雪女「れりごー♪れりごー♪」(83)

雪女「ってやってみたいんです、部長!」

男「そうか分かった、とりあえずその水槽の水換え頼む」

雪女「あ、はいっ」ゴトゴト

男「……」

雪女「この水槽は~♪すんばらすぃ~♪」ギュッポギュッポ

男「……」

雪女「エラが白点病になって死んだっていい♪」ジャバジャバ

男「よくない」

男「そんなに歌いたいなら、新歓かねてカラオケでも行くか」

雪女「へ?」

男「歌いたいんだろ、アナ雪のあの歌」

雪女「歌いたいわけじゃなくて、エルザみたいにこう、雪や氷を自由に操りたいんです!」

男「やれば?」

雪女「へ?」

男「伊達や酔狂で雪女なわけじゃないんだろ?」

雪女「あーいやそのほら、それはですね……」

男「あれやってくれ、足で床踏みつけて、城がペキペキ立ち上がる奴」

雪女「え……」

男「……あ、少し広いスペースいるか?机ずらすか」ガコガコ

雪女「あ、あのちょっと!」

男「遠慮すんな……よっと。これくらいあれば出来るか?」

雪女「う、ぐ……」

雪女「あ、あの、絶対笑わないでくださいね」

男「なんでだ?」

雪女「なんででも、です……ふぅ」スーハー



雪女「なぁーにぃもぉー♪」ガッ

ベシャッ



男「……え?」

雪女「以上」

男「えっ?!」

雪女「……だから『やってみたい』んですよ」

男「ああ……まぁほら、元気出せよ」

雪女「昔っから下手で……ママ、あ、おか、えっと……母とか、おばあ、祖母はすごく上手なんですけど」

男「別に言い直す必要はないと思うが。っていうか、その上手な身内に聞けよ」

雪女「もうしてますよ!でも『グッとやってガッ!』とか『指ぱっちんしたら出るでしょ?出ないの?』とか、全然参考にならなくて……」

男「おおう……」

雪女「……はぁ」ションボリ

男「……うん、決めた」

雪女「え?」

男「今年の科学部の研究発表それにしよう。『雪女が雪や氷を作り出すシステムの解明』」

雪女「……い、いいんですか?」

男「部長は俺だし。部員は雪女と幽霊部員数名だけだし」

男「その過程で雪女の技術が上達すれば万々歳、ってことで」

雪女「ありがとうございます!」

男「まぁ、あれみたいに氷の城は作れなくても、多少自由自在に作れるようになれれば楽しいかもな」

雪女「そうですよね」

男「この、雪降った2日後くらいに日陰に残った奴、よりマシなのを目指そう」

雪女「うぐ……」

男「ま、しばらくは水槽の管理とか、日常雑務と並行してやっていこう」

雪女「はぁい」

男「……」

雪女「どうしたんですか、部長?」

男「いや……頑張ろうな」

雪女「はいっ!」

────翌日@化学実験室



男「まず聞きたいんだが、どうやって雪を作ってるんだ?」

雪女「うぅん……それがよく分からないんです。『雪を作るぞー』って念じながらこう……なんていうか……」

男「なんていうか?」

雪女「グッとやってガッ!って感じで……」

男「……」

雪女「あう、すいません」

男「いやいいけど。じゃあ少しアプローチを変えるか」

雪女「と、言いますと?」

男「例えば……その雪はどこから来るのか?どこまで正確に作れるのか?一度にどれだけ作れるのか?」

男「形状、温度はどうか?水以外の液体を凝固させることは出来るか?」

男「自分の体から離れたところに出現させることは出来るのか?」

男「これは高校の設備じゃ無理だが、雪を出現させる際の脳の活動とかな」

雪女「お、おおぅ……本格的ですね」

