小林オペラ「この裁判の逆転の逆転の逆転」 (479)

トイズ、それは選ばれし者の心に咲く奇跡の蕾

そして現れた大探偵時代。

それは、トイズを花咲かせた探偵と怪盗が美しさを競う会う時代であった。

だが、今や大アイドル時代

アイドル達もまた、美しき花を咲かせ競い合う時代。

その中にもう一つ、その花達とは比べ物にならない程に大きく輝き

美しき花達を摘み、残虐に殺してしまう花があった。

探偵はトイズを正義に使い

怪盗はトイズを悪事に使い

アイドルはトイズとエレメントを駆使し、人々に夢と希望を与える。

そして、サイコパスは―――トイズを殺人に使う

それらを凌駕し輝く為だけに大きなトイズを欲し続け

血で汚れた花畑の中心で、誰よりも美しく輝き続け人々を魅了し続けるのであった……



第四話  「紅い花畑の中心で」




小林(前回の裁判から一ヶ月近く経った)

小林(神津が調べているサイコパスの調査が進められている…事は知っているが)

小林(何故か、今回ばかりは僕に情報が貰えない)

小林(僕だって無関係では無い筈だ。だからどうして情報をくれないのか神津に問い詰めた所)

神津『お前がおおいに関係しているからだ』

小林(…と、返答された。僕が関係しているなら、余計知るべきではないのかと思うが…)

小林(そこは神津も思う所があるのだろうと、観念して今に至る)

小林(…………)



【小林オペラ横浜事務所  12月20日 午前10時11分】


小林「もうそろそろ、クリスマスか…」

小林(…思えば、彼女達とクリスマスを共に過ごすのは初めてな気がする)

小林(……そして冷静に考えれば、彼女達はクリスマスには実家に帰っている事であろう事に気づく)

小林(そうだよ、クリスマス以前に学園では冬休みだ。普通の生徒なら実家に帰っている事だろう)

姫百合「……ふぅ、小林さんもコーヒー入れますか?」

小林「うん。貰おうかな」

小林(…恐らくクリスマスにこの事務所に居るのは、今や学園の生徒では無い姫百合くんと…)

コロン「ウチもコーヒー頂戴!師匠と同じ奴やで!」

姫百合「ブルーマウンテンのブラックですけど、大丈夫なんですか?」

小林(この冬でも薄着のコロンくんかな……)

小林(油断すればスグに脱ぐ少女とこの事務所では最年少の少女…こういっちゃなんだが、非常に犯罪の臭いがする)

小林(僕だけでも、誤解を特にアンリエット会長からされないように彼女達をホテルに泊めて僕一人で過ごした方が無難じゃないだろうか?)


姫百合「…ああ、そういえば小林さん。クリスマスはどうするんですか?」

小林「ん?」

姫百合「いえ、ミルキィホームズの皆さんはそれぞれ家に帰られるでしょうし。私もずっとここに居るわけにもいきません」

姫百合「なので、私もそろそろ自分探しの旅を再開しようかと…」

小林「…うーん、それなら題無いと思うよ。彼女達ならクリスマスパーティを開くと思うし。それに君を呼ばない筈が無い」

小林「寧ろ、僕がどこかのホテルに泊まる事にするよ。元々そのつもりだったし」

コロン「ええー!?師匠はクリスマスパーティ参加しないん!?」

小林「はは…さすがに女の子が6人で男が僕一人だと、僕の居場所が無さそうだから」

小林「一応地元の友人を誘って飲みにでも行こうかなって。一応僕も成人だし」

小林(お酒は飲めないけど)


姫百合「……………」フムッ

姫百合「…多分、無理だと思いますけどね。それ」

小林「え?」


バッタァアアンッ


シャロ「先生!大変です事件ですよ事件!」

コーデリア「私達!茉莉音ちゃんのクリスマスコンサートに招待されましたの!」

ネロ「以前、依頼で助けたお礼なんだってさ。開始5分で無くなったチケットをタダでくれるなんて。」

ネロ「本当、転売したらいくらくらいになるやら」

エルキュール「そ…その……だから…その……小林さんと…ヒメさん…も」オドオド

小林「うっうわっ、待って。落ち着いて君達」

シャロ「落ち着けませんよ!だって!あの茉莉音ちゃんのコンサートなのですよ!?それもクリスマスの!」

ネロ「関係者である僕達も、思いっきりはしゃがないとねーその日」

姫百合「…茉莉音さん?それって、アイドルのあの人ですか?」

シャロ「はい!そーなんです!あの茉莉音ちゃんです!!」

小林「姫百合くんは知っているのかい?」

姫百合「はい。日本では結構有名なアイドルですから」

ネロ「そうそう。それで、僕達は茉莉音の依頼を……」

ネロ「……って、小林?」

小林「ん?」

コーデリア「あの…もしかして茉莉音ちゃんを知らないんですか?教官は…」

小林「ははは…いやぁいくらなんでも、僕が君達の依頼人の事を全部知っているわけじゃないし…」

シャロ「そうですよ!だって先生だってエレメントを探してくれるお手伝いをっぇぇぇぇえええええええええええええええ!!!???」


ネロ「知らないんじゃん!!全っ然!!」

コロン「ん?マリネ?クリスマスはフランス料理にでもするんか?」スッ

ネロ「お前も日本に居た癖に知らないの!?天城茉莉音!」

コロン「アマギマリネ?マリネって言えば…魚使ったフランス料理の…」

シャロ「アイドルです!」

コロン「……魚とフランス人のアイドル…?」プシュー

姫百合「コロンさんの脳内処理がパンクしたみたいですね」

コーデリア「教官!イギリスで会ったんじゃありませんでしたか!?姿は見たでしょう!?」

小林「うっ…うーん……会ったっけ…」

姫百合「小林さん…いくらなんでも国民的アイドルを知らないとかありませんよ」

コロン「ウチも知らんで!ツカそもそもアイドルなんて興味無いしな!」ドンッ

コロン「大体!ドームでコンサートする意味が分からへん!ドームは雨の日でも野球する為のもんや!勝手に何さらしとるっつーねん!」プンプン

ネロ「小林良いの!?今小林はこの馬鹿と同じレベルなんだよ!」

小林「…さすがにそれはコロンくんにも失礼じゃないか?」


コーデリア「とっとにかく!私達はクリスマスに茉莉音ちゃんのコンサートに行くのです教官!」

小林「そっかぁ…楽しんでおいで」

シャロ「そう!だからコロンちゃんも一緒に茉莉音ちゃんのコンサートに!」

コロン「師匠が行かんならウチも行かん」

ネロ「ヒメも一緒に僕達と騒いで!」

姫百合「いえ…私、騒がしいのはちょっと…」

エルキュール「皆さん……と。……あれ?」

シャロ「…って何でですか先生!行きましょうよ一緒にー!」

小林「いやでも、招待されたのは君達だろ?余計に人数増やしたら向こうも困ると思うんだけど」

ネロ「そんな事ないよ!寧ろ小林なら逆にサインねだられるかも。ねぇヒメ!?」

姫百合「満員のコンサートに人数増やして来るのはさすがに失礼だと思います」

コロン「ウチらは三人でクリスマス過ごす境、勝手に楽しんでいけばええやん?」

姫百合「そうですね。今横浜は物騒ですし私達は小林さんの傍に居るという事で」

ネロ「…………」

コーデリア「そ…それじゃぁ教官は一緒に来てくれないのですか…?」

小林「うっうん…。サイコパスの事もあるし、神津の調査も長引きそうだしね」


ミルキィホームズ「「「「…………」」」」

ミルキィホームズ「「「「はぁ……」」」」ションボリ

シャロ「先生…来ないんですかぁ…」

ネロ「…どうする?コンサート。行く?」

エルキュール「……でも、招待されたから……行かないと…」

コーデリア「そうね……4人だけでも、行かないと失礼よね…」

小林(一気にテンションが下がったな彼女達)

シャロ「でっでも…良いんですか?言っちゃいましたよ?茉莉音ちゃんにも先生達を連れてくるって」

ネロ「サプライズの為に名前すら言わなかったのにね」

コーデリア「あっ…でも、そろそろお迎えが」

小林「……お迎え?」

姫百合「コンサートは今日なんですか?」

ネロ「ん?いや?でもそろそろ…」


バッタァァアアアアアアアアアンッ


小林「!」

姫百合「!」

コロン「おわぁっ!?」ビクゥッ




???「…………」


小林「……あの?」

小林「どちら様…ですか?」


???「…………」


???「…あっ…あいたたたぁ……」ズキズキ

???「うう…迎えに来たのは良いけど…頭と胸打っちゃったぁ……」サスサス

姫百合「…えっええと?」

コロン「………」

シャロ「…ああー!ホルスタインさん!」

ネロ「茉莉音のマネージャー!!」

小林「…え?」

マネージャー「あははー。ミルキィホームズの皆さん。お久しぶりですー」フリフリ

姫百合「ああ、お迎えの…」

コーデリア「ハイ。お久しぶりです。その節はどうも」

エルキュール「チケット…ありがとうございます」

マネージャー「いえいえ良いんですよー茉莉音ちゃんを復活させてくれたお礼は、まだまだ返しきれ無いんですからぁー」ニコニコ


シャロ「あっ!それじゃぁその返しきれないお礼で私達以外にも人を連れてきても良いですか!?」

マネージャー「えええ~?それはどうでしょう。ただでさえ満員なのに、私がそれを増やせる権限はぁ~」

シャロ「そっ…そうですか」ガクー

小林「ね。君達だけで行った方が良いんだよきっと」

マネージャー「そうですねー。申し訳無いですけど保護者の方は少し……」

マネージャー「………」

小林「?」

マネージャー「……あ、あのう…」

小林「何でしょうか?」

マネージャー「貴方……もしかして…小林……オペラさん?」

小林「ええ、そうですが」

マネージャー「………」

小林「………」

マネージャー「…………」

小林「……?」

カチッ  ピッピッピ  プルルルルル


ガチャッ

マネージャー「あっ!もしもしプロデューサーさん!?小林さん!小林オペラさんがミルキィホームズと一緒に居ました!」

小林「あの?」

マネージャー「本当ですって!今から写真送りますから!」ピッ

小林「ちょっと?」

マネージャー「あの小林さん!私と一緒に写真撮ってください!」ダキッ

小林「えっ?」パシャッ

マネージャー「もしもし!写真は見てもらえましたか?……はい!わっ分かりましたぁ!今すぐ事務所に連れてきます!!」アタフタ

小林「はい?」

マネージャー「小林オペラさん!」ガシッ


マネージャー「私達のコンサート…いえ、事務所に、来てください!」






小林「ェェェェェええええええええええええええええええええええええええ!!!?」




シャロ「それじゃぁ!先生も私達と一緒にコンサートに来てくれるんですか!?」

マネージャー「それは勿論!大歓迎です!寧ろ来てくれないと困りますよぉ!」

ネロ「なぁんだ!それじゃぁ決まりだね小林!クリスマスは思いっきり盛り上がろうよ!」

小林「いっいやいやいやいや!あの僕はサイコパスの調査が!」

コロン「師匠が行くならウチも行くでぇ!」ドンッ

コーデリア「ほら!ヒメも」ズイッ

姫百合「ええ…ええええええ…」

マネージャー「それじゃぁ今すぐ車を出しますので!皆さん乗ってください!」

小林「いやだから!というよりコンサートはクリスマスじゃないのか!?どうして今僕が――」

マネージャー「これでプロデューサーさんも喜んでくれますよ!飛び入りで小林オペラさんが入ってくれたら…」

小林「ちょっとっ!?それ僕をステージに上げて歌わせようとしてますよね!?」

シャロ「それじゃぁ私は先生の右ー!」

コーデリア「じゃぁ私は教官の左ね!」

ネロ「ちぇ、小林の隣は埋まったかぁ。…シャロの右で良いよ」

エルキュール「それじゃぁ…私は…コーデリアさんの左…」

小林「君達もちゃっかり僕を逃がさないつもりだよね?僕を中心に押して扉から遠ざけて」

コロン「ウッ…チョット…苦し……」ギュゥウウウ

姫百合「……私だけ助手席で良かったんでしょうか?」

マネージャー「それじゃぁステージの大成功を祈って!出発ー!!」



ブロロロロロロロロ……





【川澄芸能事務所 12月20日 午後12時34分】



小林(とうとう来てしまった……)

ネロ「いやぁしかし、茉莉音ちゃんに会うのも久しぶりだよね」

シャロ「あの後、国民的アイドルとして不動の地位を手に入れた茉莉音ちゃん!」

コーデリア「テレビを見るたび私達の鼻が高くなるわ!」

エルキュール「元気…そうで。嬉しい……」

小林「…君達は嬉しそうだね。ははは…」

コロン「」

姫百合「圧迫されて意識の無い探偵が一人居ますけど…この人、内臓とか潰されてません?」

マネージャー「あっ、ここが事務所になるんですよ~?小林さん」

小林「あっはい。……って、そういう事じゃなくて!」

小林「ここまで連れてこられても、僕はステージには…」

マネージャー「あれぇ?私、小林さんをステージに出すなんて言いましたっけぇ?」キョトン

小林「あの、しらばっくれても駄目ですよ…ちゃんと僕以外にも聞いた人は」

マネージャー「それはプロデューサーさんに聞きましょう~。それじゃぁ入りますね~」コンコン

小林(これ、僕の意見が通りそうに無いな)

マネージャー「失礼します~」ガチャリ

シャロ「はぁーい!茉莉音ちゃん!こんにちは~!」

ネロ「お久ー!呼んでくれてありがとね!」

コーデリア「今回は!私達の教官もお呼びになっているのよ!」

エルキュール「あっ……ひっ!」




???「…………」ゴゴゴゴゴゴ





ミルキィホームズ「「「「…………」」」」

ガシッ

小林「ん?」

エルキュール「こっ…怖いっ……!」ブルブル

ネロ「…………」

ネロ「……ええと、…強盗?」

コーデリア「…そっそうね。この強面の人!以前まで見なかったわ!!」

シャロ「先生!怪盗…いえ強盗です!事務所に強盗が居るのです!」

マネージャー「ええっ!?強盗!?どこっ!?どこっ!?」キョロキョロ

???「…………」

小林「…………」

小林(日本に来てから今更だけど、今回は特に失礼極まりないな…)

姫百合「皆さん落ち着いてください。どうしてあの人を関係者としての考慮を…」

???「チィ!ばれたか!」

姫百合「えっ?」


シュバッ   シュルシュルシュル

???「へへっでも御用な物は手に入ってるのさ!アバヨ!」ガラララ

小林「えええ!?本物!?」

シャロ「せっ先生!どうしましょう!」

姫百合「…コーデリアさん!今すぐ彼を捕まえ……」

ガシッ

???「え?」






????「…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ





シャロ「」

ネロ「」

コーデリア「」

エルキュール「」

コロン「」



???「うっうわぁ!なっ…何だお前ぇ!?」

????「……ちょっと、こちらまで来てもらいます」ズイッ

スタスタスタスタスタ

???「いっいやあああ!!離せぇ!俺は…ただ!茉莉音ちゃんの生着替えを――」


バタンッ



姫百合「」

小林「……あの、すみません今のは?」

マネージャー「…ああー本当に強盗が入ってたんですねぇ。戸締り忘れてたのかな?」

シャロ「……はっ!」シャキーン

小林「ああ、おかえり」

シャロ「先生!何か…何かもっと怖い人が入ってきました!」ガシッ

ネロ「僕も見た!あんな堅気の人を見たのは初めてだよ!?ヤクザ!?この事務所ヤクザと関わりあるの!?」

コーデリア「」(放心)

エルキュール「」(気絶)

コロン「」(瀕死)

小林「いっいやぁ。多分違うと思うけど……」


ガチャリ


????「…ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。先ほどの人は警察に引き渡しましたので」

シャロ「きゃぁぁあああああああああ!!出たぁぁぁあああああああああああ!!!!!」ビックゥゥウウン

ネロ「うわぁあああああああああああああああ!!!」ビックゥウウ

コーデリア「」(気絶)

エルキュール「」(気絶)

コロン「」(心肺停止)ビクッ


マネージャー「あっ!お疲れです真田くん。真田くんは鉄壁の警備ですねー」ニコニコ

真田P「………」スッ

真田P「あっはぁ……その、私は警備員ではなく…」ポリポリ

ガチャリ

プロデューサー「おっす真田君!クリスマスライブ、準備は出来ているか?」バシッ

真田P「あっ!プ…プロデューサー!はっはい。BRさんの人たちの練習も順調です」

プロデューサー「うむ!今回は君の初の大仕事だ!上手くやってくれよ?」ニヤニヤ

真田P「…はい。貴方の望み通りになるよう精進します」オドオド

小林「………あの?」

真田P「!」

真田P「あっ…申し訳ございません。ご挨拶が遅れました」ペコリ

小林「は…はぁ。どうも」

真田P「私、こういう者と申します」スッ

小林「名刺…ああ。貴方はこの事務所のプロデューサーなのですか」

プロデューサー「それも新人ホカホカだぞ。お手柔らかに頼んだぞ」

プロデューサー「……って、うぉおおおおおおおお!?」ビックゥ

小林「なっなんでしょう?」ヒクッ


プロデューサー「ほっ……本物の小林オペラ…で…でしょうか?」フルフル

小林「え?ええ…まぁ」

プロデューサー「…………」

プロデューサー「…ほっ…本当に横浜に来ていたのか……」

マネージャー「はい!私も一目見た時はビックリしまして」

真田P「小林オペ…えっ!あの……」オドオド

真田P「も…申し訳ございません!その、お土産の一つも用意できずに…!」オロオロ

小林「……はは。その、」

小林(名乗る前に紹介が終わっちゃったな…)

シャロ「やっやっぱり先生は業界でも凄い人なんですか!?」ズイッ

プロデューサー「そりゃぁ凄いってもんじゃないよ。こちとら隙あれば事務所に入れたいくらいだ」

ネロ「実際!小林が芸能活動したらどのくらい稼げるの!?」ズイッ

真田P「えっええと……恐らく、”億”程の利益にはなるかと…」

シャロ・ネロ「「億ぅ!?」」ガガーン

小林(いやいやいや……)


ネロ「小林!これはチャンスだよ、今この流れは!絶対アイドルになるしかないって!」ズイ

シャロ「私!先生がアイドルになったら一番のファンになりますよ!」ズイ

真田P「あの、名刺に連絡先がありますので。興味がありましたらウチに…」

小林「……非常に困る要求を僕にしないでくれるかな?」

プロデューサー「まぁ、でも今回はアイドルのコンサートだから。さっきマネージャーが言ってた飛び入りとかはさすがに練習してないし無いかな」

マネージャー「ええ~?絶対受けると思うんですけど…」

プロデューサー「駄目駄目。コンサートまで後4日しか無いんだぞ?それまでに何とかなるとも思えない」

真田P「さすがに私も…そう思います」

マネージャー「ええ~……」ガックシ

小林「ははは…それを聞いて安心しました…」

プロデューサー「だから、アイドルのコスプレさせて端っこで躍らせてみよう。そして最後にネタバラシすれば話題にはなる筈だ」

マネージャー「わぁ!それは面白そうな事になりますね!」

小林「それ聞いてより一層不安になりました。帰って良いですか?」

真田P「あの先輩。さすがにそれはドン引きなのでは……」


ガチャリ

???「おっすおっす!!プロデューサーさん!来てしまいましたよ!」

????「………おはよう」ペコリ

シャロ「あっ!まり……ん?」


ネロ「ええっと……誰?」

姫百合「…仮にもアイドルの人たちに失礼ですよ。この人たちもテレビに出てる――」

姫百合「……………」

小林(ああ。名前、出てこないんだ)

真田P「ああ、おはようございます。篠田さん。洲水さん」ペコリ

篠田「プロデューサーさん!今日もバリッバリ練習しますよー!!」

洲水「……センター右の子と後ろの子、二番目の歌と三番目の歌のサビ。そのズレがあるから調整よろしく」

真田P「はい。クリスマスまでには間に合わせます」ペコリ

シャロ「…………誰?」

ネロ「小林は分かる?」

小林「いや、その…僕もテレビあまり見ないから」

コーデリア「」

コーデリア「ハッ」

コーデリア「そっそれよりも茉莉音ちゃん!茉莉音ちゃんはどこ!?」キョロキョロ

真田P「茉莉音さん…?申し訳ありません。私は担当では無いので…」

コーデリア「ぎゃぁあああ!!出たぁあああああ!!!」ビクゥッ


プロデューサー「…茉莉音なら、個別レッスンを受けてるところだよ。後一時間くらいで終わるんじゃないか?」

シャロ「ええ!?そっ…そうなんですか?」

ネロ「なーんだ。じゃぁもうちょっと遅く来た方が良かったんじゃん」

小林(そもそも、この事務所に来る理由なんてあるのか…?)

洲水「…………」

篠田「あっ!プロデューサーさん!プロデューサーさん!」

真田P「はい、なんでしょうか篠田さん」

篠田「あの色鮮やかな四人組みと地味な男の人と女の人は誰ですか?」

コーデリア「色鮮やかって……」

シャロ「私達の事でしょうか?」

小林「そして地味とは僕の事だろうか」

姫百合「私も入ってますよね」

コロン「」

真田P「はい。彼等は、かの有名な小林オペラさんと。……」

真田P「……………」

ネロ「そして地味な男の人しか名前を知らないとか……」

姫百合「私に関しては救いようがありませんよね」

コーデリア「私達は!この小林オペラ教官が率いるミルキィホームズよ!」

真田P「…………?」

小林(本当に知らないようだね…)

篠田「小林?オペラ?何だか聞いた事あるねぇ~。洲水ちゃんは知ってる?」

洲水「ううん。全く」フルフル

小林「うん。今まさに自己紹介が必要な状況だねこれ」


シャロ「了解しました!私の名前はシャーロック・シェリンホード!」ビシィッ

ネロ「僕の名前は譲崎ネロ。人の心が読めるのさ」ビシィー

コーデリア「私はコーデリア・グラウカ。教官の下で探偵をしています」シャリィー

エルキュール「」(気絶)

ミルキィホームズ「「「私達4人は!ミルキィホームズ!!」」」ビシシー☆

篠田「ふーん?」

洲水「………」

真田P「失礼しました。私はこういう者です」スッ



証拠ファイル①真田Pの名刺

【名前と連絡先と会社名が書かれている。何故か名前欄が小さい】



小林「あっ…どうも」

篠田「それよりもプロデューサーさん!皆はどこに居るの!?」

真田P「藍川さんと栗野原さんは第二スタジオでレッスン。御子柴さんは部屋です。アーグニャさんは日本語教室へ。鬼瓦割さんはまだ来ていません。」

洲水「ふぅん。よく把握してるねアンタ」

真田P「いえ、仕事ですので」

篠田「そのくらい愛されてるって事ですよ私達!」

洲水「…どうせ、”仕事”なんだろうけど」フー

シャロ「せんせぇー……盛大にスルーされましたぁ…」グスッ

コーデリア「あの娘達…本格的に私達に興味を示さないわね……」

小林「というよりも、探偵に興味が無いだけじゃないかな?ははは…」


洲水「……で?」

小林「ん?」

洲水「どうして居るの?どう見てもアンタら関係者じゃないよね?」ズイッ

小林「えっ?あっ……」

真田P「洲水さん。この方達は茉莉音さんが巻き込まれた事件を解決してくださった方達で…」

洲水「………ふーん。まぁ、どうでもいいけど」スッ

洲水「アイドルにただ会いたいだけのミーハーはウチのプロデューサーに追い出して貰うから」

真田P「大丈夫です洲水さん。もう既に追い出しましたので」

洲水「?」

プロデューサー「それに、この小林オペラは――」

小林「ステージにはあがりませんからね絶対」

真田P「それに、彼女達は茉莉音さんに用があるとの事なので。行き先は同じです」

マネージャー「…あっ!という事はそうなりますね」

篠田「……じゃぁ、このヘンテコな格好した人達もレッスン場に来るの?」

コーデリア「ヘンッ…」

姫百合「テコッ……」

真田P「はい。そういう事となります」

小林(臆せず言ったな……僕のこの格好も変なのだろうか?)


プロデューサー「おおっと!そうだな。久しぶりに茉莉音も喜ぶぞ~?」

シャロ「はい!私も皆さんも会うのを楽しみにしています!」ウズウズ

姫百合「私は会った事無いので、会いに行っても良いのか分かりませんが…」

小林「僕も直接は会った事無いね。……帰ろうかな?このままだと本当にライブに関わせられる可能性が…」

ネロ「ほら、エリーも起きて」ザクッ

エルキュール「ヒゥッ!?」ビクッ

小林「ネロ、鉄ヘラをそんな使い方しちゃいけないよ」

ネロ「ほら、そこの露出魔も」ザクッ

コロン「」ビクッ

コロン「」

ネロ「……………あっ」

小林「トドメ刺した!今トドメ刺したね!?」


エルキュール「え…ええと…一体何が……」

マネージャー「あっ、そちらで白目剥いて床に寝ている女の子もお連れの方なのですかぁ?」

姫百合「あっええと、この子は……」

篠田「……あっ!私この子知ってる!」

小林「……え?」

篠田「大阪に旅行行った時、串カツのオブジェクトにソース塗りたくっていた子だ!!」

姫百合「全然知らない人です。どこかやっておいてください」

真田P「了解しました」ズイッ

ネロ「くぅっ……僕達よりもこの露出魔の方が姿を知られているなんて…!」

小林「いや、こんな形で知名度上げても生活し辛くなるだけだと思うよ…」


【横浜鶴舞薫レッスン教室 12月20日 午後2時04分】


シャロ「わぁ、この建物のどこかに茉莉音ちゃんが居るんですか!」

真田P「はい。そういう事になります」スタスタスタ

洲水「って、結局ここまで来てるし…大丈夫なの?これ」

プロデューサー「大丈夫大丈夫!探偵であろう者なら勝手にツイッターとかファイスブックに載せる訳なんて無い筈だから」

ネロ「えっ?載せちゃ駄目なの?」ピコーン

小林「…ちょっと?今、何?さっきの音……」

マネージャー「でも、お昼休みも終わったばかりだから。なるべくお静かにお願いしますね」

ミルキィホームズ「「「「はーい!!」」」」

姫百合「…………」

小林「ふふ、彼女達も大きくなったものだ」

姫百合「……教官としての立場だった時とは少しおかしな方向ですが」

小林「でも、あんなに怖がっていた真田さんにもうあんなに警戒心を解いている」

小林「人付き合いが良いことは、僕も見習わなくちゃいけない事かもしれないね」

姫百合「……そうかもしれませんが、端から見ると」

シャロ「あっ!見てください!このポスター美樹ちゃんがセンターです!」

ネロ「おっ!この松ぼっくりチョコのポスター、茉莉音が映ってる」パシャパシャ

コーデリア「見て!あそこに私達も映ってるわ!ほら!観客席に座ってるアレ!」

エルキュール「休憩室……本がいっぱい……」

姫百合「確っ実に幼児退行しているように見えます」


シャロ「あっ!もしかしてあの大きな扉ですか!?」

真田P「いえ、あそこは第二倉庫でして…」

シャロ「ちょっと見てきます!」タタタタタ

真田P「あっあのっ!?」

バターンッ

シャロ「キュウ!」

小林「シャーロック!?」ガーン

マネージャー「ああ~…今のは痛そうですねぇ……」


スタッスタッスタッ

???「……………」

コーデリア「ちょっとシャロ!イキナリ走ったら危な…ひっ!?」ビクッ

ネロ「ちょっとどうし……ひっ…人を殺しそうな目……」

エルキュール「………」ブルブル

シャロ「痛たたた……ごめんなさい茉莉音ちゃん。いきなり扉が開いて…」

???「…………」ズズズズズ

シャロ「ぉぅ……!」ビクッ  スススススス

シャロ「せっ…先生!先生!」グイッグイッ

小林「うっうん。怖いのは分かったから。とりあえず謝ろうね?」

真田P「おっ…鬼瓦割さん……また倉庫の中に居たんですか…」

鬼瓦割「………ファーア…ああ、プロデューサー。」ポリポリ

シャロ「そうですよね!あの強面のプロデューサーと比べたら怖くありません!それに」

シャロ「こういう怖い顔の人ほど中身は良い人だって!この事務所では相場が決まっているんです!ね?」

鬼瓦割「あ”あ”んっ?」ギロリッ

シャロ「」ビクッ

ネロ「」ビクッ

コーデリア「」ビクッ

エルキュール「」ビクッ

小林「お、おう…」ビクッ


真田P「あの、鬼瓦割さん…ライブまで後4日もありません。ので、できる限り練習に来ていただかないと…」

鬼瓦割「…つっても、面倒臭えんだよ。同じ動きを何時間の繰り返したりでよ」

真田P「…それが、アイドルの仕事ですから」

鬼瓦割「……チッ。やっぱそうなるってか。……仕方ねぇか」ボリボリ

シャロ「ほっほら!やっぱり聞き分けの良い良い人って!」

鬼瓦割「ちょっと、血でも見てくるかな……」ボキッボキッ

ミルキィホームズ「「「「きぃいいやぁぁああああああああああああああああ!!」」」」ダダダダダダダダダダダダ

タタタタタタスターンスターンスターン

小林(蜘蛛の子散らすように逃げていった…)

カーンッ  トタン

シャロ「うわぁあああん!!頭打ちましたぁああ!!先生ぇええ!!!!」ガシッ

小林(そして逃げ遅れた子兎は仲間に助けを求める……まんま野生の動物だな)

真田P「あの、皆様。関係者が不審に思うので机の下から出てもらえると嬉しいのですが…」



洲水「…鬼瓦割さん。アイドルがしちゃいけない顔ばかりしてると、いつかゴシップ誌にある事無い事書かれるよ?」

鬼瓦割「そういうてめぇも、休憩時間になると一人でどっか行くのを止めたらどうだ?あ?」

篠田「まぁまぁお二人方~。廊下で喧嘩しちゃ駄目ですよぉ。それに、プロデューサーさんが見てますよ~?」

洲水「………」

真田P「えっ?ああ…はい。出来れば…その」

鬼瓦割「……チッ」

小林(何だか、殺伐としているな。…アイドル業というのも大変なんだ)

マネージャー「まぁまぁ、鬼瓦割さん。覚えも早いし踊りには問題ありませんでしたし」

プロデューサー「体力はうちの事務所一だからね!…真田くんの次くらいに」

鬼瓦割「そういう事なら、もう少しふけっていても良いって事だよな?」

真田P「いえ、鬼瓦割さんの場合は腕の動きが他のアイドルよりも大きく、繊細さが少し足りませんので練習には来て貰わないと…」

鬼瓦割「本当、気持ち悪いくらいに良く見てるよなぁ。アンタ」

真田P「はい。私は貴方の担当でもありますので」

鬼瓦割「…………」

篠田「いやぁ~♪鬼瓦割さんも愛されてますねぇ~」

鬼瓦割「チッ」

小林「…あの、君達?いい加減机の下から出てきてくれると嬉しいんだけど」

ネロ「シー!黙ってて小林!バレたら僕達アイツに食べられちゃうんだから!」

小林「君達は初対面のアイドルにどんなイメージを持ってるんだ…」


鬼瓦割「分かった。出りゃぁ良いんだろ出りゃぁ」スタスタスタ

真田P「ありがとうございます。頑張ってきてください」

洲水「ふぅー。本当、鬼瓦割も素直じゃないね」

コーデリア「皆!オーガは去ったわ!机から出るわよ!」

ネロ「おっす!」バッ

エルキュール「は…はい…!」ババッ

姫百合「…貴方達は素直すぎます。自分に」



真田P「…それでは、この部屋になります」カチッ

小林「川澄特別レッスン室……ですか」

小林(名前からして、本当に特別扱いされてるんだな。その茉莉音さんって人は)

コンコン

<はーい

プロデューサー「茉莉音ー、美樹、先生。ちょっと邪魔するよー?」

<あっはいどうぞー

ガチャッ

美樹「何か用?プロデュ…ああっ!ミルキィホームズじゃん!」カチリ

シャロ「はい!お久しぶりです美樹ちゃん!」ピョンピョン

ネロ「茉莉音は?」

美樹「ああ、茉莉音ちゃんならあそこに…」

茉莉音「………あっ」

シャロ「あっ!」

シャロ「茉莉音ちゃぁ~ん!」ダダダダダ

茉莉音「あっ危ない!シャーロックさん!」

バチイィンッ

シャロ「えっ?」

グオオオオオオッ

シャロ「きゃぁああああああああああっ」

バッチィイイイイイイイイン

コーデリア「シャロォ!?」

小林「シャーロックゥ!?」


ネロ「いっいきなり飛び上がったと思ったら天井にぶつけたよ!?」

美樹「あー……そうだった御免」

エルキュール「な…何が…」

茉莉音「……このレッスン室は、練習の精度を上げる為に。罠を仕掛けているんですよ」

茉莉音「ちょっとでもミスすると、文字通り痛い目に合う部屋なんです」

姫百合「ええ……」

小林(…本当に大事にされているのか疑問に感じてきた)

バババッ

先生「あらぁああ!貴方達、この世紀の魔窟である私の教室へよ・う・こ・そ♪」パチクリ

コーデリア「っ!?」

姫百合「!?」

ネロ「うぉぅ……」ヒクッ

プロデューサー「おー先生!ライブまで後4日も無いけど茉莉音はどんな感じだい?」


先生「んもう、本当に最高のコンディションよ!練習始めてから一週間が経つけど、二人とも私の罠を美しくすり抜けていくのよ!」

先生「私がノンケだったら、見惚れていたわぁ!」キラキラキラ

マネージャー「わぁ、そうなんですかぁ」

エルキュール「」

真田P「…ごぶざたしております。先生」ペコリ

先生「あっ!やだ真田ちゃんも居たのぉ!?」

先生「来るって分かってたら、おめかししてたのにぃ!んもう!プロデューサーったらイケズぅ!!」

プロデューサー「ははは!アンタがおめかししたら最早化物にしか見えないだろ」

先生「やっだぁ!もう、プロデューサーったら冗談がお好きねぇ♪」

姫百合「あ…あの…小林さん…」

小林「う、うん?」

姫百合「なっ…なんでしょう。あの強烈なインパクトを持つ男性の方は……」

小林「ええと、見た感じ茉莉音さんのレッスン教師みたいだね」

姫百合「いや、あの…それはそうなんですが…」


先生「あっ」

小林「ん?」

先生「やっ…やだ!ちょっと貴方!すっごいイケメェンじゃない!?」

小林「え?あっ…僕ですか?」

先生「プロデューサー?もしかしてついに私の要求呑んでくれたのぉ!?イケメン男性アイドルユニットを作ってくれるって!」キラキラキラ

プロデューサー「いやだから作るつもりは無いって!作ったとしてもお前の所為で1日持たずに全員から辞表出されるわ!」

先生「やっだぁ!いくらなんでも私だってアイドルに手は出さないわよぉ」

マネージャー「美樹ちゃん茉莉音ちゃん。この先生のいう事、信用できる?」

美樹「ううん全然!」

茉莉音「ずっとライバル事務所の男性ユニットの話ばかりするので、不安でいっぱいです…」

小林(見事に信用されてないな…)

先生「あらぁ、じゃぁこのイケメンは一体どんな理由でここまで来ちゃったのぉ?」

プロデューサー「それは…」

コーデリア「きょっ教官も茉莉音さんのコンサートに行けるように交渉しに来たのよ!」

ネロ「そうだよ!だから茉莉音ちゃんに会いに来たんだよ!」

小林(いや、別にそこまでして行きたくも無いんだけど…)


茉莉音「ははは…別にそこまでしなくても了承くらい……」

小林「だから、さすがにそこまで迷惑はかけられないって」

ネロ「えー?でもさー」

先生「やっだぁ!迷惑なんかじゃ、ん無いわよぉ!私の目の保養に、もうちょっと居ても良いのよ?」

茉莉音「…………」

小林「ははは…申し訳ありませんが、僕もちょっと忙しい身でして…」

茉莉音「……こっ…」

小林「?」

茉莉音「小林 オペラさん!!!?」ガガガーン

コーデリア「!」ビクッ

ズルッ

美樹「あっ」

プロデューサー「あっ」

マネージャー「あっ」

先生「あっ」

茉莉音「えっ?」

グゥオオオッ

茉莉音「えっ!?」

ドゴォオオアアアアアアアッ

茉莉音「」 パラパラ…


「茉莉音ちゃぁぁあああああああああああああん!!!」




茉莉音「………」

小林「…え、ええと…」

ネロ「とりあえず大丈夫?天井に頭突き抜けてたけど」

シャロ「ふぁ~あ…あっ!茉莉音ちゃんおはようございます!」フリフリ

茉莉音「………」

コーデリア「…茉莉音ちゃん?どうしたの?さっきから黙って…」

茉莉音「…………」

茉莉音「……その…」

シャロ「?」

茉莉音「どうして……ミルキィホームズの皆さんと小林オペラさんが…一緒に居るんですか?」

ネロ「何でって、小林は僕達の教官だよ?」

コーデリア「最近までイギリスに行っていて私たちと離れていたけど、また戻って来てくれたの!」

エルキュール「小林さんから…探偵の極意を……教えて貰って…」

シャロ「先生が居るから!今のミルキィホームズが居ると言っても過言じゃ無いんです!」フンスッ

茉莉音「……えっ」

茉莉音「ぇぇぇええええええええええええ!!!?」ビックゥ

ネロ「ちょっそんなにビックリする事かなぁ…?」

茉莉音「ビッビックリもしますよ!だって、あの小林少年がミルキィホームズの教官だったなんて!」

茉莉音「わ…私の憧れの人が…」ボソッ

小林「…え?今、何て言ったのかな?」

茉莉音「…………」


美樹「へぇ~、アンタがかの有名な小林少年…ねぇ?」ニヤニヤ

小林「いや、もう少年っていう年でも無いけどね」ハハ

シャロ「茉莉音ちゃん!先生の事知ってたんですか!?」

茉莉音「え…そりゃぁ、有名な人だし…」

先生「やっやだぁん!そこのイケメン!小林少年って事は…アイドルとは違うベクトルの男子だったのねぇ!?」ビックゥ

小林「いや、まぁ確かに僕はアイドルではありませんが…」

先生「それじゃぁ先生!サイン貰おうかしら!このレオタードに直接書いてくれない?この腰ら辺に直で」スッ

小林「ええっ!?いやいやいや、それはちょっと…」

コーデリア「きょっ教官に近づかないでください!」ババッ

真田P「先生。申し訳ございませんが。客人にセクハラは止めてください」

先生「あぁらぁ。今のセクハラだった?ごめんなさいねぇ。じゃぁ、真田くん…」

洲水「うちのプロデューサーに手を出したら、こっちが許さないよ」ギロッ

先生「やっやだわぁ洲水ちゃん怖いお目目ねぇ。何もそういうつもりは無いわよぉ」

先生「と・こ・ろ・で、篠田ちゃんと洲水ちゃんもここに居るって事は、彼女達も私の授業を受けるって事ぉ?」ジリッ…

篠田「」ゾッ

洲水「」ゾッ

真田P「いえ、彼女達は彼女たちのレッスンがあります。まだ先生のお世話になる事はありません」

先生「なぁんだぁ。残念ねぇ。私の授業を受けたらスタントマンにだってなれるのにぃ」

真田P「いえ、恐れ多いです」

篠田「…良かったぁ」ホッ

洲水「……”まだ”?」


先生「うう~ん…それにしても」チラッ

ネロ「」ゾッ

先生「この子達も中々可愛いわねぇ~…私の手に掛かれば、最高のアイドルに仕立て上げる事もできるけどぉ?」ペロッ…

シャロ「せっ…先生!この人怖い!この事務所で会って来た中で一番怖いです!!」ガクガク

小林「そっそうだね…僕もちょっと怖いよ…」

コーデリア「男性女性、どちらかがセクハラで訴えてもこの人間違いなく勝てません!」

小林「それを堂々と言うのはどうかと思うけど…」

茉莉音「……それで」

シャロ「うん?」

茉莉音「ミルキィホームズの皆さんが…私達にどのような用なんでしょうか?」

茉莉音「それも、小林オペラさんと…お友達と真田さんとプロデューサー…マネージャーさんも連れて」

ネロ「ああ、この事務所の人達は案内してくれただけだから用事は無いよ」

真田P「ええ。少し申し訳無い気持ちです」

美樹「ふーん、じゃぁ招待券についての事?それでお友達も連れて行きたいって交渉しに来たの?」

シャロ「わぁ!凄いです美樹ちゃん!どうして分かったんですかぁ!?」

美樹「ふっふーん!こっちも探偵の洞察力ってのをやってみたかったのさ!」ドヤッ

シャロ「うぇえええ!」ビックン

姫百合「……そんな驚かなくても、ちょっと考えれば分かる事ですよ」


茉莉音「ああ、招待券を友達分出してくださいって事ですか」ニコッ

小林(正直、無理だったらそれでも良いんだけどね)

プロデューサー「それか小林くんを飛び入r」

小林「そういえばレッスンを中断させてしまっているかな僕達!?ははは!それじゃぁちょっと僕はお暇しようかな!」

ネロ「逃がすな真田!小林は今ここから逃げようとしている!ここで逃がしたら小林は多分もう戻ってこない!」

プロデューサー「なんだってぇ!行け真田くん!羽おい責めだ!」

真田P「失礼します」ガシッ

小林「うわぁ!ちょっと!?何この連携プレー!どれだけ僕を拘束したいんだ!?」

ネロ「ここで小林を逃がしたら僕達は再び地獄のような生活を送る事になるからね…悪いけどやすやすとは逃がさないよ」ニヤニイヤ

コーデリア「そうなんですか教官!?また私達を置いていくつもりですか!?」

エルキュール「もう…じゃがいも生活は…嫌……!」

シャロ「そっ…そんな……先生……先生ぇえ!!」グスッ

小林「どうしてそこでそう繋がるんだ!?過剰思考過ぎるよ!」


茉莉音「…あっあの!」

小林「ビクッ あっ…何かな?」

茉莉音「…その、ミルキィホームズの皆さんには、私も大変お世話になっています。皆さんの大切な人なら、私も喜んで招待したいです」

スッ

小林「えっ」

茉莉音「そっ…それに。私自身もおこがましいかもしれませんが、小林さんのファン…なのです。小林さんに私のステージを見てもらいたいと思っています…」

茉莉音「なっなので…是非、是非……/////」プルプル…

茉莉音「わっ…私達のステージを見てください!」スッ!

小林「………」

小林「……」

小林「…分かった。ありがとう」スッ

茉莉音「!」

小林「楽しみにしているよ。その…クリスマスライブ」ニコッ

茉莉音「っ」パァアア

茉莉音「はいっ!」


美樹「ふぅう↑。茉莉音ちゃんも青春だねぇ」ニヤニヤ

シャロ「やりました!先生もヒメちゃんもコロンちゃんも茉莉音ちゃんのライブに行けますよ!皆!」

コーデリア「………………そうね」

ネロ「…でも、何かちょっと面白くないなぁ………」

タッ

篠田「おっと!私達の事も忘れちゃ駄目ですよ茉莉音さん!」

茉莉音「あっ…篠田ちゃん」

洲水「…一応、私達も同じステージに立つんだから。負けないよ、お互い」

美樹「お~?先輩ウィズトップアイドルの挑戦と聞いたぞそれ~?」

篠田「構いませんよ!私達の夢はタダ一つ!」

篠田「このアイドル界のお花畑で!私達は一際輝く華となるのです!」


バタンッ


藍川「おっしゃぁあ!良く言ったぜぇ!篠田っち!」

篠田「藍川さん!」

ジャッキー「…バウッ……」

洲水「あっ…ジャッキーも」


エルキュール「」ビクッ

コーデリア「え?ええと…ジャッ…ジャッキー?」

姫百合「す…凄く…大きいんですが…」

ジャッキー「……………」

小林(本当にでかいな…座高だけで真田さんの胸まである……いやいや、これ何種だ?)

ネロ「わぁ!すっごい大きい犬っ!!」ガバァッ

シャロ「先生ぇー!モフモフですよ!モフモフ!」 モフモフッモフッ

ジャッキー「…………」

藍川「はっはっはぁ!何だ君達はぁ!?うちのジャッキーに勝手にモフモフしてぇ!初対面なのに遠慮がないなぁ!あはっはぁ!」

先生「やだぁ!ジャッキーちゃぁん♪んもうっ!私が犬アレルギーじゃなかったら食べちゃいたいくらい可愛いわぁ♪」

藍川「はっは!良かったなジャッキー!このオカマがアレルギー持って無かったらお前ケバブにされてたぞぉ!」

ジャッキー「…バウッ……」


真田P「藍川さん。ジャッキーさん。おはようございます」

ジャッキー「…バウッ……」

藍川「おっとぉプロデューサー!オッスオッス!今日も顔怖いねぇ!新入りの子がヤクザの事務所に来たかと勘違いしちゃうじゃないのさ!」

藍川「この私みたいにねっ!」ドヤッ

ジャッキー「…………」

真田P「…その節は申し訳ございませんでした。以後、気をつけます」ペコリ

藍川「はっはっははぁ!冗談!冗談だってば!それより、事務所行ったらプロデューサー達の姿が無くてさぁ、ちょっとビックリしちゃったぜ僕ぁ!」

プロデューサー「あっ…そういえば今、事務所が蛻の空だな」

姫百合「何やってるんですか貴方達…」

プロデューサー「仕方がない。マネージャー!お前事務所に戻ってくれ」

マネージャー「えっ?でもまだ私小林さんにサイン貰ってな…」

プロデューサー「戻れ」

マネージャー「わっ分かりましたぁああ~!」ドタドタドタ

真田P「あっ、それでは私も…」スッ

洲水「アンタはまだ。私達にまだ今日の日程伝えてないじゃない」グイッ

真田P「…申し訳ございません。まだ栗野腹さんが来ておりませんが、とりあえず皆さんの分だけでも…」

「ここに居るよ」

真田P「えっ?」

ヌゥウウッ

栗野原「……やっほぉおぉおお~~…」ヌウウッ

シャロ「ぎゃぁぁあああああああああああああああ!!!!!」ビックゥウウンッ

ネロ「うわぁあああ!犬から人間が出てきたぁああああ!!!」ビクビックウウン!

ジャッキー「…………」


真田P「…ジャッキーさんの毛の中に居たのですか」

プロデューサー「本当、この娘に至っては神出鬼没だよなぁ」

藍川「おっとぉ!ジャッキーくんの毛の中に居たのかぁ!私も全然気づかなかったぞぉ!かくれんぼしたらマロンちゃん、一生見つからないだろうねぇ!」

篠田「まさにかくれんぼの達人ですね!」

栗野原「クックック…そんな称号……不都合しか無さそうだけどねぇ…ケケケ」

真田P「おはようございます栗野原さん」

栗野原「もう午後だよ。…まぁいいや。おはようプロデューサー。今日も呪われそうな顔してるねぇ…ケケケ」

真田P「えっ……」

栗野原「私は好きだよぉ?その陰気くさそうな顔……クケケケケ…」

真田P「はっ…はぁ……」ポリポリ

小林(…ここのアイドル達、負けず変わらずキャラの濃い娘達ばかりだな)

小林(…好き嫌いが分かれそうだ)

プロデューサー「まぁいいや、これで全員だっけか?」

藍川「あれれ?あと、鬼瓦割さんとアーグニャちゃんと御子柴ちゃんが居ないよ?」

洲水「鬼瓦割はさっき倉庫で見つけたよ」

真田P「御子柴さんは部屋。アーグニャさんは日本語教室です。……そろそろ終わる頃だと思いますが」

篠田「御子柴ちゃんは部屋かぁー…。それじゃぁ!私ちょっと呼んでくるね!」タタタタタタタ

真田P「あ、それでは私もアーグニャさんを迎えに行きます」スタスタスタ

洲水「ああ、ちょっと…私達の日程は?」

藍川「まぁまぁスミスっち!このクリスマスライブ間近のクッソ忙しい時期、練習以外に無いって!いつも通りだよ!」

洲水「…だから、どこを直すとかを一人ひとりアドバイス貰ってるでしょ私達。それが無いとどうしようもないでしょ」

藍川「…………」

藍川「あっ」


栗野腹「クックク…まぁ、私はいざとなったら霊媒すれば良いだけだけどねぇぇ…ケケケ」

美樹「…いやぁー、本当個性豊かなアイドルがいっぱいいるねーBRチーム。」

ネロ「こうなるとちょっとこんがらがっちゃうよね」

姫百合「……本当に纏まっているのか不安になってきますよね」

プロデューサー「その点は大丈夫だ。私達の教育技術は賜物だからね!」

小林(まぁ、バラバラだったらここまで大きなステージに上がれなかっただろうしね)

バタンッ

小林(…ん?)

アーグニャ「…Приветー…みなさーん…」フラフラァ

藍川「おーアーグニャちゃぁん!相変わらず冒頭何言ってるか分からないけど、来たんだねぇー!」

アーグニャ「…ムニャルムニャル……ワタシ…トテモ…眠イデース…」フラフラフラァ

アーグニャ「……グゥ…」

洲水「寝るな寝るな。これからレッスンだぞ」

プロデューサー「というか真田くん日本語教室まで迎えに行っちゃったぞ?…呼び戻さないと」ピッポッパ


ピリリリリリリリリ

先生「あっ、臨時休憩時間は終わりよ!さぁ、茉莉音ちゃんも美樹ちゃんもレッスンに戻るわよ!」

茉莉音「あっ…はい!」

美樹「ええ~…またあの色んな意味で地獄のようなレッスンをぉ~?」

プロデューサー「あっそれじゃぁ私達もここを出っ…あっ真田?アーグニャ事務所に来たから戻って来ていいぞ?」スタスタ

洲水「…じゃぁ私も、プロデューサー探してくるから」

先生「それじゃぁ小林くぅん?ごめんなさぁいねぇ?もし、私とお話したかったらこの名刺を…」

小林「えっあっ…はい……」



証拠ファイル②レッスンの先生の名刺

【名前と連絡先とスリーサイズと電話番号が書かれている。キスマークが大きく覆われている】



小林(これ…パッと見キャバクラの名刺に見えるな)

シャロ「ええー?もう茉莉音ちゃんとバイバイなんですか?」

ネロ「ようやく会えたんだから、もうちょっとお話したいんだけどなー僕も」

アーグニャ「ふぁぁ……Спокойной ночи ……グゥ………」

藍川「ほらほらー!おやすみなさいくらい日本語で言わないと私困惑しちゃうよー?ここで寝ちゃ駄目だー!」ダンダン

ジャッキー「…………」

先生「あらぁ。皆この部屋に残りたいの?茉莉音ちゃん大人気ねぇ。それじゃぁ……」

先生「茉莉音ちゃんと一緒に、私の熱いレッスンを受けるかしらぁ?」ニタァ……

シャロ「バイバイ茉莉音ちゃぁーん!また会いに来るからねぇー!」ブンブン

ネロ「クリスマスライブ楽しみにしてるよー!頑張ってねそれじゃさようならバイバーイ!」ダダダダ

コーデリア「お体をお大事に!検討を祈りますわ!」ドダダダダダダダダ

アーグニャ「Доброе утро!!!レッスンに行きましょう!」カッ

藍川「おおっとぉ!やる気だねぇアーグニャちゃん!よっぽどあのオカマレッスンが嫌かぁ!」

ジャッキー「…………」スタスタスタ

姫百合「失礼します」スタンスタンスタンスタン

小林(今、皆の心が一つになった!)

