小林オペラ「この裁判…逆転してみせる!」 (108)

ナルホドくんみたいな小林先生が見たかった



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ニャル夫「真尋少年を誘拐したったwwwwwwwwww」

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小林「温泉旅行か…」

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シャロ「先生が記憶喪失!?」

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『……………』

死体を引きずる白い髪の少女が一人、建物の狭間から覗く星の光を見ていた。

ロンドンはここ最近、曇り空が続いていたからか、今日の夜は特別のように思えたのだろう。

その光から漏れる煌きとほんのりと暖かい風を感じながら、白い髪の少女は上を見上げる。

上を見上げながら、死体を引きずる。

『……………』

月には女性の横顔が映っている。

その女性の目には、まるで私を見て恨み言を呟くの如く醜い目をしていた。

いや、きっと私が醜いからかもしれない。

その月だけは好きにはなれなかった。

曇り空が続くロンドンには珍しいこの月は、白い髪の少女はどうしても好きにはなれない。

月の周りに煌く星は、こんなにも美しく輝いているというのに。

そんな事を思いながら歩くと、引きずっていた死体の首が千切れた。

脊髄と背骨が一気に抜けたのか、殺した時にあばら骨が滅茶苦茶になったのか、首に繋がる脊髄がまるでアーサー王の剣のように伸びていた。

だが、引き抜いてしまうと背骨は情けなくしなっと垂れてしまう。

そのだらしない脊髄を見て、少女はクスリと笑い

再び死体を持ち直して、白い髪は輝きこの星空が煌く夜空の下で死体を引きずり続けた……。


第一話  「白黒つける」


小林「…………」

小林(僕が横浜を去ってから2年半。そしてミルキィホームズが来て去ってから2年程の時間が経過した。)

小林(その間に僕はIDOに所属し、いくつもの事件に関わってきたがトイズは未だ戻らず)

小林(彼女達とも連絡は最近取れていない。今、彼女達はどのような事になっているのだろうか)

小林(僕の方は、IDOに所属してからは給料も出ている為、家賃にも食事代にも困ってはいない。)

小林(一度、神津から様子を見てきて貰ったところ、どうにも酷い有様になっていたようだが……)

小林「……その酷い有様を見る…というのは、少し覚悟が居るな。」

小林(そして、その有様をいまだに確認できていない僕は…この世の中でも臆病者の方なのだろう。)

小林(……それにしても・・・…)

小林「ここ最近のロンドンは平和だな…。もう3ヶ月も仕事が来ていないや。」

小林「仕事もしていないのに給料だけ貰うというのは…何だか非常に気分が良くないな。だからと言って、事件が起こって欲しいとは思わないが…」

小林「……何て、思っていたのに。」

カタァーン

クイーン「小林オペラ。留置所での生活はどうかしら?」

小林「どうして僕が……殺人事件の犯人として拘束されているんだ…?」


小林「クイーン警視!本当に一体全体何が起こっているというのですか!?僕には何も聞かされていないのですよ!?」

クイーン「申し訳ないけど、容疑者に事情を説明する義理はこちらには無いわ」

小林「いやだからと言って…僕は昨日!本当に部屋で本を読んでいただけなんです!その時間、依頼人だって来ていた!……一人だけだったけど」

小林「その依頼人に話しさえ聞いていれば…!」

クイーン「……その依頼人というのが、この人?」ピラリ

小林「ええ、そうです。確かにこの男性でした。依頼内容だって覚えています。確か、娘が僕に会いたがっているとかで誕生日に来てくれないかと…」

クイーン「そう、この”被害者”に二人きりで会った事がある…というのね」

小林「はい……え?ひっ被害者!?」

クイーン「…白を切るつもりかしら。貴方が殺したんでしょう?」

小林「まっまさか!違いますよ!さっきも言ったでしょう!僕は昨日ずっと部屋から出ていないんです!」

クイーン「…」バンッ

小林「っ」ビクッ

クイーン「……この男性が殺された場所で、アンタの指紋がどれほど付着していたか分かる?」

小林「…えっ?」

クイーン「よくもまぁ…あんな惨たらしい殺し方が出来たものだわ。男の頭部は内部から破壊され、裂かれた腹部には大量の生ゴミが押し込められ…」

小林「………」



証拠ファイル①カーリー・ヘプバーン 解剖記録

【頭部が内側から破壊され即死、裂かれた腹部には生ゴミが押し詰められていた。死亡時刻は11月10日16時45分】


小林「…そんな猟奇殺人事件に、僕が容疑者として疑われているんですか?」

クイーン「私だって、ミスター小林。あなたがこんな殺人をするとは思っていなかったわ。でも」

クイーン「現場では、どう考えても貴方が犯人に結びつくような証拠しか出てこなかったのよ」

小林「そんな……」

小林(有り得ない…。僕は、絶対に昨日は部屋の外から出ていない筈だ。)

小林「…げっ…現場はどこなんですか!?」

クイーン「ブレーディン・ハート・ヤード通りの聖母マリアの絵の前よ」



証拠ファイル②カーリー・ヘプバーン 殺害現場

【ブレーディン・ハート・ヤード通りの聖母マリアの絵の前で遺体が見つかった。絵の聖母マリアは心臓を5つの剣で貫かれている。】


小林「やっぱりそこには行っていない!監視カメラの映像とかは無いんですか!?」

クイーン「あるにはある。でも、犯人の姿は映っていないわ」

小林「だとしたら!」

クイーン「上から降ってきていたのよ」

小林「……え?」

クイーン「遺体は、上から降ってきていた。」

クイーン「だから映像には、上から振って来た被害者の姿しか映っていないわ」



証拠ファイル③殺害現場の監視カメラ

【遺体は上から降ってきており、その映像がこの監視カメラに記録されている。上からは人影もあり、カメラを見ている】


小林「……その…現場に……」

小林「僕の指紋が検出されて…僕は今……ここに居るんですか…?」

クイーン「遺体からは貴方の指紋しか検出されなかったわ。それに」

クイーン「男の腹部から、生ゴミに混じって貴方の私物が入っていた」

小林「っ!?…それは……あの子達の…」

クイーン「以前来ていた、あの教え子達のリボンのようね」

クイーン「正直、貴方がどんな理由でこんな殺人を犯したのか分からないし、どうやって殺したのかも分からない。でもね」

クイーン「警察もマスコミも、皆貴方が”殺人犯”と決定付けるかのように報道しているわ」

小林「……まだ、裁判は終わって居ない筈ですよね?」

クイーン「ええ。でも、警察も裁判官も検察も全部……貴方の敵よ」

クイーン「こんな惨殺な事件を起こしたのだから当然よね」

小林「だから僕はやっていな…」

クイーン「なら、それを証明してみせなさい」

小林「…………」

クイーン「…まぁいいわ。後一時間後に裁判が始まる」

クイーン「せいぜい、貴方は自分の無実を主張する事ね」プイ



スタスタスタスタ………


バタン




小林「…………」

小林「……」

小林「…これは……」

小林「一体……何が起こっているんだ……?」



~カウンティ裁判所 第3法廷室~



カンッ!!


裁判長「これより、小林オペラの裁判を開廷する。」

裁判長「検察、弁護共に準備はよろしいですか?」

ガウディル「裁判長」

ガウディル「検察側は、準備完了しておいでませ」ピシッピシッ

裁判長「よろしい」

「…………」

「………………」

裁判長「………」

裁判長「……ところで、この裁判に弁護人が居ないようですが」

小林「…………」

小林「…本当だ……何でだ……?」

ガウディル「それは当然の事でしょう。裁判長さま」

ガウディル「この事件は極めて明白。死刑以外の刑罰が不可避。その事により…」

ガウディル「弁護人がついてようがついていまいが、大した問題じゃありませんことよ!」ピシーン

小林(いや…大問題だろ!)

裁判長「……そうですか」

小林(えっ?納得しちゃうの!?)

ガウディル「このガウディル、大罪人である小林オペラを華麗に!そして繊細に!芸術的に死刑台に送ってみせますわ!オーッホッホッホッホ」

小林「………」

裁判長「……分かりました。それではガウディル検事、冒頭弁論をお願いいたします。」

ガウディル「了解いたしましたわ」ビシーン

ガウディル「被害者はカーリー・ヘプバーン。32歳で既婚者ですわ」

ガウディル「被害者は頭部を内側から破壊され、腹を割かれて生ゴミを詰められて眼球が焼かれ……おおっ何て汚らわしい遺体で……」ブルブル

小林(…ちょっと失礼すぎやしないか?)