男「ま、大まかな方向性だけ決めたら走り出して、そこから軌道修正だな」

雪女「はいっ」

男「とりあえず、この皿の上に雪を作ってくれないか?」

雪女「はーいっ……てやっ!」ベシャッ

男「ん」ダバァ

雪女「あれ、水の入ったグラスに雪を入れてどうするんですか?早速何かの実験ですか?」

男「……いや、冷たい水が飲みたかっただけ」

雪女「そ、そういう使い方しないで欲しいんですけど」

男「文化祭でかき氷屋台出せるかな」ゴクゴク

雪女「出さないでください……」

男「んじゃあ次は……ええと、温度計と秤を準備して……ほい、もっかい出して」

雪女「今度は実験ですよね?」

男「実験実験」

雪女「えいっ」ベショ

男「よっと……-10℃。重さは25gか……よし、同じように出してみて」

雪女「ほっ」ベシャ

男「ふむ……-9℃、重さは27g……この辺りが基準みたいだな」

雪女「おおおお」

男「って、自分の事だろ」

雪女「でも、意識したことないですし……」

男「例えば、倍の量を出そうとしたらどうなる?」

雪女「んー……えいっ!」ボトン

男「47g。温度は-9.5℃。次はどこまで大きな氷を作れるか、とか、どこまで冷たくできるかだけど……」キーンコーンカーンコーン

男「下校時間だ、また明日にするか」

雪女「はいっ、頑張ります!」

雪女「ガスの元栓よし、電気よし、鍵しめましたっ!」ガチャガチャ

男「職員室寄って鍵返してくる。お疲れ」

雪女「あ、一緒に行きますよ、部長。私も覚えなきゃいけないし」

男「実質顔出してるのは俺と雪女だけだしな……じゃあ行くか」

雪女「あの、幽霊部員ばっかりでいいんですか?」テクテク

男「いいんです」テクテク

雪女「顧問の先生は?」テクテク

男「……」

雪女「入部した初日に挨拶しましたけど、それ以降会ってないし」

男「あの人には活動について、何も言わせないようにしてるから」

雪女「……は、はぁ」

男「かなり自由裁量でやらせてもらえるようにしてるんだ。気にしなくていい」

男「じゃあ、キーボックスに返したら、ここに時間とクラスと名前」

雪女「1年B組、ゆきおんな……っと」サラサラ

男「けっこう字うまいんだな」

雪女「えへへへへ、おばあちゃんが書道の先生で、私も段位もちです」

男「へぇ……羨ましい。俺は自分の書いたノートの解読ができないレベルでひどい」

雪女「ちょっと興味ありますね、そこまでいくと」

男「去年の活動ノートとか、部室にあるから見てみるといい……」

雪女「じゃあ明日やってみます」

男「……そうしてくれ」

雪女「あ、今年は私が活動ノートつけるってことでどうでしょう?」

男「じゃあ頼む。綺麗な字でな」

雪女「はいっ、もちろん!」

…………

……

雪女「え、去年は部長しか出てる人いなかったんですか?」

男「まぁね。土日も休みも、俺が出てきて世話してたよ」

雪女「それは邪悪ですね……」

男「はなっから先輩にも同級生にも期待してなかったから、別にいいけどね」

雪女「私は期待してください!超新星級の活躍ですよ!」

男「……超新星は恒星が死ぬ時の現象な」

雪女「うぐ」

男「まぁ、気楽に、な」

雪女「はいっ!……あ、私、こっちの路線なんで、失礼します!」

男「ああ、さよなら」

雪女「また明日です、部長!」タッタッタッ

男「……」



男「元気な奴」

ここまで
気長にお付き合い願います

ベシャッにわろた

エロは当然あるんだろうね?

雪女ちゃん製氷機に負けてね?

