながら答えた。


 筑上条「うーん・・・でも触って何もならなかったら意味ないと思うよ?」


 上条「いいんだ、それでも。触って何もならなかったと言うことは、外見ではわからない所に何か仕掛けられたと言うことだ」


 筑上条「なるほど・・・わかった。じゃあインデックスちゃん、手出して?」


 インデックス「うん」

 
 筑上条はインデックスが差し出した手を握った。上条はその様子を脳内のカメラ機能を目を使って録画して、アリサは何が起こるか内心ドキドキしながら固唾を飲んで見守る。
 しかし数秒経っても何も変化は起きない。


 筑上条「・・・何も起きないね」


 上条「じゃあ、外からの無力化は不可能か・・・」  



 インデックス「ねぇ、何をしたかったの?」


 上条「こいつの右手にも俺と同じような異能の力を消す能力を持ってるんだ。だからそれでお前に仕込まれた・・・魔術的な時限装置を消そうと思ったんだが・・・」


 筑上条「ダメみたいだったね。普段ならパリーンって何か割れる音がするから・・・」


 インデックス「そっか・・・」


 アリサ「残念だったね・・・」


 インデックスは俯いて残念そうにしていると、アリサも目を伏せてインデックスの頭を撫でる。
  

 上条「大丈夫だ、インデックス。まだ希望が消えたわけじゃない」


 インデックス「え?でも・・・」


 上条「お前に触れて何も起きなかったってコトはわかったんだ。それを踏まえて病院で検査すれば見つける可能性は高くなったんだからさ」


 アリサ「あ、なるほど・・・」


 上条「だからインデックス。大丈夫だ」


 上条は微笑みながら自分の手をインデックスの頭の上に乗せて見つめる。インデックスはその言葉を聞いて自然と安心感がこみ上げてきて、緑色の瞳に涙が溜まる。


 インデックス「・・・うん!」


 インデックスは両手で目を擦り、涙が零れる前に拭いて鼻を啜ると明るく笑って大きく頷いた。



 「ぎっ・・・ぁ・・・!」


 第十九学区のとある廃工場。その中で刃物が肉を抉り斬る音を立てながら、血と白い砕けた骨の破片と肉片を鉄製の波板にに飛び散らせる。柔らかい肉片が後から掛けられる血によって、舗装されていない土の地面に血と一緒に滑りながら垂れ落ちていく。
 肩から斜めに心臓部があった胸部まで切り裂いて、機械音が止まると勢いよく引き抜いた。上半身が縦に割れて根元の胸部はくっ付いたまま地面に倒れる。 

 「た、助けてくれぇええええええっ!!」

 
 白衣を着た男性は無残に殺された友人の最期を見て足腰に力が入らず、鳥肌が立つ代わりに体中の皮膚を何かが引っ掻いているような痛みが襲って逃げられない。
 目の前に立っている銀色の仮面を、真っ赤な血で染めている女に。
 恐竜のラプトルのような頭部の銀色の仮面を被っており、仮面と同じようなギザギザとした銀色の強化スーツを身に纏っている。
 手には友人を切り裂いたチェンソーが、鮫の歯の様な刃先から血を垂らして、地面に染みこませている。

 
 「さぁ~て・・・アンタだけになっちゃったけど、どうやって死んで貰おうかなぁ。きゃはははっ」


 女はゆらりと体を座り込んだまま助けを呼んでいる男に楽しそうに近付く。男に近付く際に、足下に落ちていた別の場所に転がっている死体から引き千切られた耳をわざと踵を捩って踏み潰した。
 女の後ろでは潜水服のような全体的に体が丸い全身装甲服を身に纏い、手には「100式短機関銃 ベルグマンMP18/28短機関銃」を握っている背の低い子供の様な人間が工場の出入り口を塞いで逃げ場を無くしていた。
 旧日本軍が使用していたような星があしらわれたヘルメットを被り、長方形の暗視ゴーグルを目の部分に填め込んでいて、腰には98式軍刀を武装している。
 材質が不明な丸い装甲の胸の中心部には日本の皇室を表したシンボルである菊紋が飾られている。 


 「た、頼む!か、金ならいくらでもやる!」


 「お金なら間に合ってるからにゃーん・・・あ、アンタ家族居るの?」

 
 女は仮面に付着した血を指につけてネチャネチャと肉片を丸めながら問いかけてきた。男はその言葉を聞いて何を言い出すんだと思いながらも、自分の脳内で両親のコトを思い浮かべる。
 だが、思い出せるのは母が買ってくれたアイスクリーを頬張っている場面だけだった
 父親は酒に飲んだくれて毎日のように母を殴りつけていた。最期は首を吊って死んだ。後に続いて母親も高層ビルから転落した。
 その後は親戚にたらい回しにされ、最終的にはこの学園都市で育った身となった。
 
 「い、居ない・・・俺は孤児院で育った身だ」

 
 「あらぁ。そっかそっか~・・・」


 「じゃ、お母さんとお父さんにヨロシク♡」


 男は目の前に立っていた女がチェーンソーを振り上げるのが見えた。その瞬間に自分と両親が笑顔で公園で遊んでいる、記憶が蘇る。
 だがすぐに目の前がブラックアウトした。
 女はチェーンソーを横にスライドさせて、男の首を一直線に横に切り飛ばした。体から離れた頭部は、絶望の色に染まった表情を浮かべたまま地面に転がる。

 
 「っはぁあ~~~、最っ高~。ひゃはは、きゃはははああぁ、ああはははは!!」

 
 「任務終了。とミサカは一号に連絡を入れます」

 
 『了解。とミサカは九九八二号に返答します』

 
 装甲服を身に纏っている少女は通信を冷静なまでに静かな声で、連絡を入れる。女は高笑いをしながらチェーンソーを振り回して、倒れている首の無くなった男の体の喉から臍の下まで斬り付けて中身の臓器を抉って削る。


 「任務終了のため、これより帰還しましょう。とミサカはチェーンソーリザード様に提案をいたします」

 
 「えぇ~~?もう帰るの~?」


 「はい」


 「ちっ、もの足りないんだけどなぁ~~」


 女はチェンソーの電源を切り、肩に担ぎながら愚痴をこぼしながら工場の出口へ歩いて行った。装甲服を身に纏っている少女はその後を追う。
 静かになった工場内で、波板で垂れ落ちる血の音だけが聞こえる中でやがて、ビシャッと少しだけ粘着性のある液体が勢いよく落ちる音が響いた。

 
 「・・・どうなってるのよ、これ・・・」

 
 工場の使い捨てられた重機の影に隠れている、肩まで届く短めの茶髪に花飾りのヘアピンをつけている少女は目から涙をこぼして口を押さえている手の隙間から白いような液体を、吐いて小さく呟いた。

ここまで~~。
早くめっちゃ書きたいとこまで進ませたいのに全然展開が思いつかん・・・

ゴーストオツカーレ!


 筑上条「あ、もう帰らないと・・・」


 上条「おっ、そうか」


 数時間が経って、外がオレンジ色に染まって夕方になっている気付くと筑上条は立ち上がった。

 
 インデックス「えぇ~~、もう帰っちゃうの~?」


 筑上条「うん。向こうでも待ってくれている人達が居るから、ごめんね?」


 インデックス「むむぅ~、そっかぁ。それなら仕方ないんだよ」


 インデックスは頬を少し膨らませて残念そうにすると、筑上条は苦笑いを浮かべた。

 玄関まで歩いて行って、赤色のシューズを履くと立ち上がった。踵が上手く入らなかったのか爪先を床にトントンと軽く押して、踵を奥まで入れる。

 
 筑上条「それじゃあまたね。当麻兄ちゃん、アリサお姉ちゃん、インデックスちゃん」

 
 上条「ああ。また飛んだら、教えてくれな」


 アリサ「またね、筑上君」


 インデックス「バイバイなんだよ」


 三人が見送る中、筑上条は玄関のドアを開けて外へ出て行った。

 



 翌日の二十二日のお昼頃。三人でファミレスに来ているとき、脳内に着信音が鳴り響くのに気付いて上条はその相手の番号を確認する。
 その番号はいつも世話になっている人物だとわかると、蟀谷に指を当ててすぐさま受話器を無意識に取るように電話相手に繋いだ。


 上条「はい、先生。どうしたんですか?」


 『やぁ、二日ぶりだね。実は困ったことが起こっていてね・・・』


 電話の相手は先生と呼ばれる、声からして高年齢の男性だった男性だった。電話越しで表情は覗えないが、声からして本当に困っている様にだった。


 上条「困ったこと・・・?」 


 『うぅん。それがね・・・』

 
 男性は困ったことについて、説明をし始めた。「幻想御手(レベルアッパー)」それは、能力のレベルを簡単に引き上げる事が出来る道具であり、体感で1~2程レベルが上がっている感じがするそうだ。
 一見すれば無能力者にとっては素晴らしすぎる道具であるのだが、そのレベルを上げることによって、犯罪に走る者もおり問題視されるきっかけとなっている。
 だがそれだけではなかった。男性が更に詳しく調べたところ、個人差を無視した特定の脳波を強要され続けるため、 徐々に脳は疲労していき最終的に意識不明となる、と結論がでたそうだ。


 上条「・・・で、それを何で俺に教えるんですか?」


 上条は普段なら特に余計なことは話さない男性がここまで話すことに何か意味があるのかと目を鋭くさせる。


 『いや、大したことではないよ。重要なのは君の右手を受け取るのが少し遅れることになってしまったんだ』


 上条「えっ・・・!?」


 上条は思わず飲もうとしていたコップを握り潰してしまった。パリンッと割れて中の氷が入っていた水がテーブルに広がる。
 アリサとインデックスはコップが割れる音に驚いて、喉に食べていた料理を詰まらせてしまう。
 店員が慌ててお盆に五本程おしぼりを乗せて持ってくると、包んでいる袋を破って中のおしぼりを取り出すとテーブルに零れた冷たい水を拭き取る。アリサとインデックスも水を飲んで喉に詰まっていたものを流し込んでおしぼりを受け取ると、水を拭き取る。




 上条「そ、それって、いつまで伸びるんでせうか!?」


 『あぁ、一日ぐらいだから安心しなさい。そこまで事が大きくならない限りはね』


 上条「そ、そうですか・・・」

 
 上条はホッと安堵のため息をつくが、脳内時計のタイマーは100.8と減っているのにも気付く。

 
 上条「・・・あぁ、インデックス。明日病院に行く予定なんだが・・・明後日になった」


 インデックス「え?どうして?」


 テーブルに撒き散らされた水を拭き終えて、店員が店の奥へ消えていくのを見送っていたインデックスは唐突に告げられた上条の言葉に首を傾げる。
 アリサも同様で、不思議そうに上条を見つめた。


 上条「いや病院の先生が忙しくなったみたいで・・・検査は明後日まで持ち越しになるんだ」


 インデックス「そう、なの・・・」


 アリサ「インデックスちゃん、今は、大丈夫なの?」


 インデックス「うん・・・多分・・・」


 インデックスは不安そうに俯いたまま答える。アリサは上条を見つめると、上条もこればかりはどうしようにもと言ったように目を伏せて腕組みをした。


 
 御坂「・・・」


 緑色の草の絨毯が広がる丘で、御坂は太陽を見つめながら絶望感に飲み込まれていた。
 何故あのとき止められなかったのか、何故あのとき自分は怯えていたのか・・・そんな考えが頭の中を駆け巡って、男の首が飛び跳ね自分自身に真っ赤な血が降り注ぐような錯覚に襲われて思わず嘔吐しそうなり、体を横に向け手で口を覆う。

 
 御坂「っはぁ・・・っはぁ・・・っ・・・はぁっ」


 嫌な汗が額を流れている中、吐き気が収まって御坂は手を口から離す。目の前に咲いている小さな白い花を見て、少しだけ安心感が込み上げた。


 御坂「・・・何弱気になってんのよ・・・私らしくないっ・・・!」


 「確かにな。俺が知ってるお前は、もっと強いはずだぜ?」


 御坂は自分自身の不甲斐なさに舌打ちをしていると、不意に頭上から声が聞こえてバッと顔を上に上げる。そこに居たのは、怪しく自分を嘲笑う様に立っている青年だった。
 御坂は思わず立ち上がって、数歩下がり身構えると頭髪からバチバチっと電気が走る。だが青年の顔をよく見てみると、見知った顔だとわかった。


 御坂「な、何よアンタか・・・」


 「へっ、随分なご挨拶だな」

  
 S字のシャツに薔薇の刺繍の入ったボトムスズボンを身に纏っており、手には黒い手袋を着用してる。
 顔立ちはつり目でサラッとした黒髪だがツンツンとしており、上条当麻にそっくりな青年だった。


 美琴「・・・何か、雰囲気変わったわね?」


 「あん?・・・あぁ。何だ、お前アイツのこと知ってんのか」


 美琴「?」


 美琴は青年を上条と思っているらしく、普段の様子と違うことに違和感を感じて首を傾げる。
 上条当麻にそっくりな青年は口の端を上げて白い歯を覗かせながら、薄く笑みを浮かべ頬を手袋越しに指で掻く。それに御坂は頭の中に「?」を浮かばせて、もっと首を傾げる。
 

 「お前が言ってるのは、俺の・・・親戚だ。俺にそっくりだが、髪の毛がツンツンしてんだろ」


 美琴「親戚・・・あぁ、どうりで・・・」


 「ああ。つうかよ、俺とは2回も会っただろ?最初は男共からお前を助けようとした時、2度目はセブンなんたらって店で爆発から守ってやったろ」


 美琴「・・・え?・・・え、ア、アンタがあの時守ってくれたの!?」


 美琴の脳裏に遡ること一ヶ月と5日の記憶が蘇る。それは美琴がスキルアウト達に絡まれているときだった。
 面倒くさい、と死なない程度にビリッとしようと思ったその時、スキルアウト達の背後からど派手なバイクに乗って現れた一人の男。そいつが今目の前に立っているこいつだった。
 こいつがあっという間にスキルアウトと話し合い(物理)で帰らせて、私向かっても帰って寝ろと鬱陶しく喧嘩を売ってきて(いたと美琴は思っている。)、とりあえず小さく電気を浴びせた。
 けど、その電気に微動だにしなかったからもちろんあの時はびっくりした。まさか体が麻痺するくらいの電気を浴びても、失神すらしなかったもの。
 その後「じゃあな」と追いかけようとした内にバイクに乗ってどっかへ行って、翌日にツンツン頭を発見して、見つけた!と思って決闘を申し込んだけど「アリサのライブの後でな」とか理由つけて結局逃げられた。(一応河川敷で待ったが蚊にすごいかまれた。電磁バリア張ってればよかった・・・)
 それから何度か会っては決闘を申し込んでも「アリサ」とか言う誰かわからないけど、その名前を単語にして逃げられるのが当たり前になっていた。
 そして、あれは4日前の18日のこと。
 セブンミストで起きた、虚空爆破事件(グラビトン事件)。
 その日の前日に私が初春さんが置き忘れたジャッチメントの腕章をちょろっと借りてジャッジメントにな(りすまし)ってやっとの思いで探し出した爆弾と思ってたバッグを渡してあげた女の子がたまたま、その時居合わせて、トイレから戻ってきて初春さんに趣味の悪い人形を渡そうとした。 
 その人形が縮んだのを初春さんがいち早く気付いて投げ飛ばして私に逃げるように言った。
 私は初春さんと女の子を見捨てて逃げるわけもなくズドーンとしようとしたけど、コインが滑ってもう間に合わないと、あの時はマジで死ぬかと思った。 
 でも・・・「エレクトロウォーターフォール!」とか、何かカッコイイ技の名前?みたいなのが耳に入った瞬間に人形が爆発した。
 煙が私と初春さん達を襲ってきたけど、何故か火とか爆風は来なかった。
 よくは見えなかったけど、太っとい角とゴツい肩をしてた人影が見えた様な気がする・・・煙のせいだったから、なのかしら?