ガウディル「挙句の果てには、レストランの屋上から突き落とされマリア様の絵の前に落ちた事だけが唯一の救いだったと思います」

ガウディル「だって…その縁あってかこの私!ガウディルが真犯人を処刑してみせますのだから!」

ガウディル「おーっほっほっほっほっほ!!」

小林(………随分と自信家なお嬢さんだな…)

裁判長「……分かりました」

裁判長「それで、証拠品がこの三つ。確かに証拠としては不十分な気がしますが」

ガウディル「いいえ。まだちゃんとした弁論がまだですわ」

ガウディル「それじゃぁハートリー・クイーン警視!入ってきてくださいな!」


クイーン「…………」

ガウディル「証人、名前と職業をお願いくださいませ」

クイーン「……ハートリーン・クイーン。警視をやっています」

裁判長「警視……それほどの階級の方が冒頭弁論を…」

クイーン「裁判に階級は関係がありません。早速冒頭弁論を開始したいと思います」

ガウディル「ふふふ。クイーンちゃんったらイケズなんだからぁ」

小林「…………」

小林(…皆……)

小林(本当に……僕を犯人だと思っているのか…?)



【証言開始】



①遺体は、ブレーディン・ハート・ヤード通りの聖母マリアの絵の前で見つかりました。


②こちらの解剖結果によると、まず頭部を破壊された後に腹部を裂かれています。抵抗の跡が無い事によりそう結果づけられました。


③その腹部の生ゴミの中には被告人の私物と思われる物が…。


④それぞれお色の違う三つのリボンです。どうやら、被告人の教え子の物だったらしくて…


⑤他、男性の身体には被告人の指紋が検出されました。これにより警察は被告人を容疑者として確保したまでです。


ガウディル「……被害者は、殺される前に一度被告人に会ったそうです」

ガウディル「被害者の娘さんは、どうやら被告人のファンだったらしくて。誕生日に来て欲しいと依頼したそう」

ガウディル「その誕生日が……”明日”なんですけどね」クスクス

クイーン「…………」

裁判長「……それは、何とも悲しい事件です」

裁判長「被告人の、動機が気になる所ですな」ギロリ

小林(…裁判長と思われる人が、僕を酷く睨みつけてきた。)

小林(……あれ?何かおかしくないか?)

裁判長「それで、被告人の教え子というのは…?」

クイーン「今回の事件には関係ありません。ただ」

クイーン「被告人が日本に住んでいた時。4人の少女の教育を受け持っていたそうです。」


証拠ファイル④ミルキィホームズ

【4人の少女と一人の教官で成り立つ探偵グループ。二度横浜を救った記録と関係者のトイズが記されている】

ガウディル「4人の少女…?教育……!?」

ガウディル「……」ゾワワッ

ガウディル「被告人!!貴方…この裁判が終わったら、もう一つの裁判を覚悟しなさい!!」

小林「一体何を想像したんですか貴方は!?」


カンッ


裁判長「被告人!静粛に!!」

小林「なっ」

小林(どうして僕だけが怒られなくちゃいけないんだ!?)

ガウディル「こうしてはいられません…一刻も早くこの裁判を終わらせ4人の少女の救出を…!」

クイーン「…そのようなふだしらな関係は記録上ありませんでした。なので検察側は不確かな妄想を確信にしないでください」

小林(………しかし)

小林(何かが…何かがおかしいぞ?何だこの違和感は…)

裁判長「それでは、弁護人は尋問を……」

裁判長「…と、言っても。この裁判には弁護人は居ないのでしたね」

ガウディル「ええ。それに、私達は真実しか言っておりません。それに、もう事件は明白ですわ」

クイーン「…………」

裁判長「……確かに」


裁判長「遺体の腹部には被告人の私物、そして遺体には被告人の指紋が検出されています」

裁判長「…これは、証拠としては十分」

小林「!」

小林(マズイ…このままでは……)

小林(何も分からないまま…裁判が終わってしまう!!)

裁判長「それでは、審議を言い渡します」

小林(考えろ…考えるんだ小林オペラ!)

小林(この事件には違和感がある!その違和感をここで…ここで突きつけて!)

小林(動け…動け!!)

小林「…………まっ」





④それぞれお色の違う三つのリボンです。どうやら、被告人の教え子の物だったらしくて…
    ←に、証拠④を突きつける



小林「待ってくださいっ!!!!」

ガウディル「っ!」

クイーン「……っ!」

裁判長「……なんですかな?被告人」

小林「…一つ、だけ発言をさせてください」

ガウディル「必要ありませんわ。この裁判は全てが明白。罪人は大人しく刑罰を待つ事ね!」

裁判長「…ええ。確かにその通…」

クイーン「…良いわ、言ってみなさい」

ガウディル「っ!?なっ…警視あなた!」

クイーン「今は被告人だけど、彼は腐っても探偵でしょう?何か分かったのなら発言させて損は無いわ」

クイーン「それに、間違っていたら私達が容赦なく叩けば良い」

ガウディル「………」


クイーン「それで、一体何に気づいたの?被告人」

小林「はい。……と言っても、些細な事ですが」

小林「まず、僕の教え子の人数は把握していますよね?」

クイーン「ええ。確か4人だったわね」

小林「そして、遺体の腹部にあったリボンの数は?」

クイーン「三つだったわ」

小林「……どうして、三つなのでしょうか?」

クイーン「………」

小林「どうして、一人残すという事をしたのでしょうか?」

ガウディル「……何かと思ったら馬鹿馬鹿しい。そんなリボンの事なんて関係無いじゃない!」

ガウディル「それとも何!?貴方はそのリボンが被害者を殺したとでも言うの!?」

小林(それは極論すぎやしないか…?)

小林「これは、僕の教え子の写真なのですが。ちょっと見て貰えますか」

裁判長「おお…これはこれは。何とも自己主張の強い色ばかり…」

裁判長「ますます目が悪くなってしまいそうです」

小林「クイーン警視、現場にあったリボンの色は何色でしたか?」

クイーン「……紫と、黒と、白……あっ」

小林「そうなんです。僕は、彼女達の教育係をしていました。そして彼女達の色は写真の通り」

小林「ピンク、黄色、緑、青。そう…」

小林「何一つ、合ってないんです!!」




ざわざわ…ざわざわざわ…



クイーン「………」

小林「それに、彼女達のリボンはちゃんと金庫にしまってあります。開けられた形跡もありませんでした」

小林「警察は今、家宅捜索をしているでしょうが、その時に見つかるでしょう」

小林「本物の、彼女達のリボンがね!!」

クイーン「………」

クイーン「……それで?」

小林「え?」

クイーン「腹部になったリボンが貴方の物じゃないと分かって、何が分かるの?」

クイーン「そのリボンにも、貴方の指紋が検出されているのよ?私物じゃなかろうが関係無いわ」

クイーン「たかがリボンにツッコミを入れたって、状況が覆されるわけじゃないのよ?」

小林「うっ…」

小林(たっ…確かに……)

ガウディル「ふふふ…残念だったわね小林オペラ」

ガウディル「これにて!貴方の攻撃手段は潰えた!では裁判長!早速この審議に決着を!」

クイーン「いえ、まだよ」

ガウディル「……あらぁ?」

クイーン「私のほかにも、まだ証人が二人居るでしょう。彼女達の紹介は良いの?」

小林(えっ?しょ…証人?)

ガウディル「でっでも!もうこいつが犯人なのは明らか…」

ズイ

クイーン「被告人を潰すなら、徹底的に潰しなさい。中途半端は私が一番嫌いな言葉よ」

ガウディル「……ふっふん!分かったわよ。やれば良いんでしょやれば」

小林(…………証人か…)

小林(一体、僕を犯人に仕立て上げる証人って…どんなのだろう)

小林(……いや、それよりも…あのリボンが僕のじゃないとすると)

小林(どうして被害者の腹部にあのリボンが?それに、どうして僕の指紋が?)

ガウディル「それじゃぁ検察側は、第二の証人を召喚するわ!」

ガウディル「入って来なさい!怪盗フェアリーズ!」

小林「…………」

裁判長「…………」

小林「……え?ええ?」

裁判長「かっ…怪盗!?怪盗と言いましたか!?今!」

ガウディル「ええ、そうだけど?」

裁判長「かっ怪盗が証人なのですか!?一体、何を…」

ガウディル「本人達は怪盗と名乗ってるけど、実際犯罪を犯した事は無いわよ」

ガウディル「まぁ、怪盗というよりはアイドルグループって言えばいいかもね」

小林(どんな怪盗だよ…?)

ガウディル「とにかく!早く連れてきなさい係員!!」



……………………


裁判長「……それでは証人、名前と職業を」

黒い子「…………」

白い子「…………」

ガウディル「…証人、名前と職業を」

黒い子「…ふふふふ…!我らは漆黒のロンドンの夜…黒猫のように街を駆け抜け猫のように俊敏に獲物を捕らえる」

黒い子「我の名は!クレアストーム・ブリア!!」シャキィーン

白い子「くっくっく…!我らは美しく舞う白猫のように宝石を纏い光を我が物にする純白の天使!」

白い子「我の名は!フランダース・サファイストルム!!」

黒白「我等!!ロンドンの猫怪盗!チェスター・キャット!!」

小林「…………」

裁判長「…………」

ガウディル「…………」

クイーン「…………」



ワァァァァァァァ……

チェスターキャット!チェスターキャット!チェスターキャット!