小林「………」

先生「…」パチクリ

小林「そっそれじゃぁ僕も…」

茉莉音「こっ…小林さん!ミルキィホームズさん!」

小林「…ん?」

茉莉音「………ライブ、楽しみにしてください!」ニコッ

小林「…………」

小林「…うん。ありがとう」





【横浜鶴舞薫レッスン教室 12月20日 午後3時26分】


小林(そして僕達は、プロデューサーの後を追っていくうちに色々なアイドルと出会い、その度にスケジュールやライブの確認)

小林(時には僕達をそっちのけで明後日の方向へと進み、ミルキィホームズの皆も姫百合くんも探検しにどこかへと消えた)

小林(そして今――僕は)

小林(この広いレッスン教室の中で迷子になっていた)

小林「マズイ…よなぁ」

小林(正直、このまま僕がレッスン教室から出て帰るのは容易い事だ。彼女達の心配は無いだろう)

小林(問題は彼女達が僕を探しているとして、勝手に帰ったら失礼に当たってしまうわけで…)

小林「…あっ」

真田P「あっ」

小林「どっ…どうも」

真田P「ええ。どうも小林さん」


小林「…何を、しているんですか?そんな所で」

真田P「…いえ、この部屋はその、御子柴さんの部屋なのですが」

真田P「篠田さんが入ったっきり出てこなくて…。鍵も掛かって途方に暮れていた所です」

小林「鍵が?」

真田P「ええ、あっ!だからと言っておかしいわけでは無いのです」

真田P「御子柴さんは、その…極度の人見知りでして」ポリポリ

小林「はぁ」

真田P「レッスン以外は大体自室で一人、何をしているのか分かりませんが鍵を閉めたまま閉じこもるのです」

小林「ははは…それは大変ですね」

小林(どうしてアイドルになったんだろう)

真田P「…元々は、篠田さんの友人で彼女がここに連れてきた子なんですよ」

小林「えっ?」

真田P「私がこのような身なりと顔。そして背が高さで酷く怯えさせてしまった事があるのです」

小林「えっ、あの…僕、口に出していましたか?」

真田P「ですが、それも無くなり御子柴さんはじょじょに綺麗な笑顔に…あっ!申し訳ございません。彼女のプロデュースの癖で…」ペコペコ

小林(この人も、結構苦労しているんだなぁ)


真田P「しかし…」チラッ

真田P「……そろそろ部屋から出て貰わないと困るのですが…」

小林「この後、何か?」

真田P「はい。この後ライブに関する打ち合わせとレッスンが」

小林「そうなのですか…」

真田P「篠田さんもこの部屋に居るのでしょうか…」チラッ

小林「うーん…何かしらの事件が起こってなければ良いんですけど…」チラッ

小林「…………」

真田P「あの、失礼します御子柴さん。レッスンの時間です。」コンコン

小林「……」

真田P「…あの、篠田さん?いらっしゃいますか?御子柴さんも居るのは――」

小林「…あっあの……真田……さん」

真田P「?はい。なんでしょう」

小林「……足元を、見て貰ってもよろしいですか?」

真田P「足元ですか?」チラッ

真田P「…………えっ」

小林「…はい。ドアの隙間から…流れてるの…これ、血…ですよね?」

真田P「……………」





ドンッ!!ドンッ!!!!



小林「!」

真田P「御子柴さん!?篠田さん!?何をやっているのですか!?開けてください!!」

小林「真田さん!落ち着いてください!」

真田P「…っ!御子柴さん!!篠田さん!!!!」ドンッ!!ドンッ!!!!!

小林「真田さん!扉を叩くだけじゃ駄目です!」

小林「鍵を壊す勢いで蹴破りましょう!!」

真田P「!!」



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    /: .: .: .: .: .: . _,,.-‐'': : : : :  三 二 ニ ―     /  ||   | ̄|| | || | || |: .: .: .: .
    /: .: .: .: .: .: .//:: : : : : : : : / /     三 二/  || ― |  || |_|| |_|| |: .: .: .: .
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: .: .: . :..| |: 三 三 二 ニ ― |                              |   |: .: .: .: .: .: .
: .: . : . :| |: : : : : : : |  |                             |   |: .: .: .: .: .: .
: .: .: .: .| |: : : : : : : :|  |                         |   |: .: .: .: .: .:



小林「凄い…一蹴りで……!」

真田P「篠田さん!御子柴さん!!」

篠田「」

真田P「!!」

真田P「篠田さん!どうしたんですか!?しっかりしてください!!」

篠田「」

小林(!手にジュースの入ったグラスを持っている…)

真田P「篠田さん!?篠田さん!!」

小林「……」ピトッ

小林「…大丈夫、眠っているだけだ。外傷も目立った所は無い」

真田P「…よっ…良かった…」

小林「…………それよりも」

小林「あれは………あれが…御子柴さんなのか?」

真田P「ハッ そうです御子柴s……」

真田P「」


小林「……この、華の造形をした花瓶……の下に彼女の頭が……いや頭が潰されている…」

真田P「………っ」

小林「…真田さん」

小林「………これは、間違いなく殺人事件だ」

真田P「…いっ今すぐ警察を呼びます…!!」ピッピッピ……

小林「……………」

小林(落ち着け…落ち着くんだ僕…!)

小林(まず、警察が来る前にこの殺害現場の状況を十分に把握する必要がある)

小林(もし、被害者の殺害時刻が現時点の時刻と差異が無ければ…真犯人は近くに居る!)

小林(まずは被害者の周辺を調べ……)

小林(……………)

小林(……僕は、今殺人事件が起こったにも関わらず冷静に判断し行動に移している……)

小林(これは…探偵としては良い傾向かもしれないが…人間としては…)

小林「…とにかく、捜査だ」



→【凶器の石の華】

小林(被害者である御子柴さんの頭を完全に潰している)

小林(この壷を持ち上げて被害者の頭を確認する度胸は、僕には無い)

小林「……ん?」

小林(そういえば、この壷が凶器と言う割りには壷が綺麗すぎるな)

小林(いや、血や肉片は付着しているが…鈍器として用いられたとしたらひび割れや変形が少なすぎる)

小林(無いと言っても良いくらいだ……)




証拠ファイル③凶器?の壷

【大きな華をモチーフとした石壷。ひび割れや変形がほぼ無い】






→【篠田が飲んだジュースのグラス】



小林「グラスが割れている…中身はオレンジジュースか」

小林(篠田さんは眠っていた。という事はこのジュースを飲んで眠らされたと考えるのが妥当か)

小林(このジュースに関しては神津と鑑識が明らかにするだろう。睡眠薬入りかどうかはその時に聞こう)




証拠ファイル④割れたグラスとジュース

【篠田さんが飲んでいたと思われるジュース。中に睡眠薬が入っていた可能性が有り】




小林「…………」

小林(しかし)

小林「一体誰に盛られたんだ…?」





→【机上の写真】


小林「ん?これは……」

小林(…この写真に写っている人が御子柴さんなのだろうか?)

小林(そしてその隣に移っている女性は……一体…これは何だ?)

小林(赤い×印で顔が潰されている…どういう意味だろう?)




証拠ファイル⑤御子柴さんの写真

【写真には二人の人物が写っている。被害者と被害者の母親。母親の顔が赤い×印で潰されている】



真田P「はい…はい!早急にお願いします!」ピッ

小林「…あの、真田さん」

真田P「え…はい。なんでしょうか?」

小林「この写真に写っているのは…御子柴さんで間違いありませんか?」

真田P「…えっ?あっ!はい!御子柴さんとその母親に……」

真田P「……どうして母親の顔が赤く塗りつぶされているんですか…?」

小林「(…………)真田さん」

小林「どうやら、この事件は想像以上に複雑のようです」

真田P「えっ…」

小林(これだけの証拠では、現状が全く分からない)

小林(それに、警察が来るまで現場保存の為に引き出しの中を開ける訳にもいかない…凶器である壷を動かすなんてもっての他だ)

小林(……神津達を、G4を待つしか無いのか…!)




【横浜鶴舞薫レッスン教室 12月20日 午後3時45分】



ダンッ!!!!!!



小林「!」

神津「………」

小林「…来たか。神津」

シャロ「せっ先生!この騒ぎは…一体なんなんですか!?」

コーデリア「あのっ!急に警察の方達が私たちを部屋に拘束するって!教官!?」

小衣「ちょっとアンタ達!うっさい!黙ってなさいよ!」

プロデューサー「…ちょっとこれは、一体何が起こったんだい?小林少年と、真田。」

真田P「…………」

神津「…小林」

神津「…………」

姫百合「あっあの!小林さん!一体ここで何が起こったんですか!?」

洲水「……プロデューサー。何だか凄く浮かない顔してる」

真田P「…………」

アーグニャ「Это странно……プロデューサー…元気ありません…」


神津「…一体何があった」

小林「この部屋には鍵がかかっていた。それで僕達は扉の鍵を壊し、中に入ったんだ」

小林「その時から既に…こんな状況になっていたんだ」

神津「……………」

次子「っつー事は、ここで寝てるお譲ちゃんもそのままの状態って訳かい?」

小林「…ああ。そうなる」

次子「…ふぅーん」

ネロ「異議あり!」ビシッ

小衣「はぁ!?ちょっと何!耳元で叫ばないで!」

ネロ「今、この現場で矛盾があったから突きつけただけだよ」

平之「矛盾…ですか?」

ネロ「そうだよ。何で居るのアンタ達」

小衣「…は?」

ネロ「G4って怪盗事件担当でしょ?現場をチラっと見た感じ、どう見ても殺人事件だった」

神津「………」

ネロ「これは、明らかに矛盾していると思うな」

平之「………」

咲「………」

小林「…ごめんネロ。矛盾していたとしても…そんなに疑問を感じない」

ネロ「えっ」


次子「んあ。あー私たちさぁ?今まで二度もサイコパス殺人に関わって来たからさぁ」

咲「警視の一声さえあれば、殺人事件でも介入できるようになったってわけ~」

神津「…俺は許可した覚えが無いがな」

小林(それはそれで大問題のような)

シャロ「えっ……」

エルキュール「まっ…また…さっ…殺人?」

神津「…………」

小林「…まぁ、でもそういうわけだ神津」

小林「この事件、どう見ても殺人事件。そして僕は第一発見者だ」

神津「…ああ、そういう事になるな」

小林「そうだ。それを踏まえて言える。ここにある証拠品だけでは不明な点が多い」

神津「…………」

小林「まず、このグラスのジュースには睡眠薬が混入していた可能性がある。そして、この壷は凶器と言う割りにはひび割れも変形も少ない」

神津「…………」

小林「そして、極めつけはこの机の上の写真。被害者と思われる人物とその母親が…」

神津「小林、良く聞け」

小林「?どうしたんだ?」

神津「……我々に情報提供。指示をしてくれるのは良い」

神津「だが、我々はお前のいう事は聞けない」

小林「……えっ?」

ネロ「…どういう事なのさ」

神津「小林、今回のケースにより。お前には」


神津「特殊捜査権限を与えることが出来ない」


小林「!?」


コーデリア「どっどういう事よ!?」

「はんっ!当然の事よ!」

スタスタスタスタ

小林「っ!……北芝検事」

北芝「…久しぶりねぇ。探偵オペラ」

北芝「悪いんだけど、今回はアンタに特殊捜査権限を発動させる事はできないわ」

シャロ「なっ…なんでですかぁー!!」

ネロ「それって、ただのアンタの私怨じゃないの…?」ギロッ

神津「……北芝検事の事情とは関係が無い」

神津「特殊捜査権限は、いついかなる時でも発動できる物では無いという事だ」

小林「…そっそれってもしかして…」

神津「…ああ、小林。お前が事件の第一発見者の時点で」

神津「お前にも事件の容疑が少なからず存在する」

小林「っ!」

シャロ「!」

ネロ「!」

コーデリア「!」

エルキュール「!」

姫百合「!」


神津「…事件の容疑を被っている者に特殊捜査権限を与えるわけにはいかない」

神津「つまりはそういう事だ。悪いが明日の裁判の日まで、お前達は身動きが取れない」

小林「そんなっ…」

北芝「はっ!ざまぁないわね。これじゃぁ安楽椅子探偵でも事件解決は無理じゃないかしら?」

北芝「アンタにまだ、不明の点があるって言うのならね!!」

小林「ぐっ…」

北芝「…まぁでも、特殊捜査権限がかけられても、容疑があっても弁護権は失わないから今回の事件でも弁護してみたら?」

北芝「そして準備不十分のまま弁護席に立つ屈辱、受けてみるがいいわ!あーっはっはっは!」

ネロ「なんだとー!毎回小林に負けてるくせに生意気なぁー!」

コーデリア「そーよそーよ!今となっては負け犬の遠吠えにしか聞こえないわ!」

ジャッキー「…バウッ……」

小林「あっ…ジャッキーくん居たんだ…」

小衣「そうよ!ババアあんた調子に乗らないで頂戴!」

北芝「アンタはどっちの味方なのよ……」

北芝「…まぁいいわ。あんた達は明日の裁判まで留置所で身動きが取れないでしょうし」


小林「っ!?」


姫百合「りゅ…留置所……」

北芝「誰が告訴されるか、楽しみにしているが良いわ」

北芝「あぁーっはっはっはっは!!」

神津「……不当な逮捕はしない」

神津「中でも最もサイコパスの可能性が高い人物を拘束、告訴するつもりだ」

小林「…………」

小林「…という事は、つまり…!」

神津「お前がそいつを弁護するのは勝手だが、あまり警察を舐めない事だな」

神津「…連れて行け」

巡査部長「はっ!!」



タッタッタッタッタッタッタ………




【留置所 12月20日 午後4時44分】



ネロ「クッソー!何だよ神津警視のあの態度!」プンプン

コーデリア「いくらなんでも!私たちをこんな所に押し込んだ上にあの仕打ち!今まで事件を解決したのは私たちなのに酷いと思います!」プンプン

小林「いや、仕方無いよ…。僕にも容疑がかけられているのは事実だし」

シャロ「でも!先生が殺人なんてする筈ありません!」

エルキュール「そっ…そう…です…!」プルプル

小林「うん、いや今回容疑にかけられるのは僕じゃなくて…」チラッ

真田P「………………」

洲水「…プロデューサー。その…さ、あんまりそんな暗い顔しないでよ」

藍川「そうですよ!こういう時こそ…時…こそ……」

藍川「……………」

藍川「…ごめん。さすがに不謹慎すぎた」

洲水「…まぁそうだよね。御子柴さんが…ね。まさか…………」

アーグニャ「…………」

鬼瓦割「チッ そもそもいつ自殺してもおかしくない野郎だったのは確かだけどな」

洲水「…ちょっと?鬼瓦割?」

鬼瓦割「だって、顔を合わしてもヒソヒソと逃げる奴だぞ?私なんて声も聞いた事無いんだぜ?」

洲水「…………」ギロッ

アーグニャ「……喧嘩…ダメ…」フルフル

藍川「まっまぁまぁお二人ともぉ。ちょっち落ち着いてぇ~」

二人「「黙ってて(ろ)!!」」

藍川「うひぃ!」ビクッ

エルキュール「きゃぁああああああ!!」ビクッ

シャロ「猛獣がぁああ!猛獣が唸り始めましたぁー!!」

ネロ「大丈夫だよ皆!猛獣は檻の中に居て僕達は…檻の中だぁ!うわぁああああああ!!」

姫百合「………元気ですねぇ」

小林「……本当」


真田P「あの…お二人とも、お止めください…お願いします」ペコッ

洲水「…………」

鬼瓦割「………チッ  興が失せた」

茉莉音「…それだけでも良かったです。だって、私たちの仲間が…殺されたんですもの…」

美樹「これ以上、犠牲者出したくないからねー」

鬼瓦割「………おい、言葉に気をつけろツインテール」

小林「…………」

小林(やっぱり荒れてるなぁ。…仕方ないか)

小林(今回の事件、刑事側に告訴されるのは間違いなく…”篠田さん”)

小林(理由は、殺害現場の部屋に殺害時に居た人物として、真犯人の容疑に一番近い人だからだ)

栗野原「……………」サクッ サクッ

藍川「…うん~?栗野原っちは何をしてるのかな~?」

栗野原「…この事件の真犯人を……呪い殺そうとしているの」

栗野原「呪殺は刑罰に処されないからねぇ~…よっぽどの事が無い限り。ケケケッ」サクッサクッ

藍川「あっあのさマロンっち?お人形さんが血まみれになってるんだけど…どのような効力があるのそれ?」

洲水「ていうか犯人が誰かハッキリしていなくても効力あるの?それ」

真田P「…栗野原さん止めてください。貴方が血を流す必要はありません」

真田P「貴方が傷ついてしまえば、私が困ります」

栗野原「…………」

栗野原「…プロデューサーがそういうのなら、仕方無いねぇ。クケケッ…」

小林(アイドル達には彼に任せれば安心そうだな)


鬼瓦割「…それより、黒プロデューサーとバカ乳とオカマはどうした?あいつらも容疑あるんじゃないのか?」

藍川「あらっ?ええとそれは~…」

真田P「先輩とマネージャーは事件当時、事務所に居たので容疑外です。先生は…その…」

先生「はぁ~い♪私はKO↑KO↓に居るわよぉ~☆」

鬼瓦割「居たのかよ……」チッ

茉莉音「すごい離れた所に居ますね」

先生「こういう時でもライブの為にレッスンを怠ってはいけないわ!もうライブまで……」

真田P「…殺人事件が起こった以上、クリスマスライブは中止です。それも…不謹慎ではありますが。メインメンバーに欠員が出てしまっては、表に出る事も出来ません」

茉莉音「えっ………」

先生「あら……残念ね。茉莉音ちゃんも美樹ちゃんも凄くダンス上手くなったのにぃ…」シュン

ネロ「…やっぱりこういう事態になっちゃうと、ライブは中止だよねぇ…」

シャロ「楽しくはしゃげませんもんね…」

茉莉音「……………」

小林(…茉莉音さん、酷くガッカリしてるな。)

小林(クリスマスライブ…本人も楽しみにしていたんだな……可哀想に)




ガターンッ



小林(…ん?)

看守「小林オペラ、面会だ。出ろ」

シャロ「えっ何?先生?」

コーデリア「教官だけ…一体どういう事でしょう」

小林「あの、一体誰が……」

看守「ここでは伝えられない。来い」

小林「………分かりました」スッ

シャロ「!」

シャロ「せっ先生!もし被告人でしたら!弁護してあげてください!」

ネロ「多分、一番不安なのは刑事側に訴えられた人だからね」

小林「……ああ。分かった」

小林(勿論、そうするつもりだ。このまま裁判が終わるまで何もしないまま終わるわけにはいかない)

小林(……だが、何だ?この、胸騒ぎは?)

小林(いや、胸騒ぎだけじゃない。この強烈な違和感……気持ちの悪さ…)

小林「…………」

小林(…この事件、何かが隠されている。それも、酷く臭う何かが)




【留置所 12月20日 午後5時02分】


小林「………」

小林「きっ君は……!」












コロン「師匠!こんな所で何しとるんや!?」




小林「コロンくん!君は留置所には居なかったのか…!」

コロン「うん?まぁ、気づいたら公園のベンチで眠ってたんやけどな」

コロン「そんな事よりも、これどないなっとるん?」

コロン「あの胡散臭い銀髪の眼鏡の兄ちゃんに師匠の居場所を聞いたら、留置所と聞いておったまげたで!」

コロン「しかも姫百合やミルキィホームズの皆も留置所に閉じ込められとる言うて…何に巻き込まれたんや?」

小林「……実は、その………」





→【殺人事件】


コロン「…ほんまかいな?」

小林「ああ。事務所の持つ練習所で殺人事件が起こった」

小林「そして事件現場に近かった僕達が容疑者として拘束された。そして僕は第一発見者だ」

コロン「…ふ~ん?ほ~ん?……そして、何か分かったんか?師匠」

小林「……分からない」

コロン「ん?」

小林「容疑にかけられた探偵に特殊捜査権限が貰える事は無い。だから僕はここに居るわけで…」

コロン「あっ………」

コロン「…………」

小林「あっいやその。でも裁判で大体の証拠は出揃うと思うしそんな悲観にならなくても…」

コロン「……ふっ」

小林「ふ?」

コロン「ふはーっはっは!こんな時こそ!名探偵コロン様の出番や!」ガタッ

小林「うわっ!?」ビクッ


コロン「安心せぇ師匠!ウチはこの事件で誰よりもアリバイがある!そして関西でも有数な探偵や!」

コロン「だからウチには特殊捜査権限が下りる筈やで!」フンス

小林「………」

小林(確かにそう…だけど)

タンタン

コロン「師匠!これからウチは師匠の為にこの事件の捜査してくるで!」

コロン「そして!新しく暴かれる証拠品を楽しみにしてーな!今日までにおったまげるほどの証拠品を持ってきたるわ!」

小林「……それは、非常に助かる」

コロン「おっしゃぁああ!やる気出てきた!それじゃぁ行くでぇ!名探偵コロン!捜査開始ぃいい!!」ピュゥウウウ―

小林「…………」


イソゲイソゲー!キョウマデニシショウニユウリナショウコヒンソロエルンヤー!


小林(…ミルキィホームズに負けないくらい、彼女も騒がしい子だな)

小林「でも、ちょっと頼れる子…かな」クスッ

看守「はい、以上今日の面会は終了です」

小林「えっ」

看守「今日はもうこれ以上の面会は許されませんので、あっしからず」

小林「……」

小林(ごめんコロンくん…証拠品…間に合わなかったね……)





【留置所 12月20日 午後5時30分】


シャロ「そうなんですか。コロンちゃんが…」

小林「うん、幸い彼女にはアリバイがあるからね」

ネロ「ちぇー。結局の所あの露出魔、棚から牡丹餅だよねー」

姫百合「しかし、これで私たちにも証拠品が回ってくる可能性が高くなりました」

小林「はは…そう……だね」

小林「…………」

小林「……あの、皆さんちょっと良いですか?」

洲水「?」

真田P「はい。何でしょうか」

小林「…僕は明日、この事件の被告人を弁護します」

茉莉音「!?」

鬼瓦割「…おいちょっと待てよ。被告人って事は、御子柴を殺した奴の事だろ?」

洲水「さすがに、私もそれはどうかと思うけど?」

栗野原「……もう、遅い。私が…呪いをかけたからネ……ケケケ」

小林「……その、被告人が」

小林「篠田さん…だったとしてもですか?」

藍川「!?」

栗野原「!!!」

アーグニャ「……Вы, наверное шутите?」


洲水「……どういう事?」

小林「今回の事件、事件の容疑者として最も疑わしいのは篠田さんです」

小林「刑事側が告訴する人物として最も最有力なのは間違いないでしょう」

藍川「いっいやいやいやいや」ブンブンブンブン

藍川「篠田っちが!?絶対有り得ないでしょ!よりによって一番殺人に無縁じゃん!篠田さんなんて!」

洲水「…私も、ジョークとしては笑えないなそれ」

小林「冗談ではありません。本当の事です」

真田P「…………」

先生「ええ~?でも、篠田ちゃん。BRの中でもすっごく良い子よぉ?そんな子が殺人なんてぇ…」

小林「それを確かめる為に、僕は法廷に立ちます」

小林「この事件の、真犯人を突き止める為に」

洲水「…………」

鬼瓦割「…………」

藍川「…………」

栗野原「…………」

アーグニャ「…………」

真田P「………そう…ですか」


シャロ「大丈夫ですよ!小林先生なら絶対に!裁判に勝って見せます!」

ネロ「そうだよ!事件なんてアッサリ解決しちゃうんだから!」

コーデリア「教官に出来ない事なんて無いんです!」

エルキュール「大船に…どんぶらこ…どんぶらこ…」

小林「…みんな、ありがとう」

小林(正直、僕はそんなに自信無いんだけど…)

鬼瓦割「…で?どうするってんだよ」

小林「はい。まずこの事件当日の事柄を整理する為に」

小林「皆さん一人一人に事件当日何があったか聞かせてください」

洲水「……それって…」

栗野原「私たちの事…疑ってるぅ?」

小林「いえそうではありません」

小林「事件当日に皆さんがどこに居たのか、把握する必要があるのです」

鬼瓦割「…………」

アーグニャ「…………」

真田P「……分かりました」

スッ

真田P「皆さんも、小林さんにアリバイを話してください」

洲水「………分かった」

藍川「…分かった。まぁ仕方無いよね」

鬼瓦割「……こうなった以上はな   チッ」

アーグニャ「…Да。Понимаю…分かりました」

栗野原「しょうがないねぇ…ヒヒッ」

小林「…ご協力、感謝します」

小林(現場の捜査が出来ない今、僕ができる事は)

小林(事件関係者から話を聞いて、どんな些細な情報も手に入れる事だ!)




→【真田Pのアリバイ】


真田P「…AM6時に起床。6時十分に歯の洗浄。終えたら昨日下準備した食材で朝餉の準備を。」

真田P「いつもの通り7時13分の東海道本線の普通列車で通勤。7時55分にはタイムカードを切り今日のスケジュールの確認を…」

小林「…あっあの、私生活の事までは報告しなくても大丈夫なので…」

小林「真田さんは僕と同じ事件の第一発見者です。アーグニャさんを迎えに行った後の事を教えてください」

真田P「…はい。あの後、先輩から電話が掛かってきてアーグニャさんが練習場に来たという報告を受けました」

真田P「その後皆さんのレッスンの時間を念のため先輩に報告。一度練習場に戻り御子柴さんを迎えに行きました…その後は」

小林「分かりました。結構です。その後の事は理解しています」

小林(…聞いた所、変わった所は無いな)

洲水「……タイムカードを切って私たちのスケジュールを確認した後、何してるの?」

真田P「え」

藍川「あっ!それ私も気になるなぁ~。誰のスケジュール表を一番最初に見るのかも何気に~」

アーグニャ「Понятно…アーグニャがここに来る時間ハ…ダイタイお昼頃デス」

鬼瓦割「…学校の勉強とかあるからな。一応」

真田P「…あの?」

栗野原「キキキ…そんな早く事務所に来て…プロデューサーは何してるのかなぁ?」

洲水「…確かに気になるね。そこん所どうなの?プロデューサー」

真田P「…………」

小林(真田さんが困惑している…)




→【鬼瓦割さんのアリバイ】



小林「鬼瓦割さんは、ずっと倉庫に一人で居たのですか?」

鬼瓦割「…勝手に決め付けんなよてめぇ」

小林「すっすみません…」

鬼瓦割「だけど、残念ながら一人では無かったぜ」

小林「…え?」

鬼瓦割「黒プロデューサーに倉庫から引っ張られて、強引にレッスンの参加させられてたんだよ。私は   チッ」

真田P「鬼瓦割さん…私の忠告通りに」

鬼瓦割「…ふん、一応ライブも控えているからな。仕方無くだ仕方なく」

鬼瓦割「そん時の事は黒プロデューサーとダンスの先生に聞けばぁ一発で分かるだろうよ」

小林(つまり彼女もアリバイがあるって事か)

洲水「……………」




→【洲水さんのアリバイ】



小林「僕達が居ない間、洲水さんは何をしていたのかな?」

洲水「…私たちは川澄プロデューサーに連れられてレッスン場に行かされたよ」

小林「えっ?」

洲水「鬼瓦割とはその時一緒になったの。なんなら川澄プロデューサーと藍川さんとアーグニャさんも一緒だったけど」

藍川「そうですぜぇーい!このロシアのロリっ子もホレホレー!」

アーグニャ「Да-да。容疑者の私達が言うのもナンですが、カワスミプロデューサーなら証明できマス」

小林(…つまりこの三人もアリバイがあるという事か)

小林(川澄プロデューサーとマネージャーは物理的に殺人は不可能…それに性格から嘘をつく事はなさそうだ)

小林(…もし本当に何も隠していなかっただけど)




→【ミルキィホームズのアリバイ】



小林「一応、君たちにも確認しておくよ」

シャロ「はい!あの後私達はプロデューサーについていったのです!」

ネロ「しかし!そこではぐれて僕達は!」

コーデリア「迷子に!」

エルキュール「なってしまったのです…」シュン

姫百合「…本当、栗野原さんが居なかったらどうなっていたことか…」

小林「栗野原さん?」

栗野原「ケケッ…私はジャッキーにしがみついて川澄プロデューサーを追っていたんだよ」

栗野原「でも、まさかジャッキーが川澄プロデューサーじゃなくてこのカラフルな娘達についていくなんて…ビックリしたよ。本当に。ククケケ」

小林「…それで、どうしたんだい?」

シャロ「折角なので、栗野原さんに練習場を見学させていただきました!」

コーデリア「茉莉音ちゃん以外にも、沢山のアイドルユニットの人達が練習していましたわ」

ネロ「いきなりG4がやってきて僕達を捕まえるまではねぇ~」

小林「ははは…楽しそうで何よりだね」

小林(これは彼女達もアリバイがある…のか?)

姫百合「…これが本当の事ですので呆れますよね」




→【茉莉音ちゃんのアリバイ】



小林「一応、君たちのアリバイも聞いて良いかな?」

茉莉音「あっはっはい!」ピシッ

美樹「…って言っても。私達に説明できる事なんてたかが知れてるからねぇ」

美樹「何せ、ここ最近は泊り込みで練習ばっかりしてるから。昨日からずっとレッスン室から動いてないんだよねぇ~」

先生「んもう!その分だけ貴方達はダンスが上手くなってるんだ・か・ら♪」

小林(それってほとんど監禁なんじゃぁ…)

茉莉音「あっあの、…本当です。私達は」

茉莉音「事件当日から、文字通り日付が変わった後もずっとレッスン室から一歩たりとも動いていません…」

美樹「雑誌の撮影とかポスターとかの外部の仕事は全部断ってさぁー。私、レッスン室で焼肉食ったの昨日が初めてだよ」

先生「でも美味しかったでしょぉ~?事務所直々からの国産黒毛和牛パーティ!」

茉莉音「……野菜がありませんでしたね」

美樹「正直食事後の運動は肉の脂が腹ん中回って吐きそうになったよ」

美樹「でも、それも全部水の泡かぁ~…中止は残念だなぁ~本当」

茉莉音「…………」

小林(また、彼女に悲しい顔をさせてしまった)

小林(しかし、これで残りの三人もアリバイが成立した…という事か)



小林(つまり、この時点でアリバイが成立していないのは篠田さんと)

小林(………)

小林(…僕、か。)

真田P「…………」

洲水「…………」

鬼瓦割「…………」

藍川「…………」

アーグニャ「……………」

栗野原「…………」

茉莉音「…………」

美樹「…………」

小林(明日の裁判、本当にどんな展開になるんだろう。まさか、また僕が被告人になるわけじゃないよな…?)

シャロ「だっ大丈夫ですよ皆さん!」

バッ

シャロ「この事件は!私達の先生!かの有名な小林オペラ先生が担当するんですから!」

ネロ「そうだよ!小林が担当して解けなかった謎なんて一つも無いんだ!」

コーデリア「教官がこの事件に取り組めば!絶対に真犯人だって分かるんだから!」

エルキュール「だから…大船に…どんぶらこ……」

姫百合「……確かに今は不安かもしれません。気分も優れないでしょう」

姫百合「ですが、今は私達に任せてみてはくれませんか?」

小林(…いや、それは有り得ない筈だ。神津の捜査なら、今までの裁判の通り真犯人までの筋が分かるようにしてくれる)

小林(G4だって馬鹿じゃない。神津の居るG4ほど有能な警察組織も早々無い。無い筈だ……)

小林(なのに…何なんだ?さっきから感じる…)

シャロ「だから安心してください!先生と私達が居ればこの事件!あっという間に解決してみせちゃいます!!」



小林(この……猛烈な違和感は…!!)





小林(そして僕は、事件の発見直後から明日行われる裁判までのこの違和感が)

小林(この事件の重要なファクターであった事を)



小林(裁判当日になるまで気づくことは無かった………)







【続く】


証拠ファイル①真田Pの名刺

【名前と連絡先と会社名が書かれている。何故か名前欄が小さい】




証拠ファイル②レッスンの先生の名刺

【名前と連絡先とスリーサイズと電話番号が書かれている。キスマークが大きく覆われている】





証拠ファイル③凶器?の壷

【大きな華をモチーフとした石壷。ひび割れや変形がほぼ無い】





証拠ファイル④割れたグラスとジュース

【篠田さんが飲んでいたと思われるジュース。中に睡眠薬が入っていた可能性が有り】






証拠ファイル⑤御子柴さんの写真

【写真には二人の人物が写っている。被害者と被害者の母親。母親の顔が赤い×印で潰されている】




今回はこれでおしまいです。次回は裁判パートです。
続きはこのスレで投下致しますので、お待ちいただけたら幸いです

原作に出てこないキャラの自分勝手なイメージ
洲水と篠田
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira110202.jpg

鬼瓦割(おーがわ)
藍川
ロシア人
呪いの人
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira110203.jpg

プロデューサーと化物
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira110204.jpg

投下します

【横浜裁判所 第二控え室  12月21日 午後1時02分 】


小林「……………」

小林(結局)

小林(本当に裁判当日になるまで留置所から出して貰えなかった……)

小林(検察側は一体どのような準備をして、この事件についてどう考察したのだろう)

小林(想像するのは容易いけど、確信は持てない)

小林(………全ては裁判が始まるまでどんな考察も充てには出来ないか…)


白い髪の少女「でも、何も考えないよりはマシだと思うよ?」

小林「ん…まぁそうだけどね」

白い髪の少女「それよりも、本当に彼女を弁護するの?」

小林「それは愚問だね。彼女を弁護しなければこの事件の真相には辿り着けないだろうし」

白い髪の少女「ふーん、そっか。それは間違いないけど多分後悔するんじゃない?」

小林「後悔?それってどうし…」

小林「………」

小林「…って、どうして君が僕の隣に座っているんだい?」

白い髪の少女「ん?」

小林「いや、ん?じゃなくてだね…」

小林「あっ!そういえば君、怪盗アルセーヌの裁判の時でも会った…ような」

白い髪の少女「えー、他にも英国から日本までの飛行機でも会ったでしょ?」

小林「…ああ。確かに会っている」

小林「一つだけ聞いても良いかい?」

白い髪の少女「んー?」

小林「…僕が日本に来てから、この一連の事件に君の姿を見たという人が居る」

小林「一度被告人にされた姫百合くんも、白い髪の少女を見たと言った」

白い髪の少女「………」

小林「…これは、偶然なのか?それとも」

白い髪の少女「偶然だよー」


小林「…偶然?」

白い髪の少女「うん、私はサイコパスって人たちだっけ?その人には興味が無いよー」

小林「………」

白い髪の少女「でも、サイコパスって人達は私に興味があるみたいだけどー」

小林「………え?」

白い髪の少女「いや、興味があるのは君の方かな?だって君、人間辞めてきてるし」

小林「…ちょっちょっと待ってくれ!?一体どういう…」

「小林さん!」

小林「!」

エルキュール「…………」

小林「あっ…エルキュール」

エルキュール「…いっ今…一体誰と喋って居たんですか…?」

小林「ああ、ええと…この娘は…」

小林「………あれ?」

小林(居ない……?)

「先生ー!」

「師匠ー!」


小林「っあ、君たち…大丈夫だったのかい?」

シャロ「はい!今回の事件は私たちが容疑者です!」

コロン「せやせや、だから今回は被告人のアイドルの容疑が解けても、次に師匠やら他のアイドルやら…色んな候補がおるからな」

コロン「そりゃぁもう血眼で証拠品を漁りまくったでっ!」フンスッ

小林「そっそれは頼もしいね…」

ネロ「んで、現場を引っ掻き回したせいで公務執行妨害として僕たちと同じ留置所に入れられたんだよねー」

コロン「んなぁー!それは言わんといてーなっ!」アタフタ

小林(………………)

コロン「あっ安心せぇや師匠!ちゃんと怪しい物は……」

コロン「………」

コロン「…一つ!一つだけでも見つけたからっ!な?」

小林(一つ…か)



証拠ファイル⑥壊れたカセットテープ

【被害者の部屋に落ちていたカセットテープ。真っ二つになっている】



小林(今回こそ本当にダメかもしれない)

小林「…ありがとう。コロンくん」ニコッ

コロン「!」パァアアア…


小林(本当…どうしよう………)

シャロ「あっ!篠田さん!」

篠田「……………」

ネロ「おっ!今回の依頼人登場だよ。小林」

小林「えっああ、どっどうも…」

篠田「…………」

小林(…やっやっぱり被告人にされたのか…この娘…)

篠田「……っ」キッ

篠田「今回はよろしくお願いします!小林さん!」ペコリ

小林「えっ?…ああ、こちらこそ頑張ります!」

美樹「まぁまぁ篠田さ~ん?そんなに固くならないでも良いじゃなぁい?」

洲水「いや、アンタここがどこか分かってんの?裁判所だよ?篠田も容疑者にされてるんだし」

真田P「いっいえ、そっその。しっしっ篠田さんがししし心配することはなな無いと思いまます」ガタガタ

真田P「こっ小林さん…そのっ小林少年が…しし篠田さんのべべ弁護士をしてくれるるなならら…」ガタガタガタガタ

洲水「プロデューサーは当事者でもないのにビビリすぎ」

茉莉音「でも、言ってる事は間違ってませんよ!」

茉莉音「篠田さんの弁護士は、あの!有名な小林オペラさんなのですから!余計な心配はきっと!きっと無用です!」キラキラ

小林「ど…どうも………」

真田P「………」


真田P「っ」パァンッ(両手で自分の頬を叩く)

ミルキィホームズ「「「「!」」」」ビクッ

真田P「…その通りです。篠田さん」

真田P「私たちは貴方を信じています。ですから、貴方も信じてください」

真田P「本当に殺っていないのなら、この裁判は必ず。私たちが…いえ、小林オペラさんが決着を着けて頂けます」

篠田「………ふふ」

真田P「………」

篠田「大丈夫だって!そんな事分かってますよ!プロデューサーさん!」パンッ

篠田「私の弁護士はあの!探偵小林オペラなんですよ!?絶対に私を無罪にしてくれる筈です!」

篠田「私の勝訴は!絶対です!最後まで!それを信じて頑張ります!」

小林「…………」




白い髪の少女≪それよりも、本当に彼女を弁護するの?≫

小林≪それは愚問だね。彼女を弁護しなければこの事件の真相には辿り着けないだろうし≫

白い髪の少女≪ふーん、そっか。それは間違って無いけど、多分後悔するんじゃない?≫




小林「………」

小林(いや、余計な事は考えるな。そもそもそんなの確信すら無いじゃないか!)ブンブン

篠田「この裁判でも!勝訴という名のどでかい華を咲かせてみせますよっ!」ブイッ


オー! パチパチパチパチパチ


藍川「やるねぇー!篠田っち!」

栗野原「ケケッ…まぁ、篠田が殺人犯なら、今頃私の呪いで…フヒヒ」

アーグニャ「Желаю удачи! 篠田さん!」

洲水「…まぁ、いつもながらそういうキャラだよねー篠田は」

鬼瓦割「………フンッ」

真田P「私も…応援しています」


篠田「えっへへー!ありがとうみんな!そしてプロデューサー!」

篠田「そして小林さん!」

小林「えっ?あっはい!」

篠田「今回はどうぞ!よろしくお願いいたします!」ペコリ

小林「えっ?あ…どうも」ペコリ

ネロ「…そのやりとり、二回目だよ」

小林(…………)

小林(…皆良い子だ。見た感じ、悪い人なんて一人も居なさそう…だけど)

小林(やっぱり…昨日からこの違和感は拭えないな…)

小林(………一体)

小林(この事件の裏には、何が隠されているっていうんだ!?)

小林(…それとも、僕の思い違いか?)

小林(…………………)



【横浜裁判所  第一法廷室】


ザワザワ…ザワ……

カッ!!


裁判長「これより!篠田久留美のサイコパス殺人を審議致します!」

裁判長「弁護側、検察側、準備はよろしいですかな?」

北芝「検察側、準備完了しているわ」

小林「弁護側。……………」

裁判長「……………」

北芝「……………」

小林「……………」

裁判長「……弁護側!何か言わないと分かりませんよっ?!」

小林「いっいやその…ずっと留置所に居たもので…」

北芝「…準備が、完了していないという事かしら?」

北芝「問題無いわ。こちらの準備は完了している」

北芝「神津くんと私が証拠品の提出をするから、それで賄いなさい」

小林「うぅ…………」

小林(検察側の証拠を、弁護士の僕が使うのか………)

小林(北芝検事のいつにましてのあの顔、…僕が不利になる物で間違い無さそうだ)

北芝「まったく、しょうがない探偵ね。子供を相手してるみたいだわ」

小林(割れ物注意の書かれたダンボールに乗っている検察側に言われたくないよ…というか、それ崩れたら今度こそ北芝検事死なないのか?)


カッ

裁判長「それでは北芝検事。事件の概要をお願いします」

北芝「了解したわ」

北芝「今回の事件の被害者は御子柴華子(15)職業はアイドルをしていたそうよ」

裁判長「アイドル…?」

北芝「正直くっだらないお遊びみたいな物よ。あんな歌って踊るだけで客から大金搾取するなんて、キャバクラと変わらないわ」

小林(…今、全てのアイドルファンを敵に回したぞこの人…)

北芝「そして被告人は篠田杏子(16)彼女も被害者と同じくアイドルをしているわ」

北芝「この事件は、被告人が被害者の頭を叩き潰し、後日部屋に戻り隠すように壺を乗せて自分で睡眠薬入りの飲み物を口に含んだ」

北芝「睡眠薬入りの飲み物を飲んだのは、自分も被害者に見せる為に敢えて飲んだのでしょうね」

小林「異議!!」

小林「その概要について、二つ異議を唱えさせて頂きます!」

北芝「………」

小林「まず!壺を載せる必要は何ですか!?壺が凶器じゃないのなら、どうして乗せる必要があったのですか!」

小林「そして、睡眠薬を飲んだ時の言い分!その理由が弱いです!実際、殺したのなら普通に逃げれば良かったんじゃないですか!?」

北芝「異議あり!!」

北芝「…早とちりは恥を生むわよ弁護人」

小林「…!」

北芝「それを今から証言するんでしょう?ねぇ?」ドヤァ…

ダンッ

北芝「裁判長、検察側は第一の証人の召喚を要求するわ!」

カッ

裁判長「……検察側の要求を許可します」

裁判長「係員、証人を連れてきてください」

北芝「………」

小林(…北芝検事………)

小林(前回の裁判で、何度も要求を断られたから出来て当然な事まで要求し始めたな…)


神津「……………」

北芝「証人、名前と職業を」

神津「…名は神津玲。職業は警視正をしている」

小林(……今思えば、警視正が証言台に立つって凄い光景だな)

北芝「ふふん、神津くん?この事件の概要も知らないノータリン君に親切に事件の事を教えてやりなさい?」

神津「………弁護人には、若干ながらもこの事件の容疑がかけられている」

神津「だから、特殊捜査権限も与える事も出来ないまま、我々が拘束した」

小林「………」

神津「……小林」

神津「本当に良いんだな?」

小林「……ああ、教えてくれ。この事件の概要を」

神津「……………」

神津「……分かった。後悔しても知らんぞ」

北芝「♪」

小林(今の僕には証拠品という証拠品がほとんどない。だからこの証言の矛盾を指摘してもほぼ無駄だろう)

小林(それに神津の事だ、神津の証言には矛盾がほとんど無いに違いない)

小林(だからこの証言では、なるべく揺さぶって情報を出来るだけ多く引き出すんだ!)




【証言開始】


①被害者と被告人は友人関係にあった。これは被告人も肯定している。


②死亡時刻は12月20日の深夜2時。頭部は重量車のタイヤのような物で轢き潰されている。


③それ以外の傷が無いのを見て、被害者はほとんど抵抗しなかったと解釈した。


④死体は部屋に移動されていた。だが、被告が潰れた頭部の近くで飲み物を飲むのは明らかに異常だ


⑤そして被告には被害者の死亡時刻時にアリバイが無い。


⑥以上の事を持って、我々は被告人篠田杏子を拘束した。





小林「異議っ!!!」

小林「なっ…何なんだ神津!?このっ………未知まみれの証言はっ!?」

神津「…お前が慌てるのも無理は無い。裁判が始まるまでお前は留置所に居たのだからな」

小林「いやっいやいや!現場はっ!?壺はっ?!あの部屋は事件現場じゃなかったのかっ!!?」

神津「……小林、昨日言ったハズだ」

神津「…”警察を舐めるな”とな」

小林「!!」

小林「しっしかし…だとしても、僕には準備が……」

ダンッ

北芝「……さっき…言ったでしょう」

北芝「”神津くんと私が証拠品の提出をするから、それで賄いなさい”って…警察側の証拠の共有を認めてるのよ!!」

北芝「お望みならどんな証拠でも…なんなら弁護側に有利な証拠だって出してあげるわ。まぁ…そんなもの存在すらしてないけどねっ!!」

北芝「あぁーっはっはっはっはっは!!!」

小林(……くそぅ…浦島太郎になった気分だ……)

小林(というより…殺害現場を調査もしないで弁護どころか尋問ができるのか…!?)

裁判長「…弁護人、理不尽だという気持ちは分かります」

裁判長「しかし、証拠の無い状況で挑んだ以上覚悟はしてもらいますぞ」

神津「覚悟は決めたのだろう?小林」

小林「うぅ……」

カッ

裁判長「それでは弁護人、尋問を始めてください」


【尋問開始】


①被害者と被告人は友人関係にあった。これは被告人も肯定している。


小林「待ってくれ!」

小林「その…友人が友人を殺したのですか?一体何の為に?」

神津「被告はサイコパス容疑がかけられている」

神津「サイコパス容疑が掛けられれば、難癖とつけられる動機の立証も難しくないだろう」

小林(つまり…動機なんてどのようにも取れるって事か…)

小林「いいのか…?そんな事で………」

神津「強いて言うなら。被害者が行動する際は、ほとんど被告人も同行だったそうだな」

神津「それほど長く一緒に居れば、すれ違いも多少は存在するだろう」

小林「ぐぅ………」

北芝「女同士の乳繰り合いは興味ないわ。気色悪い。証言に戻って頂戴。神津くん」

神津「了解した。して、被害者の……」



②死亡時刻は12月20日の深夜2時。頭部は重量車のタイヤのような物で轢き潰されている。


小林「待ってくれっ!!」

小林「どっ…どういう事なんだ!?部屋には血が部屋中に飛び散っていた!」

小林「それに…被害者は僕たちが事務所に居た時には死んでいたのかっ?!」

小林「そして…轢き潰されただって!?まさか!被害者の頭部にタイヤ痕が……」

神津「落ち着け」

神津「興奮するのも分かるが、今は俺が証言している最中だ」

小林「…うっ、………すまない」

神津「まず部屋にあった血だが、あれは被害者の物で間違い無い。」

神津「あの壺の中に被害者の血が溜まっていて、底に穴が開けられていた」


証拠ファイル③凶器?の壷を書き換えた。

【中に被害者の血が溜まっていて、底に小さな穴が開けられていた】




神津「そして、第一発見が真田氏とお前…昨日の午後3時45分」

神津「その時既に、死後13時間は経っていたのは間違いないだろう」


証拠ファイル⑦御子柴華子の解剖記録

【死亡推定時刻は12月20日午前2時前後。頭部を重量車のタイヤのような物で轢き潰されている以外に外傷は無い】



神津「そして凶器に使われた車。タイヤに血痕が付着しているトラックが」

神津「本物の事件現場に放置されていた」

小林「ほっ…本物の事件現場?」

神津「ああ、大胆にも事務所の隣の空き地にな」

神津「地主の通報から特定できたらしい。血液も被害者の物だった」

神津「…だが、奇妙な事に。そのトラックには指紋もエンジンが動いた跡も熱も全く無かった」




証拠ファイル⑧凶器のトラック

【事務所近くの空き地の上に放置されていた。血液は付着していたが、エンジンが動いた跡も指紋も無く、誰かが乗った痕跡が無い】



小林「ちょっと待ってください。事務所の近くの空き地ですか?」

小林「被害者が殺されたのなら悲鳴があったハズです。誰もその悲鳴は聴いていないのでしょうか?」

神津「……それも、奇妙な話ではあるがな」



③それ以外の傷が無いのを見て、被害者はほとんど抵抗しなかったと解釈した。


小林「待ってください!」

小林「ほっ…ほとんど抵抗しなかったのですか!?悲鳴も?!」

神津「…我々が想定する限り、この事件の犯人は」

神津「トイズで人を動けなくする事が出来る。そう解釈している」

小林「…それでは、被告人篠田杏子さんが金縛りのトイズを持っていると?」

神津「可能性はある」


ザワザワ…ザワ……

カッ


裁判長「…しかし」

裁判長「実際のところ、どうなのでしょうかな?」

神津「…本来トイズは一人で複数持つことは出来ません」

神津「しかし、本来の力の一部を隠して。自身の能力を偽る事は可能です」

神津「…まぁ、可能性は絞られますが」

裁判長「なるほど」

裁判長「では、被告人のトイズは一体?」

神津「…”スローモー”」

裁判長「…すっすろーもー?」

神津「被告は、トイズの力で自分の時間を早くし、視界に映った物の時間を遅く感じさせる事が出来るそうです」

小林「…………えっ」

小林(はっ…初耳だぞそんなの!)



