フレデリカ「明日また会えるよね?」 (26)
ありす「おはようございます」ガチャ
ありす「……」キョロキョロ
ありす「……あ」
ありす「おはようございます、フレデリカさん」
フレデリカ「……あ」
フレデリカ「おはようございます、橘さん」ペコリ
ありす「文香さん見ませんでした?」
フレデリカ「いえ……見てません」
フレデリカ「おそらく、まだ来てないんじゃないでしょうか?」
ありす「あ……そうですか」
フレデリカ「ふふ、きっと待ってればすぐ来ると思いますよ」
ありす「……そうですよね」
ありす「ありがとうございます、フレデリカさん」
フレデリカ「いえいえ……では、私は向こうで小説を読んでますので」
ありす「わかりました」
ありす「……」
ありす「……」
ありす「誰だ今の!?」
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ありす「ちょっ、ちょ、ちょっと待ってください!」
フレデリカ「はい?」
ありす「誰ですかあなた!」
フレデリカ「私ですか?」
フレデリカ「私は宮本フレデリカですが……」
ありす「嘘だっ!」
フレデリカ「嘘ではないんですが……」
フレデリカ「……はっ!」
フレデリカ「もしかして……橘さん、私のこと忘れてしまったんですか……?」
ありす「そんなフレデリカさんは私の記憶上にひとかけらもいません」
フレデリカ「そんな……」
フレデリカ「しくしく……よよよ……」
ありす(あ、ちょっとフレデリカさんっぽい)
ありす「ともかく、そんなフレデリカさんを私は知りません」
ありす「いつものフレデリカさんに戻ってください」
フレデリカ「いつもの私……?」
フレデリカ「……それって、どんなのでしたか?」
ありす「うぇっ!?」
フレデリカ「私にとってはこれが普通なのですが……」
フレデリカ「橘さんの言う普通の私っていうのはどういうのでしたか……?」
ありす「え、えぇ……」
ありす「……」
ありす「……あっ!」
ありす「もしかして……誰かがフレデリカさんの真似をして私をはめようとしてるんですね!」
ありす「その手にはかかりません、正体を見せてください!」
フレデリカ「……」
ありす「……」
フレデリカ「……あの、どういう意味でしょうか?」
ありす「えっ?」
フレデリカ「正体も何も……これが私なのですが……」
ありす「……えっ、いや、変装かな……って」
フレデリカ「……そんなことありません」
フレデリカ「ほら……髪の毛ひっぱっても取れないでしょう?」
ありす「……本当だ」
ありす「……」
ありす(……恥ずかしい)
ありす(じゃあ……変装じゃないってこと……?)
ありす(それじゃあ、今のフレデリカさんはどうしてあんな――ハッ!)
ありす(もしかして……記憶喪失……!?)
フレデリカ「橘さん?」
ありす(だからこんな……フレデリカさんのフの字もないような人になっちゃってるんじゃ……!)
ありす(……そうです、そうに違いありません)
ありす(なら私のやることはひとつ……)
フレデリカ「……おーい、ありすちゃーん」
ありす(今ここで、完璧なフレデリカさんの真似をして、本来のフレデリカさんを思い出させること!)
ありす(……やってみせましょう)
ありす(完璧なフレデリカさんの物真似を!)
