ありす「フレデリカさんが小さくなりました」 (46)

文香「……」

ありす「……」

ありす(……文香さんが本を読んでいます)

ありす(今日も麗しい)

文香「……」ペラ

ありす(本をめくる手も白くて、細くて、綺麗です)

ありす(羨ましい……私もあんな手になれるでしょうか……?)

ありす(……いえ)

ありす(文香さんみたいになれるわけありません)

ありす(文香さんは唯一無二)

ありす(文香さんと対等の美しさになれるはずありませんよね)

ありす(それでも、隣に並び立っても、文香さんの美しさを損なわないほどの美しさを持ちたい)

ありす(橘ありすです)

文香「……」ペラ

ありす(……しかし、本当に集中してますね)

ありす(いつものことですが……こんなに視線を向けても、こちらを一瞥もしないなんて)

ありす(まあ、おかげで私はこんなにもじっくり見れるんですが)

ありす(……)

文香「……」

文香「……」ズズ

文香「……あひゅっ」

ありす「!」

ありす(あひゅっ! あひゅっですって! 文香さんカワイイ!)

ありす(自分で熱いお茶を淹れてたのに、忘れてたんでしょうか?)

ありす(それでも、もう少し温いと思ったんでしょうか?)

ありす(……いえ、どちらでもかまいませんね)

ありす(ひとつわかることは、やはり文香さんは天使――)

ありす「――いえ、文香さんは女神!」


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ありす「……あ」

ありす(し、しまった……言葉に出してしまった……!)

ありす(いつも気をつけてしまったのに……いや、でも……)

ありす(文香さん、本を読んでるときは他のことをまったく気にしませんし……)

ありす(今回も聞き流して――)

文香「……女神?」

ありす(――ないっ!)

ありす(どうしましょう、ガッツリこっちを見てます!)

ありす(じぃっと見られてます!)

ありす(興奮します!)

ありす(……じゃなくて)

ありす「あ、いえ……あの、えっと、違って……いや、違わないんですけど……」

ありす「あの、え、あの、えっと――」

文香「――うっ」バタッ

ありす「!?」

ありす「え、ええっ!?」

ありす「文香さん……文香さん!?」

ありす(きゅ、急に倒れてしまいました!?)

ありす(えっ……な、何ですか……女神恐怖症ですか!?)

ありす「だ、大丈夫ですか、文香さん!」

ありす「ご、ごめんなさい、私が女神って言っちゃったからですか!?」

ありす「わかりました、今後は心の中でだけ叫ぶようにします!」

ありす「たぶん!」

文香「――」ムクリ

ありす「あ、文香さん!」

ありす「起き上がって大丈夫ですか!?」

ありす「さっきまで、倒れてたんですから、そんな急に立ち上がらなくても――」

文香「――人の子よ」

ありす「は?」

文香「――」ペカー

ありす「!?」

ありす(文香さんに後光が差してます!)

ありす(いえ、いつも私の目には後光は見えてましたが……今日は一段と強く……!)

文香「――」フワッ

ありす「!?」

ありす(さらに、文香さんが浮かび上がりました!)

ありす(いえ、こちらは、本当に、比喩ではなく!)

ありす(さすがの私も、そんな文香さんは見たことありません!)

文香「――」バサッ

ありす「!?」

ありす(翼も生えました!)

ありす(これは私の目にもいつも見えていましたよ、なんていったって文香さんは女神で

すから!)

ありす(……いえ、でも、実際に生える姿なんて見たことありませんけど!?)