クレアストーム「ふっふっふ…我等の知名度も中々上がったものだな」

フランダース「そうね。私達は美しい故に目立ってしまう…怪盗の宿命かしらね」

ガウディル「……名前と職業はそれでいいのね。分かったわ」

ガウディル「それじゃぁ、貴方達はあの男をご存知?」

クレアストーム「むっ!?あっ…あいつは!昨日血にまみれて笑っていた奴では無いか!」

フランダース「本当だわ。あの時の夜は…とても刺激的だった」

小林「…………」

フランダース「怪盗の私達でさえ狂気に感じたこの男…うむ。これこそ私達の宿命でしょう!」

クレアストーム「チェスター・キャットの名の下に!我等が成敗してみせよう!」



チェスターキャット!チェスターキャット!チェスターキャット!


小林(……こっ…)

小林(この人達に…尋問しなくちゃいけないのか僕は…)



【証言開始】

①それは、私達が大英博物館で下見をしてきた後の事だった…


②夕方の16時、帰り道にいきなり大きな音がした。


③その大きな音の方へと見ると……一人の男性の遺体が落ちてきたのだ。


④私達は怖くなって、急いで警察に通報したのさ


⑤その時、屋上で誰かが逃げて行ったを見たけど、私は目が良いから顔が見えたのよ


⑥あの男を殺した真犯人こそ!かの有名な小林オペラ!そいつに間違いない!!


裁判長「……なんと」

裁判長「貴方達は、犯人の顔を見たのですか!」

フランダース「ええ。間違いなくその男だったわ」

クレアストーム「血に濡れたあの邪悪な顔…見逃す筈が無い!」

ガウディル「…ふふっこれはこれは……」

ガウディル「ますます、私の勝利を確信たるものですわねぇ…」

小林「…………」

裁判長「それでは弁護人、尋問…いや、弁護人は居ないのでしたね」

小林(またこの流れか…)

ガウディル「だから何度も言っているでしょう。この裁判に弁護人は必要無いと!」

裁判長「…………そうですね」

裁判長「被告人も、それで良いですよね」

小林「いや、だから全然良くありませんよ!」

裁判長「被告人!静粛に!」

小林「言っている事滅茶苦茶ですよ貴方!?」

クレアストーム「殺人鬼に弁護なんて必要無いのよ」

フランダース「私達は真実を盗む怪盗、故に偽りを許さない正義の使者なのだから!」

小林(設定が増えてる……)


ワァァァァァァァ……

チェスターキャット!チェスターキャット!チェスターキャット!



小林「うっ…ぅぅ……」

クイーン「…………」

クイーン「……異議」スッ

ガウディル「あら、何かしら?クイーン警視」

クイーン「あの、弁護の件なのですが」

クイーン「被告人に、やらせてみてはいかがでしょうか?」

小林「!?」

ガウディル「!?」

裁判長「……何故ですか?」

クイーン「確かに、被告人に弁護をやらせるなんて常軌を逸脱しているかもしれません」

クイーン「しかし、このまま弁護の居ない裁判なんて…欠席裁判として記録に残ってしまいます」

クレアストーム「…………」

クイーン「それに被告人は探偵職を持っています。形だけでも何とかなるかと」

裁判長「……………」

裁判長「……確かに、探偵職の中には弁護資格も含まれたりしますが…」

裁判長「………分かりました。被告人、よろしいですね?」

小林「………はっ」

小林「はい…それなら……」

ガウディル「…ふん。まぁ、どう足掻こうともアンタは処刑台から逃れられないだろうけど!」

小林「…………」チラッ

クイーン「………」

小林(…クイーン警視も迷っている)

小林(本当に、僕が犯人なのか。そして新しい証人の証言)

小林(何か…何かを隠している事に気づいて)

裁判長「それでは、被告人改め弁護人」

裁判長「尋問を、初めてください。」

小林「……………、はい!」

小林(とにかく僕は…この事件の真実を追い求めて)

小林(がむしゃらに、突きつけてやる!)


【尋問開始】

①それは、私達が大英博物館で下見をしてきた後の事だった…

小林「待ってください」

小林「貴方達は一体何を盗む為に大英博物館に行かれたのですか?」

クレアストーム「何も今日盗もうとしたわけではない!ただ、色々盗む予定のものを見て回ったのだ」

フランダース「歴史的価値のある物や、映画の舞台になった場所…芸術作品に圧巻されながらね!」

小林(つまり、ただの観光だったのか…)

ガウディル「しかし残念だったわねぇ。この裁判のせいで全ての計画がおじゃんになって」

フランダース「え?」

クイーン「貴方達が博物館で盗みを働こうと宣言した今、警備の強化は確実よ」

クレアストーム「……………」

二人「うぁあああああああ!!しまったぁぁああああああああ!!!」

小林(…………)

小林(本当にこの人たちは……怪盗…なのか…?)


②夕方の16時、帰り道にいきなり大きな音がした。

小林「ちょっと待ってください」

小林「その大きな音…というのは、具体的にどのような音でしたか?」

クレアストーム「厳密に言うと、ズドーン!とか、バーン!とか。重い物が落ちてきたって感じだ」

フランダース「人間一人が落ちてくる音です。鉄や木が落ちてくる音とは訳が違いますわ」

小林「なるほど…確かにさすがに聞き分けができますよね」

クレアストーム「ふふふ…そうよ。私達の聴覚は他から抜きんでている。」

フランダース「何故なら私達は…」

二人「「猫怪盗なのだから!!」」


チェスターキャット!チェスターキャット!チェスターキャット!



ガウディル「まぁ、鉄が落ちてくる音と人が落ちてくる音と聞き間違える馬鹿は居ないと思いますが…」

小林(それもそうだな…)

クレアストーム「そう、その音が鳴るほうへと…」


③その大きな音の方へと見ると……一人の男性の遺体が落ちてきたのだ。

小林「ちょっと待ってください」

小林「その時、落ちてきた彼は既に遺体だったのですか?」

フランダース「…寧ろ、アレを遺体だと思わない方がどうかしてると思わなくて?」

クレアストーム「頭部の上半分が無くて生きている人間など、居ない!!」

小林「いやいや、それはそうなんですが」

小林「その、破裂した頭部は高いところから落ちた衝撃で爆散したのか、それとも前に殺されたのか」

小林「それだけでも分かっておきたくて」

ガウディル「……遺体の男は頭部を破裂した後に腹に生ゴミを詰められているのよ」

ガウディル「もし、頭部を破裂したのが、証人が見つけた後なら…」

ガウディル「証人は遺体の腹を裂き、生ゴミを詰めていた事になるわ!」

二人「「!!」」

クレアストーム「わっ私はそんな事しないぞ!!」アセアセ

フランダース「そっそうよ!言いがかりは止めてくださいな!」フルフル

小林「すっ…すみません」

小林(……しかし、そうなると)

小林(ちょっと…気になる所があるんだよなぁ)