ありす「……わかりました、フレデリカさん4」
フレデリカ「えっ?」
ありす「今、普通のフレデリカさんの物真似を全力でやりましょう!」
フレデリカ「……あ、ああ!」
フレデリカ「うん……じゃないや、はい」
フレデリカ「よろしくお願いします」
ありす「……?」
ありす「……まあ、いいです」
ありす「それじゃ、行きますね!」
ありす「……」
フレデリカ「……橘さん?」
ありす「……や」
ありす「ヤッホー!」
ありす「みんな大好きフレちゃんだよー、おはこんばんちはー!」
フレデリカ「……っ」
ありす「……あ、あれ?」
ありす「まだ足りない……それじゃあ……」
ありす「おおっ、そこにいるのはありすちゃん!」
ありす「どうしたのー? そんなしょぼくれたチューリップみたいな顔しちゃってー」
フレデリカ「……ふ……ふふっ――」
ありす「……こんな感じです、思い出しましたか?」
フレデリカ「っ――あ、いえ、まだ……」
ありす「そうですか……じゃあ、続けますね」
ありす「そんなしょぼくれたチューリップみたいな顔しちゃってー」
ありす「橘です!」
フレデリカ「っ――!」
ありす「というか、どんな顔ですか、それ!」
ありす「うーん……なんていうか……こんな感じ」ドヨーン
ありす「そんなひどい顔してません!」
フレデリカ「ぷっ……く……ふふ――」
フレデリカ「――あははははっ!」
ありす「!」
ありす「どうしたんですか、フレデリカさん?」
フレデリカ「う、ううん……ありすちゃんが、ちょっと面白いし、かわいくて……ふふ、あははっ!」
ありす「……はっ!」
ありす「その反応はいつものフレデリカさん!」
ありす「記憶が元に戻ったんですね!」
フレデリカ「あははははっ――ん、なにそれー?」
ありす「……えっ?」
ありす「だって、さっきまで……いつものフレデリカさんじゃなかったじゃないですか」
フレデリカ「そうだねー」
フレデリカ「大学でのいつものフレちゃん見たらどう思うかなーって」
フレデリカ「ちょっと頑張ってみたのだ!」
ありす「……じゃあ、別に記憶喪失だったってわけじゃないんですか?」
フレデリカ「うん、違うよー」
フレデリカ「さっきまでのフレちゃんもちゃんとフレちゃんだったのだ!」
ありす「……っ!」
フレデリカ「うふふっ、ありすちゃんフレちゃんのことよく見てるなーってうれしくなっちゃった!」
ありす「も、もうっ!」
フレデリカ「でも、一人二役やり始めたのは面白くて……ふ、ふふっ!」
フレデリカ「思い出すとまた……ふふ、あははっ!」
ありす「忘れてくださいっ!」
フレデリカ「フレちゃんもやってみようかなー!」
フレデリカ「ありすちゃーん!」
フレデリカ「橘です!」
ありす「やめてくださいっ!」
ありす「……ん?」
フレデリカ「ん、どしたのありすちゃん?」
ありす「橘です」
ありす「……いえ、さっきまでの姿って大学での姿だったんですか?」
フレデリカ「そだよー」
フレデリカ「こうやってメガネをかけると……マジメフレチャン!」
フレデリカ「うふふっ、みくちゃんみたい♪」
ありす「……」
ありす「……大学だといつもこうじゃないんですね」
フレデリカ「こう?」
ありす「……テキトーで、自由で、何にもとらわれてない感じです」
フレデリカ「わお!」
フレデリカ「ありすちゃんの目からフレちゃんはそう見えてたのかー!」
ありす「誰にでもそう見えると思います」
フレデリカ「アタシにもそう見えると思うー♪」
ありす「……」
フレデリカ「で……あ、そうそう、大学でのアタシだよねー」
フレデリカ「やっぱり大学は学ぶところだからさー」
フレデリカ「もっとマジメなアタシでいかないと!……って思ってねー」
ありす「……だから、一人称とか、言葉遣いとかも変えてたんですか?」
フレデリカ「そうだよー」
フレデリカ「フレちゃん、マジメにみえたー?」
ありす「……確かに、いつもよりはマジメに見えましたし」
ありす「そもそも誰だこの人って思いました」
フレデリカ「思いっきり叫んでたねー」
ありす「それだけの衝撃だったんです!」
ありす「私の知ってるいつものフレデリカさんとは似ても似つかない人でしたから」
フレデリカ「そっかー」
フレデリカ「もし、あのままアイドルになってたら今と違ってマジメでおとなしいクールなフレちゃんになってたのかも!」
ありす「かもしれませんね……」
ありす「まあ文香さんにはかないませんが」
フレデリカ「別に張り合ってないんだけどなー」
フレデリカ「でも、これ結構疲れるんだよねー」
ありす「えっ」
フレデリカ「はしゃぎたいときとか、そういうときもぐってこらえて」
