高森藍子「なにもない一日」 (36)
※デレマス
高森藍子ちゃん総選挙29位おめでとう!!
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「…さん、…Pさん…、朝ですよ…」
モバP(以下P)「ん……ああ……藍子か……」
藍子「おはようございます」
P「ん…茜と未央は…」
藍子「もう…寝ぼけてるんですか、茜ちゃんと未央ちゃんはゆうべのうちに帰ったじゃないですか」
P「ああ…そうだったな……今日は…確か…」
藍子「はい、私もPさんも、二人ともオフの日です。久しぶりに…」
P「ああ…そうだったな…」
藍子「私はもう起きましたからPさんベッドの方へ移ったらどうですか」
P「ん…そうだな……」
藍子「いつもすみません、私がベッド使っちゃってPさんがソファーに寝てるなんて」
P「担当アイドルを大事にするのは当然だろ」
藍子「そうですよね、アイドル…ですもんね」
P「ああ、女の子をソファーに寝かせるわけにもいかないからな」
藍子「はい…」
藍子「一緒に寝てくれてもいいのに…」ポソ
P「ん?何か言ったか?」
藍子「い、いえ、なんでもありませんっから」
P「そうか、…」
藍子「あ、あの…朝ごはん用意しますね、なにか食べたいものはありませんか?」
P「んー……食べたいモノ?…」
藍子「はい、なんでもいいですよ」
P「そうだなー…あえて言うなら…」
藍子「はい」
P「藍子が食べたい」
藍子「へぇっ!?」
P「藍子の柔らかい体を堪能したい」
藍子「も、もう…いやですね…Pさんたら寝ぼけて」
グイ
P「藍子が欲しい」
藍子「……」
………………
藍子「もうー、いきなり引き寄せて耳元でささやかないでくださいよ」
P「はっはっは、ごめん。これも演技の練習だ」
藍子「その低い声で囁くの禁止だって言ったじゃないですかー、どうしてそんなことするんですかー」
P「真っ赤になって恥ずかしがる藍子が可愛いから」
藍子「!?」
藍子「そ、それじゃ、私はコンビニ、行ってきますからね、何か適当に、そうパンとか、コーヒーとか、買ってきますから」
バタン
P「(慌てて出て行ってしまった…からかい過ぎたか…)」
チラ
P「(ベッドは綺麗に片づけられている…)」
P「(もう少しここで寝よう…)」
パンパン
P「いやー、こうしてベランダに洗濯物がずらりと並んでいるのは壮観だな」
藍子「今日はいいお天気になって良かったですね」
P「悪いな、家事まで手伝ってもらって」
藍子「いいんですよ、泊めてもらったお礼です」
P「これで全部か?」
藍子「今タオルも洗っていますから、この際みんな洗濯しちゃいましょう」
P「ああ、洗濯物干したらどこかへ出かけようか」
藍子「そうですね、天気がいいからPさんとお散歩したいです」
P「また公園にでも行ってみるか」
藍子「そうですねえ…私この近所を歩いてみたいです」
P「この辺りを?別に面白い場所はないと思うぞ」
藍子「いいんです。私、何度かこの街に来てますけど駅やコンビニくらいしか知りませんから」
P「んー、藍子がそれでいいなら」
藍子「はい」
テクテク…
藍子「この辺りは割と静かですね」
P「まあ大通りを一本入ると住宅街だからな」
藍子「あっちの方へ行ってみましょう、あまり高い建物がない方へ」
P「そういえば俺もこっちの方へはあまり来たことが無かったな」
藍子「こうやって目的もなくブラブラ歩くのも、たまにはいいですよね」
P「まあな、藍子がいなければ永遠に歩くことがなかった道かもしれないな」
藍子「うふふ…大げさですね」
P「そういえば欲しいものは決まったのか」
藍子「ああ、昨日言っていた」
P「せっかくポジティブパッションでCDも出せてミニライブも成功したんだ」