④私達は怖くなって、急いで警察に通報したのさ

小林「ちょっと待ってください」

小林「ちなみに、遺体が降って来たのは16時から更に細かく教えてはくれませんか?」

クレアストーム「断る!遺体を見て、時計を見る暇など存在しなかったのだからな!」

小林「ちなみに、16時という事は…16時半とか17時近くとか…では無いんですね?」

フランダース「どうしてそんな事を気にするつもりがあるのかしら?…まぁいいわ。」

フランダース「遺体を見た所までは覚えていませんけど。警察を呼んだ時間は覚えておりますわ」

フランダース「確か……”16時10分”くらいだったかしら」

小林「…………」

小林「あの、妙だと思いませんか?」

ガウディル「……何が?」

小林「証人は、今確かに”16時10分”に警察を呼んだと言いました」

クイーン「…………」

ガウディル「ええ、言いましたわね」

小林「しかし」

小林「被害者の解剖記録を見ると、死亡時刻は16時45分です」

クレアストーム「……………」

フランダース「? それは一体どういう…」

クレアストーム「………え?」

小林「この時点で、察しがついている人が居るでしょう」

小林「そうです。死亡時刻と彼女達が遺体を見つけた時間にズレがあるのです!!」

クレアストーム「うええええええ!!?」

フランダース「…………」

フランダース「っ!!」

フランダース「うえええええええええええええええええええええええええ!!!??」



ザワザワ…ザワ……


カンッ


裁判長「静粛に!」

裁判長「弁護人…つまり、どういう事ですか?」

ガウディル「はっ!そんなものどうとでも説明できるわ!アンタ、知らないようだから教えてあげるけど…」

ガウディル「人間、そんな簡単に死なない物なのよ!二人が見ていた時には被害者はまだ生きていた!そう説明すれば筋が通るわ」

クレアストーム「ぴぃいい!?」ビクッ

フランダース「うわぁあああ!!!」ビクゥッ

小林「……残念ながら、それは有り得ません」

ガウディル「なんですって…?」

小林「解剖記録にはちゃんと書いてあります。頭部が内側から破壊され”即死”だと!つまり!」

小林「今!決定的矛盾がここに存在しているのです!!」

ガウディル「うっ…ぐぅっ!!」

クイーン「……………」

ガウディル「…しょっ証人!!本当に遺体を見つけたのは16時10分なの!?45分とかじゃなくて!?」

クレアストーム「えっええと…その……あの……」アセアセ

フランダース「…たっ…多分…間違え…てたのかなぁーって……私………慌ててたから…時計を見るのを誤ってたのかも…」アセアセ

小林「…クイーン警視」

小林「通話記録を、今ここで調べる事はできませんか?」

クイーン「今回の事件の記録は、全て証拠品として提出してあるわ。ちゃんと読みなさい」




証拠ファイル⑤通話記録

【16時17分頃に、怪盗二人からの通報があった。】



フランダース「あっ!ほら!やっぱり間違えてたんだ!いやぁーウッカリしてたわぁ」

ガウディル「たった7分しか違ってないじゃないのよ!!」バンッ

フランダース「うひぃっ!!」ビクビク

小林(…とにかく、これでまた矛盾が生まれた)

小林(だが、この矛盾が一体何を表すのか。それはまだ分かっていない)

ガウディル「ふっふん!それでも、貴方が容疑者である事は揺ぎ無いんだから!」

裁判長「弁護人、他に言う事は?」

小林「…………」

小林「…ありません。証言を続けてください」

クレアストーム「………」ホッ

ガウディル「残念な男。折角のチャンスを無碍にするなんて…」

小林「いえ、僕は人に罪を押し付けるなんて事はしませんから」

二人「うひゃっ!?」ビクッ

小林(最早、肉食獣に怯えるウサギのようになってるなあの二人…)


⑤その時、屋上で誰かが逃げて行ったを見たけど、私は目が良いから顔が見えたのよ

小林「ちょっと待ってください」

小林「その顔が…僕…だったというわけですか?」

クレアストーム「ええ。その黒い髪!日本人の顔!忘れない…忘れるわけが無い!!」

フランダース「そう、そんな血に濡れた貴方の顔は!非常に凄く…その……アレ!!だったわ!」

小林(言葉が出てこなかったな今)

小林(…しかし、血に濡れていた僕の顔…か)

小林(これは、重要なファクターになりそうだ)


⑥あの男を殺した真犯人こそ!かの有名な小林オペラ!そいつに間違いない!!

小林「ちょっと待ってください」

小林「貴方は本当に、この僕を」

小林「被害者を殺した犯人と主張するわけですね?」

クレアストーム「ああその通りだ!その証拠にあの男の足にはベタベタと指紋がついていただろう!?」

フランダース「今更、言い逃れできるとは思わない事ね」

小林「…………」

小林「……ちょっと良いですか?クイーン警視」

クイーン「何かしら?ミスター小林」

小林「遺体に僕の指紋がついていた事、貴方は他の人のも言ったのでしょうか?」

クイーン「……………」

クイーン「…証人には、警察の情報はあらかじめ告げないようにしているわ。だから当然」

クイーン「遺体に貴方の指紋がついていた事なんて、ましてや足についていた何て事は」

クレアストーム「!!!」

クイーン「警察と検察ぐらいしか、耳に入れてない筈よ」

小林「…分かりました。」

クレアストーム「……………」

小林「……証人」

クレアストーム「ウヒッなっ…なんでしょうか?」

小林「証言に、加えてくれませんか?」

クレアストーム「……え?」

小林「足の方に、僕の指紋が付着していたとね」

クレアストーム「……………はい」


⑥あの男を殺した真犯人こそ!足に付着していた小林オペラの指紋!これは揺ぎ無い証拠よ!

小林「ちょっと待ってください」

クレアストーム「ぴぃいい!!」ビクッ

小林「いや、あの。だからちょっと待ってください」

フランダース「……」ブルブル

小林「どうして足に、僕の指紋が付着していたのか。それを説明して頂きたいのですが」

クレアストーム「…………それは……」

フランダース「貴方、遺体の足を掴んでいたじゃない」

クレアストーム「!!そうだそうだ!お前、被害者の足を掴んで投げてたじゃないか!」

フランダース「それも愚かな事に貴方は素手で掴んでいた…間違いなく私たちは指紋がついていると確信したのよ!」

小林「……………そうですか」

小林(間違いない。この子達は何かを隠している)

小林(それを今、この証拠品を突きつけて暴露してやれば)

小林(この事件の真実が、見えてくるかもしれない!)



小林(……さて、聞き出せたのはこのくらいか)

小林(今の所、気になる所は一つだけだ)

小林(彼女達から引き出した証拠品、それこそが)

小林(彼女達が隠している物を暴く”重要なファクター”になることだろう)



次は1時35分ごろに投下したいと思います





証言④に証拠品ファイル①カーリー・ヘプバーン解剖記録を突きつける


小林「異議!!」バッ

二人「「っ!」」ビククッ

ガウディル「…あらあら、弁護人いや被告人の悪あがきの時間が始まりましたわ」

ガウディル「本当、無様な姿ね。おーっほっほっほっほ!!」

小林「…………検察側は」

小林「この時間のズレを、どう解釈するつもりですか?」

ガウディル「………何かしら」

小林「証人が警察に通報した時間と、被害者が殺された時間のズレの事です」

小林「明らかに証人が警察に通報した時間の方が遥かに早い!一体これはどう説明するのですか!?」

ガウディル「だから!それは先ほど言った通り」

ガウディル「その時はまだ”死んでいなかった”と検察側は主張するわ!それより…」

ガウディル「貴方!この証言については既に終わらせたのではなくて!?」

小林「いえ、一度証言を全て聞いておく必要があっただけです」


小林「それに、被害者は即死であったのに30分もの通報に時間のズレがあったとして」

小林「それを裁判で見過ごすなんて事、できるはずが無いでしょう!!」

ガウディル「ぐぐっ…!!」

小林「証人、答えてください」

小林「貴方が被害者を見つけた時、本当に被害者は死んでいたのですか!?」

クレアストーム「死んでいた!死んでいたわよ間違いなく!だって…」

クレアストーム「あんな”腹”を見たら!絶対死んでると思うじゃないのよ!!」

クイーン「!?」

ガウディル「!?」

小林「……クレアストームさん」

小林「貴方は、被害者の”腹”を見て確信したのですね?」

クレアストーム「………そうよ!」

小林「……そして、通報した時間は16時17分…そうだと」

フランダース「…それは、警察側が証明したんじゃないの?」

小林「ちなみに、その時被害者の頭はどうなっていました?」

クレアストーム「………っ!!!」


小林「……この尋問で、いくつか分かりました」

小林「警察に通報した時間と、被害者の死亡時刻が違う」

小林「この推測で、可能性が高いのはただ一つ」

ガウディル「……アンタ、まさか」

小林「そう。この殺人は”トイズ”を用いた物である可能性が出てきます!!」

クレアストーム「!!」

フランダース「!!」

クイーン「………」

ガウディル「ばっ馬鹿馬鹿しい!!トイズを用いた犯行?そんなものを今認めてしまえば」

ガウディル「何でもかんでも”トイズ”の犯行を視野に入れなくてはいけなくなるわ!!」

小林「…はい。その通りです」

ガウディル「裁判長!こんな茶番に時間を割く必要はありません!早急にこのエセ弁護士をつまみ出しなさい!」

小林(そもそも僕は弁護士じゃないんだけどな)