ありす「ふっ、文香さん、なんですかそれ、どういうことですか!?」

ありす「マジックですか!?」

ありす「それとも、誰かの薬……機械……悪魔の力……」

文香「――いいえ、そのどれでもありません」

文香「私は、この器――文香に宿っていた女神です」

ありす「め、女神!?」

ありす「本当ですか!?」

文香「はい、本当です……だから、こうして空を飛んでいます」

文香「翼を生やしてます」

文香「信じていただけますか?」

ありす「信じます!」

ありす「……いえ、信じてました!」

ありす「やはり、文香さんは女神でした!」

ありす「私は間違ってなかった!」

ありす「私は間違ってなかったっ!」

ありす「文香さん、素敵!」

ありす「その美しい心の中に女神を住まわせてるなんて、さすが文香さん!」

ありす「さすふみ、さすふみ!」

文香「……信じてくれるのなら話は早い」

文香「人の子よ……貴方は私を呼び起こしてくれました」

文香「その礼として、貴方の願いを一つだけ叶えましょう」

ありす「……えっ!?」

文香「さあ、願いを口にしなさい」

ありす「えっ、ちょ、ちょっと待ってください!」

ありす「願いって……えっ、願いって何でもいいんですか?」

文香「ええ……どのような願いでも叶えましょう」

ありす「……!?」

ありす「えっ、そ、そんな急に言われ――」

フレデリカ「――おっはよーございまーっす!」

フレデリカ「……って、わお!」

フレデリカ「なにこれ、フミカちゃんが空に浮かんでる!」

ありす「ふっ、フレデリカさん、聞いてください、聞いてください!」

フレデリカ「なになにー?」

フレデリカ「もしかして、新しいマジック?」

ありす「いえ、違います、現実なんです!」

ありす「文香さんが女神だったんです!」

フレデリカ「……?」

ありす「文香さんが女神で、だから、翼も生えて、空も飛んで……!」

ありす「そして、私の願いを何でも叶えてくれるって言うんです!」

フレデリカ「……」

フレデリカ「へー」

ありす「信じてませんね!?」

フレデリカ「ううん、信じてますよ……ありすちゃんかわいいなー」ナデナデ

ありす「あっ、もう、信じてませんね!」

ありす「本当です、本当ですよね、文香さん!」

文香「はい、私は女神です」

フレデリカ「ふーん……」

ありす「……信じてくれましたか?」

フレデリカ「とりあえず信じたってことにしておく!」

ありす「……そうですか」

ありす「……ともかく、文香さんは女神だったんですけど」

ありす「でも、急に願いを叶えるって言われたから……」

ありす「私……何も、願いが思い浮かばなくて……」

フレデリカ「とりあえず今やりたいことを願えばいいんじゃない?」

フレデリカ「イチゴ食べたいとかー、パスタ食べたいとかー?」

ありす「それだったらイチゴパスタ食べたいって願いにします!」

ありす「……じゃなくて、こんなチャンスをそんな簡単な願いに使えません!」

フレデリカ「そっかー」

フレデリカ「じゃ、いっぱい考えないとだね!」

ありす「そうですね……」

ありす「今の私に必要な願い……」

フレデリカ「じゃ、ありすちゃんが考えてる間に、アタシはフミカちゃんと遊んでるね!」

ありす「はい……」

ありす「……えっ?」

フレデリカ「ねーねー、本当に飛んでるのー?」

文香「……見てわかりませんか?」

フレデリカ「わかる!」

フレデリカ「ね、私も飛んでみたい!」

文香「……私が願いを叶えるのはあちらの方だけで、貴方ではありません」

フレデリカ「そっかー……」

ありす「……」

ありす(……まあいっか、とりあえず自分の願いを考えましょう)

フレデリカ「でも、飛ぶってどんな感じか味わってみたい!」

フレデリカ「だから……えいっ!」

文香「……」

文香「何をしてるんですか」

フレデリカ「フミカちゃんに飛びついて抱きついて見ました!」

フレデリカ「フレデリカゼミ!」

フレデリカ「デリデリデリデリデリ!」

文香「……」

フレデリカ「でも、文香ちゃんアタシがしがみついても飛んだままなんだねー」

フレデリカ「汗もかかないしー、辛そうな顔も見せないしー、力を入れてるようにも見えないしー」

フレデリカ「女神パワーってすごーい!」

文香「……」

フレデリカ「よーっし、このまま世界の果てまで行っちゃおう!」

フレデリカ「あっちの方へ、レッツフラーイ!」

文香「……」

フレデリカ「……あ、でもちょっと待って」

フレデリカ「このままだと、いつか落ちちゃうかもしれないから……肩まで登るー」

フレデリカ「よじよじよじ」

文香「……」

ありす「……よし」

ありす「決めました、文香さ――」

文香「――うっとうしいです」

フレデリカ「えっ?」

文香「それっ」シュイン

フレデリカ「ひゃっ――!?」

ありす「!?」

ありす(文香さんの指から出たビームがフレデリカさんに……!?)

ありす「ちょ、ちょっと、文香さん!」

ありす「フレデリカさんに何してるんですか!?」

文香「少々うっとうしかったので」

文香「静かになってもらいました」

ありす「だ、だからって、やりすぎです!」

ありす「こんな……こんなことしたらフレデリカさんは……!」

文香「……勘違いしてるかもしれませんが、肉体的なダメージは与えていません」

ありす「えっ……?」

文香「その代わりに――」

フレデリカ「……」

文香「――少々、幼くなってもらいました」

ありす「……!?」

ありす(私より小さいくらいの金髪の子供が文香さんに抱きついている……)

ありす(羨ましい……)

ありす(……じゃなくて!)