証拠ファイル⑨篠田杏子のトイズ

【”スローモー”視界に映った物の動きを遅く感じさせるトイズ】



裁判長「…しかし、その能力と金縛りとはどのような関係が?」

神津「いえ、そもそも」

神津「本当にスローモーなのかは断定出来ていません。体内時間を操る能力だけだとすれば」

神津「そしてそれが、”自分以外”でも可能だとすれば。被害者の時間を遅くすることで回りを早くし轢き潰すのに逃げる隙どころか思考も許せぬ状況が作れます」

神津「後はトラックを動かせば悲鳴を上げさせる事なく殺す事が可能です」

裁判長「ふむ、確かに道理にはかなってますね」

小林「…うっうう………」

小林(思いもよらない証拠品が集まってくる………)




④死体は部屋に移動されていた。だが、被告が潰れた頭部の近くで飲み物を飲むのは明らかに異常だ


小林「待ってください!」

小林「そのっ異常と決めつけるのは…早計じゃないでしょうか!?」

神津「………小林」

神津「お前、それ本当に言ってるのか?」

北芝「一見するとバカでかい壺に頭を潰されて死んでるのが一目で分かるその状況でわざわざグラスにジュース注いで飲む奴が…」

ダンッ

北芝「そんな頭のおかしい行動する奴がサイコパス以外にどこに存在する!!」

小林「異議!!」

小林「だとすれば、ある疑問が現れます!」

神津「……疑問?」

小林「そうです。確かに死体の横でジュースを飲むなんて異常な行為ですが」

小林「ジュースには睡眠薬が盛られていたそうですね?」

北芝「……………」

小林「その睡眠薬を盛ったのは、一体誰なんですかっ!!」ダンッ

神津「……小林」

小林「?」

神津「被害者は、睡眠不足に悩まされ睡眠薬を常用していた」

神津「…あとはわかるか?」

小林「……………」

小林「…あっ!まさか……」

神津「被害者は寝る前に睡眠薬で溶かしたジュースを飲んでから寝るんだそうだ」

北芝「間抜けで頭のおかしい殺人犯は現場工作している時に喉が渇いて冷蔵庫からジュースを取り出し」

北芝「それを睡眠薬入りだと知らないで気を失った。こんなところかしら?」

小林「うっ」

神津「……被告人に知っているかどうかカマをかけてみた所」

神津「どうやら知らなかったらしく。更に飲んだ事を肯定している」

小林「…………」

神津「…そういう事だ。つまり」

神津「被告人は被害者の横でジュースを飲んだ事は事実。そして」

神津「そのジュースには、被告人が愛用していた睡眠薬が溶かされて混入していたのだ」

小林「………うっ」

小林「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」ガガァアアンッ




証拠ファイル⑩睡眠薬

【被害者が常用していた。ジュースに溶かして飲んでいる】




小林(うっ…くっくそぉ……揺さぶって情報を引き出せば引き出すほど)

小林(どんどん突破口が閉じられて追い詰められている気がする……)

神津「…更に我々は、もう一つ被告人を告訴した理由がある」



⑤そして被告には被害者の死亡時刻時にアリバイが無い。


小林「待ってください!」

小林「深夜二時ですよ?そんなもの……」

ダンッ

小林「アリバイが無いなんて当然の事じゃないか!!」

神津「そうだ。だからお前らには留置所に入って貰っている」

神津「一番容疑が強いのが被告人なだけで、お前も容疑者に含まれている事を忘れたか?」

小林「異議っ!」

小林「僕は昨日の深夜2時。その時間は本を読んでいたよ」

小林「事務所には姫百合君もコロン君も居たから。彼女たちが証人になるし、彼女たちのアリバイも立証される」

神津「………………」

北芝「ふん、証拠としては決定的じゃない上に弱いわ」

北芝「そんなものでアリバイが成立するなんて、思わない事ね!」ビシッ

小林「…………」




⑥以上の事を持って、我々は被告人篠田杏子を拘束した。


小林「待ってください!」

小林「…本当にそれだけの理由で篠田さんを告訴したんですか?」

北芝「何?証拠としては十分だと思うけど?」

小林「だとしても、何か足りませんか?」

神津「……何が足りない?」

小林「もし、本当に殺害現場が事務所近くの空き地なら」

小林「どうやって部屋まで運んだのですか?被害者の頭は潰れています」

小林「事務所まで運ぶ途中にそこらじゅう血まみれになると思うのですが」

北芝「…何かに入れて運んでいたたのよ」

小林「では、その何かは見つかってますか?」

神津「……当然だ」

小林「…だったら!」ダンッ

小林「その”何か”を!証拠品としてここに―ー」

北芝「異議あり!!」

北芝「…あなた、馬鹿なの?」

北芝「壺の中には、被害者の血が溜まってたのよ?」

小林「………………」

小林「あっ!!!!!」


神津「…我々警察は壺の中に被害者が居たという前提で途中操作を進めていた」

神津「お前なら察すると思っていたのだが」

小林「…うっ…ぐぐっ」

北芝「全く、よくもそんな知識で裁判に出ようと思ったわね」

ダンッ

北芝「私に二度も勝って調子に乗ってるみたいだけど……」

北芝「これなら容赦なく叩き潰せそうね!!この阿呆が!!」

小林「………………ぐ…ぐぉおおおおおおおお!!!」

小林(そもそも…僕を捜査させなかったのは君たちじゃないか……!)

神津「…もう反論は無いのか?」

神津「無ければ、ここで俺の証言は打ち止めだ」



神津「…以上が、我々警察側が決した事件の概要だ」

小林(…想像とは違っていたけど)

小林(やっぱり…いや、証拠の数もあるからか。この尋問で反論は出来ない!)

カッ

裁判長「なるほど。確かにその状況では被告人が一番怪しい」

裁判長「…しかし」

裁判長「事件が起こったのが昨日の深夜だとすれば、被告人が殺害したという決定的な証拠は無い訳ですか?」

神津「……ああ、確かに証拠は無い」

小林「!」

小林(証拠が無いのに…篠田さんを疑っているのか…!?)

神津「だが、証言はある」

小林「っ!」

ダンッ

北芝「検察側は事件当日、現場で被告人を目撃した証人を手配している!」

北芝「裁判長、証人の召喚を要求するわ」

裁判長「……分かりました。証人の召喚を認めます」

北芝「ククッ」ドヤッ

小林(北芝弁護士…要求が認められるのが嬉しいんだな…)

裁判長「それでは係官!証人をこちらに連れてきてください!」




???「……………」

小林「……………」

北芝「…証人。名前と職業を――」

小林「異議っ!」

小林「あっあのっこの人…あれですよね!?」

???「…………」

北芝「あれって、何言ってるのアンタ」

小林「いやいやいや!この人昨日事務所で見ましたよ!事務所に入っていた泥棒です!!」

裁判長「なっ」

裁判長「なんですってぇえええ!?証人!貴方は泥棒を働いていたのですか!?」

北芝「…………」

???「チィ!ばれたか!」

シュバッ   シュルシュルシュル

???「へへっでもここに用は無いのさ!アバヨ!」ガラララ

北芝「係員」パンパン

係員「はっ!」ガラガラガラガラガラ

バチバチバチバチゴゴゴゴゴゴグルグルグルグル

???「おおっとぉ!なんだその機械はぁ!そんなものでこの俺様、怪盗マリネ・ファン・ラバー様が…」

北芝「ってぇぇえええええ―――――!!!!」

                           |!        i| :
                            |!       i| i
                             |!         ∨|
                              |!            i!
 ┌─────┐                 i  |!           i|
 │          │                 i! |!         i|
 │          │                 |∨             i!
 │          │┌─| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   i|!            i|
 │          ││  |_____|   |!              i|
 │          │└────‐┘    |!              i|
 │          │               |!            i|
 │          └────┐      |!                i|
 │                    │       |!              i|       ┌──| ̄ ̄ ̄|┌───┐
 │                    │       |!             i|        │    |___|│      │
 │                    │    i! |!                i|         └──‐┘    │      │
 │                    │    |i |!              i| i                 |      │
 │          ┌────┘     i|∨             ∨|                  |       ,ノ
 │          │            |l                  l|                  |___/
 │          │             |l                l|  !
 │          │             |l                     l| i!
 │          │   、          |l                ∨|          /
 └─────┘    \         |l           :            l|
                         |l          i           l|     /
                  \ _ノ,'      _  |!         l|     /
.          く>         ヾ<       /Υ 〉 !|   _  |]    ー '´/
                        }l       〈_::」/  :!:i:  〈/    __   l {      /
.               \、    /,    __     .:|.:|: .     _ノ::::\\  、ヽ. __/
                   \ー '    「::::://    . :.:|:.:.v!: .    \::::://    ー   (       /
                    ) )     〈::::://   . . : ::!:.: .:|: : .      ̄      i      ー '/
.          \ 、    // l7    ̄  . : :|: :: :!: :. :|: : : . . .      l>   il     フ∠/
.           \ー '    i!       . . .: : :|!: : |..: . :l : く]: . i. .        !:l      //
               \\   il 、〈〉  i . . : <>!|: :,' .:: .: | : : !: : !:. . .    ノ::l    // l7
                 ):.:\ 八:.\_ 人 )、 : : ノ.:V.: : .::.: :!: :人 八,、 ノl / : ノ,、 /: (
.         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ファン「ぎゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」




裁判長「…………………」

小林「…………………」

北芝「…係員。黒焦げになってる証人を立たせなさい」

係員「はっ」バッ

北芝「息してるか確認しなさい」

係員「はっ!大丈夫であります!」

北芝「そう、なら起こしなさい」

係員「了解しました!おらぁっ!」ボゴォッ

ファン「ぐっふっ!!」ブホッ

小林(腹パンかよ…)

北芝「さて…次に逃げ出したら……」ガコンッ

≪レベルツーニヒキアゲラレマシタ≫バチバチバチバチゴゴゴゴゴゴグルグルグルグル

北芝「分かってるわよね?」

ファン「…………はい」

北芝「じゃぁ証言しなさい。貴方が昨日の深夜に見た物を」

ファン「……………はい」

小林(可哀想に、すっかり萎んじゃったな…彼)



【証言開始】


①あの時は茉莉音ちゃんのパン……事務所の近くを歩いていました。


②…ごめんなさい。怪盗の仕事の為に事務所を下見してました。


③事務所のロッカールームの場所は分かっていたので、あとはどう侵入するか考えてました。


④その時、パキパキという音が響いたのは覚えてます。でも、それが何の音かは分かりません…


⑤でも、篠田久留美ちゃんがニコニコしながら真っ暗な事務所の中で歌っていたのは覚えています…




北芝「被告人が事件当日、殺人の音があったその時に事務所の中に居た」

北芝「そして殺人の横で歌っていた…それは間違い無いわね」

ファン「はい…」

小林「異議!」

小林「彼が見たのは、事務所で歌の練習をする被告人の姿です!」

小林「それに、事務所近くが殺人現場だとして…殺人の最中、彼女は事務所の中に居た」

小林「この証言だと…被告人が殺人を犯したどころか、立派なアリバイがあるじゃないですか!」

北芝「異議あり!」

北芝「トラックには指紋もエンジンも動いた跡が無かった」

北芝「これが何を意味するか分かる?犯人は手に触れずともエンジンを動かさずともトラックを動かすことができたのよ!」

北芝「方法はどうあれ、犯人は動く必要が無かったと考えられるわ」

北芝「そして、篠田久留美のトイズはスローモー…このトイズを被害者に使えば」

北芝「その場から逃げるどころか、悲鳴なんて出す事も出来ないでしょうね」

小林「うぅっ……」

バンッ

北芝「この証言、尋問できるものならやってみなさい」

北芝「できるもんならねっ!」

小林(うっ…何か…何か無いのか…?)

小林(どんな些細な事でも良い…この証言に、矛盾が……)




【尋問開始】



①あの時は茉莉音ちゃんのパン……事務所の近くを歩いていました。

小林「待ってください!」

小林「証人、貴方…一体何を探していたんですか……」

ファン「悪いが、それは言えないな。なぜなら俺は証人である以前に怪盗なのだからなっ!」

ファン「さすがの俺も手の内は明かさないぜ!はぁーっはっはっはっは!」

北芝「……」ガコン

バチバチバチバチゴゴゴゴゴゴグルグルグルグル

ファン「茉莉音ちゃんの下着です!コンサートとかで履くのは見せパンと聞いてから!本物の下着が欲しいなって!」

ファン「だから俺は!その些細な疑問から怪盗になるって決めたんですよっ!!」

小林(……うわぁ)

北芝「汚らわしい……いっそ死ねば良いのよアンタなんて」ガコンッ

≪レベルスリーニヒキアゲラレマシタ≫バババババババババババ

ファン「待って!全部話す!全部話しますから許してぇ!!」

北芝「ふん、痛い目に会いたくなければ洗いざらい話しなさい!」

北芝「この裁判が終わったら、次はアンタが裁かれる番よ!」

小林(北芝検事…彼、検察側の証人なのにえらい敵意向けてるな…)




②…ごめんなさい。怪盗の仕事の為に事務所を下見してました。



小林「待ってください!」

小林「それじゃぁ昨日事務所で見た貴方は、やっぱり盗みを働いていたのですね?」

ファン「やっぱりって…俺を警察に突き出したのは貴方達じゃないですか?」

小林(……ああ、そういえばそうだったかな…)

小林「ちなみに、それは何時ごろでしたか?」

ファン「怪盗は常に時間を気にする。それは時間が盗みにとって重大な意味を表すからだ」

小林「分かりました。それで、何時だったんですか?」

ファン「……………2時くらい?」

小林「なんで疑問形なんですか!」

北芝「…どうやら証人のオツムは怪盗にしてはよろしく無いようね」

小林(うう…こんなの証言にならないよ……)




③事務所のロッカールームの場所は分かっていたので、あとはどう侵入するか考えてました。


小林「待ってください!」

小林「ロッカールームの場所…?それは、どこですか?」

北芝「…弁護人、何を聞いているの?」

小林「え?」

北芝「まさか…アンタも泥棒を…」

小林「するわけが無いでしょう!何考えてるんですか!」

ファン「はっはっは!よくぞ聞いてくれたぞ同士!」

小林「同士じゃありません!」ダンッ

ファン「あれは、隣の空き地と隣接している面でな、空き地からも木が邪魔して俺の姿は見えない」

ファン「そうつまり!姿を隠して脱出するには格好な場所なのだよっ!!」

小林(嬉々と犯行の事を喋り始めたぞこの人……)



証拠ファイル⑪空き地と事務所の間の木

【空き地からも事務所からも、この木が邪魔して見る事が出来ない】



北芝「そんな情報は、次の裁判で引き出しなさい!」

北芝「こいつの犯行なんて、この裁判では何の意味も持たないわ!」ダンッ

小林「………………」

小林(果たして、そうだろうか?)

カンッ

裁判長「なるほど、空き地に…ねぇ」

小林「…その空き地の近くで、何か物音はしませんでしたか?」



④その時、パキパキという音が響いたのは覚えてます。でも、それが何の音かは分かりません…




小林「待ってください!」

小林「………その、パキパキ…という…音は……」

ファン「――んんー…強いて言うなら……ゴミをつぶしていたのかな?」

ファン「堅いけど軽い物を潰してる音だから、大した物じゃないだろうし、DQNかもしれないし怖いから直接は見てないけど」

小林「…………」

北芝「…どうやら、殺害現場が事務所の隣の空き地であった事は間違いないようね」

ファン「え?殺害?何が?」

北芝「そして、犯行が可能だったのはその場に居た人物…もしくは、事務所に居た人物」

北芝「そういう事に、ならない?」

小林「ぐっ…!」

北芝「証人、貴方事務所の中に誰か居なかったかしら?」

ファン「事務所の中?…マリネちゃんは居なかったかな」



⑤でも、篠田久留美ちゃんがニコニコしながら真っ暗な事務所の中で歌っていたのは覚えています…


小林「待ってください!」

小林「本当に篠田さんが事務所の中に居たのですかっ!?」ダンッ

ファン「本当だっ!俺がアイドルの顔を間違える訳が無かろう!」

ファン「クリスマスライブに上がるアイドルの全員のスリーサイズだって言えるぞ!まず鬼瓦割ちゃんが一番おっぱい大きくて上から93……」


ガッシャァァァン……


ファン「ひぃぃっ!」ビクゥッ

小林「なっ…何の音だ?」

コラ!オヨナシクナサイ!

ウルセー!ナンダカムシズガハシッタンダヨクソヤロォオ!

北芝「………」

小林「………」

裁判長「…どうやら、少しデリカシーの無い質問だったようですね」

北芝「…とにかく」

北芝「被告人は事件当日事務所の中に居た。そして証人は事務所と事件現場の間に居た」

北芝「証人は事件現場を見ていた被告人を見たという事になるのよ!」ダンッ

小林「うっ……!」

北芝「それに、事件現場を目撃したのなら。どうして警察に通報しなかったのか」

北芝「そんな矛盾が生まれるのだけど、…大丈夫かしら?」ニヤッ

小林「………」

小林(本当に、そうなのか?この証言、矛盾が生まれているのか?)

小林(どうする?このままゆさぶるか?)


→もっとゆさぶる

 やめておく


小林「…証人、本当に被告人は空き地を見ていたのですか?」

ファン「ああ、窓の前をじっと見ているから。俺も見つかるかと思ってヒヤヒヤしたよ」

小林「…分かりました。ではそれを証言に加えてください」

北芝「あらぁ?本当に良いの?貴方にとっては非常に都合の悪い証言じゃなくて?」

小林「……(僕の推測が正しければ、この証言は矛盾が無い。でも)」

小林(ある証拠品と合わせれば、この証言で篠田さんの無実を証明する手がかりになるかもしれない)

小林「はい、是非お願いします」

北芝「………」



⑤でも、篠田久留美ちゃんがニコニコしながら真っ暗な事務所の中で歌っていたのは覚えています…

⑤でも、篠田久留美ちゃんが窓から外を見ながら歌っていたのは覚えています…


⑤でも、篠田久留美ちゃんが窓から外を見ながら歌っていたのは覚えています…


小林「待ってください!」

小林「それは…間違い無いんですね?」

ファン「勿論。間違えようが無いさ!」

ファン「あの笑顔は!いつも通りの篠田久留美ちゃんだった!ステージの上の天使のままだったんだから!」

小林「……分かりました」

北芝「ふん、この証言を崩そうと頑張ってるみたいだけど」

北芝「無駄な足掻きであることを自覚しなさい。どこにも矛盾なんてありゃしないわ」

小林(そう…この証言にはどこにも矛盾は無い)

小林(だから、この証拠品を突きつけて、この証言の矛盾を更に無くすんだ!)




小林(この証言には矛盾が無い)

小林(でも、突っ込みどころが無い訳では無い)

小林(この証言で求める事は、篠田さんの潔白)

小林(だったら、矛盾を見つけるんじゃなくて。少し見方を変えて矛盾を無くす事を考えれば良い)

小林(逆に利用すれば…!)


次は23時10分からです。



→⑤に証拠ファイル⑪空き地と事務所の間の木を突きつける!

小林「異議あり!」

小林「……怪盗ファンさん。貴方の証言には矛盾がありませんね」

ファン「ふっ怪盗とは欺くことが目的ではあるが、嘘をつくのはただの泥棒…」

北芝「矛盾が無いからなんなのよ?だったら検察側の立証が正しかったってことに」

小林「いえ、そうじゃありません」

小林「この証人の証言で一つ、明らかになっています」

裁判長「明らかに?」

小林「はい。この証拠品を見てください」

北芝「? 何よこれただの木じゃないのよ」

裁判長「はい。事務所と空き地の間にある。なかなか大きな木ですな」

北芝「…………」

北芝「っっ!!」

小林「…どうやら、検察側は分かったみたいですね」

ダンッ

小林「そうです。仮に被告人が事務所の空き地側の窓の前に立っていたって……」

小林「事件現場が見えていた訳が無いんです!!何故なら」

小林「この木が邪魔して、空き地なんて見えなかった筈ですからねっ!」

北芝「ぐぅぅうっ!!」グサグサッ

ファン「……あっ!確かに!」

ファン「あの木、ワサワサが大きいから下に居た俺でも空き地が見えなかったっ!」

ダンッ


北芝「だっだとしても関係無いわ!現に犯人はそこに居なくとも凶器である車を動かせた!」

北芝「現場が見えなかった事に関しては、大して問題じゃない!」

小林「異議!」

小林「凶器の問題が解決しても、トイズの問題が解決しない!」

小林「被告人は視界に映った物なら全ての時間を止める事が出来るとある!しかし!」

小林「この木がある以上、被害者の動きを遅くさせる事は不可能です!!」

北芝「うっ…」

北芝「ぎゃぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!」ガガーン

小林(よっよしっ!北芝検事が予想以上に驚いている!)

小林(どうやら、視界が木で遮られていたのは予想外だったようだ)





カンッ


裁判長「……なるほど。確かにあの木があると被害者の姿が視界にで映らないでしょうね」

裁判長「北芝検事。何か反論は?」

北芝「…………」

北芝「こうは考えられないかしら?」

小林「?」

北芝「事件現場、その当日その場には……」

北芝「共犯者が居た……と」

小林「……なっなんですって?」

北芝「そう考えれば、この問題は全面解決するわ」

小林「異議!」

小林「その、共犯者が居たという証拠は何ですか!?」

北芝「……仮にあの壺を事件現場から動かしたとして。一人で可能かしら?」

小林「そっそれは…」

北芝「まぁ、それは良いのだけど…方法が一つだけあるわね」

北芝「今回の事件、容疑者は被告人だけじゃないのよ。まだ結構な人が要るわ」

小林「………」

小林「……えっまっまさか……」

北芝「ええ、証言台に容疑者を全員立たせて」

北芝「一人ひとり昨日の午前2時のアリバイを証言として提出する!!」

小林「…なっ」

小林「なんだってぇぇぇええええええ!!!?」


カンッ

裁判長「………これは」

裁判長「想像もしなかった事態になりましたね。証言台に、容疑者全て立たせる……」

裁判長「…………」

裁判長「…それで、共犯者の可能性を立証できるのですか?」

北芝「ええ。約束するわ」

裁判長「分かりました」

裁判長「係官!証人を全員証言台に連れてきてください!」

係官「ええっ!?」

係員「…わっ分かりましたぁ!!」ダダダダダダ

小林(…なっ…何て……アグレッシブな裁判なんだ………)



14人「…………………」

裁判長「……………」

北芝「…………」

小林「………………」

シャーロック「…あっ!先生ぇー!」フリフリ

ネロ「ねぇ小林、これどういう状況?何で僕たちが全員証言台の上に居なきゃ駄目なの?」

小林「……ごめん。それは僕もちょっと分からないな」

コーデリア「うう…ちょっと窮屈ですわ」

洲水「…プロデューサー。悪いんだけど。真ん中に立たれたら邪魔だよ。ただでさえ図体でかいんだから」

真田P「あっ…すっすみません」ササッ

藍川「まーまー!スミスっちもカリカリしないでぇー」

鬼瓦割「おい、これ横一列に立たなきゃいけねぇのか?何なんだこれ」

栗野原「…ケケッ。まるでオーディションみたいだねぇ…」

アーグニャ「Извините, пожалуйста...どうして私たちミンナ、コンナトコロに?」

裁判長「……いやはや。今まで長い期間裁判席に居ますが」

裁判長「証言台がここまで賑やかになったのは、今日が初めてです」

小林(…今後も無ければ良いけど)


北芝「貴方達は全員、この事件の容疑者に選ばれてる事は分かってるわよね?」

藍川「あっー!そうだ!そうだよ!アンタ達警察はひどいよ!話も聞かずにあんな狭い部屋に閉じ込めてさぁ!」

鬼瓦割「はぁー、警察ってのはいつもこうだ。私たちの言い分を聞かずに怪しい奴をホイホイ捕まえやがる」

真田P「…………」

コーデリア「いっいくらなんでも今回の捜査は…横暴すぎやしませんかっ!?」

姫百合「そうですよ。小林さんだって、今回の裁判での準備がそろわなかったんですから…」

先生「あっあらやだ!私も疑われてるのぉ!?御子柴ちゃん殺しの犯人に!」

茉莉音「………………」

美樹「本当ひどいなぁー。私たちは少なくともアリバイはあるってのにー」

北芝「そう、アリバイがあるなら良かったわね」

北芝「今から、貴方達のアリバイを証言として提出して貰おうと思っているの」

シャーロック「証?」

エルキュール「言…?」

北芝「そうよ。さすがに今回の事件は容疑者が多すぎてこっちも面倒だから」

北芝「自らの潔白を示すためにも、アリバイを証言してちょうだい」

小林(ほっ…本当にやるのか………)


鬼瓦割「アリバイ?んな事、昨日アンタ達に言ったじゃねぇか」

北芝「いえ、この尋問では違う時間帯のアリバイを証言してもらうわ」

北芝「”昨日の深夜二時”に何をしていたか。そして、それを誰が証明できるか。それらを答えて頂戴」

真田P「…………」

美樹「ええ?深夜…二時?」

藍川「そんなの、草木も眠る時間じゃないのさ」

カッ

裁判長「申し訳ございませんが、私語の時間がございません。さすがにこんなに居ると時間が掛かってしまいますからね」

裁判長「証人達は検察側の言う事を聞いて、”昨日の深夜二時”のアリバイを証言してください」

14人「…………………」

小林(……うう…いっ嫌な予感が……)



【証言開始】


【藍川】深夜なんて時間、勿論グースカ寝てました!証人は両親です!


【洲水】…藍川と同じ。父さんが証明してくれるよ。そもそも今時のアイドルで更に高校生がそんな時間まで起きてるわけないよ


【栗野原】一人暮らしだから部屋で一人カナと遊んでたよぉ~あっ、カナってこの手作り藁人形だよぉ~可愛い可愛い。……証人はマンションの監視カメラだよ


【鬼瓦割】寝てたに決まってんだろ。親父とお袋が証明してやんよ。チッ


【アーグニャ】Вы, наверное шутите? パピーとマミーに夜更かしは禁止されてマスヨ


【真田P】…事務所に残って仕事をしていました。クリスマスライブの時期が近いので調整を…篠田さんと先生、あと先輩が証人です。


【先生】茉莉音ちゃんと美樹ちゃんとお泊りでライブの練習していたわぁ。証人は茉莉音ちゃんと美樹ちゃんと川澄Pと真田くんねぇ♪


【茉莉音】先生とお泊りでレッスンしていました。確かその時、夜食で焼肉を食べていたと思います。証人は先生と美樹ちゃんとプロデューサーです


【美樹】先生と茉莉音ちゃんと三人で夜通しレッスンしてましたー!証人は先生と茉莉音ちゃんとプロデューサー!…深夜の焼肉は気分悪くなったわぁー…


【シャーロック】深夜二時…深夜二時……あっ!確か茉莉音ちゃんの事務所の隣の空き地に居ました!でも私一人でした!


【ネロ】僕は部屋でネットしてたよ。トイズ使えば結構深い所にも行けるし。会長が証人だよ


【コーデリア】その……一人で……お食事に行ってました……お店のレシートなら…あります…けど……… ダラダラ


【エルキュール】寝て…ました………。その……会長が……証人……です……


【姫百合】部屋で本を読んでいました。小林さんが証人です



小林「………………」

北芝「………………」

裁判長「……………ふむ」

裁判長「やはり、ほとんどの方が寝ていたようですな」

小林「………そっその、シャーロック…シャーロック?」

シャロ「?」

小林「きっ君……本当に事務所の隣の空き地に…」


カンッ

裁判長「それでは弁護人、この証言に尋問をお願いします」

裁判長「…と、言いたいところですが。これだけの人数全員を尋問していけば日が暮れてしまいます」

北芝「ええ。現に私はこの証言で大体共犯者の目星はついたのだけど」

小林「…っ!」

裁判長「…そういう訳で。本件に関係の無い事を無駄に揺さぶりを入れたら、プライパシーの侵害も含めて」

裁判長「それなりのペナルティがありますので、覚悟してください?」

小林「…………え?」

カンッ

裁判長「時間の短縮の為、ご協力できますね?」

小林「……………」

小林(無駄な揺さぶり…見るからに本件とは関係ないアリバイには突っ込むなという事か…)

小林(そしてこの証言、証拠との食い違いというよりは…)

小林(証言と証言の矛盾を指摘するような…そんな感じの尋問だな…)

小林(……だけど、この証言…アリバイ……おかしな箇所が所々有る……)

小林(それに…見るからにおかしい箇所も…!)

小林「……分かりました。尋問をさせてください」

裁判長「よろしい」

裁判長「それでは弁護人、尋問をお願いします」




【尋問開始】


【シャーロック】深夜二時…深夜二時……あっ!確か茉莉音ちゃんの事務所の隣の空き地に居ました!でも私一人でした!


小林「待ってくれ!」

小林「シャーロック!じっ事務所の…隣の空き地に居たのかっ!?」

シャロ「え?あっはい。あそこの公園に、隠れ農園を作ってたんですよ私!」

シャロ「土にも栄養がありましたし、トマトやきゅうりやナスビも…コツコツと大事に育ててました!」

北芝「……」

小林「…何か、音が聞こえなかったかい?」

シャロ「はい、音ですか?」

小林「ああ、何かを潰す音とか。あと、事務所に誰か居た…とか」

シャロ「事務所?うーん…空き地からだと木が邪魔で事務所の窓とか隠れちゃうんですよ」

シャロ「音は……ああ、何かを潰す音というか、パキパキっていうか…」

小林「……それは、本当に深夜二時の事かい?」

シャロ「……はい!それは間違いありません!いつもそんな時間に野菜ちゃんを育てているんです!」

小林「……………」

北芝「……つまり」

北芝「彼女にはアリバイが無い。そういう事になるわけね」

小林「!」

小林「シャーロック!」バンッ

シャロ「ええっ!?あっ…はい?」ビクッ

小林「何か…公園で何か見なかったか!?大きな車や倒れてる人間や!」

シャロ「ええ?やっやだなぁ~先生。そんなもの見えたら、さすがの私だって救急車くらい呼びますよぉ」

小林「………………」

北芝「…確かに、事件現場には誰の物か分からないけど、花壇の陰に野菜が植えられていたわ」

北芝「一体それが誰の物なのか。何の意味があったのか分かっていなかったけど」

小林「………監視カメラ」

北芝「!」


小林「空き地の様子を映した監視カメラは…どこかに無かったのか?」

北芝「……そんなものあったら」

北芝「真っ先にこの法廷の証拠品として提出している!」ダンッ

小林「ぐぐっ……!」

シャロ「…あっあの、一体どうしたんですか…?」

シャロ「私が…お野菜を見に行って…何か不都合な事があったんですか?」

ダンッ

北芝「それは、今答える必要無い」

北芝「さぁ弁護人、尋問を続けなさい」

小林「………くっ!」

小林(このままでは……シャーロックが事件の容疑者になってしまう…)

小林(北芝検事のあの様子だと…間違いなくそう見てる”顔”だ)

小林(ここは、他の人のアリバイも掘り下げてみるか…)




【真田P】…事務所に残って仕事をしていました。クリスマスライブの時期が近いので調整を…篠田さんと先生、あと先輩が証人です。


小林「待ってください!」

小林「…篠田さんは、確かに深夜二時まで事務所に居たのですか?」

真田P「はい。天城茉莉音さんに負けないくらいに練習をしたいと、音響室を使う許可を得て使わせました」

小林「その、恩教室とはどこら辺にあるのでしょうか?」

真田P「………確か、あの部屋は窓一つ無い防音室となっていた筈ですから……」

真田P「一階の西、練習煉の中にあったと思います」

小林「………(あれ?)」

小林(何かこの証言…おかしくないか?)


→もっとゆさぶる

 やめておく


小林「…本当に、恩教室は窓一つありませんでしたか?」

真田P「はい。窓があれば外に響いてしまいますからね。防音の意味が無くなってしまいます」

小林「………あの、真田さん」

小林「貴方達の前の証人が、篠田さんを真っ暗な事務所の中から見たと言っています」

小林「これについて、どう思われますか?」

真田P「…………」

藍川「ちょっええ!?真っ暗な部屋の中で歌ってる篠田っちっ!?」

洲水「何それ………怖っ」ブルッ

栗野原「………クケケ…怨霊………お化け……怖くないさ…」ブルブル

真田P「……ちなみに、それはどこから見たとおっしゃってましたか?」

小林「え?ええと……確か、隣の空き地と接する面だったと聞きます」

真田P「……なるほど」

真田P「小林さん。おそらくそれは篠田さんではありません」

小林「えっ?」

真田P「これをご覧ください」スッ

小林「はぁ…ええと、何ですか?このポスター、被告人が大きく映ってますが…」

真田P「今回のクリスマスライブ。目玉は天城茉莉音さんですが、私の要望により一人ひとりのアイドルがセンターのポスターを発注しております」

真田P「クリスマスライブの物販の時に販売する予定の物でした」

北芝「……全員、歌ってるポーズね」

真田P「はい。アイドルですので、歌う姿を切り取った等身大のポスターを千円で販売する予定でありました」

小林「……その、つまり……」

小林「犯人が見たのは……被告人本人ではなく、そのポスターだったと……」

真田P「おそらく、そうだと思われます」

小林「……………(何て、大げさな人だったんだ……)」



証拠ファイル⑫等身大アイドルポスター

【クリスマスライブに出演するアイドル全員分の等身大ポスター。物販で販売する予定だった】





小林(…ん?待てよ?という事は……)

小林「…この証言が本当なら、被告人は犯行が不可能だった。そういう事になりませんか?」

北芝「…………」

北芝「まぁ、そうなるでしょうね」

小林「!」


ダンッ

北芝「しかし、これはあくまで口だけの証言よ!」

北芝「確証を得たいのなら、それなりの”証拠”を提出しなければならないわ」

北芝「もし、目の前のこいつが被告人とグルだったとしたら…この証言、何の価値も無いんだからね」

藍川「おいおーい!ちょっと待ちんさい!」

洲水「勝手にウチのプロデューサーを犯人扱いしないでくれる?」ギロッ

鬼瓦割「……覚悟、出来てんだろうなぁ?」バシーンバシーン

栗野原「ケケケ……北芝愛……か。クケケェーッ!」グサッグサッグサッ

北芝「…ウッ!」グサッグサッグサッ

北芝「なっ…何?今のは…?イキナリ胸に激しい痛みが三回も…!!」

小林(栗野原さんの藁人形のカナちゃん…効力すごいな…)

小林(…しかし、ここに居る皆が容疑者である以上、証言の力が弱いのも確かだ)

小林(もう少し、他の人のアリバイを掘り下げてみようかな)




【コーデリア】その……一人で……お食事に行ってました……お店のレシートなら…あります…けど……… ダラダラ


小林「待った!」

小林「それじゃぁコーデリア、そのレシートを提出してくれないか?」

コーデリア「ええっ!?」ビクッ

コーデリア「でっでも教官…そっそれは…」

小林「?何も隠すことは無いと思うんだけど…アリバイの立証のためにも、頼むよ」

コーデリア「ああっええと……そそそそうだ!そうだわ!家に!家に忘れてきた~のよぉ~♪」ラララ

ダンッ

北芝「歌ってごまかせると思いかしら?それとも…そんな事実、本当は無いんじゃいの?」

コーデリア「なっ!ちゃっちゃんとあります!だってレシートは大体サイフの中に……あっ!」

北芝「それじゃぁ提出出来るはずよね。とっとと提出しなさい。時間の無駄よ」

コーデリア「いっいや…でも…でも…教官の居る前で……」フルフル

小林「?…コーデリア、一体どうしたんだ?」

コーデリア「そっそうだわ!黙秘権!黙秘権を行使させていt」

北芝「係官!証人のサイフからレシートを奪い取りなさい!」

係官「了解です!」

コーデリア「いやぁ!いやぁああ!やめっやめてぇええええええ!!」ジタバタ

ピラッ

北芝「ご苦労だったわ。昨日の深夜二時…これね」

北芝「…”餃子の帝王”……”スペシャルニンニク餃子5人前”…”餃子のステーキ1キロ”……”20分以内に食べたらお会計が全部タダ!10キロの巨大餃子チャレンジ!”」

北芝「お会計総額……”0円”」

裁判長「……………」

傍聴席「……………」

小林「…たっ…食べきれたのか………凄いね…コーデリア…」

コーデリア「うっうわぁあん!うわぁああん!もうお嫁にいけませんわぁああ!!」ビエエエエエ

北芝「……”餃子の帝王ホームズ探偵学院近く”…事件現場とは関係の無い場所ね」

小林「その店の住所だけ読み上げれば良かったんじゃないのか…?」

北芝「内容は強烈だけど、この裁判においては何の価値も無いわね」クシャクシャ  ポイ

コーデリア「ああ!チェレンジ成功レシート券が!次回から千円のタダ券がぁ!!」

小林(さすがにこれは酷すぎないか…)

北芝「弁護人、次は無いわよ。こんな無駄なゆさぶりするならね」

コーデリア「酷い!無駄なんて!私…一生懸命頑張ったのよ!それなのにぃいい!」グスッグスッ

ネロ「なんだよー!コーデリアなんて一人だけでお腹一杯食べてたんじゃん!」

シャロ「私も餃子食べたかったです!」

エルキュール「よっ…夜中に…そんなに食べるのは…どうかと………」

姫百合「…つか何してるんですかアンタ達…」

小林「……今度僕が奢ってあげるから、大人しくするんだ君たち」

ミルキィホームズ「「「「!」」」」

小林(うわぁ、みんな目をギラつかせてこっち見始めたぞ…)



【先生】茉莉音ちゃんと美樹ちゃんとお泊りでライブの練習していたわぁ。証人は茉莉音ちゃんと美樹ちゃんと川澄Pと真田くんねぇ♪


小林「待ってください!」

小林「ライブの練習は…練習場ですよね?事務所のすぐ後ろにある」

先生「そうよぉ☆コ・バ・ヤ・シ・クンも一緒に来てたじゃなぁい♪」パチン

小林「いえそうなのですが…深夜のその時に何か音が聞こえませんでしたか?」

先生「あらぁ?音かしらん?」

茉莉音「…と言っても、私たちの練習場も防音が施されてるし……」

美樹「聞こえてたとしても、気にしないよねぇ」

小林「……………」

美樹「あっ!でも深夜二時って言ったら、私たちが焼肉食べてた時じゃない?」

茉莉音「ああ、あの後すぐ動くって言われたから…思わず吐きそうになったんだよね」

美樹「そーそー。食道炎になるかと思ったよ先生ぇー」

先生「んもう、ちゃんと謝ったじゃなぁい。でぇも、センターとしての動きはまだまだだったんだからっ!」

小林「……………」

小林「真田さんが、この時どのような仕事をしていたかご存知ありませんか?」

美樹「うーん?」

茉莉音「……真田さんが、事務所に居たんですか?」

先生「あら!そうそう、真田くんたら大真面目に担当のアイドルの為に深夜まで調整を施して…んもう涙ぐましいったら!」

先生「そのまっすぐな姿勢…思わず食べてしまいたいくらいだわぁ!おっほほほほほほほ!!」

洲水「……………」ギロッ

栗野原「…………」ブスッブスッ

先生「あっあらやだ冗談よ冗談~、冗談だから栗野原ちゃんは人形に釘さすの止めて?何だか先生、お胸が痛くなってきたからぁ」

小林(なんだかあの空間…怖いな…)

小林(…どうしよう、他に何を聞こうか?)


→真田Pはどこで仕事をしていたのか

 クリスマスライブはどのような曲で踊るのか



小林「……ちなみに」

小林「真田さんは、どこで仕事をしていたのですか?」

先生「あらぁ?そんなの決まってるじゃなぁい。プロデューサー専用の部屋で自分用の机よぉ」

先生「確かぁ、窓際に近い席だったと思うわぁ」

小林(窓際に近い席………)

小林「……………分かりました。ありがとうございます」

先生「いえいえぇん♪良かったら、ウチのレッスン室もちょくちょく見にきてねぇん♪」

茉莉音「あっ…小林さんなら歓迎します!待ってますから!」//////

美樹「んー…ちょっちこじれそうだからお控えなすった方がいいかもしれないねぇ」

小林「……ははは」







小林(皆の証言を聞く限り、被害者の悲鳴が聞こえなかったのは間違いないみたいだな)

小林(この尋問で、できるだけ情報を引き出して…違和感を感じたら証言を突きつけよう)





次は23時30分からです。しばらくお待ちください


→【真田P】…事務所に残って仕事をしていました。クリスマスライブの時期が近いので調整を…篠田さんと先生、あと先輩が証人です。
を突きつける




小林「異議!」

小林「……真田さん。貴方が仕事していた部屋は、どこですか?」

真田P「仕事場ですね。専用の部屋がありますので」

小林「レッスンの先生が言っていました。真田さんは窓際の席だったと」

真田P「……確かに、窓に近い席ではありましたね」

小林「……真田さん」

小林「窓の外からでは、何が見えてましたか?」

真田P「今は空き地となっている場所です。最近、木が茂っていて見難くなってはきましたが」

小林「……窓は、あったんですね?」

真田P「?ええ……」

小林「…ならば」

小林「空き地から勿論、何か音が聞こえてた。そうですね?」

真田P「……………」

真田P「…いえ…すみません。仕事に集中していたもので」

ダンッ

小林「しかし、それではおかしいんですよ」

小林「二人の証人が、空き地で何かを潰す音が聞こえたと証言しています。」

小林「しかし貴方も同じ現場に居たにも関わらず、その音に気づいていない」

小林「防音でも無い部屋で、それはおかしいとは思いませんか?」

洲水「……何が言いたいのさ」

小林「…今のところは、疑問点を言っているだけです」

ダンッ

北芝「うざったいわね…回りくどい事言わずにとっとと言っちゃいなさいよ」

北芝「アンタが犯人の共犯してんじゃないのかって!」

洲水「!」

藍川「!」

真田P「!」

小林「異議!」

小林「まだそうと決まったわけでもありません!それに、被告人の犯行も今のところはハッキリとしていないじゃありませんか!」

北芝「異議あり!」

北芝「そもそも、被告人が有利になる証言をしたのはこいつよ。だったらまず」

北芝「こいつの信憑性を証明してみせなさいよ!」ダンッ

小林「……………」


裁判長「…このままでは、埒があきそうにありません」

小林「……はい、そうですね」

小林「弁護側は、新しい証言を要求します」

北芝「……………ふん」

裁判長「私は、弁護側の要求を認めます。検察側は?」

北芝「別に、止める理由なんて無いわよ」

裁判長「分かりました」

裁判長「それでは、弁護側は、証人達にどのような証言を求めますか?」

小林「………そうですね、では」

小林「証人達はどのような”トイズ”を持っているのか。それを証言して貰います」

コーデリア「!」

洲水「……トイズ?」

栗野原「……ケケッ」

裁判長「……よろしいですかな?証人……達」

真田P「はい。私は特に問題を感じません」

真田P「そもそも、BRはトイズの持ったアイドルをコンセプトにしたグループです。ネット上でも公開されています」

真田P「ここで証言しても、事務所が不利になる事は特にございません」

藍川「…まぁー、なら別にいいかぁ」

洲水「うん、特になんて事ないし」

鬼瓦割「……チッ」

裁判長「……分かりました」

小林「それではみなさん、話してください」

小林「皆さんはそれぞれ、どのようなトイズを持っているのかを」




【証言開始】



【藍川】ずばり!私のトイズは”エフェクト”!手から魔法のようにキラキラしたものやモヤモヤしたものまで出せるよ!実態の無い映像のようなものだけどね!


【栗野原】クケケッ私は指先を光らせる事ができるねぇ…まぁ、たったそれだけだけど。ETみたいに傷とかも治らないし…


【洲水】私はトイズで落ち着いたり自分だけだけど身体医療や精神医療に使えるよ。……名前は”マリファナ”だけどね。効果も同じみたい…


【鬼瓦割】……手に持った物で強度関係無く殴れば、誰だろうが意識を失わせる事が出来るぜ


【アーグニャ】Да.ワタシのトイズは”トランスレーション”どの国の言葉も私の分かル言語で聞き取れます。……日本語とロシア語以外ハ喋れませんガ


【真田P】そうですね……物を少し動かしやすくするくらいですか


【先生】私は何も持ってないわねぇ


【茉莉音】私は…能力を”エレメント”として具現化する事のできるトイズを持っています


【美樹】繋がった物を切り離す”セパレーション”って能力持ってるよ。……それで茉莉音に酷い事したっけ


【シャーロック】私のトイズは”念動力”です!最近力も強くなってきたんですよ


【コーデリア】私のトイズは”ハイパーセンシティブ”些細な光も小さな音も見えない場所の状況の把握もできるわ


【ネロ】僕のトイズは”ダイレクトハック”。電子機器になら何にでも思いのままさ


【エルキュール】わ…私のトイズは……ト……”トライアセンド”………//////


【姫百合】私のトイズは”インダクション”です。強制的にトイズを発動させたり止めたりできます。



小林「……なるほど」

小林(やっぱり、皆のトイズもそれぞれ個性的だな)

北芝「さて、トイズの事について証言させたという事は」

北芝「何か分かっているのよね?」

裁判長「分かってますか?弁護人、先ほどのアリバイと重ねて考えてください」

裁判長「そして、意味のない揺さぶりは…」

小林「はい。分かっています」

小林(ミルキィホームズの皆の揺さぶりは一応必要無い…のかな?)

カンッ

裁判長「それでは弁護人、尋問を始めてください」



【尋問開始】



【藍川】ずばり!私のトイズは”エフェクト”!手から魔法のようにキラキラしたものやモヤモヤしたものまで出せるよ!実態の無い映像のようなものだけどね!

小林「待ってください!」

小林「そのエフェクトは、主にどのような物でしょうか?」

藍川「おお!よくぞ聞いてくれました!こうやって手を振ると~」キラキラキラキラ

傍聴席「おお~~!!」

藍川「さらにこうやって手を大きく広げて~」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ザワザワ……ガヤガヤ……

藍川「最後にフィナーレ!」バチバチバチバチバチ ドッカァァアアアン


ワァァァアアアアア!  パチパチパチパチパチ


シャロ「凄い!凄いです藍川さん!」

エルキュール「凄く…綺麗………でした……」

コーデリア「少し羨ましいわね…」

藍川「いやいやぁ~ありがとうございますお客様ぁ~!そしてホイッ!」ボンッ

小林「うっうわっ!?爆発!?」ビクッ

藍川「ニャハハハハ!大丈夫大丈夫!エフェクトだから受けても全然実感すらないよ!」

藍川「視覚と聴覚にだけ存在する映像みたいなものだから、ステージの上でも結構重宝するんだなぁ~これが」

美樹「いやぁ~本当にアイドルならではのトイズだよね藍川さん。正直交換してほしいくらいだよ」

藍川「ははは!絶対に嫌だからね!トイズ使わないでね!」

小林「……ちなみに」

小林「そのトイズを使って、人間を騙して使う事も可能ですか?」

藍川「ん?どゆこと?」

小林「例えば……実体の無い人間を作り出すとかは」

藍川「あっはははー!無理無理!一度やってみたけどめんどくさいったりゃありゃしない!」

藍川「顔も崩れるし、ほとんど化物みたいになるから実体が無くても人間どころか犬や猫も無理かもねー」

小林「……そうですか」

小林(…まてよ?視覚と……”聴覚”?)

小林(……………)


この疑問点を覚えますか?

→はい

 いいえ




小林(………………)

小林「…ありがとうございました。結構です」

藍川「へっへーん!この法廷で私もファンも、ちょっち増えたかな?」

真田P「ええ、とても素晴らしかったです藍川さん」

藍川「あはは~///そう面と向かって言われると照れるよぉプロデューサー////」

洲水「ポジティブだね藍川は。ここ法廷なのに」

鬼瓦割「……チッ」



【栗野原】クケケッ私は指先を光らせる事ができるねぇ…まぁ、たったそれだけだけど。ETみたいに傷とかも治らないし…



小林「待ってください!」

小林「えっ…?そっそれだけですか?」

栗野原「それだけだよぉー。何なら見てみるかい?クククク…」

小林「…えっええ。見せてもらえるなら」

栗野原「……それじゃぁ、見るがいいや」スッ  ピカァァアアアア

シャロ「きゃぁあああ!まぶしい!まぶしいですぅ!」

洲水「ちょっと栗野原、光強すぎ」

栗野原「おっと、それは申し訳ない」クルクルクル

小林(えっ、その指回るの?)

栗野原「これくらいがライブの時に使う光だよぉ~。クケケケ」

栗野原「踊ってる時、私がセンターの時とか。バックで踊ってる時とか演出よくなるんだよねー。ちょっと地味だけど」

藍川「ええー?良いじゃん良いじゃん!マロンちゃんの指先の光!なんだか不思議な魅力があるって評判だよー!」

真田P「はい。その光に魅入られてカルト的な人気を博しているのは間違いありません」

小林(光に呪いの念とか込めてそうだよな…)

栗野原「ケケケ。この光にわたしの思いの全てを詰め込んでるからねぇ。毎朝カナちゃんとお話しながら」

小林(ああ、間違いなく呪いとか入ってるなあの光)

小林(このトイズは…特に事件とは関係無さそうだな)



【洲水】私はトイズで落ち着いたり自分だけだけど身体医療や精神医療に使えるよ。……名前は”マリファナ”だけどね。効果も同じみたい…




小林「待ってください!」

小林「その…それって、あの、危ないお薬の方の……?」

洲水「うん、日本じゃ非合法のアレ。トイズを一回使うたびアレを0.7g使うくらいの効力が私の中で発せられるみたい」

洲水「おかげでライブの時も緊張しなくて済むしストレスも生まないし良い事はあるんだけど、やっぱり見てくれは良くないよねこのトイズ」

真田P「しかし、検査の時でも薬物反応は全く無かったので。特に問題は無いと思われますが」

洲水「でもさ、何か恰好悪いじゃん。麻薬の効能のあるトイズなんてさ。マリファナであっただけマシだけど」

洲水「今のところ禁断症状もないし、あってもすぐ使える場所にあるし。プロデューサーもそう言うならまぁ別に良いかな」

小林(うっううん……なんだかギリギリ危ない気もするけど…)

小林(トイズとして開花した以上、彼女もどうする事も出来ないから…可哀想だけど、どうする事も出来ないかな)

藍川「まーまー元気出しなよスミスっち!マリファナ吸って捕まったアーティストや歌手なんていっぱいいるんだから!大丈夫大丈夫!」

洲水「うん、その人たち全員逮捕されてるよね。漏れなくね」

シャロ「…先生ー、マリファナって何ですか?」

小林「うん。それを使ったり食べたり体内に入れたらダメ。絶対の奴だよ」



【鬼瓦割】……手に持った物で強度関係無く殴れば、誰だろうが意識を失わせる事が出来るぜ


小林「待ってください!」

小林「あの…そのトイズを近日誰かに使った覚えとか、ありませんか?」

鬼瓦割「あん?」ギロッ

小林「うっ」ビクッ

小林「いえ、もし使った覚えがあるのなら…その……この事件にも進展が…」

鬼瓦割「……私が殺したと言いてぇのか」ゴゴゴゴ

小林「…っ!」

小林(こっ怖ぇ!)