P「俺からも個人的にみんなに何かプレゼントしようと思って」
藍子「どんなものでもいいんでしょうか?」
P「…まああまり高価なものは考えさせてもらうけどな」
P「未央のやつ、ブランド物のバッグが欲しいなんて言いやがって」
藍子「うふふ…それはきっと未央ちゃんの冗談ですよ」
P「そうなのか?」
藍子「はい。未央ちゃん、Pさんとみんなでカラオケに行きたいって言ってましたから」
P「カラオケ…ねえ」
藍子「みんなで一緒に歌をうたいたいんだ、って言ってましたよ」
P「カラオケかあ…」
藍子「Pさん私たちが誘ってもなかなか来てくれないじゃないですか」
P「苦手なんだよなあ…」
藍子「うふふ、私たちにはあんなに熱心に歌の指導していたのに」
P「そりゃあ仕事だからな」
藍子「私はPさんの歌、とっても好きですよ」
P「ふう…俺にとってはブランドバッグよりも荷が重いよ」
藍子「そういえば茜ちゃんはどんなお願いをしたんですか?」
P「一緒にラグビーの試合を見に行きたいそうだ」
藍子「茜ちゃんらしいですね、でもそれくらいならいいんじゃありませんか」
P「オーストラリアまでな」
藍子「あ…」
P「仕方ないからリポートの仕事を取ってくることにしたよ」
藍子「またPさんのお仕事増えちゃいましたね」
P「さすがに個人的に観戦ツアーに連れて行ってやるのもなあ」
P「それでさ」
藍子「はい」
P「藍子は何か欲しいものはあるのかな」
藍子「そうですねえ…」
藍子「あの、私…今とっても幸せなんです」
P「うん?」
藍子「アイドルデビューさせてもらって、未央ちゃんや茜ちゃんとユニットでCDも出せて」
藍子「ファンの皆さんがいつも応援してくれて、ライブではとっても喜んでくれて」
藍子「楽しかったよ、ありがとうって、いっぱいの笑顔をくれるんです」
P「そうだな」
藍子「それを思い出すだけで心の中がポカポカしてとっても優しい気持ちになれるんです」
P「うん」
藍子「だから…特に今これが欲しいって気持ちはないんです」
P「藍子は優しいなあ」
藍子「そうでしょうか?普通の事だと思いますけど…」
P「欲がないっていうかさ」
藍子「あ、そうですね…しいて言うなら…今のこの幸せな時間がずっと続けばいいなって思います」
P「…結構大きな願いだな、それ」
藍子「あはは…そうですよね」
藍子「でも…いつまでもこんな優しい時間に包まれていたいなあ…って思ってるんです」
P「俺にプレゼントできるのか、それは」
藍子「あはは…」
藍子「あ、Pさん。あっちの路地に入ってみませんか」
P「ああ、構わないけど…何かあるのか」
藍子「分かりませんけど…なにかいい予感がするんです」
P「予感ねえ…」
藍子「はい、私のカンは結構当たるんですよ」
P「そうなのか」
藍子「初めて入るお店でも、なんだか素敵な小物が見つかるんじゃないかってそんな気がしたり」
P「まあそれじゃあそのカンを頼りに行ってみるか」
藍子「はい、ありがとうございます」
P「わりと狭い道だな、両側も古い町並みだし」
藍子「こういう通り、雰囲気があっていいですね」
P「ああ、昭和って感じがする」
藍子「どういう感じかはよく分かりませんけど…」
P「まあなんとなくな」
藍子「でも優しい空気を感じます、穏やかで人の温もりが伝わってくるような」
P「藍子はこういう道が好きなのか」
藍子「はい、私のお気に入りになりそうです」
藍子「あ、Pさん!見てください、あそこに駄菓子屋がありますよ」
P「おお、看板が出ているな」
藍子「私、駄菓子屋って行ったことないんです」
P「そうなのか」
藍子「はい。Pさんは行ったことあるんですか?」
P「小さいころに少しだけな、メダルでやるゲームとかあってさ」