ありす「え、えっ……その子が、フレデリカさんですか……!?」

文香「はい」

フレデリカ「……」

文香「……子供の力だと、ずっとしがみつくのは厳しいでしょう」

文香「地面に降ろしてあげます」

フレデリカ「……」ストッ

ありす(地面に降りたフレデリカさんは口を閉じてこちらを見ている)

ありす(……まったく口を開かず)

ありす(じっと……)

ありす「……」

ありす「……あの、本当にこれフレデリカさんですか?」

文香「はい、そうですよ」

ありす「あのフレデリカさんが子供のころ、こんな無口なはずないですよね!」

文香「……ああ」

文香「うるさかったので、無口にしました」

文香「なので、本来の子供のころの姿とは違うかもしれません」

ありす「何てことしてるんですか!?」

文香「いえ、うるさかったので」

ありす「それは聞きましたけど!」

文香「……それで」

文香「願いはどうしますか?」

ありす「……」

ありす「……フレデリカさんを元に戻してください」

ありす「こんなフレデリカさん、フレデリカさんがありません!」

ありす「いつものフレデリカさんが私は!」

ありす「私は……」

ありす「き、嫌いじゃないんです!」

文香「わかりました」

文香「では、その願いを叶えましょう」

文香「……明日」

ありす「えっ?」

文香「今、力を使ったので、次に力を使えるのが明日なんです」

文香「なので、明日戻しますね」

ありす「えっ……じゃあそれまでは……」

文香「このままですね」

フレデリカ「……」

ありす「えぇ……」

ありす「……勝手にやっておいて、それずるくないですか?」

文香「うるさかったので」

ありす「それは何度も聞きましたけど!」

文香「では、貴方の願いも聞きましたので」

文香「私はこれで――」フッ

ありす「わっ……!?」

ありす(一瞬で後光も翼も消えて……文香さんが地面に降り立った……!?)

文香「――う、ううん……」

ありす「あ……文香さん、大丈夫ですか?」

文香「あれ……私はいったい……?」

ありす「……先ほどまで、文香さんの中の女神が――」

文香「――うっ」バタッ

ありす「!?」

文香「――人の子よ」ピカー

ありす「またですか!?」

ありす「今度はなんですか!?」

文香「文香の前で女神と言うことが私が現れる条件なので、気をつけてください」

文香「それでは、私はこれで――」フッ

文香「――う、ううん……?」

文香「あれ……私は……?」

ありす「……」

ありす「……ちょっと疲れて眠ってたみたいです」

文香「はぁ……」

ありす(……なんですか、あの女神)

ありす(どこが女神なんですか!)

ありす(勝手に現れて、フレデリカさんをあんなふうにして――いや、フレデリカさんも悪いところはだいぶありますけど)

ありす(私の願いを叶えるっていうのも結局うやむやになったようなもんですし!)

ありす(もうっ!)

文香「……ありすさん」

ありす(あんなのなら、文香さんの方がよっぽど女神です!)

ありす(すべてを抱擁し、すべてを受け入れる……)

ありす(かつ、すべてに対し、無償のやさしさを、愛を与える……)

ありす(そんな文香さんは女神!)

ありす(……女神って言うのは、なんかさっきのアレを思い出して嫌ですね)

ありす(もっと、何かいいたとえを……)

文香「ありすさん……!」

ありす「あ、はい、なんでしょうか!?」

ありす「ごめんなさい、無視しちゃって、いえ、無視したわけじゃないです!」

ありす「ちょっと色々考えてて……!)

文香「……あの」

文香「あの子は……?」

フレデリカ「……」

ありす「あっ……」

ありす「えっと……」

文香「……」

ありす(……も、もう、何でこういうのもしっかりしないんですか!)

ありす(女神なんですから、ちょっとした情報操作くらいやってくださいよ!)

ありす(小説だとやってたのに……!)