裁判長「…………」

裁判長「…この犯行が、トイズの犯行かどうかは」

裁判長「もう少し、確証に至ってから考えましょう」

ガウディル「………はぁ!?」

裁判長「それでは証人、申し訳ありませんが」

裁判長「もう少し、分かっている事を教えてはくれませんか?」

クレアストーム「……………」

裁判長「何でも良いのです。その時、何を見たのか。何を知っているのか」

裁判長「どんな些細な事でも、教えていただけるとありがたいのですが」

フランダース「………」

フランダース「……分かりました。これは私の考察も含まれているのですが」

フランダース「話しましょう。あの時にあった事を、もう少し詳しく」



【証言開始】




①時間に関しては、警察が提出している通り揺ぎ無い事かもしれません。それは私達も認めますわ


②しかし、彼が上から落ちてきた事。それは揺ぎ無い事実です


③彼が落ちてきた瞬間、たくさんの血と臓物が飛び散り…


④真っ白い壁をキャンパスに描くように塗りたくりましたわ



裁判長「………」

ガウディル「…………」

クイーン「……この証言は」

クイーン「ただ、現場の事を事細かく言っているように思えるけど」

フランダース「どんな些細な事も教えてくださいと言ったのは、貴方達でしょう?」

フランダース「私達は、これ以上の事は分かりませんわ」

小林「………」

裁判長「…分かりました」

裁判長「それでは弁護人、尋問をお願いいたします」



【尋問開始】

①時間に関しては、警察が提出している通り揺ぎ無い事かもしれません。それは私達も認めますわ

小林「ちょっと待ってください」

小林「その時間のズレというものに、何か心当たりは?」

クレアストーム「…………」

フランダース「申し訳ないけど、知らないわね」

小林「……?」

小林「クレアストームさん。何か心辺りはあるのですか?」

クレアストーム「え?」

クレアストーム「いやいや!無いぞ!?そんなものは断じてない!!」

クレアストーム「もしかしたら…この犯行は悪霊の仕業かもしれんな!!はーははは!!」

小林「……………」

ガウディル「…証人、証言を続けてください」


②しかし、彼が上から落ちてきた事。それは揺ぎ無い事実です

小林「ちょっと待ってください」

小林「確かに、貴方は上から落ちてきた彼を見たのですね?」

フランダース「ええ。間違いありませんわ」

クレアストーム「ああ!それは間違いない!絶対に!!」

小林(…この証言に、何か嘘をついている気配は無いな)

小林「分かりました。証言を続けてください」

フランダース「…………」

クレアストーム「うう…お腹痛いよぉ……帰りたいよぉ……」


③彼が落ちてきた瞬間、たくさんの血と臓物が飛び散り…

小林「ちょっと待ってください!!」

小林「あの、そういうのは現場写真を見れば良い事なので!大丈夫です!はい!」

フランダース「あら?そうだったの。でも、私はその現場写真をちょっと見てないわね」

フランダース「ちょっとどんな物か、見せてもらってもよろしいですか?」

小林「えっ?そっそれは…」


→写真を見せる

 写真を見せない


クイーン「……証拠品は、極力証人には気軽に見せないようにしている」

ガウディル「さすがの私達も、関係無い者にまで大事な証拠品を見せるのはプライドに関わりますわ」

フランダース「…………」ムー

小林(……助かった…のか?)

裁判長「証人、証言を続けてください」


④真っ白い壁をキャンパスに描くように塗りたくりましたわ

小林「ちょっと待ってください!!!」

ガウディル「そっそんな事までは詳しく話さなくても良いわ!!」

裁判長「それはそれは、本当に恐ろしい目に会いましたね…」

クレアストーム「ああ!あれは本当に…衝撃的だった」

小林「………白い、壁ですか?」

フランダース「ええ。確かに白い壁でした。ねぇ?クレアストーム」

クレアストーム「ああ!それは間違いない!絶対に!!」

小林「……本当に、白い壁だったのですね?」

フランダース「? はい。その通りですが」

小林(……………)

フランダース「…とにかく、私がお話できるのはここまでです」




小林(……これは状況証言だ。矛盾を見つけようとも普通は難しい物だが)

小林(今回のこれは、決定的な矛盾がある)

小林(それを、今突きつけてやろう)

次は1時50分頃に投下します




証言④に証拠ファイル②カーリー・ヘプバーン 殺害現場を突きつける


小林「異議!!!」

クレアストーム「ぴぃい!!」ビクッ

フランダース「………」ビクッ

小林「………証人、本当に…本当に!貴方が見たのは白い壁だったのですか!?」

クレアストーム「なっ何だよぉ!本当だよぉ!これも嘘じゃないもん!」グスッ

フランダース「…あまりに疑心暗鬼ですね。名探偵さん?」

小林「申し訳ありませんが…この矛盾を見過ごすわけにはいきません」

小林「白い壁、被害者。…もう一つ、見逃してはならない物があった事に、お気づきですか?」

クレアストーム「も…もう一つ?……あっそうか!」

クレアストーム「レストランか!確か、レストランが近くにあった!そうだな!?」

小林「…レストラン。それ以外に、もう何もありませんでしたか?」

クレアストーム「無かった!本当に無かったんだ!!本当だ!本当…」ブルブル

小林「残念ですが、それは有り得ないのです。」

小林「ガウディル検事、今一度被害者の発見場所を確認願います」

ガウディル「……見なくても……気づいたわよ…」



ダンッ!!


二人「「ひっ!」」ビクッ

ガウディル「…アンタ達…マリア様は見てないの?」

クレアストーム「マッ…マリア様!?まっまさかお前!私達を天国に連れて行くつもりなのか!?」

フランダース「いっ…いやだ!死にたくない!死にたくないよ!」


ダンッ!ダンッ!ダンッ!!


ガウディル「被害者の遺体の前に!!マリア様の絵が!!書かれているのを!!知らないのっ!!?」

クレアストーム「…えっ!?なっ…何だそれは!?」

フランダース「マリア様なんて…あって当然の物でしょう?皆見慣れてるじゃない!」

フランダース「そんな物!見過ごしてしまうのが当然の事じゃなくて!?」

小林「果たして、こんな凄い絵を見過ごしてしまうのでしょうか?」

小林「いくら見慣れてるとは言って、心臓を5つの剣で貫かれているマリア様の絵なんて!」

クレアストーム「……」

クレアストーム「うわぁああああああああああ!!!」ビクビクビクッ

ガウディル「裁判長!この証人の言う証言は宛てにならないものが多すぎます!」

ガウディル「あんなマリア様の絵を見過ごした奴が被告人を犯人として見たと言っても、信じられなくなってきましたわ!!」

クレアストーム「うっ…うう……」

裁判長「……目は良いという貴方の証言が、嘘のように思えますね」

フランダース「ううっううう……」


小林「………一つ、聞きたい事があります」

小林「貴方達は、怪盗なんですよね?」

クレアストーム「そっそうだ!ちゃんと実績もあるし手下も居るんだぞ!」

小林「なら、貴方達は”トイズ”を持っている筈ですよね?」

フランダース「……………」

クレアストーム「…………あ」

小林「申し訳ありませんが、貴方達の”トイズ”を今ここで」

小林「披露、してもらえませんでしょうか?」

クレアストーム「……………」

フランダース「……断りますわ」

ガウディル「なっ!?」

裁判長「なんですと?」

フランダース「怪盗が自ら手の内を明かすと思っておりますの?だとしたら多いに見当違いではなくて!?」

フランダース「自らが不利になるような事を、怪盗は絶対にしませんわよ!!」

小林「…つまり、貴方達は黙秘権を行使する…という事ですね」

フランダース「そう。その通りよ」


小林「裁判長!」

小林「彼等は、この状況で黙秘権を行使しました。よって、この時点で彼等は」

小林「僕の他のこの事件の”容疑者”として揺ぎ無い者になります!!」

クレアストーム「っ!!」

フランダース「…っ!!」

ガウディル「…………」

裁判長「…はい。確かにその通りです」

クイーン「この事件に不可解な物がある以上、我々の把握していないトイズを持っている貴方達が容疑者になるのは必然ね」

小林「弁護側は!この事件の再検証を要求します!もし、この事件にトイズが使われているようであれば」

小林「今、トイズを持っていない僕は容疑者から外される事となるでしょう!」

小林「更に、証人は言いました。僕の顔には血痕がついていた。ならば!僕の顔をルミノールで検査すれば証言の真偽も分かります!」

クレアストーム「………」

クイーン「異議なし。ここまで来れば、次に容疑者に選ばれるのは」

フランダース「…………」

ガウディル「……検察側も、異論は…ありませんわ……」

小林「……証人」

小林「これが、最後のチャンスです。本当に、ここで貴方達のトイズを披露する事はできませんか?」

小林「貴方達が無実である事を証明するには、トイズを披露するしかありません」

小林「さぁ!証人…いや、怪盗チェスター・キャット!」



小林「貴方達のトイズを、ここで見せてください!!」




フランダース「…………」

クレアストーム「………」

フランダース「…そんな事言われて、本当に見せるとでも…」

クレアストーム「……ぅっ」

クレアストーム「うぇぇええええええええええええええええええええええええええええん!!」ジョバババババ

クレアストーム「びぃぇえええええええええええええ!!ぎゃぁぁあああああああああああ!!!」ジョボボボボボボボボ

クレアストーム「ごめ"ん"な"ざい"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"ごめ"ん"な"ざい"い」ババババババババババ