藍子「へえー」
P「じゃんけんのやつとかルーレットのやつとか、当たるとお菓子と引き換えてもらったり」
藍子「面白そうですね、行ってみましょうよ」
タッタッタ…
P「あ、おい…ちょっと…先に走り出すなよ」
藍子「……」
P「どうした入り口で立ち止まったりして」
藍子「Pさん、これ…」
P「張り紙がしてあるな、なになに…」
『永らくご愛顧いただきましてありがとうございました。店主病気のため3月末で閉店させていただきます』
P「あー店じまいしちゃったのか」
藍子「3月末ですか…もう少し早く来てみればよかったです」
P「そうはいっても紙が変色してるからな、今年の3月かもわからないぞ…」
藍子「そうですね…」
テクテク…
藍子「……」
P「どうした、元気がないみたいだけど」
藍子「はい…」
P「まあ気を落とすな、また駄菓子屋見つけて連れてってやるから」
P「なんなら番組にそういう企画を持っていっても…」
藍子「あ、いえ、違うんです」
P「ん?」
藍子「駄菓子屋に行ってみたかったのは本当なんですけど…」
藍子「私が気にしているのはそうじゃなくて…」
P「そうじゃなくて?」
藍子「あのお店、近所の子供たちの憩いの場所だったと思うんです」
P「まあそうだろうな」
藍子「そのお店が閉まったら子供たちは悲しんでるだろうなって思って」
P「そんなことを考えていたのか」
藍子「はい」
藍子「それに…昔あのお店に通っていて、今は大人になった人たちも」
藍子「久しぶりに故郷に帰ってきて思い出の店が閉まっていたらがっかりするんじゃないかって…」
P「……まったく、藍子は本当に優しいな」
藍子「そうでしょうか?」
藍子「誰にとっても、思い出の場所が消えてしまうのはとっても悲しいことだって思うんです」
P「うん、まあ…そうだな」
藍子「でもすみません、私のこと心配してくれたんですよね」
P「ちょっと笑顔が消えてるなって思ったからな」
藍子「えへへ…ありがとうございます。もう大丈夫ですから」
ニャー
藍子「あ、見てください。三毛猫さんがいますよ!」
P「ん、どこだ」
藍子「ほらほら、あそこです!」
P「おい、引っ張るな」
藍子「わあーかわいい…」
ニャー
藍子「よしよし…、こわくないからね……にゃーん、にゃん」
ペロペロ…
藍子「もう…そんなに舐めたらくすぐったいよお…うふふ…」
パシャリ
藍子「へぇっ!?」
P「なかなかいい笑顔だったぞ」
藍子「い、今の撮影していたんですか?」
P「猫と戯れる藍子、いい画が撮れたな」
藍子「も、もう…あんまり恥ずかしい姿撮らないでくださいよ」
P「せっかくだから未央たちにも見せてやるかな」メルメル
藍子「あ、ダメです、ダメ。そんな写真送らないでください~」
パシャリ
藍子「え…また…?」
P「顔を真っ赤にして飛びつく藍子の顔いただきー」
藍子「もう、Pさんのイジワルぅ~」
ヒャーヒャー
藍子「ん、猫さん、どうしたの…そっちの路地で振り向いて…」
ヒャーヒャー
藍子「Pさん、あの子…なんだか私たちを呼んでいるみたいですよ」
P「そんなことが分かるのか?」
藍子「はい…なんとなくですけど」
P「また藍子のカンってやつか」
藍子「んー…そうかもしれません」
P「それじゃあ行ってみるか」
藍子「はい」
P「…それはいいけど…ずいぶんと狭い道だな」
藍子「そうですか、こういうのも楽しいですよ」
P「猫と藍子はいいけどさ…両側に壁があって俺は通るので精いっぱいだよ」
ぐちゃ
P「ああ…舗装されてないのかこれ」
ニャー
藍子「あ、猫さん…待って…」
P「おい置いてくなよ」
藍子「Pさんも早く来てください」
P「まったく…時々こうして一直線に突っ走るんだから…」