真田P「鬼瓦割さん。落ち着いてください」

鬼瓦割「…………」

鬼瓦割「……そもそも使うわけが無いだろ。事務所からも釘さされてるのによ」

鬼瓦割「親からも警察からも使えば即逮捕と釘刺されて…ったく、厄介なトイズを持っちまったもんだってんだ」

真田P「鬼瓦割さんがトイズを使っていないという事は、私と鬼瓦割さんの両親が証明できます」

真田P「少なくとも、鬼瓦割さんが事務所に入社する前。二年前以降は絶対に使わせませんでした。」

鬼瓦割「…つー事だ探偵。私が殺ったってんなら、相当の証拠品でも持ってくるんだな。…殺ってねぇけどよ」

小林(……う~ん…)

小林(もし、被害者が悲鳴を上げなかった理由が鬼瓦割さんがトイズを使ったからだとしたら…と考えたが、彼女にはアリバイがある)

小林(トイズに関係が無いかどうかは微妙だが、彼女が事件に関係しているかどうかは薄そうだ)

鬼瓦割「用が済んだら次の奴にいけよ。面倒だろ」

小林「…ああ、はい。すみません」




【アーグニャ】Да.ワタシのトイズは”トランスレーション”どの国の言葉も私の分かル言語で聞き取れます。……日本語とロシア語以外ハ喋れませんガ


小林「待ってください!」

小林「……つまり、自動翻訳機という事ですか?」

アーグニャ「Да.すっごク便利デス」

アーグニャ「ニッポン、アメリカ人もヨーロッパからキタヒトもオオイ。聞くダケナラデキマス」

アーグニャ「喋れマセンケド、意味がワカルだけでも大分チガイマス」

小林(結構苦労したみたいだな…)

真田P「ええ。私は日本語以外は英語しか話せませんので、アーグニャさんのトイズにはいつも助けられています」

藍川「まぁ、”意味だけ分かっても喋れない”って事が多々あったけどねー」

洲水「ポーランド人が来た時は意味だけ分かってもどうしようかと思ったよね」

アーグニャ「Да.……アノトキは、タイヘンデシタ。勉強シマス」

小林(…このトイズも、事件とはあまり関係なさそうだな…)

小林「…ありがとうございました。結構です」

アーグニャ「Да…」




【真田P】そうですね……物を少し動かしやすくするくらいですか


小林「待ってください!」

小林「それは…もしかして”サイコキネシス”でしょうか?」

真田P「……いえ、少し違うかもしれません」

真田P「私のトイズは、見た物の質量を変化させる事が出来ます。重い物を軽い物に、逆に軽い物を重い物に変化させる事です」

真田P「主に束ねた資料や荷物などの質量を変えて持ちやすくする為に使います故、逆に重くする事は少ないかと」

小林「……そうですか」

藍川「なるほどー、プロデューサーの怪力にはそんな秘密が」

洲水「そんなトイズ持ってるのにジムとか行く必要あるの?通う必要があまり感じられないのだけど」

真田P「いえ、トイズばかりでなく身体を動かす事は健康にもよろしいですから」

小林(しかし、彼は随分アイドル達から信頼されてるな……)

小林「事件当日、トイズを使う事はありませんでしたか?」

真田P「いえ……特に重労働はありませんでしたから」

小林「……そうですか」

小林(うーん……この証言が少し気になるんだよな…)

小林(………ん?)



この疑問点を覚えますか?

→はい

 いいえ





小林(………………)

小林「…ありがとうございました。結構です」

真田P「いえこちらこそ、お役に立てなくて申訳ございません」

小林「あっいえ、些細な事でも十分証言になりますから」

真田P「そう言ってもらえると光栄です」

小林「ははは…」

ネロ「…ねぇ、そうやってお互いに謝ってると話がいつまで経っても終わらないよ」

北芝「無駄な話をしたいのなら、裁判が終わってからにしなさい」

小林(うっ……)





【先生】私は何も持ってないわねぇ


小林「待ってください!」

小林「本当に、貴方は何もトイズを持っていないのですか?」

先生「えっええ…。悪いけど、本当に何も…」

小林「…………それは、ちょっとおかしくないですか?」

先生「なっ何が?」

小林「真田さん。この方はアイドル志望で貴社に入社したんですよね?」

真田P「先輩からはそう聞いています」

小林「……では、一つお聞きしたいのですが。貴社のアイドルは全員漏れなくトイズを持ち合わせています」

小林「アイドルとは、必ずしもトイズを持ち合わせていないといけないのですか?」

真田P「いえ、アイドルにトイズは必要ありません……ですが」

真田P「ウチの事務所は、トイズ持ちの娘が入社の必須条件となっています」

先生「…………」

ダンッ

小林「…そうなんですよ。おかしいんです」

小林「貴方は元々アイドル志望だった。だけどトイズを持ち合わせていない。なのに貴方は川澄芸能事務所を選んだ」

先生「やっやぁねぇ小林くんったら。アイドルにならなくても事務員やダンスの先生くらいなら」

小林「問題はそこではありません。トイズが必須条件の事務所にトイズの無い者が志願しても、問答無用で弾かれるか目にも通されない筈でしょう」

小林「なのに貴方は現に芸能事務所に居る。ダンスの先生だとしても、少し違和感を感じませんか?」

先生「ウッ!」

美樹「……言われてみれば、確かに先生はトイズが無いとか言ってるけど……プロデューサーはそんな事無いとか言ってたね」

茉莉音「そういえば…ちょっと不思議でした」

先生「やっやだぁ!私ダンスの先生よ?ダンスが上手いからって目をつけられたのよぉ!オホホホホホ」

小林「……」

小林「真田さん。彼のトイズの情報とかは、ご存じありませんか?」

真田P「いえ、目に通した事はありませんね…」

小林「そうですか……」

先生「んもう!小林くんったら、疑い深すぎぃ!」

小林(……このまま証言を続けても平行線だな)

小林(確認するのに、誰に話を伺おうか…)


→検察側に聞く

 ネロに聞く




小林「……ちなみに、この中には嘘を見破る事のできるトイズを持ち合わせている少女が居ます」

先生「えっ」

小林「厳密に言えば、心を見るという能力ではありませんが。大抵の嘘は彼女には通じません」

ネロ「おっ!それ僕の事だね?」

小林「というわけで、今から貴方に質問をさせて頂きます」

小林「貴方の証言が嘘でないのなら、特に問題ない筈ですが」

先生「やっやだぁ…小林くぅん!乙女の秘密を探ろうだなんてぇ…」ダラダラ

ダンッ

小林「…仮に嘘を押し通しても、偽証罪に問われる事もあるのですよ」

先生「んまぁあーっ!!?」ビュォオオオオッ

小林「そうならない為にも、僕の質問に答えてください」

先生「……うっ…うう………」ダラダラダラ

小林(……さて、まず何から質問しよう)


→先生のスリーサイズ

 先生のトイズ

 今日の朝ごはん




小林「単刀直入に言います。貴方のトイズは何ですか?」

先生「だっだから…そんなの無いって……」

ネロ「はい嘘ーーっ!小林!イキナリこいつ嘘かましたよ!」

小林「……証人?」

先生「そっそんな怖い顔しないでよ小林くぅん!だっ…だってぇ…」

小林「この裁判で、自分のトイズの事を話したら何か不都合な事でもあるんですか?」

先生「…ウッ!」ゴゴゴ

先生「……でっでもっ!事件当日どころか12年前から私はトイズを使っていないわ!」

小林「…ネロ、どうだい?」

ネロ「おっ、これは正直だね。嘘偽りは無いよ」

小林「…そうですか」

小林(…しかし、12年前?)

先生「そう!使ってないって分かったんだから…私のトイズの事なんてもういいじゃない!」

小林「いえ、そういう訳にはいきません。まだ質問は終わっていませんよ」

小林「次に、この質問に答えてもらいます」



→12年前の先生は何歳だったのか

 12年前に何があったのか

 12年前以降からどうしてトイズを使っていないのか




小林「…どうして、12年前から使っていないのですか?」

小林「使う必要が無い。としても、使っていないと言い切れるものなのでしょうか?」

先生「つっ使って無いものは使ってないんだもの!しょうがないじゃなぁい!」

ネロ「おっと、これも本当だね」

小林「……もしかして、貴方」

小林「12年前に、トイズで何か事件を起こしたのではありませんか?」

先生「っ!!!!!!!」ビュゥォオオオオオオッ

ネロ「小林!この化物、今凄い動揺してるよ!」

小林「事件を、起こしたのですね?」

先生「おっ起こした…かもしれないけど……でもっ…でも!」

先生「もう!もう…このトイズは永遠に封印するって決めたんだからぁ!!」バンッ  バキャッ

ボォオオオンッ

藍川「おわぁっ!」

美樹「うおっ!!」

小林(しょっ証言台が砕け散った!)

ガラララララララララ

係員「……」ペコリ   コトン

カガララララララ…

小林(そして係員が無言で新しい証言台を置いて行った……)

先生「だっだから…お願い……」

先生「もうこれ以上…私を詮索しないでぇ!!」ブォァァアアアアアアアッ

小林「………(どうする?)」

小林(正直、最後に使ったのが12年前ならこの事件との関係性は薄いかもしれない)

小林(彼のトイズを、本当に証明するべきなのだろうか)


→明らかにする

 気持ち悪いから止める



小林(いや…他の娘達がトイズの有無を証言して、彼だけ許されるのはおかしい)

小林「…申し訳ございませんが、ここは法廷です」

小林「少しでも証言を集める為、協力してもらいます!」ダンッ

先生「うっ……」

先生「うぅぉぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!」ドゴォオオンッ  バキャッ

ボォオオオンッ


ガラララララララララ

係員「……」ペコリ   コトン

カガララララララ…


小林「証人!答えてください!12年前に貴方は……」

先生「うるせぇぇっ!!黙ってろやぁ!!殺すぞこのスットンキョウがぁああ!!」バァァアアアアンッ

ドゴォオオオオオッ

小林「ぎゃぁああああああああっ!!?」ビクッ

ガラララララララララ

係員「……」ペコリ   コトン

カガララララララ…

先生「……はっ!」

先生「ごっ…ごめんなさい!つっつい…頭に血が上っちゃって……」

洲水「……何?今の……?」

茉莉音「今の先生の顔………般若の12倍怖かった………」ガタガタガタ

小林(うぅ……これ以上聞いたら僕の命が危うい気がする……)

小林(このまま聞くのか?命を懸けてでも彼にトイズの有無を聞くのか?)



→聞く

 死にたくないから止める




小林(…むしろ、ここまでして隠すのは何か理由がある筈だ)

小林(それを明らかにしなければ、この裁判が終わる事は無い!)

ダンッ

小林「…分かりましたよ。貴方のトイズの能力が」

先生「っ!?」

茉莉音「えっ…えええええええええ!?」

美樹「たっ探偵って…今ので先生のトイズが分かっちゃうの?」

シャロ「せっ先生凄いですっ!私…今の怖い顔で記憶すら全部吹っ飛びそうだったのに!」

洲水「…………」ジー

姫百合「…あの……小林さん?」

小林(うっ……何人かは、僕の言葉がハッタリだってことに気づいてるようだ…)

小林(…だけど、もう後には引けない!こうなったら…一か八かだ!)

小林「12年前の事件。それとつながる貴方のトイズは―――」



→人間を捻りつぶすトイズ

 目を合わせたら死ぬトイズ

 大地を揺るがし海を荒らすトイズ




先生「待ったっ!!!!!!!!!!!」


小林「!」

北芝「!」

裁判長「!」


先生「……分かったわ……言う……自分の口から言うわ……」

先生「私の…罪の記録を……」

小林「!」

裁判長「そっそれでは証人、貴方は……!」


先生「ええ、私は12年前の冬…一つの罪を犯したの」


先生「その時はまだ高校生だった私は…恋をしていたの」

先生「相手は三年生の先輩。この冬が過ぎればもう二度と会えなくなってしまう」

先生「でも、私と先輩は男同士…先輩はノンケ。告白しても玉砕するのが目に見えてしまう…」

先生「その時…その時よ、私のトイズが開花したのは……そう、私のトイズは……”幻惑”」

先生「私を美しい少女に見せる幻覚を見せる事で、私は晴れて先輩と付き合う事が出来たの!でもっ……!」

先生「ある日、一緒に熱い夜を過ごした日の朝の事だったの……目が覚めたら私のトイズは効力を失っていて、起きたときに見た光景は……目を見開きながら私の顔を見て硬直する先輩だった…」

先生「そして先輩は、そのまま全裸のまま奇声を上げて家から飛び出し山の中へと逃げていったの………」

先生「それからずっと、先輩とは会っていなかった…でも、その後先輩が警察に保護されたと聞いたのは8年後の事だった」

先生「8年間ずっと森の中で野生と共に過ごした彼は記憶を無くし、人語も喋れなくなっていた……もちろん、私の事も覚えていなかった……」

先生「だから…だから私は!12年前先輩を傷つけた日から!もう絶対に罪深き”幻惑”のトイズを使わないって!決めたのよぉおおおお!!!」バァアアアアアアアアアアアアアアアンッ


ドガァァアアアアアアアアアアンッ





裁判長「……………」

北芝「……………」

小林「…………」


「…………………」



ガラララララララララ

係員「……」ペコリ   コトン

カガララララララ…




北芝「……………弁護人」

小林「……はい」

北芝「有力な情報は、拾えたかしら?」

小林「……………いえ」

北芝「そうでしょうね。今のがこの裁判で有力な情報ですとかほざいてたら、さすがの私も貴方の頭を心配するわ」

小林「……………」




カンッ

裁判長「………もう結構です」

裁判長「この事件は、被告人が殺人を犯す状況。証拠も揃っていて極めて明確な裁判です」

裁判長「被告人のトイズも、事件現場で使われた可能性も大きい」

小林「!」

小林「しっしかし…事務所と空き地の間には木が…!」

北芝「…そもそも、本当に被告人は事務所の中に居たのかしらね」

小林「どっどういう事ですか?」

北芝「被告人にはアリバイが無い。という事は音響室に行ったのは嘘で本当は」

北芝「事件現場のすぐ近くに居た可能性だって…いや、むしろこっちの方が可能性が高いわね」

小林「異議!」

小林「そっその明確な証拠は今存在していない!言いがかりは止めてください!」

北芝「…………」

裁判長「……確かに、被告人が事件現場に居たという証拠はありません…が」

裁判長「被告人が事務所に居たという証拠も、今の所ありませんね」

北芝「一人目の証人が言っていた被告人も、ただの大きな写真だったわけだし」

小林「クッ!」

北芝「この容疑者の中で、最も犯行が可能だった人物が被告人である事は揺るぎないわ」

北芝「大人しく負けを認めなさい!小林オペラ!!」

小林「…………」

小林(……何だ?この違和感は……)

小林(裁判前のとは違う、別の違和感……)

小林(……この違和感は…まさか……)

裁判長「それでは、この裁判の判決を――」





小林「異議ありっ!!!!」



裁判長「!」

北芝「…………」

小林「…北芝検事、先ほどまで感じていた違和感が、ようやくわかりましたよ」

北芝「……何よ」

小林「突然13人の容疑者を一気に証言台に立たせた暴挙。この時点から気づくべきだったのかもしれません」

小林「そして、この裁判には証拠という証拠が今までの事件と比べて有力な物が少ないんじゃありませんか?」

北芝「…………」

ダンッ

小林「そう!この裁判……」

小林「検察側の捜査が圧倒的に不十分なのです!!」

裁判長「!?」

姫百合「!?」

コーデリア「えっええっ!?」

ザワ…ザワザワ…

「…おい、一体どういう事だよ?」

          ザワ……

「証拠不十分のまま、議論していたって事なのか?この裁判」

ザワザワ……                  ザワ…


北芝「…………」

小林「検察側が被告人を告訴した理由が一番犯行が可能だから。そのあやふやな主張も疑問を感じていました」

小林「何より、被告人の動機の議論が今のところほとんどされておりません」

小林「それに…僕たちが見た事件現場にだって謎が多く残されています。被告人が睡眠薬入りと知っているか知らないか関係なくジュースを飲んだ理由もね」

小林「被告人と被害者は仲が良かった。それなのに被告人は睡眠薬入りだと知らなかったとは考えにくい」

北芝「異議あり!」

北芝「知っていたとしたら、余計に被告人の容疑が深まるじゃない!」

小林「異議!」

小林「だったら…被告人が被害者を殺す動機を!今!」

小林「ここで証明してください!!」

北芝「…………ぐっ…ぐぐっ……!!」






「待った!!!」



小林「!」

裁判長「!」

北芝「………!」




















神津「……その事については、俺が証言しよう」









小林「かっ…神津?」

北芝「神津くぅん!ようやく証拠品が揃ったのね!」

神津「まず、この裁判における検察側の捜査だが」

神津「確かに。有力な情報はほとんど得られておらず、ただ殺人事件だという事以外は分かっていない」

小林「!じゃぁ、この裁判は証拠不十分のまま行われていたという事か!」

神津「そうだ。だが、それにはちゃんとした理由がある」

神津「探すべき場所の検討が尽きた俺達は、この裁判と捜査を同時進行で行う事とした」

神津「つまり、裁判で議論されていた事を重点に置いて捜査を行ったのだ」

小林「……なっ何?」

神津「そして、俺達は殺害現場とは別の事務所の中を隅々まで調べまわった…その結果」

神津「怪盗ファンが言っていた部屋には、被告人の全身ポスターが事件当日から張られていない事が判明している」

小林「えっ」

神津「そもそも、怪盗ファンが見た被告人の場所は喫煙室でポスターなど張れる部屋では無かった。つまり」

神津「被告人は事件当日、間違いなく喫煙室の窓の前に立っていたのだ」

小林「…………え」

小林「ぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!!!?」


神津「更に、怪盗ファンの口を割らせた所。興味深い証拠品が喫煙室から見つかった」

裁判長「興味深い証拠品、とは?」

神津「怪盗ファンが仕掛けた隠しカメラが設置されていたんだ。それも、窓から空き地の光景が見える場所にな」

小林「…とっという事は……?」

神津「ああ、事件当日の光景が映った決定的証拠が、今ここにあるという事だ」

北芝「あっはっはっはぁああ!!さぁっすが神津くんだわぁ!愛してるぅ!」

裁判長「かっ神津警視正!今すぐその証拠品を提出してください!」




証拠ファイル⑬隠しカメラの映像

【事件当日、殺人の瞬間が記録されている。】



北芝「っふふふ…覚悟は良いかしら?弁護人?」

北芝「神津君が持ってきてくれた、検察側の切り札、決定的証拠を再生するわ」

北芝「嘘偽り無しの記録……さすがの貴方もこれは崩せないでしょうからね」

小林(…北芝検事も中身を知らない筈だけど)

カンッ

裁判長「…それでは、係官。今すぐ証拠品の再生の準備に取り掛かってください」



【映像開始】



①場所は不明。だが窓からは空き地の光景が映し出されている


②窓の端には誰か分からない人影が立っている


③凶器と思われる車のような物が浮いてるかのように動き、途中で止まる


④人影は走って去ってゆく。


⑤部屋の中に誰か人影が。窓の光でその姿が被告人篠田久留美だと判明する


⑥急に被告人の姿が消え、怪盗ファンの姿が一瞬だけ映し出される



裁判長「こっ……これは……」

小林(うっ…嘘だろ……?)

小林(喫煙室からだと……空き地の光景が木の間からでも見えている…?)

北芝「クックック…どうやら」

北芝「私の推理は間違っていなかったみたいね」

小林「…………う」

北芝「映像に映っているのは紛れも無く被告人。そして窓の外を見ていた」

北芝「映像から分かるように、木が邪魔になっていても空き地の光景はハッキリと見えていたわ!」

北芝「更に、空き地には人影が映り。被害者を殺した大型車の影も映りこんでいる。これは間違いなく」

北芝「被告人に、共犯者が居た事を示しているのよっ!」バンッ

小林「うっ……」

小林「うぅぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


ザワザワ…ザワ……ザワ


カンッカンッカンッ

裁判長「静粛に!静粛に!」

裁判長「それで、その共犯者とは…一体誰なのですか!?」

神津「今、解析班が映像の明度を上げている。すぐにでも提出する事は可能だ」

北芝「…それじゃぁ神津くん。映像に映った空き地に居た黒い影…」

北芝「その影の正体を証拠品として提出して頂戴!」




小林「………なっ!」

ネロ「こっ…これって……」

コーデリア「……うっ…嘘……でしょ?」

北芝「……………」

裁判長「…この、映像に映っている黒い影……この方は………」

裁判長「この証人に間違いありませんね?」

北芝「…そうね。認めるしかないわ」

ダンッ

北芝「検察側は、被告人の共犯者として……」













北芝「シャーロック・シェリンホードを告訴する!!」







小林「異議あり!!!」

小林「あっ有り得ません!彼女が…証人が!殺人の片棒を担ぐなんて!」

小林「そもそも!証人と被告人とは接点がほとんどない!動機も存在しない!」

北芝「異議あり!!」

北芝「この証人は事件当日同時刻に現場に居た事を認めている!そして、映像にも記録されている!」

北芝「更に!どう見ても証人は野菜を見に来ただけの様子では無い!」

北芝「これだけ証拠が揃っていて…疑うな等とは…冗談じゃないっ!!」

コーデリア「異議あり!!」

コーデリア「シャッ!シャロが殺人をするって本当に思っているのですか貴方は!?」

北芝「それじゃぁ貴方は、証人が事件現場に向かった理由が野菜を見に来ていたと本当に信じているの?」

北芝「こんな深夜に外を出歩いてまで野菜の様子を見に行く馬鹿がどこに居るっていうのよ!!」ダンッ

ネロ「異議あり!!」

ネロ「その事についてはシャロは一切嘘をついていないよ!言いがかりは止めて貰える?」ギロッ

北芝「…それじゃぁ証人、貴方は本当に野菜の様子を見に行く為だけに」

北芝「あの殺風景な空き地へと向かったのですか?」

コーデリア「そうよ!シャロなら有り得るわ!ねぇシャロ!」

シャロ「えっ…ええと……ええと………」オロオロオロ

ネロ「………っ!?」

ネロ「シャロ…ほ…本当に………他の理由が…?」

北芝「…どうやら」

北芝「貴方の嘘を見分けるトイズは、相当優秀のようね」

ネロ「……あっ!」

ダンッ

北芝「さぁ、言い逃れはもう出来ないわよ」

北芝「貴方は、大型車と被害者が横たわっていた空き地に入った」

北芝「空き地に入って、本当にその姿が見えなかった。なんて言い訳は通じると思わない事ね」

シャロ「でっ…でも……でも……」


ダンッ

北芝「さぁ、答えなさい」

北芝「貴方、事務所の隣の空き地まで一体何しに行ったの!?」

シャロ「…………」

シャロ「…せっ…先生……」

小林「…………くっ!」

小林(僕も…何故事件当日のこの時間にシャーロックが事件現場に居たのか…理由が分からない)

小林(だからと言って、ここは裁判だ。僕は彼女だけ特別扱いをすることも……)

小林「……シャーロック」

小林「一体、その事件現場で何を…していたんだ?」

シャロ「………!」

ネロ「こっ…小林?」

小林「シャーロック。僕は君を信じている」

小林「だからお願いだ。僕に全部話してくれ。あの夜、公園で一体何があったのかを」

小林「そうじゃないと、この裁判は先には進めない」

シャロ「…………」

小林「すまないシャーロック…話してくれ」

小林「事件当日、空き地で君は何をしていたのかを!」

小林「そして、一体何を見たのか!聞いたのか!」

シャロ「………………うぅ…」

シャロ「…………」




シャロ「…も……」

シャロ「黙秘……します………」

小林「………えっ」

小林「ぇぇぇえええええええええええええええええええっ!!!!???」




ザワザワ…ザワ……


北芝「……どうやら、探偵小林オペラさんは」

北芝「自分の教え子の心を開くことができなかったようね」

ダンッ

小林「シャーロック!?黙秘するという事は…分かっているのかい!?」

小林「下手な発言をするより、ずっと不利な状況になるんだよ!?」

コーデリア「!」

エルキュール「!」

ネロ「シャロ!どうして喋れないの!?なんで!!」

シャロ「ごっ…ごめんなさい……ごめんなさいい………!」ポロポロポロ

北芝「…どうやら、ここまでのようね」


ダンッ


北芝「裁判長。もう審議の必要はありませんわ」

北芝「映像を見る限り、被告人と証人シャーロックが共犯者だった事は確実」

北芝「被告人が被害者の動きを止め、証人のトイズで凶器であるトラックを動かし被害者を轢き殺した」

北芝「もうこれは、議論の余地もありません」

裁判長「……確かに、これは極めて明確な事件です」

裁判長「検察側の意見は、至極全う筋が通っています」

小林「……くっ!」

裁判長「それでは、この裁判に判決を――」



小林「異議!!!」



小林「まだ審議するべき箇所が残っています!」

北芝「……ほう、それじゃぁ提出してみせなさいよ」

小林「…それは、映像のこの箇所です!」





→⑥急に被告人の姿が消え、怪盗ファンの姿が一瞬だけ映し出される


小林「映像に映っていたのは被告人と証人だけじゃない。怪盗ファンの姿も映っています」

小林「更に怪盗ファンも事件現場のすぐ近くに居たという事になる。つまり!犯行は怪盗ファンでも可能だった!」

北芝「異議あり!!」

北芝「残念だけど…不可能よ」

小林「どっ…どうしてですか?」

神津「怪盗と言うからにはトイズを持ち合わせている…お前はそう思っているかもしれないが」

神津「奴はトイズを”持ち合わせていない”」

小林「なっ…なんだって?」

北芝「ただ、下着泥棒を怪盗として提出すれば少しでも恰好良いと思ったんでしょうね」

北芝「奴は怪盗という単語を乱用してるだけのトイズの持たないただの下着泥棒よ」

小林「うっ…うう……」

北芝「トイズを持たない一般人が、あんなでかい車を触れずに動かせるものかしらねぇ!?エンジンもキーもギアも動かせない、更に車は坂だろうと普通は勝手に動かない!!」

小林「うわぁあああああああああああああああああああああ!!!!!」ガガーンッ

裁判長「……となると」

裁判長「やはり、犯行が可能だったのは被告人と。証人であるシャーロックさんだった……」

裁判長「これは、もはや議論の余地もありませんね」

小林「……………」

小林(おっ…終わりなのか…?こんな…最悪が終わり方で……)

小林(この裁判は…幕を閉じるのか?)

裁判長「それでは、弁護側から異議が無ければこれにて審議を―――」



小林「異議あり!!!!」



北芝「……あんたもしつこいわね」

小林「…もう一人、居るんです。この事件で犯行が可能だった人物が」

北芝「…ほう、面白い事を言うわね。分かってるの?」

小林「………はい」

カンッ

裁判長「それでは、提出してもらいましょう」

裁判長「この事件で、被告人と証人以外で犯行が可能だった人物とは?」



次の投下は12時5分です。しばらくお待ちください



→証拠ファイル①真田Pの名刺を突きつける


小林「この人です!!」

真田P「……なっ!!?」ビクッ

小林「事件当日、現場の近くに居て窓から事件現場も見る事が出来、トイズで殺害方法を再現する事も可能なのは…」

小林「僕が考えうる限り、この人しかいません」

真田P「そっ…そんな…?私が……御子柴さんを……?」

鬼瓦割「おい…殺されてえかてめぇ…?」ジャキッ

洲水「アンタ……一体何言ってるか分かってんのっ?」ギロリッ

栗野原「…………」グサッグサッグサッグサッグサッ

藍川「ちょっちょぉーっと!みんな落ち着いて!ね!?ね!?こんなの間違いだから!」

アーグニャ「Минуточку!」

藍川「ちょっと小林オペラ!よりにもよってプロデューサーを疑うの!?さすがに酷いよ!!」

小林「しっしかし…彼なら空き地で被害者を殺害する事も可能でした」

小林「真田さんのトイズは重さを変化させる事のできるトイズ。それだけなら二つの事が可能です」

小林「被告人を重くし倒れさせ、自身で身体を麻痺させる事も可能ですし。逆に車のギアの持ち手を重くするだけで動かす事も可能です」

真田P「………!」


北芝「……まぁ、そう考えれば確かにこの証人も犯行が可能ね」

小林「はい、そうすれば犯行も一人だけで済みます」

真田P「しっしかし…私……私は……!」

ダンッ

小林「弁護側は!真田氏を事件の真犯人として告訴します!」

小林「そして!検察側の証拠品不十分を指摘し、弁護側はこの裁判はこれ以上審議の続行不可能として」

小林「検察側に再捜査と再審議を要求します!!」





ザワザワ…ザワ…ザワザワ……


カンッ


裁判長「…これは……正直驚きの連続です」

裁判長「進めば進むほど、形の変わっていく裁判……正直私には、終わりが見えません」

北芝「………そうね」

北芝「まさか、弁護人がここまで醜く足掻くとも思わなかったわ」

小林「……………」

裁判長「…ですが、確かにこのまま審議を進めても平行線から超えない事でしょう」

裁判長「ここで、一旦審議を打ち切るという提案を裁判側は受け入れようと思います」

裁判長「検察側も、それでよろしいですね?」

北芝「………ふん」

北芝「せいぜい足掻くと良いわ。この負け戦に」

小林「……(なっ…なんとか……助かったのか…?)」

小林(首の皮一枚繋がった…ような感覚だ……)

真田P「……………うぅ…」

小林(…真田さんには悪い事をしたけど、容疑があるのは間違いないんだよな……)

小林(しかし…僕たちは本当に真実に近づいてるのか?)

小林(審議を進めても、裁判前から感じているこの違和感……結局最後まで拭えなかった…)

カンッ

裁判長「それでは、今日はこれにて閉廷――――」



「待った!!!!」


小林「!」

北芝「!」

裁判長「!」




鬼瓦割「……おい、まさかこのままハイ終わりで納得するとか思ってねぇだろうな?」


裁判長「え?いやあの…そう言われましても、この事件は再捜査が…」

洲水「…さすがに私たちのプロデューサーを告訴されて黙ってられるほど、薄情じゃないんだよ」

栗野原「………ブツブツブツブツブツ…」グサッグサッグサッグサッグサッグサ

真田P「…あの、みっ…みなさん?まだ明日がありますから…」

藍川「そっそうだよ!まだプロデューサーが犯人だって決まったわけじゃ……」

洲水「シャラップ藍川」

鬼瓦割「俺らのプロデューサーを疑うケジメ……あんだろうなぁ?おい探偵さんよ」

小林「………え?」

鬼瓦割「いやぁ、ちょっと気になるんだわ。俺らの大事な大事なプロデューサーを疑う事のケジメが、どれくらいなのか」

鬼瓦割「………覚悟、してんだろ?」

小林「……っ!」ゾッ




鬼瓦割「だったら…見せてみろよ……」ズイ

鬼瓦割「てめぇの覚悟をなぁああああ!!」ゴォオオオオオオッ

小林「っ!」スッ

鬼瓦割「てぇえやぁああ!!」ブンッ

小林「わっ!」スッ

鬼瓦割「避けんじゃねぇええええ!!!」ブォンッ


小林「………ぐぅっ!」ビュオンッ



△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合




→×エルキュール



小林「エルキュール!!」

エルキュール「はっはいい!!」ティロン♪  バッ

バシィッ

鬼瓦割「ぐっ!」メキメキメキメキメキ

エルキュール「こっ…小林さんには…手を触れ…!」

鬼瓦割「たぁあ!」バキィッ

エルキュール「キュゥッ!」バタン

小林「エルキュール!」

藍川「ちょっちょーっと待った!暴力はダメだよ暴力はぁー!」ティロン♪

キラキラキラキラ  サラサラサラサラ

小林「!エフェクトが……法廷全域に!」

裁判長「こっこれでは何も見えませぬぞ!」

小林「…………っ!!」



△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合




→□コーデリア


小林「コーデリア!」

コーデリア「はい!………」

コーデリア「……!あそこです!」

小林「!?あそこって…?」

コーデリア「バットを振り回して!ああ!ブレーカーに当たってしまいます!」

小林「!!」





△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合




→○ネロ


小林「ネロォ!!」

ネロ「よし来た!」ティロン♪

鬼瓦割「っらぁ!」バキィッ


――ブツン――


小林「!ブレーカーが落ちた!」

ネロ「でも、窓の光もあるから照明の心配は無いよね!」

小林「それはそうだけど……」

小林「!」ガシッ

洲水「動かないで」ギリギリギリ

小林「うっ…ぐっ…!」

洲水「悪いけど、私これでも怒ってるんだよ。プロデューサーをサイコパス呼ばわりされて」

小林「………っ!」

小林(洲水さんの頭の上には……旗が…)


※変更

→○ネロ


小林「ネロォ!!」

ネロ「よし来た!」ティロン♪

鬼瓦割「っらぁ!」バキィッ


――ブツン――


小林「!ブレーカーが落ちた!」

ネロ「大丈夫だよ小林!自家発電とつなげたからすぐに点灯するさ!」

小林「…点いた。良しっ!」

小林「!」ガシッ

洲水「動かないで」ギリギリギリ

小林「うっ…ぐっ…!」

洲水「悪いけど、私これでも怒ってるんだよ。プロデューサーをサイコパス呼ばわりされて」

小林「………っ!」

小林(洲水さんの頭の上には……旗が…)



△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合



→△シャーロック


小林「シャーロック!」

シャロ「はい!」ティロン♪

洲水「うわっぷ!なっ何これ!?旗が生きてるように…」

小林「よし!これで離れ………」

鬼瓦割「……私のトイズは……私の手に持った物で攻撃すれば全員眠らせる事のできるトイズだ。前後の記憶もあやふやになるだろう」

鬼瓦割「私の手に持っているのはスプリンクラー。周りは藍川のエフェクトで何も見えない。…何が言いたいか分かるな?名探偵」

小林(…まさか…この娘…!全員眠らせて、この裁判を無かった事にでもするつもりか!?)

小林「そんなことは……!!」



△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合



→Rエラリー姫百合


小林「させない!姫百合くん!」

姫百合「はい!!」ティロン♪


パッ


鬼瓦割「!」


ナッ…ナンダナンダ?キュウニマワリガセンメイニナッタゾ?

サッキノタイリョウノキラキラハドコニイッタ?


鬼瓦割「………チッ!」


裁判長「かっ確保!係官!彼女を確保してください!!」


係官「はっ!!」

鬼瓦割「……クソッ…クソッ!!」ガンッ


ザァァァァァァァァ……


真田P「……鬼瓦割さん…」   パラパラパラパラ

洲水「……………」ガクッ     パラパラパラパラ

藍川「……まぁ、確かに気に入らないのも分かるけどさ…」    パラパラパラパラ

栗野原「…………うぅ…プロデューサー…」グスッ       パラパラパラパラ

アーグニャ「………грустно.」      パラパラパラパラ





小林(それから後の事は、大変だった)

小林(裁判の審議の引き延ばしというよりは、暴動により審議不可能と言った方が正しいような。そんな中断をして)

小林(シャーロックと真田さんはサイコパス容疑者として、二人とも警察に連行された)

小林(事件の裁判は、また明日に開廷される)

ネロ「ねぇ小林!エリーが白目向いて一向に動かないんだけど!」

コーデリア「医務室!医務室に連れていきましょう!」

小林(……僕は)

小林(明日の裁判で、この事件を解決にまで導くことができるのだろうか?)

小林(……そして)

小林(どうしてシャーロックは、僕たちに本当の事を告げなかったのか)

小林(この裁判が始まる前から感じるこの違和感は…一体何なのか)

小林(だが、どちらにせよ明日の裁判で全てが終わる)

小林(例え、どんな終わり方になろうとも……)



【続く】




今回はこれでおしまいです。
次は探偵編二日目です。しばらくお待ちください

これまでの証拠品


証拠ファイル①真田Pの名刺

【名前と連絡先と会社名が書かれている。何故か名前欄が小さい】




証拠ファイル②レッスンの先生の名刺

【名前と連絡先とスリーサイズと電話番号が書かれている。キスマークが大きく覆われている】





証拠ファイル③凶器?の壷

【中に被害者の血が溜まっていて、底に小さな穴が開けられていた】





証拠ファイル④割れたグラスとジュース

【篠田さんが飲んでいたと思われるジュース。中に睡眠薬が入っていた可能性が有り】






証拠ファイル⑤御子柴さんの写真

【写真には二人の人物が写っている。被害者と被害者の母親。母親の顔が赤い×印で潰されている】



証拠ファイル⑥壊れたカセットテープ

【被害者の部屋に落ちていたカセットテープ。真っ二つになっている】





証拠ファイル⑦御子柴華子の解剖記録

【死亡推定時刻は12月20日午前2時前後。頭部を重量車のタイヤのような物で轢き潰されている以外に外傷は無い】




証拠ファイル⑧凶器のトラック

【事務所近くの空き地の上に放置されていた。血液は付着していたが、エンジンが動いた跡も指紋も無く、誰かが乗った痕跡が無い】




証拠ファイル⑨篠田杏子のトイズ

【”スローモー”視界に映った物の動きを遅く感じさせるトイズ】



証拠ファイル⑩睡眠薬

【被害者が常用していた。ジュースに溶かして飲んでいる】


証拠ファイル⑪空き地と事務所の間の木

【空き地からも事務所からも、この木が邪魔して見る事が出来ない】


証拠ファイル⑫等身大アイドルポスター

【クリスマスライブに出演するアイドル全員分の等身大ポスター。物販で販売する予定だった】

>>1です。第二話の小林オペラ「この裁判…逆転して救ってみせる!」 での犯人、アンドレイ・みどりのブレイクシーンを変更いたしました。
渋では変更してありますが、こちらだと変更が無理なので貼り付ける事にします。




みどり「……………」


みどり「……」


みどり「…あは」


みどり「あはは…あはははははは!あははははははは!!」


みどり「みんなぁ!これ何か分かるかなぁ!?これは標識だよぉ!」


みどり「一時停止!駐車禁止!法定速度!歩行者専用通路!」バッ バッ バッ バッ


みどり「この標識さえあれば!車なんてなーんでも操れちゃうんだぁー!しかも!」


みどり「人間を操る事の出来る標識だってあるんだよぉおお!!自動車専用道路!立ち入り禁止!その他危険!」  バッバッバ


みどり「だからぁ!標識さえあればぁ!!!!」


    バ     ンッ 


     プップー!プップー!!



みどり「今私に迫ってくる車だって!罪だって!判決だって!私の思いのままに動かせる事が出来るんだぁあああ!!」  プァァァァァァァ


みどり「だから人間だってぇえええええ!!裁判だってぇえええええ!!事件だってぇえええええええ!!」  ァァアアアアアア


みどり「標識があればぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」   アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


みどり「肺亜火オアはおはおいはオハイオ居青はイオヒアヒアはイオはお位牌オア費オア費オア補遺亜日あおはいおあほいあほいあはいおはいおはいおはおはあいおはおいはおいはいおはいおひお」




プ――――――――――――――ッ!!!!!!!!



みどり「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




キキーッ   ドーン




みどり「」




………ガタンッ


ガタンガタンガタンガタンガタンッ    パリンパリンパリンパリンパリン




ドサッ



今日の夜ごろに投下致します。しばらくお待ちください

投下します

【小林オペラ横浜事務所  12月22日 午前9時11分】


ピピピピ!ピピピピピピピピピピ!



小林「……………」


ピピピピ!ピピピピピピピピピピ!


カタンッ


小林「……………」

小林(…結局、一睡もできなかったな)

小林(休めようにも、シャーロックの事が気がかりすぎて…)

小林(…………今頃、シャーロックは留置所で一人で…)

小林(………)

ガチャリッ

姫百合「小林さん!」


小林「ん?…ああ、姫百合くん?」

姫百合「ああ、じゃありませんよ!捜査は!いつするんですか!?」

小林「…うん。、そうだね。今からやるつもりだったさ。ありがとう」スクッ

姫百合「そんなゆっくりする暇なんてありません!もっと早く動いてください!」

小林「うっごっ…ごめん…」

小林(…姫百合くん。隈が酷いな…)

小林(彼女も、中々眠れなかったみたいだ…)

コーデリア「教官!」

ネロ「小林!早く捜査に行こう!」

小林「………」

コーデリア「教官!何をしてるんですか!」

ネロ「そうだよ!早く外に出て…」

小林「少し、落ち着こうか」

ネロ「はぁ!?一体何を落ち着かせるのさ!」

コーデリア「シャロが捕まってるんですよ!?落ち着くも…!」

小林「まず、事件の整理からだ。やぶからぼうに捜査を始めても、いたずらに時間が過ぎていくだけ」

小林「探偵として、急かすのは良い判断だとは思わないな」

ネロ「………う」

コーデリア「…………」

姫百合「…………」

小林「…落ち着いたようだね」

小林「それじゃぁ、この事件を皆で整理しようか」



→【殺害現場】


ネロ「そもそも、殺害現場からして混乱を招いたよね」

姫百合「私たちが見た現場は事務所の中。でも事件が起こったのは事務所の外……」

姫百合「これは、誰かが移動させたと考えるしかありませんが…何か引っかかります」

コーデリア「それより、どうしてシャロは事件当日の夜に現場に向かったの?」

コーデリア「野菜なんて、普通は深夜に見に行きませんし。今の私たちには教官が居るのだから食料には困っていませんし」

小林「昨日の裁判から、シャーロックには違う目的があって現場に向かったのは間違い無いだろうね」

小林「その目的が、黙秘権で明かされる事は無かったけど…」

姫百合「映像を見る限り、あの反応も殺される瞬間を見ていたものに見えました」

姫百合「…どうして、その時から警察にも病院にも連絡しなかったのでしょう」

小林「…………」

小林(黙秘権を行使する程に言えない理由…か)

小林「これは…本人に聞くしか無さそうだね」

ネロ「でもさぁ、喋ってくれるかな?小林が言っても効かなかったんでしょ?」

小林「でも言ってくれないと、僕はシャーロックを守る事が出来ない」

コーデリア「……なんとか、なりませんでしょうか?」

小林(……うーん…)


→【凶器】


小林「あの壺が凶器という割には傷一つ無かったし、あの車には血痕があった」

小林「凶器はあの車で間違い無さそうだね」

姫百合「裁判で、あの壺は遺体を入れて運んでいた事が判明しましたが」

姫百合「…確かに、壺に入れて運べば現場にほとんど血痕を残すことなく運ぶことも可能かもしれませんね」

ネロ「壺も処分せずに被害者の潰れた頭に乗せれば、偽装工作っぽくできるもんね」

コーデリア「だとすると、わざと偽装工作っぽく見せる事が目的だったのかしら?」

小林「……その可能性はあるだろう」

姫百合「…殺し方はシンプルなのに」

姫百合「こう、大分ややこしく思えるのは何故でしょうか」

小林「状況もあるからだろうね。被害者は悲鳴一つ上げなかった。抵抗せず頭を潰された」

小林「そして凶器の車には指紋どころかエンジンが動いた跡すら無かったんだから」

ネロ「だとすれば、トイズの能力も大分制限されるだろうけど…」

コーデリア「…でもシャロは!軽い物しか動かせないのよ!?」

姫百合「えっ…?でも、証言では”最近力も強くなってきた”と言ってましたよね?」

コーデリア「うっ…!」

小林「…その証言で、シャロが車を動かせなかった事を証明するのは難しいだろうね」

ネロ「……それじゃぁさ」

ネロ「一体誰のトイズで車を動かして、被害者の動きを封じたの?」




→【トイズ】


小林「僕の推理では…真田さんのトイズなら両方難しくないと思う」

小林「車は、パーキングブレーキさせ動かせれば勝手に動く物だしね」

姫百合「…止まったエンジンのままでも、ギアを動かす事は可能なのですか?」

小林「凶器の大型車がMT車なら勝手に動くことも有り得るだろうね。あの形ならMT車がほとんどだろうけど」

コーデリア「あの…その…MT車とか……ギアとか…?」

ネロ「ああ、コーデリアは分からないんだっけ?」

小林「まぁ、車の種類は大して問題じゃない。あとは、被害者の状況も」

小林「身体の一部分を重くし首を捻らせれば、気絶させることも容易い。彼のトイズならこの二つの事も可能なんだ」

ネロ「アリバイも無いみたいだしね」

小林「問題は…”動機も無い”事かな」

姫百合「そうですね。彼に会ってからしばらくも経ってないですけど」

姫百合「とても担当のアイドルを殺すような人には見えませんでした」

コーデリア「でも、教官の話では偽装工作されていたとはいえ第一発見者は彼なんでしょう?」

ネロ「だから怪しい…まぁ、確かにちょっと引っかかるけど」

小林「…………」

小林(そうだ、何か引っかかる)

小林(彼がこの事件の犯人だったとして、何かシックリ来ない)



→【欠席者】


小林「…そういえば、エルキュールの様子はどうだい?」

ネロ「うーん…医務室に連れてったきり今日は見てないよ?」

コーデリア「エリーの事も心配だけど…今はシャロを助ける方が先です!」

姫百合「確かに…この混乱しかない事件の容疑者にされてるシャーロックさんが、今一番心配ですね」

小林「ううん…まぁ、そうなんだけどさ」

小林「後でちゃんと、お見舞いに行こうね?エルキュールも心配してるだろうからさ」

ネロ「ほいほーい。エリーにはちょっと待ってて貰うよ」

小林「…そういえば、コロンくんも見かけないよね?」

姫百合「ああ、彼女なら「今日こそ師匠の有利になる証拠見つけたるー!」って、事務所から飛び出していきましたけど」

小林「ははは…頼もしいね」

ネロ「そういえば、今日会長の姿が見えないね。朝会にも出なかったみたいだし」

コーデリア「そういえばそうね……昨日の裁判に出席していたみたいだけど…」

姫百合「ええと、彼のトイズが怪盗アルセーヌと同じであった事が判明した後」

姫百合「急に倒れて医務室に連れてかれた所までなら知ってますが」

小林「ええ?何で倒れたんだろう。貧血かな?」

ネロ「会長も栄養管理しっかりしてないんだね」

コーデリア「ちゃんと食べれてるんでしょうか」





小林「さて…こんなものかな」

姫百合「それでも、まだ分からない事だらけですよね」

小林「うん…それは否めないな」


ガタッ


小林「じゃぁ、早速本当の事件現場に向かおう」

ネロ「おっ!やっとだね!」

コーデリア「…確かに、整理する前とした後では決意と落ち着きが違います」

コーデリア「これなら…ちゃんとした捜査ができそうです!」

小林「うん。そう思ってくれたら嬉しいよ」

小林「それじゃぁ、ミルキィホームズ。調査開始!」

三人「「「はい!!」」」




【川澄芸能事務所近く 空き地 午前10時04分】


ネロ「わぁー…さすがの警察も総調べだよね」

姫百合「これは…もう調べつくされてるんじゃないですか?」

小林「うっうーん…とりあえず」

小林「神津を探そう。神津なら何か見つけてるかもしれない」

コーデリア「でも、見た感じ神津さんが居なさそうですが…」

ネロ「確かに。あんな白い人が藍色の服の集団の中に紛れ込んでたら目立つしね」

小林「ううん、否定できないな…」

小林(誰か居ないかな?誰か知ってる人)



→車近くで捜査している人



小林(…おや?あそこにいるのは…)


平乃「………あれ?」

咲「………んお?」

平乃「…あっ!貴方達は探偵学院の」

小林「ああ、昨日弁護席と証言台に立っていたよ」

咲「それにしては、二人くらい足りなくな~い?いつも一緒だったじゃん」

ネロ「あんたらに言われたくないよ。…そっちは三人くらい足りないじゃないか」

平乃「ああ、次子さんと明智警部は事務所の中で捜査していて、警視…正は北芝検事と一緒に本部で事件の整理をしています」

咲「それのせいか知らないけど、今日の小衣めちゃくちゃ機嫌悪いからさぁ~。警視の話題は出さない方が良いよぉ~?」

小林「あはは…神津も罪な男だね…」

コーデリア「…………」

ネロ「…………」

咲「それで?アンタらのはどうなのよ」

小林「うん。エルキュールは昨日の事でまだ意識を失ってる。シャーロックは…君たちも知ってるんじゃないかな?」

平乃「ああ、確か北芝検事に告訴されて…」

ネロ「ほんっとに何なんだよあのチビっ子検事は!どういう思考回路してんのさ!」ドンッ

咲「まぁ、私もアイツちょっと苦手だけどぉ~。私たちの事も露骨に風当りキツすぎるしぃ~」

平乃「警視正の事は凄く懐いてるんですけど…確かに小衣さんより少しキツイですよねあの人」

コーデリア「当の弁護人である教官に対しても、酷く攻撃的でヒメの事だって…」

姫百合「ちょっとみなさん、女の愚痴会みたいになってますよ。今は捜査中でしょう?自重してください」

小林「ははは…それで、何か新しく分かった事はあるかな?」

咲「ふぅ~ん……分かった事…ねぇ」


平乃「昨日の時点で大方調べがついて、分かってきた事ばかりなので。今のところは新しい証拠はありません」

平乃「この大型車も、被害者の血痕以外の物は検出できませんでしたし…」

咲「逆に、これ以上何を調べろって言うのか~」

小林「…シャーロックが育てていたという野菜畑を見せてもらってもいいかな?」

平乃「ああ、はい。大丈夫ですよ」

咲「…前回の裁判で、アンタにアリバイがあった事で容疑も無くなったし。特殊捜査権限は問題なく発動するだろうしねぇ~」

小林(僕の容疑は晴れてたのか…)

平乃「それじゃぁ、案内しますね」




【川澄芸能事務所近く 秘密の野菜農園 午前10時08分】


ネロ「うわぁ…シャロ、これは無いよ…」

コーデリア「一人で育てていたからか、あまり立派とは言い難いですね」

小林「それは、ちょっと言い過ぎじゃないかな…」

姫百合「仕方ありませんよ。今は冬ですし」

ネロ「…そうだよ、なんでわざわざこの寒い時期に来たんだろうシャロ」

小林「まぁ、確かにそれはそうだけど…」

小林「何か、ここに手がかりとか無いかな?」




→【盛り上がった土】



コーデリア「教官!ここの土…何か不自然じゃありませんか?」

小林「…確かに、ここだけ土が柔らかい」

姫百合「誰かが掘り返した後ですかね?シャーロックさんでしょうか?」

小林「……何か埋まってるかもしれない。掘ってみよう」


ザクッザクッザクッ


小林「……ん?」

ネロ「あれ、これって…」

コーデリア「シャロのPDA…ですよね?」

姫百合「どうしてこんな所に……忘れたのでしょうか?」

小林「映像に映っていたシャーロックの様子からすると…何かに逃げてたようにも見えたからね」

姫百合「…もしかしたら、犯人からの通知が残されてるかもしれません」

ネロ「よし来た!それじゃぁ僕の出番だね!」ティロン♪

ネロ「KAMABOKO…よし、ロックはこれで解除!これでシャロの個人情報も赤裸々だよぉ~」

小林「…あまり良い気はしないな。シャーロックが黙秘権を行使してまで喋らなかった秘密があるかもしれないんだから」

コーデリア「今はそんな事を気にしている余裕はありません!少しでも手がかりを見つけないと!」

ネロ「今回ばかりはコーデリアの言う通りだよ。さてさて~?何か手がかりはっとぉ……あれ?」

姫百合「どうかしましたか?ネロさん」

ネロ「いやこれ、茉莉音から変なメールが来てるよ」

小林「……茉莉音さんから?」

ネロ「ほらこれ」





to:マリネちゃん

こんにちは、シャーロック・シェリンホードさん。お久しぶりです。

コンサートのチケット、人数分揃いましたか?