待ってた、おつ
ましろんとゆかいな仲間たちの方も待ってるぞー

>>13
ないんだ、すまない……

>>17
雪女「人工降雪機なんかに負けない!」 が没タイトルだとなぜ知っているのか

>>19
そ、そのうちにね


投下

────翌週放課後@化学実験室



雪女「部長はこのGW、どこか旅行に出かけないんですか?」

男「ここ」

雪女「ここ、って……学校?」

男「こいつらの世話」コツンコツン

雪女「……」

男「さびしい青春、ってか?まぁ正解だから何も言い返さないけど」

雪女「言い返せない、ではなくてですか?」

男「お前……人の心をざっくりと抉るな」

雪女「す、すいません」

男「まぁいいや、実験始めるか」

雪女「はいっ」

男「今日は、形状関係の実験だな」

雪女「と、言うと……」

男「普通に雪を出したら、べしょっと不定形になるだろ」

雪女「人のトラウマざっくりほじらないでほしいんですが……」

男「それを、球にしたり三角柱にしたり、形状を指定して雪を出せるか、って実験」

雪女「無視された……あ、子どもの頃、雪を出して真夏に雪ウサギを作りましたよ」

男「一応聞くが、それは出現させてから形状を手直ししたわけじゃないよな?」

雪女「あっ」

男「……」

男「気を取り直していくか。まずは立方体の雪を作ってみてくれ。大きさは特に指定しない」

雪女「はいっ……む、むむむむぅ……ていっ!」モサッ...ベシャッ

男「……おう、見事にべしゃったな」

雪女「べしゃりましたね」

男「空中に出現した時はやんわりと立方体のような感じだったが」

雪女「じゃああらかじめ机の上に出せるようにしてみます!」

男「ん」

雪女「うぅぅ……むっ!」トサッ

男「おお」

雪女「やったぁ!やりましたよ部長大成功です!どうですこれが私が秘めたる実力で────」ドンッ



ベシャッ



雪女「あっ」

雪女「崩れてしまいましたね……」

男「なるほど、興味深い……よし、これの重さを計測して……89グラム、と」カキカキ

雪女「なにが興味深いんですか?」

男「んー……簡単に崩れるほど、この雪はすっかすかだった」

男「じゃあ、どこまで固くできるか?氷のようになるのか、踏み固めた雪のようになるのか」

雪女「家の冷凍庫の氷みたいにはならないと思いますけど……」

男「ま、やってみよう。今と同じ雪の量を、できるだけ小さくするイメージで」

雪女「はいっ!」ソデマクリグイー

男「……」

雪女「できるだけ小さく小さく小さく……ふ、ぬぬ、ぬぬぬ……むむむむむ……」

男(どうしても唸る必要があるのか……?)