ガタガタ
P「こんどは積んである木材の上か…一体いつから置いてあるんだ、これ」
ニャー
藍子「あ、待って…そっちなの?」
P「猫が木で出来た塀の上でこっちを見下ろしている…」
藍子「向こうに何かあるんでしょうか」
P「俺の身長よりも高いぞ、あの塀」
藍子「Pさん、登ってみましょう」
P「あ、おい…ちょっと待てってば…」
クイ
藍子「あれ…あれれ…」
P「ほら、スカートが引っかかってるぞ」
藍子「あ…どうしましょう…」
P「ちょっと待ってろ、今外してやるから」
藍子「ありがとうございます…」
P「なんとか塀を乗り越えたな」
藍子「はい、Pさん大丈夫ですか」
P「ああ、それよりも猫は?」
ヒャーヒャー
藍子「あっちに居ますよ、行ってみましょう」
P「そろそろゴールにたどり着いてくれよ」
藍子「もう近いんじゃないでしょうか、そんな気がします」
P「また藍子のカンか…」
藍子「えへへ…」
P「それよりも藍子」
藍子「はい」
P「今日は白なんだな」
藍子「……!?」
ギュー
P「痛い、痛いから手の甲をつねるんじゃない」
ガサガサ
P「こんどは草むらを抜けるとは…本当にここは都内なのか?」
藍子「あ、ほら広いところに出ましたよ」
P「ああ…」
ニャー
藍子「ああ!!Pさん、見て下さい!あれ!!」
P「おお……これは見事な樹だな…花が満開だ…」
藍子「わあ…とっても綺麗……」
P「風が吹くたびに花びらが幻想的に舞い散っているな…」
藍子「あれは…桜でしょうか…?」
P「そう見えるが…それにしては季節がおかしいな…種類によるのか?」
藍子「どうなんでしょう?」
P「写真に撮って夕美に聞いてみるか」
ゴソゴソ
藍子「ああ、待ってください!」
P「ん、どうした…」
藍子「…あの……このことは…二人だけの秘密にしませんか…」
P「ん、んー…」
藍子「ダメ…でしょうか…」
P「まあいいか…」
藍子「ありがとうございます」
P「それにしても…面白い場所だな」
藍子「何がですか?」
P「向こうの斜面と、川と、電車の高架と周りの建物に囲まれてる」
藍子「本当ですね…」
P「ビルの窓もこっちには開いてないし…この花を見るにはこの位置しかないのか」
藍子「わあ…なんだか素敵ですね」
ニャー
藍子「ふふ、これを見せに連れてきてくれたんだね、ありがとう」
藍子「ねえ、Pさん…」
P「なんだ?」
藍子「私、欲しいもの見つかりました」
藍子「来年も再来年もその次も、この花を見に来ましょう」
藍子「ずっと、ずーっと…私がお婆ちゃんになるまで…二人っきりで一緒に…」
P「……」
P「それは…ちょっと難しいかな」
藍子「…ダメ…でしたか…」
P「藍子がお婆ちゃんになるまでってことはさ…」
P「そのころにはたくさんの子供や孫も連れてこないといけないだろう」
藍子「……!?」
藍子「こ、子供って……もう…恥ずかしいこと言わないでください!禁止です!」
P「だからつねるなって!」
……
P「藍子だって…そういう意味のことを言ったんだろう」
藍子「それは……そうですけど……」
藍子「……」
P「ほら…こっち」
くいっ
藍子「あ…ダメです…外でそんな…」
P「大丈夫…ここなら誰にも見られないから」
藍子「ん………もう……」
……………………
…………
……
藍子「もう…ねこさんが見てますよ…」
以上で終わりです。
総選挙で藍子ちゃんを応援して下さった皆様ありがとうございます。
目的の場所へたどり着くために今日からまた藍子ちゃんと歩む日が始まります。
それでは依頼出してきます。
読んでいただいてありがとうございました。
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