クレアストーム「びぎゃぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!」バババババババババババババ

小林「…っ!?」

ガウディル「ちょっ…泣き止みなさい!泣き止みなさい証人!」

裁判長「静粛に!静粛に!静粛にぃいい!!」カンカンカンカン



クレアストーム「…………」

小林「……落ち着きましたか?証人」

ガウディル「全く、女の子を泣かすなんて。貴方は最低な弁護士ですわね名探偵」

小林「いえ、泣かすつもりは無かったのですが…」

クレアストーム「……………」

クレアストーム「……あの」

裁判長「は…はい。なんですかな?」

クレアストーム「証言…しても……よろしいですか?」

小林「!」

フランダース「………」

クレアストーム「今度こそ…私……本当の事…喋りますから…」

ガウディル「なっ!」

ガウディル「貴方達…本当の事を証言していなかったの!?これは偽証罪よ!?」

クレアストーム「ごめんなさい…ごめんなさい…!ううう……」ポロポロ

裁判長「検察側は証人を泣かせないように」

ガウディル「ぐぅ…うっ…」

裁判長「…それでは証人、語って貰いましょうか」

裁判長「本当は、あそこで何があったのか」



【証言開始】


①私のトイズは…触れた指紋を自分の指紋にコピーするトイズです…


②本当はあの時…博物館の倉庫にあった豪華な箱を盗みに行きました…


③盗みに成功して、レストランの屋上で箱を空けたら黒い袋が…袋に手を突っ込むと、そこで私のトイズが発動して…


④開けてみると、腹を裂かれてゴミを詰め込まれた男の死体が……


⑤それで怖くなって、私は屋上から死体を突き落としたんです…


クイーン「………」

ガウディル「…………」

裁判長「…なっ…なんと…」

裁判長「まさか…まさか彼を殺したのは…」

クレアストーム「……はい。そうです」

クレアストーム「恐らく、彼を本当に殺したのは……私です」

ザワザワ…ザワ……

カッ

裁判長「…これは、とんでもない展開になりました」

裁判長「容疑者が、小林オペラから一転、証人に変わってしまうとは」

裁判長「一体、誰が想像したでしょう」

小林「………クレアストームさん」

小林「今度こそ、嘘はありませんね?」

クレアストーム「………はい」

クレアストーム「今度こそ……嘘は…言っておりません……」

小林「…つまり、貴方達が心臓を剣で貫かれたマリアの絵を見なかったのは」

小林「本当は貴方達が屋根の上に居たからですね?」

クレアストーム「……………」

クレアストーム「……はい」

裁判長「…分かりました…」

裁判長「それでは、これ以上この裁判での審議は必要ないようです」

裁判長「ここで、小林オペラの審議を終了し、クレアストームの審議を次の裁判に…」








ガウディル「まっ「待った!!!!!」





ガウディル「!?」

クイーン「!?」

裁判長「!?」

小林「…待ってください!裁判長!」

小林「僕の審議が終わっても、この事件が終わったわけでは無い!」

裁判長「…確かにそうですが、この裁判は貴方を裁く場です。それが完全に終了した今、その必要は…」

小林「…お願いです裁判長。この事件を…」

小林「今、ここで僕が出来る事を、やらせてください!」

ガウディル「……ミスター…小林…」

裁判長「…………」

小林(そうだ、何かが…何かが引っかかるんだこの事件)

小林(今、ここで終わってしまったら……)

小林(取り返しのつかない事になってしまうかもしれない!)

裁判長「……分かりました。今の所は、貴方の無罪で審議は決定しています」

裁判長「それを今、保留にして裁判を進めていきましょう」

クレアストーム「…………」

裁判長「弁護人、尋問を始めてください」


【尋問開始】


①私のトイズは…触れた指紋を自分の指紋にコピーするトイズです…

小林「ちょっと待ってください」

小林「という事は、遺体についていた指紋は、貴方の指紋というわけなのですか?」

クレアストーム「はい…全部…私の指紋です……」

クレアストーム「あの時…貴方の指紋は…見ていません…」

小林「…よく、本当の事を言ってくれましたね」

小林「ありがとうございます。クレアストームさん」

クレアストーム「!  うう……ううううう…」ポロポロポロ

フランダース「…………」


②本当はあの時…博物館の倉庫にあった豪華な箱を盗みに行きました…

小林「ちょっと待ってください」

小林「どうして、博物館の倉庫の中身を盗みに行こうと思ったのですか?」

フランダース「…怪盗に、盗む理由なんて一つしかありませんわ。盗むから盗むのよ」

小林「…では、その箱を盗もうと思ったのは誰ですか?」

クレアストーム「…………箱を…盗もうと言ったのは…フランダース…だったよね?」

フランダース「…ええ。まぁ確かに盗もうと言ったのは私だったわ」

フランダース「でも、まさか中身があんな物だなんて…」

小林「………………」

小林「…証人、証言を続けてください」




③盗みに成功して、レストランの屋上で箱を空けたら黒い袋が…袋に手を突っ込むと、そこで私のトイズが発動して…

小林「ちょっと待ってください」

小林「そこで、僕の指紋に触れてしまったのですね?」

クレアストーム「…最初は貴方の指紋だとは分からなくて……」

クレアストーム「怪盗の保険として、そのままにしていたんだけど…知ったのは貴方があの事件の容疑者になった時から…」

フランダース「…私達の美しき怪盗人生がここで潰えるのだけは。と、私達も必死になったものですわ」

ガウディル「隠蔽、しようとしていたのかしら貴方達は」

クレアストーム「うっ…うう…!!」ポロポロポロ

カンッ

裁判長「検察側は証人を泣かせないように!」

ソーダソーダ!   カワイソウダロコノケンサツガー!

ガウディル「なっ何よ何よ!ちょっと可愛いからってチヤホヤされて!」ジワッ…

ガウディル「こいつらは犯罪者なのよ!?アンタ達も援護するんじゃないわよ!!」グスッグスッ

小林(…検察側も泣き出したら世話無いな…)



④開けてみると、腹を裂かれてゴミを詰め込まれた男の死体が……

小林「ちょっと待ってください」

小林「という事は、頭が潰される前に腹にゴミは詰められていたのですね?」

クレアストーム「はい…潰れたのは…私が……」

小林「…しかし、解剖記録によると頭を潰された後に腹に詰められたと書かれているのですが」

クレアストーム「それは…ちょっと分かりません…。でも、私が頭を潰してしまう前に本当に腹は裂かれていました」

小林「………そうですか」

クレアストーム「はい。その後、私は……」



⑤それで怖くなって、私は屋上から死体を突き落としたんです…


小林「ちょっと待ってください」

小林「という事は…やっぱり被害者の頭部破裂は…」

クレアストーム「はい…。間違いなく、私が突き落として地面に激突して…その時です」


ザワザワ…ザワ…

カッ


裁判長「静粛に!静粛に!」

クレアストーム「私が…私が殺してしまったんです…あの時…私が…!」

クレアストーム「うっ…うっ…!!」

小林「…………」

小林(どうやら、本当に彼女が突き落とした所為で被害者の頭部は破裂したようだ)




小林(…一通り聞いてみたが)

小林(何だ?この感じは………)

小林(僕の容疑は晴らされたけど、この別のモヤモヤ感は…)

小林(まだ、肝心な矛盾は晴らされていない。この尋問で、まずそれを明かさなければ)


次は2時10分ごろに投下します




証言④に証拠ファイル①カーリー・ヘプバーン 解剖記録を突きつける

小林「異議!」

小林「…クレアストームさん。本当に袋を開けた時から被害者は亡くなっていたのですね?」

クレアストーム「はい…今度こそ…本当に……嘘ではありません…」

小林「………。だとしたら」

小林「どうして、解剖記録では頭部を破壊された”後”に腹部が裂かれたと記録にはあるのですか?」

クレアストーム「…わっ分かりません!だって…だって!!」

クレアストーム「本当に!私が開けたときはちゃんと頭があったんだもの!!」

ガウディル「クイーン警視!本当にこの記録は正しいんでしょうね!?間違っているんじゃないでしょうね!?」

クイーン「……いえ、間違いなく遺体はまず最初に頭部を破壊されているわ。」

クレアストーム「でも…でもっ!」

フランダース「……あの、ちょっとよろしいですか?」

裁判長「はいはいはい。なんでしょうかな?」

フランダース「…クレアストームは、開けた時から腹部が裂けていたと言っていました」

ガウディル「…ええ、そうね」

フランダース「そして、クレアストームは触れた者の指紋をコピーする事ができます」

裁判長「はい。それは先ほど聞きました」

小林「!」

フランダース「はい。それでは…一つ大きな疑問が生まれる事を、皆さんは見逃しています」

フランダース「どうして、腹部が裂けた被害者に被告人の指紋が付着していたのか」

裁判長「…………」

ガウディル「……………」


裁判長「……あっ!そういえば!」

フランダース「……そう、つまり」

フランダース「頭部を破壊したのがクレアストームだとしても、殺害したのは」

フランダース「紛れもなく!小林オペラだという事は揺ぎ無いのよ!!」

小林「…………」

小林(そうだ…これだ!僕が感じた違和感……!)