12月20日の午前二時に事務所の隣の空き地まで来てください。

コンサートの事について、相談したい事があります。






小林「……!」

小林「事件現場には、茉莉音さんが呼び出していたのか?」

コーデリア「…でも、何のために?」

ネロ「コンサートの事について、シャロだけ呼び出されるなんて意味が分からないけどなぁ」

小林「………これは、本人に聞いてみた方が良いかもしれないな」



証拠ファイル⑭天城茉莉音からのメール

【シャーロックを事件現場に呼び出したメール。待ち合わせ時間は午前2時】



姫百合「……まさか」

姫百合「天城茉莉音が犯人…何てことはありませんよね?」

ネロ「…信じたくないけど、ここまで来たら分からないよ僕も」

コーデリア「そっそんなわけ…ありません……と思う……」

小林(…彼女たちの自信が無くなって来てる)

小林(こんな時、シャーロックが居てくれれば…と思う自分が居る辺り。やっぱりこのチームは彼女が必要不可欠だったのだろう)

小林(………)




→【野菜】


ネロ「この野菜は…さすがに美味しくなさそうだよね」

姫百合「何でこれ…怪しいピンク色してるんですか?どんな育て方したらこんな色になるんですか?」

コーデリア「臭い…は……なんだか磯臭いわね」クンクン

小林「でも、シャーロックが丹精込めて作った野菜だ。そんな言い方はあまり感心しないな」

ネロ「じゃぁ小林が食べてみたら?」

小林「え?」

ネロ「シャロがこの野菜を内緒でここに作ったのも、おそらく小林の為だろうしさ」

姫百合「そうですね。まさか教え子が丹精込めて作った野菜を無碍にする人では無いでしょう?」

コーデリア「教官、毒見をお願いします」

小林「いっいやいや!ちょっと待って!そんないきなり言われても……あと、今ハッキリと”毒見”って言ったよね!?」

咲「ちょっと~?何騒いでるのぉアンタ達ぃ~」

ネロ「あっ、ちょっと小林がこの怪しい色した野菜を食べるって言うもんだから…」

小林「いや言ってない!何も言ってないよ僕は!」

咲「ああそれぇ~?一応調べたんだけどぉ~。何かよくわかんないカルシウムが検出されたんだよねぇ~」

小林「よくわからないカルシウム!?一体何なんだ!?それは!?」

咲「だからぁ~よくわからないって言ってるじゃん~。簡単に言えば、未知の栄養素~?」

小林「こっこれ…食べても大丈夫なの?」

ネロ「あぁーあ!そんな言い方は感心しないなぁ!僕!」

コーデリア「そうですわ!シャロが丹精込めて作った野菜を!」

姫百合「小林さん。最低です」

小林「えぇ……」

小林(何でここまで言われなきゃいけないんだ……)

4人「「「「……」」」」 ジー

小林「うぅ…」

小林「………」

小林「…わっ分かった。食べてみるよ…だからそんな睨まないでくれ」ガシッ

小林(うっ…本当に磯臭い。何なんだこれ…?本当に野菜なのか…?)

咲「あーイク?行っちゃう?」

ネロ「いけいけー!小林ぃ」

小林「………ええい」

小林「ままよ!」ガリッ


ボリボリボリボリボリ




コーデリア「…なっ…茄子なのにキュウリをかみ砕く音が?」

小林「…………」ボリボリボリボリ

ネロ「で、どう?小林。お味の方は」

小林「…………」

小林「…魚を加工した味がする…」

コーデリア「………」

ネロ「…………」

姫百合「…………」

咲「…………」

咲「…さーて、調査に戻りますか」

ネロ「僕、そこらへん調べてくるよ」

姫百合「私、もう一度平乃さんと話してきます」

コーデリア「私も、もう少しここら辺調べてみますね」

小林「ちょっと!?皆!酷すぎないか!?反応が!!!」




小林「さて…調べられるのはこの辺か」

コーデリア「結局…有力な情報は得られませんでしたね」

小林「警察が血眼で探しても決定的な証拠を掘り出せない程だからね。中々見つからないのも無理は無いよ」

咲「そーそー。もうこれ捜査と言う名の拷問だよぉー…新しい証拠が何一つ見つからないしさー」

咲「砂漠の中から1カラットのダイヤモンドを探すような感じー?…んで、結局何も無かったーみたいな」

平乃「そうですね…地道に捜査しても、これ以上の事は見つからないかもしれません」

咲「なーにか…壊れた証拠品でも出てくれば、直すのにモチベとか上がるのになぁー」

小林「壊れた証拠品…ね」

小林(確か、僕の持っている証拠品の中に一つあったような)



→証拠ファイル⑥壊れたカセットテープを突きつける


小林「あの、遠山くん。これなんだけど」

咲「んー?…これ、どこで見つけたー?」

小林「昨日、ある人が事務所内に偽装工作されてた部屋で見つけたという物なんだけど…」

咲「ふぅーん?……それ、事件に何か関係あるのー?」

小林「そっそれは…ちょっと分からないけど…」

咲「…まぁいいやぁ。ちょいとそれこっちに渡して。現場じゃないけど偽装工作から見つかったのなら何か関係ありそうだしー」

咲「とりあえずパパッと直してから返すわー。でも、中身見るのはこっちが先だよー」

小林「うん。それは問題無いよ」


→証拠ファイル⑥壊れたカセットテープを引き渡した!


平乃「あら?咲さん。何ですかこのテープ?」

咲「新しい証拠品だって~。今から直すから、道具持ってきて~」

平乃「ああ…はい!喜んで!」タタタ

姫百合「平乃警部、嬉しそうでしたね」

小林「新しい証拠品が見つかれば、そりゃぁね」


ネロ「で、これからどうするの?ここではもう証拠品は見つかりそうに無いけど」

小林「そうだね。留置所は……サイコパスの留置所って、頼めば入らせてもらえるのかな?」

コーデリア「今まで入れなかったのに、今回に限って入れますでしょうか?」

小林「…とりあえずこれも神津に聞いてみよう。警視正の立場なら面会くらいは許可が下りるかもしれない」

姫百合「…それよりも、事務所の中には入らないんですか?」

小林「事務所……」

姫百合「茉莉音さんからのメール。一応聞かなきゃいけないでしょうし」

小林「事務所…事務所かぁ。やっぱり入らなきゃダメかな…」

姫百合「いやいや!それは当然でしょう!偽装工作の部屋だって、まともに調べなきゃ…」

ネロ「一応、小林さぁ。BRのアイドル達に嫌われただろうしねぇ」

コーデリア「昨日の裁判で…プロデューサーさんを告訴してしまいましたし」

姫百合「あっ………」

小林「………いや」

小林「やっぱり、そこから逃げちゃ駄目だよね。うん」

小林「行こう。偽装工作のあったあの部屋へ」

コーデリア「きょっ…教官!よろしいのですか!?」

小林「いつまでもこのままチンタラしてる訳にも行かないからね。腹を括るよ」

ネロ「さすが小林。かっくぃいーねぇ」

コーデリア「…大丈夫なのでしょうか?」

姫百合「大丈夫…では無いでしょうね」

小林(…うう、覚悟を決めたのは良いけど…お腹が痛くなってきた……)




→【川澄芸能事務所 某時刻】



次子「おっ!」

次子「おおーっす!アンタら、やっぱり来たのかぁ!」

小林「つっ…次子くん」

小衣「…あん?あんたら、探偵どもじゃないのよ」

姫百合「小衣警部。今回は特殊捜査権限を行使して現場を調査させて頂きます!」

小衣「………」

小衣「…べっつに良いんじゃない?私たち、今から事務所に居たアイドルの取り調べするし」

小林(ううん…遠山くんの言う通り、かなり荒れてるな小衣くん…)


ガチャリ


藍川「ハイサーイ!BRの元気担当!藍川をセンターに取り調べに来ましたー!」

洲水「うるさいなぁ。元気担当は篠田もでしょ?二人もいらない……」

小林「…………」

洲水「…………」

小林「…やっやぁ」


藍川「ああー!!アッ…アンタは!プロデューサーを告訴した人!」

洲水「ここまで何しに来たの…?プロデューサーの犯行の偽装証拠でも作りに来たわけ?」ギロッ

コーデリア「ちょっと!教官がそんな事をするわけ無いでしょ!」

アーグニャ「Чёрт возьми!!собака!!!!!」

小林「いっいや…女の子がそんな言葉を言ったら…」

ジャッキー「………………バウ…」

栗野原「…………」グサッグサッグサッグサ

姫百合「うっ!!!むっ…胸が急に……!」

ネロ「ヒメ!?大丈夫!?」

栗野原「……チッ」グサグサグサグサ

姫百合「ぐああああああああああああ!!!」

ジャッキー「…………………」

洲水「アーグニャ!こいつらに塩撒いて!!」

アーグニャ「какана хуй!!на хуй на хуй!!」  ブンッ  ブンッ

バシュッ  バシュッ

コーデリア「ぎゃぁああああ!!目が!目がぁああああ!!」ジタバタ

小林「あっあの!止めて貰えないかな!?」

鬼瓦割「……ここまで来た事は褒めてやるぞクソ探偵」カツーン  カツーン


ガッシャァアアアアアンッ


鬼瓦割「今度こそ死ぬ覚悟は…出来てるんだろうなぁ?」バキ ボキッ ゴキリッ

次子「まっ待て待て!落ち着けって!さっきまで警視に怒られたばっかだろ!」

小衣「厳重注意されたばっかだってのに、いい度胸してるじゃない。良いわ、もっとやってやりなさい」

次子「こんっ…馬鹿っ!」ゴンッ

小衣「痛っったぁああああい!何すんのよ次子!!」

次子「はいストップストップー!一旦落ち着け!な?警察側はアンタらのプロデューサーが犯人だなんて一切考えてないから!」

洲水「でも篠田の事は犯人だと思ってるんでしょ?」ギロッ

小衣「そっ…それは……」

藍川「はいさぁーい!ストップストップ!今ここでまた私たちが暴れたら留置所に逆戻りだよ!」

藍川「折角、厳重注意で済んでくれたんだから。今は抑えて抑えて!ね?」

洲水「……………」

栗野原「…………」

アーグニャ「……………」

ジャッキー「…………………」

鬼瓦割「………チッ」


小林「……その、君たちのプロデューサーを告訴してしまった事は…謝ります」

小林「もし、本当に真田さんが無実だというのなら。僕たちは現場を調査して無実の証拠も揃えなくてはいけません」

洲水「………」

藍川「…それって、プロデューサーが本当は殺人をしてないって事?」

小林「そう……かもしれません。正直、アリバイ的にも殺人が可能なだけで決定的な証拠もありませんから」

小林「そのためにも、この事件の概要を教えて頂けたら大変助かります」

洲水「……………」

栗野原「…………」

鬼瓦割「………チッ」

カランカラーン

鬼瓦割「分かったよ。アンタらの質問に答えれば良いんだろ?来いよ」

洲水「…だけど、もしまたプロデューサーの殺人を立証するって言うなら。こっちはまた容赦しないよ」

藍川「まぁまぁスミスっち。例え天地がひっくり返ったって、あのプロデューサーが殺人するわけ無いじゃん!」

栗野原「………だろうね」スッ

アーグニャ「Да……分かりました」

ネロ「…ほっ、一時はどうなるかと思ったよ」

姫百合「あっ…胸の痛みが消えました」

コーデリア「うぅ…目が痛いくて開けられない…」

小林(…なんとかなった…のかな?)

小林「…ありがとうございます」

ジャッキー「………………バウ…」




→【真田Pについて】



小林「皆さんとプロデューサーとはどのような関係だったのか。それも踏まえて彼の素情を答えてくれませんか?」

藍川「…ん?んー?プロデューサーの素情?……プライベートの事までは分からないよ?」

藍川「でも、初めて会った時の事なら覚えてるよ!バックダンサーの練習の時、急に名刺を渡されてさぁ!もうあの時は焦って焦って!」

洲水「プロデューサーの素情ねぇ…家は横浜郊外のアリジェンヌってコーポ。滅多に家に帰ってないみたいだけど、大体事務所の第三スタジオ近くのシャワー室で済ましてるのを見るよ」

洲水「後、身長は195センチ。体重は78キロと、やや痩せ形かな。確か慶応大学卒業していてP業する前は…」

藍川「スミスっち。なんでそんな詳しく知ってるの?ちょっと怖いよ?」

洲水「…おっほん。初めて会ったのは他の芸能事務所の面接で落とされた時だよ。篠田もその時に会ったんだっけ」

藍川「あれ?そうだっけ?確か篠田っち、あっちの芸能事務所の内定蹴ってこっちに来たって聞いたけど?」

洲水「そうなの?そこまで詳しくは聴いてないから分からないけど…確かに一緒に居たよ?あの時」

洲水「篠田も、喜んで名刺貰ってたけど…受かってたなら、なんで?」

小林(………ん?)




【篠田久留美は内定を蹴ってこっちに来た事を覚えますか?】

→覚える

 覚えない



小林(…………)

アーグニャ「Это…ワタシがプロデューサーに出会ったのは、パパとママと逸れて迷子になっていた時デス」

アーグニャ「ワタシ、親の都合でロシアからニッポンに来ました。トーキョーで迷子になったトキ、一緒に探してくれたのがプロデューサーデシタ」

アーグニャ「ソレデ、パパとママもトテモ気に入ってワタシもキョーミがあったので、アイドルにナリマシタ」

栗野原「……私がプロデューサーに会ったのは、学校で苛められた時だね」

栗野原「その時は繁華街でグループに玩具にされて嫌な事犯罪めいた事までやらされそうになった時、プロデューサーが私に目をつけてくれたんだよ」

栗野原「あいつら、プロデューサーにビビって腰抜かして逃げてさ。チャンスだと思って私をプロデューサーのアイドルにして貰ったわけ」

栗野原「後ろにプロデューサーが居る事でアイツらも私にビビってるし、毎日続けた呪いの成果だと思ってプロデューサーには死ぬ程感謝してるよ……クケケッ」

鬼瓦割「…………俺は」

鬼瓦割「学校でサボってる時、声をかけられてな。警察か何かかと思って突っかかったら、反撃こそしてこなかったが意外に強くて」

鬼瓦割「そんでアイドルのプロデュース業してるって聞いて…なんだか笑っちまってよ。そのまま縁でアイドルになったって感じか」

鬼瓦割「…あんなに強い奴がこんなに必死になる職業だ。少なくとも俺はアイツを認めてる」

コーデリア「……なんだか、とても良い人そうですね」

姫百合「犯行が可能だったとしても、とても殺人なんてしそうにありませんけど…」

小林「うん。僕もそう思えてきた」

小林「………それじゃぁ次に」

小林「被害者である御子柴さんは、どのような人だったのかな?」




→【御子柴華子について】



藍川「御子柴ちゃん?うーん…私もあんまり喋った事ないからなー、部屋から出てこないし顔も覚えてない…」

洲水「BRの中では一番暗い感じの子だったよね。話しかけても話を切ろうとしてくるみたいな」

鬼瓦割「ただの根暗だろ。なんであんな奴がアイドルやってんのか不思議なくらいだ。俺は顔も知らねぇしな」

栗野原「私が言うのもなんだけどさぁ……本当に見た目幽霊みたいな子だったんだよ~…殺しても既に死んでいるみたいな?顔がちょくちょく変わるみたいな?」

アーグニャ「………ミコシバさんって誰ですか?」

小林(ううん…結構酷い評価されてるな被害者…)

藍川「あまり表にも出ようとしなかったし。なんで芸能事務所に入ったんだろう?」

洲水「確か篠田が連れてきたんだよ。親友と一緒に仕事したいからって、プロデューサーの前に持ってきてた」

藍川「持ってきてたって、そんな犬みたいな……でも、よくプロデューサーも許可したよね?」

ネロ「いやぁ、あの大男なら普通に許可しそうだけどね?僕から見てもそう思う」

小林「確かにそれは否めないけど…被告人が被害者を連れてきた…かぁ」

小林(親友同士なら、殺す動機も無さそうだけど…)

小林「……ん?」



【御子柴は篠田が連れてきた事を覚えますか?】

→覚える

 覚えない


小林(……………)

藍川「…そう思えば、御子柴ちゃんも結構謎な女だよねぇー」

藍川「ごめん探偵さん!篠田っちと仲が良かった以外にちょっち良くわかんないや!」

小林「……いえ、ありがとうございます」

小衣「…ああ、終わったの?次子、調査取った?」

次子「おう!バッチリだぞ小衣」

姫百合「ずっと人任せにしてたんですか…」

小衣「んじゃ、とっとと偽装工作の現場の調査に入るわよ。アンタ達は帰りなさい」

ネロ「はぁ!さっきまで僕たちの仕事を横聞きしておいて、よくそんなこと…」

小衣「うるさいわねー、邪魔なのよ!どっか行きなさいよ!こっちは忙しいの!」

コーデリア「なっ…!こっちだって!シャロを助けるのに必死なんだから!」

次子「いやぁ…それはごめんな?後で情報横流ししてやっから。な?」

小衣「あー!もー!良いからとっとと仕事に戻る!小衣達だけで、偽装工作なんてパパッと解決してやるんだからぁ!」

「いや、その必要は無い」

小林「!」

小衣「なんですって!一体だれ…が…………え…?」



神津「……随分と賑やかだな。ここは」

姫百合「…ハッ!?神津警視正!」ビシッ

次子「えっ?旦那!本部で会議してたんじゃないのか?」

神津「大方終わった。後は俺もここの調査に参加する」

小衣「うっ…うぇ!?警視…正も小衣と一緒に捜査するんですか!?」

神津「?そうだが」

小衣「……くっ…ふふっ…」プルプル

小衣「了解しました!」ビシッ

小衣「小衣!張り切って調査しちゃいます!事件だって解決してやるんだから!」ブンブン

小林(おお、すこぶる機嫌がよくなった)

神津「だから待て小衣。今はまだ現場に入るな」

小衣「うぇ!?」

神津「今からここで行われるのは科学捜査だ。指紋や消された血痕。どのような小さな手がかりも徹底的に探し出す」

神津「張り切るのは良いが、慎重に捜査をしてもらわんと困る。…分かるな?」

小衣「……はい!了解しました!」ビシッ

次子「久々の科学捜査かぁー…私、こういうのちょっと苦手なんだよなぁー」

小林「神津!」

神津「…どうした?小林」

小林「僕も一緒に捜査をしても良いか?事件の手がかりを少しだけでも集める必要があるんだ」

神津「無理だ」

小林「なっ…!?」

コーデリア「どっどうしてですか!?」

神津「人数が多すぎる。あの部屋の大きさでの科学捜査はこれくらいの人数が適任だ」

神津「悪いが、終わるまでお前を部屋に入れる事はできん」

小衣「ふん!まぁ、当然ね!科学捜査っていうのは、とぉーーーーっっっても繊細な作業なんだから!」

次子「…ってなると、科学捜査が難しい私は外で待機。後は二人で科学するってわけか」

小衣「そうそう!小衣と警視正と二人で科学捜査…ってえええええええええええええええ!!!???」ビククーン

神津「?一体何を騒いでいる」


小衣「こっここここここ小衣とけけけけけ警視せせせ正ががががせせ狭い部屋ででふふ二人でそそそそそ捜査ささ…!!////////」バクバク

神津「…小衣、大丈夫かそんなに震えて。無理そうなら次子に代わ―――」

小衣「やります!やらせていただきます!次子になんか任せられません!あんなぶきっちょ!!」ドンッ

次子「おい…それはさすがに傷つくぞ。乗り物の免許はいっぱいあるんだけどなぁー…どうもこういう繊細作業はなぁー…」

小林「…神津、なら…一つだけ頼んでもいいか?」

神津「何だ、情報なら言われなくても提供してやる。終わった後にな」

小林「それもそうだけど…。許可が欲しいんだ」

小林「サイコパス専用留置所の、面会許可を」

藍川「!!」

洲水「…プロデューサーと…面会できるの?」

神津「…なるほどな。確かに、許可が無ければ例え特殊捜査権限があろうともあの留置所には入れない」

神津「許可の要請は警視以上の階級の者が下せる…それを狙ったわけか」

小林「ああ。できれば…いや、絶対に今日入らなくてはいけないんだよ」

神津「……………」

神津「………まぁ、いいだろう」

神津「許可は出しておく。許可証は後でお前のPDAに送信しておこう」

コーデリア「!」

小林「ありがとう神津…恩に着るよ」

神津「俺としても、今回の事件は謎が多すぎるからな。探偵の手も借りたくなるさ」スタスタスタスタ

小林「………」

ネロ「やったね小林!これでシャロにも会えるよ!」

姫百合「ええ。例の黙秘権の事…これを明らかにしなくてはいけませんしね」

小林「…うん、そうだね」

小林(警視程の階級の許可が無ければ入れない程の留置所…恐らくそれは、トイズの力によっては危険な力も多いからだろう)

小林(少し、警戒した方が良いのかもな…)




【横浜サイコパス専用留置施設 某時刻】



ネロ「ふぅー…本当に警備厳しかったよ…」

姫百合「ここまで来るのに、何回自分の名前と住所を書かされたか分かりませんね…」

コーデリア「自分の名前が長い事に後悔したのは初めてです…」

小林「…でも、何はともあれようやくここまで来た」

小林「シャーロックとは、今日初めてのご対面だ」



ガタンッ!

ガタンガタンガタンガタンガタンッ!


ウィーン……パラパラパラ


シャロ「……………」

ネロ「!…シャロ!」


小林(髪を解き、ストレートなのは分かるけど…なんなんだ?あの服は…)

小林(鉄の鎖に包まれて…両目に眼帯…あれじゃぁトイズどころか身動き一つ取れないじゃないか…!)

小林(…ここの留置所は、ここまで拘束するのか!)

シャロ「……あっ!その声は!」

シャロ「先生!ネロ!コーデリアさん!そしてヒメちゃん!来てくれたんですか!」

ネロ「うん来たよ!シャロが捕まって来ないなんて有り得ないじゃないか!」

コーデリア「そうよ!私は貴方を助けに来たのよ!」

シャロ「あっ…たっ助けにきて…くれたのですか…」

小林「…シャーロック。分かっているとは思うけど」

小林「裁判でのあの黙秘権の事、喋ってくれるね?」

シャロ「……………」


→【黙秘権】


コーデリア「シャロ!どうしてあの時黙秘権を使ったの!?」

ネロ「そうだよ!おかげで余計にややこしい事になってるんだよこっちは!」

小林「ふっ二人とも落ち着いて…」

シャロ「…うっ…うぅ…」

小林「…シャーロック。何か、言いたくない事があって黙秘権を使ったんだよね?」

小林「それは、どうしても言えない事なのかな?」

シャロ「…………はい」

姫百合「…まさか、真犯人から脅されていたりとか」

シャロ「……………そっそれは…」

小林「…シャーロック。ここは横浜どころか日本で最も厳重な警備の下にある留置所だ」

小林「ここで君が言えない事を暴露しても、他に漏れる事も無い。僕たちも言わない」

小林「それでも…やっぱり言えない事なのかい?」

シャロ「……………」

シャロ「……分かりません」

小林「分からない?」


シャロ「だって…あんな事…実際にあった事なんて…とても思えません……」

コーデリア「思えないって…実際にあの場所で人が死んでいたのよ?」

ネロ「さすがに夢じゃないって思わないかな?そこは」

シャロ「……とっ…とにかく……私は分からないんです…!」

シャロ「あそこに行った理由も……野菜を見に行ったのは本当だけど…」

小林(……ううん、喋ってくれそうには無いかな)

小林(いくつか証拠品を突きつけてみようか)



→証拠ファイル⑭天城茉莉音からのメール



小林「シャーロック。事件当日、茉莉音くんから呼び出しのメールを貰っていたね?」

シャロ「!」

シャロ「どっ…どうしてそれを!?先生エスパーですか!?」

ネロ「野菜畑の土の中にシャロのPDAが埋まってたんだよ」

コーデリア「何があったか分からないけど…PDAを紛失するなんて感心しないわよ」

シャロ「えっえへへ~…やってしまいましたかぁ」

小林「…それで、茉莉音くんには会えたのかい?」

シャロ「…………会えませんでした」

小林「…会えなかった?」

シャロ「はい。茉莉音ちゃんに呼ばれたからって、コンサートのチケットは手渡しなのかな…って思ったら。誰も居なくて…」

シャロ「そのついでに、野菜の様子も見たんですけど。それでも茉莉音ちゃんは来なかったです」

小林「……そうだったのか」

ネロ「…………あのさ、シャロ」

シャロ「はい?どうしたんですかネロ?」

ネロ「あのメールさ、逆ハックして送信場所調べたんだけどさ」

ネロ「確かにあれは登録された茉莉音のアドレスだったよ。でも、場所が不可解だったんだ」

シャロ「不可解…ですか?」

小林「一体、どういう事なんだ?」

ネロ「匿名サーバーを使ってたんだよ」

小林「!」

コーデリア「!」


シャロ「匿名サーバー…って、なんですか?」

小林「…逆探知しても特定できない特殊なサーバーを使っていたって事だよ」

姫百合「顔なじみの茉莉音さんがシャーロックさんに通知を送信するのに、匿名を使うなんて考えられません」

コーデリア「それってつまり…送信主は茉莉音ちゃんじゃ無かったって事!?」

シャロ「っ!!?」






→証拠ファイル⑭天城茉莉音からのメールの情報を書き加えた

【シャーロックを事件現場に呼び出したメール。送信主は天城茉莉音ではなく、不明】



小林「つまり、シャーロックが事件当日に空き地に呼び出されたのは…完全に罠だったって訳か」

シャロ「…そ……そんな………!」

姫百合「…でも、なんで午前二時なんでしょうか?」

ネロ「普通は知人でも怪しくてこんな所にまで来ないよね?」

コーデリア「でも、現にシャロは来ちゃったじゃない」

シャロ「……うっ…ぅぅ……」ガクッ

小林「だけど、これでハッキリした」

小林「シャーロックは事件に巻き込まれただけ。そして事件を目撃した衝撃のあまりPDAを落としてしまった」

小林「犯人は証拠隠滅のためにPDAを土に埋めた……」

小林(……あれ?何で壊さなかったんだろう…)

シャロ「…でっでも!私、見てないんです!」

シャロ「被害者の顔を見ましたけど、あのひとが殺される所なんて!全然!」

姫百合「……………」

ネロ「…うう~ん…嘘は言ってなさそうだけど…」

小林「……でも、それは有り得ないよ。シャーロック」

シャロ「えっ…?」

小林「君が事件を目撃していた事は、この証拠品が証明している」




→証拠ファイル⑬隠しカメラの映像 を突きつける


小林「映っていたんだよ。空き地で何かを見て逃げ出す君の姿がね」

シャロ「…………!」

姫百合「法廷でも公開されましたから、知っている筈ですよね?シャーロックさん」

シャロ「………」

コーデリア「シャロも分かってるでしょ?教官には黙秘権も通用しないのよ」

ネロ「さぁさぁ、隠してる事全部ゲロって貰おうか?」

シャロ「……………」

シャロ「……」

シャロ「………先生」

小林「うん?何かなシャーロック」

シャロ「…私が……私が見た物………それを言ってしまっても……」

シャロ「先生は……居なくなりませんよね…?」

小林「…?」

コーデリア「シャロ?それは一体どういう事?」

シャロ「私…私が見たのは……御子柴さんが殺されてる光景じゃないんです…私が……見たのは……」






シャロ「先生が頭を潰されて殺されている光景だったんです…」






ネロ「!?」

姫百合「…なっ…!?」

コーデリア「きょ…教官が!?殺され…!?」

小林「…えっ?」

ネロ「なっ何言ってるんだよシャロ!小林は見ての通りピンピンしてるじゃないか!」

シャロ「そうなんです…だから…私も夢だと思って……安心して……」

シャロ「あの時の事は…悪い夢だと…そう思って…うっ……うぅ……」

小林「……………」

小林「…他には、何か見なかったのかい?」

シャロ「分からないです…その光景が怖くて…頭蓋骨が砕ける音が…恐ろしくて……!」

シャロ「嘘だと思って…思わずそこから逃げ出してしまったんです…」

小林「………そうだったのか」



→証拠ファイル⑮シャーロックの見た物

【事件当日、現場で見た物は被害者ではなく小林オペラが頭を潰された光景だった】




小林「答えてくれてありがとうシャーロック。大変だったね」

シャロ「うっ…うぅ……せっ…先生……!」グスッ エグッ

小林「…………」

小林(シャーロックが見たという僕が殺される光景。それを偽りとして映し出せるトイズは…)

小林(そして、それが可能な人物は……)

小林(………いや、何かおかしい)

小林(少なくとも……今のところ先生はアリバイがある筈…それに…)

小林(幻惑のトイズを喰らえば、シャーロックの動きはもっとおかしな事になるはず。それじゃぁ…?)



カンッカンッカンッカンッ


≪面会時間の終了です。被告人は、この後取調室5へと移動します≫

ガコンッ

ガコン  ガコン  ガコン   ガコン


ネロ「!シャロが…行っちゃう!」

シャロ「…先生ぇ!」ガララララララ

小林「………うん」

シャロ「きっと!きっとこの事件を解決してくださいね!お願いしますよ!!」ララララララララ……


ララララ………



ガタァァァーン………



ネロ「…………」

コーデリア「…………」

姫百合「……………」

小林「…うん。任されたよシャーロック」

小林「それじゃぁ君たち!早速現場に戻ろう!」

三人「「「はい!(了解!)(勿論!)」」」

小林(…僕の推測通りなら、この事件は……)

小林(おそらく、事件の真実は想像以上に複雑になっているのだろうか…)



【川澄芸能事務所近く 空き地 午後13時12分】



平乃「あっ!探偵のみなさん!」

咲「うぃーっす。修理、終わったよぉ~。例の証拠品~」

姫百合「ほっ本当ですか!?咲警部!」

咲「もちのろんだって~。……たださぁ~これちょっと…いや、すごくショッキングなんだけどさぁ」

小林「そっ…そうなのかい?」

咲「まぁ、それでも何もないよりはマシっていうかぁ~?被害者の声も入ってるしぃ~」

ネロ「…被害者の声?そういえば初めて聞くよね僕たち」

コーデリア「茉莉音ちゃんのグループの中にも見た事ありませんでしたから…。ポスターもありませんでしたし」

小林(…ポスターも無かった?どういう事だ?)

平乃「……ただ」

平乃「聞くのは…覚悟した方が良いかもしれません」

小林「?それは…どういう事だい?」

咲「…それは聴けば分かるっていうかぁ~。まぁ、深い事情は分かんないんだけどぉ~」

ネロ「そんな事は良いから、早く再生してよ」

平乃「……分かりました。では、いきますよ」カチッ



【テープの音声】


御子柴≪…………≫

御子柴≪……あはっ≫

御子柴≪あは…あはははははは…あは……≫

御子柴≪お母さん……お母さん…私ね?ねぇ、お母さん?≫

御子柴≪お母さん?私を産んでくれてありがとう?ね?≫

御子柴≪そして……ごめん…ごめんねぇぇぇぇぇ……!!≫

御子柴≪私…駄目だよぉおぉお!!もう……駄目だぁぁあー……!!≫

御子柴≪だってこの写真…!もう……もうこの写真…!!………うわぁぁぁぁああああ!!!いやだぁああああああ!!!!!≫

御子柴≪ごめんなさいごめんなさいごめんなさい助けて助けて助けて助けて!!≫

御子柴≪ねぇお母さん!聞こえてる!?聞こえてるの!?ねぇ!!この音声!本当にお母さんに聞こえてるの?!届くの!?≫

御子柴≪やだぁあああ!やだ…私……まだ……やりたい事が…………≫

御子柴≪……プロデュ……真…田……さん……≫

御子柴≪…………………………………………≫



ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ



御子柴≪……………………≫

御子柴≪……………≫

御子柴≪………≫

御子柴≪…≫




ブツンッ




ネロ「………っ!」

コーデリア「……っ!!」

姫百合「……………っ!」

小林「…こっ……これは……!?」

咲「…恐らく、死ぬ直前に被害者が最後に撮った音声だろうねぇー」

咲「この証拠品が裁判に通れば、間違いなく流れは大きく変わるんじゃな~い?」

小林「……………」



→証拠ファイル⑥壊れたカセットテープを書き加えた。

【被害者の部屋で真っ二つになっていた。中身の音声は、被害者の最後の音声が記録されている】



平乃「…正直言って、私はこんな残酷な事件。絶対に許せません」

平乃「真犯人を見つけたら、私が裁いてやりたいくらいです」

コーデリア「……………」

ネロ「…さすがのコーデリアも、言葉に出せない…かぁ」

小林「…………」

小林「このテープに、指紋とか検出されていないだろうか」

平乃「え?それは…今科学捜査している警視と小衣警部に頼んでみては」

姫百合「つまり、このテープの科学捜査は完了していないと」

咲「まぁ、そのような器具も無いしね~」

ネロ「急ごう小林!こんな事件、早く解決しなくちゃ!」

小林「ああ、勿論だ…行こうみんな!」

姫百合「了解!」

コーデリア「……りょ…」

コーデリア「了解です!教官!」ビシッ





【川澄芸能事務所  某時刻】


小林「神津!」

神津「…なんだ、小林」

小林「科学捜査の方は、順調か?」

神津「………いや」

神津「今のところは、発見時の時とは、あまり矛盾も無い被告人の指紋と被害者の血痕ばかり取れる」

神津「違和感のある場所と言えば、冷蔵庫に付着した被害者と被告人の指紋。壺には何も検出されなかった」

神津「…もう一つ、冷蔵庫にも血痕が付着し拭き取られた後もあった」

小林「……えっ!?」

神津「これは、弁護側にとっても不利な証拠だが。受け取るか?」

小林「…ああ。もっ貰っておくよ…一応」


証拠ファイル⑮冷蔵庫の血痕

【冷蔵庫にも血痕が付着していた。拭き取られた跡がある】


小林(…やっぱり、弁護側に不利な状況には変わりないか…)

小林(………ん?)

神津「まだ全ての場所を捜査したわけではないがな」

小林「…それじゃぁ、また一つ頼みがあるんだが…」

神津「なんだ?」

小衣「……ハッ!」

小衣「ちょっちょっと!勝手に小衣の警視を持ってかないでよね!!」

小林「ああ。見てほしいのはこの証拠品なんだが…」

小衣「コラァー!無視すんなぁー!!」



→証拠ファイル⑥壊れたカセットテープを突きつける


神津「…ああ、被害者の最後の記録のカセットテープか。これなら俺も見たが…」

小林「このテープに指紋が検出されるのか、調べてみてくれないか?」

神津「…………なるほど」

神津「確かに、真ん中から折ったように割れているテープだった。調べる価値はあるだろうな」

小衣「だから!小衣の警視を勝手に――」

神津「小衣、このテープに指紋が付着しているか調べてくれ」

小衣「了解しました!」ビシッ




小衣「!警視!」

神津「どうした?」

小衣「その……出てきたのは出てきたんですけど……手袋をしていて照合が出来ませんでした」

神津「そうか。どこの指だ?」

小衣「両手の親指です。間違いなくこいつは、真ん中からへし折るように…」

神津「分かった。ご苦労だった小衣。捜査に戻れ」

小衣「ハイッ!」ビシッ  トテトテ

神津「…という事だ。残念ながら、指紋の持ち主の判別は不可能だが」

神津「間違いなく誰かがこのテープをへし折った。そう断定できる材料は揃っているな」

小林「…ああ、ありがとう神津」



→証拠ファイル⑥壊れたカセットテープを書き加えた

【誰かが真っ二つにした。中身の音声は、被害者の最後の音声が記録されている】




姫百合「真っ二つ…間違いなく、人為的な物なのだとしたら…」

ネロ「一体誰が、こんな事したんだろうね」

小林「……………一人、思い当たる人物がいる」

姫百合「!」

コーデリア「そっ…それは!誰なんですか!?」

小林「これは、弁護士としてはあまり良くない事かもしれないけど…」

小林「いや、弁護士としてまだやるべき事を僕たちはまだしていない」

ネロ「ん?小林は弁護士じゃなくて探偵じゃないの?」

小林「そうだけど…”被告人”を弁護するのだから、今は弁護士でも良い」

小林(そうだ、まだ僕は…話を聞かなきゃいけない人に何も聞いてないじゃないか)

小林「もう一度、サイコパス専用留置所に向かおう」





【横浜サイコパス専用留置施設 某時刻】



ウィーン   ガコンガコンガコン


ガララララララララ


篠田「……あれ?誰?プロデューサー?」

小林「…………」

姫百合「プロデューサーさんは、貴方と同じ留置所の中でしょう?」

篠田「…あー!そうか!そういえばそうだったね!」

篠田「でも…まさか本当にプロデューサーが御子柴ちゃんを殺しちゃったの?」

小林「…………」

篠田「私、ちょっとまだ信じられません……でも」

篠田「名探偵さんが言うのなら、本当の事なのかもしれませんね」

篠田「それで、私に何か御用ですか!?」

小林「………実は」

小林「僕はまだ、弁護士としての大事な仕事を一つやり忘れていましてね」

篠田「? 何か忘れものですか?」

小林「ええ。弁護する為に、一番やらなくてはいけない事」

小林「貴方と、詳しく話をしていないなと思いまして」

篠田「……あれ?そういえばそうですね?」

小林「なので、私からもいくつか質問させて貰ってもよろしいですか?」

篠田「うん!もちろんだよ!」

篠田「なんでもどしどし聞いてきて!私はずっと名探偵さんの仲間だよ!」

小林「……ありがとうございます」



→【被告人】


小林「まず、どうして貴方がこの事件の被告人として警察側から告訴されたのか。心当たりはありますか?」

篠田「ううん…私はちょっと分からないなぁ?」

小林「…覚えていないのですか?」

小林「貴方は、部屋でジュースを飲んでいる時に気を失ったそうですね?」

篠田「あっ!そうそう。何故だかあのジュースを飲んだ瞬間、眠くなっちゃってー」

小林「それで、部屋には貴方しかいなくて僕は自然と貴方の弁護人になりました」

小林「…なんだか、僕が篠田さんを弁護するのが当然のような流れでしたね」

篠田「へぇー、なんだか運命を感じますね!」

小林「そう…かもしれません」

小林「しかし、なんだか引っかかるんですよ。この事件を目撃してから、ずっと」

小林「……ネロ、どんな感じだい?」

ネロ「……悪いけど小林、これ僕のトイズじゃ役に立たないよ」

小林「え?どういう事だ?」

ネロ「人間は、感情を働かせる度に脳から電気信号が走る。僕はそれを感知して考えてる事が少しだけ分かる事は知ってるよね?」

ネロ「多分…小林が感じてる違和感の原因は、これだと思う」

小林「…………」


ネロ「こいつからは、何も感じない」


篠田「え?何の話ですか!?」

小林「…いえ、なんでもありません」

小林「それじゃぁ、質問を続けさせて頂きますね」



→【真実】



小林「まず、一番謎だと思う部分から」

小林「貴方は、どうして御子柴さんの部屋でジュースを飲んだのですか?」

篠田「えー?警察の人にも言われたけど、なんでそんな事聞くんですか?」

篠田「だってあの時、部屋には御子柴ちゃんが居なかったから。暇だなーって思って冷蔵庫を開けてジュース飲んだんだー」

篠田「あっ!でも勝手にって訳じゃないよ?御子柴ちゃんの部屋の冷蔵庫は私と兼用だから!」

小林「…そうなのですか。しかし、そんな事はどうでも良いです」

小林「部屋に御子柴さんが居なかった…それは本当ですか?」

篠田「本当だよ!居たら早急に警察にも連絡するんだから!」

小林「…なら、おかしいですね」

篠田「?」

小林「もし、貴方が冷蔵庫を開けたのなら。これに気づかない筈が無いんですよ」




→証拠ファイル⑮冷蔵庫の血痕を突きつける


小林「冷蔵庫から、血痕が拭き取られた跡が検出されていました」

小林「おかしいですよね?事件現場は御子柴さんの部屋ではありません。ましてや冷蔵庫は御子柴さんの遺体から離れています」

小林「仮に付着していたとは言え、普通は拭き取りますでしょうか?」

小林「もし僕が偽装工作するなら、貴方が睡眠薬で眠った後にやりますが。冷蔵庫の血痕は拭き取りません」

小林「そうすれば、貴方の疑いがより深くなりますからね」

篠田「…………」

篠田「…つまり、名探偵さんは私に罪をなすりつけたいんですか?」

小林「いえ、そうではありません。仮の話です。真犯人の行動の仮定の話」

小林「しかし、状況的にこの血痕をふき取ったのは貴方の可能性が高いんです」

篠田「?」

小林「どうなんですか?篠田さん。話してみてはくれませんか?」

篠田「…………」

篠田「そんな事言われてもぉ…無かったものは無かったですし…」

ネロ「…………」

小林「…そうですか。分かりました」

小林「それでは、話を変えましょう」

小林「事件当日、深夜二時に貴方は真田さんに頼んで音響室で自主練習をしていた。間違いありませんか?」

篠田「あっはい!それは間違い無いですよ!ちゃんと許可も得ましたし」

小林「…しかし、それではこの証拠品と矛盾してしまうんですよ」





→証拠ファイル⑬隠しカメラの映像 を突きつける



小林「この映像には、貴方の姿が映し出されています」

小林「一時ポスター疑惑も持ち上がりましたが、そうでは無い事が裁判で判明してしまいました」

篠田「…うーん?ここって…喫煙席ですよね?」

小林「そうです。ここは喫煙席。事件現場もよく見えます」

小林「篠田さん、貴方事件当日ここに居たんじゃないですか?」

篠田「いやいやぁ!それは有り得ないですよ!だって私、煙草吸いませんし!」

小林「この場合、吸うか吸わないかは証言になりません」

小林「それに、貴方が喫煙室に居た事は目撃者が証言しています」

篠田「…………」ウーン

小林「…篠田さん。貴方本当に音響室に行ったのですか?」

篠田「…………」

篠田「…いやぁー…そっか。そこまでバレちゃうのかぁ」

小林「!」

篠田「実は、ちょっとだけ休憩しようとしたとき、真夜中の喫煙室が一番居心地良いんですよ!」

篠田「だから、映ったのは休憩していた時なんです!…言わなくて本当にごめんなさい。名探偵さんが不利になるかと思って…」

小林「…つまり、喫煙室には行ったのですね?」

篠田「はい。それは認めちゃいます!」

小林「……だとすれば、また矛盾が生まれてしまいます」

篠田「えっ?またですか!?」

小林「はい。貴方がこの現場に居たのなら…」

小林「この音が聞こえている筈ですよね?」




→シャーロックの悲鳴

 頭蓋骨の砕ける音

 怪盗ファンの足音




小林「実はこの場には、被害者の他に二人の人物が居ました」

小林「一人は事務所に泥棒を働こうとした怪盗ファンと、探偵の卵シャーロック・シェリンホードです」

小林「その二人は、被害者の頭が砕かれる音を聞いているのです」

篠田「ああ、それが御子柴ちゃんの?」

小林「はい。車に轢き殺された被害者の音です」

コーデリア「…………」

篠田「うーん…聞こえたとは思うけど、特に気にしなかったかなー…窓を見ていなかったし」

小林「それは、嘘ですね?」

篠田「え?」

小林「映像を見る限り、確かに窓を見ているようには見えなくもないですが、目撃者怪盗ファンの証言では貴方の顔はハッキリと見えていたそうです」

小林「まるでステージに立つ、天使のような笑顔だと」

篠田「…へぇ~。嬉しい事言ってくれるファンだね!」

小林「しかし、それは同時に貴方が窓の外を見ていたという証拠にもなります」

篠田「う~ん…でも、あまりよく見えなかったよ?」

篠田「事務所の隣は木で覆われていて、隣がよく見えないんだもん」

小林「……篠田さん」

小林「このカメラから見たら、とてもそうとは思えません。ハッキリと隣の空き地も移されています」

篠田「…………」

篠田「それじゃぁ、プロデューサーも同じじゃないかな?」

小林「……?」

篠田「だって、プロデューサーは二階の窓から空き地が見えたんだから。それならもっと見える筈だよ?」

小林「……残念ですが」

小林「この証拠品を見る限り、それは有り得なさそうです」





→証拠ファイル⑪空き地と事務所の間の木を突きつける


小林「この木は、上の別れ枝から生える葉の群によって良く見えない事があります」

小林「怪盗ファンも、わさわさの部分から見えない。とおっしゃっていましたしね」

篠田「………」

小林「つまり、真田さんが二階から見た。というのなら」

小林「彼こそ隣の空き地を見る事は不可能だったのですよ」

篠田「………………」

篠田「…それじゃぁ、やっぱりプロデューサーさんは犯人じゃないんですね?」

小林「…そうかもしれません」

篠田「良かったぁ。それじゃぁ、やっぱり犯人はシャーロックさんじゃないですか」

小林「……え?」

篠田「だって、プロデューサーが犯人じゃないなら。犯人はあの時逃げたシャーロックさんじゃないんですか?」

篠田「能力もサイコキネシス。トラックを動かすのに十分な能力ですよ!」

小林「……認めるのですね?あなたが事件現場が見えたという事を」

篠田「うん!…言ったら、名探偵さんの不利になるかと思って言わなかったんですけど」

小林「どんな不利な事でも、隠すことは止めてください。…本当に自分がやっていないのならね」

篠田「はい!分かりました!」

小林「…ちなみに、シャーロックはどうして事件現場に向かったか想像はつきますか?」

篠田「うーん、犯人なら御子柴ちゃんを殺そうとして来たんですよ!」

小林「………わざわざ殺すのに、ここまで大掛かりな事をするでしょうか?それに…」

小林「被害者も見ず知らずの人に殺されそうになったらさすがに抵抗する気がします」

篠田「?」

小林「…篠田さん、実は彼女はこの理由で現場に向かったのです」




→証拠ファイル⑭天城茉莉音からのメールを突きつける



篠田「茉莉音ちゃんのメールですか?」

小林「はい。彼女と天城茉莉音さんは交流があり、呼ばれればすぐ来るでしょうね」

篠田「へぇ、それじゃぁ茉莉音ちゃんが犯人って事なんですか?」

小林「いえ、そういうわけではありません。それに…このメールは差出人が不明なんですよ」

篠田「え?でもさっき茉莉音ちゃんのメールって…」

ネロ「匿名サーバーを使ってたんだよ。送り主は」

ネロ「だから多分、これは大きな組織が関わってる可能性だってあるわけ」

篠田「………へぇー。ちょっと分かりませんが、そうなんですか」

ネロ「……………」

小林「また、その時に彼女はとても興味深い物を見ています」

篠田「え!?それは一体なんなんですか?」

小林「……篠田さん」

小林「その前に一つ、被害者…御子柴さんのトイズを教えて貰えませんでしょうか?」

篠田「? どうしてそんな事を聞くんですか?」

小林「僕たちは、彼女のトイズを知らないまま調査を進めています。そのためにも、必要な事なのです」

篠田「…うーん、私も親友だけど良くわからないかなぁ…」

篠田「それに、女の子の秘密を探るのもあまりよくありませんよ」

小林「……真田さんなら、御子柴さんのトイズを知っているんですよね?」

篠田「……!」

小林「一応、トイズのデータは所持している事でしょうし。これは後でも良いんですが…」

篠田「…………むー。名探偵さんは意外とイジワルですね」

小林「それじゃぁ…知っているのですか?御子柴さんのトイズ」

篠田「うん。御子柴ちゃんは”顔だけを変える事ができる”トイズだよ。ちょっと不安定だけどね」

小林「顔だけを変える……」




藍川≪御子柴ちゃん?うーん…私もあんまり喋った事ないからなー、部屋から出てこないし顔も覚えてない…≫

洲水≪BRの中では一番暗い感じの子だったよね。話しかけても話を切ろうとしてくるみたいな≫

鬼瓦割≪ただの根暗だろ。なんであんな奴がアイドルやってんのか不思議なくらいだ。俺は顔も知らねぇしな≫

栗野原≪私が言うのもなんだけどさぁ……本当に見た目幽霊みたいな子だったんだよ~…殺しても既に死んでいるみたいな?顔がちょくちょく変わるみたいな?≫

アーグニャ≪………ミコシバさんって誰ですか?≫




小林(彼女たちの被害者の評価が散々なのは、このトイズが原因か)


小林(…しかし、だとしたら何故トイズを隠すような生活をしているんだ?)