雪女「そぉぉりゃっ!!」コトン

男「!!」

雪女「やった!やりましたよ部長!」ダキツキ

男「?!?!」

雪女「見てください、こんなにちいさ……あっ」サササッ

男「……」ドキドキ

雪女「……」ドキドキ

男「雪の制御も大事だが、感情の制御もその、頼む、な……」コホン

雪女「し、失礼しました」カァァ

男「……」

雪女「……」

男「出来てるな……固めた雪みたいになってる……重さは……87g、ほとんど一緒」

雪女「お、おお……」

男「……」

男「……はふ」ヒョイパク

雪女「なっ?!」

男「ほほ、ふへひゃひ」

雪女「な、な、な、なんで食べちゃうんですか!?」

男「……」ガリゴリガリゴリ

男「普通に、氷っぽい食感だった」

雪女「いやばっちいですよ?!」

男「本当に?」

雪女「そう言われると自信ないですけど……」

男「こんな少量の水でどうこうなるとは思わないが」

雪女「そっ、それでもですっ!」

男「……そうか、悪かった」

雪女「もう……で、次はどうします?」

男「え、ああ……わり、今ので何考えてたか忘れちゃったよ」

雪女「いい加減ですね」

男「しょせんは学生のお遊びだからね」

男「そうそう、ここまでの事やこれからの予定について、何か質問は?」

雪女「そもそも雪ってどうやって出来るんですかね?」

男「……おい雪女」

雪女「はいっ!」

男「どうやって雪ができるか、知らないのか?」

雪女「いや知ってますよそれくらい、ジョークですジョーク!」

男「例の『グッってやってガッ!』以外の方法で、だぞ?」

雪女「?!」ビクッ

男「もちろん、知ってるんだよね?」ニコニコ

雪女「……雪女「し、知りません」

男「んじゃ、簡単に説明するぞ」

男「雨雲の中には何があると思う?」

雪女「……そりゃ、水……水蒸気、ですか?」

男「そうだな。それ以外にも、目に見えないサイズの微粒子が存在してる」

男「この微粒子が、雲の中の水蒸気が昇華、あるいは凝固する時の核になる」

雪女「……はいっ」

男「分かってるか?」

雪女「はいっ!」

男「おい不安になるだろ……」

雪女「大丈夫ですよぅ……つまり『グッってやってガッ!』のグッ!の部分ですよね?」

男「……そうなんだろうか」

男「まあいい……微粒子を中心に水滴が小さな氷になる。氷になるが軽いからすぐには落ちてはこない」

男「雲の中で上昇下降を繰り返しながら次第に大きく、重くなって最後には」

雪女「どすん、ですか」

男「どすんです」

雪女「じゃあ、霰も雹も仕組みは同じですか?」

男「大きさの違いだったはずだけどな。さて雪女クン、ここまで聞いて質問は?」

雪女「……う~ん、ないです!」

男「そうか。俺はある」

雪女「私のスリーサイズは秘密ですよ?」イヤーン

男「は?」

雪女「うわむかつく反応!むかつく反応です部長!」

男「あーでも、似たようなもんか。体重教えて」

雪女「?!」

男「いくつ?」

雪女「な、な、な、なんで急に?!」

男「次の実験に必要だから」

雪女「中止!中止です!」

男「雪女が言い出した実験なのに……」

雪女「そ、それでもダメなものはダメです!大体、なんでそんなのが必要なんですかぁ!」

男「……1から説明するか」

男「さっきも説明したが、雪を作るのに必要なものは?」

雪女「芯になる微粒子と、水です」

男「目に見えないサイズの埃なんか、この部屋の中にもたっぷりある」

男「でも水の出所は?空気中の水蒸気なのか、それとも雪女の体内にある水なのか」

男「雪を作る前後の体重の変化でそれを割り出そうってわけだ」

雪女「……」

雪女「う、ううう……」

男「さぁ、科学の実験のための尊い犠牲になってくれるね?」

雪女「い、いやですっ!」

男「……じゃあ仕方ないから保健室からデータぱくってくるか」ゴソゴソ

雪女「ちょっと!何おもむろにノートパソコン立ち上げようとしてるんですか!」

男「ん?だから学内のサーバからデータ引っこ抜こうかと」

雪女「電源オフ!」ポチ

男「むぅ……」

雪女「お、乙女の体重知りたいとか変態すぎですよ部長!」

男「……」ドンヨリ

雪女「第一、その体重、文化祭で全校どころか部外者にまでも晒されますよね?!」

男「そりゃ、数字がないことには発表を信用してもらえないからな」

雪女「却下!却下です!」

男「名前は被験者Aにしても?」

雪女「私ひとりしか被験者いないじゃないですか!」

男「下一桁でも?」

雪女「下一桁だろうが小数点1桁四捨五入だろうが、数字を知られること自体が嫌なんです!」

男「……」

雪女「……」フンス

男「分かった。別の方法を考えよう。じゃあ方向を変えてより低温の雪を作る実験を────」キーンコーンカーンコーン

男「次の機会にでも。明日は俺が用事あるので、来週だな。水槽の餌やりだけ頼む」ガタッ

雪女「分かりました」