ありす「えっと……あの……」

ありす「……わ、私の親戚なんです」

文香「……」

文香「外国の……方?」

文香「フレデリカさんによく似てるようですが……フランス人、でしょうか?」

ありす「……そ、そうですね!」

ありす「あの……私の、母の遠い親戚にフレデリカさんのお母さんがいまして!」

ありす「で、そこから、また遠い親戚をたどっていったところに……あの、この子がいるんです、はい!」

ありす(……じ、自分で言ってて相当苦しいですね、これ)

ありす(というか、別に宮本家とつなげる必要はなかったんじゃ……)

ありす(ああ、墓穴を掘ってしまいました……!)

文香「……そうですか」

文香「かわいらしい子ですね……」

ありす「し、信じるんですか……!?」

文香「嘘なんですか……?」

ありす「いえ、嘘ではないです、はい!}

ありす「ですが……あの、とても、突拍子のない関係ですから……」

文香「……ありすちゃんの言うことですから」

文香「私は信じますよ……?」

ありす(こっ……心苦しい!)

ありす(文香さんに嘘をついてしまうだなんて……!)

ありす(頭痛がする……吐き気もだ……!)

文香「……」

ありす(……いえ)

ありす(あの文香さんの表情……わかってる……!)

ありす(私に、いえない何かがあるんだって、わかってる……わかってて、受け入れてくれてるんだ……!)

ありす(さすふみ!)

ありす(やはり文香さんは女神だった)

ありす(……いえ、もはや、天使や、女神……そういった概念にいません)

ありす(文香さんは創造神すら超えた先の……何か)

ありす(すべてを司る何かなんです!)

ありす(……なんかいい言葉ないでしょうか?)

文香「それでは、私は先に失礼します……」

ありす「あ、はいっ!」

文香「……仲良くね?」

ありす「はい!」

ありす(さすふみ!)

ありす(さすふみ!)

ありす(さすふみ!)

ありす(……文香さん、素敵……!)

ありす(……さて)

フレデリカ「……」

ありす「あの」

フレデリカ「……?」

ありす「えっと……あの、ありすです」

ありす「わかりますか?」

フレデリカ「……」コクン

ありす「そうですか……」

ありす(……記憶は元の通りにあるんでしょうか?)

ありす「えっと……」

ありす(……フレデリカさん、このままにはしておけないですよね)

ありす(そもそも、今この子がフレデリカさんだってわかってるのは私だけですし)

ありす(……)

ありす「あの……」

ありす「私についてきてくれますか?」

フレデリカ「……」

ありす(……)

ありす(な、なんか誘拐犯みたいですね……いえ、そんなつもりはないんですけど)

フレデリカ「……」コクン

ありす「!」

ありす「ありがとうございます、それじゃあ行きましょう!」

ありす(よかった……)

ありす(今日はもうお仕事もないですし……後は夕飯食べて、お風呂入って、寝るだけ)

ありす(そうしたら明日になって……そのころにはもう戻ってるはずですから)

ありす(大丈夫でし――)

フレデリカ「……」グイッ

ありす「きゃっ!」

ありす「……あの、何ですか?」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……手」

ありす「手?」

フレデリカ「…………」

フレデリカ「……つないで?」

ありす「……」

ありす「……」

ありす(かわいすぎか!)

ありす(誰だこいつ、私こんなフレデリカさん知らない!)

ありす(無口で甘えん坊とか、本当に誰だ!)

ありす(……いえ、甘えん坊ってのはいつものフレデリカさんにもありましたけど)

ありす(よく私に甘えてきますしね)

ありす(……私で遊びに来るともいいますけど)

フレデリカ「……だめ?」

ありす「あ、いえ、ぜんぜんいいですよ!」

ありす「ありすお姉ちゃんに甘えてください!」ギュッ

フレデリカ「……♪」ギュッ

ありす(……勢いで言ってしまった)

ありす(しかし……本当に、まったく……なんてことをしてくれたんですか、あの女神は)

ありす(あんなに騒がしいフレデリカさんがこんなに口数少なくなるなんて……)

ありす(これじゃあ、フレデリカさんらしさほとんどないじゃないですか)

ありす「……じゃ、今度こそ行きましょう」

フレデリカ「……うん」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……おねーちゃん」

ありす(かわいすぎか!)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす「ええと、ここが私の部屋です」

フレデリカ「……」

ありす「ど、どうぞ……?」

フレデリカ「……」コクッ

ありす(……誰にも見つからずここにこれました)

ありす(あとはここで明日まで過ごすだけです)

ありす(そうすればフレデリカさんは元に戻るはずですから)

ありす「……それじゃあ、えっと……」

ありす(……ごはんまで、まだ少し時間がありますし)

ありす「何かして遊びますか?」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「じゃあ、何して遊びましょうか……」