篠田「それで、興味深い物ってなんですか?名探偵さん」

小林「…彼女は、事件当時被害者が死ぬ瞬間を見ていました」

小林「それは、僕が死ぬという光景だそうです」

篠田「え?でも名探偵さんは生きてるじゃないですか?」

小林「はい。なので彼女は”僕の顔に扮した被害者”の姿を見たんじゃいかと思われます」

篠田「え?…という事は」

篠田「御子柴ちゃんは、名探偵さんの顔になってわざわざ死んだって事にならない?」

小林「はい。確かにそうなります」

篠田「それじゃぁ、これは”自殺”とかじゃないのかな?」

小林「…どうしてですか?」

篠田「多分、御子柴ちゃん名探偵さんアンチだったんじゃないかなって思うんです。それで、わざわざ自作自演して――」

姫百合「待った!」

姫百合「だとしたら、顔を潰す意味が分かりませんよ!顔だけ潰されるなら…誰が死んだか分からないじゃないですか!」

篠田「え~?じゃぁ、一体なんの為~?」

小林「……篠田さん」

小林「彼女は確かにわざわざ死んだ。というような物でありましたが、自殺とは考えにくいんです」

篠田「?」

小林「それは…この証拠品からでも明らかです」




→証拠ファイル⑥壊れたカセットテープを突きつける


小林「このテープには、被害者の最後の言葉が残されていました」

小林「その内容は、まるで自分が死ぬ事を知っていて。死にたくない思いを残しているようでもありました」

篠田「…………」

小林「そして、このテープから被害者が抵抗をしなかった理由まで存在します」

小林「被害者は、テープを切る前に大量の飲み物を飲んでいたようですね。おそらく、睡眠薬入りの入ったジュースを」

篠田「…………」

小林「しかし、そうなると誰が運んだのでしょうか?」

小林「…つまり、誰かが御子柴さんに死ぬよう脅迫しトイズで車を動かした真犯人が居るのです!!」

篠田「……あの、ちょっと待ってください」

篠田「このテープの中身、本当に御子柴ちゃんの本心なんですか?」

小林「?どういう事ですか?」

篠田「だって、私たちはアイドルなんですよ?女優業だって珍しくありません」

篠田「演技の練習をしていたテープの可能性だってあるじゃないですかぁ」

小林「…そうかもしれませんね」

小林「しかし、この内容が真実だと裏付ける証拠があります」




→証拠ファイル⑤御子柴さんの写真を突きつける



小林「この写真に、二人の女性が写っています。御子柴さんとその母親です」

小林「そして、その母親の顔には大きく赤い×で顔が潰されています」

篠田「…………」

小林「御子柴さんは、誰かに脅されていたんじゃないですか?」

小林「そして母親を人質に脅迫され、このようなテープを撮った」

篠田「…………」

小林「更に、このテープは誰かの手によってへし折られていました」

小林「あのテープを撮り終えたのが御子柴さんが意識を失った後でしたら、へし折る事が出来たのは第三者です」

小林「このように悪意を持ってへし折る事が出来た人物……それは」





→篠田久留美(16)を突きつける



小林「真田さんは、御子柴さんの部屋の鍵を持っていなかった。故にこのテープをへし折るどころか発見する事さえ難しい事でしょう」

小林「事件当日、このテープをへし折る事が出来たのは、それ以前も部屋に入る事が出来た篠田さん…貴方しか居ないんですよ」

篠田「…………」

小林「…篠田さん」

小林「検察側の言う通り、この事件で最も怪しいのは貴方しかいません」

小林「顔の分からない御子柴さんとずっと一緒に居た貴方。僕からみても明らかにおかしい」

小林「それでも、まだ議論すべき箇所があるので認めたくはありませんが…」

篠田「…………」

小林「篠田さん、どうか本当の事を喋って下さい」

篠田「……………」

篠田「……そうですね」

篠田「もう、そろそろですし良い頃合ですか」

小林「?」

篠田「うん。まぁその通りだよ。私が一番怪しいかもしれませんね」

篠田「だって、御子柴ちゃんを殺す計画を立てたのは私ですから」

小林「!!」

姫百合「なっ……!」

コーデリア「なんですって…!?」




→【真犯人】



篠田「でも、直接殺したのは私じゃないんですよ。もう一人居たんです」

篠田「私のもう一人のお友達というのでしょうか。いえお仲間さんと言うべきでしょうか」

小林「その仲間は今どこに居るんですか!?」

篠田「やだなぁーまだお仕事中ですよ。わざわざ言う筈無いじゃないですかーあはは」

姫百合「仕事…!?」

コーデリア「そっ…そもそも!どうして御子柴さんを殺したんですか!?」

コーデリア「大切なお友達だったんでしょう!?」

篠田「んー、ちょっと違いますね。計画に使う道具みたいなものでした」

小林「……!!」

篠田「御子柴ちゃんの家庭知ってます?私から見ても結構エグイんですよ」

篠田「お父さんがギャンブル漬けで借金まみれになりまして。お母さんを日常的にDVしていたらしくて」

篠田「お母さんが一人で働いていたみたいですけど、とうとう身体にガタが来ちゃいまして働けなくなったんですね」

篠田「借金も返せない。もう借りれないもので御子柴ちゃん。実の父親にストレスのはけ口にされて純潔を実の父親に奪われまして――」

コーデリア「もっ…もう止めて!止めてぇ!」バッ

篠田「まぁ、そんなこんなで父親はヤーさんい捕まってバラバラにされて。借金だけ残されたお母さんと御子柴ちゃんは変態に売られてね」

篠田「一時期、変態倶楽部に身を置いて働いてたんですよ。人間扱いされてなかったみたいですけど」

篠田「それで私たちが彼女たちを計画の為に買いまして。借金もチャラにしてあげるからって言う事を聞かせる事にしたんです」

ネロ「…………」ギリッ

篠田「まぁそこからですね!私がプロデューサーに紹介して夢だったアイドルにしてあげたんですよ!数か月後には殺される事を約束してね」

篠田「そのためにも友達を作らない事に念を押しましたし警告もしたんですけど…御子柴ちゃん。プロデューサーさんに惚れちゃって」

篠田「最後の最後で悩んじゃって、寝れないからって睡眠薬まで差し入れしたのに最後にやっぱり死にたくないって言って……」

篠田「仕方無いから、最終手段取らせて頂きました」

小林「それで…あのテープを!!」

篠田「あれは御子柴ちゃんが勝手にやったことですよ。まさか隠して録音していたなんて」

篠田「私も部屋に入った時ビックリしちゃって…思わず折っちゃいました♪」



ダンッ

姫百合「どうして…どうしてそこまでして殺人事件を起こす必要があったんですか!!?」

篠田「それは私にも分かりませんよー。だって、上からの命令でもあったんですから」

小林「…!サイコパス……!!」

篠田「うん?あー知ってたんですね!いやぁ、前回前々回も失敗に終わってたんで。忘れてるかと思いましたけど」

篠田「おかげで、急いで殺人事件起こす必要があったんですよー。まぁ、私としても悲しかったんですよ?」

篠田「御子柴ちゃん。私けっこう好きだったんですから」

ネロ「何が……”好き”だ!!」ダンッ

ネロ「その無感情でそんな言葉口にするな!」

篠田「うーん。でもさすが名探偵さんですよね」

篠田「私たちの計画に、ここまでメスを入れて真実を透明にしてしまうんですもの」

小林「ああ、今まで違和感しかなかったからね…この事件」

小林「そして、君がこの事件の殺人に関わっている以上、無罪判決は絶望的な物になった」

小林「さすがの僕も、犯人の弁護は出来ても無罪判決は絶対にできない!」

小林「君は、受けるべき判決を受けるんだ!」バンッ

篠田「………それは、ちょっと困りましたね」

コーデリア「何が困りましたね…よ!人を殺したくせに!!」

篠田「一応、私たちの目的は最後まで小林オペラを裁判で勝たせること…なので」

篠田「それが達成しなくなるのは、ちょっと厳しいです」

小林「……何を、考えている?」

篠田「でも、大丈夫ですよ!ちゃんと手はありますから!」

姫百合「…どういう事ですか?」


篠田「それを話す前に、二つ程質問良いですか?」

篠田「今日、茉莉音ちゃんと美樹ちゃんに会いました?」

ネロ「……?」

小林「いや、これから会いに行くつもりだよ」

篠田「そうなんですかー。それじゃぁもう一つ」

篠田「今日、エルキュールさんが居ませんけど、何かあったんですか?」

コーデリア「何かあったって…昨日の裁判で伸びちゃったから…」

小林「……まさかっ!!」

プルルルルルルルルルルルル   プルルルルルルルルルルルル


ネロ「! 小林のPDAから…」

小林「非通知……!」


ピッ


小林「もしもし……」


???≪小林オペラさんですね?≫

小林「そうですが。貴方は?」

???≪申訳ございませんが、その質問には答えられません≫

小林「……それじゃぁ」

小林「天城茉莉音と法条美樹…エルキュール・バートンはどこだ?」

ネロ「!?」

コーデリア「!?」

姫百合「!?」

???≪…さすがは名探偵。もう私達の取引を知っておられる≫

小林「くっ…!それじゃぁ…やはり…!!」

???≪はい。お三方の命と、篠田久留美の無罪判決。それらと交換条件で取引しましょう≫

???≪もし、仮にも無罪判決を勝ち取れませんでしたら……≫


バンッバンッバンッ!!


小林「!!やっ…やめろぉ!人質には手を出すな!!」

???≪はい。存じ上げております≫

???≪それと…警察などに報告せず、ご内密にお願いいたします≫

???≪それでは、明日の裁判…よろしくお願いいたしますね≫


ガチャンッ   プー…   プー……




小林「…………」

ネロ「…………」

コーデリア「…………」

姫百合「…………」

篠田「私の弁護、引き受けて貰えますよね?小林さん!」

小林「…………」

篠田「まぁ、受けない選択肢は無いかもしれません!」

篠田「でも、だとすると真犯人は誰なんでしょう……プロデューサーの犯行が不可能だとしたら…」

篠田「……やっぱり私は、シャーロックさんが犯人だと思います」








コーデリア「この野郎ぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」








ダンッ   ダンッ     ダンッッッッ


≪面会室で規則違反が発生しました。被告人を収容します≫


ガラッ

ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ

コーデリア「このっ…!待ちなさい!!私が!!私がアンタを殺してやるわ!!私がぁあああ!!!」ダンッダンッダン

小林「コーデリア!止めるんだ!!」ガシッ

篠田「それじゃぁ名探偵さん!私の弁護!引き続きお願いいたしますね!!」ガララララララララララララ

篠田「私!信じてますからぁーーー!!」ガラララララララララララ



ララララ………



ガタァァァーン………




コーデリア「…うっ……うっ…うぅ……」ポロポロポロ


コーデリア「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」ポロポロポロポロポロポロポロ……


小林「……………」

ネロ「…どうするの?小林」

ネロ「まさか今回の依頼人が…こんな奴だったなんて」

小林「…………」

小林(そうだ。この状況は…一体どうすれば良いんだ…?)

小林(当然、篠田久留美を無罪判決にしてはいけない…しかし、そうなってはエルキュールと天城茉莉音さんと美樹さんが……死ぬ)

小林(でも、篠田さんを無罪判決にするとしたら…共犯者扱いされているシャーロックが…今度は…!)

小林「………とにかく、G4の所に行こう」

ネロ「!」

姫百合「でっ…でも、警察に話したら……何をされるか…」

小林「向こうの目的は、篠田久留美の無罪判決だ。それが目的だとしたら、そう安易に三人を殺すことができない筈だ」

小林「勿論、隠密に行動してもらう必要もあるが。この手が最善手だ…」

姫百合「………」

小林(…いや、何を弱気になってるんだ僕は!)

小林(まだ希望が潰えたわけじゃない。まだ可能性がある筈だ!)

小林(シャーロックかエルキュールか、二人のうち一人を選ばなくてはならない。そんな選択肢を避ける手が!)



【川澄芸能事務所 某時刻】



小林「神津!!」

神津「…小林か」

小衣「何?証拠品でも貰いに来たの?」

咲「悪いけど、あんまり有効な証拠は見つからなかったよぉ~…。さすがに謎だらけな殺人は伊達じゃないね~」

ネロ「今はそんな事気にしてる暇は無いんだよ!」

次子「おっおいなんだよ、そんなに慌てて…」

小林「…皆、聞いてくれ。僕は君たちに助けを求めたい」

小衣「はぁ!?何で小衣達があんたらの助けにならなきゃいけないのよ!」

姫百合「明智警部!これは深刻な話なのです!」

神津「…良いだろう。言ってみろ小林」

小衣「ええ!?ちょっとぉ!警視ぃ!」

小林「ありがとう。神津…」




小林(僕たちは、留置所で篠田久留美に聞いた事を全て話した)




G4「「「「………っ!?」」」」

平乃「それは…本当の事なんですか?」

咲「……マジ?」

神津「…小林、それは本当の事か?」

小林「ああ。おそらくは間違いない」

姫百合「先ほど、エルキュールさんの居る医務室に電話をかけさせて頂いたのですが…姿が確認されなかったそうです」

小衣「うっ…嘘……」

次子「…だったら、こんな所でチンタラやってらんねぇだろ!今すぐ横浜全警察に指令をかけて…」

小林「それはダメだ!奴らに警察が関与している事がバレたら…三人の身が危ない!」

咲「……否定できないよね。今までの事件からして、ヒョッとした拍子で殺されそうだし」

平乃「……………っ」

神津「……分かった。俺達だけで何とかしてみせる」

小林「…すまない神津。恩に着る…!」

神津「G4!今すぐ人質三人と誘拐犯の居場所を捜索だ!」

神津「小衣は指揮!次子は周辺の捜査、平乃も次子の後に続け。咲にはAからDまでの探索装置の使用の許可を与える」

G4「「「「了解!!」」」」

神津「…悪いが小林。情報の提供は明日の裁判に持ち越しだ」

小林「…ああ」

神津「G4!捜査開始!」


ダダダダダダダダダダダダダダダダダ……


小林「…………」

ネロ「…僕たちはどうするの?」

コーデリア「私たちも…エリーの捜索を!!」

小林「…その前に一つ…やらなきゃいけない事がある」





【横浜サイコパス専用留置施設 某時刻】



ガタンッ!

ガタンガタンガタンガタンガタンッ!


ウィーン……パラパラパラ



真田P「……………」

小林「…こんにちは真田さん。先日はどうもすみませんでした」

真田P「…!その声は…小林オペラさんですか?」

真田P「いえ、その…私も警察に補導されるのは初めてではありませんから…この身なりですし」

小林「………今回は、貴方への告訴を取り下げに来たのです」

真田P「…!?一体…どういう事ですか?」

小林「はい。全てをお話し致します」





→【理由】



小林(僕は、真田さんに篠田久留美に聞いた事を全て話した)



真田P「…まっ…まさか…!そんな……ことが…!!」

小林「申し訳ありませんが、事実です」

ネロ「そうだよ!あの女は全部だましてたんだ僕たちの事も!アンタの事も」

コーデリア「これは!見逃すことが出来ません!」

小林「篠田久留美は、サイコパスの仲間だった。そして御子柴さんは、彼女に脅されていた」

小林「それが、まごう事無き真実なのです」

真田P「……………」

真田P「……」

真田P「…小林オペラさん」

小林「はい、なんでしょうか?」

真田P「もしそれが本当の事だとしたら、私の告訴は取り下げないで貰えますか?」

小林「!?」

コーデリア「……えっ?」


小林「それは…どういうつもりですか?」

真田P「今、BRの人気の盛況の中にあります。その中で、メンバーの一人が殺人を犯したとなると」

真田P「事務所だけじゃない。そのメンバーにも大きな枷を背負う事となります」

真田P「彼女たちはここまで来るのに本当に努力したのです。私もプロデューサーとしてその努力は絶対に報われてほしい」

真田P「篠田さんの事は、先輩にもよく言っておきます。ですが、この時だけは…」

真田P「私に、全ての罪を押し付けてください」

小林「!?」

ダンッ

小林「そんな事…できる筈が無いじゃないですか!!」

真田P「…私は、彼女たちが一番のアイドルになる為なら。命を張る覚悟だってあります」

真田P「幸い、私のトイズは二つの事が可能です。車を動かすことも、人間を一人気絶させることも…触れずに行う事が出来ます」

真田P「私一人だけの犯行なら、事件の立証は難しくない上にシャーロックさんも潔白になる筈です」

小林「しかし…!篠田久留美はサイコパスで、御子柴華子さんも最後の証拠を…!」

真田P「良いんです。私は、彼女たちの努力を無碍にしたくありません」

真田P「私一人捕まれば全て丸く収まるのなら、喜んでこの身を牢獄に捧げます」

小林「…………(何で…)」

小林(何で僕は…この人を告訴してしまったんだ!!!)ダンッ‼‼‼


真田P「ですから…お願いです。私への告訴は取り下げないでください」

真田P「きっと、私が告訴されているこの時が裁判の役に立つ筈です。それに…」

真田P「私の告訴を取り下げれば、シャーロックさんやエルキュールさんの身が危ないのでしょう?」

小林「………………っ!!!」

小林(くそっ……くそっ!!!!!)ガンッ

真田P「私なら大丈夫です。刑務所の中でも彼女たちの姿はテレビで見られます。それだけでも十分幸せです」

真田P「ですから、あまり気を落とさないでください。どうか自分のやるべき事を…」

小林「……………分かりました」

小林「僕は、貴方の告訴は取り下げません」

ネロ「!?」

姫百合「こっ小林さん!?」

小林「しかし、”今は”……です」

真田P「………ありがとうございます。小林オペラさん」



カンッカンッカンッカンッ


≪面会時間の終了です。被告人は、この後取調室2へと移動します≫

ガコンッ

ガコン  ガコン  ガコン   ガコン


真田P「貴方の選択が、最高の結果をもたらすことを……」



ララララ………



ガタァァァーン………


ネロ「………小林、本当に大丈夫なの?」

姫百合「大丈夫…なんですか?」

コーデリア「………教官」

小林「……ああ」

小林(……もし)

小林(もし…彼が犯人として告訴されても…無罪判決を取れるだろうか…)

小林(そんな事を…考えてしまった……)

小林(……)

小林(もし…明日の裁判が最悪な方向へと転んでしまったら…僕は選択しなければならない)

小林(無罪判決を捏造し、シャーロックを冤罪にするか。有罪判決を勝ち取りエルキュールを見殺しにするか)

小林(更にエルキュールの方には茉莉音さんと美樹さんも居る)

小林(……そんな状況になった時、僕は…)

小林(選んでしまうのだろうか?悪魔に魂を売って…彼を…真田さんを…?)






小林(僕は、G4からの続報を待った)

小林(とにかく待って、待ち続けた)

小林(だけど、何一つ連絡が無いまま。いたずらに時間だけが過ぎていき……)

小林(とうとう、最後の裁判の時がやってきた……)

小林(12月23日…本来なら、アイドル達のクリスマスライブの有った日だ)

小林(その代わりに待っていたのは……膨大な”責任”と)

小林(”絶望” だった………)




【続く】

今回はこれでおしまいです。
次回までもうしばらくお待ちください

【証拠品の整理】



証拠ファイル①真田Pの名刺

【名前と連絡先と会社名が書かれている。何故か名前欄が小さい】


証拠ファイル②レッスンの先生の名刺

【名前と連絡先とスリーサイズと電話番号が書かれている。キスマークが大きく覆われている】


証拠ファイル③凶器?の壷

【中に被害者の血が溜まっていて、底に小さな穴が開けられていた】



証拠ファイル④割れたグラスとジュース

【篠田さんが飲んでいたと思われるジュース。中に睡眠薬が入っていた可能性が有り】



証拠ファイル⑤御子柴さんの写真

【写真には二人の人物が写っている。被害者と被害者の母親。母親の顔が赤い×印で潰されている】



証拠ファイル⑥壊れたカセットテープ

【誰かが真っ二つにした。中身の音声は、被害者の最後の音声が記録されている】



証拠ファイル⑦御子柴華子の解剖記録

【死亡推定時刻は12月20日午前2時前後。頭部を重量車のタイヤのような物で轢き潰されている以外に外傷は無い】



証拠ファイル⑧凶器のトラック

【事務所近くの空き地の上に放置されていた。血液は付着していたが、エンジンが動いた跡も指紋も無く、誰かが乗った痕跡が無い】



証拠ファイル⑨篠田杏子のトイズ

【”スローモー”視界に映った物の動きを遅く感じさせるトイズ】



証拠ファイル⑩睡眠薬

【被害者が常用していた。ジュースに溶かして飲んでいる】


証拠ファイル⑪空き地と事務所の間の木

【空き地からも事務所からも、この木が邪魔して見る事が出来ない】


証拠ファイル⑫等身大アイドルポスター

【クリスマスライブに出演するアイドル全員分の等身大ポスター。物販で販売する予定だった】


証拠ファイル⑬隠しカメラの映像

【事件当日、殺人の瞬間が記録されている。】


証拠ファイル⑭天城茉莉音からのメール

【シャーロックを事件現場に呼び出したメール。待ち合わせ時間は午前2時】


証拠ファイル⑮冷蔵庫の血痕

【冷蔵庫にも血痕が付着していた。拭き取られた跡がある】

7時くらいに投下します。しばらくお待ちください

投下します

【横浜裁判所 第二控え室 12月23日 午前10時22分】


小林「……」

小林(…結局、昨日別れたきりG4達との連絡は無い)

小林(いや、進展が無いと思った方が良いか。何かあれば連絡がある筈だからな…)

小林(彼女たち、そして神津の腕は確かだ。絶対にエルキュール達を連れ戻してくれる……)


ザザザザザザザザザザザザザザザザザ

ビュォオオオオオッ    ゴオオオオオオオオオオ      バリバリバリバリバリバリバリバリ



小林(………そう、思っていた)




小林(何で…なんでこんな時に台風が横浜に直撃するんだ!!)ダンッ

小林(警察の少数捜査では、多くの警察犬も派遣すると神津は言っていた。だが…この雨の中では当然犬は使えない)

小林(咲くんが使っているCPUの電波もこの状況だとかなり悪くなっている筈だ)

小林(雨で視界が悪くなっているだろうし移動も困難……こんな状況では…)

ガタッ

小林(彼女たちを見つける事さえ困難だ……)

白い髪の少女「それじゃぁ、どっちかを選ぶ決断はついたの?」

小林「…………」

白い髪の少女「選ばなくちゃいけないんでしょ?ピンクの子か、緑の子か」

白い髪の少女「私、昨日後悔する事になるかもって言ったよ。彼女を弁護する事」

小林「……君は…」

小林「全部…知ってたのか…?」

白い髪の少女「ううん。でも、変な人だって事は知ってたよ。だって」

白い髪の少女「明らかに普通の人とは違うもの」

小林「……………」

白い髪の少女「でも、彼女は私の姿が見えるようにはならないと思うよ」


白い髪の少女「死んだ女の子の方は最後に見えたらしいけど」

小林「……なぁ、ちょっと聞いていいかな?」

白い髪の少女「ん?」

小林「君は……誰なんだ?」

白い髪の少女「……んー、少なくともサイコパスでは無いと思うよ」

白い髪の少女「逆にサイコパスの人たちは私の所に来たがってるみたいだけど」

小林「……君の名前は?」

白い髪の少女「私?私の名前はね。ゾーイ・ヘ―――」

ネロ「小林!」

小林「!」

姫百合「…さっきから、誰と喋っていたんですか?」

小林「…………」

小林(…やっぱり、もう居ない……)

ネロ「それより、もう始まるよ。裁判」

姫百合「…被告人が間違いなく犯人の、ね」

コーデリア「勝てばシャーロックは殺人犯に――エルキュールは死―――」

小林「コッコーデリア!?だっ…大丈夫なのかい?凄い隈と目が真っ赤……」

コーデリア「大丈夫です……」


ダンッ

コーデリア「私が大丈夫じゃなかったら…!また誰かが悪い目に…!!」

小林「落ち着いて。とにかく落ち着くんだ」

小林「今回の裁判は、確かに僕たちは特殊な状況にある。しかし、やる事は至ってシンプルだ」

ネロ「?シンプルって…何をするのさ」

小林「とにかく僕たちはここでシャーロックを助ける。エルキュールは今はG4達に任せるしか無いしね」

コーデリア「…………」

小林「僕たちが今するべき事は、この裁判で一秒でも多くの時間を稼ぐことだ。G4が誘拐犯を取り押さえるまで」

小林「…今日僕たちは、証拠品とハッタリしか武器が無い。推理と真実は武器にならないと思った方が良い」

ネロ「……」

小林「…まぁ、弁護席に立つのは僕だけどね」

姫百合「あの……小林さん」

小林「うん、なんだい?」

姫百合「その事なんですが…」

姫百合「私を、弁護士助手として隣に置いてもらえませんか?」

小林「…え?」


コーデリア「!だっ…だったら!私も教官の隣で共に戦わせてください!!」

ネロ「僕だって小林と一緒に弁護させて貰うよ。自慢じゃないけど僕、嘘なら得意なんだ」

小林「いっいや…しかし、君たちは弁護士免許を持っていない筈だから…その…」

姫百合「弁護士の助手なら、免許が無くてもできない事は無い筈です」

姫百合「現に、場所は不明ですが霊媒師の方が弁護士の助手をしていたという記録もありますから」

小林(なっなんで霊媒師が…?弁護士と全く関係無い気が……)

ネロ「あー、そういえばマジシャンが助手してた時もあったらしいね」

コーデリア「検事とかダンボールで弁護士バッチを偽装した弁護士が弁護席に立った記録もあるのよね?」

小林(この国の司法制度が不安に思えてきた…)

ネロ「そういう事だから小林。僕たちも弁護席に立つから、いいね?」

コーデリア「嫌と言われても!一緒に戦いますから!」

姫百合「私も、シャーロックさんとエルキュールさんの為に!」

小林「……………」

小林「……」

小林(今回、僕たちがするのは時間稼ぎだ)

小林(真実を遠回しに意味のない尋問や嘘とハッタリで勝負する…それがどれほど危険な事かを分かってはなさそうだ…)

小林(……)

小林「…分かった。それじゃぁ、僕と一緒に戦ってくれるか?」

姫百合「!」

コーデリア「えっ…ええ!シャーロックとエルキュールの為ですもの!命に代えても戦ってみせます!」

ネロ「相手の検事もろとも…ギッタンギッタンにしてやろうよ!」

小林「いや…今回は検察側の告訴が正しいからギッタンギッタンにするのは…」

姫百合「しかし、検察側はシャーロックを告訴してますよ」

小林「……その誤解を解く事も、頭に入れておこうね」


プルルルルルルルルルルルル   プルルルルルルルルルルルル



ネロ「わっなっなに?」

小林「…!!G4からだ!」

三人「「「!!」」」




ピッ

小林「もっ…もしもし!!」

次子≪おう!電話の向こうに居るのは探偵の旦那か!?≫ザザザザザザザザザザザザザザザザザ

小林「ああ、そうだ小林だ!何か分かったのか!?手がかりが!」

次子≪…ああ、一応横浜市内のどこかに居る事は分かっているんだが、今はまだ小衣が分析中だ≫ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ

次子≪私が言いたいのはそうじゃなくて……≫ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ

≪だぁぁかぁぁらぁあああ!!ガキは家に帰ってなさいって言ってのよぉおおお!!≫゙ザザザザザザザザザ

≪やかましぃでぇええ!!ウチはなぁあああ!!師匠の為に証拠品んをぉおおおおっ!!あああああああ!!!≫ビュグォォオオオオオオオッ゙ザザザザザザザザザ

≪あああああ!!関西の名探偵さんが風に乗ってどこか飛んでいきましたよ!?≫゙ザザザザザザザザザ

≪……ちょっ…とうる……さ…いよ…ぉ~…電波悪く…て……全然…つなが……ない…しさ……ぁ…も……最…悪……≫  ブブブ  ブツッ  ブッ

小林「………」

姫百合「…………」

ネロ「………」

コーデリア「………」

次子≪…というわけで、たった今関西の名探偵が風に乗って空飛んでる≫゙ザザザザザザザザザ

ギャァァァァア……タスケテー……シショー………

次子≪あれ、あんた達と一緒に居る所見た事あるような気がするんだけど。何か心当たりとかある?≫゙ザザザザザザザザザ

姫百合「ありません。調査の方を続けてください」

次子≪おっしゃ!それは分かってるって!安心しなよ。絶対に三人共無事に連れて帰ってやるからな!!≫゙ザザザ  ブツンッ

ネロ「…何をやってるんだあの露出魔は…!」

小林「まだ…証拠品を集めてたんだね。なんでG4と一緒に居たのかは分からないけど」




「弁護人、間もなく裁判が始まります。入廷してください」

ネロ「!…とうとう始まったよ。小林」

コーデリア「……これで、全部が決まるんですよね…?」

姫百合「とにかく、私たちも小林さんと一緒に法廷で戦います。良いですね?」

小林「ああ…」

小林(…そうだ、これで全部が決まる)

小林(これが最後の裁判。…どんな最後を迎えるのか正直予想もつかないけど…)

小林(…………篠田久留美)

小林(僕が感じた違和感…それは本当にあの無感情からだったのか?いや違う。無感情とはもっと違う何か…)

小林(間違いない。彼女はもっと”別の何かを隠している”)

小林(あの時、僕たちに全ての真相を告げる必要は無かった筈だ。彼女には何のメリットも無い。あの状況ならどうとでも言い訳だってできたはずだ)

小林(だけど…篠田久留美はそんな事せずに平然とした顔でペラペラと喋った)

小林(……一体彼女は、篠田久留美は―――何を隠している?)







【横浜裁判所  第一法廷室】



ザワザワ…ザワ……

カッ!!


裁判長「これより!篠田久留美のサイコパス殺人の審議を再開します」

裁判長「弁護側、検察側、準備はよろしいですかな?」

北芝「検察側、準備完了しているわ」

小林「弁護側、準備完了しています」

姫百合「弁護士助手側。同じく」

ネロ「弁護士助手側、同じく完了しているよ」

コーデリア「弁護士助手!コーデリア・グラウカです!!」ビシッ

裁判長「…………」

北芝「………」

裁判長「……何やら」

裁判長「今日の弁護席は、いつもより賑やかですな」

小林「…今回は、予想以上の難事件だという事で。助手をつけさせて頂きました」

裁判長「え?…ちょっと多すぎでは?」


ネロ「異議あり!!」

ネロ「人数と事件の真実は関係ないでしょ」

裁判長「しかし…見る側にも弁護席が少し窮屈に見えますが」

北芝「……好きにさせなさい」

北芝「今回の事件、例え何人来ようが私に勝てる訳ないのだから」

ダンッ

北芝「せいぜい良い吠え面の練習でもしておくことね」

ネロ「なっなんだとぉ!小林に一回でも勝った事ないくせに!ボッコボコにしてやる!」

コーデリア「今日こそ割れ物の入っているダンボールで貴方をコテンパンにしてやるんだから!」

姫百合「ちょっとネロさん!コーデリアさん!安い挑発に乗りすぎです!」

北芝「……」ハンッ

姫百合「ほら!予想通りの吠え面したから、北芝検事が嬉しそうに喜んでるじゃないですか!」

小林(もう北芝検事は彼女たちを敵として見て無さそうだな…)


カンッ

裁判長「…それでは、北芝検事。再び事件のあらましを」

北芝「了解しました」

北芝「事件は事務所の隣の空き地で発生。被告人は被害者の顔を車で轢き潰し壺に押し込んで移動させた」

北芝「その時、この殺人事件の協力者が居ました。それはシャーロック・シェリンホード」

北芝「彼女がトラックを動かし、被害者である御子柴華子を殺害。その後逃亡しています」

北芝「これらは、神津く…玲警視正が提出した証拠品に全て記録されていますので、議論の余地は無いでしょう」

裁判長「ふむぅ…確かに議論の余地は無さそうですな」

裁判長「映像にも記録されていましたし。これはもう決定的です」

裁判長「もうここで、判決を下しても―――」

小林「異議!」

姫百合「異議あり!!」

ネロ「異議あり!!」

コーデリア「異議あり!!」

姫百合「まだ!明らかになっていない箇所があります!」

ネロ「そうだよ!シャロは昨日黙秘権を使っただろ!?」

北芝「…彼女は黙秘権を使った。つまりはそういう事よ」

ダンッ

コーデリア「いえ!もう彼女は黙秘権を使いません!全て赤裸々に答える筈です!」

コーデリア「私たちは!シャーロック・シェリンホードに尋問を求めます!!」

小林「………」

北芝「………」

裁判長「…助手なのに、弁護人よりも大きく主張しましたね」

小林「ハハハ……。とにかく…」

小林「確かに、シャーロックの黙秘権についても議論するべき所はあるかと思います。……しかし」

ネロ「しかし?」

小林「もう一つ、議論すべき重要な場所がある事をお忘れですか?」

北芝「…………」

小林「そうです。この証拠品の議論が、まだ終わっていないのです」




→証拠ファイル⑬隠しカメラの映像


裁判長「それは…決定的な映像に見えますが」

小林「議論すべき問題は、これが本当に”事件の起こった時の映像なのか”という事です」

コーデリア「…どっどういう事なのですか?教官」

小林「見ての通り、この映像の中には被告人とシャーロックの姿が映し出されています」

小林「しかし、この映像にはもう一人が映っていませんよね?」

北芝「………被害者ね」

ダンッ

小林「そうです。この映像には被害者が映っていない!つまり!」

小林「この証拠品に移された映像が事件当時の物であるかは、まだ確定されていないのです!」

北芝「異議あり!!」

北芝「じゃぁ、それをどうやって説明するって言うの?」

小林「………」

北芝「仮にその映像に映ってるのが事件当時じゃないとして…どうやって証明するの?」

北芝「それに、死亡推定時刻と合ってるのよ?映像の中の時刻は。そこはどう説明するの?」

小林「……一度」

小林「以前に提出された映像を、もう少し長い時間に切り取ってくれませんか?」

北芝「…!」

姫百合「…小林さん?」

小林「…大丈夫だ。僕を信じて」

北芝「………まぁいいわ」

北芝「係官!この映像、もっと巻き戻しなさい!」

北芝「そして、この弁護人に時間の無駄に対して説教してやるわ!」





【映像開始】




①何も無し


②何も無し


③場所は不明。だが窓からは空き地の光景が映し出されている


④窓の端には誰か分からない人影が立っている


⑤凶器と思われる車のような物が浮いてるかのように動き、途中で止まる


⑥人影は走って去ってゆく。


⑦部屋の中に誰か人影が。窓の光でその姿が被告人篠田久留美だと判明する


⑧急に被告人の姿が消え、怪盗ファンの姿が一瞬だけ映し出される


⑨何も無し


⑩何も無し


⑪車のような物が再び動き出す。が、すぐに止まる


⑫何も無し


⑬何かが一瞬横切る


⑭何も無し




裁判長「…………」

北芝「…………」

ネロ「……」ダラダラダラ

コーデリア「……」ダラダラ

姫百合「…………」

小林「………」

裁判長「…それで、弁護人」

裁判長「何か、おかしなところは見つけられましたかな?」

小林「………」

小林「君たちは、どうだったかな?」

ネロ「……ええと…車とか、途中動かなかった?」

コーデリア「……あっ!虫みたいなものが一瞬通り過ぎたじゃない?」

姫百合「……私も、二人の言う箇所には気づきました」

小林「…そうか」

小林「そう、これは重要なファクターだ」

北芝「…で?弁護人。大事なものは見つかったかしら?」

裁判長「見た所、変なところはほとんどありませんでしたが」

ネロ&コーデリア「「…………」」ダラダラダラダラ

小林「…………」

小林「…それでは、お答えしましょう」

小林「この映像に映っていた、不可解な部分とは――!」






→⑬何かが一瞬横切るを突きつける





小林「…一瞬、窓に何か通り過ぎましたよね?」

北芝「…通り過ぎたわね。で?」

小林「この、通り過ぎた物を加工して見えるようにはなりませんか?」

小林「もし、通り過ぎたコレが第三者の人物であった場合もしくは」

小林「被害者もしくは被告人だったら…この映像は検察側の推察とは異なる事となります!」

北芝「………」

小林「さぁ!北芝検事。この映像の明度を上げた物を提出してください!」

北芝「………貴方」

北芝「今、とんでもなく追い詰められてるわよね?」

小林「…………(うぅ…さすがに見抜かれるか…)」

北芝「…まぁ、車が二回動いたことに突っ込まなかったのは褒めてあげるわ」

ネロ「!そうだよ小林、どうしてそっちの方を指摘しなかったのさ!」

小林「…ネロ、車が上に乗っている遺体を移動させるにはどうすれば良いと思う?」

ネロ「そりゃぁ一度車を動かして……あっ」

北芝「それは幼稚園児でも分かる事。もし指摘したら速攻叩き潰して閉廷を要求していたわ」

小林(あっ…危なかった…!)ダラダラ

ダンッ

北芝「良いわ。要求を呑んであげる」

北芝「そこのあなた!今すぐ映像の明度を上げなさい!」

係官「了解!」





小林「…………」

コーデリア「…………」

北芝「…弁護人。満足かしら?」

北芝「これが、貴方の求めていた答えよ」

ネロ「………」

姫百合「………」

裁判長「こっ…これは…!」

裁判長「……ただの、犬ですな。やけに大きい種類のようですが」

北芝「事件当日、現場である事務所に居た貴方ならこの犬が何なのか分かるわよね?」

小林「…は…はい……」

北芝「この犬は、事務所でプロデューサーとアイドルが合意の上で飼っている大型犬。名前は”ジャッキー”というそうです」

北芝「見ての通り、事務所の犬が散歩しているだけの映像に見えますよね?」

裁判長「ええ。影でこそ人間が四つん這いで移動しているようにも見えない事は無いですが」

裁判長「ハッキリ見えるとなると。どう見てもお犬さんですね」

北芝「そういう事です」

ダンッ

北芝「つまり、先ほどの弁護人の異議は……」

北芝「全部時間の無駄だったのよ!!」ドンッ

小林「うっ……」

小林「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」ガガーン





ザワザワザワ…ザワ……

カンッ


裁判長「…弁護人。何か弁明もしくは異議は?」

裁判長「もし無ければ、もう判決に行かせて頂きますが」

ネロ「どっどうすんの小林!このままじゃ負けちゃうよ!」

姫百合「このままですと…シャーロックさんはおろか…エルキュールさんも…!」

コーデリア「……っ!」

小林「…うっ…うぅ……」

小林(考えろ…考えるんだ…!今は真相の事は気にしなくていい!)

小林(この裁判を長引かせる為の…!なんでも…何かでまかせでも!!)

裁判長「…どうやら、もう無さそうですな」

裁判長「それでは、被告人と共犯者の判決を――」

小林「異議あり!!」

ダンッ

小林「まだです!まだ、議論すべき事があります!!」

北芝「…あなたはさっきまでのやりとりを覚えていないというの?」

北芝「議論すべき事?そんなものは……無いっ!!!」ダンッ

北芝「さっさと諦めて帰って寝ろ!!」

小林「いや、まだあります!!」

小林「先ほど判明した事で、もう一つハッキリするべき事実を!!」

カンッ

裁判長「…そこまで言うのなら提示してもらいましょう」

裁判長「先ほどの映像で、もう一つハッキリさせるべき事実とは?」



→車の機種

 ジャッキー君の散歩時間

 篠田久留美の影




小林「…そもそも、どうして事務所の犬ジャッキー君はこの時間に空き地近くに居たのでしょうか?」

北芝「散歩でしょ」

裁判長「散歩でしょうなぁ」

姫百合「散歩以外に何かあるんですか…?」

ダンッ

小林「そう、確かに散歩していた…それだけかもしれません」

小林「しかし!問題なのは”時間”です!」

小林「犬は、基本散歩する時間を朝と夜と覚えているものです。一匹で散歩する者ならなおさら」

小林「もし、この散歩時間と犯行時刻にズレがあったら…」

小林「検察側の立証にもズレがあった事になります!!」

北芝「…………」

裁判長「…………」


「……………………」


小林「……………(あれ?)」

北芝「…貴方」

北芝「犬の散歩時間にケチつけて、検察側の立証が覆されると…?」


ドダンッ

北芝「どれだけ警察を馬鹿にしてるんだお前はっ!!!!!!!!!!!」

小林「しっしかし!これもハッキリさせる必要が……」

北芝「必要ない!!全っっ然必要無いわこの三流探偵!!裁判長!!今すぐ判決下してやりなさい!!」

裁判長「……………」

裁判長「……弁護人」

小林「…はっ、はい……」

裁判長「それは、本当にハッキリさせた方が良いのですか?」

小林「………………」

小林「…少しでも、疑問が少ないまま裁判が終えたらと…」

裁判長「失礼。質問を間違えたようですな」

裁判長「それは、本当に”必要な事”なのですか?」

小林「…………………はい」

裁判長「…分かりました。弁護側の異議を認めます」

北芝「!?」

小林「あっ…ありがとうございます!」

北芝「このっ…!どれだけ無駄な時間を…!」

コーデリア「黙りなさい!今の私たちにはその無駄な時間が必要なのよ!!」

ネロ「そーだそーだ!」

姫百合「やめてください!無意味な煽りは!」

小林(うぅ…ごめん。北芝検事…)

小林(これも神津と……彼女たちを救うためなんだ……)

カンッ

裁判長「それでは、一体誰を召喚するのですか?」


小林「…………」

小林「一番ジャッキー君の世話をしていたのは誰でしょうか?」

北芝「はぁん!?知らないわよそんなの!プロデューサー業してた奴らじゃないのっ!?」プンスカッ

ネロ「確かに事務所で飼うなら四六時中居るのはプロデューサー業の人たちだよねぇ?」

コーデリア「真田さん。犬の世話も一生懸命しそうですものね」

小林「ああ、確かにそうなんだけど…」

小林(あんなにアイドルを抱えて、犬の世話も両立できるのか?)

裁判長「弁護人。早く答えてください」

小林「…………」

小林「…川澄プロデューサーに尋問させて頂きます」

コーデリア「川澄プロデューサーって……茉莉音ちゃんの担当の…」

カンッ

裁判長「…分かりました」

裁判長「係官!川澄綾子を証言台まで!」





プロデューサー「…………」

北芝「証人、名前と職業を」

プロデューサー「…ええと、名前は川澄綾子。プロデュース業のリーダーさせて貰ってるわ」

プロデューサー「それで…どうして私がここに…?まさか、私も疑われてるの?」

小林「いっいえ。貴方にはアリバイがありますから」

プロデューサー「そっかぁ、良かったぁ」ホッ

プロデューサー「…あれ?それじゃぁ、どうして私はここに呼ばれたんだ?」

小林「はい。貴方が今回証言して貰うのは」

小林「”ジャッキー君の世話”についてです」

プロデューサー「……………」

小林「…………」

プロデューサー「……はい?」


プロデューサー「え?ちょっ…何?一体何の議論してるの?今。え?え?殺人だよね?ウチのアイドルの」

北芝「…まぁ、そう考えるでしょうね」

小林(…まぁ、そう考えるだろうなぁ…)

裁判長「…あまり深い事は考えなくても大丈夫です」

裁判長「それでは証言してください。愛犬ジャッキー君の世話の記録を」

プロデューサー「良いけど……いいの…?」





【証言開始】



①最初に子犬だったのを真田君が拾って来たんだよ。あの時は両手で抱えられるくらいの大きさだったのに…


②まさか数ヶ月であんなに成長するなんて…


③昼間はアイドル達が遊んであげてるよ。おやつをあげたり散歩させたり上に乗ったり


④ごはんはドッグフードと缶詰と混ぜて出してるわね。


⑤散歩は最近は勝手に一人で行くようになったわ。朝の7時と夕方の8時の二回だったかしら


⑥他は寝てるとかだから…基本的に吠えないし大人しくて良い子だよ




小林「……………」

裁判長「…なるほど。散歩は朝の7時と夕方の8時ですか」

北芝「まぁ、犬として妥当の散歩回数よね」

プロデューサー「と言っても、基本繋げてないから勝手に行くんだけどね。時間きっちり帰ってくるのよこれが」

姫百合「確かに、利口そうな犬でしたものね」

小林(無感情のようにも見えたけど…)

裁判長「…それでは弁護人、尋問をお願いします」




【尋問開始】




①最初に子犬だったのを真田君が拾って来たんだよ。あの時は両手で抱えられるくらいの大きさだったのに…




小林「待ってください!」

小林「…つまり、ジャッキー君は子犬の時から事務所に居るのですか?」

プロデューサー「そうそう、最初は美樹も茉莉音もマネージャーも可愛い可愛い言いながら世話してたんだけど」

プロデューサー「二週間くらいだったかな…?その時から机から顔を出せるくらいに大きくなって」

プロデューサー「その成長速度に茉莉音が少し引いてたな。真田君は最後まで気づかなかったようだけど」

小林「そっ…そうなのですか」

プロデューサー「いや本当あれ何の種類なんだ?子犬の可愛い時期が一瞬で通り過ぎたような感覚だよ」

北芝「ふっふん。あんな大きい犬なんてまだまだよ。所詮は犬よ!犬なのだわ!」

小林「あの、北芝検事。一体何を…」

北芝「はぁ!?アンタ私が犬に身長で負けた女とか思ってるんでしょ!?それも二週間の成長に負けたとか思ってるんでしょ!!」

ネロ「だって実際小さいじゃん!シャロや小衣よりも小さいよアンタ!」

コーデリア「椅子に座るのも一苦労じゃなくて!?」

北芝「ムッギィィイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」

小林(北芝検事…背伸びしても机の上、覗けそうにないもんな)

小林「それで…ジャッキー君は今何歳なんですか?」

プロデューサー「うーん…まぁ強いて言うと思っている以上に年は取ってないよ?でも…」




②まさか数ヶ月であんなに成長するなんて…



小林「待ってください!」

小林「数ヶ月で成長?という事は…まさか……?」

プロデューサー「うん。多分一歳半くらいじゃないかな?いや、まだそこまで行ってないか」

小林「……………」

小林「ぇぇぇぇえええええええええええええ!!!!」

姫百合「ぇぇぇぇえええええええええええええ!!!!」

ネロ「ぇぇぇぇえええええええええええええ!!!!」

コーデリア「ぇぇぇぇえええええええええええええ!!!!」

裁判長「という事は……人間の年で数えてもまだ7歳にもなっていないのですか」

プロデューサー「そういう事だね。なんだか真田君みたいだな!はっはっは!」

北芝「7歳…7歳に負けたの…?私は……7歳に…」ブツブツブツブツ

小林(おっと、北芝検事が病み始めたぞ。話題を変えた方がよさそうだな…)

小林「…ジャッキー君との慣れ始めは分かりました。そろそろ世話の方に移ってもらえませんか?」

プロデューサー「おっと、ちょっと脱線しちゃったかな?ごめんごめん」

北芝「7歳…犬とはいえ7歳…いや犬に負け……ううん、犬の年齢は一歳半…人間の年では……7歳……」ブツブツブツ

小林(まだ言ってる……)




③昼間はアイドル達が遊んであげてるよ。おやつをあげたり散歩させたり上に乗ったり


小林「待ってください!」

小林「アイドル達が遊んであげてたのですか?もう少し詳細を証言できますでしょうか?」

プロデューサー「証言って言われても…そんな大した事じゃないよ?」

プロデューサー「ボールで遊んだりとにかく撫でられたりモフられたり枕の代わりに……って、よく考えたら遊んでたのほぼアイドル達だな…」

小林「紐で繋げていないと言いましたよね?それなら、どうやってアイドル達は散歩させていたのですか?」

プロデューサー「今考えると、あれはジャッキーの散歩じゃなくてアイドルの日向ぼっこだな」

小林「日向ぼっこ…?」

プロデューサー「ジャッキーの上にのって寝転がり、そのまま外に出て馬に寝そべって乗って散歩。スタイルとしてはそんな感じだったかな」

ネロ「どうしよう小林…それやってみたいよ!」

姫百合「確かに…気持ちよさそうですね」

小林(…ちょっと良いなと思ってしまった)

プロデューサー「後お菓子は、基本何でも食べてたからなぁー。骨とかは5分で噛み砕いて無くなっちゃうんだけど」

北芝「…アリゲーターか何か?」

小林「あの、おやつの事に関しては言わなくても大丈夫です」

プロデューサー「ああ、そうなの?それじゃぁ…」




④ごはんはドッグフードと缶詰と混ぜて出してるわね。


小林「待ってください!」

小林「あの…食事の事に関しても大丈夫ですから!」

プロデューサー「ええー…でも、世話と言ったらエサは大切でしょう」

小林「それは…そうですけど……」

小林「……それじゃぁ、ごはんの時間は大体何時程でしょうか?」

プロデューサー「ん?ええと、確か……散歩の後だから…」

プロデューサー「散歩が終わった時間と、ほとんど同じだな」

小林「………(来た、散歩の証言だ…)」

小林(この証言だけは、とことん揺さぶらなければ…!)