 「ま、あの爆発じゃあ俺だってことはわかるわけもないか」

 
 美琴「そ、そりゃ、まぁ・・・そうかもしれないけど・・・って」


 美琴は煙で青年だとわからなかった、とそこまで考えたが、途中で今まで散々「アリサ」と言っていた奴(上条当麻)と目の前に立っている青年を間違えていたと言う事実に気付く。

 
 美琴「じゃ、じゃあ・・・今まで私、勘違いしてたってこと・・・?」


 「何だ?アイツと俺を間違えてどうしたんだよ」

 
 美琴「そ、そのぉ~・・・決闘を4度ほど・・・」


 「ぷはっ!はっはっはっはっは!そりゃ、随分とツッパってなんな」


 美琴「う、うっさいわね!」


 美琴は両手の指同士を合わせてモジモジと俯きながら答える。それに青年は豪快に笑って、美琴は恥ずかしさで頭から電気を放電させ、青年に浴びせようとする。


 「おっと」


 だが青年は片手を前に出すと、放電された電気が吸収されるように消えてしまう。


 美琴「な、何でアンタにも効かないのよ!?」


 「へっ、そんなこと俺が知るか」

 
 美琴「いや、おかしいでしょ、その返しは・・・」


 美琴「まぁいいわ。それよりアンタ!今すぐにあたしと勝負しなさい!」


 美琴は眉間に皺を寄せて不機嫌そうに声を荒げながら、指をビシッと青年に向けて指す。青年は美琴を見て、薄く浮かべていた笑みを消すと目を上条と同じ様に鋭くさせる。鋭くはなっているが、上条とは違い少し尊大挑戦的、いわゆる傍若無人さがあって上から目線に見える。

 
 
 「あぁ。勝負なら受けて立ってやる・・・が、今のお前は相手にしてやらん」



 美琴「な、何でよ!?」


 「・・・じゃあ聞くが、今のお前に迷いはないのか?」

 
 美琴「え・・・?」


 美琴は思ってもみなかった返答に言葉が詰まって目を少し見開く。青年は手袋を着用している両手をズボンのポケットに入れて眉を曲げ、呆れている様に美琴を見る。
 

 「さっきまで悶えてた奴を見ちまったら受けて立とうにも気が滅入っちまうんだよ」


 美琴「っ・・・!」


 美琴は青年と話す前まで先日の記憶に苦しめられていた。無抵抗な人達を狂笑をあげながら野獣のように殺す場面が動画が何度もリピートするように嫌でも思い出させられて、再び吐き気に襲われて口を手で覆って、その場で立ったまま腰を曲げて蹲る。吐くところを見られたくないのか青年に背中を向けた。
 青年は苦しむ美琴を見たまま、助けようとはせずに続ける。


 「・・・どうなんだ?俺は勝負と聞いちゃ全力で行くぜ?ただしお前も本気を出せば、の話だがな」


 美琴「・・・」


 美琴は背中を向けたまま吐き気に耐えるのに必死で答えられなかった。青年はため息をつくと踵を返した。


 「・・・答えが出ないなら、また今度にしてくれ」


 美琴「・・・ちょ、ちょっと」


 「何だ?」


 青年は美琴に呼び止められて、お互いに背中を向け合ったまま振り返らずに返事をする。
 時間がかなり経過していたらしく、夕日で周囲がオレンジ色に染まっていた。
 美琴は吐き気が治まってきて、手を口から離すと目を強く瞑ってまだ少し残る苦痛に耐えながら問いかけた。


 美琴「・・・アンタが知ってる、私って何なのよ・・・?」


 「・・・お前がお前であることを胸張って誇ってられる、絶望にも負けねぇガキンチョ・・・って俺はそう思ってんぞ」


 美琴「ガ、ガキンチョって何・・・あれ・・・?」


 美琴は思わず後ろを振り返って青年に何か言おうとしたが、そこに立っていた筈の青年の姿はどこにもない。バイクで去ったのなら音で気づくはずなのだが、音も無く消えていた。


 美琴「くっそぉ・・・またどっかに行くんだから・・・」


 美琴「・・・名前ぐらい、聞かせてよね。もうっ・・・」

かっこE


 午後7時。神裂は未だに慣れない携帯での会話を終えると、電源ボタンを押して通話を切る。神裂は後ろで、ちゃぶ台の上に置いてある灰皿に小萌が作り上げた煙草の吸い殻の山には負けるくらいだが、数本の吸い殻で小山を作っているステイルに電話の内容を告げる。 
 

 神裂「ステイル、明日の予定なのですが・・・少し変更になるそうです」


 ステイル「何?」


 ステイルは吸っていた煙草を手に持って口から離すと、眉間に皺を寄せて神裂の方を向く。


 神裂「と言っても1日延長するだけらしいですので、問題はないそうですが」


 ステイル「何だ、そうかなのか・・・」

 
 神裂とステイルが居るのは小萌のオンボロアパートだった。実は現在進行形でここに住まわせてもらっている。
 小萌のご厚意に負心が折れて、神裂とステイルは日本に居る間泊まる予約をしていたホテルにキャンセルを入れてここに居るのだ。


 神裂「ええ。・・・しかし、後3日・・・まだ症状は出ていない様ですが、いつ出るかわからないので気をつけないといけませんね」


 ステイル「そうだね。危険な状態に変わりはない」

 
 神裂が「ええ・・・」と答えると同時に対新聞屋さん用の頑丈な扉が、ギギっと音を立てながら開いて小萌が肩にポーチを掛けながらビニール袋を2つ両手に持って帰ってきた。
 

 小萌「ただいまです~!」


 神裂「お帰りなさい、小萌先生」


 ステイル「随分と遅かったね」


 神裂は帰ってきた小萌に微笑みかけながら頭を下げ、ステイルは煙草を咥え直しながら普段なら6時くらいには帰ってくるが、今日は2時間遅く帰ってきた小萌に問いかけた。
 小萌は足下に散乱したゴミを華麗に避けながら台所まで移動すると右手に持っていたビニール袋から缶ビールを一本ずつ取り出して冷蔵庫に詰めていく。


 小萌「いやぁ~、これが参った参ったなのですよ~。補習生の子達の最終テストを実施して、全員無事脱出できた、と思ったのですけど・・・」


 神裂「けど?」


 小萌「忘れていたのです、ツインズの存在を。遅刻魔の上条ちゃんを入れればデルタフォースの完成なのですが、上条ちゃんは学力は学年トップなので加えられないんですよ」」


 神裂「学年で一番上なんですか?」


 神裂は思わず驚いて聞き返した。遅刻が多いと言う事は上条本人から聞いているので、気にしなかったがまさか学力が良いと言う事には驚いたのだろう。


 小萌「はい。ツインズの土御門ちゃんと青髪ちゃんと言うのですけど、あの二人とは月とスッポンです」


 神裂・ステイル「土御門?」

 
 神裂とステイルは声を合わせてその名前を言う。脳内に「にゃはっ」と金髪グラサンが笑った様に聞こえた。


 小萌「おや?お二人は土御門ちゃんともお友達なのですか?」


 神裂「え、えっと・・・土御門元春で間違いありませんね?」


 小萌「はい。妹さんに舞夏ちゃんがいますよ?」


 神裂「あぁ・・・ま、まぁ、友達というよりは、知り合いです・・・ね・・・」


 神裂は小萌から目を逸らしながら答え辛そうに土御門との関係を言った。小萌はそんな神裂を見て、恥ずかしがっていると勘違いしている。

 
 小萌「そうなんですかぁ~。では近々会いに行ってはどうです?上条ちゃんが住んでいる部屋のお隣さんなんですよ?」


 神裂「え?そ、そうだったんですか!?」


 ステイル「(どうりで・・・2日前に上条の家に上がった際に感じた、あの魔力の残留は土御門のものだったのか・・・)」


 ステイルは不用心なと心の中で呟き、根元まで吸った煙草を灰皿にねじ込む。
 神裂は遅めの夕食を作ろう、と言って小萌と一緒に台所へ向かった。
 

 
 所変わって、イギリスはロンドンの中心街。
 日本とは時差が8時間も違うこの国はまだお昼前であり、人々が行き来するウォータールー駅から徒歩10分の場所に位置するそこそこの大きさの教会
 「聖ジョージ大聖堂」。
 その大聖堂の中にある中庭のテラスに座って、鼻歌を歌って日の光にその長い長い金色の髪の毛を晒しながら櫛でとく一人の女性が居た。
 目の色がインデックスと違い、碧眼だがどことなく成長したインデックスの様な顔立ちに見えるその女性は、一通り長い髪の毛をとき終えると首を横に振って髪の毛を靡かせる。
 真夏なのに穏やかな日光を降り注いでいる太陽の暖かさに安堵のため息をつくと、髪をとくのに使っていた、手作りの木製の櫛を撫でると悲しみを交えた微笑みを浮かべる。

 
 
 「ふふふ、貴方との思い出は今でも覚えているわ・・・。・・・早く会いたい・・・」


 
 静かに呟く声は風と共に消えていく。
 その風は空へと舞い上がって行き、上空に開いたチャックの中へ吸い込まれていった。


 翌日の23日の午前8時。晴天に晴れた中、上条とインデックスは並んで街中を歩いていた 
 今日はアリサの路上ライブを見に行くことになっているのだ。
 アリサは先に機材やシンセサイザーを持って、いつも路上ライブをする場所へ向かっていた。
 上条が持つのを手伝おうと申し出ていたが、アリサは意外と力持ちで体力があるため大丈夫と言って重そうな機材を軽々とお持ち上げて家から出て行ったのを見てインデックスは衝撃のあまり固まっていたのを思い出し、上条は思わず吹きそうになった。

 インデックス「とうま、何か面白いことでもあったの?」


 上条「え?あぁ、何でもないぞ。気にすんな」


 インデックスが自分を首を傾げながら見ているのに気付いて、誤魔化すように顔を空の方へ逸らして頭を掻く。
 インデックスは誤魔化している上条の行動に首を傾げるが、すぐに気にしなくなって前を向く。

  
 
 インデックス「かおりとステイルも来れたらよかったのにね・・・」



 上条「何でも、他の魔術師が来ないか見張りをすると言ってたぞ。お前を守る為だ、仕方ないよ」


 インデックス「そっか・・・」


 インデックスは残念そうに俯いてため息をつく。上条は苦笑いを浮かべて、右手でフードを被っているインデックスの頭をポンポンと優しく叩いて慰める。
 しばらく歩いてアリサが路上ライブをしてる通路シェルターが設けられた道端に着く。アリサの周りには既に学生達の人集りが出てきており、上条はインデックスの後ろに立って空いてるスペースをセンサーで探りながら人集りの中へ入っていき、一番前まで来てアリサの元まで入った。

 
 
 上条「ほらインデックス。ここから見えるぞ」



 アリサはシンセサイザーのチューニングをしていて、チューニングが完了すると同時に上条とインデックスの姿を見つけると笑みを浮かべてさり気なく手を小さく振った。
 上条も手を上げる程度に答えた。それを見てアリサは嬉しそうに頷く。
 アリサは両手を鍵盤の上に添えて、深呼吸をする。
 

 上条「始まるぞ」


 上条がインデックスに言うと、アリサは鍵盤に指を沈める。


 アリサ「ペガサス~  遠い宙~♪ グローリア~ 届くよに~♪」

 
 インデックスは口を半開きにして聴き入っており他の集まっている学生達も、足でリズムを取ったり友達から来たメールを見ることを忘れて聴き入っている。
 上条は歌を脳内HDDにアリサが歌っている姿を録音しながら、穏やかに微笑みを浮かべてアリサの歌を聴く。
 透明感のある曲で、空をイメージした言葉が取り入れられている。

 
 
 アリサ「宙に浮かんだ君の言葉はいつも~、当たり前に僕を救ってくれた~♪」



 2曲目が始まってすぐにインデックスは3日前に藤兵衛の店で聴いたラジオで流れていた曲だとわかり、明るく笑みを浮かべた。

 アリサの指が鍵盤を弾く度にリズミカルな音が周囲に飛んで、最初よりも人集りが多くなっていた。 
 5曲目を歌い終えて、6曲目に入ろうとしたときアリサは片手を鍵盤から離してマイクに置いた。 

 
 アリサ「次はカバー曲歌いまーす。これでおしまいです」


 アリサ「ここに生きるその理由も この場所で出会う全ても~♪例え違う、世界でも どこに居てもこの思いは 揺るがない~♪」 

 
 どこか不気味で魔法にかかりそうなバラード調でアリサはビブラートを活かして、深く心に感じさせる気持ちになる。
 最後の曲となってアリサは全力で歌い続け、間奏を楽しそうに弾き鳴らす。 

 
 アリサ「今~ この手が知るから~ 迷わない~~・・・♪」

 
 アリサがビブラートで音楽が鳴り終わる直前まで歌い、そして指を鍵盤から離して音を止め歌い終わる。


 アリサ「ありがとうございました」


 アリサは椅子から立ち上がって深く頭を下げて感謝の気持ちを伝えると同時に、周囲から拍手が喝采する。
 拍手の雨を受けながらアリサは顔を上げて、学生達と同じように拍手を送ってくれている上条と少しオーバーに拍手を送るインデックスの方を見て微笑んだ。

今日はここまで。
>>126 毎度いつもありがとうございます。


PSIの歌詞を探してて川田さんが引退してるのを今、知ってびっくりしました。マジか~~ってショック受けましたよ~。3期も歌ってほしかった・・・まぁ3期があるかどうかはわからんが。


ちなみに今更説明しますが、上条が変身するV3はthe nextのV3と本家が混ぜた感じです。仮面は全身の変身が終わってから被って髪の毛がはみ出て、マフラーは白、全身はnextのままな感じです。
>>42で昭和ライダーを出すと言いましたが、ライダーマンは平行世界の上条さんではありませーん。さて誰でしょうか


movie大戦でウィザードからドライブまでの先輩ライダーが出るそうですが、白石さん(晴人さん)と岳さん(紘汰さん)は出るのかな?進兄さんは出れるとは思うけど、ライダー俳優って有名になったら出れなくなる法則があるからなぁ(例 氷川さん:渡:フィリップ君:弦ちゃん)
特に弦ちゃんはすごいですよねぇ~、あんなにまで出世するとは思わんかったw平成ライダーの中じゃ一番の出世頭ですよ


一番は良太郎じゃないっすかね

おつおつ

>>131 あ、そうだったw

>>132 あざっす


 インデックス「アリサの歌、とっても素敵だったんだよ!」


 アリサ「ありがとう、インデックスちゃん」


 アリサのライブを終えて、上条達はファミレスチェーン店「Bennys」で昼食をとることにした。アリサは眼鏡を掛けて髪を二つに束ねてツインテールにし、若干の変装を加えている。
 理由は食事中にサインなどをねだられても困るからだ。もっともねだってきた場合(特に男)は上条が話し合いで済ましてくれるのだが、アリサはそれが嫌なので変装をしているのだ。


 インデックス「アリサの歌って、自分で考えてるの?」


 アリサ「うん。時々当麻くんにも手伝ってもらってね」


 上条「2曲目の歌、あれは俺とアリサがお互いの思いを綴った歌なんだ」


 インデックス「そうなんだ」

 
 インデックスが歌詞を思い出しながらその意味に納得して頷き、アリサが恥ずかしそうに頬を染めていると店員が注文した料理を業務用トレイに乗せて持ってきた。
 インデックスとアリサの前には蕩けたチーズが乗ったデミグラスハンバーグやパセリを降るった山盛りのポテトにミート、タラコ、ジェノベーゼ、カルボナーラの4種類のパスタが並べられる。
 上条が頼んだのは、苦瓜と蝸牛の地獄ラザニアの一品だけだった。
 アリサとインデックスは「いただきまーす!」と手を合わせてからフォークとナイフを両手に持ち、自分が一番好きな料理から手を付けた。
 インデックスはハンバーグにフォークを突き刺して持ち上げると一口噛みきって、口いっぱいに頬張る。
 口に入れた瞬間に広がる肉汁に感動しながら味わって、租借し飲み込む。次にポテトを4ついっぺんに刺して口の中へ放り込む。
 アリサはタラコのパスタをフォークに綺麗に絡め取って、零れないように利き手じゃない方の手を下に置きながら口まで運び食べる。
 上条はラザニアを食べていると、チラリとアリサの方を見る。
 ポテトを食べようとしたアリサはそれに気付いて、上条が何を訴えているのかがわかると頬を赤く染めて、少し迷いながらもポテトをフォークで刺し、上条の方へ持って行く。
 上条は満足そうに口を開けてアリサが差し出すポテトを食べる。アリサは眉を少し曲げて困ったような表情を浮かべているが、どこか嬉しそうに見えた。
 ふとその様子を見て、インデックスは水を飲んで一息つくとイチャイチャしてやがr(おっと)二人に話しかけた。