ありす(……私の部屋、そんな遊び道具ないんですけど)

ありす(……あ)

ありす「じゃあ、このアプリで遊びましょう」

フレデリカ「……」

ありす(そうです、私にはタブレットがあるんです)

ありす(さすが、文明の利器ですね)

ありす「えっと、このアプリの遊び方なんですけど――」

ありす「――あ、一回実践してみますね」

ありす「――っと」

ありす「こんな感じで遊ぶんです」

ありす(……うん)

ありす(なかなかいいスコアです)

フレデリカ「……」パチパチ

ありす「あ、ありがとうございます……」

フレデリカ「……すごい」パチパチ

ありす「そ、そんなにほめないでください……ふふ」

フレデリカ「……」パチパチ

ありす「ふふ……えへへっ」

ありす「……あ、フレデリカさんもやりますか?」

フレデリカ「……フレちゃん」

ありす「……え?」

フレデリカ「……呼んで?」

ありす「え、あ、私がですか?」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「え、えぇ……」

フレデリカ「……」ジワッ

ありす「あ、いや、えっと、呼びますよ!」

ありす「あの…………ふ、フレちゃん」

フレデリカ「……♪」

ありす(……確かに、今相手してるのは幼いフレちゃんですけど)

ありす(な、なんだか変な感じです)

フレデリカ「……じゃあ」

ありす「あ、やりますか?」

フレデリカ「……」コクッ

フレデリカ「――……♪」

ありす(……ば、ばかなっ!)

ありす(私より、高いスコアを出してる……!?)

フレデリカ「……♪」ドヤッ

ありす「むっ……」

ありす(……この辺はフレデリカさんですね)

ありす(いつものフレデリカさんだったら)

ありす(『ありすちゃんより高いスコアでちゃった!』)

ありす(『フレちゃんすごーいっ、ほめてほめてー!』)

ありす(『ぱちぱち、すごい、かっこいーっ!』とか一人でやってそうです)

ありす(今も無口なだけで、同じこと思ってるかも

ありす(……姿は変わっても)

ありす(フレデリカさんはフレデリカさんなんですね……)

ありす(……)

ありす「……いいでしょう」

フレデリカ「……!」

ありす「見せてあげます、私の本気を……!」

フレデリカ「……」ゴクッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


フレデリカ「……♪」

ありす「あっ、くそっ、また抜かされました!」

ありす「どこにこんなポテンシャルが……!」

フレデリカ「……♪」ドヤァ

ありす「くっ、貸してください!」

ありす「負けません……私の限界を突破し、見事超えて見せます!」

ありす「今こそ、私の秘めたる力を――」

フレデリカ「――!」グゥゥゥ

ありす「……あ」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……ぅ」カァ

ありす「……ふふ、お腹がすきましたかフレデ……フレちゃん」

ありす「じゃ、ご飯にしましょうか」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「これはご飯の後にでもまたやりましょう」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「それじゃ、えっと、食堂に行ってもらって――」

フレデリカ「……」グイッ

ありす「――ん?」

フレデリカ「……つくろ?」

ありす「え?」

ありす「え、でも、私そんな料理なんてあまり……」

フレデリカ「……だめ?」

ありす「う……」

ありす(……このフレデリカさん、ずるいです!)

ありす(そんな……上目遣いで見られたら……くそっ、かわいい!)

ありす(やばい……私の中で文香さんに近づく存在が現れてきた……!)

ありす(フレデリカさん(幼)……こんなにも私の心をくすぐるなんて……!)

ありす「……わ、わかりました」

ありす「頑張りましょう……!」

フレデリカ「……♪」

ありす(この喜び顔ですよ!)

ありす(かわいすぎか!)

ありす(……くっ)

ありす(フレデリカさんを、こんなかわいいと思ってしまってるなんて……)

ありす(……なんか屈辱です!)