小林「…散歩の事について、詳しく証言をお願いします」

プロデューサー「ん、分かった」




⑤散歩は最近は勝手に一人で行くようになったわ。朝の7時と夕方の8時の二回だったかしら



小林「待ってください!」

小林「…本当に、その二回だけですか?」

プロデューサー「? まぁ、その時間帯以外の散歩は難しいからね。勝手に一匹で出歩くと言っても限度があるよ」

小林「その…例えば、深夜に勝手に出歩いた。という事は?」

プロデューサー「え?いやそんな事は無いと思うけど…深夜なんて、普通に寝てる時間じゃないの?」

小林「しかし、事件当日の犯行時刻。ジャッキー君は殺人のあった空き地に居ます」

小林「毎日、二回散歩している犬が寝ている時間を割いてまで勝手に歩き回るのは、おかしいと思いませんか?」

プロデューサー「え?」

プロデューサー「…あの、こういう時はどう答えれば良いのかな?」

北芝「今弁護人が質問している内容は、悪魔の証明のようなものよ」

北芝「まじめに答える必要は無いわ」

プロデューサー「…うっ…ううん…確か…事件当日事務所に居たプロデューサーは真田くんだけだから…」

プロデューサー「ちょっと聞いてみるわね。ねぇ、真田君?」

真田P「………はい」

ネロ「…どうするの小林?もしこれで有力な情報が手に入らなかったら」

小林「………(うぅ…またお腹が痛くなってきた…)」

プロデューサー「ジャッキーさぁ、深夜に外歩いてた?」

真田P「…あっ、はい。私は帰って来た時間しか知りませんが」

プロデューサー「ふぅん、それは何時くらい?」

真田P「……………」

真田P「帰って来たのは、深夜の2時半くらいです」

真田P「そういえば、ジャッキーさんは何か咥えていたような気がします」

小林「……え?」

プロデューサー「咥えていた?それって一体…」

ダンッ

姫百合「そっそれは一体!何なのですか!?」

コーデリア「真田さん!答えてください!」

真田P「…落ち着いてください。言われなくても喋ります」


真田P「確かあれは…ピンク色のPDAだった気がします」

小林「!」

姫百合「ピンク色の……」

コーデリア「PDA………」

ネロ「………シャロのだ」

ダンッ

小林「シャーロックのPDAは野菜農園の中で見つかっています!」

小林「もし!ジャッキー君が加えて持ってきたというのなら!誰があそこに――」

真田P「多分それも、ジャッキーさんでしょうね」

小林「えっ」

真田P「そのまま、私に渡すこと無くジャッキーさんはPDAを咥えたまま外へと行きました」

真田P「しかし、再び戻ってきた時にはPDAは既に咥えていませんでした」

小林「…………つまり…それは…」

プロデューサー「ジャッキーが宝物だと思って埋めちゃったんだ」

ネロ「…………」

コーデリア「…………」

姫百合「おっ…思わぬ所からの伏線でしたね……まさか犬の仕業…だったとは…」

北芝「………そう」

北芝「それじゃぁ、検察側の主張は一切揺るがなかったってことね」

コーデリア「どっどういう事なの?」

北芝「犬がシャーロックのPDAを咥えて事務所に戻って来たという事」

北芝「そして、戻って来たのは2時半。これが何を意味するか」

小林「…………ぅぅ…」

ダンダンッ

北芝「シャーロックは事件当日、そして犯行時刻に間違いなく事件現場に居た」

北芝「被害者を殺せたのはシャーロック・シェリンホードしか居ない!!」

小林「異議!!」

小林「しかし!ジャッキー君が帰って来たのは午後の二時半…!」

小林「犯行時刻にズレがあった可能性は、十分にあります!!」

北芝「異議あり!!」

北芝「その可能性を示す証拠を出しなさいよ証拠!!」ダンダンッ

北芝「そんな口先だけの水掛け論じゃ!裁判が一向に進まないのよっ!!!」ダンダンダンダンダン

ネロ「どうするの小林!結局シャロのPDAが埋められてた理由が分かっただけじゃん!」

小林「ウッ!そっ…それはそうなんだけど……」


裁判長「…どうやら」

裁判長「シャーロック・シェリンホードを実行犯として認めても、特に問題無いようですね」

小林「異議!!」

小林「まっまだそのような事を認めては!軽率だと思います!」

裁判長「…どこがでしょうか?」

裁判長「ここまで証拠が揃っていれば、最早一目瞭然と思いますが」

小林「しっしかし…!」

北芝「…裁判長」

北芝「この男は、よっぽど自分の教え子の罪を認めたくないと思われるわ」

小林「………!」

ダンッ

コーデリア「そんな!シャロが殺したなんて絶対に…!」

北芝「黙りなさい!!」ドンッ

北芝「気づいてないの?審議が進めば進むほど、シャーロックの心証は悪くなっている事に」

ネロ「……………ぐ…ぅぅ…」

北芝「…それか、こうとも考えられるわね」

北芝「”シャーロックは、篠田に脅されて御子柴を殺した”」

小林「!」

北芝「……まぁ、だから何だという話だけど」

北芝「そんなものが証明されたからと言って、二人の罪が変わる訳でも無いし」

姫百合「…………」

プロデューサー「……んー、やっぱり警察はウチの篠田を疑ってるわけよね?」

北芝「まぁね」

小林「………」

プロデューサー「…やっぱりさ、そういうのは私も納得は行かないんだけど。一昨日の裁判見たら特に」

真田P「………」

ネロ「…………」


プロデューサー「本当に、ウチのアイドルが人を殺したって言うのならさ」

ドンッ

プロデューサー「もうちょっと決定的な証拠品を出して貰えない!?」

北芝「………分かったわ」

北芝「まず、犯行時刻に記録された映像に被告人と共犯者シャーロックの姿が映っていたわ」

小林「…………」

プロデューサー「ほら、何やってるのよ名探偵小林オペラ!」

プロデューサー「依頼人と教え子が疑われてるなら、異議を唱えるのが今の仕事でしょう!」

小林(…それは……そうなんだけど……)

北芝「その時、共犯者の様子が少しおかしい様子が記録されていたのよ」

北芝「検察側は、その時トイズを用いた可能性を提示するわ」

小林「異議!!」

小林「弁護側は!検察側の可能性に異議を唱えます!」

北芝「…ほう?一体、何をほざくつもりかしら?」

北芝「この影は、車が動いて轢き殺した後に逃げるように去っているわ。ここで殺害したのは明らかよ」

小林「…いえ、それは有り得ないんですよ」

北芝「なんですって?」

小林「北芝検事。映像の続きは見ましたよね?」

小林「お忘れですか?あの時車は”二回”動いていました」

北芝「………」

小林「車が移動する二回目の時、シャーロックは空き地から去った後でした。つまり!」ダンッ

小林「これはシャーロックが殺人をしていない事を示す決定的な証拠なのです!!」

北芝「異議あり!!」

北芝「貴方こそ、この映像を見て分かったと思うけど」

北芝「安物の盗撮用カメラだからか、視野がとても狭いのよ」

小林「………あっ」

北芝「さすがに、気づいたみたいね。でも、遅すぎよこの阿呆が!」ダンッ

ネロ「どっどういう事なのさ」

コーデリア「教官に阿呆なんて!」

北芝「…気づいてない馬鹿も居るみたいだから、教えてあげるわ」

北芝「あれは、逃げているのではなくて、遺体から車を引き抜くために移動した際に死角に入ったって事をね!!」

小林「うっ……!ぐっ………!!」

姫百合「…小林さん」

姫百合「この推測は…崩せそうにありませんね……」


北芝「そして、被告人篠田久留美は事件の全てを見ていた」

北芝「もし無関係なら、その場で通報すれば良い筈なのにねぇ!!」ドンッ

プロデューサー「ちょっちょっと小林オペラ君!なんとか反論して!」

小林「………えっ!?僕ですか!?」

プロデューサー「アンタ以外に誰が居るの!」

コーデリア「きょ…教官…どうします?」

北芝「現場を見ていたのに通報しなかった。そして部屋で睡眠薬を飲んでの犯行工作」

北芝「これで篠田以外に怪しい奴が、どこに居ると」

小林「異議!!」

小林「それは…事件に動揺して通報しなかっただけだと弁護側は主張します!」

北芝「異議あり!!」

北芝「被害者の死亡時刻と第一発見者の通報は11時間半以上のラグがあるのよ!?」

北芝「犯行時刻に篠田が現場に居て、目撃していたのは確実なのに11時間通報せずに放っておいて挙句の果てには睡眠薬を飲んで真昼間に眠ったぁ!?」

北芝「そんな奴のどこが怪しくないと言うのよ!!」

小林「異議!!」

小林「お忘れですか?篠田さんのトイズは”スローモー”」

小林「そう、篠田さんは頭の中がスローモーなのです!!クジラのように!」

小林「北芝検事!貴方は」

小林「クジラが怪しいとでも言うつもりですか!!!」

北芝「…………」

ネロ「…………」

コーデリア「…………」

姫百合「…………」

裁判長「……………」

プロデューサー「……………」

小林「…………」


小林「………あの」

北芝「喋るな」

小林「はい」

ネロ「小林……焦るのは分かるよ。分かるけどさぁ…」

北芝「…とにかく」

北芝「弁護人がスローモーの意味をはき違えている事は分かったわ」

北芝「可愛そうな弁護人の為に、私が慈悲をかけて優しく簡単に説明してあげるわ」

北芝「スローモーとはね。”自分以外の周りの時間が遅く感じる能力”なの。分かった?」

小林「…はい」

カンッ

裁判長「それでは、もう異議は無いという事で…」

小林(ううぅ…真犯人が依頼人…被告人だと分かっている裁判……)

小林(こんなの……どう審議すれば良いんだ…)

姫百合「こっ小林さん!どっどうするんですか!?」

ネロ「…今の見たでしょヒメ。さっきの反論…小林は追い詰められてるんだよ…」

小林(…せめて、もう一人…誰かもう一人が犯行現場を目撃していたら…)

小林(………犯行現場を目撃……?)

小林(…………)

北芝「どうやら、弁護側も異議は無いそうね」

北芝「だって、下着泥棒の怪盗は事件現場を目撃どころか気づいてもいない。真田のプロデューサーは貴方が告訴した」

北芝「もう、事件の関係者からの証言は取れたでしょう?もう、十分だわ」

小林「……いえ」

小林「まだ、一人だけ残っています。現場に居て、かつ証言を取っていない………証人を」

裁判長「…えっ!?それは…誰ですかな?」

北芝「…また、適当な事を言うつもりじゃないでしょうね?」

小林「違います、先ほどの証言で明らかになった。もう一人の目撃者が居るじゃないですか」

北芝「……一体誰よ」

北芝「この証言で明らかになった、もう一人の目撃者って!」




→ジャッキー君(1)を突きつける


ダンッ



小林「目撃者”ジャッキー君”に尋問させて頂きます!!」




ネロ「!!??」

コーデリア「!!!??」

姫百合「!!????」

プロデューサー「!!!!???」

真田P「…………」

裁判長「………あの、弁護人…正気ですか?」

小林「ええ正気です!正気ですとも!」

小林「さぁ!早く証人を連れてきてください!!」

北芝「……最早、やけくそになってるわね」

北芝「良いわ。係官!あのでかい犬を証言台まで連れてきなさい!!」






ジャッキー「………………」

北芝「………証人、名前と職業……」

北芝「…………」

北芝「自分で言ってておかしい事に気づけるのって、哀しい事なのね」

姫百合「どっどうするんですか?小林さん!」

ネロ「どうするのさ小林!」

コーデリア「どうするのですか!?教官!」

小林「どっ…どうしよう……皆……」

ネロ「…………」

コーデリア「…………」

姫百合「………とにかく、私たちのやるべき事は時間稼ぎです」

姫百合「この無意味な尋問でも、神津警視正の役に立てれば…!」

裁判長「……ちなみに」

裁判長「この尋問で何の情報。そして無意味だと分かったその瞬間……」

裁判長「速やかに判決に移動し、即閉廷させて頂きます!」

姫百合「!!」

小林「どっ…どうして……?」

北芝「どうして?……当たり前でしょうがこの阿呆がぁあああ!!」ダンダンダンッ

裁判長「よろしいですね?弁護人」

小林「………(くっくそう…時間稼ぎになるかと思ったら……余計にピンチに……!)」

カンッ

裁判長「…それでは証人、証言をお願いいたします」

ジャッキー「……………」

裁判長「……しかし、本当に大人しいですなこのワンちゃんは」

裁判長「このまま、何も喋らないのではないでしょうか」

北芝「…少なくとも人語を喋る事は無いでしょうね」




【証言開始】



① ……………………


② …………バウ………




北芝「………………」

裁判長「………………」

小林「………………」

裁判長「……弁護人」

裁判長「尋問、するのですよね?」

北芝「…弁護人、今なら許してあげるわ」

北芝「今すぐ謝ってこの茶番を終わらせて、この裁判を終わらせるというのなら。この無茶ぶりを許してあげる」

北芝「でも、もしこのまま続行するというのなら……」

北芝「貴方に法廷侮辱罪を施行させる!!!」ダンッ

姫百合「…どっ…どうしましょう……小林さん……」ダラダラダラ

小林「……………分かりました」

北芝「ふん、どうやらそこまで阿呆じゃなかっ…」

ダンッ

小林「尋問を…やらせてください」

北芝「なっ………!?」

裁判長「……分かりました」

裁判長「それでは、尋問をお願いします」

北芝「………検事局に入ってから結構長いけど……」プルプルプル

北芝「こんな裁判……初めてだわ……!」プルプルプル ピクピク

裁判長「…奇遇ですね。私もです」

小林(僕もです……)




【尋問開始】


① ……………………


小林「待ってください!」

小林「証人…証言して貰えませんか?」

小林「貴方が現場で見た、殺人現場を」

北芝「異議あり!!」

北芝「犬が喋ると思ってるんだぁ!?アンタの頭はファンタジーか!!」

北芝「どうしても証言させたいのなら…バウリンガルでも持ってきなさい!それでもこの犬、私たちの言葉は理解できないでしょうけどね!!!!」

小林「ウッ………!!」

裁判長「……弁護人。分かってますね?」

裁判長「有力な情報が出てこなった時点で、この裁判は閉廷させて頂きます」

小林「…は……はい………」

ネロ「…………」

小林「…そっそうだネロは動物の言葉が分かるんだったよね?」

小林「何か、分からないかな?」

ネロ「…何かって言われても…まだ吠えてすらないよねジャッキー」

小林「そ…そうだね………」





② …………バウ………


小林「待ってください!」

小林「吠えた…吠えたぞネロ!何か…言ってないか?」

ネロ「………………」ダラダラダラ…

小林「…ネロ?」

ネロ「だっ…駄目だぁ…駄目だよ小林ぃ………」

ネロ「ジャッキー…あの事件の事何一つ理解してない……」

小林「えっ」

ネロ「そもそも…分かってないよ。あの事件の事…全く」

ネロ「さっきの鳴き声で分かった。ジャッキー…拾われてから嫌という程みんなに撫でられたり遊ばれたりされていたからか」

ネロ「無我の境地に達している……」

小林「…そっそれって……」

ネロ「………うん」

ネロ「僕のトイズでも……有力な情報は得られないよ…」

小林「……そっ」

小林「そんなぁああああああ!!!」ガガーン

裁判長「……弁護人」

裁判長「…分かってますよね?」

小林「まっ…待ってください!まだ!尋問は終わっていません!」

裁判長「それでは、早く済ませてください」

裁判長「証人もほとんど動かず置物みたいになっています」

小林「うっ……ううううう……」




姫百合「…もう…駄目……なんでしょうか?」

コーデリア「ヒメ!諦めちゃ駄目よ!教官なら…教官ならなんとかしてくれる筈!」

ネロ「最早小林一人頼みってのも…結構絶望的なんだけどね……」

小林「……………」

小林(これは……もう賭けるしかない…!)

小林(あらゆる証拠品を突きつけて…賭けるしか……)

小林(もう……当たって砕けろだ!!)


19時40分に再開します



→②に証拠ファイル⑥壊れたカセットテープを突きつける


小林「異議!!」

小林「…北芝検事。このカセットテープが何か分かりますか?」

北芝「……被害者の最後の音声よね。それが今回の尋問に何か関係あるの?」

裁判長「正直…全く関係性が見られませんが」

小林「……そうでしょう」

小林「ですが、これは再生してみると分かります」

北芝「……は?」

裁判長「弁護人、それは一体どういう事でしょう?」

小林「この音声を聞いた時のジャッキー君の反応」

小林「それが!事件当日の状況の手がかりになる筈です!」

北芝「……何を、言ってるの?」

カンッ

裁判長「…正直、弁護人の伝えたいことが全く分かりませんが…」

裁判長「良いでしょう。この証拠品を再生してください!」

小林(頼む…頼むぞ…!何か…反応してくれ!)

ジャッキー「………………」

小林(反応してくれなかったら……この裁判は……!!)

ジャッキー「……………………………」



カチッ

キュルルルルルルルルル………





【テープの音声】


御子柴≪…………≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪……あはっ≫

御子柴≪あは…あはははははは…あは……≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪お母さん……お母さん…私ね?ねぇ、お母さん?≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪お母さん?私を産んでくれてありがとう?ね?≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪そして……ごめん…ごめんねぇぇぇぇぇ……!!≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪私…駄目だよぉおぉお!!もう……駄目だぁぁあー……!!≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪だってこの写真…!もう……もうこの写真…!!………うわぁぁぁぁああああ!!!いやだぁああああああ!!!!!≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪ごめんなさいごめんなさいごめんなさい助けて助けて助けて助けて!!≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪ねぇお母さん!聞こえてる!?聞こえてるの!?ねぇ!!この音声!本当にお母さんに聞こえてるの?!届くの!?≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪やだぁあああ!やだ…私……まだ……やりたい事が…………≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪……プロデュ……真…田……さん……≫

ジャッキー「………………」

御子柴≪…………………………………………≫



ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ






ジャッキー「ワン!!ワン!ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!!!!!!!!!!!!」






北芝「うっうわぁああ!?」

裁判長「なっなんですか!?」

ネロ「!」

小林「こっこれは…!」

ネロ「……小林…」

ネロ「なんだか…凄く興奮してるよ。ジャッキー」

小林「そっそれは、見て分かるけど」

ネロ「違う…そうじゃないよ」

ネロ「犬は、人間よりもずっと聴覚が発達してるんだよ?」

小林「!」

ダンッ

小林「裁判長!!先ほどジャッキー君が反応した箇所!!」

小林「その音量を上げてください!!」

裁判長「わっ分かりまし……」

ジャッキー「ワン!!ワンワンワンワンワンワンワンワン!!!!!!」

裁判長「かっ係員!証人を退廷させてください!!」









【テープの音声】


御子柴≪……プロデューサー……真…田……さん……スキ……デシタ…≫

御子柴≪…………………………………………≫



ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ  タスケテ  ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッ







裁判長「こっ…これは…!」

北芝「聞こえた…今何か聞こえたわよ!?」


ザワザワ…ザワザワザワ……ザワ

カンッ


裁判長「静粛に!静粛に!」

裁判長「弁護人!これは一体!?」

小林「はい。被害者が飲み物を飲みほそうとしている音の中に紛れて、誰かの声が聞こえましたね」

小林「それもハッキリ、「タスケテ」と」

裁判長「しっしかし…これも被害者の声では?」

小林「被害者は飲み物を口に含んで飲んでいました。そんな時にこんなハッキリと声が出ますかね?」

姫百合「そっ…それじゃぁ…これは……一体…誰が?」

コーデリア「なっ…なんなの…?これ……」

カンッ

裁判長「これより!20分間の休憩を挟みます」

裁判長「それまでに、検察側は声の鑑定を」

北芝「……了解したわ」

裁判長「それでは、一時休廷!」


カンッ!!


次は19時50分からです。しばらくお待ちください


【横浜裁判所 第二控え室 12月23日 午前11時11分】



姫百合「…………」

小林「…………」

ネロ「…僕も小林が弁護するのを見て長いわけじゃないけど…」

ネロ「今回の事件程、ギリギリなものは無いよ…多分、今までの事件でもダントツで」

コーデリア「でっでも!仕方ないじゃない!依頼人が犯人だって分かってる裁判なのに…」

姫百合「そうです。むしろよく持ちこたえましたよここまで」

小林「ほとんど奇跡が起きたようなものだけどね…」

小林(この奇跡が…どこまで持つのか……)



プルルルルルルルルルルルル   プルルルルルルルルルルルル


小林「!G…G4からだ!」

ネロ「!」

コーデリア「!」

姫百合「!」



ピッ


小林「もっ…もしもし!」

神津≪俺だ。そっちの状況はどうだ?≫   ザザザザザザザザザザザザザザ

コーデリア「こっこっちの事よりも!今はそっちの事です!」

ネロ「エリーと茉莉音と美樹は見つかったの!?」

神津≪…いや、まだだ≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

次子≪つっても、この土砂降りの中じゃぁ…車の中でもよく見えねぇぞ≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

ネロ「なんだよ!思わせぶりな通信しといて!!」

姫百合「…あの!何か手がかりが見つかったのですか!?」

小衣≪………………≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

咲≪……正直、小衣はお手上げ状態≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

小衣≪…うるさい!お手上げじゃない!考えてるだけよ!!≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

小林「………その、すまない。神津」

神津≪…その様子だと、そっちの方も散々らしいな≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

神津≪誘拐された三人のGPSはおそらく犯人の手によって破壊されている≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

神津≪だが、壊されるまでの形跡は情報として残っていた≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

小林「!」

神津≪今、咲がその形跡を発見した。途中から三人全員が一つに集まり移動し、途中で途切れている事から運ばれている途中で壊されたと思われる≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

神津≪PDAが壊されるまでの時間。付近の監視カメラの映像の情報収集も行っている。このまま行けば時間の問題だ≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

小林「そっ…それなら!」

咲≪でも…それが参ってんだよねぇ~≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

咲≪向こうも結構ヤリ手らしくて、カメラに映らない程度に移動しているみたいだし。ダウンロードもこの土砂降りの中、亀並に遅いし…もうイライラだよぉ≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

ネロ「それって……PDAが破壊された後がまだ分からないって事…?」

小衣≪だから!それを小衣が考えてるのよ!この後の手を!!≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

咲≪このままだと、感づかれて逃げられる可能性も無いわけじゃないんだよねぇ~。…最悪、殺されてるかも≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

小林「!」

姫百合「そっそんな…事…。なんとかならないんですか!?」

小衣≪だぁーかぁーらぁー!それを小衣が考えてるのよー!!≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

平乃≪…今のところは、まだ絶望的です≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

ネロ「…………」ダンッ

神津≪だが、こっちの事はあまり気にするな≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

コーデリア「なっ!?」

神津≪こっちは俺達が何とかする。お前たちは裁判に集中しろ≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

神津≪今、篠田が有罪になって人質が殺されれば、俺達もどうにもできない≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

次子≪だから…頼む!もう少しだけ時間稼ぎしてくれ!≫     ザザザザザザザザザザザザザザ

ネロ「…………」

コーデリア「…………」

小林「……ああ、分かったよ神津」

神津≪…また、連絡する≫


ピッ





ネロ「……また、あの裁判に戻るの?時間を稼ぐことしかできない。あの裁判に…」

小林「…………」

コーデリア「でっでも…もうそれしか……」

「ちょっと、小林オペラ」

小林「………あっ」

小林「北芝検事…」

北芝「…アンタ」

北芝「さっきの裁判の低落はなんだったのよ?」

小林「…………」

ネロ「…アンタには分からないだろうさ」

コーデリア「こっちには…こっちには時間が必要なん……」

北芝「人質の事考えてたの?」

ネロ「!」

コーデリア「!」

姫百合「………!」

小林「…知ってたんですか?」


北芝「スピーカーで通話してたら嫌でも聞こえるわよ。さっきの声、神津くんよね?」

小林「はい。…神津とG4が…」

北芝「……あっそ」

北芝「なら、私はいつも通りで行かせてもらうわね」

コーデリア「!」

北芝「被告人が有罪と決まっている裁判なら、容赦しなければ決して負ける事も無いでしょうし」

コーデリア「あっ…貴方…!こっこんな…状況で…!!」

北芝「それに」

北芝「神津くんが捜索してるなら大丈夫でしょ」

小林「…!」

北芝「いい?私は今回の事件、一切容赦しないわ」

北芝「絶対に篠田久留美を有罪にしてみせる。貴方の大好きな真実も、それを求めてるでしょうからね」

ネロ「…シャロはどうするつもり?」

北芝「……どうでもいいわね」

北芝「もし事件に関係しているのなら、そいつも有罪にしてやるだけよ」

小林「…………」

北芝「それじゃぁそろそろ鑑定も終わってる頃でしょうし、私は行くわ」

北芝「せいぜい、負けた時の遠吠えの言葉でも考えておきなさい」スタスタスタ

小林「…………」

ネロ「なんだよアイツ!本っ当に感じ悪いなぁ!」

コーデリア「今回の事件…例え検察側が正しかったとしても、あの検事に負けるのは悔しいです!」

小林「……でも」

小林「彼女も彼女なりに、気を使ってくれたんだと思うよ。僕たちに」

コーデリア「……え?」

姫百合「…………」

「弁護人。そろそろ再開廷します」

小林「はい」

小林(大丈夫だ…向こうも事情が分かってくれている筈だ)

小林(なら僕は、検察側の主張に異議を唱えて時間を稼ごう)

小林(そして、隠されたもう一つの真実を突き止めるんだ!)






【横浜裁判所 第二控え室 12月23日 午前11時17分】






ザワザワ…ザワ……

カッ!!


裁判長「これより!篠田久留美のサイコパス殺人の審議を再開します」

裁判長「北芝検事。声の鑑定の結果は出ましたか?」

北芝「………………」

小林「……………」

北芝「…………ウソヨ…イヤ…ウソジャナイ…?」

北芝「イヤ…タシカニイテモ…オカシクナイ……ジャァ…イッタイドウイウイミ…」

小林(?北芝検事がおかしいぞ?)

姫百合「……一体、どうしたんでしょうか」

裁判長「…あの、北芝検事?」

北芝「モウ…モウ…ワケガワカラナ…」

カンッ

裁判長「北芝検事!」

北芝「ピィッ!」ビクッ

裁判長「先ほどの、声の鑑定は済みましたか?」

北芝「…………ええ。出たわ…」

小林「!」

ネロ「!」

コーデリア「!」

裁判長「…それでは、その声の主は一体誰だったのでしょう?」

北芝「………この……声の主は……」

北芝「………被告人”篠田久留美”……」

小林「………えっ」

小林「ぇぇぇええええええええええええ!!!?」



ザワザワ…ザワザワザワ……ザワ

カンッ


裁判長「静粛に!静粛に!」

裁判長「北芝検事、それは本当の事なのですか?」

北芝「ええ。確かにそれは間違いないわ」

北芝「しかし!この声が記録されたという事は!被告人が被害者と一緒に居た事は明白!」ダンッ

北芝「間違いなく!被告人は被害者が死ぬ直前に一緒に居たのよ!」

小林「異議!!」

小林「それじゃぁ!あの”タスケテ”という言葉は何だったのですか!?」

小林「どうして今から死ぬ被害者の近くで被告人が助けを求めていたのですか!!」

北芝「異議あり!!」

北芝「それは大した問題ではない!!」

北芝「被告人が被害者の死の直前まで一緒に居た。それが一番の大問題よ!!」

小林「ぐぅっ…!!うっぐっ!!」

北芝「更に言えば被害者が睡眠薬入りのジュースらしき物を飲む前に命乞いのような事を叫んでいる」

北芝「もし被告人が無関係なら、その叫びに異常性を感じないわけが無い!!」

小林「……………」

小林(たっ……確かにそうだ……)

小林(僕は…彼女の本性を知っている。……だから、判断が少し鈍っているのかもしれない)

小林(それに、御子柴さんのトイズが僕の顔で轢き潰される所をシャーロックが見ている以上…被害者は…ん?)

小林(顔を…変えるトイズ…?)

小林(……………)

小林(……あ?)

小林(あ……ああああああああっ!!!?)

小林(まっまさか……でも、これが真実なら……!!)

小林(例え違っていたとしても…この状況から異議を唱え時間を稼げる筈!)

小林(だけどそれは…おそらく誰一人として信じてくれないかもしれない)

小林(でも、この異議を唱えなければ最悪のまま審議は終わってしまう…!)

小林(……どうする…!?)



→異議を唱える

 異議を唱えない




小林「異議あり!!」ダンッ

北芝「!」

小林「…ここで、一つ別の可能性が生まれている事に気づきませんか?」

北芝「……どういう意味?」

小林「あの音声に録音された被告人の助けを求める声。そして被害者の絶叫」

北芝「何が言いたいのよ」

小林「……あの時、本当に死んだのは…被告人じゃないのですか?」

北芝「…はぁ?何を言ってるのよ。死んだのは被害者よ?被害者の御子柴華子」

小林「いいえ、本当は違ったのです」

裁判長「…どういう事ですかな?」

小林「…実はあの時、あの場で殺されたのは……」


→御子柴華子

 篠田久留美

 シャーロック・シェリンホード







ダンッ


小林「篠田久留美なのです!!」

北芝「………はぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!???」

小林「そう!この事件…被害者と被告人が逆だったのです!!」

裁判長「どっどういう事なのですか!?弁護人!」

北芝「そうよ!そんな飛躍した論理出さないで証拠出しなさいよ証拠!!」

小林「……検察側は被害者のトイズが何かお分かりですか?」

北芝「んなの当然でしょ!被害者のトイズは顔だけを別人……に………!!」

小林「はい、その通りです。この事件、被告人は被害者の顔に装っている可能性があります」

北芝「………本当に馬鹿馬鹿しい仮設立てるわね貴方」

北芝「だったら…あの死体は何だったのよ!!被害者のあの死体は!!」

小林「……検察側は、あの死体を御子柴さんの部屋で見つけた。または事務所の人数を参考にして特定したそうですね?」

小林「しかし、御子柴さんのトイズが判明している以上、それは証拠不十分となります!!何故なら―――」




→証拠ファイル⑦御子柴華子の解剖記録を突きつける



小林「被害者は顔を潰されて、一目見ただけでは誰なのか分からないからです!!」

北芝「うぐぅぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」ガガーンッ

小林「それも、大型の車に潰されたそうですよね。原型も残らない筈です」

北芝「…そんなの…関係無いわ…」

北芝「篠田久留美の身元調査は完了していた!あれは間違いなく篠田久留美!事件の真犯人である被告人だったわ!!」

小林「……それじゃぁ、勿論」

小林「この調査も、確認済みなんでしょうね?」




→証拠ファイル⑨篠田杏子のトイズを突きつける


北芝「そっ…それは…!」

小林「…彼女のトイズは”スローモー”です。自分の回りが遅く感じるのだとか」

小林「そのトイズの確認方法は、そのトイズを持ち合わせていなくても可能だったのでは?」

小林「何か早業を見せつけてやれば、大方納得もするでしょうしね。他に確認方法も少ないでしょうし」

北芝「くく…ぐっ!!」


ダンッ


小林「裁判長!ここで一つの大きな疑問点が現れました!」

小林「この疑問を解決のために…被告人、篠田久留美の召喚を要求します!!」

裁判長「…………」

裁判長「北芝検事、異議は無いですか?」

北芝「……………」

北芝「…冷静に考えれば、別に検察側に不都合な事が無いわね」

北芝「異議なし。連れてきなさい」

裁判長「分かりました」

裁判長「係官!今すぐ被告人を証言台まで!」






篠田「……………」

北芝「…証人、名前と職業を」

篠田「ええと、私の名前は篠田久留美!今はアイドルと被告人を兼業でしています!」

小林「それは兼業とは呼びません…」

北芝「…証人、まずは単刀直入に聞くわ」

北芝「貴方は、被害者が死ぬ最後の音声を録音している時に傍に居たわね?」

篠田「………?」

ダンッ

北芝「とぼけても無駄よ!このテープの中には記録されてるんだから!」

北芝「か細くても、小さく呟く貴方の声がね!!」

篠田「………ええと、最後の音声?何ですかそれ?」

小林「…被告人。申し訳ありませんが…これは聞き逃すことが出来ません」

小林「このカセットテープを一度お聞きください」






≪カセットテープ再生中≫





篠田「………………」

裁判長「…ふむ、やはりいつ聞いてもハッキリ聞こえますな」

北芝「小さな声ではあるけどね」

篠田「…ああ~。なるほどなるほど」

ネロ「!」

姫百合「認めるのですか…?貴方がその場に居た事を」

篠田「うん。これなら説明できると思うしね!」

小林「…篠田さん。証言してください」

小林「貴方はこの時、何故御子柴さんと一緒に居たのかを」






【証言開始】


①これ、御子柴ちゃんが演技の練習の為に撮ってた音声だよー


②私も、横で練習してたんだー。御子柴ちゃんと同じ題材で


③邪魔にならないように、私は小さな声で撮ってたんだけどね







北芝「異議あり!!」

北芝「貴方…ふざけてるの?そんな言い訳が通用すると思ってるのかしら!?」

篠田「えー?でも、これが真実ですよーそれとも」

篠田「私が嘘を言っている証拠があるんですか?」

北芝「現に被害者は殺されているじゃない!!」ダンッ

篠田「それじゃぁ、このテープがいつ録音されていたのかは?」

北芝「うっ…!」

篠田「私は覚えてますよ!確か……一か月程前だったかな!」

裁判長「……なるほど、演技の練習ですか…」

裁判長「最近は、アイドルの方も女優業をされる方も多いので、納得はできますね」

裁判長「弁護人、どうですか?」

小林「…………」

小林「とりあえず、尋問をさせてください」

裁判長「分かりました。」





【尋問開始】


①これ、御子柴ちゃんが演技の練習の為に撮ってた音声だよー


小林「待ってください!」

小林「…一体、何の練習だったのでしょうか」

篠田「ん?あー…確か悲劇の物語を私たちで作って、それで練習したみたいな!」

篠田「いつかドラマのオファーが来た時に、私たちの演技力を見せつけてビックリさせてやろうねって!」

裁判長「…まぁ、確かに演技にしては凄く迫真的でしたな」

コーデリア「ええそうね。まるで本当にあったかのように………」ジロ

篠田「?」

小林「……という事は、本件の事件には関係の無い事なんですね?」

篠田「うん!そりゃぁ勿論!」

小林(………ん?)



【このテープは事件とは関係無いを疑問点として覚えますか?】


→はい

 いいえ





→はいを選ぶ

小林「……………」

小林「分かりました。証言を続けてください」

篠田「オッケー!任せてよ!」







②私も、横で練習してたんだー。御子柴ちゃんと同じ題材で

小林「待ってください!」

小林「同じ題材…つまり、殺される役をやっていたという事ですか?」

篠田「そう!どうだった?殺されるーって感じだったでしょ?」

篠田「それでも御子柴ちゃんは演技凄すぎだけどねー」

小林「…ここまで大声を出して、近隣からの苦情は来なかったのですか?」

篠田「来ない来ない!だって、これ撮ったのは音響室だよ?全然だって全然!」

小林(一か月前にどんな状況だったのか分からないけど……)

小林(………ん?)




【絶叫して苦情も何も無かったという事を疑問点として覚えますか?】



→はい

 いいえ





→いいえを選ぶ


小林「……………」

小林「分かりました。証言を続けてください」

篠田「了解!でも、こんな事件と関係ない事証言しても大丈夫なのかなー?」








③邪魔にならないように、私は小さな声で撮ってたんだけどね



小林「待ってください!」

小林「…性格と比べて、結構控えめですね」

篠田「演技と本性とは関係ないよ!それは女優業の人を観察すれば一発で分かる事だよ!」

小林「まっまぁ…それはそうですが」

篠田「でも、私も磨けば演技力はつくけどねー」

篠田「御子柴ちゃんも、あんなに大声出せるならいつも出せば良いのに」

小林(一体、どこまでが本当の事なのだろうか…)

小林(………ん?)



【被害者の声が大きかったという疑問点を覚えますか?】

→はい

 いいえ




→いいえを選ぶ


小林「……………」

小林「…はい。ありがとうございました」

篠田「まぁ、こんなものかなー。でも、憧れるなー女優業!」

北芝「…………ふん」






姫百合「一体、どこまでが嘘でどこまでが本当なのでしょうか」

小林「…いや、恐らく全部信用できないだろう」

姫百合「!」

ネロ「だったら、突きつけ放題じゃないか!小林!」

小林「いや、こういう証言だからこそ慎重に突きつけなくちゃいけない」

小林(まずは揺さぶって、疑問点を覚えるか覚えないかを選んでから)

小林(最も疑問の強い証言を突きつけよう)




次は20時15分再開です




→①に証拠ファイル⑥壊れたカセットテープを突きつける


小林「異議!!!」


小林「……篠田さん、貴方言いましたね?このテープは事件とは関係ないと」

篠田「うん!それは当然の事じゃないですか。だって、演技の練習を録音しただけですもん!」

小林「…だとすれば、一つおかしな点があります」

小林「どうして犯人は、このテープをへし折ったのでしょうか?」

北芝「!」

小林「事件と直接関係ないのなら、テープをへし折る意味が分かりません」

小林「もし本当に、これが演技の練習だったのなら!」ビシッ

篠田「………」

篠田「…んー、多分恥ずかしくなっちゃったんじゃないかな?」

小林「はっ…恥ずかしい…?」

篠田「うん。御子柴ちゃんは恥ずかしがりだから、自分の声を聴いたときに耐え切れなくてへし折ったかもしれないよ」

篠田「いやむしろ、そっちの方が有り得るかも!」

小林「うっ……!」

北芝「……確かにへし折られたテープには指紋はついていなかったわね。指の跡は出たけど」

北芝「でも、例え強くへし折ったとして一か月も前の指跡が粉で検出されるかしら?」

篠田「いやいや、録音したのが一か月前なだけで、へし折ったのはいつかまでは分かんないじゃないですか」

北芝「………くっ」

篠田「もしかしたら、つい最近なのかもしれないでしょ?」

裁判長「なるほど、確かに筋が通っています」

小林(うっ…裁判長の篠田久留美に対する心証が良くなっていく…)




カンッ


裁判長「……どうやら」

裁判長「弁護側の主張は、もうここで崩れたみたいですね」

小林「!」

裁判長「もし、このテープが事件当日の物と関係無いのだとしたら。被害者と被告人が入れ替わっていた事など」

裁判長「とても考えられません」

篠田「?それってどういう事なんですか?」

小林「………………」

北芝「……そこの弁護士は、貴方を御子柴が変装していると考えているのよ」

篠田「……!」

小林「…?」

篠田「………」

篠田「あっ!ごめんなさい。あまりにも突拍子すぎて…ちょっとビックリしちゃいました!」

篠田「でも、凄い発想力ですよね!推理作家になったら本も売れそうですよ!」

小林(今…篠田久留美の様子がおかしかったような…)

北芝「…まぁ、例え被告人が被害者と入れ替わっていたとしても何も変わらないけどね」

小林「…………」

北芝「この事件の真犯人は、今そこに立っている」

ダンッ

北芝「被告人、篠田久留美!検察側の主張は決して崩れない!!」




「待った!!!!」





小林「!?」

北芝「!?」

ネロ「!?」

コーデリア「!?」

姫百合「!?」


裁判長「………なっなんですか!?今の声は!」

小林「……あれ?」

小林「声のした方向には…誰も居ないぞ?」

≪あの!待って!待ってください!お願いします!≫

北芝「!証拠品の中から声が聞こえるわ」

小林「……えっ!?」

姫百合「なっなんですかこれ!?見覚えがありませんが…!」

係官「あっ!あの、これは……先ほど法廷の前に設置されていて…」

係官「得体のしれないものなので、とりあえず保留にしておいたものなのですが…」

≪すみません!お願いします!私の話を聞いてください!≫

小林「いっ一体…何なのですか?あなたは………!?」

≪……私は」≫

≪御子柴さんを殺すのを手伝った…共犯者です≫

ネロ「………」

コーデリア「………」

姫百合「…………」

小林「………は?」

北芝「は?」

≪…あの、いきなりで信じてくれないかもしれませんが…私…脅されていて…≫

≪今も…姿を隠さないといけないので出てこれませんが…本当なんです!本当に…殺すのを手伝わされて……あの大型車を…!!≫




ザワザワ…ザワ……

「オイ…ナンナンダヨコレ…?」   「オドサレタ?……ジケンノキョウハンシャ…?」

カンッ

裁判長「おっ落ち着いてください!静粛に!」

小林「つまりそれは…自供するという事ですか?」

≪はっ…はい!そうです!だって……だって…!≫

ダンッ

北芝「…弁護人、そのうるさい小包の電源を切りなさい」

小林「えっ」

北芝「このタイミングで、わざわざ通信してくるなんて。どう考えてもおかしいわ」

北芝「信じるに値しない。こんな無駄な証言、する必要がない」

小林「…………」

姫百合「しっしかし…」

北芝「しかしじゃない!これはどう考えても罠でしょうが!早く切りなさいよ!」

≪そっそんな…!罠なんかじゃありません!≫

≪話を聞いてくれないと…せっかく集めたこの三つの証拠品が…無駄になっちゃうじゃないですか…!≫

北芝「三つの証拠品?ですって?」

小林「三つ……?」

≪はい…このまま話を聞いてくれないとなると…うう…私は……今すぐにでも…≫

≪この証拠品を…壊さなくちゃいけないんですぅぅ…≫カチャリッ  カチャッ

小林「っ!!!!!!!!」

姫百合「!!!」


ダンッ!!

小林「さっ裁判長!話を!この通信機からの話を聞きましょう!!」

姫百合「そっそうです!この事件には証拠品が少ないのは事実ですから!!」

ネロ「どっどうしたのさ二人とも!いきなり切羽詰まったように張り出して!」


コーデリア「そうよ!こんなの…罠に決まってるわ!」

小林「……さっきの”三つの証拠品”って所で気づいたんだ…」

ネロ「三つの証拠品?そんなの、信用できる訳…」

コーデリア「…まっ…まさかっ!?」

姫百合「はい。その証拠品は間違いなく……」

姫百合「人質の…”三人”です」

ネロ「!!!」

コーデリア「!!!」

裁判長「………弁護側は、そう申していますが。よろしいですか?北芝検事」

北芝「………もう、勝手にしなさいよ」

北芝「意味のない証言だった場合、切り捨てるつもりだから」

≪…はい。ありがとうございます……≫

小林(…うぅ……すまない…北芝検事…)

北芝「それで?まず単刀直入に聞くわ」

北芝「貴方を脅していた真犯人。その名前を申しなさい」

≪はい…。忘れもしません。有名人ですもの≫

≪私を…脅して…御子柴さんを殺した……あの人の名前は………≫

≪…………≫



≪……シャーロック・シェリンホードです≫


ネロ「………えっ」

コーデリア「ぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええ!!!!??????????」


ザワザワザワ…ザワ……ザワ……


カンッ


裁判長「静粛に!静粛に!」

小林「…………」

小林(やはり…そう来たか…)

バンッ

北芝「証人!貴方……それは信じられる証言なんでしょうね?」

≪はい…間違いありません≫

北芝「馬鹿馬鹿しい!」

北芝「検察側はシャーロックが共犯者だと主張しているけど…それでも証拠は弱いばかり」

北芝「ましてやそいつが主犯だという証拠は、絶対にない!!」

≪でも…でも…!≫

≪…お願いです。証言させてください≫

姫百合「…どっどうするんですか?小林さん」

小林「……………」

小林(…目の前のスピーカーは、間違いなく偽りの真実を語るだろう)

小林(審議に良くない事は承知している。だけど…!)ピッ

プルルル…プルッ

次子≪おっす!そっちで何かあったのか?≫

小林「……証言台に、誘拐犯と思わしき通信機が証言します」

次子≪…!≫

咲≪それ…マジ?≫

小衣≪小林!絶対に切るんじゃないわよ!こっちにも聞こえるようにしなさい!≫

小林「はい。分かっています」

小林(奴の居場所の手がかりが見つかるかもしれない!)

小林(とにかく揺さぶって、怪しい所を突きつけて…奴の居場所の手がかりを見つけるんだ!)






【証言開始】



①あの時私は、謎の団体に誘拐されて小屋に監禁されました


②その時、シャーロック・シェリンホードが現れ仲間を引き連れてこういったのです


③「御子柴華子を殺せ」って…


④その後の事は…分かりません。目隠しをされて事件現場である空き地に連れられたのですから…


⑤篠田久留美さん?すみません。その人の事は分かりません…


⑥今は…どこかに身を潜めています。場所を言う訳にはいきません







北芝「…………」

裁判長「……………」

小林「……(なっ…なんなんだ?この証言は…)」

裁判長「…なるほど。という事はつまり」

裁判長「シャーロック・シェリンホードが謎の団体の一員だったと、そういう訳ですな?」

≪はい……≫

裁判長「それで、被告人である篠田久留美さんの事は知らない。と?」

≪……はい。まさか、あいつらがそんな事までやっていたなんて…≫

コーデリア「…よっよくもこんな嘘八百な証言を…!」

小林「矛盾を暴きたい気持ちは分かるよコーデリア。でも、今は…」

小林「奴の証言から居場所の情報を引き出さないと…」

裁判長「それでは弁護人。尋問をお願いします」




【尋問開始】


①あの時私は、謎の団体に誘拐されて小屋に監禁されました



小林「待ってください!」

小林「それは…本当の事なんですか!?」

≪はい…本当の事です≫

小林「その事を証明する証拠などはございますか?」

≪……ごめんなさい。今は姿を現すわけにはいかないので…≫

≪証拠品は…三つあるんですけど……≫

北芝「その実在する。という事を証明することは?」

≪…はい。分かりました。ちょっとやってみます≫

≪少し…あらっぽいかもしれないけど…≫  カチャリッ

バンッ!!

小林「!!!!!?」

≪―――ッ!!――――ッ!!≫ドンドンドン

裁判長「なっ…何やら向こうで暴れているような…」

小林「わっ分かりました!!分かりましたから!もう十分です!」

小林「証言を続けて下さい!!」

≪信じてくれて嬉しいです。それでは…証言させて貰いますね≫




②その時、シャーロック・シェリンホードが現れ仲間を引き連れてこういったのです


小林「待ってください!」

小林「…それは本当に、シャーロックだったのですか?」

≪はい。間違いありません≫

小林(…シャーロックを犯人に仕立て上げるつもりなら、そう主張するだろうな)

コーデリア「そんなの信じられるわけ無いじゃないのよ!!」 ダンッ!

姫百合「コーデリアさん!今は落ち着いてください!」

ネロ「そうだよ!今機械に怒っても仕方無いよ!」

小林「……ちなみに、何を言っていたのですか?」

≪…あれは忘れもしません。最初聞いた時は、聞き間違いかと思いました≫





③「御子柴華子を殺せ」って…


小林「待ってください!」

小林「…どうして、御子柴華子を殺せとシャーロックが命じたのでしょうか?被害者とシャーロックには接点がありません」

≪……分かりません。でも、一つだけ思い当たる事が…≫

北芝「…思い当たる事?」

≪はい。その団体には御子柴さんも所属していた可能性が…あるのかもしれません≫

≪それか、借金をしていたとも聞きました。…私が運ばれた車の中で≫

小林「それで…団体に入っていたシャーロックが御子柴を殺すように命じたと?」

≪……そうとしか、考えられないかと思います≫

裁判長「ふむぅ…」

裁判長「確かに、シャーロック・シェリンホードがそのおかしな団体に所属していたとなれば動機はありそうですな」

小林「異議!!」

小林「しかし!シャーロックが団体に所属していたという証拠はありません!!」

≪…でも、私は見たんです!≫

≪御子柴を殺すように命じた、あの冷たい目は…今でも忘れられません…!≫

ネロ「…もしさぁ、今証言台に居るのが通信機とかじゃなくて実体だったら」

ネロ「思いっきり一発ぶん殴ってるよ……」

小林「…気持ちは分かるけど、今は落ち着いてくれ」





④その後の事は…分かりません。目隠しをされて事件現場である空き地に連れられたのですから…


小林「待ってください!」

小林「…目隠しをされて、空き地に連れられたのですよね?」

≪はい…そうですね≫

小林「ならば、車の中での話を聞いた事を詳しく話して貰えませんか?」

≪分かりました…≫

≪まず、御子柴さんは親の借金を背負っていて、母親が沈められてると聞きました≫

≪でも、それが災いして殺さなくてはならなくなったそうで…ああ…なんて恐ろしい…!≫

≪何で!ただのお金で罪も無い人が殺されなくてはならないんでしょうか!?そして…≫

≪あいつら…私の知らない所で偽装工作して篠田さんに迷惑を…罪を…!≫

小林「…………」

小林(この証言、何かおかしなところは無いか?)


→ある

 ない

→あるを選ぶ


小林(…それじゃぁ、どれがおかしいだろうか?)



→御子柴の借金

 殺人の計画

 偽装工作




→御子柴の借金もしくは殺人の計画を選ぶ


小林「……証人、どうして御子柴さんは殺されなければならなかったのでしょうかね?」

≪それは…ただ計画の為に……!≫

小林「御子柴さんには借金が背負わされてました。」

小林「…おかしいですよね?もし、借金が関係しているのなら」

小林「殺したら、回収できなくなるじゃないですか」

≪…………≫

小林「証人、そこは疑問に思わなかったのですか?」

≪…でも、借金で殺されるのは……疑問に思わないと思います≫

≪それに…私もあの時は何が何だか分からなくて…≫

小林「…………」

小林「では、どうして篠田久留美さんに罪を被せたのか。証言してくれますか?」





⑤篠田久留美さん?すみません。その人の事は分かりません…


小林「待ってください!」

小林「…貴方は、現場で篠田さんを見ていないのですね?」

≪はい。……私は、ただ殺人の手助けをしただけです…≫

小林「……ネロ、どんな感じだい?」

ネロ「…ごめん小林。僕、さすがに通信口からじゃぁ嘘ついてるかどうかは分からないよ」

小林「そっそうか……」

ネロ「それに、トイズ使わなくてもこの証言が嘘八百って事は分かってるからね」

小林(しかし、本当に証人は篠田久留美を見ていないのだろうか?)

小林(……少し、カマかけてみるか)



→事務所の中の事

 凶器の事




→事務所の中の事を突きつける

小林「空き地の隣に事務所がある事は、知ってますか?」

≪え?……はい。何か建物があった事は知ってますけど…≫

小林「その建物の中に何があったか、思い出せませんか?」

≪ええと…暗くてよく見えませんでした≫

小林「”よく見えなかった”…ですか。なるほど」

小林(これは…証言に加えた方が良いのかな…?)


→証言に加える

 証言に加えない



小林「裁判長!この証言は非常に重要です!」

小林「証言に加えてください!」

裁判長「分かりました…。証人、証言に加えてください」

≪え?はい…分かりました≫




⑥今は…どこかに身を潜めています。場所を言う訳にはいきません

小林「待ってください!」

小林「どうして…言う訳にはいきませんか?」

≪はい…居場所を特定されるのが怖くて…≫

ネロ「…もしここで居場所を言えば、警察に保護されて安心だと思うんだけど」

≪だっ駄目です!もし…警察がここに来たら……この証拠品を……≫

≪壊さないと!私の身が危ないんです!!≫チャキッ

小林「っ!!わっ分かりました!居場所は言わなくても良いですから止めてください!!」

≪…そう言ってくださると、うれしいです≫

小林(ううう…何てやりにくい尋問なんだ…!!)