フレデリカ「まじめーって感じのフレちゃんでいないといけないから」
ありす「……」
フレデリカ「もうこんなのだったら、大学ほっぽりだしてフランスに高飛びしたいっ!……ってくらい」
ありす「……そんなことしたら、アイドルもできませんよ?」
フレデリカ「あっ、そっか!」
フレデリカ「じゃあできないねー、あははっ!」
ありす「……」
ありす「……私はよく知らないですけど」
ありす「大学を辞めたりとかはしないんですか?」
フレデリカ「うーん……学んでる内容は学びたい内容だからねー」
フレデリカ「そうじゃなきゃマジメフレチャンはつまんなくておうちに帰っちゃう!」
ありす「……まあ、フレデリカさんならそうですよね」
ありす「小中高もそんな感じで学校に行ってそうな気がします」
フレデリカ「……」
ありす「あ、あれ……否定しないんですか?」
フレデリカ「だって、本当のことだし……」
ありす「えっ」
フレデリカ「みんなには嘘ついてるんだけどね……」
フレデリカ「実は……高校のとき、授業がつまらなくていかなすぎて……」
フレデリカ「進級できなくて……まだ高校生のままなんだよね」
ありす「嘘ですよね!?」
フレデリカ「本当だよー」
フレデリカ「えっと……ほら、これ今年度の学生証」
ありす「どれどれ……って大学の学生証じゃないですか!」
フレデリカ「あっ、バレちゃった」
フレデリカ「バレてはしかたない……実はフレちゃんは皆勤賞とるくらい優等生だったの
だ!」
ありす「……ああ、そっちのほうがなんか納得できます」
フレデリカ「おや?」
ありす「フレデリカさんって風邪ひかなそうですし」
フレデリカ「うーん……褒められてるのか褒められてないのか……」
ありす「褒めてますよ」
ありす「そんないつも元気なフレデリカさんに私は――」
ありす「――あっ」
フレデリカ「私は?」
ありす「……」
フレデリカ「ねーねー、私はなんなのー?」
フレデリカ「おしえてよー、ありすちゃーん!」
ありす「……い、言いません」
フレデリカ「えーっ!」
フレデリカ「気になる、気になーるーっ!」
フレデリカ「おしえて、ありすちゃん!」
フレデリカ「略しておしりすちゃん!」
ありす「なんですか、その略し方!?」
フレデリカ「さらに略すとしりちゃん!」
ありす「もはや原型がほとんどないんですけど!」
フレデリカ「Hey Siri!」
ありす「私じゃないじゃないですか!」
フレデリカ「……で、結局何を言おうとしてたのー?」
ありす「……」
ありす「……いえ」
ありす「別に……ただ、元気をもらってるってだけですよ」
フレデリカ「……そっかー」
フレデリカ「……ふふ」
ありす「……なんですか?」
フレデリカ「ううん、別にー」
フレデリカ「……じゃあ、旅に出るのやめよっかなー」
ありす「旅……?」
フレデリカ「あっ……」
ありす「……」
フレデリカ「……」
ありす「……どういうことですか?」
フレデリカ「……」
フレデリカ「……実はー」
フレデリカ「フレちゃんちょっと自分探しの旅にでよっかなーって」
ありす「自分探しの旅……?」
フレデリカ「うん……」
フレデリカ「事務所だとこんなんだけど、大学だとさっきみたいなマジメフレチャンじゃん?」
ありす「……そうですね」
フレデリカ「……でね、フレちゃん本当の自分って言うのがどっちかわかんなくなっちゃったの」
フレデリカ「もしかしたら、このどっちでもないフレちゃんが本当のフレちゃんかもしれないし」
フレデリカ「だから、アイドルからも、大学からも離れて、自由に旅して、ホントのアタシをもう一回見つけよっかなって……」
ありす「……」
フレデリカ「ねぇ……ありすちゃん」
フレデリカ「明日また会えるよね?」
ありす「……普通、そういうのって私が言うもんじゃないんですか?」
フレデリカ「ん、そうなの?」
ありす「そうですよ」
ありす「私が、フレデリカさんに『明日また会えるよね』って聞いて」
ありす「フレデリカさんが『うん』って答えて」
ありす「でも明日になってもフレデリカさんは来なくて――っていうのが普通の流れじゃないですか?」
フレデリカ「漫画みたいだねー」
ありす「……まあ、最近そういう本を読んだからかもしれないですけど」
ありす「でも……じゃあ、なんでフレデリカさんは明日私に会いたいんですか?」
フレデリカ「ん……まあ、いろいろ相談に載ってもらおうかなーって」
ありす「私にですか?」
フレデリカ「うん」
ありす「……小学生ですよ?」
ありす「いや、自分で言ってて非常に悔しいですけど……でも、適任はほかにもいると思いますが」