 インデックス「ねぇねぇ、そう言えばアリサととうまって何時出会ったの?」


 上条「そうだな・・・俺が真夜中に学園都市を巡回してるときに、アリサが改造人間に襲われてるのを助けたのが、最初だな」


 インデックス「どうして真夜中に外を出歩いてたの?」


 ジト目でインデックスはもっともらしい質問をアリサにぶつける。アリサは食べていた手を止めて、フォークとナイフを置くと両手の人差し指同士を突つき合わせて答えた。

 
 アリサ「その、歌いながら夜のお散歩をしててたらいつの間にか路地裏に入っちゃってて・・・」


 上条「こいつ歌ってると周りが見えなくなるんだ。まぁ、話しかけたら気付く事は気付くけどな」


 アリサ「あはは・・・」


 インデックス「じゃあ付き合い始めたのは?」


 上条「ん~・・・何時だろうな。自然的な流れでいつの間にか付き合い始めた感じか?」

  
 アリサ「そ、そうかもね・・・」


 インデックス「へぇ~。何だか素敵なんだよ」


 インデックスは目を輝かせて珍しく女の子らしい表情を見せ、最後の一口サイズにまで噛み切ったハンバーグを食べる。


 だがそんなインデックスを見て、上条は少し苦笑いを浮かべた。


 上条「そうは言ってもなインデックス。今のアリサはこの喋り方だが、本来は」
 アリサ「ぶふぉっ!?あぁ~~!当麻くん!ダメだってばぁ~!」


 上条がアリサについて何かを言おうとするとアリサはポテトを喉に詰まらせて咳き込むが何とか飲み込んで、上条の前で手を上下に振るい、言わせないようにしようとする。

 インデックスは首を傾げて見てると、上条はアリサの口にポテトを咥えさせる。そしてインデックスに言った。 
  
 
 上条「甲州弁がキッツいんだぞ」



 インデックス「・・・甲州弁って何?」


 上条「・・・アリサ、俺とずっとついてきてくれるか?」

 
 インデックスが首を傾げながら訪ねてくると、上条はニヤリと怪しげな笑みを浮かべて、突然アリサの首に腕を回すと肩を抱き寄せ、耳元で呟く。
 アリサはその呟きが片耳から反対側の耳へ通り抜けるような錯覚になって、顔を真っ赤に染める。
 数分まで耐えていたが、ゆっくりと上条の方を向く。若干涙目になっている。


 アリサ「い、一生ついてくずら!」


 アリサは目を強く瞑ってそう答える。これでいいかとアリサは恐る恐る上条を見ると、何故か周囲を見渡して焦っているのが見えた。
 顔を上げてアリサは周囲を見ると、疎らに各々のテーブルに座っている客達が上条達が座っているテーブルの方を堂々と見ていたり、チラチラと見てニヤついているのが見えた。
 アリサはその状況を見て理解した。周りには甘ーいと思われて、自分にとってはとてつもなく恥ずかしいことをしたという事を。
 

 上条「・・・そんな大声で言わなくても・・・」


 アリサ「あ、ぅ、あ、うあぁぁあぁ~~~・・・」


 アリサはテーブルに伏せて真っ赤になっている顔を隠しながら足をバタつかせる。
 上条は苦笑いを浮かべて伏せているアリサの頭を撫でてやる。インデックスは普段の口調と違うアリサに驚いて次の料理に伸ばしていた手を止めて固まっていた。

 
 

  
 アリサ「うぅ・・・もうあのお店には行けないよぉ・・・」

 
 上条「ま・・・俺は嬉しかったぞ?」


 アリサ「も、もう!当麻くんったらぁ・・・」


 昼食を食べ終えてから数時間後、夕暮れの淡いオレンジ色の光が上条達を包み込む。


 インデックス「ねぇ、そう言えばアリサって自分の名前忘れちゃったって言ってたけど、どうしてなの?」


 アリサ「え?あっ・・・実はね、私も3年前からの記憶がないの」


 インデックス「え・・・?」


 インデックスは思ってもみなかったアリサの告白に目を見開いて驚く。上条はアリサを見つめて、少し心配そうにしていた。


 アリサ「目が覚めたらベッドの上で、施設の人は置き去り(チャイルドエラー)にされたと思って私を助けてくれてたの」

 
 上条「山梨生まれってことは確実なんだが・・・未だに両親とか血縁関係の人の情報は掴めていないんだ」


 インデックス「そうなんだ・・・」

 
 インデックスはアリサも自分と同じ思いをしていると思い、俯き加減に目を伏せる。そんなインデックスを見てアリサは一歩インデックスよりも先に歩いて、インデックスの前に立つ。
 それと同時にインデックスは驚きながらも足を止めた。上条も足を止めて、アリサを見る。
 アリサは優しい微笑みを浮かべて、インデックスの頭と頬に手を添えて、頬を撫でた。


 アリサ「でも・・・悲しく全然ないんだよ?施設の人達は優しくて友達とも仲良しだし、何より・・・当麻くんと出会えたから」


 インデックス「・・・そっか・・・それなら安心だね」

 
 アリサ「うん」 

 
 アリサとインデックスはお互いに見つめ合って安心したように笑い合うと、突然アリサは体が浮遊する感覚に襲われる。


 アリサ「きゃっ!?」


 上条「俺もっ、嬉しいぞ!アリサ!」


 アリサ「わわっ!?ちょ、ちょっと!当麻く~~ん!」


 上条はアリサをお姫様抱っこしたまま我が家へ走って行った。その後ろ姿を見て、インデックスは微笑ましく思い見つめたまま見送った。


 インデックス「・・・って置いてかないでほしいんだよ~~!」


 
 
 深夜2時第五学区の建物の間で激しい銃撃戦が勃発していた。

 100式短機関銃が火を噴き、建物の外壁に弾丸を正に蜂の巣のように撃ち込んで、削っていく。建物の影に隠れている紅い眼の少年はその異形の右腕に左手を添えて、銃撃が収まる僅かな隙を突き銃口から44マグナム弾を身を隠しながら撃つ。
 精密射撃が出来ない分、デタラメに弾丸は放たれて撃ってくる相手に数弾しか命中する。だがその汚れた焦げ茶色の装甲にはまるで効果がない。

 
 「ちッ・・・もう少し太ッとい弾にしとけきャあよかったか」


 「対象者、超能力者(レベル5)順位、第一位と認定。排除します」


 一方通行「くそッタレ!」
 


 7月24日午前12時。ついにインデックスを苦しませている魔術的な時限装置の解決策を見つけるための検査の日がやってきた。
 上条は神裂に電話を入れてステイルと共に一度学生寮へ来て貰い、5人で病院へ向かっていた。

 
 
 インデックス「き、緊張してきたんだよぉ・・・」



 上条「心配することないさ、インデックス。注射も打つことはないし、薬も飲まない・・・薬はどうだろうか」


 インデックスは初めて行く病院に緊張してかカチコチの動きでアリサに手を引かれている。
 緊張度は凄まじく、インデックスは昼食が通らなかった程だ。が、それを聞いて神裂とステイルが軽く放心し、インデックスが「何かわかんないけど失礼なんだよ!」と膨れっ面になってやけ食いしたのは言うまでも無い。
 だが、緊張しているのは変わりなく、初めて行く病院と言う事もあるが、付け加えて朝一で上条に先生と名乗られた男性からの電話で、今日の昼頃に来て欲しいと伝言があったのだがその先生は「幻想御手」の件で来れないと言う状況になり代わりの医者に診てもらうことになったので上条もどんな医者なのか検討がつかず、魔術のことをどう隠しながら診てもらうか考えていた。


 上条「ま、先生が紹介した人だ。腕の立つ先生だろう」


 ステイル「余程信頼してるようだね」

 
 上条「ああ。なんたってその先生が、俺がこの間話した医者なんだからな」


 神裂「そ、そうなんですか?」


 上条「ああ」
 



 公園内の木々からチャックが突如として現れてスライダーが務歯を開けながら下に降りていく。そして中から誰かが出てきた。
 言わずとわかるとおり「別世界の上条当麻」が「上条当麻の世界」にやってきたのだ。
 もさっりと量が上条よりも多く、ツンツンしてるのは変わりないが毛先が跳ねているのが特徴的だった。年齢は二十歳前半の青年に見える。
 黒い肩までの革ジャンに白いシャツを着用して白いズボンを履いており、柔道着を綺麗に四角形に畳んで結んでいる黒帯を持って肩に担いでいる。


 「久しぶりにこっちの世界に来たな・・・上条君とアリサさんは元気かな」


 青年は微笑みを浮かべながら木々の間を抜けて公園内に出ると、出口を探そうと歩き始めた。
 数分してかなりの距離からだが、公園の出口を見つけて向かおうとしたとき横から少女達がはしゃぐ声が聞こえた。その方を見ると、二人の少女が掃除ロボットと三本の空き缶を宙に浮かばせており、それを見て歓喜の声をあげる髪をツインテールにしている少女がいた。
 少し離れて携帯の画面を見つめている黒髪に白い花のヘアピンを付けている少女も居る。


 「うんうん、鍛錬するのは良いことだ」


 青年は能力を上手く扱えるようにするための練習をしてるのだと思い、関心しながら踵を返して出口へ向かおうとする。
 だが再び歩き出そうとしたとき、ドサッと音がした後にガシャーンッと何か機械が落ちて壊れる大きな音が耳穴を貫く。


 「!?」


 「アケミ!?」

 
 青年は後ろを振り向いて、先程まで楽しげに掃除ロボットを浮遊させていた少女が倒れてるのが目に入った。倒れたアケミと呼ばれる少女に二人の少女が駆け寄って、安否を心配している。
 青年は急いでその場へ向かった。


 「大丈夫ですか!?」


 「あ、こ、この間の・・・」


 「え?・・・いえ、多分別人ですよ。それよりも」


 青年が駆け寄ってくると、髪留めで七三分けにしている少女が自分のことを知っているのに青年は驚きの声を出す。少し考えて自分が知っている人物ではないことを告げて、倒れているアケミを仰向けにさせる。
 アケミは目を瞑ったまま眠っているかのように動かない。


 大丈夫ですか?大丈夫ですか?」


 肩を軽く叩きながら大きな声で呼びかけ、それに反応するか確かめる。だが、反応がない。
 次に胸部と腹部が上下しているのを見て呼吸は出来ているを確認する。手首に指を当てて脈拍を測る。脈を打って皮膚を押し上げる感触が指先に伝わってきた。


 「・・・大丈夫、呼吸はしていて脈は正常だ。急いで病院へ搬送しよう」
 

 「は、はい!電話を・・・」


 髪留めで七三分けにしている少女はポケットから携帯を取り出して119と数字を押す。その間に青年はアケミの首と膝裏の委中に手を回して抱き上げる。


 「日陰に移動してそこで寝かせよう。熱中症の可能性もあり得るから、何か冷たいものを持ってきてくれるかな?」


 「わ、わかりました!」


 青年の指示に従ってツインテールの少女は走り出した。木陰が掛かっている木の傍まで移動して、アケミをゆっくりと降ろし寝かせる。
 アケミは以前変わりなく寝ている様に意識を失っている。


 「(外傷はなし、鼾はかいていない所を見ると・・・やはり考えられるのは熱中症か、あるいは心筋梗塞・・・)」


 「あ、あの!アケミは・・・アケミは大丈夫なんですか!?」


 アケミの症状を見ながら意識不明になったと考えられる例を考えていると、黒髪の少女が駆け寄って涙目になりながら青年に問いかける。
 青年はなるべく黒髪の少女を落ち着かせるように微笑みを浮かべながら答える。


 「落ち着いて。自分は医者ではないから何とも言えないけど、呼吸は安定して脈もあるから今のところは大丈夫だ」


 「アケミ・・・ごめん・・・私のせいで・・・」


 「(ん・・・?)」


 青年は俯いたまま、涙声で謝りながらアケミの頭を撫でる黒髪の少女の呟きに、何か引っかかるような気がして問いかけようとする。
 だが、救急車を手配した少女の声によって遮られた。
 


 その頃上条達は病院へ着いていた。見上げるほどのかなり大きな病院だった。
 自動ドアを通って窓口で予約していたことを告げ、上条が財布からカードを取り出してそれを見せる。受付の女性はそれを見て、確認を取る為に誰かに電話を入れた。
 数分して確認が取れたようでカードを上条に返すと、診察室が5階にあることを教える。上条は軽く会釈をして、5階に行くことを4人に言った。
 エレベーターに乗って5階まで上がり、5階まで着くとエレベーターを降りてすぐ右側の廊下を歩く。
 しばらく廊下を歩いているとガラス張りになっている壁があって、そこを上条は何気なしに顔を横に向けて見た。




 一方通行「ん~んん~ん~・・・」


 そこで見たのは白い肌の上にさらに白衣を纏った一方通行が無表情で柔らかな布に包まれた赤子を抱きかかえて鼻歌を歌っているのが見えた。
 上条は思わず二度見して足を止める。


 インデックス「あわわわっ!?」

 
 アリサ「きゃっ!?」


 神裂「ひゃあっ!?」


 ステイル「おっと!?」


 突然止まっ上条に後ろを歩いていたインデックスは慌てて止まろうとするが、その後ろを付いていたアリサ、神裂、ステイルが止まっているのに気付かず、順番に押してきてインデックスは上条の背中に顔面をぶつける。
 しかし上条は銅像のように微動だにしなかった。インデックスはぶつかった鼻を中心に顔を赤くして涙目になりながら鼻を擦る。


 インデックス「と、とうまぁ~。急に止まらないでほしんだよぉ~」


 上条「あ、わ、悪い!いや、あれ・・・」


 上条は振り返って、インデックスの頭を撫でて苦笑いを浮かべながら謝る。頭を撫でていない方の手でガラスの向こうを指す。
 4人はその指先の方向を見て、先程の上条と同じように固まった。
 白衣を着ている一方通行は上条達が見ているのにも気付いていないようで体を左右にゆったりと揺らして赤子をあやしている。
 

 「あ、どうかしたんですか?」


 上条「あ、い、いや、その・・・この子の診察室がここらしいんですが、どこでしょうか?」

 
 「こちらですよ」


 後ろから声を掛けてきた看護婦に反応しない4人の代わりに上条が気付いて、診察室がどこにあるのか聞く。
 看護婦は手を前に差し出して先に上条の前を歩いて行く。上条は固まっている4人に声を掛けて、ハッと我に返らせる。

 
 
 

 「先生、診察お願いしまーす」

 
 一方通行「あァ、もう少しまってくれ」

 
 一面清潔な真っ白い診察室へ入って、インデックスを椅子に座らせると看護婦はガラス張りになっていた廊下側の壁にあるドアを開けて一方通行を呼ぶ。
 一方通行は看護婦を見てから返事し、それを聞いて看護婦は会釈をしてドアをゆっくりと閉める。


 「すみませんね、先生じゃないと中々寝てくれない赤ちゃんがいるの」 


 上条「そ、そうなんですか?」

 
 
 「先生の腕は「天使の寝床」(エンジェルベッド)なのよ」



 神裂「天使の寝床・・・?」


 「先生に抱っこされたどんなに機嫌が悪かったりする赤ちゃんでも寝かせることができるのよ」


 上条「は、はぁ・・・」

 
 上条、神裂、ステイルは同時に思った「あんな細い腕でか・・・」と
 そう思っている間に一方通行が診察室に入ってきた。

 
 
 一方通行「よォ。来てくれたか」



 上条「ああ。まさか先生の紹介してくれた人が、一方通行だったとはな」


 一方通行「あの人には、色々と世話になってるからな。さてと・・・まずは基本的なのからやるか」


 そう言うと一方通行は机に置いてある銀色の舌圧子を取り出して小型のライトも手にする。

 
 
 一方通行「口開けろ」



 一方通行に言われてインデックスは口を大きく開ける。一方通行は舌圧子を差し込んで軽く舌を押して喉の奥が見えるようにする。
 そしてライトで口内を照らし、目を細めて何か異物かないかを確かめる。すると細めていた目を戻して何かを見つけた。


 一方通行「・・・なるほど。これはイタズラにしちャあよく出来てンなぁ」


 神裂「何かあったのですか?」


 一方通行「あァ。俺じゃァわからねェから、レントゲン写真を撮るぞ」


 「・・・」

 
 「どうぞ」


 「あ・・・あ、ありがとうございます・・・」


 黒髪の少女に別世界からきた青年は缶ジュースを差し出して渡すと、少女が座っている道端に設置されたベンチの隣に座わった。
 黒髪の少女の友達である他の二人の少女は、意識不明になったアケミを病院へ搬送していった救急車へ同行してこの場には居ない。青年が同行しなかった理由を黒い髪の少女に聞くと、俯いたまま「合わせる顔がない・・・」と答えた。
 黒髪の少女は青年から受け取った缶ジュースのプルタブを爪に引っ掛けて開けると、飲み口を口に付けて一口飲む。冷えた炭酸が喉を刺激して食道を通っていく感覚で、少し落ち着いたようで缶ジュースを口から離すと一息つく。それを見て青年は安堵したように微笑んだ。