小林(彼女が僕の指紋をコピーした…ならば)

小林(彼の身体には僕の指紋がついていたんだ!)

小林「…ちなみに、指紋をコピーした時に証人は被害者のどこを触ったのですか?」

クレアストーム「…た…確か………手…だったと思います」

小林(やっぱり…!僕は、別れ際に彼と握手した事を覚えている!)

小林(……だが…)


カッ!


裁判長「……どうやら」

裁判長「再び、この事件の容疑が貴方に向けてられたようですね。被告人」

小林(それを…どう、説明する!?)

小林(一体…どうやって…!)

フランダース「それに、小林オペラはトイズを失っていると言われているそうですが」

フランダース「……本当に失われているのでしょうか?」

小林「!」

フランダース「この遺体の死亡時刻のズレ、そして腹部が先に裂かれていたのに頭部が先に破裂していたいという記録の矛盾」

フランダース「明らかに、この探偵が逃れる為に事前細工したようにしか思えないのですが」

ガウディル「…………ええ」

ガウディル「そうよ。その通りよ!だから私は!断固として被告人の有罪を主張するわ!!」

小林「………」

裁判長「…弁護人。反論は?」

小林「…………証明しましょう」

フランダース「!」

小林「僕が今、トイズを持っていないというその証拠を」

ガウディル「なっ…なんですって!?」

ガウディル「そんな事…どうやってするというの!?」

小林(大丈夫だ…できない事はない!)

小林(僕がトイズを持っていない事は……彼女達が一番知っているハズだ!)