ありす「でも……部屋に何かあったかな……?」

ありす(普段私は料理なんてぜんぜんしませんから)

ありす(部屋に備え付けてる冷蔵庫を見ても、何も入ってるはずが――)

ありす「――にんじん、たまねぎ、じゃがいも、カレールー」

ありす「カレーの材料が入ってる……」

ありす「……あ、冷凍庫に豚肉まで」

ありす(……ああ、そうだ)

ありす(この前フレデリカさんが私の部屋に遊びに来たとき)

ありす(『今度ありすちゃんにご馳走するために持ってきたよー、置かせてねー♪』……って言って、おいてったんだ)

ありす(自分の部屋に置いておけよ)

フレデリカ「……カレー?」

ありす「そうですね」

ありす(……カレーなら私でも作れます)

ありす「それじゃ、作ってきますね」

フレデリカ「……」グイッ

ありす「……どうしたんですか?」

フレデリカ「……一緒に」

ありす「……一緒に作ろうかってことですか?」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「……わかりました」

ありす「それじゃ、一緒に作りましょう」

フレデリカ「……♪」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす(……包丁を使わせるのは危ないと思ったので、そういう作業は私がやろうと思ったのですが)

ありす(予想外にフレデリカさんの料理スキルが高かったので、心配する必要ありませんでした)

ありす(……元のポテンシャルはそのまま維持されてるんでしょうか)

ありす(本当に身長が小さくなっただけ……)

フレデリカ「……」グゥゥ

ありす「あ、ごめんなさい……いただきますしましょうか」

ありす「いただきます」

フレデリカ「……いただきます」

ありす(……前から思ってましたけど、フレデリカさんっていっつもあんなんですけど行儀はいいですよね)

フレデリカ「……」パクッ

フレデリカ「……♪」

ありす「……あ、おいしい」

ありす「……」

ありす「フレちゃんと二人で作ったからこんなにおいしいのかもしれませんね」

フレデリカ「……♪♪」

ありす「ふふ」

ありす(……かわいい)

ありす(くそっ、本当にかわいい……なんかもう、くやしい……!)

ありす(……)

ありす(……認めましょう)

ありす(フレちゃんはかわいい)

ありす(ですが、フレデリカさんとは、異なる存在です)

ありす(フレちゃんはフレちゃん、フレデリカさんはフレデリカさん)

ありす(フレデリカさんは私と同じ大地に立つ人間ですが)

ありす(フレちゃんは……地上に舞い降りた天使……)

ありす(そういう意味ではあの女神に感謝を――)

ありす(――いや、絶対しません)

ありす(あの女神さえいなければこんなことにもならなかったんですから)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす「ごちそうさまでした」

フレデリカ「……ごちそうさま」

ありす「……さて」

ありす「それじゃ、食器を洗いますか」

フレデリカ「……」グイッ

ありす「……今度はなんですか?」

フレデリカ「……やる」

フレデリカ「……おねーちゃん」

ありす「……もしかして、フレちゃんがやってくれるってことですか?」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「いえ、いいですよ」

ありす「私がやりますから……なんだったら、そのタブレットでもいじっててください」

フレデリカ「……」フルフル

フレデリカ「……やりたい」

ありす「……」

フレデリカ「……お手伝い」

ありす「……」

ありす「……わかりました」

ありす「それじゃ、一緒にやりましょうか」

フレデリカ「……」コクッ

フレデリカ「……♪」

ありす(天使か!)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす「……ふぅ」

ありす「食器も洗って……お風呂も入れて……」

ありす「……どっちも手伝ってくれてありがとうございます」

フレデリカ「……」

ありす「さて、じゃお風呂沸くまではしばらくのんびりしてましょうか」

ありす「あ、お風呂沸いたらどっちが先入ります?」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……一緒」

ありす「えっ?」

フレデリカ「……ダメ?」

ありす「いや……えっと……」

ありす「それは……ちょっと、恥ずかしいので……」

フレデリカ「……」シュン

ありす「……あ」

ありす(……いや)

ありす(でも……さすがに恥ずかしいですし……)

ありす(大浴場ならまだしも……それぞれの部屋に着いてる小さなお風呂を二人で、なんて)

ありす「ご、ごめんなさい、フレちゃん」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……後」

ありす「フレちゃんがですか?」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「わかりました」

ありす「それじゃ……あ、テレビでも見ましょうか」


………………

…………

……


ありす「……あ、沸きましたね」

ありす「それじゃ、私先に入ってきますね」

フレデリカ「……」

ありす「……そうだ」

ありす「フレちゃんの服なんですけど」

ありす「こちらに用意しておきました」

フレデリカ「……」

ありす「……私の服なので……今のフレちゃんにはちょっとダボダボかもしれませんけど」

ありす「でも、これ以外ないので……いいですか?」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「……ありがとうございます」

ありす「それでは、入ってきますね」

フレデリカ「……」コクッ

フレデリカ「……」

フレデリカ「……」

ありす「……ふぅ」

ありす(……何か、今日はどっと疲れました)