 
 沖上条「自分は沖上条当麻。君は?」
 

 佐天「さ、佐天、涙子です・・・」


 沖上条「佐天さん、さっき君は自分でのせい、と言っていた気がするんだが・・・」


 少し前に公園でアケミを心配しながら呟いた佐天の呟きを思い出しながら問いかける。それに佐天は目を細め、目尻に涙を溜めて俯く。
 沖上条はその様子を見て「言いたくなかったら、いいよ」と言おうとしたが佐天は目尻の涙を拭いて顔を上げた。

 
 佐天「実は・・・」


 佐天は沖上条に自分と友達3人で偶然彼女が手に入れた「幻想御手」を使用していたことを話した。「幻想御手」を友達であるアケミ達が欲がっていて、幻想御手」を使ってしまったらアケミのように倒れるとは知らずに試しに全員で使用したのだ。
 それを佐天は、本当は自分自身だけで使うのが怖くてアケミ達を巻き込んでしまったと思っているのだ。
 

 佐天「私・・・何の力も無い自分がいやで・・・でも、どうしても、憧れを捨てられなくて・・・」


 沖上条「・・・」


 佐天は俯いたまま沖上条に顔を見せないように語り、スカートの裾をギュッと強く掴んだ。頭の中で幼き自分が故郷にある公園でブランコに座りながら、母と向き合ってお守りを貰った場面が鮮明に蘇る。佐天は小さく何かを呟いた。
 その声は普通なら近くでもわからないくらいに小さいものだったが、沖上条にははっきり「ママ」と幼い子供が母を呼ぶ声に聞こえた。

 
 
 佐天「無能力者(レベル0)って・・・欠陥品なのかな・・・それがズルして、力を手にしようとしたから、罰が当たったのかな・・・」


 
 佐天「危ない物に手を出して、周りを巻き込んで・・・私っ・・・っ!」


 沖上条は佐天の顔を見なくても、泣いているのがわかった。


 沖上条「確かにズルして力を手にしようとした事はいけないことだと思う。けどね、欠陥品だと思っていることが一番いけないことだよ」


 佐天「え・・・」


 佐天は顔を上げて涙を流しながら沖上条を見た。沖上条は真剣な眼差しで佐天を見つめ、優しく微笑んでいた。


 沖上条「それは自分自身を認めていないと言うことになる。君は言ってたじゃないか、憧れを捨てられなかったと」


 沖上条「ズルしたのはちょっと疲れただけだよ。少し休んで・・・もう一度、自分自身と向き合ってぶつかるんだ。たとえ何度も倒されて倒されても」


 沖上条「友達を傷つけたのを認めて、自分を誤魔化さなかったのはとても立派だよ」


 沖上条は佐天を褒めて、頭を優しく撫でる。撫でられている佐天は嫌そうにもくすぐったそうにもせず、ただ沖上条を見つめていた。


 沖上条「人間がタフだから負けたと思うまで人間は負けない。夢を果たすまで一歩も退いちゃダメなんだ」


 沖上条「君は能力者である前に、一人の人間として生まれたのだから」


 佐天「・・・」

 
 沖上条の言葉を聞いて、佐天は前を向いて缶ジュースを見つめる。沖上条も前を向いて佐天の返事を待つ。

 沈黙が流れて沖上条が佐天の方を見た途端だった。佐天は沖上条の方へ身体を斜めに倒してきて、沖上条は咄嗟に佐天の肩を掴んで支える。  
 佐天の持っていた缶ジュースが地面に落ちて残っていた中の液体が泡を立てながら熱せられた地面に染み込んでいく。 

 
 沖上条「佐天さん!?」


 佐天「・・・あり、がとう、ございます・・・沖上・・・さん・・・」


 沖上条「佐天さん!」

 
 沖上条の呼びかけに佐天は途切れ途切れに答えて、意識を失った。沖上条は必死に呼びかけるが応えなかった。  




 X線撮影を終えて上条達は診察室へ戻った。あれから1時間が過ぎていた。
 理由はインデックスが怖さのあまり何度もMRI装置を潜ぐる途中で、緊急停止ボタンを押してしまいそれで時間が掛かってしまったのだ。


 インデックス「もうやりたくないんだよ・・・」


 ステイル「よく頑張ったよ、インデックス」


 神裂「あんな恐ろしい音を立てて大口を開けている怪物の中に入っていくなんて・・・」


 科学サイドの上条とアリサは大袈裟というか科学に理解できてない3人に苦笑いを浮かべた。
 その時扉が開いて一方通行が茶封筒を持って入ってきた。
 

 一方通行「おい、これを見てくれ」


 一方通行は茶封筒からレントゲン写真を取り出してシャウカステンの金具に差し込んで上条達に見せる。
 そのレントゲン写真には上半身の肩から頭までが写っており、骨が透けて喉の奥辺りに淡く不気味に光っている数字の「2」と「4」が合わさったような文字が刻み込まれているのがはっきりと見えた。
 それを見た魔術師、ステイルは不快そうな表情を浮かべる。


 神裂「これは・・・」


 ステイル「間違いない。ルーンだ」


 神裂は目を見開いて驚くとステイルを見る。ステイルは頷いてそれがインデックスを苦しめている原因だと確信した。
 上条も目を鋭くさせて、そのルーンを憎むように睨らんだ。


 一方通行「さて・・・こっから先は俺の専門外だ。どうすンだ?」


 一方通行は机の引き出しから缶コーヒーを取り出して、プルタブを開けながら問いかける。


 上条「一方通行、俺の右腕の事は聞いたか?」


 一方通行「あァ、あれか。最上階に用意してあるって言ってたぞ」


 一方通行は一口コーヒーを飲んで、机の上に置くとポケットから既に開封している封筒の中に入っている一枚の紙を取り出してそれを見せる。
 それが先生と呼ばれる医者の許可証か何かなのだろう。


 上条「それを使ってそれをぶっ壊すんだ」


 一方通行「よし、ンじゃあ行くか」

 
 そう言って一方通行が立ち上がった時だった。勢いよく診察室の引き戸が開けられる。


 「一方通行!」


 一方通行「どうしたンだァ?天井くゥン?」


 天井「大変なんだ!患者が立て続けに来て人手が足りないんだ!」


 天井と呼ばれる髪の毛先がウェーブになって、一方通行と同じように白衣を纏っている男が汗だくになりながら事情を説明した。
 一方通行は眉間に皺を寄せて不機嫌そうに置いていた缶コーヒーを手にとって飲もうとする。
 

 一方通行「あァ~?何人搬送されてンだよ?」


 天井「約40000人」


 一方通行はその人数を聞いて見事なまでのコーヒーの霧を吹く。インデックスとアリサは思わず拍手をした。
 咳き込みながら胸板を強く叩いて食道に引っかかった感覚を無くそうとしながら天井に近付き、胸倉を掴む。天井は軽く宙に浮かんで、胸倉を掴んでいる一方通行の手首を握る。


 一方通行「待て待て待てェ!なンでそンなにまで入れンだよ!?別のとこに搬送するって考えはねェのかァ!?」


 天井「い、いや、それが他の病院も満員なんだ!なんせ、総人数で1万人も倒れたって・・・それも全員、無能力者(レベル0)みたいなんだ」


 一方通行「あァン?」


 一方通行はそれを聞いてこれは尋常ではない事だと思いパッと掴んでいた天井の胸倉を離す。天井は足に力を入れる前に床に落ちて座り込む。
 上条もそれを聞いて何か悪いことが起こっていると即座に判断する。
 顎に手を添えて一方通行は数秒考える。


 一方通行「・・・悪いが、今こっちも手一杯なンだ。これが終わったらすぐに行くからよ、それまで芳川に頼ンでくれ」


 天井「いや、芳川は有休で居ないぞ」


 一方通行「今すぐ迎えに行くなり電話するなり呼べェエエエエッ!!」


 一方通行は野獣が口を大きく開けて歯を見せながら威嚇するように天井に言って、缶コーヒーを握り潰す。握り潰された缶からコーヒーが床にぶちまけられて床を焦げ茶色に汚す。
 骨張った細い手にしてはすごい握力だと神裂は思った。天井は悲鳴を上げながら慌てて診察室から出て行った。


 一方通行「ったくよォ・・・。そンじゃまァ、行くかァ」


 上条「いいのか?何か尋常じゃない様な気がするんだが・・・」


 一方通行「だから早く終わらせるンだろォ」


 一方通行に連れられて上条達が5階まで上がる際に使用したエレベーターに乗って最上階へ向かうことにした。
 エレベーターの前に着くと一方通行は上へ向かうボタンを押す。ボタンが軽く音を立てて淡くオレンジ色に光る。
 数分して扉の右上にあるエレベーターが着いたのを知らせる為のランプが光った。
 扉が開いて一方通行が先に乗ろうとしたが、中に誰かが入っていたのに気づき足を止めた。


 「・・・どうも、How are you?一方通行先生」


 エレベーターから降りてきたのは天井に似たようなウェーブのかかった髪とギョロ目が特徴的で、制服の上から白衣を着用している少女だった。
 そのギョロ目で一方通行を見ながら話しかけてきた。その目を見てアリサとインデックスは少し怯えてそれぞれ上条とステイルの服の裾を掴んだ。
 

 一方通行「・・・あァ、別に問題なねェ。お前はどォだ?布束」


 布束「貴方と同じ。well あの件については大いに問題あるけれど」


 一方通行「そうかィ。これからどっか行くのかァ?」

  
 布束「あら、聞いてないのかしら?急患が大勢搬送されて来ているのに」


 一方通行「あァ、その件は天井から聞いた。後で俺も行ってやるよ」


 布束「そう roger。私は自室で調べているから」


 一方通行「good Lac」


 一方通行と話を終えると布束は一方通行の横を通ってステイルと神裂の間を抜けると、そのまま廊下を歩いて行った。  
 ステイルは布束を見ながら一方通行と話している時に思ったことを言った。
 

 ステイル「彼女、随分と変わった英語の使うね」


 一方通行「気にしないでやってくれ、あァ言う奴なンだよ」


 そう言うと一方通行は先にエレベーターに乗って「開」のボタンを押したまま5人が乗れるようにする。アリサとインデックス、ステイル、神裂が乗って最後に上条が乗ったところでビーッとブザーが鳴った


 上条「やっぱりか、先に行っててくれ。階段で上る」


 一方通行「あァ。最上階まで8階あるからな」


 アリサ「が、頑張ってね」


 アリサの小さな声援に上条が微笑むと、エレベーターの扉は閉まる。上条はエレベーターの隣にある階段の入り口に入っていき、階段を上ろうとした。


 『・・・上条君、聞こえるか?』


 上条「っ!?・・・沖上さん?」


 突然上条の脳内に沖上条の声が聞こえてきた。改造人間である上条は脳波通信によって電話を繋げなくとも遠くに離れた仲間との会話が可能なのだ。

 
 沖上条『ああ、少し前にこっちに来たんだが、今大変なことになってるんだ』 


 上条「それって意識不明の人達のことですか?」


 沖上条『そうだ。俺がこっちに来たときに出た場所が公園で、その公園で能力を使って遊んでた女の子が倒れたんだ。その後に、その子の友達の女の子もだ・・・。これは何かあるに違いない』


 上条はやはり何か学園都市で起こっているのだと改めてわかってすぐに行こうとした。だがインデックスのことをすぐに思い出して、どうするか自分自身に問いかけ考える。
 上条は一度脳波通信を切り、ポケットから携帯を取り出してアリサに電話を繋げた。

 
 アリサ『当麻くん?どうしたの?』


 上条「アリサ・・・悪い、さっき急用ができたんだ」


 アリサ『え?』


 上条「だからインデックス達と一緒に居られなくなったから、謝っておいてくれないか?・・・もし早く済んだら戻るから、さ」


 上条は苦渋の決断を下して、アリサに一緒に付き添えなくなることを伝えた。アリサは考えているのか、無言でいて上条は怒られるのを覚悟して、応えるまで待った。
 そして数分してアリサから返答が返った。


 アリサ『・・・うん、わかった。気をつけてね』


 上条「ありがとう、アリサ」

 
 上条は微笑みながらアリサにお礼を言って電話を切る。脳波通信を再び繋げて、沖上条に話しかける。


 上条「・・・沖上さんは今どこに居るんですか?」


 沖上条『第七学区の病院の前だ』


 上条「え?俺、今そこに居ますよ」


 沖上条は「え?」と拍子抜けた様に応えた。 




 上条「久しぶりですね、沖上さん!」


 沖上条「ああ。久しぶりだね」


 病院内のベンチに座っていた沖上条を見つけて上条は駆け寄る。沖上条も上条を見つけると立ち上がって微笑んだ。
 上条が近くまで来ると沖上条は手を差し出して、握手を求める。上条は力強く握手をして、再会したことを心底喜んでいる様に見えた。


 上条「実は俺、心当たりがあるんです」


 沖上条「奇遇だな、俺もあるんだ」


 上条・沖上条「「幻想御手」」


 沖上条も握手をしていた手を離すと、優しい微笑みから真剣な眼差しに変えて上条と同時に応える。お互い一致したのに微笑んで頷いた。


 上条「間違いありませんね・・・ただ、それだけじゃ情報が足りない・・・」


 沖上条「上条君はどこで「幻想御手」を知ったんだい?」


 上条「俺の知人のお医者さんが調べてて、昨日教えてくれたんです」


 沖上条「その人なら何か知ってるんじゃないのかな?」


 上条「いや、そうかもしれませんが・・・生憎今日は話せないみたいなんだ」


 沖上条「そうか・・・参ったな・・・」


 二人が俯きながらため息を同時についた時だった。脳内に誰かが話しかけてくるのが聞こえて、顔を上げその声を聞こうと意識を集中させる。


 『・・・当麻お兄ちゃん、聞こえる?』


 上条「筑上か?」


 その幼い少年の声は筑上条だった。上条はすぐに気付いて名前を呼ぶと、沖上条は嬉しそうにした。


 沖上条「筑上君、久しぶりだね」


 筑上条『あれ?沖上さん?沖上さんも来てるの?』


 沖上条「ああ。筑上君もこっちに来たんだね」


 筑上条『うん。この間も来たんだけどね、やっぱりインデックスちゃんの事が気になって・・・』


 筑上条がインデックスを心配してくれているのを聞いて上条は微笑んだ。


 上条「筑上・・・ありがとう。ところで今お前どこに居るんだ?」


 筑上条『それがね、学園都市の外にある高速道路なの』


 上条・沖上条「「何でそんなところに!?」」


 上条と沖上条は驚きのあまり大声を出してしまい、周囲の視線を浴びる。それに二人は平謝りをしながら周囲からの視線を外していく。
 周囲からの逃れて二人は少し人気の少ない病院の後ろまで移動する。

 
 上条「そ、それで何でそんなところに?」


 筑上条『わかんないよぉ~。だから迎えに来て貰おうかなぁって脳波通信してるんだよ?』


 上条「あぁ・・・わかった。すぐに迎えに行くよ」


 筑上条『ありが・・・ん?うわぁあああっ!?』


 筑上条がお礼を言おうすると、少し間を開けて何か疑問に思ったような声を上げて次の瞬間、筑上条の叫びが二人の脳に響く。
 それに二人は驚きながらも筑上条に何かあったのか安否を気遣う。


 上条「どうした!?」


 筑上条『じ、地震地震!すごい揺れた!』


 筑上条が慌てながら地震が起きたのを言うと、二人は今自分たちが居る場所では地震が起きていないことに疑問を抱きながら筑上条に返した。


 沖上条「地震・・・?こっちは何ともないよ?」


 筑上条『えぇ!?でもこっちはすごい揺れて・・・あっ、何か爆発した!』


 筑上条はこっちは揺れてるのにと驚いていると、何かが爆発したことを伝える。
 それを聞いて二人は顔を合わせる。


 沖上条「上条君」


 上条「はいっ」


 上条は頷くと脳波でハリケーンを呼ぶ。数秒で迷彩機能によって周りの景色に溶け込みながら走行していたハリケーンが迷彩機能を切って目の前に現れた。
 ハリケーンが現れて上条は乗る前に、一瞬にしてV3の姿に変わると仮面だけを被ってクラッシャーは付けずに腰に巻いてある「ダブルタイフーン」の左側にある筒状の物を取り出す。
 

 上条「V3ホッパー!」


 V3ホッパーとは「ダブルタイフーン」に装備されている偵察メカであり、打ち上げると500m上空から10km四方を偵察することができるのだ。
 上条はそれを叫びながら側面にあるボタンを押すと、中にあるV3ホッパーが射出されて羽を展開し、ヘリコプターの様に回転しながら説明した通り上空500mまで飛んでいく。
 500mまで上昇すると「V3ホッパー」は空中で停止し、内蔵されている小型カメラで学園都市の外の様子を偵察する。偵察された映像はV3の仮面の双眼の内側に映し出されて、上条はそれを見ながら何か起こっていないか調べる。
 すると南南西の学園都市に入るためのゲートから離れた高速道路が一部破損して煙を上げているのが見えた。


