男「もしかして俺って、おっさんになってる!?」 (35)

店員「生姜焼き定食大盛り、お待ち!」ゴトッ

男「どうもー!」

男「いただきまーす!」モグモグ

男「……」モグモグ

男(うっ!?)

男(あれ……? もしかして食い切れないかも……残しちゃうかも……)

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男「なんとか食い切れた……」ゲプッ

男(いつもあそこで定食大盛り食ってるけど、残すかもって思ったの初めてだ……)

男(もし店入る前にパンの一つも食ってたら危なかったかも……)



外食で大盛りを食べ切るのがきつくなった――

男(三丁目の夕日、今回は泣ける話だなー……)ペラ…

男(深夜食堂、相変わらずメシうまそうだな。腹減ってくるわ)

男(浮浪雲、遊びすぎだろこいつ……でもこういう生き方してみたい)ペラ…

男「あー、面白かった」バサッ



ビッグコミック系統の漫画を面白く感じるようになった――

男「たまには甘いもんでも食うか……」

男(ケーキ、シュークリーム、ティラミス……うーん、甘ったるそうだ)

男(大福にしよ。こいつとお~いお茶を合わせて食うとうまいんだわ、これが)

男(そういや……最近洋菓子食べてないかも……)



洋菓子より和菓子を好むようになった――

カンパーイッ! カチンッ

男「……」グビグビ

男「あーっ、うまい! このノドごしがたまらん!」

男(あれ……昔はビールなんて苦くてマズイから最初の一杯で十分、なんて思ってたのに……)



ビールをおいしく感じるようになった――

男「――ん」スタスタ

男(あそこの鏡に俺の姿が映ってる……)

男(地味だなぁ……グレーのシャツにジーンズって……)

男(昔はこれでももうちょいオシャレして、明るい色の服着てたのに……)



私服が地味になった――

男「え!?」

男(70kg!? ウソだろ!?)

男(今までは運動なんかしなくても65kg前後キープしてたのに、いつの間に……)



太らない体質ではなくなってきた――

テレビ『超絶リアルなグラフィック世界を、君も体験せよ!』

男(うお、すげえ……今のゲームってこんなに進化してるのか。ほとんど実写じゃん)

男(でも、やってみたいって気にはならないんだよな)

男(昔はそこそこゲーマーだったけど、すっかりやらなくなっちゃったな……)



ゲームに興味がなくなった――

テレビ『来週も見てね~!』

男「ふぁぁ……ボケッとしてたらつい30分見てしまった」

男(このアニメの世界って、ホント平和な世界だよな)

男(登場人物がみんないい人で、事件も起こらず、暴力沙汰はおろか口喧嘩すらないんだもの)

男(昔の俺は、こういうアニメ大嫌いだったのにな……)



平和なアニメを受け入れるようになった――

男「……」

男(もしかして……)

男(もしかして俺って……おっさんになってる!?)

男「試しにちょっと腕立て伏せしてみるか……」

男「……」グッグッ

男「……」グッグッ

男(あ、ダメだ、もうきついわ)ドサッ

男(たしか昔は50回はイケたのに、今は30回もきつくなってる……!)

男(このままじゃマズイ! 俺はまだ、おっさんなんかじゃないんだ!)

男「……」タッタッタ…

男「ハァ、ハァ、ハァ……」

男(近所の公園を走ってみたが……二周しただけでこのざまかよ。横腹いてえ……)

男(うう……おっさんになりたくない、おっさんになりたくない。体力を取り戻さなきゃ……)

男(……待てよ?)

男(おっさんになりたくない、と思うこと自体がすでにもうおっさんじゃね?)



おっさんになりたくないと真剣に思うようになった――

男(どうしよう、どうしよう! このままじゃマジでおっさんになっちまう!)

男(身も心もおっさんになっちまう!)

男(たしかに体力落ちたし体重は増えたけど、さすがにおっさんにはまだ早いだろ!)

男「よ、よし……きついけどもう一周……!」グッ



老人「無理はやめなさい、お若いの」

男「なんですか、いきなり!?」

老人「急に激しい運動すると、かえって体によくないよ」

男「!」ギクッ

老人「お前さんの気持ちは痛いほど分かる。おっさんになりたくないのだろう?」

男「ううっ!」ギクギクッ

男「あ、あなたは……!? あなたはいったい……!?」

老人「かつてお前さんのような人間だった者だよ」

老人「お前さんの気持ちはよく分かる」

老人「若いといえなくなってきた自分を拒絶したい気持ちはな」

老人「だが人間、時の流れには絶対に逆らえぬ」

老人「それに逆らおうとすれば、必ずやとんでもないしっぺ返しを喰らってしまう」

老人「おっさんになった? ……いいことじゃないか!」

老人「いい年こいて、君は子供みたいだね、といわれる方がよっぽど問題だよ」

男「はぁ……それはそうですけど……」

老人「おっさんになりつつある自分を全肯定しろ、とはいわぬ」

老人「だが、心のどこかでおっさんになってもいいじゃないか、と開き直ることも大事だ」

老人「無理をして体を壊せば、それこそおっさんどころか寝たきりになってしまうのだから」

男「たしかに……そうですね」

男「ありがとうございます。おかげで少し気が楽になりました」

老人「なあに、私も経験者だからね。君の心境がなんとなく分かったのだよ」

男「ってことは、やっぱりおっさんになりたくない時期があったんですか?」

老人「そりゃあったさ。あの頃は私も若かったよ」

男「そうだったんですか……あなたも……」

男(誰もが通る道だって分かって、なんだかホッとしたよ)

男「だけど今は……時の流れを受け入れ、穏やかなおじいさんになったわけですね」

老人「誰がおじいさんだッ! 私はまだおっさんと呼ばれるぐらいの若さは保っておるッ!」

男「……」





おわり

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