ありす(私が、軽薄に文香さんの前で女神とか言わなければこんなことにならなかったんですよね)

ありす(……いえ、仕方ないんです)

ありす(あの文香さんはあまりにも、かわいく、美しく、素敵だったので)

ありす(ですが、注意しないと)

ありす(口は災いの元ともいいますし)

ありす(今日みたいなことにもなりかねません)

ありす(もっと、心と表を分けて……)

フレデリカ「……」ガラガラ

ありす「……へ?」

ありす「ちょ、な、なんで、入ってきてるんですか!?」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……つい」

ありす「つい、じゃなくて!」

ありす「約束しましたよね、私先でフレちゃん後って!?」

フレデリカ「……つい」

ありす「つい、じゃなくて!」

フレデリカ「……へくちっ」

ありす「……あ」

ありす(……裸のままは寒いですよね)

ありす(もう服も脱いじゃってるし……もう一度着なおせって言うのも……)

ありす「……わ、わかりました」

ありす「一緒に入りましょう」

フレデリカ「……♪」

ありす「……はぁ」

ありす(……一緒に入ることになるなんて)

ありす(少し恥ずかしい……)

フレデリカ「……嫌?」

ありす「あ、いえ、嫌というかなんというか……」

フレデリカ「……」ジワッ

ありす「う……」

ありす「……た、楽しいですけど」

フレデリカ「……」パァ

フレデリカ「……♪」

ありす(……まあ)

ありす(一回一緒に入ってしまえば、慣れるでしょう)

ありす(いえ、もう二度とこんなことはないと思いますけど)

フレデリカ「……♪」

ありす(それにしても……)

ありす「……肌綺麗ですね」

フレデリカ「……?」

ありす(やっぱり、外国人の血が混ざっているからでしょうか)

ありす(フレちゃんの肌も……フレデリカさんの肌も透き通るような白色で綺麗です)

ありす(……やわらかいのかな)

ありす「……」プニ

ありす「あっ」

フレデリカ「……」

ありす(……つい先ほど、心と表は別にしようと決心したばかりなのに……)

ありす(出来心で、ついつついてしまいました……)

フレデリカ「……?」

ありす「あ、いえ、なんでもないんです……」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……」プニ

ありす「ひゃっ」

ありす「な、なんですか……?」

フレデリカ「……」プニプニ

ありす「ちょっ、も、もう!」

ありす「やめてください!」

フレデリカ「……♪」プニプニプニ

ありす「ああ、もうっ!」

ありす「仕返しですっ!」プニプニ

フレデリカ「……♪」プニプニ

ありす「ひゃっ、変なところ触らないでください!」プニプニ

フレデリカ「……きゃっ」

フレデリカ「……♪」プニプニ

ありす「もうっ!」プニプニ



………………

…………

……

ありす(……ちょっとフレちゃんと遊びすぎました)

ありす(いつもの2,3倍くらいお風呂に入ってた気がします)

フレデリカ「……」

ありす「……そのパジャマでよかったですか?」

フレデリカ「……」コクッ

フレデリカ「……好き」

ありす「そうですか」

ありす「私もそれ好きです……かわいいですよね、イチゴ柄」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「……それじゃ、そろそろ寝ましょうか」

ありす「もう眠いです……ふわぁ」

フレデリカ「……」

ありす「……あ、フレちゃんは――」

フレデリカ「――一緒」

ありす「……わかりました」

ありす「それじゃ、一緒に寝ましょうか」

フレデリカ「……」コクッ

ありす「……」

フレデリカ「……」ピトッ

ありす「あの……フレちゃん」

ありす「ちょっと……そんなに抱き疲れると暑いんですけど」

フレデリカ「……♪」

ありす「だから、あの……」

フレデリカ「……ダメ?」

ありす「……」

ありす「……ふ、フレちゃんは暑くないんですか?」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……暑い」

ありす「じゃあ、離れればいいじゃないですか!」

フレデリカ「……」フルフル

ありす「……」

フレデリカ「……ダメ?」

ありす「……」

ありす「……わかりましたよ、もう!」

フレデリカ「……♪」

フレデリカ「……おねーちゃん」

フレデリカ「……好き」

フレデリカ「……♪」

ありす「……ふふ」

ありす「それじゃ、おやすみなさい」

フレデリカ「……おやすみ」

ありす「……」

ありす(……やっと、終わった)

ありす(なんか……長い一日でした)

ありす(それもこれも…………もう誰のせいにしていいかもわかりませんよ)