 上条「見つけた!行きましょう!」


 上条は変身を解くとV3のヘルメットではなく普通のヘルメットを被る。座席を開けて中に入っていたもう一つの予備のヘルメットを沖上条に渡す。
 沖上条はそれを被って上条が先にハリケーンの座席に座ると後部座席に乗る。
 上条はエンジンを掛けてアクセルを吹かせると、道路へ移動して筑上条が居る高速道路へ向かった。




 一方通行達は最上階へ着いていた。そこには天井は全面に板状のライトで照らされており、壁は一面ガラス張りの部屋になっている。
 ガラスの向こう側には様々な機械が置かれてあった。その中で、神裂とステイルはあるモノを見つけた。それは・・・


 神裂「あれが・・・上条当麻の・・・」

 
 一方通行「あァ。「右手」だ。ウチでは「幻想殺し」(イマジンブレイカー)って呼ンでるンだ」


 円筒状の頑丈そうな機械の蓋で閉められたケースの中に謎の液体に漬けられた右手が機械の横にある台の上に置かれていた。


 ステイル「「幻想殺し」ね・・・あれでインデックスを解放してくれるわけか」


 ステイルは「幻想殺し」を見てそう呟いた。
 インデックスは少し怖がっているのかアリサの手をギュッと握り後ろに隠れた。アリサは後ろを振り返って手を握り返しながらインデックスに「大丈夫だよ」と優しく微笑んだ。


 一方通行「よし。おい、ガキ。あそこの扉に入って着替えてこい」


 インデックス「むぅ、私はインデックスって言うんだよ!」


 一方通行「はいはィ。そンだけ元気があれば大丈夫か」


 一方通行は怪しく笑みを浮かべるが、彼としては普通に笑みを浮かべているのだ。インデックスは頬を膨らませたままアリサに手を引かれて扉へ向かった。

 
 筑上条は汗をかきながら爆発した地点に向かって走っていた。正義感が強い彼にとって、もしもあそこに誰かが居るのならば助けに行かなければならないと思っているのだ。
 地平線のように見える道路の向こうで煙が上がっているのが見えて、筑上条はもっと早く走ろうとしたが、耳を超音波のような高音が劈く。
 筑上条は何かが鳴いているように聞こえて不審に思いながらもう一度耳を澄ました時、突如として衝撃波が起こり筑上条は顔の前で両手を交差させ身構える。


 筑上条「ぐっ!?」


 筑上条の腕に小石のようなコンクリートの破片が飛び散ってくるが刺さりはしなかった。
 衝撃波が収まって筑上条は両手を降ろし、下で何か起ったのだと判断した。


 筑上条「急がないと!」


 筑上条「スカイ・・・!」


 筑上条は両手を拳にして脇を締め、正拳突きの様に腰に構えて右拳から前に突き出して次に素早く左拳を突き出し、掌を広げる。
 左掌を円を滑らかに描きながら回して、左斜め上に天に向けピタッと止める。


 筑上条「変身!!」


 腰に構えていた右拳を天に向けていた左手に向けて、真っ直ぐ一直線に突き上げ瞬時に左手を腰に構える。


 筑上条「トォッ!」


 筑上条が勢いよくその場で飛び立つように高くジャンプすると、腰にいつの間にか巻かれていたベルト「トルネード」の赤い風車が回転して、筑上条の肉体を変化させる。
 全体的にV3よりも黒が混ざっている深緑の身体に、焦げ茶色の盛り上がった胸筋と腹筋のようなアーマーが備えられており、深緑色の仮面の双眼は真っ赤でV3よりも少し垂れ目になっている。
 その名は飛行用改造人間プロトタイプ「スカイライダー」
 

 スカイライダー「セイリングジャンプッ!」


 スカイライダーは、ベルトの両脇に付いた「重力低減装置」のレバーを強く押し込む。すると首に巻かれている真紅のイナゴの羽に見える黒い斑点模様が描かれたマフラーが筑上条の身長よりも伸びて風に乗って宙を舞う。
 


 天井「くそぉ!一体何が起こってるんだ!?」

 
 天井はベッドの上で暴れている佐天を押さえ込みながら混乱のあまり叫ぶ。
 怪物が咆吼を上げると同時に、病院に搬送されてきた「幻想御手」を使用した患者の学生達が一斉に意識のないまま暴れ出したのだ。
 天井はペンライトの光を瞳孔に当て、対光反射の有無と速さを観察しようとするが佐天は苦しんでいるように暴れて調べることが出来ないでいた。動きを止めようにも固定具の数が病院にある全てを出しても足りず、自分自身で動きを止めようと必死に押さえ込むしかなかった。


 「天井先生!どうしたらいいんですか!?」


 天井「今考えてるところだ!」


 看護婦が自分と同じように押さえ込んで動きを止めようとしながら急かすように聞いてきて、天井はこめかみに汗を流しながら応える。
 だが天井自信も焦っており、押さえ込むのに気を取られて考えている暇が無い。
 そんな時、天井の携帯が鳴って、天井は患者を片手で押さえ込みながらもう片方の手で携帯を取り出す。
 携帯の画面には「布束砥信」と表示されていた。天井は何か策があるのかと布束に期待して、通話を繋げる。

 
 天井「どうした!?布束!?」
 

 布束『天井先生、right now テレビ画面を見てください』


 天井「はぁ!?今呑気にテレビ見てる暇は」


 期待していた言葉とは違う、予想外の言葉に天井は布束を怒ろうとしたが、言い返す前に病室の天井に端にあるテレビの画面が勝手についた。
 天井は無意識にテレビの画面がついた音を聞いて見てみると目を見開き、驚く。看護婦も患者を押さえるのを忘れて両手で口を覆って、驚きを隠せないでいた。
 テレビの画面に映し出されていたのは、白み掛かった半透明の体にまるで胎児のような姿をした生物だった。


 天井「何だ・・・あれは・・・!?」


 布束『衛星からの映像記録です。恐らく・・・No 確実にアレが原因でしょう』


 天井は驚愕のあまり目を見開いたまま手に握っている携帯を耳に当てずにいると、受話口から布束の声が漏れて聞こえた。


 一方通行「そンじゃ、始めるぞォ」


 マスクを付けた一方通行のくぐもった声が天井の照明によって白く見える手術室に響き、歯科で使われるような機械式の椅子に座らされているインデックスは固唾を飲む。
 手術室の窓越しに神裂、ステイル、アリサは心配そうにインデックスを見守っていた。
 一方通行はインデックスの口に麻酔用のマスクをかぶせた。サージョンコンソールの隣に設置された机状の真四角な操作機器のボタンを押すと透明なチューブを通って麻酔薬が導入される。
 サージョンコンソールとは医者が映像を見ながらロボットを動かす言わば指令席のような機械のことである。


 一方通行「大きく息を吸え、段々眠くなってくる」


 一方通行に言われた通りにインデックスは大きく息を吸い、はき出してまた吸い込む。
 数分経って、インデックスの目が虚ろになってきたところで一方通行は手を三回軽く叩いた。


 一方通行「今俺は何回手を叩いた?」


 インデックス「えと、3回・・・?」


 一方通行「正解だ。もう少し息を吸っててくれ」


 そうしてまた数分経つとインデックスは完全に眠りについて、寝息を立てている。
 一方通行はボタンをもう一度押して麻酔薬を止める。インデックスの口にかぶせていたマスクを外して、もう一度眠っているか耳元でフィンガースナップ(指ぱっちん)をする。
 そして眠っているのを確認するとゴム製の球体がついたレバーを横に倒すと、インデックスが座っている機械式の椅子も節を伸ばしながら倒れ始めて、ベッドに変形した。


 一方通行「よし・・・オペの開始だァ」


 一方通行は首の骨をポキポキと鳴らして深呼吸をする。サージョンコンソールの椅子に座って機械を動かし始める。
 機械の先には「幻想殺し」が接続されており、電流を流すことによって指先を動かせるようになっている。
 インデックスの顔の目の前まで機械は移動させ、「幻想殺し」が接続されている先端部の側面にある4本の丸い爪をインデックスの口に入れて大きく開かせる。
 機械に内蔵されたカメラ越しに、インデックスの喉の奥が見えるようになると、一方通行は「幻想殺し」を接続している部分を回転させ掌が上向きになるようにする。
 指を人差し指と中指を2本立てらせてコントローラーのレバーを巧みに動かしながら徐々に「幻想殺し」の指をインデックスの口の中へと侵入させていく。
 ステイルと神裂はその様子を瞬きも忘れて見続け、アリサは無事に成功することを祈って両手を組みながら見ている。
 「幻想殺し」の指が口内まで入ると、一方通行は一度止めてルーンを見定める。怪しく黒いオーラを放ちながら黒く光るルーンを睨んで一方通行はレバーを力一杯押す。
 そして・・・「幻想殺し」の指がインデックスの喉に刻まれたルーンに触れた。その時だ
 

 一方通行「っ!?」


 ビキッと何かに罅が入ったような音がした瞬間に、ルーンに触れた「幻想殺し」が接続してしる機械の装置ごと吹き飛ばされる。吹き飛ばされた機械は奥の壁まで破損しながら床を削って転がる。
 接続されていた「幻想殺し」の五本の指は噛まれたのか血が垂れている。
 ステイルと神裂、アリサは異変を感じて窓に手を付ける。


 ステイル「イン・・・デックス・・・!?」


 ステイルは信じられないような表情を浮かべて、窓越しにインデックスの姿を見る。
 黒いオーラを放ちながら椅子から身体を浮遊させて起こすと、2つの翡翠色の瞳に真っ赤に光る魔法陣を浮かび上がらせていた。

 
 『―警告!Index-Libroum-Prohibitorum――禁書目録の「首輪」第一から第三まで全結界の貫通を確認』

 
 『一0万三000冊の『書庫』保護のため 侵入者の迎撃を優先します』


 機械的な声でインデックス―――「禁書目録」は淡々と一方通行に何かを呟いた。


 一方通行「おィおィ・・・勘弁しれくれよなァ。この手術室、結構掛かるんだぞォ?」


 一方通行はマスク越しに薄く笑みを浮かべて軽口を叩きながら話しかけるが、「禁書目録」はそれを無視して続ける。


 禁書目録『―――警告 第三章 第三節 『首輪』の自己再生は不可能』


 禁書目録『対侵入者用の特定魔術『聖ジョージ聖域』を発動します』


 禁書目録の目の前に赤色の魔方陣が、端と端を重ね合わせるように現れる。
 重なり合った箇所で揺らめきながら空間に亀裂が入り、そこから覗き込む「何か」を見て、一方通行はマスクを外すとポケットに突っ込んで笑みを消す。
 ステイルは咄嗟に周囲の窓ガラスと床にカードをバラ撒く。それを見て、神裂は危険を察したと同時に「禁書目録」が空間の亀裂から直径数mもの光の柱を一方通行目掛けて放った。 


 神裂「アリサさん!」


 アリサ「キャッ!」


 ステイル「灰は灰に!塵は塵に!――吸血殺しの紅十字ッ!!」 


 光の柱が何かに命中して爆発が起り、手術室のガラスを一瞬にして粉砕する。神裂はアリサを飛び散るガラスの破片から守る為に覆い被さって、ステイルは魔術を唱えると真紅の赤い炎剣と青白い炎剣を手にし、二つの炎剣をクロスさせて、衝撃波と爆風を防ぐ。
 衝撃波は手術室のガラスだけでなく、廊下の窓ガラスをも割ってなおも一方通行に光の柱を放ち続ける。だが、その光の柱を横から見るように立っている人物にき付く。一方通行だ。
 少しして光の柱が細くなって消えると、「禁書目録」の向かい側の壁に丸を描いて巨大な穴を開けていた。 


 一方通行「ほォ・・・これが魔術ってやつかぁ?中々立派なもんだなァ」


 衝撃波によって割れた天井の照明の破片が、一方通行を中心に円を描いて飛び散っている。炎剣を消して、ステイルはどうやって避けたのかを考える前に一方通行に向かって叫んだ。


 ステイル「おい医者ッ!今すぐそこから離れるんだっ!」


 一方通行「あィよっ」


 一方通行は人外的な跳躍で手術室の割れたガラスがあった壁から抜け出す。ステイル達が居る廊下に、飛び散ったガラスの破片をパキッと踏みつけながら着地する。
 

 一方通行「あ~あァ~、一級品の防弾ガラスもこのザマとはァ・・・本格的にヤバイみてェだなァ」


 神裂「一方通行、アリサさんを避難させてください」


 アリサ「えっ!?で、でもっ、インデックスちゃんは・・・!?」


 神裂は一方通行に指示をしながら七天七刀を鞘から引き抜いて、ステイルは片手にカードを3枚持ち構える。


 ステイル「大丈夫だ、僕たちが・・・必ず救ってみせる」


 神裂「Salvare000・・・救われぬ者に救いの手を。それが私の誓いの言葉であり、教えです」


 アリサ「ステイル君、神裂さん・・・」


 一方通行「・・・後で弁償してもらうぞォ?」


 一方通行がアリサの肩に手を置くと、アリサはすぐに後ろを振り返る。


 一方通行「こっちだァ。来い」


 アリサ「は、はいっ!」


 一方通行はアリサを連れて、非常用のエレベーターのボタンを押すと扉を開かせて先にアリサを乗せ、次に自分が乗る。
 ステイルと神裂は二人を見届けて少し離れた場所に佇んでいる、「禁書目録」を見る。


 ステイル「神裂」


 神裂「ええ、わかっていますよ」


 禁書目録『―――警告 侵入者の破壊を確認できず 新たな敵兵を確認 戦闘思考の変更 戦場の検索を開始―――――』

 
 禁書目録『現状 「神裂火織」の破壊を最優先します』


 神裂「やはりですか」


 「禁書目録」は神裂を見据えて、新たな術式を構成しようとする。


 

 「何だよこりゃ!?」「知るかよ!」「生物兵器か!?」


 高速道路で突然現れた、半透明な白い身体をした生命体に第七三支部の「警備員」(アンチスキル)は戸惑い、動揺する。
 「警備員」の一人である鉄装綴里も銃を持ったまま謎の生命体に怯える。

 
 黄泉川「動ける者だけでもやるしかないじゃんよ!