フレデリカ「ありすちゃんがいいの」
フレデリカ「アタシ、ありすちゃんを一番信頼してるから」
ありす「……」
フレデリカ「ありすちゃん……明日また会えるよね?」
ありす「……」
ありす「……会えます」
ありす「会えますよ」
ありす「わかりました……私で役に立つかどうかはわかりませんけど……」
ありす「私なりに、精一杯フレデリカさんの相談に乗ります!」
フレデリカ「……そっか」
フレデリカ「ありがとね、ありすちゃん」
フレデリカ「全部嘘なのに」
ありす「いえいえ、これくら――」
ありす「――は?」
ありす「今、なんていいました?」
フレデリカ「全部嘘なのに」
ありす「……全部?」
フレデリカ「全部」
ありす「じゃあ、旅に出ることも……?」
フレデリカ「嘘だよー」
ありす「相談したいことがあるってことも……?」
フレデリカ「嘘なり!」
ありす「皆勤賞とったってことも……?」
フレデリカ「嘘アル!」
ありす「大学ではマジメフレチャンを演じてるってことも……?」
フレデリカ「嘘ざます!」
ありす「……」
ありす「……な」
ありす「なんですかそれはあああぁっ!!」
ありす「なんなんですか!」
ありす「なんなんですか、今日は、もうっ!」
フレデリカ「どうどうどう……まあまあ落ち着いてー!」
ありす「私をこうさせたのはフレデリカさんです!」
フレデリカ「飴なめるー?」
フレデリカ「ミント味だけど」
ありす「いりません!」
フレデリカ「あ……ありすちゃんはこっちのイチゴ味の方がよかったかな?」
ありす「……もらいます」
フレデリカ「うふふっ」
ありす「……じゃなくて!」
ありす「なんで今日はこんな嘘ばっかりつくんですか!」
フレデリカ「ありすちゃんがどんな反応するかなーって思って!」
ありす「思って――じゃないです!」
ありす「今日はエイプリルフールじゃないんですよ!」
フレデリカ「ジューンフールかなー?」
ありす「違いますっ!」
ありす「まったく……もう、なんのために私が真剣に考えたか……」
フレデリカ「わお、真剣に考えてくれたんだ!」
ありす「……っ!」
フレデリカ「フレちゃん大感激~♪」
ありす「う……ううううっ!」
ありす「もう知りませんっ!」
ありす「フレデリカさんなんて旅にでもなんでも行っちゃえばいいんですっ!」プイッ
フレデリカ「えー……相談のってくれないのー?」
ありす「のりません!」
フレデリカ「そっかー……」
フレデリカ「……ありすちゃんを一番信頼してるってことは本当だったのになー」
ありす「……」
ありす「……もっ、もう!」
ありす「そのくらいじゃだまされませんからね!」
ありす「……」
ありす「……ふふ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありす「……おはようございます」
ありす「……」キョロキョロ
文香「……おはようございます、ありすちゃん」
ありす「!」
ありす「おっ、おはようございます、文香さん!」
ありす「朝一番で文香さんと会えてすごくうれしいです!」
文香「そうですか……ありがとうございます……ふふ」
文香「それで……誰かをお探しですか?」
ありす「……あ、はい」
ありす「フレデリカさん、いないかなって」
文香「フレデリカさん……」
文香「……私がここに来てからは見てません」
ありす「あ……そうですか」
文香「……何か会ったのですか?」
ありす「あ、いえ、特に何かあったというわけではないんですけど……」
文香「……」
ありす「……本当ですよ?」
文香「いえ、信じてないわけでは……」
文香「……」
ありす「……」
ありす「……まあ、ともかく、少し待ってみます」
ありす「ありがとうございます、文香さん!」
文香「いえ……」
ありす(……フレデリカさんが来ていない)
ありす(これは好都合です)
ありす(……昨日は散々フレデリカさんにだまされました)
ありす(これでもかというくらいだまされました)
ありす(……今日はその仕返しをたっぷりしたいです)
ありす(……いや、します)
文香「……くぁ」
ありす「……文香さん、夕べは遅かったんですか?」
文香「あっ……はい……つい本に入り込んでしまっていて……」
文香「これからレッスンなのに……」
ありす「……ちゃんと睡眠はとらないとだめですよ?」
文香「そうですね……レッスン終わったら仮眠でも……」
ありす「今からは難しいんですか?」
文香「もうすぐなので……あ、時間ですね」
文香「それでは……また」
ありす「はい、また」
ありす「……」
ありす「……」
ありす(文香さんかわいい!)