裁判長「…それでは、証明してください」

裁判長「被告人がトイズを持っていないという証明となる証拠を!」


証拠ファイル④ミルキィホームズ


小林「この資料を見てください」

ガウディル「ふぅん?4人の娘と横浜で起きた事件の詳細……何ですの?これ」

小林「その詳細の中には、関係者のトイズの事も細かく記されています」

小林「……しかし」

裁判長「…え?こっこれは……」

小林「そう、この資料の中には…」

小林「僕のトイズに関しての事は、一切書かれておりません!!」

ガウディル「だっだから何だと言うの!?こんなもの!その時に使わなければ良いだけの話でしょう!」

ガウディル「それに、これが捏造の証拠品である可能性だってあるじゃない!!」

小林「捏造かどうかは、そこに居る警視が選定して提示しているので有り得ません」

クイーン「…………」

小林「そして、この大掛かりな事件に対してトイズがあっても使わない探偵なんて居るでしょうか?」

ガウディル「そんなの分からないじゃない!!」

裁判長「…確かに、それは証明する証拠品としては不十分です」

小林「…それでは、この資料に記されている。この状況下でも」

小林「僕がトイズを使わなかったという根拠は!」



①脱出ポットで教え子と二人きり

②怪盗帝国に毒を盛られ死にそうになる

③後もう少しで怪盗帝国を捕まえられそうな所、取り逃がしてしまう



→③を突きつける




小林「こんな状況下で、トイズも使わず怪盗を取り逃がす探偵なんて――」

小林「探偵でも何者でも無い!!」

ガウディル「ぐっ…くくっ…!!」

裁判長「……………」

裁判長「それでは、この矛盾は一体なんでしょうか」

裁判長「死亡時刻と通報時刻がズレ、頭部の破壊よりも先に腹部が裂かれていた」

裁判長「これを、我々はトイズ以外にどんな仮定を用いれば良いのか」

小林「……………」

小林「一つだけ、まだ可能性があります」

ガウディル「…なっ何よ!?一体何があるの!?」

小林「………先ほど、トイズの事について話してくれたのはクレアストームさんでした」

小林「…フランダースさん」

フランダース「………」

小林「まだ、貴方のトイズを聞いていないのですよ」


クレアストーム「………っ」

小林「…もし、貴方が本当に無実だというのならば」

小林「まずは、貴方のトイズも教えていただけませんでしょうか?」

フランダース「…………」

クレアストーム「…………」

フランダース「……良いですわよ」ニッコリ

小林「!」

フランダース「ただ、私のトイズはクレアストームのと比べると、少し怪盗向きじゃないかもしれませんが」スッ

スゥー…

カチッ

小林「………」

ガウディル「………」

裁判長「…何も、起こりませんが…」

フランダース「…ふふふ。講堂の時計を見てみなさい」

裁判長「時計…?あっ…ああ……!!!」






裁判長「時計が!時計が止まっておりますぞ!?」



クイーン「! 秒針が…完全に止まっている。」

ガウディル「ただの電池切れじゃなくて?」

フランダース「ふふ。私のトイズは”見た”物を壊れさせる能力なのよ」

小林「…”見た”物を、壊れさせる?」

フランダース「ええ、見てしまえば本当に簡単に壊れてしまいますのよ」

小林「……………」

裁判長「なるほど、これは人間に使ってもあまり効果が無さそうですからね」

ガウディル「この能力が、時間のズレを証明できそうにも無いわね」

ガウディル「それよりも」

ガウディル「やっぱり、どんなトイズかまだ分からない貴方の方が」

小林「…本当に、ただ”壊れさせる”だけの能力なのでしょうか?」

フランダース「…?何が言いたいのですか?」

クレアストーム「…………」

小林「クレアストームさん。貴方、何か言いたい事があるのではないですか?」

クレアストーム「…………し」

クレアストーム「知らない!言うことはもうこれ以上無い!!」

小林「…………」

小林「フランダースさん」

フランダース「はい?」

小林「貴方、今嘘をつきましたね」


フランダース「………」

小林「貴方の持っているトイズ、それは――」

小林「”時計を止めた”というその行為に意味がある!!つまり!」

クレアストーム「まっ…待ってくれ!本当にフランダースは機械を壊れさせる能力なんだよぉ!」

小林「…だとしたら、ある証拠品の矛盾が出てきます」

フランダース「矛盾…?」

小林「はい。貴方の証言は、この証拠品と矛盾している!!」



→証拠ファイル③殺害現場の監視カメラを突きつける


小林「もし、貴方が見るだけで機械を壊れさせる事ができるなら」

小林「このカメラに映っている屋上の人影が、こちらを向いた瞬間に機械が壊れていなければ、おかしいですよね」

フランダース「…カメラ目線のなったのが、クレアストームという可能性は?」

小林「考えにくいです。クレアストームさんが遺体を落としたその時」

小林「彼女は遺体の方に釘付けでカメラを睨む余裕なんてあったとは思えない」

クレアストーム「………」

小林「クレアストームさん。貴方も薄々分かっているのでしょう?」

小林「フランダースさんの持つトイズが、機械を壊れさせる能力では無い。そして」

小林「この時間のズレが、真犯人の特定に繋がっているという事を」

クレアストーム「…小林…オペラさん……」

小林「僕は、一つ可能性の高い能力が思いついています」

小林「恐らくフランダースさんは、機械を壊れさせるトイズでは無く…全然違うトイズを持っている!」

クレアストーム「やめて…お願いやめてください…!」

裁判長「…それでは、弁護人に提示していただきましょう」

フランダース「…………」

裁判長「証人の持つ、本当のトイズとは!?」



①見た物の時間を止めるトイズ

②見た物を爆発させるトイズ

③遠くまでよく見えるトイズ




→①を突きつける


小林「フランダースさん!貴方の本当の能力は!見た物の時間を止める能力です!」

小林「先ほど時間を止めたのは、”動く物”として一番別のトイズと示しやすかったからでしょう」

フランダース「………」

小林「フランダースさん、貴方は被害者の時間を止めて被害者の腹を裂き袋に詰めていた」

小林「そして、クレアストームさんは先ほど、確かに言った」


クレアストーム≪…………箱を…盗もうと言ったのは…フランダース…だったよね?≫


小林「貴方は、その箱を盗もうとクレアストームさんに提案した」

小林「そして、箱を開けて袋を開けたクレストームさんは…遺体を突き落とし」

小林「遺体の頭部はそこで破裂した。」

小林「そして、トイズの時間切れか被害者は自然と時間停止から解放されて…そのまま死亡したのです」

小林「被害者の時間のズレは、その時間停止トイズの能力からなっていた!」

小林「警察に通報した時間のズレも!これで説明がつきます!」

フランダース「……………」

小林「以上が、僕の推論ですが…反論の余地は十分にあります」

小林「フランダースさん。では反論をお願いいたします」


フランダース「………」

フランダース「……」

クレアストーム「……動機は?」

小林「……」

クレアストーム「動機はなんなのよ!私達、あの男の事なんてこれっぽっちも知らないわよ!?」

クレアストーム「それに、所詮推論でしょ!?そんなものに説得力の力も無いわ!」

小林「………」

クレアストーム「いい加減にして!私が殺したって言ってるでしょ!?私が……!」

クレアストーム「それに…アンタだって!まだ容疑が外されたわけじゃないのよ!?ゴネるのもいい加減にしなさいよ!!」

小林「…」

クレアストーム「大体!どうしてフランダースが人を殺さなくちゃいけないの!?まずそこから説明をしなさいよ!!」

小林「…………」

クレアストーム「答えなさい!答えなさいよ!!あんた名探偵なんでしょ!?答え…」

フランダース「クレアストーム」

フランダース「もういいわ。もういいのよ」

クレアストーム「……え?」


フランダース「もう…これ以上やっても。結果は同じよ。ここまで追い詰められたら、どう足掻いても彼は真実に辿りついてしまう」

フランダース「私は、もう任務に失敗しちゃったのよ」ニコッ

クレアストーム「………フランダース?」

小林「…それでは、認めるのですね?」

フランダース「ええ。確かに私はあの男を殺したわよ」

フランダース「名前も分からない。あの男をね」ニコッ


ザワザワ…ザワ……


カッ


裁判長「静粛に!静粛に!」

裁判長「ほっ本当に!本当に貴方が…殺したのですか…!?」

フランダース「ええ。」

小林「……どうして、貴方は被害者を殺したのですか?」


フランダース「別にあの男だからってわけじゃないわ。あの男に小林オペラの指紋がついていたからよ」

小林「…!?」

フランダース「私は、まず貴方を有罪にして牢獄に入れるのが最初の目的」

フランダース「牢獄に閉じ込めれば、どこに居るのか把握はできるから。仲間も牢獄の中に居るから」

フランダース「そして、その次に私達は」

フランダース「小林オペラを、そこから連れ出す事が目的だったの」

クイーン「……っ!」

クレアストーム「…ねぇ?フランダース?」

フランダース「私達はね、小林オペラが欲しいのよ」

フランダース「小林オペラの能力が欲しい。永遠の命が欲しい」

フランダース「だからね、小林オペラが有罪になっても。牢獄からすぐに出られたのよ?」

クレアストーム「何を言ってるの…?」

フランダース「大丈夫。小林オペラはみんなの小林オペラになるから」

フランダース「小林オペラがみんなの口の中に入れば、きっとみんなが小林オペラになるから」

小林「……っ!?」

クレアストーム「ねぇ!?フランダース!!何を言ってるのよねぇ!?」

フランダース「でも、私は失敗した」

フランダース「失敗した私は、それでも牢獄には入らないのよ」

ガウディル「…どっどういう事?」


フランダース「私ね、お腹の中に赤ちゃんが居るの」

フランダース「医者に見てもらったらね、もう数ヶ月だって」

クレアストーム「……え?」

フランダース「その赤ちゃんにはね、爆弾があるの」

フランダース「ここら辺を吹き飛ばす爆弾が」

クイーン「!!」

フランダース「だからね、私が赤ちゃんに「動いて」って言えば」

フランダース「赤ちゃんは、動き出すんだよ」スゥゥウ…


クイーン「全員!!伏せろ!!」

クレアストーム「フランダースゥウウ!!!」

ガウディル「ひぃい!!!」


小林「危ない!!」





フランダース「  フェニックス       動いて   」







カッ





           ,r 'j ,r'ゞ,         ,r ' ´ `丶、       ,r、
          ,イ ゞ'´:`イ  ,r ' ´  `丶、      `ヾ       /:;/  //
         /     〈   }  (´  ) :`i      `ヾ  /:;:;:;/      ¨`イ、
     _,,イ从     /   /            _,,、  ,r '´ /:;:;:;:;,/    `ゝ
   /:;´i  (´,  ):`i/  ,イ ゝ.::.  '' ,,:: ::´ `: (:  フ /:;:;:;:;:;:;/ ,.‐(  ..::   ,,`ヽ
  /:;:;:;:;:;i      ゞ,,-‐,ゞ、                    /:;:;:;:;/           ヾ,
/:;:;:;:;:;:;:;:;l `ゞ    ,,ノ( ヾ    ,.‐(  ..::   ::´ `: (:,/:;:;/`‐-‐'  .: )  '' ,,:: ;; `;.)
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ゝ.::.  '' ,,:: ::il                、     /i      //:;/i:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;//  /  ゞ
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【11月14日 07時55分 ロンドン・ヒースロー空港】


小林「……………」

クイーン「……………」

クイーン「……証人であるクレアストームは、窃盗罪のみの罪に問われる可能性が高いわ」

クイーン「それと、フランダースの件なんだけど…彼女に残っていたのは…」

クイーン「左腕と、小腸の一部だけだった」

小林「……………」

クイーン「…彼女が最後に言っていた言葉、その言葉を鵜呑みにするなら」

クイーン「貴方、これ以上ロンドンに居たら危ないわ」

小林「………」

クイーン「日本行きの航空機は手配した。後は向こうの警察と落ち合いなさい」

小林「……あの」

クイーン「なにかしら」

小林「…いえ、なんでもありません」

クイーン「……そう」


クイーン「私達はこっちで、フランダースの言っていた共犯者グループを捜索する」

クイーン「こっちの事は、私達に任せておきなさい」

小林「………はい」

クイーン「そろそろ時間よ。日本に行ったら、ちゃんと教え子達にもよろしく言いなさい」

小林「…………」


スタ……スタ……スタ……



クイーン「……あら?貴方は…」

クイーン「………」

クイーン「…ヘイ!ミスター小林。ちょっと待ってもらえる?」

小林「………?」

クイーン「…”彼女”が、貴方に謝りたいそうよ」




クレアストーム「……………」


小林「…ああ、君は……」

クレアストーム「………」

小林「…災難…だったね。大事な相棒も……その…」

クレアストーム「………」

クレアストーム「――ッ!!」ポロポロポロ


バッ



クレアストーム「ごめん…なさい…!!」

クレアストーム「本当に…ごめんなさい……!!ごめん…なさ……!!」

クレアストーム「怖かった…!本当に…怖かったの……!!あの時は……やってもいない…殺人の罪を…被せられそうになって…!!」

クレアストーム「貴方は…怪盗の私を………爆発から守ってくれた…!もし……守ってくれなかったら……」

クレアストーム「…うう……うう~~!!」ポロポロポロポロ

小林「………そうなのか」

小林「大丈夫。自分の罪を見つめられただけで、君はこれから強くなれる」

小林「ちゃんとこれからは…」

クレアストーム「………これからは……私は…」

クレアストーム「怪盗を辞めて…悪い事を止めて………」

クレアストーム「誰かの役に立つ為に…トイズを使わず…頑張りたいと……思います」

スッ


クレアストーム「……小林、オペラさん」


ニコッ


クレアストーム「ありがとう…ございました!」




【11月14日 12時46分 飛行機内】

コォォオオオオオオ…


小林「…………」

小林(こうして…僕の最初で最後のイギリスでの弁護士仕事は終わった)

小林(見事に無罪を勝ち取れた僕は…これから日本に戻る)

小林(しかし、まだあの事件の謎は残っている)

小林(結局、あの被害者の腹部に入っていた複数のリボンは何だったのだろうか?)

小林(それだけが、僕の思考を異常に捕えている)

小林(……………)

小林(…いや、あれはもう終わったんだ。後はクイーン警視がなんとかしてくれるハズだ)

小林(しかし…久しぶりの日本か…)

小林(彼女達は今…何をしているのだろうか)

小林(そんな事に、期待を膨らませながら僕は)

≪ええ、そうですそもそもトイズというのはですね…≫

小林(テレビの中の映像を…眺めていた…)


「………お兄ちゃん?」

小林「………」

「お兄ちゃん、ねぇ?」

小林「……ん?」

白い髪の少女「今から日本に行くの?」

小林「……どうして分かったんだい?」

白い髪の少女「だって、これからこの飛行機は日本へと向かうでしょ?乗り継ぎも無いもん」

小林「ははは。鋭い洞察力だね。将来は探偵になるのかな?」

白い髪の少女「んーん、だって私はトイズ持っていないから」

小林「いいや、まだ分からないよ。将来突然トイズが現れるかもしれない」

白い髪の少女「そうなの?」

小林「前例は沢山あるからね」

白い髪の少女「そうなんだぁ」

小林(白い髪の少女はそう言って足をぶらぶらしている)


≪ただ盗みを働いたり、正義の味方のように異能バトルしたりするだけの能力では無いのです≫


小林(そういえば、この白い髪の少女は、)

小林(あの裁判の証人、フランダースさんに少し似ているような…)



≪トイズの力を持つ泥棒が怪盗。そしてトイズの力を持つ正義が探偵と呼ばれています≫

≪そして、トイズを持つ殺人鬼は……≫




     ≪サイコパスと、呼ばれているのです≫








第一話   「白黒つける」  【終】




今回はこれでおしまいです。
次回は新しいスレを立てて投下しようと思います。

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