 だが鉄装の先輩である隊長の黄泉川愛穂は動揺を見せず、銃を構えて指揮を執る。

 
 黄泉川「実弾の使用を許可する!撃てぇ!」


 黄泉川を始として「警備員」は銃を構えて謎の生命体に向かって発砲する。弾丸は生命体に命中して身体を貫くが、効果は全くない。それどころか当たった部分から再生しながら段々と肥大化していく。
 背中から生えている長い触手を使って謎の生命体は「警備員」を払い除ける。


 鉄装「なんか、大きくなってる・・・!?」


 鉄装の声は銃声によって掻き消され、誰の耳のも入らない。その後も銃撃を受けて謎の生命体は肥大化して巨大になっていく。
 触手で、攻撃をしてくる「警備員」を次々をなぎ倒していき、最後に残ったのは黄泉川と鉄装の二人だけとなってしまった。
 謎の生命体は高速道路の反対に向かって進んでいくのを見て黄泉川と鉄装は焦りを募らせる。

 
 黄泉川「このままだとやばいじゃん!鉄装!踏ん張るじゃんよ!」


 鉄装「は、はいっ!」


 黄泉川と鉄装は銃を構え直して謎の生命体に再び銃撃する。
 弾丸は巨大化した謎の生命体の背中に命中していくが効果は無く、振り向きざまに振るってきた触手が黄泉川を襲う。


 黄泉川「ぐあっ!」


 鉄装「隊長!」


 鉄装は突き飛ばされた黄泉川を心配するが、触手がウネウネと自分向かってきているのに気付く。


 鉄装「いや、来ないで!」


 鉄装は目を瞑りながら銃撃をする。触手は弾丸が当たって砕けながらも近付いて行く。
 引き金を引いても弾丸が放たれないのに鉄装は気付いて目を開ける。弾切れになっていた。
 先端が欠けた触手は鉄装に近付きながら再生していき、真っ赤な眼球と手を構成して鉄装の顔に触れようとする。


 鉄装「い、いやぁっ・・・!」


 「スカイチョップ!」


 掛け声とともに上空から緑色の影が降りたって、回転するとズバッ!と音を立て触手を切り裂く。
 切り裂かれた触手の眼球と手を構成している先端は地面に落ちる。


 鉄装「きゃっ!?」

 
 呆然として、鉄装は地面に落ちた触手を見ていると自分を抱きしめて、急に宙を浮く感覚に小さく悲鳴を上げる。
 鉄装は混乱してわけがわからなくなっていると、ふと顔を横に向けて仮面を被った深緑色のヒトが自分をお姫様抱っこをしているのだと理解した。
 

 スカイ「大丈夫ですか?」


 鉄装「えっ・・・?えっ・・・!?」


 鉄装は自分の安否を気遣う仮面のヒトに動揺を隠せず、声が途切れ途切れにしか出ない。


 スカイライダーは降下して着地すると、鉄装を道路の端に凭れさせるように座らせる。そこへ美琴がやってきた。
 美琴はスカイライダーの姿を見て目を丸くさせながら驚く。

 
 
 美琴「は、えっ!?だ、誰よ、アンタ!?」



 スカイ「ん?・・・あ、そっか。お姉ちゃんは知らないんだね。僕が何者なのか」


 美琴「は、はぁ?」 


 美琴はスカイライダーの言っている意味がわからないようで、首を傾げた。鉄装も同じように首を傾げている。


 スカイライダーは生命体が向かっている先にある、放射線汚染の可能性を促すための危険警告マークが貼られてある壁の向こう側の施設を、赤い双眼のサーモグラフィー機能を通して分析した。
 双眼の裏で数値やエネルギー量が横文字に並べられながら、自動計算され処理されていく。
 そして分析された結果、排熱量から原子だとわかり、筑上条は仮面の下で眉間に皺を寄せる。
 

 スカイ「僕のことよりもあの生き物が行ってる先、あれって原子力を扱ってる施設だよ」


 美琴に分析の結果を言うと、それを聞いて黄泉川が薄く笑みを浮かべ答える。

 
 黄泉川「へぇ・・・坊や、よく知ってるじゃん。その通りじゃんよ」


 美琴「えぇっ!?マジっ!?」


 スカイ「大マジ。早くあの生き物を止めないと・・・」

 
 その時、鉄装が欠けた道路の方で何かを見つけて叫ぶ。3人はつられてその方を見ると階段を上がっている初春の姿があった。

 
 黄泉川「あれは・・・木山の人質になっていた・・・!?くっ、この混乱で逃げ遅れてるじゃん・・・」


 スカイライダー「大変だっ!」


 美琴「違う。初春さんはもう人質でも逃げ遅れてるんじゃない・・・」


 スカイライダーは重力低減装置に手を掛けたとき、美琴は手首を曲げながら掌を開いたり閉じたりして反論する。3人は美琴を見ていると、美琴はスカイライダーを見る。


 美琴「アンタ、さっきこの人抱えて空飛べてたけど、結構力持ちだったりする?」


 スカイライダー「う、うん。70tくらいなら」


 美琴「・・・そう。お願いがあるの」


 スカイライダー「えっ?」
 

 上条と沖上条は高速道路を走行していると、巨大な生命体が触手を動かしながら移動しているのを目視で確認する。


 上条「何だ・・・あれはっ?」


 沖上条「上条君!」


 上条「はいっ!」


 上条はハンドルを捻り、エンジンを吹かしてハリケーンの速度を上げる。ハリケーンはカウルの前方に取り付けられた風車は、400キロを越えたことによって黄色に変化した。
 そして上条はその速度で、あろう事かハンドルから手を離しステップに立った。
 沖上条も後部座席の上に立つと、バランスを保ったまま両腕を左右斜めに伸ばして頭上で交差させると胸の前まで降ろし精神統一をする。


 上条「変身!Vスィイイッ!」


 上条は両腕を右に持って行き、弧を描きながら両手を左斜め上に伸ばして勢いよく右肘を曲げ、左腕を曲げながら即座に秘技腕を伸ばす。
 ダブルタイフーンの二つの風車が回転して上条の身体に深緑色のジャケットを身に身に纏わせ、赤い仮面を被らせクラッシャーを填め込ませている。


 沖上条「変身っ!」


 少し左肩寄りに右腕を構えて、肘に左手を当てる。その構えのまま腰を動かしながら右へ水平にスライドさせる。


 ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ


 上から下へ降ろしながら、両腕をへその位置で両手で何かを包み込んで守るように構える。

 両手を前にゆっくりと突き出し腕を伸ばしきると、反時計回りに腕を回転させた。

 腰に巻かれたサイクロードの黒く丸い蓋が開いて中の赤い風車が高速回転して虹色の光を放ち沖上条を包み込む。
 ハリケーンは崩れた道路に差し掛かったところで、ハンドルを握ると道路から飛び出した。


 V3「仮面ライダーV3!」


 S-1「仮面ライダースーパー1!」

 
 
 スズメバチを思わせるような鋭い赤い双眼をした仮面、黒い身体に鍛え抜かれたような銀色の胸板と腹筋を模した素材の装甲に、肩から腕に掛けて銀色のラインが入っている。

 銀の機械の腕にあるフリンジを靡かせて、惑星開発用改造人間ver80 S-1「スーパー1」がハリケーンから飛び上がってV3と共に大地に降り立つ。
 V3は脳波通信で筑上条に呼びかける。


 V3「筑上!居たら応答してくれ!」


 
 美琴は生命体を止めようと一人で止めようと戦いを挑んでいる。だが生命体は頭上に黄色の発光体を浮かばせ、それを爆発四散させる。
 美琴が反応する前に飛び散った光の破片は、初春が上っている階段に向かっていく。


 初春「はっ・・・!?」 

 
 初春は目の前で爆発が起る。かと思ったその矢先、緑色の閃光が現れて自分を軽々と持ち上げ、その場から飛び立った。
 階段があった場所は爆発し、階段の半分以上を粉砕して煙をあげる。
 

 スカイ「大丈夫ですか?初春さん」


 初春「ひぇあっ!?だ、だだだだ、誰ですかっ!?ど、どどどどうして、わっ、わっ、私の名前を!?」


 スカイ「お、落ち着いて。御坂さんに頼まれたんです。初春さんを上まで連れて行ってほしいって」


 初春「み、御坂さんが・・・?」


 スカイライダーの姿を見て慌てふためく初春を落ち着かせていると脳内にV3の声が響く。


 V3『筑上!居たら応答してくれ!』


 スカイ『あっ、当麻兄ちゃん!ナイスタイミング!』


 S-1『今君はどこに居るんだい?』


 スカイ『・・・あ、すぐ後ろ。飛んでるよ』


 スカイライダーは初春をしっかりと抱きかかえたまま少し上昇して辺りを見渡し、二つの異形の影を見つける。
 V3とスーパー1は後ろを振り返って上を向くと、小さな影になっているスカイライダーを見つける。

 
 
 スカイ『V3、スーパー1。僕はこの人を運ぶから、あの生き物の所に行った御坂さんを助けに行ってあげて!』



 V3『御坂・・・御坂美琴が居るのか・・・?』

 
 スカイライダーは変身している二人の呼び名を変えて自分がすべき事と、御坂が生命体のところへ行ったことを二人に知らせる。
 V3は御坂の名前を聞いて少し不穏な雰囲気を漂わせるようにスカイライダーに問いかける。


 スカイ『うん。ってあれ?知り合いだったの?」


 V3『あ、あぁ。まぁな・・・。よしっ。筑上、その子を頼んだぞっ!』


 スカイ『うんっ!』


 スカイライダーはV3に答えると道路へ降下していく。V3とスーパー1はスカイライダーの姿を見えなくなると、生命体の方を見る。
 生命体は美琴に攻撃されたせいか頭部と腕の皮膚が抉られて赤黒い細胞を覗かせている。


 V3「S-1」


 S-1「うんっ」


 S-1「トオ!!」 V3「トゥッ!」


 V3とスーパー1はお互いに頷き合うと同時に飛び上がる。

 [BGM  Ride A Firstway  RIDER CHIPS]
 https://www.youtube.com/watch?v=Wvn-H9Hb3As

 
 S-1「スーパーライダ―――!旋風キ―――ック!!」


 スーパー1はV3よりも高く飛翔した。重力コントロールにより自分自身の重量を軽減させて、地球の引力を無視した飛躍ができるのだ。 
 空中で4つの拳法の構えを鮮やかに決め、両腕を左右斜めに伸ばし重力コントロールで自身の重力を通常の倍以上に増加させる。
 それによって矢のように、加速して飛んで行く先目掛け一直線に生命体の身体を己自身で貫く。


 S-1「どうだっ!?」


 S-1は地面に着地する寸前に重力コントロールを使って再び自身の重力を軽減させてから舞うように着地する。 
 振り返って生命体を見ると、貫かれた箇所には大きな風穴が空いており悲鳴を上げている。だが頭部と腕の皮膚が再生していくと同じように、スーパー1に貫かれた穴も巻き戻されるように細胞が再生する。

 
 
 S-1「なっ・・・!?」



 美琴「ちょ、ま、また出たぁ!?」


 スーパー1は再生していく生命体の身体を見て驚愕していると、隣に立っていた自分の姿を見て驚く美琴に気付く。


 S-1「っ!・・・美琴君・・・」


 美琴「えっ、ア、アンタ、何で私の名前・・・」


 S-1「あっ・・・さっき仲間から聞いたんです。御坂さんを助けてあげて、と」

 
 S-1は若干焦りつつもスカイライダーに言われたことを御坂に教えると、それに美琴はわざとらしくため息をつく。


 美琴「はぁ・・・どうして超能力者(レベル5)のこの御坂美琴が心配されるのかしらね・・・」


 S-1「決まってるじゃないか。可憐な女の子を助けないわけないからだ」


 美琴「か、可憐って・・・」


 美琴は可憐という言葉に頬を赤く染めていると、V3も着地してきた。
 追撃をしようとしていたが、身体が再生したのを見て一度別の場所に着地し、もう一度飛翔して二人の所へ来たのだ。美琴はV3を見てギョッと目を見開くが、3回目となるとそこまでは驚かなかった。


 V3「のんびり話してる場合じゃないみたいだぞ。かなり怒ってる」


 S-1「あの再生能力では、いくら攻撃しても無意味だ」


 美琴「だから、私の友達が打開策を作ってくれてるのよ。それまで囮になって時間稼ぎをしないと」


 V3「そうか。この後ろは原子力実験所だ。絶対に通させはしないっ」


 美琴「ええ、わかってるわよ!」


 S-1「行くぞっ!」


 V3は生命体を双眼で睨みつけ、右腕を立てて2本の指を軽く曲げながらVの字にし、肘に左手の3本の指を添える。美琴は握り拳をつくり、バチバチッと電気を纏わせる。
 スーパー1の掛け声と共に3人は生命体に向かって走り出す。
 

 
 神裂は最前線で「禁書目録」の攻撃をかわしながら魔法陣を七天七刀で破壊しようとする。
 だが魔法陣を壊そうとする直前に「竜王の殺息」によって壊された天井の照明や壁の破片が無数の『光の羽』と化して神裂に舞い落ちてくる。


 神裂「くっ!!」


 神裂は「禁書目録」から後退して七天七刀で『光の羽』を切り裂く。それを繰り返すばかりで魔法陣を破壊することができない。


 禁書目録『―――警告 『聖ジョージの聖域』が侵入者に対して効果は無し 新たな術式に変更 侵入者を破壊します』


 ステイル「まさか、彼女の魔術はこれほどまで強力だとはっ・・・!」


 ステイルはイノケンティウスの力を最大限まで引き上げようとカードを周囲に出来るだけ多くバラ撒く。
 神裂は七天七刀を構えながらステイルに叫ぶ

 
 神裂「彼の右手を手に入れれば、勝機はあります!」


 ステイル「わかっているよ!」


 神裂は上条の右手「幻想殺し」を使い「禁書目録」の魔術陣を破壊しようと考えているのだが、「禁書目録」の背後にある為通り抜けようにも「竜王の殺息」と『光の羽』によって道を阻まれ、「幻想殺し」に近付くことができないのだ。
 ステイルは持っている半数以上のカードを周囲に張り終えて唱える。


 ステイル「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ。それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり

 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、その役は剣。顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ!」

  
 カードから炎が吹き上がり、上条と交戦した時よりも数倍巨大なイノケンティウスが出現する。

 
 ステイル「魔法陣を破壊しろっ!イノケンティウスッ!」


 イノケンティウスは咆吼を上げてステイルの命令通りに動き「禁書目録」の魔方陣に向かっていき、拳を振るい上げる。
 振るい上げた拳が魔方陣を殴るが跳ね返られるように拳が弾かれ、イノケンティウスは身体を反らせる。
 「禁書目録」はイノケンティウスを見て、無表情のまま術式を逆算する。


 禁書目録『―――新たな術式の発動を確認―――炎の魔術の術式を逆算に成功しました 曲解した十字教の教義をルーンにより記述したものと判明』


 禁書目録『対十字教用術式 『神よ おそば近く仕える者にとってあなたの試練は妙薬であり あなたを愛する者にとってあなたの剣は熱烈な願望である』 完全発動まで 5 4 3 2 1 0』


 ステイル「マズイ・・・ッ!」

 
 ステイルはイノケンティウスを自分の前に移動させ、盾にし、横っ飛びに大剣をかわそうとする。
 大剣はイノケンティウスの胸を貫き、上に振るい上がって天井が斬られ、斬られた箇所から爆発が起きる。
 幸いにも一番端の屋上である為、人的被害はなかっただろう。
 大剣が屋上を半分まで切り裂いて煙を上げながら爆発を起こしたのが外からでもわかり、外にいた学生達は悲鳴を上げながら逃げ惑ったりあまりの衝撃的な光景に動けずにいた。


 「あれは・・・!?」


 そんな中、白いシャツの袖を腕まくりして、白いスラックスを履いているツンツン頭の青年は爆発が起きた病院へ向かうのだった。


 美琴「こんのぉおおおっ!!」


 美琴は手に電気を纏わせて地面に付け、地中に含む砂鉄を磁力で引き上げながら束ねるようにして握ると周囲に円を描きながら生命体が放ってくる緑色の光弾を鞭のように振るい、弾き飛ばす。
 隙を突いて砂鉄の鞭を下から上に振るい上げて生命体の腕を切断する。
 だが斬られた腕が中の細胞を伸ばして引っ付くように再生する。それを見て美琴はギリっと奥歯を噛みしめる。
 

 美琴「ホント、キリがないわねぇ!ったく、なんだって原子力の施設に向かってくるのよ!怪獣映画かっつーの!」


 V3「今なら長髪大怪獣ゲハラがおすすめだぜ?」


 美琴「観れるならゴジラかガメラを観たいっつーのっ!それか、ウルトラマンっ!」


 V3「ごもっとも」


 美琴は呆れるようにV3に返していると、生命体は鋭く尖った氷の塊を浮かばせ美琴目掛けて飛ばしてくる。


 S-1「チェ――ンジ冷熱ハンド!!」


 http://livedoor.blogimg.jp/kuuga178/imgs/7/c/7c8ea115.jpg


 S-1「超高温火炎!!」


 S-1が美琴の前に飛んできて、左腕を前方で大きく回して左掌に右拳を打ち付ける。両腕の色が銀から緑色に変わり重機のエンジンのような機械が固定されている。
 右手は指先が赤くなって熱気をあげ、機械の放熱口から白い煙を吹き出し、左手も指先が青白く白い蒸気をあげている。
 冷熱ハンドの右手からから10万℃の火炎を放火する。
 それによって氷の塊は一瞬にして溶け蒸気と化す。
 S-1は超高温火炎を放火し続けて、生命体を焼き尽くそうとする。だが超高温火炎によって火傷して真っ黒に焦げた生命体の皮膚はボロボロと剥げ落ちていき、新たな皮膚を生成していく。


 S-1「ダメだっ・・・火傷した皮膚を剥がし落して、また新しい皮膚を覆っている!」


 美琴「こうなったらぁ・・・!」


 美琴は右手を電気を纏わせるが、脳裏に木山の言葉が過ぎり一瞬戸惑う。
 その隙を突かれて生命体は触手を伸ばして美琴の左足に巻き付く。


 美琴「マズッ・・・!」


 V3「V3電熱チョップ!」


 美琴が触手に引っ張られて振り回される前に、V3は電気エネルギーを右手に集中させて熱すると触手を叩き斬る。美琴の腕を掴んで地面に着地する。
 左腕を前方で大きく回して左掌に右拳を打ち付ける。

 
 S-1「チェ――ンジパワーハンドッ!」


 http://blog-imgs-31-origin.fc2.com/t/o/b/tobiuo72/SICS104.jpg


 冷熱ハンドから、どこぞの鋼鉄の男のような赤い鋼鉄製の装甲の腕になる。
 S-1は右肘に左手を当てながら飛び上がって生命体の前に来ると足腰に力を入れて踏ん張る。両手を金属が擦れる音を鳴らしながら拳を作る。