⑦事務所の方は暗くて、よく見えませんでした


小林「待ってください!」

小林「それは…間違いないのですか?」

≪はい。深夜なので、誰か居た…という訳では無さそうですけど≫

小林「……いえ、あの時確かに事務所には人が居ました」

小林「おおよそ、二人くらいの人物がね」

≪え?そうなんですか…知りませんでした…≫

小林「……………」

小林(ううぅ…僕の異議が軽く流されるからやりにくい…)






小林「…ちなみにネロ、トイズで探知はできそうかい?」

ネロ「さすがに無理だったよ。あれも匿名サーバーを複数使っての証言だ」

ネロ「…よくもまぁ、身を潜めてるなんて言えたもんだね。ここまで用意周到しておいて」

小林「そうなのか…」

小林(うかつに異議を唱えたら、人質が殺されかれない…)

小林(ここは、慎重の証拠品を突きつけなければ…)


次は20時40分からです。しばらくお待ちください




→⑦に証拠ファイル⑬隠しカメラの映像 を突きつける


小林「異議!!」

小林「……証人。事務所が暗くて見えなかった。それは本当ですか?」

≪え?はい…そうですが≫

小林「…残念ですが、それは通りません」

小林「この映像を見て分かるように、事務所から空き地を見る際は問題なく見えています」

小林「おかしいですよね?空き地には街灯が無く、寧ろ事務所側の方に光源が多い筈なのに」

裁判長「……あっ!」

ダンッ

小林「証人、これは一体どういう事ですか!?」

≪………………≫

≪ええと、確か……これは………≫

≪くっ車…!車が動いている時に光がすごくて…≫

北芝「異議あり!!」

北芝「凶器に使われた大型車にはエンジンが掛かっているどころか触れられた跡すら無いのよ」

ダンッ

北芝「そんな状態で!どうやってヘッドライトが点くのかしら!?」

≪うっ…うう…………≫

≪うわぁぁああああああああああああああああ!!!!  バァンッ!  バァンッ!  バァンッ!≫

≪―――ッ!!!  ――――ッ!!!!!!  バタバタ≫

裁判長「なっ…何やら大変な事になっているようですが…」

小林「まっ待って!落ち着いて!落ち着いてください証人!!」

≪……はぁー…!……はぁー…!≫


≪………そうです。私は見たあそこは事務所じゃなかったのです≫

小林「…え?どういう事ですか?」

≪私は違う方向を見ていたのです…空き地の隣は…事務所だけじゃありませんから…≫

北芝「…確かに、空き地の隣はコンビニが建ってたわね」

小林「そっそれなら…分かりました……」

≪…ごめんなさい…。私…トラウマが多くて……≫

姫百合「どっどうするんですか小林さん…。これじゃぁ、迂闊に発言できませんよ…」

小林「…えっええと…そっ…それじゃぁ……今度は少し直接的じゃない証言で…」

小林「好きな食べ物とか、誕生日とか証言してもらえたりとか……?」

北芝「……………」

裁判長「……………」

裁判長「弁護人の要求を却下します」

北芝「次は、当然”現場で何があったのか”を証言して貰うわ!」ダンッ

小林(うっううぅ…また刺激しなければ良いけど……)





【証言開始】


①あの時の事は…あまり思い出したくありません


②私は…直接御子柴を殺したわけではありません


③シャーロックさんがトラックを動かし殺し、私は彼女が用意した壺の中に遺体を入れました


④そして、御子柴さんの部屋まで動かしたのです。…凄く重かった






裁判長「…なるほど」

裁判長「あの壺の事を、すっかり忘れていましたな」

北芝「…………この証言は、信じる価値ありそうね」

ネロ「あの壺の事、シャロが持ってきた物だと言い張るつもりらしいね」

小林「……………」

裁判長「それでは弁護人、尋問をお願いします」





【尋問開始】


①あの時の事は…あまり思い出したくありません


小林「待ってください!」

小林「思い出したくないのなら、無理に言わなくても良いのでは無いでしょうか」

小林「ほら、証人には黙秘権が……」

北芝「異議あり!!!!」

北芝「そんな訳にいくわけ無いでしょうが!!アホッタレ!!」

裁判長「弁護人、ちょっと黙っててください」

小林「うぅぅっ…すっ…すみません……」

小林(迂闊な事言うと、エルキュール達が殺されるから尋問したくないんだけど…)

小林(やるしかないのか……)





②私は…直接御子柴を殺したわけではありません


小林「待ってください!」

小林「それでは、どうしてあなたは連れてこられたのですか?」

≪……多分、証拠隠滅には本当の他人を使った方が得策だからだと思います≫

≪アリバイもあって動機も無い誰かが証拠隠滅をすれば、捜査も難航するんじゃないかな…って≫
北芝「…確かに、それほど面倒くさい事はないわね」

小林「……つまり、貴方は捨て駒として使われただけなのですか」

≪はい…≫

小林「それでは、被害者を殺したのは……?」




③シャーロックさんがトラックを動かし殺し、私は彼女が用意した壺の中に遺体を入れました


小林「待ってください!」

コーデリア「シャロがそんな重い物動かせる訳ないじゃない!!」ダンッ

ネロ「そうだよ!シャロを舐めるなー!!」

姫百合「お二人は証人を刺激しないでください!」

小林(後、何気にシャロを蔑してるよねその発言…)

小林「…あの壺は、シャーロックが用意した物なのですね?」

≪はい。…最初は何に使うか分かりませんでしたが…≫

小林「分かりました。遺体を壺に入れた後どうしたのですか?」





④そして、御子柴さんの部屋まで動かしたのです。…凄く重かった


小林「待ってください!」

小林「それは…一人ですか?」

≪はい。シャーロックさんはあの後どこかに逃げてしまったので≫

≪私がしょうがなく指定地まで運ぶこととなりました…≫

小林「…一人だったのなら、逃げれば良かったのでは?」

≪……………だって≫

≪一人になっても、”奴ら”に見られてたのは間違いないんですもの…≫

小林「そっそうですか……」

小林「ちなみに、それは被害者を殺害してからいつぐらいの事ですか?」

≪そんなに時間は掛からなかったと思います。……1時間くらい後でしょうか≫

小林「…………」

小林(何か、凄い違和感を感じるな…)

小林「分かりました。ありがとうございます」




姫百合「中々それらしい事を言いますよね。あの証人」

小林「うん。シャーロックが主犯だと主張している以外はね」

ネロ「後、自分は被害者アピールもね」

コーデリア「つまり全滅です」

小林(…しかし、突っ込みを入れる箇所が少ないのは事実だな)

小林(気になる所に証拠品を突きつけてみようかな……なるべく刺激しないで)



次は20時55分からです




→④に証拠ファイル④割れたグラスとジュース


小林「異議!!」

小林「……御子柴さんを殺害した後、部屋に一人で移動した。間違いありませんか?」

≪はい。それは間違いありません≫

小林「……だとすれば…おかしいんですよ」

≪?何がですか…?≫

小林「この遺体の第一発見者は、犯行時刻の11時間後に御子柴さんの遺体を発見しています」

小林「そしてそこには、睡眠薬入りのジュースを飲んで意識を失っていた篠田久留美が居たのです」

ダンッ

小林「もし、篠田さんが部屋に入った時に既に壺が部屋にあったのなら!」

小林「どうして無関係の篠田さんが御子柴さんの遺体に気づかなかったのでしょうか!!」

≪………えっ!!?≫

≪そんな…知らない…そんなの私……聞いて……≫

小林「!」

小林(こいつ…篠田久留美が偽装工作された部屋で意識を失っていた事を知らないのか?)

北芝「聞いてない?当然でしょ」

北芝「貴方、事件後には団体に誘拐されてたんだから」

≪………………≫


「……多分、篠田さんは遺体が入っていた事を知らなかったんじゃないかな?」

小林「……」

≪だって私は、遺体を壺に入れただけなんですよ?それだけなら分からないんじゃないですか?≫

≪篠田さんは遺体に気づかずジュースを飲んだと考えれば……≫

北芝「異議あり!!」

北芝「それは…有り得ないわ」

≪!≫

北芝「発見時、遺体は頭の上に壺が乗っている状態だったのよ」

≪…それ、ただの悪ふざけじゃないですか?≫

≪シャーロックさんが、捜査の攪乱の為に…≫

小林「…残念ですが、その時シャーロックにはアリバイがあります」

小林「ミルキィホームズの皆と、栗野原さんが証明できますよ」

≪……………≫

小林「それに、この証拠品を見る限りだと被告人は知らなかったとは思えないのです」




小林「冷蔵庫に入っているジュースを飲む際には、必ず冷蔵庫を開ける必要があります」

小林「そして冷蔵庫には、被害者の血液反応が出ました」

≪………え?≫

小林「更に、その血液を拭き取った後さえあります」

小林「とても”知らなかった”とは思えないのですよ!」ダンッ

≪……うっ≫

≪うわぁぁあああああああああああ!!!   ダン  ダン  ダン≫

≪―――――ッ!!  ――――ッ!!   バタバタバタ≫


姫百合「こっ小林さん!刺激しないでってさっきから言っていたのに!!」

小林(しっしまった…!つい………)

≪……………≫

≪……でも、それでもシャーロックさんが殺した事は間違いありませんよね?≫

小林「…!」

≪だって…、それは事件の後の事ですよ?犯行時の時とは関係…ありません≫

≪あの時…殺したのはシャーロックさんなのです!!お願いです!信じてください!!≫

≪信じてくれないと……死んじゃうよぉ……!!≫

ネロ「ぐっ……くっ!!」

小林(……クソッ!この状況でシャーロックの無実を訴えるのは…無理…なのか?)

≪本当に…本当にシャーロックさんなんです!殺したのは……アイツなんです!!!!≫






カッ!!!

バゴゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ








ネロ「うわぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!」

コーデリア「きゃぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

北芝「うきゃぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」ガコンッ

北芝「あっ!?あああああああああああああ!!!!」ガココーンッ

ガシャン!
ガシャン!!

ガシャァアアアンッ!!!!

裁判長「うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!北芝検事が倒れて割れ物のダンボールが!!」

姫百合「ひっひぃいい!!」

≪なっ何?何ですか?一体、何なんですか!?」≫

小林「みっ皆さん落ち着いてください!ただの!ただの雷です!」

ネロ「はぁ…はぁ……状況が状況なだけに…超ビックリしたよ…」

コーデリア「しっ…死ぬかと思いましたわ……」

≪なっなんだぁ…ただのゴゴォオオオオオオオ……雷ですかぁ≫

小林「はい。なので安心して………!?」

小林「………!!」

姫百合「…え?どうしたんですか?小林さん…」

小林「……………」


小林「…神津、さっきの聞こえたか?」

神津≪ああ。おおよそ10秒くらいだ≫

ネロ「小林?一体何の話をしてるの?」

小林「…エルキュール達が見つかる」

姫百合「!」

コーデリア「ほっ…本当ですか教官!?」

神津≪咲!小衣!横浜裁判所から3キロ以内を徹底して調べろ!≫

小衣≪了解!≫

咲≪了解…!≫

神津≪小林、後10分…いや、5分時間を稼いでくれ≫

小林「…ああ、分かった!」

ブツンッ  ツー…  ツー……

小林「……………」

北芝「…ふんっ…!ぬっ…!」

北芝「……っしょぉ!!…ゼェー!…ハァー!……」

裁判長「おお、北芝検事…無事でしたか」

小林(よく生きてたな…)

北芝「……どうしたのよ弁護人?」

北芝「何か異議があるのなら、唱えてみなさいな」ニヤッ

小林「……分かりました」

ダンッ

小林「証人!貴方がシャーロックを真犯人として告訴しようとも…証拠が足りません」

≪そっそんな!でも…でも……本当にシャーロックさんが犯人なのに…≫

小林「なら、証拠を出して貰えませんか?」

小林「シャーロックが本当に殺人を犯したという証拠…それかもしくは」

北芝「”心当たり”とかぁね……」ニヤッ


≪……………≫

小林「現場には、確かにシャーロックのPDAが埋められていました」

小林「しかし、そのPDAの中には宛先が不明のメールが届いていたのです」

小林「……天城茉莉音さんからのメールが。それも、わざわざ匿名サーバーを用いた物をね」

≪……………≫

小林「茉莉音さんとシャーロックは友人関係があり交流もありました。そんな人から匿名サーバーをわざわざ使ってメールするでしょうか」

≪……………≫

≪…ちょっと待ってください。匿名サーバーが使われてたんですか?≫

小林「はい。それも特定不可能な…≫

≪そして、宛先が天城茉莉音だったんですか?≫

小林「はい。シャーロックの友人……」

≪それじゃぁ、間違いなくシャーロックさんはあの殺人団体の仲間です≫

小林「……何ですって?」

≪マリネと書かれた匿名メールは、あの団体から送られてくる殺人依頼のメールです≫

≪それは間違いありません。私の携帯の中にも同じような物がありますから≫

小林「………はい?」

≪私にも、同じようなメールが送られてきたんです。……今、シャーロックさんのPDAはありますか?≫

小林「はっはい。証拠品として…」

≪それじゃぁ、今から送りますから見てください≫



ピピッ!

ネロ「!シャロのPDAからメールが来た!」

小林「!」

北芝「弁護人!今すぐそのメールを提出しなさい!!」

小林「はっ…はい!!」





to:re:マリネちゃん

こんにちは、倉田 麻里さん。お久しぶりです。

そっちは今暗くないですか?ちょっと仕事して欲しい事があります

12月20日の午前二時に事務所の隣の空き地まで来てください。

運んでほしい物があります




裁判長「こっ…これは?」

北芝「パッと見、殺人依頼には見えないけど…」

≪でも、それで私は分かりましたよ?運ぶものも、何もかも……≫

≪恐らく、シャーロックさんには全部口頭で伝わっていたのかもしれませんが……≫

≪………でも、シャーロックさんに届いたメールにはもう一つの意味があったんだと思います≫

小林「もう一つの…意味?」

≪はい。恐らく偽装工作です…≫

≪マリネちゃんとシャーロックさんに交流関係があるのは秘密裡にされてません。知っている者も多いです≫

≪なので、それを利用していた可能性が…凄く高いです≫

小林「…………うっ」

小林「うぉおおおおおおお!!!」ビクッ



ザワザワザワ…ザワ……

「タシカニサツジンイライナラ、トクメイデモオカシクナイヨナ」「ジャァ、ヤッパリシャーロックサンガサツジンヲ?」



≪常に宛先も名前も変わってしまうのですが…間違いありません。最後にお久しぶりですもついていますし…≫

≪シャーロックさんに届いたのは、間違いなく殺人団体からのメールです≫

姫百合「そっ…そんなめちゃくちゃな…」

コーデリア「……でも、この証言を崩すには証拠品も無い…」

ネロ「僕のトイズでも、匿名サーバーを使われたんじゃ…」

小林「…否定はできても…崩すことができない……」

小林(…まさか…待っていたのか?)

小林(僕がこのメールを突きつけるのを…!)

裁判長「…これは、とても驚きの事実です」

裁判長「これが本当の事なら、シャーロック・シェリンホードは疑いなく被害者を殺した犯人と言えるでしょう」

北芝「…………っ!」

裁判長「それで、どうですか?弁護人。何か異議はありますか?」

裁判長「…と言っても。今は弁護側に非常に有利な状況ですが」

小林(異議…異議…!)

小林(この状況…異議を唱えられるのか?)



→異議を唱える

 異議を唱えない




→異議を唱えるを選ぶ


小林「異議!!」

小林「いくら匿名サーバーが使われていようとも!それが殺人団体から送られてきた確証はありません!」

≪ありますよ≫

小林「えっ」

≪私への送信先とシャーロックさんへの送信先が一緒だったら、それが証拠です≫

ネロ「確かに番号が一緒だよ…」

小林「うっ……!」

≪それに、シャーロックさんの内容が殺人依頼に見えないのは、偽装工作だって証言したじゃないですか…≫

裁判長「確かに、そう考えれば辻褄が会いますね」

小林「しっしかし!これが偽装工作に使われた証拠も…!」

北芝「そんな証拠…残ってると思ってるの?」

北芝「それに…証拠が少ないのは、私たちも一緒よ…!」

小林「うっぐっ…!」

カンッ

裁判長「…どうやら、立証されたようですね」

裁判長「共犯者からの自白。それを受け入れるのなら……」

裁判長「弁護人、北芝検事、異議はありますか?」


→異議を唱える

 異議を唱えない




→異議を唱えるを選ぶ


小林「異議あり!!」

北芝「異議あり!!」

小林「あのメールの届き主をシャーロックが把握していない可能性もあります!」

北芝「寧ろそっちの方が多いわよ!宛先名が知人のメールに警戒無く現場に来た可能性の方がね!!」

裁判長「…そうおっしゃっていますが、どうでしょうか?」

≪多分、それは無いんじゃないですかね…だって≫

≪送信するには、団体も知らなきゃ送れないですし…≫

≪それとも、シャーロックさんはその時現場に居なかったのですか?≫

小林「ウッ……!」

≪誰かがアリバイを証明できるのなら私も納得しますけど…無いんでしたら……≫

≪私はシャーロックさんが全ての主犯と主張させて頂きます≫

裁判長「……どうなのですか?弁護人。北芝検事」

裁判長「まだ、異議がありますか?」



→異議を唱える

 異議を唱えない





→異議を唱えない





小林「うっ…うぅ………」

小林「うぅ…う………う………」

小林「………………」

小林「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

小林「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

小林「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」




ネロ「………」

コーデリア「………」

姫百合「………」

裁判長「…どうやら、弁護側に異議は無いようですね」

裁判長「検察側は…」

北芝「…………………」

裁判長「…どうやら、同じのようです」

カンッ

裁判長「それまで!」

裁判長「この裁判はもう審議を必要としません」

裁判長「これは極めて明確な事件です」

裁判長「よって、これより判決を下します」








「待った!!!!」





小林「!」

北芝「!」

裁判長「!」





裁判長「………貴方は」


真田P「……その判決、ちょっと待ってください!」

裁判長「いっ一体何の用でしょうか?」

裁判長「貴方は、この事件に関係が…」

真田P「いえ、多いに関係あります」

真田P「御子柴さんを殺したのは……この私なのです」

北芝「…なっ」

北芝「なにぃぃいいいいいいいい!!!!?」

小林「!!」

カンッ

裁判長「そっそれは…自白ですか!?」

真田P「……はい」

篠田「…………」

裁判長「…とにかく、話してください」

裁判長「貴方があの時、何をしていたのかを」

真田P「………分かりました」






真田P「あの時私は、二階でデスクワークをしていました…というのは本当です」

真田P「しかし、一つ隠していた事があります」

真田P「私は二階の窓から事件現場を覗きトイズでトラックを動かし殺しました」

真田P「御子柴さんは…睡眠薬を飲ませて横にした後です」

真田P「私がシャーロックさんと初めて出会ったのは殺人を起こしてから9時間も後の事。なので彼女は関係ありません」

真田P「篠田さんも関係ありません。全て…私一人がやった事です」





小林「…………」

北芝「…………」

裁判長「…最早、何がなんだか分からなくなってきましたが」

小林(……とうとう真田さんまで出てきてしまった…!)

小林(くそっ…まだか!まだなのか!?神津!)

裁判長「証人、本当にそれは自白ととっても良いのですか?」

真田P「はい。間違いありま」

篠田「ちょっと待ったぁ!」

小林「!」

真田P「!?」

篠田「…プロデューサー。いくら優しいからって犯人を庇っちゃ駄目だよ!」

篠田「それに、私知ってるんだよ?二階からじゃ絶対に空き地の中は見えないってこと」

真田P「いえ、そんな事はありません。ちゃんと見え……」

篠田「裁判長さーん!この写メ見てくれませんか?」

裁判長「どれどれ…。これは…女の子がいっぱいな写真ですな。窓は…木の茂みが邪魔で全く見えませんが」

篠田「そうなんだよー。だってそれ、プロデューサーが働いてる部屋の写真だもん」

小林「!」

北芝「!」


裁判長「……なるほど」

裁判長「確かにこれでは、窓からトイズを用いたとしても動かす事は不可能ですね」

真田P「まっ…待ってください!本当に!本当に…私が!」

カンッ

裁判長「証人の意見は通りません」

裁判長「それ以上証言されるのなら、偽証罪を覚悟して貰いますが」

真田P「………っ!!」

ガクッ

真田P「……申訳…ありません……小林……さん…」

ネロ「…あの野郎…どうしてもシャロを犯人に仕立て上げる気だ…!」

≪……私の主張は変わりません≫

≪私は!この命を懸けてでもシャーロックさんを告訴します!!≫







ザワザワ…ザワ……

「オイ、コレッテドウイウコトダ?モウワケワカンナインダケド」   「トリアエズワカルノハ…シャーロックサンガサツジンイライノメールヲウケテイタコトダヨナ」

「オイオイ、ソレッテモハヤ…ドウカンガエテモ」    「シャーロックサンガハンニンジャナイカ…」


「ソレニ、ツウシンキノコモイノチカラガラジハクシテキタンダロ?ソレヲウタガウナンテ…」    「……モウ、アキラカジャナイカ」



「……シャーロック・シェリンホードヲ有罪ニ!!」

「クルミチャンヲ無罪ニ!!」



「有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!」


「無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!」



小林「……………」

姫百合「…かっ完全に傍聴席が……シャーロックさんの敵に…」

ネロ「…うっ…くっ…くそぉおおおおお……!」

小林(…まだ…まだ…なのか…?神津……!)







プルルルルルルルルルルルル   プルルルルルルルルルルルル




小林「っ!!!」

ネロ「きっ来た!」

コーデリア「きょっ教官!早く!」


ピッ

小林「もっもしもし!」

次子≪………あー……その……旦那?≫

次子≪そっちの方…今どうなってる?≫

小林「…どうなってるって?」

姫百合「聞いての通りですよ」



「有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!有罪!」


「無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!無罪!」



次子≪…………≫

姫百合「もう…もう限界…です……」

ネロ「後、どのくらい掛かるのさ!早くしてよ!お願いだから!」

次子≪………≫

次子≪…あのな、覚悟して聞いてくれ≫

小林「え…?」

次子≪小衣と咲が先ほどの雷の誤差で場所は特定できた。…できたんだ…≫

次子≪だけど…そこは……≫

咲≪…東京湾の、ど真ん中≫

姫百合「……は?」

小衣≪…図られたのよ…あいつらに…≫

小衣≪警視も…居ないし……もう…もう……≫

小衣≪これ以上…!どうする事もできない!!≫ダンッ

ネロ「…え?………え?」

咲≪もう…無理…証拠も…何も……無い…≫

平乃≪警視正も…偵察に行ったきり戻ってきません……≫

コーデリア「…嘘…でしょ?嘘………よね?」

小衣≪……………≫

小林「……………」

小衣≪……ごめん、なさい…≫


ブツンッ


ツー…    ツー…






小林「………………」

裁判長「……弁護人?」

小林「………………」

裁判長「…弁護人!」

小林「………………」

裁判長「…どうやら」

裁判長「弁護側も、もう異議は無いようですね」

北芝「…!」

ダンッ

北芝「ちょっと…小林!!何してるのよ!!小林!!」

北芝「アンタが!アンタが今ここで異議を立てなかったら…!!」


カンッ


裁判長「…もう結構です」


裁判長「共犯者からの勇気ある自白。これにより事件の真相は立証されました」

裁判長「事件の主犯は、検察側が共犯者として告訴したシャーロック・シェリンホード」

裁判長「そして被告人の篠田久留美には、犯行が不可能でした」

裁判長「偽装工作の部屋での異常な行動は、事件の主犯であるシャーロック・シェリンホードが壺から抜き出し配置した」

裁判長「被告人は、それまで壺の中に被害者が入っていた事など知らなかったのでしょう」

裁判長「そして、睡眠薬が入っていた事など知らないままジュースを飲んだ…」

裁判著「これは、極めて明確な事件です。議論の余地はありません」

≪…ほっ本当ですか!?≫

≪良かったぁ…私の自供が、事件を真相に導いたのですね!≫

小林「………………」

裁判長「…もう、異議も無いみたいですね」

≪はい。…そして、もうこれで…≫

≪この三つの証拠品も、必要無いみたいですね……   カチャリ≫

ネロ「…!!」

コーデリア「!!!」

小林「………!?」


小林「まっ…待て!待ってくれ!!」

小林「なっなんでだ…どうしてだ!?今!僕の依頼人は……」

≪はい!確かにそういう約束…”でした”よね?≫

小林「え……?」

≪でも、貴方は約束を破ったじゃないですか≫

≪……私の身が危ないから、警察は呼ばないでって…≫

小林「……!!」

姫百合「バ……バレて……」

ダンッ

小林「たっ…頼む!頼むから…!その…三人には…!人質…には!!」

≪……ごめんなさい。駄目です。だって、この証拠品があったら…私の身が危ないんです≫

≪事件が解決したのなら、壊さなきゃいけません≫

コーデリア「おっ…お願い…や……やめ……て…」

ネロ「………………っ」

小林「やめろ……やめろぉ!!」

小林「頼む!殺さないでくれ!篠田久留美は!彼女は!!ちゃんと……!!」

≪…………そうですね。そのお礼はしなくちゃいけません≫

≪ありがとうございま”した”。小林オペラさん………≫




バァアアアアアンッ!!    バァァンッ!!   バァァアアアンッ!!












小林「」









ネロ「」







コーデリア「」










姫百合「」









「…………………」

「……………」



「………」


































「聞こえるか?小林」




小林「!」

小林「そっ…その声…は…!」


「……ああ、俺だ」

「たった今、エルキュール・バートン。天城茉莉音。法条美樹を拘束し監禁していた誘拐犯を逮捕した」

「先ほどの銃声は、俺の銃の物だ」


小林「…!」


「安心しろ、殺してはいない。ただ、関節をいくつか撃ち抜かせて貰った。命に別状はないが、気は失っている」


姫百合「かっ…神津警視正!」

北芝「!!」

北芝「かっ神津くん!?…どっどうして!?」

「…候補は二つあった。咲と小衣は気づいていなかったが、どちらも平等に可能性のあった位置だ」

「だから、途中から別行動で行かせて貰った。そしたら、俺の方が正しかった…それだけだ」

小林「…かっ…神津!」

小林「皆は!エルキュールは!?茉莉音さんは!?美樹さんは!?」

「……………………」

「……小林…さん………」

小林「!!」

「…うっ動ける…体が…動きますよ…!」

「やっ…やった…!私たち…解放されたんだ…!!あの…トイズから!!」

「…私たち…は…大丈夫…です……。トイズで身体を動けなくされていましたが……今は…もう……」


コーデリア「…………」

コーデリア「…うっ…ううう………!!」

ガタンッ!

コーデリア「ううぅ…うっ……あああああああああああ……」ポロポロポロポロ

ネロ「…やっ…やったよ……」

ネロ「間に合った……間に合ったんだ………小林…」

姫百合「……………」ジワッ…

姫百合「………ッ」ギュッ

小林「………………」

小林(救えた……エルキュール達を…誰一人欠ける事無く……)

小林(良かった……!!)ガクンッ

「今から、 ブブブ  そっちに向か  ブブブ  ぅ」

小林「………?」

「その裁判  ブブブブブ  ま  ブブブブブブブブブ」

小林「神津?おい…?神津!?」

コーデリア「なっ…何よこれ…!?」

ネロ「…!?ハッキングだ…この通信機に何かハッキングが――」



―――ブゥゥウウウン…―――



≪……計画失敗。計画失敗。S=1534番を処分してください。S=1534番を処分してください。≫

≪方法、手段は問いません。S=1534番を処分してください。繰り返します。S=1534番を処分してください。≫

≪S=1534番を処分してください≫



―――ブツン―――




………………

………



篠田「…………………」

裁判長「……では、先ほど起こった事が何なのかは分かりませんが」

裁判長「この裁判も、これで終わりを迎えようとしています」

篠田「……タっ…………」

篠田「タスケ…テ………」カタカタカタカタ

小林「…………(これで、終わりだ)」

ネロ「さぁ!もうこれで僕たちに人質は居ないよ!」

コーデリア「早速奴の息の根を止めてやりましょう!」

小林「…いや、もうその必要も無いみたいだよ」

姫百合「そうですね。もう、彼女には”有罪にしてもらう”以外に選択肢はありませんから」

裁判長「この審議では、さまざまな議論が飛び交い、いくつもの真実が現れました」

裁判長「…弁護人、これで三度目の勝訴となりますね」

篠田「…っ!!」

小林「はい。…そういう事になりますか」

北芝「…全く、この私が三回も貴方に負けるなんて…屈辱よ」

篠田「……いっ…いや……」

カンッ

裁判長「…それでは、判決を―――」







篠田「待った!!!!!!!」





篠田「私が!!私が!!!!殺したの!!」ガシッ

篠田「私が!!私が篠田久留美を!!!!!!殺したの!!!!!!!」

裁判長「なっ…何を言ってるのですか?」

裁判長「篠田久留美は、貴方じゃないですか」

篠田「ちっ…違う…!!私は……本当は……!」


小林「異議あり!!」


ネロ「自分の罪を自白するなら、ちゃんと嘘偽りなく言って貰えるかな?さっきのプロデューサーみたいにじゃなくて!」ビシッ!


コーデリア「もし本当に貴方が殺したというのなら、それを証明してください!!」ビシッ!


姫百合「この事件の被害者は、御子柴華子ですよ?どうして、自分の名前が出てくるのですか!!」ビシィッ!


小林「……篠田久留美さん。もし、貴方が篠田久留美じゃないというのならば……まずはその証明をしてください」



小林「勿論、僕たちが納得する方法でね!!」ビシィィッ!






篠田「………………」

篠田「しょ…証明………」

篠田「でっ…できる…できるよ…うん…できる…」

篠田「…あっあああ…トイズ…早く…トイズを………」

篠田「…あああれ…?早く…早く……トイズを……!!トイズを!!!」

篠田「っ」

篠田「ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」ガシッ



ガンッ!!!!!!


篠田(シャロ)「ああああ!!あっ…できた…トイズが…発動……」

篠田(シャロ)「…え?あ…違う…違う…!この顔じゃ…この顔じゃな……!!」

篠田(シャロ)「いやぁぁああああああああああああああああああ!!!!!!」



ガンッ!!!!!!


篠田(洲水)「私…私の顔……わ…私……ちっ違う…」

篠田(洲水)「…なんで…?何で戻らないのぉおお!!?」


ガンッ!!!!!!!!


篠田(藍川)「違う!違う!違う!違う!」


ガンッ!!!!!!!


篠田(鬼瓦割)「これも違う!!私の顔!私の顔!!!」


ガンッ!!!!!!!


篠田(小林)「何で!?何で何で何で!!」


ガンッ!!!!!!!



篠田(栗野原)「いっ嫌だ!死にたくない!!死にたくない死にたくない死にたくない」


ガンッ!!!!!!!


篠田(アーグニャ)「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」


ガンッ!!!!!!!


篠田(茉莉音)「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」


ガンッ!!!!!!!


篠田(美樹)「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」


ガンッ!!!!!!!


篠田(プロデューサー)「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」


ガンッ!!!!!!!


篠田(マネージャー)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ガンッ!!!!!!!


篠田(先生)「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ガンッ!!!!!!!


篠田(北芝)「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ガンッ!!!!!!!


篠田(エルキュール)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ガンッ!!!!!!!


篠田(ネロ)「いやだぁああああ!!いやぁぁああああああああああああああああああああああ」


ガンッ!!!!!!!


篠田(コーデリア)「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


ガンッ!!!!!!!


篠田(姫百合)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


ガンッ!!!!!!!


篠田(コロン)「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


ガンッ!!!!!!!!!!!!


篠田(真田P)「あっ」



ガゴグシャッ





御子柴「」


御子柴「」     ヨロヨロ…ヨロ…


御子柴「」     ガクリ



ブシュァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


シャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


シャァァァァアアアアアア………



ピュルルルル……ピュルッ………



御子柴「」







バタンッ








裁判長「……………」

小林「…………」

北芝「…………」

裁判長「……それでは」

裁判長「先ほどの血しぶき、一本の華が咲くように凄い量でしたが……」

小林「…話して頂けますか?貴方がやってきた事を」


御子柴「………………」

御子柴「……はい。分かり…ました」






御子柴「留置所で、小林オペラさんに話した事…あれは…ほとんど本当の事です……」

御子柴「篠田…篠田久留美は、サイコパスの一員でした」

小林「それでは、貴方は?」

御子柴「私は……そのサイコパスに買われた奴隷のようなもの…です」

御子柴「あの時、私が………篠田を…殺しました……」

北芝「…それじゃぁ、あのテープは?」

北芝「そうだとすると、あのテープの存在とへし折った理由が不可解よ」

御子柴「……私は…私が…殺されない為にも……私を殺す必要がありました…」

御子柴「私のトイズで……私を篠田久留美に変えて…篠田を私にする為に……」

御子柴「テープで録音して…偽装する必要があった…のです」

御子柴「へし折ったのは……ただ…怖く…なったから……」

御子柴「いざ…私が篠田として警察に疑われたとなったら……怖く…なって……」

小林「…では、その時に録音された篠田さんの声は、本物の篠田さんだったのですね?」

御子柴「はい……まさか…録音されていたとは…思いませんでしたけど………」

御子柴「事件当日…篠田を殺した後に…音響室で録音したもの…です」

御子柴「まさか…まだ生きていたとは…思いませんでした…けど…」

御子柴「……私は…あの壺で…トドメを刺して…中に押し込んで…」

御子柴「芸能事務所には…カツラと衣装も豊富で…死体を偽装させて……」

御子柴「…顔を潰した後、私の部屋に運んで偽装工作をして…私は……」

御子柴「………あらかじめ睡眠薬を溶かしたジュースを飲んで意識を溶かして…」

御子柴「…そこで…私が捕まれば……テロ行為の計画が…白紙になると……思って…」


小林「…シャーロックを呼び出した理由は?」

御子柴「………まだ、話していませんでしたね」

御子柴「あの時…本当はまず私じゃなくて……」

御子柴「……シャーロックさんを殺す予定だったんです」

小林「!?」

コーデリア「なっ…なんですって!?」

御子柴「その後に…私が死んで…被害者と犯人が死亡している迷宮入りを作らせる計画…だったんです」

御子柴「…でも、私が篠田を殺したせいで…偽装して私が死んだようにに見せかけて……」

御子柴「…小林オペラの恰好をさせて、挙動不審にさせて…帰らせるようにしたのです」

御子柴「多分…彼女の事ならこれで夢だと思わせる事が可能だと…思っていたから…」

小林(シャーロックが見たっていう、僕が殺された光景っていうのは……まさか)

御子柴「その後…サイコパスの仲間が一人派遣されて…偽装工作と証拠の隠滅を行いました…」

北芝「…だからこの裁判、証拠品が少なかったわけね」

御子柴「……でも、それで終わりじゃ…無かったんです」

御子柴「この計画は……BRの皆…そして、クリスマスステージでテロを起こすまでの布石でも…あったんです」

北芝「なっなんですって!?」

裁判長「テッテロォ!?」

御子柴「はい…。この計画は、クリスマスでの大量大虐殺……」

御子柴「お客さんも…BRも…プロデューサーも…みんな…みんな死ぬ……殺す……そんな計画…」

御子柴「そこまで、計画されていました…。だから…殺したんです…篠田久留美を……。もう、続行は不可能になりましたが……」

御子柴「どうしてこの事件からテロまで繋がるのか…分かりませんし……聞かされてもいません…篠田久留美は知っていたみたいですが…」

御子柴「テロには彼女のトイズが必要だった…だからか…まだ私の正体に気づいていなかったサイコパスは…私の無罪判決を…求めていたのです」

小林「……あれ?」

小林「となると…どうして貴方は篠田久留美の姿のまま居たのですか?」


御子柴「……ただ…死にたくなかった…だけ……です」

御子柴「私が生き残って篠田を殺したと知ったら…間違いなく奴らは私を殺しに来ます……」

御子柴「他の皆も…どうなるか分からない…」

御子柴「だって…お母さんを人質にして…死ねと脅しに来た奴ら…ですから」

御子柴「だから…私は…シャーロックさんを犯人に仕立て上げて…エルキュールさんを……最終的に…死人を出さない為に……」

御子柴「……いえ、ただ…私が怖かっただけ…かもしれません…」

裁判長「……そうだったのですか」

裁判長「テロという大事にならなくて、本当に良かったですな」

御子柴「……はい。そう…ですね」

裁判長「…では、これより!この審議の判決を……」


「待った!!」




真田P「……その前に、一つだけ良いですか?」

裁判長「はいはい。なんでしょうか?」

真田P「…御子柴さんと、話がしたいのです」

裁判長「分かりました。閉廷が迫っていますので、お早めに」

御子柴「…………」

真田P「……御子柴さん、貴方は…」

御子柴「…うん、そうだよ。私が篠田を殺したの」

御子柴「ただ私が死にたくないってだけで、私はアイツを殺した」

御子柴「どんなに最低な奴だとしても…最後に聞こえた…あの「タスケテ」という声で…」

御子柴「本当は篠田が悪いんじゃなくて……サイコパスの奴らが悪いんだって…分かっていた筈なのに…!」

御子柴「……そのくせに、私はシャーロックさんを追い詰めて濡れ衣を被せて逃げようとしていたのです」

御子柴「エルキュールさんは……ううん、彼女の事も知っていた。誘拐される事だって知っていた」

御子柴「ただ、私は逃げる為に顔を変えた。逃げる為だけにあの顔を使ったのです…」


真田P「……確かに」

真田P「見て見ぬふりをして、自分だけ助かるのは褒められた事ではありません」

御子柴「…はい。その通りです」

真田P「しかし、貴方は全て喋ってくれました」

真田P「これから大虐殺が行われようとしていた事。そして自分のやった罪を」

真田P「そして、それらを含めて後悔している事も」

御子柴「…………」

真田P「御子柴さん」

真田P「私は、貴方の担当プロデューサーでもあるのです」

真田P「篠田さんが連れてきたとは言え、貴方がアイドルを夢見ていた目は確かに本物でした」

真田P「…私としては、アイドルを目指す理由はそれだけで十分です」

真田P「また、出所てきた時は。私の元に帰って来てください」

御子柴「…!?」

真田P「大丈夫です。貴方は全てを話してくれました。警察も誘拐現場に足を踏み入れています。貴方が出所てくる頃には貴方を狙うサイコパスも居ない筈です」

御子柴「……なんで…そんなに優しくするんですか…?」

ダンッ

御子柴「貴方は!誰に対しても優しすぎるんです!!」

御子柴「貴方が優しすぎるから…私は………篠田を…あいつを……殺せた……!!」

御子柴「……いえ、プロデューサーに罪をなすりつけるつもりは……ありません」

御子柴「私は、殺人犯なのです。そんな私は、もうアイドルなんて目指せませんし目指すつもりもありません。だから…」

真田P「…そんなものは、関係ありません」


真田P「私は、命を懸けて貴方をトップのアイドルにすると決めているのです。例え、過去に何かがあっても」

スッ

真田P「ですから、今度は逃げないでください」

御子柴「………!」

真田P「貴方が望むなら、私は意地でも貴方をトップアイドルにしてみせます。」

真田P「例えどのような障害が立ちはだかろうとも、貴方をどでかい華にしてみせますから」

真田P「だから、また戻ってきてください。勿論、笑顔で」

御子柴「………………」

御子柴「…あ……ううぅ………」


ポロポロポロ………


御子柴「あああああぁぁぁぁぁぁ…………」ポロポロポロポロポロポロポロr






裁判長「…それでは被告人、本当によろしいのですね」

御子柴「はい。もう大丈夫です」

裁判長「貴方はどのような理由であれ殺人を犯し、それから逃れようと他人を巻き込んだ」

裁判長「高等裁判所での量刑の審議では、多くの罪が課されるでしょう」

御子柴「…ええ。大丈夫です」

御子柴「私はもう、逃げるつもりはありませんから」ニコッ

裁判長「……分かりました」

北芝「………弁護人」

小林「…はい」

北芝「検察側は、篠田久留美を告訴したのではなく、目の前に居る人物に告訴した」

北芝「つまり、例え名前が違っていても検察側の主張は崩れない。故に負けていない。分かっているわよね?」

小林「はい。僕は依頼人を無罪にできなかった」

小林「だから、この裁判は僕の負けです」

北芝「……ふん」


カンッ


裁判長「では、これより審議の最終的な結論を下します」















【  有 罪  】





















ワーワー!   ワー!!   キャー!!

    ワァアアアアアア……   ワァァァァァァァ…








裁判長「それでは!これにて閉廷!!」




カンッ!!!








【横浜裁判所 第二控え室 12月23日 午後3時22分】




小林「………………」

小林「……や…………」

ガクンッ

小林「やったんだ…僕は……」

小林「シャーロックも、エルキュールも…そして正当な判決も下される結果に……辿り…ついたんだ……」

小林「……………う…うぅ……」

ネロ「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

ダキッ

ネロ「小林ぃいいいい!!やったぁああ!!やったんだよ僕たち!!やっちゃったんだよ!!」

コーデリア「教官!本当に…本当に…!!」ポロポロポロ

コーデリア「あああああ!!あああああああああ………」ポロポロポロポロ

姫百合「…うっ…うう……!!」ポロポロポロ

姫百合「だっ…駄目…です…涙…が…こんな顔…二人に見せられないのに……」ポロポロポロ

小林「…うん。君たちもよく頑張ってくれたね」

小林「でも、僕たちが今ここに居るのもG4と神津のおかげ…」


「うおおおおおおおおおおおおお!!!名探偵ぃいいいい!!!!」


ダダダダダダダダダダダダダダダダダ



小林「うっうわ!次子くん!?」

次子「聞いたぜおい!!アンタ、板挟みになってたってぇのに二人とも助けちまうなんてな!」

平乃「本当…本当に……!」ポロポロポロ

平乃「おめでとう…ございます……!!」ポロポロポロ

小衣「ちょっと待ちなさいよアンタら!この事件!裁判!どう考えても警視のおかげでしょ!!」

小衣「警視が誘拐犯を捕えてなきゃ!!こいつらでも確っ実に最悪の結果になってたんだから!!」

小林「…はは…。確かに否定できないな…」

咲「…本当、警視には敵わないなぁ~…出汁にされた気がしないでもないけど」

小衣「咲!何言ってんのよ!!警視が居なかったら私たちは!私たちはぁぁああ~~!!」

次子「はは!小衣!なんだかいつもより元気いっぱいだなぁ!やっぱりお前も嬉しいのか!」

小衣「はんっ!そりゃぁ警視の活躍に惚れ惚れすればテンションだって上がるわよ!決してあの馬鹿二人が助かったからじゃないんだから!!」

小林「…ははは。ありがとう…皆」




「…いや、俺だけの功績ではない」


小衣「!警視!」

小林「神津……今回は、本当にありがとう…!」

神津「ふん……礼なんぞ今はいい」

神津「それより、今は話すべき奴が居るんじゃないのか?」

ネロ「……え?」


「小林…さん……!」


小林「!……エルキュール!」

ネロ「エリー!」

姫百合「エルキュールさん!」

エルキュール「…わっ…私……」

エルキュール「小林さんが……ここまで…ここまで…」

エルキュール「…………ッ」


ガシッ


小林「うっうわ?」

エルキュール「…ありがとう…!」

エルキュール「ありがとう…ござい…ました……!!」フルフルフルフル

エルキュール「私も……シャロも……一緒に…一緒に…救って……くれて…!」ヒグッ  ヒグッ


神津「……お前が誘拐犯の通信機を法廷に出す程に追及しなければ、俺はここまで来ることが出来なかった」

神津「そして、G4が俺無しでも任せらえるようになってなければ、犯人の特定も二手に分かれる事も無かった」

神津「これは、お前たちがベストな結果を出してきた功績だ」


小衣「………けっ……」

小衣「けい……じぃ……!!」ジワァ…




茉莉音「小林さん!」

小林「!まっ…茉莉音ちゃん?」

茉莉音「今回の事は本当に…本当に…!ありがとうございました!!」

茉莉音「神津警視正も!私たちの事をここまで探してくれて…ありがとうございます!!」

茉莉音「……クリスマスライブも、出来なくなったのは…少し悔しいですが……」

茉莉音「…御子柴ちゃんが、あんな事しなければ…もっと大変な事になっていたのですね…」

小林「それは……うん。間違いないかもしれない」

茉莉音「…その事を、真実を明らかにしてくれて……ありがとうございます」

茉莉音「名探偵…小林オペラさん」ニコッ

小林(うっ…ううん、ちょっと照れくさくなってきたな)




「先生!!」


小林「!その声は…!」

ネロ「シャロ!……と、北芝検事…」

北芝「…………」

シャロ「……先生!!うわぁあああああああん!!!!」

ダキッ

小林「どっどうしたんだい?シャーロック?」

シャロ「…エッエリーさんが…エリーさんと茉莉音ちゃんと美樹ちゃんが…大変だったことを…今知って…」

シャロ「でも…それが助けられた事を今知って…うっ…ううううう……」

北芝「…………」

シャロ「すっっっっごく!!嬉しいです!!」

小林「……うん。そうだね」

小林「僕も…凄く嬉しいよ」

北芝「……呑気なものね」

小林「!」

北芝「貴方は、今回の裁判。負けたのよ?この私に」

小林「………」

ネロ「なっ…!この!ガルルルルルル!!」


北芝「……なんともまぁ、逆転逆転そのまた逆転したのに最後は」

北芝「負けてしまうなんて、結構な笑い話よね」

小林「……北芝検事。僕は――」

北芝「おかげで、こっちはちっとも勝った気がしないわ!だから、覚悟しなさい」

北芝「次の裁判!今度こそ完膚なきまでに叩きのめしてやるんだから!!」ビシッ

小林「…………」

コーデリア「やれるもんならやってみなさい!!」

ネロ「次小林と当たる時に吠え面かくのは、お前の方だよーっと!」

エルキュール「この裁判を乗り越えた小林さんは…もう……誰にも負けない…!!」

シャロ「今度は私たちだって弁護席に立つんですから!!覚悟!!」

北芝「……ふん」

北芝「何人来ようが、同じことよ」ニヤッ

小林「……ははは」

小林(北芝検事も…素直になれないけど嬉しいんだな)

シャロ「あれ?そういえば茉莉音ちゃん!」

茉莉音「ん?」

シャロ「美樹ちゃんはどこに行ったんですか?」

茉莉音「…あれ?そういえばさっきまでそこに……」



美樹「……………」



茉莉音「あっ!居た。美樹ちゃん、どうしたの?そんな所で」

美樹「………ねぇ、茉莉音…」

茉莉音「ん?」

美樹「私……アイドル辞めるかもしれない」

茉莉音「…えっ」

茉莉音「ぇぇぇええええええええええええ!!!!?」

シャロ「ええええええええええええええええ!!!!!?」

茉莉音「どっ…どうして!?美樹ちゃん!私たちやっと解放されたのに!」

姫百合「…また誘拐される可能性を考えてるんですか?」

美樹「ううん…そうじゃないの。あのね…あそこに……神津警視正さんが居るじゃない…?」

茉莉音「うん、小林オペラさんの友人だよね。あの人のおかげで助かったけど…それがどうかしたの?」

美樹「私…………本物の恋に目覚めたみたい…」

茉莉音「え?」

美樹「ううん…これは恋なんかじゃない…これは……”愛”!!」

美樹「ちょっと今から神津さんに告白してくる!!」ダッ

小衣「!!」

北芝「!!」

美樹「あの!!神津さん!!」

神津「何だ」

美樹「私と!結婚を前提にお付き合"っ」メキッ

北芝「させるかぁぁあああああああ!!!!」ゴメキッ

小衣「北芝ぁ!!そいつの両足!5の字に固めてやりなさい!!」ギリギリギリギリギリギリ

北芝「言われなくてもそのつもりよ!!うららぁあああああ!!!!」ギリギリギリギリギリ

美樹「ぎゃぁぁあああああああ!!痛い痛いギブギブギブギブギブ!!」

北芝「明智ぃ!!そいつキャメルクラッチして喋れなくしてやりなさい!!」ギリギリギリギリギリ

小衣「言われなくてももうやってるわよぉおお!!!」ギリギリギリギリギリ

美樹「――――っ!!――――――っ!!!!」バタバタバタ

神津「…何してるんだお前ら?」

小林「ははは。神津も罪な男だなぁ」

コーデリア「………」

ネロ「………」

シャロ「………」

エルキュール「………」

茉莉音「…………」


「………小林オペラさん」

小林「ん?…あっ!貴方は……」

真田P「……今回の裁判、本当に……誠に感謝致しております」ペコリ

真田P「お疲れ様でした…。謝礼金は、後日お支払い致しますので」

小林「いっいえ…僕は、依頼人を救えなかったので…」

ネロ「おっ!謝礼金だって!今度は何を食べようかなぁ~」

コーデリア「明日はクリスマス・イヴ!クリスマスライブが無くなった今、代わりを思い切り楽しまなきゃ!!」

姫百合「あっあの!コーデリアさん!!」

藍川「…………」

栗野原「…………」

鬼瓦割「…………」

アーグニャ「…………」

洲水「……………」

コーデリア「あっ………」


シャロ「あっ…あのですね?コーデリアさんは悪気があったわけじゃぁ~…」

洲水「…心配しなくても、ちゃんと分かってるから」

藍川「まぁ、テロられる可能性のあるライブなんかやっても楽しくないからね~」

真田P「……その説については、本当に申し訳ございません」

真田P「皆さまが頑張って来た練習を無駄にしてしまい…私は何とお詫びしたら…」

鬼瓦割「…あー、そういうのはもういいから」

鬼瓦割「そんなの、次のライブに回しときゃ良い事だし」

アーグニャ「Да。ワタシタチ、頑張ります」

栗野原「……むしろ芸能界なんてこんなことばかりだぜぇ…ドタキャンドタキャンまたドタキャン…ケケケ!」

真田P「…そう言ってくださると、助かります。しかし…それでも……」

洲水「もう、クドいよプロデューサー。そんなにクリスマスライブが残念だったのなら」

洲水「私たちを、もっとすごい所に連れてってよね」

藍川「おっ!そうそう!クリスマスライブを生贄に更に強いライブステージの召喚!!」

鬼瓦割「まぁ、お互い頑張れば良いだけだろうしな」

アーグニャ「Любимый! 待っています…!」

栗野原「……プロデューサーの事、一番信じてるんだからね……」

真田P「…………!」

真田P「……分かりました」

真田P「大きくなりましょう…!BRも…ずっと…大きく…」

藍川「おう!御子柴っちが紛れても人気が変わらないくらいに大きくなろうぜぇ!」

洲水「ふふ。…最高のお出迎えになるようにね」

真田P「はい……!ありがとう…ございます…!」

小林「……………」フフッ


シャロ「あー!ほら!見てください!!」

ネロ「え?何さ…えっ!?」

コーデリア「どうしたの?シャロ」

エルキュール「…あ…うわぁあ……」

小林「…凄いな。さっきまでの台風が…嘘のように……」

姫百合「雲ひとつ無い快晴に……」

シャロ「ほら!あれ!」




シャロ「すっごく大きな虹です!!」




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小林(そして、この絶望的な事件は幕を閉じた)

小林(僕たちの事務所の帰路の途中、看板に引っかかっていたコロン君が居たのでシャロのトイズで救い出す事にした)

小林(びしょびしょなコロン君は、右手に変な液体が入っているペットボトルを握り、気を失っていた)

コロン「こっ…これがぁぁぁ~……最後の証拠品やでぇぇ…師匠ぉぉ~~……」

小林(彼女には後でホットココアを飲ませながら裁判の行方を語ってあげよう)




小林(そして来る12月24日…目が覚めると僕の事務所はクリスマス一色に変貌していた)

小林(どこから持ってきたのか巨大なクリスマスツリー。たくさんのプレゼント。何故か減っている僕の通帳の残高)

小林(ミルキィホームズの他にも、コロン君や姫百合君、探偵学園の友達や教師までもがクリスマスを楽しんでいた)

小林(特にアンリエット会長は、ずっと気絶して把握してなかったのか今回の裁判のあらましを聞きたがっており、少し戸惑った)

小林(そしてクリスマスライブが無くなって暇になった茉莉音さんや美樹さん。川澄Pやマネージャーさんも居た)

小林(真田さんは休日を拒否して仕事に行ってるんだとか。とても仕事熱心な方だと感心してしまう)

小林(BRの皆も自主練で今は練習しているのだという。彼もレッスンの先生として指導しているそうだ)

小林(G4の皆は…「警察にクリスマスなんか無い」との事で今日も仕事らしい。神津が見つけた誘拐現場の調査もあるからだそうだ)

小林(でも、今年は神津が居るからか小衣くんは少し嬉しそうだった)

ネロ「ねぇねぇ小林ぃ~、僕達からのプレゼント、何だと思う?」

小林「ええ?ううん…それって万が一でも当たってたら駄目なような…」

コーデリア「何を言ってるんですか教官!こういうのは、当たらないから面白いのです!」

エルキュール「一生懸命…選びました……」

シャロ「先生ー!早く開けてくださいー!!」

小林(皆に急かされて開けた、プレゼントの中身は……)

小林(皆の色が入っているネクタイだった)

小林(こんな時間がいつまでも続いてほしい。この時、心の底からそう思った)








小林(……だけど、現実は僕が思っている以上に残酷である事を)

小林(12月25日クリスマスに知る)




【小林探偵事務所 12月25日 午前8時10分】


小林「…うっ…んん……」

小林「……しまった。床で寝てしまったか」

小林「彼女たちも床で寝てしまってたから、部屋に戻さなきゃと思っているうちに……そうだ、彼女たちもまだ寝ているのかな?」

白い髪の少女「…………」

小林「…あれ?君は」

白い髪の少女「…………」

小林「君も、昨日のクリスマスパーティの中に居たのかな?」

白い髪の少女「…………」

小林「…どうして、そんな悲しそうな顔をしているんだい?何かあっ……」



立ち上がった時、机が邪魔して見えなかった壁には………



おびただしい血痕と割られた窓。壁には”ミルキィホームズは死ぬ”の文字


そしてそこに……4人の姿は無かった……















第四話  「紅い花畑の中心で」


【終】



今回はこれでおしまいです。
次回は新しいスレを立てて投下しようと思います。

いつもの

御子柴華子

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