男「確かに、人には知られたくないこともある。悪かった」

雪女「あ、いえ、変態とか言ってごめんなさい……」

男「……じゃあ、和解のしるしに購買前の自販機でジュースでもおごろう」

雪女「あ、私『激熱!チリビーンズスープ”3倍!!!』でお願いします」

男「まじか、あれ飲んでる奴初めて見たわ」

雪女「美味しいですよ?科学の使徒たるもの、自分で試してみないとダメなんじゃないんですか、部長?」

男「科学の使徒やめます」

雪女「もう、調子いいんだから」クスクス

ここまで

────翌日放課後@化学実験室



女子生徒「おーっす、ゆっきー!」

雪女「あ、やっほー、女ちゃん」

女子生徒「なにしてんの?」

雪女「んー、水槽の管理」

女子生徒「ふーん……金魚?」

雪女「そういう事言うと部長が怒るよ?私も怒るけど」

雪女「この、底でモグモグしてるのがコリドラス、で、中層でフワフワしてるのがゴールデンハニードワーフグラミー」

女子生徒「……おっけー、略して金魚」

雪女「もうそれでいい」ハァ

女子生徒「その部長さんは?」

雪女「今日は用事でお休み」

女子生徒「んじゃ、サクっと終わらせてミック行こうよー」

雪女「あ、まってまって、鍵かけとか色々あるんだってばー」

女子生徒「んでー」テクテク

雪女「んで?」テクテク

女子生徒「そのさ、部長さんとは、どうなの?」

雪女「……どう、って?」

女子生徒「『どう』は『どう』よ、好きとか、気になるとか好きとか好きとか」

雪女「女ちゃん、ほんとコイバナ好きだよねー……」

女子生徒「花もうらやむ女子高生が、制服の上に白衣羽織って水槽の水温チェック?!だめ、だめだめだめだめだよ絶対!」

雪女「はいはい、私はけっこう気に入ってるんだけどなー」

女子生徒「部長さんの事?!」

雪女「科学部のこと」

雪女「そういう女ちゃんは?美術部にはいい人いないの?」

女子生徒「うーん……色白で無口で細マッチョなのがいるけどさー」

雪女「いるんだー、すごいじゃん」

女子生徒「それが石膏なのよねー」

雪女「……って、石像かー!」

女子生徒「あーもう、そんじょそこらの運動部員では勝てない筋肉美の持ち主よ」

雪女「むー……有機物の男子部員限定で!」

女子生徒「えー……なぁんかアキバ系ばっかり、美術部自体、半分は漫研みたいになってるし」

雪女「そっかぁ……」

女子生徒「でもゆっきー、あきらめちゃダメ。ある統計によると、アキバ系男子は浮気する率が低いらしいの!」

雪女「すこぶるどうでもいいなぁ」

女子生徒「えー、ノリ悪いー」

雪女「だって、まず彼氏いないのに浮気どうのこうの、って言われてもなぁー」

────放課後@ミクドナルド店内



女子生徒「あのさ」

雪女「なにー?」

女子生徒「なにそれ」

雪女「え、超バーニング四川バーガー」

女子生徒「雪女のくせにそんなカプサイシンばっかり摂ってるから出せる雪が一発芸レベルなのよ」

雪女「い、色々とひどい!亜人差別だ!」

女子生徒「はいはい、お詫びに芋をあげよう。晩ご飯の前に炭水化物を摂取するがいい」

雪女「なんか引っかかる言い方だけど……もらう」ヒョイ

雪女「うん、ちょっと塩気が足りないけど、まぁブレの範囲」

女子生徒「ん、ほんほら……んでさ……実際どうなの、その、部長さんは」

雪女「またその話ー?」

女子生徒「そ、またその話」

雪女「いい人だよ」

女子生徒「それは少しでも脈あり、ってこと?」

雪女「ない、かなぁ。それよりなぁにぃ、実は女ちゃんが部長気になってるんじゃないのー?」

女子生徒「ないない。私筋肉ついてる人じゃないと無理だから」

雪女「ギリシア彫刻オタクめ」

女子生徒「オタクじゃないですぅ~」

雪女「オタクはみんなそう言うの。毎晩彫刻の写真集を枕の下に置いて寝る人がオタクじゃないわけないじゃん」

女子生徒「え、しないの?!」

雪女「しないしない」

女子生徒「みんなしてるってー。美術部の先輩だってイケメンの絵を生徒手帳に挟んでたし……二次元だけど」

雪女「それよりは健全……じゃないよ、やっぱり」

女子生徒「そっか」

雪女「そうそう」

…………

……

女子生徒「そんじゃねー」

雪女「ばいばーい」

雪女「今日の晩ご飯はなんだろーなー♪」テクテク

雪女「カレー?豚キムチ?ちりこんかー……あれ?」



男「またか!いい加減にしてくれよなー」

美女「うっさいわね、あんたは黙って荷物を持つ。それがいやなら家までのタクシー代出しなさい」

男「ひでぇ」



雪女「ぶちょっ?!」ムググ

男「……?」キョロキョロ

雪女(思わず隠れちゃったけど、あの綺麗な女の人、誰なんだろ……)

雪女(あ、荷物持って、うわ、ブランドものばっかりだ……)

雪女(……)パシャリ

雪女(お、思わず撮ってしまったけど……)

雪女(そっか、彼女いるんだ……)ハァ



雪女(って、何ため息ついてるの私?!)