 S-1「ヌォオオオォオオオオオオッ!!!」


 S-1は上半身をバネのようにいなして両腕を目一杯引き、勢いをつけて生命体の腹部分にメガトンパンチを叩き込む。生命体の身体の皮膚が衝撃によって波打ち、腹がへこんで背中が浮き上がる。
 生命体は悲鳴を上げながら衝撃によって突き飛ばされる。


 美琴「はぇえ~~~、や、やるじゃん・・・」


 S-1「ありがとう。でも、まだまだこれからみたいだ」


 美琴「そうみたいねっ!」

 
 3人は再度原子力実験場に向かってくる生命体に身構えた。その時、V3の脳内にアリサ専用の着信音が鳴り響く。
 V3は突然掛かってきた電話に焦りながら、美琴とS-1にバレないように構えたまま脳内で通話を繋げる。

 
 V3『どうした、アリサ?』


 アリサ『当麻くん!当麻くん!』

 
 V3がアリサにどうしたのか問いかけた途端にアリサの必死に呼びかける声が脳内に響く。音量をかなり上げていたので少し蹌踉けそうになるが、何とか堪える。


 V3『ど、どうしたんだ!?落ち着いて、話してくれ』


 アリサ『大変なの!インデックスちゃんが・・・!』


 V3「何っ・・・!?」


 V3はインデックスに何かあったかと双眼の下で目を見開き、声を漏らす。それに二人はV3を見る。


 S-1「どうしたんだ、V3?」


 V3「っ・・・S-1、御坂。すまないが今すぐに学園都市へ行かないといけなくなった」


 美琴「はぁっ!?どうしてよ!?」


 美琴はこれからが本番なのに!と思っていたので突然のV3の発言に怒りを込めて問い返す。


 V3「第七学区の病院で何かあったみたいなんだ・・・」


 美琴「だ、第、七学区・・・!?」


 S-1「(佐天さんの他に、意識不明になった人達が居る病院じゃないか・・・!)」


 V3「早く行かないと病院に居る人達がマズい。だからっ」


 V3が言う前にS-1はV3を見ながら頷く。


 S-1「わかった。頼んだぞ、V3!」


 美琴「私の友達、ちゃーんと守りなさいよね!」


 V3「ああっ!ハリケ――ンッ!」


 V3がハリケーンを呼ぶと額に付いている赤い小さなランプの「Oシグナル」が点滅して脳波を送り、自動操縦でハリケーンを呼び寄せる。ハリケーンが駆けつけてくるとV3は高く飛び上がって空中前転を決め、ハリケーンに跨がる。
 

 V3「ハリケ――ンッダーッシュ!!」


 V3はフルスロットルにまでハンドルを捻り一気に速度を上げて装甲すると、カウル両サイドのウィングとロケットブースターで飛行し、第七学区へ向かった。
 

 S-1「行くぞ、美琴君!」


 美琴「ええっ!」


 V3が居なくなってしまい、美琴とS-1は生命体を食い止めようと美琴は電撃を放ち、S-1は飛翔しながら腕を引き、鉄拳を叩き込む。


 ステイル「ゲホッ!ゴホッ!・・・くっ、知識の光で心を明るくし、御名の輝きで胸を照らし給えてくれるんじゃなかったのか・・・っ!」
 

 神裂「ステイル!大丈夫ですか!?」


 ステイル「なんとかね・・・でもカードが残り少なくなってしまった」


 ニコチンとタールが含まれていない煙草とは違う煙を吸ってしまい、ステイルは咳き込みながら跪く。神裂はステイルの傍に駆け寄って肩に手を置く。
 ステイルは心配してくれている神裂に残り3枚となったカードを見せた。


 神裂「・・・ステイル、彼女を引きつける事は出来ますか?」


 ステイル「随分と無茶な事を頼んでくれるね・・・何か策があるのかい?」


 神裂「ええ、極端なものですが・・・」


 神裂は「禁書目録」に聞こえないくらいの声でステイルに自分が考えた作戦を耳打ちで伝える。


 神裂「貴方が彼女を引きつけている隙に、私が上条当麻の「幻想殺し」を手に入れる、と言ったものです」


 ステイル「なるほど・・・シンプル過ぎるかもしれないが、下手に動くよりも妥当な策かもしれないね」
 

 神裂「やってくれますか?」


 ステイル「君を信じるよ、神裂」


 神裂「ありがとうございます」

 
 禁書目録『炎の魔術の術式 破壊に成功 「神裂火織」の破壊を続行します』

 
 「禁書目録」はイノケンティウスが消滅したのを確認して標的を神裂に戻す。
 神裂は七天七刀を構えて、ステイルは神裂の前に出ると1枚を残して2枚のカードを床に投げつける。床に貼り付いたカードから黒煙が吹き出して「禁書目録」の視界を奪った。
 

 ステイル「今だっ!神裂っ!!」


 神裂「行きますっ!」


 「禁書目録」は魔術陣を時計回りに回転させ突風を吹かせる。その隙に神裂は「禁書目録」の横を超人的な脚力でかわし、「幻想殺し」に手を伸ばす




 黄泉川「ああ、そうじゃん!時間が無い、これから転送する音声ファイルをあらゆる手段を使って学園都市に流せ!」


 初春「転送完了しました!」


 スカイライダーに「警備員」が使用している車両まで運ばれて初春は車内にあったパソコンを使い、繋げていたウォークマンから何かの転送の準備を完了させた。


 スカイ「よしっ。僕も行ってきます!」


 初春「あ、あのっ!」


 スカイライダーは準備が整ったのを見てS-1と美琴の元へ向かおうとしたとき、初春に呼び止められて振り返る。


 初春「助けていただき、ありがとうございます!」


 スカイ「どういたしまして!」

 
 スカイライダーは仮面越しに笑って「重力低減装置」のレバーを押し込み、空を滑空して二人の元へ向かった。


 フレンダ「あぁ~結局、暇過ぎてつまんない訳よ・・・」


 絹旗「上司からの電話も超来ませんしね・・・」

 
 浜面「上司って、お前らどっかで働いてるのか?」


 滝壺「・・・ある意味では、そう。でも最近仕事がめっきり来ない」


 「Joseph's」にてフレンダと絹旗、浜面と滝壺はダベっていた。浜面が筑上条と一緒にフレンダ達と出会ってから4日が過ぎていた。
 「snack amigo」で饅頭を売るアルバイトをしている浜面は、合間に取る休憩の時、別段フレンダ達に会いたくてこの店に来ているわけではないと内心思ってはいるのだが、何故か足を運ぶ先がこの店になっているのに疑問を抱けずにはいられなかった。
 だが店には行ってフレンダ達を見かけると、先にフレンダ達の方から、自分を座っている席に招くので悪い気はしなかった。
 と言うよりむしろ美少女4人の中に入れる自分が今は幸せだと感じているそうで。浜面のくせに生意気な by >>1


 浜面「何かあったのか?」


 フレンダ「浜面が知ったところで解決するわけじゃないし~、結局教えないって訳よ」


 浜面「なんだよそれ・・・」

 
 浜面は水滴が表面に伝うコップを手に持ち、水を飲む。氷が溶けた水が全身に染み渡る感覚に満足感を得たその時、店内のスピーカーから低音の不安定な音楽が流れ始めた。
 それにフレンダ達は気付いてスピーカーを見る。

 
 フレンダ「何、この音・・・?」 


 浜面「何だ・・・?」



  
 一方通行「あン・・・?」


 アリサ「音楽・・・?」


 天井「この音は、一体何だ・・・?」


 「天井先生!患者さん達が・・・」

 
 学園都市中に流れてきた音楽によって、暴れていた患者達は何事も無かったかのように眠りについた。
 美琴とS-1が居る原子力実験場にもその音楽は響き渡った。
 美琴が放った電撃は生命体の触手を粉々にして弾く。S-1が追撃をしようとしたとき、ある異変に気付いた。


 S-1「再生しない・・・?」


 美琴の電撃によって負傷した触手が再生していなかった。美琴は何故再生しなかったのかを、今耳に聞こえてきた音楽によって気付く。


 美琴「この曲・・・治療プログラム!初春さん、やったんだ!」


 S-1「美琴君!トドメだ!」


 美琴「ええっ!」


 美琴はポケットからコインを一枚取り出そうとして、S-1は拳法の構えを取る。 生命体は傷ついた触手が痛むのか泣き声を上げていた。
 その時、シュッと何かが細い筒から空気圧によって押し飛ばされた音がS-1の聴覚器官に届いた。そしてブツッと生命体の背中の皮膚に何かが刺さる。


 「キcjauimiaんcみw祖k、pkmそp、ごいkmっkmjか,mloぉkあij!!!」


 生命体は声にならない悲鳴に似た咆吼を上げながら苦しみ始める。美琴とS-1は驚いてそれぞれ攻撃の構えを解いてしまう。
 目と口がある体の部分の手が縮小して完全に体内に取り込まれるように消え、体の色が段々と赤黒くなり始める。
 目と口がある体が肥大化した体と繋がっている箇所から伸びていき、体自体が首のようになった。
 そして肥大化した体から消えた手が少し大きさを増して再び生え、体の下から血のような液体がこぼれ落ちて地面に散らばり、変色した体の色と同じ色になりながら凝固して2本の巨大な足となった。


 美琴「なっ・・・!?」


 S-1「これは・・・っ!?」


 浮遊していた生命体はその2本の足で立ち上がって、大地を揺るがす程の咆吼を上げながら。
 耳を劈く咆吼に美琴はポケットに入れていた手を出して、耳を抑え顔を歪める。S-1は外部から聞こえる音量を下げて、異変を起こした生命体に驚く。


 S-1「進化・・・したのかっ!?」


 「そんなっ・・・まさかっ・・・!」


 S-1の言葉にボロボロになっている隈が濃い女性も驚愕した。



 「フッフッフ・・・この位面白くなくてはつまらん」


 
 生命体は咆吼を上げるのをやめ、濁って艶が無い目玉をグリっと下に向けて美琴とS-1を見る。
 口を顎を裂いてまで大きく開ろげると口内の膜状の喉の奥から火炎を放射する。それにS-1は素早く左腕を前方で大きく回して左掌に右拳を打ち付ける。

 
 
 S-1「超低温冷凍ガス!!」



 左手の機械から真っ白いガスを噴出し生命体が放射する火炎を吹き消す。火炎を放射し続ける生命体は緩めることは無くさらに口を広げて火炎を放射する。
 美琴は右手から電撃を放ってS-1を援護しようとする。だが生命体に向かって放たれた電気は生命体の皮膚に当たったと同時に威力が弱まって消滅した。


 美琴「嘘っ!?電気が通っていない!?」


 S-1は右手で左手首を掴みながら支えて、押し返されそうな火炎の威力に耐える。美琴は焦りながらもコインを取り出して親指で弾く。
 コインは縦横無尽に回転しながら宙を舞った。

 
 美琴「だったらこれでどうよっ!!」
 

 そして落ちてきた所で掴むと再び親指に乗せ、電力を集中させると美琴の得意技である「超電磁砲」(レールガン)を撃つ。
 ローレンツ力で加速した音速の三倍以上の速度で放たれるコインは、空気摩擦で溶けながら生命体の口内に命中する。
 爆発が起こって黒煙が生命体の顔を覆うと、火炎が止まった。S-1は両腕を地面につけて疲労で跪く。
 美琴は荒い息を整え生命体がどうなったのか警戒を解かないで見ている。

 
 
 美琴「・・・う、嘘でしょ・・・!?」



 美琴の目に信じられない光景が映った。
 「超電磁砲」を口内に受けたはずの生命体はブクブクと泡を吹かせるように顔を肥大化させて再生していっているのだ。


 神裂は胴体で滑り込みながら手を力一杯伸ばして「幻想殺し」を掴もうとした。そして掴んだ、と自身では思った。
 だがその「幻想殺し」が目の前でその名の通りに幻の如く、突如として消えた。神裂は目を見開いて驚く。


 神裂「(なっ・・・あっ・・・!)」

 
 神裂は目をこらしてよく見ると衝撃によって床が崩れ落ちて、それと一緒に「禁書目録」も落ちたのだ。神裂は自分も下に行こうと思ったが穴が小さすぎて自分が通れるくらいではないと見てわかった。

 
 
 禁書目録『対聖人用術式『神よ、あなたは苦難があらゆる方向から私に降りかかっていることをご存知です』完全発動まで10 9 8 7』



 神裂「っ!」


 「禁書目録」が術式を組み立てようとしているのに神裂が気付いて七天七刀を鞘ごと引き抜くと、両手で切っ先が下に向くように握りしめて足腰を曲げてスクワットの要領で全身の力を使いながら床に突き刺す。
 鞘に包まれたままの七天七刀の先端が床にめり込んで、罅を広げていく。神裂は七天七刀を強引に床から引き抜き、罅が入って割れた床に踵落としで自分が入れるくらいの大きさの穴を作った。

 
 神裂「(早く「幻想殺し」をっ!)」


 神裂は急いで穴に入り込んで下の階へ落下して移動する。踵落としで崩れ落ち、粉々になった床の破片を踏みつけて下の階へ来ると神裂は「幻想殺し」を見つけ拾い上げる。 


 神裂「っ!?」


 神裂がホッとしたのも束の間。背後から怪しい黄緑色の光が自分を包み込むのを感じて神裂は後ろを振り向く。
 天井にある自分で開けた穴から「禁書目録」が自分を見下すようにその感情が読めない二つの目で自分を見ていた。  

  
 禁書目録『3 2 1 0』


 カウント0と同時に魔術陣内にいくつも描かれている小さな魔術陣から黄緑色の細い閃光が放たれる。
 爆発が下の階で爆発が起こり黒煙と炎が吹き上がる。  


 ステイル「神裂ッ!!」




 
 生命体は顔が体より少し小さい具合にまで肥大化させて再生を終えた。肥大化した顔は肉が強制的に引っ張られているように所々に破けた皮膚が風に靡いて、その痛々しさに美琴の背中に悪寒が走る。
 生命体は輝きの無い濁った目玉を動かして隈の濃いへ向け、背中の触手を伸ばし女性を捕らえようとする。 


 「はっ・・・!?」
 

 美琴「危ないっ!」


 美琴は地面の砂鉄の磁気を利用して飛び上がり、女性の前に立ってを庇う。触手は女性を掴むことはできなかったが代わりに美琴を掴んだ。


 美琴「ぐああっ!!」


 S-1「美琴くん!」


 触手は美琴を全身に巻き付けて、掴んだまま自分の前まで持ち上げると勝利を謳うように咆吼を上げる。
 美琴は何とか抜けだそうとするが掴んでいる触手の力は凄まじく、力尽くでは無理だった。


 美琴「(自分の力でダメならっ・・・!)」


 頭からバチバチっと電気が走って美琴は電流を流し込もうとしたがすぐに自分から電気が抜けるのを感じた。


 美琴「(こいっ、つっ・・・私の電気をっ・・・!)」


 触手は抵抗する美琴をさらに強く締め上げる。


 美琴「がっ、はっぁ・・・!(や、ば・・・っ・・・)」


 美琴は全身が押しつぶされる感覚に肺に溜まっている空気を吐き出して意識が遠のき始める。


 スカイ「スカイチョップッ!」


 その直後スカイライダーが触手を切り裂き、美琴を切り離す。美琴に巻き付いていた触手が解けるとスカイライダーは旋回して美琴を空中で抱きかかえて生命体から離れる。
 美琴は咳き込みながら息を荒くしながら肺に空気を入れ込む。


 スカイ「御坂さん!大丈夫ですか!?」

 
 美琴「っ、え、えぇ・・・なんとかっ・・・」


 スカイライダーは美琴を地面にゆっくりと下ろすと浮遊したまま振り返って生命体に向かう。生命体は背中にある10本もの触手でスカイライダーを捕まえようとする。
 スカイライダーは風を切りながら軽やかに襲い来る触手をかわす。触手の攻撃を潜り抜けて生命体に近付くと右拳を作って右腕を高速回転させる。
 

 スカイ「スカイドリルッ!!」


 体を捻らせてから勢いを付けて高速回転させている右腕から放たれる、スカイドリルを生命体の体に打ち込む。ギャリリリっと岩とも鉄とも違う異質の硬化なモノを削る音を立てながら生命体の皮膚の大小様々な欠片が飛び散る。
 スカイライダーはそのまま皮膚を貫通させようとしたがレーダー触角で背後から触手が襲ってくるのに反応して離れる。