ありす(天使か! あくびとか天使か!)
ありす(……無表情を貫いてましたが、ほんのり頬が赤くなってました)
ありす(あれは、あくびを私に見られて恥ずかしいという顔でした!)
ありす(ああ、もうっ、文香さんかわいい!)
ありす(……じゃなくて)
ありす(そう、フレデリカさん、フレデリカさんへの仕返しです)
ありす(いったいどうしてくれようか……どんな仕返しがいいでしょうか)
ありす(うーん……やっぱり普段の私と違うことをする……とか?)
ありす(普段の私じゃない私……)
ありす(……『よう、フレデリカ、昨日ぶりだな!』)
ありす(……『わたくしに何か用ザマスか?』)
ありす(……『拙者、そなたに会えることを先刻より待ちわびていたでござる』)
ありす(いや、どれも違いますね)
ありす(たぶん私が途中で限界を迎えます、語彙力とか、その他もろもろで)
ありす(じゃあ、どうすれば)
………………
…………
……
ありす(……あ、事務所の誰かの真似をするのはどうでしょう?)
ありす(それなら、私でも、まだできそうですし……たぶん、フレデリカさんも驚くでしょう)
ありす(魂が入れ替わったとか言っておけば騙せそうな気がします)
ありす(じゃあ、誰と……)
ありす(『にょわー☆ ありりんだにぃ☆』……いや、これは無理ですね)
ありす(『橘ありすです、がんばります、ぶいっ!』……これならいけそうです)
ありす(しかし、インパクトが……せっかくならフレデリカさんが一番驚くものをしたいです)
ありす(だとしたら、もっとインパクトの強い……)
ありす(『フフーン! 私はカワイイですからね!』……途中で恥ずかしくなっちゃいそうです)
ありす(『えー……ありす働きたくないんだけどなー』……あ、これ結構よさそうかも)
ありす(これなら、私でもできそうだし……)
ありす(……他のも一応考えますか)
………………
…………
……
ありす(……)
ありす(……)
ありす(……フレデリカさん、遅いですね)
ありす(いつもならこのくらいの時間には事務所にいるのに)
ありす(レッスンが早くても……遅くても……誰かと遊んでいるのをよく見ます)
ありす(けど、今日は来ない)
ありす(……)
ありす「……もしかして、私の思考が読まれた……?」
ありす(いえ、フレデリカさんはサイキッカーではありませんからそれはないでしょう)
ありす(じゃあ、なんで……)
ありす(……)
ありす「……」
ありす「『旅に出よっかなって』」
ありす「……」
ありす「いや、まさか」
ありす(昨日、あの辺の話は全部嘘って言ってましたし)
ありす(……でも)
ありす(本当のことを嘘だって言って、一人で行くのも物語だとよくあることですよね)
ありす(仲間に心配かけないように……とか、そんな理由で)
ありす(……)
ありす「いや、まさか」
ありす(……)
ありす(……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありす(……来てしまった)
ありす(フレデリカさんの寮の部屋の前……)
ありす(……いや、まさか、そんなことはないと思いますけど)
ありす(……)
ありす(……)
ありす「……」コンコン
ありす「……」
ありす「……」
ありす「……」コンコン
「――はーい」
ありす「!」
ありす(……なんだ、やっぱりいるんじゃないですか)
ありす(結局私の思い過ごしってことですね……なんだ、よかった……)
ありす(……そりゃそうですよね)
ありす(そんな、物語みたいなことそうそうおきませんって)
フレデリカ「……んー……おはよー」ガチャ
フレデリカ「宮本=アリス=フレデリカだよー?」
ありす「なんですか、そのミドルネーム!?」
フレデリカ「……あれ、ありすちゃん?」
ありす「はい、橘です」
フレデリカ「私もアリス……ありすちゃんもありす……」
フレデリカ「はっ!」
フレデリカ「もしかして、私とありすちゃんは生き別れの双子……!?」