雪女(もー、女ちゃんのせいだ……)

雪女(にひ、月曜日に問い詰めちゃおうかなー)

…………

……

ここまで

姉乙

女装僻の兄乙

────翌週 放課後@科学実験室



雪女「あ、部長こんにちはー」ボリボリ

男「何食ってるんだ?」

雪女「え、『お前の1000万スコヴィルを超える、1200万スコヴィルだーっ!チップス』です、食べます?」ボリボリ

男「謹んで遠慮する。粉をこぼすなよ、つーかここからでも目がシパシパする気がする」

雪女「そんな事はないと思いますけど……」

男「餌やりと水換え、ありがとな」

雪女「うちでも魚飼ってますから。あ、そうそう、金曜日っていえば」

男「バトルシップ?」

雪女「なんですそれ」

男「バタフライする宇宙船に、戦艦がドリフトしながら一斉射撃ぶちかますアメリカ万歳映画。先週のロードショーでやってた」

雪女「……見ればよかったかも」

男「借りてこい」

雪女「って、そうじゃないです!これですこれ!」スマホー

男「なにこれ」

雪女「誰です誰です、この美人さんはー、尻にしかれてるっぽいですねー」ニヤニヤ

男「お、姉貴か」

雪女「……お、おねーさん?」

男「そうだよ」

雪女「ずいぶん綺麗なお姉さんですね」

男「外っ面だけはな」

雪女「それにほら、ブランドの買い物袋いっぱい!」

男「金もあるみたいだな。性格は最悪だけどな」

雪女「お、お姉さんの事嫌いなんですか?」

男「別に、事実を言っただけ。仲はまあ、悪くないと思う。よくもないけどな」

雪女「はぁ……私は一人っ子なので、その辺分からないですねぇ」

男「っていうか」

雪女「て、いうか?」

男「盗撮だよな?」

雪女「……」

男「……」

雪女「え……あーいやほら、あれですあれ、あ、ほら、さささ、今日の実験始めましょ」

男「……」

雪女「あーほらほら、さぁさぁ、今日はやる気十分ですよー!」

男「……」

雪女「……ごめん、なさい」

男「誰かに言いふらすようなことしなきゃ、それでいいけどな。じゃ、今日の実験始めるか」

雪女「部長は映画とかよく見るんですか?」ゴトゴト

男「なんだ急に」ガチャガチャ

雪女「なんとなく日常会話のひとつとして」

男「見るほうだと思うぞ。シネコンの会員カード持ってるしな」

雪女「へー。やっぱりアクション系?」

男「まぁ、そうだな。頭の中をすっからかんにして見られる奴が好きだな」

雪女「今度、オススメの映画に連れてってくださいよ」

男「は……?」

雪女「あれ、映画は一人で見る派?」

男「あーいやそうじゃないが……まぁほら、考えておく」

雪女「あ、言われた道具出し終わりましたよー」

男「ん、あ、お、おう……」

雪女「……?」

男「あーほら、うん、じゃ、こっちへ」

雪女「はーい」テクテク

男「今日は、この密閉されたプラ瓶の中に雪を作ってもらう」

雪女「で、何ができるんです?」

男「後で説明する。やってみてくれ」

雪女「はーい……んー、はぁぁぁ……てやっ!!」

男「……」

雪女「あ、あれ、おかしいな……えいっ!えいっ!」

男「瓶の外に作れるか?」

雪女「えいっ!」ベショ

男「ふむ……もっかい瓶の中」

雪女「えいっ……あれ、えいっ!!ふぬぬ!んぎぎぎぎ……ダメだぁ」

男「……おっけー、予想通り」


雪女「へ?」

男「この瓶の中、全部窒素で置換してあるんだよ」

雪女「えーと、つまり?」

男「……湿度0%ってこと」

雪女「あー、あーなるほどー!そっかー!窒素を痴漢したんですもんね!」

男「……」

雪女「……」

男「1から説明しようか?」

雪女「ば、バカにしないでください!」

男「口の開いてる瓶の中には、空気が入ってる。空気の成分は?」

雪女「え、っと、窒素78%、酸素20%、アルゴン、二酸化炭素、水、ほか微量」

男「……合ってる、なんてこった」

雪女「私をなんだと思ってるんですか!」

男「カプサイシンで脳細胞が汚染されてるとばかり」

雪女「ひどい!!」

男「悪かった。窒素置換ってのは、薬品を保管するのに使うことが多いんだけど」

男「酸素や二酸化炭素が薬品を変質させないように、瓶の中の空気を全部窒素にしてしまう」

男「確か、口の開いたワインの保存なんかにも使う、って話を聞いたことがある」

雪女「ほえー……あ、じゃあこの口の開いた『お前の(中略)だーっ!チップス』も窒素を入れて保存すればいつまでも美味しく!」