ありす(……)

ありす(……しかし、今日でフレちゃんとお別れなんですよね)

ありす(明日にはフレデリカさんに戻ってるわけですし)

ありす(……)

ありす(……ちょっとだけ、名残惜しいかも)

ありす(いえ、そんなこと思っちゃダメなんですけど)

ありす(……)

ありす(……おねーちゃんって呼ばれて)

ありす(ちょっとうれしかった)

ありす(……)

ありす(……ふふ)

ありす(……)

ありす(……)

ありす(……)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ありす「……」

ありす「……んぅ」

ありす「ふわぁ……」

ありす「……」

ありす「……あれ、フレちゃんは……?」

フレデリカ「アタシならここだよ!」

ありす「!?」

フレデリカ「やっほー!」

ありす「ふ、フレデリカさん!?」

フレデリカ「イェーッス、本物のフレデリカだよー♪」

ありす「な、なんで……!?」

フレデリカ「昨日フミカちゃんの中の女神が言ってたじゃん!」

フレデリカ「明日になったらアタシは戻るって!」

ありす「あ、はい……言ってました」

フレデリカ「だから、明日になった瞬間……0時00分にアタシは元の姿に戻ったのだ!」

ありす「……そうだったんですか」

ありす「……じゃあ、あの」

ありす「なんで、布団に包まってるんですか?」

フレデリカ「……体は元の姿に戻ったんだけど」

フレデリカ「でも、ありすちゃんの服はアタシに合って大きくなったりしなくて」

フレデリカ「ちょっときつくって、脱いじゃったの」

ありす「……」

ありす「……もしかして、その」

フレデリカ「……」

フレデリカ「……フレちゃんの着替え持ってきて欲しいなー」

ありす「……本当に役立たずの女神ですね」

フレデリカ「小さくなるときはアタシの服小さくなっちゃったのにねー」

ありす「……まあ、わかりました」

ありす「それじゃ、部屋の――」

ありす「――待ってください」

フレデリカ「ん?」

ありす「あの、明日になったら戻るって女神が言ってた……って言いましたよね」

フレデリカ「うん!」

ありす「……もしかして、小さくなってたときの記憶って……」

フレデリカ「……」

フレデリカ「ありすおねーちゃん!」

ありす「やめてください!」

ありす「ああ、もうっ、はずっ、恥ずかしいっ!」

ありす「本当に、ダメな女神ですね、あいつ!」

ありす「文香さんを見習ってください!」

フレデリカ「ふふっ♪」

フレデリカ「フレちゃんはいつもどおりだっただけどねー」

フレデリカ「言動に表そうとすると、そのまんま表せなくて、あんな風になっちゃったの」

フレデリカ「女神ってすごいねー」

ありす「まあ、確かにすごいですね……」

フレデリカ「でも、あんな姿だったからかありすちゃんがいつもより優しかった気がする!」

フレデリカ「おかげで、アタシもやりたいこといっぱいできた!」

ありす「うぅ……ううぅ!」

ありす「昨日の私に教えてやりたい……!」

ありす「……あれ?」

フレデリカ「ん、今度はどしたのー?」

ありす「いえ、やりたいこといっぱいできた……って」

ありす「私と一緒に料理したりしたかったんですか?」

フレデリカ「あ」

ありす「一緒に遊んだり……」

ありす「一緒に寝たり……」

ありす「あ、一緒にお風呂も……」

ありす「……っていうか、あの時も今のフレデリカさんと同じだったんですよね」

ありす「じゃあ、あんなに抱きついてきたり……はしゃいだりしてたのは……」

フレデリカ「……」

ありす「……」

フレデリカ「……」

ありす「……」

フレデリカ「……う、うん」

フレデリカ「したかったから……」

ありす「そ、そうですか……」

フレデリカ「……」

ありす「……」

フレデリカ「……なんて、昨日のフレちゃんの真似でした!」

フレデリカ「今のフレちゃんの心とは、実はちょっとだけ違ったのだ!」

ありす「そっ、そうですよね!」

ありす「あーびっくりした、びっくりしました!」

フレデリカ「あははっ、フレちゃんマジック大成功!」

ありす「どこがマジックなんですか、もうっ!」







おわり

いろいろこじらせたので、ノリと深夜の勢いです

幼少期フレちゃんは今がおとなしく見えるほど自由奔放であるといい


誤字脱字、コレジャナイ感はすいません。読んでくださった方ありがとうございました

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