ありす「双子なら同じ名前つけるわけないじゃないですか!」
ありす「そもそも年齢が違います!」
フレデリカ「おお、本物のありすちゃん!」
ありす(……あ)
ありす(……仕返しするなら、ここ適当に肯定しておけばよかったかも……失敗しました)
フレデリカ「どしたのー?」
ありす「……フレデリカさんこそ」
ありす「まだパジャマなんですね」
フレデリカ「うん……今日はずっともっとウルトラスーパーリラックスしよっかなーって思ってたから」
フレデリカ「オフだしねー」
ありす「……オフだったんですか?」
フレデリカ「そだよー」
フレデリカ「もう1日中寝てようかなって思ったんだけど」
フレデリカ「ありすちゃんが来たから起きちゃった」
ありす「あ……ごめんなさい……」
フレデリカ「いいよー♪」
フレデリカ「で、ありすちゃんはどしたのー?」
ありす「……」
フレデリカ「……ありすちゃん?」
ありす(……まずい)
ありす(どうしよう……どういう理由つけよう……)
ありす(本当の理由を言うのは……恥ずかしい、恥ずかしすぎる)
ありす(かといって嘘の理由……何か理由……)
ありす(……あ、そうだ!)
ありす(もともと、仕返ししようと思ってたんです……なら、今、ここで!)
フレデリカ「……もしかして、言いづらい――」
ありす「フレデリカさん」
フレデリカ「――ん、なにー?」
ありす「私は……」
ありす「……いえ」
ありす「……ありすは」
ありす「ありすは週休八日を希望し働かないためにここに来ました!」
フレデリカ「!」
ありす(……あっ、驚いてる!)
ありす(やった、成功です!)
ありす「ありすは働かないぞー!」
ありす(ふふっ、畳み掛けです、昨日の仕返しです!)
フレデリカ「そっか……」
フレデリカ「……ありすちゃんにもいろいろあるんだよね」
ありす「……えっ?」
フレデリカ「……よし、わかった!」
フレデリカ「じゃあ、今日はフレちゃんと一緒にウルトラハイパースーパーリラックスしよう!」
ありす「えっ?」
フレデリカ「そうと決まればお部屋へ招待~!」グイッ
ありす「えっ、いや、ちょっ……!」
ありす「この後レッスンが――」
フレデリカ「――大丈夫大丈夫、プロデューサーにはアタシから連絡しとくから」
フレデリカ「それに、働きたくないんでしょ?」
ありす「いや、えっと……」
フレデリカ「……ありすちゃんが話したくなるまで、深くは聞かないよ」
ありす「あの……」
フレデリカ「とりあえず、リラックスしたら気分もすっきりすると思うんだー」
フレデリカ「だから、ありすちゃんはこのフレちゃんハウスでい~っぱいリラックスしてね!」
フレデリカ「まあフレちゃんの家ではないんだけど、うふふっ」
ありす「……」
フレデリカ「どうする、何か飲むー?」
ありす「あ、いえ、お構いなく……」
フレデリカ「じゃ、オレンジジュースねー」
ありす「いや……あ、あの……大丈夫です……」
フレデリカ「そんな硬くならないでー、リラックスリラックスー!」
フレデリカ「お菓子もあるからもってくるねー」
フレデリカ「フンフンフフーン♪」
ありす「……」
ありす「……」
ありす(驚かせたし……騙すことには成功したんですけど……)
フレデリカ「持ってきたよー」
フレデリカ「じゃ、乾杯しよ!」
フレデリカ「かんぱ~い♪」
ありす「か、かんぱ~い……」
ありす(……どうしよう、これ)
おしまい
フレちゃんとありすちゃんがイチャイチャしてるのが好きっていう気持ちと勢いだけです
没案だと部屋を訪ねるも返事がなく、扉の前でガシャガクしてるところにフレちゃんが遊びから帰ってくるものでした
誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。呼んでくださった方ありがとうございました。
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