男「理屈はそうだが……そういうことに実験道具は使わせないぞ」

雪女「そ、そうですか……そうですよね」

男「……話を元に戻すが」

雪女「あ、はいっ」

男「雪女の力を使うには、空気中の水分や、雪の核になる微粒子が必要」

雪女「もしくは、プラスチックやガラス越しには作れない……?」

男「そうだな。じゃあ、この……」プシュプシュ

男「霧吹きで内側を湿らせて蓋をしたガラス瓶に試してみてくれないか?」

雪女「んー……瓶の中、瓶の中、瓶の中……」

男(いつも雪を出す時は、空中に出現させている。手から離れている場所に出現させられるなら……)

雪女「でぇぇいっ!」ベショ

男「おお、成功だな」

雪女「へへー、見直しましたか部長!」

男「……ああ、はいはい、すごーいすごーい」

雪女「な、ひどい!」

男「ま、見直すまでもなく、前からすごいと思ってる」

雪女「あ、ありがとうございます、へへへ……」ニヘニヘ

男「これでさっき雪女が言った、ガラス越しに作れない、って説は消されたな」

雪女「そうですねー」

男「んじゃ、今日はこのくらいにして片付けて帰るか」

雪女「はいっ」

雪女「って、部長、瓶のふた開かないんですけど……」

男「……あ、しまったな」

雪女「どうしましょう」

男「んー、流しに蓋をしたまま置いておいてくれ。メモに『科学部実験中』って書いてな」

雪女「はい」

男「なんで開かないか分かる人ー」

雪女「……」

男「露骨に目をそらされると凹むわー」

雪女「いや分かりますよ、分かります。水蒸気が氷に変わった分、瓶の中の気圧が減って、気圧の差で開かなくなった、でしょ?」

男「正解」

雪女「むー、バカにしすぎです!」

男「悪い悪い」

雪女「もう!」プンスカ

…………

……

校内放送『下校時間になりました。校内に残っている生徒は、速やかに下校してください』



雪女「へー……科学部って、物理、化学、地学に生物、全部対象なんですね」テクテク

男「どうも、初代の部長の方針らしいよ」テクテク

男「去年はまともな部員が自分ひとりだったから、自分の好きなようにやらせてもらったけど」

男「本来であれば、その時々のプロジェクトによって部員を班単位に分けてたらしい」

雪女「はじめっから、生物部、とか物理部にすればいいのに」

男「俺はそうは思わないな……例えば、唐辛子」

雪女「おやつには最適ですね!」

男「賛成しかねる……唐辛子を植物として見れば、生物学の範囲」

男「唐辛子を育成する土地については地学、唐辛子の成分は化学だ」

男「科学ってのは、1つの物事をいろんな面から見ることだ……これは、化石採集が趣味だった爺さんの言葉」

雪女「……お、おぉ」

男「……だから、科学部でいいのさ」

雪女「なるほど。じゃあ、私の雪についてもいろんな方向から見なきゃ、ですね」

男「カプサイシンの摂取と造雪能力の関係、とかな」

雪女「う、部長までそれを言う……」

男「そりゃあ、あんだけ辛いものパクパク食べてればなぁ」

雪女「うぅ……じゃあ控えます!控えますよ!」

男「辛いもの我慢するストレスで雪を出せなくなっても困るんだが」

雪女「う~ん……」

男「気にすることはないと思う」

雪女「そうですかー……そうですよね!よっし、今日の晩ご飯はなんだろな~♪」

男「……」

雪女「あ、そうそう、映画いつ見に行きます?」

男「社交辞令じゃなかったのか」

雪女「当たり前じゃないですか!全米初登場1位!とか総製作費100億!とかのアクション超大作でお願いしますね」

男「それ、駄作フラグじゃんか」

雪女「それならそれでいいじゃないですか」

男「……んじゃ、次の土曜日でどうだ?ちょうど封切の映画がある」

雪女「おっけーです、ばっちりです、へっへー、スケジュールにつ・い・か、っと」ピポパ

ここまで

>>52
正解
>>54
それはない

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1412167790/
にも書きましたが
長期にわたり(少なくとも今年中は)続きをかける状況ではないため、このスレは落として欲しいそうです
「どうせ落ちてると思うけど」と言っていましたが、再開を楽しみにされている方々がいると
伝えておきます

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