 スカイ「うわっと!」


 離れた瞬間に別の方向から襲ってきた触手をかわすと空中で回し蹴りで弾き返す。
 スカイライダーは生命体から離れて美琴と美琴を介護しているスーパー1の元へ降り立つ。
 生命体は怒りを表すように咆吼を上げて触手を振るい、地面に叩きつける。それはまるで子供が気に入らないおもちゃを振り回して壊そうとしているように見えた。

 
 スカイ「どうするっ!?S-1!」


 スカイライダーはS-1に問いかける。スーパー1は美琴を支えながら生命体を見る。


 S-1「何か・・・何か弱点があるはずだ。どんなに再生力が凄まじい生物でも、生きていると言う事は殺すことが出来ると言うことだっ」


 美琴「生物・・・とは、ちょっと違うかもね」


 S-1「え・・・?それはどういう」


 「あれは「幻想御手」によって束ねられた1万人の拡散力場。それらが触媒となって生まれた潜在意識の怪物、「幻想猛獣」(AIMバースト)」

 
 スーパー1は美琴の言葉に疑問を抱いて美琴に訪ねようとすると、美琴が庇っていた女性が代わりに答えた。

 
 「言い換えれば、あれは1万人の子供達の思念の塊だ」


 S-1「貴女は・・・?」


 木山「木山春生・・・アレを生み出した、張本人とでも言ってくれればいい」


 スカイ「えっ!?」


 木山が言ったことにスカイライダーは驚きを隠せず声を上げる。


 S-1「木山さん、貴女ならその「幻想猛獣」の弱点をご存じなのでは?」


 木山「あぁ・・・核が・・・力場を固定させる核の様な物が、何処かにある筈だ。そこを破壊すれば・・・」


 S-1「核を・・・」


 スカイ「でも、あんなにまで頑丈になっちゃってるし・・・」


 スカイライダーは先程スカイドリルを打ち込んだ時の感触を思い出しながら、核を破壊させる以前にあの頑丈な皮膚を壊さなければどうすることも出来ないと少し弱気になる。


 ―――――なのかな・・・―――


 S-1「ん・・・?」


 美琴「佐天さん・・・?」


 ――「無能力者」って欠陥品?―― 


 「幻想猛獣」から様々な「無能力者」達の不安や憎しみの言葉が聞こえた。言葉を出す度に「幻想猛獣」の体中に目玉が現れ、泣いている様に見える。
 その言葉に美琴は「超能力者」である自分には気付かなかった佐天や他の「無能力者」達の苦悩を知って胸を打たれる。


 S-1「違うっ・・・!断じて違うっ!!」


 スーパー1は怒りを込めて声を上げる。「幻想猛獣」は体中の目を全てスーパー1に向ける。


 S-1「もう一度自分自身と向き合ってぶつかるんだ!たとえ何度も倒されて倒されても!」


 S-1「自分を欠陥品と思っているのなら、それは自分を認めていないだけだ!佐天さん・・・いや皆、君達は!」


 S-1「能力者である前に一人の人間として生まれてきたんだっ!!夢を果たすまで一歩も退いちゃダメなんだ!!」


 スーパー1はあの時佐天に教えた言葉を力強く、苦悩する「無能力者」達に答える。


 美琴「・・・そうよ・・・佐天さん。もう一度がんばってみよ?こんなところでくよくよしないで・・・」

 
 [BGM Only my Railgun]
 https://www.youtube.com/watch?v=4IZ2XjCjlQo


 美琴「絶望に負けなくない、だから・・・私が、私であることを胸を張って誇れる・・・そんな風になれるように、私もなるからっ!」



 ――御坂さん・・・沖上条、さん・・・――



 S-1「チェー――ンジスーパーハンド!!」


 「幻想猛獣」は触手を束ねて拳をつくり出すとスーパー1も腕を銀のスーパーハンドに変える。 
 美琴は立ち上がろうとするが足腰に力が入らず膝が折れる。
 「幻想猛獣」は拳を大きく振るって風を切りながら美琴とスーパー目掛けて殴りかかってきた。


 美琴「やばっ・・・っ!」


 S-1「赤心少林拳「梅花の型」」


 S-1は両手を合わせて変身する際に見せる何かを包み込んで守るような型をつくると、無数の拳を繰り出し「幻想猛獣」の振るう拳をいなして防御した。
  

 S-1「花を包み込む『梅花』の形意。守る力は憎しみの力に敗れたりなどしない」

 
 S-1は蜂の様な目を凝しているSアイで「幻想猛獣」の体をスキャンする。表面の硬い皮膚を透視すると体の中心部で熱源を発見し、そこに核があると確認する。
 核を発見したがS-1はどうやってあの頑丈な皮膚を壊すか見定めていると、ふと視界を拡大化させてある事に気付く。
 

 S-1「スカイライダー!もう一度同じ場所にスカイドリルを叩き込むんだ!」


 スカイ「わかった!」


 スカイライダーが空高く飛び上がると「幻想猛獣」は束ねた触手を解いて上下左右からスカイライダーを捕らえようとする。
 スカイライダーは体を捻らせてかわしながら上空まで飛行していく。


 S-1「美琴君、最大出力で電撃を放てるかい?」


 美琴はS-1に言われて右手に電気を纏わせたがすぐに消えてしまう。


 美琴「くっ・・・出したいのは山々なんだけど・・・ちょろっと飛ばしすぎたみたい。電力がちょっとでもあれば・・・」

 
 S-1「電力?」


 S-1は電力という言葉を聞いてすぐに閃く。


 S-1「それならっ!」


 S-1「チェ――ンジエレキハンド!!」


 http://mtsflab.cocolog-nifty.com/blog/photos/uncategorized/2011/12/12/p1010649.jpg


 S-1「今から電気を君に送る。そうすればっ!」


 S-1は両手に電流を流すとバチバチッと火花が散る。美琴の肩に両手を置き、100万ボルトの電気を美琴に送り込み始めた。
 エレキハンドから流れ出ている100万ボルトの電気を美琴自身は無意識に吸収していき、周囲に磁気を発生させると体内でアドレナリンが大量に分泌されて体が熱くなり、汗が噴き出る。

 
 美琴「お、おぉおおおお~~~!?こ、これっ、すっごい力が漲ってくる!」
 

 S-1「よしっ!行くぞ!」


 美琴「オッシャァッ!」



 スカイライダーは上空まで来ると双眼の「ディメンションアイ」を赤色に発光させて視界内を拡大化し、「幻想猛獣」にスカイドリルを喰らわせた箇所を赤い円形のポインターでロックオンする。
 そこには僅かながらに罅が入っていた。それを見てスカイライダーはスーパー1が何を確信していたのかを理解して、上に旋回し、空中で一回転すると右腕を高速回転させる。


 スカイ「スカイドリルッ!!」


 スカイライダーは斜め一直線に降下しながら自分に向かってくる触手をモノともせず「幻想猛獣」の体にスカイドリルを打ち込んだ。
 皮膚が削られていき、僅かだった罅が徐々に拡大化していく。
 触手が向かってくるとスカイライダーは腕を引き抜いて上空に飛び上がる。


 スカイ「S-1!」

 
 S-1「ス―――パ―――ライダ―――ダブルキ――――ック!!」


 S-1が間髪入れずに二段構えの攻撃で、空中で丸くなって回転してから両足同時に蹴りを繰り出し、スカイドリルによって罅が入った箇所に突き刺さる。
 罅がミシミシと音を立て、そしてパリンッと音を立てて強固だった皮膚が割れ、中の細胞組織を覗かせる。


 S-1「美琴君ッ!」


 美琴「いっっっけぇぇぇええええええ―――っ!!」


 美琴は「超電磁砲」を割れた皮膚目掛けて放つ。エレキハンドによって得た電力で「超電磁砲」はスパイラル状に放たれると割れた皮膚を貫通して、三角柱の核に命中する。
 「超電磁砲」の電撃は背中側の皮膚を貫通せずに、核を背中側の皮膚の内側に押し込み、そして砕く。 
 核を砕かれた「幻想猛獣」は、胸に空いた風穴から黄緑色のエネルギーを漏らして細胞組織を黒く染めながら消滅していく。
 首元まで消滅してくると「幻想猛獣」は苦し紛れに重低音の咆吼を上げ、完全に消滅する。


 美琴「はぁ・・・っ・・・ぃよっしゃあっ!」


 美琴は全身の力が抜けたのか座り込みながら、両腕を広げて歓喜の声を上げる。


 S-1「よしっ、俺はV3のところへ行ってくる。美琴君、道路に倒れてる人達の事は任せたよっ!」


 美琴「ええ、任せない・・・ってえぇええええ~~~!?ちょっと!何で私がっ!?」


 スカイ「よろしく~~」


 美琴「あぁぁ~~~~!もうっ!」


 電気を出すほどの気力がないはずだった美琴が頭からバチバチっと電気を漏らすのを無視して、スーパー1とスカイライダーはV3が先に向かった第七学区へ向かった。

一旦ここまで。また夜来ます

誰か見ていてくださるなら、お答え願いたい。上本条と上郷どっちが良いですか?


上郷

>>175 あざっす!!やっぱそうですねww実は何となくそう思ってましたww

ちょっと構成練るのに時間が掛かったので、今日はここまでにします。


 神裂「(ここで・・・死ぬのか・・・)」


 今までインデックスを守る為にしたことはやはり重かったのだろうか。これは罰なのだろう。その罪を償わせるために神は私に死の宣告を下したのだろう。
 それならば、神の教えに従って・・・受け入れるしか無い。
 神裂はそう覚悟を決めて七天七刀を手放し、目を瞑ると黄緑色の光を受け止めようとする。
 

 だがパキィンと何かが割れる音が聞こえた。


 神裂「・・・?」


 神裂が目を開くと同時に、白い煙が周囲を包み込む。神裂は突然のことに驚くいていると、煙の中から人影が見えて腕を掴まれる。

 
 「こっちに」


 声からして男だと神裂はわかって、何かを言おうとする前に腕を引っ張られて倒れないようにしようとするが、爪先が床の欠片に引っかかって転けようになる。
 すると腕を引っ張ってきたその人物は神裂の上体を支えてくれて、「禁書目録」が見下ろしている穴から離れさせる。
 

 禁書目録『「神裂火織」の破壊を確認 戦場の検索を開始――――現状 「ステイル=マグヌス」の破壊を決行します』


 「禁書目録」は姿が見えない神裂を破壊したと誤認し、次の目標をステイルに変更した。
 神裂はその様子を見て、行かないと!と思い、上の階へ向かおうとするが足が竦んで力が抜け、その場に座り込む。すると男は肩に手を置いて神裂の顔を覗き込んむように見る。


 「大丈夫ですか?」


 神裂「は、はい。大丈夫です・・・」


 神裂は自分を助けてくれた男に礼を言いながら顔を見る。薄暗くなった室内でよく見えないが、破損した天井の照明から飛び散る電飾で明るくなり、浮かんだ男の顔を見てすぐに気付く。
 

 神裂「か、上条、当麻・・・?」


 「ん?・・・いえ、違います」


 男は首を横に振って苦笑いを浮かべると、立ち上がる。
 

 上郷「俺は、上郷当麻。上条とは・・・まぁ、兄みたいなものです」

 
 確かに上条に似ているが、どこか厚いカリスマ性を帯びた雰囲気で優しくも威圧感を感じさせる。
 神裂はその顔を見て、ハッと以前に見た写真に上条の隣に写っていた「別世界」の上条当麻だと気付く。


 上郷は神裂の目を見つめながら口を開く。


 上郷「貴女はここに居てください。俺が何とかしてみます」


 神裂「ま、待ってください!」


 上郷は立ち上がって歩き出すが、神裂に呼び止められて上郷は足を止めると神裂を見る。神裂は七天七刀を杖代わりに自身の体を支えながら立ち上がろうとしていた。


 神裂「彼女を守ることが・・・私の使命なのです」


 神裂「私は・・・仲間を見捨ててでも、彼女を守ると誓ったのですッ!」


 俯きながら上郷にそう言って、足腰に力を入れながら無理矢理にでも立ち上がった。上郷はその姿を見つめたまま神裂の言葉に耳を傾ける。
 神裂はあの時死ぬ覚悟を決めて、いざ生き残ってみれば腰が引けている自分に不甲斐なさを感じて目から涙を流すが、力強く自分の思いを上郷に伝えた。
 歩き出そうとするが鞘の先端が滑って神裂は倒れそうになる。だが上郷がしっかりと抱き止めて、倒れるのを止めた。


 上郷「・・・わかりました」

 
 上郷は優しく微笑みを浮かべて神裂の顔を見る。神裂はその微笑みを見て、少し緊張がほぐれたような気がした。
 この微笑みは何時か見た、自分よりも強く、優しい父の微笑みに似ていた。そんな気もした。


 上郷「貴女の誓い・・・俺にも預からせてください」


 神裂「え・・・?」


 上郷は神裂の体を支えてあげながら立たせる。もう足は竦んではいなかった。しゃんと背筋を伸ばして立てれる。


 上郷「俺も人類の自由と平和・・・笑顔と希望、そして未来を守る為に戦っているんです」


 上郷はそう言って少し数歩下がって、頭上に穴がある位置まで移動する。するとブワッと上条自身から風が吹き上がった





    上郷「ライダー・・・変身!!」




 改造人間・上郷当麻は、ベルトの風車に風圧を受けると、仮面ライダーに変身するのだ


                ナレーション:中江 真司


 神裂「・・・!」


 神裂はタイフーンから巻き起こる風に手で顔を覆うが、指の隙間から上郷の姿を見る。

 黒いライダージャケットに青緑色の筋肉を模した装甲と手袋にブーツ。
 そしてバッタ様な仮面に桜色の光る双眼と、眉間にある第3の目と、赤い風車。

 それを見て神裂は初めて見た「変身」に、少し放心する。 
 

 「トォッ!」


 両腕を広げ、上の階へ飛び上がるとバッタの能力によってフワッと着地する。
 「禁書目録」はステイルから視界を外し、背後に現れた異形の人に視界を向けた。
 

 禁書目録『新たな敵兵を確認―――警告 危険物と判定。「ステイル=マグヌス」の破壊を除外 新たな敵兵の破壊を遂行』 


 「禁書目録」は初めて見せる機械的な要素がない、焦りを見せてその異形の人の破壊を開始しようとする。
 異形の人は右腕を左側に伸ばし、左手を胸の下で構えて、静かに、勇ましく名乗りを上げる。 


 1号「仮面ライダー・・・1号(ザ・ファースト)」

 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-3e-9b/wpfmr615/folder/948799/66/34769166/img_0


 穴の下から神裂は1号の背中を見て、小さく呟く。

 
 神裂「仮面・・・ライダー・・・」


 1号「ゆくぞぉっ!」


 次回予告


 仮面ライダー1号・上郷当麻の参戦によってついに禁書目録との最終決戦が始まる。 
 「禁書目録」を倒し、インデックスを救うことはできるのか!?
  

 次回 仮面ライダー対「禁書目録」の決戦 にご期待ください



 今日は予告だけしか書けないんですが、今朝のニュース見たでしょうか?
仮面ライダー剣・剣崎もとい、椿さんが重傷を負ったんです。
それを見て自分はマジでそのゴルフクラブで殴った人を許せなかったです。世代が世代で、リアルタイムで見ていたライダーですから思い出深いので、すんごく腹が立ちました。

ですが椿さんは、こう述べました。

「今回の事で心配をかけてしまい大変申し訳ないのですが このような事態では、ありますが、これが、キッカケで自分が愛する作品「仮面ライダー剣」 が、  ちょっとでも皆様にも届き、内心、嬉しくもあります。

今、放送している作品「仮面ライダーエグゼイド」は優秀な医師ですし 僕は、ちょっと御世話になります。
ゆっくりリアルタイムでも見ながら治していこうかと

心配して下さっている皆様、本当にありがとうございます!」
by 椿隆之

「俺は運命と戦う! そして勝ってみせる!!」
by剣崎一真

泣きました。感動しました。

真のヒーローだからこそ、こう言えるんだなぁっと思いました。
永夢さん、是非治してあげてください!あと、北岡さん!犯人にキッツいの頼みます!!


では、いつ更新できるかわかんないですが、お楽しみにー

本当に申し訳ございません。

事情によってこのssを、ここで書くのをやめざる負えなくなりました・・・。
まぁ、こんな時は何れ来ると覚悟はしていた。

なので、移転させていただきます。行き先は言ったらダメだと思いますので、自力でお探しをお願いいたします。
題名も変わりますが、「53番目の改造人間」と言う単語で多分ヒットすると思いますので。
では、皆々様!ごきげんよう!

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